(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20221206BHJP
A61K 31/43 20060101ALI20221206BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221206BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20221206BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61K31/43
A61P31/04
A61P43/00 121
A61P1/00
A61K31/4184
(21)【出願番号】P 2021510363
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 KR2019011017
(87)【国際公開番号】W WO2020045992
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0102250
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514311689
【氏名又は名称】エイチケー イノ.エヌ コーポレーション
【住所又は居所原語表記】239 Osongsaengmyeong 2-ro, Osong-eup, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, 28158, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,ポンテ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンキュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジウォン
(72)【発明者】
【氏名】オー,キョンミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,グンソク
(72)【発明者】
【氏名】リュ,シンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウンギョン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ナレー
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヒョンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェミン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ユギョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ハヌル
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-520017(JP,A)
【文献】医療薬学, 2017, Vol.43, No.4, pp.194-200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための医薬組成物であって、以下の式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物
であって、
前記医薬組成物が、その投与後3時間以内に胃内pHを5以上に上昇させ、かつ、胃内pHが、その投与後24時間までの期間にわたって5.0以上に維持される時間の百分率が少なくとも60%である、医薬組成物。
[式1]
【請求項2】
式1によって表される化合物が、以下の式2によって表される化合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
[式2]
【請求項3】
前記組成物が、式1によって表される化合物10 mg~500 mgまたはその薬学的に許容される塩、100 mg~4 gのアモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩、および50 mg~3 gのクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
胃内pHが、その投与後24時間までの期間にわたって
6.0以上に維持される時間の百分率が少なくとも
80%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が、その投与後
2時間以内に胃内pHを
6.0以上に上昇させる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、抗生物質に耐性のあるヘリコバクターピロリ菌を除菌する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
抗生物質に耐性のある前記ヘリコバクターピロリ菌がアモキシシリンまたはクラリスロマイシンに耐性である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、ヘリコバクターピロリ菌に感染した対象に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ヘリコバクターピロリ菌が、抗生物質に耐性のあるヘリコバクターピロリ菌である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗生物質に耐性のある前記ヘリコバクターピロリ菌が、アモキシシリンまたはクラリスロマイシンに耐性である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が、経口投与の型である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
以下の式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を含む
、
ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための組み合わせ物
であって、
前記組み合わせ物が、その投与後3時間以内に胃内pHを5以上に上昇させ、かつ、胃内pHが、その投与後24時間までの期間にわたって5.0以上に維持される時間の百分率が少なくとも60%である、組み合わせ物。
[式1]
【請求項13】
以下の式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を
含有する組み合わせ物を含む
、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するためのキット
であって、
前記組み合わせ物が、その投与後3時間以内に胃内pHを5以上に上昇させ、かつ、胃内pHが、その投与後24時間までの期間にわたって5.0以上に維持される時間の百分率が少なくとも60%である、キット。
[式1]
【請求項14】
ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための薬物の調製において、以下の式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩の使用
であって、
前記薬物が、その投与後3時間以内に胃内pHを5以上に上昇させ、かつ、胃内pHが、その投与後24時間までの期間にわたって5.0以上に維持される時間の百分率が少なくとも60%である使用。
[式1]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
胃炎や潰瘍などのさまざまな胃腸障害の発生に関与する細菌であるヘリコバクターピロリ菌(H.P bacterium, H. pylori)は、人の健康に深刻な打撃を与える。
【0003】
ヘリコバクターピロリ菌は、ヒトの胃粘膜で繁殖する。ヘリコバクターピロリ菌は、胃炎、胃潰瘍、および十二指腸潰瘍の原因菌であることが知られており、胃粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、萎縮性胃炎、胃過形成性ポリープなどの疾患にも関連する。ヘリコバクターピロリ菌が一旦胃の粘膜に定着すると、感染に対する強い免疫反応にもかかわらず、その細菌は除去されず胃の中で繁殖し続ける。また、塩酸により胃のpHが非常に低く保たれるため、多くの抗生物質が不活性になる。
【0004】
現在、抗生物質(アモキシシリンとクラリスロマイシン)とプロトンポンプ阻害剤の三成分併用療法がヘリコバクターピロリ菌を除菌するために一部で使用されていることが知られている。しかし、抗生物質への耐性菌の出現により、そのような方法で完全な除菌を行うことは困難になっている。
【0005】
たとえば、ヘリコバクターピロリ菌の除菌成功率は、最近、世界全体で80%以下に、一部の国では70%以下にまで低下している。2011年から2015年までの最近5年間韓国で実施された研究によると、ヘリコバクターピロリ菌の除菌率は、ITT(intention-to-treat)分析で70.7%(58.7~80.0%)、およびプロトコールごとの(PP)分析で76.2%(64.5~87.5%)に減少することも見出された。このような除菌率の低下の要因の一つは、治療薬として使用される抗生物質に対するヘリコバクターピロリ菌の耐性の増加である。特に、クラリスロマイシンに対する耐性の高まりは、標準的な三成分療法での治療失敗の重要な要因となっている。これに対し、新しい抗生物質(メトロニダゾールとレボフロキサシン)に基づく二次、三次除菌療法などが使用されてきたが、このような除菌方法も人体の有益な腸内細菌の作用に影響を与え、下痢などの副作用の問題を引き起こすこととなるため、制限も多い。
【0006】
以上のように、抗生物質を長期間投与すると、耐性菌の増殖について深刻な問題が発生することが懸念される。特に、クラリスロマイシンに対する耐性菌の出現頻度は急速に増加する傾向がある。耐性菌による感染症の例では、除菌率が著しく低下し、除菌に失敗した後にクラリスロマイシンに対して耐性を獲得することが報告されている。これを言い換えれば、不注意に行われた不十分な除菌処理が耐性菌の出現を増加させたと考えられる。したがって、除菌治療には十分に最適な環境を提供することが極めて重要である。
【0007】
除菌治療における別の重要な要素は、抗生物質の作用が最適化されるように胃内pHを少なくとも5以上に維持することである。除菌治療に成功した患者の胃内pHは、24時間で5.0~7.6であるのに対し、失敗した場合の胃内pHは2.2~6.2であると報告されている。すなわちこの報告は、胃の中で高度に維持されたpHが除菌治療を成功させるための重要な条件であることを示している。
【0008】
言い換えれば、抗生物質に特有のpKa値に近いpHに上げるためには、胃酸の分泌を適切な期間阻害する薬剤を開発し、使用する必要があり、これにより抗生物質の安定性を高め、ヘリコバクターピロリ菌に対する抗生物質の最小発育阻止濃度を低下させる必要がある。
【発明の詳細な説明】
【0009】
【技術的課題】
【0010】
これらを背景に、本発明者らは、ヘリコバクターピロリ菌の除菌に適した組成物の開発に鋭意取り組み、特定のベンズイミダゾール誘導体化合物が胃内のpH上昇に優れた効果を示し、アモキシシリンやクラリスロマイシンと併用することでヘリコバクターピロリ菌の除菌に顕著な効果を示すことを確認し、これにより本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、以下の式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための医薬組成物を提供する。
[式1]
【0012】
本発明は、上記の式1によって表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせ物を提供する。
【0013】
本発明は、上記の式1によって表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせ物を含むキットを提供する。
【0014】
本発明は、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための方法であって、上記の式1によって表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;クラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物を必要とする対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0015】
本発明は、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための薬物の調製において、上記の式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0016】
本発明は、ヘリコバクターピロリ菌を除菌する際、上記の式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【技術的解決】
【0017】
本発明は、以下の式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための医薬組成物を提供する。
[式1]
【0018】
上記の式1で表される化合物は、「4-(5,7-ジフルオロクロマン-4-イルオキシ)-N,N,2-トリメチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキサミド」とも呼ばれる。
【0019】
前記化合物は、天然の供給源から単離することができ;天然の供給源から入手した後、化学修飾を加えて調製することができ;または、既知の合成方法(国際特許公開WO2007/072146)による化学合成を用いて当業者によって調製することができる。また、市販品を購入し、化合物として使用することもできる。
【0020】
本発明において上記の式1によって表される化合物の場合、前記化合物またはその薬学的に許容される塩、およびそれから調製することができ、それと同じ効力を有する溶媒和物、水和物および立体異性体はすべて本発明の範囲内に含まれる。
【0021】
具体的には、上記式1で表される化合物は、以下の式2で表される化合物であってもよい。
[式2]
【0022】
本発明の医薬組成物は、上記式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩を10~500 mgの量、特に30~200 mgの量、さらに特定すれば100~200 mgの量を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
アモキシシリンは「(2S,5R,6R)-6-{[(2R)-2-アミノ-2-(4-ヒドロキシフェニル)アセチル]アミノ}-3,3-ジメチル-7-オキソ-4-チア-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン-2-カルボン酸」であり、次の式3の構造を有する。
[式3]
【0024】
前記化合物は、天然の供給源から単離することができ;天然の供給源から入手した後、化学修飾を加えて調製することができ;または、既知の合成方法による化学合成を用いて当業者によって調製することができる。また、市販品を購入し、化合物として使用することもできる。
【0025】
本発明において上記の式3によって表される化合物の場合、前記化合物またはその薬学的に許容される塩、およびそれから調製することができ、それと同じ効力を有する溶媒和物および水和物はすべて本発明の範囲に含まれる。
【0026】
本発明の医薬組成物は、アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩を100 mg~4 gの量、特に500 mg~2.5 gの量、さらに特定すれば1 g~2 gの量で含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
クラリスロマイシンの名前は「(3R,4S,5S,6R,7R,9R,11R,12R,13S,14R)-6-[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ-14-エチル-12,13-ジヒドロキシ-4-[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ-7-メトキシ-3,5,7,9,11,13-ヘキサメチル-オキサシクロテトラデカン-2,10-ジオン」であり、次の式4の構造を有する。
[式4]
【0028】
前記化合物は、天然の供給源から単離することができ;天然の供給源から入手した後、化学修飾を加えて調製することができ;または、既知の合成方法による化学合成を用いて当業者によって調製することができる。また、市販品を購入し、化合物として使用することもできる。
【0029】
本発明において上記の式4によって表される化合物の場合、前記化合物またはその薬学的に許容される塩、およびそれから調製することができ、それと同じ効力を有する溶媒和物および水和物はすべて本発明の範囲に含まれる。
【0030】
本発明の医薬組成物は、クラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を50 mg~3 gの量、特に100 mg~1 gの量、さらに特定すれば500 mg~1 gの量で含むことができるが、これらに限定されるものではない。本発明において、「薬学的に許容される塩」は、それらが投与された有機体に深刻な刺激を引き起こさず、化合物の生物活性および物理的特性に損傷を与えない、任意の無機酸、有機酸または塩基で形成された塩を意味する。塩としては、薬学的に許容される遊離酸で形成された酸付加塩など、当技術分野で従来から使用されている塩を使用できる。
【0031】
「ヘリコバクターピロリ菌」は、慢性胃炎、胃/十二指腸潰瘍、胃がんなどの病原菌として同定され、人体の胃粘膜で増殖する最近である。いくつかのべん毛を持つグラム陰性桿菌として、この細菌は胃粘膜層の表面または粘液で増殖する。運動性のあるらせん状のグラム陰性菌であるヘリコバクターピロリ菌は、胃粘膜の粘液層に生息し、尿素を分解してそこからアンモニアを生成するウレアーゼと呼ばれる酵素を持っているため、ヘリコバクターピロリ菌はそのアンモニアを使用して胃の中の強酸性環境を中和してその中で生き残る。
【0032】
最近、「ヘリコバクターピロリ菌」は様々な抗生物質に耐性があることが知られている。たとえば、耐性株は最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration, MIC)値によって定義できる。MICとは、抗生物質などの薬剤が細菌の増殖を抑制するために必要な最低濃度を意味する。
【0033】
具体的には、アモキシシリンに関して、MIC値が0.03μg/ml以上、好ましくは0.5μg/ml以上の菌株は、アモキシシリンに耐性のある菌株と定義することができる。
【0034】
具体的には、クラリスロマイシンに関して1μg/ml以上、好ましくは1.5μg/ml以上のMIC値を有する菌株は、クラリスロマイシンに耐性の菌株として定義することができる。
【0035】
抗生物質に耐性のあるヘリコバクターピロリ菌とは、抗生物質の継続的な使用またはヘリコバクターピロリ菌自体の変異により、抗生物質に対する耐性を示すヘリコバクターピロリ菌を意味する。
【0036】
本発明において、「除菌」は、微生物が存在する場所から微生物を除去すること、または微生物の増殖および増殖をすべて阻害することを含む。本発明において、ヘリコバクターピロリ菌の除菌は、胃に存在するヘリコバクターピロリ菌を除去すること、またはそのすべての増殖および成長を阻害することを含む。
【0037】
本発明の組成物は、抗生物質に耐性のあるヘリコバクターピロリ菌さえも除菌する優れた効果を示し、したがって、耐性菌の除菌に効果的に使用される。
【0038】
本発明において、「予防」は、あらかじめ本発明の組成物を投与してヘリコバクターピロリ菌の増殖を阻害または遅延させるすべての行為を含み、一方「治療」は、本発明の組成物でヘリコバクターピロリ菌を除菌するすべての行為を含み、これらにより、原因となる病原体としてのヘリコバクターピロリ菌に起因して発生する慢性胃炎、胃/十二指腸潰瘍、胃癌などの疾患を改善または有益に変化させる。
【0039】
本発明の式1によって表される化合物は、カリウム競合酸遮断薬(P-CAB)として作用し、胃内pHを5以上、特に5.5以上、さらに特定すれば6.0以上に維持し、この組成物は、抗生物質、すなわちアモキシシリンおよびクラリスロマイシンのpKa値に近いpHを維持し、その結果、抗生物質の安定性を高め、抗生物質の最小発育阻止濃度を大幅に低下させる。また、この化合物は、半減期が長く、胃内pHを一定期間以上上昇させるため、アモキシシリンとクラリスロマイシンの除菌効果も最大化する。
【0040】
本発明の式1の化合物をアモキシシリンとクラリスロマイシンの組み合わせで投与した場合、式1の化合物とクラリスロマイシンのCmax(最大血清濃度)およびAUC(曲線下面積)が増加し、3つの製剤を組み合わせて投与した後、薬物の生物学的利用能が向上したことが確認されました。
【0041】
また、この化合物は、抗生物質に耐性のあるヘリコバクターピロリ菌さえも除菌する優れた効果を示し、したがって、耐性菌の除菌に効果的に使用できる。さらに、この化合物は、長期間にわたって一定以上のpHを維持する効果があり、これにより顕著な服薬遵守性を達成するという利点がある。
【0042】
具体的には、本発明の式1で表される化合物の場合、その投与後24時間までの期間にわたって胃内pHが5超えて維持される時間の百分率、特に胃内pHが5.5を超え、さらに特定すれば6.0を超えて維持される時間の百分率は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、および少なくとも90%であり、該化合物はpH値を長期間高いレベルで維持し、その結果、アモキシシリンとクラリスロマイシンの除菌効果を最大化する。
【0043】
また、本発明の式1によって表される化合物は、その投与後3時間以内、特に2.5時間以内、さらに特定すれば2時間以内に、胃内pHを少なくとも5、少なくとも5.5、および少なくとも6.0に急速に増加させ、これによりアモキシシリンとクラリスロマイシンの除菌効果を最大化する。
【0044】
本発明の式1によって表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、従来使用されている適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。
【0045】
式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩は、それぞれ従来使用されている適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでもよく、これらにより剤形に製剤化することができる。
【0046】
式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩は、それらの少なくとも2つで、従来使用されている適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでもよく、これらにより剤形に製剤化することができる。
【0047】
式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩は、それらのすべてで、従来から一緒に使用されている適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでもよく、これらにより1つの剤形に製剤化することができる。
【0048】
本発明において、「薬学的に許容される担体」としては、生物を刺激せず、注射された化合物の生物学的活性および特性を阻害しない担体または希釈剤が挙げられる。本発明で使用可能な前記担体の種類は特に限定されるものではなく、それらが当技術分野で従来から使用され、薬学的に許容可能である限り、任意の担体を使用できる。
【0049】
前記担体の非限定的な例としては、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、デンプン、ラクトース、マンニトールなどが挙げられる。このような担体は、単独で使用してもよいし、またはそれらの少なくとも2つが一緒に混合されるような方法で使用してもよい。また、そのような担体は、必要に応じて、抗酸化剤および/または緩衝液などの他の従来の添加剤を添加して使用してもよい。
【0050】
本発明の式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩を製剤に成形する場合、担体を製剤の総重量に関して0.01~50.0重量%の量、特に0.1~10重量%の量で含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩を製剤に成形する場合、担体を製剤の総重量に対して0.01~50.0重量%の量、特に0.1~10重量%の量で含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
クラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を製剤に成形する場合、担体を製剤の総重量に対して0.01~50.0重量%の量、特に0.1~10重量%の量で含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明において、「投与」とは、本発明の医薬組成物を任意の適切な方法により当該対象に導入することを意味し、投与は、該組成物が標的組織に到達できる限り、様々な経口または非経口経路を介して実施することができる。特に、該組成物は、経口投与の形態を介して投与することができるが、これに限定されるものではない。式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;または、クラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩は、それぞれ、投与される別個の剤形に製剤化されてもよく、また投与される1つの剤形に製剤化されてもよい。
【0054】
本発明において、式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を投与する頻度は、年齢、体重、性別、重症度、および投与量を含む様々な要因に応じて変化しうる。例えば、そのような投与は、1日1回、1日2回、1日3回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、または週に1回実施することができる。特に、そのような投与は、1日1回または1日2回行われ、その投与頻度内で、胃内pHを一定レベル以上に一定期間以上維持することにより、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンのpKa値に近いpHを維持することで抗生物質の安定性を高め、それによって抗生物質の最小発育阻止濃度を大幅に減らし、アモキシシリンとクラリスロマイシンの除菌効果を最大化する。
【0055】
本発明において、前記医薬組成物は、ヘリコバクターピロリ菌に感染した対象に投与することができ、ここで、前記ヘリコバクターピロリ菌は抗生物質に耐性を持つこともあり、特にアモキシシリンまたはクラリスロマイシンに耐性でありうるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
また、本発明は、前記医薬組成物を必要とする対象に投与する工程を含む、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための方法を提供する。
【0057】
前記医薬組成物は、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するために薬学的に有効な量で投与することができる。前記医薬組成物は、単独で投与するか、または外科手術、内分泌療法、化学療法、および生物学的応答修飾因子を使用する方法と組み合わせて使用することができる。
【0058】
本発明において、対象としては、ヘリコバクターピロリ菌の除菌を必要とし、特に慢性胃炎、胃/十二指腸潰瘍の原因としてヘリコバクターピロリ菌に感染している疑いがある限りどのようなものであっても、特定の制限なしに適用可能である。具体的には、そのような対象には、ヒト、およびヒト以外のサル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギなどを含むすべての動物が挙げられ、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を問題の対象に投与することによって効率的に治療される。
【0059】
本発明は、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための薬物の調製において、上記の式1によって表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびのクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための薬物を調製するために、上記の式1によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩は、許容される補助剤(adjuvants)、希釈剤、担体などと混合することができ、他の活性剤と一緒に複合製剤に調製することができ、したがって活性成分の相乗作用を有する。
【0060】
本発明は、ヘリコバクターピロリ菌を除菌する際、上記の式1によって表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。上記の式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩は、許容される補助剤、希釈剤、担体などと混合することができ、他の活性剤と一緒に複合製剤に調製することができ、したがって活性成分の相乗作用を有する。
【0061】
本発明は、上記の式1によって表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を含む、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するために使用される組成物を提供する。
【0062】
本発明は、上記の式1によって表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせ物を提供する。
【0063】
具体的には、本発明は、上記の式1によって表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を含む、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための組み合わせ物を提供する。
【0064】
本発明において、該組み合わせ物は、少なくとも2つの製剤の間の任意の組み合わせを指す。該組み合わせ物は、少なくとも2つの別個の製剤であってもよく、それらの混合物またはそれらの任意の改変であってもよい。言い換えれば、該組み合わせ物は、別個の製剤のそれぞれを含んでもよく、また1つの製剤として形成されてもよい。
【0065】
このような組み合わせ物は、キット型となっていてもよい。当該キットは、別個の製剤のそれぞれを含み、任意に他の要素、例えば、追加の試薬、取扱説明書などを含むことができる。
【0066】
換言すれば、本発明は、上記の式1によって表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩;アモキシシリンまたはその薬学的に許容される塩;およびクラリスロマイシンまたはその薬学的に許容される塩を含む、ヘリコバクターピロリ菌を除菌するための組み合わせ物を含むキットを提供する。
【0067】
本発明の組成物に記載されている事項は、互いに矛盾しない場合には、組み合わせ物、キット、治療方法および使用に等しく適用される。
【有利な効果】
【0068】
本発明の医薬組成物は、胃内pHを一定以上一定期間以上維持することにより、pHをアモキシシリンとクラリスロマイシンのpKa値に近づけて維持し、抗生物質の安定性を高め、それにより最小発育阻止濃度を大幅に低下させ、アモキシシリンとクラリスロマイシンの除菌効果を最大化する。また、このような組成物は、抗生物質に耐性のあるヘリコバクターピロリ菌さえも除菌する優れた効果を示し、そのため耐性菌の除菌にも効果的に使用できる。このような組成物は、pHを一定レベル以上に長期間維持する効果を持ち続け、これにより服薬コンプライアンスが非常に優れているという利点もある。さらに、そのような組成物は、既存の併用療法とは異なり、食事療法を考慮することなく、食事の前または後に利用可能であるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1は、本発明の組成物;および個体への対照群としてパントプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを投与した後、1日目の個体における胃内pHの変化およびpH 6以上を維持した時間の百分率を示すグラフである。(左の円はテゴプラザン50 mgを示し、中央の円はテゴプラザン100 mgを示し、右の円はパントプラゾール40 mgを示す)。
【0070】
図2は、本発明の組成物;および個体への対照群としてパントプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを投与した後、7日目の個体における胃内pHの変化およびpH 6以上を維持した時間の百分率を示すグラフである。(左の円はテゴプラザン50 mgを示し、中央の円はテゴプラザン100 mgを示し、右の円はパントプラゾール40mgを示す)。
【発明の形態】
【0071】
以下、本発明を例示的な実施態様を通じてより詳細に説明する。これらの例示的な実施形態は、本発明をより詳細に説明する目的でのみ提供されており、したがって、本発明の範囲はそれに限定されるものではない。
【0072】
実施例1:CJ-12420(テゴプラザン)50 mg、アモキシシリンおよびクラリスロマイシン
【0073】
(1)CJ-12420(テゴプラザン)50 mgを含む錠剤
CJ-12420の50 mg錠剤を調製するために、以下の手順に従って製剤を製造した。主成分として50 mgの4-[(5,7-ジフルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-クロメン-4-イル)オキシ]-N,N,2-トリメチル-1H-ベンズイミダゾール-6-カルボキサミドを含む剤形を調製した。マンニトール、微結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムを前記主成分に混合した。ここで、充填剤は、最終剤形の重量部に対して1~99%(50 mgのマンニトールおよび80 mgの微結晶セルロース)の割合でその中に含まれ、崩壊剤の割合は、混合物を調製するために、最終剤形の重量部に対して1~20%(10 mg のクロスカルメロースナトリウム)の範囲内で使用された。
【0074】
得られた混合物にヒドロキシプロピルセルロースと精製水を含む結合剤溶液を加えて造粒し、結合剤の含有量は顆粒を調製するための有効成分の重量部に対して4~40%(6 mgのヒドロキシプロピルセルロース)の範囲で使用した。
【0075】
顆粒を乾燥する工程を実施した後、得られた整粒生成物、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを顆粒に添加し、一緒に混合するように粉砕を行った。
【0076】
最終剤形の重量部に対して希釈剤の割合を1~10%(2 mgのコロイド状二酸化ケイ素)の範囲で使用し、グリデントの割合を1~10%の範囲で使用し(最終剤形の重量部に対して2 mgのステアリン酸マグネシウム)、その後、得られた混合物を圧縮し、錠剤に調製した。
【0077】
前記錠剤は、フィルムコーティング剤でコーティングした。錠剤は、最終剤形の重量部に対して2~6%(6 mg)の重量比でコーティングが形成されるように調製した。
【0078】
(2)アモキシシリンまたはクラリスロマイシン錠
アモキシシリンにはユーハン社(Yuhan Corp.)のキモキシン(Kymoxin(R))カプセル1000 mgを使用し、クラリスロマイシンにはアボットコリア社(Abbott Korea Co., Ltd.)のクラリシド(Klaricid(R))フィルムコーティング錠500 mgを使用した。
【0079】
実施例2:CJ-12420(テゴプラザン)100 mg、アモキシシリンおよびクラリスロマイシン
【0080】
(1)CJ-12420(テゴプラザン)100 mgを含む錠剤
CJ-12420の100 mg錠剤を調製するために、以下の手順に従って製剤を製造した。剤形は、主成分として100 mgの4-[(5,7-ジフルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-クロメン-4-イル)オキシ]-N,N,2-トリメチル-1H-ベンズイミダゾール-6-カルボキサミドを含むように調製した。マンニトール、微結晶セルロース、およびクロスカルメロースナトリウムを前記主成分に混合した。ここで混合物を調製するために、充填剤は、最終剤形の重量部に対して1~99%(100 mgのマンニトールおよび160 mgの微結晶セルロース)の割合でその中に含むように、また崩壊剤の割合は、最終剤形の重量部に対して1~20%(20 mgのクロスカルメロースナトリウム)の範囲内で使用した。
【0081】
得られた混合物にヒドロキシプロピルセルロースと精製水を含む結合剤溶液を加えて造粒し、結合剤の含有量は、顆粒を調製するための有効成分の重量部に対して4~40%(12 mgのヒドロキシプロピルセルロース)の範囲で使用した。
【0082】
顆粒を乾燥する工程を実施した後、得られた整粒生成物、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを顆粒に添加し、一緒に混合するように粉砕を行った。
【0083】
希釈剤の割合は、最終剤形の重量部に対して1~10%(4 mgのコロイド状二酸化ケイ素)の範囲内で使用し、グリデントの割合は、最終剤形の重量部に対して1~10%(4 mgのステアリン酸マグネシウム)の範囲内で使用した。その後、得られた混合物を圧縮し、錠剤に調製した。
【0084】
前記錠剤は、フィルムコーティング剤でコーティングした。錠剤は、最終剤形の重量部に対して2~6%(12 mg)の重量比でコーティングが形成されるように調製した。
【0085】
(2)アモキシシリンまたはクラリスロマイシン錠
アモキシシリンにはユーハン社(Yuhan Corp.)のキモキシン(Kymoxin(R))カプセル1000 mgを使用し、クラリスロマイシンにはアボットコリア社(Abbott Korea Co., Ltd.)のクラリシド(Klaricid(R))フィルムコーティング錠500 mgを使用した。
【0086】
比較例1:パントプラゾール、アモキシシリン、およびクラリスロマイシン
パントプラゾールには武田薬品(Takeda Pharmaceutical Co. Ltd.)のパントロック(Pantoloc(R))錠40 mgを使用した。アモキシシリンには、ユーハン社(Yuhan Corp.)のキモキシン(Kymoxin(R))カプセル1000 mgを使用した。クラリスロマイシンには、アボットコリア社(Abbott Korea Co., Ltd.)のクラリシド(Klaricid(R))フィルムコーティング錠500 mgを使用した。
【0087】
比較例2:ランソプラゾール、アモキシシリン、およびクラリスロマイシン
ランソプラゾールにはテイジ社(Jeil Pharmaceutical Co., Ltd.)のランストン(Lanston(R))カプセル30 mg、アモキシシリンにはユーハン社(Yuhan Corp.)のキモキシン(Kymoxin(R))カプセル1000 mgを使用し、およびクラリスロマイシンには、アボットコリア社(Abbott Korea Co., Ltd.)のクラリシド(Klaricid(R))フィルムコーティング錠500 mgを使用した。
【0088】
実施例3:臨床試験1
1.被験者の選択
【0089】
(1)コホート1
テゴプラザンとアモキシシリン/クラリスロマイシンの単回および併用の複数回投与の薬物動態学的相互作用を評価するために、無作為化、非盲検、および複数回投与の設計に従って臨床試験を設計した。
【0090】
試験に参加する資格があると判断された合計24名の被験者を2つの群のそれぞれに1:1の比率で無作為に割り当てた。無作為に割り当てた各群には、各介入期間中に配置された治験用医薬品を投与し、設計どおりに臨床試験を行った。各治験用医薬品の半減期を考慮して、介入期間の間に14日間の休薬期間を与えた。
【0091】
(2)コホート2
本発明におけるヘリコバクターピロリ菌の除菌効果を確認するために、臨床試験を無作為化、非盲検、活性制御、並行および複数回投与の設計に従って設計した。合計221名の患者がこの試験のためにスクリーニングを受けた。その内36名の患者が登録され、34名の患者から完全な臨床結果を得た。
【0092】
具体的には、上記の36名の患者は3つの患者群(T
1、T
2、R)に分け、それに応じて臨床試験を実施した。
【表1】
【0093】
選択基準
特に明記されない限り、この臨床試験に参加するには、治験対象者は以下の選択基準をすべて満たす必要がある:
1)スクリーニング検査の時点で19歳から45歳までの健康な成人であること;
2)先天性または慢性疾患がなく、病的症状または検査所見がないこと;
3)18.5~28.0 kg/m2の肥満指数(BMI)であること;
4)治験薬のプロファイルに従って治験責任医師が設定および実施する健康診断(面接、バイタルサイン、12誘導ECG、身体検査、臨床検査などを含む)に基づいて適格と見なされていること;
5)この臨床試験に参加する前に、試験の目的と内容、治験薬のプロファイルなどを十分に知らされた後、臨床試験プロセス全体に参加することへの自発的な同意があること;および
6)13C尿素呼気検査で陽性であること。
【0094】
除外基準
以下のいずれかが発生した場合には、治験対象者をこの臨床試験から除外した。
【0095】
1)病歴
a)肝臓、腎臓、胃腸、呼吸器、筋骨格、内分泌、神経精神医学的、血液腫瘍学的、泌尿器、または心血管(心不整脈を含む)疾患を含む、治験責任医師によって臨床的に関連があると考えられる疾患の病歴または現在の証拠;
b)治験責任医師が薬物吸収に影響を与える可能性があると考える胃腸疾患(例、胃炎、胃痙攣、胃食道逆流症、クローン病、潰瘍など)または腹部手術(単純な虫垂切除またはヘルニア切開を除く)の病歴 ; および
c)以前、ヘリコバクターピロリ菌の除菌治療に失敗したこと。
【0096】
2)臨床検査とECG
a)ASTまたはALT値が通常の上限(ULN)の少なくとも1.25倍より大きいこと;
b)総ビリルビン値がULNの1.5倍より大きいこと;
c)CKD-EPI式で計算されたeGFRが80 mL/分未満であること;および
d)ECGに関して臨床的に関連する何らかの異常があること。
【0097】
3)アレルギーと薬物乱用
a)本治験薬、治験薬に含まれる成分(ペニシリン、セフェム、およびマクロライド系抗生物質、パントプラゾールおよびベンズイミダゾール)および他の薬物(アスピリン、抗生物質などを含む)に対する過敏症の病歴があること;および
b)薬物乱用の病歴または薬物スクリーニング検査で陽性であったこと。
【0098】
4)薬物/食事制限
a)治験薬、治験薬の最初の治験投与前28日以内に、吸収、分布、代謝、および排泄に影響を与える可能性がある薬物(ハーブサプリメントを含む)または通常ではない食事(たとえば、少なくとも1Lのグレープフルーツジュース、過剰なニンニク、ブロッコリー、ケールなど)を摂取したこと;
b)治験薬の最初の治験投与前10日以内に処方薬(ETC)、市販薬(OTC)、ビタミンなどを使用したこと;および
c)他の臨床試験に参加して、治験薬の最初の治験投与前3か月以内に他の治験薬を受け取ったこと(治験薬を摂取しなかった場合は除く)。
【0099】
5)献血と輸血
a)治験薬の最初の治験投与前60日以内の全血献血;および
b)治験薬の最初の治験投与前30日以内の血液成分の提供および輸血。
【0100】
6)妊娠と避妊
a)妊娠中、妊娠検査で陽性、または授乳中であること;および
b)スクリーニングから治験薬の最終投与の30日までに、被験者またはその配偶者もしくはパートナーが、医学的に適格な二重避妊法または医学的に許容される避妊法(妊娠失敗率が確立された子宮内避妊器具、物理的バリア避妊法と殺精子剤の同時使用、精管切除、卵管切除/卵管結紮術、子宮摘出術等を含む)を使用できないこと。
【0101】
7)その他
a)平均30 g/日を超える量のアルコールの大量使用またはアルコール検査で陽性であること;
b)平均して1日あたり10本以上のタバコを吸うヘビースモーカーであること;および
c)400 mg/日を超える量のカフェインを摂取していること;および
d)治験責任医師の裁量により、臨床試験への参加が不適切と見なされる臨床的に関連する所見があること。
【0102】
2.臨床試験方法
【0103】
(1)コホート1
合計24名の被験者を群1と群2に分けた。最初の介入期間中、群1の被験者(12名)にテゴプラザン100 mgを1日2回4日間繰り返し投与し、薬物動態臨床試験を実施した5日目には1日1回投与した。14日間の休薬期間後の2回目の介入期間中、アモキシシリン1000 mgとクラリスロマイシン500 mgを1日2回4日間繰り返し投与し、5日目に1日1回投与した。14日間の休薬期間後の3回目の介入期間中、テゴプラザン100 mg、アモキシシリン1000 mg、およびクラリスロマイシン500 mgを1日2回6日間繰り返し投与し、7日目に1日1回投与した。各介入期間の最終投与に続いて、薬物動態学的血液サンプルを、第1の期間では72時間で17回、第2の期間では48時間で14回、および第3の期間では120時間で19回採取した。
薬物は、群2の被験者(12名)に、第1および第2の介入期間では群1の実施とは逆の順序で、第3の介入期間では同じ順序で投与した。薬物動態解析用の血液サンプルは、群1と同じ方法で採取した。
【0104】
(2)コホート2
治験薬の初回投与前のスクリーニング(28日目~2日目)の結果、選択基準と除外基準を満たした合計36名の被験者(T1:12名の被験者、T2:12名の被験者、R:12名の被験者)が、50 mg/100 mgのCJ-12420とアモキシシリン/クラリスロマイシンの反復同時投与、および40 mgのパントプラゾールとアモキシシリン/クラリスロマイシンの反復同時投与による胃内pHと除菌率の変化を評価するための試験に参加した。
T1群には、CJ-12420の50 mgとアモキシシリン1000 mg/クラリスロマイシン500 mgを1日2回7日間繰り返し投与した。T2群には、CJ-12420の100 mgとアモキシシリン1000 mg /クラリスロマイシン500 mgを1日2回7日間繰り返し投与した。R群には、パントプラゾール40 mgとアモキシシリン1000 mg/クラリスロマイシン500 mgを1日2回7日間繰り返し投与した。胃内pHについては、1日目に24時間すべての被験者から測定し、また反復投与においては、1日目と7日目にも24時間測定した。さらに、陰性転化率については、スクリーニング中にUBT検査でH.ピロリ菌陽性が確認された被験者がフォローアップ訪問した際に計算し、所定のスケジュールに従って安定性評価も行った。
【0105】
3.評価項目
【0106】
(1)薬力学的評価
評価変数
pH中央値、pH>6の時間の百分率、および除菌の成功率の評価
【0107】
(2)薬物動態評価
評価パラメーター
テゴプラザンを単独で繰り返し投与した場合、アモキシシリン/クラリスロマイシンを繰り返し投与した場合、テゴプラザン、アモキシシリン、クラリスロマイシンを組み合わせて繰り返し投与した場合に、テゴプラザン、クラリスロマイシン、およびアモキシシリンの平均血漿濃度を測定し、経時的な血漿中濃度および経時的な薬物濃度パターンを観察した。
【0108】
4.統計解析
(1)統計情報
主要な統計変数(年齢、体重、身長など)に関して記述統計を示した。
【0109】
(2)薬力学的評価指標
各投与群の胃内pHに関して記述統計を示した。
また、UBTの結果として計算した陰性への変換率の観点から除菌の成功率を計算した。
【0110】
(3)薬物動態評価指標
テゴプラザン、アモキシシリン、およびクラリスロマイシンの薬物動態を評価した。薬物動態評価パラメーターの記述統計を示した。各群間の相乗平均比率と90%信頼区間の点推定値は、線形混合効果モデルを使用して、対数変換された一次薬物動態評価パラメーターから計算した。
【0111】
5.結果
(1)被験者の参加状況と人口統計学的分布
【0112】
1)コホート1
コホート1に登録された24名の被験者のうち、20名が臨床試験全体を完了した。4名の除外者のうち、3名は同意を撤回し、1名は治験責任医師の決定に従って離脱した。被験者は全員男性で、平均年齢、身長、および体重は、それぞれ27.3±4.41歳、172.92±5.696 cm、および70.04±8.396 kgであった。
【0113】
2)コホート2
スクリーニング検査を受けた221名のボランティアのうち、36名のボランティア(T1:12名、T2:12名、R:12名)が臨床試験に登録され、そのうち2名の除外者(T2:1名およびR:1名)を除き34名の被験者がすべての臨床試験工程を完了した。被験者は全員男性で、平均年齢、身長、および体重は、それぞれ25.6±3.26歳、175.98±4.902cm、および74.28±8.721kgであった。
【0114】
(2)薬力学的評価
1日目と7日目のそれぞれについて、pHの中央値と胃内pHが6以上に維持される時間の百分率をそれぞれ
図1または
図2にまとめた。
【0115】
図1は、1日目における、pHの平均中央値の時間的変化、および胃内pHが6以上に維持される時間の百分率を示し、
図2は、7日目における、pHの平均中央値の時間的変化、
および胃内pHが6以上に維持される時間の百分率を示す。
【0116】
ベースライン(1日目)のpHの平均中央値は、T1、T2、およびR投与群でそれぞれ2.2±1.03、2.38±1.17、および1.87±0.44であり、また1日目のpHの平均中央値は7.23±0.47、7.5±0.31、および5.11±2.18であり、その結果、ベースラインと比較して顕著な増加が観察された。
【0117】
7日目のpHの平均中央値は、T1、T2、およびR投与群でそれぞれ6.94±0.45、7.33±0.56、および6.01±1.44であり、したがって、7日目のpHの平均中央値は、T1およびT2投与群の1日目のpHの平均中央値と類似していることが確認された。また、7日目のpHの平均中央値は、R投与群では1日目よりも上昇しているが、T1またはT2群と比較すると依然として低くなっている。
【0118】
また、ベースラインの24時間(1日目)の間で胃内pHが6以上に維持される時間の百分率は、それぞれ、T1投与群で10.19±13.16%、T2投与群で15.33±10.61%、R投与群で8.18±6.96%であった。1日目において、その時間の百分率は、T1投与群で87.7±10.71%、T2投与群で96.26±1.49%、R投与群で49.71±29.49%であり、その結果、ベースラインと比較して顕著な増加が観察された。
【0119】
7日目に胃内pHが6以上に維持される時間の百分率は、T1投与群で88.03±8.73%、T2投与群で96.33±5.55%、R投与群で58.34±29.21%であり、したがって、7日目には1日目と比較して増加が観察されたが、それらの間に顕著な差はなく、テゴプラザンを投与したT1またはT2投与群と比較してかなり低い値を示した。
【0120】
上記のように、本発明におけるテゴプラザンの投与は、pHの平均中央値、および24時間の間で胃内pHが6以上に維持された時間を大幅に増加させた。また、このような投与は、投与直後2時間以内の短時間でpHを6以上に大幅に上昇させた。
【0121】
一方、パントプラゾールを使用した場合の特徴は、投与直後のpH上昇速度が遅く、pHの中央値および24時間の間で胃内pHが6以上に維持される時間も本発明と比較して少ないことであった。
【0122】
言い換えれば、本発明のテゴプラザンの使用は、抗生物質、すなわちアモキシシリンおよびクラリスロマイシンのpKa値に近いpHを維持して、抗生物質の安定性を高め、抗生物質の最小発育阻止濃度を大幅に低下させ、また胃内pHの上昇状態を一定期間以上維持できる半減期も長くなり、その結果、テゴプラザンの使用は、アモキシシリンとクラリスロマイシンの除菌効果を最大化できることが示された。
【0123】
(3)薬物動態パラメーターの評価
テゴプラザンの薬物動態特性は、テゴプラザン100 mgを1日2回単独で繰り返し投与した後、アモキシシリン1000 mgとクラリスロマイシン500 mgを1日2回併用して繰り返し投与した後、テゴプラザン100 mg、アモキシシリン1000 mg、およびクラリスロマイシン500 mgを1日2回併用して繰り返し投与した後にそれぞれ評価した。その結果、アモキシシリン/クラリスロマイシンと組み合わせて投与した場合、テゴプラザンのCmaxは2.24倍に増加し、AUCは2.70倍に増加した。クラリスロマイシンのCmaxおよびAUCは、テゴプラザンと組み合わせて投与すると増加する傾向を示した。したがって、これら3つの製剤を組み合わせて投与した場合、テゴプラザンとクラリスロマイシンの生物学的利用率が向上することが確認された。
【0124】
実施例4:臨床試験2
1.被験者の選択
本発明におけるヘリコバクターピロリ菌の除菌効果を確認するために、臨床試験を無作為化、非盲検、実薬対照、並行および複数回投与の設計に従って設計した。合計350名の患者がスクリーニングし、350名の患者を臨床試験の実施のために登録した。
【0125】
選択基準
特に明記されていない限り、試験の参加者は以下のすべての選択基準を満たす必要があった。
(1)スクリーニング時に20歳から75歳までの健康な成人
(2)みぞおちの不快感を訴える者
(3)スクリーニングの結果としてH.ピロリ菌陽性であること
(4)スクリーニングの結果、上部消化管内視鏡検査で以下のいずれかに該当する者:
-消化性潰瘍(胃潰瘍または十二指腸潰瘍)
-瘢痕性胃潰瘍または十二指腸潰瘍の診断
-傷はないが、カルテに胃潰瘍または十二指腸潰瘍の病歴がある
-慢性萎縮性胃炎
(5)指示を理解し、遵守し、試験全体に参加できる者
(6)自主的に試験への参加を決定し、書面による同意書に署名する者
(7)試験中に医学的に有効な避妊手段(医学的に不妊の状態を含む)の使用に同意する者
-医学的に不妊の女性ボランティアは、試験に参加できる:
閉経(24ヶ月以上の無月経)、子宮摘出術、卵管切除術、または両側卵巣摘出術を受けた者
-医学的に有効な避妊手段:子宮内の機器(ループ、ミレーナ)、物理的避妊(男性コンドーム、女性コンドーム(フェミドム))、皮下避妊インプラント(インプラノン)、徐放性避妊注射または卵管切除術および卵管結紮術、および精管切除(ただし、試験中、経口避妊薬は許可されておらず、妊娠を防ぐために試験中は二重避妊が推奨される)
【0126】
除外基準
以下の基準のいずれかを満たした参加者は、試験から除外された。
(1)上部消化管内視鏡検査を受けることができない
(2)ピロリ菌の除菌療法を受けた者
(3)上部消化管内視鏡検査にて急性上部消化管出血、急性胃粘膜病変(AGML)、または急性十二指腸粘膜病変(ADML)が観られる者
(4)胃酸の分泌に影響を与える可能性のある手術を受けた、または受ける予定の者(例:上部消化管切除術または迷走神経切断術)
-ただし、単純な穿孔手術、虫垂切除術、胆嚢摘出術、および良性腫瘍の内視鏡的除去は除外する
(5)ゾリンジャー・エリソン症候群または胃酸分泌過多障害の病歴
(6)スクリーニング時に上部消化管内視鏡検査で胃出口閉塞(GOO)と診断され、または胃癌と診断された者
(7)スクリーニング前14日以内にプロトンポンプ阻害薬(PPI)またはヒスタミンH2受容体拮抗薬を全用量投与された者
(8)スクリーニング前28日以内にピロリ菌の除菌のための抗生物質またはビスマス製剤を含む薬物を投与された者
(9)妊娠中の女性または授乳中の女性
(10)スクリーニング時に臨床的に意味のある異常な結果
-AST、ALT、ALP、γ-GT、または総ビリルビン値が、各試験機関の正常上限(UNL)の2倍以上
-BUNまたはクレアチニン値が、各試験機関の正規上限(UNL)の1.5倍以上
(11)臨床的に意味のある異常な心電図
-主要不整脈、多発性PVC、または2°房室伝導障害異常(2°AV-block abnormality)
(12)5年間の悪性腫瘍の病歴
-ただし、参加者が腫瘍の完全寛解(CR、pCR)に達し、5年以上再発しなかった場合、または参加者が内視鏡的切除により腫瘍を完全に切除した後、5年以上再発しなかった場合は、選択される。
(13)肝臓、腎臓、心臓血管系、呼吸器系、内分泌系、または中枢神経系の臨床的に意味のある異常
(14)テゴプラザンまたはプロトンポンプ阻害剤(PPI)、ペニシリン抗生物質、およびマクロライド系抗生物質の主成分または充填剤に対する過敏反応の病歴
(15)試験中に、院内看護を必要とする手術を受ける、または外科的治療を必要とする予定の者
(16)2度目の訪問(無作為化した臨床試験日)に基づき、4週間以内に他の臨床試験(CJ_APA_303臨床試験を除く)に参加した者
-治験責任医師が決定した、現在の治験の結果および安全性評価に影響を及ぼさない非介入試験(観察試験または調査)に参加した、または参加している者は、治験に参加できる。加えて、他の臨床試験に参加するための書面による同意書に署名はしたものの、治験薬の投与または看護を受けることなくスクリーニング後に除外された者は、試験に参加できる。
-ただし、参加者が[CJ_APA_303]試験に参加し、潰瘍が治癒したことが確認された場合は、試験への参加が許可される。
(17)上記の基準に加えて、医学的判断に基づき、治験責任医師の臨床的に意味のある意見に従って試験に適格でないとされた者
【0127】
2.臨床試験方法
治験薬の初回投与前から初回訪問時(-14日目~-0日目)のスクリーニング(内視鏡検査)の結果、すべての選択基準を満たし、除外基準を満たさなかった合計350名の被験者(TAC群-175名、LAC群-175名)が、テゴプラザン50 mgとアモキシシリン/クラリスロマイシンを組み合わせて繰り返し投与する場合、およびランソプラゾール30 mgとアモキシシリン/クラリスロマイシンを組み合わせて繰り返し投与する場合、それぞれのピロリ菌の除菌率を評価するための試験に参加した。
【0128】
TAC群はテゴプラザン50 mg、アモキシシリン1000 mg/クラリスロマイシン500 mgを1日2回7日間繰り返し投与し、また、LAC群はランソプラゾール30 mg、アモキシシリン1000 mg/クラリスロマイシン500 mgを1日2回7日間繰り返し投与した。
【0129】
スクリーニングによる適格性評価の完了後、参加者には2回目の訪問時(0日目)に処方された治験薬を翌日の朝(1日目)から服用するように言い渡した。治験薬の投与開始初日から、治験参加者の薬剤投与日誌(drug administration log)を記録した。
【0130】
参加者には、3回目の訪問(8日目)には治験薬を服用せず、空腹時に到着するように言い渡した。
【0131】
3.評価項目
(1)クラリスロマイシンのMICによるピロリ菌の除菌率
クラリスロマイシンのMIC基準を以下に示す。
<0.5(μg/ml):感受性および中程度
>1(μg/ml):耐性
(2)上部消化管内視鏡検査の病変によるH.ピロリ菌の除菌率
【0132】
5.結果
クラリスロマイシンMICによるH.ピロリ菌の除菌率に基づいて、テゴプラザン50 mgとアモキシシリン/クラリスロマイシンを組み合わせて繰り返し投与したTAC群は、H.ピロリ菌の除菌成功率が92%であり、ランソプロゾール30 mgとアモキシシリン/クラリスロマイシンを組み合わせて繰り返し投与されたLAC群よりもH.ピロリ菌の除菌に優れていた。テゴプラザン50mgとアモキシシリン/クラリスロマイシンを組み合わせて繰り返し投与した場合、その除菌効果は、菌に耐性を持つ患者でも観察された。
【0133】
さらに、上部消化管内視鏡検査の病変によるピロリ菌の除菌率に基づくと、TAC群は消化性潰瘍疾患(PUD)で76.19%のピロリ菌の除菌率を示し、LAC群よりもH.ピロリ菌の除菌に優れていた。TAC群も慢性萎縮性胃炎(CAG)で68.15%のH.ピロリ菌の除菌率を示し、LAC群と同等またはそれ以上の除菌効果を示した。
【0134】
上記の結果は、本発明による医薬組成物が、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンの除菌効果を最大化することにより、ヘリコバクターピロリ菌を除菌する優れた効果を有することを実証している。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の医薬組成物は、胃内pHを一定レベル以上に一定期間以上維持し、それにより抗生物質の安定性を高め、pHをアモキシシリンおよびクラリスロマイシンのpKa値に近づけて維持する。それにより、抗生物質の最小発育阻止濃度を大幅に下げ、アモキシシリンとクラリスロマイシンの除菌効果を最大化する。また、この組成物は、物抗生物質耐性ヘリコバクターピロリ菌の除菌にも優れた効果を発揮し、耐性菌の除菌にも有効に利用できる。また、この組成物は、pHを一定以上に長期間維持する効果があり、したがって、投薬に対する非常に高いコンプライアンスを達成するという利点もある。さらに、この組成物は、既存の併用療法とは異なり、食事療法を考慮することなく食前または食後に利用できるという利点もあり、したがって、関連する医薬品産業分野で高い価値を持って使用されることが期待される。