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特許7190666非水電解質二次電池の充電方法、及び非水電解質二次電池の充電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池の充電方法、及び非水電解質二次電池の充電システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20221209BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221209BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221209BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01M10/44 A
H01M4/36 E
H01M10/48 P
H02J7/04 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020502859
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2019001806
(87)【国際公開番号】W WO2019167475
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018035271
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽我 正寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰右
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/080285(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/033704(WO,A1)
【文献】特開2000-106219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/04
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質として炭素材料及びケイ素化合物を含む負極を備えた非水電解質二次電池の充電方法であって、
定格容量Qに対する前記ケイ素化合物の容量の比率をx(0.1≦x≦0.5)としたとき、下記式を満たす電池容量Q1stを第1定電流値で充電する第1充電ステップと、
前記第1充電ステップ終了後、前記第1定電流値よりも大きな定電流値で充電する大電流充電ステップと、
を有する、非水電解質二次電池の充電方法。
式:0.38x0.063-α≦Q1st/Q≦0.38x+0.63+α
(α=0.1)
【請求項2】
前記第1充電ステップと前記大電流充電ステップとの間に、前記第1定電流値よりも大きく、前記大電流充電ステップの電流値よりも小さな第2定電流値で充電する第2充電ステップをさらに有し、
前記第2充電ステップでは、下記式を満たす電池容量Q2ndを前記第2定電流値で充電する、請求項1に記載の非水電解質二次電池の充電方法。
式:0.13x+0.173-α≦Q2nd/Q≦0.13x+0.173+α
【請求項3】
負極活物質として炭素材料及びケイ素化合物を含む負極を備えた非水電解質二次電池を充電する充電システムであって、
請求項1又は2に記載の充電方法を実行する充電制御装置を備えた、非水電解質二次電池の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池の充電方法、及び非水電解質二次電池の充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
SiOで表される酸化ケイ素などのケイ素化合物は、黒鉛などの炭素材料と比べて単位体積当りに多くのリチウムイオンを吸蔵できることが知られている。例えば、特許文献1には、負極活物質として黒鉛及びケイ素化合物を用いた非水電解質二次電池が開示されている。また、特許文献2には、充放電サイクルの初期不可逆容量の低減を目的とした二次電池の充電方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-212228号公報
【文献】特開2000-106219号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、ケイ素化合物を含む負極を備えた非水電解質二次電池において、充電電流を増大させると、例えばケイ素化合物の割れが発生して劣化が進み、良好なサイクル特性を確保することが難しくなる。他方、充電電流を低く抑えると、長い充電時間が必要となる。本開示の目的は、炭素材料及びケイ素化合物を含む負極を備えた非水電解質二次電池において、良好なサイクル特性を確保しつつ、効率の良い充電を可能とする充電方法を提供することである。
【0005】
本開示の一態様である非水電解質二次電池の充電方法は、負極活物質として炭素材料及びケイ素化合物を含む負極を備えた非水電解質二次電池の充電方法であって、定格容量Qに対する前記ケイ素化合物の容量の比率をx(0.1≦x≦0.5)としたとき、下記式を満たす電池容量Q1stを第1定電流値で充電する第1充電ステップと、前記第1充電ステップ終了後、前記第1定電流値よりも大きな定電流値で充電する大電流充電ステップとを有することを特徴とする。
【0006】
式:0.38x0.063-α≦Q1st/Q≦0.38x+0.63+α
(α=0.1)

【0007】
本開示の一態様によれば、炭素材料及びケイ素化合物を含む負極を備えた非水電解質二次電池において、良好なサイクル特性を確保しつつ、効率の良い充電を可能とする充電方法を提供できる。つまり、本開示に係る充電方法によれば、短時間での充電が可能でありながら、サイクル特性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例である非水電解質二次電池の充電システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施形態の一例である非水電解質二次電池の断面図である。
図3】実施形態の一例である非水電解質二次電池の充電方法を説明するための図である。
図4】非水電解質二次電池の充電制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
炭素材料及びケイ素化合物を含む負極を備えた非水電解質二次電池において、短時間で効率良く充電でき、かつサイクル特性の劣化を抑えることが可能な充電方法を提供することは重要な課題である。本発明者らは、電池の充電時においてケイ素化合物に由来する容量変化が大きな領域、即ち炭素材料よりもケイ素化合物にリチウムイオンが吸蔵され易い領域を明らかにし、当該領域のみに上記式に基づく緩和された充電条件を適用することで、サイクル特性の劣化を効率良く抑制することに成功した。
【0010】
以下、本開示の実施形態の一例について詳細に説明する。以下では、巻回型の電極体14が円筒形状の電池ケース15に収容された円筒形電池を例示するが、電池ケースは円筒形に限定されず、例えば角形であってもよく、金属層及び樹脂層を含むラミネートシートで構成された電池ケースであってもよい。また、電極体は、複数の正極と複数の負極がセパレータを介して交互に積層された積層型であってもよい。なお、本開示に係る充電方法が適用できる非水電解質二次電池は、負極活物質として炭素材料及びケイ素化合物を含む負極を備えた電池であればよい。
【0011】
図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池の充電システム1の構成を示すブロック図である。図1に例示するように、充電システム1は、非水電解質二次電池10の充電を制御する充電制御装置2と、電池の充電状態を監視する電池監視ユニット3とを備える。非水電解質二次電池10は、負荷101に接続され、負荷101に蓄えた電力を供給する。充電システム1は、複数の非水電解質二次電池10が直列、並列、又は直並列接続された組電池(電池パック、又は電池モジュールとも呼ばれる)を備えていてもよい。
【0012】
充電システム1は、負極活物質として炭素材料及びケイ素化合物を含む非水電解質二次電池の充電装置、充電設備に広く適用でき、例えば電気自動車、ハイブリッド自動車等の車両、車両用充電設備、蓄電設備、電動工具用充電器など、種々の装置、設備に適用できる。充電制御装置2は、電池モジュールに組み込まれていてもよく、充電システム1が搭載される車両等の装置、設備の制御装置の一部として構成されていてもよい。
【0013】
充電制御装置2は、後述の充電方法を実行する装置である。充電制御装置2は、電池を充電する際に、電池監視ユニット3から取得した電池の充電状態に基づいて電池の充電条件を決定する。詳しくは後述するが、充電制御装置2は、第1充電ステップを実行する第1充電制御手段4、第2充電ステップを実行する第2充電制御手段5、大電流充電ステップを実行する大電流充電制御手段6、及び定電圧充電ステップを実行する定電圧充電制御手段7を有する。充電制御装置2は、例えば整流回路を有し、電源100の交流電力を所定の直流電力に変換して非水電解質二次電池10に供給する。
【0014】
充電制御装置2は、例えばICチップ、LSIチップ等の集積回路で構成され、演算処理部であるCPUと、記憶部8とを有する。CPUは、記憶部8に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する機能を有する。記憶部8は、読み出したプログラム、処理データ等を一時的に記憶する機能と、制御プログラム、閾値等を記憶する機能とを有する。上記各充電制御手段の機能は、例えば記憶部8に記憶された制御プログラムを実行することで実現される。
【0015】
また、充電制御装置2は、所定の電流値の直流電力が電池に供給されるように充電電流を制御する定電流回路、所定の電圧値の直流電力が電池に供給されるように充電電圧を制御する定電圧回路等を有する。なお、整流回路、定電流回路、定電圧回路等の充電回路は、充電制御装置2と別の装置として構成されていてもよい。充電制御装置2は、電池監視ユニット3から取得した電池の充電状態に基づいて充電回路を制御し、非水電解質二次電池10の充電を実行する。
【0016】
電池監視ユニット3は、例えば非水電解質二次電池10に供給される充電電流、及び電池電圧を検出する。充電制御装置2は、電池監視ユニット3により取得された電池電圧から充電率(SOC)を推定し、SOCに基づいて充電制御を実行する。なお、充放電電流と充放電時間からSOCを推定することもできる。SOCの推定方法には、従来公知の手法を適用できる。充電制御装置2は、電池電圧が所定の電圧に達するまでは複数のステップを含む定電流充電(CC充電)を行い、その後、定電圧充電(CV充電)を行うことが好ましい。
【0017】
[非水電解質二次電池]
図2は、実施形態の一例である非水電解質二次電池10の断面図である。図2に例示するように、非水電解質二次電池10は、電極体14と、非水電解質(図示せず)と、電極体14及び非水電解質を収容する電池ケース15とを備える。電極体14は、正極11と負極12がセパレータ13を介して巻回されてなる巻回構造を有する。電池ケース15は、有底筒状の外装缶16と、外装缶16の開口部を塞ぐ封口体17とで構成される。また、非水電解質二次電池10は、外装缶16と封口体17との間に配置される樹脂製のガスケット28を備える。
【0018】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩には、例えばLiPF等のリチウム塩が使用される。
【0019】
電極体14は、長尺状の正極11と、長尺状の負極12と、長尺状の2枚のセパレータ13と、正極11に接合された正極タブ20と、負極12に接合された負極タブ21とで構成される。負極12は、リチウムの析出を防止するために、正極11よりも一回り大きな寸法で形成される。即ち、負極12は、正極11より長手方向及び幅方向(短手方向)に長く形成される。2枚のセパレータ13は、少なくとも正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、例えば正極11を挟むように配置される。
【0020】
電極体14の上下には、絶縁板18,19がそれぞれ配置される。図2に示す例では、正極11に取り付けられた正極タブ20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極タブ21が絶縁板19の外側を通って外装缶16の底部側に延びている。正極タブ20は封口体17の底板であるフィルタ23の下面に溶接等で接続され、フィルタ23と電気的に接続された封口体17の天板であるキャップ27が正極端子となる。負極タブ21は外装缶16の底部内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
【0021】
外装缶16は、例えば有底円筒形状の金属製容器である。上述のように、外装缶16と封口体17との間にはガスケット28が設けられ、電池ケース15の内部空間が密閉される。外装缶16は、例えば側面部を外側からプレスして形成された、封口体17を支持する溝入れ部22を有する。溝入れ部22は、外装缶16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。また、外装缶16の上端部は、内側に折り曲げられ封口体17の周縁部に加締められている。
【0022】
封口体17は、電極体14側から順に、フィルタ23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断することにより、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0023】
[正極]
正極11は、正極集電体と、正極集電体の両面に形成された正極合材層とを有する。正極集電体には、アルミニウムなど正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質、導電材、及び結着材を含む。正極11は、例えば正極集電体上に正極活物質、導電材、及び結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合材層を正極集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0024】
正極活物質は、リチウム金属複合酸化物を主成分として構成される。リチウム金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。好適なリチウム金属複合酸化物の一例は、Ni、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含有する複合酸化物である。なお、リチウム金属複合酸化物の粒子表面には、酸化アルミニウム、ランタノイド含有化合物等の無機化合物粒子などが固着していてもよい。
【0025】
正極合材層に含まれる導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合材層に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示できる。これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。
【0026】
[負極]
負極12は、負極集電体と、負極集電体の両面に形成された負極合材層とを有する。負極集電体には、銅など負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質、及び結着材を含む。負極12は、例えば負極集電体上に負極活物質、及び結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合材層を負極集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0027】
負極合材層には、負極活物質として、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する炭素材料及びケイ素化合物が含まれる。好適な炭素材料は、天鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛(MAG)、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等の人造黒鉛などの黒鉛である。負極合材層におけるケイ素化合物の含有量は、負極活物質の総質量に対して、例えば1~15質量%であり、好ましくは5~10質量%である。ケイ素化合物と黒鉛との混合比率は、例えば質量比で1:99~15:85であり、好ましくは5:95~10:90である。
【0028】
なお、負極活物質には、Si以外のリチウムと合金化する金属、当該金属を含有する合金、当該金属を含有する化合物等が用いられてもよい。負極活物質としてチタン酸リチウム等の導電性の低い材料を用いる場合は、負極合材層にカーボンブラック等の導電材を添加してもよい。
【0029】
ケイ素化合物としては、SiOで表される酸化ケイ素が例示される。SiOで表される酸化ケイ素は、例えば非晶質のSiOマトリックス中にSiの微粒子が分散した構造を有する。好適な酸化ケイ素の一例は、SiO(0.5≦x≦1.6)である。ケイ素化合物は、リチウムシリケート(Li2ySiO(2+y)(0<y<2))相中にSiの微粒子が分散した複合粒子であってもよい。
【0030】
SiOで表される酸化ケイ素の粒子表面には、酸化ケイ素よりも導電性の高い材料で構成される導電被膜が形成されていることが好ましい。導電被膜の構成材料としては、炭素材料、金属、及び金属化合物から選択される少なくとも1種が例示できる。中でも、非晶質炭素等の炭素材料が好ましい。炭素被膜は、例えばアセチレン、メタン等を用いたCVD法、石炭ピッチ、石油ピッチ、フェノール樹脂等をSiO粒子と混合し、熱処理を行う方法などで形成できる。また、カーボンブラック等の導電フィラーを結着材を用いてSiOの粒子表面に固着させることで導電被膜を形成してもよい。導電被膜は、例えばSiO粒子の質量に対して0.5~10質量%で形成される。
【0031】
負極合材層に含まれる結着材には、正極11の場合と同様に、フッ素樹脂、PAN、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等を用いることができる。水系溶媒を用いて合材スラリーを調製する場合は、CMC又はその塩、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)のディスパージョン、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコールなどを用いることが好ましい。
【0032】
[セパレータ]
セパレータ13には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータ13は、単層構造、積層構造のいずれであってもよい。セパレータ13の表面には、耐熱層などが形成されていてもよい。
【0033】
以下、図3を適宜参照しながら、非水電解質二次電池10の充電方法について詳説する。図3は、電池容量、充電電流、及びdQSi/dQの関係を示すグラフである。ここで、Qは電池の定格容量、QSiはケイ素化合物に由来する容量を意味する。定格容量Qは、例えば3000mAh~6000mAhである。一般的に、非水電解質二次電池10では、負極12が容量規制極となるので、負極容量が電池容量となる。本充電方法は、後述のImaxが0.5C以上、又は0.7C以上である場合に特に好適である。
【0034】
非水電解質二次電池10は、定格容量Qに対するケイ素化合物の容量の比率をx(0.1≦x≦0.5)としたとき、下記式1を満たす電池容量Q1stを第1定電流値I1stで充電する第1充電ステップと、第1充電ステップ終了後、第1定電流値I1stよりも大きな定電流値Imaxで充電する大電流充電ステップとを有する、少なくとも2段の定電流充電ステップを経て充電される。
【0035】
式1:0.38x+0.063-α1≦Q1st/Q≦0.38x+0.063+α1
ここで、α1は0.1が好ましく、0.05がより好ましい。
【0036】
図3に示すように、電池容量Q1stの充電領域ではケイ素化合物に由来する容量QSiの変化量(dQSi/dQ)が大きく、黒鉛よりもケイ素化合物にリチウムイオンが吸蔵され易い。当該領域において電流値を低く抑えた定電流充電を実行することで、ケイ素化合物の割れを抑制でき、良好なサイクル特性を維持できる。式1は、Si容量比率を変えた際に得られるOCVのdQsi/dQの値の実験から求められた実験式である。定格容量Q(負極容量)に対するケイ素化合物の容量比率xは、所定時間の容量変化量dQに対する電圧変化量dVを示すdV/dQを検出することにより求められる。
【0037】
非水電解質二次電池10の充電には、さらに、第1充電ステップと大電流充電ステップとの間に、第1定電流値I1stよりも大きく、大電流充電ステップの電流値Imaxよりも小さな第2定電流値I2ndで充電する第2充電ステップを設けることが好ましい。即ち、電池容量がQ1stに達して第1充電ステップが終了したときに、第2充電ステップを実行する。第2充電ステップでは、下記式2を満たす電池容量Q2ndを第2定電流値I2ndで充電する。式2は、式1と同様の実験式である。
【0038】
式2:0.13x+0.173-α2≦Q2nd/Q≦0.13x+0.173+α2
ここで、α2は0.1が好ましく、0.05がより好ましい。
【0039】
図3に示すように、電池容量Q2ndの充電領域では容量QSiの変化量が大きく、黒鉛よりもケイ素化合物にリチウムイオンが吸蔵され易い。電池容量Q2ndの充電領域において電流値を低く抑えた定電流充電を実行することで、ケイ素化合物の割れを抑制でき、良好なサイクル特性を維持できる。他方、電池容量Q2ndの充電領域では充電容量Q1stの充電領域と比べると容量QSiの変化量が小さいので、I1st<I2ndとして充電の効率を高めることが好ましい。図3に例示するように、非水電解質二次電池10の充電初期には、dQSi/dQのピークが2つ存在する。電池容量Q1stの範囲は1つ目のピーク幅に対応し、電池容量Q2ndの範囲は2つ目のピーク幅に対応する。
【0040】
第1充電ステップでは、下記式3を満たす第1定電流値I1stで充電することが好ましい。式3は、式1,2と同様の実験式である。
【0041】
式3:82/(81.8x+64)×(0.3/0.7)-α3
≦I1st/Imax≦82/(81.8x+64)×(0.3/0.7)+α3
ここで、α3は0.3が好ましく、0.2がより好ましい。
【0042】
容量QSiの変化量が大きく、黒鉛よりもケイ素化合物にリチウムイオンが吸蔵され易い充電初期において、電流値をI1stに抑えた定電流充電を実行することで、ケイ素化合物の割れを抑制でき、良好なサイクル特性を維持できる。
【0043】
また、第2充電ステップでは、下記式4を満たす第2定電流値I2ndで充電することが好ましい。式4は、式1~3と同様の実験式である。
【0044】
式:36/(122.4x+10.9)×(0.5/0.7)-α4
≦I2nd/Imax≦36/(122.4x+10.9)×(0.5/0.7)+α4
ここで、α4は0.3が好ましく、0.2がより好ましい。
【0045】
容量QSiの変化量が大きく、黒鉛よりもケイ素化合物にリチウムイオンが吸蔵され易い充電初期において、電流値をI2ndに抑えた定電流充電を実行することで、ケイ素化合物の割れを抑制でき、良好なサイクル特性を維持できる。
【0046】
本充電方法では、電池容量がQ1stに達したとき、又は第2充電ステップを実行する場合は電池容量がQ2ndに達したときに、定電流値Imaxで充電する大電流充電ステップを実行する。Imaxは、複数の充電ステップにおいて最大の充電電流である。容量QSiの変化量が小さな充電領域では、電流量を増大させてImaxで充電することにより、充電時間の短縮を図ることができる。大電流充電ステップは、電池電圧が所定の閾値(例えば、4.2V)に達したときに終了する。その後、所定の電池電圧(例えば、4.2V)で電流が所定の閾値に達するまでCV充電(定電圧充電ステップ)を実行する。
【0047】
図4は、上記充電方法における制御手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、非水電解質二次電池10の残容量がCV充電の開始レベルよりも少ない場合を例に挙げて充電制御の具体例を説明する。
【0048】
図4に例示するように、電池の充電を行う際には、まず電池の残容量を確認する(S10,S11)。例えば、充電制御装置2は、電池監視ユニット3により取得された電池電圧等の検出情報から電池のSOC(残容量)を推定する。そして、電池の残容量が上記Q1st以下である場合、電池容量がQ1stに達するまで第1定電流値I1stで充電する第1充電ステップを実行する(S12)。第1充電ステップは、第1充電制御手段4の機能により実行される。
【0049】
他方、電池の残容量が上記Q1st以上Q2nd以下である場合は、電池容量がQ2ndに達するまで第2定電流値I2ndで充電する第2充電ステップを実行する(S13)。第2充電ステップは、第2充電制御手段5の機能により実行される。そして、電池の残容量がQ2ndに達したことを条件として、電池電圧が所定の閾値に達するまで定電流値Imaxで充電する大電流充電ステップを実行する(S14,S15)。大電流充電ステップは、大電流充電制御手段6の機能により実行される。即ち、本実施形態では、電池電圧が所定の閾値に達するまで、3段階のCC充電を実行する。
【0050】
電池電圧が所定の閾値に達した場合、電流が所定の閾値に達するまでCV充電する定電圧充電ステップを実行する(S16)。定電圧充電ステップは、定電圧充電制御手段7の機能により実行される。
【実施例
【0051】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質として、LiNi0.82Co0.15Al0.03で表される複合酸化物を用いた。正極活物質100質量部と、アセチレンブラック1質量部と、ポリフッ化ビニリデン0.9質量部とを混合し、N-メチル-2-ピロリドンを適量加えて、正極合材スラリーを調製した。次に、当該正極合材スラリーをアルミニウム箔からなる長尺状の正極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。乾燥した塗膜を圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、正極集電体の両面に正極合材層が形成された正極を作製した。正極の長手方向中央部に、合材層が存在せず集電体表面が露出した露出部を設け、アルミニウム製の正極タブを露出部に溶接した。
【0053】
[負極の作製]
負極活物質として、黒鉛粉末94質量部と、粒子表面に炭素被膜が形成されたSiO(SiO、x=1)で表される酸化ケイ素を6質量部とを用いた。負極活物質100質量部と、カルボキシメチルセルロースナトリウム1.5質量部と、スチレン-ブタジエンゴムのディスパージョン1質量部とを混合し、水を適量加えて、負極合材スラリーを調製した。次に、当該負極合材スラリーを銅箔からなる長尺状の負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。乾燥した塗膜を圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、負極集電体の両面に負極合材層が形成された負極を作製した。負極の長手方向一端部(電極体の巻き終り側に位置する端部)に合材層が存在せず集電体表面が露出した露出部を設け、ニッケル製の負極タブを露出部に溶接した。
【0054】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを、25:75の体積比(1気圧、25℃)で混合した混合溶媒に、LiPFを濃度が1mol/Lとなるように溶解して、非水電解液を調製した。
【0055】
[非水電解質二次電池の作製]
上記正極及び上記負極をポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して巻芯に巻回した後、巻芯を取り除いて巻回型の電極体を作製した。次に、鉄製の円筒形状の外装缶に電極体を挿入し、負極タブを外装缶の底部内面に抵抗溶接した。上記非水電解液を外装缶内に注入した後、正極タブを封口体に溶接し、封口体で外装缶の開口部を封口して、直径18mm、高さ65mm、定格容量Qが3350mAhの円筒形の非水電解質二次電池を作製した。定格容量Qに対するSiOの容量比率xは0.21であった。
【0056】
[電池の初回充放電]
室温環境下において、上記電池を、表1に示す充電条件で電池電圧が4.2VになるまでCC充電し、その後、4.2Vの定電圧で電流が168mAになるまでCV充電した。実施例1では、上記式1,3の条件を満たす第1充電ステップ、及び大電流充電ステップを実行した。充電後、電池を0.5Cの定電流で電池電圧が2.5Vとなるまで放電した。この充放電サイクルを100サイクル繰り返し、100サイクル目の電池容量を初回の電池容量で除した値を容量維持率として求めた。
【0057】
<実施例2~4>
充電条件を表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてCC-CV充電を行った。実施例2~4では、上記式1,3の条件を満たす第1充電ステップ、上記式2,4の条件を満たす第2充電ステップ、及び大電流充電ステップを実行した。
【0058】
<比較例1,2>
表1に示す充電条件で1段のCC充電を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてCC-CV充電を行った。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、実施例1,2の充電プロファイルによれば、比較例2の場合と比べて容量維持率が高く、良好なサイクル特性を維持できる。また、実施例1,2では、充電時間が長い比較例1の場合と同様の容量維持率を実現できた。つまり、実施例1,2の充電プロファイルによれば、良好なサイクル特性を確保しつつ、効率良く充電できる。
【符号の説明】
【0061】
1 充電システム
2 充電制御装置
3 電池監視ユニット
4 第1充電制御手段
5 第2充電制御手段
6 大電流充電制御手段
7 定電圧充電制御手段
8 記憶部
10 非水電解質二次電池
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 電極体
15 電池ケース
16 外装缶
17 封口体
18,19 絶縁板
20 正極タブ
21 負極タブ
22 溝入れ部
23 フィルタ
24 下弁体
25 絶縁部材
26 上弁体
27 キャップ
28 ガスケット
100 電源
101 負荷
図1
図2
図3
図4