(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】口腔内装着器具用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/23 20060101AFI20221202BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221202BHJP
A61Q 11/02 20060101ALI20221202BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
A61K8/23
A61K8/81
A61Q11/02
A61K8/36
(21)【出願番号】P 2020141056
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】阿南 秀人
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-126868(JP,A)
【文献】特開2010-202792(JP,A)
【文献】特開2018-100387(JP,A)
【文献】特開平09-111297(JP,A)
【文献】特開2010-280588(JP,A)
【文献】特開2014-117207(JP,A)
【文献】南野 博美、庭瀬 英明,シャンプー,リンス,せっけんの動向,油化学,41巻9号,日本,公益社団法人 日本油化学会,1992年09月20日,950頁-955頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 6/00- 6/90
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(B):
(A)亜硫酸塩 0.05質量%以上2.5質量%以下
(B)炭素数
14以上20以下の脂肪酸
又はその塩
を含有し
、成分(B)の脂肪酸換算量での含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))が0.5以上100以下であり
、かつ
25℃におけるpHが8.8以上14以下である口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分(A)が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、及び二亜硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、質量平均分子量が2000以上500000以下のアニオン性ポリマー又はコポリマー(D)を含有する請求項1又は2に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項4】
成分(D)の含有量が、0.01質量%以上1質量%以下である請求項3に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項5】
成分(D)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((D)/(A))が、0.05以上50以下である請求項3又は4に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内装着器具用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における超高齢化の進展に伴い、義歯のような着脱可能な口腔内装着器具の装着を余儀なくされる人々が加速的に増加している。このような口腔内装着器具、例えば義歯や歯科矯正器具等は、装着中に付着したデンチャープラークや食物残渣等の汚れが残存しやすい。特に複雑な形状を伴う口腔内装着器具の端部においては、汚れが除去されにくく堅固に付着したまま残存してしまう。また、デンチャープラーク等が残存したまま口腔内装着器具を装着すれば口臭やう蝕、歯周病等を引き起こすおそれもある。
したがって、身体の健康を維持する上でも口腔内装着器具を清潔に保つ必要があり、日々の細やかな洗浄が不可欠となる。
【0003】
こうした口腔内装着器具を有効に洗浄するための種々の組成物が開発されるなか、亜硫酸塩を用いた研究もなされている。例えば、特許文献1には、カチオン性界面活性剤、亜硫酸塩、及び水溶性高分子物質を各々特定量で配合した塗布タイプの義歯洗浄用液状組成物が開示されており、使用時に義歯へ塗布することによって、着色汚れや浸漬液の防腐力を発揮させている。
【0004】
さらに特許文献2には、界面活性剤、亜硫酸塩及び水溶性ポリリン酸塩を特定量かつ特定の質量比で含有する義歯洗浄用液体組成物が開示され、特許文献3には、これら界面活性剤及び亜硫酸塩と、特定のポリリン酸塩及び多価アルコールを含有する義歯洗浄用液体組成物が開示されており、ステイン除去力や保存安定性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-280588号公報
【文献】特開2010-168352号公報
【文献】特開2011-126868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、亜硫酸塩はステイン除去効果に寄与し得る成分ではあるものの、その一方で、水溶液中では容易に酸化されて硫酸塩を生成し、亜硫酸イオン濃度が減少してしまう等の課題がある。そのため、上記特許文献においても、亜硫酸塩の保存安定性向上を図る試みがなされている。
しかしながら、これらの文献に記載の技術であっても、口腔内装着器具用洗浄剤組成物として未だ改善の余地がある。
【0007】
したがって、本発明は、亜硫酸塩の保存安定性を向上させつつ優れたデンチャープラーク除去効果をも発揮することのできる、口腔内装着器具用洗浄剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定量の亜硫酸塩と特定の脂肪酸塩又はその塩とを特定の質量比で含有することにより、亜硫酸塩の保存安定性を向上させながら、デンチャープラーク除去効果も有効に高めることのできる口腔内装着器具用洗浄剤組成物を見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(B):
(A)亜硫酸塩 0.05質量%以上2.5質量%以下
(B)炭素数10以上20以下の脂肪酸塩又はその塩
を含有し、かつ成分(B)の脂肪酸換算量での含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))が0.5以上100以下である口腔内装着器具用洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物によれば、亜硫酸塩の保存安定性を向上させつつ、口腔内装着器具において堅固に付着したデンチャープラークに対し、優れた除去効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「口腔内装着器具」とは、全部床義歯、部分床義歯、歯列矯正器具、リテーナー、或いはマウスピース等(以下、これらを総称して「義歯等」ともいう。)の、いわゆる口腔内にて着脱を要する歯科用装着器具を意味する。具体的には、例えば、全部床義歯(総入れ歯)とは、無歯顎に装着するための義歯であって、人口歯と義歯床から構成されてなる。一方、部分床義歯(部分入れ歯)とは、部分的に歯が失われた顎に装着するための義歯であって、人口歯、義歯床、及びクラスプやレスト、アタッチメント等の支台装置から構成されてなり、歯列矯正器具やリテーナーやマウスピースもこれに類する構成を有する。義歯床の材質としては、一般的にアクリルレジン等の樹脂が挙げられ、人口歯や支台装置の材質は、かかる樹脂のほか、チタン等の金属やセラミック等が挙げられる。
なお、本明細書において、「デンチャープラーク」とは、口腔内装着器具に付着した菌と菌が生産する細胞外物質の集合体を意味する。
【0012】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、次の成分(A)~(B):
(A)亜硫酸塩 0.05質量%以上2.5質量%以下
(B)炭素数10以上20以下の脂肪酸塩又はその塩
を含有し、かつ成分(B)の脂肪酸換算量での含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))が0.5以上100以下である。
すなわち、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、成分(A)の亜硫酸塩を後述する成分(B)とともに特定の質量比で含有する組成物である。これより、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、デンチャープラーク除去効果をも有効に高めることができる。
このような本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物であれば、組成物を適用した後の口腔内装着器具を水等により漱いで洗い流すのみで、特段ブラッシング等の物理的な付加力を施すことなく、口腔内装着器具に堅固に付着したデンチャープラークを簡易的かつ効果的に除去することが可能である。
【0013】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、成分(A)として、亜硫酸塩を0.05質量%以上2.5質量%以下含有する。
かかる成分(A)としては、具体的には、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、及び二亜硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、デンチャープラーク除去に大いに寄与する観点から、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸水素ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、亜硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0014】
成分(A)の含有量は、後述する成分(B)による優れたデンチャープラーク除去効果の発揮を確保する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、0.05質量%以上であって、好ましくは0.075質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、保存安定性の観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、2.5質量%以下であって、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、0.05質量%以上2.5質量%以下であって、好ましくは0.075~1.5質量%であり、より好ましくは0.1~0.5質量%である。
【0015】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、成分(B)として、炭素数10以上20以下の脂肪酸塩又はその塩を含有する。かかる成分(B)を含有することにより、成分(A)の保存安定性を向上させるとともに、口腔内装着器具に堅固に付着したデンチャープラークの凝集構造を崩壊させ、複雑な形状を伴う口腔内装着器具の隅々にわたり、優れたデンチャープラーク除去効果をもたらすことができる。
【0016】
成分(B)の脂肪酸又は脂肪酸塩を構成する脂肪酸は、その炭素数が10以上20以下であって、好ましくは12以上20以下であり、より好ましくは14以上20以下であり、さらに好ましくは16以上20以下である。かかる脂肪酸は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有するものであってよく、不飽和の直鎖を有するものがより好ましい。
【0017】
成分(B)の脂肪酸又は脂肪酸塩を構成する脂肪酸としては、具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、イソステアリン酸、及びアラキジン酸、並びにこれらの混合脂肪酸であるヤシ油脂肪酸、及びパーム油脂肪酸等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、デンチャープラーク除去効果を充分に発揮させる観点から、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸が好ましく、オレイン酸がより好ましい。
成分(B)の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びアンモニウム塩から選ばれる無機塩;モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、及びトリエタノールアンモニウム塩等の有機アミン塩;アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、デンチャープラーク除去効果を充分に発揮させる観点から、ナトリウム塩、又はカリウム塩が好ましく、とりわけカリウム塩が好ましい。
【0018】
成分(B)の含有量は、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、優れたデンチャープラーク除去効果を有効に発揮させる観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、脂肪酸換算量で、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.6質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、脂肪酸換算量で、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、脂肪酸換算量で、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%であり、さらに好ましくは0.6~5質量%である。
【0019】
成分(B)の脂肪酸換算量での含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))は、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、デンチャープラーク除去効果を有効に高める観点から、0.5以上であって、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは4以上である。また、成分(B)の脂肪酸換算量での含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))は、100以下であって、好ましくは50以下であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは10以下である。そして、成分(B)の脂肪酸換算量での含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))は、0.5以上100以下であって、好ましくは1~50であり、より好ましくは2~20であり、さらに好ましくは4~10である。
【0020】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、豊潤な泡量を発現させて、口腔内装着器具の隅々にわたり優れたデンチャープラーク除去効果を発揮させる観点から、さらに成分(B)以外のアニオン界面活性剤(C)を含有するのが好ましい。
かかる成分(C)としては、具体的には、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、パルミチル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、オクチル硫酸塩、カプリル硫酸塩等のアルキル硫酸エステル塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩;アシルグルタミン酸塩、アシルサルコシン塩等のアシルアミノ酸塩;ラウリルメチルタウリン塩等のN-メチル長鎖アシルタウリン塩;アルキルリン酸塩等のアルキルリン酸塩;高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩;ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、豊潤な泡量を発現させて、口腔内装着器具の隅々にわたり優れたデンチャープラーク除去効果を発揮させる観点から、アシルアミノ酸塩、アルキルスルホン酸塩、及びN-メチルアシルタウリン塩から選ばれる1種又は2種以上であるのが好ましく、アシルアミノ酸塩がより好ましい。
【0021】
成分(C)の含有量は、豊潤な泡量を発現させて、口腔内装着器具の隅々にわたり優れたデンチャープラーク除去効果を発揮させる観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、優れたデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.05~5質量%であり、より好ましくは0.15~4量%であり、さらに好ましくは0.5~3質量%である。
【0022】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、デンチャープラーク除去効果も有効に高める観点から、さらに質量平均分子量が2000以上500000以下のアニオン性ホモポリマー又はコポリマー(D)を含有するのが好ましい。アニオン性のホモポリマー又はコポリマーとは、アニオン性モノマー由来の構成単位を含むホモポリマー又はコポリマーである。
なお、成分(D)は、アニオン性モノマー1種のみ由来の構成単位からなるホモポリマーであってもよく、2種以上のアニオン性モノマー由来の構成単位からなるコポリマーであってもよく、或いはアニオン性モノマー由来の構成単位と、アニオン性モノマー以外の他のモノマー由来の構成単位とからなるコポリマーであってもよい。
【0023】
成分(D)の質量平均分子量は、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、デンチャープラーク除去効果を有効に高める観点から、2000以上であって、好ましくは5000以上であり、より好ましくは8000以上であり、さらに好ましくは10000以上である。また、成分(D)の質量平均分子量は、各成分の良好な溶解性又は分散性を確保する観点から、500000以下であって、好ましくは350000以下であり、より好ましくは200000以下であり、さらに好ましくは100000以下である。そして、成分(D)の質量平均分子量は、2000以上500000以下であって、好ましくは5000~350000であり、より好ましくは8000~200000であり、さらに好ましくは10000~100000である。
【0024】
成分(D)が含むアニオン性モノマー由来の構成単位は、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、デンチャープラーク除去効果を有効に高める観点から、カルボキシル基、スルホ基、又はリン酸基を有するアニオン性モノマー(d1)由来の構成単位であると好ましい。成分(D)を構成するモノマー(d1)としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、スルホン酸、スチレンスルホン酸、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸、メタクリルアミドアルキルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルホスフェート、及びこれらの無水物や一部がアルキル基等により置換されてなるモノマー、並びにヒドロキシ基の一部にカルボキシメチル基が結合してなるグリコピラノース等の糖由来のモノマーから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、分子構造中に芳香環又は脂環を含まないモノマーであるのが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸から選ばれる1種又は2種以上であるのがより好ましい。
【0025】
成分(D)の全構成単位100質量%中におけるアニオン性モノマー由来の構成単位の含有量は、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、デンチャープラーク除去効果を有効に高める観点から、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0026】
成分(D)としては、具体的には、例えば、アクリル酸ホモポリマー、メタクリル酸ホモポリマー、架橋型アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、アクリル酸/メタクリル酸コポリマー、アクリル酸/スルホン酸コポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸コポリマー、ホスフィン酸/アクリル酸コポリマー、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸、カラギーナン、ペクチン、及びヒアルロン酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、デンチャープラーク除去効果を有効に高める観点から、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、アクリル酸/メタクリル酸コポリマー、及びアクリル酸/スルホン酸コポリマーから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アクリル酸/マレイン酸コポリマー及びアクリル酸/スルホン酸コポリマーから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、アクリル酸/マレイン酸コポリマーがさらに好ましい。
【0027】
なお、アクリル酸/マレイン酸コポリマーを構成するアクリル酸モノマー由来の構成単位とマレイン酸モノマー由来の構成単位との質量比(アクリル酸/マレイン酸)は、好ましくは0.01~99であり、より好ましくは0.05~50であり、さらに好ましくは0.1~10であり、よりさらに好ましくは0.1~5である。
【0028】
成分(D)の含有量は、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、デンチャープラーク除去効果を有効に高める観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上であり、さらに好ましくは0.07質量%以上である。また、成分(D)の含有量は、各成分の良好な溶解性又は分散性を確保する観点、及び成分(A)の保存安定性を向上させつつ、デンチャープラーク除去効果を有効に高める観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。そして、成分(D)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.01質量%以上8質量%以下であり、より好ましくは0.03~5質量%であり、さらに好ましくは0.07~2質量%である。
【0029】
成分(D)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((D)/(A))は、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、デンチャープラーク除去効果を有効に高める観点から、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは0.5である。また、成分(D)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((D)/(A))は、泡立ち性の観点から、好ましくは50以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは4以下である。そして、成分(D)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((D)/(A))は、好ましくは0.05以上50以下であり、より好ましくは0.1~10であり、さらに好ましくは0.5~4である。
【0030】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、上記各成分を良好に分散又は溶解させつつ、成分(A)の保存安定性を向上させる観点、及び優れたデンチャープラーク除去効果を発揮させる観点から、さらに水を含有するのが好ましい。
【0031】
水の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは50質量%超であり、より好ましくは56質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98.5質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以下である。
なお、本発明における水とは、口腔内装着器具用洗浄剤組成物に直接配合した精製水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に含まれる全水分を意味する。また、本発明における水とは、口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に予め配合されている水を意味することを含むが、そうでない場合、例えば使用前に水等により希釈したり、又は水等に溶解させたりした状態である場合、その希釈や溶解に用いた水も含む意味である。
【0032】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、さらに、pH調整剤を含有することができる。これにより、成分(A)の保存安定性を向上させつつ、優れたデンチャープラーク除去効果の発揮に有効なpHを維持することができる。
【0033】
pH調整剤としては、具体的には、例えば、炭酸塩や重炭酸塩;水酸化物;クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、コハク酸等の有機酸又はこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、炭酸塩、重炭酸塩、及び水酸化物から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸カリウム、及び水酸化カリウムから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸カリウム、及び水酸化カリウムから選ばれる1種又は2種以上がよりさらに好ましい。この場合、pH調整剤の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物のpHを安定化させる観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.1~60質量%であり、より好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは0.15~10質量%であり、よりさらに好ましくは0.2~5質量%である。
【0034】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分の他、例えば、上記成分以外の界面活性剤、抗炎症剤や防腐剤、香料、顔料、色素、漂白剤、酵素等を含有することができる。
【0035】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、口腔内装着器具の隅々にわたり優れたデンチャープラーク除去効果を発揮させる観点から、好ましくは5.5以上であり、好ましくは6以上であり、より好ましくは6.5以上であり、さらに好ましくは7以上であり、よりさらに好ましくは7.5以上であり、よりさらに好ましくは8以上であり、よりさらに好ましくは8.5以上であり、よりさらに好ましくは8.8以上であり、よりさらに好ましくは9以上であり、よりさらに好ましくは9.5以上であり、好ましくは14以下であり、より好ましくは13以下であり、さらに好ましくは12以下であり、よりさらに好ましくは11以下である。
【0036】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の形態は、泡状、液状、ペースト状、ジェル状、粉末状、顆粒状、又は錠剤状であってもよく、さらに液状の本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物をシートに含浸させた形態や、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を噴霧容器に充填した形態、泡吐出容器に充填した形態、又はエアゾール容器に充填した形態であってもよい。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を用いて口腔内装着器具を洗浄するにあたり、粉末状、顆粒状、又は錠剤状の場合は、水等により希釈したり、又は水等に溶解させたりして、口腔内装着器具用洗浄剤として使用すればよい。この場合、口腔内装着器具用洗浄剤へ適用する時点での口腔内装着器具用洗浄剤組成物が、所定の要件を満たした処方であればよい。
【0037】
なかでも、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は泡状の形態であるのが好ましく、泡で口腔内装着器具を被覆することにより、効果的に優れたデンチャープラーク除去効果を発揮させることができる。
とりわけ、泡状の形態とすることで、これで口腔内装着器具を被覆することにより、複雑な形状を伴う口腔内装着器具の隅々にわたり洗浄剤組成物が充分に到達することとなり、有効かつ効果的に優れたデンチャープラーク除去効果を発揮させることができる。その結果、組成物を適用した後の口腔内装着器具を水等により漱いで洗い流すのみで、特段ブラッシング等の物理的な付加力を施すことなく、優れたデンチャープラーク除去効果を発揮することが可能である。
【0038】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を用いた口腔内装着器具の洗浄方法は、具体的には、まず使用後の義歯等の口腔内装着器具を口腔内装着器具用洗浄剤組成物に浸漬、或いは、口腔内装着器具用洗浄剤組成物を口腔内装着器具に泡吐出、塗布、滴下又は噴霧等することにより適用した後、一定時間放置する。放置時間は、通常3~30分であればよく、好ましくは4~20分であり、より好ましくは5~10分である。
次に、放置後の口腔内装着器具を水等により漱いで口腔内装着器具用洗浄剤組成物を洗い流す。本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物であれば、より好ましくは、洗い流すだけでよく、ブラッシング等の物理的な付加力を特段施す必要がない。
【0039】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡状の形態とする場合、その使用態様は、義歯等の口腔内装着器具を泡状の口腔内装着器具用洗浄剤組成物で被覆した後、一定時間放置する。
泡で口腔内装着器具を被覆する時間は、優れたデンチャープラーク除去効果を充分に享受する観点から、好ましくは1分以上であり、より好ましくは2分以上であり、さらに好ましくは3分以上である。また、泡で口腔内装着器具を被覆する時間は、泡の効果を充分に発揮させる観点から、好ましくは30分以下であり、より好ましくは20分以下であり、さらに好ましくは10分以下である。そして、泡で口腔内装着器具を被覆する時間は、好ましくは1分以上30分以下であり、より好ましくは2~20分であり、さらに好ましくは3~10分である。
【0040】
口腔内装着器具を被覆する泡量は、泡の効果を充分に発揮させて、優れたデンチャープラーク除去効果を充分に享受する観点から、口腔内装着器具の表面積1cm2あたりに、好ましくは0.05g以上であり、より好ましくは0.07g以上であり、さらに好ましくは0.1g以上であり、好ましくは3.5g以下であり、より好ましくは3.2g以下であり、さらに好ましくは3g以下である。
【0041】
形成された泡で口腔内装着器具を被覆した後、口腔内装着器具を水で漱ぐことにより、洗浄剤組成物を洗い流すのが好ましい。このように本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡状の形態とすると、特段物理的な付加力を要することなく口腔内装着器具を水で漱ぐのみで、被覆した泡を洗い流しながらデンチャープラーク除去効果を発揮することができるため、高齢者等の使用者にとっても負担が軽減され、容易に使用頻度を高めることもできる。
また、形成された泡で口腔内装着器具を被覆した後、物理的な付加力を施すことなく、組成物を適用した後の口腔内装着器具を水により漱いで洗い流すことが好ましい。これにより、簡易的かつ効果的に口腔内装着器具を洗浄することが可能である。
【0042】
泡の効果を充分に発揮させる観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を、泡形成機構を備えた容器に充填し、該容器より噴射又は吐出することにより泡を形成することが好ましい。
泡形成機構を備えた容器とは、容器に充填されてなる内容物を噴射口又は吐出口から容器外部へと泡形成機構を介して噴射又は吐出することにより、泡を形成することができる容器である。かかる泡形成機構を備えた容器としては、トリガー式噴射容器、ポンプ式ディスペンサー容器が挙げられる。
【0043】
トリガー式噴射容器は、内容物を充填する容器本体と、泡形成機構であるトリガー及びスプレイヤーを具備しており、使用時にトリガーを引くことにより、内容物がスプレイヤーの噴射口から外部へと噴射され、泡が形成される。かかるトリガー式噴射容器は、直圧型であってもよく、蓄圧型であってもよい。
ポンプ式ディスペンサー容器は、内容物を充填する容器本体と、チューブやノズル、及びこれらの内部にメッシュ等の泡形成機構を具備し、使用時に容器の一部を押圧することにより、内容物がチューブやノズルの吐出口から外部へと吐出され、泡が形成される。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を用いて口腔内装着器具を洗浄する場合、これら容器のなかでも、泡の効果を充分に発揮させる観点から、トリガー式噴射容器を用いるのが好ましい。
【0044】
トリガー式噴射容器を用いる場合、泡の効果を充分に発揮させる観点から、噴射距離20cmにおける噴射径を好ましくは2cm以上、より好ましくは3cm以上、好ましくは10cm以下、より好ましくは8cm以下に設定するのが望ましい。
また、トリガー式噴射容器において、内容物である洗浄剤組成物の噴射力は、泡を有効に形成させる観点から、噴射距離 20cmにおける噴射力を好ましくは1g・f以上、より好ましくは3g・f以上、好ましくは10g・f以下、より好ましくは8g・f以下に設定するのが望ましい。
【0045】
このように、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物であれば、特段物理的な付加力を要することなく、短時間の適用で口腔内装着器具のデンチャープラークを充分に除去でき、高齢者等の使用者にとっても負担が軽減され、容易に使用頻度を高めることもできる。
【0046】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の口腔内装着器具用洗浄組成物を開示する。
[1]次の成分(A)~(B):
(A)亜硫酸塩 0.05質量%以上2.5質量%以下
(B)炭素数10以上20以下の脂肪酸塩又はその塩
を含有し、かつ成分(B)の脂肪酸換算量での含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))が0.5以上100以下である口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[2]成分(A)が、好ましくは亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、及び二亜硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸水素ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であり、さらに好ましくは亜硫酸ナトリウムである上記[1]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[3]成分(A)の含有量が、好ましくは0.075質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である上記[1]又は[2]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【0047】
[4]成分(B)の脂肪酸又は脂肪酸塩を構成する脂肪酸の炭素数が、好ましくは12以上20以下であり、より好ましくは14以上20以下であり、さらに好ましくは16以上20以下である上記[1]~[3]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[5]成分(B)の脂肪酸又は脂肪酸塩を構成する脂肪酸が、好ましくはカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、イソステアリン酸、及びアラキジン酸、並びにこれらの混合脂肪酸であるヤシ油脂肪酸、及びパーム油脂肪酸等から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸であり、さらに好ましくはオレイン酸である上記[1]~[4]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[6]成分(B)の含有量が、脂肪酸換算量で、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.6質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である上記[1]~[5]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[7]成分(B)の脂肪酸換算量での含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))が、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは50以下であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは10以下である上記[1]~[6]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【0048】
[8]さらに成分(B)以外のアニオン界面活性剤(C)を含有し、その含有量が、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である上記[1]~[7]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[9]成分(C)が、好ましくはアシルアミノ酸塩、アルキルスルホン酸塩、及びN-メチルアシルタウリン塩から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはアシルアミノ酸塩である上記[8]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[10]さらに質量平均分子量が2000以上500000以下のアニオン性ホモポリマー又はコポリマー(D)を含有し、その含有量が、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上であり、さらに好ましくは0.07質量%以上であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以下である上記[1]~[9]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[11]成分(D)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((D)/(A))が、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは0.5であり、好ましくは50以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは4以下である上記[10]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【0049】
[12]25℃におけるpHが、好ましくは5.5以上であり、好ましくは6以上であり、より好ましくは6.5以上であり、さらに好ましくは7以上であり、よりさらに好ましくは7.5以上であり、よりさらに好ましくは8以上であり、よりさらに好ましくは8.5以上であり、よりさらに好ましくは8.8以上であり、よりさらに好ましくは9以上であり、よりさらに好ましくは9.5以上であり、好ましくは14以下であり、より好ましくは13以下であり、さらに好ましくは12以下であり、よりさらに好ましくは11以下である上記[1]~[11]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[13]泡状、液状、ペースト状、ジェル状、粉末状、顆粒状、又は錠剤状の形態である上記[1]~[12]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【0050】
[14]上記[1]~[13]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を口腔内装着器具に適用して放置した後、漱いで洗い流す、口腔内装着器具の洗浄方法。
[15]口腔内装着器具用洗浄剤組成物を口腔内装着器具へ適用する時間が、1分以上30分以下である、上記[14]の口腔内装着器具の洗浄方法。
[16]口腔内装着器具用洗浄剤組成物を口腔内装着器具へ適用した後、口腔内装着器具を水で漱ぐ、上記[14]又は[15]の口腔内装着器具の洗浄方法。
[17]上記[1]~[13]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を口腔内装着器具に適用して放置した後、漱いで洗い流す、口腔内装着器具用洗浄剤組成物の使用方法。
[18]口腔内装着器具用洗浄剤組成物を口腔内装着器具へ適用する時間が、1分以上30分以下である、上記[17]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の使用方法。
[19]口腔内装着器具用洗浄剤組成物を口腔内装着器具へ適用した後、口腔内装着器具を水で漱ぐ、上記[17]又は[18]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の使用方法。
[20]上記[1]~[13]いずれか1の組成物の口腔内装着器具用洗浄剤組成物としての使用。
[21]上記[20]の使用であって、該組成物を口腔内装着器具に適用して放置した後、漱いで洗い流して使用する、使用法。
[22]上記[20]又は[21]の使用であって、組成物を口腔内装着器具へ適用する時間が、1分以上30分以下である、使用。
[23]上記[20]~[22]いずれか1の使用であって、組成物を口腔内装着器具へ適用した後、口腔内装着器具を水で漱ぐ、使用。
【実施例】
【0051】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0052】
[実施例1~8、比較例1~5]
表1~2に記載の各成分を混合し、25℃におけるpHが10である各口腔内装着器具用洗浄剤組成物を調製した。得られた口腔内装着器具用洗浄剤組成物を用い、下記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表1~2に示す。
また、実施例7で得られた口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡吐出用容器(噴射距離20cmにおける噴射径:5cm、噴射力:5g・fに設定したトリガー式噴射容器)に充填し、吐出口から泡状にて吐出させて使用済の義歯に適用し、5分間放置した後、水により漱いで口腔内装着器具用洗浄剤組成物を洗い流した。その結果、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物で洗浄した義歯を口腔内へ戻すと、ブラッシング等の物理的な付加力を特段施していないにもかかわらず、短時間の適用で口腔内装着器具のデンチャープラークを充分に除去することができ、ヌメリのない高い洗浄性能を実感することができた。
【0053】
《保存後における成分(A)の残存率の評価》
各口腔内装着器具用洗浄剤組成物30gを容量80mlのプラスチック容器に投入し、50℃で7日間保存した。次いで、保存後の組成物中に残存する成分(A)をヨードメトリー法により定量し、保存前の成分(A)の含有量を基準とする残存量(%)を算出した。
【0054】
《デンチャープラーク除去効果の評価》
1)デンチャープラークモデルの作製
1)-1 デンチャープラークモデル試験液の調整
寒天プレート(Anaero Columbia Agar with RSB, Nippon Becton Dickinson)にStreptococcus mutans JCM5705及びCandida albicans JCM1542のグリセロールストックを画線し、これをCO2パックとともにプラスチックケースに格納して嫌気条件下とし、37℃で48時間から72時間培養した。培養後の寒天プレートからシングルコロニーをピックアップし、液体培地A(SCD培地ダイゴ(日本製薬社製)3質量%, Bacto Yeast Extract(ベクトンディッキンソン社製)0.5質量%)20mLを分注した細胞培養フラスコに入れてかき混ぜた後、これをCO2パックとともにプラスチックケースに格納して嫌気条件下とし、37℃で24時間培養した。
培養後、この培養液をOD=0.5となるように液体培地Aで希釈した。この希釈液を液体培地B(SCD培地ダイゴ3質量%, Bacto Yeast Extract 0.5質量%, D(+)-グルコース(富士フィルム和光純薬社製) 1質量%, スクロース(富士フィルム和光純薬社製)2wt%)でS. mutans OD=0.01、C. albicans OD=0.00001となるように希釈した。さらに滅菌した塩化カルシウム(富士フィルム和光純薬社製)水溶液をカルシウムイオン終濃度40ppmとなるように混ぜ、デンチャープラークモデル試験液を調製した。
【0055】
1)-2 デンチャープラークモデルの作製
義歯基板(杏友会社製、素材:ポリメチルメタクリレート樹脂、1cm)を24穴プレートに入れ、上記1)-1で調製したデンチャープラークモデル試験液を1mLずつ添加した後、これをCO2パックとともにプラスチックケースに格納して嫌気条件下とし、37℃で16時間培養した。
【0056】
2)デンチャープラーク除去効果の評価
減圧ポンプを用いてプレート中の上述のデンチャープラークモデル試験液を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振盪した。次にポンプを用いてイオン交換水を吸い取り、50℃で7日間保存後の実施例及び比較例で得られた各組成物1mLを別途24穴プレートに調製した。次いで、調製した溶液にデンチャープラークモデルを形成した義歯基板を浸漬し適用させ、5分間静置した。
振盪は、振盪機(BioShake iQ(ワケンビーテック社製))を用い、室温(25℃)、550rpmの条件で行った。
その後、各組成物を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振盪した。イオン交換水1mLを添加して5分間振盪する操作を計3回繰り返した。次いで、イオン交換水を吸い取り、0.1質量%クリスタルバイオレット(CV)溶液を750μL添加して15分間振盪した。
【0057】
さらにポンプでCV染色液を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振盪した。イオン交換水1mLを添加して5分間振盪する操作を2回繰り返した。次いで、イオン交換水をポンプで吸い取り、エタノール500μLを添加してピペッティングした後、抽出液をイオン交換水で10倍希釈し、マイクロプレートレコーダー(TECAN社製 波長可変型吸光マイクロプレートリーダー サンライズレインボーサーモ)で吸光度OD595nmを測定した。
また、上記得られた組成物の代わりにイオン交換水を用いた際の吸光度OD595nm(初期値)を基準とし、下記式(1)にしたがってデンチャープラーク除去率(%)を算出した。次いで、得られたデンチャープラーク除去率(%)の値を指標とし、下記基準にしたがってデンチャープラーク除去効果を評価した。なお、デンチャープラーク除去率が35%以上の評価であれば、デンチャープラーク除去効果が高いことを意味する。
・デンチャープラーク除去率(%)=
100-{上記得られた組成物を用いた際のOD595nm/上記得られた組成物の
代わりにイオン交換水を用いた際のOD595nm}×100・・・(1)
・評価基準
AA:デンチャープラーク除去率が80%以上
A :デンチャープラーク除去率が70%以上80%未満
B :デンチャープラーク除去率が60%以上70%未満
C :デンチャープラーク除去率が35%以上60%未満
D :デンチャープラーク除去率が20%以上35%未満
E :デンチャープラーク除去率が20%未満
【0058】
【0059】
【0060】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の処方例を以下に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】