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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021096175
(22)【出願日】2021-06-08
(62)【分割の表示】P 2019161845の分割
【原出願日】2017-01-13
(65)【公開番号】P2021126769
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 直規
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌樹
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-000465(JP,A)
【文献】特開平07-220563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力供給によって先端工具を回転させるモータと、
工具本体に移動可能に保持されるトリガと、
前記トリガの引き込み量に応じた圧力を受ける受圧部を有し、前記受圧部が受けた圧力の大きさを検出する感圧部と、
前記感圧部が検出した検出圧力に基づいて、前記モータの回転速度を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記検出圧力が増加しているか減少しているかを判断し、前記検出圧力が増加する場合は、増加する前記検出圧力に対する前記モータの前記回転速度を示す加圧特性カーブを用いて前記検出圧力に基づいて前記モータの回転速度を制御し、前記検出圧力が減少する場合は、減少する前記検出圧力に対する前記モータの前記回転速度を示す減圧特性カーブを用いて前記検出圧力に基づいて前記モータの回転速度を制御する
ことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記制御回路は、前記検出圧力が増加から減少に転じた場合、及び減少から増加に転じた場合に、前記検出圧力の変化量が所定範囲内であれば、前記モータの回転速度を維持する
ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電動工具に関し、より詳細にはトリガを備える電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トリガの変位量に応じてモータの回転速度を変化させる電動工具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の電動工具は、変速スイッチを備えている。変速スイッチは、使用者が指先で引き操作するトリガと、荷重センサと、を備えている。荷重センサは、トリガの引き操作量(押圧力)に比例する電圧信号を出力する。制御回路部は、荷重センサの出力信号に基づいてDCモータに供給する電力をPWM制御により調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-101326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
荷重センサ(感圧部)は、トリガの引き操作量(引込量)の変化に対して出力が連続的に変化する。そのため、例えば、電動工具を用いた作業時において、作業に伴う振動によってトリガの引き込み量が変化した場合、モータの回転速度が不安定となるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、その目的は、モータの回転速度の安定化を図ることが可能な電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電動工具は、モータと、トリガと、感圧部と、制御回路と、を備える。前記モータは、電源からの電力供給によって先端工具を回転させる。前記トリガは、工具本体に移動可能に保持される。前記感圧部は、前記トリガの引き込み量に応じた圧力を受ける受圧部を有し、前記受圧部が受けた圧力の大きさを検出する。前記制御回路は、前記感圧部が検出した検出圧力に基づいて、前記モータの回転速度を制御する。前記制御回路は、前記検出圧力が増加しているか減少しているかを判断し、前記検出圧力が増加する場合は、増加する前記検出圧力に対する前記モータの前記回転速度を示す加圧特性カーブを用いて前記検出圧力に基づいて前記モータの回転速度を制御し、前記検出圧力が減少する場合は、減少する前記検出圧力に対する前記モータの前記回転速度を示す減圧特性カーブを用いて前記検出圧力に基づいて前記モータの回転速度を制御する。

【発明の効果】
【0007】
本発明の電動工具では、モータの回転速度の安定化を図ることが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電動工具のブロック図である。
図2図2は、同上の電動工具の外観斜視図である。
図3図3Aは、同上の電動工具におけるトリガがオフ位置である場合のメインスイッチ及び感圧部の状態を示す概略構成図である。図3Bは、同上の電動工具におけるトリガがオン位置である場合のメインスイッチ及び感圧部の状態を示す概略構成図である。
図4図4は、同上の電動工具における検出圧力に対するモータの回転速度の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。下記の実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0010】
(実施形態)
本実施形態の電動工具1のブロック図を図1に示し、外観斜視図を図2に示す。本実施形態の電動工具1は、例えば、ボルト、ナット等の締付部品の締付作業に用いられる電動レンチである。
【0011】
図2に示すように、電動工具1の工具本体2は、筒形状の胴体部21と、胴体部21の周面から径方向に突出するグリップ22と、電池パック24が着脱可能に装着される装着部23と、を有している。
【0012】
胴体部21には、モータ4が収納されている。モータ4は、例えば直流モータであり、電池パック24が有するバッテリ241(電源)からの電力供給により回転するように構成されている。モータ4は、正逆切替回路40、メインスイッチ6、及び駆動スイッチ51を介してバッテリ241と電気的に接続されている(図1参照)。
【0013】
正逆切替回路40は、複数のスイッチからなるブリッジ回路を有しており、出力端間にモータ4が電気的に接続されている。正逆切替回路40は、バッテリ241からモータ4に供給される直流電流の方向を切り替えることにより、モータ4の回転方向を正転と逆転とに切り替える。正逆切替回路40は、正極側入力端子T1がメインスイッチ6を介してバッテリ241の正極端子と電気的に接続され、負極側入力端子T2が駆動スイッチ51を介してバッテリ241の負極端子と電気的に接続されている。また、正逆切替回路40の正極側入力端子T1と負極側入力端子T2との間には回生ダイオード41が電気的に接続されている。回生ダイオード41は、アノードが負極側入力端子T2に電気的に接続され、カソードが正極側入力端子T1に電気的に接続されている。
【0014】
駆動スイッチ51は、例えば、nチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成されている。駆動スイッチ51は、ドレイン端子が正
逆切替回路40の負極側入力端子T2と電気的に接続され、ソース端子がバッテリ241の負極端子と電気的に接続されている。駆動スイッチ51は、制御回路5によって制御される。
【0015】
制御回路5は、例えばマイコン(マイクロコンピュータ)で構成されており、駆動スイッチ51を制御するための制御信号を出力する。制御信号は、駆動スイッチ51のゲート端子に制御信号を直接的に又は駆動回路を介して出力し、駆動スイッチ51をオン/オフする。制御回路5は、後述する感圧部7の検出結果に基づいて駆動スイッチ51を制御することにより、モータ4の回転速度を制御する。具体的には、制御回路5は、例えばデューティ比を調節可能なPWM(Pulse Width Modulation)方式で駆動スイッチ51を制御することにより、モータ4の回転速度を制御する。
【0016】
また、制御回路5は、工具本体2のグリップ22に設けられた正逆切替スイッチ222の状態に基づいて、正逆切替回路40を制御する。制御回路5は、モータ4の回転方向が、正逆切替スイッチ222によって設定された回転方向となるように、正逆切替回路40を制御する。
【0017】
また、制御回路5は、電源回路50から供給される制御電力によって動作する。電源回
路50は、メインスイッチ6を介してバッテリ241と電気的に接続されている。電源回路50は、バッテリ241から供給される直流電力を直流変換して制御電力を生成し、制御回路5に供給する。
【0018】
図2に示すように、胴体部21の軸方向における一端側からは出力軸211が突出している。出力軸211は、モータ4の回転動作に連動して回転するように構成されている。出力軸211には、締付部品を締め付ける又は緩めるための円筒状のソケット212(先端工具)が着脱可能に取り付けられる。つまり、モータ4は、バッテリ241からの電力供給によってソケット212を回転させるように構成されている。出力軸211に取り付けられるソケット212のサイズは、作業者によって締付部品のサイズに合わせて適宜選択される。電動工具1は、モータ4の回転動作よってソケット212が回転することにより、締付部品を締め付ける又は緩めるといった作業が可能となる。
【0019】
工具本体2のグリップ22は、作業者が作業を行う際に握る部分であり、トリガ3が設けられている。トリガ3は、モータ4の回転動作のオン/オフ、及びモータ4の回転速度の調整を行うための操作部であり、グリップ22内への進退が可能に構成されている。トリガ3は、グリップ22から突出し引き込み量がゼロであるオフ位置(図3A参照)と、グリップ22内に引き込まれ引き込み量が上限であるオン位置(図3B参照)との間で移動可能となるように工具本体2に保持されている。トリガ3は、ばねによってグリップ22から突出する向きに力が加えられている。
【0020】
グリップ22の内部には、スイッチボックス221が設けられている。スイッチボックス221には、メインスイッチ6と感圧部7とが収納されている。
【0021】
メインスイッチ6は、バッテリ241からのモータ4及び電源回路50への電力供給をオン/オフするためのスイッチであり、固定接点61、及び可動接点62を有している。
【0022】
固定接点61は、固定接点板610に設けられている。固定接点板610は、スイッチボックス221に保持されている。固定接点板610は、導電線を介してモータ4の正極端子と電気的に接続されている。
【0023】
可動接点62は、可動接点板620に設けられている。可動接点板620は、一端側を支点として他端側が移動可能となるようにスイッチボックス221に保持されており、他端側に可動接点62が固定接点61と対向するように設けられている。可動接点板620は、導電線を介してバッテリ241の正極端子と電気的に接続されている。可動接点板620は、ばねによって可動接点62が固定接点61から離れる向きに力が加えられている。
【0024】
可動接点板620は、トリガ3に連結された棒状のプランジャ31によって移動するように構成されている。具体的には、プランジャ31は、スイッチボックス221に形成された孔を貫通するように設けられており、一端がトリガ3と機械的に接続されている。図3A、3Bでは、トリガ3は、引かれると左向きに移動する。したがって、プランジャ31は、トリガ3が引かれることによって、スイッチボックス221への挿入量が増加する。プランジャ31の周面から突出するように突部32が設けられている。突部32は、トリガ3が引かれてスイッチボックス221内へのプランジャ31の挿入量が増加することによって、ばねの力に抗って可動接点板620の端部を固定接点板610に向かって押すように移動させる。つまり、可動接点板620は、トリガ3が引かれるとプランジャ31の突部32で押されることにより、固定接点板610に向かって移動する。
【0025】
図3Aに示すように、トリガ3がオフ位置にある場合、突部32が可動接点板620の
支点に近い位置にあるので、可動接点62が固定接点61から離れる。つまり、トリガ3がオフ位置にある場合、メインスイッチ6がオフ状態となり、バッテリ241からモータ4及び電源回路50への電力供給が遮断される。また、図3Bに示すように、トリガ3がオン位置にある場合、突部32が可動接点板620の端部を固定接点板610に向かって移動させ、可動接点62と固定接点61とが接触する。つまり、トリガ3がオン位置にある場合、メインスイッチ6がオン状態となり、バッテリ241からモータ4及び電源回路50への電力供給が行われる。
【0026】
感圧部7は、モータ4の回転速度を調整するためのスイッチであり、受圧部71、及び受圧部71を支持する支持体72を有している。感圧部7は、スイッチボックス221に保持された基板70に設けられており、受圧部71が受けた圧力の大きさを検出するように構成されている。本実施形態では、感圧部7は、例えば、受圧部71が受ける圧力の大きさに応じて静電容量が変化する静電型の感圧センサである。受圧部71は、圧力を受けることによって変形するように構成されており、受けた圧力が大きくなるにつれて変形量が大きくなる。感圧部7は、受圧部71の変形量に応じて静電容量の大きさが変化するように構成されており、静電容量の大きさが、受圧部71が受けた圧力の大きさの検出結果(検出圧力)に相当する。感圧部7は、静電容量の大きさ(受圧部71が受けた圧力の大きさ)を電気信号に変換して制御回路5に出力することにより、検出結果(検出圧力)を制御回路5に出力する。感圧部7は、静電型の感圧センサに限らず、例えば受ける圧力の大きさに応じて抵抗値が変化する抵抗型の感圧センサであってもよい。
【0027】
感圧部7は、スイッチボックス221に収納された可動加圧板8と対向するように配置されている。可動加圧板8は、感圧部7側の面から突出するように加圧部81が設けられている。加圧部81は、例えば硬質ゴム等で構成されており、受圧部71と対向するように配置されている。
【0028】
可動加圧板8は、一端側を支点として他端側が移動可能となるようにスイッチボックス221に保持されている。可動加圧板8は、ばねによって加圧部81が受圧部71から離れる向きに力が加えられている。可動加圧板8は、プランジャ31に押されることによって感圧部7に向かって移動するように構成されている。具体的には、可動加圧板8は、断面が台形状に形成されており、一端側の厚みに比べて他端側の厚みが大きい。言い換えれば、可動加圧板8は、加圧部81が設けられた第1面801に対して、第1面801とは反対側の第2面802が傾斜している。可動加圧板8は、トリガ3が引かれてスイッチボックス221内へのプランジャ31の挿入量が増加すると、プランジャ31の先端部が第2面802に接触する。つまり、プランジャ31の先端部が、可動加圧板8の斜面(第2面802)に接触する。したがって、プランジャ31の挿入量がさらに増加すると、プランジャ31の先端部が可動加圧板8を第2面802に沿って移動しながら押すことにより、可動加圧板8が感圧部7に向かって移動する。これにより、加圧部81が受圧部71に接触し圧力を加えることにより受圧部71が変形する。可動加圧板8は、第1面801に対して第2面802が傾斜しているので、プランジャ31の挿入量が増加するにつれて、加圧部81が受圧部71に加える圧力が大きくなる。つまり、可動加圧板8は、トリガ3が引かれるとプランジャ31の先端部によって押されて感圧部7に向かって移動し、トリガ3の引き込み量が増加するにつれて加圧部81が受圧部71に加える圧力が大きくなる。なお、プランジャ31の先端部が傾斜面であり、プランジャ31の挿入量が増加するにつれて、加圧部81が受圧部71に加える圧力が大きくなるように構成されていてもよい。
【0029】
ここにおいて、トリガ3がオフ位置から引き込まれて、引き込み量が第1引き込み量になると、可動接点62が固定接点61と接触しメインスイッチ6がオン状態となる。トリガ3の引き込み量が第1引き込み量よりも大きい第2引き込み量になると、可動加圧板8
の加圧部81が感圧部7の受圧部71と接触する。そして、トリガ3の引き込み量が第2引き込み量よりも大きくなるにつれて、加圧部81が受圧部71に加える圧力が強くなる。つまり、トリガ3がオフ位置から引き込まれると、まずメインスイッチ6がオンし、その後、感圧部7に圧力が加えられる。
【0030】
図2に示すように、工具本体2の装着部23は、扁平な矩形体状に形成されており、グリップ22と反対側の一面に電池パック24が着脱可能に装着される。電池パック24は、矩形体状に形成された樹脂製のケース240(図2参照)を有しており、ケース240の内部にバッテリ241(例えば、リチウムイオン電池)を収納している。
【0031】
装着部23には、制御回路5が収納されている。また、装着部23には、操作パネル231が設けられている。操作パネル231は、例えば、複数の押ボタンスイッチ232、及び複数のLED233(Light Emitting Diode)を備えており、電動工具1の種々の設定、状態確認等を行うことができる。作業者は、例えば、操作パネル231(押ボタンスイッチ232)を操作することにより、バッテリ241の残容量の確認等を行うことができる。また、装着部23には、発光部234が設けられている。発光部234は、例えばLEDで構成されている。発光部234は、作業時において作業箇所に向けて光を照射するように配置されている。発光部234は、メインスイッチ6がオンした際に点灯するように構成されている。
【0032】
次に、制御回路5によるモータ4の回転速度の制御について図4を参照して説明する。制御回路5は、感圧部7が検出した検出圧力(受圧部71が受けた圧力)が大きくなるにつれてモータ4の回転速度が大きくなるように駆動スイッチ51を制御する。
【0033】
具体的には、制御回路5は、所定周期で検出圧力をサンプリングしており、時間変化によって検出圧力が増加しているか減少しているかを判断する。つまり、制御回路5は、トリガ3がオン位置に向かって引かれているか、オフ位置に向かって戻されているかを判断する。
【0034】
制御回路5は、時間変化によって検出圧力が増加する場合と減少する場合とで、検出圧力に対するモータ4の回転速度が互いに異なるように、モータ4の回転速度をヒステリシス制御する。図4は、検出圧力に対するモータ4の回転速度を示す特性カーブのグラフである。図4中のY1は、時間変化によって検出圧力が増加する場合における検出圧力に対するモータ4の回転速度を示す加圧特性カーブである。図4中のY2は、時間変化によって検出圧力が減少する場合における検出圧力に対するモータ4の回転速度を示す減圧特性カーブである。
【0035】
加圧特性カーブY1が示すように、検出圧力を下限値Pminから上限値Pmaxまで増加させた場合、モータ4の回転速度が速度S1から連続的に増加する。検出圧力が圧力値P1に達するとモータ4の回転速度が上限値Smaxとなり、検出圧力が圧力値P1から上限値Pmaxまでの間はモータ4の回転速度が上限値Smaxで維持される。
【0036】
減圧特性カーブY2が示すように、検出圧力を上限値Pmaxから下限値Pminまで減少させた場合、検出圧力が上限値Pmaxから圧力値P2までの間は回転速度が上限値Smaxで維持される。圧力値P2は、圧力値P1よりも小さい値である。検出圧力が圧力値P2から低減するとモータ4の回転速度が上限値Smaxから速度S2まで連続的に減少し、検出圧力が下限値Pminに達するとモータ4の回転速度がゼロ、つまりモータ4が停止する。速度S2は、速度S1よりも大きい速度である。
【0037】
検出圧力の下限値Pminは、ゼロである。つまり、検出圧力が下限値Pminである
場合、トリガ3の引き込み量がゼロ(オフ位置)から第2引き込み量までの間であることを示している。また、検出圧力が上限値Pmaxである場合、トリガ3の位置がオン位置であることを示している。
【0038】
図4に示すように、時間変化によって検出圧力が増加する場合と減少する場合とを比較すると、時間変化によって検出圧力が減少する場合の方が、検出圧力が下限値Pminから圧力値P1の範囲では常に検出圧力に対するモータ4の回転速度が大きい。これにより、モータ4の回転速度のヒステリシス制御が行われる。
【0039】
制御回路5は、検出圧力の時間変化に応じて、加圧特性カーブY1又は減圧特性カーブY2に沿ってモータ4の回転速度を制御する。
【0040】
また、制御回路5は、検出圧力が所定の範囲内で増加及び減少した場合でも、モータ4の回転速度を一定に維持する。例えば、検出圧力が下限値Pminから圧力値P10(<圧力値P1)まで増加したとする。この場合、制御回路5は、モータ4の回転速度を、加圧特性カーブY1に沿って速度S10まで増加させる。ここで、減圧特性カーブY2において、モータ4の回転速度が速度S10である場合における検出圧力が圧力値P20(<圧力値P10)であるとする。制御回路5は、検出圧力が減圧特性カーブY2上の圧力値P20まで減少する間は、モータ4の回転速度を速度S10に維持する。また、制御回路5は、圧力値P20と圧力値P10との間で検出電圧が増加した場合も、モータ4の回転速度を速度S10に維持する。つまり、制御回路5は、圧力値P20と圧力値P10との間の範囲ΔP内で検出圧力が増加及び減少する場合、モータ4の回転速度を速度S10に維持する。したがって、電動工具1の作業に伴う振動によってトリガ3の引き込み量が変化した場合であっても、トリガ3の引き込み量の変化による検出圧力の変化が範囲ΔP内であれば、モータ4の回転速度が一定に維持される。
【0041】
すなわち、制御回路5は、検出圧力が下限値Pminから圧力値P1の範囲内において、モータ4の回転速度が速度Sxである場合、検出圧力が範囲ΔPx内で変化してもモータ4の回転速度を速度Sxに維持する。範囲ΔPxは、加圧特性カーブY1上でモータ4の回転速度が速度Sxとなる圧力値Px1と、減圧特性カーブY2上でモータ4の回転速度が速度Sxとなる圧力値Px2との間の範囲である。
【0042】
また、検出圧力が圧力値P20を下回って減少した場合、制御回路5は、モータ4の回転速度を、減圧特性カーブY2に沿って速度S10から減少させる。また、検出圧力が圧力値P10を上回って増加した場合、制御回路5は、モータ4の回転速度を、加圧特性カーブY1に沿って速度S10から上昇させる。
【0043】
上述した例では、電動工具1が電動レンチである場合について説明したが、電動工具1は電動レンチに限らず、電動ドライバ、電動ドリル等のモータ4を備える他の電動工具であってもよい。
【0044】
以上説明したように、第1態様に係る電動工具1は、モータ4と、トリガ3と、感圧部7と、制御回路5と、を備える。モータ4は、バッテリ241(電源)からの電力供給によってソケット212(先端工具)を回転させる。トリガ3は、工具本体2に移動可能に保持される。感圧部7は、トリガ3の引き込み量に応じた圧力を受ける受圧部71を有し、受圧部71が受けた圧力の大きさを検出する。制御回路5は、感圧部7が検出した検出圧力に基づいて、モータ4の回転速度を制御する。また、制御回路5は、時間変化によって検出圧力が増加する場合と減少する場合とで、検出圧力に対するモータ4の回転速度が互いに異なるように、モータ4の回転速度をヒステリシス制御する。
【0045】
この構成により、電動工具1は、電動工具1の作業に伴う振動やトリガ3を引く指の脈動等によってトリガ3の引き込み量が変化した場合であっても、モータ4の回転速度の変化を抑制し安定化を図ることが可能となる。
【0046】
第2態様に係る電動工具1では、第1態様において、時間変化によって検出圧力が減少する場合、制御回路5は、時間変化によって検出圧力が増加する場合に比べて、検出圧力に対するモータ4の回転速度が大きくなるように、モータ4の回転速度をヒステリシス制御することが好ましい。
【0047】
この構成により、電動工具1は、トリガ3の引き込み量が変化が増加から減少に転じた場合、及び減少から増加に転じた場合であっても、トリガ3の引き込み量の変化量が所定範囲内であればモータ4の回転速度を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 電動工具
2 工具本体
212 ソケット(先端工具)
241 バッテリ(電源)
3 トリガ
4 モータ
5 制御回路
7 感圧部
71 受圧部
図1
図2
図3
図4