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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20221209BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20221209BHJP
   G01V 8/14 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B26/10 101
G01V8/14 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020525392
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2019020599
(87)【国際公開番号】W WO2019239845
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2018114008
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】加納 康行
(72)【発明者】
【氏名】川渕 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒井 昭浩
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-253306(JP,A)
【文献】特開2013-083624(JP,A)
【文献】特開2002-031516(JP,A)
【文献】特開2005-234359(JP,A)
【文献】特開平07-167627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S17/00-17/95
G02B26/10-26/12
G01C 3/06- 3/08
G01B11/00-11/30
G01V 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を用いて物体を検出する物体検出装置であって、
光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記光を複数に分岐させる分岐素子と、
前記分岐素子により分岐された光を反射させるミラーと、
前記分岐素子および前記ミラーを一体的に保持するホルダと、
前記ホルダを回転させる駆動部と、
物体から反射された前記各光の反射光を受光する光検出器と、
前記各光の反射光を前記光検出器に集光させる集光レンズと、を備える、
物体検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検出装置において、
前記分岐素子は、回折格子である、
物体検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の物体検出装置において、
前記光源からの前記光が前記ミラーの回転中心軸に沿って前記回折格子に入射し、
前記回折格子により生成される0次回折光と少なくとも1つの他の次数の回折光が、前記ミラーで反射されて投射され、
前記光検出器は、前記0次回折光の前記物体からの反射光を受光するセンサと、前記センサの周囲に配置され前記他の次数の回折光の前記物体からの反射光を受光する少なくとも1つの他のセンサとを備える、
物体検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の物体検出装置において、
前記他のセンサは、前記ミラーの回転に伴い回転する前記他の次数の回折光の前記反射光の移動軌跡に沿うように、前記0次回折光の前記反射光を受光する前記センサの周囲に円弧状に配置されている、
物体検出装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の物体検出装置において、
前記回折格子は、複数の前記他の次数の回折光を生成して前記ミラーに導き、
前記光検出器は、前記複数の他の次数の回折光の前記反射光を受光する前記他のセンサを備える、
物体検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の物体検出装置において、
前記回折格子は、±n次(nは正の整数)の回折光を生成して前記ミラーに導き、
前記±n次数の回折光の前記反射光を受光する前記他のセンサは、前記反射光の移動方向において少なくとも2つに分割されている、
物体検出装置。
【請求項7】
請求項5に記載の物体検出装置において、
前記回折格子は、前記0次回折光に対して回折角が互いに異なる所定次数の複数の回折光を生成して前記ミラーに導き、
前記他のセンサは、前記ミラーの回転に伴い回転する前記所定次数の各回折光の前記反射光ごとに個別に配置されている、
物体検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の物体検出装置において、
前記所定次数の各回折光の前記反射光ごとに個別に配置された前記他のセンサは、周方向において少なくとも2つに分割されている、
物体検出装置。
【請求項9】
請求項6または8に記載の物体検出装置において、
前記反射光の移動に伴い、前記各反射光の検出信号を取得するための前記他のセンサを選択的に切り替えるコントローラを備える、
物体検出装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載の物体検出装置において、
前記分岐素子は、分岐された光が前記ミラーの回転中心軸に平行な方向に離れて前記ミラーに入射するように、前記光源からの前記光を分岐させる、
物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を用いて物体を検出する物体検出装置が種々の分野で開発されている。この種の物体検出装置では、所定の投射方向に光が投射され、その反射光の有無に基づいて、当該投射方向に物体が存在するか否かが判別される。また、光の投射タイミングと反射光の受光タイミングとに基づいて、物体までの距離が計測される。
【0003】
以下の特許文献1には、複数の光照射光学系と、これら光照射光学系が照射した光が物体で反射して戻ってきた戻り光を夫々検出する複数の検出光学系と、を備えた距離測定装置が記載されている。この装置では、上記光学系を保持するホルダーを回転させることによって、光の照射方向を変えながら、周辺空間に位置する物体までの距離が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2010/0020306号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成の装置では、投射方向が異なる3つの光によって装置の周辺が走査されるため、物体の検出能力を高めることができる。しかしながら、投射方向ごとに光照射光学系と検出光学系の組が配置されるため、部品点数の増加とコストの上昇を招いてしまう。
【0006】
かかる課題に鑑み、本発明は、簡素な構成により、投射方向が異なる複数の光により物体を検出することが可能な物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、光を用いて物体を検出する物体検出装置に関する。この態様に係る物体検出装置は、光を出射する光源と、前記光源から出射された前記光を複数に分岐させる分岐素子と、前記分岐素子により分岐された光を反射させるミラーと、前記分岐素子および前記ミラーを一体的に保持するホルダと、前記ホルダを回転させる駆動部と、物体から反射された前記各光の反射光を受光する光検出器と、前記各光の反射光を前記光検出器に集光させる集光レンズと、を備える。
【0008】
本態様に係る物体検出装置によれば、分岐素子によって分岐された光が投射されるとともに、分岐されたそれぞれの光の反射光が光検出器で受光されるため、投射方向ごとに個別に光学系を設ける必要がなく、極めて簡素な構成により、投射方向が異なる複数の光によって物体を検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、本発明によれば、簡素な構成により、投射方向が異なる複数の光により物体を検出することが可能な物体検出装置を提供することができる。
【0012】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)~(c)は、それぞれ、実施の形態に係る物体検出装置の構成を示す斜視図である。
図2図2(a)、(b)は、それぞれ、実施の形態に係る物体検出装置の構成を示す断面図である。
図3図3は、実施の形態に係る物体検出装置におけるレーザ光の出射軌跡を示すグラフである。
図4図4(a)~(c)は、それぞれ、実施の形態に係る、光検出器の構成および光検出器上における各回折光の反射光の移動状態を模式的に示す図である。
図5図5は、実施の形態に係る物体検出装置の構成を示すブロック図である。
図6図6(a)~(f)は、それぞれ、変更例1に係る、光検出器の構成および光検出器上における各回折光の反射光の移動状態を模式的に示す図である。
図7図7は、変更例1に係る物体検出装置の構成を示すブロック図である。
図8図8(a)、(b)は、それぞれ、変更例2に係る物体検出装置の構成を示す断面図である。
図9図9(a)~(c)は、それぞれ、変更例2に係る、光検出器の構成および光検出器上における各回折光の反射光の移動状態を模式的に示す図である。
図10図10(a)~(d)は、それぞれ、変更例3に係る、光検出器の構成および光検出器上における各回折光の反射光の移動状態を模式的に示す図である。図10(e)は、変更例4に係る物体検出装置の構成を示す斜視図である。
図11図11(a)は、変更例5に係る物体検出装置の構成を示す断面図である。図11(b)は、変更例5に係る光路切替ミラーの構成を模式的に示す平面図である。
【0014】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図面には、互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向は、物体検出装置の高さ方向であり、X軸正方向は、物体検出装置の正面方向である。
【0016】
図1(a)~(c)は、物体検出装置10の構成を示す斜視図である。図1(a)~(c)には、ミラー105が中立位置にある場合の物体検出装置10の状態が示されている。ここで、「中立位置」とは、ミラー105がX軸に垂直な状態からZ-X平面に平行な方向に45度傾いた位置のことである。この状態において、レーザ光の投射方向は、正面方向(X軸正方向)となる。
【0017】
便宜上、図1(b)では、図1(a)に示す構成からフィルタ106が省略され、図1(c)では、さらに筒体110が省略されている。図1(a)に示す物体検出装置10が、完成体である。
【0018】
図1(a)~(c)を参照して、物体検出装置10は、光源101と、コリメータレンズ102と、折り曲げミラー103と、回折格子104と、ミラー105と、フィルタ106と、集光レンズ107と、光検出器108とを備える。
【0019】
光源101は、赤外のレーザ光を出射する。光源101は、たとえば、905nmのレーザ光を出射する半導体レーザである。光源101は、出射光軸がX軸に平行となるように配置されている。コリメータレンズ102は、光源101から出射されたレーザ光を平行光に変換する。
【0020】
光源101とコリメータレンズ102は、それぞれ、X軸方向に並ぶように配置されている。より詳細には、光源101の出射光軸とコリメータレンズ102光軸が互いに一致するように、光源101とコリメータレンズ102が配置されている。また、光源101は、出射光軸がミラー105の回転中心軸R10(図2(a)、(b)参照)に直交するように配置されている。光源101から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ102によって平行光に変換された後、折り曲げミラー103でZ軸負方向に反射される。
【0021】
コリメータレンズ102と折り曲げミラー103は、筒体110に装着されている。筒体110は、中心軸がX軸に平行な中空の円筒部110aと、中心軸がZ軸に平行な中空の円筒部110bとが一体的に連結された形状を有する。円筒部110a、110bの連結部が開放され、この連結部に、反射面が筒体110の内部に位置するようにして、折り曲げミラー103が装着されている。折り曲げミラー103は、Z軸に垂直な状態からZ-X平面に平行な方向に45度傾いた状態で筒体110に装着されている。筒体110の光源101側の開口に、コリメータレンズ102が装着されている。
【0022】
コリメータレンズ102で平行光化されたレーザ光は、筒体110(円筒部110a)内部を通って折り曲げミラー103に入射する。その後、レーザ光は、折り曲げミラー103によってZ軸負方向に反射され、筒体110の回折格子104側の開口を通る。こうして、レーザ光が、回折格子104に入射する。レーザ光は、ミラー105の回転中心軸R10(図2(a)、(b)参照)に沿って、回折格子104に入射する。
【0023】
回折格子104は、上記のように入射されたレーザ光を回折により分岐させる。回折格子104の回折方向は、ミラー105によるレーザ光の投射方向(X軸方向)に平行である。すなわち、回折格子104は、回折により分岐されたレーザ光がミラー105の回転中心軸R10(図2(a)、(b)参照)に平行な方向に離れてミラー105に入射するように、光源101からのレーザ光を分岐させる。
【0024】
本実施形態では、0次回折光および±1次回折光の回折効率が高く、その他の次数の回折光の回折効率が略ゼロになるように、回折格子104が構成されている。ここで、0次回折光および±1次回折光の回折効率は、略等しく設定される。回折格子104は、たとえば、ステップ型の回折格子により構成される。回折格子104が、ブレーズ型の回折格子であってもよい。
【0025】
ミラー105は、回折格子104により分岐されたレーザ光(0次回折光および±1次回折光)を投射方向に反射させる。ミラー105は、中立位置において、X軸に垂直な状態からZ-X平面に平行な方向に45度傾いている。上記のように、レーザ光は、ミラー105の回転中心軸R10(図2(a)、(b)参照)に沿って回折格子104に入射するため、回折格子104を回折されずに透過する0次回折光は、回転中心軸R10に沿ってミラー105に入射する。
【0026】
回折格子104とミラー105は、ホルダ120に保持されている。ホルダ120は、上面および側面が開放された円筒枠状の部材である。ホルダ120の上面に、中立位置においてX軸方向に延びる梁部121が形成され、その中央に、回折格子104が装着されている。梁部121は、ホルダ120上面のY軸方向の中央位置に配置されている。梁部121のY軸方向の両側は、それぞれ、開口122となっている。ミラー105によって反射されたレーザ光(0次回折光および±1次回折光)は、ホルダ120側面の開口からX軸正方向に投射される。
【0027】
図2(a)、(b)は、それぞれ、物体検出装置10の構成を示す断面図である。
【0028】
図2(a)、(b)には、図1(a)の構成を、Y軸方向の中間位置において、X-Z平面に平行な平面で切断した断面が示されている。図2(a)には、目標領域に投射されるレーザ光(回折光)L0~L2が図示され、図2(a)には、目標領域に存在する物体により反射された各レーザ光の反射光R0~R2が図示されている。L0、L1、L2は、それぞれ、回折格子104によって生成された0次回折光、+1次回折光および-1次回折光である。また、R0、R1、R2は、それぞれ、物体で反射された0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の反射光である。
【0029】
図2(a)に示すように、光源101から出射されたレーザ光は、回折格子104によって、0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2に分岐される。このうち、0次回折光L0は、Z軸に平行にミラー105に入射するため、ミラー105によってX軸方向(水平方向)に反射される。これに対し、+1次回折光L1と-1次回折光L2は、Z軸に平行な状態からX-Z平面に平行な方向に所定の回折角だけ傾いてミラー105に入射する。このため、+1次回折光L1と-1次回折光L2は、それぞれ、ミラー105によって、X軸方向からZ軸正負の方向に傾く方向に反射される。
【0030】
こうして、目標領域には、鉛直方向(Z軸方向)に分離された3つのレーザ光(0次回折光L0、+1次回折光L1、-1次回折光L2)が投射される。
【0031】
図2(a)に示すように、ホルダ120は、X-Y平面上の中央位置に円形の穴123が形成されており、この穴123にモータ130の回転軸131は嵌め込まれて連結されている。モータ130が駆動されると、回転中心軸R10を中心にホルダ120が回転し、これに伴い、ミラー105と回折格子104が回転する。
【0032】
ここで、ミラー105と回折格子104は一体的に回転するため、ミラー105に対する0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の相対的な位置関係は、ミラー105が回転しても不変である。したがって、水平面(X-Y平面)に対する0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の投射方向のなす角は、ミラー105が回転しても不変である。
【0033】
図3は、物体検出装置10におけるレーザ光(0次回折光L0、+1次回折光L1、-1次回折光L2)の出射軌跡を示すグラフである。
【0034】
図3において、横軸は、水平方向の投射方向を正面方向に対する角度で示したものであり、縦軸は、鉛直方向の投射方向を水平面に対する角度で示したものである。ここでは、水平面(X-Y平面)に対する0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の投射方向のなす角が、それぞれ、0度、+5度、-5度に設定されている。すなわち、回折格子104における+1次回折光L1および-1次回折光L2の回折角は、それぞれ、5度である。
【0035】
図3に示すように、本実施形態では、鉛直方向(Z軸方向)に分離された3つのレーザ光(0次回折光L0、+1次回折光L1、-1次回折光L2)を、回転中心軸R10の周りに回転させながら投射することができる。なお、図3では、横軸の範囲として、-135度~+135度の範囲が示されているが、これは一例であって、0次回折光L0、+1次回折光L1、-1次回折光L2の回転範囲は、これに限られるものではない。たとえば、0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の回転範囲が、-135度~+135度よりも広い範囲に設定されてもよい。
【0036】
図2(b)に戻り、0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の投射方向に物体が存在する場合、物体により反射された各回折光の反射光R0、R1、R2が、投射光路を逆行してミラー105に入射する。図2(b)において、反射光R0の表記が付された2つの直線は、集光レンズ107で取り込まれ得る反射光の最も外側の光線を示している。反射光R1、R2の表記が付された直線も同様である。ここでは、物体までの距離が長いため、反射光R0、R1、R2が所定ビーム径の平行光で示されている。
【0037】
上記のように、目標領域に投射される0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の投射方向が互いに異なるため、ミラー105に入射する反射光R0、R1、R2の入射方向も互いに異なる。すなわち、0次回折光L0は、水平方向に投射されるため、0次回折光L0の反射光R0は、水平方向に目標領域から逆行してミラー105に入射する。
【0038】
これに対し、+1次回折光L1は、水平方向に対して鉛直上向き方向(Z軸正方向)に所定角度だけ傾く方向に投射されるため、+1次回折光L1の反射光R1は、水平方向に対して鉛直下向き方向(Z軸負方向)に所定角度だけ傾く方向に目標領域から逆行してミラー105に入射する。
【0039】
また、-1次回折光L2は、水平方向に対して鉛直下向き方向(Z軸負方向)に所定角度だけ傾く方向に投射されるため、-1次回折光L2の反射光R2は、水平方向に対して鉛直上向き方向(Z軸方向)に所定角度だけ傾く方向に目標領域から逆行してミラー105に入射する。
【0040】
その後、反射光R1、R2、R3は、それぞれ、ミラー105で反射されて、ホルダ120の上面へと向かう。そして、反射光R1、R2、R3は、大部分が、ホルダ120上面の開口122(図1(a)参照)を通過して、フィルタ106へと入射し、さらに、フィルタ106を透過して集光レンズ107に入射する。
【0041】
フィルタ106は、光源101から出射されるレーザ光の波長帯の光を透過し、その他の波長帯の光を遮断するバンドパスフィルタである。したがって、フィルタ106に入射した反射光R1、R2、R3は、そのまま、フィルタ106を透過して、集光レンズ107に入射する。集光レンズ107は、入射した反射光R1、R2、R3を、光検出器108の受光面に収束させる。
【0042】
ここで、反射光R1、R2、R3は、上記のように、ミラー105に入射する角度が互いに異なるため、集光レンズ107に対しても、互いに異なる角度で入射する。集光レンズ107の光軸は、回転中心軸R10に一致している。したがって、0次回折光L0の反射光R0は、集光レンズ107の光軸に平行に集光レンズ107に入射する。これに対し、+1次回折光L1の反射光R1は、集光レンズ107の光軸に平行な状態からX軸正方向に傾くように集光レンズ107に入射する。-1次回折光L2の反射光R2は、集光レンズ107の光軸に平行な状態からX軸負方向に傾くように集光レンズ107に入射する。
【0043】
このように、集光レンズ107に対する反射光R0、R1、R2の入射方向が互いに異なるため、反射光R0、R1、R2の収束位置は、光検出器108の受光面において、X軸方向にずれるようになる。また、反射光R0の収束位置は、ミラー105が回転しても固定であるが、反射光R1、R2の収束位置は、ミラー105の回転に伴い回転する。光検出器108は、このように互いに収束位置がずれ且つ回転する反射光R0、R1、R2を受光可能に構成されている。
【0044】
図4(a)~(c)は、それぞれ、光検出器108の構成および光検出器108上における各回折光の反射光の移動状態を模式的に示す図である。
【0045】
光検出器108は、0次回折光L0の物体からの反射光R0を受光するセンサS1と、センサS1の周囲に配置され+1次回折光L1および-1次回折光L2の物体からの反射光R1、R2を受光するセンサS2、S3とを備える。センサS2、S3は、ミラー105の回転に伴い回転する+1次回折光L1および-1次回折光L2の反射光R1、R2の移動軌跡に沿うように、0次回折光L0の反射光R0を受光するセンサS1の周囲に円弧状に配置されている。また、センサS2、S3は、反射光R1、R2の移動方向において2つに分割されている。
【0046】
この構成において、反射光R0に対する検出信号は、センサS1から出力される。これに対し、反射光R1に対する検出信号は、センサS2、S3の一方から出力され、反射光R2に対する検出信号は、センサS2、S3の他方から出力される。
【0047】
たとえば、図4(a)に示すように反射光R1、R2が光検出器108に入射する場合、反射光R1に対する検出信号は、センサS2から出力され、反射光R2に対する検出信号は、センサS3から出力される。その後、図4(b)に示すように反射光R1、R2が時計方向に回転してセンサS2、S3の境界に等しく掛かると、反射光R1、R2に対する検出信号の出力が停止する。さらに、反射光R1、R2が時計方向に回転し、図4(c)に示すように反射光R1、R2が光検出器108に入射すると、反射光R1に対する検出信号は、センサS3から出力され、反射光R2に対する検出信号は、センサS2から出力される。
【0048】
このように、反射光R0に対する検出信号は、センサS1から取得され、反射光R1、R2に対する検出信号は、それぞれ、センサS2、S3から選択的に取得される。
【0049】
図5は、物体検出装置10の構成を示すブロック図である。
【0050】
物体検出装置10は、回路部の構成として、コントローラ201と、レーザ駆動回路202と、ミラー駆動回路203と、タイミング検出回路204とを備える。
【0051】
コントローラ201は、マイクロコンピュータとメモリを備え、メモリに保持されたプログラムに従って各部を制御する。レーザ駆動回路202は、コントローラ201からの制御信号により、光源101を駆動する。ミラー駆動回路203は、コントローラ201からの制御信号により、モータ130を駆動して、ミラー105を回転させる。
【0052】
タイミング検出回路204は、光検出器108のセンサS1~S3の検出信号に基づいて、これらセンサS1~S3がそれぞれ反射光R0~R2を受光したタイミングを検出する。タイミング検出回路204は、センサS1~S3がそれぞれ反射光R0~R2を受光したタイミングにおいて、反射光R0~R2の検出パルスをコントローラ201に出力する。
【0053】
物体検出動作時において、コントローラ201は、ミラー駆動回路203を制御して、ミラー105を、水平方向に回転させる。さらに、コントローラ201は、レーザ駆動回路202を制御して、水平方向の所定の回転角ごとに光源101からレーザ光をパルス発光させる。そして、コントローラ201は、ミラー105の各回転角において、光源101から出射されたレーザ光(0次回折光L0、+1次回折光L1、-1次回折光L2)の反射光R0~R2が光検出器108により受光されたか否かを、タイミング検出回路204からの信号に基づいて判定する。
【0054】
ミラー105の各回転角において、反射光R0~R2が光検出器108により受光された場合、コントローラ201は、各回転角における0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の鉛直角方向に、物体が存在すると判定する。さらに、コントローラ201は、光源101からレーザ光が出射されたタイミングと、タイミング検出回路204により検出された反射光R0~R2の受光タイミングとの時間差をもとに、0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の投射方向における物体までの距離を測定する。こうして、各投射方向における物体検出動作が行われる。
【0055】
なお、コントローラ201は、図4(a)~(c)を参照して説明したように、反射光R1、R2の移動に伴い、これら反射光R1、R2の検出信号を取得するためのセンサS2、S3を選択的に切り替える。
【0056】
すなわち、コントローラ201は、ミラー105の回転位置に応じて、センサS2、S3のうち反射光R1、R2がそれぞれ入射するセンサに対応するタイミング検出信号を取得するように、タイミング検出回路204から出力される各タイミング検出信号を、反射光R1、R2のタイミング検出信号として選択的に割り当てる。これにより、コントローラ201は、図4(a)~(c)に示した2つのセンサS2、S3によって、ミラー105の回転に伴い回転する反射光R1、R2のタイミング検出信号を、適切に取得することができる。
【0057】
<実施形態の効果>
上記実施の形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0058】
回折格子104(分岐素子)によって分岐されたレーザ光(0次回折光L0、+1次回折光L1、-1次回折光L2)が目標領域に投射されるとともに、分岐されたそれぞれのレーザ光(0次回折光L0、+1次回折光L1、-1次回折光L2)の反射光R0、R1、R2が光検出器108で受光されるため、投射方向ごとに個別に光学系を設ける必要がなく、極めて簡素な構成により、投射方向が異なる複数のレーザ光によって物体を検出することができる。
【0059】
図4(a)~(c)に示したように、光検出器108は、0次回折光L0の物体からの反射光R0を受光するセンサS1と、このセンサS1の周囲に配置され±1次回折光L1、L2の物体からの反射光R1、R2を受光するセンサS2、S3とを備える。このように、センサS1の周囲にセンサS2、S3を配することにより、ミラー105の回転に伴い回転する反射光R1、R2を、センサS2、S3により受光することができる。
【0060】
ここで、センサS2、S3は、図4(a)~(c)に示したように、ミラー105の回転に伴い回転する±1次回折光L1、L2の反射光R1、R2の移動軌跡に沿うように、0次回折光L0の反射光R0を受光するセンサS1の周囲に円弧状に配置されている。このように、センサS2、S3を円弧状に形成することにより、センサS2、S3の面積を反射光R1、R2の移動軌跡に応じた面積に制限できる。これにより、センサS2、S3が迷光等の不要な光を受光することを抑制でき、反射光R1、R2の検出精度を高めることができる。
【0061】
図4(a)~(c)を参照して説明したように、コントローラ201は、反射光R1、R2の回転移動に伴い、各反射光R1、R2の検出信号を取得するためのセンサS2、S3を選択的に切り替える。これにより、コントローラ201は、図4(a)~(c)に示した2つのセンサS2、S3によって、ミラー105の回転に伴い回転する反射光R1、R2の検出信号を、適切に取得することができる。
【0062】
図2(a)に示したように、回折格子104(分岐素子)は、分岐されたレーザ光(0次回折光L0、+1次回折光L1、-1次回折光L2)がミラー105の回転中心軸R10に平行な方向に離れてミラー105に入射するように、光源101からのレーザ光を分岐させる。これにより、図3に示したように、鉛直方向に異なる投射方向に、分岐された複数のレーザ光(0次回折光L0、+1次回折光L1、-1次回折光L2)を投射できる。よって、検出範囲を鉛直方向に広げることができる。
【0063】
この他、本実施形態では、図1(a)~図2(b)に示したように、筒体110が設けられている。このため、たとえば、回折格子104の入射面で反射されたレーザ光の反射光や、折り曲げミラー103やコリメータレンズ102の出射面で生じたレーザ光の散乱光等が、集光レンズ107に入射して、光検出器108に集光されることを防ぐことができる。よって、筒体110を用いることにより、物体の検出精度を高めることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能である。
【0065】
<変更例1>
図6(a)~(f)は、それぞれ、変更例1に係る、光検出器108の構成および光検出器108上における各回折光の反射光R0~R2の移動状態を模式的に示す図である。
【0066】
変更例1では、反射光R0を受光するセンサS11の周囲に4つのセンサS12~S15が配置されている。すなわち、変更例1では、上記実施形態に比べて、反射光R1、R2を受光するためのセンサの分割数が多くなっている。センサS12~S15は、それぞれ、反射光R1、R2の移動軌跡に沿うように、センサS11の周囲に円弧状に配置されている。光検出器108以外の構成は、上記実施形態で示した図1(a)~(c)および図2(a)、(b)の構成と同一である。
【0067】
図6(a)~(f)において、センサS12~S15のうち、斜線のハッチングが付されたセンサは、反射光R1の検出に用いられるセンサであり、ドットのハッチングが付されたセンサは、反射光R2の検出に用いられるセンサである。すなわち、図6(a)の状態では、センサS12、S13が反射光R1の受光に用いられ、センサS14、S15が反射光R2の検出に用いられる。
【0068】
また、図6(b)の状態では、センサS13が反射光R1の受光に用いられ、センサS15が反射光R2の検出に用いられる。図6(c)の状態では、センサS13、S14が反射光R1の受光に用いられ、センサS15、S12が反射光R2の検出に用いられる。図6(d)の状態では、センサS14が反射光R1の受光に用いられ、センサS12が反射光R2の検出に用いられる。図6(e)の状態では、センサS12、S13が反射光R2の受光に用いられ、センサS14、S15が反射光R1の検出に用いられる。図6(f)の状態では、センサS13が反射光R2の受光に用いられ、センサS15が反射光R1の検出に用いられる。
【0069】
このように、変更例では、反射光R1、R2の検出に用いられるセンサが、センサS12~S15の中から選択的に切り替えられる。
【0070】
ここで、変更例の構成では、図6(a)、(c)、(e)に示すように、反射光R1、R2がセンサ間の境界位置にある場合も、反射光R1、R2に対する検出信号を取得することができる。この点が、上記実施形態における図4(a)~(c)の構成と異なる点である。すなわち、変更例の構成によれば、センサの境界位置に反射光R1、R2が入射した場合も、検出信号のロスやクロストークが生じることがなく、安定的に、反射光R1、R2の検出信号を取得できる。また、センサS12~S15の面積が、図4(a)~(c)に示したセンサS2、S3よりも小さいため、反射光R1、R2の検出信号に対する迷光等の不要光の影響を抑制できる。
【0071】
図7は、変更例1に係る物体検出装置10の構成を示すブロック図である。
【0072】
ここでは、図5の構成に比べて、セレクタ205が追加されている。その他の構成は、図5と同様である。
【0073】
セレクタ205は、コントローラ201からの制御により、センサS12~S15からそれぞれ出力される検出信号のうち所定の検出信号を選択して、反射光R1の検出信号と反射光R2の検出信号を生成する。具体的には、コントローラ201は、センサS12~S15からそれぞれ出力される検出信号のうち、反射光R1、R2がそれぞれ入射するセンサからの検出信号をセレクタ205に選択させて、反射光R1、R2の検出信号を生成させる。
【0074】
たとえば、図6(a)のタイミングにおいて、コントローラ201は、センサS12、S13からの検出信号をセレクタ205に選択させて、反射光R1の検出信号を生成させる。この場合、セレクタ205は、センサS12、S13からの検出信号を加算して、反射光R1の検出信号を生成し、生成した検出信号をタイミング検出回路204に出力する。また、図6(b)のタイミングにおいて、コントローラ201は、センサS13からの検出信号をセレクタ205に選択させて、反射光R1の検出信号を生成させる。この場合、セレクタ205は、センサS13からの検出信号をそのまま反射光R1の検出信号として、タイミング検出回路204に出力する。
【0075】
コントローラ201は、たとえば、ミラー105の回転位置に基づいて、反射光R1、R2がそれぞれセンサS12~S15の何れに入射しているかを判別する。さらに、センサS12~S15の何れから検出信号が出力されているかを加味して、反射光R1、R2がそれぞれセンサS12~S15の何れに入射しているかを判別してもよい。そして、コントローラ201は、この判別結果に基づいて、上記のようにセレクタ205を制御し、反射光R1、R2に対応する検出信号をタイミング検出回路204に出力させる。なお、セレクタ205は、センサS11の検出信号をそのまま反射光R0の検出信号としてタイミング検出回路204に出力する。
【0076】
タイミング検出回路204は、セレクタ205から入力された検出信号に基づいて、反射光R0、R1、R2の受光タイミングを検出する。そして、タイミング検出回路204は、検出した反射光R0~R2の受光タイミングにおいて、反射光R0~R2の検出パルスをコントローラ201に出力する。
【0077】
物体検出動作時において、コントローラ201は、上記実施形態と同様、ミラー105を、水平方向に回転させつつ、水平方向の所定の回転角ごとに光源101からレーザ光をパルス発光させる。そして、コントローラ201は、ミラー105の各回転角において、反射光R0~R2が光検出器108により受光されたか否かを、タイミング検出回路204からの信号に基づいて判定する。反射光R0~R2が受光された場合、コントローラ201は、0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の投射方向に物体が存在すると判定する。
【0078】
さらに、コントローラ201は、光源101からレーザ光が出射されたタイミングと、タイミング検出回路204により検出された反射光R0~R2の受光タイミングとの時間差をもとに、0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の投射方向における物体までの距離を測定する。
【0079】
本変更例1においても、上記実施形態と同様の効果が奏され得る。加えて、変更例1によれば、上記のように、センサの境界位置に反射光R1、R2が入射した場合も、検出信号のロスやクロストークが生じることがなく、安定的に、反射光R1、R2の検出信号を取得できる。また、センサS12~S15の面積が、図4(a)~(c)に示したセンサS2、S3よりも小さいため、反射光R1、R2の検出信号に対する迷光等の不要光の影響を抑制でき、物体の検出精度を高めることができる。
【0080】
なお、変更例1において、セレクタ205による信号の切り替えは、物体検出の期間以外のタイミング、すなわち、光源101をパルス発光させてから受光信号を処理するまでの期間以外のタイミングにおいて行われることが好ましい。たとえば、セレクタ205による信号の切り替えは、光源101をパルス発光させる直前に行うことが好ましい。こうすると、信号切り替え時のノイズが検出信号に影響することを防ぐことができる。
【0081】
<変更例2>
上記実施形態および変更例1では、回折格子104で分岐された0次回折光L0および±1次回折光L1、L2が目標領域に投射されたが、変更例2では、投射に用いる回折光が変更されている。
【0082】
図8(a)、(b)は、それぞれ、変更例2に係る物体検出装置10の構成を示す断面図である。図8(a)、(b)には、図2(a)、(b)と同様の断面が示されている。
【0083】
図8(a)に示すように、変更例2では、0次回折光に対して回折角が互いに異なる2つの次数の回折光が回折格子104により生成されてミラー105に導かれる。たとえば、回折格子104は、0次回折光L0、+1次回折光L3および+2次回折光L4の回折効率が高く、その他の次数の回折光の回折効率が略ゼロになるように構成されている。ここで、0次回折光L0、+1次回折光L3および+2次回折光L4の回折効率は、略等しく設定される。回折格子104は、たとえば、ブレーズ型の回折格子により構成される。
【0084】
この場合、0次回折光L0、+1次回折光L3および+2次回折光L4が、物体検出に用いられる。ただし、物体検出に用いる回折光の組み合わせはこれに限られるものではない。たとえば、0次回折光、+2次回折光および+4次回折光が、物体検出に用いられてもよく、0次回折光、+1次回折光および-2次回折光が、物体検出に用いられてもよい。
【0085】
図8(b)に示すように、変更例2では、0次回折光L0、+1次回折光L3および+2次回折光L4に基づく反射光R0、R3、R4が、ミラー105に入射する。この場合、ミラー105に対する反射光R3、R4の入射角に応じて、光検出器108の受光面における反射光R3、R4の収束位置が、反射光R0の収束位置に対して一方向にずれる。したがって、変更例2では、光検出器108が、これら反射光R0、R3、R4を適切に受光可能に構成される。
【0086】
図9(a)~(c)は、それぞれ、変更例2に係る、光検出器108の構成および光検出器108上における各回折光の反射光R0、R3、R4の移動状態を模式的に示す図である。
【0087】
変更例2では、反射光R0を受光するセンサS21の周囲に、反射光R3を受光するためのセンサS22が円弧状に配置され、さらに、このセンサS22の周囲に、反射光R4を受光するためのセンサS23が円弧状に配置される。センサS22、S23は、それぞれ、反射光R3、R4の移動軌跡に沿うように形成されている。
【0088】
この構成では、反射光R3、R4ごとに個別にセンサS22、S23が配置されているため、反射光R3、R4の周方向の回転位置が変化しても、センサS22、S23の検出信号をそのまま反射光R3、R4の検出信号として用いることができる。このため、図5に示した構成において、コントローラ201は、反射光R3、R4の回転位置、すなわち、ミラー105の回転位置に応じて、センサS22、S23の検出信号を切り替える等の制御を行う必要がない。よって、制御の簡素化を図ることができる。
【0089】
なお、本変更例2においても、たとえば、図6(a)~(f)と同様、センサS22、S23が周方向に複数に分割されてもよい。この場合、図7に示したように、回路部にセレクタ205が設けられる。そして、反射光R3、R4の位置に応じて、セレクタ205により、分割されたセンサS22、S23からの検出信号が選択されて、反射光R3、R4の検出信号が生成される。この構成によれば、分割された各センサの面積が減少するため、図9(a)~(c)の構成に比べて、反射光R3、R4の検出信号に対する迷光等の不要光の影響を抑制できる。よって、物体の検出精度を高めることができる。
【0090】
また、図8(a)、(b)の構成では、0次回折光L0以外の回折光が2つであったが、0次回折光L0以外の回折光が1つまたは3つ以上であってもよい。0次回折光L0以外の回折光が3つである場合、図9(a)~(c)に示したセンサS23の外側にもう一つ、円弧状のセンサが配置される。このように、0次回折光L0以外の回折光の数に応じて、センサS21の外側に配置されるセンサの数が設定される。
【0091】
<変更例3>
上記変更例1では、反射光R1、R2を受光するセンサの周方向の分割数が4つであったが、反射光R1、R2を受光するセンサの周方向の分割数は、3つまたは5つ以上であってもよい。たとえば、図10(a)~(d)に示すように、光検出器108が、反射光R0を受光するセンサS31と、反射光R1、R2を受光するセンサとして、周方向に12に分割されたセンサS32~S43を備えていてもよい。
【0092】
この場合、反射光R1、R2の検出信号は、それぞれ、1つのセンサまたは隣り合う2つのセンサからの検出信号によって取得される。図10(a)~(d)において、斜線のハッチングが付されたセンサは、反射光R1の検出信号を取得するためのセンサであり、ドットのハッチングが付されたセンサは、反射光R2の検出信号を取得するためのセンサである。検出信号の選択および生成は、上記変更例1と同様、コントローラ201の制御のもと、セレクタ205によって行われる。
【0093】
変更例3の構成によれば、変更例1に比べて、センサS32~S43の面積をさらに小さくできるため、反射光R3、R4の検出信号に対する迷光等の不要光の影響をさらに抑制できる。よって、物体の検出精度をさらに高めることができる。
【0094】
<変更例4>
図10(e)は、変更例4に係る物体検出装置10の構成を示す斜視図である。
【0095】
変更例4では、上記実施形態におけるフィルタ106が省略され、代わりに、フィルタ141が、ホルダ120の上面に装着されている。フィルタ141は、上記フィルタ106と同様、光源101の出射波長帯の光を透過し、その他の波長の光を遮断するバンドパスフィルタである。フィルタ141の中央に矩形の開口が形成され、この開口に回折格子104が装着されている。すなわち、変更例4では、フィルタ141が、回折格子104の支持部材を兼ねている。その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0096】
変更例4の構成によれば、図1(a)~(c)に示した梁部121を省略できるため、上記実施形態において梁部121により遮光されていた反射光R0、R1、R2の部分を、光検出器108に導くことができる。よって、より多くの反射光R0、R1、R2を光検出器108に集光させることができる。
【0097】
なお、回折格子104は、平面視において矩形でなくてもよく、円形でもよい。回折格子104が円形の場合、回折格子104を装着するためにフィルタ141に設けられる開口も、円形に調整される。これにより、さらに多くの反射光R0、R1、R2を光検出器108に集光させることができる。
【0098】
<変更例5>
図11(a)は、変更例5に係る物体検出装置10の構成を示す断面図である。図11(b)は、変更例5に係る光路切替ミラー151の構成を模式的に示す平面図である。
【0099】
変更例5では、光源101およびコリメータレンズ102からなる光学系と、フィルタ106、集光レンズ107および光検出器108からなる光学系とが、互いに入れ替えられている。また、両光学系の間に、光路を切り替えるための光路切替ミラー151が配置されている。光源101は、出射光軸が回転中心軸R10に整合するように配置されている。光路切替ミラー151には、中央に孔151aが設けられている。コリメータレンズ102によって平行光化されたレーザ光は、孔151aを通って、回折格子104に入射する。こうして、上記実施形態と同様、0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2が生成される。
【0100】
目標領域から反射された0次回折光L0、+1次回折光L1および-1次回折光L2の反射光は、上記実施形態と同様、ミラー105で反射された後、光路切替ミラー151の孔151a以外の部分で、X軸負方向に反射される。その後、これらの反射光は、フィルタ106を介して集光レンズ107に入射し、集光レンズ107によって光検出器108の受光面に収束される。この場合も、各反射光の収束位置は、受光面上においてZ軸方向にずれる。各反射光は、たとえば、図4(a)~(c)に示した構成のセンサS1、S2、S3によって受光される。
【0101】
本変更例5においても、上記実施形態と同様の効果が奏され得る。なお、本変更例5においても、孔151aと回折格子104との間に、筒体が設けられてもよい。これにより、回折格子104の入射面で反射されたレーザ光がそのまま光検出器108に集光されることを防ぐことができる。
【0102】
<その他の変更例>
上記実施形態では、0次回折光L0以外の回折光として±1次回折光L1、L2が物体検出に用いられたが、物体検出に用いる回折光はこれに限られるものではない。たとえば、0次回折光以外の回折光として、±2次回折光が物体検出に用いられてもよく、+1次回折光のみが物体検出に用いられてもよい。物体検出に用いる回折光の数も3つに限られるものではない。
【0103】
また、上記実施形態では、回折格子104による回折方向が、図2(a)に示した中立位置において、X-Z平面に平行な方向であったが、回折格子104による回折方向はこれに限られるものではない。たとえば、回折格子104による回折方向が、図2(a)に示した中立位置において、X-Z平面に対して所定角度だけ傾いていてもよい。物体の検出範囲を鉛直方向に広げるためには、回折格子104は、分岐されたレーザ光が回転中心軸R10に平行な方向に離れてミラー105に入射するように、光源101からのレーザ光を分岐させることが好ましい。
【0104】
また、0次回折光L0の反射光R0を受光するセンサS1の周囲に配置されるセンサは、必ずしも円弧形状でなくてもよく、反射光R1、R2が移動した場合も反射光R1、R2を受光できる限りにおいて、他の形状であってもよい。ただし、センサS1の周囲に配置されるセンサを円弧状に形成することにより、このセンサの面積を反射光の移動軌跡に応じた面積に制限でき、このセンサに迷光等の不要な光が入射することを抑制できる。よって、物体からの反射光の検出精度を高めることができる。
【0105】
また、光検出器108は、必ずしも、所定のセンサパターンを有する構成でなくてもよく、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子や、2次元PSD(PositionSensitive Detector)であってもよい。ただし、上記のように、所定のセンサパターンを有する構成の光検出器108を用いることにより、構成および制御の簡素化とコストの低減を図ることができる。
【0106】
また、ホルダ120とミラー105とが一体形成されていてもよい。たとえば、ホルダ120が金属材料から構成される場合は、ホルダ120の傾斜面が鏡面仕上げされることによりミラー105が構成されてもよい。
【0107】
また、光を分岐させる分岐素子は、回折格子に限られるものではなく、光源からの光を分岐させ得る限りにおいて、他の素子であってもよい。さらに、光源101は、レーザ光源以外にLED(light emitting diode)を用いることもできる。
【0108】
また上記実施形態および変更例では、投射方向における物体の有無とともに物体までの距離が測定されたが、物体検出装置10は、投射方向における物体の有無のみを検出する構成であってもよい。
【0109】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0110】
10 … 物体検出装置
104 … 回折格子(分岐素子)
105 … ミラー
107 … 集光レンズ
108 … 光検出器
120 … ホルダ
130 … モータ(駆動部)
201 … コントローラ
S1~S3 … センサ
S11~S15 … センサ
S21~S23 … センサ
S31~S43 … センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11