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特許7188410インクジェットプリンタ及び循環プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ及び循環プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20221206BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20221206BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/165 101
B41J2/165 205
B41J2/175 153
B41J2/18
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020065198
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160282
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】西田 勝紀
(72)【発明者】
【氏名】水野 直城
(72)【発明者】
【氏名】岡井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田中 英治
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116054(JP,A)
【文献】特開2018-171848(JP,A)
【文献】特開2014-180861(JP,A)
【文献】特開2006-256128(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2631075(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドに設けられ、ノズルを複数列備えるノズル面と、
各列に設けられた前記ノズルに夫々インクを供給する複数のマニフォールドと、
少なくとも何れかの前記マニフォールドに接続し、前記インクを供給する供給流路と、
少なくとも何れかの前記マニフォールドに接続し、前記供給流路により前記インクが供給された前記マニフォールドから前記インクを循環する循環流路と、
少なくとも2つのノズル列に夫々設けられた前記ノズルの外側で前記ノズル面に接触可能に設けられたキャップと、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記キャップ内に供給された前記インク又は洗浄液を前記ノズル面に接液させた接液状態で、一の前記供給流路、一の前記マニフォールド、および一の前記循環流路にて前記インクを循環するヘッド循環を行うと共に、別の前記供給流路、別の前記マニフォールド、および別の前記循環流路にて前記ヘッド循環を行わない第一循環処理を実行することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記接液状態で、前記別の前記供給流路、前記別の前記マニフォールド、および前記別の前記循環流路にて前記ヘッド循環を行うと共に、前記一の前記供給流路、前記一の前記マニフォールド、および前記一の前記循環流路にて前記ヘッド循環を行わない第二循環処理を実行することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記別の前記供給流路と前記別の前記循環流路を接続する別のバイパス流路を備え、
前記制御部は、前記別の前記供給流路、前記別のバイパス流路、前記別の前記循環流路にてインクを循環するバイパス循環を行う前記第一循環処理を実行すること
を特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記一の前記供給流路と前記一の前記循環流路を接続する一のバイパス流路を備え、前記制御部は、前記一の前記供給流路、前記一のバイパス流路、前記一の前記循環流路にてバイパス循環を行う前記第二循環処理を実行すること
を特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一循環処理、又は前記第二循環処理において、前記ヘッド循環の前記インクの循環速度と、前記ヘッド循環以外の前記インクの循環速度を異ならせることを特徴とする請求項2又は4の何れかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一循環処理、又は前記第二循環処理において、前記ヘッド循環の前記インクの前記循環速度を、前記ヘッド循環以外の前記インクの前記循環速度よりも遅くすることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記インクを循環するポンプを備え、
前記制御部は、前記第一循環処理、又は前記第二循環処理において、前記ヘッド循環の前記ポンプの駆動を間欠駆動で実行することを特徴とする請求項2、4~6の何れかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記制御部は、前記第一循環処理、又は前記第二循環処理において、前記ヘッド循環を行うと共に前記ヘッド循環以外の循環を行い、前記ヘッド循環を前記ヘッド循環以外の循環よりも先に終わらせることを特徴とする請求項2、4~7の何れかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記制御部は、前記第一循環処理、又は前記第二循環処理において、前記ヘッド循環を前記ヘッド循環以外の循環よりも後に開始させることを特徴とする請求項2、4~8の何れかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記ノズル面は、前記ノズルを第一列、第二列、第三列、第四列に設け、
前記マニフォールドは、
前記第一列に設けられた前記ノズルに前記インクを供給する第一マニフォールドと、
前記第一マニフォールドと連通し、前記第二列に設けられた前記ノズルに前記インクを供給する第二マニフォールドと、
前記第三列に設けられた前記ノズルに前記インクを供給する第三マニフォールド、
前記第三マニフォールドに連通し、前記第四列に設けられた前記ノズルに前記インクを供給する第四マニフォールドと
を備え、
前記供給流路は、
前記第一マニフォールドおよび前記第二マニフォールドの一方に接続し、前記インクを供給する第一供給流路と、
前記第三マニフォールドおよび前記第四マニフォールドの一方に接続し、前記インクを供給する第二供給流路と
を備え、
前記循環流路は、
前記第一マニフォールドおよび前記第二マニフォールドの他方に接続し、前記インクを循環する第一循環流路と、
前記第三マニフォールドおよび前記第四マニフォールドの他方に接続し、前記インクを循環する第二循環流路と
を備え、
前記キャップは、前記第一列、前記第二列、前記第三列、前記第四列に夫々設けられた前記ノズルの外側で前記ノズル面に接触可能に設けられ、
前記制御部は、前記接液状態で、前記第一供給流路、前記第一マニフォールド、前記第二マニフォールド、および前記第一循環流路にて前記インクを循環する前記ヘッド循環を行うと共に、前記第二供給流路、前記第三マニフォールド、前記第四マニフォールド、および前記第二循環流路にて前記インクを循環する前記ヘッド循環を行わない前記第一循環処理を実行することを特徴とする請求項1~9の何れかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記制御部は、前記接液状態で、前記第二供給流路、前記第三マニフォールド、前記第四マニフォールド、および前記第二循環流路にて前記インクを循環する前記ヘッド循環を行うと共に、前記第一供給流路、前記第一マニフォールド、前記第二マニフォールド、および前記第一循環流路にて前記インクを循環する前記ヘッド循環を行わない第二循環処理を実行することを特徴とする請求項10に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記第二供給流路と前記第二循環流路を接続する第二バイパス流路を備え、
前記制御部は、前記第二供給流路、前記第二バイパス流路、および前記第二循環流路にて前記インクを循環するバイパス循環を行う第一循環処理を実行することを特徴とする請求項10又は11に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項13】
前記第一供給流路と前記第一循環流路を接続する第一バイパス流路を備え、
前記制御部は、前記第一供給流路、前記第一バイパス流路、および前記第一循環流路にて前記インクを循環するバイパス循環を行う第二循環処理を実行することを特徴とする請求項11~12の何れかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項14】
インクを吐出するヘッドに設けられ、前記インクを吐出するノズルを複数列備えるノズル面と、
各列に設けられた前記ノズルに夫々前記インクを供給する複数のマニフォールドと、
少なくとも何れかの前記マニフォールドに接続し、前記インクを供給する供給流路と、
少なくとも何れかの前記マニフォールドに接続し、前記供給流路により前記インクが供給された前記マニフォールドから前記インクを循環する循環流路と、
少なくとも2つのノズル列に夫々設けられた前記ノズルの外側で前記ノズル面に接触可能に設けられたキャップと、
制御部とを備えたインクジェットプリンタのコンピュータに、
前記キャップ内に供給された前記インク又は洗浄液を前記ノズル面に接液させた接液状態で、一の前記供給流路、一の前記マニフォールド、および一の前記循環流路にて前記インクを循環するヘッド循環を行うと共に、別の前記供給流路から別の前記マニフォールド、および別の前記循環流路にて前記ヘッド循環を行わない第一循環処理を実行させる循環プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ及び循環プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッド内、又はインク貯留部からヘッドまでの流路における、気泡の除去、インク成分の沈降解消を目的としたインクの循環をさせるインクジェットプリンタが知られている。例えば、特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、複数の圧力発生室、供給液室、複数の供給路、循環液室、複数の循環路、及び循環タンクを有している。圧力発生室は複数のノズルに個別に通じ、インクに圧力を付与する。供給液室は圧力発生室に供給するインクを収容する。供給路はインクを供給液室から圧力発生室へ供給する。循環路は、圧力発生室と循環液室とを連通させ、圧力発生室のインクを循環液室に収容させる。循環液室内のインクは、循環タンクに送られる。従って、インクは気泡と共に循環路を経て循環液室から循環タンクに回収される。また、インクの循環によりインク成分の沈降が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-87708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記インクジェットプリンタにおいては、更なる気泡の除去、及びインク成分の沈降解消のために、インクの循環速度を上げると、ノズルのメニスカスを破壊する可能性があった。この場合、ノズルからヘッド内に気泡を引き込んでしまう可能性があった。そこで、キャップ内にインク又は洗浄液を満たした状態にて、循環流路においてインクを循環させることが考えられる。しかし、ノズルからキャップ内に正圧が発生する可能性があり、この場合、キャップがノズル面から離れてしまう。これにより、インクがキャップ外に流れ出す可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、キャップ内に発生する正圧を低減し、インクがキャップ外に流れ出す可能性を低減できるインクジェットプリンタ及び循環プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係るインクジェットプリンタは、ヘッドに設けられ、ノズルを複数列備えるノズル面と、各列に設けられた前記ノズルに夫々インクを供給する複数のマニフォールドと、少なくとも何れかの前記マニフォールドに接続し、前記インクを供給する供給流路と、少なくとも何れかの前記マニフォールドに接続し、前記供給流路により前記インクが供給された前記マニフォールドから前記インクを循環する循環流路と、少なくとも2つのノズル列に夫々設けられた前記ノズルの外側で前記ノズル面に接触可能に設けられたキャップと、制御部とを備え、前記制御部は、前記キャップ内に供給された前記インク又は洗浄液を前記ノズル面に接液させた接液状態で、一の前記供給流路、一の前記マニフォールド、および一の前記循環流路にて前記インクを循環するヘッド循環を行うと共に、別の前記供給流路、別の前記マニフォールド、および別の前記循環流路にて前記ヘッド循環を行わない第一循環処理を実行することを特徴とする。
【0007】
一の供給流路、一のマニフォールド、および一の循環流路にてヘッド循環を行うと共に、別の供給流路、別のマニフォールド、および別の循環流路にてヘッド循環を行わない第一循環処理により、一の供給流路、一のマニフォールド、および一の循環流路にてヘッド循環を行うと共に、別の供給流路、別のマニフォールド、および別の循環流路にてヘッド循環を行うよりもキャップ内に発生する正圧を低減できる。従って、キャップがノズル面から離れてインクがキャップ外に流れ出す可能性を低減できる。
【0008】
前記制御部は、前記接液状態で、前記別の前記供給流路、前記別の前記マニフォールド、および前記別の前記循環流路にて前記ヘッド循環を行うと共に、前記一の前記供給流路、前記一の前記マニフォールド、および前記一の前記循環流路にて前記ヘッド循環を行わない第二循環処理を実行してもよい。
【0009】
接液状態で、別の供給流路、別のマニフォールド、および別の循環流路にてヘッド循環を行うと共に、一の供給流路、一のマニフォールド、および一の循環流路にてヘッド循環を行わない第二循環処理により、キャップ内に発生する正圧を低減しつつ、別の供給流路、別のマニフォールド、および別の循環流路においても気泡の除去、及びインク成分の沈降解消が向上する。
【0010】
前記別の前記供給流路と前記別の前記循環流路を接続する前記別のバイパス流路を備え、前記制御部は、前記別の前記供給流路、前記別のバイパス流路、前記別の前記循環流路にてインクを循環するバイパス循環を行う前記第一循環処理を実行してもよい。
【0011】
バイパス循環では、マニフォールドよりもノズルから離れたバイパス流路でインクを循環できる。従って、第一循環処理として、ヘッド循環と共にバイパス循環を行うことにより、キャップ内に発生する正圧を低減できる。
【0012】
前記一の前記供給流路と前記一の前記循環流路を接続する一のバイパス流路を備え、前記制御部は、前記一の前記供給流路、前記一のバイパス流路、前記一の前記循環流路にてバイパス循環を行う前記第二循環処理を実行してもよい。
【0013】
バイパス循環では、マニフォールドよりもノズルから離れたバイパス流路でインクを循環できる。従って、第二循環処理として、他のヘッド循環と共にバイパス循環を行うことにより、キャップ内に正圧が発生する可能性を低減できる。
【0014】
前記制御部は、前記第一循環処理、又は前記第二循環処理において、前記ヘッド循環の前記インクの循環速度と、前記ヘッド循環以外の前記インクの循環速度を異ならせてもよい。
【0015】
前記制御部は、前記第一循環処理、又は前記第二循環処理において、前記ヘッド循環の前記インクの前記循環速度を、前記ヘッド循環以外の前記インクの前記循環速度よりも遅くしてもよい。この場合、ヘッド循環のインクの循環速度を、ヘッド循環以外のインクの循環速度よりも遅くして、ヘッド循環時にキャップ内に発生する正圧を低減できる。
【0016】
前記インクジェットプリンタは前記インクを循環するポンプを備え、前記制御部は、前記第一循環処理、又は前記第二循環処理において、前記ヘッド循環の前記ポンプの駆動を間欠駆動で実行してもよい。この場合、ヘッド循環のポンプの駆動を間欠駆動することにより、ヘッド循環時にキャップ内に発生する正圧を低減できる。
【0017】
前記制御部は、前記第一循環処理、又は前記第二循環処理において、前記ヘッド循環を行うと共に前記ヘッド循環以外の循環を行い、前記ヘッド循環を前記ヘッド循環以外の循環よりも先に終わらせてもよい。この場合、ヘッド循環をヘッド循環以外の循環よりも先に終わらせることにより、キャップ内に負圧が発生した状態でヘッド循環を終わらせることができ、キャップ内に発生する正圧を低減できる。
【0018】
前記制御部は、前記第一循環処理、又は前記第二循環処理において、前記ヘッド循環を前記ヘッド循環以外の循環よりも後に開始させてもよい。この場合、ヘッド循環をヘッド循環以外の循環よりも後に開始させることにより、ヘッド循環以外の循環により先にキャップ内に負圧を発生させ、ヘッド循環時にキャップ内に発生する正圧を低減できる。
【0019】
前記ノズル面は、前記ノズルを第一列、第二列、第三列、第四列に設け、前記マニフォールドは、前記第一列に設けられた前記ノズルに前記インクを供給する第一マニフォールドと、前記第一マニフォールドと連通し、前記第二列に設けられた前記ノズルに前記インクを供給する第二マニフォールドと、前記第三列に設けられた前記ノズルに前記インクを供給する第三マニフォールドと、前記第三マニフォールドに連通し、前記第四列に設けられた前記ノズルに前記インクを供給する第四マニフォールドとを備え、前記供給流路は、前記第一マニフォールドおよび前記第二マニフォールドの一方に接続し、前記インクを供給する第一供給流路と、前記第三マニフォールドおよび前記第四マニフォールドの一方に接続し、前記インクを供給する第二供給流路とを備え、前記循環流路は、前記第一マニフォールドおよび前記第二マニフォールドの他方に接続し、前記インクを循環する第一循環流路と、前記第三マニフォールドおよび前記第四マニフォールドの他方に接続し、前記インクを循環する第二循環流路とを備え、前記キャップは、前記第一列、前記第二列、前記第三列、前記第四列に夫々設けられた前記ノズルの外側で前記ノズル面に接触可能に設けられ、前記制御部は、前記接液状態で、前記第一供給流路、前記第一マニフォールド、前記第二マニフォールド、および前記第一循環流路にて前記インクを循環する前記ヘッド循環を行うと共に、前記第二供給流路、前記第三マニフォールド、前記第四マニフォールド、および前記第二循環流路にて前記インクを循環する前記ヘッド循環を行わない前記第一循環処理を実行してもよい。
【0020】
この場合、接液状態で、第一供給流路、第一マニフォールド、第二マニフォールド、および第一循環流路にてインクを循環するヘッド循環を行うと共に、第二供給流路、第三マニフォールド、第四マニフォールド、および第二循環流路にてインクを循環するヘッド循環を行わない第一循環処理により、キャップ内に発生する正圧を低減できる。従って、キャップがノズル面から離れてインクがキャップ外に流れ出す可能性を低減できる。
【0021】
前記制御部は、前記接液状態で、前記第二供給流路、前記第三マニフォールド、前記第四マニフォールド、および前記第二循環流路にて前記インクを循環する前記ヘッド循環を行うと共に、前記第一供給流路、前記第一マニフォールド、前記第二マニフォールド、および前記第一循環流路にて前記インクを循環する前記ヘッド循環を行わない第二循環処理を実行してもよい。
【0022】
この場合、接液状態で、第二供給流路、第三マニフォールド、第四マニフォールド、および第二循環流路にてインクを循環するヘッド循環を行うと共に、第一供給流路、第一マニフォールド、第二マニフォールド、および第一循環流路へインクを循環するヘッド循環を行わない第二循環処理により、キャップ内に発生する正圧を低減しつつ、第二供給流路、第三、四マニフォールド、および第二循環流路においても気泡の除去、及びインク成分の沈降解消が向上する。
【0023】
前記インクジェットプリンタは、前記第二供給流路と前記第二循環流路を接続する第二バイパス流路を備え、前記制御部は、前記第二供給流路、前記第二バイパス流路、および前記第二循環流路にて前記インクを循環するバイパス循環を行う第一循環処理を実行してもよい。この場合、バイパス循環ではヘッド循環よりもインクの流速が速くできる。従って、ノズルに負圧を発生させ、キャップ内に負圧を発生させることができる。第一循環処理として、ヘッド循環と共にバイパス循環を行うことにより、キャップ内に発生する正圧を低減できる。
【0024】
前記インクジェットプリンタは、前記第一供給流路と前記第一循環流路を接続する第一バイパス流路を備え、前記制御部は、前記第一供給流路、前記第一バイパス流路、および前記第一循環流路にて前記インクを循環するバイパス循環を行う第二循環処理を実行してもよい。この場合、バイパス循環ではヘッド循環よりもインクの流速が速くできる。従って、ノズルに負圧を発生させ、キャップ内に負圧を発生させることができる。第二循環処理として、ヘッド循環と共にバイパス循環を行うことにより、キャップ内に発生する正圧を低減できる。
【0025】
本発明の第二態様に係る循環プログラムは、インクを吐出するヘッドに設けられ、前記インクを吐出するノズルを複数列備えるノズル面と、各列に設けられた前記ノズルに夫々前記インクを供給する複数のマニフォールドと、少なくとも何れかの前記マニフォールドに接続し、前記インクを供給する供給流路と、少なくとも何れかの前記マニフォールドに接続し、前記供給流路により前記インクが供給された前記マニフォールドから前記インクを循環する循環流路と、少なくとも2つのノズル列に夫々設けられた前記ノズルの外側で前記ノズル面に接触可能に設けられたキャップと、制御部とを備えたインクジェットプリンタのコンピュータに、前記キャップ内に供給された前記インク又は洗浄液を前記ノズル面に接液させた接液状態で、一の前記供給流路、一の前記マニフォールド、および一の前記循環流路にて前記インクを循環するヘッド循環を行うと共に、別の前記供給流路から別の前記マニフォールド、および別の前記循環流路にて前記ヘッド循環を行わない第一循環処理を実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】プリンタ1の内部構造の斜視図である。
図2】プリンタ1の内部構造の縦断面図である。
図3】ヘッドユニット100の斜視図である。
図4】ヘッドユニット100の部分断面である。
図5】ヘッド部110のノズル111とマニフォールド170A、180Aを示す部分横断面である。
図6】プリンタ1のインク68の流路構成を示す図である。
図7】洗浄液76A及びインク68の流路図である。
図8】プリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
図9】接液循環処理のフローチャートである。
図10】循環動作Aのサブルーチンである。
図11】接液状態を示す流路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2を参照して、プリンタ1の概略構成を説明する。図1の上方、下方、左下方、右上方、右下方、及び左上方が、各々、プリンタ1の上方、下方、前方、後方、右方、及び左方である。
【0028】
図1に示すように、プリンタ1は、紙、Tシャツ等の布帛といった印刷媒体(図示略)に対して、インクを吐出することで印刷を行う。本実施形態においては、プリンタ1は、互いに異なる5種のインク(ホワイト(W)、ブラック(K)、イエロー(Y)、シアン(C)、およびマゼンタ(M))を下方へ向けて吐出することで、印刷媒体にカラー画像を印刷する。以下の説明では、5種のインクのうち、ホワイトのインクを白インクといい、ブラック、シアン、イエロー、およびマゼンタの4色のインクを総称する場合はカラーインクという。また、白インクとカラーインクとを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、単にインクという。インクに樹脂成分を含ませることで、印刷媒体に対するインクの密着性が向上する。また、白インクは、エマルジョンを含み、顔料として酸化チタンを含む。酸化チタンは相対的に比重が高く、顔料粒子が沈殿しやすい。よって、白インクの印刷が長時間行われなかった場合には、白インクの沈殿を解消させた後に白インクによる印刷が行われるのが望ましい。
【0029】
図1に示すように、プリンタ1は、筐体2、枠体10、ガイドシャフト9、レール7、キャリッジ20、ヘッドユニット100,200、駆動ベルト101、駆動モータ19、プラテン駆動機構6、及びプラテン5等を備える。筐体2には、操作部(図示せず)が設けられている。操作部は、ディスプレイ45(図8参照)及び操作ボタン46(図8参照)を備える。操作ボタン46は、作業者がプリンタ1の各種動作に関する指示を入力する際に操作される。
【0030】
枠体10は、平面視略長方形状の枠状であり、筐体2の上部に設置される。枠体10は、前方側にガイドシャフト9を、後方側にレール7をそれぞれ支持する。ガイドシャフト9は、枠体10の内側にて左右方向に延びる。レール7は、左右方向に延びるガイドシャフト9に対向して配置される。キャリッジ20は、ガイドシャフト9に沿って左右方向に搬送可能に支持されている。図1に示すように、ヘッドユニット100,200は、前後方向に並べられてキャリッジ20に搭載されている。ヘッドユニット100は、ヘッドユニット200よりも後方に位置する。
【0031】
駆動ベルト101は、枠体10の内側にて左右方向に沿って架け渡されている。駆動モータ19は、枠体10の内側の右前部に設けられる。駆動モータ19は、駆動ベルト101を介してキャリッジ20と連結されている。駆動モータ19が駆動ベルト101を駆動すると、キャリッジ20が左右方向(走査方向)に往復移動する。これにより、ヘッドユニット100,200は左右方向に往復移動する。
【0032】
プラテン駆動機構6は、一対のガイドレール(図示せず)、及びプラテン5を備える。一対のガイドレールは、プラテン駆動機構6の内側にて前後方向に延び、プラテン5を前後方向に移動可能に支持する。プラテン5は、板状であり、枠体10の下方に設けられている。プラテン5は、上部にて印刷媒体を保持する。プラテン駆動機構6は、後述する副走査駆動部16(図8参照)によって駆動されることで、プラテン5を一対のガイドレールに沿って前後方向に移動する。プラテン5が印刷媒体を前後方向(副走査方向)に搬送しつつ、左右方向に往復移動するヘッド部110からインクが吐出されることで、印刷媒体への印刷が行われる。
【0033】
図2に示すように、プリンタ1のメンテナンス部141は、キャップ91、及びキャップ支持部92を備える。キャップ91はキャップ支持部92に指示され、キャップ駆動部18(図8参照)により、後述する第一ノズル列W1、第二ノズル列W2、第三ノズル列W3及び第四ノズル列W4の外側で、後述するノズル面112に接触可能に設けられている。
【0034】
<ヘッドユニット100>
図3及び図4を参照して、ヘッドユニット100の詳細構成について説明する。図3に示すように、ヘッドユニット100は、筐体30、ヘッド部110、バッファタンク60等を備える。筐体30は、略箱状であり、インクを吐出するヘッド部110を下部において支持する。ヘッド部110の内部は、例えば、マニフォールド170A、180A、170B、180Bに白インクを供給する四つのインク室(図示外)に区分されている。ヘッド部110は、平面状のノズル面112を有する。ノズル面112には白インクを吐出する複数のノズル111が設けられている。複数のノズル111は、ノズル面112の前側から前後方向に沿って後方へ1列に、且つ左右方向に沿って複数列に並んでいる。図3に示すように、複数のノズル111は、左から第一ノズル列W1、第二ノズル列W2、第三ノズル列W3、第四ノズル列W4の4組に分かれている。複数のノズル111は、ヘッド部110の内部に設けられる複数の吐出チャンネル(図示略)と対応している。複数の吐出チャンネルは、ヘッド部110の内部に設けられる複数の圧電素子(図示略)が駆動することで、それぞれに対応する複数のノズル111から、白インクを下方向へ吐出可能である。ヘッドユニット100は、ノズル面112を下方に向けた状態でキャリッジ20に載置されている。
【0035】
図3および図4に示すように、バッファタンク60は、中空の直方体状であり、ヘッドユニット100の上部において、ノズル面112と平行に延びて形成される。 バッファタンク60は、インクをその内部に一時的に貯留することで、ヘッド部110へ供給されるインクの圧力変動を吸収した後、インクをヘッド部110へ供給する。図4に示すように、バッファタンク60は、前側にインクを貯留する4つの貯留室61を備え、各貯留室61は、下方に向かう流路62A、62B,62C,62Dに夫々接続される。流路62A、62B,62C,62Dは下部にフィルタ75E,75F,75G,75Hを夫々備える。流路62A~62Dは、各々、フィルタ75E~75Hを介して、後述するマニフォールド170A、180A、170B、180Bに夫々接続される。
【0036】
<第一ノズル列W1及び第二ノズル列W2のマニフォールドの構造>
図5を参照して、第一ノズル列W1及び第二ノズル列W2のマニフォールドの構造を説明する。図5は、図4に示すヘッド部110内のマニフォールドの構造を示す部分横断面図である。図5では、第一ノズル列W1及び第二ノズル列W2のマニフォールドの構造を示し、第二ノズル列W2の右側の第三ノズル列W3及び第四ノズル列W4については、省略している。図5に示すように、ヘッド部110は、第一ノズル列W1及び第二ノズル列W2を有する。第一ノズル列W1は、複数のマニフォールド171~174及び複数のノズル列L1~L6を有する。第二ノズル列W2は、複数のマニフォールド181~183及び複数のノズル列L7~L12を有する。第一ノズル列W1のマニフォールド171は、ノズル列L1に含まれるノズル111と連通している。マニフォールド172は、ノズル列L2,L3に含まれるノズル111と連通している。マニフォールド173は、ノズル列L4,L5に含まれるノズル111と連通している。マニフォールド174は、ノズル列L6に含まれるノズル111と連通している。マニフォールド171~174の各々の前端部には、供給口131,132,133,及び134が夫々設けられている。供給口131~134は、フィルタ75E(図4参照)を介して流路62Aに接続され、インク68をマニフォールド171~174に夫々供給可能である。マニフォールド171~174を以下「マニフォールド170A」とも言う。
【0037】
また、第二ノズル列W2のマニフォールド181は、ノズル列L7,L8に含まれるノズル111と連通している。マニフォールド182は、ノズル列L9,L10に含まれるノズル111と連通している。マニフォールド183は、ノズル列L11,L12に含まれるノズル111と連通している。マニフォールド181~183の各々の前端部には、供給口135,136,及び137が夫々設けられている。供給口135~137は、フィルタ75F(図4参照)を介して流路62Bに接続され、インク68をマニフォールド181~183に、夫々供給可能である。マニフォールド181~183を以下「マニフォールド180A」とも言う。マニフォールド181~183の各々の後端部は、連通路150Aの左端側に接続する。また、マニフォールド171~174の各々の後端部は、150Aの右端側に接続する。
【0038】
印刷媒体への印刷時には、上記のようにインク68は、供給口131~137からマニフォールド171~174,181~183へ、各々供給され、ノズル列L1~L12から吐出される。また、後述するインク68のヘッド循環時には、第一ノズル列W1と第二ノズル列W2の一方側から他方側へインク68が流れる。例えば、インク68は、供給口131~134からマニフォールド171~174へ夫々流れ、さらに、インク68は、連通路150Aを経てマニフォールド181~183に流れて、供給口135~137へ戻る。従って、インク68のヘッド循環時には、マニフォールド171~174、連通路150A、マニフォールド181~183がヘッド部110内のインク68の循環流路を構成する。ヘッド部110内の流路62A~62D、マニフォールド171~174、181~183、連通路150Aはヘッド部110外の後述する流路714C,715C,802(図6参照)よりも狭く構造が複雑であるので、ヘッド部110内の流路抵抗は、ヘッド部110外の流路抵抗よりも大きい。尚、第三ノズル列W3及び第四ノズル列W4にインク68を供給する流路同様の構造となっている。
【0039】
<インク供給部700A、700B>
図6に示すように、インク供給部700A、700Bは、インク68をサブパウチ8からヘッド部110に供給し、また、インク68が循環する部位である。サブパウチ8は、一例として、可撓性を有する袋状であり、白インクのメインタンク(図示略)から供給されたインク68を収容する。また、サブパウチ8は、第一流路711により白インクのメインタンク(図示略)に接続される。サブパウチ8のインク68は、循環流路721によりメインタンクに循環される。サブパウチ8は、第二流路712を介してインク供給部700Aに接続し、第三流路713を介してインク供給部700Bに接続する。
【0040】
インク供給部700Aは、第四流路714A、第五流路715A、第一バイパス流路801A、第二バイパス流路802A、第二バイパス流路802B、ポンプ752A、及び電磁弁31A、763A,766A、及びフィルタ75A、75B、772Aを備える。以下では、区別する必要のない場合、第二バイパス流路802A、及び第二バイパス流路802Bを総称して「第二バイパス流路802」という。図6に示すようにヘッド部110のマニフォールド170Aは、一端が流路62Aに接続し、他端が連通路150Aに接続する。マニフォールド180Aは、一端が流路62Bに接続し、他端が連通路150Aに接続する。第四流路714A(714C)のうち、ヘッド部110内の流路が流路62Aであるので、第四流路714A(714C)は、マニフォールド170Aに接続し、インク68をマニフォールド170Aに供給する。第五流路715A(715C)のうち、ヘッド部110内の流路が流路62Bであるので、第五流路715A(715C)は、マニフォールド180Aに接続し、インク68をマニフォールド180Aに供給する。マニフォールド170B、180Bと第四流路714B、第五流路715Bとの関係は、マニフォールド170A、180Aと第四流路714A、第五流路715Aとの関係と同様である。
【0041】
図6に示すように、第二流路712は、サブパウチ8と、第四流路714A及び第五流路715Aとに接続し、サブパウチ8から第四流路714A及び第五流路715Aへインク68を供給する。第三流路713は、サブパウチ8と第四流路714B及び第五流路715Bに接続し、サブパウチ8から第四流路714B及び第五流路715Bへインク68を供給する。第四流路714Aは電磁弁763A、及びフィルタ75Aを備える。電磁弁763Aは、CPU11(図8参照)によって制御され、第四流路714Aを開閉する。第五流路715Aは電磁弁766A、及びフィルタ75Bを備える。電磁弁766Aは、CPU11によって制御され、第五流路715Aを開閉する。
【0042】
第一バイパス流路801Aが、ヘッド部110外にて、第四流路714Aと第五流路715Aとを接続する。例えば、第一バイパス流路801Aは、フィルタ75A、75Bよりも下流で第四流路714Aと第五流路715Aとを接続する。第一バイパス流路801Aは、フィルタ772A、及びポンプ752Aを備える。フィルタ772Aは、ポンプ752Aよりも第四流路714A側に設けられる。なお、第四流路714Aの内、第一バイパス流路801Aとの接続箇所よりも下流を第四流路714Cという。また、第五流路715Aの内、第一バイパス流路801Aとの接続箇所よりも下流を第五流路715Cという。第五流路715Cは後述するインクの循環処理時に、インク68の循環流路として機能する。
【0043】
第一バイパス流路801Aよりもヘッド部110側において、第四流路714Aと第五流路715Aは、第二バイパス流路802を介して接続する。第二バイパス流路802は、電磁弁31Aを備える。電磁弁31Aは、CPU11によって制御され、第二バイパス流路802を開閉する。第二バイパス流路802の内、電磁弁31Aと第四流路714Cとの間が第二バイパス流路802Aとし、電磁弁31Aと第五流路715Cとの間が第二バイパス流路802Bとする。
【0044】
インク供給部700Bは、インク供給部700Aと同様の構成を有し、第四流路714B、第五流路715B、第一バイパス流路801B、第二バイパス流路902A、第二バイパス流路902B、ポンプ752B、及び電磁弁31B、763B,766B、及びフィルタ75C、75D、772Bを備える。以下では、区別する必要のない場合、第二バイパス流路902A、及び第二バイパス流路902Bを総称して「第二バイパス流路902」という。ヘッド部110は、白インクを吐出する第三ノズル列W3、及び第四ノズル列W4、連通路150B、マニフォールド170B及びマニフォールド180Bを更に備える。マニフォールド170Bは、一端が流路62Cに接続し、他端が連通路150Bに接続する。マニフォールド180Bは、一端が流路62Dに接続し、他端が連通路150Bに接続する。
【0045】
第四流路714Bは、第三流路713とマニフォールド170Bに接続し、マニフォールド170Bへインク68を供給する。マニフォールド170Bは第三ノズル列W3のノズル111(図3参照)へインク68を供給する。第五流路715Bは、第三流路713とマニフォールド180Bに接続し、マニフォールド180Bへインク68を供給する。マニフォールド180Bは第四ノズル列W4のノズル111(図3参照)へインク68を供給する。
【0046】
第四流路714Bは電磁弁763B、及びフィルタ75Cを備える。電磁弁763Bは、CPU11によって制御され、第四流路714Bを開閉する。第五流路715Bは電磁弁766B、及びフィルタ75Dを備える。電磁弁766Bは、CPU11によって制御され、第五流路715Bを開閉する。
【0047】
第一バイパス流路801Bが、第四流路714Bと第五流路715Bとを接続する。例えば、第一バイパス流路801Bは、フィルタ75C、75Dよりも下流で第四流路714Bと第五流路715Bとを接続する。第一バイパス流路801Bは、フィルタ772B、及びポンプ752Bを備える。フィルタ772Bは、ポンプ752Bよりも第四流路714B側に設けられる。なお、第四流路714Bの内、第一バイパス流路801Bとの接続箇所よりも下流を第四流路714Dという。また、第五流路715Bの内、第一バイパス流路801Bとの接続箇所よりも下流を第五流路715Dという。第五流路715Dは後述するインクの循環処理時に、インク68の循環流路として機能する。
【0048】
また、ヘッド部110側において、第四流路714Bと第五流路715Bは、第二バイパス流路902を介して接続する。第二バイパス流路902は、電磁弁31Bを備える。電磁弁31は、CPU11によって制御され、第二バイパス流路902を開閉する。第二バイパス流路902の内、電磁弁31Bと第四流路714Dとの間が第二バイパス流路902Aとし、電磁弁31Bと第五流路715Dとの間が第二バイパス流路902Bとする。尚、図6では、図4に示す流路62A~62D、及びフィルタ75E~75Hは図示されていないが、それらが設けられる位置は、夫々、ヘッド部110内において、マニフォールド170A、180A、170B、180Bに接続する第四流路714A、714B、第五流路715A、715Bの部分である。
【0049】
<洗浄液供給部120>
図7に示す洗浄液供給部120は、プリンタ1に設けられ、洗浄液ボトル76、洗浄液流路121、排液流路122、吸引ポンプ190、及び排液タンク77を備える。洗浄液ボトル76は洗浄液76Aを収容する。洗浄液流路121は、洗浄液ボトル76とキャップ91の供給孔661を接続して、洗浄液76Aをキャップ91の内部663に供給する。また、洗浄液流路121は、大気開放口123、電磁弁781及び電磁弁782を備える。電磁弁782は、大気開放口123を開閉する。電磁弁781は洗浄液流路121を開閉する。排液流路122は、キャップ91の排気孔662と、排液タンク77を接続する。また、排液流路122は、電磁弁783及び吸引ポンプ190を備える。電磁弁783は排液流路122を開閉する。吸引ポンプ190は、排液流路122及びキャップ91の内の空気、インク68及び洗浄液76Aを吸引して、排液タンク77に排出する。
【0050】
<プリンタ1の電気的構成>
図8に示すように、プリンタ1は、プリンタ1の制御を司るCPU11を備える。CPU11は、ROM12、RAM13、ヘッド駆動部14、主走査駆動部15、副走査駆動部16、EEPROM17、キャップ駆動部18、ディスプレイ45、操作ボタン46、ポンプ駆動部21、及び弁駆動部780にバス22を介して電気的に接続する。
【0051】
ROM12は、CPU11がプリンタ1の動作を制御するための制御プログラム及び初期値等を記憶している。RAM13は、制御プログラムで用いられる各種データを一時的に記憶する。EEPROM17は不揮発メモリであり、後述する印刷処理(S1)が終わった時間等を記憶する。ヘッド駆動部14は、インクを吐出するヘッド部110に電気的に接続されており、ヘッド部110(図3図4参照)の各吐出チャンネルに設けられた圧電素子を駆動してノズル111からインクを吐出させる。
【0052】
主走査駆動部15は、駆動モータ19に接続され、キャリッジ20を左右方向(主走査方向)に移動させる。副走査駆動部16は、図示しないモータ及びギア等を含み、プラテン駆動機構6(図1参照)を駆動してプラテン5を前後方向(副走査方向)に移動させる。
【0053】
キャップ駆動部18は、キャップ駆動モータ(図示せず)及びギア等を含み、図2に示すキャップ支持部92を上下方向に移動させることでキャップ91を上下方向に移動させる。ディスプレイ45は各種情報を表示する。操作ボタン46からの入力はCPU11に入力される。ポンプ駆動部21は、吸引ポンプ190、ポンプ752A及びポンプ752Bを駆動制御する。弁駆動部780は、電磁弁781、782、783、784、31A、31B、763A、766A、763B、及び766Bを駆動制御する。
【0054】
<接液循環処理>
図6図11を参照して、接液循環処理を説明する。プリンタ1においては、インク68の流路におけるインク68中の気泡の除去、顔料などのインク成分の沈降解消を目的として、一定時間ごとにインク68の循環が行われる。この場合に、更なる気泡の除去、およびインク成分の沈降解消のために、インク68の循環速度を上げてインク68の循環を行うと、ノズル111のメニスカスを破壊する可能性があった。メニスカスが破壊されると、ノズル111からヘッド部110内に気泡が侵入する、もしくはインク68がノズル111から流出するなどの不具合が発生する場合がある。従って、不具合が発生する可能性を低減しつつ、インク68の循環速度を上げてインク68の循環を行うために、接液循環を行うことが考えられる。接液循環ではキャップ91をノズル111を覆うようにノズル面112に密着させて、キャップ91内に洗浄液76Aを満たした状態にて、例えば、第一バイパス流路801A、第四流路714C、マニフォールド170A、連通路150A、マニフォールド180A、第五流路715Cにおいてインク68が循環される。ノズル111からキャップ91内に正圧が発生すると、キャップ91がノズル面112から離れてしまい、インク68がキャップ91外に流れ出す可能性がある。この場合には、インク68がプリンタ1の部品に付着する可能性がある。例えば、キャップ支持部92及びキャップ91を押圧するバネ(図示外)に付着すると、キャップ支持部92及びバネにインク68の顔料や樹脂成分が残り、キャップ91によるノズル面112へのキャッピングが不良になる可能性がある。また、キャップ91から漏れたインク68がセンサ(図示外)に付着すると検出不良を生じる可能性がある。この他にも、漏れたインク68が他の駆動部品に付着すると駆動不良が生じる可能性があった。本実施の形態の接液循環処理は、キャップ91内に発生する正圧を低減することを目的としている。
【0055】
CPU11は、例えば、プリンタ1の電源がオンされた場合に、ROM12からプリンタ1の印刷動作等の主制御を行うメイン処理(図示しない)のプログラム、及び接液循環処理(図9参照)のプログラム等を読み出し、RAM13に展開する。CPU11は、プログラムに従って、メイン処理、及び接液循環処理を実行する。
【0056】
図9に示すように、CPU11は印刷処理(S1)が終了すると、ノズル111の乾燥を防止するために、キャップ駆動部18によりキャップ91を上昇させ、ヘッド部110のノズル面112にキャップ91を当接させる。そしてCPU11は、終了時刻をEEPROM17に記憶する(S1)。次に、CPU11は、EEPROM17に記憶されている直近の印刷処理(S1)の終了時刻から第一所定時間が経過したか判断する(S2)。第一所定時間は、例えば6時間である。CPU11は、第一所定時間が経過したと判断しない場合(S2:NO)にはS2の判断を続ける。CPU11は、第一所定時間が経過したと判断した場合(S2;YES)、終業メンテナンスを行う(S3)。
【0057】
終業メンテナンスの一例を図7、および図11を参照し、説明する。ヘッド部110のノズル面112にキャップ91が当接した状態でCPU11は、電磁弁781を閉鎖し、電磁弁783を開放する。次いで、CPU11は、吸引ポンプ190を一定時間駆動する。排液流路122及びキャップ91内が負圧になり、CPU11は、図7に示すように、ヘッド部110のノズル111からインクが吸引されるバージを実行する。次いで、CPU11は、電磁弁781を開放し、電磁弁782を閉鎖する。電磁弁783は開いたままである。次いで、CPU11は、吸引ポンプ190を駆動する。排液流路122、キャップ91、及び洗浄液流路121内が負圧になり、図11に示すように、洗浄液ボトル76から洗浄液76Aが、洗浄液流路121、電磁弁781、キャップ91に流れる。その後、CPU11は、吸引ポンプ190を停止すると共に、電磁弁781、電磁弁783を閉じる。従って、キャップ91内が洗浄液で満たされ、洗浄液76Aがノズル面112に接液した状態が保持される。
【0058】
<循環動作A>
次に、CPU11は、循環動作Aを実行する(S4)。CPU11は、循環動作Aとして、第一循環処理において、第一ノズル列W1及び第二ノズル列W2については後述するヘッド循環を行い、第三ノズル列W3及び第四ノズル列W4については、ヘッド循環を行わない。ポンプ752Aがインク68を送出する方向の下流側にフィルタ772Aが設けられているので、ポンプ752Aからのインク68の送出による正圧とポンプ752Aのインク68の吸込による負圧の釣り合う圧力のゼロ点は、連通路150Aの中央に対して第一ノズル列W1のマニフォールド170A側に移動する。この結果、第一ノズル列W1及び第二ノズル列W2のノズル111には負圧が発生する。また、ポンプ752Aがインク68を吸引する吸引能力はポンプ752Aの構造上、絶対真空を作り出すことは出来ず所定の値に定まっている。これに対してポンプ752Aがインク68を送り出す送出能力はポンプ752Aの回転数を上げれば吸引能力よりも高めることができる。従って、ヘッド循環では、ポンプ752Aの回転数を上げても、ヘッド部110のマニフォールド170A、連通路150A、マニフォールド180Aの流路抵抗が大きいので、ポンプ752Aの吸込能力が送出能力に追いつかず、圧力のゼロ点がマニフォールド180A側に移動して第一ノズル列W1及び第二ノズル列W2のノズル111に正圧が発生する可能性があった。
【0059】
インク68が、流路抵抗の大きいヘッド部110内を循環せず、ヘッド部110外の流路を循環する、後述するバイパス循環、およびフィルタ循環などのヘッド外循環ではヘッド循環に比べて、インク68が通る流路の流路抵抗が遙かに小さい。従って、ポンプ752Bに掛かる負荷が低減しポンプ752Bの吸込能力が低下しない。また、ヘッド外循環は、ヘッド循環に比べてノズル111から離れた第二バイパス流路802、902、第四流路714A、第五流路715Aにてインク68を循環できる。従って、圧力のゼロ点はマニフォールド170A側でありノズル111に負圧がかかる。すなわち、ヘッド外循環は、ノズル111に掛かる正圧がヘッド循環よりも低減する。第三ノズル列W3及び第四ノズル列W4側においても同様である。本実施形態では、CPU11は、インク供給部700A、700Bにおいて、同時にヘッド循環を行わずに、一方においてヘッド循環を実行し、他方においてヘッド外循環を実行する、または循環を実行しないことにより、キャップ91内に発生する正圧を低減させる。以下、循環動作Aについて図10に示すサブルーチンを参照して説明する。初めにCPU11は、第一循環処理(S42)、第二循環処理(S43)の実行回数をカウントするカウンタnを「n=0」としてリセットする(S41)。
【0060】
<第一循環処理>
次いで、CPU11は、第一循環処理(S42)を実行する。CPU11は、第一循環処理として、第一ノズル列W1及び第二ノズル列W2については、後述するヘッド循環を所定時間行う。また、CPU11は、第一循環処理として、第三ノズル列W3及び第四ノズル列W4については後述するバイパス循環を所定時間行う。
【0061】
<第一循環処理における第一ノズル列W1及び第二ノズル列W2のヘッド循環>
図6を参照して、第一循環処理における第一ノズル列W1,第二ノズル列W2のヘッド循環を説明する。CPU11は、インク供給部700Aの電磁弁763A、電磁弁766A、及び電磁弁31Aを閉じる。次いで、CPU11は、ポンプ752Aを所定の回転速度で所定時間駆動する。従って、インク68は、ポンプ752Aから第一バイパス流路801Aを矢印401Aの方向へ流れ、第四流路714Cを矢印403Aの方向に流れる。電磁弁31Aが閉じているので、インク68は、ヘッド部110のマニフォールド170A、連通路150A、マニフォールド180Aを矢印411A,412A,413Aの方向に流れる。次いで、インク68は、第五流路715Cを矢印407Aの方向に流れ、第一バイパス流路801Aに流入する。第一バイパス流路801Aに流入したインク68は、ポンプ752Aから矢印401Aの方向へ流れ、上記同様に循環する。CPU11は、所定時間、インク68のヘッド循環を行った後に、ポンプ752Aを停止する。
【0062】
<第一循環処理における第三ノズル列W3及び第四ノズル列W4のヘッド循環以外の循環>
図6を参照して、第三ノズル列W3,第四ノズル列W4のヘッド循環以外の循環を説明する。第三ノズル列W3,第四ノズル列W4のヘッド循環以外の循環とは、第四流路714D、マニフォールド170B、連通路150B、マニフォールド180B、及び第五流路715Dをインク68が循環しない循環である。例えば、CPU11は、インク供給部700Bの電磁弁763B,766Bを閉じ、電磁弁31Bを開く。次いで、CPU11は、所定の回転数で所定時間ポンプ752Bを駆動する。インク68は、ポンプ752Bから第一バイパス流路801Bを矢印401Bの方向へ流れ、第四流路714Dを矢印403Bの方向に流れる。上述したように、マニフォールド170B、連通路150B、マニフォールド180Bの流路抵抗は、第二バイパス流路902A,902Bより大きい。従って、インク68は、第二バイパス流路902Aを矢印404Bの方向に流れる。次いで、インク68は、電磁弁31Bを矢印405Bの方向に流れ、第二バイパス流路902Bを矢印406Bの方向に流れ、第五流路715Dを矢印407Bの方向に流れ、第一バイパス流路801Bに流入する。第一バイパス流路801Bに流入したインク68は、ポンプ752Bから矢印401Bの方向へ流れ、上記同様に循環する。この循環をバイパス循環という。CPU11は、所定時間、インク68のバイパス循環を行った後に、ポンプ752Bを停止する。CPU11は、第一循環処理において、例えば、ヘッド循環とバイパス循環を同時に実行する。例えば、CPU11は、ヘッド循環のポンプ752Aの回転と、バイパス循環におけるポンプ752Bの回転とを同時に開始し、同じ回転速度で所定時間回転して、同時に終了してもよい。この他にも、CPU11は、ポンプ752Aの回転速度をポンプ752Bの回転速度より遅くし、ヘッド循環のインク68の循環速度をバイパス循環のインク68の循環速度より遅くしてもよい。また、CPU11は、所定時間の駆動と所定時間の停止を繰り返す間欠駆動をポンプ752Aにさせてもよい。また、CPU11は、ヘッド循環を行うポンプ752Aをバイパス循環を行うポンプ752Bよりも後に駆動して、ヘッド循環をバイパス循環よりも後に開始してもよい。また、CPU11は、ヘッド循環を行うポンプ752Aをバイパス循環を行うポンプ752Bよりも先に駆動停止して、ヘッド循環をバイパス循環等のヘッド循環以外の循環よりも先に終わらせてもよい。
【0063】
<第二循環処理>
次いで、CPU11は、第二循環処理(S43)を実行する。CPU11は、第二循環処理として、第一ノズル列W1,第二ノズル列W2については、ヘッド循環以外の循環の一例としてバイパス循環を所定時間行い、第三ノズル列W3,第四ノズル列W4についてはヘッド循環を所定時間行う。
【0064】
<第二循環処理におけるインク供給部700Aのバイパス循環>
第一ノズル列W1及び第二ノズル列W2のヘッド循環以外の循環とは、第四流路714C、マニフォールド170A、連通路150A、マニフォールド180A、及び第五流路715Cをインク68が循環しない循環であり、例えば、上述したバイパス循環である。CPU11は、インク供給部700Aにおいて、バイパス循環を実行する。インク供給部700Aにおけるバイパス循環は、上記にて説明したインク供給部700Bにおけるバイパス循環と同様なので、説明を省略する。
【0065】
<第二循環処理における第三ノズル列W3及び第四ノズル列W4のヘッド循環>
第二循環処理における第三ノズル列W3,第四ノズル列W4のヘッド循環を説明する。CPU11は、インク供給部700Bにおいて、ヘッド循環を実行する。インク供給部700Bにおけるヘッド循環は、上記にて説明したインク供給部700Aにおけるヘッド循環と同様なので、説明を省略する。
【0066】
次に、CPU11は、カウンタn=n+1とする(S44)。従って、n=1である。CPU11は、n≧3かを判断する(S45)、CPU11はn≧3と判断しない場合には(S45:NO)、処理をS42に進め、上記同様に、S42~S45の処理を繰り返す。第一循環処理及び第二循環処理が3セット実行された場合には、n=3であり、CPU11はn≧3と判断する(S45:YES)。次いで、CPU11は、インク供給部700A、700Bにおいて、フィルタ循環処理を3セット行う(S46)。
【0067】
<フィルタ循環>
図6を参照して、インク供給部700Aにおけるフィルタ循環を説明する。CPU11は、インク供給部700Aの電磁弁763A及び電磁弁766Aを開き、電磁弁31Aを閉じる。次いで、ポンプ752Aを所定時間駆動する。インク68は、ポンプ752Aから第一バイパス流路801Bを矢印401Bの方向へ流れる。マニフォールド170A、連通路150A、マニフォールド180Aの流路抵抗は、第四流路714A、第五流路715Aより大きい。従って、インク68は、マニフォールド170A、連通路150A、マニフォールド180A方向よりも、第四流路714Aを矢印414Aの方向に流れる。従って、インク68は、フィルタ75A及び電磁弁763Aを矢印414A方向に流れ、第五流路715Aを矢印416Aの方向に流れ、電磁弁766A及びフィルタ75Bを流れ、第一バイパス流路801Aに流入する。第一バイパス流路801Aに流入したインク68は、ポンプ752Aから矢印401Aの方向へ流れ、上記同様に循環する。CPU11は、所定時間、インク68のフィルタ循環を行った後に、ポンプ752Bを停止する。インク供給部700Bにおけるフィルタ循環は、インク供給部700Aにおけるフィルタ循環と同様なので説明を省略する。
【0068】
CPU11は、上記のフィルタ循環を3セット実行した後に処理を図9の接液循環処理に戻し、接液状態から復帰かを判断する(S5)。CPU11は操作ボタン46(図8参照)から印刷の指示が入力された場合、または、図示しないプリンタ1に接続されたコンピュータ等の端末装置から印刷指示が入力された場合には、復帰と判断する(S5:YES)。CPU11は、復帰と判断した場合(S5:YES)、復帰動作Aを以下のように行う(S6)。図11に示すように、ヘッド部110のノズル面112にキャップ91が当接した状態で、CPU11は電磁弁781,782,783を開放する。次いで、CPU11は、吸引ポンプ190を一定時間駆動して、キャップ91の洗浄液76Aを排液タンク77に排出する。次に、図7に示すように、CPU11は電磁弁781を閉鎖し、電磁弁783を開放し、吸引ポンプ190を一定時間駆動して上述のパージ処理を行う。次いで、CPU11はキャップ駆動部18(図8参照)制御して、キャップ91をノズル面112から離間する。次いで、ワイパ36(図2参照)によって、ヘッド部110のノズル面112の表面に残った余分なインク等を払拭するノズル面払拭動作を行う。次いで、CPU11は、印刷処理を実行する(S1)。以後上述のようにS2からS5の処理を行う。
【0069】
CPU11は、復帰と判断しない場合(S5:NO)、循環動作Aから第二所定時間経過したかを判断する(S7)。第二所定時間の一例は6時間である。CPU11は、S6の判断でYESと判断しない場合、処理をS5に進める。また、CPU11は、S6の判断でYESと判断した場合、処理をS4に進め循環動作Aを行う。以後、上記同様にS5~S7の判断を行う。
【0070】
<実施形態の作用効果>
以上説明したようにプリンタ1のCPU11は、キャップ91内に供給された洗浄液76Aをノズル面112に接液させた接液状態で、インク供給部700A側については、インク68を第四流路714C、マニフォールド170A、連通路150A、マニフォールド180A、第五流路715Cを循環するヘッド循環を行い、インク供給部700B側については、インク68を第四流路714C、マニフォールド170A、連通路150A、マニフォールド180A、第五流路715Cを循環するヘッド循環を行わない第一循環処理(S42)を実行する。従って、インク供給部700A側でヘッド循環を行うと共に、インク供給部700B側でヘッド循環を行う場合に比べて、ノズル111に正圧が発生するヘッド循環が同時に行われないので、キャップ内に発生する正圧を低減できる。従って、キャップ91がノズル面112から離れてインク68がキャップ外に流れ出す可能性を低減できる。インク68がキャップ外に流れ出すと、キャップ91を移動させるバネ(図示略)やキャップ支持部92にインク68に含まれる含量や樹脂が残り、キャップ91のノズル面112へのキャッピング不良が起こる。また、センサ(図示略)インク68が付着するとセンサの検出不良になり、他の駆動部品にインク68が付着すると駆動不良が起こる。本実施例では、キャップ91がノズル面112から離れてインク68がキャップ外に流れ出す可能性を低減するので、これらの問題を解決できる。
【0071】
また、CPU11は、キャップ91内に供給された洗浄液76Aをノズル面112に接液させた接液状態で、インク供給部700B側については、インク68を第四流路714D、マニフォールド170B、連通路150B、マニフォールド180B、第五流路715Dを循環するヘッド循環を行い、インク供給部700A側については、インク68を第四流路714C、マニフォールド170A、連通路150A、マニフォールド180A、第五流路715Cを循環するヘッド循環を行わない第二循環処理(S43)を実行する。従って、インク供給部700A側にてヘッド循環を行うと共に、インク供給部700B側にてヘッド循環を行う場合に比べて、正圧が発生するヘッド循環が同時に行われないので、キャップ91内に発生する正圧を低減しつつ、第四流路714D、マニフォールド170B、連通路150B、マニフォールド180B、第五流路715Dにおいても気泡の除去、及びインク成分の沈降解消ができる。
【0072】
また、CPU11は、第四流路714D、第二バイパス流路902、第五流路715D、第一バイパス流路801Aにてインク68を循環するバイパス循環を行う第一循環処理(S42)を実行する。従って、バイパス循環では、マニフォールド170B、180Bよりもノズル111から離れた第二バイパス流路902でインク68が循環される。上述したように、バイパス循環ではノズル111に負圧が発生する。従って、第一循環処理(S42)として、ヘッド循環と共にバイパス循環を行うことにより、キャップ91内に発生する正圧を低減できる。また、バイパス循環では、インク68が通る流路の流路抵抗がヘッド循環の場合よりも小さいので、流路をインクがより循環し、インク68の成分の沈降を解消することができる。
【0073】
また、CPU11は、第四流路714C、第二バイパス流路802、第五流路715Cにてインク68を循環するバイパス循環を行う第二循環処理(S43)を実行する。
従って、バイパス循環では、マニフォールド170A、180Aの流路抵抗よりも小さい第二バイパス流路802でインク68が循環される。従って、第二循環処理(S43)として、第四流路714D、マニフォールド170B、連通路150B、マニフォールド180Bでのヘッド循環と共に、第四流路714C、第二バイパス流路802、第五流路715Cでのバイパス循環を行うことにより、キャップ内に正圧が発生する可能性を低減できる。
【0074】
プリンタ1のノズル面112は、ノズル111を第一ノズル列W1、第二ノズル列W2、第三ノズル列W3、第四ノズル列W4として設けている。また、プリンタ1は、第一ノズル列W1に設けられたノズル111にインク68を供給するマニフォールド170A、第二ノズル列W2に設けられたノズル111にインク68を供給するマニフォールド180A、第三ノズル列W3に設けられたノズル111にインク68を供給するマニフォールド170B、及び第四ノズル列W4に設けられたノズル111にインク68を供給するマニフォールド180Bを備える。また、プリンタ1は、マニフォールド170A、マニフォールド180Aの一方に接続し、インク68を供給する第四流路714Cと、マニフォールド170B、マニフォールド180Bの一方に接続し、インク68を供給する第四流路714Dとを備える。また、プリンタ1は、マニフォールド170A、マニフォールド180Aの一方に接続し、インク68を循環する第五流路715Cと、マニフォールド170B、マニフォールド180Bの一方に接続し、インク68を循環する第五流路715Dを備える。キャップ91は、第一ノズル列W1、第二ノズル列W2、第三ノズル列W3、第四ノズル列W4に夫々設けられたノズル111の外側でノズル面112に接触可能に設けられている。CPU11は、接液状態で、第四流路714C、マニフォールド170A、マニフォールド180A、および第五流路715Cにてインク68を循環するヘッド循環を行うと共に、第四流路714D、マニフォールド170B、マニフォールド180B、第五流路715Cにてインク68を循環するヘッド循環を行わない第一循環処理(S42)を実行する。
【0075】
従って、接液状態で、第四流路714C、マニフォールド170A、マニフォールド180A、および第五流路715Cにてインク68を循環するヘッド循環を行うと共に、第四流路714D、マニフォールド170B、マニフォールド180B、第五流路715Cにてインク68を循環するヘッド循環を行わない第一循環処理(S42)により、キャップ91内に発生する正圧を低減できる。従って、キャップ91がノズル面112から離れてインク68がキャップ91外に流れ出す可能性を低減できる。
【0076】
CPU11は、接液状態で、第四流路714D、マニフォールド170B、マニフォールド180B、および第五流路715Dにてインク68を循環するヘッド循環を行うと共に、第四流路714C、マニフォールド170A、マニフォールド180A、および第五流路715Cにてインク68を循環するヘッド循環を行わない第二循環処理(S43)を実行する。従って、キャップ91内に発生する正圧を低減しつつ、第四流路714D、マニフォールド170B、マニフォールド180B、および第五流路715Dにおいても気泡の除去、及びインク成分の沈降解消が向上する。
【0077】
プリンタ1は、第四流路714Dと第五流路715Dを接続する第二バイパス流路902を備え、CPU11は、第四流路714Dと第五流路715Dを接続する第二バイパス流路902にてインク68を循環するバイパス循環を行う第一循環処理(S42)を実行する。従って、第一循環処理(S42)として、ヘッド循環と共にバイパス循環を行うことにより、キャップ91内に発生する正圧を低減できる。また、プリンタ1は、第四流路714Cと第五流路715Cを接続する第二バイパス流路802を備え、CPU11は、第四流路714C、第五流路715C、および第二バイパス流路802にてインク68を循環するバイパス循環を行う第二循環処理(S43)を実行する。従って、第二循環処理(S43)として、ヘッド循環と共にバイパス循環を行うことにより、キャップ91内に発生する正圧を低減できる。
【0078】
CPU11は、第一循環処理(S42)、又は第二循環処理(S43)において、ポンプ752Aの回転速度とポンプ752Bの回転速度を異ならせて、ヘッド循環のインク68の循環速度と、バイパス循環等のヘッド循環以外のインク68の循環速度を異ならせてもよい。例えば、CPU11は、第一循環処理(S42)において、ポンプ752Aの回転速度をポンプ752Bの回転速度より遅くし、第二循環処理(S43)において、ポンプ752Bの回転速度をポンプ752Aの回転速度より遅くし、ヘッド循環のインク68の循環速度をバイパス循環等のヘッド循環以外のインク68の循環速度より遅くしている。この場合には、ヘッド循環のインク68の循環速度と、バイパス循環等のヘッド循環以外のインク68の循環速度が同じ場合に比べて、ヘッド循環のインク68の循環速度が遅いことによりポンプ752A,752Bに掛かる負荷が低減し吸込能力が低下しない。従って、ノズル111内のインク68に掛かる正圧が低減し、ヘッド循環時にキャップ91内に発生する正圧を低減できる。
【0079】
また、CPU11は、第一循環処理(S42)において、ヘッド循環を行うポンプ752Aを間欠駆動し、第二循環処理(S43)において、ヘッド循環を行うポンプ752Bを間欠駆動している。ヘッド循環のポンプの駆動を間欠駆動することにより、ノズル111内のインク68に圧力が連続して掛からずに、ヘッド循環時にキャップ91内に発生する正圧を低減できる。
【0080】
また、CPU11は、第一循環処理(S42)、又は第二循環処理(S43)において、ポンプ752Aの駆動を行うと共に、ポンプ752Bの駆動を行い、ヘッド循環を行うと共にバイパス循環等のヘッド循環以外の循環を行う。また、CPU11は、ヘッド循環をバイパス循環等のヘッド循環以外の循環よりも先に終わらせている。この場合には、ヘッド循環をヘッド循環以外の循環よりも先に終わらせることにより、キャップ91内に負圧が発生した状態でヘッド循環を終わらせることができ、キャップ91内に発生する正圧を発生する期間を減らすことが可能である。
【0081】
また、CPU11は、第一循環処理(S42)において、ヘッド循環を行うポンプ752Aをバイパス循環等のヘッド循環以外の循環を行うポンプ752Bよりも後に駆動して、ヘッド循環をヘッド循環以外の循環よりも後に開始させている。また、CPU11は、第二循環処理(S43)において、ヘッド循環を行うポンプ752Bをバイパス循環等のヘッド循環以外の循環を行うポンプ752Aよりも後に駆動して、ヘッド循環をヘッド循環以外の循環よりも後に開始させている。この場合、ヘッド循環をヘッド循環以外の循環よりも後に開始させることにより、ヘッド循環の以外の循環により先にキャップ91内に負圧を発生させ、ヘッド循環の立ち上がり時にキャップ91内に正圧が発生する期間を減らすことが可能である。
【0082】
上記実施の形態では、プリンタ1が本発明の「インクジェットプリンタ」の一例である。ヘッド部110が本発明の「ヘッド」の一例である。第四流路714A、714Cが本発明の「一の供給流路」の一例である。第五流路715A、715Cが本発明の「一の循環流路」の一例である。第四流路714B、714Dが本発明の「別の供給流路」の一例である。第五流路715B、715Dが本発明の「別の循環流路」の一例である。第二バイパス流路802が本発明の「一のバイパス流路」又は「第一バイパス流路」の一例である。第二バイパス流路902が本発明の「別のバイパス流路」又は「第二バイパス流路」の一例である。また、第一ノズル列W1、第二ノズル列W2、第三ノズル列W3及び第四ノズル列W4が夫々、本発明の「ノズルの第一列、第二列、第三列、第四列」の一例である。マニフォールド170A、180A、170B、180Bが、夫々、本発明の「第一マニフォールド、第二マニフォールド、第三マニフォールド、第四マニフォールド」の一例である。第四流路714Cが本発明の「第一流路」の一例である。第四流路714Dが本発明の「第二流路」の一例である。
【0083】
なお、上記実施形態では、ヘッド循環以外の循環の一例としてバイパス循環を説明したが、ヘッド循環以外の循環は上述したフィルタ循環でもよい。例えば、S42,S43に示す第一循環処理及び第二循環処理のバイパス循環に変えてフィルタ循環を行ってもよい。フィルタ循環はインク68がフィルタ75A及び75B、又はフィルタ75C及び75Dを通過するので、インク68の流速が遅くなる。従って、ポンプ752A,752Bに掛かる負荷が低減し吸込能力が低下せず、ノズル111に正圧が発生する可能性を低減できる。また、フィルタ循環は、フィルタ75A~75Dの堆積物を除去することができる。一方、バイパス循環は、フィルタ循環よりもヘッド部110のノズル111から近いので、フィルタ循環に比べてノズル111に掛かる負圧は大きい。従って、第一循環処理及び第二循環処理において、ヘッド循環と同時に実行する循環をバイパス循環にすることで、キャップ91内に発生する正圧を低減できる。また、ヘッド循環以外の循環は、何も循環を行わない処理でもよい。例えば、図12に示す第一循環処理及び第二循環処理のバイパス循環に変えてインク68の循環を行わなくてもよい。この場合には、インク68の循環を行わないので、インク68の循環に伴う正圧が発生しない。従って、キャップ91内に発生する正圧を低減できる。また、接液循環において、キャップ91に満たされる液体は洗浄液76Aに限られない、ヘッド部110のノズル111から吐出したインク68でもよい。
【0084】
また、S2の「第一所定時間」、S7の「第二所定時間」は6時間に限られない。実験等に基づいて適宜定めればよい。また、その他の所定時間も実験等に基づいて適宜定めればよい。又、図9に示す循環処理は、終業メンテナンス(S3)の直後でなく、所定時間経過後に実行されてもよい。また、CPU11は、終業メンテナンス(S3)を予め決まった時間に行ってもよい。例えば、CPU11は、午後8時に終業メンテナンスを実行してもよい。インク供給部700Aにおいて、バイパス流路は、第一バイパス流路801A、第二バイパス流路802以外に設けられてもよい。例えば、第一バイパス流路801Aと第二バイパス流路802との間に、第四流路714C及び第五流路715Cを接続する第三バイパス流路を設けてもよい。バイパス循環は、第一バイパス流路801A、第四流路714C、第五流路715C及び第三バイパス流路を介して行われてもよい。また、インク供給部700Bにおいても同様である。また、循環動作Aにおいて、第一循環処理(S42)及び第二循環処理(S43)が行われる回数は3回に限られない。また、フィルタ循環処理の回数も3セットに限られない。実験により適宜の回数が設定されればよい。
【0085】
ヘッド循環は、第一ノズル列W1のマニフォールド170Aと第二ノズル列W2のマニフォールド180Aとの間、第三ノズル列W3のマニフォールド170Bと第四ノズル列W4のマニフォールド180Bとの間で各々インク68が循環されるものに限られない。例えば、流路62Aに対して、複数のマニフォールド171~174が設けられたが、1のマニフォールドが設けられても良い。1または複数のマニフォールドの前端と後端に供給口が設けられてもよい。例えば、マニフォールドの前端の供給口に図4に示す流路62Aが接続され、マニフォールドの後端の供給口に図4に示す流路62Bが接続されてもよい。同様に、別のマニフォールドの前端の供給口に図4に示す流路62Cが接続され、別のマニフォールドの後端の供給口に図4に示す流路62Dが接続されてもよい。この場合、キャップは、2つのマニフォールドに対応するノズルのみを囲えばよい。従って、S42、およびS43に示す第一循環処理及び第二循環処理の一方で、CPU11は、流路62A、62Bに接続したマニフォールドにて循環処理を実行し、第一循環処理及び第二循環処理の他方で、CPU11は、流路62C、62Dに接続したマニフォールドにて循環処理を実行してもよい。よって、上記実施形態では、ノズル列が4列あったが、この変形例では、ノズル列は少なくとも2列あればよい。従って、本発明では、ノズル列は複数あればよい。
【0086】
S42、およびS43に示す第一循環処理及び第二循環処理のバイパス循環時に、CPU11は、電磁弁763A、電磁弁763Bを閉じていたが、開けてもよい。温度が低いと、インク68の粘度が上がる。この結果、インク68が流れる流路の抵抗が上がる。よって、ポンプ752A、752Bの負荷が上がる。すると、電磁弁763A、766A、763B、766Bを閉じてバイパス循環を実行すると、バイパス循環により負圧が発生せずに、正圧が発生する可能性がある。そこで、CPU11は、電磁弁763A、電磁弁763Bを開けることにより、正圧の値を減らすことができる。すなわち、CPU11は、S42、およびS43に示す第一循環処理及び第二循環処理において、図示しない温度計からの出力に基づき、温度が所定温度以下か判断する。CPU11は、温度が、所定温度以下であると、電磁弁763A、電磁弁763Bを閉じる。CPU11は、温度が、所定温度より高いと、電磁弁763A、電磁弁763Bを開ける。これにより、キャップ91内に発生する正圧の値を減らすことができる。
【符号の説明】
【0087】
1 プリンタ
11 CPU
12 ROM
91 キャップ
110 ヘッド部
111 ノズル
112 ノズル面
170A、170B、180A、180B マニフォールド
700A、700B インク供給部
714A、714B、714C、714D 第四流路
715A、715B、715C、715D 第五流路
752A,752B ポンプ
801A、801B 第一バイパス流路
802、802A、802B 第二バイパス流路
902、902A、902B 第二バイパス流路
W1 第一ノズル列
W2 第二ノズル列
W3 第三ノズル列
W4 第四ノズル列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11