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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】フェムト秒レーザドッキング装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/009 20060101AFI20221207BHJP
   A61F 9/008 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A61F9/009
A61F9/008 120E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019568728
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 IB2018055364
(87)【国際公開番号】W WO2019021120
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/537,844
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ティム
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ダイジンガー
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0053837(US,A1)
【文献】特表2012-500677(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0190741(US,A1)
【文献】国際公開第2014/076959(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/009
A61F 9/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェムト秒レーザドッキング装置であって、
上方円錐台状部分及び下方球状部分を含む吸引コーンと、
機械的な停止部を含む吸引リングであって、前記機械的な停止部は、少なくとも部分的に前記吸引リングの上部の円周に延在し、前記吸引リングは前記吸引コーンの前記下方球状部分に係合して、前記吸引コーンがz方向に前記機械的な停止部を越えて眼に向かってさらに下げられることを防止する、吸引リングと
を含み、
前記z方向は、角膜の頂点での接平面の法線方向であり、
前記吸引リングは、前記機械的な停止部と異なる少なくとも1つの接触及び封止面をさらに含み、
前記吸引コーンの前記上方円錐台状部分は、前記z方向に断続的に減少する直径を有し、前記直径は、前記吸引コーンが前記吸引リングに位置決めされ且つx方向及びy方向の中心に置かれるとき、前記吸引コーン及び前記吸引リングの共通の軸の周りでも中心に置かれ、
前記吸引コーンの前記下方球状部分は、前記共通の軸上の中心点から、前記吸引リングの前記接触及び封止面に係合する前記下方球状部分の外面上の任意の点まで測定される半径(r )を有し、
前記吸引リングの球状部分は、前記共通の軸上の中心点から、前記吸引リングの任意の接触及び封止面まで測定される半径(r )を有し、
(r )=(r )である、フェムト秒レーザドッキング装置。
【請求項2】
前記機械的な停止部は、上方直径を有し、及び前記上方円錐台状部分と前記下方球状部分との接合部における前記吸引コーンの部分は、前記機械的な停止部の前記上方直径を上回る接合部直径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記吸引コーンは、前記吸引リングに向かって下げられている間、その中心軸が前記法線方向から傾けられ、且つ前記吸引コーンの前記接合部直径が前記機械的な停止部の前記上方直径に係合するとき、前記吸引リングに対して傾くことなくドッキングされ得る、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
フェムト秒レーザ眼科手術のためのシステムであって、
フェムト秒レーザと、
前記フェムト秒レーザの位置を調整するように動作可能な制御装置と、
前記制御装置を制御するように動作可能なプロセッサと、
上方円錐台状部分及び下方球状部分を含む吸引コーンであって、前記フェムト秒レーザと係合し、且つ前記フェムト秒レーザの前記位置が調整されるとき、z方向に眼に向かって下げられるように動作可能である吸引コーンと、
機械的な停止部を含む吸引リングであって、前記機械的な停止部は、少なくとも部分的に前記吸引リングの上部の円周に延在し、前記吸引リングは前記吸引コーンの前記球状部分に係合して、前記吸引コーンが前記機械的な停止部を越えて前記z方向に前記眼に向かってさらに下げられることを防止する、吸引リングと
を含み、
前記z方向は、角膜の頂点での接平面の法線方向であり、
前記吸引リングは、前記機械的な停止部と異なる少なくとも1つの接触及び封止面をさらに含み、
前記吸引コーンの前記上方円錐台状部分は、前記z方向に断続的に減少する直径を有し、前記直径は、前記吸引コーンが前記吸引リングに位置決めされ且つx方向及びy方向の中心に置かれるとき、前記吸引コーン及び前記吸引リングの共通の軸の周りでも中心に置かれ、
前記吸引コーンの前記下方球状部分は、前記共通の軸上の中心点から、前記吸引リングの前記接触及び封止面に係合する前記下方球状部分の外面上の任意の点まで測定される半径(r )を有し、
前記吸引リングの球状部分は、前記共通の軸上の中心点から、前記吸引リングの任意の接触及び封止面まで測定される半径(r )を有し、
(r )=(r )である、システム。
【請求項5】
前記機械的な停止部は、上方直径を有し、及び前記上方円錐台状部分と前記下方球状部分との接合部における前記吸引コーンの部分は、前記機械的な停止部の前記上方直径を上回る接合部直径を有する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記吸引コーンは、前記吸引リングに向かって下げられている間、その中心軸が前記法線方向から傾けられ、且つ前記吸引コーンの上方停止部直径が前記機械的な停止部の前記上方直径に係合するとき、前記吸引リングに対して傾くことなくドッキングされ得る、請求項5に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科手術及び手術用機器に関し、より具体的には、眼科手術のためのフェムト秒レーザドッキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科では、眼科手術が眼及び付属の視覚構造に行われて、毎年数万名の患者の視力を守り且つ改善している。しかしながら、眼内のさらに小さい変化に対する視力の感度及び多くの眼の構造の微小で繊細な性質を考慮すると、眼科手術の実施は、困難であり、且つさらに小さい又は珍しい外科的な過失の削減又は手術技術の正確さの軽度の改善は、術後の患者の視力に大きい違いをもたらし得る。
【0003】
眼科手術の1つのタイプ、屈折のある眼の手術は、様々な視力の問題を矯正するために使用される。1つの一般的なそのような屈折手術は、LASIK(レーザ角膜内切削形成術)として知られており、且つ近視及び遠視、乱視又はより複雑な屈折異常を矯正するために使用される。他の眼科手術は、角膜欠損又は他の問題を矯正し得る。例えば、光治療的角膜切除(PTK)を使用して、疾患のある角膜組織又は角膜の不規則な部分を単独で又はLASIKと組み合わせて除去し得る。別の一般的な眼科手術は、白内障の除去である。
【0004】
LASIK、PTK、白内障手術及び他の眼科手術中、矯正処置は、一般に、眼表面ではなく、眼の内部、例えば角膜基質又は水晶体において行われる。この実施は、矯正処置を、眼の最も効果的な部分を標的とすることができるようにすることにより、角膜の外側の保護部分をほとんど無傷に保つことにより及び他の理由で手術結果を改善する傾向がある。
【0005】
眼の内部は、様々な方法でアクセスされ得るが、多くの場合、アクセスは、角膜のフラップを切開すること又はそうでなければ角膜を切開することを含む。角膜の切開は、集光した超短パルスを生じるフェムト秒レーザによって行われることが多く、より低速のレーザに関連する周囲組織の巻き添え被害及び刃などの機械的な切開器具に関連する合併症をなくす。そのため、フェムト秒レーザは、顕微鏡観察レベルで組織を切り裂くために使用され得る。
【0006】
フェムト秒レーザ眼科手術は、一般に、ドッキング、撮像、分析及びレーザ治療を含む。
【0007】
一般的に、ドッキング中、最初に患者の眼に吸引リングが位置決めされ、且つ吸引コーンが吸引リング上に垂直に下げられる。吸引コーンの下方部分は、吸引リングの内面及びまた患者の眼に接触する。患者の眼に接触することにより、吸引コーンは、圧力を提供して患者の角膜を扁平にし(圧平として公知)、且つそれをレーザ治療のための適所に保持する。ドッキングは、細心の注意を要するプロセスであり、及び吸引コーンの適切な配置は、フェムト秒レーザ眼科手術の成功に重要である。しかしながら、吸引コーンの正しい配置は、現在、一般に経験及び認知に依存するユーザによる目視検査によって誘導されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、フェムト秒レーザドッキング装置であって、上方円錐台状部分及び下方球状部分を含む吸引コーンと、機械的な停止部を含む吸引リングであって、機械的な停止部は、少なくとも部分的に吸引リングの上部の円周に延在し、且つまた吸引コーンの下方球状部分に係合して、吸引コーンがz方向に機械的な停止部を越えて眼に向かってさらに下げられることを防止する、吸引リングとを含むフェムト秒レーザドッキング装置を提供する。
【0009】
明白に排他的でない限り、互いに組み合わされ得る追加的な実施形態では、機械的な停止部は、上方直径を有し、及び上方円錐台状部分と下方球状部分との接合部における吸引コーンの部分は、機械的な停止部の上方直径を上回る接合部直径を有し、吸引コーンは、吸引リングに向かって下げられている間、x又はy方向に傾けられ、且つ吸引コーンの上方停止部直径が機械的な停止部の上方直径に係合するとき、吸引リングに対して傾くことなくドッキングされ得、吸引リングは、機械的な停止部と異なる少なくとも1つの接触及び封止面をさらに含み、及び吸引コーンの上方円錐台状部分は、z方向に断続的に減少する直径を有し、直径は、吸引コーンが吸引リングに位置決めされ且つx方向及びy方向の中心に置かれるとき、吸引コーン及び吸引リングの共通の軸の周りでも中心に置かれ、吸引コーンの下方球状部分は、共通の軸上の中心点から、吸引リングの接触及び封止面に係合する下方球状部分の外面上の任意の点まで測定される半径(r)を有し、吸引リングの球状部分は、共通の軸上の中心点から、吸引リングの任意の接触及び封止面まで測定される半径(r)を有し、(r)=(r)である。
【0010】
本開示は、フェムト秒レーザ眼科手術のためのシステムであって、フェムト秒レーザと、フェムト秒レーザの位置を調整するように動作可能な制御装置と、制御装置を制御するように動作可能なプロセッサと、上方円錐台状部分及び下方球状部分を含む吸引コーンであって、フェムト秒レーザと係合し、且つフェムト秒レーザの位置が調整されるとき、z方向に眼に向かって下げられるように動作可能である吸引コーンと、機械的な停止部を含む吸引リングであって、機械的な停止部は、少なくとも部分的に吸引リングの上部の円周に延在し、且つまた吸引コーンの球状部分に係合して、吸引コーンが機械的な停止部を越えてz方向に眼に向かってさらに下げられることを防止する、吸引リングとを含むシステムを提供する。
【0011】
明白に排他的でない限り、互いに組み合わされ得る追加的な実施形態では、機械的な停止部は、上方直径を有し、及び上方円錐台状部分と下方球状部分との接合部における吸引コーンの部分は、機械的な停止部の上方直径を上回る接合部直径を有し、吸引コーンは、吸引リングに向かって下げられている間、x又はy方向に傾けられ、且つ吸引コーンの上方停止部直径が機械的な停止部の上方直径に係合するとき、吸引リングに対して傾くことなくドッキングされ得、吸引リングは、機械的な停止部と異なる少なくとも1つの接触及び封止面をさらに含み、及び吸引コーンの上方円錐台状部分は、z方向に断続的に減少する直径を有し、直径は、吸引コーンが吸引リングに位置決めされ且つx方向及びy方向の中心に置かれるとき、吸引コーン及び吸引リングの共通の軸の周りでも中心に置かれ、吸引コーンの下方球状部分は、共通の軸上の中心点から、吸引リングの接触及び封止面に係合する下方球状部分の外面上の任意の点まで測定される半径(r)を有し、吸引リングの球状部分は、共通の軸上の中心点から、吸引リングの任意の接触及び封止面まで測定される半径(r)を有し、(r)=(r)である。
【0012】
本開示は、フェムト秒レーザをドッキングする方法であって、吸引リングであって、少なくとも部分的に吸引リングの上部の円周に延在する機械的な停止部と、機械的な停止部と異なる少なくとも1つの接触及び封止面とを有する吸引リングを眼に位置決めすることと、上方円錐台状部分及び下方球状部分を有する吸引コーンをz方向に眼に向かって下げることであって、それにより、吸引リングの機械的な停止部は、吸引コーンの球状部分に係合して、吸引コーンがz方向に眼に向かってさらに下げられることを防止する、下げることと、少なくとも1つのバキューム系によって吸引リングに吸引を適用することであって、吸引コーンは、吸引リングの接触及び封止面との接触によって吸引リングに封止される、適用することとを含む方法をさらに提供する。
【0013】
明白に排他的でない限り、互いに組み合わされ得る追加的な実施形態では、機械的な停止部は、上方直径を有し、及び上方円錐台状部分と下方球状部分との接合部における吸引コーンの部分は、機械的な停止部の上方直径を上回る接合部直径を有し、吸引コーンは、吸引リングに向かって下げられている間、x又はy方向に傾けられ、且つ吸引コーンの上方停止部直径が機械的な停止部の上方直径に係合するとき、吸引リングに対して傾くことなくドッキングされ得、吸引コーンは、機械的な停止部によってではなく、吸引リングの接触及び封止面との接触によって吸引リングに封止され、及び吸引コーンの上方円錐台状部分は、z方向に断続的に減少する直径を有し、直径は、吸引コーンが吸引リングに位置決めされ且つx方向及びy方向の中心に置かれるとき、吸引コーン及び吸引リングの共通の軸の周りでも中心に置かれ、吸引コーンの下方球状部分は、共通の軸上の中心点から、吸引リングの接触及び封止面に係合する下方球状部分の外面上の任意の点まで測定される半径(r)を有し、吸引リングの球状部分は、共通の軸上の中心点から、吸引リングの任意の接触及び封止面まで測定される半径(r)を有し、(r)=(r)である。
【0014】
上述のシステムは、上述の方法と一緒に使用され得、及び逆も同様である。さらに、本明細書で説明するいずれのシステムも、本明細書で説明するいずれかの方法と一緒に使用され得、及び逆も同様である。
【0015】
本発明並びにその特徴及び利点をより詳細に理解するために、ここで、添付図面と併せて以下の説明を参照し、添付図面は、縮尺通りではなく、図面では、同様の符号は、同様の特徴を指している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】上方円錐台状部分と下方球状部分とを含む吸引コーンを備えるフェムト秒レーザドッキング装置の概略断面図である。
図2】上方円錐台状部分と下方球状部分とを含む吸引コーンを備えるフェムト秒レーザドッキング装置の詳細な概略断面図である。
図3】上方円錐台状部分と下方球状部分とを含む吸引コーンを備えるフェムト秒レーザドッキング装置の概略3次元(「3D」)図である。
図4】吸引コーンの下方球状部分の球形の概略図である。
図5】フェムト秒レーザ眼科手術のためのシステムの概略図である。
図6】フェムト秒レーザをドッキングするための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
下記の説明では、開示の主題の議論を促すために例として詳細に記載する。しかしながら、開示の実施形態は、例示であり、考えられる全ての実施形態の包括ではないことが当業者に明らかである。
【0018】
ここで、図面を参照すると、図1は、吸引リング105及び吸引コーン125を備えるフェムト秒レーザドッキング装置100の概略断面図である。吸引リング105は、接触及び封止面108及び109並びに機械的な停止部110を有する。機械的な停止部110は、少なくとも部分的に吸引リング105の上部の円周に延在する。機械的な停止部110は、吸引リング105の上部の全周にも延在し得る。吸引リング105は、機械的な停止部110と異なる少なくとも1つの接触及び封止面を含む。吸引リング105は、図示の通り、眼101に位置決めされ、且つバキューム系106及びバキューム系107に取り付けられる。吸引リング105は、球状部分も有し、これは、図1では、吸引リングのバキューム系106及び107とは反対側に示されている。吸引リングのこの球状部分は、ドッキング中に吸引コーンがz方向に下げられるとき、吸引コーンの下方球状部分を受け入れる。吸引リングの球状部分及び吸引コーンの下方球状部分の両方は、正曲率を有する。図示の通り、吸引リング105は、眼に適切に位置決めされ、即ち吸引コーン125を下げる前に、ユーザが規定した中心軸に関してx方向及びy方向の中心に置かれる。ユーザ規定中心軸は、例えば、眼の実際の中心又は患者の視軸であり得る。
【0019】
吸引コーン125は、上方円錐台状部分130及び下方球状部分140を含む。吸引コーンの上方円錐台状部分130は、全体的に、細い端部又は先端部が除去されている円錐体の形状である。上方円錐台状部分130は、z方向に断続的に減少する直径を有する。本明細書では、x及びy方向は、角膜の頂点に対して大まかに垂直な平面を指し、及びz方向は、x及びy方向の平面に対して大まかに垂直な平面を指す。吸引コーンの下方球状部分140は、正曲率で球形である。
【0020】
フェムト秒レーザをドッキングするとき、吸引リング105は、眼101に位置決めされ、第1のバキューム系106によって行われる吸引が開始される。この吸引により、吸引リングを適所に且つ眼と接触して保持する。吸引コーン125は、吸引リング105に向かって垂直に下げられ、及び眼の上に適切に位置決めされると、第2のバキューム系107によって行われる吸引が開始されて、吸引コーン125を適所に且つ眼と接触して保持し得る。吸引コーン125がz方向に吸引リング105に向かって垂直に下げられるとき、機械的な停止部110が吸引コーン125の下方球状部分140に係合し、これにより吸引コーンが機械的な停止部110を越えてさらに眼に向かって下げられることを防止する。吸引コーンの下方球状部分140が吸引リング105の球状部分に適切にドッキングされると、それらの球状部分は、共通の中心点を共有し、これは、共通の回転点141でもある。
【0021】
図2は、上方円錐台状部分130と下方球状部分140とを含む吸引コーン125を備えるフェムト秒レーザドッキング装置100を表す詳細な概略断面図である。図2では、吸引リング105は、眼101に適切にドッキングされ、及び第1のバキューム系106によって適所に保持されている。吸引リング105は、機械的な停止部110を有する。
【0022】
機械的な停止部110は、接合部直径135で吸引コーン125に係合する上方直径111を有している。接合部直径135は、上方円錐台状部分130と下方球状部分140との接合部の直径である。上方直径111が接合部直径135に係合すると、接合部直径135の長さが機械的な停止部の上方直径111の長さよりも長いため、吸引コーン125が眼に向かってさらに下げられることを防止する。例えば、上方直径111は、長さ12.0mmであり、及び接合部直径135は、長さ12.2mmであり得る。そのため、上方直径111が接合部直径135に係合すると、吸引コーン125が眼に向かってさらに下げられることを防止する。図2では、吸引コーン125は、z方向に吸引リングに向かって垂直に下げられ、及び吸引コーンの下方球状部分140は、吸引リングに適切にドッキングされ、且つ第2のバキューム系107によって適所に保持される。
【0023】
適切に位置決めされた吸引リング105に吸引コーン125が適切にドッキングされると、下方球状部分140の中心は、共通の軸150の周りで吸引リング105の球状部分と一緒にx及びy方向の中心に置かれる。共通の軸150に沿って、下方球状部分140及び吸引リング105の球状部分は、共通の回転点141を共有する。吸引コーン125は、z方向に吸引リング105に向かって下げられている間、x方向又はy方向に傾けられており、且つそれでもなお吸引コーン125の接合部直径135が機械的な停止部の上方直径111に係合するとき、吸引リングに対して傾くことなくドッキングされ得る。
【0024】
吸引コーンの下方球状部分140は、回転点141から、接触及び封止面108又は109に係合するその外面上の任意の点まで測定される半径(r)を有する。吸引リングの球状部分は、回転点141から、下方球状部分140に係合する吸引リングの接触及び封止面108及び109上の任意の点まで測定される半径(r)を有する。半径(r)の長さは、半径(r)の長さに等しい。(r)=(r)であるため、下方球状部分140が吸引リング105の球状部分に適切にドッキングされると、接触及び封止面108及び109は、バキューム系106及び107が吸引コーン及び吸引リングを適所に保持するのに適切な接触を可能にする。各半径(r)及び(r)は、それぞれ2mm~25mmの長さ、5mm~20mmの長さ、6mm~15mmの長さ、少なくとも2mmの長さ、少なくとも5mmの長さ、少なくとも6mmの長さ、25mm以下の長さ、20mm以下の長さ又は15mm以下の長さを有し得る。
【0025】
フェムト秒レーザドッキング装置100は、ドッキング中に吸引リングを手動で位置決めすることに関連した困難及びエラーを修正する。具体的には、フェムト秒レーザドッキング装置100は、眼の回転によって引き起こされ得る、眼での吸引リングのx及びy方向の傾きを修正する。さらに、吸引リングが傾けられており、且つバキューム吸引が不十分であると後に発見されるような状況において、ユーザが圧平及びドッキングを再び実施する必要性が生じることを防止する。機械的な停止部110が接合部直径135に係合すると、フェムト秒レーザドッキング装置100は、吸引コーンがz方向に下げられている間、x又はy方向に傾けられる場合でも、吸引コーン125が眼に不注意に接触することを防止する。フェムト秒レーザドッキング装置100は、ユーザがドッキング手順をより迅速に且つ合併症が少ない状態で実施できるようにし、これにより、ドッキング及び治療を通して動かない状態を維持する必要がある患者が眼での吸引によって受けるストレスを減少させる。フェムト秒レーザドッキング装置100は、眼の血管及び他の内部構造に損傷を与える可能性をさらに減少させ、この損傷は、ドッキング手順を再び実施すること及び長期の吸引に起因し得る。
【0026】
図3は、吸引リング105及び吸引コーン125を含むフェムト秒レーザドッキング装置100の概略3D図である。吸引コーン125は、上方円錐台状部分130、下方球状部分140及び接合部直径135を含む。図示の通り、吸引リング105は、眼に適切に位置決めされ、即ち吸引コーン125を下げる前に、ユーザ規定中心軸に関してx方向及びy方向の中心に置かれる。図3では、吸引コーン125は、接合部直径135が機械的な停止部110に係合するまでz方向に下げられている。吸引コーン125は、吸引リング105に適切にドッキングされ、及びそれらは、バキューム系106及び107によって適所に且つ眼101と接触して保持される。眼上にx及びy方向に適切に位置決めされている吸引リング105に吸引コーン125が適切にドッキングされるため、それらの両方は、共通の軸150の周りでx及びy方向の中心に置かれる。
【0027】
図4は、吸引コーンの下方球状部分140の球形の概略図400である。下方球状部分140は、図示の通り回転点141であるその中心点から、吸引リングの接触及び封止面に係合するその外面上の任意の点まで測定される半径(r)を有する。下方球状部分140の半径(r)の長さは、吸引リングの球状部分の半径(r)の長さに等しい。そのため、吸引コーン及び吸引リングが一緒に適切にドッキングされると、それらの球状部分は、本質的に、共通の回転点141を備える同心の球形を形成する。各半径(r)及び(r)は、それぞれ2mm~25mmの長さ、5mm~20mmの長さ、6mm~15mmの長さ、少なくとも2mmの長さ、少なくとも5mmの長さ、少なくとも6mmの長さ、25mm以下の長さ、20mm以下の長さ又は15mm以下の長さであり得る。
【0028】
図5は、フェムト秒レーザ眼科手術のためのシステム500の概略図である。システム500は、フェムト秒レーザの位置を調整するための制御装置555を有するフェムト秒レーザ550、制御装置を制御するためのプロセッサ560、メモリ565、吸引リング505及び吸引コーン525を含む。制御装置555は、x方向、y方向又はz方向のいずれかにおいてフェムト秒レーザ550の位置を調整し得る。図1及び図2で説明したように、吸引コーン525は、上方円錐台状部分530及び下方球状部分540を有する。吸引コーン525は、フェムト秒レーザ550と係合し、且つフェムト秒レーザの位置が制御装置555を介して調整されるとき、z方向に眼に向かって下げられ得る。吸引コーンの上方円錐台状部分は、z方向に断続的に減少する直径を有する。吸引コーン525は、接合部直径535を有し、これは、上方円錐台状部分530と下方球状部分540との接合部における直径である。
【0029】
同様に図1及び図2で説明したように、吸引リング505は、接触及び封止面508及び509並びに機械的な停止部510を有する。機械的な停止部510は、少なくとも部分的に吸引リング505の上部の円周に延在する。機械的な停止部510は、吸引リング505の上部の全周にも延在し得る。吸引リング505は、機械的な停止部510と異なる少なくとも1つの接触及び封止面を含む。吸引リング505は、図示の通り、眼501に位置決めされ、且つバキューム系506及びバキューム系507に取り付けられる。図5では、吸引リング505は、眼に適切に位置決めされ、即ち吸引コーン525を下げる前に、ユーザ規定中心軸に関してx方向及びy方向の中心に置かれる。ユーザ規定中心軸は、例えば、眼の実際の中心又は患者の視軸であり得る。
【0030】
眼501にフェムト秒レーザ550をドッキングするため、吸引リング505は、眼に位置決めされ、且つ第1のバキューム系506によって行われる吸引が開始される。この吸引により、吸引リングを適所に且つ眼と接触して保持する。吸引コーン525は、吸引リング505に向かって垂直に下げられ、及び適切に位置決めされると、第2のバキューム系507によって行われる吸引が開始されて、吸引コーン525を適所に且つ眼と接触して保持し得る。
【0031】
吸引コーン525は、機械的な停止部510が吸引コーンの球状部分540に係合して吸引コーンが機械的な停止部510を越えて眼に向かってさらに下げられることを防止するまで、z方向に吸引リング505に向かって垂直に下げられる。機械的な停止部510は、吸引コーン525の接合部直径535に係合する上方直径511を有する。機械的な停止部510が接合部直径535に係合すると、接合部直径535の長さが機械的な停止部の上方直径511の長さよりも長いため、吸引コーン525が眼に向かってさらに下げられることを防止する。
【0032】
適切に位置決めされた吸引リング505に吸引コーン525が適切にドッキングされると、吸引コーン及び吸引リングは、共通の軸550の周りでx及びy方向の中心に置かれ、且つ共通の回転点541を有する。吸引コーン525は、吸引リング505に向かって下げられている間、x方向又はy方向に傾けられており、且つそれでもなお吸引コーンの接合部直径535が機械的な停止部の上方直径511に係合するとき、吸引リングに対して傾くことなくドッキングされ得る。
【0033】
フェムト秒レーザ眼科手術のためのシステム500は、ドッキング中に吸引リングを手動で位置決めすることに関連した困難及びエラーを修正する。具体的には、システム500は、眼の回転によって引き起こされ得る、眼での吸引リングのx及びy方向の傾きを修正する。さらに、吸引リングが傾けられており、且つバキューム吸引が不十分であると後に発見されるような状況において、ユーザが圧平及びドッキングを再び実施する必要性が生じることを防止する。機械的な停止部511が接合部直径535に係合すると、システム500は、吸引コーンがz方向に下げられている間、x又はy方向に傾けられている場合でも、吸引コーン525が眼に不注意に接触することを防止する。システム500は、ユーザがドッキング手順をより迅速に及び合併症を少なくして実施できるようにし、これより、ドッキング及び治療を通して動かない状態を維持する必要がある患者が眼での吸引によって受けるストレスを減少させる。システム500は、眼の血管及び他の内部構造を損傷する可能性をさらに減少させ、この損傷は、ドッキング手順を再び実施すること及び長期の吸引によって引き起こされ得る。
【0034】
プロセッサ560は、例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)又はプログラム命令を解釈及び/若しくは実行し、且つ/又はデータを処理するように構成された任意の他のデジタル又はアナログ回路部品を含み得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ560は、メモリに記憶されたプログラム命令を解釈及び/若しくは実行し、且つ/又はデータを処理し得る。メモリは、一部は又は全体的に、アプリケーションメモリ、システムメモリ又はそれらの両方として構成され得る。メモリは、1つ以上のメモリモジュールを保持及び/又は収納するように構成された任意のシステム、機器又は装置を含み得る。各メモリモジュールは、ある期間にわたってプログラム命令及び/又はデータを保持するように構成された任意のシステム、機器又は装置を含み得る(例えば、コンピュータ可読媒体)。説明の様々なサーバ、電子装置又は他の機械は、関連の機械の機能を実施するためのプログラム命令を記憶及び実行するための1つ以上の同様のそのようなプロセッサ又はメモリを含み得る。
【0035】
図6は、フェムト秒レーザをドッキングするための方法600のフローチャートである。ステップ605において、吸引リングは、眼に位置決めされ、吸引リングは、少なくとも部分的に吸引リングの上部の円周に延在する機械的な停止部を有する。吸引リングの機械的な停止部は、上方直径を有する。吸引リングは、機械的な停止部と異なる少なくとも1つの接触及び封止面をさらに含み得る。
【0036】
ステップ610において、上方円錐台状部分及び下方球状部分を有する吸引コーンは、吸引リングの機械的な停止部が吸引コーンの球状部分に係合して吸引コーンがz方向にさらに眼に向かって下げられることを防止するまで、z方向に眼に向かって下げられる。吸引コーンの上方円錐台状部分は、z方向に断続的に減少する直径を有する。上方円錐台状部分と下方球状部分との接合部における吸引コーンの部分は、接合部直径を有し、これは、機械的な停止部の上方直径よりも大きい。吸引コーンの接合部直径の長さは、機械的な停止部の上方直径の長さよりも長いため、機械的な停止部は、吸引コーンがz方向に機械的な停止部を越えて下げられることを防止する。吸引コーンをz方向に眼に向かって下げるとき、吸引コーンは、吸引リングの少なくとも1つの接触及び封止面に接触し得る。吸引コーンと1つ又は複数の接触及び封止面との間の接触により、十分なバキューム圧力を可能にして、吸引コーン及び吸引リングを適所に且つ眼と接触して保持する。
【0037】
吸引コーンの下方球状部分は、その中心点から、吸引リングの接触及び封止面に係合するその外面上の任意の点まで測定される半径(r)を有する。半径(r)の長さは、吸引リングの球状部分の半径(r)の長さと等しいため、吸引コーンが吸引リングに適切にドッキングされると、それらの球状部分は、実質的に、共通の回転点を備える同心の球形を形成する。
【0038】
ステップ615において、少なくとも1つのバキューム系により、吸引リングに吸引が行われ、吸引コーンは、吸引リングの1つ又は複数の接触及び封止面によって吸引リングに封止されている。吸引コーンは、機械的な停止部によってではなく、吸引リングの接触及び封止面によって吸引リングに封止されている。
【0039】
方法600は、ステップ610において、吸引コーンを、吸引リングに向かって下げられている間にx又はy方向に傾けられていること、及び少なくとも吸引コーンの上方停止部直径が機械的な停止部の上方直径に係合するとき、吸引リングに対して傾くことなくドッキングされることができるようにする。方法600は、ドッキング中に吸引リングを手動で位置決めすることに関する、特に眼の回転によって引き起こされ得る、眼での吸引リングの傾きに関連した困難及びエラーを修正する。方法600は、吸引リングが傾けられており、且つバキューム吸引が不十分であると後に発見されるような状況において、ユーザが圧平及びドッキングを再び実施する必要性が生じることをさらに防止する。これにより、ユーザは、ドッキング手順をより迅速に及び合併症がより少ない状態で実施でき、これにより、ドッキング及び治療を通して動かない状態を維持する必要がある患者が眼での吸引によって受けるストレスを減少させる。そのような方法は、眼の血管及び他の内部構造へ損傷を与える可能性を減少させ、この損傷は、ドッキング手順を再び実施すること及び長期の吸引によって引き起こされる。
【0040】
方法600は、図5のフェムト秒レーザ眼科手術システム又は任意の他の好適なシステムを使用して実施され得る。そのような方法及びそれらのステップの順序の好ましい初期化点は、選択した実施に依存し得る。いくつかの実施形態では、いくつかのステップは、任意選択的に省略されるか、繰り返されるか、又は組み合わされ得る。いくつかの実施形態では、そのような方法のいくつかのステップは、他のステップと同時に実行され得る。特定の実施形態では、方法は、コンピュータ可読媒体において具現化されるソフトウェアに部分的に又は全体的に実装され得る。
【0041】
本開示のために、コンピュータ可読媒体は、ある期間にわたってデータ及び/又は命令を保持し得るいずれかの手段又は手段の集合を含み得る。コンピュータ可読媒体は、限定するものではないが、記憶媒体、例えば直接アクセス記憶装置(例えば、ハードディスクドライブ若しくはフロッピーディスク)、順次アクセス記憶装置(例えば、テープディスクドライブ)、コンパクトディスク、CD-ROM、DVD、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)及び/若しくはフラッシュメモリ;並びに通信媒体、例えばワイヤ、光ファイバー並びに他の電磁搬送波及び/若しくは光搬送波;並びに/又は上記のいずれかの組み合わせを含み得る。
【0042】
上述の開示の主題は、限定ではなく、説明であるとみなされ、及び添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内に入る全てのそのような修正形態、改良形態及び他の実施形態を網羅するものとする。そのため、本開示の範囲は、法律によって許される最大限まで以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の可能な限り最も広範な解釈によって決定され、且つ上述の詳細な説明によって限定又は制限されないものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6