(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20221213BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01N1/00 101M
G01N33/18 106A
(21)【出願番号】P 2021054164
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】井上 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】宮内 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】片山 浩之
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-111721(JP,A)
【文献】特開2003-337127(JP,A)
【文献】実開平07-014353(JP,U)
【文献】特開平01-299439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる試料水の流量及び流速の少なくとも一方を測定する測定部と、
前記流路を流れる前記試料水の流速を調整する調整部と、
前記測定部により測定された前記試料水の流量及び流速の少なくとも一方に基づいて前記調整部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記試料水の流速が所定の範囲に維持されるように前記調整部を制御
し、
前記調整部は、前記流路上で前記試料水をろ過するフィルタの上流側に配置され、前記試料水の流速を調整する加圧ポンプを含む、
制御装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記流路上に配置され、かつ前記試料水の流量を測定する流量計を含む、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
流路を流れる試料水の流量及び流速の少なくとも一方を測定する測定部と、
前記流路を流れる前記試料水の流速を調整する調整部と、
前記測定部により測定された前記試料水の流量及び流速の少なくとも一方に基づいて前記調整部を制御する制御部と、
絞り弁及び排水流路よりも上流側の前記流路を洗浄水によって洗浄する洗浄部と、
を備え、
前記制御部は、前記試料水の流速が所定の範囲に維持されるように前記調整部を制御し、
前記調整部は、
前記流路上に配置され、かつ前記試料水の流速を調整する
前記絞り弁と、
前記絞り弁を通過しない余剰の前記試料水を排水する
前記排水流路と、
を含む、
制御装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記流路上に配置され、かつ前記試料水の流量を測定する流量計を含む、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記流路において前記測定部及び前記調整部よりも下流側に配置され、かつ分岐した第1流路及び第2流路のいずれか一方に前記試料水の流れを切り替える切替部を備える、
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記試料水が前記流路を1日にわたり常時流れるように前記調整部を制御する、
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
流路を流れる試料水の流量及び流速の少なくとも一方を測定する測定ステップと、
前記測定ステップにおいて測定された前記試料水の流量及び流速の少なくとも一方に基づいて前記流路を流れる前記試料水の流速を制御する制御ステップと、
を含み、
前記制御ステップにおいて、前記試料水の流速が所定の範囲に維持され
、
前記流路上で前記試料水をろ過するフィルタの上流側に配置される加圧ポンプにより、前記試料水の流速が調整される、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水処理インフラにおける処理水の水質を管理したり、海洋などの水域の水質を検査したりすることを目的とした試料水の採水に関連する技術が知られている。例えば、特許文献1には、水処理設備の水質を自動で測定する測定機器に検水を供給するための採水装置であって、採水管の詰まり防止機能を備えた採水装置が記載されている。例えば、非特許文献1には、バンドン採水器及びニスキン採水器などを含む典型的な採水器では一度に採水できない量の試料水を必要とするときに、採水チューブを目的の場所又は水深まで到達させて、吸引ポンプの駆動により連続的に採水する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Inoue et al, “Spatial and temporal profiles of enteric viruses in the coastal waters of Tokyo Bay during and after a series of rainfall events”, Science of The Total Environment, 2020年7月, Vol. 727, 138502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水処理システムでは、最悪又は最大の微生物学的負荷に対してどれだけの制御性能が発揮可能であるかに関する情報が必要となる。しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、採水は間欠的に行われる。非特許文献1に記載の従来技術では、いかに素早く短時間に試料水を得るかに主眼が置かれている。すなわち、いずれの場合も、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む試料水を漏れなく適切に得るために、試料水の流速を定常的に維持しながら採水を行うことについては十分に考慮されていなかった。結果として、試料水の水質変動を適切に把握することが困難であった。
【0006】
本開示は、試料水の水質変動の適切な把握に寄与することができる制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る制御装置は、流路を流れる試料水の流量及び流速の少なくとも一方を測定する測定部と、前記流路を流れる前記試料水の流速を調整する調整部と、前記測定部により測定された前記試料水の流量及び流速の少なくとも一方に基づいて前記調整部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記試料水の流速が所定の範囲に維持されるように前記調整部を制御する。
【0008】
これにより、制御装置は、試料水の水質変動の適切な把握に寄与することができる。例えば、制御装置は、流路を流れる試料水の流速が所定の範囲に維持されるように調整部を制御する。このような制御装置による制御によって、採水システムは、試料水の流速及び流量を定常的に維持しながら長期にわたって採水処理を実行することができる。採水システムは、試料水を少量ずつ定常的に採水しながら長期にわたって採水量の目標値を達成することも可能となる。
【0009】
したがって、採水システムは、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む試料水を漏れなく適切に回収することができる。採水システムによる上記のような採水方法によって、試料水の水質に関する突発的な変動を検出したり、ワーストケースを検出したりすることも可能となる。採水時に発生した水質の最悪条件が試料水に反映され、最悪の事態によってもたらされる質的リスクを逃さないことが可能となる。採水システムは、目的とする流体全体の汚染状況を反映した、代表的サンプル及び平均的サンプルとして試料水を回収することができる。結果として、試料水の水質変動及び水処理システムの制御性能を適切に把握することが容易となる。
【0010】
一実施形態では、前記測定部は、前記流路上に配置され、かつ前記試料水の流量を測定する流量計を含んでもよい。これにより、制御装置は、流速が所定の範囲に維持されるように調整部を制御するときに、流量計により測定された流量を参照しながら制御処理を実行することができる。
【0011】
一実施形態では、前記調整部は、前記流路上に配置され、かつ前記試料水の流速を調整する送液ポンプを含んでもよい。これにより、採水システムは、流路上でより大きな流速及び流量を達成することが可能である。したがって、試料水に含まれる濁質及び沈殿物などによる、流路を構成する配管の閉塞が抑制される。例えば、所定の範囲が1m/sec以上の範囲に含まれることで、このような効果が顕著になる。採水システムでは、送液ポンプを使用することにより、試料水を下流側に送るために十分な圧力を確保しやすくなる。
【0012】
一実施形態では、前記調整部は、前記流路上で前記試料水をろ過するフィルタの下流側に配置される吸引ポンプを含んでもよい。これにより、採水システムは、流路上に配置されるフィルタを用いて吸引ろ過を行うことができる。
【0013】
一実施形態では、前記調整部は、前記流路上で前記試料水をろ過するフィルタの上流側に配置される加圧ポンプを含んでもよい。これにより、採水システムは、流路上に配置されるフィルタを用いて加圧ろ過を行うことができる。
【0014】
一実施形態では、前記調整部は、前記流路上に配置され、かつ前記試料水の流速を調整する絞り弁と、前記絞り弁を通過しない余剰の前記試料水を排水する排水流路と、を含んでもよい。これにより、制御装置は、送液ポンプなどのポンプを用いることなく、試料水の流速を所定の範囲に維持することが可能である。
【0015】
一実施形態では、制御装置は、前記絞り弁及び前記排水流路よりも上流側の前記流路を洗浄水によって洗浄する洗浄部を備えてもよい。これにより、制御装置は、採水システムによる採水処理により試料水に含まれる濁質及び沈殿物などが流路を構成する配管に蓄積したとしても、これらを洗い流すことができる。したがって、試料水に含まれる濁質及び沈殿物などによる、流路を構成する配管の閉塞が抑制される。
【0016】
一実施形態では、制御装置は、前記流路において前記測定部及び前記調整部よりも下流側に配置され、かつ分岐した第1流路及び第2流路のいずれか一方に前記試料水の流れを切り替える切替部を備えてもよい。これにより、制御装置は、採水終了後に試料水の測定が行われ、時間ごと、日ごと、及び月ごとなどの定期的なモニタリングが行われる場合に、試料水の流路を自動的に切り替えることが可能となる。このとき、ユーザは、採水に使用されていない流路側に配置されているフィルタ、容器、及び薬剤などの消耗品を交換することもできる。
【0017】
一実施形態では、前記制御部は、前記試料水が前記流路を1日にわたり常時流れるように前記調整部を制御してもよい。これにより、採水システムは、バルブを介して得られた試料水を、例えば1日という所定期間ごとに採水容器に回収することも可能となる。例えば、採水システムは、試料水の所定期間ごとの採水を365日継続して、時間ごと、日ごと、及び月ごとなどの変動を長期的に評価するために用いることも可能である。
【0018】
幾つかの実施形態に係る制御方法は、流路を流れる試料水の流量及び流速の少なくとも一方を測定する測定ステップと、前記測定ステップにおいて測定された前記試料水の流量及び流速の少なくとも一方に基づいて前記流路を流れる前記試料水の流速を制御する制御ステップと、を含み、前記制御ステップにおいて、前記試料水の流速が所定の範囲に維持される。
【0019】
これにより、試料水の水質変動の適切な把握に寄与することができる。このような制御方法によって、採水システムは、試料水の流速及び流量を定常的に維持しながら長期にわたって採水処理を実行することができる。採水システムは、試料水を少量ずつ定常的に採水しながら長期にわたって採水量の目標値を達成することも可能となる。
【0020】
したがって、採水システムは、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む試料水を漏れなく適切に回収することができる。採水システムによる上記のような採水方法によって、試料水の水質に関する突発的な変動を検出したり、ワーストケースを検出したりすることも可能となる。採水時に発生した水質の最悪条件が試料水に反映され、最悪の事態によってもたらされる質的リスクを逃さないことが可能となる。採水システムは、目的とする流体全体の汚染状況を反映した、代表的サンプル及び平均的サンプルとして試料水を回収することができる。結果として、試料水の水質変動及び水処理システムの制御性能を適切に把握することが容易となる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、試料水の水質変動の適切な把握に寄与することができる制御装置及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る制御装置を含む採水システムの概略構成図である。
【
図2】
図1の制御装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る制御方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4A】制御装置を含む
図1の採水システムの第1変形例を示す概略構成図である。
【
図4B】制御装置を含む
図1の採水システムの第2変形例を示す概略構成図である。
【
図5】制御装置を含む
図1の採水システムの第3変形例を示す概略構成図である。
【
図6】本開示の第2実施形態に係る制御装置を含む採水システムの概略構成図である。
【
図7】
図6の採水システムにより採水処理が実行されているときの流体の流れを示す
図6に対応する概略図である。
【
図8】
図6の採水システムによる採水処理の後に洗浄処理が実行されているときの流体の流れを示す
図6に対応する概略図である。
【
図9】制御装置を含む
図6の採水システムの変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
背景技術及び課題についてより詳細に説明する。
【0024】
例えば、特許文献1では、水処理設備において、試料水が生物処理槽から採水管を通過して、試料測定を行うための膜分離槽に間欠的に供給されることも記載されている。より具体的には、採水装置は、採水管の吐出口を、試料測定を行うための膜分離槽及び取水するための生物処理槽の液面よりも上方に位置させるとともに、採水ポンプ手段を間欠運転する。採水ポンプ手段の停止時には採水管内の残留水が自重によって生物処理槽側に逆流する。これにより採水管内の逆洗が行われる。この定期的な逆洗により採水管の詰りが防止される。採水装置は、残留水が全て逆流する前に採水管の取水側に配置された開閉弁を閉動作し、残留水の逆流を停止する。これにより、再稼働時の送水負荷が軽減する。
【0025】
例えば、非特許文献1では、採水された大量の試料水を採水容器に保管することができない場合、目的のウイルス又は粒子などを陰電荷膜に吸着させて回収し、透過した試料水を現場に排水することも記載されている。
【0026】
以上のような特許文献1及び非特許文献1に記載の従来技術に加えて、試料水の採水に関連する技術として例えば以下のものも知られている。
【0027】
例えば、試料水を採水する典型的な採水器として、バンドン採水器及びニスキン採水器が知られている。このような典型的な採水器は、ロープの先端に取り付けられた状態で、プール、海洋、及び河川などの水域において目的の水深へ沈められる。典型的な採水器は、ロープに沿ってメッセンジャーが採水器まで落下することで蓋を閉じる。典型的な採水器は、試料水を取得したい地点又は水深における特定のタイミングの試料を取得する。
【0028】
例えば、プログラムされたタイミングで10mLから10Lの試料水を採水可能な自動採水装置も知られている。このような自動採水装置は、採水した試料水を冷蔵保存することも可能である。
【0029】
例えば、原虫のモニタリングに限定した技術として、英国では飲用水に用いる供給水に対して1時間あたり40リットル(L)の採水が実施される。クリプトスポリジウムのオーシストが平均して1oocyst/10L以下であることが定められている。そのサンプリングに用いられるフィルタシステムは、最大1000Lの試料水をろ過することが可能であるが、3μm程度のオーシストを捕獲する専用フィルタを必要とする。このような専用フィルタは、圧縮及び伸縮によって捕獲したオーシストを溶出する。
【0030】
水処理システムでは、最悪又は最大の微生物学的負荷に対してどれだけの制御性能が発揮可能であるかに関する情報が必要となる。しかしながら、上記の従来技術のいずれにおいても、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む試料水を漏れなく適切に得るために、試料水の流速を定常的に維持しながら採水を行うことについては十分に考慮されていなかった。結果として、試料水の水質変動を適切に把握することが困難であった。
【0031】
例えば、特許文献1に記載の従来技術では、取水するための生物処理槽から試料測定を行うための膜分離槽へ間欠的に送水が行われる。送水停止時に逆洗が行われることで、採水管の詰まりが防止される。したがって、特許文献1に記載の発明は、試料水の流速を定常的に維持しながら試料水を連続的に常時採水する用途に適しておらず、このような観点が欠落している。
【0032】
例えば、非特許文献1に記載の従来技術では、採水時間は、数秒から数十分以内に限定される。したがって、処理水又は水域の水質の解析可能範囲は、採水時点のものに限定される。すなわち、採水した試料水は、水処理インフラ及び水域などでその水質を把握する目的に適合した代表的なサンプルであるとはいえない。とりわけ、河川水及び下水などでは、工場排水及び家庭排水を含む流域からの流出負荷並びに天候の影響を受けやすい。したがって、採水時点に限定した瞬間的な採水では、水質を実態的に反映していない可能性が高い。
【0033】
このような問題は、上述した典型的な採水器にも同様に当てはまる。一方で、このような典型的な採水器を用いて長時間にわたり大量の採水を行うには、採水者への負担が大きい。
【0034】
例えば、上述した自動採水装置では、ポンプの性質上、プログラムされたタイミングでの採水量について±5%の誤差が生じるため、プログラム可能な採水量は最大でも10Lに限定される。自動採水装置は、定められた採水量を得るためのものであり、採水速度を調整することはできない。
【0035】
例えば、原虫のモニタリングに限定した上述の技術では、最大で1000Lの採水が可能であるが、使用するフィルタが特殊であり、対象がクリプトスポリジウム及びジアルジアなどの原虫に限定される。加えて、採水速度の調整は考慮されていない。
【0036】
以下では、これらの問題を解決可能な制御装置10及び制御方法について説明する。本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0037】
以下で説明する制御装置10及び制御方法は、多様な分野及び用途に応用可能である。例えば、制御装置10及び制御方法は、浄水場、下水処理場、水再生施設、及び海水淡水化施設などを含む水処理インフラにおいて水質管理及び処理性能を把握するための採水に用いることができる。制御装置10及び制御方法は、例えば、河川、海洋、親水域、プール、及び水浴場などの環境調査における動態を把握するために、微粒子、コロイド分散系、及び微生物などの水質の検査に用いる試料水の採水に応用可能である。
【0038】
制御装置10及び制御方法は、例えば、水域及び環境インフラを網羅する都市の微生物感染リスクを把握するために、微粒子、コロイド分散系、及び微生物などの水質の検査に用いる試料水の採水に応用可能である。制御装置10及び制御方法は、飲料用又は加工食品の製造に使用される液体の質的リスク、安全把握、及び品質管理などを目的として、リスクを定量化したり、安全と判定できる閾値との比較検証を行ったりするために、微粒子、コロイド分散系、及び微生物などの水質の検査に用いる試料水の採水に応用可能である。
【0039】
制御装置10及び制御方法は、工業用水及び灌漑・農業用水などの水質の検査に用いる試料水の採水に応用可能である。制御装置10及び制御方法は、ミスト散布、加湿装置、及び打ち水などの、温湿度管理に用いる液体の質的リスク、安全把握、及び品質管理などを目的とした検査に用いる試料水の採水に応用可能である。制御装置10及び制御方法は、医薬品の製造及び人工透析療法などの品質管理検査に用いる試料水の採水に応用可能である。
【0040】
本明細書において、「微生物」は、例えば原虫、細菌、及びウイルスなどを含む。「原虫」は、例えばクリプトスポリジウム及びジアルジアなどを含む。「細菌」は、例えば大腸菌、ブドウ球菌、コレラ菌、結核菌、及びピロリ菌などを含む。「ウイルス」は、例えばノロウイルス、アデノウイルス、腸管系ウイルス、及びトウガラシ微斑ウイルス(Pepper Mild Mottle Virus:PMMoV)などを含む。
【0041】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る制御装置10を含む採水システム1の概略構成図である。
図1を参照しながら、第1実施形態に係る制御装置10及び採水システム1の構成及び機能について主に説明する。
図1において、構成部同士を結ぶ実線は流体の経路を示し、構成部同士を結ぶ破線は電気信号の経路を示す。
【0042】
採水システム1は、例えば水処理インフラにおける処理水などを試料水として採水するために用いられるシステムである。採水システム1では、試料水として採水される流体は、配管2を一方向に流れる。例えば、このような流体の水質は、時間によって変化するとする。配管2は、採水システム1において主要な流路を構成してもよいし、主要な流路から分岐したバイパス流路を構成してもよい。配管2の側面には、着脱式のバルブ3が取り付けられる。着脱式のバルブ3から採水容器4まで連続して配置される配管によって流路5が構成される。採水システム1では、配管2によって構成される流路から着脱式のバルブ3及び流路5を介して採水容器4へと試料水が採水される。このとき、試料水は、流路5上でバルブ3と採水容器4との間に配置される制御装置10によって採水容器4へと引き込まれる。
【0043】
図2は、
図1の制御装置10の概略構成を示す機能ブロック図である。
図1及び
図2を参照しながら、制御装置10の構成及び機能について主に説明する。制御装置10は、測定部11、調整部12、入力部13、出力部14、記憶部15、及び制御部16を有する。
【0044】
測定部11は、流路5を流れる試料水の流量及び流速の少なくとも一方を測定する。測定部11は、測定した情報を制御部16に送信する。本明細書において、「流量」は、例えば流路5を構成する配管を単位時間あたりに通過する試料水の体積を意味し、L/sec又はm3/secの単位で表される。「流速」は、例えば流路5を構成する配管の断面積で流量を除算したものを意味し、m/secの単位で表される。例えば、測定部11は、流路5において調整部12の下流側に配置され、かつ試料水の流量を測定する流量計11aを含む。これに限定されず、測定部11は、流路5上に配置され、かつ試料水の流速を測定する流速計を含んでもよい。
【0045】
調整部12は、制御部16から受信した制御信号に基づいて、流路5を流れる試料水の流速を調整する。流路5を構成する配管が同一のものであり内径が一定であれば、調整部12は、流路5を流れる試料水の流速を調整することでその流量を調整することになる。例えば、調整部12は、流路5において流量計11aの上流側に配置され、かつ試料水の流速を調整する送液ポンプ12aを含む。
【0046】
送液ポンプ12aは、流路5を流れる試料水を下流側に送液する。送液ポンプ12aは、例えば、軟質チューブをローラーでしごいて送液するペリスタポンプ(登録商標)であってもよいし、所定の試料水を送液可能な他の任意のポンプであってもよい。送液ポンプ12aの形式として、加圧及び吸引のいずれか一方が試料水の性質によって選択されてもよい。調整部12は、試料水に応じて加圧及び吸引形式の送液ポンプ12aのいずれか一方に組み換え可能に構成されてもよい。
【0047】
入力部13は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。例えば、入力部13は、物理キー、静電容量キー、出力部14のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、及び音声入力を受け付けるマイクなどを含むが、これらに限定されない。
【0048】
出力部14は、ユーザに対して情報を出力する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、出力部14は、情報を画像で出力するディスプレイ、及び情報を音声で出力するスピーカなどを含むが、これらに限定されない。
【0049】
記憶部15は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部15は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部15は、制御装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部15は、システムプログラム及びアプリケーションプログラムなどを記憶する。記憶部15は、制御装置10に内蔵されるものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートによって接続される外付け型の記憶モジュールを含んでもよい。
【0050】
制御部16は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部16は、制御装置10を構成する各構成部と通信可能に接続され、制御装置10全体の動作を制御する。
【0051】
制御部16は、測定部11により測定された試料水の流量及び流速の少なくとも一方に基づいて調整部12を制御する。より具体的には、制御部16は、測定部11から送信された測定に関する情報を受信する。制御部16は、受信した測定に関する情報に基づいて調整部12に制御信号を送信する。制御部16は、流路5において試料水の流速が所定の範囲に維持されるように調整部12を制御する。
【0052】
より具体的には、制御部16は、流量計11aにより測定された試料水の流量に基づいて送液ポンプ12aを制御する。制御部16は、流量計11aから送信された流量の情報を受信する。制御部16は、受信した流量の情報に基づいて送液ポンプ12aに制御信号を送信する。制御部16は、流路5において試料水の流速が所定の範囲に維持されるように送液ポンプ12aを制御する。すなわち、制御部16は、送液ポンプ12aと流量計11aとを互いに関連させながら、流路5を流れる試料水の採水速度及び瞬時的な採水量を調整する。
【0053】
例えば、制御部16は、あらかじめ取得した配管情報及び採水情報に基づいて所定の範囲を算出してもよい。本明細書において、「配管情報」は、例えば流路5を構成する配管の内径などを含む。「採水情報」は、採水期間、採水量の目標値、及び採水量に関する目標値からの許容範囲などを含む。
【0054】
本明細書において、「所定の範囲」は、例えばあらかじめ設定された採水期間で設定された採水量の目標値に達するように流路5上で試料水を定常的に流すときの流速の範囲を含む。例えば、1日にわたり少量ずつ最大で1000Lの採水量を達成したいとき、1秒あたりに必要となる平均的な流量が算出可能である。加えて、流路5を構成する配管の内径に基づいて平均的な流速が算出可能である。例えば、所定の範囲は、このような平均的な流速に対して、あらかじめ設定された採水量に関する目標値からの許容範囲に基づき定められる誤差の範囲として算出されてもよい。例えば、制御部16は、試料水の流速が所定の範囲に維持されながら、試料水が流路5を1日にわたり常時流れるように調整部12を制御してもよい。
【0055】
制御部16は、算出された上記の平均的な流速に対する現在の流速の変化量をリアルタイムに検知しながら、あらかじめ設定された採水期間で設定された採水量の目標値に達するように調整部12を制御してもよい。制御部16は、現在の流速を、測定部11から送信された測定に関する情報に基づいて算出してもよい。
【0056】
例えば、制御部16は、流路5における試料水の現在の流速が平均的な流速から低下して所定の範囲を下回ったことをリアルタイムに検知すると、配管2から採水容器4へと試料水を引き込む力を強めるために、調整部12に含まれる送液ポンプ12aの動力を上げてもよい。例えば、制御部16は、低下した現在の流速を平均的な流速に増加させるために必要となる送液ポンプ12aの動力の増加量を算出してもよい。例えば、制御部16は、流路5における試料水の現在の流速が平均的な流速から増加して所定の範囲を上回ったことをリアルタイムに検知すると、配管2から採水容器4へと試料水を引き込む力を弱めるために、調整部12に含まれる送液ポンプ12aの動力を下げてもよい。例えば、制御部16は、増加した現在の流速を平均的な流速に低下させるために必要となる送液ポンプ12aの動力の減少量を算出してもよい。
【0057】
制御部16は、上記のような平均的な流速からの変化量に基づく制御に限定されず、任意の方法で調整部12を制御してもよい。例えば、制御部16は、現在までの総採水量の単位時間あたりの変化量をリアルタイムに検知しながら、あらかじめ設定された採水期間で設定された採水量の目標値に達するように調整部12を制御してもよい。制御部16は、現在までの総採水量の単位時間あたりの変化量を、測定部11から送信された測定に関する情報に基づいて算出してもよい。
【0058】
図1のように配管2から流路5を経由して採水容器4に試料水が回収される場合、試料水に含まれる濁質及び沈殿物などにより、流路5を構成する配管が閉塞される可能性がある。このような配管の閉塞を抑制するために、流路5を流れる試料水の流速が1m/sec以上となるように流路5を構成する配管及び調整部12が設計されてもよい。例えば、流路5を構成する配管の内径が15mmの場合、流速1m/secに対応する流量は、約170mL/sec(約10L/min)である。したがって、第1実施形態では、所定の範囲は、1m/sec以上の範囲に含まれてもよい。
【0059】
図3は、本開示の第1実施形態に係る制御方法を説明するためのフローチャートである。
図3を参照しながら、
図1の制御装置10を用いて実行される制御方法について主に説明する。
【0060】
ステップS100では、制御装置10の制御部16は配管情報を取得する。例えば、このような配管情報は、ユーザにより入力部13を用いて入力され、入力部13から制御部16へと送信されてもよい。
【0061】
ステップS101では、制御部16は採水情報を取得する。例えば、このような採水情報は、ユーザにより入力部13を用いて入力され、入力部13から制御部16へと送信されてもよい。
【0062】
ステップS102では、制御部16は、ステップS100において取得した配管情報及びステップS101において取得した採水情報に基づいて所定の範囲を算出する。
【0063】
ステップS103では、制御部16は、測定部11を用いて流路5を流れる試料水の流量及び流速の少なくとも一方を測定する。
【0064】
ステップS104では、制御部16は、ステップS103において測定された試料水の流量及び流速の少なくとも一方に基づいて流路5を流れる試料水の流速を制御する。制御部16は、ステップS104において、試料水の流速がステップS102において算出した所定の範囲に維持されるように調整部12を制御する。
【0065】
図4Aは、制御装置10を含む
図1の採水システム1の第1変形例を示す概略構成図である。
図4Bは、制御装置10を含む
図1の採水システム1の第2変形例を示す概略構成図である。
図4A及び
図4Bにおいて、構成部同士を結ぶ実線は流体の経路を示し、構成部同士を結ぶ破線は電気信号の経路を示す。上記では、採水システム1は、配管2から採水容器4へと試料水を回収すると説明したが、これに限定されない。
【0066】
採水システム1は、試料水を回収する採水容器4に代えて、試料水に含まれるウイルス粒子などを流路5において捕獲するフィルタ6を有してもよい。フィルタ6は、流路5を流れる試料水をろ過する。フィルタ6は、流路5において着脱式のバルブ3よりも下流側に配置される。フィルタ6は、例えば、ウイルス粒子などを吸着させて回収することが可能な陰電荷膜を含んでもよい。フィルタ6を透過した試料水は排水されてもよい。
【0067】
図4Aに示す変形例では、調整部12に含まれる送液ポンプ12aは、流路5上で試料水をろ過するフィルタ6の上流側に配置される加圧ポンプであってもよい。送液ポンプ12aは、フィルタ6の上流側で加圧状態を作り出すことによりフィルタ6へと試料水を供給してもよい。すなわち、
図4Aに示す変形例では、加圧ろ過が行われてもよい。このとき、フィルタ6は、流路5において送液ポンプ12a及び流量計11aよりも下流側に配置される。
【0068】
図4Bに示す変形例では、調整部12に含まれる送液ポンプ12aは、流路5上で試料水をろ過するフィルタ6の下流側に配置される吸引ポンプであってもよい。送液ポンプ12aは、フィルタ6の下流側で減圧状態を作り出すことによりフィルタ6へと試料水を供給してもよい。すなわち、
図4Bに示す変形例では、吸引ろ過が行われてもよい。このとき、フィルタ6は、流路5において送液ポンプ12a及び流量計11aよりも上流側に配置される。
【0069】
図5は、制御装置10を含む
図1の採水システム1の第3変形例を示す概略構成図である。
図5において、構成部同士を結ぶ実線は流体の経路を示し、構成部同士を結ぶ破線は電気信号の経路を示す。
図5に示す第3変形例では、採水システム1の流路5は、送液ポンプ12a及び流量計11aの下流側で第1流路5a及び第2流路5bに分岐する。第1流路5a側には第1採水容器4aが配置される。第2流路5b側には第2採水容器4bが配置される。
【0070】
制御装置10は、
図2に示す構成部に加えて切替部17を有してもよい。切替部17は、流路5において測定部11及び調整部12よりも下流側に配置されてもよい。より具体的には、切替部17は、流路5において、送液ポンプ12a及び流量計11aよりも下流側であって、かつ第1流路5a及び第2流路5bへの分岐点に配置されてもよい。切替部17は、制御部16から受信した制御信号に基づいて、分岐した第1流路5a及び第2流路5bのいずれか一方に試料水の流れを切り替える。
【0071】
例えば、切替部17は、第1流路5aにおいて分岐点直後に配置される第1電磁弁と、第2流路5bにおいて分岐点直後に配置される第2電磁弁と、を含んでもよい。切替部17は、このような構成に限定されず、試料水の流れを切り替えることが可能な任意の機構を含んでもよい。
【0072】
例えば、制御部16は、上述した制御方法に基づいて調整部12を制御しながら、流路5から第1流路5aへと試料水を常時流す。このとき、制御部16は、第2流路5b側の第2電磁弁を閉状態にしたまま、第1流路5a側の第1電磁弁を開状態に維持する。第1流路5aを流れる試料水は、第1採水容器4aにより回収される。
【0073】
制御部16は、ユーザによりあらかじめ設定された採水期間に達したと判定すると切替部17を制御し、第1流路5aから第2流路5bへと試料水の流れを切り替える。例えば、制御部16は、第1流路5a側の第1電磁弁を開状態から閉状態へと切り替え、第2流路5b側の第2電磁弁を閉状態から開状態へと切り替える。制御部16は、上述した制御方法に基づいて調整部12を制御しながら、流路5から第2流路5bへと試料水を常時流す。第2流路5bを流れる試料水は、第2採水容器4bにより回収される。
【0074】
例えば、水質管理者としてのユーザは、自身が所望する試料水の回収時間に応じて採水期間を入力部13により入力する。ユーザが試料水に関して日ごとの水質挙動を把握したいと所望し、例えば午前9時に試料水を回収する場合、ユーザは、9:00から翌日の8:59までを採水期間として指定してもよい。制御部16は、ユーザにより指定された9:00から翌日の8:59までの試料水を回収できるように採水期間を設定する。制御部16は、ユーザにより指定された例えば9:00から翌日の8:59までの採水期間で第1流路5aを介して第1採水容器4aにより採水を行ってもよい。第1採水容器4aによる採水が終了すると、制御部16は、翌日の9:00から翌々日の8:59までの採水期間で第2流路5bを介して第2採水容器4bにより続けて採水を行ってもよい。
【0075】
採水期間はこれに限定されず、ユーザによる指定に基づいて任意に設定されてもよい。制御部16は、ユーザにより指定された例えば0:00から23:59までの採水期間で第1流路5aを介して第1採水容器4aにより採水を行ってもよい。第1採水容器4aによる採水が終了すると、制御部16は、翌日の0:00から23:59までの採水期間で第2流路5bを介して第2採水容器4bにより続けて採水を行ってもよい。
【0076】
以上のような第1実施形態によれば、試料水の水質変動の適切な把握に寄与することができる。例えば、制御装置10は、流路5を流れる試料水の流速が所定の範囲に維持されるように調整部12を制御する。このような制御装置10による制御によって、採水システム1は、試料水の流速及び流量を定常的に維持しながら長期にわたって採水処理を実行することができる。採水システム1は、試料水を少量ずつ定常的に採水しながら長期にわたって採水量の目標値を達成することも可能となる。
【0077】
したがって、採水システム1は、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む試料水を漏れなく適切に回収することができる。採水システム1による上記のような採水方法によって、試料水の水質に関する突発的な変動を検出したり、ワーストケースを検出したりすることも可能となる。採水時に発生した水質の最悪条件が試料水に反映され、最悪の事態によってもたらされる質的リスクを逃さないことが可能となる。採水システム1は、目的とする流体全体の汚染状況を反映した、代表的サンプル及び平均的サンプルとして試料水を回収することができる。結果として、試料水の水質変動及び水処理システムの制御性能を適切に把握することが容易となる。
【0078】
例えば、採水システム1は、膜ろ過水、処理プロセス、ろ過して逆洗、及び処理プロセスの運転変更などに伴う物理的又は機械的な衝撃に伴う流体の水質への影響を捉えることに寄与することができる。採水システム1は、膜の破断を見逃さず、膜の膨張に伴う孔径の変動及び破断といった水質の品質保証に関わる管理にも用いることができる。
【0079】
採水システム1は、例えば1000Lなどの大きな採水量を達成しつつ、クリプトスポリジウム及びジアルジアなどを含む原虫に限定されることなく、試料水の採水処理を実行することができる。
【0080】
測定部11が流量計11aを含むことで、制御装置10は、流速が所定の範囲に維持されるように調整部12を制御するときに、流量計11aにより測定された流量を参照しながら制御処理を実行することができる。
【0081】
調整部12が試料水の流速を調整する送液ポンプ12aを含むことで、採水システム1は、流路5上でより大きな流速及び流量を達成することが可能である。したがって、試料水に含まれる濁質及び沈殿物などによる、流路5を構成する配管の閉塞が抑制される。例えば、所定の範囲が1m/sec以上の範囲に含まれることで、このような効果が顕著になる。採水システム1では、送液ポンプ12aを使用することにより、試料水を下流側に送るために十分な圧力を確保しやすくなる。
【0082】
調整部12がフィルタ6の下流側に配置される吸引ポンプを含むことで、採水システム1は、流路5上に配置されるフィルタ6を用いて吸引ろ過を行うことができる。
【0083】
調整部12がフィルタ6の上流側に配置される加圧ポンプを含むことで、採水システム1は、流路5上に配置されるフィルタ6を用いて加圧ろ過を行うことができる。
【0084】
制御装置10は、切替部17を有することで、採水終了後に試料水の測定が行われ、時間ごと、日ごと、及び月ごとなどの定期的なモニタリングが行われる場合に、試料水の流路を自動的に切り替えることが可能となる。このとき、ユーザは、採水に使用されていない流路側に配置されているフィルタ、容器、及び薬剤などの消耗品を交換することもできる。
【0085】
制御部16が、試料水が流路5を1日にわたり常時流れるように調整部12を制御することで、採水システム1は、バルブ3を介して得られた試料水を、例えば1日という所定期間ごとに採水容器4に回収することも可能となる。例えば、採水システム1は、試料水の所定期間ごとの採水を365日継続して、時間ごと、日ごと、及び月ごとなどの変動を長期的に評価するために用いることも可能である。
【0086】
バルブ3は、着脱式であることで、採水システム1による採水処理が実行されていないときに取り外して洗浄可能である。
【0087】
第1実施形態に係る採水システム1において、各構成部は着脱可能に構成されていてもよい。着脱可能に構成されていることにより、使用しない構成部については、取り外して洗浄するなどの作業を行うことができる。
【0088】
(第2実施形態)
図6は、本開示の第2実施形態に係る制御装置10を含む採水システム1の概略構成図である。
図6を参照しながら、第2実施形態に係る制御装置10及び採水システム1の構成及び機能について主に説明する。
図6において、構成部同士を結ぶ実線は流体の経路を示し、構成部同士を結ぶ破線は電気信号の経路を示す。
【0089】
第2実施形態に係る採水システム1は、制御装置10の調整部12が送液ポンプ12aに代えて絞り弁12bを含む点で第1実施形態と相違する。第2実施形態に係る採水システム1では第1実施形態に係る採水システム1と異なり、採水速度が小さく、流路5に沈殿が生じる場合を想定している。より具体的には、流路5を流れる試料水の流速が1m/secよりも小さくなる場合を想定している。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が第2実施形態に係る制御装置10及び採水システム1においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0090】
第2実施形態に係る制御装置10の調整部12は、送液ポンプ12aに代えて、流路5上に配置され、かつ試料水の流速を調整する絞り弁12bを含む。例えば、絞り弁12bは、流量計11aと一体的に構成される。すなわち、第2実施形態では、測定部11と調整部12とは、一の部品として一体的に構成されてもよい。これに限定されず、測定部11と調整部12とは、第1実施形態と同様に異なる部品として構成されてもよい。すなわち、絞り弁12bは、流量計11aとは別部品として構成されてもよい。
【0091】
絞り弁12bは、絞り開度を変えることによって、下流側に流れる試料水の流量及び流速を無段階に調整可能な弁である。絞り弁12bと一体化した流量計11aは、流量測定機能を有し、絞り弁12bを通過する試料水の流量を測定可能である。
【0092】
制御部16は、流量計11aにより測定された試料水の流量に基づいて絞り弁12bを制御する。より具体的には、制御部16は、流量計11aから送信された流量の情報を受信する。制御部16は、受信した流量の情報に基づいて絞り弁12bに制御信号を送信する。制御部16は、流路5において試料水の流速が所定の範囲に維持されるように絞り弁12bを制御する。より具体的には、制御部16は、絞り弁12bにおける絞り開度を調整することにより、試料水の下流側への流速及び流量を調整する。制御部16は、絞り弁12bと流量計11aとを互いに関連させながら、流路5を流れる試料水の採水速度及び瞬時的な採水量を調整する。
【0093】
制御部16は、算出された平均的な流速に対する現在の流速の変化量をリアルタイムに検知しながら、あらかじめ設定された採水期間で設定された採水量の目標値に達するように調整部12を制御してもよい。制御部16は、現在の流速を、測定部11から送信された測定に関する情報に基づいて算出してもよい。
【0094】
例えば、制御部16は、流路5における試料水の現在の流速が平均的な流速から低下して所定の範囲を下回ったことをリアルタイムに検知すると、調整部12に含まれる絞り弁12bの絞り開度を上げてもよい。例えば、制御部16は、低下した現在の流速を平均的な流速に増加させるために必要となる絞り弁12bの絞り開度の増加量を算出してもよい。例えば、制御部16は、流路5における試料水の現在の流速が平均的な流速から増加して所定の範囲を上回ったことをリアルタイムに検知すると、調整部12に含まれる絞り弁12bの絞り開度を下げてもよい。例えば、制御部16は、増加した現在の流速を平均的な流速に低下させるために必要となる絞り弁12bの絞り開度の減少量を算出してもよい。
【0095】
制御部16は、上記のような平均的な流速からの変化量に基づく制御に限定されず、任意の方法で調整部12を制御してもよい。例えば、制御部16は、現在までの総採水量の単位時間あたりの変化量をリアルタイムに検知しながら、あらかじめ設定された採水期間で設定された採水量の目標値に達するように調整部12を制御してもよい。制御部16は、現在までの総採水量の単位時間あたりの変化量を、測定部11から送信された測定に関する情報に基づいて算出してもよい。
【0096】
第2実施形態では、調整部12は、絞り弁12bに加えて、絞り弁12bを通過しない余剰の試料水を排水する排水流路12cを含んでもよい。排水流路12cは、絞り弁12bよりも上流側において、流路5から分岐するように流路5と連通して配置される。排水流路12cは、可能な限り絞り弁12bに近い位置で、流路5から分岐するように配置されることが好ましい。排水流路12cが流路5から分岐する位置が絞り弁12bに近いほど、流路5を流れる試料水を絞り弁12bに近い位置で排水することができる。このように排水流路12cが流路5から分岐する位置と絞り弁12bとが互いに近接して試料水の流量が少なくなる配管距離が短くなることで、沈殿が生じ得る配管距離を可能な限り短くすることができる。
【0097】
排水流路12cは、採水システム1による試料水の採水処理が実行されている間、絞り弁12bを通過しない余剰の試料水を排水する排水路として機能する。排水流路12cは、採水処理の後に、後述する洗浄部18から流路5に洗浄水が供給されている間、洗浄水を排水する排水路として機能する。
【0098】
第2実施形態に係る制御装置10は、
図2に示す構成部に加えて洗浄部18を有してもよい。洗浄部18は、絞り弁12b及び排水流路12cよりも上流側の流路5を洗浄水によって洗浄する。洗浄部18は、試料水に含まれる濁質及び沈殿物などによる、流路5を構成する配管の閉塞を抑制する。洗浄部18は、洗浄水の供給源18aと、当該供給源18aから延びる流路18bと、流路18b上に配置される電磁弁18cと、を含む。これらに加えて、洗浄部18は、供給源18aの下流側で流路18b上に配置され、供給源18aから洗浄水を送液するための任意のポンプを含んでもよい。
【0099】
流路18bは、バルブ3よりも下流側で流路5と合流して洗浄水を流入させるために供給源18aと流路5との間に配置されている。洗浄水は、採水システム1による試料水の採水処理が実行された後、流路5を洗浄するために供給される流体である。洗浄水は、例えば、塩素系又はオゾンによる消毒剤、還元剤、アルカリ剤、及び酸剤などを含んでもよい。流路18bは、可能な限りバルブ3に近い位置で流路5と合流するように配置されることが好ましい。流路18bが流路5と合流する位置がバルブ3に近いほど、洗浄水を流路5のより上流側から供給し、流路5を洗浄することが可能となる。一方で、排水流路12cが、可能な限り絞り弁12bに近い位置で配置されることで、洗浄水を流路5のより下流側まで供給し、流路5を洗浄することが可能となる。
【0100】
図7は、
図6の採水システム1により採水処理が実行されているときの流体の流れを示す
図6に対応する概略図である。採水システム1により採水処理が実行されているとき、制御部16は、洗浄部18の電磁弁18cを閉状態に維持する。これにより、
図7において流路18bが二点鎖線で示されているとおり、洗浄水は供給源18aから流路5へと流れない。
【0101】
一方で、採水システム1のバルブ3は、配管2に取り付けられたまま開状態となる。このとき、試料水は、配管2においてバルブ3が取り付けられている採水地点での残存圧力を利用して、流路5の下流側へと送液される。制御部16は、上述したとおり、流路5において試料水の流速が所定の範囲に維持されるように絞り弁12bを制御する。試料水は、一部が絞り弁12bを通過して下流側の採水容器4へと流れる。絞り弁12bを通過しない余剰の試料水は、排水流路12cを介して採水システム1の外部に排水される。
【0102】
図8は、
図6の採水システム1による採水処理の後に洗浄処理が実行されているときの流体の流れを示す
図6に対応する概略図である。採水システム1により採水処理の後に洗浄処理が実行されているとき、制御部16は、絞り弁12bの絞り開度をゼロにして絞り弁12bを閉状態に維持する。加えて、採水システム1のバルブ3は、配管2に取り付けられたまま閉状態となるか、又は配管2から取り外される。以上により、
図8において流路5が二点鎖線で示されているとおり、試料水は配管2から採水容器4へと流れない。
【0103】
一方で、制御部16は、洗浄部18の電磁弁18cを開状態に維持する。これにより、洗浄水は、供給源18aから流路18bを介して流路5に供給され、流路5を洗浄する。洗浄水は、流路5の下流側に流れ、排水流路12cを介して採水システム1の外部に排水される。
【0104】
図9は、制御装置10を含む
図6の採水システム1の変形例を示す概略構成図である。
図9において、構成部同士を結ぶ実線は流体の経路を示し、構成部同士を結ぶ破線は電気信号の経路を示す。
図9に示す変形例では、採水システム1の流路5は、絞り弁12b及び流量計11aの下流側で第1流路5a及び第2流路5bに分岐する。第1流路5a側には第1採水容器4aが配置される。第2流路5b側には第2採水容器4bが配置される。
【0105】
制御装置10は、
図2に示す構成部に加えて第1実施形態と同様に切替部17を有してもよい。切替部17に関する構成、配置、機能、及び効果などの第1実施形態での説明は、第2実施形態に係る制御装置10の切替部17に対しても同様に当てはまる。
【0106】
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に試料水の水質変動の適切な把握に寄与することができる。制御装置10は、調整部12が絞り弁12bと排水流路12cとを含むことで、送液ポンプ12aなどのポンプを用いることなく、試料水の流速を所定の範囲に維持することが可能である。
【0107】
制御装置10は、洗浄部18を有することで、採水システム1による採水処理により試料水に含まれる濁質及び沈殿物などが流路5を構成する配管に蓄積したとしても、これらを洗い流すことができる。したがって、試料水に含まれる濁質及び沈殿物などによる、流路5を構成する配管の閉塞が抑制される。
【0108】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0109】
例えば、本開示は、上述した制御装置10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0110】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0111】
例えば、上述した一実施形態に係る採水システム1に基づいて、微生物の生死に関わらず、その存在個体数に基づいて汚染状況及び除去実態が把握されてもよい。
【0112】
採水システム1では、水道、食品、及び飲料水などを含む上記の様々な分野への応用を可能とするために、試料水の採水期間は可変であってもよい。採水のためのバルブ3の形状は可変であってよい。
【符号の説明】
【0113】
1 採水システム
2 配管
3 バルブ
4 採水容器
4a 採水容器
4b 採水容器
5 流路
5a 第1流路
5b 第2流路
6 フィルタ
10 制御装置
11 測定部
12 調整部
12a 送液ポンプ
12b 絞り弁
12c 排水流路
13 入力部
14 出力部
15 記憶部
16 制御部
17 切替部
18 洗浄部
18a 供給源
18b 流路
18c 電磁弁