(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】電動自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/90 20100101AFI20221216BHJP
B62J 43/28 20200101ALI20221216BHJP
B62J 11/10 20200101ALI20221216BHJP
【FI】
B62M6/90
B62J43/28
B62J11/10
(21)【出願番号】P 2018098261
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蕭 宇宣
(72)【発明者】
【氏名】小川 満
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3204600(JP,U)
【文献】特開2019-151225(JP,A)
【文献】特開2018-154270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/90
B62J 43/28
B62J 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパイプを有するフレームと、
前記フレームに取り付けられたバッテリ装置と、
を備え、
前記フレームは、前記複数のパイプのうちの少なくとも一つとして、長手方向に交差する方向に向く開口面を含む開口部が形成され、前記開口部内に前記バッテリ装置が配置されるバッテリ装着用パイプを有し、
前記バッテリ装置は、
前記開口部内に配置され
、前記バッテリ装置の長手方向全体にわたって設けられたバッテリ装着部と、
前記バッテリ装着部に着脱可能に取り付けられたバッテリと、
を有し、
前記バッテリ装着用パイプの長手方向に沿うようにして、前記バッテリ装着用パイプの内面と前記バッテリとの間を通る少なくとも一つの線状部材
を更に備え、
前記バッテリ装着部は、押さえ具を有し、
前記押さえ具は、前記バッテリの前記長手方向の中間部において前記線状部材と前記バッテリとの間に配置され、前記バッテリ装着用パイプの内面に対して固定さ
れ、前記バッテリよりも前記長手方向に短い、
電動自転車。
【請求項2】
前記バッテリ装着部は、前記開口部内において、前記バッテリ装着用パイプの内面に取り付けられたベースを有し、
前記押さえ具は、前記ベースに取り付けられている、
請求項1に記載の電動自転車。
【請求項3】
前記押さえ具は、前記ベースに対して着脱可能に取り付けられている、
請求項2に記載の電動自転車。
【請求項4】
前記ベースは、前記バッテリ装着用パイプの長手方向に沿って延びており、
前記押さえ具は、前記長手方向において、前記ベースよりも短い、
請求項3に記載の電動自転車。
【請求項5】
前記押さえ具は、
前記ベースに取り付けられる取付け部と、
前記取付け部に設けられ、前記線状部材と前記バッテリとの間に位置する少なくとも一つの押さえ部と、
を有する、
請求項2~4のいずれか一項に記載の電動自転車。
【請求項6】
前記バッテリ装着部が、前記ベースの両端部に設けられた支持部を有し、
前記バッテリの両端が前記支持部に装着される、
請求項2~5のいずれか一項に記載の電動自転車。
【請求項7】
前記ベースが前記長手方向に延びる部材であり、
前記線状部材が前記ベースに対して前記長手方向に交差する方向に並んで配置されている、
請求項2~6のいずれか一項に記載の電動自転車。
【請求項8】
前記バッテリ装着用パイプの前記内面には、前記線状部材が配置される少なくとも一つの凹所が形成されており、
前記凹所に対向する位置に前記押さえ具の少なくとも一部が配置されている、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の電動自転車が記載されている。特許文献1に記載の電動自転車は、バッテリと、バッテリからの電力の供給を受けて作動する電動モータとを備える。特許文献1に記載の電動自転車は、ダウンチューブを備える。ダウンチューブの中間部分の一側部には、開口部が形成されている。開口部には、バッテリが収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の電動自転車では、ダウンチューブ(パイプ)内にハーネスやブレーキのワイヤ等(線状部材)が配置されていない。しかし、特許文献1のダウンチューブ内にハーネスやワイヤ等を通した場合、電動自転車の振動などによって、ワイヤ等の位置が変わりやすい。この場合、例えば、バッテリを取り付ける際に、バッテリとダウンチューブの内面との間にワイヤ等が挟まってしまい、ワイヤ等が邪魔になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、開口部を有するパイプ内に線状部材を通しても、バッテリ装着部にバッテリを取り付ける際に線状部材が邪魔になるのを抑えることができる電動自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様の電動自転車は、複数のパイプを有するフレームと、フレームに取り付けられたバッテリ装置と、を備える。フレームは、複数のパイプのうちの少なくとも一つとして、バッテリ装着用パイプを有する。前記バッテリ装着用パイプは、長手方向に交差する方向に向く開口面を含む開口部が形成され、前記開口部内に前記バッテリ装置が配置される。バッテリ装置は、開口部内に配置されたバッテリ装着部と、バッテリ装着部に着脱可能に取り付けられたバッテリと、を有する。電動自転車は、少なくとも一つの線状部材と、押さえ具とを更に備える。線状部材は、バッテリ装着用パイプの長手方向に沿うようにして、バッテリ装着用パイプの内面とバッテリとの間を通る。押さえ具は、線状部材とバッテリとの間に配置され、バッテリ装着用パイプの内面に対して固定される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る上記態様の電動自転車は、開口部を有するパイプ内に線状部材を通しても、バッテリ装着部にバッテリを取り付ける際に線状部材が邪魔になるのを抑えることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の電動自転車の側面図である。
【
図3】
図3は、同上のバッテリ及びバッテリ装着部の分解斜視図である。
【
図4】
図4Aは、同上のバッテリの一端部の拡大斜視図である。
図4Bは、同上のバッテリの他端部の拡大斜視図である。
【
図5】
図5Aは、バッテリ及びバッテリ装着部の第一取付部周辺の側面図である。
図5Bは、バッテリが取外し方向に移動した状態の第一取付部周辺の側面図である。
【
図6】
図6Aは、バッテリが装着位置にある側面図である。
図6Bは、装着位置にあるバッテリから、位置決め部が非支持位置に移動した状態を示す側面図である。
図6Cは、
図6Bの状態から移動板を押した状態を示す側面図である。
図6Dは、バッテリが離脱位置にある側面図である。
【
図8】
図8Aは、変形例に係る電動自転車の側面図である。
図8Bは、更なる変形例に係る電動自転車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る電動自転車1は、
図1に示すように、複数のパイプを有するフレーム2と、モータユニット5に電力を供給するバッテリ装置6とを備える。フレーム2は、複数のパイプのうちの少なくとも一つのパイプとして、バッテリ装着用パイプ28を有する。バッテリ装着用パイプ28は、長手方向の一部に開口部29が形成されたパイプであり、開口部29内にバッテリ装置6が配置されている。開口部29は、バッテリ装着用パイプ28の長手方向に交差する方向に向く開口面291を有する。
【0010】
バッテリ装置6は、フレーム2に取り付けられている。バッテリ装置6は、
図2に示すように、開口部29内に配置されたバッテリ装着部61と、バッテリ68とを備える。バッテリ68は、バッテリ装着部61に着脱可能に取り付けられている。
【0011】
本実施形態に係る電動自転車1は、
図1に示すように、バッテリ装着用パイプ28の長手方向に沿うようにして、バッテリ装着用パイプ28内に配置された少なくとも一つの線状部材3を備える。線状部材3としては、例えば、ワイヤーハーネス,又はブレーキ用のワイヤ等が例示される。線状部材3は、バッテリ装着用パイプ28の内面とバッテリ68との間に通される。
【0012】
本実施形態に係る電動自転車1は、
図7に示すように、線状部材3とバッテリ68との間に配置された押さえ具67を備える。押さえ具67は、バッテリ装着用パイプ28の内面に対して固定されている。これによって、本実施形態に係る電動自転車1は、バッテリ68をバッテリ装着部61に装着する際に、線状部材3が邪魔になるのを抑えることができる。
【0013】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る電動自転車1について更に詳細に説明する。
【0014】
(2.1)全体構成
電動自転車1は、
図1に示すように、電気的な動力を用いて走行可能な自転車である。本実施形態では、電動自転車1は、使用者の踏む力(「踏力」という場合がある)をモータ51により補助する電動アシスト自転車であるが、本開示では、電動自転車1は、モータ51のみで自走可能な自転車であってもよい。要するに、電動自転車1は、電動アシスト自転車であってもよいし、モータ51のみで自走可能な自転車であってもよい。電動自転車1は、
図1に示すように、フレーム2と、複数の車輪4と、モータユニット5と、バッテリ装置6と、ハンドル93と、サドル94と、クランクアーム90及びペダル91と、を備える。電動自転車1は、複数の車輪4として、前輪41と後輪42とを有する。
【0015】
ここで、本開示では、電動自転車1の進む方向を「前方向」とし、その反対方向を「後方向」として定義する。また、前方向と後方向との2方向を「前後方向」として定義し、前後方向に直交しかつ水平面に沿う2方向を「左右方向」として定義する。
【0016】
フレーム2は、少なくとも、前輪41,後輪42及びバッテリ68を保持可能な骨組みである。フレーム2は、本実施形態では、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金で構成される。ただし、本開示では、フレーム2は、アルミニウム合金に限らず、鉄,クロムモリブデン鋼,ハイテンスチール,若しくはチタン等の金属,又はカーボン等で構成されてもよい。
【0017】
フレーム2は、複数のパイプを含む。フレーム2は、本実施形態では、複数のパイプとして、下パイプ20,立パイプ21,複数(ここでは二つ)のチェーンステー22,複数(ここは二つ)のシートステー23,上パイプ24,ヘッドパイプ25及び前ホーク26を備える。さらに、フレーム2は、ボトムブラケット27を備える。
【0018】
ここで、本開示でいう「パイプ」とは、細長くて中空な部材を意味し、断面の形状は特に限らない。例えば、パイプは、断面正円形又は断面長円形(楕円形を含む)等の円形断面だけでなく、断面正方形,断面長方形,断面六角形等の多角形断面を含む。
【0019】
ボトムブラケット27は、少なくとも、下パイプ20の下端部とチェーンステー22の前方向の端部とが接続される部分である。本実施形態では、ボトムブラケット27には、下パイプ20及びチェーンステー22に加えて、立パイプ21の下端部が接続される。モータユニット5は、本実施形態では、ボトムブラケット27に取り付けられる。
【0020】
下パイプ20は、ボトムブラケット27とヘッドパイプ25とをつなぐパイプである。下パイプ20は、ボトムブラケット27の前方向の端部からヘッドパイプ25まで延びており、その長手方向において、前方向に行くほど上方に位置するように傾斜する。本実施形態では、下パイプ20には、開口部29が形成されている。開口部29内には、バッテリ装置6が配置される。
【0021】
本実施形態では、下パイプ20を「バッテリ装着用パイプ28」という場合がある。本開示において、「バッテリ装着用パイプ28」とは、開口部29内にバッテリ装置6が配置されたパイプを意味する。
【0022】
ここで、
図2には、開口部29の周辺の拡大図を示す。開口部29内には、バッテリ装置6が配置される。本実施形態では、バッテリ装置6は開口部29内に収まる。開口部29は、バッテリ装着用パイプ28の長手方向の一部に形成されている。開口部29は、バッテリ装着用パイプ28の外周面の一部である開口面291と、開口面291につながる開口内スペース292とを有する。
【0023】
開口面291は、バッテリ装着用パイプ28の長手方向に直交する断面において、バッテリ装着用パイプ28の外周面の一部に形成されている。開口面291の向く方向は、バッテリ装着用パイプ28の長手方向に交差しており、本実施形態では、バッテリ装着用パイプ28の長手方向に直交している。開口面291は、本実施形態では、バッテリ装着用パイプ28の外周面のうち、上側半分に形成されている。開口内スペース292は、バッテリ装着用パイプ28内の空間のうち、開口面291に対応する空間である。ここでいう、「開口面291に対応する空間」とは、バッテリ装着用パイプ28の長手方向に直交しかつ開口面291の中央を通る方向に沿って見て、開口面291に重なるパイプ内の空間を意味する。
【0024】
バッテリ68がバッテリ装着部61に取り付けられると、バッテリ装置6は、本実施形態では、開口部29内に収まる。より詳しくは、バッテリ装置6が開口部29内に収まった状態では、バッテリ装置6の外面は、バッテリ装着用パイプ28の外周面(開口面291)よりも内側に配置される。
【0025】
ただし、本開示では、バッテリ装置6の少なくとも一部が開口部29内に位置していればよく、必ずしも、バッテリ装置6の全てが開口部29内に収まっている必要はない。要するに、本開示において、「開口部29内に配置される」とは、対象物の少なくとも一部が、開口部29内に位置していることを意味する。
【0026】
図1に示すように、バッテリ装着用パイプ28には、カバー74が取り付けられる。カバー74は、開口部29を覆う。カバー74は、開口部29に対して、開閉可能に取り付けられる。カバー74は、本実施形態では、開口面291に沿って取り付けられる。
【0027】
立パイプ21は、サドル94を保持するパイプである。本実施形態では、立パイプ21は、ボトムブラケット27と上パイプ24とをつなぐ。立パイプ21は、本実施形態では、ボトムブラケット27の上端部から上パイプ24よりも上方まで延びており、その長手方向において、後方向に行くほど上方に位置するように傾斜する。立パイプ21は、立パイプ21の長手方向に沿って移動し得るようにサドル94を保持する。
【0028】
複数のチェーンステー22は、ボトムブラケット27とシートステー23とをつなぐパイプである。各チェーンステー22は、ボトムブラケット27の後方向の端部からシートステー23の後方向の端部まで延びる。本実施形態では、チェーンステー22は、左右方向に離れて二つあり、二つのチェーンステー22の間に、後輪42が配置される。チェーンステー22の後方向の端部には、後輪軸421が取り付けられる軸受け221が形成されており、後輪42が左右方向に沿った軸(後輪軸421の中心軸)回りに回転し得るように取り付けられる。
【0029】
本開示でいう「軸」とは、物体の回転運動の中心となる一定直線をいう。本実施形態において、例えば、後輪42の軸は、後輪軸421の中心軸によって実現されており、後述の前輪41の軸は、前輪軸411の中心軸によって実現されている。
【0030】
複数のシートステー23は、立パイプ21の上端部とチェーンステー22とをつなぐパイプである。各シートステー23は立パイプ21の上端部からチェーンステー22の後方向の端部まで延びており、その長手方向が、後方向に行くほど下方に位置するように傾斜する。ここで言う「立パイプ21の上端部」とは、立パイプ21の上方向の先端から立パイプ21の長手方向に沿って下方向に一定の寸法位置する部分までの一定の範囲を有する部分を意味する。本実施形態では、シートステー23は、左右方向に離れて二つあり、二つのチェーンステー22に対して一対一で接続される。
【0031】
上パイプ24は、ヘッドパイプ25と立パイプ21とをつなぐパイプである。より詳細には、上パイプ24は、ヘッドパイプ25と立パイプ21の上端部とをつなぐ。上パイプ24の長手方向の後側の端部は、立パイプ21の上端部に接続されている。上パイプ24は、立パイプ21の上端部からヘッドパイプ25まで延びており、その長手方向において前方向に行くほど上方に位置するように傾斜する。本実施形態では、フレーム2は、上パイプ24と立パイプ21とをつなぐ補強パイプ241を有する。
【0032】
ヘッドパイプ25は、上パイプ24の前方向の端部と下パイプ20の前方向の端部とが接続されるパイプである。ヘッドパイプ25は、前ホーク26とハンドル93とを、ヘッドパイプ25の中心軸回りに回転し得るように支持する。
【0033】
前ホーク26は、前輪41が、前輪軸411の中心軸回りに回転し得るように取り付けられるパイプである。前ホーク26は、前輪軸411を支持する一対のレッグ261と、レッグ261の上端部からヘッドパイプ25の中心軸に沿って上側に延びたステアリングコラム262とを有する。前ホーク26は、ステアリングコラム262がヘッドパイプ25に嵌め込まれることで、ヘッドパイプ25に取り付けられている。ステアリングコラム262の上端部には、ハンドル93が取り付けられている。これにより、ハンドル93がヘッドパイプ25の中心軸回りに回転すると、前ホーク26がヘッドパイプ25の中心軸回りに回転し、前輪41がヘッドパイプ25の中心軸回りに回転する。
【0034】
前輪41は、前後方向に並ぶ二つの車輪4のうちの前側の車輪4である。前輪41は、本実施形態では、前ホーク26によって、左右方向に沿った軸(前輪軸411の中心軸)回りに回転し得るように支持される。前輪41は、本実施形態では、モータユニット5から動力の伝達を受けない車輪4である。
【0035】
後輪42は、前後方向に並ぶ二つの車輪4のうちの後側の車輪4である。後輪42は、本実施形態では、二つのチェーンステー22によって、左右方向に沿った軸(後輪軸421の中心軸)回りに回転可能に支持される。後輪軸421の長手方向は、前輪軸411の長手方向に平行である。後輪42は、本実施形態ではリアスプロケット422(ここでは、カセットスプロケット)を有しており、モータユニット5の駆動スプロケット52に動力伝達体92(ここでは、チェーン)を介して連結される。これにより、モータユニット5から出力された動力は、後輪42に伝達される。
【0036】
(2.2)モータユニット
モータユニット5は、ペダル91から踏力の入力があると、駆動補助出力を発生させる。本開示でいう「駆動補助出力」とは、モータ51を用いた、踏力を補う力を意味する。モータユニット5は、本実施形態では、ペダル91及びクランクアーム90から踏力の入力があると、その踏力の入力値(ここでは回転数及びトルク)を検出し、入力値に応じて、駆動補助出力を出力する。
【0037】
モータユニット5は、モータ51と、動力伝達体92が掛けられる駆動スプロケット52と、を有する。モータ51は、バッテリ装置6から電力の供給を受けて作動する。駆動スプロケット52は、モータ51から出力された動力及び踏力によって、左右方向に延びた軸520回りに回転する。駆動スプロケット52とリアスプロケット422との間には、動力伝達体92が掛けられる。駆動スプロケット52の軸520回りの回転動力は、動力伝達体92を介して、リアスプロケット422に伝達する。
【0038】
本実施形態に係るモータユニット5は、いわゆる1軸式のモータユニットである。すなわち、本実施形態に係る駆動スプロケット52は、クランクアーム90の回転に応じて回転し、かつ、モータ51の出力に応じて回転する。したがって、本実施形態では、踏力とモータ51の出力とが、駆動スプロケット52で合わさる。ただし、本開示では、モータユニット5は、動力伝達体92において、踏力とモータ51の出力とを合わせる、いわゆる2軸式のモータユニットであってもよい。
【0039】
(2.3)バッテリ装置
バッテリ装置6は、少なくともモータ51に対して、電力を供給する装置である。ただし、本開示では、バッテリ装置6は、モータ51に加えて、ヘッドライト,又はモータ51のON/OFFの操作部931等に電力を供給するように構成されてもよい。本実施形態では、バッテリ装置6は、
図2に示すように、開口部29内に収まるように配置されている。バッテリ装置6は、
図3に示すように、バッテリ68と、バッテリ装着部61と、を備える。
【0040】
(2.3.1)バッテリ
バッテリ68は、モータ51に対して供給する電気的エネルギーを蓄える二次電池である。バッテリ68は、バッテリ装着部61に着脱可能に取り付けられる。バッテリ68は、バッテリ装着部61に取り付けられた状態で、モータ51(
図1参照)に対して電気的に接続される。バッテリ68は、バッテリ装着部61に装着されると、開口部29内に配置される。バッテリ68は、ケーシング69と、複数のセル73とを備える。
【0041】
バッテリ68は、本実施形態では、バッテリ装着用パイプ28の長手方向に延びている。ここでは、バッテリ68の長手方向を「第一方向D1」とし、第一方向D1に直交しかつ水平面に沿う方向を「第二方向D2」として定義する。本実施形態では、第二方向D2は左右方向のことである。また、第一方向D1及び第二方向D2に直交する方向を「取外し方向D3」(
図4A参照)として定義する。取外し方向D3は、バッテリ68を取り外す際に、バッテリ68を移動させる方向である。
【0042】
ケーシング69は、バッテリ68の外郭である。ケーシング69の内部には複数のセル73が配置されている。ケーシング69は、本実施形態では、筒状体70と、第一取付け部71と、第二取付け部72とを備える。
【0043】
筒状体70は、中空な部材であり、ケーシング69の主体を構成する。筒状体70は、本実施形態では、第一方向D1に延びている。筒状体70は、本実施形態では、角筒状に形成されており、筒状体70の第一方向D1の両端に開口面を有する。
【0044】
本実施形態では、筒状体70は、角筒状に形成されているが、円筒状に形成されてもよい。本実施形態では、筒状体70は第一方向D1の両端に開口面を有しているが、本開示では、第一方向D1の両端のうちの一方のみに開口面を有してもよい。要するに、筒状体70では、第一方向D1の少なくとも一方の端面が開口面であればよい。
【0045】
第一取付け部71は、バッテリ装着部61の第一支持部63に対して、第二方向D2に沿った軸回りに回転可能に取り付けられる。第一取付け部71は、本実施形態では、筒状体70の第一方向D1の一方の開口面を塞ぐようにして、筒状体70にねじ止めされる。これにより、第一取付け部71は、筒状体70に対して固定されている。第一取付け部71は、
図4Aに示すように、貫通孔711と、支持凹部712とを備える。
【0046】
貫通孔711は、バッテリ68の内外を貫通する。貫通孔711の内側には、セル73に接続するための端子が配置される。端子はワイヤーハーネスに含まれる。ワイヤーハーネスは、セル73とモータユニット5とを電気的に接続する。ワイヤーハーネスは、本実施形態では、後述の線状部材3である。
【0047】
支持凹部712は、バッテリ装着部61の第一支持部63によって取外し方向D3に沿った移動が規制され、第二方向D2に沿った軸回りに回転可能である。支持凹部712は、第一取付け部71の外面のうち、第一方向D1に直交する面714(バッテリ68の長手方向の端面)から、第一方向D1のうちのバッテリ68の内側に向かって凹んでいる。支持凹部712の底面713は、第二方向D2に直交する断面において、円弧状に形成される。
【0048】
第二取付け部72は、
図3に示すように、バッテリ装着部61の第二支持部64に対して、取外し可能に取り付けられる。第二取付け部72は、第二支持部64に取り付けられると、第二支持部64に対して、取外し方向D3(
図4A参照)に沿った移動が規制される。本実施形態において、「バッテリ68がバッテリ装着部61に取り付けられる」とは、バッテリ装着部61に対し、第一取付け部71及び第二取付け部72が取り付けられることを意味する。
【0049】
第二取付け部72は、本実施形態では、筒状体70の第一方向D1の両端面のうち、第一取付け部71とは反対側の開口面を塞ぐようにして、筒状体70にねじ止めされる。第二取付け部72は、
図4Bに示すように、ベース板721と、第一受け部725と、移動板722と、を備える。
【0050】
ベース板721は、第二取付け部72の主体を構成し、筒状体70に対して固定される。ベース板721は、移動板722のベースとなる部分である。ベース板721は、筒状体70の開口面を塞ぐようにして、筒状体70に対して取り付けられている。
【0051】
第一受け部725は、第二支持部64が有する位置決め部652(
図3参照)によって、バッテリ装着部61に対して、取外し方向D3への移動が規制される。第一受け部725は、ベース板721に取り付けられている。ただし、本開示では、第一受け部725とベース板721とは一体であってもよい。第一受け部725は、第一受け面726を有する。第一受け面726は、後述の位置決め部652の作用面653に対向する。第一受け面726は、作用面653に当たることで、作用面653に対して位置決めされる。
【0052】
移動板722は、ベース板721に対して、規制位置と、規制解除位置との間で移動可能に取り付けられる。規制位置は、第二取付け部72が第二支持部64に対して移動規制される位置である。規制解除位置は、第二取付け部72が第二支持部64に対して移動規制されない位置である。
【0053】
移動板722は、本実施形態では、ベース板721に対して、第一方向D1に沿って移動可能である。本実施形態では、移動板722とベース板721との間には、例えば、コイルばね等の弾性体が配置されており、移動板722は、第一方向D1において、規制位置に向かって押されている。これにより、移動板722は、第一方向D1のうち、ベース板721から離れる方向に押されている。
【0054】
移動板722は、自然状態では、ベース板721との間に隙間を有している。この状態において、第一方向D1のうち、ベース板721に近づく方向に押されると、移動板722は、ベース板721に近づく方向に移動し、規制解除位置に至る。一方、移動板722を押す力を解くと、移動板722は、第一方向D1のうちのベース板721から離れる方向に移動し、規制位置に至る。ここでいう「自然状態」とは、移動板722が規制位置にあることを意味し、移動板722が、規制位置にあることを保つための外力以外の外力が掛かっていない状態のことである。
【0055】
移動板722は、複数(ここでは二つ)の第二受け部723を有する。ただし、第二受け部723は、一つでもよい。複数の第二受け部723は、後述の移動規制部661に当たり、バッテリ68の第二取付け部72の取外し方向D3に沿った移動が規制される。複数の第二受け部723は、本実施形態では、第二方向D2に離れている。各第二受け部723は、本実施形態では、移動板722の表面から凹む凹部で構成されている。第二受け部723は、移動規制部661に当たる第二受け面724を有する。本実施形態において、第二受け面724は、バッテリ68がバッテリ装着部61に取り付けられた状態では移動規制部661に対して離れており、第一受け面726が位置決め部652から外れると、第二受け面724は移動規制部661に当たる。第二受け面724は、移動規制部661に対して当たることで、バッテリ68の第二取付け部72の取外し方向D3に沿った移動を規制する。
【0056】
(2.3.2)バッテリ装着部
バッテリ装着部61には、バッテリ68が着脱可能に取り付けられる。ここで、本開示では、バッテリ装着部61に取り付けられたバッテリ68の位置を「取付け位置」とし、バッテリ装着部61から外れたバッテリ68の位置を「離脱位置」とする。本実施形態では、取付け位置は、後述の位置決め部652によって、第一受け部725が位置決めされた位置である。取付け位置にあるバッテリ68は、バッテリ装着部61に対して、取外し方向D3に移動すると、離脱位置となる。
【0057】
バッテリ装着部61は、本実施形態では、バッテリ装着用パイプ28に形成された開口部29内に配置される。本実施形態において、バッテリ装着部61は、
図3に示すように、ベース62と、第一支持部63と、第二支持部64と、押さえ具67とを備える。
【0058】
(2.3.2.1)ベース
ベース62は、バッテリ装着用パイプ28の内面のうち、開口部29に対応する部分に取り付けられる。言い換えると、ベース62は、開口部29内において、バッテリ装着用パイプ28の内面に取り付けられている。ベース62は、第一方向D1に延びている。ベース62の長手方向は、バッテリ装着用パイプ28の長手方向に沿っている。ベース62は、底板621と、一対の立上板622と、第一固定部625と、第二固定部627と、を備える。本実施形態では、底板621,一対の立上板622,第一固定部625,及び第二固定部627は、金属板の曲げ加工によって一体に形成されている。
【0059】
底板621は、バッテリ装着用パイプ28の内面に固定される。底板621は、第一方向D1及び第二方向D2を含む底面を有しており、平板状に形成されている。底板621は、バッテリ装着用パイプ28の内面にねじ止めによって取り付けられ、バッテリ装着用パイプ28に対して固定されている。
【0060】
各立上板622は、底板621の第二方向D2の両側の各々から立ち上げられている。立上板622の長手方向の一部(ここでは、長手方向の中央部)には、位置決め溝623が形成されている。位置決め溝623は、各立上板622に形成されており、押さえ具67の対応片672が入り込むことで、押さえ具67を位置決めする。
【0061】
ベース62には、本実施形態では、複数の引掛け孔624が形成されている。複数の引掛け孔624は、位置決め溝623に対して、第一方向D1の両側に形成されている。引掛け孔624は、本実施形態では立上板622に形成されている。引掛け孔624には、位置決め溝623で位置決めされた押さえ具67の爪部674が引掛けられる。
【0062】
第一固定部625には、第一支持部63が取り付けられる。第一固定部625は、底板621の第一方向D1の一方の端部に設けられている。第一固定部625は、底板621の第一方向D1の一方の端部から取外し方向D3に沿って立ち上げられており、第一支持部63の第一方向D1の外側の面に沿っている。第一固定部625には、複数のねじ孔626が形成されており、第一支持部63は、複数のねじ孔626に通された固着具によって、第一固定部625に取り付けられる。
【0063】
第二固定部627には、第二支持部64が取り付けられる。第二固定部627は、底板621の第一方向D1の端部のうち、第一固定部625とは反対側の端部に設けられている。各第二固定部627は、底板621の当該端部において、第二方向D2の両側から立ち上げられた縦片628と、縦片628の上端から第二方向D2のうちの外側(底板621から離れる側)に突出した取付け片629とを備え、断面L字状に形成されている。本実施形態では、縦片628と立上板622と底板621とは一体であり、また、縦片628と取付け片629とは一体である。第二支持部64は、取付け片629に対し、載った状態でねじ止めにより取り付けられる。
【0064】
(2.3.2.2)第一支持部
第一支持部63には、バッテリ68の第一取付け部71が取り付けられる。第一支持部63は、本実施形態では、第一取付け部71を第二方向D2に沿った軸回りに回転可能に支持する。第一支持部63は、本実施形態では、先端面632が円弧状に形成された支持凸部631を有する。支持凸部631が第一取付け部71の支持凹部712に入ると、支持凸部631の先端面632は、支持凹部712の底面713に対向する。
【0065】
図5Aに示すように、支持凸部631の先端面632は、第二方向D2に直交する断面において、円弧状に形成されている。また、支持凹部712の底面713は、第二方向D2に直交する断面において、円弧状に形成されている。したがって、第一支持部63に第一取付け部71が取り付けられると、支持凸部631の先端面632と支持凹部712の底面713とが対向し、支持凸部631の先端面632と支持凹部712の底面713とが接触する。
【0066】
この状態で、バッテリ68の長手方向の端部のうちの第二取付け部72側の端部が取外し方向D3に移動すると、支持凸部631の先端面632に沿って支持凹部712の底面713が滑りながら移動し、支持凸部631に対し、支持凹部712が第二方向D2に沿った軸回りに回転する。
【0067】
(2.3.2.3)第二支持部
第二支持部64には、
図3に示すように、バッテリ68の第二取付け部72が取り付けられる。第二支持部64は、本実施形態では、バッテリ装着部61に対して、バッテリ68を、取付け位置に位置決めすることができる。第二支持部64は、
図3に示すように、位置決め機構部65と、移動規制体66と、を備える。
【0068】
位置決め機構部65は、バッテリ68の第二取付け部72を、バッテリ装着部61に対して位置決めすることができる。位置決め機構部65は、本体部651と、位置決め部652と、解除操作部655とを備える。
【0069】
本体部651は、位置決め機構部65の主体を構成する。本体部651は、ベース62の第二固定部627に取り付けられ、第二固定部627に対して固定される。
【0070】
位置決め部652は、支持位置と非支持位置との間で切替え可能に構成されており、支持位置に切り替えられることで、第二取付け部72を位置決めすることができる。ここで、本開示でいう「支持位置」とは、バッテリ68の第二取付け部72を支持可能な位置のことであり、「非支持位置」とは、バッテリ68の第二取付け部72を支持できない位置のことである。
【0071】
位置決め部652は、支持位置(
図6A参照)と非支持位置(
図6B参照)との間で切り替えられる。本実施形態では、位置決め部652が支持位置にあると、位置決め部652は、本体部651から、第一方向D1のうちのバッテリ68側に、所定寸法以上突出する。これにより、支持位置にある位置決め部652は、バッテリ68の第一受け部725を位置決めすることができる。ここでいう「所定寸法」とは、バッテリ68の第一受け部725を位置決め可能な寸法であり、本体部651とバッテリ68の第一受け部725との間の寸法に応じて適宜変更され得る。
【0072】
一方、本実施形態では、位置決め部652が非支持位置にあると、位置決め部652は、支持位置にあるときよりも本体部651側に近付く。すなわち、本実施形態において、非支持位置は、位置決め部652の移動範囲のうち、支持位置以外の位置を意味する。位置決め部652は、本体部651に内蔵されたコイルばね等の弾性体によって、支持位置に向かって押されている。これによって、位置決め部652は、自然状態では、支持位置に位置している。
【0073】
位置決め部652は、本実施形態では、作用面653と、傾斜面654と、を備える。作用面653は、第一受け面726を支持する。作用面653は、取外し方向D3に対して交差しており、より詳細には、取外し方向D3に対して直交する。ここでいう「直交」とは、取外し方向D3とのなす角が90°のみを意味するのではなく、第一受け部725の第一受け面726をバッテリ装着部61に対して位置決めすることができるという効果を奏するに必要な範囲を含む。ここでいう「直交」は、一例として、90°±5°の範囲を含む。
【0074】
傾斜面654は、取外し方向D3とは反対方向(取付け方向という場合がある)に沿って相対移動する他の部材が当たると、位置決め部652を支持位置から非支持位置に切り替える。傾斜面654は、本実施形態では、取付け方向に対して傾斜しており、かつ第一方向D1のうちのバッテリ68側にいくに従って、取付け方向にいくように傾斜している。傾斜面654は、本実施形態では、第二方向D2に直交する断面において、円弧状である。したがって、傾斜面654に対して、取付け方向に移動するバッテリ68の少なくとも一部が当たると、位置決め部652は、非支持位置に切り替えられる。
【0075】
解除操作部655は、位置決め部652によるバッテリ68の位置決めを解除する。解除操作部655は、本実施形態では、使用者等の操作により、位置決め部652によるバッテリ68の位置決めを解除することができる。解除操作部655は、本実施形態では、シリンダ錠656を有しており、シリンダ錠656を操作することで、位置決め部652を非支持位置に切り替える。解除操作部655の先端面632は、バッテリ装着用パイプ28から露出する。
【0076】
移動規制体66は、バッテリ68が取付け位置から離脱位置に向かう間に、バッテリ68の取外し方向D3の移動を規制する。移動規制体66は、位置決め機構部65に取り付けられ、位置決め機構部65に対して固定される。移動規制体66は、
図3に示すように、複数(ここでは二つ)の移動規制部661を有する。
【0077】
複数の移動規制部661は、取付け位置と離脱位置との間で、バッテリ68の取外し方向D3への移動を規制する。各移動規制部661は、第一方向D1のうちのバッテリ68側に向かう方向に延びている。複数の移動規制部661は、複数の第二受け部723に対応しており、複数の第二受け部723に対して一対一で入る。ただし、本開示では、一つの移動規制部661でもよく、要するに少なくとも一つの移動規制部661があればよい。
【0078】
本実施形態では、位置決め部652が非支持位置に切り替えられたときに、
図6Bに示すように、バッテリ68が取外し方向D3に移動しても、複数の移動規制部661に対して複数の第二受け部723が引っ掛かる。すると、複数の第二受け部723は、取外し方向D3に沿ったバッテリ68の移動を規制し得る。
【0079】
本実施形態に係るバッテリ装置6は、複数の移動規制部661を有しており、この移動規制部661によって、取付け位置と離脱位置との間で、取外し方向D3に沿ったバッテリ68の移動を規制することができる。このため、本実施形態のバッテリ装置6によれば、バッテリ装着部61からバッテリ68が直ちに取り外されるのを抑えることができる。
【0080】
この後、複数の移動規制部661によるバッテリ68の取外し方向D3への移動の規制は、次のようにして解除することができる。
【0081】
図6C,6Dに示すように、使用者等は、複数の第二受け部723が形成された移動板722を、第一方向D1のうちのバッテリ68側に押す。すると、複数の移動規制部661の規制が解除され、バッテリ68の第二取付け部72が取外し方向D3に移動可能となり、バッテリ68を離脱位置に移動させることができる。これにより、バッテリ68をバッテリ装着部61から外すことができる。
【0082】
(2.3.2.4)押さえ具
押さえ具67は、バッテリ装着用パイプ28の内面とバッテリ68との間に通された線状部材3の位置を保つ。押さえ具67は、
図3に示すように、本実施形態では、ベース62に対して着脱可能に取り付けられている。ただし、本開示では、押さえ具67は、ベース62に対して、溶接により取り付けられてもよく、着脱可能でなくてもよい。また、押さえ具67とベース62とは一体でもよい。
【0083】
本開示において「着脱可能」とは、その部分に対して対象物が、取外し及び取付けが可能であることを意味し、取外し及び取付けを意図した構造を持つこと意味する。「着脱可能」は、例えば、ねじ止め構造,引掛け構造を含む。ここで、例えば溶接による接合は、強い力を掛ければ、その部分から対象物を取り外し得るが、取外し及び取付けを意図した構造を持たないため「着脱可能」には含まれない。
【0084】
押さえ具67は、本実施形態では、金属板によって構成されている。押さえ具67は、金属板を曲げ加工することで形成される。押さえ具57は、バッテリ装着用パイプ28の長手方向において、ベース62よりも短い。押さえ具67は、本実施形態では、基底部671と、複数の取付け部673と、複数の押さえ部675とを備える。
【0085】
基底部671は、ベース62の底板621に沿う。基底部671は、複数の取付け部673を互いにつなぐ。基底部671は、第一方向D1及び第二方向D2を含む下面を有する平板状に形成されている。基底部671の下面は、ベース62の底板621の上面に対向する。本実施形態では、基底部671の下面は、ベース62の底板621の上面に対して当たっている。
【0086】
基底部671は、複数(ここでは一対)の対応片672を有する。各対応片672は、各立上板622に形成された位置決め溝623に差し込まれる。位置決め溝623に対して対応片672が差し込まれることで、押さえ具67は、ベース62に対し、第一方向D1に沿った移動に対する位置決めが行われる。
【0087】
複数の取付け部673は、押さえ具67において、ベース62に対する取り付けを行う部分である。各取付け部673は、基底部671から立ち上げられている。各取付け部673は、本実施形態では、各立上板622に沿っている。各取付け部673は、爪部674を有している。複数の爪部674は、立上板622の引掛け孔624に対応する位置に形成されている。対応片672が位置決め溝623に差し込まれると、爪部674は、引掛け孔624に引掛けられる。これにより、押さえ具67は、ベース62に対し、第一方向D1及び第二方向D2に直交する方向に沿った移動に対する位置決めが行われる。
【0088】
複数の押さえ部675は、
図7に示すように、バッテリ68と線状部材3との間に配置され、バッテリ装着用パイプ28の内面に対して固定されている。本実施形態に係る押さえ具67は、複数の押さえ部675として、4つの押さえ部675を有する。複数の押さえ部675の少なくとも一つの押さえ部675(ここでは二つ)が、ベース62に対して第二方向D2の一方側に突出し、他の押さえ部675(ここでは二つ)が、ベース62に対して第二方向D2の他方側に突出する。要するに、複数の押さえ部675は、第二方向D2において、ベース62の両側に配置されている。
【0089】
各押さえ部675は、取付け部673の上端部から第二方向D2の外側(ベース62から離れる側)に突出している。各押さえ部675の突出方向の中央部676は、厚み方向における上側に湾曲している。また、各押さえ部675の突出方向の先端部677は、厚み方向における上側に曲げられている。
【0090】
ここで、バッテリ装着用パイプ28の内面には、複数(ここでは二つ)の凹所30が形成されている。凹所30には、複数の線状部材3が配置される。各凹所30は、バッテリ装着用パイプ28の内面から、外側に向かって凹んでいる。各凹所30は、バッテリ装着用パイプ28の長手方向に沿って形成されている。各凹所30は、バッテリ装着用パイプ28の全長にわたって形成されてもよいし、開口部29に対応する部分に形成されてもよい。
【0091】
複数の凹所30は、第二方向D2に離れて形成されている。複数の凹所30の間に、ベース62が取り付けられている。要するに、複数の凹所30は、ベース62に対して第二方向D2の両側に形成されている。
【0092】
なお、本開示では、凹所30は複数に限らない。例えば、凹所30は、バッテリ装着用パイプ28の内面に一つだけ形成されてもよい。
【0093】
複数の線状部材3は、複数の凹所30に配置される。線状部材3は、一方向に長い部材であり、例えば、ワイヤーハーネス,又はブレーキ用のワイヤである。線状部材3は、本実施形態では、可とう性又は柔軟性を有するが、変形しにくい素材であってもよい。各線状部材3は、バッテリ装着用パイプ28の長手方向に沿うようにして、バッテリ装着用パイプ28の内面とバッテリ68との間を通る。本実施形態では、複数の線状部材3のうちの一つが、一の凹所30に配置され、他の複数の線状部材3が、他の凹所30に配置されてもよい。また、すべての線状部材3が一の凹所30に配置され、他の凹所30には線状部材3が配置されなくてもよい。
【0094】
各押さえ部675は、凹所30の底面301に対向する位置に配置され、バッテリ装着用パイプ28の内面283に対して固定されている。これによって、各押さえ部675は、凹所30に配置された線状部材3が、バッテリ68の側方にまで移動するのを抑えることができる。この結果、本実施形態では、線状部材3が開口部29から露出したり、バッテリ68を装着するときに、線状部材3がバッテリ装着部61とバッテリ68との間に挟まる等で邪魔になったりするのを抑えることができる。
【0095】
本実施形態では、バッテリ装着用パイプ28の内面283である凹所30の底面301と押さえ具67とは、一定の寸法離れており、押さえ具67と凹所30の底面301との間の寸法の範囲において、線状部材3は移動し得る。本開示では、押さえ具67によって、線状部材3をバッテリ装着用パイプ28の内面283に押さえ付けてもよい。
【0096】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0097】
実施形態に係る電動自転車1では、開口部29が前斜め上方向に向いていたが、本開示ではこれに限らない。例えば、本開示では、
図8Aに示すように、開口部29の開口面291を前斜め下方向に向くようにしてもよい。また、
図8Bに示すように、開口部29の開口面291を、左右方向のいずれか一方に向くようにしてもよい。なお、
図8A,
図8Bにおいては、カバー74を省略している。
【0098】
実施形態に係る電動自転車1では、駆動ユニットから出力される動力を後輪42に伝達したが、本開示では、駆動ユニットから出力される動力を前輪41に伝達してもよい。
【0099】
実施形態では、動力伝達体92はチェーンであるが、本開示ではこれに限らない。例えば、動力伝達体92は、ベルト又はワイヤ等であってもよい。
【0100】
実施形態では、バッテリ装置6が下パイプ20に取り付けられたが、本開示では、バッテリ装置6は、例えば、立パイプ21に取り付けられてもよく、バッテリ装置6が取り付けられるパイプは特に限らない。
【0101】
実施形態に係る電動自転車1では、1つのベース62に対して1つの押さえ具67が取り付けられたが、本開示では、1つのベース62に対して、複数の押さえ具67が取り付けられてもよい。
【0102】
(4)態様
以上説明したように、第1の態様に係る電動自転車(1)は、複数のパイプを有するフレーム(2)と、フレーム(2)に取り付けられたバッテリ装置(6)と、を備える。フレーム(2)は、複数のパイプのうちの少なくとも一つとして、バッテリ装着用パイプ(28)を有する。バッテリ装着用パイプ(28)は、長手方向に交差する方向に向く開口面(291)を含む開口部(29)が形成され、開口部(29)内にバッテリ装置(6)が配置される。バッテリ装置(6)は、開口部(29)内に配置されたバッテリ装着部(61)と、バッテリ装着部(61)に着脱可能に取り付けられたバッテリ(68)と、を有する。電動自転車(1)は、少なくとも一つの線状部材(3)と、押さえ具(67)とを更に備える。線状部材(3)は、バッテリ装着用パイプ(28)の長手方向に沿うようにして、バッテリ装着用パイプ(28)の内面(283)とバッテリ(68)との間を通る。押さえ具(67)は、線状部材(3)とバッテリ(68)との間に配置され、バッテリ装着用パイプ(28)の内面(283)に対して固定される。
【0103】
この態様によれば、押さえ具(67)によって、線状部材(3)の移動が規制されるため、バッテリ(68)をバッテリ装着部(61)に装着する際に、線状部材(3)が邪魔になるのを抑えることができる。
【0104】
第2の態様に係る電動自転車(1)では、第1の態様において、バッテリ装着部(61)は、開口部(29)内において、バッテリ装着用パイプ(28)の内面(283)に取り付けられたベース(62)を有する。押さえ具(67)は、ベース(62)に取り付けられている。
【0105】
この態様によれば、押さえ具(67)を容易にバッテリ装着用パイプ(28)の内面(283)に対して固定することができる。
【0106】
第3の態様に係る電動自転車(1)では、第2の態様において、押さえ具(67)は、ベース(62)に対して着脱可能に取り付けられている。
【0107】
この態様によれば、線状部材(3)を交換や修理等で取り外す場合にも、押さえ具(67)を取り外すことができる。
【0108】
第4の態様に係る電動自転車(1)では、第3の態様において、ベース(62)は、バッテリ装着用パイプ(28)の長手方向に沿って延びている。押さえ具(67)は、バッテリ装着用パイプ(28)の長手方向において、ベース(62)よりも短い。
【0109】
この態様によれば、押さえ具(67)の長さを抑えることができるため、コストを抑えることができる。
【0110】
第5の態様に係る電動自転車(1)では、第2~4のいずれかの態様において、押さえ具(67)は、取付け部(673)と、少なくとも一つの押さえ部(675)とを有する。取付け部(673)は、ベース(62)に取り付けられる。押さえ部(675)は、取付け部(673)に設けられ、線状部材(3)とバッテリ(68)との間に位置する。
【0111】
この態様によれば、簡略された構成で、ベース(62)に取り付けられる押さえ具(67)を実現できる。
【0112】
第6の態様に係る電動自転車(1)では、第1~5のいずれか一つの態様において、バッテリ装着用パイプ(28)の内面(283)には、線状部材(3)が配置される少なくとも一つの凹所(30)が形成される。凹所(30)に対向する位置に押さえ具(67)の少なくとも一部が配置される。
【0113】
この態様によれば、凹所(30)に線状部材(3)を収めることができるため、線状部材(3)を見栄えよく配置できる。
【0114】
第2~第6の態様に係る構成については、電動自転車(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 電動自転車
2 フレーム
28 バッテリ装着用パイプ
283 バッテリ装着用パイプの内面
29 開口部
291 開口面
3 線状部材
30 凹所
6 バッテリ装置
61 バッテリ装着部
62 ベース
67 押さえ具
673 取付け部
675 押さえ部
68 バッテリ