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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】騒音低減装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
G10K11/178 120
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021142608
(22)【出願日】2021-09-01
(62)【分割の表示】P 2020510439の分割
【原出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2021192112
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2018069460
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 潤二
(72)【発明者】
【氏名】高山 伸一
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-237719(JP,A)
【文献】特開2007-093962(JP,A)
【文献】特開2015-045766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御空間に配置されるマイクにより収音された騒音信号を周波数領域の騒音信号に変換する処理部と、
変換された前記周波数領域の騒音信号を保持する保持部と、を備え、
前記処理部は、
前記マイクにより収音された騒音信号が前記周波数領域に変換された騒音信号の周波数特性と前記保持部に保持された騒音信号の周波数特性とを用いて、前記マイクにより収音された騒音信号が前記制御空間において非定常的に発生する非定常騒音か否かを判定し、
前記マイクにより収音された騒音信号が前記非定常騒音であると判定した場合に、前記マイクにより収音された騒音信号を騒音低減処理しない
騒音低減装置。
【請求項2】
前記マイクにより収音された騒音信号を前記制御空間の制御位置において低減するための騒音低減信号を生成する信号生成部と、をさらに備える、
請求項1に記載の騒音低減装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記マイクにより収音された騒音信号が前記非定常騒音であると判定した場合に、判定された前記マイクにより収音された騒音信号に対応する騒音低減信号の生成を省略させる、
請求項1に記載の騒音低減装置。
【請求項4】
前記処理部は、
所定の周波数帯域における、前記マイクにより収音された騒音信号の周波数領域の振幅が基準信号の周波数領域の振幅より大きい場合に、前記マイクにより収音された騒音信号を前記非定常騒音であると判定する、
請求項1に記載の騒音低減装置。
【請求項5】
前記処理部は、
前記マイクにより収音された騒音信号の時間領域の振幅が所定の閾値より大きい場合に、前記マイクにより収音された騒音信号を前記非定常騒音であると判定する、
請求項1に記載の騒音低減装置。
【請求項6】
前記制御位置の近傍に配置される第2マイクにより収音された騒音信号を周波数領域の騒音信号に変換する第2処理部と、
変換された前記周波数領域の騒音信号を基準信号として保持する第2保持部と、をさらに備え、
前記信号生成部は、
前記マイク、前記第2マイクのそれぞれにより収音された騒音信号が前記処理部、前記第2処理部のそれぞれにより前記周波数領域に変換された騒音信号の周波数特性を用いて、前記騒音低減信号を生成する、
請求項に記載の騒音低減装置。
【請求項7】
前記信号生成部により生成された前記騒音低減信号を、前記マイクにより収音された騒音信号に畳込み処理する適応フィルタ、をさらに備え、
前記信号生成部は、
前記マイクにより収音された騒音信号に対応して、前記騒音低減信号の生成に用いる前記適応フィルタのフィルタ係数を更新して前記騒音低減信号を生成し、更新された前記フィルタ係数を前記保持部に保存する、
請求項に記載の騒音低減装置。
【請求項8】
前記処理部は、
前記マイクにより収音された騒音信号が前記非定常騒音であると判定した場合に、判定された前記マイクにより収音された騒音信号に対応して、前記フィルタ係数の更新を前記信号生成部に省略させ、以前に前記保持部に保存された前記フィルタ係数を用いて前記騒音低減信号を生成させる、
請求項に記載の騒音低減装置。
【請求項9】
前記処理部は、
前記マイクにより収音された騒音信号が前記非定常騒音であると判定した場合に、判定された前記マイクにより収音された騒音信号に対応して、前記フィルタ係数を前記信号生成部に初期化させる、
請求項に記載の騒音低減装置。
【請求項10】
前記信号生成部により更新された前記フィルタ係数の発散の有無を検知する発散検知部、をさらに備え、
前記発散検知部は、
前記信号生成部により更新された前記フィルタ係数の発散を検知した場合に、以前に前記保持部に保存された前記フィルタ係数を前記適応フィルタに出力する、
請求項に記載の騒音低減装置。
【請求項11】
前記処理部は、
前記マイクにより収音された騒音信号の時間領域の振幅が前記所定の閾値以下であって、かつ、前記マイクにより収音された騒音信号が前記周波数領域に変換された騒音信号の振幅が基準信号の振幅より大きいと判断した場合に、前記騒音信号を前記非定常騒音であると判定する、
請求項に記載の騒音低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、周辺環境において定常的に発生している騒音のレベルを低減する騒音低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の騒音マイクと騒音制御部と制御スピーカとを有する騒音低減装置が設置された航空機内において、騒音制御部は複数の騒音マイクで検知された騒音を制御対象空間で低減するための制御音信号を生成する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/170321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、航空機等の制御空間において定常的に発生する定常騒音以外の非定常的に発生する非定常騒音を適応的に検知し、定常騒音の低減処理の精度劣化を効果的に抑制する騒音低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、制御空間に配置されるマイクにより収音された騒音信号を周波数領域の騒音信号に変換する処理部と、変換された前記周波数領域の騒音信号を基準信号として保持する保持部と、前記マイクにより収音された騒音信号を前記制御空間の制御位置において低減するための騒音低減信号を生成する信号生成部と、を備え、前記処理部は、前記マイクにより収音された騒音信号が前記周波数領域に変換された騒音信号の周波数特性と前記基準信号の周波数特性とを用いて、前記マイクにより収音された騒音信号が前記制御空間において非定常的に発生する非定常騒音か否かを判定し、前記マイクにより収音された騒音信号が前記非定常騒音であると判定した場合に、判定された前記マイクにより収音された騒音信号に対応する前記騒音低減信号の生成を前記信号生成部に省略させる、騒音低減装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、航空機等の制御空間において定常的に発生する定常騒音以外の非定常的に発生する非定常騒音を適応的に検知でき、定常騒音の低減処理の精度劣化を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1に係る騒音低減装置を含む騒音低減システムのシステム構成例を示す図
図2】実施の形態1に係る騒音低減装置の内部構成例を示すブロック図
図3】定常騒音および非定常騒音の周波数特性の一例を示すグラフを示す図
図4】実施の形態1に係る騒音低減処理動作を示すフローチャート
図5】実施の形態2に係る騒音低減処理動作を示すフローチャート
図6】実施の形態3に係る騒音低減処理動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施の形態1の内容に至る経緯)
特許文献1に開示された技術では、騒音マイクで収音される騒音は、エンジンの作動により発生するエンジン音、風切り音、エアコン等、航空機内において定常的に発生する定常騒音(例えばエンジン音)が対象となっている。
【0009】
このため、航空機内において定常騒音以外に非定常的に発生する騒音(具体的には、機内における乗員や乗客の話し声、機内放送等の非定常的に発生する非定常騒音)が発生した場合には、定常騒音と非定常騒音との周波数特性が異なることから、制御対象空間において騒音を効果的に低減することは困難であると考えられる。
【0010】
そこで、以下の実施の形態1では、航空機等の制御空間において非定常騒音が多く発生しても、その影響を抑制し、ロバスト性を向上する騒音低減処理の例を説明する。
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る騒音低減装置を具体的に開示した各実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
以下の各実施の形態では、本開示に係る騒音低減装置が搭載される騒音低減システムが、制御空間内(例えば航空機の機内)の乗客の座席付近に設置される場合を例示して説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る騒音低減装置10を含む騒音低減システム5のシステム構成例を示す図である。騒音低減システム5は、騒音低減装置10と、複数の騒音マイク30と、複数の誤差マイク40と、複数のスピーカ50とを含む構成である。騒音低減システム5は、例えば航空機の機内の乗客の座席付近に設置される。騒音マイク30および誤差マイク40のそれぞれの配置数は、1個以上であれば任意の数でよい。例えば、騒音低減システム5は、16個の騒音マイクと4個の誤差マイクを有してよい。また、スピーカ50の配置数も1個以上であれば任意の数でよい。
【0014】
図2は、実施の形態1に係る騒音低減装置10の内部構成例を示すブロック図である。図2に示す例では、説明を分かり易くするために、騒音マイク30および誤差マイク40がそれぞれ1個設けられている場合を示す。騒音マイク30および誤差マイク40は、航空機の機内で発生する騒音(具体的には、定常騒音および非定常騒音)を収音する。ここで、定常騒音とは、エンジン音や風切り音等、飛行中の航空機の機内において定常的に発生する騒音である。また、非定常騒音とは、飛行中の航空機の機内において非定常的に発生する騒音(つまり、上述した定常騒音以外の音で、例えば機内で発生する乗員や乗客の音声、機内放送、雑音等)である。
【0015】
ここで、定常騒音および非定常騒音の周波数特性について、図3を参照して説明する。図3は、定常騒音および非定常騒音の周波数特性の一例を示すグラフである。図3のグラフの縦軸は、騒音信号の周波数領域における振幅(単位:dB)である。図3のグラフの横軸は、周波数(単位:Hz)である。
【0016】
定常騒音は、グラフg1に示すように、25Hzから400Hzにかけて大きな振幅を有し、その後、漸次減少する特性を有する。一方、非定常騒音は、グラフg2に示すように、100Hz~300Hzを含む範囲において大きな振幅を有し、2kHzを超える領域でほぼ値0となる特性を有する。
【0017】
このような特性に鑑みて、本実施の形態では、検知対象帯域(つまり、騒音マイク30により収音された騒音信号に非定常騒音が検知されたかを検知するための対象範囲)が設定される。例えば検知対象帯域は、下限FLが70Hzに設定され、上限FHが2kHzに設定される。なお、検知対象帯域は、任意の帯域に設定されてもよい。図3に示す例では、480Hz付近で非定常騒音の振幅が定常騒音の振幅より大きくなる逆転現象が生じている。
【0018】
騒音低減装置1は、検知対象帯域において、騒音マイク30により収音される騒音信号の周波数領域における振幅と基準信号(後述参照)の周波数領域における振幅との比較により、非定常騒音が発生しているか否かを検知可能である。また、騒音低減装置1は、騒音マイク30により収音される騒音信号の時間領域における音圧レベルと所定の閾値(例えば、非定常騒音として突発的に発生した大きな音の平均的な音圧レベル)とを比較することで、非定常騒音が発しているか否かを検知可能である。
【0019】
騒音低減装置10は、例えばDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成され、適応的騒音抑圧制御(ANC:Active Noise Control)処理を行う。
【0020】
騒音マイク30は、航空機の機内の騒音源から発生した騒音を収音するマイクロフォンであり、騒音マイク30の受音面に伝わる空気の振動を電気信号に変換して出力する。
【0021】
誤差マイク40は、航空機の機内の騒音源から発生した騒音信号とスピーカ50から発した騒音低減音信号(制御音信号の一例)とが重ね合わされた残留音信号(誤差音信号の一例)を収音するマイクロフォンであり、誤差マイク40の受音面に伝わる空気の振動を電気信号に変換して出力する。
【0022】
騒音低減装置10は、騒音マイク30で収音される騒音信号に対し、誤差マイク40で収音される音信号が最小となるように、騒音信号とは逆位相の音信号を生成してスピーカ50に出力し、騒音信号を打ち消すというANC処理を行う。騒音低減装置10は、適応フィルタ畳込み部11、適応フィルタ更新部12、適応フィルタ発散検知部13、信号処理部21,23、保持部22,24、エコーキャンセル処理部17および加算器18を有する。
【0023】
適応フィルタ畳込み部11は、騒音マイク30で収音された騒音信号に対し、適応フィルタ更新部12により生成されたフィルタ係数が設定された適応フィルタを用いて畳込み処理を行い、騒音低減信号を生成する。適応フィルタ畳込み部11は、多段タップを有し、各タップのフィルタ係数を自由に設定可能なFIR(Finite impulse response)フィルタを用いて構成される。
【0024】
適応フィルタ更新部12は、騒音マイク30および誤差マイク40で収音された騒音信号を基に、残留音信号(誤差音信号の一例)が最小となるように、適応フィルタ畳込み部11の各フィルタ係数を周期的に更新する。適応フィルタ更新部12は、騒音マイク30および誤差マイク40で収音された騒音が定常騒音である場合に上記フィルタ係数を更新し、一方で、非定常騒音である場合には上記フィルタ係数の更新を中断(つまり、省略)する。また、適応フィルタ更新部12は、メモリ12zを有し、前回以前に定常騒音が検知された時に更新されたフィルタ係数をメモリ12zに保持している。
【0025】
適応フィルタ発散検知部13は、発散する可能性のあるフィルタ係数のフェイルセーフとして機能する。適応フィルタ発散検知部13は、適応フィルタ更新部12によって更新されるフィルタ係数が急激に大きくなると、フィルタ係数の発散(つまり、フィルタ係数の既定の上限値を超えた現象)を検知する。フィルタ係数の発散が検知された場合、適応フィルタ発散検知部13は、適応フィルタ畳込み部11の動作を停止させる。したがって、スピーカ50からの出力は無音となる。また、フィルタ係数の発散が検知された場合、適応フィルタ発散検知部13は、前回の更新時に保持部22に保持されたフィルタ係数を適応フィルタ畳込み部11に出力してもよい。この場合には、前回更新時のフィルタ係数に基づいて畳込み処理された制御音信号がスピーカ50から出力される。
【0026】
信号処理部21は、騒音マイク30で収音された音信号に対し、時間領域および周波数領域において定常騒音であるか非定常騒音であるかを判定する。周波数領域で判定する場合、信号処理部21は、一定の周期毎に、公知技術を用いて、騒音マイク30で収音された騒音信号を周波数領域の騒音信号に変換する。信号処理部21は、変換された騒音信号の周波数特性を表す周波数領域データを保持部22に保存する。また、信号処理部21は、騒音マイク30で収音された時間領域の騒音信号の時間特性を表す時間領域データを保持部22に保存する。
【0027】
信号処理部21は、ANC処理の動作中あるいは停止中のいずれの状態においても、騒音低減装置10がオン状態にある場合、騒音マイク30で収音された騒音信号の周波数領域データおよび時間領域データを保持部22に保存する動作を継続する。
【0028】
保持部22は、例えばRAM(Random Access Memory)を用いて構成され、既に記憶されている騒音信号の周波数領域データおよび時間領域データを更新する。このとき、保持部22は、一定期間あるいは一定量の騒音信号のデータ(つまり、周波数領域データおよび時間領域データ)を時系列に記憶し、最古のデータを上書きするように更新してもよい。また、保持部22は、周波数領域データおよび時間領域データの基準信号を保持する。
【0029】
基準信号は、例えば定常騒音が発しており、かつANC処理をオフにした状態で、騒音マイク30により定常騒音が収音された時の騒音のデータ(つまり、周波数領域データおよび時間領域データ)である。周波数領域データの基準信号は、例えば70Hz~2KHzの帯域の騒音を含む。
【0030】
基準信号には、騒音マイク30により収音された騒音信号を一定の期間に複数回収音し、その平均的な騒音信号が用いられてもよいし、1回の収音で得られた騒音信号が用いられてもよい。また、基準信号は、定期的に更新される。基準信号は、収音された音信号がそのまま登録されてもよいし、70Hz~2KHzの帯域に含まれる音を抽出して登録されてもよい。70Hz~2KHzの帯域に含まれる騒音は、非定常騒音(搭乗者の声、機内放送等)が発生し易い音域であり、また、ユーザが気になる可聴域の音である。また、信号処理部21で用いられる基準信号と、信号処理部23で用いられる基準信号とは、同じであってもよいし、異なってもよい。同じである場合、騒音マイク30または誤差マイク40の一方で収音された騒音信号が基準信号に用いられる。
【0031】
信号処理部21は、保持部22に保存された周波数領域の基準信号を読み出し、騒音マイク30から入力した騒音信号の周波数領域データと比較する。信号処理部21は、これらの音を音の強さ(例えば、振幅)で比較し、この比較結果を基に、適応フィルタ更新部12によるフィルタ係数の更新動作の有無を制御する。
【0032】
また、信号処理部21は、保持部22に記憶された時間領域の基準信号を読み出し、騒音マイク30から入力した騒音信号の時間領域データと比較する。信号処理部21は、これらの音を音の強さ(例えば、振幅)で比較することで、非定常音(例えば、突発的な音や、断線が生じたがために無音)であるか否かを判定する。突発的な音として、例えばマイク近辺のシェルが叩かれた音やドアの乱暴な開閉音等が挙げられる。また、断線の場合、騒音マイク30から殆どノイズレベルの微小音しか入力されなくなる。
【0033】
信号処理部23は、誤差マイク40で収音された音信号に対し、時間領域および周波数領域において定常騒音であるか非定常騒音であるかを判定する。周波数領域で判定する場合、信号処理部23は、一定の周期毎に、公知技術を用いて、誤差マイク40で収音された音を周波数領域の騒音信号に変換する。信号処理部23は、変換された騒音信号の周波数特性を表す周波数領域データを保持部24に保存する。また、信号処理部23は、騒音信号の時間特性を表す時間領域データを保持部24に保存する。
【0034】
信号処理部23は、ANC処理の動作中あるいは停止中のいずれの状態においても、騒音低減装置10がオン状態にある場合、誤差マイク40で収音された騒音信号の周波数領域データおよび時間領域データを保持部24に保存する動作を継続する。
【0035】
保持部24は、例えばRAMを用いて構成され、既に記憶されている音信号の周波数領域データおよび時間領域データを更新する。このとき、保持部24は、一定期間あるいは一定量における騒音信号のデータ(つまり、周波数領域データおよび時間領域データ)を時系列に記憶し、最古のデータを上書きするように更新してもよい。また、保持部24は、周波数領域データおよび時間領域データの基準信号を保持する。
【0036】
基準信号は、例えば定常騒音が発しており、かつANC処理をオフにした状態で、誤差マイク40により定常騒音が収音された時の騒音のデータ(つまり、周波数領域データおよび時間領域データ)である。周波数領域データは、例えば70Hz~2KHzの帯域の騒音を含む。
【0037】
基準信号には、誤差マイク40により収音された騒音信号を一定の期間に複数回収音し、その平均的な騒音信号が用いられてもよいし、1回の収音で得られた騒音信号が用いられてもよい。また、基準信号は、定期的に更新される。基準信号は、収音された音信号がそのまま登録されてもよいし、70Hz~2KHzの帯域に含まれる音を抽出して登録されてもよい。70Hz~2KHzの帯域に含まれる音は、非定常騒音(搭乗者の声、機内放送等)が発生し易い音域であり、また、ユーザが気になる可聴域の音である。また、信号処理部23で用いられる基準信号と、信号処理部21で用いられる基準信号とは、同じであってもよいし、異なってもよい。同じである場合、騒音マイク30または誤差マイク40の一方で収音された音信号が基準信号に用いられる。
【0038】
信号処理部23は、保持部24に保存された周波数領域の基準信号を読み出し、誤差マイク40から入力した騒音信号の周波数領域データと比較する。信号処理部23は、これらの音を音の強さ(例えば、振幅)で比較し、この比較結果を基に、適応フィルタ更新部12によるフィルタ係数の更新動作の有無を制御する。
【0039】
また、信号処理部23は、保持部24に記憶された時間領域の基準信号を読み出し、誤差マイク40から入力した騒音信号の時間領域データと比較する。信号処理部23は、これらの音を音の強さ(例えば、振幅)で比較することで、非定常音(例えば、突発的な音や、断線が生じたがために無音)であるか否かを判定する。突発的な音として、例えばマイク近辺のシェルが叩かれた音やドアの乱暴な開閉音等が挙げられる。また、断線の場合、騒音マイク30から殆どノイズレベルの微小音しか入力されなくなる。
【0040】
エコーキャンセル処理部17は、スピーカ50から出力される音が騒音マイク30に入力されることで生じるハウリング現象を抑止するために、騒音マイク30から入力される音に対してスピーカ50から出力される音をキャンセルする信号を生成する。
【0041】
加算器18は、騒音マイク30に入力される信号に対して、エコーキャンセル処理部17から出力される、エコーキャンセル信号を加算することにより、スピーカ50から出力される音をキャンセルする。
【0042】
スピーカ50は、騒音低減装置10から出力される騒音低減音(制御音)の信号を入力し、音波に変換して出力する。スピーカ50は、ユーザの耳元付近まで届く騒音を打ち消すように、騒音とは逆位相の制御音を出力する。
【0043】
次に、実施の形態1に係る騒音低減システム5の動作について、図4を参照して説明する。
【0044】
騒音低減装置10によるANC処理は、例えばユーザがフルフラット状態で寝転んでいる状態を想定して行われる。この場合、スピーカ50は、ユーザがフルフラット状態で寝転んでいる状態または座席(シート)を少し倒している状態で床やシートの近くに配置される。誤差マイク40は、ユーザの耳またはスピーカ50に近い所に配置される。騒音マイク30は、誤差マイク40から離れた位置に配置(例えば、ユーザが座っているシートの上部位置)に配置される。
【0045】
図4は、実施の形態1に係る騒音低減処理動作を示すフローチャートである。図4において、騒音低減装置10の信号処理部21,23は、騒音マイク30および誤差マイク40でそれぞれ収音された騒音信号を入力する(S1)。信号処理部21,23は、公知技術(例えばフーリエ変換)を用いて、入力された時間領域の騒音信号を周波数領域の騒音信号に変換する(S2)。信号処理部21,23は、周波数領域の騒音信号を保持部22、24にそれぞれ保持(更新)する(S3)。
【0046】
信号処理部21,23は、保持部22,24にそれぞれ保持された周波数領域の基準信号を読み出し、この周波数領域の基準信号の振幅と、変換した周波数領域の騒音信号の振幅とをそれぞれ比較する。比較の結果、信号処理部21,23は、周波数領域の騒音信号の振幅が周波数領域の基準信号の振幅より大きいか否かを判別する(S4)。
【0047】
周波数領域の騒音信号の振幅が周波数領域の基準信号の振幅以下である場合(S4、NO)、適応フィルタ更新部12は、騒音マイク30および誤差マイク40でそれぞれ収音された騒音信号を基に、適応フィルタ畳込み部11の各フィルタ係数を更新する(S5)。適応フィルタ更新部12は、更新したフィルタ係数をメモリ12zに保存する(S6)。なお、適応フィルタ更新部12は、更新したフィルタ係数を保持部22または保持部24に保存してもよい。また、適応フィルタ更新部12は、更新したフィルタ係数を適応フィルタ畳込み部11に渡す。
【0048】
一方、騒音信号の周波数領域の振幅が基準信号の周波数領域の振幅より大きい場合(S4、YES)、適応フィルタ更新部12は、非定常騒音が発生したと判断し、メモリ12zに保存された前回以前に更新した定常騒音時のフィルタ係数を適応フィルタ畳込み部11に渡す(S7)。
【0049】
適応フィルタ畳込み部11は、適応フィルタ更新部12から受け取ったフィルタ係数を設定し、騒音マイク30で収音された騒音信号に対し、畳込み処理を行い、騒音信号と逆位相となる制御音信号を生成する(S8)。適応フィルタ畳込み部11は、生成された制御音信号をスピーカ50に出力する(S9)。スピーカ50は、誤差マイク40の近傍で騒音信号を打ち消すような制御音を出力する。このような動作は、騒音低減装置10が動作している間、常に継続する。
【0050】
このように、周波数領域で適応処理を行い、フィルタ係数を更新する騒音低減処理をリアルタイムで行う際、定常騒音よりも大きな非定常騒音が騒音マイクに含まれる場合、騒音マイクで収音された騒音信号を騒音低減処理に用いない。これにより、騒音低減処理による騒音低減効果を向上させることができ、また、フィルタ係数の発散を防止できる。したがって、騒音低減動作が安定する。
【0051】
以上により、実施の形態1における騒音低減装置10は、制御空間に配置される騒音マイク30により収音された騒音信号を周波数領域の騒音信号に変換する信号処理部21(処理部の一例)と、変換された周波数領域の騒音信号を基準信号として保持する保持部22と、騒音マイク30により収音された騒音信号を制御空間の制御位置において低減するための騒音低減信号を生成する適応フィルタ畳込み部11(信号生成部の一例)と、を備える。信号処理部21は、騒音マイク30により収音された騒音信号が周波数領域に変換された騒音信号の周波数特性と基準信号の周波数特性とを用いて、騒音マイク30により収音された騒音信号が制御空間において非定常的に発生する非定常騒音か否かを判定する。信号処理部21は、騒音マイク30により収音された騒音信号が非定常騒音であると判定した場合に、騒音マイク30により収音された騒音信号に対応する、適応フィルタ畳込み部11に設定され、適応フィルタ更新部12によって更新されるフィルタ係数(騒音低減信号の生成に係る制御値の一例)の更新を中断させる(つまり、省略させる)。
【0052】
これにより、騒音低減装置10は、航空機等の対象制御空間において定常的に発生する定常騒音以外の非定常的に発生する非定常騒音を適応的に検知できるので、定常騒音の低減処理の精度劣化を効果的に抑制できる。
【0053】
また、信号処理部21は、所定の周波数帯域における、騒音マイク30により収音された騒音信号の周波数領域の振幅が基準信号の周波数領域の振幅より大きい場合に、騒音マイク30により収音された騒音信号を非定常騒音であると判定する。これにより、騒音低減装置10は、騒音マイクにより収音された騒音信号と基準信号との所定の周波数帯域における周波数特性(例えば騒音信号の振幅)の比較により、ユーザにとって気になる程の騒音レベルの非定常騒音が発生したことを簡易かつ迅速に判定できる。
【0054】
また、騒音低減装置10は、ユーザの耳元付近(制御位置の近傍の一例)に配置される誤差マイク40(第2マイクの一例)により収音された騒音信号を周波数領域の騒音信号に変換する信号処理部23(第2処理部の一例)と、変換された周波数領域の騒音信号を基準信号として保持する保持部24(第2保持部の一例)と、をさらに備える。適応フィルタ畳込み部11は、騒音マイク30、誤差マイク40のそれぞれにより収音された騒音信号が、信号処理部21、23のそれぞれにより周波数領域に変換された騒音信号の周波数特性を用いて、騒音低減信号を生成する。これにより、騒音低減装置10は、ユーザの耳元等の制御位置の近傍に配置される誤差マイク40により収音された騒音信号の周波数特性を参照用の周波数特性となるように騒音低減信号(つまり、騒音のキャンセル用信号)を効果的に生成できる。
【0055】
また、適応フィルタ更新部12は、騒音マイク30により収音された騒音信号に対応して、適応フィルタのフィルタ係数を更新する。適応フィルタ畳込み部11(適応フィルタ)は、更新されたフィルタ係数を用いて、畳込み処理することで騒音低減信号を生成する。適応フィルタ更新部12は、更新されたフィルタ係数をメモリ12z(または保持部22)に保存する。これにより、騒音低減装置10は、騒音マイクにより収音された騒音信号に対応して、フィルタ係数を適応的に更新することで高精度な騒音低減信号を生成できる。また、騒音低減装置10は、更新後のフィルタ係数を保存することで次回以降の騒音低減信号の生成時の基準となるフィルタ係数として利用できる。
【0056】
また、信号処理部21は、騒音マイクにより収音された騒音信号が非定常騒音であると判定した場合に、判定されたマイクにより収音された騒音信号に対応して、フィルタ係数の更新を適応フィルタ更新部12に省略させ、以前に保持部22に保存されたフィルタ係数を用いて、適応フィルタ畳込み部11に騒音低減信号を生成させる。これにより、騒音低減装置10は、非定常騒音が発生した場合には、非定常騒音に追従したフィルタ係数の更新を止めるのでフィルタ係数の発散を抑制でき、さらに、非定常騒音が発生していない以前に生成されたフィルタ係数を用いることで定常騒音に対して高精度な騒音低減信号を生成できる。
【0057】
また、騒音低減装置10は、適応フィルタ更新部12により更新されたフィルタ係数の発散の有無を検知する適応フィルタ発散検知部13(発散検知部の一例)をさらに備える。適応フィルタ発散検知部13は、適応フィルタ更新部12により更新されたフィルタ係数の発散を検知した場合に、以前にメモリ12z(または保持部22)に保存されたフィルタ係数を適応フィルタ畳込み部11に出力する。これにより、騒音低減装置10は、非定常騒音が発生した場合に限らず、例えば騒音マイクにより収音された騒音信号の騒音レベルが大きい場合等に以前に保存されたフィルタ係数を用いることで、制御対象空間の環境に適応的な騒音低減信号を生成できる。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態1では、非定常騒音が検知された場合、適応フィルタ更新部12は、フィルタ係数の更新を中断し、前回以前に更新された定常騒音時のフィルタ係数を読み出し、適応フィルタ畳込み部11に設定した。実施の形態2では、非定常騒音が検知された場合、適応フィルタ更新部12は、フィルタ係数を初期化する場合を示す。
【0059】
実施の形態2における騒音低減システムは、実施の形態1とほぼ同一の構成を有する。前記実施の形態1と同一の構成要素については同一の符号を用いることで、その説明を省略する。
【0060】
図5は、実施の形態2に係る騒音低減処理動作を示すフローチャートである。実施の形態1と同一のステップ処理については同一の符号を用いることで、その説明を省略する。ステップS4で周波数領域の騒音信号の振幅が周波数領域の基準信号の振幅より大きい場合、適応フィルタ更新部12は、フィルタ係数を値0に初期化する(S7A)。適応フィルタ更新部12は、値0に設定されたフィルタ係数を適応フィルタ畳込み部11に渡す。
【0061】
適応フィルタ畳込み部11は、各フィルタ係数を値0に設定し、ステップS8で騒音マイク30で収音された騒音信号に対し、畳込み処理を行う。この場合、適応フィルタ畳込み部11は、騒音マイク30から騒音信号が入力されても、無音である制御音信号を出力する。したがって、スピーカ50から音が出力されなくなる。その他の処理は、実施の形態1と同様である。
【0062】
なお、ここでは、フィルタ係数を初期化する際、値0が設定されたが、あらかじめ決められたフィルタ係数、例えば機内に適した汎用的なフィルタ係数が初期化として設定されてもよい。
【0063】
以上により、実施の形態2に係る騒音低減装置10では、信号処理部21は、騒音マイク30により収音された騒音信号が非定常騒音であると判定した場合に、判定された騒音マイク30により収音された騒音信号に対応して、フィルタ係数を適応フィルタ畳込み部11に初期化させる。
【0064】
これにより、騒音低減装置10は、非定常騒音が発生した場合には、フィルタ係数を初期化させることで、スピーカからの騒音低減音の出力を一時的に停止できる。また、非定常騒音に追従したフィルタ係数の更新が止まるので、フィルタ係数の発散を抑制できる。
【0065】
(実施の形態3)
実施の形態1,2では、騒音マイクで収音された騒音に対し、周波数変換を行い、周波数領域で非定常騒音か否かを判定した。実施の形態3では、処理の負荷が大きい周波数領域で判定する前に、比較的処理の負荷が小さい時間領域で非定常騒音か否かを判定する場合を示す。
【0066】
実施の形態3の騒音低減システムは、実施の形態1とほぼ同一の構成を有する。実施の形態1と同一の構成要素については同一の符号を用いることで、その説明を省略する。
【0067】
図6は、実施の形態3に係る騒音低減処理動作を示すフローチャートである。実施の形態1と同一のステップ処理については同一の符号を用いることで、その説明を省略する。騒音低減装置10の信号処理部21,23は、ステップS1で騒音マイク30および誤差マイク40でそれぞれ収音された騒音信号を入力する。信号処理部21,23は、保持部22,24に保持された時間領域の基準信号の振幅(閾値の一例)を読み出し、この閾値と、収音された騒音信号とをそれぞれ比較する。比較の結果、信号処理部21,23は、収音された騒音信号の振幅が閾値より大きいか否かを判別する(S1A)。
【0068】
収音された騒音信号の振幅が閾値より大きい場合、適応フィルタ更新部12は、適応フィルタのフィルタ係数を、前回以前に更新された定常騒音時のフィルタ係数に設定する、または値0に初期化する(S1B)。適応フィルタ更新部12は、ステップS1Bで設定されたフィルタ係数を適応フィルタ畳込み部11に渡す。フィルタ係数を前回以前に更新された定常騒音時のフィルタ係数に設定することは、実施の形態1と同様である。また、フィルタ係数を値0に初期化することは、実施の形態2と同様である。ステップS1Bの処理後、実施の形態1と同様、騒音低減装置10は、ステップ8以降の処理を行う。
【0069】
一方、ステップS1Aで収音された騒音信号の振幅が閾値以下である場合、騒音低減装置10は、周波数領域で判定を行うために、実施の形態1と同様、ステップS2以降の処理を行う。ステップS4で周波数領域の騒音信号の振幅が周波数領域の基準信号の振幅より大きい場合、適応フィルタ更新部12は、非定常騒音が発せられたと判断する。この場合、適応フィルタ更新部12は、ステップS1Bと同様、フィルタ係数を、前回以前に更新された定常騒音時のフィルタ係数に設定する、または値0に初期化する(S7B)。ステップS7Bの処理後、実施の形態1と同様、騒音低減装置10は、ステップ8以降の処理を行う。
【0070】
以上により、実施の形態3に係る騒音低減装置10では、信号処理部21は、騒音マイク30により収音された騒音信号の時間領域の振幅が所定の閾値より大きい場合に、騒音マイク30により収音された騒音信号は非定常騒音であると判定する。
【0071】
これにより、騒音低減装置10は、航空機等の対象制御空間において突発的に大きな音(例えば異常音)が発生したかどうかを簡易に判定できるので、ユーザにとって気になる程の騒音レベルの非定常騒音が発生したことを簡易かつ迅速に判定できる。
【0072】
また、信号処理部21は、騒音マイク30により収音された騒音信号の時間領域の振幅と閾値とを比較し、騒音信号の時間領域の振幅が閾値以下であるとの比較結果を得た後、騒音信号の周波数領域の振幅と基準信号の周波数領域の振幅とを比較する。信号処理部21は、騒音信号の周波数領域の振幅が基準信号の周波数領域の振幅より大きい場合に、騒音信号は非定常騒音であると判定する。これにより、騒音低減装置10は、先に時間領域の処理を行って非定常騒音と判定された場合、負荷の大きい周波数領域の処理を省くことができ、信号処理部21の負荷を軽減できる。
【0073】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0074】
例えば、上記した各種の実施の形態では、騒音低減装置が航空機の機内の座席付近に設置される場合を示したが、これに限らず、電車、船舶、バスやタクシー等の車両を含む移動体の座席付近に設置されてもよい。
【0075】
なお、本出願は、2018年3月30日出願の日本特許出願(特願2018-069460)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、航空機等の制御空間において定常的に発生する定常騒音以外の非定常的に発生する非定常騒音を適応的に検知し、定常騒音の低減処理の精度劣化を効果的に抑制する騒音低減装置として有用である。
【符号の説明】
【0077】
5 騒音低減システム
10 騒音低減装置
11 適応フィルタ畳込み部
12 適応フィルタ更新部
13 適応フィルタ発散検知部
17 エコーキャンセル処理部
21、23 信号処理部
22、24 保持部
30 騒音マイク
40 誤差マイク
50 スピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6