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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】品質評価方法及び品質評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20221206BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20221206BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022503955
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2021016345
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺口 剛仁
(72)【発明者】
【氏名】笠井 博
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 雄介
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-189349(JP,A)
【文献】特開2005-156305(JP,A)
【文献】特開2006-170922(JP,A)
【文献】米国特許第9038470(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0066939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N23/00-G01N23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
品質評価装置を用いて部品の品質を評価する品質評価方法であって、
前記品質評価装置は、
非破壊検査方法により得られた検出結果に基づいて前記部品に存在する欠陥を検出し、
前記欠陥の検出情報から1つ又は複数の特徴量を抽出し、
前記部品において前記欠陥が存在する評価対象部位を特定し、
前記部品を使用するときの前記評価対象部位の物理特性を示す予測値である使用状態情報値であって、前記評価対象部位に対応づけられた1つ又は複数の使用状態情報値を取得し、
少なくとも前記特徴量及び前記使用状態情報値に基づいて、前記欠陥が不良欠陥であるか否かを判定する、品質評価方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数の使用状態情報値は、前記部品を使用するときに前記評価対象部位に印加される予測圧力、前記部品を使用するときに前記評価対象部位に発生する予測応力、前記部品を使用するときの前記評価対象部位の予測振動の周波数、前記予測振動の振幅、及び、前記部品を使用するときの前記評価対象部位の予測温度のうちいずれか1つ以上である、請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項3】
前記品質評価装置は、
少なくとも前記特徴量及び前記使用状態情報値に基づいて、前記欠陥の欠陥評価値を算出し、
前記欠陥評価値を所定の閾値と比較することにより、前記欠陥が不良欠陥であるか否かを判定する、請求項1又は2に記載の品質評価方法。
【請求項4】
前記品質評価装置は、
前記部品の所定の使用期間において、前記使用状態情報値が所定値以上となる負荷時間を算出し、
少なくとも前記特徴量、前記使用状態情報値及び前記負荷時間に基づいて、前記欠陥評価値を算出する、請求項3に記載の品質評価方法。
【請求項5】
前記品質評価装置は、前記欠陥を、前記欠陥評価値に基づいて、複数の評価段階のうちのいずれか1つの評価段階に分類する、請求項3又は4に記載の品質評価方法。
【請求項6】
前記品質評価装置は、
前記評価対象部位に流体流路が含まれるとき、前記流体流路を流通する流体の予測圧力を前記使用状態情報値として取得し、
前記予測圧力が大きい程、前記欠陥評価値を高く算出する、請求項3~5のいずれか一項に記載の品質評価方法。
【請求項7】
前記品質評価装置は、
前記評価対象部位にボルト接合による接続箇所が含まれるとき、ボルト接合によって前記評価対象部位に発生する予測応力を前記使用状態情報値として取得し、
前記予測応力が大きい程、前記欠陥評価値を高く算出する、請求項3~6のいずれか一項に記載の品質評価方法。
【請求項8】
前記品質評価装置は、
前記部品を使用するときの前記評価対象部位の予測振動の周波数又は振幅を前記使用状態情報値として取得し、
前記予測振動の周波数又は振幅が大きい程、前記欠陥評価値を高く算出する、請求項3~7のいずれか一項に記載の品質評価方法。
【請求項9】
前記品質評価装置は、前記欠陥の位置及び大きさの少なくともいずれか一方に基づいて、前記特徴量を抽出する、請求項1~8のいずれか一項に記載の品質評価方法。
【請求項10】
前記品質評価装置は、前記部品の表面からの前記欠陥の位置の深度を前記特徴量として抽出する、請求項9に記載の品質評価方法。
【請求項11】
前記品質評価装置は、
前記評価対象部位に複数の前記欠陥が含まれるときは、複数の前記欠陥の密度が所定値以上となる欠陥群を特定し、
前記欠陥群を前記欠陥として検出し、
前記密度を前記特徴量として抽出する、請求項1~10のいずれか一項に記載の品質評価方法。
【請求項12】
前記品質評価装置は、ユーザインタフェースに情報を出力する情報出力部を備え、
前記情報出力部は、前記欠陥が不良欠陥であると判定した場合は、前記部品の形状、及び、前記部品の表面に対する前記欠陥の位置を示す画像を前記ユーザインタフェースに出力する、請求項1~11のいずれか一項に記載の品質評価方法。
【請求項13】
前記品質評価装置は、ユーザインタフェースに情報を出力する情報出力部を備え、
前記情報出力部は、前記欠陥が不良欠陥であると判定した場合は、前記評価対象部位の前記使用状態情報値を前記ユーザインタフェースに出力する、請求項1~12のいずれか一項に記載の品質評価方法。
【請求項14】
前記品質評価装置は、
前記部品に所定の加工を施したと仮定して、前記特徴量を抽出する、請求項1~13のいずれか一項に記載の品質評価方法。
【請求項15】
前記品質評価装置は、
前記部品の仮想モデルを作成し、
前記仮想モデルの使用状態をシミュレーションして得られるシミュレーション結果に基づいて前記使用状態情報値を取得する、請求項1~14のいずれか一項に記載の品質評価方法。
【請求項16】
前記部品は鋳造品である、請求項1~15のいずれか一項に記載の品質評価方法。
【請求項17】
部品の品質を評価する品質評価装置であって、
非破壊検査方法により得られた検出結果に基づいて前記部品に存在する欠陥を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥の検出情報から1つ又は複数の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記欠陥が存在する前記部品の評価対象部位を特定する評価対象部位特定部と、
前記部品を使用するときの前記評価対象部位の物理特性を示す予測値である使用状態情報値であって、前記評価対象部位に対応づけられた1つ又は複数の使用状態情報値を取得する使用状態情報値取得部と、
少なくとも前記特徴量及び前記使用状態情報値に基づいて、前記欠陥が不良欠陥であるか否かを判定する不良欠陥判定部とを備える、品質評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の品質を評価する品質評価方法及び品質評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載される品質評価装置は、透過X線を用いて部品を検査して得られた検査結果を、部品が無欠陥である場合の検査結果と比較して、部品の品質を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-105794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される品質評価装置は、部品の使用状態に応じて部品の品質を評価しないため、品質評価の精度が低くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、部位毎の使用状態に応じて部品の品質を評価する品質評価方法及び品質評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非破壊検査方法により得られた欠陥の検出情報から1つ又は複数の特徴量を抽出し、欠陥が存在する評価対象部位を特定し、各々の評価対象部位に対応づけられた1つ又は複数の使用状態情報値を取得し、少なくとも特徴量及び使用状態情報値に基づいて、欠陥が不良欠陥であるか否かを判定することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、欠陥が存在する部位の使用状態情報値に応じて欠陥が不良欠陥であるか否かを判定するので、部位毎の使用状態に応じて部品の品質を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る品質評価装置の構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態の品質評価装置による品質評価の対象となる欠陥の一例を示す写真である。
図3】本実施形態の品質評価装置による品質評価の対象となる欠陥群の一例を示す写真である。
図4図4(a),(b)は、図1に示す品質評価装置の情報出力部によって出力される画像情報の例を示す図である。
図5】本実施形態の品質評価装置による部品の品質評価方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、品質評価装置10は、検査装置1が非破壊検査方法により取得した部品Xの検出結果に基づいて、部品Xの品質を評価する。検査装置1が実行する非破壊検査方法は、X線検査方法(放射線透過方法)であるが、これに限定されず、超音波、MRI(核磁気共鳴画像法)、渦電流、サーモグラフィ又は近赤外分光法を用いた検査方法であってもよい。すなわち、非破壊検査方法とは、部品Xを破損せずに検査可能な検査方法である。なお、部品Xは、例えば、車両のエンジンのシリンダブロック等の鋳造品である。部品Xが鋳造品である場合は、部品Xは、例えば、鋳鉄、鋼、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金、亜鉛合金、ニッケル合金、チタン合金等によって形成される。また、部品Xは、鋳造品に限定されず、例えば、樹脂製の部品であってもよい。
【0010】
また、品質評価装置10は、部品Xの品質評価の結果をユーザインタフェース2に出力し、ユーザUに情報を提示する。ユーザインタフェース2は、画像情報を視覚的に表示する画像表示部21及び音声出力部22を有する。画像表示部21は、例えば、モニタである。音声出力部22は、例えば、スピーカである。
【0011】
また、品質評価装置10は、欠陥検出部11、特徴量抽出部12、評価対象部位特定部13、使用状態情報値取得部14、欠陥評価値算出部15、不良欠陥判定部16及び情報出力部17を有する。欠陥検出部11、特徴量抽出部12、評価対象部位特定部13、使用状態情報値取得部14、欠陥評価値算出部15、不良欠陥判定部16及び情報出力部17は、品質評価装置10の各機能を実現するためのプログラムを実行する。
【0012】
品質評価装置10の欠陥検出部11は、検査装置1が実行する非破壊検査方法により得られた検出結果に基づいて部品Xに存在する1つ又は複数の欠陥を検出する。非破壊検査方法により得られた検出結果は、例えば、部品Xの三次元的なボリュームデータ(強度分布データ)である。また、非破壊検査方法により得られた検出結果は、部品Xの断面データの集合を含む。欠陥検出部11は、非破壊検査方法により得られた検出結果に基づいて部品Xに存在する欠陥を検出する。欠陥検出部11が検出する欠陥は、例えば、図2に示す欠陥Kのように、鋳造品に発生する空洞(鋳巣)である。また、欠陥は、鋳造品に発生する亀裂又は鋳造品に混入した異物であってもよい。欠陥は、部品Xの使用中に問題を引き起こす可能性がある不良性の欠陥(不良欠陥)、及び、問題を引き起こす可能性がない良性の欠陥(良品欠陥)を含む。すなわち、欠陥は不良欠陥でなければ、部品Xを使用する過程で問題を引き起こす可能性はない。
【0013】
また、欠陥検出部11は、図3に示すように、複数の欠陥Kの密度が所定値以上となる欠陥群Kgを特定し、欠陥群Kgを欠陥として検出する。図3の例では、欠陥Kは、空洞(鋳巣)であり、欠陥群Kgは空洞が集合した部分である。具体的には、欠陥検出部11は、部品Xの立体データを複数の単位領域(例えば、1cmの三次元領域)に分割し、単位領域あたりの欠陥Kの密度(分布)を算出する。そして、欠陥検出部11は、単位領域あたりの欠陥Kの密度が所定値以上である領域を欠陥群Kgとして特定する。この「所定値」は、部品Xの経年劣化によって将来的に欠陥K同士が結合してさらに大きな欠陥となる可能性があるか否かに応じて、実験やシミュレーションに基づいて予め定められる閾値である。
【0014】
また、特徴量抽出部12は、欠陥の検出情報から1つ又は複数の特徴量を抽出する。欠陥の特徴量とは、欠陥の物理的な情報を示す値である。欠陥の特徴量は、例えば、欠陥の体積V、欠陥の長さL、及び、部品Xの表面から欠陥の位置までの最短距離である深度dを含む。すなわち、特徴量抽出部12は、欠陥の位置及び大きさの少なくともいずれか一方に基づいて、特徴量を抽出する。
【0015】
図2に示す例では、特徴量抽出部12は、欠陥Kの立体形状及び欠陥Kの断面の形状に基づいて、欠陥Kの最も大きい幅L(欠陥Kの長さL)を特徴量として抽出する。また、特徴量抽出部12は、部品Xの表面と欠陥Kとの最短距離d(部品Xの表面からの欠陥Kの位置の深度d)を特徴量として抽出する。欠陥Kの位置の深度dを抽出する基準となる部品Xの表面は、欠陥Kから最も近い表面であるが、これに限定されず、部品Xの使用時に最も摩耗量が多いと予測される部位の表面であってもよい。また、欠陥Kの位置の深度dを抽出する基準となる部品Xの表面は、部品Xの外側に露出した表面であってもよく、他の部品との接触面であってもよい。また、部品Xの表面は、ボルトを締結するためにタップ加工によってネジ切りされたネジ孔の内側表面であってもよい。また、部品Xの表面は、オイル流路や冷却水流路等の内側表面であってもよい。
【0016】
また、図3に示す例では、特徴量抽出部12は、欠陥群Kgが占める領域の最も大きい幅L(欠陥群Kgの長さL)を欠陥の特徴量として抽出する。また、特徴量抽出部12は、部品Xの表面と欠陥Kとの最短距離d(部品Xの表面からの欠陥Kの位置の深度d)を特徴量として抽出する。さらに、特徴量抽出部12は、欠陥群Kgに含まれる欠陥Kの密度ρを欠陥の特徴量として抽出する。特徴量として抽出される欠陥Kの密度ρは、欠陥群Kgが占める領域における単位領域当たりの欠陥Kの密度の平均値又は中央値である。また、特徴量抽出部12は、欠陥Kの数を欠陥群Kgが占める領域の体積によって除算することにより、欠陥の特徴量としての欠陥Kの密度を算出してもよい。
【0017】
また、欠陥検出部11が検出した欠陥が亀裂である場合は、特徴量抽出部12は、部品Xの表面と亀裂の中央部分との距離を、欠陥の位置の深度dとして抽出してもよい。また、特徴量抽出部12は、亀裂に沿って任意の複数の点を取得し、部品Xの表面と各々の点との距離の平均値又は中央値を、欠陥の位置の深度dとして抽出してもよい。
【0018】
また、特徴量抽出部12は、部品Xに所定の加工を施したと仮定して、欠陥の特徴量を抽出してもよい。具体的には、部品の表面を削って薄くする加工を施したと仮定した場合における部品Xの表面からの欠陥の位置の深度dを、欠陥の特徴量として抽出してもよい。
【0019】
また、図1に示す品質評価装置10の評価対象部位特定部13は、部品Xにおいて欠陥が存在する評価対象部位Eを特定する。具体的には、評価対象部位特定部13は、部品Xの立体データを構造や使用時にかかる負荷の種類・態様に応じて、複数の評価対象部位Eに分割し、検出された欠陥がいずれの評価対象部位Eに存在するかを特定する。具体的には、部品Xが車両のエンジンのシリンダブロックである場合は、評価対象部位特定部13は、オイル流路が設けられる部位、冷却水流路(ウォータジャケット)が設けられる部位、シリンダヘッドと接続する部位、ラジエータと接続する部位等を各々、別の評価対象部位Eとして認定し、欠陥がいずれの評価対象部位Eに存在するかを特定する。
【0020】
また、使用状態情報値取得部14は、評価対象部位Eに対応づけられた1つ又は複数の使用状態情報値を取得する。使用状態情報値は、部品Xを使用するときの評価対象部位Eの物理特性を示す予測値である。すなわち、使用状態情報値は、部品Xを使用するときに評価対象部位Eに加わる負荷の度合いを示す値である。具体的には、使用状態情報値は、部品Xを使用するときに評価対象部位Eに印加される予測圧力(p)、部品Xを使用するときに評価対象部位Eに発生する予測応力(F)、部品Xを使用するときの評価対象部位Eの予測振動の周波数(f)、予測振動の振幅(A)、及び、部品Xを使用するときの評価対象部位Eの予測温度(t)のうちいずれか1つ以上である。使用状態情報値取得部14は、品質評価装置10のデータベース(図示せず)に記憶されるリストを参照することにより、評価対象部位Eに対応づけられた1つ又は複数の使用状態情報値を取得する。また、使用状態情報値取得部14は、部品Xに欠陥が含まれる場合は、部品Xの仮想モデルを作成し、仮想モデルの使用状態をシミュレーションして得られるシミュレーション結果に基づいて使用状態情報値を取得してもよい。部品Xの仮想モデルは、例えば、3DCADにより作成された部品Xの立体形状データである。また、評価対象部位Eと使用状態情報値とを対応づけた教師データによって学習された学習済みモデルを用いて、評価対象部位Eに対応づけられた使用状態情報値を取得してもよい。
【0021】
また、欠陥評価値算出部15は、特徴量抽出部12が抽出した特徴量及び使用状態情報値取得部14が取得した使用状態情報値に基づいて、欠陥の欠陥評価値Bを算出する。具体的には、欠陥評価値算出部15は、評価対象部位Eに対応づけられた判定式に特徴量及び使用状態情報値を代入して算出した値に正規化定数を乗算することにより、欠陥の欠陥評価値Bを算出する。
【0022】
また、評価対象部位Eに対応づけられた判定式には、部品Xの所定の使用期間において、使用状態情報値が所定値以上となる負荷時間Tを代入してもよい。負荷時間Tは、例えば、部品Xの保証期間内に使用状態情報値が所定値以上となると予測される時間を累積した時間である。また、負荷時間Tは、例えば、部品Xを使用する1時間の間で使用状態情報値が所定値以上となると予測される時間であってもよい。また、上記の「所定値」は、評価対象部位Eにおける予測圧力(p)、予測応力(F)、予測振動の周波数(f)、予測振動の振幅(A)、及び、予測温度(t)が、評価対象部位Eの欠陥に影響を与えるか否かを判断する基準となる値である。例えば、評価対象部位Eにおける予測圧力(p)が所定値以上となる負荷時間Tが長くなる程、欠陥の大きさが大きくなったり、欠陥が新しい亀裂の原因となったりする可能性が高くなる。
【0023】
欠陥の欠陥評価値Bの算出方法の例について、以下に説明する。なお、以下の式(1)~(8)において、右辺の式は、各々、評価対象部位Eの種別(識別情報)に対応づけられた判定式である。式(1)~(8)は、各々、右辺の判定式に正規化定数を乗算することにより欠陥評価値Bが算出されることを示す。なお、以下の式(1)~(8)において、欠陥評価値Bが高い程、欠陥の不良度は高くなる。これに限定されず、欠陥評価値算出部15は、欠陥評価値Bが高い程、欠陥の不良度が低くなるように判定式を設定してもよい。
【0024】
例えば、部品Xがシリンダブロックであり、評価対象部位Eがオイル流路を含む部位である場合は、欠陥評価値Bは、以下の式(1)に示すように、欠陥の特徴量(欠陥の体積V、欠陥の長さL、部品Xの表面からの欠陥の位置の深度d)、使用状態情報値(予測振動の振幅A、予測振動の周波数f)及び負荷時間Tに基づいて算出される。負荷時間Tは、部品Xの所定の使用期間において、予測振動の振幅Aが所定値以上となる時間、又は、予測振動の周波数fが所定値以上となる時間である。すなわち、以下の式(1)において、欠陥の体積V、欠陥の長さL、予測振動の振幅A、予測振動の周波数f、負荷時間Tの値が大きくなる程、欠陥評価値Bは高くなる。一方、部品Xの表面からの欠陥の位置の深度dが小さくなる程、例えば、経年劣化により欠陥の大きさが広がり、欠陥を介してオイルが部品Xの表面に漏出するという問題が発生する確率が高くなるため、欠陥評価値Bは高くなる。
【数1】
【0025】
また、部品Xがシリンダブロックであり、評価対象部位Eがオイル流路を含む部位であり、かつ、欠陥検出部11が図3に示すような欠陥群Kgを欠陥として検出した場合は、欠陥評価値算出部15は、下記の式(2)を用いて欠陥評価値Bを算出する。すなわち、式(2)の右辺の判定式は、式(1)の判定式に、さらに欠陥群Kgに含まれる欠陥Kの密度ρを二乗した値を乗じた式である。以下の式(2)においては欠陥群Kgに含まれる欠陥Kの密度ρの値が大きくなる程、欠陥評価値Bは高くなる。
【数2】
【0026】
また、部品Xがシリンダブロックであり、評価対象部位Eがシリンダ(ピストンの摺動部分)を冷却するための冷却水流路(ウォータジャケット)である流体流路を含む部位である場合は、欠陥評価値算出部15は、下記の式(3)を用いて欠陥評価値Bを算出する。すなわち、欠陥評価値Bは、以下の式(3)に示すように、欠陥の特徴量(欠陥の体積V、欠陥の長さL、部品Xの表面からの欠陥の位置の深度d)、使用状態情報値(予測温度t、予測圧力p)及び負荷時間Tに基づいて算出される。この例において、予測圧力pは、冷却水流路を流通する水の水圧である。負荷時間Tは、部品Xの所定の使用期間において、評価対象部位Eの予測温度tが所定値以上となる時間、又は、予測圧力pが所定値以上となる時間である。すなわち、以下の式(3)において、欠陥の体積V、欠陥の長さL、予測温度t、予測圧力p、負荷時間Tの値が大きくなる程、欠陥評価値Bは高くなる。一方、部品Xの表面からの欠陥の位置の深度dが小さくなる程、欠陥評価値Bは高くなる。なお、評価対象部位Eに流体流路としてオイル流路が含まれるときは、品質評価装置10は、オイル流路を流通するオイルの予測圧力pを使用状態情報値として取得し、予測圧力pが高い程、欠陥評価値Bを高く算出してもよい。
【数3】
【0027】
また、部品Xがシリンダブロックであり、評価対象部位Eがシリンダを冷却するための冷却水流路を含む部位であり、かつ、欠陥検出部11が図3に示すような欠陥群Kgを欠陥として検出した場合は、欠陥評価値算出部15は、下記の式(4)を用いて欠陥評価値Bを算出する。すなわち、式(4)の右辺の判定式は、式(3)の判定式に、さらに欠陥群Kgに含まれる欠陥Kの密度ρを乗じた式である。以下の式(4)においては欠陥群Kgに含まれる欠陥Kの密度ρの値が大きくなる程、欠陥評価値Bは高くなる。
【数4】
【0028】
また、部品Xがシリンダブロックであり、評価対象部位Eが他部品(シリンダヘッド、ラジエータ等)とのボルト接合による接続箇所を含む部位である場合は、欠陥評価値Bは、以下の式(5)に示すように、欠陥の特徴量(欠陥の体積V、欠陥の長さL、部品Xの表面からの欠陥の位置の深度d)、使用状態情報値(予測応力F,予測振動の振幅A、予測振動の周波数f)及び負荷時間Tに基づいて算出される。なお、式(5)で用いられる判定式は、式(1)で用いられる判定式に予測応力Fを加算する式である。この例において、予測応力は、評価対象部位Eに形成されたネジ孔にボルトを締結すること(ボルト接合)により、評価対象部位Eに発生する応力である。すなわち、式(5)で用いられる判定式は、例えば、ボルト接合によって発生する応力及び部品Xの使用時における振動が原因となって、元々存在していた欠陥から亀裂(組織破断)等の新しい欠陥が発生してしまうという可能性を考慮して設定された式である。なお、負荷時間Tは、部品Xの所定の使用期間において、予測振動の振幅Aが所定値以上となる時間、又は、予測振動の周波数fが所定値以上となる時間である。すなわち、以下の式(5)において、欠陥の体積V、欠陥の長さL、予測応力F、予測振動の振幅A、予測振動の周波数f、負荷時間Tの値が大きくなる程、欠陥評価値Bは高くなる。一方、部品Xの表面からの欠陥の位置の深度dが小さくなる程、欠陥評価値Bは高くなる。
【数5】
【0029】
また、部品Xがシリンダブロックであり、評価対象部位Eが他部品とのボルト接合による接続箇所を含む部位であり、かつ、欠陥検出部11が図3に示すような欠陥群Kgを欠陥として検出した場合は、欠陥評価値算出部15は、下記の式(6)を用いて欠陥評価値Bを算出する。すなわち、式(6)の右辺の判定式は、式(5)の判定式に含まれる「A××T×V×L×1/d」の部分に、さらに欠陥群Kgに含まれる欠陥Kの密度ρを二乗した値を乗じた式である。以下の式(6)においては欠陥群Kgに含まれる欠陥Kの密度ρの値が大きくなる程、欠陥評価値Bは高くなる。
【数6】
【0030】
また、部品Xがシリンダブロックであり、評価対象部位Eが、シリンダを有する部位(シリンダライナ)等、大きな振動を受ける部位である場合は、欠陥評価値Bは、例えば、以下の式(7)に示すように、欠陥の特徴量(欠陥の体積V、欠陥の長さL、部品Xの表面からの欠陥の位置の深度d)、使用状態情報値(予測応力F,予測振動の振幅A、予測振動の周波数f)、負荷時間T、及び、部品Xの厚みaに基づいて算出されてもよい。すなわち、以下の式(7)において、部品Xの厚みaが小さくなる程、部品Xの使用時における振動が原因となって、元々存在していた欠陥から亀裂(組織破断)等の新しい欠陥が発生してしまうという可能性が高くなるため、欠陥評価値Bは高くなる。
【数7】
【0031】
また、部品Xがシリンダブロックであり、評価対象部位Eが、シリンダを有する部位(シリンダライナ)等、大きな振動を受ける部位であり、かつ、欠陥検出部11が図3に示すような欠陥群Kgを欠陥として検出した場合は、欠陥評価値算出部15は、例えば、下記の式(8)を用いて欠陥評価値Bを算出してもよい。すなわち、式(8)の右辺の判定式は、式(7)の判定式に、欠陥群Kgに含まれる欠陥Kの密度ρを二乗した値を乗じた式である。以下の式(8)においては欠陥群Kgに含まれる欠陥Kの密度ρの値が大きくなる程、欠陥評価値Bは高くなる。
【数8】
【0032】
また、図1に示す不良欠陥判定部16は、欠陥評価値算出部15が算出した欠陥評価値Bを所定の閾値と比較することにより、欠陥検出部11が検出した欠陥が不良欠陥か否かを判定する。すなわち、不良欠陥判定部16は、欠陥評価値Bが所定の閾値以上である場合に、欠陥が不良欠陥であると判定する。所定の閾値は、欠陥が不良欠陥であるか否かを判定するために、評価対象部位E毎に設定される値である。また、欠陥の不良度が高くなる程、欠陥評価値Bが低くなるように判定式が設定される場合は、不良欠陥判定部16は、欠陥評価値Bが所定の閾値以下である場合に、欠陥が不良欠陥であると判定してもよい。
【0033】
また、不良欠陥判定部16は、欠陥を欠陥評価値Bに基づいて、欠陥の不良度(重要度)を示す複数の評価段階のうちのいずれか1つの評価段階に分類してもよい。例えば、不良欠陥判定部16は、欠陥を欠陥評価値Bに基づいて、(1)問題の無い欠陥(不良欠陥ではない欠陥)、(2)不良欠陥だが、溶接による補修等の加工で修復可能な欠陥(例えば、表面からの深度dが小さく、欠陥評価値Bが(1)と(3)の間の値を取る場合)、(3)修復不可能な不良欠陥、の3段階のいずれかに分類してもよい。また、不良欠陥判定部16は、欠陥が修復可能か否かに関わりなく、欠陥を欠陥評価値Bに基づく複数の段階(例えば、5段階)のいずれかに分類してもよい。
【0034】
情報出力部17は、不良欠陥判定部16による判定結果をユーザインタフェース2に出力する。具体的には、情報出力部17は、欠陥が不良欠陥であると判定した場合は、図4に示すように。部品Xの形状、及び、部品Xの表面に対する欠陥Kの位置を示す画像をユーザインタフェース2の画像表示部21に出力する。また、情報出力部17は、部品Xに不良欠陥があることを、音声情報として、ユーザインタフェース2の音声出力部22に出力してもよい。
【0035】
図4(a)では、部品Xの外形及び評価対象部位Eである略円筒形状のシリンダライナの表面の形状が表示さる。なお、評価対象部位Eであるシリンダライナは、鋳造品である部品Xに一体的に形成される。また、図4(a)に示す画像には、評価対象部位Eの表面に対する4つの欠陥Kの位置を示す丸印が示される。情報出力部17は、欠陥Kの位置を示す印を色付きで表示されたり、又は、点滅して表示したりすることにより、強調して表示してもよい。また、情報出力部17は、欠陥Kの不良度(重要度)を示す複数の評価段階に応じて、欠陥Kの位置を示す印の色を変える等、欠陥Kの位置情報の表示態様を変えてもよい。また、ユーザUの選択により、画像表示部21には、特に高い評価段階(最も欠陥評価値Bが高い評価段階等)に対応する欠陥Kの位置のみが表示されてもよい。
【0036】
また、図4(b)に示すように、情報出力部17は、評価対象部位Eの視認性を高めるため、二点鎖線で示すように、部品Xの外形の上部の透明度を他の部分よりも上げて画像表示部21に表示してもよい。すなわち、情報出力部17は、評価対象部位Eの周囲の部位を透明化して画像表示部21に表示する。また、図4(b)は、画像表示部21は、評価対象部位Eに色を付し、強調して表示する。
【0037】
また、情報出力部17は、欠陥が不良欠陥であると判定した場合は、評価対象部位Eの使用状態情報値をユーザインタフェース2の画像表示部21又は音声出力部22に出力してもよい。
【0038】
次に、図5を用いて、品質評価装置10による部品Xの品質評価方法の手順について説明する。
まず、ステップS1において、欠陥検出部11は、検査装置1の非破壊検査方法によって得られた検出結果に基づいて欠陥を検出する。次に、ステップS2において、特徴量抽出部12は、欠陥の検出情報から欠陥の特徴量を抽出する。
【0039】
次に、ステップS3において、品質評価装置10は、検出された欠陥に特徴量を関連付けた欠陥リストを作成し、データベースに記憶する。
【0040】
次に、ステップS4において、評価対象部位特定部13は、欠陥が存在する評価対象部位Eを特定する。さらに、ステップS5において、使用状態情報値取得部14は、評価対象部位Eの使用状態情報値を取得する。さらに、ステップS6において、欠陥評価値算出部15は、評価対象部位Eに応じた判定式を特定する。さらに次に、ステップS7において、欠陥評価値算出部15は、特徴量、使用状態情報値等を判定式に代入することにより、欠陥評価値Bを算出する。
【0041】
次に、ステップS8において、不良欠陥判定部16は、ステップS7で算出された欠陥評価値Bが所定の閾値以上か否かを判定する。欠陥評価値Bが所定の閾値未満である場合は、品質評価装置10は、処理をステップS10に進める。また、欠陥評価値Bが所定の閾値以上である場合は、ステップS9において、不良欠陥判定部16は、評価対象の欠陥を不良欠陥であると判定し、処理をステップS10に進める。
【0042】
ステップS10において、品質評価装置10は、ステップS3で作成した欠陥リストの欠陥を全て評価したか否かを判定する。欠陥リストの欠陥を全て評価していない場合は、品質評価装置10は、処理をステップS4に戻す。欠陥リストの欠陥を全て評価した場合は、品質評価装置10は、処理をステップS11に進める。
【0043】
ステップS11において、品質評価装置10は、評価した欠陥の情報をユーザインタフェース2に出力した後、処理を終了する。
【0044】
以上より、本実施形態に係る品質評価装置10は、非破壊検査方法によって得られた欠陥の検出情報から1つ又は複数の特徴量を抽出し、部品Xにおいて欠陥が存在する評価対象部位Eを特定し、部品Xを使用するときの評価対象部位Eの物理特性を示す予測値である使用状態情報値であって、評価対象部位Eに対応づけられた1つ又は複数の使用状態情報値を取得する。そして、品質評価装置10は、少なくとも特徴量及び使用状態情報値に基づいて、欠陥が不良欠陥であるか否かを判定する。これにより、品質評価装置10は、欠陥が存在する評価対象部位Eの各々に関して予想される使用状態に応じて部品の品質を評価することができ、欠陥が不良欠陥か否かの判定の精度を上げることができる。
【0045】
また、1つ又は複数の使用状態情報値は、部品Xを使用するときに評価対象部位Eに印加される予測圧力(p)、部品Xを使用するときに評価対象部位Eに発生する予測応力(F)、部品Xを使用するときの評価対象部位Eの予測振動の周波数(f)、予測振動の振幅(A)、及び、部品Xを使用するときの評価対象部位Eの予測温度(t)のうちいずれか1つ以上である。
これにより、品質評価装置10は、欠陥が存在する評価対象部位Eの各々に関して予想される具体的な使用状態(予測圧力(p)、予測応力(F)、予測振動の周波数(f)、予測振動の振幅(A)、及び、予測温度(t))に応じて部品の品質を評価することができ、欠陥が不良欠陥か否かの判定の精度を上げることができる。
【0046】
また、品質評価装置10は、少なくとも特徴量及び使用状態情報値に基づいて、欠陥の欠陥評価値Bを算出し、欠陥評価値Bを所定の閾値と比較することにより、欠陥が不良欠陥であるか否かを判定する。これにより、品質評価装置10は、算出した欠陥評価値Bを用いて、欠陥が不良欠陥か否かを明確に判定することができる。
【0047】
また、品質評価装置10は、部品Xの所定の使用期間において、使用状態情報値が所定値以上となる負荷時間を算出し、少なくとも特徴量、使用状態情報値及び負荷時間に基づいて、欠陥評価値Bを算出する。これにより、部品Xの評価対象部位Eに特に負荷がかかる時間に応じて、欠陥評価値Bを算出するため、欠陥が不良欠陥か否かの判定の精度を上げることができる。
【0048】
また、品質評価装置10は、欠陥を、欠陥評価値に基づいて、複数の評価段階のうちのいずれか1つの評価段階に分類する。これにより、ユーザUが、部品Xに存在する欠陥の不良度を明確に判断することができる。また、ユーザUが、特に不良度が高い評価段階に分類された欠陥のみを選択して点検したり、優先的に修復を行ったりすることができる。
【0049】
また、品質評価装置10は、評価対象部位Eに流体流路として、例えば、冷却水流路又はオイル流路が含まれるとき、流体流路を流通する流体(冷却水又はオイル)の予測圧力pを使用状態情報値として取得し、上述の式(3),(4)に示すように、予測圧力pが大きい程、欠陥評価値Bを高く算出する。これにより、品質評価装置10は、流体流路を流通する流体の圧力が評価対象部位Eに与えると予測される影響に応じて、欠陥評価値Bを算出し、欠陥評価値Bが所定の閾値以上である場合に、欠陥が不良欠陥であると判定することができる。
【0050】
また、品質評価装置10は、評価対象部位Eにボルト接合による接続箇所が含まれるとき、ボルト接合によって評価対象部位Eに発生する予測応力Fを使用状態情報値として取得し、上述の式(5),(6)に示すように、予測応力Fが大きい程、欠陥評価値Bを高く算出する。これにより、品質評価装置10は、ボルト接合が評価対象部位Eに与えると予測される影響に応じて、欠陥評価値Bを算出し、欠陥評価値Bが所定の閾値以上である場合に、欠陥が不良欠陥であると判定することができる。
【0051】
また、品質評価装置10は、上述の式(5)~(8)に示すように、評価対象部位Eの予測振動の周波数f又は振幅Aを使用状態情報値として取得し、予測振動の周波数f又は振幅Aが大きい程、欠陥評価値Bを高く算出する。これにより、品質評価装置10は、部品Xを使用するときの振動が評価対象部位Eに与えると予測される影響に応じて、欠陥評価値Bを算出し、欠陥評価値Bが所定の閾値以上である場合に、欠陥が不良欠陥であると判定することができる。
【0052】
また、品質評価装置10は、欠陥の位置及び大きさの少なくともいずれか一方に基づいて、特徴量を抽出する。これにより、欠陥が存在する評価対象部位E毎の使用状態に加えて、部品Xにおける欠陥の位置及び欠陥が占める領域の大きさにも応じて部品の品質を評価することができ、欠陥が不良欠陥か否かの判定の精度を上げることができる。
【0053】
品質評価装置10は、部品Xの表面からの欠陥の位置の深度を特徴量として抽出する。これにより、品質評価装置10は、部品Xの表面からの欠陥の位置の深度dが小さい程、欠陥を介したオイル漏れや欠陥の露出等の問題が生じる可能性が高くなるという事情に基づいて、欠陥の特徴量を抽出し、欠陥が不良欠陥か否かを判定することができる。
【0054】
品質評価装置10は、図3に示すように、評価対象部位Eに複数の欠陥Kが含まれるときは、複数の欠陥Kの密度が所定値以上となる欠陥群Kgを特定し、欠陥群Kgを欠陥として検出し、複数の欠陥Kの密度を特徴量として抽出する。これにより、品質評価装置10は、各々の欠陥Kの不良度が低い場合であっても、欠陥K同士が連通してより大きな欠陥になる可能性があるという欠陥群Kgの特性に基づいて、欠陥として検出された欠陥群Kgが不良欠陥であるか否かを判定することができる。
【0055】
品質評価装置10は、ユーザインタフェース2に情報を出力する情報出力部17を備え、情報出力部17は、欠陥が不良欠陥であると判定した場合は、部品Xの形状、及び、部品Xの表面に対する欠陥の位置を示す画像をユーザインタフェース2に出力する。これにより、ユーザUは、不良欠陥であると判定された欠陥の位置を視覚的に確認することができる。
【0056】
また、情報出力部17は、欠陥が不良欠陥であると判定した場合は、評価対象部位Eの使用状態情報値をユーザインタフェース2に出力する。これにより、ユーザUは、不良欠陥が存在する評価対象部位Eの使用状態情報を確認することができる。
【0057】
また、品質評価装置10は、部品Xに所定の加工を施したと仮定して、特徴量を抽出してもよい。これにより、品質評価装置10は、部品Xに加える予定の加工に応じて、欠陥が不良欠陥か否かを判定することができるため、ユーザUは、品質評価装置10の判定結果に応じて加工内容を調整することができる。
【0058】
また、品質評価装置10は、部品Xの仮想モデルを作成し、仮想モデルの使用状態をシミュレーションして得られるシミュレーション結果に基づいて使用状態情報値を取得してもよい。これにより、評価対象部位Eのより正確な使用状態情報値を取得することができ、欠陥が不良欠陥か否かの判定の精度を上げることができる。
【0059】
また、品質評価装置10が品質を評価する部品Xは、鋳造品である。これにより、品質評価装置10は、鋳造品に発生する欠陥が不良欠陥であるか否かを判定することができる。
【符号の説明】
【0060】
2…ユーザインタフェース
10…品質評価装置
11…欠陥検出部
12…特徴量抽出部
13…評価対象部位特定部
14…使用状態情報値取得部
16…不良欠陥判定部
17…情報出力部
K…欠陥
Kg…欠陥群
X…部品
【要約】
品質評価装置10は、非破壊検査方法により得られた検出結果に基づいて部品Xに存在する欠陥を検出し、欠陥の検出情報から欠陥の特徴量を抽出し、部品Xにおいて欠陥が存在する評価対象部位Eを特定し、部品Xを使用するときの評価対象部位Eの物理特性を示す予測値であって、評価対象部位Eに対応づけられた1つ又は複数の使用状態情報値を取得し、少なくとも特徴量及び使用状態情報値に基づいて、欠陥が不良欠陥であるか否かを判定する。
図1
図2
図3
図4
図5