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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】リンゴ酸の製造
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/367 20060101AFI20221201BHJP
   C07C 59/245 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C07C51/367
C07C59/245
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021565840
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 IN2020050608
(87)【国際公開番号】W WO2021009774
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】201921028680
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】202021009475
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521481212
【氏名又は名称】ティルマライ ケミカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ランガスワミー,パルササラティー
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03379757(US,A)
【文献】米国特許第01900649(US,A)
【文献】米国特許第03523024(US,A)
【文献】中国特許出願公開第1560016(CN,A)
【文献】米国特許第03379756(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103193739(CN,A)
【文献】特開平05-170695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴ酸の製造方法であって、
(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することと、
(b)前記第2の中間生成物を含む原料を得ることと、
(c)管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、前記原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することと、
を含み、
前記第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、
前記処理が、
(i)前記粗無水マレイン酸をガスストリッピングすることにより、又は、(ii)前記粗マレイン酸、前記粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られる前記ベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することにより、前記第1の中間生成物から不純物を除去して、処理された中間生成物を得ることと、
前記処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を除去して、前記第2の中間生成物を形成することと、
を含み、
前記原料の水和反応が、アルミニウム金属、アルミニウムのホウ酸塩、及びアルミニウムの炭酸塩からなる群から選択される触媒の存在下で行われる、方法。
【請求項2】
前記触媒が、前記原料中の前記第2の中間生成物に対して、50mg/L~500mg/Lの範囲の濃度を有する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒粒子が、10ミクロン~800ミクロンの範囲の平均直径を有する、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記原料対触媒の質量比率が、1:0.00005~1:0.0005の範囲である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の中間生成物が、ブタン、ベンゼン、o-キシレン、ナフタレン、及びそれらの組合せからなる群から選択される原材料の処理の生成物である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記粗無水マレイン酸をガスストリッピングすることが、
減圧下で、窒素を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、前記不純物を除去すること、又は
空気若しくは二酸化炭素を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、前記不純物を除去すること
のうちの1つを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
空気を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、前記不純物を除去することが、カラム中で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記空気の流量が、0.5Nm/h~20Nm/hである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記カラムの温度が、70℃~100℃である、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を結晶化に供することが、
前記混合物を、複数の段階で、15℃未満の温度に冷却して、マレイン酸の結晶を得ることと、
前記処理された中間生成物としてマレイン酸の前記結晶をろ過して取り出すことと、
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
原料を得ることが、前記第2の中間生成物を、水、マレイン酸、無水マレイン酸、及びフマル酸のうちの1つ以上と混合することを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記原料に、水和反応を起こさせることが、前記原料を、2900~10000のレイノルズ数で、前記管型反応器中に通すことを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記原料が、1~2時間にわたって135~195℃の範囲の温度及び11~15バールの圧力で反応される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記管型反応器が、バッチ、半連続、又は連続モードのうちの1つで操作される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記バッチモードにおいて、前記生成物を含む溶液が、反応の完了後に、完全に排出される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記半連続モードにおいて、前記生成物を含む溶液の一部が、所定の期間後に除去され、等量の原料が、前記管型反応器中に供給される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記連続モードにおいて、前記生成物を含む溶液の一部が、連続的に除去され、同時に、同じ量の原料が、前記管型反応器中に供給される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
[0001] 本発明の主題は、一般に、リンゴ酸の製造、特に、ブタン、ベンゼン、オルト-キシレン、ナフタレン又はブタン、ベンゼン、オルト-キシレン、ナフタレンの処理によって得られる中間生成物から出発する、様々な原料(different feedstock)からのリンゴ酸の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] リンゴ酸は従来、マレイン酸の水和によって製造され、マレイン酸は、無水マレイン酸の脱塩水への溶解によって、又は高圧及び高温の条件下でマレイン酸及びフマル酸の混合物を使用することによって調製される。平衡に達するまで、すなわち、リンゴ酸、フマル酸、及び微量の未反応マレイン酸の平衡混合物の形成までにかかる時間(これは、所与の量のマレイン酸若しくはその異性体であるフマル酸又はそれらの混合物の反応が完了するまでの時間と考えられる)は、4~8時間と変動する。
【0003】
[0003] 触媒は、マレイン酸の水性水和におけるリンゴ酸の生産性を向上させることが分かっている。典型的な水和反応では、マレイン酸は硫酸を含む様々な触媒の存在下で水和される。
【0004】
[0004] 米国特許第3,379,756号には、高温及び高圧での、水性反応混合物中のマレイン酸、フマル酸、及びそれらの混合物からのリンゴ酸の合成方法が記載され、この方法は、反応混合物に曝される表面がチタン、ジルコニウム、タンタル、及び前記材料の少なくとも1つを含有する合金の群からの少なくとも1つの材料からなる反応器領域において行われる。
【0005】
[0005] 米国特許第5,210,295号には、マレイン酸、フマル酸などから選択される酸の水和方法が開示され、ここで高温反応が、所定のモル比で、ナトリウムイオンの存在下で行われる。
【0006】
[0006] 欧州特許第0515345号において、アルミニウム及びクロムの水酸化物がマレイン酸の水溶液に加えられる場合、マレイン酸のリンゴ酸への転化率を増加させることを報告する、“New Catalysts for Hydration of Maleic Acid”by N.A.Bzhasso and M. P. Pyatnitskii, Zhur. Priklandnoi Khim., Volume 42, no. 7, pages 1610-1614 (1969)についての記載がある。平衡量のフマル酸も水和生成物中に見られた。前記著者により公開されたロシア特許、すなわち、旧ソビエト連邦特許第208706号及び同第218874号が、マレイン酸を水に溶解させ、反応のための触媒として水酸化アルミニウム、硫酸クロム又は塩化アルミニウムを加えることによる、マレイン酸のリンゴ酸への水和を開示していたことが、さらに記載されている。アルミニウムの塩化物及びサルフェートの使用は、酸、すなわち、それぞれ塩酸及び硫酸の形成をもたらす。これは、特に、反応器の下流における、これらの酸と金属表面との接触による反応器槽内の激しい腐食につながり、これにより生成物が汚染される。さらに、これらのイオン、すなわち、アルミニウムの塩化物及びサルフェートは高溶解性であり、イオン交換によってか又は他のコストのかかる方法によって除去される必要がある。水酸化クロムの使用は、母液に色を与えることに加えて、有毒なリンゴ酸クロムの形成をもたらす。リンゴ酸クロムは一定期間にわたって母液中で濃縮され、生成物とともに沈殿し、及び生成物を汚染し得る。
【0007】
[0007] 米国特許第3,379,757号には、ベンゼンなどの有機化合物の蒸気相触媒酸化から得られるマレイン酸の水溶液からのリンゴ酸の製造方法が開示されており、この方法は、得られるマレイン酸溶液を空気の存在下でエージングすること、エージングされた溶液をろ過すること、及び過圧下、閉じたシステム中でろ液を加熱して、マレイン酸をリンゴ酸に転化することを含む。このエージングプロセスは、ゴムライニングされた鋼製の塔中で行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008] しかしながら、リンゴ酸の従来の製造方法は、いくつかの欠点を有する。非常に高い温度及び圧力が反応に必要とされ、反応が平衡に達するのに長い時間がかかり、反応生成物が腐食性及び有毒で、反応器槽の腐食をもたらし、生成物から汚染物質を除去するために追加のプロセスが必要とされ、より高い資本及び運転コストにつながる。したがって、リンゴ酸の製造のための代替的な方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
[0009] リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液(vent gas scrubber solution)、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物(retained impurities)を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(a)第2の中間生成物を含む原料(feed)を得ること;並びに(b)管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法が、本明細書に開示される。
【0010】
[0010] ある実施形態において、原料は、触媒の存在下で反応され得る。ある実施形態において、触媒は、アルミニウム金属、アルミニウムのホウ酸塩、及びアルミニウムの炭酸塩からなる群から選択され得る。
【0011】
[0011] ある実施形態において、触媒は、原料中の粗無水マレイン酸又は同等物に対して、約50mg/L~約500mg/Lの範囲の濃度を有し得る。
【0012】
[0012] ある実施形態において、触媒粒子のサイズは、約10ミクロン~約800ミクロンの範囲であり得る。
【0013】
[0013] ある実施形態において、原料対触媒の比率は、約1:0.00005~約1:0.0005の範囲であり得る。
【0014】
[0014] ある実施形態において、本明細書に開示される方法は、ブタン、ベンゼン、o-キシレン、ナフタレン、及びそれらの組合せからなる群から選択される原材料(raw material)を得ることを含む。ある実施形態において、原材料は、第1の中間生成物を得るように処理され得る。
【0015】
[0015] ある実施形態において、粗無水マレイン酸をガスストリッピングすることは、減圧下で、窒素を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、不純物を実質的に除去すること;又は空気を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、不純物を実質的に除去することのうちの1つを含み得る。ある実施形態において、空気を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、不純物を実質的に除去する工程は、カラム中で行われ得る。他の実施形態において、粗無水マレイン酸をガスストリッピングすることは、減圧下で、二酸化炭素を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、不純物を実質的に除去することを含み得る。ある実施形態において、空気の流量は、約0.5Nm/h~約20Nm/h、又は0.5Nm/h~約10Nm/h又は1Nm/h~5Nm/h、例えば、3Nm/hであり得る。ある実施形態において、カラムの温度は、約70℃~約100℃、例えば、約75℃~約95℃、又は約90℃であり得る。
【0016】
[0016] ある実施形態において、混合物を結晶化に供することは、混合物を、複数の段階で、約30℃未満、約25℃未満、又は約15℃未満、例えば約10℃の温度に冷却して、マレイン酸の結晶を得ること;及び処理された中間生成物としてマレイン酸の結晶をろ過して取り出すことを含み得る。
【0017】
[0017] ある実施形態において、原料を得ることは、第2の中間生成物を、水、マレイン酸、無水マレイン酸、及びフマル酸のうちの1つ以上と混合することを含み得る。
【0018】
[0018] ある実施形態において、原料に、水和反応を起こさせることは、原料を、約2900~約10000、好ましくは、約5000~約7000のレイノルズ数で、管型反応器中に通すことを含み得る。ある実施形態において、原料は、約1~2時間にわたって約135~195℃の範囲の温度及び約11~15バールの圧力で反応され得る。ある実施形態において、管型反応器は、バッチ、半連続、又は連続モードのうちの1つで操作され得る。
【0019】
[0019] ある実施形態において、バッチモードにおいて、生成物を含む溶液が、反応の完了後に、完全に排出され得る。
【0020】
[0020] ある実施形態において、半連続モードにおいて、生成物を含む溶液の一部が、所定の期間後に除去され得、等量の原料が、管型反応器中に供給され得る。
【0021】
[0021] ある実施形態において、連続モードにおいて、生成物を含む溶液の一部が、連続的に除去され得、同時に、同じ量の原料が、管型反応器中に供給され得る。
【0022】
図面の簡単な説明
[0022] 詳細な説明は、添付の図を参照して説明される。図中、参照番号の最も左の数字は、参照番号が最初に現れる図を識別する。同じ番号は、図面全体を通して、可能な場合、類似の特徴及び構成要素を参照するのに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】[0023]本開示の一実施形態に係るリンゴ酸製造の方法のフローチャートを示す。
図2】[0024]本開示の一実施形態に係るリンゴ酸の製造のための連続式管型反応器システムの概略図である。
図3】[0025]本開示の一実施形態に係るリンゴ酸の製造のための半連続式管型反応器システムの概略図である。
図4】[0026]本開示の一実施形態に係るリンゴ酸の製造のためのバッチ式管型反応器システムの概略図である。
図5】[0027]本開示の一実施形態に係るリンゴ酸の製造のための撹拌槽型反応器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
[0028] 本発明の主題は、触媒を用いた及び用いない、様々な操作モードにおける、様々な原材料又は原料及びそれらの混合物からのリンゴ酸の製造に関する。
【0025】
[0029] 従来、リンゴ酸は、粗無水マレイン酸の蒸留によって得られる純粋な無水マレイン酸を用いて、又は純粋なフマル酸から、商用に製造される。粗無水マレイン酸又は粗フマル酸は、ブタン、ベンゼン、フラン、フルフラールなどの有機化合物の蒸気相酸化/気相酸化によって得られる。反応器の出口から放出される、主に無水マレイン酸のガス状混合物が、凝縮器中で冷却されて、粗無水マレイン酸として知られている固体材料が得られる。この粗無水マレイン酸は、蒸留に供されて、純粋な無水マレイン酸が生成される。凝縮器を出る未凝縮ガスは、水中で取り除かれて、スクラバー溶液と呼ばれる粗マレイン酸が生成される。このマレイン酸スクラバー溶液は、脱水及びo-キシレンとの共沸蒸留、続いて減圧蒸留にさらに供されて、純粋な無水マレイン酸が生成される。次に、純粋な無水マレイン酸は、リンゴ酸の製造に使用される。
【0026】
[0030] しかしながら、無水マレイン酸の精製は、非常にコストがかかり、純粋な形態の無水マレイン酸を使用することは、リンゴ酸製造のコストの大幅な増加につながる。さらに、これは、リンゴ酸の製造に必要な時間も増加させる。純粋な無水マレイン酸の製造はまた、精製中の無水マレイン酸のかなりの損失を伴う。本開示のリンゴ酸の製造方法は、リンゴ酸の従来の製造方法に関連する問題及び欠点を克服するものである。本開示は、統合された製造プロセスにおいて、無水マレイン酸又は無水フタル酸の製造中に形成される、ブタン、ベンゼン、o-キシレン(原材料)、又は任意の他の中間生成物からの、リンゴ酸の製造方法及びフマル酸の同時製造に関する。無水マレイン酸、無水フタル酸、マレイン酸、フマル酸、及び他の同様の化合物の製造中に形成される粗生成物、並びに一般にスクラバー溶液と呼ばれる、水に溶解させることによって回収される未凝縮ベントガスが、原材料として純粋な形態のこれらの生成物を使用することに加えて、使用され得る。一例において、中間生成物の精製のために、当業者に公知の以下のプロセスのいずれか1つ以上に従うことができる:吸着、吸収、噴霧乾燥技術、流下膜式蒸発。本開示のリンゴ酸の製造方法は、原材料の簡単な処理を含み、これにより、原材料又は中間体の精製に従来使用される、より環境に優しくなく、よりコストのかかる脱水及び蒸留工程が不要になる。製造は、連続、半連続、バッチモード、又はそれらの任意の組合せで行われ得る。一実施形態において、使用される反応器は、連続、半連続、又はバッチモードで操作される管型反応器である。本開示の方法は、詰まりを防ぎ、5000~7000の範囲のレイノルズ数で乱流を維持することによって、高い転化率を促進するのに好適な設計の管型反応器中で行われ得る。本開示の方法において、管型反応器中の溶液流における逆混合はない。これは、反応速度を高めて、より速い平衡条件を達成する。その結果、本開示の方法において、平衡を達成するためのコスト、エネルギー及び期間(反応時間)の大幅な減少があり、生産性の向上につながる。ある実施形態において、反応器中の流れは、約2900~約10000、約3000~約9000、約4000~約8000、約5000~約8000、約5000~約7000、約5500~約7000、又は約6500~約7000のレイノルズ数を有し得る。ある実施形態において、レイノルズ数は、例えば、少なくとも2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、又は上記のレイノルズ数のいずれか2つによって画定される範囲内であり得る。
【0027】
[0031] 別の実施形態において、反応器は、撹拌槽型反応器である。反応は、ホウ酸アルミニウム触媒の存在下で行われ、これは、従来の方法と比較して平衡を達成するのに必要な時間を減少させ、ひいては生産性を向上させる。それにもかかわらず、触媒は、本明細書に記載される多くの実施形態において必要でない。
【0028】
[0032] さらに、本方法は、従来の方法において必要とされる純粋な原材料を必要としないため、コストを著しく削減する。本方法はまた、純粋な無水マレイン酸又は純粋なマレイン酸若しくはフマル酸の製造中に処理される流出物の量を減少させる。本方法はまた、反応のための時間を、1~2時間に減少させる。時間の減少は、運転中に消費されるエネルギーを減少させ、ひいては運転コストを削減する。ある実施形態において、不純物は、原材料の0.1%w/w、0.2%w/w、0.3%w/w、0.4%w/w、0.5%w/w、0.6%w/w、0.7%w/w、0.8%w/w、0.9%w/w、1%w/w、又はそれ以上で存在し得る。ある実施形態において、不純物は、酢酸、アクリル酸、又はそれらの組合せであり得る。
【0029】
[0033] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0030】
[0034] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)管型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0031】
[0035] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0032】
[0036] 別の実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)ブタン、ベンゼン、o-キシレン、ナフタレン、及びそれらの組合せからなる群から選択される原材料を得ること;(b)原材料を処理して、第1の中間生成物を得ること;(c)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、粗無水マレイン酸をガスストリッピングすることによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(d)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(e)管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0033】
[0037] さらに別の実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)ブタン、ベンゼン、o-キシレン、ナフタレン、及びそれらの組合せからなる群から選択される原材料を得ること;(b)原材料を処理して、第1の中間生成物を得ること;(c)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(d)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(e)管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0034】
[0038] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)ブタン、ベンゼン、o-キシレン、ナフタレン、及びそれらの組合せからなる群から選択される原材料を得ること;(b)原材料を処理して、第1の中間生成物を得ること;(c)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、粗無水マレイン酸をガスストリッピングすることによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(d)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(e)管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0035】
[0039] さらに別の実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすることが、減圧下で、窒素を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、不純物を実質的に除去すること;又は空気を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、不純物を実質的に除去することを含み、又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。空気を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、不純物を実質的に除去することは、カラム中で行われ得、ここで、空気の流量は、約0.5Nm/h~約20Nm/h、好ましくは、約0.5Nm/h~約10Nm/hである。カラムの温度は、約70℃~約100℃、例えば、約75℃~約95℃、又は約90℃であり得る。他の実施形態において、粗無水マレイン酸をガスストリッピングすることは、減圧下で、二酸化炭素を、加熱された粗無水マレイン酸に通過させて、不純物を実質的に除去することを含み得る。
【0036】
[0040] さらなる実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することが、混合物を、複数の段階で、約15℃未満の温度に冷却して、マレイン酸の結晶を得ること;及び処理された中間生成物としてマレイン酸の結晶をろ過して取り出すことを含むことによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;並びに処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。別の実施形態において、混合物は、複数の段階で、約10℃未満の温度に冷却されて、マレイン酸の結晶が得られ得る。
【0037】
[0041] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ることが、第2の中間生成物を、水、マレイン酸、無水マレイン酸、及びフマル酸のうちの1つ以上と混合することを含み;並びに(c)管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0038】
[0042] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)約2900~約10000のレイノルズ数で、管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0039】
[0043] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)約5000~約7000のレイノルズ数で、管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0040】
[0044] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)約2900~約10000のレイノルズ数で、触媒の存在下で、管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0041】
[0045] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)約2900~約10000のレイノルズ数で、アルミニウム金属、アルミニウムのホウ酸塩、及びアルミニウムの炭酸塩からなる群から選択される触媒の存在下で、管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0042】
[0046] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)約2900~約10000のレイノルズ数で、アルミニウム金属、アルミニウムのホウ酸塩、及びアルミニウムの炭酸塩からなる群から選択される触媒の存在下で、管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含み、ここで、触媒が、原料中の粗無水マレイン酸又は同等物に対して、約50mg/L~約500mg/Lの範囲の濃度を有する、方法を含む。
【0043】
[0047] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)触媒の存在下で、管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含み、ここで、触媒粒子の平均直径が、約10ミクロン~約800ミクロンの範囲である、方法を含む。
【0044】
[0048] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)触媒の存在下で、管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含み、原料対触媒の比率が、約1:0.00005~約1:0.0005の範囲である、方法を含む。
【0045】
[0049] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)管型反応器又は連続撹拌槽型反応器中で、約1~2時間にわたって、約135~195℃の範囲の温度及び約11~15バールの圧力で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含む方法を含む。
【0046】
[0050] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)管型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含み、ここで、管型反応器が、バッチ、半連続、又は連続モードのうちの1つで操作される、方法を含む。
【0047】
[0051] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)管型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含み、ここで、管型反応器が、バッチモードで操作され、ここで、生成物を含む溶液が、反応の完了後に、完全に排出される、方法を含む。
【0048】
[0052] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)管型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含み、ここで、管型反応器が、半連続モードで操作され、ここで、生成物を含む溶液の一部が、所定の期間後に除去され、等量の原料が、管型反応器中に供給される、方法を含む。
【0049】
[0053] 一実施形態において、本発明の主題は、リンゴ酸の製造方法であって、(a)第1の中間生成物を処理して、第2の中間生成物を形成することであって、第1の中間生成物が、粗無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液、及びそれらの組合せからなる群から選択され、処理が、(i)粗無水マレイン酸をガスストリッピングすること;又は(ii)粗マレイン酸、粗フマル酸、及び無水フタル酸製造プロセス又は無水マレイン酸製造プロセスから得られるベントガススクラバー溶液のうちの1つ以上を含む混合物を、結晶化に供することによって、第1の中間生成物から不純物を実質的に除去して、処理された中間生成物を得ること;及び処理された中間生成物の水溶液を、炭素カラムに通過させて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物を形成することを含む、こと;(b)第2の中間生成物を含む原料を得ること;並びに(c)管型反応器中で、原料に、水和反応を起こさせて、リンゴ酸を生成することを含み、ここで、管型反応器が、連続モードで操作され、生成物を含む溶液の一部が、連続的に除去され、同時に、同じ量の原料が、管型反応器中に供給される、方法を含む。
【0050】
[0054] 本開示の態様は、添付の図とともにさらに説明される。本明細書及び図は、本発明の主題の原理を例示するものに過ぎないことに留意されたい。したがって、本発明の主題の原理を実現する様々な構成は、本明細書に明示的に記載又は示されていないが、本明細書から考えられ、その範囲内に含まれることが、理解されるであろう。
【0051】
[0055] 図1は、本発明の主題の一実施形態に係るリンゴ酸製造の方法のフローチャートを示す。図1の110は、原材料であり;図1の116、118、132a、及び132bは、第1の中間生成物であり;図1の122、126、及び138aは、処理された中間生成物であり、図1の138bは、本発明の主題の第2の中間生成物である。一実施形態において、出発原材料110は、ブタン又はベンゼンである。別の実施形態において、出発原材料110は、o-キシレン又はナフタレンである。一実施形態において、ブタン又はベンゼンは、蒸気相中で触媒と反応されて、無水マレイン酸ガス114が生成される。無水マレイン酸ガス114は、凝縮されて、粗無水マレイン酸116が生成される。粗無水マレイン酸116(第1の中間生成物)は、様々な方法で処理されて、純粋な無水マレイン酸122(処理された中間生成物)、又は純粋なマレイン酸若しくは純粋なマレイン酸及び純粋なフマル酸の混合物126(処理された中間生成物)が形成され得る。粗無水マレイン酸116は、加水分解すると、粗マレイン酸118を生成し得る。粗マレイン酸118は、異性化することができ、したがって、118は、マレイン酸及びその異性体であるフマル酸の混合物であり得る。粗マレイン酸又は粗マレイン酸及びフマル酸の混合物118は、従来のプロセスによって、精製されて、純粋なマレイン酸又は純粋なマレイン酸及び純粋なフマル酸の混合物126が形成され得る。粗無水マレイン酸116はまた、従来のプロセスによって、精製されて、純粋な無水マレイン酸122が形成され得る。従来のプロセスを用いて、純粋な無水マレイン酸122又は純粋なマレイン酸若しくは純粋なマレイン酸及び純粋なフマル酸の混合物126(処理された中間生成物)を得ることができるが、粗無水マレイン酸116及び粗マレイン酸118の好ましい処理はそれぞれ、ガスストリッピング136及び結晶化134、続いて、残存不純物を実質的に除去して、第2の中間生成物138bを形成するための、炭素カラム中での炭素処理138である。粗無水マレイン酸116とともに、未凝縮ベントガスが生成される。未凝縮ベントガスは、スクラバーに通されて、本明細書においてベントガススクラバー溶液132aと呼ばれる溶液が形成される。ベントガススクラバー溶液132aは、無水マレイン酸、マレイン酸、任意の未反応原材料110、及び任意の他の不純物を含む。
【0052】
[0056] 別の実施形態において、原材料110は、o-キシレン又はナフタレンである。原材料は、反応されて、無水フタル酸128が生成される。凝縮されていない生成ガスは、水に通されて、一般に、任意の未反応原材料110、無水フタル酸128、及び任意の他の不純物を含む別のベントガススクラバー溶液132bが形成される。
【0053】
[0057] 一実施形態において、粗無水マレイン酸116は、反応前に簡単な処理に供され得る。無水マレイン酸116は、ガスストリッピング136、及び次に、炭素カラム中での炭素処理138に供されて、不純物が除去され得る。ガスストリッピング136は、窒素又は空気又は二酸化炭素のいずれかの中で、減圧下で又は減圧なしで行われ得る。一例において、粗無水マレイン酸116は、加熱され、窒素がバブリングされる。温度は、80~85℃に維持され得る。次に、酢酸及びアクリル酸などの不純物が除去されるのを可能にする、減圧が加えられる。除去は、約5時間にわたって行われ得る。別の実施形態において、ガスストリッピング136は、約5時間にわたって約90℃の温度で、空気を用いて行われ得る。別の例において、粗無水マレイン酸116は、加熱され、二酸化炭素がバブリングされる。温度は、80~85℃に維持され得る。次に、酢酸及びアクリル酸などの不純物が除去されるのを可能にする、減圧が加えられる。除去は、約5時間にわたって行われ得る。別の実施形態において、ガスストリッピング136は、約5時間にわたって約90℃の温度で、空気を用いて行われ得る。
【0054】
[0058] 処理された粗無水マレイン酸116は、脱塩水に溶解され、炭素処理138に供され得る。炭素処理138は、溶解された無水マレイン酸116を、炭素カラムに通過させて、色原体などの、色を与える有機不純物を除去することによって行われ得る。
【0055】
[0059] 別の実施形態において、粗マレイン酸又は粗フマル酸118及びベントガススクラバー溶液132a及び132bは、制御された結晶化134に供されて、不純物が除去され得る。粗マレイン酸又はフマル酸118及びベントガススクラバー溶液132a及び132bは、ゆっくりと冷却されて、結晶が得られる。冷却剤、例えば、5~10℃の冷水又は冷却水が、冷却に使用され得る。溶液の温度は、例えば、60分間にわたって25℃から20℃に注意深く低下され、さらに60分間にわたって維持され得る。次に、温度は、90分間の期間にわたって15℃に、次に、120分間の期間にわたって10℃に低下され得、温度は、さらに約120分間にわたってその温度に保持される。このように得られるマレイン酸結晶は、ろ過され、乾燥され、水に溶解され、炭素処理138に供されて、不純物がさらに除去され得る。得られるマレイン酸は、100ppm未満の、それぞれの不純物を含有し得る。結晶化又はストリッピング及び次に炭素処理のこの簡単な処理は、エネルギー及び労働集約度がより低いため、広く従われている、脱水及び蒸留などの従来の精製技術と比較してコストが低い。
【0056】
[0060] リンゴ酸の製造のための原料140は、粗無水マレイン酸、純粋な無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、純粋なマレイン酸、純粋なフマル酸;ブタン、ベンゼンなどの有機化合物からの無水マレイン酸の製造からのベントガススクラバー溶液;o-キシレン又はナフタレンなどの有機化合物からの無水フタル酸の製造からのベントガススクラバー溶液、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。水が、必要に応じて、上述される原材料に加えられて、反応器に通すためのスラリー又は溶液が形成され得る。粗フマル酸は、無水フタル酸製造の副産物としての無水マレイン酸、マレイン酸のいずれかから、又は当該技術分野において公知のバイオテクノロジー経路によって得られる。
【0057】
[0061] 一実施形態において、原料142は、触媒の非存在下で反応を起こす。別の実施形態において、原料144は、触媒の存在下で反応を起こす。原料140は、135~195℃の温度範囲及び好適な圧力で、反応を起こして、リンゴ酸及びフマル酸の混合物を生成する。反応は、触媒の存在下で又は触媒なしで行われ得る。触媒は、触媒の使用が反応器槽の内面の腐食を引き起こさないように、微粉化形態のアルミニウム金属又はそのホウ酸塩若しくは炭酸塩から選択され、したがって、触媒プロセスが腐食を伴わないことを確実にする。ある特定の実施形態において、触媒は、ホウ酸アルミニウムである。代替的なホウ酸アルミニウム溶液の使用は、ホウ酸の形成をもたらす。ホウ酸は弱酸であるため、それは、反応器を腐食させない。さらに、触媒としてホウ酸アルミニウムを使用することは、任意の他の触媒と比較して、反応平衡のより速い達成をもたらす。
【0058】
[0062] 反応において使用されるときの触媒の存在及び濃度は、処理時間、平衡を達成するための反応速度、及び使用される触媒の除去のための追加の精製工程の必要性に影響を与える。しかしながら、触媒プロセスにおいて、微粉化形態のアルミニウム金属又はホウ酸アルミニウム又は炭酸アルミニウムの濃度は、原料中の粗無水マレイン酸溶液に対して、50~500mg/Lの範囲である。ある実施形態において、触媒の濃度は、原料中の粗無水マレイン酸溶液に対して、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500mg/L、又は上記の濃度のいずれか2つによって画定される範囲内であり得る。例えば、触媒の濃度は、原料中の粗無水マレイン酸溶液に対して、50~100mg/L、60~100mg/L、70~100mg/L、50~500mg/L、100~200mg/L、300~500mg/L、又は50~200mg/Lであり得る。
【0059】
[0063] 粉末又は顆粒形態の微粉化されたアルミニウム金属又はそのホウ酸塩若しくは炭酸塩は、10ミクロン~800ミクロンの範囲の粒径を有する。ある実施形態において、触媒の粒径は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、650、700、750、800ミクロン又は上記の粒径のいずれか2つによって画定される範囲内であり得る。例えば、ある実施形態において、触媒の粒径は、約10~50ミクロン、10~100ミクロン、10~200ミクロン、50~200ミクロン、100~500ミクロン、100~300ミクロン、300~800ミクロン、又は150~300ミクロンであり得る。
【0060】
[0064] 好ましくは、使用される触媒は、粉末又は顆粒形態のアルミニウム金属である。原料溶液140中で可溶化されたアルミニウム金属又はそのホウ酸塩若しくは炭酸塩は、平衡に達するために反応の速度を著しく上昇させる。一例において、触媒としてホウ酸アルミニウムを使用した場合、反応は、任意の他の触媒を使用した場合より速く平衡に達する。一実施形態において、粗マレイン酸対触媒の質量比は、得られる溶液中で1:0.0001である。ある実施形態において、粗マレイン酸対触媒の質量比は、1:0.00005、1:0.0001、1:0.0002、1:0.0003、1:0.0004、1:0.0005又は上記の比率のいずれか2つによって画定される範囲内であり得る。例えば、粗マレイン酸対触媒の比率は、1:0.00005~1:0.0001、1:0.0001~1:0.0002、1:0.0002~1:0.0003、1:0.0003~1:0004、1:0004~1:0005、1:0.0001~1:0.0005であり得る。
【0061】
[0065] 原料140は、反応器150中で反応され得る。反応器150は、連続モード、半連続モード、バッチモード、又はそれらの任意の組合せのいずれかで動作するように構成され得る管型反応器152であり得る。
【0062】
[0066] 原料溶液からのリンゴ酸の製造に使用される管型反応器152は、好適には、詰まりを防ぎ、高速の転化を促進するように設計され、高圧循環ポンプとともに、チタン、タンタル、Hastelloy、アルミニウム-青銅又はジルコニウムを含むがこれらに限定されない好適な構成材料で作製される。管型反応器152の供給端が、このポンプに連結され、他方の端部が、バイパス弁により、圧力下で、連続循環のためのポンプの吸引部に戻るように連結される。或いは、フラッシュタンク又はドレンタンク中への、全て又は一部の材料の除去のために、管型反応器152の後、導管中にバイパスがある。このフラッシュタンクはまた、循環ポンプ吸引部に連結して戻され得る。一定の数のバッチのために高温での原料混合物又は溶液の循環、次に、流れを完全に排出するか又は部分的に排出し、除去することによって、必要に応じて柔軟な比率でのリンゴ酸及びフマル酸の製造のための半連続若しくは連続又はバッチプロセスが達成される。
【0063】
[0067] 管型反応器は、ループ型反応器、チューブの管状、又は球状構成などのチューブの構成を有することができ、これにより、反応速度を高め、その結果、処理時間を減少させて、化学量論的収率でリンゴ酸の製造を達成することができる。管型反応器中の一連のチューブは、そのように構成され、相互に連結され、約1.5m/sの流速度を提供するように捩れ部及び旋回部を設けられ、これは、減少した処理時間で最終的な平衡まで原料材料のほぼ完全な転化をもたらす。ある実施形態において、管型反応器における流速度は、約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2.0m/sであり得る。
【0064】
[0068] ある実施形態において、反応器中の溶液は、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃、若しくはそれ以上、又は上記の温度のいずれか2つによって画定される範囲内に加熱され得る。例えば、ある実施形態において、反応器中の溶液は、135~195℃、145~195℃、135~150℃、135~180℃、150~195℃、又は145~185℃に加熱され得る。
【0065】
[0069] ある実施形態において、反応器中の溶液は、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14.0、14.5、15.0、若しくはそれ以上、又は上記の圧力のいずれか2つによって画定される範囲内で加圧され得る。例えば、ある実施形態において、反応器中の溶液は、5~15バール、5~10バール、10~15バール、11~15バール、又は12~15バールから加圧され得る。
【0066】
[0070] ある実施形態において、反応器中の溶液は、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、1時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、若しくはそれ以上、又は上記の時間のいずれか2つによって画定される範囲内の時間にわたって、熱及び/又は圧力に供され得る。例えば、ある実施形態において、反応器中の溶液は、30分間~2時間、1~2時間、1.5~2時間、又は1~3時間にわたって、熱及び/又は圧力に供され得る。
【0067】
[0071] 一実施形態において、粗原料溶液は、高速で管型反応器アセンブリに圧送される。溶液は、反応器中で連続的に循環される。この溶液は、約1~2時間にわたって、11~15バールの圧力で、135~195℃の温度に加熱される。別の実施形態において、プロセスが、触媒の存在下で行われる場合、アルミニウム金属又はそのホウ酸塩若しくは炭酸塩溶液が、管型反応器への圧送の前に、粗原料溶液に加えられ、粗原料溶液対触媒の質量比が、得られる溶液中で1:0.0001(100ppmの触媒)であるようになっている。
【0068】
[0072] ある実施形態において、リンゴ酸製造方法は、バッチプロセス、半連続プロセス、又は連続プロセスのうちのいずれか1つで行われ得る。バッチプロセスにおいて、上記の操作の後、溶液は、回収タンク中に完全に排出され、さらなる処理のために取られる。半連続プロセスにおいて、上記の操作の後、溶液の一部が、一定期間の後に排出され、触媒を含有する等量の原料溶液が、チューブ中に供給され、再循環され、再度、一定期間の後、別の一定量が排出され、プロセスが繰り返される。連続プロセスにおいて、上記の操作の後、ごく少量の溶液が、フラッシュタンク中に、連続して排出され、同時に、触媒を含有する同じ量の原料溶液が、チューブ中に供給される。
【0069】
[0073] 得られる反応生成物は、フマル酸及びリンゴ酸の混合物である。2つの酸が、ろ過又は他の従来の手段によって、混合物から分離される。揮発性不純物並びに粗無水マレイン酸116及びスクラバー溶液132aに由来する色を生じる化合物が、従来の精製プロセスによって除去される。リンゴ酸を含有する母液が、濃縮されて、リンゴ酸が回収され、これがさらに精製される。得られるリンゴ酸の精製は、イオン交換体、粉末形態の活性炭の使用、又はリンゴ酸を、一連の炭素カラムに通過させることを含むがこれらに限定されない様々な手段によって行われ得る。
【0070】
[0074] ホウ酸アルミニウムが触媒として使用されるときに形成されるホウ酸は、当該技術分野において公知のプロセスによって混合物から除去される。
【0071】
[0075] 本開示の方法は、詰まりを防ぎ、5000~7000の範囲のレイノルズ数で乱流を維持することによって、高い転化率を促進するのに好適な設計の管型反応器中で行われる。管型反応器中の乱流が、溶液流量に影響を与える以下のパラメータ:反応器の直径(サイズ)及び速度の最適な選択によって、達成され、維持される。本開示の方法において、管型反応器中の溶液流における逆混合はない。これは、反応速度を高めて、より速い平衡条件を達成する。その結果、本開示の方法において、コスト、エネルギーの大幅な減少、及び平衡を達成するための期間(反応時間)の減少があり、生産性の向上をもたらす。
【0072】
[0076] 一例において、管型反応器152中に乱流がある場合、流量及び反応器の寸法を用いて公知の方法で計算されるレイノルズ数は、6700である。別の例において、管型反応器152中に乱流がない場合、レイノルズ数は、2400であると計算される。本開示の方法において、管型反応器中の溶液流における逆混合はない。これは、反応速度を高めて、より速い平衡条件を達成する。その結果、本開示の方法において、コスト、エネルギー、及び平衡を達成するための期間(反応時間)の大幅な減少があり、生産性の向上をもたらす。
【0073】
[0077] 別の実施形態において、反応は、撹拌槽型反応器156において、原料146中のホウ酸アルミニウム触媒の存在下で行われる。前述される原料組成のいずれも、使用することができる。例えば、撹拌槽型反応器156中でのリンゴ酸の製造のための原料146は、粗無水マレイン酸、純粋な無水マレイン酸、粗マレイン酸、粗フマル酸、純粋なマレイン酸、純粋なフマル酸;ブタン、ベンゼンからの無水マレイン酸の製造からのベントガススクラバー溶液;o-キシレン又はナフタレンからの無水フタル酸の製造からのベントガススクラバー溶液、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。触媒の使用により、従来の方法と比較して、反応時間を最大で3倍減少させることができる。これは、操作プロセスの効率を高め、コストを削減し、生産性を向上させる。
【0074】
[0078] 図2は、本発明の主題の一実施形態に係るリンゴ酸の製造のための連続式管型反応器システムの概略図である。反応器システムは、管型反応器210を含む。原料タンク220からの原料は、循環ポンプ230を介して管型反応器210に供給される。リンゴ酸の形成のための反応は、管型反応器210中で起こる。管型反応器210は、原料が平衡を達成するために反応の十分な滞留時間を有し、原料が管型反応器210を通って再循環して戻されないように、設計される。反応生成物を含む溶液-スラリーは、フラッシュタンク240中に排出され、フラッシュタンク240からの生成物250が、精製などのさらなる処理に送られ得る。
【0075】
[0079] 図3は、本発明の主題の一実施形態に係るリンゴ酸の製造のための半連続式管型反応器システムの概略図である。原料タンク220からの原料が、循環ポンプ230を介して管型反応器210中に供給される。処理中、生成物流の一部が、フラッシュタンク240中に排出され、一部が、循環ポンプ230を介して管型反応器210へと再循環されて戻り、半連続プロセスを形成する。生成物流の一部の再循環は、生成物250への所望の転化が達成されるまで、数回行われ得る。
【0076】
[0080] 別の実施形態において、反応器システムは、いくつかのこのような管型反応器サブシステムを含み、各システムは、ポンプ、フラッシュタンク及び再循環導管を含み、各サブシステムが直列に接続され、各サブシステムの転化の段階的増加をもたらし、最終的に、全体的な滞留-転化時間が、最終的な平衡転化まで確保されたら、システム全体から得られる最終的な流出物が、さらなる分離及び精製プロセスを行うために排出される。
【0077】
[0081] 図4は、本発明の主題の一実施形態に係るリンゴ酸の製造のためのバッチ式管型反応器システムの概略図である。管型反応器210は、閉じた循環システムの一部であり、ここで、原料は、反応剤のほぼ完全な転化が得られるまで、十分なサイクル数にわたって循環される。反応の完了後、プロセスは停止され、生成物250が、さらなる分離及び精製を行うために排出される。
【0078】
[0082] 図5は、本発明の主題の一実施形態に係るリンゴ酸の製造のための撹拌槽型反応器の概略図である。反応器システムは、撹拌器520を含むタンク510を含む。原料が、原料入口530を介してタンク510に加えられ、蒸気が、蒸気入口540を介してタンク510中に供給される。原料は、所望の期間にわたって、撹拌器520によってタンク510中で連続して撹拌されて、反応剤の、生成物へのほぼ完全な転化を確実にする。生成物は、出口550を介して除去され、何らかの凝縮物が、凝縮物出口560を介して除去され、ガスが、蒸気出口570を介して除去される。原料は、前述される原材料のいずれか、又はそれらの任意の組合せであり得る。反応は、ホウ酸アルミニウム触媒の存在下で行われる。触媒の存在は、従来の方法と比較して、反応時間を約3倍減少させ、ひいては生産性を向上させる。
【実施例
【0079】
実施例
[0083] ここで、本開示は、実施例を例示し、実施例は、本開示の実施を例示することが意図され、本開示の範囲に限定を課すよう制限的に解釈されることは意図されていない。特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料が、開示される方法及び組成物の実施において使用され得るが、例示的な方法、デバイス及び材料が、本明細書に記載される。特定の方法、及び記載される実験条件が適用され得る際、本開示は、このような方法及び条件に限定されないことが理解されるべきである。
【0080】
[0084] 実施例は、原料1、2、及び3を示す。しかしながら、それらの任意の組合せも使用され得る。
【0081】
モード1 A:触媒を用いた、管型バッチ、半連続及び連続プロセス
触媒としてホウ酸アルミニウムを使用する。
【0082】
[0085] 実験の詳細:
マレイン酸溶液:17リットル(又は)フマル酸溶液:17リットル
水中のマレイン酸溶液の濃度:45%w/v
反応温度:185℃
反応器圧力:12バール。
【0083】
[0086] 原料の詳細:
3つの異なる原料組成が、以下の表1に示される。
【0084】
【表1】
【0085】
これらの実験における原料は、以下のもののいずれか1つとして定義され得る:
1. マレイン酸の量が7.65kgであるように、6.46kgの無水マレイン酸を、13.12リットルの脱塩水に溶解させる。
2. 7.65kgの純粋なフマル酸。
3. 混合物の量が7.65kgのマレイン酸に相当するような、任意の割合又は組合せの品目1及び2の混合物。
【0086】
実験手順:
[0087] 原料を、原料タンク中で、13.12リットルの脱塩水に溶解させた。この槽に、アルミニウム系触媒を加え、最終的な溶液が、取られる原料に対して100mg/L(ppm)のホウ酸アルミニウム又はアルミニウム粉末触媒を含有するように十分に撹拌した。原材料対触媒の比率は、1:0.0001であった。必要であれば、触媒を溶解させるために、いくらかの加熱を与えた。溶液を、管型反応器中に充填し、十分に循環させた。
【0087】
[0088] 反応器中の溶液の温度を、135~195℃に徐々に上昇させ、反応器中の圧力が、約12バールに達した。溶液を、反応の完了のために反応器中で連続して循環させる場合、この条件を維持した。
【0088】
[0089] バッチプロセスの場合、反応の完了後、加熱を停止した。反応器システムを、蒸気の制御排出によって、注意深く減圧した。反応器の温度が約80~90℃に達した際、反応器槽からの全液体スラリー質量を、別個の槽中に完全に排出した。溶液を周囲温度に冷却した。
【0089】
[0090] フマル酸を分離し、溶液中のリンゴ酸、いくらかのフマル酸及び少ないパーセンテージの未反応マレイン酸を含有する母液を、分離及び精製のさらなる段階のために取った。
【0090】
[0091] 半連続プロセスにおいて、反応の完了後、1000mLの溶液を、フラッシュタンク中に排出し、反応器圧力を、約10バールに低下させ、同じ量の原料マレイン酸溶液を、チタンチューブアセンブリ中に供給し、反応を、さらに20分間にわたって行い、次に、1000mLの溶液を、フラッシュタンク中に排出した。このプロセスを、半連続プロセスと呼ばれるように、数時間にわたって続けた。反応器槽からの全液体スラリー質量を、別個の槽中に完全に排出した。溶液を、周囲温度に冷却した。この後、このプロセスは、バッチプロセスと同じ工程に従った。
【0091】
[0092] 連続プロセスにおいて、反応持続時間の完了後、反応器中の溶液を、50mL/分の速度でフラッシュタンク中に排出した。同時に、等量の原料マレイン酸溶液を、チタンチューブ中に供給した。このプロセスを、数時間にわたって続け、反応器槽からの全液体スラリー質量を、別個の槽中に完全に排出した。次に、溶液を周囲温度に冷却した。この後、このプロセスは、バッチプロセスと同じ工程に従った。
【0092】
[0093] 同じ実験を、ホウ酸アルミニウムの代わりに水酸化アルミニウム及び炭酸アルミニウム触媒を用いて行った。これらの実験の結果が、表2に示される。
【0093】
モード1 B:触媒を用いない、管型バッチ、半連続及び連続プロセス
[0094] 同じプロセスを、3つ全ての操作モード:管型バッチ、管型半連続及び管型連続において触媒を使用せずに行った。
【0094】
乱流レジーム
[0095] 平衡を達成するのにかかる時間は、達成される乱流に左右され、以下に示されるのは、乱流によって特徴付けられる操作の2つのレジームである:
1)乱流を用いた場合、レイノルズ数は6,700である(公知の方法によって計算される)。
2)乱流を用いない場合、レイノルズ数は2,400である(公知の方法によって計算される)。
【0095】
モード2 A:触媒を用いた、撹拌槽型反応器-バッチプロセス
触媒としてホウ酸アルミニウムを使用する。
【0096】
[0096] 実験の詳細
マレイン酸溶液:50リットル(又は)フマル酸溶液:50リットル
水中のマレイン酸溶液の濃度:45%w/v
触媒(ホウ酸アルミニウム)-マレイン酸(100ppm)に対して100mg/リットル
反応温度:185℃
反応器圧力:12バール。
反応持続時間:120分間
原料組成は、管型反応器プロセスにおいて使用されるものと同じである。
【0097】
[0097] 原料の詳細:
これらの実験において使用される原料は、以下のもののいずれか1つとして定義される:
1. マレイン酸の量が25kgであるように、21.12kgの無水マレイン酸を、43リットルの脱塩水に溶解させた。
2. 25kgのフマル酸。
3. 混合物の量が25kgのマレイン酸に相当するような、任意の割合又は組合せの品目1及び2の混合物。
4. 触媒濃度:100ppmのアルミニウム系触媒。
【0098】
実験手順:
[0098] 21.12kgの無水マレイン酸(又は25kgのフマル酸)を、別個の槽中で、43リットルの脱塩水に溶解させた。これに、純粋なホウ酸アルミニウムを加え、最終的な溶液がマレイン酸の量に対して100mg/リットルのホウ酸アルミニウム(すなわち、重量基準で1:0.0001の比率のマレイン酸:ホウ酸アルミニウム)を含むように十分に撹拌した。必要であれば、ホウ酸アルミニウムを溶解させるために、いくらかの加熱を与えた。この溶液を、撹拌槽型反応器中に充填し、十分に撹拌した。閉じられた反応器中の溶液の温度を、135~195℃にゆっくりと上昇させ、反応器中の圧力は、撹拌を続けながら、約12バールに上昇した。溶液が反応の完了のために反応器中にある際、この条件が維持される。反応の完了後、加熱を停止した。反応器を、蒸気の制御排出によって注意深く減圧した。冷却水循環を、反応器のジャケットを介して与えて、溶液の温度を、80~90℃に低下させてもよい。反応器槽からの全液体スラリー質量を、別個の槽中に完全に排出した。溶液を、約6~8時間にわたってその温度から周囲温度に冷却した。以後、プロセスは、上に説明される他の管型反応器プロセスと同じ工程に従う。
【0099】
[0099] 同じ実験を、ホウ酸アルミニウムの代わりに水酸化アルミニウム及び炭酸アルミニウム触媒を用いて行った。結果が表2に示される。
【0100】
モード2 B:撹拌槽型反応器バッチプロセス-触媒を用いない
[00100] 上記と同じ実験を、触媒を用いずに撹拌槽型反応器中で行った。結果が、統合された表(表2)に含まれる。
【0101】
[00101] 以下に示されるのは、異なる原料組成、操作モード、乱流、及び触媒の有無及びこれらのパラメータの様々な組合せについて平衡を達成するのにかかる時間(反応持続時間)を含む統合された表(表2)である。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
[00102] 表2に示されるように、乱流単独、触媒単独、又は乱流及び触媒の組合せの使用は、管型反応器中で、バッチ、半連続、又は連続モードにおいて、平衡を達成するのに必要な反応時間を減少させた。乱流とともに、触媒としてのホウ酸アルミニウムの使用は、平衡を達成するのに必要な最も少ない時間を示す。撹拌槽型反応器については、触媒としてホウ酸アルミニウムを使用することは、触媒を使用しない場合又は触媒として水酸化アルミニウムを使用する場合と比較して、平衡を達成するための最も少ない反応時間を示した。
【0105】
[00103] 全てのこれらのプロセスにおけるリンゴ酸、フマル酸及び未反応マレイン酸の正確な量を、得られた量から測定し、化学量論的転化率を計算した。
【0106】
[00104] 上述される全てのこれらのプロセスから得られる原料の化学量論的転化率(表3)が、以下の表に示される。これらは、反応前の全酸量が、100%のマレイン酸又は100%のフマル酸又はマレイン酸として表される100%のリンゴ酸であると仮定すると、任意のバッチプロセスにおいて得られるものとほぼ同じである。
【0107】
【表4】
【0108】
[00105] したがって、表3に示されるように、原料の化学量論的転化率は、任意の他のバッチプロセスと同等である。しかしながら、平衡を達成するのに必要な時間は、前に説明されるように、著しく減少され、したがって生産性を向上させた。
【0109】
実施例:マレイン酸及びベントガススクラバー処理
[00106] 処理プロセスは、粗マレイン酸又はフマル酸118又はガス状無水マレイン酸の部分的凝縮後の無水マレイン酸の製造からのベントガススクラバー溶液132a、又はガス状無水フタル酸の凝縮及び分離132b後の無水フタル酸の製造からのベントガススクラバー溶液132bのいずれか又は全てについて行われ得る。約46%w/vのマレイン酸、約0.7%の酢酸及び約0.4%のアクリル酸を含有する1リットルのマレイン酸スクラバー溶液を、ガラス製ビーカー中に取った。このビーカーは、撹拌器を備えており、速度を、25rpmに維持した。冷却水又は冷水を、ビーカー中のジャケット付きの構成を介して循環させた。ビーカーの内容物は、室温(約25℃)であった。
【0110】
[00107] 温度を、60分間の期間にわたって徐々に20℃に低下させた。次に、この温度を、さらに60分間にわたって維持した。いくらかの結晶化が観察された。冷却水流を調整することによって、温度を、90分間の期間にわたって15℃にさらに低下させた。同様に、マレイン酸溶液の温度を、2時間の期間にわたって10℃にさらに低下させた。この温度を120分間にわたって維持した。
【0111】
[00108] 結晶化を、このように注意深く制御した。そのように得られるマレイン酸結晶をろ過し、乾燥させ、炭素処理による色除去のためにさらなる処理に供した。母液を再利用した。乾燥ベースのマレイン酸結晶の不純物分析が、表4に示される。
【0112】
【表5】
【0113】
[00109] 表4は、結晶化及び炭素カラムに通した後、粗マレイン酸溶液中の不純物が0.01%未満であることを示す。
【0114】
実施例:粗無水マレイン酸処理
[00110] 1kgの粗無水マレイン酸を、2.0リットルの3つ口丸底フラスコ中に取った。粗無水マレイン酸は、典型的に、不純物として約0.1%の酢酸及び0.1%のアクリル酸を含有していた。フラスコは、撹拌器を備えており、窒素バブリング及び減圧構成(vacuum arrangement)とともに、回転速度を、100に維持した。このフラスコを、加熱マントルによって加熱し、フラスコの温度を、80~85℃の最適な範囲に維持した。温度がこの範囲内になったら、20トルの減圧を、好適な構成及び不活性雰囲気下で生じさせた。温度を、3時間の期間にわたってこれらの条件下で維持した。
【0115】
[00111] 処理された無水マレイン酸の量が表5に示されるとおりになるように、2つの主要な不純物、すなわち酢酸及びアクリル酸を、粗無水マレイン酸からほぼ完全に取り除いた。この無水マレイン酸を、炭素処理による色除去にさらに供した。
【0116】
【表6】
【0117】
[00112] 表5は、無水マレイン酸の処理の後、不純物が、0.01%未満に減少されたことを示す。
【0118】
実施例:粗無水マレイン酸処理
[00113] 約25kgの粗無水マレイン酸を、ジャケット付きの構成を有する35リットル容量のステンレス鋼原料タンク中に取った。低圧蒸気によって加熱を与えた。原料は、典型的に、不純物として約0.1%の酢酸及び0.1%のアクリル酸を含有していた。
【0119】
[00114] 原料タンク排出出口を、約3メートルの高さ及び50mmの直径のステンレス鋼製カラムに連結し、構造的包装材料を充填した。粗無水マレイン酸の調整された流量は、90℃の操作温度で約5kg/hであった。底部からの空気流量は、約3Nm/hであった。カラムの温度を、5時間の連続期間にわたって約90℃に維持した。
【0120】
[00115] 処理は、粗無水マレイン酸中の不純物、すなわち酢酸及びアクリル酸の除去のための空気によるストリッピングの連続向流操作として記載され得る。処理された無水マレイン酸の量が表6に記載のとおりになるように、2つの主要な不純物、すなわち酢酸及びアクリル酸を、粗無水マレイン酸からほぼ完全に取り除いた。
【0121】
【表7】
【0122】
[00116] 処理された粗無水マレイン酸を、脱塩水に溶解させて、粗マレイン酸溶液を作製した。この無水マレイン酸を、炭素処理による色除去にさらに供した。
【0123】
[00117] リンゴ酸の製造のための実施形態が、構造的特徴に特有の用語で記載されているが、特定の特徴及び方法が、権利請求される主題を実施するために実施形態の例として開示されていることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5