(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 47/6275 20220101AFI20221206BHJP
H04L 47/56 20220101ALI20221206BHJP
H04L 47/6295 20220101ALI20221206BHJP
【FI】
H04L47/6275
H04L47/56
H04L47/6295
(21)【出願番号】P 2019052444
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐別當 祥和
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208241(JP,A)
【文献】特開2007-102406(JP,A)
【文献】特開2003-229894(JP,A)
【文献】特開平8-032623(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235136(WO,A1)
【文献】特開2012-019445(JP,A)
【文献】特開2018-088577(JP,A)
【文献】特開2007-013654(JP,A)
【文献】特表2008-520149(JP,A)
【文献】特開2002-344531(JP,A)
【文献】国際公開第03/103234(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0188482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0236713(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 47/6275
H04L 47/56
H04L 47/6295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケットを格納する複数のキューと、
前記複数のキューのうち、パケットの優先度に応じたキューにパケットを入力する入力部と、
パケットが前記優先度に応じたキューに入力されるとき、第1の時刻を取得してパケットに付与する付与部と、
前記複数のキューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出す読出部と、
パケットが前記複数のキューから読み出されたとき、第2の時刻を取得して、前記第1の時刻と前記第2の時刻の差分からパケットの遅延時間を算出する算出部と、
前記遅延時間に応じてパケットの前記優先度を上げる優先度制御部とを有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記優先度制御部は、前記遅延時間が閾値より大きい場合、前記優先度を上げることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信装置内の時刻を計時する計時部を有し、
前記付与部は、前記計時部から前記第1の時刻を取得し、
前記算出部は、前記計時部から前記第2の時刻を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記優先度制御部は、前記優先度が所定値以上である場合、前記遅延時間に応じて前記優先度を上げることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の通信装置。
【請求項5】
パケットを受信する複数の受信ポートを有し、
前記入力部は、前記複数の受信ポートが受信したパケットを前記優先度に応じたキューに入力することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の通信装置。
【請求項6】
パケットを送信する第1通信装置と、
前記第1通信装置から送信されたパケットを受信する第2通信装置とを有し、
前記第1通信装置は、
パケットを格納する複数の第1キューと、
前記複数の第1キューのうち、パケットの優先度に応じた第1キューにパケットを入力する第1入力部と、
パケットが前記優先度に応じた第1キューに入力されるとき、第1の時刻を取得してパケットに付与する付与部と、
前記複数の第1キューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出す第1読出部と、
パケットが前記複数の第1キューから読み出されたとき、第2の時刻を取得して、前記第1の時刻と前記第2の時刻の差分からパケットの遅延時間を算出する算出部と、
前記遅延時間に応じてパケットの前記優先度を上げる優先度制御部と、
前記複数の第1キューから読み出されたパケットを送信する送信ポートとを有し、
前記第2通信装置は、
前記第1通信装置から送信されたパケットを格納する複数の第2キューと、
前記複数の第2キューの1つにパケットを入力する第2入力部と、
パケットから、パケットが転送されるパスの識別情報を取得する取得部と、
前記複数の第2キューの各々に格納済みのパケットの前記識別情報を記憶する記憶部と、
前記複数の第2キューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出す第2読出部とを有し、
前記第2入力部は、
前記複数の第2キューに入力するパケットの前記識別情報を、前記記憶部に記憶された前記識別情報と比較することにより、前記複数の第2キューに入力するパケットに前記識別情報が一致する前記格納済みのパケットの有無を判定し、
判定の結果、前記格納済みのパケットが有る場合、前記格納済みのパケットが格納された第2キューにパケットを入力し、前記格納済みのパケットがない場合、パケットの前記優先度に応じた第2キューにパケットを入力することを特徴とする通信システム。
【請求項7】
パケットを格納する複数のキューのうち、パケットの優先度に応じたキューにパケットを入力し、
パケットが前記優先度に応じたキューに入力されるとき、第1の時刻を取得してパケットに付与し、
前記複数のキューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出し、
パケットが前記複数のキューから読み出されたとき、第2の時刻を取得して、前記第1の時刻と前記第2の時刻の差分からパケットの遅延時間を算出し、
前記遅延時間に応じてパケットの前記優先度を上げることを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、通信装置、通信システム、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代のネットワークとして、例えば5G(Generation)の移動通信システムが研究開発されている。5Gの移動通信システムには、例えば4Gの移動通信システムのおよそ10分の1の遅延時間が要求される。
【0003】
一例として、RRH(Remote Radio Head)とBBU(Base Band Unit)間を接続するモバイルフロントホール(MFH: Mobile Front Haul)領域では、各ノードのレイヤ2スイッチに対し、例えば5(μs)程度の遅延時間が要求されると予測される。レイヤ2スイッチが伝送するパケットの遅延としては、例えば装置内のパケット処理による内部遅延、伝送路上の伝送遅延、及び送信時のパケット同士の衝突による衝突遅延が挙げられる。MFH領域では1台のレイヤ2スイッチに多数の複数のRRHからパケットが入力されるため、衝突遅延は全体の遅延時間の中で大きな割合を占める。
【0004】
これに対し、レイヤ2スイッチは、所定の遅延時間が要求されるパケットを高優先パケットとし、遅延時間が要求されないパケットを低優先として、高優先パケットと低優先パケットを別々のキューに格納し、QoS(Quality of Service)機能を用いて高優先パケットを低優先パケットより優先的に送信する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、高優先パケット同士が送信時に衝突すると、一方の高優先パケットが他方の高優先パケットの送信が完了するまで待機させられるため、衝突遅延の抑制は難しい。
【0007】
そこで本件は、パケット同士の衝突による遅延を抑制することができる通信装置、通信システム、及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、通信装置は、パケットを格納する複数のキューと、前記複数のキューのうち、パケットの優先度に応じたキューにパケットを入力する入力部と、パケットが前記優先度に応じたキューに入力されるとき、第1の時刻を取得してパケットに付与する付与部と、前記複数のキューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出す読出部と、パケットが前記複数のキューから読み出されたとき、第2の時刻を取得して、前記第1の時刻と前記第2の時刻の差分からパケットの遅延時間を算出する算出部と、前記遅延時間に応じてパケットの前記優先度を上げる優先度制御部とを有する。
【0009】
1つの態様では、通信システムは、パケットを送信する第1通信装置と、前記第1通信装置から送信されたパケットを受信する第2通信装置とを有し、前記第1通信装置は、パケットを格納する複数の第1キューと、前記複数の第1キューのうち、パケットの優先度に応じた第1キューにパケットを入力する第1入力部と、パケットが前記優先度に応じた第1キューに入力されるとき、第1の時刻を取得してパケットに付与する付与部と、前記複数の第1キューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出す第1読出部と、パケットが前記複数の第1キューから読み出されたとき、第2の時刻を取得して、前記第1の時刻と前記第2の時刻の差分からパケットの遅延時間を算出する算出部と、前記遅延時間に応じてパケットの前記優先度を上げる優先度制御部と、前記複数の第1キューから読み出されたパケットを送信する送信ポートとを有し、前記第2通信装置は、前記第1通信装置から送信されたパケットを格納する複数の第2キューと、前記複数の第2キューの1つにパケットを入力する第2入力部と、パケットから、パケットが転送されるパスの識別情報を取得する取得部と、前記複数の第2キューの各々に格納済みのパケットの前記識別情報を記憶する記憶部と、前記複数の第2キューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出す第2読出部とを有し、前記第2入力部は、前記複数の第2キューに入力するパケットの前記識別情報を、前記記憶部に記憶された前記識別情報と比較することにより、前記複数の第2キューに入力するパケットに前記識別情報が一致する前記格納済みのパケットの有無を判定し、判定の結果、前記格納済みのパケットが有る場合、前記格納済みのパケットが格納された第2キューにパケットを入力し、前記格納済みのパケットがない場合、パケットの前記優先度に応じた第2キューにパケットを入力する。
【0010】
1つの態様では、通信方法は、パケットを格納する複数のキューのうち、パケットの優先度に応じたキューにパケットを入力し、パケットが前記優先度に応じたキューに入力されるとき、第1の時刻を取得してパケットに付与し、前記複数のキューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出し、パケットが前記複数のキューから読み出されたとき、第2の時刻を取得して、前記第1の時刻と前記第2の時刻の差分からパケットの遅延時間を算出し、前記遅延時間に応じてパケットの前記優先度を上げる方法である。
【発明の効果】
【0011】
1つの側面として、パケット同士の衝突による遅延を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】移動通信システムのMFH領域のネットワークの一例を示す構成図である。
【
図2】比較例のレイヤ2スイッチにおける衝突遅延の例を示す図である。
【
図3】レイヤ2スイッチの一例を示す構成図である。
【
図4】パケットのフォーマットの一例を示す図である。
【
図5】パケットの受信時の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】パケットの送信時の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】パケットの優先度を上げた場合のレイヤ2スイッチの動作例を示す図である。
【
図8】装置内タグを付与する場合のパケットのフォーマットの一例を示す図である。
【
図9】装置内タグを付与する場合のパケットのフォーマットの他の例を示す図である。
【
図10】パケットの追い越しの一例を示す図である。
【
図11】パケットの追い越しの防止の動作例を示す。
【
図13】パケットの入力先の高優先キューの選択処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、移動通信システムのMFH領域のネットワークの一例を示す構成図である。移動通信システムは、通信システムの一例であり、例えば互いにリング状に接続された複数のレイヤ2スイッチ1を有し、RRH2とBBU3の通信を中継する。一例として、ノード#1~#6には、複数台のRRH2とスター状に接続された1台のレイヤ2スイッチ1が設けられている。各RRH2は、スマートフォンなどの通信端末4と無線通信を行う。
【0014】
ノード4のレイヤ2スイッチはBBU3に接続されている。BBU3は、コアネットワーク5に接続されている。
【0015】
ネットワークには、例えばRRH2とBBU3の通信経路としてパスPa,Pbが設定されている。パスPaは、ノード#6,ノード#1~#4のレイヤ2スイッチ1をこの順に経由し、パスPbは、#1~#4のレイヤ2スイッチ1をこの順に経由する。パスPa,Pbに伝送されるパケットは、例えば互いに異なるVID(Virtual local area network Identifier)により識別される。なお、VIDは、例えばパケットに付与されたVLAN(Virtual Local Area Network)に含まれている。
【0016】
各パスPa,Pbの経路上のレイヤ2スイッチ1には複数のRRH2からパケットが送信されるため、各レイヤ2スイッチ1内ではパケット同士が衝突する。このため、以下に述べるように、比較例のレイヤ2スイッチ1ではパケット同士の衝突遅延が発生する。
【0017】
図2は、比較例のレイヤ2スイッチ1における衝突遅延の例を示す図である。レイヤ2スイッチ1は、パケットが入力される入力ポート10a,10bと、パケットが出力される出力ポート16と、パケットのうち、高優先パケットを格納する高優先キューQaと、低優先パケットを格納する低優先キューQbとを有する。なお、高優先パケットには所定の遅延時間が要求され、低優先パケットには遅延時間の要求はない。
【0018】
符号G1は、パケットが入力ポート10a,10bから入力されるタイミングを示し、符号G2は、パケットが出力ポート16に出力されるタイミングを示す。本例では、入力ポート10aから高優先パケットのPKT#1と、低優先パケットのPKT#3が入力され、入力ポート10bから高優先パケットのPKT#2が入力される。入力タイミングは、PKT#1が最も速く、次にPKT#3が早く、PKT#2が最も遅い。
【0019】
PKT#3は低優先キューQbに格納され、PKT#1,PKT#2は高優先キューQaに格納される。高優先キューQa及び低優先キューQbは、それぞれ、FIFO(First-In First-Out)であり、パケットを入力順に出力する。高優先キューQaには、PKT#1,PKT#2が格納されており、PKT#1の入力順はPKT#2より早いため、先に高優先キューQaから読み出される。
【0020】
また、高優先キューQaのPKT#1,PKT#2は、低優先キューQbのPKT#3より優先的に読み出される。このため、出力ポート16への出力タイミングは、PKT#1、PKT#2、PKT#3の順となる。なお、レイヤ2スイッチ1は、カットスルー方式で高優先キューQa及び低優先キューQbからパケットを出力すると仮定する。
【0021】
PKT#2は、PKT#3より入力タイミングが遅いが、優先度がPKT#3より高いため、早く出力される。このため、PKT#2は、PKT#3との衝突遅延はない。
【0022】
しかし、PKT#2は、同じ優先度のPKT#1より入力タイミングが遅いため、高優先キューQaからのPKT#1の読み出しが完了するまで待機させられる。したがって、PKT#2には、PKT#1との衝突遅延ΔTaが生ずる。なお、衝突遅延ΔTaはPKT#1のデータ長により変化する。
【0023】
そこで、実施例のレイヤ2スイッチ1は、パケットがキューに入力されてキューから出力されるまでの遅延時間を測定し、遅延時間に応じてパケットの優先度を変化させる。これにより優先度が上がったパケットは、後段のレイヤ2スイッチ1において優先的にキューから出力されるため、遅延時間が短縮される。
【0024】
図3は、レイヤ2スイッチ1の一例を示す構成図である。レイヤ2スイッチ1は、複数の入力ポート10、タグ処理部11、タイムスタンプ付与部12、スイッチング部13、複数の送信処理部14、時刻管理部15、及び複数の出力ポート16を有する。なお、レイヤ2スイッチ1は通信装置の一例である。
【0025】
タグ処理部11、タイムスタンプ付与部12、スイッチング部13、複数の送信処理部14、及び時刻管理部15は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified Integrated Circuit)などの回路、及びCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを駆動するソフトウェア機能の一方または両方により構成される。
【0026】
入力ポート10は、パケットを受信してタグ処理部11に出力する。入力ポート10は、例えばフォトダイオードやアンプなどの回路を含み、受信したパケットを光信号から電気信号に変換する。なお、入力ポート10は、パケットを受信する受信ポートの一例である。
【0027】
タグ処理部11は、パケットにタグを付与したり、パケットに付与されたタグから各種の情報を取得する。タグ処理部11は、パケットをタイムスタンプ付与部12に出力する。
【0028】
タイムスタンプ付与部12は、時刻管理部15から装置内の時刻を取得してパケットに付与する。タイムスタンプ付与部12は付与部の一例であり、タイムスタンプ付与部12が取得する時刻は第1の時刻の一例である。
【0029】
時刻管理部15は、例えばリアルタイムクロックの回路を含み、レイヤ2スイッチ1内の時刻を計時する。時刻管理部15は、タイムスタンプ付与部12からの要求に従って、時刻を示すカウンタ値をタイムスタンプ付与部12に出力する。なお、時刻管理部15は、レイヤ2スイッチ内の時刻を計時する計時部の一例である。
【0030】
タイムスタンプ付与部12は、タイムスタンプが付与されたパケットをスイッチング部13に出力する。
【0031】
スイッチング部13は、パケットを宛先に応じた送信処理部14に出力する。スイッチング部13は、例えばパケットのヘッダやVLANタグ内のVIDに基づいて出力先の送信処理部14を選択する。
【0032】
送信処理部14は、入力部140、複数の高優先キュー141、複数の低優先キュー142、読出部143、タイムスタンプ抽出部144、優先度変更部145、衝突判定部146、キュー管理部147、及び記憶部148を有する。記憶部148には、VIDテーブルが記憶されている。なお、複数の高優先キュー141、複数の低優先キュー142、及び記憶部148は、例えばメモリなどにより構成される。
【0033】
入力部140は、パケットの優先度を判別して、パケットの優先度に応じた高優先キュー141または低優先キュー142にパケットを入力する。
【0034】
図4は、パケットのフォーマットの一例を示す図である。本例では、パケットとして、イーサネット(登録商標、以下同様)フレームを挙げる。
【0035】
符号80は、入力ポート10が受信するパケットの例を示す。パケットは、DA(Destination Address)、SA(Source Address)、VLANタグ、タイプ、ペイロード、及びFCS(Frame Check Sequence)を含む。
【0036】
VLANタグには、TPID(Tag Protocol Identifier)、プライオリティ値、CFI(Canonical Format Identifier)、及びVIDが含まれている。プライオリティ値は0,1,2,・・・,7の何れかの値でパケットの優先度を示し、7が最も優先度が高く、0が最も優先度が低い。
【0037】
また、符号81は、タイムスタンプが付与されたパケットの例を示す。タイムスタンプは、一例としてタイプとペイロードの間に挿入される。タイムスタンプには、パケットが高優先キュー141または低優先キュー142に入力されるときの時刻の情報が含まれている。
【0038】
再び
図3を参照すると、複数の高優先キュー141は、プライオリティ値の4,5,6,7にそれぞれ対応し、複数の低優先キュー142は、プライオリティ値の0,1,2,3にそれぞれ対応する。入力部140は、パケットをプライオリティ値に応じた高優先キュー141または低優先キュー142に入力する。
【0039】
読出部143は、複数の高優先キュー141及び複数の低優先キュー142から、優先度が高いパケットほど優先的に読み出す。つまり、読出部143は、プライオリティ値が最も高い高優先キュー141から最も優先的にパケットを読み出す。また、読出部143は、各高優先キュー141または各低優先キュー142から入力順でパケットを読み出す。なお、読出部143の読み出し方式としては、重み付けラウンドロビンが挙げられるが、これに限定されない。
【0040】
キュー管理部147は、高優先キュー141及び低優先キュー142に格納されているパケットを管理する。キュー管理部147は、高優先キュー141及び低優先キュー142に入力されたパケットのVIDを入力部140から取得し、高優先キュー141及び低優先キュー142から出力されたパケットのVIDを読出部143から取得する。キュー管理部147は、入力部140から取得したVIDをVIDテーブル149に登録し、読出部143から取得したVIDをVIDテーブル149から削除する。なお、キュー管理部147は、VIDを取得する取得部の一例である。
【0041】
VIDテーブル149には、プライオリティ値に基づき高優先キュー141及び低優先キュー142を識別するキューID(「#0」~「#7」)ごとに、格納中のパケットのVIDがパケットの入力順に従って登録されている。これにより、キュー管理部147は、高優先キュー141及び低優先キュー142に格納中のパケットのVIDを管理する。
【0042】
キュー管理部147は、後述するパケットの追い越し防止機能を実現するため、入力部140の要求に従ってVIDテーブル149を検索し、検索結果を入力部140に出力する。
【0043】
タイムスタンプ抽出部144は、読出部143から入力されたパケットからタイプスタンプを抽出して衝突判定部146に出力する。タイムスタンプ抽出部144は、パケットからタイムスタンプを削除して優先度変更部145に出力する。
【0044】
衝突判定部146は、パケットが高優先キュー141または低優先キュー142から読み出されたとき、時刻管理部15からレイヤ2スイッチ1内の時刻を取得して、その時刻と、タイムスタンプ抽出部144から取得した時刻との差分からパケットの遅延時間を算出する。なお、衝突判定部146は算出部の一例であり、時刻管理部15から取得した時刻は第2の時刻の一例である。
【0045】
また、時刻管理部15は、例えばレイヤ2スイッチ1の外部に設けられてもよいが、レイヤ2スイッチ1内に設けられた場合、タイムスタンプ付与部12及び衝突判定部146と時刻管理部15の間の伝搬遅延を抑えることができるため、より高精度な時刻の取得が可能となる。衝突判定部146は、遅延時間を優先度変更部145に出力する。
【0046】
優先度変更部145は、タイムスタンプ抽出部144から入力されたパケットのうち、高優先パケットの優先度を遅延時間に応じて上げる。このため、遅延時間が大きいパケットは、優先度が上がることにより、後段以降のレイヤ2スイッチ1において高優先キュー141から優先的に読み出され、さらなる遅延時間の増加が抑制される。なお、優先度変更部145は優先度制御部の一例である。
【0047】
また、低優先パケットには所定の遅延時間が要求されないため、優先度変更部145は低優先パケットの優先度を変更しない。このため、低優先パケットの優先度は、最初に送信されたときのままとすることができるが、これに限定されず、優先度変更部145は低優先パケットの優先度も遅延時間に応じて上げてもよい。優先度変更部145はパケットを出力ポート16に出力する。
【0048】
出力ポート16は、例えばLD(Laser Diode)などの回路を含み、パケットを電気信号から光信号に変換して、光ファイバなどの伝送路に出力する。パケットは、伝送路を介して後段のレイヤ2スイッチ1またはBBU3に送信される。なお、出力ポート16は、後段のレイヤ2スイッチ1またはBBU3にパケットを送信する送信ポートの一例である。
【0049】
図5は、パケットの受信時の処理の一例を示すフローチャートである。なお、本処理は、実施例の通信方法の一例である。
【0050】
タイムスタンプ付与部12は、パケットが入力されると時刻管理部15からレイヤ2スイッチ1内の時刻を取得する(ステップSt1)。次にタイムスタンプ付与部12は、取得した時刻のタイムスタンプをパケットに付与する(ステップSt2)。
【0051】
次に入力部140は、パケットの優先度に応じてパケットの入力先の高優先キュー141または低優先キュー142を選択する(ステップSt3)。次に入力部140は、入力先として選択した高優先キュー141または低優先キュー142にパケットを入力する(ステップSt4)。これにより、パケットは、高優先キュー141または低優先キュー142に格納される。
【0052】
次にキュー管理部147は、入力部140からパケットのVID及び入力先の高優先キュー141または低優先キュー142のキューIDを取得し、VID及びキューIDに基づきVIDテーブル149を更新する(ステップSt5)。これにより、VIDテーブル149のキューIDの欄に、新たに格納されたパケットのVIDが追加される。このようにして、パケットの受信時の処理は行われる。
【0053】
図6は、パケットの送信時の処理の一例を示すフローチャートである。なお、本処理は、実施例の通信方法の一例である。
【0054】
読出部143は、パケットの送信タイミングに応じて、高優先キュー141及び低優先キュー142からパケットの読み出し対象のキューを選択する(ステップSt11)。このとき、読出部143は、高優先キュー141を低優先キュー142より優先的に選択し、高優先キュー141または低優先キュー142のうち、優先度が高いキューほど、優先的に選択する。
【0055】
次に読出部143は、読み出し対象として選択した高優先キュー141または低優先キュー142からパケットを読み出す(ステップSt12)。
【0056】
次にキュー管理部147は、読出部143から読み出したパケットのVID及び読み出し元の高優先キュー141または低優先キュー142のキューIDを取得し、VID及びキューIDに基づきVIDテーブル149を更新する(ステップSt13)。これにより、VIDテーブル149のキューIDの欄から、読み出されたパケットのVIDが削除される。
【0057】
次にタイムスタンプ抽出部144は、パケットからタイムスタンプを抽出して削除する(ステップSt14)。タイムスタンプ抽出部144は、抽出したタイムスタンプを衝突判定部146に出力する。
【0058】
次に衝突判定部146は、時刻管理部15からレイヤ2スイッチ1内の時刻を取得する(ステップSt15)。次に衝突判定部146は、取得した時刻とタイムスタンプの時刻の差分から読み出されたパケットの遅延時間を算出する(ステップSt16)。例えば遅延時間は、パケットが高優先キュー141または低優先キュー142に入力された時刻と、パケットが高優先キュー141または低優先キュー142から読み出された時刻との差分として算出される。なお、遅延時間の算出には、レイヤ2スイッチ1の構成に応じて適切な補正が用いられてもよい。衝突判定部146は、遅延時間を優先度変更部145に出力する。
【0059】
次に優先度変更部145は、遅延時間を所定の閾値THと比較する(ステップSt17)。閾値THは、例えば通信システムの設計上で要求される遅延時間に基づく値である。
【0060】
優先度変更部145は、遅延時間が閾値THより大きい場合(ステップSt17のYes)、パケットの優先度が4,5,6の何れかであるか否かを判定する(ステップSt18)。これにより、優先度変更部145は、パケットが高優先パケットであり、かつ、優先度が最大値の7未満であるか否かを判定する。
【0061】
優先度変更部145は、パケットの優先度が4,5,6の何れかである場合(ステップSt18のYes)、優先度を1つ上げる(ステップSt19)。これにより、パケットは、後段のレイヤ2スイッチ1において高優先キュー141から優先的に読み出されるため、さらなる遅延時間の増加が抑制される。次に出力ポート16はパケットを送信する(ステップSt20)。
【0062】
また、優先度変更部145は、遅延時間が閾値TH以下である場合(ステップSt17のNo)、例えば通信システムにおいて要求される遅延時間が満たされるため、優先度の変更(ステップSt19)を行わない。その後、出力ポート16はパケットを送信する(ステップSt20)。
【0063】
このように、優先度変更部145は、遅延時間が閾値THより大きい場合、優先度を上げる。このため、レイヤ2スイッチ1は、通信システムの要求に応じた閾値THを設定することにより、通信システムの要求を満たす遅延時間でパケットを伝送することが可能となる。
【0064】
また、優先度変更部145は、優先度が0,1,2,3,7の何れかである場合(ステップSt18のNo)、パケットが低優先パケットであるか、優先度が最大値の7であるため、優先度の変更(ステップSt19)を行わない。その後、出力ポート16はパケットを送信する(ステップSt20)。このようにして、パケットの送信時の処理は行われる。
【0065】
図7は、パケットの優先度を上げた場合のレイヤ2スイッチ1の動作例を示す図である。本例では、前段のノード#1のレイヤ2スイッチ1から後段のノード#2のレイヤ2スイッチ1にパケットを伝送する場合を挙げる。
【0066】
なお、
図7には、ノード#1の入力ポート10として、入力ポート10a~10cが記載され、ノード#2の入力ポート10として、入力ポート10d,10eが記載されている。また、
図7には、高優先キュー141として、優先度が4であるパケットを格納する高優先キューQ#4と、優先度が5であるパケットを格納する高優先キューQ#5とが記載されている。
【0067】
符号G11は、ノード#1のレイヤ2スイッチ1においてパケットが入力ポート10a~10cから入力されるタイミングを示し、符号G12は、ノード#1のレイヤ2スイッチ1においてパケットが出力ポート16に出力されるタイミングを示す。
【0068】
ノード#1のレイヤ2スイッチ1は、入力ポート10a~10cで高優先パケットのPKT#1~#3をそれぞれ受信する。PKT#1~#3の優先度は、一例として4とする([4]参照)。PKT#1~#3は、優先度が4であるパケットに対応する高優先キューQ#4に入力される。PKT#1~#3のうち、PKT#1は最も早く入力され、PKT#3は最も遅く入力される。
【0069】
PKT#1~#3は、高優先キューQ#4から入力順に読み出される。PKT#3は、先行するPKT#1及びPKT#2の読み出しが完了するまで待機させられるため、PKT#1,#2との衝突による遅延時間ΔTbが生ずる。遅延時間ΔTbが閾値THより大きいため、PKT#3の優先度は5に上げられる([5]参照)。なお、PKT#2の遅延時間は閾値TH以下であるため、PKT#2の優先度は変更されない。
【0070】
符号G13は、ノード#2のレイヤ2スイッチ1においてパケットが入力ポート10d,10eから入力されるタイミングを示し、符号G14は、ノード#2のレイヤ2スイッチ1においてパケットが出力ポート16に出力されるタイミングを示す。
【0071】
ノード#2のレイヤ2スイッチ1は、入力ポート10dからPKT#1~#3を受信し、入力ポート10eから高優先パケットのPKT#4を受信する。PKT#4の優先度は、一例として4とする([4]参照)。PKT#4は、PKT#3より早く、PKT#1,#2より遅いタイミングで入力される。
【0072】
PKT#1,#2,#4は、優先度が4であるパケットに対応する高優先キューQ#4に入力され、PKT#3は、優先度が5であるパケットに対応する高優先キューQ#5に入力される。優先度が4であるPKT#1,#2,#4のうち、PKT#1は最も早く入力され、PKT#2は2番目に早く入力され、PKT#4は最も遅く入力される。なお、PKT#1~#4が入力される直前において、高優先キューQ#4,Q#5にはパケットが格納されていないと仮定する。
【0073】
PKT#1,#2,#4は高優先キューQ#4から入力順に読み出される。また、PKT#3は高優先キューQ#5から読み出される。
【0074】
PKT#1~#3は、入力ポート10dからシリアルに入力されるため、PKT#1,#2が高優先キューQ#4に格納されたとき、PKT#3は高優先キューQ#5に格納されていない。このため、PKT#1,#2は、PKT#3より早く高優先キューQ#4から出力される。
【0075】
また、PKT#4は、同じ優先度のPKT#3の格納後に高優先キューQ#4に入力されるため、入力タイミングがPKT#3とほぼ同じとなる。しかし、PKT#3の優先度は、PKT#4の優先度より高いため、PKT#4より先に高優先キューQ#5から出力される。
【0076】
したがって、出力ポート16への出力の順序はPKT#1~#4の順となる。このため、PKT#3の遅延時間が、PKT#4との衝突により増加することが抑制される。なお、仮にノード#1のレイヤ2スイッチ1がPKT#3の優先度を5に上げない場合、PKT#3の先に高優先キューQ#4に入力されたPKT#4が割り込むことにより、PKT#3の遅延時間が増加する。
【0077】
このように、ノード#1のレイヤ2スイッチ1において、入力部140は、複数の入力ポート10a~10cが受信したPKT#1~#3を高優先キューQ#4に入力するため、入力タイミングが最も遅いPKT#3に衝突遅延が生ずる。しかし、優先度変更部145がPKT#3の優先度を上げるため、後段のノード#2のレイヤ2スイッチ1においてPKT#3の衝突遅延がさらに増加することが抑制される。
【0078】
また、タグ処理部11は、パケットに装置内タグを付与してもよい。
【0079】
図8は、装置内タグを付与する場合のパケットのフォーマットの一例を示す図である。
図8において、
図4と共通する内容の説明は省略する。
【0080】
符号82は、入力ポート10が受信するパケットの例を示す。パケットは、
図4の符号80で示されたものと同様である。
【0081】
符号83は、タグ処理部11で装置内タグが付与されたパケットの例を示す。タグ処理部11は、例えばSAとVLANタグの間に装置内タグを挿入する。装置内タグは、VLANタグと同様の構成を有する。優先度変更部145は、装置内タグのプライオリティ値を変更する。
【0082】
符号84は、タイムスタンプが付与されたパケットの例を示す。タイムスタンプは、一例としてタイプとペイロードの間に挿入される。
【0083】
図9は、装置内タグを付与する場合のパケットのフォーマットの他の例を示す図である。
図9において、
図4と共通する内容の説明は省略する。
【0084】
符号85は、入力ポート10が受信するパケットの例を示す。パケットは、
図4の符号80で示されたものと同様である。
【0085】
符号86は、タグ処理部11で装置内タグが付与されたパケットの例を示す。タグ処理部11は、装置内タグとしてMPLS(Multi-Protocol Label Switching)ヘッダを付与する。タグ処理部11は、例えばタイプとペイロードの間に装置内タグを挿入する。
【0086】
MPLSヘッダは、ラベル、EXP領域、S領域、及びTTL(Time To Live)領域を有する。EXP領域には、0,1,・・・,7のプライオリティ値が格納される。優先度変更部145は、EXP領域のプライオリティ値を変更する。
【0087】
符号87は、タイムスタンプが付与されたパケットの例を示す。タイムスタンプは、MPLSヘッダとペイロードの間に挿入される。
【0088】
(パケットの追い越し防止機能)
パケットの優先度は、遅延時間が閾値THを越えると上がるため、後段のレイヤ2スイッチ1において先行する同一のパスPa,Pbのパケットを追い越すおそれがある。パケットの追い越しが発生すると、受信順序が誤るため、パケットから元のデータを正常に復元することができない。
【0089】
図10は、パケットの追い越しの一例を示す図である。
図10において、高優先パケットのPKT#1~#8に添付された数字はパケットのVIDを示す。本例では、VID「100」の先行のPKT#6が、同じVID「100」の後発のPKT#4に追い越される場合を挙げる。
【0090】
なお、
図10には、ノード#1の入力ポート10として、入力ポート10a~10dが記載されている。また、
図10には、高優先キュー141として、優先度が4であるパケットを格納する高優先キューQ#4と、優先度が5であるパケットを格納する高優先キューQ#5とが記載されている。
【0091】
符号G21は、パケットが入力ポート10a~10dから入力されるタイミングを示し、符号G22は、パケットが出力ポート16に出力されるタイミングを示す。
【0092】
レイヤ2スイッチ1は、入力ポート10aでPKT#1~#3を受信し、入力ポート10bでPKT#4~#6を受信する。また、レイヤ2スイッチ1は、入力ポート10cでPKT#7を受信し、入力ポート10dでPKT#8を受信する。
【0093】
PKT#1,#3,#6の優先度は、一例として5とする([5]参照)。また、PKT#2,#4,#5,#7,#8の優先度は、一例として4とする([4]参照)。ここで、PKT#6は、前段のレイヤ2スイッチ1において優先度変更部145により優先度が4から5に上がっていると仮定する。
【0094】
PKT#2,#4,#5,#7,#8は、優先度が4であるパケットに対応する高優先キューQ#4に入力される。また、PKT#1,#3,#6は、優先度が5であるパケットに対応する高優先キューQ#5に入力される。VID「100」のPKT#6は、先行するPKT#4の高優先キューQ#4への入力タイミングより遅れて高優先キューQ#5に入力される。
【0095】
PKT#6とPKT#4は、優先度が相違する高優先キューQ#5,Q#4に格納される。高優先キューQ#5に格納されたパケットは、高優先キューQ#4に格納されたパケットより優先的に読み出されて出力ポート16に出力される。このため、PKT#4より遅れて高優先キューQ#5に格納されたPKT#6が、先行のPKT#4より早く高優先キューQ#5から読み出される。これにより、PKT#6がPKT#4を追い越す。
【0096】
そこで、レイヤ2スイッチ1は、優先度が5であるPKT#6を、高優先キューQ#5ではなく、PKT#4と同じ高優先キューQ#4に入力することにより、同じVID「100」のPKT#4,#6の出力順が逆転して追い越しが発生することを防止する。
【0097】
図11は、パケットの追い越しの防止の動作例を示す。
図11において、
図10と共通する内容の説明は省略する。
【0098】
符号G31は、パケットが入力ポート10a~10dから入力されるタイミングを示し、符号G32は、パケットが出力ポート16に出力されるタイミングを示す。なお、符号G31が示すタイミングは、符号G21が示すタイミングと同一である。
【0099】
本例において、PKT#6は、先行のPKT#4と同じ高優先キューQ#4に入力される。PKT#4,#6は、高優先キューQ#4に入力された順に従って読み出されるため、先行のPKT#4はPKT#6より先に出力される。これにより、追い越しが防止される。
【0100】
このとき、入力部140は、VIDテーブル149に基づきPKT#6の入力先のキューとして高優先キューQ#4を選択する。入力部140は、キュー管理部147にVIDテーブル149からVID「100」の検索を依頼し、VIDテーブル149にVID「100」が登録済みである場合、VID「100」の格納済みのPKT#4と同一の高優先キューQ#4を選択する。
【0101】
図12は、VIDテーブル149の一例を示す図である。なお、
図12には、PKT#6の入力タイミングにおいて、高優先キューQ#4,#5のキューID#4,#5に格納済みのパケットのVIDのみが示されている。
【0102】
入力部140は、PKT#6のVID「100」を、VIDテーブル149に登録済みのVIDと比較することにより、VIDが一致する格納済みのパケットの有無を判定する。このため、入力部140は、キュー管理部147にVID「100」の検索を依頼する。
【0103】
入力部140は、検索の結果、キューID#4に対応するVID「100」を検出する(点線枠参照)。このため、入力部140は、PKT#6の入力先のキューとして高優先キューQ#4を選択する。なお、入力部140は、仮にVID「100」を検出できなかった場合、PKT#6の入力先のキューとして、優先度の6に対応する高優先キューQ#5を選択する。
【0104】
このように、入力部140は、VIDテーブル149内のVIDが一致する格納済みのパケットの有無の判定の結果、該当パケットが有る場合、そのパケットが格納されたキューにパケットを入力し、該当パケットがない場合、優先度に応じた高優先キュー141にパケットを入力する。このため、パケットは、優先度変更部145により優先度が上がっても、後段のレイヤ2スイッチ1において同一VIDの先行のパケットと同じ高優先キュー141に入力されるため、先行のパケットを追い越すことがない。
【0105】
図13は、パケットの入力先の高優先キュー141の選択処理の一例を示すフローチャートである。本処理は、例えば
図5のステップSt3において実行される。
【0106】
入力部140は、例えばパケットのVLANタグから優先度を検出する(ステップSt31)。次に入力部140は、優先度が4以上であるか否かを判定する(ステップSt32)。これにより、入力部140は、パケットが高優先パケットであるか否かを判定する。
【0107】
入力部140は、優先度が3以下である場合(ステップSt32のNo)、つまりパケットが低優先パケットである場合、パケットの優先度に応じた低優先キュー142を入力先のキューとして選択する(ステップSt36)。
【0108】
また、入力部140は、優先度が4以上である場合(ステップSt32のYes)、つまりパケットが高優先パケットである場合、パケットの優先度未満の優先度の高優先キュー141のキューIDについてVIDの検索をキュー管理部147に依頼する(ステップSt33)。キュー管理部147は、依頼に応じてVIDテーブル149からVIDを検索する。
図12の例の場合、入力対象のPKT#6の優先度が5であるため、優先度が4である高優先キュー141のキューID#4についてVIDが検索される。
【0109】
なお、本例のように、VIDテーブル149内の検索範囲をパケットの優先度未満の優先度の高優先キュー141のキューIDのVIDに限定することにより、検索の所要時間が全キューIDのVIDを検索する場合より短縮されるが、これに限定されず、全キューIDのVIDを検索してもよい。
【0110】
次に入力部140は、検索結果に基づき、入力対象のパケットのVIDと同じVIDがVIDテーブル149に有るか否かを判定する(ステップSt34)。入力部140は、同一VIDがない場合(ステップSt34のNo)、パケットの優先度に応じた低優先キュー142を入力先のキューとして選択する(ステップSt36)。
【0111】
また、入力部140は、同一VIDが有る場合(ステップSt34のYes)、VIDテーブル149から検索したVIDに対応するキューIDの高優先キュー141をパケットの入力先のキューとして選択する(ステップSt35)。これにより、同一VIDの先行のパケットと後発のパケットが同一の高優先キュー141に入力されるため、パケットの追い越しが防止される。このようにして、パケットの入力先のキューの選択処理は行われる。
【0112】
なお、本例では、パケットが転送されるパスPa,Pbの識別情報としてVIDを挙げたが、これに限定されない。パスPa,Pbの識別情報としては、例えばSA及びDAの組み合わせやMPLS-TP(Transport Profile)のラベル値が用いられてもよい。
【0113】
(通信システム)
図14は、通信システムの一例を示す構成図である。通信システムのMFH領域には、ノード#1~#3の各レイヤ2スイッチ1が設けられている。各レイヤ2スイッチ1は互いに直列に接続されており、各レイヤ2スイッチ1の配下には複数のRRH2が設けられている。各RRH2はパケットをレイヤ2スイッチ1に送信する。
【0114】
ノード#1のレイヤ2スイッチ1は、RRH2からのパケットを時分割多重して後段のノード#2のレイヤ2スイッチ1に送信する。ノード#2のレイヤ2スイッチ1は、ノード#1及びRRH2からのパケットを時分割多重して後段のノード#3のレイヤ2スイッチ1に送信する。ノード#3のレイヤ2スイッチ1は、ノード#2及びRRH2からのパケットを時分割多重して後段のBBU3に送信する。
【0115】
ノード#1のレイヤ2スイッチ1では、各RRH2からのパケット同士が衝突するため、優先度変更部145による優先度変更機能100が実行される。後段のノード#2のレイヤ2スイッチ1では、ノード#1における優先度変更によるパケットの追い越し(点線の矢印参照)を防止するために、入力部140による追い越し防止機能101が実行される。
【0116】
また、ノード#2のレイヤ2スイッチ1では、各RRH2からのパケットとノード#1からのパケットが衝突するため、優先度変更部145による優先度変更機能100が実行される。後段のノード#3のレイヤ2スイッチ1では、ノード#2における優先度変更によるパケットの追い越し(点線の矢印参照)を防止するために、入力部140による追い越し防止機能101が実行される。
【0117】
また、ノード#3のレイヤ2スイッチ1では、各RRH2からのパケットとノード#2からのパケットが衝突するが、後段のレイヤ2スイッチ1が存在しないため、優先度変更機能100を実行しない。
【0118】
このように、パケット同士の衝突が発生するレイヤ2スイッチ1の前段のレイヤ2スイッチ1が優先度変更機能100を実行することにより衝突遅延を抑制することができる。そして、ノード#1,#2の各レイヤ2スイッチ1が優先度変更機能100を実行することにより、衝突遅延が一部のパケットに偏ることなく、平均的に衝突遅延を抑制することが可能となる。
【0119】
また、優先度変更機能100を実行したレイヤ2スイッチ1の後段のレイヤ2スイッチ1が、追い越し防止機能101を実行することにより、パケットの追い越しが発生することを防止する。なお、ノード#1,#2のレイヤ2スイッチ1は、それぞれ、第1通信装置及び第2通信装置の一例であり、ノード#2,#3のレイヤ2スイッチ1は、それぞれ、第1通信装置及び第2通信装置の一例である。
【0120】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能である。
【0121】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) パケットを格納する複数のキューと、
前記複数のキューのうち、パケットの優先度に応じたキューにパケットを入力する入力部と、
パケットが前記優先度に応じたキューに入力されるとき、第1の時刻を取得してパケットに付与する付与部と、
前記複数のキューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出す読出部と、
パケットが前記複数のキューから読み出されたとき、第2の時刻を取得して、前記第1の時刻と前記第2の時刻の差分からパケットの遅延時間を算出する算出部と、
前記遅延時間に応じてパケットの前記優先度を上げる優先度制御部とを有することを特徴とする通信装置。
(付記2) 前記優先度制御部は、前記遅延時間が閾値より大きい場合、前記優先度を上げることを特徴とする付記1に記載の通信装置。
(付記3) 前記通信装置内の時刻を計時する計時部を有し、
前記付与部は、前記計時部から前記第1の時刻を取得し、
前記算出部は、前記計時部から前記第2の時刻を取得することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
(付記4) 前記優先度制御部は、前記優先度が所定値以上である場合、前記優先度を上げることを特徴とする付記1乃至3の何れかに記載の通信装置。
(付記5) パケットを受信する複数の受信ポートを有し、
前記入力部は、前記複数の受信ポートが受信したパケットを前記優先度に応じたキューに入力することを特徴とする付記1乃至4の何れかに記載の通信装置。
(付記6) パケットを格納する複数のキューと、
前記複数のキューの1つにパケットを入力する入力部と、
パケットから、パケットが転送されるパスの識別情報を取得する取得部と、
前記複数のキューの各々に格納済みのパケットの前記識別情報を記憶する記憶部と、
前記複数のキューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出す読出部とを有し、
前記入力部は、
前記複数のキューに入力するパケットの前記識別情報を、前記記憶部に記憶された前記識別情報と比較することにより、前記複数のキューに入力するパケットに前記識別情報が一致する前記格納済みのパケットの有無を判定し、
判定の結果、前記格納済みのパケットが有る場合、前記格納済みのパケットが格納されたキューにパケットを入力し、前記格納済みのパケットがない場合、パケットの前記優先度に応じたキューにパケットを入力することを特徴とする通信装置。
(付記7) パケットを送信する第1通信装置と、
前記第1通信装置から送信されたパケットを受信する第2通信装置とを有し、
前記第1通信装置は、
パケットを格納する複数の第1キューと、
前記複数の第1キューのうち、パケットの優先度に応じた第1キューにパケットを入力する第1入力部と、
パケットが前記優先度に応じた第1キューに入力されるとき、第1の時刻を取得してパケットに付与する付与部と、
前記複数の第1キューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出す第1読出部と、
パケットが前記複数の第1キューから読み出されたとき、第2の時刻を取得して、前記第1の時刻と前記第2の時刻の差分からパケットの遅延時間を算出する算出部と、
前記遅延時間に応じてパケットの前記優先度を上げる優先度制御部と、
前記複数の第1キューから読み出されたパケットを送信する送信ポートとを有し、
前記第2通信装置は、
前記第1通信装置から送信されたパケットを格納する複数の第2キューと、
前記複数の第2キューの1つにパケットを入力する第2入力部と、
パケットから、パケットが転送されるパスの識別情報を取得する取得部と、
前記複数の第2キューの各々に格納済みのパケットの前記識別情報を記憶する記憶部と、
前記複数の第2キューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出す第2読出部とを有し、
前記第2入力部は、
前記複数の第2キューに入力するパケットの前記識別情報を、前記記憶部に記憶された前記識別情報と比較することにより、前記複数の第2キューに入力するパケットに前記識別情報が一致する前記格納済みのパケットの有無を判定し、
判定の結果、前記格納済みのパケットが有る場合、前記格納済みのパケットが格納された第2キューにパケットを入力し、前記格納済みのパケットがない場合、パケットの前記優先度に応じた第2キューにパケットを入力することを特徴とする通信システム。
(付記8) 前記優先度制御部は、前記遅延時間が閾値より大きい場合、前記優先度を上げることを特徴とする付記7に記載の通信システム。
(付記9) 前記通信装置内の時刻を計時する計時部を有し、
前記付与部は、前記計時部から前記第1の時刻を取得し、
前記算出部は、前記計時部から前記第2の時刻を取得することを特徴とする付記7または8に記載の通信システム。
(付記10) 前記優先度制御部は、前記優先度が所定値以上である場合、前記遅延時間に応じて前記優先度を上げることを特徴とする付記7乃至9の何れかに記載の通信システム。
(付記11) パケットを受信する複数の受信ポートを有し、
前記入力部は、前記複数の受信ポートが受信したパケットを前記優先度に応じたキューに入力することを特徴とする付記7乃至10の何れかに記載の通信システム。
(付記12) パケットを格納する複数のキューのうち、パケットの優先度に応じたキューにパケットを入力し、
パケットが前記優先度に応じたキューに入力されるとき、第1の時刻を取得してパケットに付与し、
前記複数のキューの各々から、前記優先度が高いパケットほど優先的に読み出し、
パケットが前記複数のキューから読み出されたとき、第2の時刻を取得して、前記第1の時刻と前記第2の時刻の差分からパケットの遅延時間を算出し、
前記遅延時間に応じてパケットの前記優先度を上げることを特徴とする通信方法。
(付記13) 前記遅延時間が閾値より大きい場合、前記優先度を上げることを特徴とする付記12に記載の通信方法。
(付記14) 前記優先度が所定値以上である場合、前記遅延時間に応じて前記優先度を上げることを特徴とする付記12または13に記載の通信方法。
(付記15) 複数の受信ポートが受信したパケットを前記優先度に応じたキューに入力することを特徴とする付記12乃至14の何れかに記載の通信方法。
【符号の説明】
【0122】
1 レイヤ2スイッチ
12 タイムスタンプ付与部
15 時刻管理部
140 入力部
141 高優先キュー
143 読出部
145 優先度変更部
146 衝突判定部
147 キュー管理部
148 記憶部