(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】共有ポリマー抗原コンジュゲート化粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20221215BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221215BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221215BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221215BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20221215BHJP
C12N 11/06 20060101ALN20221215BHJP
C12N 11/08 20200101ALN20221215BHJP
C12N 11/04 20060101ALN20221215BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20221215BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20221215BHJP
A61K 47/59 20170101ALN20221215BHJP
A61K 47/60 20170101ALN20221215BHJP
A61K 47/69 20170101ALN20221215BHJP
A61K 47/32 20060101ALN20221215BHJP
A61K 47/02 20060101ALN20221215BHJP
A61K 9/10 20060101ALN20221215BHJP
A61K 9/14 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
A61K39/00 G ZNA
A61P37/06
A61P37/08
A61K47/34
A61K9/51
C12N11/06
C12N11/08
C12N11/04
C07K14/47
C12N5/0783
A61K47/59
A61K47/60
A61K47/69
A61K47/32
A61K47/02
A61K9/10
A61K9/14
(21)【出願番号】P 2018553042
(86)(22)【出願日】2016-12-22
(86)【国際出願番号】 US2016068423
(87)【国際公開番号】W WO2017112899
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-20
(32)【優先日】2015-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515245424
【氏名又は名称】クール ファーマシューティカルズ ディベロップメント カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ,ダニエル アール.
(72)【発明者】
【氏名】プイシス,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン,ジェームス
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0209293(US,A1)
【文献】特表2011-500569(JP,A)
【文献】The selective immobilization of curcumin onto the internal surface of mesoporous hollow silica particles by covalent bonding and its controlledrelease,Journal of Materials Chemistry,2011年,Vol. 21,p. 3641-3645,DOI: 10.1039/c0jm03846f
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61P 37/00
A61K 47/00
C12N 11/06
C12N 11/08
C12N 11/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
―80mVから-30mVの間の負のゼータ電位を有し、平均直径が約0.3μmから約5μmの担体粒子に共有結合した1又は複数の抗原を含む組成物であって、前記1又は複数の抗原が、前記粒子の内表面への共有結合により、前記粒子中に封入されて
おり、
前記粒子が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ乳酸、又はポリグリコール酸を含み、前記抗原が自己免疫抗原である、組成物。
【請求項2】
前記抗原が、前記粒子の表面にさらに結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粒子が約50:50、80:20から約100:0のモル比を有するポリマー又はコポリマーを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粒子が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記1又は複数の抗原が、前記担体粒子に直接的に共有結合している、請求項1から
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
―80mVから-30mVの間の負のゼータ電位を有
し、平均直径が約0.3μmから約5μmの担体粒子に共有結合した1又は複数の抗原を含む有効量の組成物であって、前記1又は複数の抗原が、前記粒子の内表面への共有結合により、前記粒子中に封入されて
おり、
前記粒子が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ乳酸、又はポリグリコール酸を含み、前記抗原が自己免疫抗原である、組成物。
【請求項7】
対象疾患又は状態が、自己免疫疾患
である、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
当該組成物が静脈内投与される、請求項
6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
調節性T細胞を誘導する方法であって、前記T細胞を、請求項1に記載の組成物の有効量を用いて処理することを含む、方法に使用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
負のゼータ電位を有する寛容化免疫改変粒子(TIMP)であって、前記粒子の内表面への共有結合により、前記粒子中に封入された1又は複数の抗原を有するTIMPの調製のための方法であって、
前記粒子が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ乳酸、又はポリグリコール酸を含み、前記抗原が自己免疫抗原であり、
a)1又は複数の担体ポリマーを、1又は複数の抗原と共有結合で連結して、担体ポリマー-抗原コンジュゲートを形成することと、
b)前記担体ポリマー-抗原コンジュゲートを、TIMPを形成するのに有効な条件下で溶液と接触させることと、
を含み、
負のゼータ電位を有する前記TIMPが形成され、前記1又は複数の抗原が前記TIMP中に封入される、
方法。
【請求項11】
前記担体ポリマーが、共重合によって形成される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗原が、前記粒子の表面にさらに結合している、請求項
6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2015年12月23日に出願された米国仮特許出願第62/387,183号及び2016年2月5日に出願された米国仮特許出願第62/292,098号の利益を主張し、それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの記載
[0002] 本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータで読み取り可能な形式のコピー(ファイル名:COUR-011_00US_Seqlist.txt、データ記録:2015年12月23日、ファイルサイズ1.16MB)。
【背景技術】
【0003】
[0003] 炎症性疾患及び障害は、異常な、又はそうでなければ脱調節された炎症応答が、疾患の病因又は重症度に寄与する状態である。例としては、1型糖尿病及びセリアック病などの自己免疫疾患が挙げられる。
【0004】
[0004] これらの疾患の多くは、組織傷害又は他の損傷の部位での単核細胞浸潤を特徴とする。これらの浸潤において観察されている単核細胞の例としては、リンパ球、特に、Tリンパ球、及び単球、マクロファージ、樹状細胞、ミクログリア細胞その他などの単核食細胞系(MPS細胞)の細胞が挙げられる。
【0005】
[0005] 単核細胞浸潤物中に観察される細胞の多くは、これらの異常な炎症応答において役割を果たすことが疑われる。例えば、多発性硬化症などの疾患では、CD4+T細胞が、病理学的自己免疫応答において中心的な役割を果たすことが知られている。T細胞活性化におけるより早い時点では、樹状細胞及び他のMPS細胞が、CD4+T細胞の活性化を担い得る。MPS細胞は、食作用により炎症に寄与することもできるが、少なくとも一部の炎症性疾患では、そのような細胞がCD4+T細胞の非存在下でこれを行うことができるかどうかは明確ではない。
【0006】
[0006] 末梢血単球は、ある特定の細胞表面分子の発現のあるなしに応じて2つの群のうちの1つに分類することができる。特に、ヒト「在住単球」又は「成熟単球」は、CD14loCD16+表現型を有すると理解される(マウスの対応物はCX3CR1hiCCR2-Gr1-である)。別の群の細胞である「炎症性単球」又は「未熟単球」は、CD14+CD16-表現型を有すると理解される(マウス対応物はCX3CR1loCCR2+Gr1+である)(Geissmann F.ら、2003 Immunity 19: 71-82)。
【0007】
[0007] 重要なことに、後者は、それらが骨髄由来末梢血細胞から炎症組織中に移動することが観察されるという意味で「炎症」であると理解されるが、これらの細胞は、直接的に、又は他の細胞の作用を介して炎症を引き起こすとは示されていない。さらに、これらの細胞が分化する時に形成され得る様々なMPS細胞も、炎症を引き起こすことが示されていない。
【0008】
[0008] 望ましくない免疫応答と関連する障害における一般的な長期免疫抑制のための従来の臨床戦略は、広く作用する免疫抑制薬、例えば、シクロスポリンA(CsA)、FK506(タクロリムス)及びコルチコステロイドなどのシグナル1ブロッカーの長期投与に基づくものである。高用量のこれらの薬物の長期的使用は、毒性副作用を有し得る。さらに、これらの薬物を許容することができる患者においても、生涯にわたる免疫抑制薬療法のための要件は、腫瘍、重大な感染、腎毒性及び代謝障害などの、重篤な副作用の有意なリスクを担持する。
【0009】
[0009] 抗原又はペプチドの細胞カップリングを含む、抗原特異的寛容を誘導する方法が開発されている。例えば、ある方法では、ペプチド誘導性細胞結合性寛容は、無菌条件下での疾患特異的自己抗原及びエチレンカルボジイミド(EDCI)カップリング試薬を用いる末梢血細胞の収集、分離及び処理、並びにその後のドナー/患者への再注入を含んでいた。このプロセスは費用がかかり、高度な専門医によって密接にモニタリングされる条件下で行われる必要があり、その手順を行うことができるいくつかの施設に限定される。ドナー細胞型としての赤血球の使用は、同種異系ドナーを誘導するための潜在的な供給源を拡張し、かくして、供給源細胞の供給を劇的に増加させ、輸血について認定された任意の設定へのこの療法の送達を潜在的に拡張する。これらの手法は、供給源細胞の供給に関して有意な制限を有し、ドナー細胞に対する免疫応答を最小化するために組織型マッチングを必要とする。さらに、EDCIにより自己抗原をカップリングするための細胞の局部処置は、有意な品質制御問題を提示する。さらに、これらの手法はまた、免疫寛容が求められる病理学的抗原の少なくともいくらかの知識を必要とする。
【0010】
[0010] ヒト疾患において特異的抗原/エピトープは全般的にわかっていないため、抗原特異的寛容は、全般的に理想的ではない。さらに、抗原は対象間で変化し得る。したがって、抗原特異的手法が有効であるためには、それぞれ個々の患者がどの抗原を認識するかを決定することが必要であるか、又は投与前に可能なペプチドのライブラリーを粒子とカップリングさせることが必要である。
【0011】
[0011] 近年、供給源細胞の供給に関する要件をなくし、以前の腫瘍の組織型決定要件を回避するペプチドカップリング粒子が記載されている。その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2010/085509;US2012/0076831;及びUS2016/0166664を参照されたい。それにもかかわらず、粒子の外側にカップリングされた抗原の使用は、アナフィラキシーの増加を伴うことから、顕著な化学的、製造及び制御上の問題がある。
【0012】
[0012] 抗原が粒子内に封入されている場合、これらの有害事象は回避される。その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2013/192532;US2015/0209293;WO2015/023796;US2015/0190485;及びUS2015/0283218を参照されたい。さらに、サイズ及び電荷を変化させて、特異的抗原に対する寛容性を増強させることができる。しかしながら、ナノ粒子内への抗原封入に関する問題は、抗原の担持量に加えて抗原の放出を制御する能力である。現在、それぞれの粒子に進入する抗原の量を正確に制御することはできない。同様に、放出される抗原の量も、厳密に制御されず、より遅い制御放出が望ましいある特定の条件下では、バースト放出効果の可能性をもたらす。本発明は、粒径及び抗原封入並びに抗原放出を正確に制御することができるプロセスを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
[0013] 本開示は、封入された抗原が内表面に共有結合した寛容化免疫改変粒子(TIMP)に関する。内部粒子表面への共有的カップリングは、同時に、抗原バースト効果のリスクを軽減し、表面結合ペプチドと関連する望ましくない副作用を回避しながら、粒径及び抗原封入効率の繊細な制御を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[0014] 本開示は、負のゼータ電位を有する担体粒子に共有結合した1又は複数の抗原を含む組成物であって、前記1又は複数の抗原が前記粒子中に封入されている、前記組成物を提供する。
【0015】
[0015] 本開示は、ポリマー担体粒子内に封入された1又は複数の抗原を含む組成物であって、前記1又は複数の抗原が、前記ポリマー担体粒子を構成するポリマーに共有結合している、前記組成物を提供する。
【0016】
[0016] 一部の実施形態では、組成物は、非コンジュゲート化担体ポリマーをさらに含む。一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0017】
[0017] 一部の実施形態では、本発明は、1又は複数の抗原性ペプチドに共有結合した担体粒子(例えば、PLG粒子)を含む組成物(例えば、抗原特異的寛容の誘導のための)であって、前記1又は複数の抗原性ペプチドが、前記担体粒子中に封入された、前記組成物を提供する。ある特定の実施形態では、担体粒子は、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)粒子である。他の実施形態では、担体粒子は、PLURONIC(登録商標)安定化ポリプロピレンスルフィド粒子である。
【0018】
[0018] 一部の実施形態では、本発明は、負のゼータ電位を有する担体粒子にカップリングされた抗原を含む組成物を提供する。一部の実施形態では、粒子のゼータ電位は、約-100mV未満である。一部の実施形態では、粒子のゼータ電位は、約-100mVから約-15mVの間である。一部の実施形態では、粒子のゼータ電位は、約-100mVから約-75mVの間である。一部の実施形態では、粒子のゼータ電位は、約-50mVから約-20mVの間である。一部の実施形態では、粒子は、約50:50、80:20から約100:0のモル比を有するコポリマーである。一部の実施形態では、コポリマーの比は、限定されるものではないが、ポリスチレン:ポリ(ビニルカルボキシレート)/80:20、ポリスチレン:ポリ(ビニルカルボキシレート)/90:10、ポリ(ビニルカルボキシレート):ポリスチレン/80:20、ポリ(ビニルカルボキシレート):ポリスチレン/90:10、ポリ乳酸:ポリグリコール酸/80:20、又はポリ乳酸:ポリグリコール酸/90:10、又はポリ乳酸:ポリグリコール酸/50:50であってもよい。さらに他の実施形態では、粒子は、ポリスチレン粒子、カルボキシル化ポリスチレン粒子、PLURONIC(登録商標)安定化ポリプロピレンスルフィド粒子、又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である。一部の実施形態では、粒子は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である。
【0019】
[0019] 一部の実施形態では、粒子は、約0.1μmから約10μmの間の平均直径を有する。一部の実施形態では、粒子は、0.2μmから約2μmの間の平均直径を有する。一部の実施形態では、粒子は、約0.3μmから約5μmの間の平均直径を有する。一部の実施形態では、粒子は、約0.5μmから約3μmの間の平均直径を有する。一部の実施形態では、粒子は、約0.5μmから約1μmの間の平均直径を有する。一部の実施形態では、粒子は、約0.5μmの平均直径を有する。
【0020】
[0020] さらなる実施形態では、1又は複数の抗原は、自己免疫抗原、アレルゲン、対象に移植される組織上に発現される抗原、酵素置換療法のための酵素、又はアレルゲンの少なくとも一部を含む。一部の実施形態では、抗原は、ミエリン塩基性タンパク質、アセチルコリン受容体、内因性抗原、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、膵臓ベータ細胞抗原、インスリン、プロインスリン、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、コラーゲン11型、ヒト軟骨gp39、fp130-RAPS、プロテオリピドタンパク質、フィブリラリン、核小体低分子タンパク質、甲状腺刺激因子受容体、ヒストン、糖タンパク質gp70、ピルビン酸デヒドロゲナーゼデヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ(PCD-E2)、毛包抗原、アクアポリン4、デスモグレイン1、デスモグレイン3、ニコチンアセチルコリン受容体、A-グリアデン、及びヒトトロポミオシンアイソフォーム5、バヒアグラス花粉(BaGP)、桃アレルゲンPru p3、アルファs1-ケインミルクアレルゲン、Apig1セレリアレルゲン、Bere1ブラジルナッツアレルゲン、B-ラクトグロブリンミルクアレルゲン、ウシ血清アルブミン、Cor a 1.04ヘーゼルナッツアレルゲン、オボアルブミン卵アレルゲン、アドベイト、抗血友病因子、コージネート、エロクテート、組換え第VIII因子Fc融合タンパク質、リファクト、Novo VIIa、組換え第VII因子、エプタコグアルファ、ヘリキセート、モナニン、凝固因子IX、ウィレート、セレダーゼ、アルグルセラーゼ、セレザイム、イミグルセラーゼ、エレルソ、タリグルセラーゼアルファ、ファブラザイム、アガルシダーゼベータ、アルドラザイム、-I-イズロニダーゼ、マイオザイム、酸グルコシダーゼ、エラプラーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、ナグラザイムアリールスルファターゼB、又はN-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、マイオザイム、アルグルセラーゼ、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼ、アガルシダーゼベータ、1-イズロニダーゼ、酸グルコシダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、抗血友病因子、第VII因子、エプタコグアルファ、第IX因子、ミグルスタット、ロミプラスチム、エポテチンアルファ、プロテインC、ラロニダーゼ、ルミザイム、又は第VIII因子などの、酵素又は凝固因子置換において使用されるタンパク質療法の少なくとも一部を含む。
【0021】
[0021] さらなる実施形態では、1又は複数の抗原は、自己免疫抗原、対象に移植される組織上に発現される抗原、酵素置換療法のための酵素、又はアレルゲンを含む。非限定的な実施形態では、抗原は、例えば、ミエリン塩基性タンパク質、アセチルコリン受容体、内因性抗原、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、膵臓ベータ細胞抗原、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、コラーゲン11型、ヒト軟骨gp39、fp130-RAPS、プロテオリピドタンパク質、フィブリラリン、核小体低分子タンパク質、甲状腺刺激因子受容体、ヒストン、糖タンパク質gp70、ピルビン酸デヒドロゲナーゼデヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ(PCD-E2)、毛包抗原、アクアポリン4、デスモグレイン1、デスモグレイン3、ニコチンアセチルコリン受容体、A-グリアデン、及びヒトトロポミオシンアイソフォーム5、バヒアグラス花粉(BaGP)、桃アレルゲンPru p3、アルファs1-ケインミルクアレルゲン、Apig1セレリアレルゲン、Bere1ブラジルナッツアレルゲン、B-ラクトグロブリンミルクアレルゲン、ウシ血清アルブミン、Cor a 1.04ヘーゼルナッツアレルゲン、インスリン、プロインスリン、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、オボアルブミン卵アレルゲン、マイオザイム、アルグルセラーゼ、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼ、アガルシダーゼベータ、1-イズロニダーゼ、酸グルコシダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、抗血友病因子、第VII因子、エプタコグアルファ、第IX因子、ミグルスタット、ロミプラスチム、エポテチンアルファ、プロテインC、ラロニダーゼ、ルミザイム、又は第VIII因子などの、酵素又は凝固因子置換において使用されるタンパク質療法を含む。
【0022】
[0022] さらなる実施形態では、粒子は、1又は複数のエピトープを含む1又は複数の抗原に共有結合でカップリングされている。さらなる実施形態では、エピトープは、アレルギー、自己免疫疾患、酵素置換療法において使用される酵素、リソソーム蓄積症、又は炎症性疾患若しくは障害と関連する。一実施形態では、エピトープは、1型糖尿病、多発性硬化症、全身性狼瘡、視神経脊髄炎、特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、膜性腎症、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、重症筋無力症、ムコ多糖類貯留疾患、ガングリオシドーシス、低アルカリホスファターゼ血症、コレステロールエステル貯留疾患、高尿酸血症、成長ホルモン欠損、腎性貧血、ゴーシェ病、ファブリー病、フルラー病、ハンター病、マロトー・ラミー病、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病、静脈血栓症、電撃性紫斑病、ムコ多糖症VI、ポンペ病、セリアック病、又はクローン病若しくは大腸炎、例えば、潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患と関連する。さらなる実施形態では、エピトープは、マイオザイム、アルグルセラーゼ、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼ、アガルシダーゼベータ、1-イズロニダーゼ、酸グルコシダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、抗血友病因子、第VII因子、エプタコグアルファ、第IX因子、ミグルスタット、ロミプラスチム、エポテチンアルファ、プロテインC、ラロニダーゼ、ルミザイム、第VIII因子などの、酵素又は凝固因子置換において使用されるタンパク質療法内に見出される。さらなる実施形態では、エピトープは、表2又は表3に記載されるエピトープである。一実施形態では、粒子は、1つの疾患及び/又は障害と関連するただ1つのエピトープを含む抗原にカップリングされている。さらなる実施形態では、抗原は、同じ疾患及び/又は障害と関連する1より多いエピトープを含む。さらなる実施形態では、抗原は、異なる疾患及び/又は障害と関連する1より多いエピトープを含む。
【0023】
[0023] 一部の実施形態では、1又は複数の抗原は、コンジュゲート分子によって前記粒子に共有結合でカップリングされている。一部の実施形態では、1又は複数の抗原は、前記担体粒子に直接的に共有結合している。一部の実施形態では、1又は複数の抗原は、リンカーによって前記粒子に共有結合でカップリングされている。一部の実施形態では、コンジュゲート分子は、カルボジイミド化合物を含む。一部の実施形態では、コンジュゲート分子は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を含む。一部の実施形態では、リンカーは、限定されるものではないが、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル(ジメチルアジピミデート HCLなど)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレートなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネートなど)、及びビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)の二官能性誘導体、ビオチン化及びストレプトアビジン複合体化などの、様々な二官能性タンパク質カップリング剤を含んでもよい。特定のカップリング剤としては、ジスルフィド結合を提供する、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)及びN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)が挙げられる。
【0024】
[0024] 一部の実施形態では、1又は複数の抗原は、負の表面ゼータ電位を有する粒子中に封入されている。一部の実施形態では、粒子は生分解性である。
【0025】
[0025] 一部の実施形態では、本発明は、対象において抗原特異的寛容を誘導する方法であって、前記対象に、負のゼータ電位を有する担体粒子に共有結合でカップリングされた1又は複数の抗原を含む組成物の有効量を投与することを含み、前記1又は複数の抗原が前記粒子中に封入されており、前記粒子及び抗原が前記対象において前記抗原の寛容を誘導する、前記方法を提供する。
【0026】
[0026] 一部の実施形態では、本発明は、対象において抗原特異的寛容を誘導する方法であって、前記対象に、負のゼータ電位を有する担体粒子に共有結合した1又は複数の抗原を含む組成物の有効量を投与することを含み、前記1又は複数の抗原が前記粒子中に封入されている、前記方法を提供する。
【0027】
[0027] 一部の実施形態では、投与は、疾患又は状態を処置又は防止するために実施される。一部の実施形態では、投与は、前記抗原によって引き起こされる疾患又は状態の開始の前又は後に実施される。一部の実施形態では、疾患又は状態は、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー、移植拒絶、リソソーム蓄積症、酵素欠損、炎症応答及び高度免疫応答からなる群から選択される。一部の実施形態では、疾患又は状態は、多発性硬化症、1型糖尿病、喘息、食物アレルギー、環境アレルギー、セリアック病、クローン病又は潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、ムコ多糖類貯留障害、ガングリオシドーシス、低アルカリホスファターゼ血症、コレステロールエステル貯留疾患、高尿酸血症、成長ホルモン欠損、腎性貧血、血友病、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病、ゴーシェ病、ファブリー病、フルラー病、ポンペ病、ハンター病、マロトー・ラミー病及び前記抗原に対する過剰反応を軽減するために前記対象において前記抗原によって引き起こされる状態からなる群から選択される。一部の実施形態では、前記組成物は、投与後の前記対象における前記抗原のバースト放出を最小化するか又はなくす。一部の実施形態では、方法は、前記対象における前記組成物の前記投与を繰り返すことをさらに含む。
【0028】
[0028] さらなる実施形態では、粒子の投与は、エフェクターT細胞の活性化誘導死をもたらす。
【0029】
[0029] さらなる実施形態では、粒子の投与は、エフェクターT細胞のアネルギーをもたらす。
【0030】
[0030] さらなる実施形態では、粒子の投与は、エフェクターT細胞のアポトーシスをもたらす。
【0031】
[0031] さらなる実施形態では、粒子の投与は、エフェクターT細胞の、調節性T細胞への変換をもたらす。
【0032】
[0032] さらなる実施形態では、粒子の投与は、エフェクターT細胞の、FOXP3を発現する調節性T細胞への変換をもたらす。
【0033】
[0033] さらなる実施形態では、粒子の投与は、エフェクターT細胞の、FOXP3を発現しない調節性T細胞への変換をもたらす。
【0034】
[0034] さらなる実施形態では、粒子の投与は、抗原特異的と非特異的の両方の調節性T細胞の誘導及び拡張をもたらす。さらなる実施形態では、粒子の投与は、リンパ節及び脾臓中でのエフェクターT細胞の単離をもたらし、末梢部位に移動し、炎症を引き起こすその能力を阻害する。
【0035】
[0035] さらなる実施形態では、粒子の投与は、T細胞依存性抗体産生の下方調節をもたらす。
【0036】
[0036] ある特定の実施形態では、本発明は、対象におけるセリアック病を処置するための方法であって、前記対象に、負のゼータ電位を有する担体粒子に共有結合でカップリングされた抗原を含む組成物の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。ある特定の実施形態では、抗原は、グリアデン又はグリアデンエピトープである。一部の実施形態では、抗原は、配列番号1295~1724、配列番号1726~1766及び配列番号4986~5140からなる群から選択される1又は複数の抗原である。一部の実施形態では、抗原はグリアデンであり、抗原結合粒子は、約600~1500ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-30から約-80mVの合成後平均電荷を有する。一部の実施形態では、粒子は、約600~1200ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-40から約-70mVの合成後平均電荷を有する。ある特定の実施形態では、粒子は、約600μmの合成後平均サイズ及び約-50mVの合成後平均電荷を有する。さらなる実施形態では、粒子は、ポリスチレン粒子、カルボキシル化ポリスチレン粒子、PLURONIC(登録商標)安定化ポリプロピレンスルフィド粒子、又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である。
【0037】
[0037] 一部の実施形態では、本発明は、対象における糖尿病を処置する方法であって、前記対象に、負のゼータ電位を有する担体粒子に共有結合でカップリングされた抗原を含む組成物の有効量を投与することを含み、前記抗原が前記粒子中に封入されている、前記方法を提供する。一部の実施形態では、糖尿病は、I型糖尿病である。一部の実施形態では、糖尿病は、II型糖尿病である。
【0038】
[0038] 一部の実施形態では、抗原は、インスリン、プロインスリン、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)又はインスリン、プロインスリン、若しくはIGRPに由来するエピトープである。一部の実施形態では、抗原は、配列番号1767~1840、配列番号1842~1962、配列番号1964~2027、配列番号2029~2073、配列番号2075~2113、配列番号2115~2197、配列番号2199~2248、配列番号2250~2259、配列番号2261~2420、配列番号2422~2486、及び配列番号2489~2505からなる群から選択される1又は複数の抗原である。一部の実施形態では、抗原は、インスリンであり、抗原結合粒子は、約300~800ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-30から約-70mVの合成後平均電荷を有する。一部の実施形態では、粒子は、約350~600ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-40から約-60mVの合成後平均電荷を有する。一部の実施形態では、粒子は、約500ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-50mVの合成後平均電荷を有する。一部の実施形態では、抗原はプロインスリンであり、抗原結合粒子は、約300~800ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-30から約-70mVの合成後平均電荷を有する。ある特定の実施形態では、粒子は、約400~600ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-40から約-60mVの合成後平均電荷を有する。一部の実施形態では、粒子は、約570ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-45mVの合成後平均電荷を有する。一部の実施形態では、抗原はIGRPであり、抗原結合粒子は、約300~800ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-30から約-70mVの合成後平均電荷を有する。一部の実施形態では、粒子は、約400~700ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-40から約-60mVの合成後平均電荷を有する。一部の実施形態では、粒子は、約600ナノメートルの合成後平均サイズ及び約-40mVの合成後平均電荷を有する。ある特定の実施形態では、粒子はポリスチレン粒子、カルボキシル化ポリスチレン粒子、PLURONIC(登録商標)安定化ポリプロピレンスルフィド粒子、又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である。
【0039】
[0039] 一部の実施形態では、本発明は、酵素置換療法を受けている対象を処置する方法であって、前記対象に、負のゼータ電子を有する担体粒子に共有結合でカップリングされた1又は複数の抗原を含む組成物の有効量を投与することを含み、前記1又は複数の抗原が前記粒子中に封入されている、前記方法を提供する。一部の実施形態では、対象は、血友病、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病、ムコ多糖類貯留疾患、ガングリオシドーシス、低アルカリホスファターゼ血症、コレステロールエステル貯留疾患、高尿酸血症、成長ホルモン欠損、腎性貧血、ゴーシェ病、ファブリー病、フルラー病、ポンペ病、ハンター病、及びマロトー・ラミー病からなる群から選択される疾患の処置のために酵素置換療法を受けている。一部の実施形態では、抗原結合粒子は、アドベイト、抗血友病因子、コージネート、エロクテート、組換え第VIII因子Fc融合タンパク質、リファクト、Novo VIIa、組換え第VII因子、エプタコグアルファ、ヘリキセート、モナニン、凝固因子IX、ウィレート、セレダーゼ、アルグルセラーゼ、セレザイム、イミグルセラーゼ、エレルソ、タリグルセラーゼアルファ、ファブラザイム、アガルシダーゼベータ、アルドラザイム、-I-イズロニダーゼ、マイオザイム、酸グルコシダーゼ、エラプラーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、ナグラザイムアリールスルファターゼB、及びN-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼからなる群から選択される1又は複数の酵素を含む。一部の実施形態では、粒子は、ポリスチレン粒子、カルボキシル化ポリスチレン粒子、PLURONIC安定化ポリプロピレンスルフィド粒子、又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である。ある特定の実施形態では、粒子は、約80:20から約100:0のモル比を有するコポリマーである。ある特定の実施形態では、粒子は、ポリスチレン粒子、カルボキシル化ポリスチレン粒子、PLURONIC安定化ポリプロピレンスルフィド粒子、又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である。他の実施形態では、粒子は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子であり、約50:50のポリ乳酸:ポリグリコール酸のコポリマー比を有する。
【0040】
[0040] さらなる実施形態では、本発明の粒子の投与は、対象における好中球及び他の顆粒球の蓄積を防止する。さらなる実施形態では、本発明の粒子は、がんを有する対象に投与される。
【0041】
[0041] 一実施形態では、本発明の粒子の投与は、損傷した組織の再生を増加させる。さらなる実施形態では、粒子は、上皮細胞の再生を増加させる。さらなる実施形態では、粒子は、ニューロンの再ミエリン化を増加させる。別の実施形態では、対象は、自己免疫疾患を有する。さらに別の実施形態では、対象は、潰瘍性大腸炎、及び/又はクローン病を含む、炎症性腸疾患を有する。さらに別の実施形態では、対象は、多発性硬化症を有する。
【0042】
[0042] 一実施形態では、本発明の粒子の対象への投与は、投与後に前記対象中の前記抗原のバースト放出を最小化するか又はなくす。
【0043】
[0043] 一部の実施形態では、組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では、組成物は、皮下的、経口的、筋肉内的、リンパ管的、門脈的に、又はエアロゾルにより投与される。一実施形態では、負に荷電した粒子の投与は、対象において抗原特異的寛容を誘導する。一実施形態では、抗原特異的寛容を誘導する粒子は、アレルギー、自己免疫疾患、及び/又は炎症性疾患と関連する1又は複数のエピトープを含む。一実施形態では、エピトープは、表2又は表3に記載のものから選択される。一実施形態では、負に荷電した粒子は、ポリスチレン、ダイヤモンド、PLURONIC(登録商標)安定化ポリプロピレンスルフィド、又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子である。一実施形態では、粒子はカルボキシル化される。一実施形態では、粒子は、約-100mV未満のゼータ電位を有する。一部の実施形態では、粒子は、約-100mVから約-15mVの間のゼータ電位を有する。一部の実施形態では、粒子は、約-100mVから約-75mVの間のゼータ電位を有する。一部の実施形態では、粒子は、約-50mVから約-20mVの間のゼータ電位を有する。一実施形態では、粒子は、約0.1μmから約10μm、例えば、約0.2μmから約2μm又は約0.3μmから約5μm、又は0.5μmから約3μm又は約0.5μmから約1μmの平均直径を有する。
【0044】
[0044] 一実施形態では、対象は、自己免疫疾患を有する。一実施形態では、自己免疫疾患は、多発性硬化症、強皮症、I型糖尿病、関節リウマチ、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、レイノー症候群、シェーグレン症候群、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性心筋炎、炎症性腸疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、全身性狼瘡、視神経脊髄炎、特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、膜性腎症、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、重症筋無力症、セリアック病、潰瘍性大腸炎、又はクローン病である。一実施形態では、粒子は、完全長ポリペプチド又はその断片を含む。一実施形態では、粒子は、1又は複数のミエリン塩基性タンパク質エピトープを含む。一実施形態では、ミエリン塩基性タンパク質エピトープは、配列番号4975又は配列番号4976に由来する。一実施形態では、粒子は、1又は複数のミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質エピトープを含む。一実施形態では、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質エピトープは、配列番号1又は配列番号4978に由来する。一実施形態では、粒子は、1又は複数のインスリンエピトープを含有する。一実施形態では、1又は複数のインスリンエピトープは、配列番号4981に由来する。一実施形態では、粒子は、1又は複数のグルタミン酸デカルボキシラーゼエピトープを含む。一実施形態では、グルタミン酸デカルボキシラーゼエピトープは、配列番号4982に由来する。一実施形態では、粒子は、1又は複数のプロテオリピドタンパク質エピトープを含有する。一実施形態では、プロテオリピドタンパク質エピトープは、配列番号4977に由来する。一実施形態では、粒子は、1又は複数のグリアデンエピトープを含む。一実施形態では、グリアデンエピトープは、配列番号4983~4985を含む。
【0045】
[0045] 一実施形態では、本発明は、調節性T細胞を誘導する方法であって、前記T細胞を、負のゼータ電位を有する担体粒子に共有結合でカップリングされた1又は複数の抗原を含む組成物の有効量で処理することを含み、前記1又は複数の抗原が前記粒子中に封入されており、粒径が80nmより大きい、前記方法を提供する。
【0046】
[0046] 一部の実施形態では、本発明は、負のゼータ電位を有する寛容化免疫改変粒子(TIMP)の調製のためのプロセスであって、a)1又は複数の担体ポリマーを、1又は複数の抗原と共有結合で連結して、担体ポリマー-抗原コンジュゲートを形成すること;及びb)担体ポリマー-抗原コンジュゲートを、非コンジュゲート化担体ポリマーと、TIMPを形成するのに有効な条件下で、溶液中で所定の混合比で合わせることを含み、負のゼータ電位を有するTIMPが形成され、1又は複数の抗原がTIMP中に封入される、前記プロセスをさらに提供する。
【0047】
[0047] 一部の実施形態では、本発明は、負のゼータ電位を有する寛容化免疫改変粒子(TIMP)の調製のためのプロセスであって、a)1又は複数の担体ポリマーを、1又は複数の抗原と共有結合で連結して、担体ポリマー-抗原コンジュゲートを形成すること;及びb)担体ポリマー-抗原コンジュゲートを、TIMPを形成するのに有効な条件下で溶液と接触させることを含み、負のゼータ電位を有するTIMPが形成され、1又は複数の抗原がTIMP中に封入される、前記プロセスをさらに提供する。一部の実施形態では、担体ポリマー-抗原コンジュゲートを溶液と接触させることは、所定の混合比で、非コンジュゲート化担体ポリマーの存在下で行われる。
【0048】
[0048] 一部の実施形態では、前記プロセスによって作出される粒子は、約-100mV未満のゼータ電位を有する。一部の実施形態では、粒子は、約-100mVから約-15mVの間のゼータ電位を有する。一部の実施形態では、粒子は、約-100mVから約-75mVの間のゼータ電位を有する。一部の実施形態では、粒子は、約-50mVから約-20mVの間のゼータ電位を有する。
【0049】
[0049] 一部の実施形態では、前記プロセスによって作出される粒子は、約0.1μmから約10μm、例えば、約0.2μmから約2μm又は約0.3μmから約5μm、又は約0.5μmから約3μm又は約0.5μmから約1μmの平均直径を有する。
【0050】
[0050] 一部の実施形態では、前記プロセスによって作出される粒子は、ポリスチレン粒子、カルボキシル化ポリスチレン粒子、PLURONIC(登録商標)安定化ポリプロピレンスルフィド粒子、又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子を含む。一部の実施形態では、粒子は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子を含む。
【0051】
[0051] 一部の実施形態では、前記プロセスの1又は複数の抗原は、コンジュゲート分子によって前記1又は複数の担体ポリマーに共有結合でカップリングされる。一部の実施形態では、1又は複数の抗原は、リンカーによって前記1又は複数の担体ポリマーに共有結合でカップリングされる。一部の実施形態では、コンジュゲート分子は、カルボジイミド化合物を含む。一部の実施形態では、コンジュゲート分子は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を含む。
【0052】
[0052] 一部の実施形態では、1又は複数の担体ポリマーは、共重合によって形成される。一部の実施形態では、溶液は、バッファー溶液である。一部の実施形態では、溶液は、塩基性pHを有する。一部の実施形態では、溶液は、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、又はリン酸二水素リチウムを含む。
【0053】
[0053] 一部の実施形態では、TIMPは、他の生物活性剤(すなわち、薬物、免疫調節剤、サイトカイン)を含有しない。一部の実施形態では、TIMPは生分解性である。一部の実施形態では、前記プロセスは、薬学的に許容される担体中に前記TIMPを製剤化することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】[0054]カップリング試薬としてEDC/NHSを使用するPLG-蛍光染料及びPLG-抗原コンジュゲートの合成を示す図である。
【
図2A】[0055]PLG-ペプチドコンジュゲートの合成及び特徴付け並びにナノ粒子形成を示す図である。DMSO-d6(2.5ppmで較正)中で測定された、(i)PLG、(ii)OVA
323~339、及び(iii)PLG-OVA
323~339の
1H-NMRスペクトル。
【
図2B】PLG-ペプチドコンジュゲートの合成及び特徴付け並びにナノ粒子形成を示す図である。OVA
323~339、PLP
139~151及びPLP
178~191のPLGへのカップリング効率を、OVA
323~339(d、d’)中の1.4ppmに存在するロイシン及びイソロイシンの重複メチルプロトンピークの積算値と、PLG(b)中の5.3ppmに存在するメチレンプロトンピークの積算値とを比較することによって算出した。
【
図2C】ポリマー-コンジュゲートナノ粒子の略図である。
【
図3】[0056]PLGナノ粒子のサイズ及び時間依存的細胞相互作用を示す図である。80nm及び400nmのPLGナノ粒子を、1重量%のPLG-Cy5.5コンジュゲートで蛍光標識し、骨髄由来樹状細胞(BMDC)又は骨髄由来マクロファージ(BMMO)と共に37℃で最大4時間インキュベートした。青色:DAPI;赤色:PLG-Cy5.5ナノ粒子。
【
図4A】[0057]様々な抗原担持量を有するPLG-OVA
323~339粒子で処理した後のBMDC表面マーカー特徴付けを示す図である。400nmの粒子で処理した後のMHCIIマーカー発現。
【
図4B】様々な抗原担持量を有するPLG-OVA
323~339粒子で処理した後のBMDC表面マーカー特徴付けを示す図である。400nmの粒子で処理した後のCD80マーカー発現。
【
図4C】様々な抗原担持量を有するPLG-OVA
323~339粒子で処理した後のBMDC表面マーカー特徴付けを示す図である。400nmの粒子で処理した後のCD86マーカー発現。
【
図4D】様々な抗原担持量を有するPLG-OVA
323~339粒子で処理した後のBMDC表面マーカー特徴付けを示す図である。80nmの粒子で処理した後のMHCIIマーカー発現。
【
図4E】様々な抗原担持量を有するPLG-OVA
323~339粒子で処理した後のBMDC表面マーカー特徴付けを示す図である。80nmの粒子で処理した後のCD80マーカー発現。
【
図4F】様々な抗原担持量を有するPLG-OVA
323~339粒子で処理した後のBMDC表面マーカー特徴付けを示す図である。80nmの粒子で処理した後のCD86マーカー発現。
【
図5】[0058]抗原提示細胞(APC)に送達されたPLG-OVA
323~339粒子による調節性T細胞の抗原特異的誘導を示す図である。BMDCとBMMO細胞における誘導の差異は、p<0.0001で有意であった。
【
図6】[0059]サイズ及び抗原担持量依存的CD25活性化並びにPLG-OVA
323~339粒子による調節性T細胞の誘導を示す図である。
*は、p<0.05での有意性を示す。
【
図7A】[0060]PLG-OVA
323~339粒子用量の関数としての、CD25活性化により示される調節性T細胞の誘導を示す図である。
【
図7B】PLG-OVA
323~339粒子用量の関数としての、foxp3発現により示される調節性T細胞の誘導を示す図である。
【
図8A】[0061]PLG粒子のサイズ及び濃度依存的生体分布を示す図である。マウスに、400nm又は80nmのPLG-Cy5.5ナノ粒子製剤1.25mgを静脈内(IV)又は皮下(SC)的に注射した。肝臓、腎臓、心臓、肺、脾臓及び鼠径リンパ節に由来する細胞を単離した。データを、注射の24時間後にフローサイトメトリーによって分析した。
【
図8B】PLG粒子のサイズ及び濃度依存的生体分布を示す図である。CD45
+であった細胞とCD45
-であった細胞との比率を、肝臓、脾臓及び肺について決定した。
【
図8C】PLG粒子のサイズ及び濃度依存的生体分布を示す図である。マウスに、様々な粒径のPLG-Cy5.5ナノ粒子製剤1.25mgをIV注射した。データを、注射の24時間後にフローサイトメトリーによって分析した。肝臓、脾臓及び肺に見出されるCy5.5
+細胞の比率を、所与の粒径について決定した。
【
図8D】PLG粒子のサイズ及び濃度依存的生体分布を示す図である。Cy5.5
+であったCD45
+又はCD45
-細胞の百分率を、所与の粒径について決定した。
【
図8E】PLG粒子のサイズ及び濃度依存的生体分布を示す図である。Cy5.5
+であったCD45
+又はCD45
-細胞の百分率を、400nmのPLG-Cy5.5の粒径について決定した。
【
図9】[0062]400nm又は80nmのPLG-Cy5.5ナノ粒子製剤1.25mgを静脈内注射した健康なマウス(n=3)の血液のフローサイトメトリー分析を示す図である。注射の2時間後に、血液を収集し、分析した。CD11b、CD11c、Gr-1及びLy6cマーカーの発現を使用して、白血球の型を同定した。Cy5.5蛍光を使用して、細胞がPLG-Cy5.5ナノ粒子を有することを決定した。
【
図10A】[0063]PLG粒子が、ex vivoで調節性T細胞を誘導し、実験的自己免疫性脳炎(EAE)において寛容を誘導することを示す図である。BMDC、脾臓樹状細胞又は肝臓樹状細胞を、0.1μg/mLのOVAのみ、又は0.1μg/mLのPLG-OVAナノ粒子製剤(0.01~10μg/mgのPLG抗原担持量)で12~24時間処理した。フローサイトメトリーを使用して、調節性T細胞の誘導を示すものとして、T細胞のCD25活性化及びfoxp3発現を測定した。
*は、p<0.05での有意性を示す。
【
図10B】PLG粒子が、ex vivoで調節性T細胞を誘導し、実験的自己免疫性脳炎(EAE)において寛容を誘導することを示す図である。マウスに、PLG-Cy5.5ナノ粒子製剤1.25mgを静脈内注射した。注射の24時間後に、フローサイトメトリーを使用して、調節性T細胞の誘導を示すものとして、T細胞のCD25活性化及びfoxp3発現を測定した。
*は、p<0.05での有意性を示す。
【
図10C】PLG粒子が、ex vivoで調節性T細胞を誘導し、実験的自己免疫性脳炎(EAE)において寛容を誘導することを示す図である。動物に投与されるペプチドを、200~1200nmの直径を有する粒子に共有結合でカップリングさせた。免疫化の時間(0日目)に対して、-7日目に、マウスをPLP
139~151-PLG(N=5)又はPBSバッファーで処置した。疾患ピークは、典型的には12から14日目のあたりで観察され、マウスを臨床疾患についてスコア化した。PBSバッファーのみでは疾患誘導を防止しなかった。しかしながら、PLP
139~151と共有結合でカップリングされた、又は抗原と共有結合で連結されたPLGAに由来するPLG粒子は、20日目から30日目の間に示された1より下の低い臨床スコアを除く全てにおいて0の臨床スコア(疾患なし)をもたらした。
*は、p<0.05での有意性を示す。
【
図10D】PLG粒子が、ex vivoで調節性T細胞を誘導し、実験的自己免疫性脳炎(EAE)において寛容を誘導することを示す図である。ナノ粒子製剤によるマウスの処置は、免疫後0~30日目の累積疾患スコアによって測定された場合、有意な無効化された臨床疾患スコアをもたらした。
*は、p<0.05での有意性を示す。
【
図11A】[0064]PLG-ペプチドコンジュゲートの合成及び特徴付け並びにナノ粒子形成を示す図である。(DMSO-d6(2.5ppmで較正)中で測定された、(i)PLG、(ii)OVA
323~339、及び(iii)PLG-OVA
323~339の
1H-NMRスペクトル。
【
図11B】PLG-ペプチドコンジュゲートの合成及び特徴付け並びにナノ粒子形成を示す図である。(OVA
323~339のPLGへのカップリング効率を、OVA(d、d’)中の1.4ppmに存在するロイシン及びイソロイシンの重複メチルプロトンピークの積算値と、PLG(b)中の5.3ppmに存在するメチレンプロトンピークの積算値とを比較することによって算出した。
【
図11C】PLG-ペプチドコンジュゲートの合成及び特徴付け並びにナノ粒子形成を示す図である。抗原-コンジュゲートナノ粒子の略図。
【
図11D】PLG-ペプチドコンジュゲートの合成及び特徴付け並びにナノ粒子形成を示す図である。PLG、PLG(OVA)、PLG-OVA、及びacPLG-OVAを、FITC標識された抗OVA
323~339IgGと共にインキュベートして、粒子の表面上のペプチドの存在を同定した。結果は、幾何平均蛍光強度である。
【
図11E】PLG-ペプチドコンジュゲートの合成及び特徴付け並びにナノ粒子形成を示す図である。PLG(OVA
323~339)及びacPLG-OVA
323~339の放出プロファイル。p<0.05。
【
図12A】[0065]in vitroでの調節性T細胞誘導がナノ粒子サイズ及びAg担持量に依存することを示す図である。骨髄由来樹状細胞を、300μg/mLの400nm(
図12B及び
図12D)及び80nm(
図12C及び
図12E)のacPLG-OVA
323~339粒子で3時間処理した。次いで、過剰のacPLG-OVA
323~339粒子をウェルから洗浄した後、ナイーブなCD4
+OT-II T細胞及び2ng/mLのTGF-βを添加した。細胞を4日間同時培養した後、フローサイトメトリー分析を行った。調節性T細胞誘導のための代表的なゲーティング戦略。単一の、生きたCD4+細胞を、CD25及びfoxp3発現について検査した。
【
図12B】CD25に対する抗原担持量の効果を測定した図である。両方の粒子製剤はCD25発現を同様に増加させることができたが、400nmのacPGL-OVA
323~339粒子のみが、CD4
+CD25
+Foxp3
+調節性T細胞を効率的に誘導することができた。
【
図12C】CD25に対する抗原担持量の効果を測定した図である。両方の粒子製剤はCD25発現を同様に増加させることができたが、400nmのacPGL-OVA
323~339粒子のみが、CD4
+CD25
+Foxp3
+調節性T細胞を効率的に誘導することができた。
【
図12D】T細胞のFoxp3発現を測定した図である。両方の粒子製剤はCD25発現を同様に増加させることができたが、400nmのacPGL-OVA
32粒子のみが、CD4
+CD25
+Foxp3
+調節性T細胞を効率的に誘導することができた。
【
図12E】T細胞のFoxp3発現を測定した図である。両方の粒子製剤はCD25発現を同様に増加させることができたが、400nmのacPGL-OVA
323~339粒子のみが、CD4
+CD25
+Foxp3
+調節性T細胞を効率的に誘導することができた。
【
図13A】[0066]調節性T細胞誘導が、ナノ粒子濃度に依存することを示す図である。骨髄由来樹状細胞を、様々な濃度の400nmのPLG-OVAナノ粒子(8μg/mg担持量)製剤で3時間処理した。次いで、過剰のacPLG-OVA
323~339粒子を細胞表面から洗浄した後、OT-II T細胞及び2ng/mLのTGF-β1を添加した。細胞を4日間同時培養した後、フローサイトメトリーを使用して、T細胞のCD25活性化を測定した。
【
図13B】調節性T細胞誘導が、ナノ粒子濃度に依存することを示す図である。骨髄由来樹状細胞を、様々な濃度の400nmのPLG-OVAナノ粒子(8μg/mg担持量)製剤で3時間処理した。次いで、過剰のacPLG-OVA
323~339粒子を細胞表面から洗浄した後、OT-II T細胞及び2ng/mLのTGF-β1を添加した。細胞を4日間同時培養した後、フローサイトメトリーを使用して、T細胞のFoxp3発現を測定した。
【
図14A】[0067]acPLG(Ag)ナノ粒子が、R-EAEにおいて寛容を予防的に誘導することを示す図である。PBS(対照)、PLG(PLP
139~151)2.5mg(1.4μg/mgのPLP)又はacPLG-PLP
139~151 1.25mg(8μg/mgのPLP
139~151)で処置し、PLP
139~151/CFAで免疫化して、7日後にR-EAEを誘導したSJL/Jマウスに関する臨床スコア。マウスのナノ粒子製剤による処置は、PBSと比較して有意に無効化された臨床疾患スコアをもたらした。
【
図14B】acPLG(Ag)ナノ粒子が、R-EAEにおいて寛容を予防的に誘導することを示す図である。寛容原性粒子で処置されたマウス(n=3~7)に関する対応する累積臨床スコア。
【
図15A】[0068]acPLG(Ag)粒子が、自己抗原のカクテルを用いて誘導されたR-EAEに対する保護的寛容を誘導することを示す図である。pcPLG-OVA
323~339(8μg/mgのOVA
323~339)、pcPLG-PLP
139~151(8μg/mgのPLP
139~151)、pcPLG-PLP
178~191(8μg/mgのPLP
178~191)、又はpcPLG-PLP
139~151、178~191(8μg/mgのPLP
139~151及び8μg/mgのPLP
178~191)1.25mgで処置し、CFA中のPLP
139~151及びPLP
178~191で免疫化して、7日後にR-EAEを誘導したSJL/Jマウスの臨床スコア。複数のAgを送達する抗原-ポリマーコンジュゲートナノ粒子の略図。
【
図15B】acPLG(Ag)粒子が、自己抗原のカクテルを用いて誘導されたR-EAEに対する保護的寛容を誘導することを示す図である。pcPLG-OVA
323~339(8μg/mgのOVA
323~339)、pcPLG-PLP
139~151(8μg/mgのPLP
139~151)、pcPLG-PLP
178~191(8μg/mgのPLP
178~191)、又はpcPLG-PLP
139~151、178~191(8μg/mgのPLP
139~151及び8μg/mgのPLP
178~191)1.25mgで処置し、CFA中のPLP
139~151及びPLP
178~191で免疫化して、7日後にR-EAEを誘導したSJL/Jマウスの臨床スコア。両方の病原性エピトープを用いて製剤化されたacPLGナノ粒子によるマウスの処置は、単一又は無関係のエピトープのみで処置されたマウスと比較して、有意に無効化された平均臨床疾患スコアをもたらした。
【
図15C】acPLG(Ag)粒子が、自己抗原のカクテルを用いて誘導されたR-EAEに対する保護的寛容を誘導することを示す図である。pcPLG-OVA
323~339(8μg/mgのOVA
323~339)、pcPLG-PLP
139~151(8μg/mgのPLP
139~151)、pcPLG-PLP
178~191(8μg/mgのPLP
178~191)、又はpcPLG-PLP
139~151、178~191(8μg/mgのPLP
139~151及び8μg/mgのPLP
178~191)1.25mgで処置し、CFA中のPLP
139~151及びPLP
178~191で免疫化して、7日後にR-EAEを誘導したSJL/Jマウスの臨床スコア。粒子で処置されたマウスに関する対応する累積臨床スコア(n=3~7)。
【
図16】[0069]PLGA-OVAコンジュゲート1mgあたりのタンパク質含量の決定のためのBCAアッセイ生データを示す図である。
【
図17】[0070]CD4+T細胞のCD25+Foxp3+細胞の百分率を示す。
【
図18】[0071]CD4+T細胞のCD25+Foxp3+細胞の百分率を示す図である。
【
図19】[0072]PLGA-PLP
139~151コンジュゲートの合成及び特徴付けを示す図である。DMSO-d6(2.5ppmで較正)中で測定された、(i)PLGA、(ii)PLP
139~151、及び(iii)PLGA-PLP
139~151の
1H-NMRスペクトル。
【
図20】[0073]PLGA-PLP
178~191コンジュゲートの合成及び特徴付けを示す図である。DMSO-d6(2.5ppmで較正)中で測定された、(i)PLGA、(ii)PLP
178~191、及び(iii)PLGA-PLP
178~191の
1H-NMRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0055】
[0074] 本発明者らは、封入された抗原が粒子の内表面に共有結合で連結された寛容化免疫改変粒子(TIMP)が、表面結合ペプチドと関連する望ましくない副作用を依然として回避しながら、粒径及び抗原封入の繊細な制御並びに抗原バースト効果の軽減を可能にすることを見出した。そのようなTIMPを産生するためのプロセスは、1又は複数の抗原を、1又は複数の担体ポリマーに共有結合でカップリングさせて、担体ポリマー-抗原コンジュゲートを形成すること、それに続き、担体ポリマー-抗原コンジュゲートを、非コンジュゲート化担体ポリマーと、TIMPを形成するのに有効な条件下で、溶液中で所定の混合比で合わせることを含み、1又は複数の抗原がTIMP中に封入される。これらのTIMPは、自己免疫疾患に対する寛容を誘導し、免疫応答を減少させることができる。したがって、これらの粒子は、自己免疫疾患又はアレルギーなどの、過剰の炎症免疫応答を特徴とする任意の疾患又は状態の処置において有用であってよい。これらのTIMPは、粒子からの1又は複数の抗原のバースト放出を最小化するか又はなくすことができる。抗原のバースト放出を最小化するか又はなくすことは、例えば、処置中に放出される抗原の量をより良好に制御するため、毒性レベルの抗原を回避するため、及び/又は無効な抗原送達を回避するために望ましい。
【0056】
[0075] 本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、本文が別途明確に指摘しない限り、複数の指示対象を含む。
【0057】
[0076] 本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「含む」、「からなる」及び「から本質的になる」を含むと理解される。
【0058】
[0077] 一部の実施形態では、本明細書の値又はパラメーターの「約」に対する参照は、その値又はパラメーター自体に対する変動を含む(及び記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0059】
[0078] 本明細書で使用される「粒子」とは、物質の任意の非組織由来組成物を指す。それは、球体又は球状の実体、ビーズ、又はリポソームであってもよい。用語「粒子」、用語「免疫改変粒子」、用語「担体粒子」、及び用語「ビーズ」は、文脈に応じて互換的に使用することができる。さらに、用語「粒子」を、ビーズ及び球体を包含するように使用することができる。
【0060】
[0079] 本明細書で使用される「負に荷電した粒子」とは、ゼロ未満である正味の表面電荷を有するように改変された粒子を指す。
【0061】
[0080] 「カルボキシル化粒子」又は「カルボキシル化ビーズ」又は「カルボキシル化球体」は、その表面上にカルボキシル基を含有するように改変された任意の粒子を含む。一部の実施形態では、カルボキシル基の付加は、例えば、MARCOなどのスカベンジャー受容体との相互作用により、循環からの粒子の食細胞/単球による取込みを増強する。粒子のカルボキシル化を、限定されるものではないが、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)(PEMA)などのカルボキシル基を付加する任意の化合物を使用して達成することができる。
【0062】
[0081] 本明細書で使用される「担体粒子」とは、寛容化免疫改変粒子(TIMP)を形成する前に抗原に共有結合でカップリングされている粒子を指す。また、本明細書で使用される「担体粒子」又は「担体ポリマー」は、寛容化免疫改変粒子(TIMP)を形成させるために抗原に共有結合することができるポリマーを指す。粒子は、限定されるものではないが、ポリスチレン、カルボキシル化ポリスチレン、ダイヤモンド、PLURONIC(登録商標)安定化ポリプロピレンスルフィド又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)であってよいポリマーであってもよい。
【0063】
[0082] 「非コンジュゲート化担体ポリマー」又は「非コンジュゲート化担体粒子」とは、それに共有結合した抗原を含まない担体ポリマー又は担体粒子を指す。
【0064】
[0083] 本明細書で使用される「担持量」とは、担体ポリマー量あたりの抗原量を指す。担持量を、担体ポリマー1ミリグラム(mg)あたりの抗原のマイクログラム(μg)として表すことができる。
【0065】
[0084] 本明細書で使用される「抗原性部分」とは、宿主の免疫系によって認識される任意の部分、例えば、ペプチドを指す。抗原性部分の例としては、限定されるものではないが、自己抗原、酵素、及び/又は細菌若しくはウイルスタンパク質、ペプチド、薬物又は成分が挙げられる。理論によって束縛されるものではないが、カルボキシル化ビーズ自体は免疫系によって認識され得るが、それに何も結合していないカルボキシル化ビーズは、本発明の目的にとって「抗原性部分」とは考えない。
【0066】
[0085] 本明細書で使用される「裸のビーズ」又は「裸の粒子」又は「裸の球体」は、カルボキシル化されていないビーズ、粒子又は球体を指す。
【0067】
[0086] 本明細書で使用される「前炎症性メディエータ」又は「前炎症性ポリペプチド」は、対象において炎症を誘導する、維持する、又は延長するポリペプチド又はその断片を指す。前炎症性メディエータの例としては、限定されるものではないが、サイトカイン及びケモカインが挙げられる。
【0068】
[0087] 本明細書で使用される用語「炎症性単球」とは、CD14/CD26及びCCR2の任意の組合せを発現する任意の骨髄性細胞を指す。
【0069】
[0088] 本明細書で使用される用語「阻害的好中球」とは、好中球、及び/又は単球由来抑制細胞を指す。
【0070】
[0089] 本明細書で使用される用語「Th細胞」又は「ヘルパーT細胞」とは、CD4+細胞を指す。CD4+T細胞は、B細胞の形質細胞及び記憶B細胞への成熟、並びに細胞傷害性T細胞及びマクロファージの活性化などの、免疫学的プロセスに関して他の白血球を支援する。T細胞は、それらが、抗原提示細胞(APC)の表面上に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原と共に提示される場合に活性化されるようになる。
【0071】
[0090] 本明細書で使用される用語「Th1細胞」とは、前炎症性メディエータを産生するTh細胞のサブセットを指す。Th1細胞はサイトカインを分泌して、免疫応答を容易にし、感染した組織への好中球及びマクロファージの動員を媒介することによって、部分的に病原体に対する宿主防御における役割を果たしている。Th1細胞は、IFN-ガンマ、IL2、IL-10、及びTNFアルファ/ベータを含むサイトカインを分泌して、ウイルス及び一部の細菌などの細胞内病原体に対する防御を調整する。
【0072】
[0091] 本明細書で使用される用語「Th2細胞」とは、細胞外寄生虫、細菌、アレルゲン、及び毒素に対する抗体媒介性免疫応答の活性化及び維持を媒介するTh細胞のサブセットを指す。Th2細胞は、抗体産生、好酸球活性化、及びいくつかのマクロファージ機能の阻害を担い、かくして、食作用非依存的保護応答を提供する、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-13、及びIL-17E(IL-25)などの様々なサイトカインを産生することによってこれらの機能を媒介する。
【0073】
[0092] 本明細書で使用される用語「Th17細胞」とは、Th細胞のサブセットを指す。Th17細胞は、サイトカインを分泌して、免疫応答を容易にし、感染した組織への好中球及びマクロファージの動員を媒介することによって、病原体に対する宿主防御における役割を果たしている。TH17細胞は、IL17、IL21、IL22、IL24、IL26及びTNFアルファなどのサイトカインを分泌して、真菌及び細菌を含む細胞外病原体に対する防御を調整する。
【0074】
[0093] 抗原を参照して本明細書で使用される「カップリングされた」、「連結された」又は「架橋された」とは、担体粒子に共有結合した、又は共有結合で付着し、粒子内に封入された抗原を指す。
【0075】
[0094] 本明細書で使用される用語「IMP」とは、抗原にカップリングされていない免疫改変粒子を指す。本明細書で使用される用語「TIMP」とは、抗原にカップリングされた寛容化免疫改変粒子を指す。ある特定の実施形態では、本明細書で使用される用語「IMP」とは、抗原を含まない免疫改変粒子を指す。本明細書で使用される用語「TIMP」とは、抗原を含む寛容化免疫改変粒子を指す。
【0076】
[0095] 用語「生物活性剤」とは、粒子(すなわち、ポリマー、リンカー)及びそこに含まれる抗原を構築するために使用されるもの以外の薬剤を指す。生物活性剤の例としては、薬物、免疫調節剤及びサイトカインが挙げられる。
【0077】
[0096] 粒子は、任意の粒子形状又はコンフォメーションを有してもよい。しかしながら、一部の実施形態では、in vivoで凝集する可能性が低い粒子を使用することが好ましい。これらの実施形態内の粒子の例は、球体の形状を有するものである。
【0078】
[0097] 本発明の一態様は、粒子内に封入された1又は複数の抗原にカップリングされた、負のゼータ電位を有する免疫改変粒子を含む組成物に関する。
【0079】
[0098] 本発明のさらに別の態様は、負のゼータ電位を有する寛容化免疫改変粒子(TIMP)の調製のためのプロセスであって、a)1又は複数の担体ポリマーを、1又は複数の抗原と共有結合で連結して、担体ポリマー-抗原コンジュゲートを形成すること;及びb)担体ポリマー-抗原コンジュゲートを、非コンジュゲート化担体ポリマーと、TIMPを形成するのに有効な条件下で、溶液中で所定の混合比で合わせることを含み、負のゼータ電位を有するTIMPが形成される、前記プロセスに関する。本発明の一部の実施形態では、担体ポリマーは、共重合により形成される。粒子の微小構造は、共重合の方法に依存してもよい。
【0080】
[0099] 一部の実施形態では、本開示は、負のゼータ電位を有する寛容化免疫改変粒子(TIMP)の調製のためのプロセスであって、a)1又は複数の担体ポリマーを、1又は複数の抗原と共有結合で連結して、担体ポリマー-抗原コンジュゲートを形成すること;及びb)担体ポリマー-抗原コンジュゲートを、TIMPを形成するのに有効な条件下で溶液と接触させることを含み、負のゼータ電位を有するTIMPが形成され、1又は複数の抗原がTIMP中に封入される、前記プロセスに関する。一部の実施形態では、担体ポリマー-抗原コンジュゲートを溶液と接触させることは、所定の混合比の非コンジュゲート化担体ポリマーの存在下で行われる。
【0081】
[0100] 一部の実施形態では、抗原性ペプチド分子は、コンジュゲート分子及び/又はリンカー基によって担体ポリマー(例えば、PLG)にカップリングされている。一部の実施形態では、抗原性ペプチド及び/又はアポトーシスシグナリング分子の、担体ポリマー(例えば、PLG)へのカップリングは、1又は複数の共有相互作用を含む。一部の実施形態では、抗原性ペプチドは、負のゼータ電位を有する担体粒子内に封入されている。
【0082】
[0101] 一実施形態では、担体ポリマー-抗原コンジュゲート及び非コンジュゲート化担体ポリマーと接触する溶液は、塩基性pHを有してもよい。塩基性溶液のための好適な塩基性pHは、7.1、7.5、8.0、8.5、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、及び13.5が挙げられる。溶液はまた、任意の好適な塩基及びそのコンジュゲートから構成されていてもよい。本発明の一部の実施形態では、溶液は、限定されるものではないが、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、又はリン酸二水素リチウム及びそれらのコンジュゲートを含んでもよい。
【0083】
[0102] 本発明の一実施形態では、寛容化免疫改変粒子は、コポリマーを含有する。これらのコポリマーは、変化するモル比を有してもよい。本発明の寛容化免疫改変粒子の好適なコポリマー比は、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、81:19、82:18、83:17、84:16、85:15、86:14、87:13、88:12、89:11、90:10、91:9、92:8、93:7、94:6、95:5、96:4、97:3、98:2、99:1、又は100:0であってもよい。別の実施形態では、コポリマーは、周期的、統計的、線状、分枝状(星状、ブラシ状、又はクシ状コポリマーを含む)コポリマーであってもよい。一部の実施形態では、コポリマー比は、限定されるものではないが、ポリスチレン:ポリ(ビニルカルボキシレート)/80:20、ポリスチレン:ポリ(ビニルカルボキシレート)/90:10、ポリ(ビニルカルボキシレート):ポリスチレン/80:20、ポリ(ビニルカルボキシレート):ポリスチレン/90:10、ポリ乳酸:ポリグリコール酸/50:50、ポリ乳酸:ポリグリコール酸/80:20、又はポリ乳酸:ポリグリコール酸/90:10であってもよい。
【0084】
[0103] 一実施形態では、本発明の粒子は、担体粒子を含む組成物を、非コンジュゲート化担体ポリマーの溶液に添加することによって作製される。一部の実施形態では、担体粒子は、所定の混合比で非コンジュゲート化担体ポリマーの存在下で溶液と接触される。一部の実施形態では、非コンジュゲート化担体ポリマーは、PLG(ポリ(ラクチド-co-グリコール酸))である。
【0085】
[0104] 一実施形態では、本発明の粒子は、ポリマーを含む組成物を、生体適合ポリマーの溶液に添加することによって作製される。生体適合ポリマーの例としては、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)(PEMA)及びクエン酸に基づくポリマー足場が挙げられる。生体適合ポリマーのさらなる例としては、ポリ(アルファ-エステル)、ポリウレタン、ポリ(エステルアミド)、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、ポリ(無水物-co-イミド)、架橋ポリ無水物、ポリ(プロピレンフマレート)、シュードポリ(アミノ酸)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリホスファゼン、ポリホスホエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリサッカリド、ポリ(エチレングリコール)が挙げられる(参照により本明細書に組み込まれる、Nairら、Progress in Polymer Science、32(2007)、762-798)。生体適合ポリマーの溶液は、同じか、又は異なるポリマーを含んでもよく、異なる効果を提供するために異なる比で混合されてもよい。
【0086】
[0105] 一実施形態では、本発明の粒子は、ポリマーを含む組成物(例えば、PLGA)を、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)(PEMA)の溶液に添加することによって作製される。溶液中のPEMAの濃度は、約0.1%から約10%の間であってよい。一実施形態では、溶液中のPEMAの濃度は、約0.2%から約5%の間である。別の実施形態では、溶液中のPEMAの濃度は、約0.1%から4%の間である。別の実施形態では、溶液中のPEMAの濃度は、約0.1%から2%の間である。別の実施形態では、溶液中のPEMAの濃度は、約0.5%から1%の間である。一実施形態では、溶液中のPEMAの百分率は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%又は10%である。一実施形態では、溶液中のPEMAの百分率は、約0.5%である。別の実施形態では、溶液中のPEMAの百分率は、約1.0%である。使用することができる他の化合物としては、限定されるものではないが、ポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸)、ポリ(イソブチレン-co-マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸モノエチルエステル)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-無水マレイン酸)、1,9-デカジエン粉末と架橋したポリ(メチルビニルエーテル-alt-無水マレイン酸)、及び/又はポリ(スチレン-alt-マレイン酸)ナトリウム塩が挙げられる。
【0087】
[0106] 一実施形態では、粒子はリポソームである。さらなる実施形態では、粒子は、以下のモル比の以下の脂質、-30:30:40のホスファチジルコリン:ホスファチジルグリセロール:コレステロールから構成されるリポソームである。さらなる実施形態では、粒子は、リポソーム内に封入されている。
【0088】
[0107] それぞれの粒子はサイズが均一である必要はないが、粒子は一般に、脾臓又は肝臓中で隔離されるのに十分なサイズのものであり、内皮細胞又は他のMPS細胞などの抗原提示細胞による受容体又は非受容体媒介機構を介して食作用又は取込みを誘発しなければならない。好ましくは、粒子は、溶解度を増強するため、in vivoでの凝集により引き起こされる合併症の可能性を回避するため、及び飲作用を容易にするために、サイズがマイクロスケール又はナノスケールである。粒径は、間質空間からリンパ球成熟の領域への取込みのための因子であってよい。約0.1μmから約10μmの直径を有する粒子は、食作用を誘発することができる。かくして、一実施形態では、粒子は、これらの限界内の直径を有する。別の実施形態では、粒子は、約0.3μmから約5μmの平均直径を有する。さらに別の実施形態では、粒子は、約0.5μmから約3μmの平均直径を有する。別の実施形態では、粒子は、約0.2μmから約2μmの平均直径を有する。さらなる実施形態では、粒子は、約0.1μm、又は約0.2μm又は約0.3μm又は約0.4μm又は約0.5μm又は約1.0μm又は約1.5μm又は約2.0μm又は約2.5μm又は約3.0μm又は約3.5μm又は約4.0μm又は約4.5μm又は約5.0μmの平均サイズを有する。特定の実施形態では、粒子は、約0.5μmの平均サイズを有する。一部の実施形態では、粒子の全重量は、約10,000kDa未満、約5,000kDa未満、又は約1,000kDa、500kDa、400kDa、300kDa、200kDa、100kDa、50kDa、20kDa、10kDa未満である。組成物中の粒子は、均一な直径のものである必要はない。例えば、医薬製剤は、いくつかが約0.5μmであるが、他のものが約1.0μmである、複数の粒子を含有してもよい。これらの所与の範囲内の粒径の任意の混合物が有用である。
【0089】
[0108] 本発明の粒子は、特定のゼータ電位を有してもよい。ある特定の実施形態では、ゼータ電位は、負である。一実施形態では、ゼータ電位は、約-100mV未満である。一実施形態では、ゼータ電位は、約-50mV未満である。ある特定の実施形態では、粒子は、-100mVから0mVの間のゼータ電位を有する。さらなる実施形態では、粒子は、-75mVから0mVの間のゼータ電位を有する。さらなる実施形態では、粒子は、-60mVから0mVの間のゼータ電位を有する。さらなる実施形態では、粒子は、-50mVから0mVの間のゼータ電位を有する。さらなる実施形態では、粒子は、-40mVから0mVの間のゼータ電位を有する。さらなる実施形態では、粒子は、-30mVから0mVの間のゼータ電位を有する。さらなる実施形態では、粒子は、-20mVから+0mVの間のゼータ電位を有する。さらなる実施形態では、粒子は、-10mVから-0mVの間のゼータ電位を有する。さらなる実施形態では、粒子は、-100mVから-50mVの間のゼータ電位を有する。別の特定の実施形態では、粒子は、-75mVから-50mVの間のゼータ電位を有する。特定の実施形態では、粒子は、-50mVから-40mVの間のゼータ電位を有する。
【0090】
[0109] 一部の実施形態では、担体の電荷(例えば、正、負、中性)は、適用特異的利益(例えば、生理学的適合性、有益な表面-ペプチド相互作用など)を与えるように選択される。一部の実施形態では、担体は、正味の中性電荷又は負電荷を有する(例えば、一般に、正味の負電荷を担持する細胞表面への非特異的結合を軽減するため)。ある特定の実施形態では、担体ポリマーを、寛容が望ましい抗原(本明細書では、抗原特異的ペプチド、抗原性ペプチド、自己抗原、誘導抗原又は寛容化抗原とも呼ばれる)に、直接的又は間接的に、共有結合でコンジュゲートさせることができる。一部の実施形態では、担体ポリマー-抗原コンジュゲートは、所定の混合比で非コンジュゲート化担体ポリマーと混合される。一部の実施形態では、所定の混合比は、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、又は95:5であってよい。一部の実施形態では、所定の混合比は、50:50である。一部の例では、担体は、担体粒子内に封入されている、複数のコピーの抗原特異的ペプチド、又は複数の異なるペプチドを有するため(例えば、寛容応答の可能性を増大させるため)に、複数の結合部位(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10...20...50...100以上)を有する。一部の実施形態では、担体は、単一の型の抗原性ペプチドを封入する。一部の実施形態では、担体は、複数の異なる抗原性ペプチドを封入する。
【0091】
[0110] 一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20μgの抗原及びその間の全ての値である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約0.10から約0.50μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約0.50から約2μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約2から約4μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約4から約8μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約8から約16μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約16から約20μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約20から約30μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約30から約40μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約40から約50μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約50から約60μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約60から約70μgの抗原である。一部の実施形態では、抗原の担持量は、担体ポリマー1mgあたり約70μg以上の抗原である。
【0092】
[0111] 粒子のサイズ及び電荷は、寛容誘導にとって重要である。粒子は、中に封入された抗原に基づいてサイズ及び電荷が異なるが(特定の粒子の例については、表1及び表5を参照されたい)、一般的には、本発明の粒子は、それらが約100ナノメートルから約1500ナノメートルの間であり、0から約-100mVの電荷を有する場合に寛容の誘導において有効であり、それらが400~800ミクロンであり、約-25mVから-70mVの間の電荷を有する場合に寛容の誘導において最も有効である。本明細書で使用される用語「合成後サイズ」及び「合成後電荷」とは、凍結乾燥前の粒子のサイズ及び電荷を指す。用語「凍結乾燥後サイズ」及び「凍結乾燥後電荷」とは、凍結乾燥後の粒子のサイズ及び電荷を指す。表1は、代表的なナノ粒子製剤のサイズ及びゼータ電位を示す。様々なサイズの粒子を、二重エマルジョン及びナノ沈降法によって調製した。PLG-Agコンジュゲートと、非コンジュゲート化PLGとを、所定の混合比で合わせることによって、担持量(μg抗原(Ag)/mg PLG)を正確に制御した。表1及び表5は、代表的なナノ粒子製剤のサイズ及びゼータ電位を示す。
【0093】
【0094】
[0112] 一部の実施形態では、粒子は非金属性である。これらの実施形態では、粒子を、ポリマーから形成させることができる。好ましい実施形態では、粒子は個体中で生分解性である。この実施形態では、個体中に粒子を蓄積させることなく、複数の用量にわたって粒子を個体中に提供することができる。好適な粒子の例としては、ポリスチレン粒子、PLGA粒子、PLURONIC(登録商標)安定化ポリプロピレンスルフィド粒子、及びダイヤモンド粒子が挙げられる。一部の実施形態では、好適な粒子としては、ポリ(アルファ-エステル)、ポリウレタン、ポリ(エステルアミド)、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、ポリ(無水物-co-イミド)、架橋ポリ無水物、ポリ(プロピレンフマレート)、シュードポリ(アミノ酸)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリホスファゼン、ポリホスホエステル、ポリ(アミノ酸)、及びポリサッカリドなどの一般的なクラスのポリマーから調製された粒子が挙げられる。
【0095】
[0113] 好ましくは、粒子表面は、非特異的な、又は望ましくない生物学的相互作用を最小化する材料から構成される。粒子表面と間質との相互作用は、リンパ系取込みにおいて役割を果たす因子であってもよい。粒子表面を、非特異的相互作用を防止するか、又は減少させる材料で被覆することができる。ポリ(エチレングリコール)(PEG)などの親水性層及びPLURONIC(登録商標)などのそのコポリマー(ポリ(エチレングリコール)-bl-ポリ(プロピレングリコール)-bl-ポリ(エチレングリコール)のコポリマーを含む)で粒子を被覆することによる立体的安定化は、皮下注射後のリンパ系取込みの改善によって示されるように、間質のタンパク質との非特異的相互作用を軽減することができる。これらの事実は全て、リンパ系取込みに関する粒子の物理特性の有意性を指摘する。生分解性ポリマーを使用して、ポリマー及び/又は粒子及び/又は層の全部又は一部を作製することができる。生分解性ポリマーは、例えば、官能基が溶液中の水と反応する結果によって、分解を受け得る。本明細書で使用される用語「分解」とは、分子量の低下により、又は疎水性基の親水性基への変換により、可溶性になることを指す。エステル基を有するポリマー、例えば、ポリラクチド及びポリグリコリドは、一般的には、自発的加水分解を受ける。
【0096】
[0114] 本発明の粒子はまた、さらなる成分を含有してもよい。例えば、担体は、担体に組み込まれた、又はコンジュゲートされた造影剤を有してもよい。現在商業的に入手可能である造影剤を有する担体ナノスフェアの例は、量子ドット(QD)として知られる、Kodak Xサイトナノスフェア無機量子閉じ込め発光ナノ結晶であり、FRET適用における理想的なドナーとして出現した:その高い量子収量及び調整可能なサイズ依存的Stokes Shiftにより、単一の紫外線波長で励起された場合、異なるサイズが、青色から赤外に放出することができる(Bruchezら、Science, 1998, 281, 2013;Niemeyer, C. M Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 5796;Waggoner, A. Methods Enzymol. 1995, 246, 362;Brus, L. E. J. Chem. Phys. 1993, 79, 5566)。デンドリマーとして知られるポリマーのクラスに基づくハイブリッド有機/無機量子ドットなどの量子ドットを、生物学的標識化、イメージング、及び光学バイオセンシング系において使用することができる(Lemonら、J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 12886)。無機量子ドットの伝統的な合成と違って、これらのハイブリッド量子ドットナノ粒子の合成は、高温又は高毒性の不安定試薬を必要としない(Etienneら、Appl. Phys. Lett. 87, 181913, 2005)。
【0097】
[0115] 本発明の粒子を、シアニン蛍光染料などの造影剤に共有結合で連結することができる。一部の実施形態では、シアニンは、開鎖シアニン、ヘミシアニン及び/又は閉鎖シアニンを含む。一部の実施形態では、シアニン蛍光染料は、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7を含む。一部の実施形態では、粒子は、in vivoでのイメージングのためにCy5.5に共有結合で連結される。
【0098】
[0116] 粒子を、様々な材料から形成させることができる。粒子は、好ましくは、生物学的使用にとって好適な材料から構成される。例えば、粒子は、ガラス、シリカ、ヒドロキシカルボン酸のポリエステル、ジカルボン酸のポリ無水物、又はヒドロキシカルボン酸とジカルボン酸のコポリマーから構成されていてもよい。より一般的には、担体粒子は、直鎖若しくは分枝鎖、置換若しくは非置換、飽和若しくは不飽和、線状の、若しくは架橋した、アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アラルケニル、ヘテロアリール、若しくはアルコキシヒドロキシ酸のポリエステル、又は直鎖若しくは分枝鎖、置換若しくは非置換、飽和若しくは不飽和、線状の、若しくは架橋した、アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アラルケニル、ヘテロアリール、若しくはアルコキシジカルボン酸のポリ無水物から構成されていてもよい。さらに、担体粒子は、量子ドットであるか、又は量子ドットポリスチレン粒子(Joumaaら、(2006)Langmuir 22: 1810-6)などの量子ドットから構成されていてもよい。エステルと無水物結合との混合物(例えば、グリコール酸とセバシン酸とのコポリマー)を含む担体粒子を使用することもできる。例えば、担体粒子は、ポリグリコール酸ポリマー(PGA)、ポリ乳酸ポリマー(PLA)、ポリセバシン酸ポリマー(PSA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)コポリマー(PLGA又はPLG;この用語は互換的である)、[rho]ポリ(乳酸-co-セバシン酸)コポリマー(PLSA)、ポリ(グリコール酸-co-セバシン酸)コポリマー(PGSA)、ポリプロピレンスルフィドポリマー、ポリ(カプロラクトン)、キトサンなどを含む材料を含んでもよい。本発明において有用な他の生体適合性、生分解性ポリマーは、カプロラクトン、カーボネート、アミド、アミノ酸、オルトエステル、アセタール、シアノアクリレート及び分解性ウレタンのポリマー又はコポリマー、並びにこれらのものと、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アルケニル、又は芳香族ヒドロキシ-若しくはジ-カルボン酸とのコポリマーを含む。さらに、リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、チロシン及びシステイン、又はそのエナンチオマーなどの反応性側鎖基を有する生物学的に重要なアミノ酸を、上記の材料のいずれかとのコポリマー中に含有させて、抗原ペプチド及びタンパク質又はコンジュゲート化部分にコンジュゲートさせるための反応基を提供することができる。本発明にとって好適な生分解性材料としては、ダイヤモンド、PLA、PGA、ポリプロピレンスルフィド、及びPLGAポリマーが挙げられる。生体適合性であるが、非生分解性である材料を、本発明の担体粒子中で使用することもできる。例えば、アクリレート、エチレン-ビニルアセテート、アシル置換セルロースアセテート、非分解性ウレタン、スチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルイミダゾール、クロロスルホン化オレフィン、酸化エチレン、ビニルアルコール、TEFLON(登録商標)(DuPont, Wilmington, Del.)、及びナイロンの非生分解性ポリマーを使用することができる。
【0099】
組成物の調製
[0117] 本発明の粒子を、当業界で一般に公知の任意の手段によって製造することができる。粒子を製造する例示的な方法としては、限定されるものではないが、マイクロエマルジョン重合、界面重合、沈降重合、エマルジョン蒸発、エマルジョン拡散、溶媒置換、及び塩析が挙げられる(Astete及びSabliov, J. Biomater. Sci. Polymer Edn., 17:247-289(2006))。PLGA粒子のための製造プロセスの操作は、粒子特性(例えば、サイズ、サイズ分布、ゼータ電位、形態、疎水性/親水性、ポリペプチド捕捉など)を制御することができる。粒子のサイズは、限定されるものではないが、PLGAの濃度、粒子の製造において使用される溶媒、有機相の性質、製造において使用される界面活性剤、連続相と不連続相の粘度、使用される溶媒の性質、使用される水の温度、超音波処理、蒸発速度、添加物、剪断応力、滅菌化、及び任意の封入された抗原又はポリペプチドの性質などの、いくつかの因子によって影響される。
【0100】
[0118] 粒径は、ポリマー濃度によって影響される;より高いポリマー濃度からは、より大きい粒径の粒子が形成される。例えば、1%から4%(w/v)へのPLGA濃度の増加は、プロピレンカーボネート溶媒を使用する場合、平均粒径を約205nmから約290nmに増加させることができる。あるいは、酢酸エチル及び5%Pluronic F-127中では、1%から5%(w/v)へのPLGA濃度の増加は、平均粒径を120nmから230nmに増加させる。
【0101】
[0119] 連続相と不連続相の粘度も、より小さい粒子を形成させる際の鍵となる工程である拡散プロセスに影響する重要なパラメーターである。粒子のサイズは、分散した相の粘度の増加と共に増加するが、粒子のサイズは、より粘度の高い連続相と共に減少する。一般に、有機溶媒の水性溶媒に対する相の比が小さいほど、粒径は小さくなる。
【0102】
[0120] ホモジナイザーの速度及び撹拌も、粒径に影響する;一般に、より高い速度及び撹拌は、粒径の減少を引き起こすが、速度及び撹拌のさらなる増加が粒径をもはや減少させない点が存在する。エマルジョンが高い撹拌だけと比較して、高圧ホモジナイザーを用いてホモジナイズされる場合に、サイズ減少の好ましい影響が存在する。例えば、5%PVA中の20%の相の比で、撹拌を用いる平均粒径は288nmであり、ホモジナイゼーション(300バールの高圧)を用いる平均粒径は231nmである。
【0103】
[0121] 粒子の重要なサイズ減少は、溶媒の拡散を改善するために添加される水の温度を変化させることによって達成することができる。平均粒径は、水温の増加と共に減少する。
【0104】
[0122] 粒子中に封入されたポリペプチドの性質も粒径に影響する。一般に、疎水性ポリペプチドの封入は、より親水性のポリペプチドの封入と比較して、より小さい粒子の形成をもたらす。二重エマルジョンプロセスでは、より親水性のポリペプチドの捕捉は、高分子量のPLGA及びより高い内部相粘度を引き起こす高分子量の第1の界面活性剤を使用することによって改善される。溶媒、ポリマー、及びポリペプチド間の相互作用は、ポリペプチドを粒子中に取り込む効率に影響する。
【0105】
[0123] PLGA分子量は、最終平均粒径に影響する。一般に、分子量が高くなるほど、平均粒径が大きくなる。例えば、PLGAの組成及び分子量が変化するにつれて(例えば、50:50のPLGAについては12から48kDa;75:25のPLGAについては12から98kDa)、平均粒径が変化する(それぞれ、約102nm~154nm;約132nmから152nm)。粒子が同じ分子量である場合であっても、その組成は平均粒径に影響し得る;例えば、50:50の比を有する粒子は、一般的には、75:25の比を有するものよりも小さい粒子を形成する。ポリマー上の末端基も、粒径に影響する。例えば、エステル末端基を用いて調製された粒子は、740nm(PI=0.394)の平均サイズを有する粒子を形成するのに比較して、酸PLGA末端基に関する平均サイズは240nm(PI=0.225)である。
【0106】
[0124] 使用される溶媒も、粒径に影響し得る;溶液の表面張力を減少させる溶媒も、粒径を減少させる。
【0107】
[0125] 有機溶媒は、ポリマー及びポリペプチドの損傷を回避し、最終粒径の減少を促進するために、減圧下での蒸発によって除去される。減圧下での有機溶媒の蒸発は、より小さい粒子を形成させる際により有効である。例えば、減圧下での蒸発は、通常速度の蒸発下でもたらされる平均粒径よりも約30%小さい平均粒径をもたらす。
【0108】
[0126] 超音波処理波長の振幅も、粒子の特徴に影響する。波長の振幅は、液滴サイズがそれ以上変化しない安定なミニエマルジョンを形成するために600から800sの超音波処理で20%を超えるべきである。しかしながら、超音波処理の主な欠点は、形成されるエマルジョンの単分散性の欠如である。
【0109】
[0127] 本発明の粒子の産生において使用することができる有機相としては、限定されるものではないが、塩化メチレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレンカーボネート、及びベンジルアルコールが挙げられる。使用することができる連続相としては、限定されるものではないが、界面活性剤ポロキサマー188が挙げられる。
【0110】
[0128] 様々な界面活性剤を、本発明の粒子の製造において使用することができる。界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性、又は非イオン性であってもよい。ポロキサマー及びポロキサミンファミリー中の界面活性剤は、粒子合成において一般的に使用されている。使用することができる界面活性剤としては、限定されるものではないが、PEG、Tween-80、ゼラチン、デキストラン、プルロニックL-63、PVA、メチルセルロース、レシチン、DMAB、PEMA、デオキシコール酸ナトリウム、ポリ(アクリル酸)、ヒアルロン酸、及び他の負に荷電した天然又は合成の低分子又はポリマーが挙げられる。さらに、生分解性及び生体適合性界面活性剤としては、限定されるものではないが、ビタミンE TPGS(D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)が挙げられる。ある特定の実施形態では、2つの界面活性剤が必要である(例えば、二重エマルジョン蒸発法における)。これらの2つの界面活性剤は、第1のエマルジョンのための疎水性界面活性剤、及び第2のエマルジョンのための疎水性界面活性剤を含んでもよい。
【0111】
[0129] 別の製造技術は、ナノ沈降法を含む。例えば、ポリマーは有機溶媒中に可溶性であるが、有機溶媒は水性相と混和する。水性相はポリマーにとって非溶媒であるため、有機相(ポリマー含有溶液)と水性相とを混合する際に、ポリマーは沈降し、粒子を形成し得る。
【0112】
[0130] 本発明の粒子の産生において使用することができる溶媒としては、限定されるものではないが、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、及びクロリネートファミリーのメンバー、塩化メチレンが挙げられる。有機溶媒の選択は、2つの選択基準を必要とする:ポリマーはこの溶媒中で可溶性でなければならない、及び溶媒は水性相と完全に混和しないものでなければならない。
【0113】
[0131] 本発明の粒子の産生において使用することができる塩としては、限定されるものではないが、塩化マグネシウム六水和物、酢酸マグネシウム四水和物が挙げられる。
【0114】
[0132] 一般的な塩析剤としては、限定されるものではないが、電解質(例えば、塩化ナトリウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム)、又は非電解質(例えば、スクロース)が挙げられる。
【0115】
[0133] 本発明の粒子の安定性及びサイズは、限定されるものではないが、脂肪酸又は短い炭素鎖を含む、化合物の添加によって改善することができる。より長い炭素鎖のラウリン酸の添加は、粒子特性の改善と関連する。さらに、疎水性添加物の添加は、粒径、ポリペプチドの粒子中への取込み、及び放出プロファイルを改善することができる。粒子の調製を、凍結乾燥によって安定化することができる。トレハロースなどの凍結保護剤の添加は、凍結乾燥時の粒子の凝集を減少させることができる。
【0116】
[0134] 現在商業的に利用可能である好適なビーズとしては、FluoSpheres(Molecular Probes, Eugene, Oreg.)などのポリスチレンビーズが挙げられる。
【0117】
[0135] 一部の実施形態では、本発明は、(a)対象への化学剤及び/又は生物剤の送達のために構成された送達足場;並びに(b)抗原特異的寛容の誘導のための抗原結合ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子を含む系を提供する。一部の実施形態では、前記送達足場の少なくとも一部は、微小孔性である。一部の実施形態では、抗原結合ポリ(ラクチド-co-グリコリド)粒子は、前記足場内に封入されている。一部の実施形態では、化学剤及び/又は生物剤は、タンパク質、ペプチド、低分子、核酸、細胞、及び粒子からなる群から選択される。一部の実施形態では、化学剤及び/又は生物剤は、細胞を含み、前記細胞は、膵島細胞を含む。
【0118】
[0136] 物理特性はまた、未熟リンパ球を有する領域での取込み及び保持後のナノ粒子の有用性と関連する。これらのものとしては、剛性又は弾性などの機械的特性が挙げられる。一部の実施形態は、弾性コア、例えば、PEGにおけるような、最近開発され、全身(標的又は免疫ではない)送達のために特徴付けられたPPS-PEG系におけるような、被覆層、例えば、親水性被覆層を有するポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)コアに基づく。弾性コアは、ポリスチレン又は金属ナノ粒子系におけるような実質的に剛性のコアとは対照的である。弾性という用語は、天然又は合成ゴムとは異なるある特定の弾力のある材料を指し、弾性はポリマー業界の当業者にはよく知られた用語である。例えば、架橋したPPSを使用して、疎水性弾性コアを形成させることができる。PPSは、酸化的条件下でポリスルホキシド及び最終的にはポリスルホンに分解するポリマーであり、疎水性ゴムから親水性の水溶性ポリマーに遷移する。他のスルフィドポリマーは、使用に応じて適合させてもよく、ここでスルフィドポリマーという用語は、ポリマー単位(mer)の骨格中に硫黄を有するポリマーを指す。使用することができる他の弾性ポリマーは、約37℃未満である水和条件下でガラス遷移温度を有するポリエステルである。疎水性コア及び被覆層は混ざらない傾向があり、被覆層はコアから離れて立体的に拡張する傾向があるため、疎水性コアを親水性被覆層と共に有利に使用することができる。コアは、その上に層を有する粒子を指す。層は、コアの少なくとも一部を被覆する材料を指す。層は、吸着されていてもよいし、又は共有結合されていてもよい。粒子又はコアは、固体又は中空であってもよい。より高い担持量の疎水性薬物を、弾性疎水性コアを有する粒子によって担持させることができるという点で、弾性疎水性コアは、結晶又はガラス(ポリスチレンの場合におけるような)コアなどの剛性疎水性コアよりも有利である。
【0119】
[0137] 別の物理特性は、表面の親水性である。親水性材料は、それが架橋していない場合、1リットルあたり少なくとも1グラムの水中での溶解度を有してもよい。親水性ポリマーを含む粒子の立体安定化は、非特異的相互作用を減少させることにより、間質からの取込みを改善することができる;しかしながら、粒子の増大したステルス性もまた、未熟リンパ球を有する領域中での食細胞による内在化を減少させることができる。これらの競合する特徴を平衡化させる課題は満たされたが、本出願は、リンパ節中のDC及び他のAPCへの有効なリンパ系送達のためのナノ粒子の作出を実証する。一部の実施形態は、親水性成分、例えば、親水性材料の層を含む。好適な親水性材料の例は、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリサッカリド、ポリアクリル酸、及びポリエーテルのうちの1又は複数である。層中のポリマーの分子量を、例えば、約1,000から約100,000又はさらにそれ以上に、in vivoでの有用な程度の立体障害を提供するように調整することができる;当業者であれば、明示的に記述された範囲内の全ての範囲及び値、例えば、10,000から50,000の間が企図されることをすぐに理解できる。
【0120】
[0138] ナノ粒子は、さらなる反応のための官能基を含んでもよい。さらなる反応のための官能基は、求電子試薬又は求核試薬を含む;これらのものは、他の分子と反応させるのに好都合である。求核試薬の例は、1級アミン、チオール、及びヒドロキシルである。求電子試薬の例は、スクシンイミジルエステル、アルデヒド、イソシアネート、及びマレイミドである。
【0121】
[0139] 当業界で周知の様々な手段を使用して、抗原性ペプチド及びタンパク質を担体ポリマーにコンジュゲートさせることができる。これらの方法は、抗原ペプチド及びタンパク質の生物活性を破壊しない、又は大きく制限しない、十分な数の抗原ペプチド及びタンパク質が、抗原ペプチド又はタンパク質と、同族T細胞受容体との相互作用を可能にする向きで担体ポリマーにコンジュゲートすることができる任意の標準的な化学を含む。一般に、抗原ペプチド若しくはタンパク質のC末端領域、又は抗原ペプチド若しくはタンパク質融合タンパク質のC末端領域を、稼ぎ手にコンジュゲートさせる方法が好ましい。勿論、正確な化学は、稼ぎ手材料の性質、抗原ペプチド若しくはタンパク質へのC末端融合の存在若しくは非存在、及び/又はコンジュゲート化部分の存在若しくは非存在に依存するであろう。
【0122】
[0140] 官能基を、利用可能性のために必要に応じて担体ポリマー上に配置することができる。1つの位置は、側基又は末端として、コアポリマー又はコア上の層であるポリマー又はさもなければ粒子に係留されたポリマー上にあってもよい。例えば、特異的細胞標的化又はタンパク質及びペプチド薬物送達のために容易に官能化することができるナノ粒子を安定化するPEGを記載する例が本明細書に含まれる。
【0123】
コンジュゲーション手順
[0141] 本開示は、担体粒子(例えば、担体ポリマー)のコンジュゲートを提供する。ポリマーは、典型的には、互いに結合した複数の反復単位を含有する化学種である。ポリマーは、1より多い異なる反復単位を含有してもよい。反復単位は、典型的には、モノマーの重合から誘導される。コポリマーとは、具体的には、2つ以上の構造的に異なる反復単位を含有するポリマーを指す。ポリマーの異なる反復単位は、ポリマー鎖中で無作為の順序であってもよく、又は同じ反復単位を、ポリマー中の連続するブロックにグループ化することができる。ポリマー中に2つ以上の反復単位の連続するブロックが存在する場合、ポリマーはブロックコポリマーである。ある特定の実施形態では、ポリマーは、グラフトコポリマーである。本明細書で使用される場合の用語「ポリマー」は、約10より多い反復単位を含有する化学種を指す。
【0124】
[0142] コンジュゲーションのための好適な担体粒子(例えば、担体ポリマー)は、反応のための官能基を含む。本明細書に記載の担体粒子(例えば、担体ポリマー)を、所望の末端官能基を導入する反応によって化学的に改変することができる。末端官能基としては、特に、カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、アミン、アジド、アルキン、アルケン、ケトン、フェノール、ハロゲン化物、イミダゾール、グアニジニウム、カルボキシレート、又はホスフェート基が挙げられる。これらの官能基を、周知の化学的方法を使用して、本明細書の担体粒子(例えば、担体ポリマー)の末端に導入することができる。
【0125】
[0143] 官能基を使用して、担体粒子(例えば、担体ポリマー)と、他のポリマー、他のオリゴマー、ペプチド、タンパク質、低分子、炭水化物、抗体、核酸、及び/又はアプタマーなどの、他の化学種とをさらにコンジュゲートさせることができる。
【0126】
[0144] ある特定の実施形態では、担体粒子(例えば、担体ポリマー)は、カルボジイミド架橋化学を使用して、アミノ含有コンジュゲートパートナーにコンジュゲートすることができるカルボキシル基を含む。カルボジイミド試薬は、アミド又はエステル形成に対するカルボン酸の反応のためのカップリング試薬として使用される。カルボジイミド試薬の例としては、EDCI(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、又はEDC、又はECDI)、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、及びDIC(N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド)が挙げられる。カップリング試薬に加えて、活性化試薬を使用して、反応を容易にすることができる。活性化試薬の例としては、ヒドロキシスクシンイミドが挙げられる。担体粒子(例えば、担体ポリマー)上のカルボジイミド活性化カルボン酸と、アミノ含有コンジュゲートパートナーとの反応は、担体ポリマーとコンジュゲートパートナーとを接続するアミド結合を産生することができる。
【0127】
[0145] ある特定の実施形態では、担体粒子(例えば、担体ポリマー)と、コンジュゲートパートナー(例えば、抗原)とは、多官能性カップリング試薬(例えば、二官能性カップリング試薬)を使用してカップリングされている。多官能性カップリング試薬の選択は、担体粒子(例えば、担体ポリマー)及びコンジュゲートパートナー(例えば、抗原)上に存在する官能基に依存する。
【0128】
[0146] 多官能性カップリング試薬の基は、カルボキシル反応基、カルボニル反応基、アミン反応基、チオール反応基又は光反応基を独立に含んでもよいが、同じ(例えば、直交的)ではない。カルボキシル反応基の例としては、ヒドラジン誘導体及びアミンが挙げられる。カルボニル反応基の例としては、ヒドラジン誘導体及びアミンのようなアルデヒド及びケトン反応基が挙げられる。アミン反応基の例としては、NHS又はスルホ-NHSなどの活性エステル、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサル、エポキシド、オキシラン、カーボネート、ハロゲン化アリール、イミドエステル、無水物などが挙げられる。チオール反応基の例としては、非重合性Michaelアクセプター、ハロアセチル基(ヨードアセチルなど)、ハロゲン化アルキル、マレイミド、アジリジン、アクリロイル基、ビニルスルホン、ベンゾキノン、フルオロベンゼン基(テトラ及びペンタフルオロベンゼン基など)などの求核置換を受けることができる芳香族基、並びにピリジルジスルフィド基及びEllman試薬で活性化されたチオールなどのジスルフィド基が挙げられる。光反応基の例としては、アリールアジド及びハロゲン化アリールアジドが挙げられる。これらの型の基のそれぞれのさらなる例は、当業者には明らかであろう。ある型の反応基を別のものに交換するための反応条件及び方法に関するさらなる例及び情報は、参照により本明細書に組み込まれるHermanson、「Bioconjugate Techniques」、Academic Press、San Diego、1996に提供されている。
【0129】
別のコンジュゲート手順
[0147] エチレンカルボジイミド(EDCI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、2個のエポキシ残基を含有するプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及びエピクロロヒドリンなどのコンジュゲートは、担体ポリマーへのペプチド又はタンパク質の固定のために使用することができる。理論によって束縛されるものではないが、EDCIは、寛容の誘導のために2つの主な機能を実行すると考えられる:(a)遊離アミノ基と遊離カルボキシル基との間のペプチド結合形成を、触媒反応を介してタンパク質/ペプチドを担体ポリマーに化学的にカップリングさせる;及び(b)それらが脾臓中の宿主抗原提示細胞(内皮細胞を含んでもよい)によって拾われるようなアポトーシス細胞死を模倣し、寛容を誘導するように担体を誘導する。自己反応細胞中でのアネルギーの直接的誘導をもたらすのが、非免疫原性様式での宿主T細胞へのこの提示である。さらに、EDCIは、特定の調節性T細胞の誘導のための強力な刺激原として働く。
【0130】
[0148] 1つのシリーズの実施形態では、抗原ペプチド及びタンパク質は、共有的化学結合によって担体ポリマーに結合される。例えば、抗原のC末端の近くにある反応基又は部分(例えば、C末端カルボキシル基、又はアミノ酸側鎖に由来するヒドロキシル、チオール、若しくはアミン基)を、直接的化学反応によって、担体ポリマーの反応基又は部分(例えば、PLA若しくはPGAポリマーのヒドロキシル若しくはカルボキシル基、デンドリマーの末端アミン若しくはカルボキシル基、又はリン脂質のヒドロキシル、カルボキシル若しくはホスフェート基)に直接的にコンジュゲートすることができる。あるいは、抗原ペプチド及びタンパク質と、担体ポリマーとの両方を共有結合でコンジュゲートすることによって、それらを一緒に連結するコンジュゲート化部分が存在してもよい。
【0131】
[0149] 担体ポリマーの反応性カルボキシル基を、それらと、例えば、1-エチル-3-[3,9-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)又はN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)とを反応させることにより、抗原ペプチド又はタンパク質上の遊離アミン(例えば、Lys残基に由来する)に連結することができる。同様に、同じ化学を使用して、担体ポリマーの表面上の遊離アミンと、抗原ペプチド又はタンパク質上の遊離カルボキシル(例えば、C末端に由来する、又はAsp若しくはGlu残基に由来する)とをコンジュゲートさせることができる。あるいは、担体ポリマー上の遊離アミン基は、本質的にはAranoら(1991)Chem.2:71-6により記載されたように、スルホ-SIAB化学を使用して、抗原ペプチド及びタンパク質、又は抗原ペプチド若しくはタンパク質融合タンパク質に共有結合させることができる。
【0132】
[0150] 核酸部分のプラットフォーム部分へのコンジュゲーションは、様々な方法で行うことができ、典型的には、核酸部分及びプラットフォーム分子上に1又は複数の架橋剤及び官能基を含ませることによって行うことができる。連結基は、標準的な合成化学技術を使用してプラットフォームに付加される。連結基は、標準的な合成技術を使用して核酸部分に付加することができる。実務者は、本発明の組合せにおいて使用される抗原のためのいくつかの選択を有する。組合せ中に存在する誘導抗原は、誘導される寛容原性応答の特異性に寄与する。誘導抗原は、望ましくない免疫学的応答に関し、それに対する寛容が求められる標的である、処置される対象中に存在するか又は対象中に入れられる標的抗原と同じであってもよいし、又はそうでなくてもよい。
【0133】
生物学的及び化学的抗原
[0151] 本発明の誘導抗原は、それが粘膜結合成分と組み合わされた場合、本説明による寛容を誘導する能力を有するという条件で、生物学的供給源から単離されたポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、糖脂質、若しくは他の分子であってもよく、又はそれは化学的に合成された低分子、ポリマー、若しくは生物学的材料の誘導体であってもよい。
【0134】
[0152] 一部の実施形態では、本発明は、1又は複数のペプチド、ポリペプチド、及び/又はタンパク質に共有結合でカップリングされた担体ポリマーを提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載のものなどの担体(例えば、PLG担体)は、抗原特異的寛容を誘導する、及び/又は免疫関連疾患(マウスモデルにおけるEAEなど)の開始を防止する、及び/又は元々存在する免疫関連疾患の重症度を低下させるのに有効である。一部の実施形態では、本発明の組成物及び方法により、T細胞はT細胞活性化と関連する初期の事象を開始することができるが、T細胞はエフェクター機能を獲得することができない。例えば、本発明の組成物の投与は、CD69及び/又はCD44上方調節などの、疑似活性化された表現型を有するT細胞をもたらすことができるが、IFN-γ又はIL-17合成の欠如によって示されるものなどのエフェクター機能を示さない。一部の実施形態では、本発明の組成物の投与は、天然の抗原特異的T細胞の、CD25+/Foxp3+表現型を有するものなどの、調節表現型に変換させることなく、疑似活性化された表現型を有するT細胞をもたらす。
【0135】
[0153] 一部の実施形態では、担体は、担体に接着した、担体上に吸着された、担体内に封入された、及び/又は担体中に含有された1又は複数の生物剤又は化学剤を含む。一部の実施形態では、化学剤又は生物剤は、粒子中に封入されている、及び/又は粒子中に含有されている。本発明は、化学剤又は生物剤の性質によって制限されない。そのような薬剤としては、限定されるものではないが、タンパク質、核酸分子、低分子薬物、脂質、炭水化物、細胞、細胞成分などが挙げられる。一部の実施形態では、2つ以上(例えば、3、4、5など)の異なる化学剤又は生物剤が、担体上又は担体内に含まれる。一部の実施形態では、薬剤は、特定の放出速度のために構成される。一部の実施形態では、複数の異なる薬剤が異なる放出速度のために構成される。例えば、第1の薬剤は、数時間にわたって放出してもよいが、第2の薬剤はより長期間(例えば、日、週、月など)にわたって放出する。一部の実施形態では、担体又はその一部は、生物剤又は化学剤の遅延放出のために構成される。一部の実施形態では、遅延放出は、少なくとも30日(例えば、40日、50日、60日、70日、80日、90日、100日、180日など)の期間にわたって生物学的に活性な量の薬剤の放出を提供する。一部の実施形態では、担体又はその一部は、細胞の孔の中での内部増殖を可能にするのに十分に多孔性であるように構成される。孔のサイズは、目的の特定の細胞型及び/又は望まれる内部増殖の量のために選択することができる。一部の実施形態では、粒子は、薬物又は免疫調節剤などの、他の非ペプチド活性剤を含まない目的の抗原を含む。さらに、一部の実施形態では、本発明の粒子は、目的の抗原に加えて、免疫刺激又は免疫抑制ペプチドを含有しない。さらに、一部の実施形態では、粒子は、表面上に、又は粒子内に封入された、他のタンパク質又はペプチド(例えば、共刺激分子、MHC分子、免疫刺激ペプチド又は免疫抑制ペプチド)を含有しない。
【0136】
[0154] 本発明の粒子中への抗原、生物剤及び/又は化学剤の封入は、驚くべきことに、免疫寛容を誘導し、いくつかの利点を有することが見出された。第1に、封入された粒子は、より遅いサイトカイン応答を有する。第2に、複数の抗原、生物剤、及び/又は化学剤を使用する場合、封入は、薬剤が粒子の表面に結合した場合に起こり得るこれらの様々な分子間での競合を除去する。第3に、封入により、より多くの抗原、生物剤、及び/又は化学剤を、粒子に組み込むことができる。第4に、封入により、複雑なタンパク質抗原又は臓器ホモジネート(例えば、1型糖尿病のための膵臓ホモジネート又はピーナッツアレルギーにおけるピーナッツ抽出物)のより容易な使用が可能になる。最後に、粒子の表面へのコンジュゲーションの代わりに、粒子内への抗原、生物剤、及び/又は化学剤の封入は、粒子の表面上の正味の負電荷を維持する。本発明の粒子中への抗原、生物剤、及び/又は化学剤の封入を、当業界で公知の任意の方法によって実施することができる。一実施形態では、ポリペプチド抗原は、二重エマルジョンプロセスによって粒子中に封入される。さらなる実施形態では、ポリペプチド抗原は水溶性である。
【0137】
[0155] 別の実施形態では、ポリペプチド抗原は、単一エマルジョンプロセスによって粒子中に封入される。さらなる実施形態では、ポリペプチド抗原は、より疎水性である。時には、二重エマルジョンプロセスは、親水性活性成分の漏出及び低い捕捉効率をもたらし得る、大きい粒子の形成をもたらす。合体及びオストワルト熟成は、二重エマルジョン液滴を脱安定化し得る2つの機構であり、親水性活性成分の有機相を介する拡散は、低レベルの捕捉された活性成分の原因となる主な機構である。一部の実施形態では、ナノ粒子のサイズを減少させることが有益であり得る。これを達成するための1つの戦略は、第2の強力な剪断速度を加えることである。漏出効果を、内部水相の粘度の増加及び界面活性剤分子量の増大によって達成される、高いポリマー濃度及び高いポリマー分子量を使用することによって軽減することができる。
【0138】
[0156] ある特定の実施形態では、本発明は、上(又は中)に細胞又は他の生物剤若しくは化学剤を有する担体を提供する。細胞が使用される場合、担体は、特定の細胞型に限定されない。一部の実施形態では、担体は、その上に膵島細胞を有する。一部の実施形態では、微小孔性担体は、その上にECMタンパク質及び/又はエキセンジン-4をさらに有する。担体は、特定の型に限定されない。一部の実施形態では、担体は、変化する多孔性(例えば、変化する孔径、孔の深さ、及び/又は孔密度)の領域を有する。一部の実施形態では、担体は、その上(又は中)に薬剤、DNA、RNA、細胞外マトリックスタンパク質、エキセンジン-4などを有する。ある特定の実施形態では、本発明は、膵島細胞にそのような担体を移植するための方法を提供する。本発明のある特定の実施形態では、誘導抗原は、単一の単離された、又は組換え産生された分子である。標的抗原が宿主中の様々な位置に播種された状態を処置するためには、一般的には、誘導抗原が標的抗原と同一であるか、又は免疫学的に関連することが必要である。そのような抗原の例は、多くのポリヌクレオチド抗原、及び一部の炭水化物抗原(血液型抗原など)である。
【0139】
[0157] 任意の好適な抗原が、本発明の範囲内で有用であり得る。一部の実施形態では、誘導抗原は、誘導される寛容原性応答の特異性に寄与する。誘導抗原は、望ましくない免疫学的応答に関し、それに対する寛容が求められる標的である、処置される対象中に存在するか又は対象中に入れられる抗原である標的抗原と同じであってもよいし、又はそれでなくてもよい。
【0140】
[0158] 標的抗原が、特定の臓器、細胞、又は組織型上に優先的に発現される場合、実務者は再度、標的抗原と同一であるか、又はそれと免疫学的に関連する誘導抗原を使用する選択肢を有する。しかしながら、標的にとって第三者である抗原を使用するさらなる選択肢もある。これは、標的抗原と免疫学的に関連しなくてもよいが、標的抗原が発現される組織中では優先的に発現される抗原である。第三者抑制の有効性に関する作業理論は、抑制が、標的細胞における免疫応答のエフェクターアームを下方調節する活性細胞媒介プロセスであるということである。抑制細胞は、粘膜表面で誘導抗原によって特異的に刺激され、第三者抗原が優先的に発現される組織部位に存在する。次いで、相互作用又はサイトカイン媒介機構により、局在化された抑制細胞は、それらが反応性であるかどうかに関係なく、近隣のエフェクター細胞(又はエフェクター細胞の誘導因子)を下方調節する。エフェクター細胞が誘導抗原とは異なる標的に特異的である場合、その結果は第三者効果である。第三者反応及びこの効果を有する寛容原性ペプチドの一覧のさらなる詳細化のために、読者には国際特許出願公開WO93/16724を参照されたい。第三者理論の意味あいは、当業者が、本発明を実施するために寛容性が望まれる特定の標的抗原を同定又は単離する必要はないということである。実務者は、誘導抗原としての使用のための標的部位で優先的に発現される少なくとも1つの分子を取得することだけできればよい。
【0141】
[0159] 本発明のある特定の実施形態では、誘導抗原は、処置される個体中で発現されるものと同じ形態にはないが、その断片又は誘導体である。本発明の誘導抗原は、適切な特異性の分子に基づくペプチドを含むが、断片化、残基置換、標識化、コンジュゲーション、及び/又は他の機能的特性を有するペプチドとの融合によって適合化される。適合化は、限定されるものではないが、毒性若しくは免疫原性などの任意の望ましくない特性の除去;又は粘膜結合、粘膜浸透、若しくは免疫応答の寛容原性アームの刺激などの、任意の望ましい特性の増強を含む任意の望ましい目的のために実施することができる。本明細書で使用される、インスリンペプチド、コラーゲンペプチド、及びミエリン塩基性タンパク質ペプチドなどの用語は、インタクトなサブユニットだけでなく、類似体であるそれぞれの分子の少なくとも10個、好ましくは20個の連続するアミノ酸と相同である(アミノ酸レベルで、好ましくは、70%同一、より好ましくは、80%同一であり、さらにより好ましくは90%同一である)領域を含有し、誘導体の相同領域が、それぞれの親分子と、標的抗原に対する寛容を誘導する能力を共有する、アロタイプ及び合成バリアント、断片、融合ペプチド、コンジュゲート、並びに他の誘導体も指す。
【0142】
[0160] 誘導抗原の寛容原性領域は、抗体応答の刺激のための免疫優勢エピトープとは異なることが多いと認識されている。寛容原性領域は、一般的には、T細胞を含む特定の細胞相互作用において提示され得る領域である。寛容原性領域は、インタクトな抗原の提示の際に存在し、寛容を誘導することができる。一部の抗原は、天然抗原のプロセッシング及び提示が通常は寛容を誘発しないという点で、秘密の寛容原性領域を含有する。秘密の抗原の詳細化及びその同定は、国際特許出願公開WO94/27634に見出される。
【0143】
[0161] 本発明のある特定の実施形態では、2つ、3つ、又はより多数の誘導抗原が使用される。複数の標的抗原が存在する場合にこれらの実施形態を実行すること、又は標的のための複数の第三者を提供することが望ましい。例えば、インスリンとグルカゴンの両方を、糖尿病の処置において粘膜結合成分と混合することができる。また、いくつかの可能な代替標的を包含する抗原カクテルを提供することも望ましい。例えば、組織適合抗原断片のカクテルを使用して、未知の表現型の同種移植片を用いる将来の移植を見越して対象を寛容化することができる。ヒト白血球抗原の同種バリアント領域は当業界で公知であり、例えば、Immunogenetics 29:231、1989を参照されたい。別の例では、アレルゲンの混合物は、アトピーの処置のための誘導抗原として働くことができる。
【0144】
[0162] 分子の性質に応じて、当業界で公知のいくつかの技術によって、誘導抗原を調製することができる。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び炭水化物抗原は、それらが富化される処置される種の細胞から単離することができる。短いペプチドは、アミノ酸合成によって都合よく調製される。既知の配列のより長いタンパク質を、天然の供給源又はベクターからコード配列を合成するか、又はコード配列をPCR増幅した後、好適な細菌又は真核宿主細胞中でコード配列を発現させることによって調製することができる。
【0145】
[0163] 本発明のある特定の実施形態では、組合せは、細胞又は組織から得られた抗原の複雑な混合物を含み、その1又は複数は抗原を誘導する役割を果たす。抗原は、インタクトな、又はホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、若しくはアルコールなどの固定剤で処理された、全細胞の形態にあってもよい。抗原は、細胞又は組織の界面活性剤による溶解又は機械的破壊、次いで、明澄化によって作出された、細胞溶解物の形態にあってもよい。抗原はまた、細胞内分画化、特に、示差遠心分離、任意選択により、次いで、界面活性剤による溶解及び透析などの技術による、細胞膜の富化によって取得することもできる。可溶化された膜タンパク質の親和性又はイオン交換クロマトグラフィーなどの、他の分離技術も好適である。
【0146】
[0164] 一実施形態では、抗原性ペプチド又はタンパク質は、自己抗原、同種抗原又は移植抗原である。さらに別の特定の実施形態では、自己抗原は、ミエリン塩基性タンパク質、コラーゲン又はその断片、DNA、核及び核小体タンパク質、ミトコンドリアタンパク質並びに膵臓β細胞タンパク質からなる群から選択される。
【0147】
[0165] 本発明は、寛容が望まれる抗原を投与することにより、自己免疫疾患の処置のために自己抗原に対する寛容の誘導を提供する。例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)に対する自己抗体は、多発性硬化症を有する患者において観察され、したがって、MBP抗原性ペプチド又はタンパク質を、本発明において使用して、多発性硬化症を処置及び防止するために本発明の組成物を使用して送達することができる。
【0148】
[0166] 別の非限定例として、二卵性双生児からの移植の候補である個体は、移植される抗原がレシピエントにとって外来であるため、移植される細胞、組織又は臓器の拒絶に苦しむことがある。意図される移植片に対するレシピエント個体の予めの寛容は、後の拒絶を無効化するか、又は軽減する。慢性抗拒絶療法の軽減又は除去は、本発明の実施によって達成することができる。別の例では、多くの自己免疫疾患は、内因性又は自己抗原に対する細胞性免疫応答を特徴とする。内因性抗原に対する免疫系の寛容は、疾患を制御するのに望ましい。
【0149】
[0167] さらなる例では、仕事上で遭遇し得るものなどの、産業汚染物質又は化学物質に対する個体の感作は、免疫応答の危険を呈する。特に、個体の内因性タンパク質と反応した化学物質の形態での、化学物質に対する個体の免疫系の予めの寛容は、免疫応答の後の職業的発達を防止することが望ましい。
【0150】
[0168] アレルゲンは、免疫応答の寛容がまた望ましい他の抗原である。一実施形態では、抗原は、グリアデンである。さらなる実施形態では、抗原は、A-グリアデンである。
【0151】
[0169] 注目すべきことに、病原性自己抗原が未知である疾患においても、解剖学的に近接して存在する抗原を使用して第三者抑制を誘導することができる。例えば、コラーゲンに対する自己抗体は、関節リウマチにおいて観察され、したがって、コラーゲンをコードする遺伝子を、抗原発現遺伝子モジュールとして使用して、関節リウマチを処置することができる(例えば、Choy(2000)Curr Opin Investig Drugs 1: 58-62を参照されたい)。さらに、ベータ細胞自己抗原に対する寛容を使用して、1型糖尿病の発生を防止することができる(例えば、Bach及びChatenoud(2001)Ann Rev Immunol 19:131-161を参照されたい)。
【0152】
[0170] 別の例として、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)に対する自己抗体は、自己免疫性脳脊髄炎及び多くの他のCNS疾患並びに多発性硬化症において観察される(例えば、Iglesiasら(2001)Glia 36:22-34を参照されたい)。したがって、本発明におけるMOG抗原発現構築物の使用により、多発性硬化症並びに中枢神経系の関連する自己免疫障害を処置することができる。
【0153】
[0171] 自己免疫疾患の処置における使用のための候補自己抗原のさらに他の例としては、インスリン依存性糖尿病を処置するための、膵臓ベータ細胞抗原、インスリン及びGAD;関節リウマチにおける使用のための11型コラーゲン、ヒト軟骨gp39(HCgp39)及びgp130-RAPS;多発性硬化症を処置するためのミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)及びミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG、上記を参照されたい);強皮症を処置するためのフィブリラリン、及び核小体低分子タンパク質(snoRNP);グレーブス病の処置における使用のための甲状腺刺激因子受容体(TSH-R);全身性エリテマトーデスの処置における使用のための核抗原、ヒストン、糖タンパク質gp70及びリボソームタンパク質;原発性胆汁性肝硬変の処置における使用のためのピルビン酸デヒドロゲナーゼデヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ(PCD-E2);円形脱毛症における使用のための毛包抗原;並びに潰瘍性大腸炎の処置における使用のためのヒトトロポミオシンアイソフォーム5(hTM5)が挙げられる。
【0154】
[0172] 一実施形態では、本発明の粒子は、アレルギー、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患若しくは障害と関連する1又は複数のエピトープを含む抗原に共有結合でカップリングされている。抗原は、1又は複数のコピーのエピトープを含んでもよい。一実施形態では、抗原は、1つの疾患又は障害と関連する単一のエピトープを含む。さらなる実施形態では、抗原は、同じ疾患又は障害と関連する1より多いエピトープを含む。さらなる実施形態では、抗原は、異なる疾患又は障害と関連する1より多いエピトープを含む。さらなる実施形態では、抗原は、1又は複数のアレルギーと関連する1又は複数のエピトープを含む。さらなる実施形態では、抗原は、多発性硬化症、1型糖尿病、セリアック病、及び/又はクローン病若しくは潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患と関連する1又は複数のエピトープを含む。一実施形態では、エピトープは、ミエリン塩基性タンパク質(例えば、配列番号4975及び4976)、プロテオリピドタンパク質(例えば、配列番号4977)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(例えば、配列番号1及び4978)、アクアポリン(例えば、配列番号4979)、ミエリン関連糖タンパク質(例えば、配列番号4980)、インスリン(例えば、配列番号4981)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(例えば、配列番号4982)、グリアジン(例えば、配列番号4983~4985又は配列番号5136~5140)、IV型コラーゲンのα3鎖(例えば、配列番号5017)、又はその断片、相同体、若しくはアイソフォームに由来する。さらなる実施形態では、エピトープは、グリアジン及び/又はグルテニンに由来するものなどのグルテンに由来するものである。一実施形態では、エピトープは、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,476,228号に記載のものなどの、インスリン相同体に由来するものである。一実施形態では、グリアデンエピトープは、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第20110293644号中の配列番号13、14、16、320、又は321である。
【0155】
[0173] 本発明によって企図される様々な自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患若しくは障害と関連するエピトープのさらなる非限定例は、表2及び表3に記載される。
【0156】
【0157】
[0174] 全てのエピトープが線状エピトープではない;エピトープは、不連続の立体的エピトープであってもよい。自己免疫疾患又は炎症性疾患及び/若しくは障害と関連するいくつかの不連続エピトープが公知である。不連続エピトープの非限定例は、表3に記載される。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
[0175] 抗原及び/又はエピトープの組合せは、単離された細胞を用いる、又は動物モデルにおける実験を行うことにより、寛容を促進するその能力について試験することができる。
【0162】
[0176] 一部の実施形態では、本発明の寛容誘導組成物は、ラパマイシン、タクロリムスなどの免疫調節剤を含有する。
【0163】
[0177] 一部の実施形態では、本発明の寛容誘導組成物は、Janusキナーゼアンタゴニスト及び/又はJanusキナーゼアゴニストなどの免疫調節剤を含有する。
【0164】
[0178] 一部の実施形態では、本発明の寛容誘導組成物は、サイトカイン及び/又はサイトカインに対する抗体などの免疫調節剤を含有する。
【0165】
[0179] 一部の実施形態では、本発明の寛容誘導組成物は、T細胞の調節を促進することができる増殖因子を含有する。そのような因子は、インスリン、トランスフォーミング増殖因子ベータ、血清アルブミン及び免疫細胞調節を支援することが知られる任意の他の因子を含んでもよい。
【0166】
[0180] 一部の実施形態では、本発明の寛容誘導組成物は、寛容誘導を促進することができる抗体を含有する。
【0167】
[0181] 一部の実施形態では、本発明の寛容誘導組成物は、アポトーシスシグナリング分子(例えば、抗原性ペプチド又は他の抗原性分子に加えて)を含有する。一部の実施形態では、アポトーシスシグナリング分子は、担体の表面にカップリングされている、及び/又はそれと結合する。一部の実施形態では、アポトーシスシグナリング分子により、宿主の網膜内皮系の細胞などの、宿主の抗原提示細胞によるアポトーシス体として担体を認識することができる;これにより、寛容誘導様式で結合したペプチドエピトープの提示が可能になる。理論によって束縛されるものではないが、これは、MHCクラスI/II、及び共刺激分子などの、免疫細胞刺激に関与する分子の上方調節を防止すると推測される。これらのアポトーシスシグナリング分子はまた、食細胞マーカーとして役立ち得る。例えば、本発明にとって好適なアポトーシスシグナリング分子は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第20050113297号に記載されている。本発明にとって好適な分子は、マクロファージ、樹状細胞、単球、顆粒球及び好中球を含む、食細胞を標的とする分子を含む。
【0168】
[0182] 一部の実施形態では、アポトーシスシグナリング分子として好適な分子は、結合したペプチドの寛容を増強するように作用する。さらに、アポトーシスシグナリング分子に結合した担体を、アポトーシス細胞認識においてC1qによって結合させることができる(Paidassiら(2008)J. Immunol. 180:2329-2338;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、アポトーシスシグナリング分子として有用であり得る分子としては、ホスファチジルセリン、アネキシン-1、アネキシン-5、乳脂肪球-EGF-因子8(MFG-E8)、又はトロンボスポンジンのファミリー(例えば、トロンボスポンジン-1(TSP-1))が挙げられる。本発明と共にアポトーシスシグナリング分子としての使用にとって好適な様々な分子が、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2012/0076831号に考察されている。
【0169】
[0183] 一部の実施形態では、アポトーシスシグナリング分子を、抗原特異的ペプチドにコンジュゲートさせることができる。一部の例では、アポトーシスシグナリング分子及び抗原特異的ペプチドは、融合タンパク質の作出によってコンジュゲートされる。例えば、融合タンパク質は、少なくとも1分子のアポトーシスシグナリング分子(又はその断片若しくはバリアント)にカップリングされた少なくとも1つの抗原特異的ペプチド(又はその断片若しくはバリアント)を含んでもよい。融合タンパク質の作出について、用語「融合タンパク質」、「融合ペプチド」、「融合ポリペプチド」、及び「キメラペプチド」は、互換的に使用される。抗原特異的ペプチドの好適な断片は、本発明の所望の抗原特異的寛容機能を生成する機能を保持する完全長ペプチドの任意の断片を含む。融合タンパク質を、当業界で理解される様々な手段(例えば、遺伝子融合、化学的コンジュゲーションなど)によって作出することができる。2つのタンパク質は、直接的に、又はアミノ酸リンカーを介して融合することができる。融合タンパク質を形成するポリペプチドは、典型的には、C末端をN末端に連結するが、それらを、C末端をC末端に、N末端をN末端に、又はN末端をC末端に連結することもできる。融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序にあってもよい。ペプチドリンカー配列を使用して、各ポリペプチドがその二次及び三次構造に確実に折り畳まれるのに十分な距離によって、第1及び第2のポリペプチド成分を分離することができる。リンカーとして有用に使用することができるアミノ酸配列は、Marateaら、Gene 40:39-46(1985);Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258-8262(1986);米国特許第4,935,233号及び米国特許第4,751,180号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されたものを含む。リンカー配列は、一般には、1から約50アミノ酸長であってよい。一部の実施形態では、例えば、第1及び第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、立体障害を防止するために使用することができる非必須N末端アミノ酸領域を有する場合、リンカー配列は必要ではない、及び/又は使用されない。
【0170】
[0184] 寛容原性活性のための代用物は、標的部位での適切なサイトカインの産生を刺激するインタクトな抗原又は断片の能力である。標的部位でサプレッサーT細胞により放出される免疫調節サイトカインは、TGF-βであると考えられる(Millerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:421, 1992)。寛容中に産生され得る他の因子は、サイトカインIL4及びIL-10、並びにメディエータPGEである。対照的に、活発な免疫破壊を受けている組織中のリンパ球は、IL-1、IL-2、IL-6、及びγ-IFNなどのサイトカインを分泌する。したがって、抗原を誘導する候補の効率を、適切な型のサイトカインを刺激するその能力を測定することによって評価することができる。
【0171】
[0185] この点を考慮して、誘導抗原の寛容原性エピトープ、有効な粘膜結合成分、有効な組合せ、又は粘膜投与の有効な様式及びスケジュールのための迅速なスクリーニング試験を、in vitroでの細胞アッセイのためのドナーとして同系動物を使用して行うことができる。動物を、試験組成物を用いて粘膜表面で処置し、ある時には、完全Freundアジュバント中の標的抗原の非経口投与でチャレンジする。脾臓細胞を単離し、約50μg/mLの濃度の標的抗原の存在下、in vitroで培養する。標的抗原を、候補タンパク質又はサブ断片と置換して、寛容原性エピトープの位置をマッピングすることができる。培地中へのサイトカイン分泌を、標準的なイムノアッセイによって定量することができる。
【0172】
[0186] 他の細胞の活性を抑制する細胞の能力を、標的抗原で免疫された動物から単離された細胞を使用して、又は標的抗原に応答する細胞株を作出することによって決定することができる(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Ben-Nunら、Eur. J. Immunol. 11 :195, 1981)。この実験の1つの変形では、サプレッサー細胞集団を軽度に照射(約1000から1250rad)して、増殖を防止し、サプレッサーを、応答細胞と共に同時培養した後、トリチウム化されたチミジンの取込み(又はMTT)を使用して、応答細胞の増殖活性を定量する。別の変形では、サプレッサー細胞集団及び応答細胞集団を、ポリカーボネート膜によって隔てられた、互いに1mm以内で集団を同時インキュベートすることができる、二重チャンバートランスウェル培養系(Coster, Cambridge Mass.)の上レベル及び下レベルで培養する(WO93/16724)。応答細胞の増殖活性を別々に測定することができるため、この手法では、サプレッサー細胞集団の照射は不必要である。
【0173】
[0187] 標的抗原が既に個体中に存在する本発明の実施形態では、抗原を単離するか、又はそれを粘膜結合成分と予め混合する必要はない。例えば、抗原を、病理学的状態(炎症性腸疾患若しくはセリアック病など)の結果として、又は食物アレルゲンの消化を介して、ある特定の様式で、個体中で発現させることができる。1又は複数の用量又は製剤中の粘膜結合成分を与え、in situで抗原に対する寛容化を促進するその能力を決定することによって、試験を実施する。
【0174】
[0188] 特定の疾患の処置のための組成物の有効性及び投与の様式を、対応する動物疾患モデルにおいて詳細化することもできる。疾患の症状を減少させるか、又は遅延させる処置の能力を、疾患の循環している生化学的及び免疫学的特質、影響を受けた組織の免疫組織学、並びに使用されるモデルにとって適切な全体的な臨床特性のレベルでモニタリングする。試験するために使用することができる動物モデルの非限定例は、以下のセクションに含まれる。
【0175】
[0189] 本発明は、TH1応答、TH2応答、TH17応答、又はこれらの応答の組合せを調節することによる寛容の調節を企図する。TH1応答の調節は、例えば、インターフェロン-ガンマの発現を変化させることを包含する。TH2応答の調節は、例えば、IL-4、IL-5、IL-10、及びIL-13の任意の組合せの発現を変化させることを包含する。典型的には、TH2応答の増加(減少)は、IL-4、IL-5、IL-10、又はIL-13の少なくとも1つの発現の増加(減少)を含む;より典型的には、TH2応答の増加(減少)は、IL-4、IL-5、IL-10、又はEL-13の少なくとも2つの発現の増加を含み、最も典型的には、TH2応答の増加(減少)は、DL-4、IL-5、IL-10、又はIL-13の少なくとも3つの増加を含むが、理想的には、TH2応答の増加は、IL-4、IL-5、IL-10、及びIL-13の全部の発現の増加(減少)を含む。TH17の調節は、例えば、TGF-ベータ、IL-6、IL-21及びIL23の発現、並びにIL-17、IL-21及びIL-22の効果レベルを変化させることを包含する。
【0176】
[0190] 本発明の組成物及び方法の有効性を評価するための他の好適な方法は、例えば、米国特許出願第2012/0076831号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に考察されているように、当業界で理解されている。
【0177】
[0191] 本発明のある特定の実施形態は、治療的介入によって以前に寛容化されていない個体における免疫寛容のプライミングに関する。これらの実施形態は一般に、抗原と粘膜結合成分との組合せの複数回の投与を含む。典型的には、少なくとも3回の投与、頻繁には、少なくとも4回の投与、時には、少なくとも6回の投与を、プライミング中に実施して、長く続く結果を達成するが、対象は処置の経過の早期に寛容の兆候を示してもよい。最も頻繁には、各用量は、ボーラス投与として与えられるが、粘膜放出を可能にする持続製剤も好適である。複数回の投与を実施する場合、投与間の時間は、一般的には、1日から3週間の間、典型的には、約3日から2週間の間である。一般的には、同じ抗原及び粘膜結合成分は同じ濃度で存在し、投与は同じ粘膜表面に与えられるが、処置の経過中のこれらの変数のいずれかの変化に対応することができる。
【0178】
[0192] 本発明の他の実施形態は、以前に確立された免疫寛容の持続性の強化又は延長に関する。これらの実施形態は、一般的には、確立された寛容が減少するか、又は減少するリスクがある場合、同時に1回の投与又は短い処置経過を含む。強化は、一般的には、プライミング又は以前の強化の1カ月から1年後、及び典型的には、2から6カ月後に実施される。本発明はまた、週2回、毎週、隔週、又は任意の他の規則的なスケジュールで行われる投与のスケジュールでの寛容の規則的な維持を含む実施形態も含む。
【0179】
[0193] 本発明の粒子を、それを必要とする対象における炎症性免疫応答を抑制する、又はそれを必要とする対象における細菌若しくはウイルス感染を処置するのに有効な任意の用量で与えることができる。ある特定の実施形態では、約102から約1020個の粒子を、個体に提供する。さらなる実施形態では、約103から約1015個の間の粒子を提供する。さらなる実施形態では、約106から約1012個の間の粒子を提供する。さらなる実施形態では、約108から約1010個の間の粒子を提供する。好ましい実施形態では、好ましい用量は、0.1%の個体/mlである。したがって、0.5μmのビーズについては、好ましい用量は、約4x109個のビーズであり、0.05μmのビーズについては、好ましい用量は、約4x1012個のビーズであり、3μmのビーズについては、好ましい用量は、2x107個のビーズである。一部の実施形態では、粒子用量は、約25mg/mLから約50mg/mLである。一部の実施形態では、粒子用量は、約50mg/mLから約100mg/mLである。一部の実施形態では、粒子用量は、約100mg/mLから約150mg/mLである。一部の実施形態では、粒子用量は、約150mg/mLから約200mg/mLである。一部の実施形態では、粒子用量は、約200mg/mLから約250mg/mLである。一部の実施形態では、粒子用量は、約250mg/mLから約300mg/mLである。一部の実施形態では、粒子用量は、約300mg/mL以上である。しかしながら、処置される特定の状態を処置するのに有効である任意の用量が、本発明によって包含される。
【0180】
[0194] 本発明は、自己免疫疾患、移植片拒絶、酵素欠損及びアレルギー反応などの免疫関連障害の処置にとって有用である。免疫寛容を誘導するための合成の生体適合性粒子系の置換は、容易な製造、治療剤の広い利用性をもたらし、試料間の不均一性を増加させ、潜在的な処置部位の数を増加させ、担体細胞に対するアレルギー応答の可能性を劇的に低下させることができる。
【0181】
[0195] 本明細書で使用される用語「免疫応答」は、T細胞媒介性及び/又はB細胞媒介性免疫応答を含む。例示的な免疫応答は、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生及び細胞性細胞傷害を含む。さらに、免疫応答の用語は、T細胞活性化により間接的に行われる免疫応答、例えば、抗体産生(体液性応答)及びサイトカイン応答細胞、例えば、マクロファージの活性化を含む。免疫応答に関与する免疫細胞としては、B細胞及びT細胞(CD4+、CD8+、Th1及びTh2細胞)などのリンパ球;抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球、ランゲルハンス細胞などの専門的抗原提示細胞、並びにケラチノサイト、内皮細胞、アストロサイト、線維芽細胞、オリゴデンドロサイトなどの非専門的抗原提示細胞);ナチュラルキラー細胞;マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球などの骨髄性細胞が挙げられる。一部の実施形態では、本発明の改変された粒子は、炎症部位への炎症細胞輸送を減少させるのに有効である。
【0182】
[0196] 本明細書で使用される場合、用語「アネルギー」、「寛容」又は「抗原特異的寛容」とは、T細胞受容体媒介性刺激に対するT細胞の不感受性を指す。そのような不感受性は、一般的には抗原特異的であり、抗原性ペプチドへの曝露が停止した後にも持続する。例えば、T細胞におけるアネルギーは、サイトカイン産生、例えば、IL-2の欠如を特徴とする。T細胞アネルギーは、T細胞が抗原に曝露され、第2のシグナル(共刺激シグナル)の非存在下で第1のシグナル(T細胞受容体又はCD3媒介性シグナル)を受ける場合に起こる。これらの条件下では、細胞の同じ抗原への再曝露(再曝露が共刺激分子の存在下で起こる場合であっても)は、サイトカイン産生の失敗及び続いて、増殖の失敗をもたらす。かくして、サイトカイン産生の失敗は、増殖を防止する。しかしながら、アネルギーT細胞は、サイトカイン(例えば、IL-2)と共に培養した場合、増殖することができる。例えば、T細胞アネルギーは、ELISAによって、又は指標細胞株を使用する増殖アッセイによって測定された場合、Tリンパ球によるIL-2産生の欠如によって観察することもできる。あるいは、リポーター遺伝子構築物を使用することができる。例えば、アネルギーT細胞は、5’IL-2遺伝子エンハンサーの制御下の異種プロモーターにより、又はエンハンサー内に見出すことができるAPI配列のマルチマーにより誘導されるDL-2遺伝子転写を開始することができない(Kangら、1992 Science. 257:1134)。
【0183】
[0197] 本明細書で使用される用語「免疫寛容」とは、未処置の対象と比較して、一定割合の処置された対象に対して実施される方法を指し、a)特異的免疫応答のレベルの低下(抗原特異的エフェクターTリンパ球、Bリンパ球、抗体、若しくはその等価物によって少なくとも部分的に媒介されると考えられる);b)特異的免疫応答の開始若しくは進行の遅延;又はc)特異的免疫応答の開始若しくは進行のリスクの軽減を指す。「特異的」免疫寛容は、他の抗原と比較してある特定の抗原に対して免疫寛容が優先的に誘発される場合に起こる。「非特異的」免疫寛容は、炎症性免疫応答を誘導する抗原に対して免疫寛容が無差別に誘発される場合に起こる。「疑似特異的」免疫寛容は、保護免疫応答を誘導する他の抗原ではなく、病理学的免疫応答をもたらす抗原に対して免疫寛容が半無差別に誘発される場合に起こる。
【0184】
[0198] 自己抗原及び自己免疫疾患に対する寛容は、胸腺における自己反応性T細胞の陰性選択を含む様々な機構並びに胸腺欠失を逃れ、末梢中に見出されるこれらの自己反応性T細胞に対する末梢寛容の機構によって達成される。末梢T細胞寛容を提供する機構の例としては、自己抗原の「無視」、自己抗原に対するアネルギー又は非応答性、サイトカイン免疫偏向、及び自己反応性T細胞の活性化誘導細胞死が挙げられる。さらに、調節性T細胞は、末梢寛容の媒介に関与することが示されている。例えば、Walkerら(2002)Nat.Rev.Immunol.2:11-19;Shevachら(2001)Immunol.Rev.182:58-67を参照されたい。一部の状況では、自己抗原に対する末梢寛容は失われ(又は破壊され)、結果として自己免疫応答が起こる。例えば、EAEに関する動物モデルでは、TLR先天性免疫受容体を介する抗原提示細胞(APC)の活性化は、自己寛容を破壊し、EAEの誘導をもたらすことが示された(Waldnerら(2004)J. Clin. Invest. 113:990-997)。
【0185】
[0199] したがって、一部の実施形態では、本発明は、TLR7/8、TLR9、及び/又はTLR7/8/9依存的細胞刺激を抑制するか、又は減少させながら、抗原提示を増加させるための方法を提供する。本明細書に記載されるように、特定の改変された粒子の投与は、免疫刺激ポリヌクレオチドと関連するTLR7/8、TLR9、及び/又はTLR7/8/9依存的細胞応答を抑制しながら、DC又はAPCによる抗原提示をもたらす。そのような抑制は、1又は複数のTLR関連サイトカインレベルの低下を含んでもよい。
【0186】
[0200] 上記で考察されたように、本発明は、Mac-1及びLFA-1媒介性障害の処置にとって有用な生物学的特性を有する新規化合物を提供する。
【0187】
医薬組成物
[0201] したがって、本発明の別の態様では、寛容化免疫改変粒子を含み、任意選択により、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。ある特定の実施形態では、これらの組成物は、任意選択により、1又は複数のさらなる治療剤をさらに含む。あるいは、本発明の改変粒子は、1又は複数の他の治療剤の投与と共に、それを必要とする患者に投与することができる。例えば、本発明の化合物との共同投与若しくは医薬組成物への含有のためのさらなる治療剤は、認可された抗炎症剤であってよいか、又はそれは未制御の炎症性免疫応答又は細菌若しくはウイルス感染を特徴とする任意の障害の処置のための認可を最終的に取得する米国食品医薬品局の認可を受けているいくつかの薬剤のいずれか1つであってもよい。また、本発明のある特定の改変粒子が処置のために遊離形態で、又は適切な場合、その薬学的に許容される誘導体として存在してもよいことも理解されるであろう。
【0188】
[0202] 本発明の医薬組成物は、本明細書で使用される場合、望ましい特定の剤形に適した、任意かつ全ての溶媒、希釈剤、又は他の液体媒体、分散若しくは懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤若しくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤などを含む、薬学的に許容される担体をさらに含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第6版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton, Pa.,1980)は、医薬組成物を製剤化する際に使用される様々な担体及びその調製のための公知の技術を開示している。望ましくない生物学的効果をもたらすか、又はそうでなければ、医薬組成物の任意の他の成分と有害な様式で相互作用することなどによって、任意の従来の担体媒体が本発明の化合物と適合しない場合を除いて、その使用は本発明の範囲内にあると企図される。薬学的に許容される担体として働くことができる材料のいくつかの例としては、限定されるものではないが、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;粉末化トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;無発熱源水;等張性塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝溶液、並びにラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性適合性潤滑剤が挙げられ、並びに着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び香料、保存剤及び酸化防止剤が、処方者の判断に従って、組成物中に存在してもよい。
【0189】
[0203] 経口投与のための液体剤形としては、限定されるものではないが、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤並びにエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、及びその混合物などの、当業界で一般的に使用される不活性希釈剤を含有してもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、及び香料などのアジュバントを含んでもよい。
【0190】
[0204] 本発明の粒子は、経口的、経鼻的、静脈内的、筋肉内的、眼内的、経皮的、腹腔内的、又は皮下的に投与することができる。一実施形態では、本発明の粒子は、静脈内的に投与される。
【0191】
投与
[0205] 免疫応答の調節のための本発明の投与の有効量及び方法は、個体、処置される状態及び当業者には明らかな他の因子に基づいて変化してもよい。考慮すべき因子としては、投与経路及び投与される用量数が挙げられる。そのような因子は当業界で公知であり、過度の実験を行うことなくそのような決定を行うことは、当業者の技術の範囲にある。好適な用量範囲は、免疫の望ましい調節を提供するものである。送達される担体の量で与えられる、担体の有用な用量範囲は、例えば、およそ以下のいずれかに由来するものであってよい:0.5から10mg/kg、1から9mg/kg、2から8mg/kg、3から7mg/kg、4から6mg/kg、5mg/kg、1から10mg/kg、5から10mg/kg。あるいは、用量は、粒子数に基づいて投与してもよい。例えば、送達される担体の量で与えられる、担体の有用な用量は、例えば、用量あたり、約106、107、108、109、1010個、又はそれより多い粒子数であってもよい。各患者に与えられる絶対量は、生体利用能、クリアランス速度及び投与経路などの薬理学的特性に依存する。薬学的に許容される担体、希釈剤及び賦形剤並びに医薬組成物及び製剤を調製する方法の詳細は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、1990、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、USAに提供される。
【0192】
[0206] 特定の担体製剤の有効量及びその投与方法は、個々の患者、望ましい結果及び/又は障害の型、疾患のステージ及び当業者には明らかな他の因子に基づいて変化してもよい。特定の適用において有用な投与経路は、当業者には明らかである。投与経路としては、限定されるものではないが、局所、皮膚、経皮、経粘膜、表皮、非経口、消化管、及び鼻咽頭並びに経気管支及び経肺胞を含む経肺が挙げられる。好適な用量範囲は、血中レベルで測定された場合、約1~50μMの組織濃度を達成するのに十分なIRP含有組成物を提供するものである。各患者に与えられる絶対量は、生体利用能、クリアランス速度及び投与経路などの薬理学的特性に依存する。
【0193】
[0207] 本発明は、限定されるものではないが、生理的に許容される埋込み体、軟膏、クリーム、リンス及びゲルなどの、局所適用にとって好適な担体製剤を提供する。皮膚投与の例示的経路は、経皮的透過、表皮投与及び皮下注射などの少なくとも侵襲的であるものである。
【0194】
[0208] 経皮投与は、担体が、皮膚に浸透し、血流に進入することができるクリーム、リンス、ゲルなどの適用によって達成される。経皮投与にとって好適な組成物としては、限定されるものではないが、皮膚に直接塗布されるか、又は経皮デバイス(いわゆる「パッチ」)などの保護担体中に組み込まれる、薬学的に許容される懸濁液、油、クリーム及び軟膏が挙げられる。好適なクリーム、軟膏などの例を、例えば、Physician’s Desk Referenceに見出すことができる。経皮的透過を、例えば、数日間以上の期間にわたって壊れていない皮膚を介して連続的にその生成物を送達する商業的に利用可能なパッチを使用する、イオントフォレシスによって達成することもできる。この方法の使用により、相対的に高い濃度での医薬組成物の制御された透過が可能になり、組合せ薬物の注入が可能になり、吸収促進剤の同時的使用が可能になる。
【0195】
[0209] 非経口投与経路としては、限定されるものではないが、電気的(イオントフォレシス)注射又は中心静脈ラインへの直接注射、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、若しくは皮下注射などの直接注射が挙げられる。非経口投与にとって好適な担体の製剤は、一般的には、USP水又は注射用水中に製剤化され、pHバッファー、塩バルキング剤、保存剤、及び他の薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。非経口注射のための免疫調節ポリヌクレオチドを、注射用の塩水及びリン酸緩衝塩水などの薬学的に許容される滅菌等張溶液中に製剤化することができる。
【0196】
[0210] 消化管投与経路としては、限定されるものではないが、摂取及び直腸経路が挙げられ、例えば、摂取のための薬学的に許容される粉末、ピル又は液体及び直腸投与のための坐剤の使用を含んでもよい。
【0197】
[0211] 鼻咽頭及び肺投与は、吸入によって達成され、鼻内、経気管支及び経肺胞経路などの送達経路を含む。本発明は、限定されるものではないが、エアロゾルを形成させるための液体懸濁液並びに乾燥粉末吸入送達系のための粉末形態を含む、吸入による投与にとって好適な担体の製剤を含む。担体製剤の吸入による投与にとって好適なデバイスとしては、限定されるものではないが、アトマイザー、気化装置、ネブライザー、及び乾燥粉末吸入送達デバイスが挙げられる。
【0198】
[0212] 注射可能な調製物、例えば、滅菌注射水性又は油性懸濁液を、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、公知の技術に従って製剤化することができる。また、滅菌注射調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としての、非毒性非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射溶液、懸濁液又は乳濁液であってもよい。使用することができる許容される媒体及び溶媒は、水、リンゲル溶液、U.S.P.及び等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来使用される。この目的のために、合成モノ又はジグリセリドなどの、任意のブランドの固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射可能剤の調製において使用される。
【0199】
[0213] 注射製剤を、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過により、又は使用前に滅菌水若しくは他の滅菌注射媒体中に溶解若しくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0200】
[0214] 薬物の効果を延長するために、皮下又は筋肉内注射からの薬物の吸収を減速させることが望ましいことが多い。これを、水溶性が低い液体懸濁液又は結晶質若しくは非晶質材料の使用によって達成することができる。次いで、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、順に、結晶サイズ及び結晶形態に依存してもよい。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性媒体中に溶解又は懸濁することによって達成される。注射デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成させることによって作製される。薬物とポリマーとの比及び使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤はまた、薬物を、体組織と適合するリポソーム又はマイクロエマルジョン中に捕捉することによって調製される。
【0201】
[0215] 一部の実施形態では、本発明の合成生分解性粒子は、容易な製造、治療剤の広い利用性、及び処置部位の増加を提供する。本発明の実施形態の開発中に行われた実験により、これらの粒子へのペプチド(例えば、PLP139~151ペプチド)のコンジュゲーションが示された。そのようなペプチド結合粒子は、それらが疾患の発症の防止及び免疫寛容の誘導(例えば、多発性硬化症のSJL/J PLP139~151/CFA誘導性R-EAEマウスモデルにおける)にとって有効であることを示した。本発明のペプチド結合担体は、他の寛容誘導構造よりも多くの利点を提供する。一部の実施形態では、粒子は生分解性であり、したがって、体内で長時間持続しない。完全な分解のための時間を制御することができる。一部の実施形態では、粒子を官能化して、細胞活性化なしに内在化を容易にする(例えば、PLGミクロスフェア中にロードされたホスファチジルセリン)。一部の実施形態では、粒子は、特定の細胞集団のための標的化リガンドを含む。一部の実施形態では、IL-10及びTGF-βなどの抗炎症性サイトカインを、粒子上又は粒子内に含有させて、粒子を内在化させている細胞型の活性化を制限し、エネルギー及び/又は欠失による寛容の誘導並びに調節性T細胞の活性化を容易にする。粒子の組成は、粒子が体内で持続する時間の長さに影響することが見出され、寛容は迅速な粒子の取込み及びクリアランス/分解を必要とする。50:50を超えるラクチド:グリコリドの比は分解速度を減速させるため、本発明の粒子は、約50:50又はそれ以下のラクチド:グリコリド比を有する。一実施形態では、本発明の粒子は、約50:50のD,L-ラクチド:グリコリド比を有する。
【0202】
[0216] 経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、ピル、粉末、及び顆粒が挙げられる。そのような固体剤形では、改変粒子は、クエン酸ナトリウム又はリン酸ジカルシウム及び/又はa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸などの充填剤若しくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、及びアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの保湿剤、d)寒天-寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤、並びにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びその混合物などの潤滑剤などの少なくとも1つの不活性の薬学的に許容される賦形剤又は担体と混合される。カプセル、錠剤及びピルの場合、剤形は、緩衝剤を含んでもよい。
【0203】
[0217] また、類似する型の固体組成物を、ラクトース又はミルクシュガー並びに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、及び顆粒の固体剤形を、腸溶コーティング及び医薬製剤業界で周知の他のコーティングなどのコーティング及び外殻を用いて調製することができる。それらは、任意選択により、不透明化剤を含有してもよく、それらが、腸管のある特定の部分で、任意選択により、遅延様式で、活性成分のみ、又はそれを優先的に放出する組成のものであってもよい。使用することができる埋込み組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。また、類似する型の固体組成物を、ラクトース又はミルクシュガー並びに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することもできる。
【0204】
[0218] 改変粒子はまた、上記のような1又は複数の賦形剤とのマイクロカプセル化された形態にあってもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、及び顆粒の固体剤形を、腸溶コーティング、放出制御コーティング及び医薬製剤業界で周知の他のコーティングなどのコーティング及び外殻を用いて調製することができる。そのような固体剤形では、活性化合物を、スクロース、ラクトース及びデンプンなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混合することができる。そのような剤形はまた、通常の実務におけるように、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば、錠剤化潤滑剤並びにステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロースなどの他の錠剤化補助剤を含んでもよい。カプセル、錠剤及びピルの場合、剤形は、緩衝剤を含んでもよい。それらは、任意選択により、不透明化剤を含有してもよく、それらが、腸管のある特定の部分で、任意選択により、遅延様式で、改変粒子のみ、又はそれを優先的に放出する組成のものであってもよい。使用することができる埋込み組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0205】
[0219] 本発明は、本発明の改変粒子の薬学的に許容される局所製剤を包含する。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される局所製剤」は、製剤の表皮への塗布による本発明の改変微粒子の皮内投与にとって薬学的に許容される任意の製剤を意味する。本発明のある特定の実施形態では、局所製剤は、担体系を含む。薬学的に有効な担体としては、限定されるものではないが、溶媒(例えば、アルコール、ポリアルコール、水)、クリーム、ローション、軟膏、油、硬膏、リポソーム、粉末、エマルジョン、マイクロエマルジョン、及び緩衝化溶液(例えば、低張性若しくは緩衝化塩水)又は医薬品を局所投与するための当業界で公知の任意の他の担体が挙げられる。当業界で公知の担体のより完全な一覧は、当業界で標準的である参考教科書、例えば、両方ともMack Publishing Company、Easton、Pa.により発行された、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、1980及び第17版、1985によって提供され、それらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の他の実施形態では、本発明の局所製剤は、賦形剤を含んでもよい。当業界で公知の任意の薬学的に許容される賦形剤を使用して、本発明の薬学的に許容される局所製剤を調製することができる。本発明の局所製剤中に含有させることができる賦形剤の例としては、限定されるものではないが、保存剤、酸化防止剤、保湿剤、皮膚軟化剤、緩衝剤、可溶化剤、他の浸透剤、皮膚保護剤、界面活性剤、及び推進剤、並びに/又は改変粒子と組み合わせて使用されるさらなる治療剤が挙げられる。好適な保存剤としては、限定されるものではないが、アルコール、第4級アミン、有機酸、パラベン、及びフェノールが挙げられる。好適な酸化防止剤としては、限定されるものではないが、アスコルビン酸及びそのエステル、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、並びにEDTA及びクエン酸のようなキレート剤が挙げられる。好適な保湿剤としては、限定されるものではないが、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素、及びプロピレングリコールが挙げられる。本発明と共に使用するための好適な緩衝剤としては、限定されるものではないが、クエン酸、塩酸、及び乳酸バッファーが挙げられる。好適な可溶化剤としては、限定されるものではないが、塩化第4級アンモニウム、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、レシチン、及びポリソルベートが挙げられる。本発明の局所製剤において使用することができる好適な皮膚保護剤としては、限定されるものではないが、ビタミンE油、アラントイン、ジメチコン、グリセリン、ペトロラタム、及び酸化亜鉛が挙げられる。
【0206】
[0220] ある特定の実施形態では、本発明の薬学的に許容される局所製剤は、少なくとも本発明の改変粒子と、浸透増強剤とを含む。局所製剤の選択は、処置される状態、本発明の化合物及び存在する他の賦形剤の物理化学的特徴、製剤中でのそれらの安定性、利用可能な製造装備、及び費用の制約などのいくつかの因子に依存する。本明細書で使用される用語「浸透増強剤」は、角質層を通って、表皮又は真皮中に薬学的活性化合物を輸送することができ、好ましくは、全身吸収がほとんどなく、又は全くない薬剤を意味する。皮膚を通る薬物の浸透速度を増強する際のその有効性に関して、様々な化合物を評価した。例えば、様々な皮膚浸透増強剤の使用及び試験を調査するPercutaneous Penetration Enhancers, Maibach H.I.及びSmith H.E.(編)、CRC Press, Inc.、Boca Raton、Fla.(1995)並びにBuyuktimkinら、Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems、Gosh T.K.、Pfister W.R.、Yum S.I.(編)、Interpharm Press Inc.、Buffalo Grove、Ill.(1997)を参照されたい。ある特定の例示的実施形態では、本発明と共に使用するための浸透剤としては、限定されるものではないが、トリグリセリド(例えば、大豆油)、アロエ組成物(例えば、アロエベラゲル)、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクトリフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N-デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、モノオレイン酸グリセロール、及びモノオレイン酸プロピレングリコール)及びN-メチルピロリドンが挙げられる。
【0207】
[0221] ある特定の実施形態では、組成物は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤又はパッチの形態にあってもよい。ある特定の例示的実施形態では、本発明による組成物の製剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミト-オレイン酸、セチル又はオレイルアルコールなどの、飽和又は不飽和脂肪酸をさらに含有してもよいクリームであるが、ステアリン酸が特に好ましい。本発明のクリームはまた、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシ-40-ステアリン酸を含有してもよい。ある特定の実施形態では、活性成分は、薬学的に許容される担体及び必要とされ得る任意の必要な保存剤又はバッファーと、無菌条件下で混合される。眼科用製剤、点耳薬、及び点眼薬も、本発明の範囲内にあると企図される。さらに、本発明は、化合物の身体への制御された送達を提供する追加の利点を有する、経皮パッチの使用を企図する。そのような剤形は、適切な媒体中に化合物を溶解するか、又は分散させることによって作製される。上記で考察されたように、浸透増強剤を使用して、皮膚を渡る化合物の流動を増加させることもできる。速度制御膜を提供することにより、又はポリマーマトリックス若しくはゲル中に化合物を分散させることにより、速度を制御することができる。
【0208】
[0222] 改変粒子は、エアロゾルによって投与することができる。これは、改変粒子を含有する水性エアロゾル、リポソーム調製物又は固体粒子を調製することによって達成される。非水性(例えば、フッ化炭素推進剤)懸濁液を使用することができる。
【0209】
[0223] 通常、水性エアロゾルは、従来の薬学的に許容される担体及び安定剤と共に、薬剤の水性溶液又は懸濁液を製剤化することによって作製される。担体及び安定剤は、特定の化合物の要件と共に変化するが、典型的には、非イオン性界面活性剤(Tween、PLURONIC(登録商標)、又はポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害なタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、バッファー、塩、糖又は糖アルコールを含む。エアロゾルは、一般的には、等張溶液から調製される。
【0210】
[0224] また、本発明の改変粒子及び医薬組成物は、組合せ療法で製剤化及び使用することができる、すなわち、化合物及び医薬組成物を、1若しくは複数の他の望ましい治療剤若しくは医学的手順と共に製剤化するか、又はそれと同時に、その前に、若しくはその後に投与することができることも理解される。組合せレジメンにおいて使用するための療法(治療剤又は手順)の特定の組合せは、所望の治療剤及び/又は手順の適合性並びに達成しようとする所望の治療効果を考慮に入れる。また、使用される療法は、同じ障害に関する所望の効果(例えば、本発明の化合物を別の抗炎症剤と同時に投与することができる)を達成することができる、又はそれらは異なる効果(例えば、任意の有害効果の制御)を達成することができることも理解される。
【0211】
[0225] ある特定の実施形態では、本発明の改変粒子を含有する医薬組成物は、1又は複数のさらなる治療活性成分(例えば、抗炎症剤及び/又は苦痛緩和剤)をさらに含む。本発明の目的のために、用語「苦痛緩和剤」とは、疾患の症状及び/又は治療レジメンの副作用の緩和に焦点を当てるが、治癒的なものではない処置を指す。例えば、苦痛緩和剤処置は、鎮痛薬、制吐薬及び吐き気止め薬を包含する。
【0212】
[0226] 本発明は、個体、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトにおける免疫応答を調節する方法であって、個体に、本明細書に記載の改変粒子を投与することを含む、前記方法を提供する。本発明によって提供される免疫調節の方法は、限定されるものではないが、免疫刺激ポリペプチド又はウイルス若しくは細菌成分によって刺激される免疫応答などの、先天性免疫応答又は適応免疫応答を抑制する、及び/又は阻害するものを含む。
【0213】
[0227] 改変粒子は、免疫応答を調節するのに十分な量で投与される。本明細書に記載されるように、免疫応答の調節は、体液性及び/又は細胞性であってよく、当業界における、及び本明細書に記載の標準的な技術を使用して測定される。
【0214】
[0228] 一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物を、埋込み体(例えば、デバイス)及び/又は移植片(例えば、組織、細胞、臓器)と共に(例えば、それと同時に、その前に、又はその後に)投与して、それと関連する免疫応答を媒介する、無効化する、調節する、及び/又は軽減する。
【0215】
適応症
[0229] ある特定の実施形態では、個体は、アレルギー疾患又は状態、アレルギー及び喘息などの、望ましくない免疫活性化と関連する障害に罹患する。アレルギー疾患又は喘息を有する個体は、存在するアレルギー疾患又は喘息の認識可能な症状を有する個体である。例えば、アレルギー反応を惹起する特定の食品(例えば、ピーナッツタンパク質など)、注入された物質(例えば、ハチ毒タンパク質など)、又は吸入物質(例えば、ブタクサ花粉タンパク質、ペットのフケタンパク質など)と複合体化した粒子によって、そのような個体において寛容を誘導することができる。
【0216】
[0230] ある特定の実施形態では、個体は、自己免疫疾患及び炎症性疾患などの、望ましくない免疫活性化と関連する障害に罹患する。自己免疫疾患又は炎症性疾患を有する個体は、存在する自己免疫疾患又は炎症性疾患の認識可能な症状を有する個体である。例えば、特定の自己免疫疾患を誘導する関連自己抗原と複合体化した粒子によって、そのような個体において寛容を誘導することができる。
【0217】
[0231] ある特定の実施形態では、個体は、酵素置換療法と関連する障害に罹患する。例えば、患者がその特定の欠損を処置するために投与される組換え産生される酵素に対する中和抗体応答を作らないようにするために、遺伝子欠損を有する患者が産生することができない酵素と共有結合でカップリングされた粒子によって、そのような個体における寛容、例えば、第VIII因子を作る能力における遺伝的欠損のため、血友病を有する患者におけるヒト第VIII因子に対する寛容を誘導することができる。別の例は、ムコ多糖類貯留疾患、ガングリオシドーシス、低アルカリホスファターゼ血症、コレステロールエステル貯留疾患、高尿酸血症、成長ホルモン欠損、腎性貧血などの状態についての、又はファブリー病、ゴーシェ病、フルラー病、ハンター病、マロトー・ラミー病、ニーマン・ピック病、テイ・サックス病、及びポンペ病を含むリソソーム蓄積障害との酵素置換を含んでもよい。
【0218】
[0232] ある特定の実施形態では、個体は、実際に、又は潜在的に患者の健康又は処置を損なう疾患の処置のために投与された薬剤に対する強固な、又はそうでなければ有害な免疫応答に罹患する。さらに、本発明によって提供される新規化合物を、薬剤に対する免疫応答を示さないが、将来には示す可能性がある個体に提供することができる。ある特定の実施形態では、個体は、酵素置換療法を受けている。ある特定の実施形態では、治療剤としては、限定されるものではないが、ペプチド又はタンパク質に基づく薬剤、DNAワクチン、siRNA、スプライス部位スイッチングオリゴマー、及びRNAに基づくナノ粒子が挙げられる。一部の実施形態では、治療剤としては、限定されるものではないが、アドベイト、抗血友病因子、コージネート、エロクテート、組換え第VIII因子Fc融合タンパク質、リファクト、Novo VIIa、組換え第VII因子、エプタコグアルファ、ヘリキセート、モナニン、凝固因子IX、ウィレート、セレダーゼ、アルグルセラーゼ、セレザイム、イミグルセラーゼ、エレルソ、タリグルセラーゼアルファ、ファブラザイム、アガルシダーゼベータ、アルドラザイム、-I-イズロニダーゼ、マイオザイム、酸グルコシダーゼ、エラプラーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、ナグラザイムアリールスファターゼB、及びN-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼが挙げられる。一部の実施形態では、個体は、限定されるものではないが、血友病、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病、ゴーシェ病、ファブリー病、フルラー病、ポンペ病、ハンター病、ムコ多糖類貯留疾患、ガングリオシドーシス、低アルカリホスファターゼ血症、コレステロールエステル貯留疾患、高尿酸血症、成長ホルモン欠損、腎性貧血及びマロトー・ラミー病などの疾患を処置するために投与される治療剤を投与される。
【0219】
[0233] ある特定の実施形態では、個体は、希少自己免疫状態に罹患する。そのような状態としては、限定されるものではないが、特発性血小板減少性紫斑病、膜性腎症、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、及び重症筋無力症が挙げられる。
【0220】
[0234] ある特定の実施形態では、個体は、疾患療法と関連する障害に罹患する。組換え抗体の場合、寛容は、例えば、患者が、抗体治療剤に対する中和抗体を作らないようにする治療的文脈において使用されるヒト化抗体に対して誘導される、例えば、ヒト化免疫サブセット枯渇抗体又は抗サイトカイン抗体に対する寛容が、自己免疫疾患のための処置として使用される。
【0221】
[0235] 自己免疫疾患を、2つの広いカテゴリー:臓器特異的及び全身性に分割することができる。自己免疫疾患としては、限定されるものではないが、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、II型糖尿病、多発性硬化症(MS)、早発閉経などの免疫媒介性不妊症、強皮症、シェーグレン病、白斑、脱毛症(禿頭)、多腺性内分泌不全症、グレーブス病、甲状腺機能低下症、多発筋炎、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)と関連するものなどの自己免疫性肝炎、下垂体機能低下症、移植片対宿主疾患(GvHD)、心筋炎、アジソン病、自己免疫性皮膚疾患、ブドウ膜炎、悪性貧血、セリアック病、副甲状腺機能低下症、視神経脊髄炎、膜性腎症、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、重症筋無力症が挙げられる。
【0222】
[0236] 自己免疫疾患としては、限定されるものではないが、橋本甲状腺炎、I型及びII型自己免疫性多腺性症候群、腫瘍随伴性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、線状IgA疾患、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、妊娠性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、子供の慢性水疱性疾患、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、自己免疫性好中球減少症、重症筋無力症、イートン・ランバート筋無力症候群、スティフマン症候群、急性播種性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経根障害、伝導ブロックを伴う多巣性運動ニューロパチー、単クローン性高ガンマグロブリン血症を伴う慢性ニューロパチー、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、小脳変性症、脳脊髄炎、網膜症、原発性硬化性胆管炎、硬化性胆管炎、グルテン過敏性腸疾患、強直性脊椎炎、反応性関節炎、多発筋炎/皮膚筋炎、混合性結合組織病、ベーチェット症候群、乾癬、結節性多発動脈炎、アレルギー性血管炎及び肉芽腫症(チャーグ・ストラウス病)、多発性血管炎重複症候群、過敏性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、側頭動脈炎、高安動脈炎、川崎病、単離された中枢神経系血管炎、閉塞性血栓性血管炎、サルコイドーシス、糸球体腎炎、並びに寒冷症も挙げられる。これらの状態は、医学業界で周知であり、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第14版、Fauci A Sら(編)、New York:McGraw-Hill、1998に記載されている。
【0223】
[0237] 自己免疫疾患の研究のための動物モデルは、当業界で公知である。例えば、ヒト自己免疫疾患と最も類似すると考えられる動物モデルとしては、高い発生率の特定の疾患を自発的に発症する動物株が挙げられる。そのようなモデルの例としては、限定されるものではないが、1型糖尿病と類似する疾患を発症する非肥満糖尿病(NOD)マウス、並びにNew Zealandハイブリッド、MRL-Faslpr及びBXSBマウスなどの狼瘡のような疾患の傾向がある動物が挙げられる。自己免疫疾患が誘導された動物モデルとしては、限定されるものではないが、多発性硬化症のためのモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、関節リウマチのためのモデルであるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)、尋常性天疱瘡の実験モデルとして使用することができるデスモグレイン3トランスジェニックT細胞マウス及びブドウ膜炎のためのモデルである実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)が挙げられる。自己免疫疾患のための動物モデルはまた、遺伝子操作によっても作出されており、例えば、炎症性腸疾患のためのIL-2/IL-10ノックアウトマウス、SLEのためのFas又はFasリガンドノックアウト、及び関節リウマチのためのIL-I受容体アンタゴニストノックアウトが挙げられる。
【0224】
[0238] ある特定の実施形態では、個体は、細菌又はウイルス感染に罹患する。細菌又はウイルス感染を有する個体は、存在する細菌又はウイルス感染の認識可能な症状を有する個体である。
【0225】
[0239] 本発明の改変粒子を用いて処置できるウイルス感染の非限定的一覧としては、ヘルペスウイルス感染、肝炎ウイルス感染、西ナイルウイルス感染、フラビウイルス感染、インフルエンザウイルス感染、ライノウイルス感染、パピローマウイルス感染、パラミクソウイルス感染、パラインフルエンザウイルス感染、及びレトロウイルス感染が挙げられる。好ましいウイルスは、対象の中枢神経系に感染するウイルスである。最も好ましいウイルスは、出血熱、脳炎又は髄膜炎を引き起こすものである。
【0226】
[0240] 本発明の改変粒子を用いて処置できる細菌感染の非限定的一覧としては、ブドウ球菌感染、連鎖球菌感染、マイコバクテリア感染、バチルス感染、サルモネラ感染、ビブリオ感染、スピロヘータ感染、及びナイセリア感染が挙げられる。好ましいのは、対象の中枢神経系に感染する細菌である。最も好ましいのは、脳炎又は髄膜炎を引き起こす細菌である。
【0227】
[0241] 一部の実施形態では、本発明は、疾患の開始前の本発明の組成物の使用に関する。多の実施形態では、本発明は、進行中の疾患を阻害するための本発明の組成物の使用に関する。一部の実施形態では、本発明は、対象における疾患の改善に関する。対象における疾患の改善とは、対象における疾患を処置すること、防止すること、又は抑制することを含むことを意味する。
【0228】
[0242] 一部の実施形態では、本発明は、疾患の再発の防止に関する。例えば、望ましくない免疫応答は、ペプチドの1つの領域(抗原決定基など)で生じ得る。望ましくない免疫応答と関連する疾患の再発は、ペプチドの異なる領域で免疫応答の攻撃を受けることによって生じ得る。本発明の免疫改変粒子は結合したペプチド又は抗原性部分を含まないため、粒子は、複数のエピトープに対して有効である。MS及び他のThI/17媒介性自己免疫疾患を含む、一部の免疫応答障害におけるT細胞応答は、動的であってよく、再発-寛解及び/又は慢性進行性疾患の経過中に進化する。標的は疾患進行として変化してもよいため、T細胞レパートリーの動的性質は、ある特定の疾患の処置との関連を有する。以前は、応答のパターンの元々存在する知識は、疾患の進行を予測することが必要であった。本発明は、「エピトープ拡散」の機能である、動的に変化する疾患の効果を防止することができる組成物を提供する。再発に関する公知のモデルは、多発性硬化症(MS)のためのモデルとしてのプロテオリピドタンパク質(PLP)に対する免疫反応である。初期免疫応答は、PLP139~151に対する応答によって生じ得る。その後の疾患開始は、PLP[pi]s-iβiに対する再発免疫応答によって生じ得る。
【0229】
[0243] 本発明の他の実施形態は、移植に関する。これは、ドナー個体からレシピエント個体への組織試料又は移植片の移動を指し、組織によって提供される生理学的機能を回復させるために組織を必要とするヒトレシピエントに対して実施されることが多い。移植される組織としては(限定されるものではないが)、腎臓、肝臓、心臓、肺などの全臓器;皮膚移植片及び眼の角膜などの臓器成分;並びに骨髄細胞及び骨髄又は循環血液から選択、増殖された細胞の培養物、及び全血輸血などの細胞懸濁液が挙げられる。
【0230】
[0244] 任意の移植の重大な潜在的合併症は、宿主レシピエントと移植される組織との抗原性の相違の結果として生じる。相違の性質及び程度に応じて、宿主による移植片の、若しくは移植片による宿主の、又はその両方の免疫学的攻撃のリスクが存在し得る。リスクの程度は、類似する表現型を有する同様に処置された対象の集団中の応答パターンを追跡すること、及び広く受け入れられた臨床手順に従って様々な可能な寄与因子と相関させることによって決定される。免疫学的攻撃は、元々存在する免疫学的応答(予め形成された抗体など)の結果であってもよく、又は移植の時点の頃に開始されるもの(Th細胞の生成など)であってもよい。抗体、Th細胞、又はTc細胞は、互いに、また、様々なエフェクター分子及び細胞との任意の組合せで関与していてもよい。しかしながら、免疫応答に関与する抗原は一般には公知ではなく、したがって、抗原特異的療法の設計又は抗原特異的寛容の誘導において困難をもたらす。
【0231】
[0245] 本発明のある特定の実施形態は、レシピエントによる組織移植片の拒絶をもたらす、宿主対移植片疾患のリスクを低下させることに関する。処置を実施して、超急性、急性、又は慢性拒絶応答の効果を防止又は軽減することができる。処置は、優先的には、移植片が導入される場合に寛容が適所にあるように移植より十分に前に開始されるが、これが不可能である場合、処置を、移植と同時に、又は移植の後に開始してもおい。開始時間とは関係なく、処置は、一般的には、移植後少なくとも最初の1カ月にわたって規則的な間隔で継続される。移植片の十分な適応が起こる場合、フォローアップ用量は必要ではないが、移植片の拒絶又は炎症の証拠がある場合、再開してもよい。勿論、本発明の寛容化手順を、他の形態の免疫抑制と組み合わせて、さらにより低レベルのリスクを達成することができる。
【0232】
[0246] 本発明のある特定の実施形態は、外科手術に対する応答として誘導される炎症応答の減少、又はそうでなければ改善に関する。本発明の一実施形態では、免疫改変粒子は、外科手術の前に投与される。本発明のさらなる実施形態では、免疫改変粒子は、外科手術と同時に、又はその間に投与される。本発明のさらなる実施形態では、免疫改変粒子は、外科手術の後に投与される。
【0233】
[0247] 本発明の粒子を使用して、膿瘍又は膿胸を処置して、細菌又は寄生虫などの感染性因子への曝露後に対象中で産生される炎症応答を減少させることもできる。本発明の一実施形態では、免疫改変粒子は、当業界で公知の抗細菌及び/又は抗寄生虫処置と共に投与される。
【0234】
[0248] 本発明の粒子を使用して、限定されるものではないが、運動による傷害、創傷、脊髄損傷、脳傷害、及び/又は軟部組織傷害などの、物理的外傷又は傷害に対する応答として誘導される炎症応答を減少させるか、又はそうでなければ改善することもできる。本発明の一実施形態では、免疫改変粒子は、対象が外傷又は傷害を経験した後に投与される。
【0235】
[0249] また、本発明の粒子を使用して、がん細胞の発生及び/又は増殖と関連する炎症応答を減少させることもできる。処置することができるがんとしては、限定されるものではないが、中枢神経系のがん、基底細胞癌、がん性脳腫瘍、バーキットリンパ腫、リンパ腫、子宮頸がん、卵巣がん、精巣がん、肝臓がん、非小細胞及び小細胞肺がん、メラノーマ、膀胱がん、乳がん、結腸及び直腸がん、子宮内膜がん、腎臓(腎細胞)がん、白血病、非ホジキンリンパ腫、膵がん、前立腺がん、メラノーマ、及び甲状腺がんが挙げられる。一実施形態では、本発明の粒子の皮下注射は、阻害的好中球の蓄積を防止し、それによって、がん患者における炎症を減少させる。
【0236】
[0250] 本発明の粒子はまた、損傷した組織の再生にとっても有用である。一実施形態では、患者への粒子の投与は、消化管における損傷した上皮細胞の再生を増加させる。さらなる実施形態では、患者は、大腸炎、クローン病、又は炎症性腸疾患に罹患する。別の実施形態では、患者への本発明の粒子の投与は、ニューロンの再ミエリン化を増加させる。さらなる実施形態では、患者は、多発性硬化症に罹患する。
【0237】
足場、マトリックス、及び送達系
[0251] 一部の実施形態では、本発明の組成物(例えば、抗原性分子に共有結合でカップリングされたPLG担体ポリマー)は、1又は複数の足場、マトリックス、及び/又は送達系と共に有用である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2009/0238879号;米国特許第7,846,466号;米国特許第7,427,602号;米国特許第7,029,697号;米国特許第6,890,556号;米国特許第6,797,738号;米国特許第6,281,256号を参照されたい)。一部の実施形態では、粒子(例えば、抗原結合PLG粒子)は、足場、マトリックス、及び/又は送達系(例えば、対象への化学的/生物学的材料、細胞、組織、及び/又は臓器の送達のための)と結合する、その上に吸着する、その中に埋め込まれる、それにコンジュゲートなどされる。一部の実施形態では、足場、マトリックス、及び/又は送達系(例えば、対象への化学的/生物学的材料、細胞、組織、及び/又は臓器の送達のための)は、本明細書に記載の材料(例えば、1又は複数の抗原性ペプチドにコンジュゲートされたPLG)を含む、及び/又はそれから作られる。
【0238】
[0252] 一部の実施形態では、微小孔性足場(例えば、対象中に生物学的材料(例えば、細胞、組織など)を移植するための)が提供される。一部の実施形態では、薬剤(例えば、細胞外マトリックスタンパク質、エキセンジン-4)及び生物学的材料(例えば、膵島細胞)を中に有する微小孔性足場が提供される。一部の実施形態では、足場は、疾患(例えば、1型糖尿病)の処置、及び関連する方法(例えば、診断方法、研究方法、薬物スクリーニング)において使用される。一部の実施形態では、足場は、足場の上及び/又は中の本明細書に記載の抗原にコンジュゲートされた担体と共に提供される。一部の実施形態では、足場は、抗原にコンジュゲートされた材料(例えば、抗原にコンジュゲートされたPLG)から産生される。
【0239】
[0253] 一部の実施形態では、足場及び/又は送達系は、1若しくは複数の層を含む、並びに/又は1若しくは複数の化学的及び/若しくは生物学的実体/薬剤(例えば、タンパク質、ペプチドにコンジュゲートした粒子、低分子、細胞、組織など)を有する。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2009/0238879号を参照されたい。一部の実施形態では、抗原結合粒子は、足場及び結合した材料に対する免疫寛容の誘導を惹起するために足場送達系と共に同時投与される。一部の実施形態では、微小孔性足場は、足場の上又は中の本明細書に記載の粒子と共に対象に投与される。一部の実施形態では、抗原結合粒子は、足場送達系にカップリングされている。一部の実施形態では、足場送達系は、抗原結合粒子を含む。
【0240】
[0254] 記載の特徴及び実施形態の様々な改変、組換え、及び変更は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。特定の実施形態を記載してきたが、特許請求される発明はそのような特定の実施形態に過度に制限されないことが理解されるべきである。実際、関連する業界の当業者には明らかである記載の様式及び実施形態の様々な改変が、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。例えば、米国特許出願第2012/0076831号、第2002/0045672号、第2005/0090008号、第2006/0002978号、及び第2009/0238879号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)並びに米国特許第7,846,466号;第7,427,602号;第7,029,697号;第6,890,556号;第6,797,738号;及び第6,281,256号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、本明細書に記載の様々な実施形態において有用である詳細、改変、及び変更を提供する。
【0241】
[0255] 本出願で言及された、及び/又は以下に列挙される全ての刊行物及び特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0242】
[0256] 以下の実施例は、本発明の利点及び特徴をさらに実証するために提供されるものであり、本開示の範囲を限定することを意図されるものではない。
【0243】
材料及び方法
顕微鏡及び画像の獲得
[0257] DP-70カメラ及びDP manager 2.2.1ソフトウェア(オリンパス株式会社)を使用して、オリンパスBX-51顕微鏡(オリンパス株式会社、日本)上で画像を獲得した。
【0244】
脳及び肝臓からの白血球の単離
[0258] 以前に記載されたように(Gettsら、J Exp Med. 29: 2319, 2007)、デオキシリボヌクレアーゼ(0.005g/ml; Sigma Aldrich)及びコラゲナーゼIV(0.05g/ml; Sigma Aldrich)を含むPBS中、37℃で60分間、脳を消化することにより、PBSかん流マウスの脳から白血球を取得した。10%FCSを用いて消化を停止させ、ホモジネートを70μmのナイロン細胞ストレーナー(Becton Dickinson, NJ, USA)に通過させた。340xgで10分間の遠心分離後に得られたペレットを、30%Percoll(Amersham, Norway)中に再懸濁し、80%Percoll上に載せた。室温で25分間、1140xgで遠心分離した後、30%/80%境界面から白血球を収集した。また、同じプロトコールを使用して、肝臓から白血球を誘導し、プロセッシングの前に組織を計量する。
【0245】
脾臓、血液及び骨髄からの白血球の単離
[0259] フローサイトメトリー分析のために、右大腿骨をばらばらにし、PBSを充填した注射筒を使用して骨髄細胞を流し出した。骨髄前駆細胞の単離のために、少なくとも4匹のマウスからの大腿骨及び脛骨を使用した。流出後に達成された細胞懸濁液を、70μmの細胞ストレーナーを通して濾過し、340gで5分間遠心分離した。得られたペレット中の赤血球を、NH4Clに基づく赤血球溶解バッファー(BD Pharm Lyse(商標); BD Pharmingen)中に溶解した後、340gで5分間遠心分離した。末梢血の場合、心穿刺により血液を収集し、すぐにクエン酸バッファー(mMol、Sigma Aldrich)中に移した。得られた懸濁液を、70%Percoll上に載せ、ブレーキをオフにして室温で20分間、1140xgで遠心分離した。境界面を収集し、PBS中で細胞を1回洗浄し、340xgで遠心分離した。脾臓白血球の単離のために、脾臓を、7070μmの細胞ストレーナーに通過させ、340gで5分間遠心分離した。得られたペレット中の赤血球を、NH4Clに基づく赤血球溶解バッファー(BD Pharm Lyse(商標); BD Pharmingen)中に溶解した後、340xgで5分間遠心分離した。
【0246】
フローサイトメトリー
[0260] 脳、肝臓、血液、及び骨髄から収集された(上記のように)細胞を、PBS中で洗浄し、抗CD16/CD32抗体(Biolegend)でブロックした。トリパンブルー排除を使用して生細胞を計数したところ、95%を超える細胞生存能力が日常的に示された。
【0247】
[0261] 細胞表面分子発現を測定し、Argonイオン及びHeNeレーザーを装備したFACS ARIA(Becton Dickinson)上で細胞選別を実行した。生細胞集団を前方及び側方散乱によってゲート化し、その後、前方ゲーティングによって決定された蛍光集団を同定した。目的の集団を同定する特定の蛍光及び散乱パラメーターを使用して、選別を実行した。選別戦略を、骨髄集団については98%を超える純度を達成する純度に設定した。
【0248】
[0262] 獲得されたFACSデータファイルを、フローサイトメトリープログラムFlow Jo(FlowJo, Ashland, OR, USA)を使用して分析した。目的の細胞集団の量を、各臓器に由来する分析及び絶対細胞数でのフローサイトメトリー百分率に基づいて算出した。
【0249】
実験的自己免疫性脳炎(EAE)の誘導及び評価
[0263] マウスに、MOGペプチド(MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK(配列番号1); Auspep, Parkville, Victoria, Australia;95%を超えてHPLC精製)0.1mgを含有するエマルジョン及び2mg/mLのMycobacterium tuberculosis(Sigma Aldrich)を含有する完全Freundアジュバントを皮下的に注射した。2日後、マウスに、百日咳毒素(Sigma Aldrich)500μlをi.p.投与した。マウスを、疾患進行についてモニタリングし、以下のスケールで等級付けを行った:1、だらりとした尾及び/又は1本の後肢の脆弱性;2、1本より多い肢の脆弱性、歩行困難;3、1本の肢の麻痺;4、1本より多い肢の麻痺、失禁;5、瀕死状態。
【0250】
統計値
[0264] それぞれ、GraphPad Prism、及びInStat(両方ともGraphPad software, San Diego, CA, USAからのプログラムである)において、グラフを作製し、コンピュータによる統計分析を実施した。データに応じて、対応のない、両側Student t検定、又はTukey-Kramerポスト検定を用いる一元配置ANOVAを実施し、P<0.05を有意と考えた。
【0251】
[0265] 体重減少、浸潤、及びウイルス力価などのパラメーター間の相関分析のために、二次多項式(Y=A + B*X + C*X^2)と共に、非線形回帰(曲線適合)を使用した。
【0252】
実施例1
PLGペプチドコンジュゲートの合成及び特徴付け並びにナノ粒子形成
[0266] ポリ(ラクチド-co-グリコール酸)(PLG)を、カップリング試薬1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)/N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて、Cy5.5蛍光染料又は抗原のいずれかに共有結合で連結した。抗原は、プロテオリピドタンパク質(PLP
139~151)又はオボアルブミン(OVA
323~339)のいずれかであった(
図1)。
【0253】
[0267] 様々なサイズの粒子を、二重エマルジョン及びナノ沈降法によって調製した。ナノ粒子製剤のサイズ及びゼータ電位を決定し、上記の表1に提供した。
【0254】
[0268] 抗原のPLGへのカップリング効率を、
1H-NMRによって分析した。
図2は、DMSO-d6(2.5ppmで較正)中で測定された、(i)PLG、(ii)OVA
323~339、及び(iii)PLG-OVA
323~339の
1H-NMRスペクトルを示す。OVA
323~339のPLGへのカップリング効率を、OVA
323~339(d,d')中の1.4ppmに存在するロイシン及びイソロイシンの重複メチルプロトンピークの積算値と、PLG(b)中の5.3ppmに存在するメチレンプロトンピークとを比較することによって算出した。ポリマー-コンジュゲートナノ粒子の略図を、
図2Cに提供する。
【0255】
[0269] 化学を変化させることにより、PLPのPLGへのカップリング効率を、約20%に増加させることができる。
【0256】
[0270] PLG-Agコンジュゲートを、非コンジュゲート化PLGを所定の混合比で合わせることにより、担持量(PLG 1mgあたりの抗原(Ag)のμg)を正確に制御した(表1を参照のこと)。
【0257】
実施例2
PLGナノ粒子のサイズ及び時間依存的細胞相互作用
[0271] 80nm及び400nmのPLGナノ粒子を、1重量%のPLG-Cy5.5コンジュゲートで蛍光標識し、37℃で最大4時間、骨髄由来樹状細胞(BMDC)又は骨髄由来マクロファージ(BMMO)と共にインキュベートした(
図3)。青色の蛍光は核のDAPI染色を示し、赤色の蛍光はPLG-Cy5.5ナノ粒子を示す。
【0258】
実施例3
様々な抗原担持量を有するPLG-OVA粒子による処理後のBMDC表面マーカーの特徴付け
[0272] BMDCを、様々な抗原担持量を有する、300μg/mLの400nm及び80nmのPLG-OVAナノ粒子で3時間処理した。続いて、内在化されていないPLG-OVAナノ粒子を、細胞表面から洗浄した。インキュベーションの4日後、フローサイトメトリーを使用して、細胞表面マーカーMHCII、CD80及びCD86をアッセイした。
図4A及び
図4Dは、それぞれ、400nm及び80nmの粒子による処理後のMHCIIマーカー発現を示す。
図4B及び
図4Eは、それぞれ、400nm及び80nmの粒子による処理後のCD80マーカー発現を示す。
図4C及び
図4Fは、それぞれ、400nm及び80nmの粒子による処理後のCD86マーカー発現を示す。PLG-OVAナノ粒子による細胞の処理は、抗原含量に関係なく、有意に下方調節されたMHCII及びCD80発現をもたらした。
【0259】
実施例4
抗原提示細胞(APC)に送達されたPLG-OVA粒子による調節性T細胞の抗原特異的誘導
[0273] BMDC又はBMMOを、8μg/mgのPLG抗原担持量を有する、300μg/mLの400nm PLG-OVAナノ粒子製剤で3時間処理した。続いて、内在化されていないPLG-OVAナノ粒子を、細胞表面から洗浄した後、OT-II T細胞及び2ng/mLのTGF-β1を添加した。フローサイトメトリーを使用する前に4日間、細胞を同時培養して、調節性T細胞の誘導を示すものとして、T細胞のCD25活性化及びfoxp3発現を測定した。BMDC対BMMOにおける誘導の差異は、p<0.0001で有意であった(
図5)。
【0260】
実施例5
PLG-OVA粒子による調節性T細胞のサイズ及び抗原担持量依存的CD25活性化及び誘導
[0274] 骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、300μg/mLの400nm及び80nmのPLG-OVAナノ粒子製剤で3時間処理した。続いて、内在化されていないPLG-OVAナノ粒子を、細胞表面から洗浄した後、OT-II T細胞及び2ng/mLのTGF-β1を添加した。フローサイトメトリーを使用する前に4日間、細胞を同時培養して、T細胞のCD25活性化及びfoxp3発現を測定した。両ナノ粒子製剤はCD25活性化を同様に増加させることができたが、400nmのPLG-OVAナノ粒子のみが、調節性T細胞を上手く誘導することができた(
図6)。
【0261】
実施例6
PLG-OVA粒子用量の関数としての調節性T細胞のCD25活性化及び誘導
[0275] 調節性T細胞誘導は、ナノ粒子用量に依存する。骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、様々な濃度の400nmのPLG-OVAナノ粒子(8μg/mgの担持量)製剤で3時間処理した。続いて、内在化されていないPLG-OVAナノ粒子を、細胞表面から洗浄した後、OT-II T細胞及び2ng/mLのTGF-β1を添加した。フローサイトメトリーを使用する前に4日間、細胞を同時培養して、T細胞のCD25活性化(
図7A)及びfoxp3発現(
図7B)を測定した。CD25活性化は50μg/mLで最大値に達したが、foxp3発現は300mg/mLでプラトーであると考えられた。
【0262】
実施例7
PLG粒子のサイズ及び濃度依存的生体分布
[0276] マウスに、400nm又は80nmのPLG-Cy5.5ナノ粒子製剤1.25mgを、静脈内的(IV)又は皮下的(SC)に注射した。肝臓、腎臓、心臓、肺、脾臓及び鼠径リンパ節に由来する細胞を単離した。注射の24時間後にフローサイトメトリーによってデータを分析した。肝臓が、粒子蓄積の主要部位である(
図8A)。
【0263】
[0277] CD45+であった細胞とCD45-であった細胞の比率を、肝臓、脾臓及び肺について決定した(
図8B)。
【0264】
[0278] マウスに、様々な粒径のPLG-Cy5.5ナノ粒子製剤1.25mgを静脈内注射した。注射の24時間後にフローサイトメトリーによってデータを分析した。肝臓、脾臓及び肺に見出されるCy5.5+細胞の比率を、所与の粒径について決定した(
図8C)。400nm及び200nmのPLG-Cy5.5ナノ粒子の大部分は肝臓中に見出された。それぞれ、約50%のCD45+細胞が80nm及び200nmのPLG-Cy5.5ナノ粒子を含有していたが、わずか約5%から約10%のCD45-細胞が80nm及び200nmのPLG-Cy5.5ナノ粒子を含有していた。対照的に、約75~80%のCD45+及びCD45-細胞の両方が、400nmのPLG-Cy5.5ナノ粒子を含有していた(
図8D)。400nmのPLG-Cy5.5ナノ粒子0.625mg又は1.25mgの注射は、CD45+細胞とCD45-細胞の両方において約100%の粒子の蓄積をもたらす(
図8E)。
【0265】
実施例8
PLG粒子は血液中の好中球及び単球と結合する
[0279] 健康なマウス(n=3)に、400nm又は80nmのPLG-Cy5.5ナノ粒子製剤1.25mgを静脈内注射した。注射の2時間後に、血液を収集し、フローサイトメトリーによって分析した。CD11b、CD11c、Gr-1及びLy6cマーカーの発現を使用して、白血球の型を同定した。Cy5.5蛍光を使用して、どの細胞が80nm及び400nmのPLG-Cy5.5ナノ粒子を有するかを決定した。PLG-Cy5.5粒子は、血液中の好中球及び単球と結合する(
図9)。
【0266】
実施例9
PLG粒子はex vivoで調節性T細胞を誘導し、実験的自己免疫性脳炎(EAE)において寛容を誘導する
[0280] BMDC、脾臓樹状細胞又は肝臓樹状細胞を、300μg/mLのOVAのみ、又は400nmのPLG-OVAナノ粒子製剤(8μg/mg PLG抗原担持量)で3時間処理した。内在化されていないPLG-OVAナノ粒子を、細胞表面から洗浄した後、OT-II T細胞及び2ng/mLのTGF-β1を添加した。フローサイトメトリーを使用する前に4日間、細胞を同時培養して、調節性T細胞の誘導を示すものとして、T細胞のCD25活性化及びfoxp3発現を測定した。
【0267】
[0281] 肝臓及び脾臓樹状細胞は、OVAのみで活性化されたが、BMDCの活性化は、OVAとPLG-OVAによる処理間で有意に異ならなかった(
図10A)。
【0268】
[0282] マウスに、PLG-Cy5.5ナノ粒子製剤1.25mgを静脈内注射した。注射の24時間後にフローサイトメトリーによってデータを分析した。Cy5.5蛍光を示す脾臓中の細胞は、調節性T細胞誘導を示す、最も高いレベルのCD25活性化及びfoxp3発現を有しいていた(
図10B)。
【0269】
[0283] PLGナノ粒子を、免疫優勢プロテオリピドタンパク質PLP139~151エピトープ(PLG-PLP139~151)を用いて調査して、再発実験的自己免疫性脳炎(R-EAE)の防止のために寛容を誘導した。R-EAEマウスを、上記のように生成した。
【0270】
[0284] 動物に投与されたペプチドを、粒子に共有結合でカップリングさせた。マウスを、免疫化の時間(0日目)に対して、-7日目にPLP
139~151-PLG(N=3~7)又はPBSバッファーで処置した。疾患ピークは、典型的には、約12から14日目に観察され、マウスを臨床疾患についてスコア化した。PBSバッファーのみの場合、疾患誘導を防止しなかった。しかしながら、PLP
139~151と共有結合でカップリングされたPLG粒子は、20から30日目の間に示された1より下の低い臨床スコアを除いて全てにおいて0の臨床スコア(疾患なし)をもたらした(
図10C)。免疫化後0~30日目に測定された累積疾患スコアは、ナノ粒子製剤によるマウスの処置が、対照と比較して有意に無効化された臨床疾患スコアをもたらしたことを明確に示している(
図10D)。
【0271】
実施例10
ペプチド-ポリマーバイオコンジュゲートを使用する寛容原性ナノ粒子中の単一又は複数の抗原の制御された送達
抗原-ポリマーバイオコンジュゲートの合成及び粒子の調製
[0285] 脳炎誘発性プロテオリピドペプチド(PLP
139~151又はPLP
178~191)及びオボアルブミンペプチド(OVA
323~339)を、カルボジイミド化学を使用してPLG(4200g/mol;0.17dL/g)の末端カルボン酸基にコンジュゲートさせた(
図11A、
図19、及び
図20)。カップリング効率を、
1H-NMR特徴付けによって決定したところ、それぞれ、73.6%、74.1%、及び66.9%であった(
図11B)。2つのサイズ(400nm及び80nm)のacPLG-Ag粒子(抗原コンジュゲート化PLG-Ag粒子)を、それぞれ、溶媒蒸発エマルジョン法(S.E)及びナノ沈降法を使用して調製した。Ag-PLGバイオコンジュゲートと、非改変PLGとを様々な比で混合することにより、Ag担持量を制御した(
図11C)。これらのカップリング効率を所与として、211μg/mg(理論値266μg/mg)、218μg/mg(理論値274μg/mg)、及び220μg/mg(理論値297μg/mg)の最大Ag担持量(粒子1mgあたりのAgのμg)を、それぞれ、acPLG-PLP
139~151、acPLG-PLP
178~191、及びacPLG-OVA
323~339について達成することができる。S.E.法により調製されたacPLG-Ag粒子のサイズは、Ag担持量を25μg/mgに変化させることによって最小限に影響を受けたが、50μg/mg及びそれより高い抗原担持量についてはわずかに増加した(表4)。しかしながら、AgのPLG粒子への表面カップリングは、有意に増大したサイズ及び多分散性をもたらした。ナノ沈降により調製された粒子のサイズは、Ag担持量に応じて上方に向かう傾向があり、わずか2μg/mgの最大担持量を達成することができた。ゼータ電位は、Ag担持量によって影響されず、全てのacPLG粒子について高度に陰性であった(-30から-56mVの間)。これらの実験により、acPLG粒子を、よく制御された物理化学的特性を有する、PLG-Agバイオコンジュゲートと非改変PLGとの体系的組合せによって制御可能なAg担持量を用いて調製することができることが確認された。
【0272】
[0286] 蛍光タグ付きOVA
323~339-IgG1を使用して、表面上に結合するAg特異的抗体について、acPLG粒子を、Ag結合PLG粒子(PLG-Ag)、及びAgが封入されたPLG粒子(PLG(Ag))と比較した。粒子中へのAgの封入(PLG(Ag))は、in vivoで免疫活性化をもたらし得る粒子に結合する抗体の能力を低下させることが示された。3つの粒子変化の表面への結合により、PLG-OVA
323~339粒子(7.5μg/mg)よりもacPLG-OVA
323~339(8μg/mg)へのIgG1の有意に少ない結合が示された(
図1D)。Agが封入されたPLG(OVA
323~339)は、最少量のIgG1に結合したが、しかしながら、わずか3μg/mgの最大抗原担持量が達成可能であった。IgG1結合の減少は、有意により低いAg担持量及びAgのバースト放出の結果であると疑われ、他のPLG粒子についても同様に観察された。重要なことに、acPLG粒子は、PLG(Ag)粒子と比較して、Agの有意なバースト放出を示さなかった(
図11E)。
【0273】
acPLG-Ag粒子による調節性T細胞誘導は、サイズ及びAg担持量依存的である
[0287] 次に、acPLG-Ag粒子が、樹状細胞による抗原提示を促進し、続いて、ナイーブなCD4
+CD25
-T細胞の活性化に影響し、調節性T細胞(Treg)の形成を誘導する能力を、粒径及びAg担持量の関数としてin vitroで調査した。acPLG粒子はin vivoで免疫寛容を媒介することが示されているため、Treg誘導を使用して、acPLG粒子の寛容原性効果を決定した。80nmと400nmの両方のacPLG-OVA
323~339粒子の、骨髄由来樹状細胞(BMDC)への送達、次いで、TGFβの存在下でのAg特異的なナイーブなOTII CD4
+CD25
-T細胞との同時培養により、試験した最も低いAg担持量条件であっても、T細胞上のCD25の上方調節が得られた(
図12A及び
図12B)。CD25発現は両方のacPLG-OVA
323~339粒径によって増加したが、それは、CD25及びFoxp3発現によって測定された場合、Treg誘導と相関しなかった。Tregは、400nmのacPLG-OVA
323~339粒子を用いた場合のみ、高レベルで誘導され、Ag担持量に依存していた(
図12C)。300μg/mLのNP濃度では、8μg/mgのAg担持量で最大のTreg誘導が観察され、担持量を150μg/mgまで増加させることによって観察された有意差はなかった。80nmの直径を有するacPLG-OVA
323~339粒子は、Ag担持量に関係なく、低レベルのTregを誘導するに過ぎなかった(
図12D)。まとめると、CD25のT細胞発現は粒径に非依存的であり、Tregの誘導は粒径に依存的であった。重要なことに、本発明者らは、高濃度で、最大150μg/mg担持量のacPLG-OVA
323~339粒子が、in vitroでのTregの誘導について8μg/mgの担持量を有する粒子と有意に異ならないことを見出した。
【0274】
acPLG-Agナノ粒子による調節性T細胞誘導は、粒子濃度依存的である
[0288] ナイーブなCD4
+CD25
-T細胞の活性化及びTregの誘導に対するacPLG粒子の濃度依存性を、複数のAg担持量(2、8、25、150μg/mg)及び粒子濃度(0、5、10、75、150、及び300μg/mL)のS.E.acPLG-OVA
323~339を使用して試験した。BMDCに送達されたAgの範囲は、10から45,000ng/mLであった(表4)。40%より多いCD4 T細胞中でのCD25発現を達成するには、最小で1,200ng/mLのAgが必要であった。このレベルの発現は、150μg/mgのAg担持量と共に低いacPLG濃度(5~10μg/mL)であっても達成された(
図13A)。150μg/mLのNP濃度で8μg/mgのAg担持量を有するacPLG粒子(1,200ng/mLのAgが送達される)を使用して、同様のCD25発現が達成された。60%を超えるCD4 T細胞におけるCD25発現が、1,875ng/mL以上のAg濃度について生じた。CD4
+CD25
+T細胞上でのFoxp3発現には、最も高い発現レベル(30%を超える)を達成するためにより大量のAgが必要であった。Treg誘導は、60%を超えるCD4 T細胞におけるCD25発現のレベルと相関していた。acPLG-OVA
323~339粒子によるTreg誘導は、ウェルあたりに送達されたAgの総量に高く依存していた。1,875ng/mLを超えて送達されたAgは、in vitroで検出されたTregの百分率に劇的に影響しなかった(
図13B)。様々なAg担持量を用いて調製されたacPLG粒子は、in vitroで有意なレベルのTregを誘導するAg要件の決定を可能にし、in vivoで生物学的応答を調節するacPLG粒子を使用する可能性を提示する。
【0275】
【0276】
acPLG-Ag粒子はPLP
139~151免疫化により誘導されるEAEを抑制する
[0289] acPLG-Ag粒子が、Ag特異的免疫寛容を誘導する能力を、MSのR-EAE疾患モデルを使用して試験した。in vitroでのデータは粒子内在化、Ag提示、及びTreg誘導を支持するが、NPは寛容原性応答を惹起するために適切な細胞型を達成しなければならないため、in vivoでの試験はより困難である。以前の試験では、Agが封入されたPLG(PLP
139~151)粒子を、2.5mgの用量で約2~3μg/mgのAg担持量を用いて投与した。予防疾患モデルを使用して、acPLG-PLP
139~151粒子を、R-EAE免疫化に対して-7日目にSJL/Jマウスに静脈内投与した。平均臨床スコア(
図14A)と累積臨床スコア(
図14B)の両方によって測定された場合、未処置の対照マウスは、重篤な臨床症状を示したが、acPLG-PLP
139~151粒子で処置されたマウスは、有意に軽減された疾患症状を示した。さらに、acPLG-PLP
139~151粒子は、2.5mgの用量で与えられたAg封入PLG(PLP
139~151)粒子と同様の有効性を示した(
図14A~14B)。これらの結果により、acPLG粒子中のより高いAg担持量が、acPLG粒子の用量を減少させることができ、in vivoで寛容を誘導する類似する能力を有することが確認された。
【0277】
acPLG粒子は脳炎誘発性ペプチド(PLP
139~151及びPLP
178~191)のカクテルを用いて誘導されたEAEを抑制する
[0290] 自己反応性T細胞レパートリーにおける多様性は、MSなどの自己免疫疾患において明確に確立されている;したがって、寛容原性NPは、発症機序が複雑であり得る疾患を有効に処置するために複数のエピトープを送達する必要がありそうである。本発明者らは、複数のミエリンペプチド-PLGバイオコンジュゲート、すなわち、PLG-PLP
139~151及びPLG-PLP
178~191を、正確なAg担持量で単一のacPLG粒子中に組み込むことができるかどうか、また、PLP
139~151/PLP
178~191/CFAを用いる免疫化によって誘導されるR-EAEのための有効な処置として使用することができるかどうかを試験した(
図15A)。
【0278】
[0291] acPLG粒子を、R-EAE免疫化に対して-7日目にSJL/Jマウスに静脈内投与した。acPLG-OVA
323~339、acPLG-PLP
139~151、又はacPLG-PLP
178~191粒子で処置された対照マウスは、平均臨床スコア(
図15B)と累積臨床スコア(
図15C)の両方によって測定された場合、acPLG-PLP
139~151,178~191粒子と比較して重篤な臨床疾患症状を示した。興味深いことに、acPLG-PLP
139~151粒子で処置されたマウスの急性疾患は、急性疾患の軽減が観察され、重篤な再発が起こったacPLG-PLP
178~191粒子で処置されたマウスとは対照的であった。acPLG-PLP
139~151,178~191で処置されたマウスは、有意に軽減された急性及び再発疾患スコアを示し、測定された累積スコアの大きな減少が得られた。これらの結果は、acPLG粒子が、疾患の発症と関連する複数のペプチドに対して同時に寛容化する能力を証明するものである。PLG-Agバイオコンジュゲート「混合及び一致」手法を使用した様々なAgを含むacPLG粒子のモジュラー設計は、acPLG粒子プラットフォーム及び設計の多用途性を明確に証明している。
【0279】
[0292] 可溶性ペプチド、Ag結合細胞、遺伝子操作された食品、及び粒子が、アレルギー、自己免疫疾患、及び細胞移植を含む適用の処置選択肢として調査されてきた。現在のナノベースの寛容プラットフォームを超える本発明の粒子(acPLG粒子)の利点は、acPLG粒子による寛容誘導が、多くの副作用と関連している免疫抑制剤の同時送達なしに達成されるということである。取込み機構及びacPLG粒子のAg提示の文脈における差異は、様々な免疫調節剤の同時送達を必要とする可溶性Agアレイ、寛容原性ナノ粒子(tNP)、及びPEG化金ナノ粒子などのプラットフォームが寛容を誘導する部分的な原因となり得る。本明細書に提示される結果は、in vivoでのAg送達及び寛容原性応答を超える正確な制御を達成する新規NPプラットフォームを示す。この制御可能なAg送達プラットフォームにより、in vitroでのT細胞の活性化及びTregの誘導に関して、acPLG粒子のAg担持量、濃度、及びサイズの間の関係の同定が可能になった。
【0280】
材料及び方法
[0293] ヘキサフルオロ-2-プロパノール中の単一のカルボン酸末端基を有し、0.17dL/gの固有粘度を有するポリ(ラクチド-co-グリコリド)(50:50)(PLG)を、Lactel Absorbable Polymer(Birmingham, AL)から購入した。ポリ(エチレン-alt-マレイン酸無水物)(PEMA)を、Polyscience,Inc.(Warrington, PA)から購入した。アミン末端化オボアルブミンペプチド(NH2-OVA323~339)及びプロテオリピドペプチド(NH2-PLP139~151又はNH2-PLP178~191)を、Genscript(Piscataway, NJ)から購入した。他の全ての試薬は、別途指摘しない限り、Sigma Aldrich(St.Louis, MO)から購入した。
【0281】
PLG-Agバイオコンジュゲーション
[0294] PLG(37.8mg、0.009mmol、4200g/mol)を、撹拌バーを装備した20mLのシンチレーションバイアル中のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)2mL中に溶解した。N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(9.0mg、0.047mmol、PLGに対して5X)を、DMF 0.5mL中に溶解し、PLG溶液に滴下添加した。N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(5.5mg、0.047mmol、PLGに対して5X)を、DMF 0.5mL中に溶解し、溶液に滴下添加した。反応物を室温で15分間撹拌させた。抗原性ペプチド(PLGに対して1.2X)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)1mL及びDMF 0.5mLの溶液中に溶解し、400RPMで撹拌した。トリエチルアミン(ペプチドに対して5X)をペプチド溶液に添加し、混合物を撹拌PLG溶液に滴下添加した。反応を室温で一晩進行させた。4リットルの蒸留水に対して2日間、3,500分子量カットオフ膜を使用する透析によって、得られるポリマーを単離及び精製した。蒸留水を合計6回交換した。透析されたポリマーを収集し、MilliQ水で3回洗浄し、7000xgで遠心分離した後、水20mL中に再懸濁し、2日間凍結乾燥した。PLGへのペプチドのカップリング効率を、DMSO-d6中でのNMR分析によって決定した。
【0282】
マウス
[0295] メスのSJL/Jマウス(6~8週齢)を、Harlan Laboratories(Indianapolis, IN)から購入した。OT-IIマウス(B6.Cg-Tg(TcraTcrb)425Cbn/J)を、Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入した。
【0283】
ナノ粒子の調製
[0296] 2つの異なるサイズ(80及び400nm)のナノ粒子(acPLG)を、それぞれ、ナノ沈降法又はエマルジョン溶媒蒸発法に従って調製した。エマルジョン溶媒蒸発法を使用してacPLG粒子を産生するために、Ag-ポリマーバイオコンジュゲートを、様々な比で非コンジュゲート化PLGと合わせて、表4に記載された粒子中のAg担持量の計算値を得た。この方法は、本発明者らの以前の刊行物に記載されている。より小さい、約80~120nmのacPLGを調製するために、ナノ沈降法を使用した。簡単に述べると、PLG(所望の比のAg-ポリマーバイオコンジュゲート及び非コンジュゲート化PLG)100mgを、1mg/mLの濃度でアセトニトリルに溶解し、急速に撹拌しながら、MilliQ水300mLの中に注ぎ入れた。溶液を24~48時間撹拌して、残留するアセトニトリルを完全に除去した。acPLG粒子を、4000xgで超遠心分離膜フィルター10kDa MWCOを使用して回収した。次いで、凍結防止剤(4%(w/v)スクロース及び3%(w/v)マンニトール)を粒子に添加した後、凍結乾燥した。
【0284】
ナノ粒子の特徴付け
[0297] Malvern Zetasizer ZSP(Westborough, MA)を使用して、25mg/mLの粒子溶液10μLをMilliQ膵990μL中で混合することにより、ナノ粒子のサイズ及びゼータ電位を、動的光散乱(DLS)によって決定した。PLG(OVA323~339)及びacPLG-OVA323~339粒子からのペプチドの放出を、72時間にわたって測定した。約8mgの各粒子を、PBS 1mL中に分散させ、37℃でインキュベートした。所定の時点で、粒子を7000xgで5分間遠心分離し、上清0.5mLを収集した。粒子を再懸濁し、新鮮なPBS 0.5mLを各試料に添加した。全ての上清試料を、実験が完了するまで-20℃で保存した。最後の時点の後、粒子のペレットをDMSO中に溶解し、残存するタンパク質の総量を決定した。Micro BCAアッセイ(Pierce, Waltham, MA)を使用して、タンパク質含量を決定した。
【0285】
in vitroでのOVA323~339-IgG1結合
[0298] OVA323~339抗体(Innovagen, Sweden)を、Abcam Easy Link FITC Conjugation Kit(Abcam, Cambridge, MA)を使用して、FITCで蛍光標識した。acPLG粒子20μgを、1mg/mLのFITC標識されたOVA323~339抗体と共に4℃で20分間インキュベートし、洗浄した。Beckman Coulter CyAn ADP Analyzer(Indianapolis, IN)を使用して、蛍光を測定した。群間の統計的差異を、一元配置ANOVA及びTukeyのポストホック検定(p<0.05)を実施することによって決定した。
【0286】
細胞培養
[0299] BMDC培地は、ペニシリン(100単位/mL)、ストレプトマイシン(100mg/mL)、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)及び50mM β-メルカプトエタノール(Sigma Aldrich)を添加した、L-グルタミン(Life Technologies, Carlsbad, CA)を含有するRPMIからなっていた。同時培養培地は、β-メルカプトエタノールを含まない、1mMピルビン酸ナトリウム、及び0.1mM非必須アミノ酸(Life Technologies, Carlsbad, CA)を添加した同じものであった。
【0287】
抗体及びフローサイトメトリー
[0300] FcRブロッキングを、抗CD16/32抗体(Biolegend)を用いて実施した後、以下の抗体:抗CD4抗体(RM4-5)、抗CD25抗体(PC61)(Biolegend)、及び抗Foxp3抗体(FJK-16s)(eBioscience, San Diego, CA)の様々な組合せで染色した。固定可能バイオレット死細胞染色キット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて生存能力を評価した。製造業者のプロトコールに従ってeBioscience染色キットを用いて、Foxp3染色を実施した。Beckman Coulter CyAn ADP Analyzerを使用して、サイトメトリーデータを収集した。FlowJo(FlowJo, Ashland, OR)を使用して、分析を実施した。
【0288】
細胞の単離及びin vitroでのTreg誘導アッセイ
[0301] 記載のようなわずかな改変を用いて、Treg誘導アッセイを実行した。CD4+CD25-Foxp3-T細胞を、ナイーブCD4+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec, San Diego, CA)を使用して、OT-IIマウスの脾臓から単離した。このアッセイを、T細胞培地中で実行した。骨髄由来樹状細胞(2x104個/ウェル)を、96ウェル丸底細胞培養プレート中に播種し、様々な粒子濃度のacPLG-OVA323~339及びAg担持量と共に3時間インキュベートした。インキュベーション後、全てのウェルを洗浄して、細胞によって内在化されなかった過剰の粒子を除去した。細胞を、2ng/mLのTGF-β1(Cell Signaling Technology, Danvers, MA)の存在下、2x104個/ウェルのナイーブなT細胞と同時培養した。acPLG-OVA323~339の代わりに抗原を受ける群は、この時に可溶性OVA323~339(100ng/mL)を受けた。同時培養の4日後、T細胞を収集し、生存能力、CD4、CD25、及びFoxp3について染色し、フローサイトメトリーを使用して分析した。群間の統計的差異を、一元配置ANOVA及びTukeyのポストホック検定(p<0.05)を実施することによって決定した。
【0289】
R-EAE疾患誘導及び測定
[0302] 以前に記載のような脳炎誘発性ペプチドを用いる免疫化によって、R-EAEを誘導した。PLP139~151又はPLP139~151とPLP178~191の両方を用いてR-EAEを誘導するために、それぞれ、1mg/mLのPLP139~151/完全Freundアジュバント(CFA)又は0.25mg/mLのPLP139~151/CFA及び0.5mg/mLのPLP178~191/CFA 100μLのs.c.投与によってマウスを免疫し、SJL/Jマウスの首筋及び後脇腹上の3つのスポットにわたって分配した。個々のマウスにおける疾患の重症度を、0から5点のスケール:0=疾患なし、1=だらりとした尾又は後肢の脆弱性、2=だらりとした尾及び後肢の脆弱性、3=部分的な後肢の麻痺、4=完全な後肢の麻痺、5=瀕死状態を使用して評価した。異なる処置群の疾患経過間の差異を、Kruskal-Wallis検定を使用して統計的有意性について分析した。
【0290】
【0291】
実施例11
ポリ(ラクチド-co-グリコリド)を用いるオボアルブミンタンパク質の共有的改変、TIMP製剤、及びin vitroでのTreg誘導アッセイ
[0303] タンパク質を用いるポリマーの共有的改変は、ナノ粒子薬物送達系の物理化学的特性を改善するためのいくつかの利点を提供する。重要なことに、タンパク質担持量並びにナノ粒子サイズ及びゼータ電位などの特性は、制御がより容易である。
【0292】
[0304] オボアルブミンは、いくつかのCD4(OVA323~334; OVA265~280)、CD8(OVA257~264)、及びB細胞エピトープを含有する。未解決の疑問の1つは、TIMP封入完全オボアルブミン(TIMP-OVA)が、CD4、CD8及びB細胞上の全ての抗原性エピトープを寛容化することができるかどうかである。オボアルブミンタンパク質内のこれらのエピトープの正確な数は公知であり、使用される粒子は使用されるタンパク質及びポリマーの量を精巧に制御することができ、異なるT及びB細胞受容体を寛容化するのに必要とされる抗原の分子の量に対処することができる。そのようなものとして、同じタンパク質内の異なるT細胞エピトープのための用量に対処することができる。
【0293】
一般的実験設計
[0305] 完全長オボアルブミン(OVA)タンパク質を、高分子量及び低分子量PLGAにコンジュゲートした。さらに、一度、コンジュゲーションが確認されたら、様々な制御された担持量のOVAを有するTIMP-OVA粒子を調製し、特徴付けた。
【0294】
[0306] 実験の進行は以下の通りである:
1. EDC/NHS化学を使用するPLGA-OVAバイオコンジュゲートの合成、
2. 粒子形成における使用にとっての好適性を決定するためのDCM及びDMSO中での得られるPLGA-OVAコンジュゲートの溶解度試験、
3. PLGA-OVAコンジュゲートのカップリング効率の決定、かくして、TIMP-OVA粒子を様々な所定のAg担持量で調製することができる、
4. 0から150μgのOVA/mg PLGAで変化するAg担持量を有するTIMP-OVA粒子の形成、
5.DLS及びゼータ電位分析によるTIMP-PVA粒子の特徴付け。
【0295】
【0296】
[0307] OVAは、共有的改変に利用可能な20個のリシン基を含有する。さらに、14個のアスパラギン酸及び33個のグルタミン酸がOVA内に含有される。
【0297】
[0308] PLGA及びOVAの溶解度の差異のため、コンジュゲーション反応を実施するための溶媒系並びに粒子製造に必要であるDCM又はDMSOなどの有機溶媒中での高い溶解度を有するポリマー-Agコンジュゲートを得るために、PLGAとOVAとの適切な化学量論比の決定が必要である。
【0298】
[0309] これらの問題に実験的に対処するために、PLGAとOVAのモル比を5から20に変化させて6コンジュゲーション反応を実施した。20個のリシン残基がPLGAの末端カルボン酸基とのカップリングのために利用可能である場合、OVAのタンパク質構造に基づいて20PLGA:1OVAの最大比を選択した。さらに、2分子量のPLGAを、コンジュゲーション効率及び溶解度試験のために試験した。これらの反応条件の選択を決定して、必要なAg含量及び溶解度要件を有するPLGA-OVAバイオコンジュゲートを得るための最も高い電位を得た。反応条件の概要を、表7に提示する。
【0299】
[0310] 表7は、オボアルブミンコンジュゲーションのための条件を示す。6つの反応条件を、反応中に同じ溶媒系にOVA及びPLGAを完全に溶解することを目標として評価した。さらに、PLGAとOVAの化学量論比を変化させて、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解する最終産物を得た。
【0300】
【0301】
[0311] 表8は、低(L)及び高(H)分子量PLGAを使用するオボアルブミンコンジュゲーションのための反応条件を示す。PLGAを、DMSO中で25mg/mLの濃度で調製した。OVAを、MilliQ水中で25mg/mLの濃度で調製した。PLGAを含有する溶液にOVAを添加する前に、PLGAの濃度を5mg/mLに調整して、コンジュゲーション反応中のポリマーの沈降を防止した。さらに、PLGAのOVAへのコンジュゲーション中に、15~20Vol/Vol%のMilliQ水を含有するように、溶媒比を維持した。
【0302】
【0303】
表7に列挙された体積を使用するPLGA-OVAコンジュゲーションのためのプロトコール
[0312] 以下のプロトコールを使用した。磁気撹拌棒を含有する60mLのガラスシンチレーションバイアルを調製した。別に、適切な量のOVA、追加の水、及びDIPEAを含有する20mLのガラスシンチレーションバイアルも調製した。DMSO中に溶解した適切な量のPLGA及び特定の追加のDMSOを、60mLのシンチレーションバイアルに添加した。撹拌(300~600RPM)下で、適切な量のEDCをPLGA溶液に滴下添加し、5分間撹拌した。撹拌(300~600RPM)下で、適切な量のNHSを、EDCで活性化されたPLGA溶液に滴下添加し、さらに10分間撹拌した。撹拌(300~600RPM)下で、OVA及びDIPEAを含有する水溶液を、NHSで活性化されたPLGA溶液に滴下添加した(この溶液のPLGAへの添加が終わった時に、溶液が透明であるべきであることに留意されたい)。反応を、室温で一晩進行させた。PLGA-OVAコンジュゲートを回収するために、生成物を含有する溶液を、3500DaのMWCO透析膜に移し、4LのMilliQ水に対して2日間透析して、未反応のEDC/NHS/DIPEAを除去し、DMSOを除去した(注:生成物は透析袋中で沈降してもよい。2日間にわたって少なくとも6回、透析ビーカー中の水を交換する)。生成物を収集するために、沈降物を透析袋から50mLの円錐状遠心分離チューブに移した。材料を4℃で15分間、7000xgで遠心分離して、生成物を沈降させた。生成物をさらに2回、再懸濁及び遠心分離によって洗浄した。最終生成物をMilliQ水5mL中に再懸濁し、凍結し、2日間又は生成物が乾燥するまで凍結乾燥した。
【0304】
PLGA-OVAコンジュゲートの溶解度試験
[0313] 粒子製剤化のために使用された溶媒中でのPLGA-OVAコンジュゲートの溶解度を評価するために、約1mgのコンジュゲートを、1.5mLのMCTに入れた。結果を、表9に提示する。コンジュゲート03-23-L3及び03-23-H1-3はDMSOに溶解することが同定された。これにより、これらのコンジュゲートをさらに特徴付けることができた。
【0305】
[0314] 表9は、DMSO中でのPLG-OVAポリマーコンジュゲートの溶解度試験を示す。DCM添加後に観察された沈降物は、全ての事例において最小限であり、それは粒子形成に影響しないと考えられる。
【0306】
【0307】
[0315] DMSO中での03-23-L1及び03-23-L2の不溶性のため、これらの試料をタンパク質含量について評価しなかった。
【0308】
[0316] ポリマー1ミリグラムあたりに存在するタンパク質含量を、Pierce BCAタンパク質キット(カタログ番号23225)を使用して決定した。結果を、表10に報告する。
【0309】
【0310】
PLGA-OVAコンジュゲート03-23-L3を使用する粒子製造のためのプロトコール
【0311】
【0312】
[0317] DCM中で200mg/mLの濃度のPLGAを調製した。
【0313】
[0318] DMSO中で25mg/mLの濃度のPLG-OVA(03-23-L3)を調製した。
【0314】
【0315】
TIMP-OVA製剤化の手順
[0319] 以下のプロトコールを使用した。
1.1.アセトン、エタノール、次いで、水で超音波処理装置を洗浄する。
1.2.上記の表に記載された適切な容量のPLGAを、20mLのシンチレーションバイアル中にピペットで採って入れる。
1.3.上記の表に記載された適切な容量のPLGA-OVAを、工程1.2に由来する同じ20mLのシンチレーションバイアル中にピペットで採って入れる。
1.4.適切な容量の1%PEMAを、PLGA及びPLG-OVAを含有する20mLのシンチレーションバイアルに添加する。
1.5.100%の振幅で30秒間、溶液を超音波処理する。
1.6.300RPMで撹拌しながら、水中に溶解した適切な容量の0.5%w/vのポリ(エチレン-alt-マレイン酸無水物)に、超音波処理された混合物を注ぎ入れる。
1.7.粒子を一晩撹拌して、ジクロロメタンを蒸発させる。
1.8.凍結保護剤(スクロース10g/25mL MilliQ水;マンニトール6g/20mL MilliQ水)の溶液を調製する。マンニトール溶液は、溶解に時間がかかり、加熱する必要がある。頻繁にボルテックスしながら、70℃で15~30分間加熱する。保存時に、マンニトールは溶液から析出し、再度加熱する必要がある。スクロース溶液は全ての時点で可溶性であるはずである。予め作製された溶液を使用し、マンニトールを再度加熱することが許容される。
1.9.粒子溶液を、40μmの細胞ストレーナーに通過させる。溶液を50mLのファルコンチューブに分配する。
1.10.粒子を氷上で15分間冷やす。
1.11.4℃で15分間、7000xgの相対遠心力下で遠心分離する。
1.12.上清を完全に吸引する。
1.13.各チューブに1M重炭酸ナトリウム-炭酸ナトリウムバッファー3mLを添加し、粒子を氷上で15分間冷やす。
1.14.1mLのピペット又は5mLの血清用ピペットを装備したピペットエイドを使用して、ペレットを再懸濁する。
1.15.ペレットがよく分散した後(目に見える凝集物がない)、総量が25mLになるまで、各チューブに1M重炭酸ナトリウム-炭酸ナトリウムバッファーを添加する。
1.16.4℃で15分間、7000xgの相対遠心力下で遠心分離する。
1.17.上清を完全に吸引する。
1.18.各チューブに1M重炭酸ナトリウム-炭酸ナトリウムバッファー3mLを添加し、粒子を氷上で15分間冷やす。
1.19.ペレットを再懸濁する。ペレットがよく分散した後、総量が25mLになるまで、各チューブに1M重炭酸ナトリウム-炭酸ナトリウムバッファーを添加する。
1.20.4℃で15分間、7000xgの相対遠心力下で遠心分離する。
1.21.上清を完全に吸引する。
1.22.チューブにMilliQ水3mLを添加し、粒子を氷上で15分間冷やす。
1.23.ペレットを再懸濁する。ペレットがよく分散した後、粒子濃度が4~8mg/mLの間となるまで追加のMilliQ水を添加する。粒子の回収は40%であると仮定する。
1.24.粒子を水中に均一に分散させる。
1.25.粒子溶液を40μmの細胞ストレーナーに通過させる。
1.26.凍結乾燥のための試料チューブ、粒子のアリコートのための2mLチューブを調製する。少なくとも1~3本のこれらのチューブを予め質量を測って、チューブあたりの粒子の量を決定する。
1.27.各チューブ中に粒子溶液800μLをピペットで取り、1.5mLのマイクロ遠心管中に、DLS/Zeta分析による特徴付けのために少なくとも200μLの粒子溶液を保存する(DLS/Zeta分析を実施するには、MilliQ水中の粒子試料20μLだけを使用すればよい)。
1.28.凍結保護剤を得る各試料チューブについて、スクロース100μLと、マンニトール溶液100μLとを一緒に混合して、ピペットで混合しながら粒子に添加する。ここで、チューブあたりの総量は1mLである。凍結保護剤の濃度は、4%w/vスクロース及び3%w/vマンニトールである。
1.29.DLS/Zeta分析のために使用される試料(後で特徴付けるために4℃の冷蔵庫に入れる)を除いて、凍結保護剤を含まないものを含む、全ての試料を、少なくとも5時間、-80℃の冷凍庫で凍結する。
1.30.試料を1~2日間凍結乾燥する。
【0316】
【0317】
in vitroでのTreg誘導アッセイを使用するTIMP-OVAコンジュゲートの生物学的活性の評価
[0320] この試験の目的は、調節性T細胞(CD4+CD25+Foxp3+)へのナイーブなCD4+T細胞(OTII)の誘導に対する、ポリマーコンジュゲートTIMP-OVA中の抗原担持量の効果を決定することであった。
実験群:
【0318】
【0319】
[0321] 培地1mLあたりのOVA抗原の量を、TIMP-OVAの用量及びTIMP 1mgあたりのOVAタンパク質の担持量に基づいて算出した。表14中の太字及び斜体のセルは、Treg実験において試験された粒子を示す。重要なことに、ウェルあたりの送達されるAgの量は、0ng/mLから45000ng/mLの有意な幅を包含していた。
【0320】
【0321】
骨髄由来樹状細胞培養物(Lutzらの方法に従う)
[0322] BMDCの調製を、以前に記載されたように実施した。C57BL/6マウスから得られた骨髄細胞を培養することにより、DCを調製した。骨髄細胞を、針を装備した注射筒を使用して、脛骨及び大腿骨から洗い流した。回収された細胞をACK溶解バッファー中でインキュベートして、赤血球を溶解した。10%ウシ胎仔血清、100単位/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、50μM 2-メルカプトエタノール、及び20ng/mL顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子を添加したRPMI-1640培地中で骨髄細胞を培養した。培養培地を3、6、及び8日目に交換した。細胞は10日目に使用する準備ができた。
【0322】
細胞の単離及びin vitroでのTreg誘導アッセイ
[0323] CD4+CD25-foxp3-T細胞を、ナイーブCD4+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec, San Diego, CA)を使用して、OT-IIマウス(B6.Cg-Tg(TcraTcrb)425Cbn/j, Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)の脾臓から単離した。10%ウシ胎仔血清、1%pen/strep、及び非必須アミノ酸を添加したRPMI培地中でアッセイを実行した。APC(2x104個/ウェル)を、96ウェル丸底細胞培養プレート中に播種し、可溶性OVA323~339ペプチド(100ng/mL)又は様々なAg担持量及び粒子用量を有する粒子で処理し、2ng/mLのTGFβの存在下で2x104個/ウェルのナイーブT細胞と同時培養した。同時培養の4日後、T細胞を収集し、CD4、CD25、及びFoxp3について染色し、Cyanサイトメーターを使用して分析した。
【0323】
結論
[0324] EDC/NHS(カルボジイミド)化学を使用して、PLGA-OVAバイオコンジュゲートを上手く合成した。BCAアッセイを使用して、PLGA-OVAバイオコンジュゲート1mgあたりのタンパク質含量を決定した。1mgあたりのタンパク質の量は、ポリマーの分子量並びにPLGA:OVAの化学量論比に依存していた。最も高いタンパク質含量を有するPLGA-OVAコンジュゲートは、03-23-L3であり、最も低いのは03-23-H3であった。
【0324】
[0325] 出発点として、その高い担持量能力のため、PLGA-OVAコンジュゲート03-23-L3を使用して、0μg/mgから150μg/mgの様々なAg担持量を用いてTIMP-OVA粒子を製剤化した。03-23-L3を使用して調製されたTIMP-OVA粒子は、300nmから850nmの間あのDLSによって測定されるサイズを示した。150μg/mgのTIMP-OVAは、0.7より高い異常に高いPDIを示した。TIMP-OVAのゼータ電位は、-30から-60mVの間であった。
【0325】
[0326] 様々なTIMP-OVA粒子が、TGFbの存在下で調節性T細胞を誘導する能力を特徴付けるTreg誘導アッセイを使用する予備的in vitro試験により、コンジュゲーション及びTIMP製剤化の後にタンパク質が活性のまま残存することが示された。TIMP-OVAは同様の担持量を有するTIMP-OVA323~339又はTIMP(OVA)粒子ほど有効ではないと考えられることに留意すべきである。
【0326】
[0327] 本発明の特定の実施形態を記載及び例示してきたが、そのような実施形態は本発明の例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲に従って解釈されるように本発明を限定するものではないと考えられるべきである。
【0327】
[0328] 本明細書で引用される全ての特許、特許出願及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】