(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/70 20060101AFI20221216BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20221216BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221216BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221216BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20221216BHJP
【FI】
H01M4/70 Z
H01M4/134
H01M4/66 A
H01M10/052
H01M10/0568
(21)【出願番号】P 2019076112
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2018105697
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮前 亮平
(72)【発明者】
【氏名】蚊野 聡
(72)【発明者】
【氏名】名倉 健祐
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-154788(JP,A)
【文献】実開平02-042366(JP,U)
【文献】特開2008-258137(JP,A)
【文献】特開2005-032642(JP,A)
【文献】特開2001-085016(JP,A)
【文献】特開2012-003970(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0062883(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/70
H01M 4/134
H01M 4/66
H01M 10/052
H01M 10/0568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを含有する正極活物質を含む正極と、
前記正極に対向し、かつ負極集電体を備える負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータと、
リチウムイオン伝導性を有する非水電解質と、を備え、
前記負極集電体は、
第1表面と、前記第1表面の反対側の第2表面と、を含む層と、
前記第1表面から突出する複数の第1凸部と、
前記第2表面から突出する複数の第2凸部と、を備え、
前記第1表面および前記第2表面には、充電時にリチウム金属が析出し、
前記第1表面の法線方向から見たとき、前記複数の第1凸部と前記複数の第2凸部とが重複する部分の面積の合計は、前記複数の第1凸部の面積の合計の1/2以下であ
り、
前記複数の第1凸部および前記複数の第2凸部は、絶縁性材料で構成されている、
リチウム二次電池。
【請求項2】
前記第1表面の前記法線方向から見たとき、
前記複数の第1凸部は、それぞれ、ライン形であり、前記ライン形の長手方向に沿って伸びる第1の辺および前記第1の辺の反対側の第2の辺を有し、
前記複数の第1凸部の少なくとも一つにおいて、前記第1の辺から前記第1の辺と前記第2の辺との間の長さの1/2まで前記第2の辺に向かって広がる領域は、前記複数の第2凸部の何れとも重複しない、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記第1表面の前記法線方向から見たとき、
前記複数の第1凸部は、それぞれ、ライン形であり、前記ライン形の長手方向に沿って伸びる第1の辺および前記第1の辺の反対側の第2の辺を有し、
前記複数の第1凸部の各々において、前記第1の辺から前記第1の辺と前記第2の辺との間の長さの1/2まで前記第2の辺に向かって広がる領域は、前記複数の第2凸部の何れにも重複しない、請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記第1表面の前記法線方向から見たとき、前記複数の第2凸部は、それぞれライン形である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記複数の第1凸部の材質は、前記層の材質と異なり、
前記複数の第2凸部の材質は、前記層の前記材質と異なる、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記絶縁性材料は樹脂材料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記第1表面の前記法線方向から見たとき、前記複数の第1凸部の少なくとも一つは前記複数の第2凸部の何れにも重複しない、請求項1から
6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記第1表面の前記法線方向から見たとき、前記複数の第1凸部の各々は前記複数の第2凸部の何れにも重複しない、請求項1から
7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記第1表面の前記法線方向から見たとき、
前記負極集電体は第1端部を含み、
前記複数の第1凸部の各々において、前記第1の辺は、前記第2の辺よりも前記第1端部に近く、
前記複数の第2凸部の各々は、ライン形であり、前記ライン形の長手方向に沿って伸びる第3の辺および前記第3の辺の反対側の第4の辺を有し、
前記複数の第2凸部の各々において、前記第3の辺は、前記第4の辺よりも前記第1端部に近く、
前記複数の第1凸部は、互いに隣接する第3凸部および第4凸部を含み、
前記複数の第2凸部は、前記第3凸部の前記第2の辺に最も近い前記第3の辺を有する第5凸部を含み、
前記第3凸部の前記第2の辺と前記第5凸部の前記第3の辺との間の離間距離である第1の距離は、前記第3凸部と前記第4凸部との間の離間距離である第2の距離の1/4以上である、請求項2または3に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記第1の距離は、前記第2の距離の1/2以上である、請求項
9に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記第1表面の前記法線方向から見たとき、
前記第3および第4凸部は、第1の方向に並び、
前記第2の距離は、前記第5凸部の前記第1の方向の幅と前記第1の距離との和よりも大きい、請求項
9または
10に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
前記負極集電体は、第2端部と前記第2端部の反対側の第3端部とを有し、
前記第1表面において、前記第2端部と前記第3端部とを結ぶ少なくとも1つの第1帯状領域が設けられており、
前記第1帯状領域には前記複数の第1凸部の何れもが存在せず、
前記第2表面において、前記第2端部と前記第3端部とを結ぶ少なくとも1つの第2帯状領域が設けられており、
前記第2帯状領域には前記複数の第2凸部が何れも存在しない、請求項1から
11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
前記複数の第1凸部の少なくとも1つおよび前記複数の第2凸部の少なくとも1つは、前記セパレータと接触する、請求項1から
12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
前記第1表面の前記法線方向から見たとき、前記第1表面の面積に占める前記複数の第1凸部の面積の合計の割合は0.2%以上、70%以下であり、
前記第2表面の法線方向から見たとき、前記第2表面の面積に占める複数の第2凸部の面積の合計の割合は0.2%以上、70%以下である、請求項1から
13のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項15】
前記複数の第1凸部の前記第1表面からの平均高さは、15μm以上、120μm以下であり、
前記複数の第2凸部の前記第2表面からの平均高さは、15μm以上、120μm以下である、請求項1から
14のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項16】
前記非水電解質は、リチウムイオンとアニオンとを含み、
前記アニオンは、PF
6
-、イミド類のアニオン、およびオキサレート錯体のアニオンよりなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1から
15のいずれか一項に記
載のリチウム二次電池。
【請求項17】
リチウムを含有する正極活物質を含む正極と、
前記正極に対向し、かつ負極集電体を備える負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータと、
リチウムイオン伝導性を有する非水電解質と、を備え、
前記負極集電体は、第1表面と前記第1表面の反対側の第2表面とを含む層と、前記第1表面から突出する複数の第1凸部と、前記第2表面から突出する複数の第2凸部と、を備え、
前記第1表面および前記第2表面には、充電時にリチウム金属が析出し、
前記第1表面の法線方向から見たとき、前記複数の第1凸部は、それぞれ、ライン形であり、前記ライン形の長手方向に沿って伸びる第1の辺および前記第1の辺の反対側の第2の辺を有し、
前記第1表面の法線方向から見たとき、前記複数の第1凸部の少なくとも一つにおいて、前記第1の辺から前記第1の辺と前記第2の辺との間の長さの1/2まで前記第2の辺に向かって広がる領域は、前記複数の第2凸部の何れとも重複
せず、
前記複数の第1凸部および前記複数の第2凸部は、絶縁性材料で構成されている、
リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン伝導性の非水電解質を備えたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、パソコンおよびスマートフォン等のICT用、車載用、ならびに蓄電用等の用途に用いられている。このような用途において、非水電解質二次電池には、さらなる高容量化が求められる。高容量の非水電解質二次電池としては、リチウムイオン電池が知られている。リチウムイオン電池の高容量化は、負極活物質として、例えば、黒鉛とケイ素化合物等の合金活物質とを併用することにより達成され得る。しかし、リチウムイオン電池の高容量化は限界に達しつつある。
【0003】
リチウムイオン電池を超える高容量の非水電解質二次電池としては、リチウム二次電池(リチウム金属二次電池)が有望である。リチウム二次電池では、充電時に、負極にリチウム金属が析出し、このリチウム金属が放電時に非水電解質中に溶解する。
【0004】
リチウム二次電池では、リチウム金属がデンドライト状に析出することによる電池特性の低下を抑制する観点から、負極集電体の形状等を改良することが検討されている。例えば、特許文献1では、負極集電体のリチウム金属析出面の十点平均粗さRzを10μm以下にすることが提案されている。特許文献2では、多孔性金属集電体と、集電体の気孔に挿入されたリチウム金属とを備える負極を、リチウム二次電池に用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-243957号公報
【文献】特表2016-527680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の実施形態は、充電時にリチウム金属が負極上に析出することにより生じる、電極の膨張を抑制することのできるリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係るリチウム二次電池は、リチウムを含有する正極活物質を含む正極と、前記正極に対向し、かつ負極集電体を備える負極と、前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質と、を備える。前記負極集電体は、第1表面と前記第1表面の反対側の第2表面とを含む層と、前記第1表面から突出する複数の第1凸部と、前記第2表面から突出する複数の第2凸部と、を備える。前記第1表面および前記第2表面には、充電時にリチウム金属が析出する。前記第1表面の法線方向から見たとき、前記複数の第1凸部と前記複数の第2凸部とが重複する部分の面積の合計は、前記複数の第1凸部の面積の合計の1/2以下である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の実施形態によれば、充電時にリチウム金属が負極上に析出することにより生じる、電極の膨張が抑制される。よって、本開示のリチウム二次電池は、放電容量および安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本開示の一実施形態にかかる負極集電体の一部を模式的に示す断面図である。
【
図2】本開示の他の実施形態にかかる負極集電体の一部を模式的に示す断面図である。
【
図3】本開示のさらに他の実施形態にかかる負極集電体の一部を模式的に示す上面図である。
【
図4】本開示のさらに他の実施形態にかかる負極集電体を模式的に示す上面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るリチウム二次電池を模式的に示す縦断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態にかかる正極の構成を模式的に示す断面図である。
【
図7】本開示の一実施形態にかかる負極の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
本開示の実施形態は、リチウム金属を負極活物質として用いるリチウム二次電池に関する。より詳細には、本開示の実施形態は、負極集電体の改良に関する。なお、リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池と呼ばれることがある。
【0011】
リチウム二次電池では、充電時、負極にリチウム金属がデンドライト状に析出する場合がある。さらには、デンドライトの生成に伴って負極の比表面積が増大して、副反応が増加する場合がある。そのため、放電容量およびサイクル特性が低下し易い。これに関して、特許文献1には、負極のリチウム金属析出面の十点平均粗さRzを10μm以下にすることにより、デンドライトの生成が抑制され、高い充放電効率が得られることが教示されている。
【0012】
また、リチウム二次電池は、充電時、負極にリチウム金属が析出するため、特に負極の膨張量が大きくなり易い電池である。ここで、「負極の膨張」とは、負極の体積と析出したリチウム金属の体積との合計の体積が増えることである。特に、リチウム金属がデンドライト状に析出する場合、膨張量はさらに大きくなる。充放電時の負極の膨張を吸収するために、特許文献2は、例えば、気孔度が50%~99%、気孔の大きさが5μm~500μmである銅またはニッケルの多孔性負極集電体を用いることを提案している。しかし、負極の体積変化を十分抑えることは困難である。
【0013】
上記の課題を解決するために発明者らが鋭意検討した結果、本開示に係るリチウム二次電池に想到した。本開示の一局面に係るリチウム二次電池は、リチウムを含有する正極活物質を含む正極と、正極に対向し、かつ負極集電体を備える負極と、正極と負極との間に配置されるセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質と、を備える。負極集電体は、第1表面と、第1表面から突出する複数の第1凸部と、第1表面の反対側の第2表面と、第2表面から突出する複数の第2凸部と、を備える。第1凸部および第2凸部は、それぞれライン形である。第1凸部は、その長手方向に沿い、かつ、負極集電体の第1端部側に配される第1側面および当該第1側面の反対側の第2側面を有する。第1表面および第2表面には、充電時にリチウム金属が析出する。第1表面をその法線方向から見たとき、少なくとも第1側面から第1側面と第2側面との間の長さの1/2まで第2側面に向かって広がる領域は、第2凸部と重複しない。
【0014】
本開示の上記局面によれば、負極集電体の両方の表面からそれぞれ突出するライン形の凸部により、当該表面の近傍にリチウム金属が析出する空間を確保することができる。よって、リチウム金属の析出に伴う負極の体積変化を低減できる。また、リチウム金属がデンドライト状に生成しても、上記表面の近傍の空間に収容することができる。 なお、本開示において、電極が巻回型の場合、「表面の法線方向から見たとき」とは、当該表面を平面状に伸ばした状態で法線方向から見たとき、を意味する。よって、「凸部と凸部とが重複する」とは、巻回によって凸部と凸部とが重複する場合を含まない。また、「凸部と凸部とが最も近い」とは、巻回によって凸部と凸部とが最も近くなる場合を含まない。
【0015】
さらに、本開示では、一方の表面から突出する凸部の少なくとも一部の領域が、他方の表面から突出する凸部に重複しないように、凸部を配置する。具体的には、第1表面をその法線方向から見たとき、負極集電体の第1表面から突出する第1凸部の第1側面から第1側面と第2側面との間の長さ(以下、第1幅と称す。)の1/2まで、第2側面に向かって広がる領域が、第2凸部に重複しないように、第1凸部および第2凸部を配置する。第1凸部の第1側面は、第1凸部の長手方向に沿い、かつ、負極集電体の第1端部側に配される側面である。
【0016】
リチウム金属は、凸部の表面、および凸部とセパレータとの間の領域にも析出し得る。そのため、リチウム金属の析出によって、凸部における負極の厚みは、他の部分よりも局所的に大きくなり易い。
【0017】
リチウム金属は、特に、凸部の側面の周縁、およびセパレータに対向する凸部の非接触面の周縁に析出し易い。第1表面の法線方向から見た場合、第1凸部の少なくとも一部の領域(以下、第1凸部領域と称す。)が第2凸部に重複しないように第1凸部および第2凸部を配置することにより、負極集電体のそれぞれの表面において、リチウム金属の析出によって厚くなる位置がずれる。よって、負極の局所的な膨張が抑制されて、結果的に負極全体の膨張が抑制される。
【0018】
第1凸部の少なくとも一部と第2凸部とが重複しないように配置されているため、負極を挟んで対向する2つのセパレータの間の距離も一様になり易い。これにより、リチウム金属は、セパレータによって均等に押圧されながら析出する。よって、リチウム金属が部分的に多く析出することが抑制されて、負極の局所的な膨張はさらに抑制される。加えて、析出したリチウム金属もセパレータから均等に押圧され易くなるため、リチウム金属と負極集電体との間の導電性が高まって、充放電効率が向上する。
【0019】
リチウム二次電池が、正極とセパレータと負極との組み合わせを複数、積層して得られる積層型、または正極とセパレータと負極とを渦巻状に巻いた巻回型の電極を備える場合、本開示は、特に有用である。積層型および巻回型の電極において、リチウム金属は、負極集電体の両方の表面に析出する。そのため、複数の凸部が、負極集電体の両方の表面であって、かつ、互いにずれた位置から突出していると、リチウム金属の析出による負極の局所的な膨張を効果的に抑制することができる。
【0020】
ライン形の凸部は、第1表面の法線方向から見た場合に、凸部を囲む最少の矩形を想定したとき、当該矩形の長辺の長さLLと短辺の長さSLとの比LL/SLが2以上の形状を有する。
【0021】
凸部の側面は、セパレータに対向せず、かつ、負極集電体に接触していない面である。第1幅は、第1側面と第2側面との間の長さである。具体的には、第1幅は、第1凸部をその長手方向に垂直な方向に切断した切断面における、第1凸部の負極集電体に接触している面(接触面)の長さである。同様に、第1凸部領域は、第1凸部を長手方向に垂直な方向に切断する任意の切断面における上記接触面を基準にして、決定することができる。
【0022】
凸部の長手方向は、第1表面の法線方向から見た場合に、凸部を囲む最少の矩形を想定したとき、一方の短辺の中心と他方の短辺の中心とをつなぐ直線の方向である。凸部の長手方向に沿う側面とは、負極集電体の表面の法線方向からみたとき、凸部の長手方向との成す鋭角側の角度が30°以下の側面である。
【0023】
リチウム金属は、凸部の側面および非接触面の周縁に析出するとともに、凸部の側面および非接触面からはみ出して、凸部の側面を囲む領域にも析出し得る。そのため、膨張抑制の観点から、第1表面の法線方向から見た場合に、第1凸部と第2凸部とが離間するように第1凸部および第2凸部を配置してもよい。
【0024】
具体的には、第2凸部が、長手方向に沿い、かつ、負極集電体の第1端部側に配される第3側面および当該第3側面の反対側の第4側面を有してもよい。この場合、第1表面の法線方向から見たときに、第1凸部の第2側面と当該第1凸部に最も近い第2凸部の第3側面との間の離間距離は、隣接する2つの第1凸部の間の離間距離P1の1/4以上であってもよく、1/2以上であってもよい。
【0025】
離間距離P1は、第2凸部の第3側面と第4側面との間の長さ(以下、第2幅と称す。)と、第1凸部の第2側面と第2凸部の第3側面との間の離間距離との和よりも大きくてもよい。この場合、第1表面の法線方向から見たときに、1つの第2凸部は隣接する2つの第1凸部の間に収まるため、負極の局所的な膨張がさらに抑制され易くなる。離間距離P1は、第2幅の3倍以上であってもよく、5倍以上であってもよく、10倍以上であってもよい。同様の観点から、隣接する2つの第2凸部の間の離間距離P2は、第1幅の3倍以上であってもよく、5倍以上であってもよく、10倍以上であってもよい。
【0026】
第2幅は、第3側面と第4側面との間の長さである。具体的には、第2幅は、第2凸部の長手方向に垂直な方向に切断した切断面における、第2凸部の負極集電体に接触している面(すなわち接触面)の長さである。同様に、第2側面と第3側面との間の離間距離および離間距離P1、P2は、第2凸部を長手方向に垂直な方向に切断する任意の切断面における上記接触面を基準にして、それぞれ決定することができる。
【0027】
[実施形態1]
図1Aは、本開示の一実施形態にかかる負極集電体を模式的に示す断面図である。
図1Bは、第1表面側から見た
図1Aで示す凸部を、模式的に示す上面図である。ただし、
図1Bにおいて、導電性シート342は省略されている。また、第1凸部領域R1にハッチングを付している。
【0028】
負極集電体34の第1表面S1から第1凸部3411が突出しており、第2表面S2から第2凸部3412が突出している。第1凸部3411と第2凸部3412とは互いに平行であり、いずれも同じ長手方向Aを有する。第1凸部3411は、第1側面T1と、第1側面T1の反対側の第2側面T2とを備える。第1側面T1および第2側面T2は、長手方向Aに沿って延びる第1凸部3411の側面である。第2凸部3412は、第3側面T3と、第3側面T3の反対側の第4側面T4とを備える。第3側面T3および第4側面T4は、長手方向Aに沿って延びる第2凸部3412の側面である。第1凸部3411の第1側面T1および第2凸部3412の第3側面T3は、いずれも負極集電体34の第1端部(図示せず)側にある。
【0029】
第1凸部3411の長手方向Aの長さL1は、第1凸部3411の第1幅W1に対して十分大きい。例えば、L1/W1≧5である。第2凸部3412の長手方向Aの長さL2は、第2凸部3412の第2幅W2に対して十分大きい。例えば、L2/W2≧5である。
【0030】
第1表面S1をその法線方向から見たとき、第1凸部3411は、第2凸部3412に重複しない第1凸部領域R1を備える。第1凸部3411の第1側面T1と第2凸部3412の第3側面T3との離間距離(以下、ズレ量G1と称す。)は、第1幅W1の1/2である。ズレ量G1は第1幅W1の1/2以上である。ズレ量G1は、第1幅W1と第2幅W2とが同じである場合、第1凸部3411の第1幅W1を2等分する中心線と第2凸部3412の第2幅W2を2等分する中心線との離間距離である。言い換えれば、ズレ量G1は、第1幅W1と第2幅W2とが同じである場合、上記離間距離から求めることができる。
【0031】
図示例において、第1凸部3411と第2凸部3412とは同じ形状として示されているが、これに限定されるものではない。第1凸部3411および第2凸部3412の形状は、同じでもよいし異なっていてもよい。
【0032】
本実施形態の負極集電体は、第1凸部3411を含む複数の第1凸部と、第2凸部3412を含む複数の第2凸部とを備えていてもよい。例えば、本実施形態の負極集電体は、第1表面と第1表面の反対側の第2表面とを含む導電性シート(層の一例)342と、第1表面から突出する複数の第1凸部と、第2表面から突出する複数の第2凸部と、を備える。第1表面および第2表面には、充電時にリチウム金属が析出する。第1表面の法線方向から見たとき、複数の第1凸部と複数の第2凸部とが重複する部分の面積の合計(
図1BのR1参照)は、複数の第1凸部の面積の合計の1/2以下であってもよい。すなわち、複数の第1凸部のうち、複数の第2凸部の何れにも重複しない部分の面積は、複数の第1凸部の面積の合計の1/2以上であってもよい。
【0033】
第1表面の法線方向から見たとき、複数の第1凸部は、それぞれ、ライン形であり、当該ライン形の長手方向に沿って伸びる第1の辺および第1の辺の反対側の第2の辺を有していてもよい(
図1BのT1およびT2参照)。複数の第1凸部の少なくとも一つにおいて、第1の辺から第1の辺と第2の辺との間の長さの1/2まで第2の辺に向かって広がる領域は、複数の第2凸部の何れにも重複しなくてもよい(
図1BのR1参照)。複数の第1凸部の各々において、第1の辺から第1の辺と第2の辺との間の長さの1/2まで第2の辺に向かって広がる領域は、複数の第2凸部の何れにも重複しなくてもよい。第1表面の法線方向から見たとき、複数の第2凸部は、それぞれライン形であってもよい。
【0034】
複数の第1凸部の材質は、導電性シート342の材質と異なっていてもよい。複数の第2凸部の材質は、導電性シート342の材質と異なっていてもよい。複数の第1凸部および複数の第2凸部は、樹脂材料で構成されていてもよい。導電性シート342、複数の第1凸部および複数の第2凸部は、同じ材料で、一体に構成されていてもよい。
【0035】
[実施形態2]
図2は、本開示の他の実施形態にかかる負極を模式的に示す断面図である。本実施形態では、第1表面S1をその法線方向から見たとき、第1凸部3411と第2凸部3412とは離間しており、第1凸部3411は第2凸部3412に重複していない。このこと以外、実施形態1と同様の構成を有する。
【0036】
本実施形態の負極集電体が、隣接する2つの第1凸部3411を含む複数の第1凸部と、隣接する2つの第2凸部3412を含む複数の第2凸部とを備えていてもよい。この場合、第1表面の法線方向から見たとき、複数の第1凸部の少なくとも一つは複数の第2凸部の何れにも重複しなくてもよい。また、第1表面の法線方向から見たとき、複数の第1凸部の各々は複数の第2凸部の何れにも重複しなくてもよい。
【0037】
第1表面の法線方向から見たとき、第1凸部3411の第2側面T2と、当該第1凸部3411の第2側面に最も近い第3側面T3を有する第2凸部3412の当該第3側面T3との間の距離(以下、ズレ量G2と称す。)は、隣接する2つの第1凸部3411の間の離間距離P1の1/4以上であってもよく、離間距離P1の1/2以上であってもよい。離間距離P1は、第2凸部3412の第2幅W2とズレ量G2との和よりも大きくてもよい。
【0038】
換言すれば、第1表面の法線方向から見たとき、第1凸部3411(第3凸部の一例)の第2の辺と、当該第2の辺に最も近い第3の辺を有する第2凸部3412(第5凸部の一例)の当該第3の辺との間の離間距離は、互いに隣接する2つの第1凸部3411(第3凸部および第4凸部の一例)の離間距離P1の1/4以上であってもよく、1/2以上であってもよい。ここで、負極集電体は第1端部を含んでもよい。また、複数の第1凸部の各々において、第1の辺は、第2の辺よりも第1端部に近くてもよい。複数の第2凸部の各々は、ライン形であり、ライン形の長手方向に沿って伸びる第3の辺および第3の辺の反対側の第4の辺を有してもよい。複数の第2凸部の各々において、第3の辺は、第4の辺よりも第1端部に近くてもよい。
【0039】
また、第1表面の法線方向から見たとき、互いに隣接する2つの第1凸部3411は、第1の方向に並び、離間距離P1は、第2の辺と第3の辺との離間距離と第2凸部3412の第1の方向の幅との和よりも大きくてもよい。
【0040】
図示例において、第1凸部3411と第2凸部3412とは、同じ形状として示されているが、これに限定されるものではない。第1凸部3411および第2凸部3412の形状は、同じでもよいし異なっていてもよい。
【0041】
以下に、上記局面に係るリチウム二次電池の構成について、より具体的に説明する。
【0042】
(負極)
負極は、負極集電体を備える。この負極集電体として、上述した実施形態1または2の負極集電体を用いてもよい。負極集電体は、第1表面と、第1表面から突出する第1凸部と、第1表面とは反対側の第2表面と、第2表面から突出する第2凸部と、を備えている。リチウム二次電池では、第1表面および第2表面に、充電によりリチウム金属が析出する。より具体的には、非水電解質に含まれるリチウムイオンが、充電により、負極集電体上で電子を受け取ってリチウム金属になり、負極集電体の表面に析出する。負極集電体の表面に析出したリチウム金属は、放電により非水電解質中にリチウムイオンとして溶解する。なお、非水電解質に含まれるリチウムイオンは、非水電解質に添加したリチウム塩に由来するものであってもよく、充電により正極活物質から供給されるものであってもよく、これらの双方であってもよい。
【0043】
負極集電体は、第1表面および第2表面に凸部を有する。さらに、第1表面の法線方向から見たとき、第1凸部の少なくとも一部が第2凸部に重複しないように、第1凸部および第2凸部を第1表面および第2表面にそれぞれ配置する。これにより、負極集電体のそれぞれの表面において、リチウム金属の析出によって厚くなる部分がずれる。よって、負極の局所的な膨張も抑制されて、結果的に負極全体の膨張が抑制される。
【0044】
負極集電体の第1表面に2つ以上の第1凸部があってもよい。また、負極集電体の第2表面に2つ以上の第2凸部があってもよい。ただし、第1凸部の少なくとも一部が第2凸部に重複しないように第1凸部および第2凸部を第1表面および第2表面にそれぞれ配置するとの条件は、複数の第1凸部すべておよび複数の第2凸部のすべてについて満たされることまでは要せず、少なくとも1つの第1凸部あるいは少なくとも1つの第2凸部がこの条件を満たせばよい。負極の膨張抑制効果をさらに高める観点から、例えば、第1表面または第2表面の法線方向から見たときの複数の第1凸部または複数の第2凸部の合計面積の80%以上が上記の条件を満たしてもよく、複数の凸部の全てが上記の条件を満たしてもよい。
【0045】
凸部の面積は、電極群を作製する前の負極集電体から求めてもよい。電極群から取り出した負極集電体を用いて凸部の面積を求める場合には、所定の領域について部分的に算出し、算出した値に基づいて求められる面積の割合を上記の割合としてもよい。
【0046】
以下、断りがない限り、凸部とは、第1凸部および第2凸部の少なくとも一方である。凸部は、負極集電体の一方の表面から、この表面と対向するセパレータの表面に向かって突出している。複数の凸部が配置されている場合、複数の凸部のうち、少なくとも一部は、セパレータと接触していてもよい。凸部の存在により、負極集電体とセパレータとの間に空間が確保される。この空間に、充電によりリチウム金属が析出することになる。つまり、リチウム金属が、凸部とセパレータとの間に析出することが抑制され易くなって、負極の局所的な膨張がさらに抑制され易くなる。
【0047】
負極の膨張抑制効果をさらに高める観点から、例えば、第1表面または第2表面の法線方向から見たときの第1凸部または第2凸部の面積(複数の第1凸部または複数の第2凸部がある場合は、第1表面または第2表面の法線方向から見たときの複数の第1凸部または複数の第2凸部の合計面積)の80%以上がセパレータに接触してもよく、複数の凸部の全てがセパレータに接触してもよい。
【0048】
以下、第1表面または第2表面の法線方向から見たときの第1凸部または第2凸部の面積(複数の第1凸部または複数の第2凸部がある場合は、第1表面または第2表面の法線方向から見たときの複数の第1凸部または複数の第2凸部の合計面積)を「凸部の面積」と呼ぶ場合がある。
【0049】
各凸部の形状は、ライン形である。凸部によってセパレータが支持され易くなり、また、非水電解質の第1表面上での偏りが抑制され易い。
【0050】
ライン形の凸部の長手方向は、負極集電体の長手方向に沿っていてもよい。この場合、負極集電体の第1端部は、負極集電体の長手方向に延びる端部である。凸部の長手方向が負極集電体の長手方向に沿うとは、凸部の長手方向と負極集電体の長手方向とが成す鋭角側の角度が30°以下であることをいう。
【0051】
ライン形の凸部は、負極集電体の何れかの外縁と反対側の外縁とを繋ぐ形状(以下、縞状凸部と称する場合がある)であり得るし、負極集電体の何れかの外縁と反対側の外縁とを繋がない形状(以下、短冊型凸部と称する場合がある。)であり得る。ライン形は、直線であってもよいし、曲線であってもよいし、直線と曲線との組み合わせであってもよい。凸部は、負極集電体の表面の全体または一部の領域を包囲するような枠状でなくてよい。
【0052】
負極集電体は、さらにスポット形の凸部を備えてもよい。スポット形とは、凸部を囲む最少の矩形を想定したとき、当該矩形の長辺の長さLLと短辺の長さSLとの比LL/SLが2未満、または当該矩形が正方形である形状をいう。具体的な形状は特に限定されず、例えば円形、楕円形、多角形等が挙げられる。
【0053】
第1表面または第2表面に配置された複数のライン形の凸部は、互いに略平行に並んでいてもよい。これにより、セパレータが支持され易くなって、隣接する2つの凸部間に適度な容積の空間を確保し易い。複数のライン形の凸部が略平行に並んでいるとは、複数の凸部の長手方向が互いに平行であるか、複数の凸部の長手方向が成す鋭角側の角度が、30°以下であることを言う。
【0054】
第1表面または第2表面に配置された複数のライン形の凸部は、交差する方向に配置されてもよい。複数のライン形の凸部が交差する方向に配置されるとは、複数の凸部の長手方向が成す鋭角側の角度が、30°より大きいことを言う。複数の第1凸部が、ライン形の第1a凸部とライン形の第1b凸部とを備える場合、第1a凸部と第1b凸部とは、第1表面上で交差してもよい。第1a凸部をその長手方向に延長して得られる仮想の第1va凸部と、第1b凸部をその長手方向に延長して得られる仮想の第1vb凸部とが、第1表面上で交差してもよい。仮想の第1va凸部と仮想の第1vb凸部とは、第1表面以外で交差してもよい。第1a凸部と仮想の第1vb凸部とが、第1表面上で交差してもよい。
【0055】
図3は、本開示のさらに他の実施形態にかかる負極集電体の一部を模式的に示す上面図である。なお、本実施形態の負極集電体として、上述した何れかの負極集電体を用いてもよい。図示例において、第1凸部3411Aおよび第1凸部3411Bは、いずれも短冊型であり、互いに交差する方向に配置されている。第1凸部3411Aの長手方向Aと第1凸部3411Bの長手方向Bとの成す角度は、90°である。
【0056】
図3において、第1凸部3411Aを長手方向Aに延長して得られる仮想の第1va凸部(図示せず)と第1凸部3411Bは、第1表面S1上で交差する。あるいは、第1凸部3411Aと第1凸部3411Bを長手方向Bに延長して得られる仮想の第1vb凸部(図示せず)とは、第1表面S1上で交差する。第2表面上の複数の第2凸部(図示せず)も上記複数の第1凸部と同様に配置される。第2表面上の複数の第2凸部は、複数の第1凸部3411Aに平行な複数の第2凸部と、複数の第1凸部3411Bに平行な複数の第2凸部と、を含んでいてもよい。これらの第2凸部の各々は、対応する第1凸部に対して、長手方向Aにずれて配置されてもよいし、長手方向Bにずれて配置されてもよいし、長手方向Aおよび長手方向Bの双方にずれて配置されてもよい。
【0057】
この場合、平行に配置されている隣接する2つの第1凸部3411Aの間の距離と、平行に配置されている隣接する2つの第1凸部3411Bの間の距離との平均値を離間距離P1として用いてもよい。離間距離P2も同様に求められる。
【0058】
第1表面において、負極集電体の第2端部と第2端部の反対側の第3端部とを結ぶ少なくとも1つの帯状の領域(以下、第1帯状領域と称する)は、凸部を備えなくてもよい。凸部を備えない第1帯状領域を設けることで、非水電解質は、第1表面上を偏り無く動くことができる。電極群が巻回型である場合、第1帯状領域を通って非水電解質が電極群の内部まで浸透し易くなる。これにより、電極群全体で充放電反応を行うことができるため、高い容量を確保し易くなる。特に、負極集電体が2つの長辺と2つの短辺とを有する矩形である場合、第1帯状領域は、2つの短辺を結ぶ第2の方向に沿って、設けられてもよい。第2の方向は、負極集電体の長手方向に沿う方向であってもよい。第1帯状領域は、1つあるいは2つ以上、設けられてもよい。
【0059】
第1表面上において、負極集電体の第1の端部における任意の点から、負極集電体の第2の端部における任意の点までをつなぐ仮想の線(すなわち、直線、曲線、あるいは直線および曲線の組み合わせ)を引く際に、凸部上を通過しない線が引ける場合、第1帯状領域が設けられていると言える。非水電解質が移動し易くなる点で、第1帯状領域はある程度の幅(すなわち、第2の方向に交わる方向の長さ)を有していてもよい。
【0060】
第2の方向は、負極集電体の第2端部における任意の点と、第3端部における任意の点と、をつなぐ直線の方向である。第2の方向が負極集電体の長手方向に沿うとは、第2の方向と負極集電体の長手方向とが成す鋭角側の角度が30°以下であることをいう。
【0061】
図4は、本開示のさらに他の実施形態にかかる負極集電体を模式的に示す上面図である。なお、本実施形態の負極集電体として、上述した何れかの負極集電体を用いてもよい。
図4に示すように、負極集電体34が、第2端部E2とこれの反対側の第3端部E3とを備える場合、帯状領域は、第2端部E2と第3端部E3とを結ぶ第2の方向に沿って形成されてもよい。つまり、負極集電体34の表面には、第2の方向に沿って延在する帯状領域342aが設けられてもよい。凸部が縞状であると、帯状領域342aは形成され易い。
図4に示される負極集電体34の表面は、第1表面S1であり得るし、第2表面S2であり得る。
図4に示される負極集電体34の表面が第1表面の場合には、複数の凸部341は複数の第1凸部であり、第2表面の場合には、複数の凸部341は複数の第2凸部である。
【0062】
負極集電体は、必要に応じて、凸部を備えない帯状以外の領域が設けられてもよい。この領域には、例えば、負極と電気的に接続する負極リードが、溶接等により接続される。
図4に示すように、複数の第1凸部は、平行に並んでいてもよい。また、複数の第1凸部は、等間隔に並んでいてもよい。また、複数の第2凸部は、平行に並んでいてもよい。また、複数の第2凸部は、等間隔に並んでいてもよい。また、複数の第1凸部は、複数の第2凸部と平行に並んでいてもよい。また、隣接する2つの第1凸部の離間距離は、隣接する2つの第2凸部の離間距離と同じであってもよい。
【0063】
第1表面または第2表面の面積に占める凸部の面積の割合は、0.2%以上、70%以下であってもよい。上記割合は、1%以上であってもよく、3%以上であってもよい。上記割合がこのような範囲である場合、凸部によりセパレータが支持され易くなり、当該表面と、セパレータとの間隔が一定になり易い。よって、負極の膨張を抑制する効果を高めることができる。上記割合は、50%以下であってもよい。上記割合がこのような範囲である場合、当該表面とセパレータとの間に空間が確保され易くなるため、リチウム金属の析出に伴う負極の膨張を抑制しながらも、より高い放電容量を確保することができる。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。負極集電体の第1表面または第2表面の面積は、電極群を作製する前の負極集電体から求めることができる。
【0064】
各凸部の大きさは特に限定されない。例えば、第1表面の法線方向から見たときの第1表面の面積に占める第1凸部の面積(複数の第1凸部がある場合は、第1表面の法線方向から見たときの複数の第1凸部の合計面積)の割合が0.2%以上、70%以下になるように、第1凸部の大きさを決定してもよい。また、第2表面の法線方向から見たときの第2表面の面積に占める第2凸部の面積(複数の第2凸部がある場合は、第2表面の法線方向から見たときの複数の第2凸部の合計面積)の割合が0.2%以上、70%以下になるように、第2凸部の大きさを決定してもよい。
【0065】
なお、上記割合の算出において、正極活物質と対向しない負極集電体の表面の領域は考慮しなくてもよい。すなわち、第1表面および第2表面は、正極活物質と対向しない負極集電体の表面の領域を含まない。よって、第1表面の面積、第2表面の面積、および凸部の面積は、正極活物質と対向しない領域の面積を含まない。
【0066】
例えば、巻回式電極群において、巻回の最外周では、負極集電体の外向きの領域が正極活物質と対向しない場合がある。この場合、正極活物質と対向しない外向きの領域は、リチウム金属が析出し難いため、第1表面または第2表面の面積、および凸部の面積の算出の際に考慮しないものとする。また、巻回の最内周では、負極集電体の内向き領域が正極活物質と対向しない場合がある。この場合、正極活物質と対向しない内向きの領域は、リチウム金属が析出し難いため、第2表面または第1表面の面積、および凸部の面積の算出の際に考慮しないものとする。また、負極集電体の捲回軸に平行な方向の幅が、正極集電体の幅よりも広い場合、電極群の上端部および/または下端部(すなわち、捲回軸に平行な方向の一端の部分および/または他端の部分)において、捲回軸に垂直な長手方向に伸びる帯状の負極集電体の領域が、正極活物質と対向しない。この場合、この帯状の領域は、上記面積の算出において考慮しない。
【0067】
複数の第1凸部の第1表面からの平均高さ(以下、第1平均高さと呼ぶ)及び複数の第2凸部の第2表面からの平均高さ(以下、第2平均高さと呼ぶ)は、リチウム金属の析出量に応じて決定することができる。第1平均高さ及び第2平均高さは、それぞれ、15μm以上、120μm以下であってもよい。第1平均高さ及び第2平均高さは、それぞれ、20μmであってもよく、30μm以上であってもよい。また、第1平均高さ及び第2平均高さは、それぞれ、40μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。第1平均高さ及び第2平均高さがこれらの範囲である場合、リチウム金属の析出に伴う負極の体積変化を吸収する効果をより高めることができる。電極を保護する効果を高めることもできる。第1平均高さ及び第2平均高さは、それぞれ、110μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、90μm以下であってもよい。第1平均高さ及び第2平均高さがこれらの範囲である場合、負極集電体の表面に析出したリチウム金属が、セパレータにより適度に押圧され、リチウム金属と負極集電体との間の導電性が高まるため、充放電効率を高めることができる。また、セパレータによる複数の凸部への過度な押圧が抑制され、電極を保護することができる。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0068】
第1平均高さは、例えば、負極集電体の厚さ方向の断面写真において、3個の第1凸部を任意に選択し、第1表面からの各凸部の先端までの距離を凸部の高さとして計測し、これらの第1凸部の高さを平均化することにより求めることができる。また、第1平均高さは、第1表面における一定の面積(例えば5cm2など)または任意の複数の領域を切り出して、一定の面積または複数の領域内に存在する任意の複数の第1凸部の高さを平均化することで求めてもよい。この場合、一定の面積または任意の複数の領域において複数の断面写真を取得し、これらの断面写真から第1表面からの各第1凸部の先端迄の距離を第1凸部の高さとして計測し、それらの第1凸部の高さを平均化することで求めてもよい。計測対象の複数の第1凸部は、第1表面の全面内に亘って配置されていてもよく、極一部分のみに配置されていてもよい。
【0069】
第1凸部の先端が平坦でない場合には、第1表面からの最大高さを第1凸部の高さとする。負極集電体の厚さ方向の断面を観察できる電極群の断面写真に基づいて、高さを求めてもよい。第2平均高さについても、同様にして求めることができる。
【0070】
第1表面がラフな場合、第1表面の表面粗さRzは、1μm以下であってもよい。同様に、第2表面がラフな場合、第2表面の表面粗さRzは、1μm以下であってもよい。また、各第1凸部の高さは、1μmを超えてもよく、各第2凸部の高さは、1μmを超えてもよい。電極が巻回型の場合、第1凸部および第2凸部の高さは、電極群の巻回を解き、第1表面および第2表面を平面状に伸ばした状態で測定する。第1表面がラフな場合は、ラフのトップを基準として第1凸部の高さを測定する。同様に、第2表面がラフな場合は、ラフのトップを基準として第2凸部の高さを測定する。
【0071】
負極集電体は、導電性シート(層の一例)と凸部とを備える。導電性シートとしては、箔、フィルム等が利用される。
【0072】
導電性シートの表面は平滑であってもよい。これにより、充電の際、正極由来のリチウム金属が、導電性シート上に均等に析出し易くなる。平滑とは、導電性シートの最大高さ粗さRzが20μm以下であることをいう。導電性シートの最大高さ粗さRzは10μm以下であってもよい。最大高さ粗さRzは、JIS B 0601:2013に準じて測定される。
【0073】
導電性シートは、例えば、リチウム金属およびリチウム合金以外の導電性材料である。導電性材料は、金属、および合金等の金属材料であってもよい。導電性材料は、リチウムと反応しない材料であってもよい。このような材料には、リチウム金属および/またはリチウムイオンと反応しない材料が含まれ、より具体的には、リチウムと合金および金属間化合物のいずれも形成しない材料であってもよい。このような導電性材料は、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、およびこれらの金属元素を含む合金、あるいは、ベーサル面が優先的に露出している黒鉛が挙げられる。合金としては、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等でもよい。高い導電性を有することで、高容量および高い充放電効率を確保し易い観点から、導電性材料は、銅および/または銅合金であってもよい。導電性シートは、これらの導電性材料を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
【0074】
導電性シートの厚みは、特に制限されず、例えば、5μm以上、300μm以下である。
【0075】
凸部を構成する材料としては、特に制限されない。凸部の材質は、負導電性シートの材質と異なっていてもよい。あるいは、凸部および導電性シートは、同じ材料で一体に構成されていてもよい。凸部は、導電性材料、および/または絶縁性材料で構成されてもよい。導電性材料としては、導電性シートについて例示したものから適宜選択できる。このような凸部を有する負極集電体は、例えば、プレス加工などにより導電性シートの表面に凸部を形成することにより得ることができる。また、導電性シートの表面に導電性材料の塗料を塗布したり、もしくは導電性材料のテープを貼り付けたりすることにより負極集電体を形成してもよい。
【0076】
凸部は、樹脂材料で構成されてもよい。樹脂材料は、絶縁性のものでもよい。樹脂材料などの絶縁性材料で凸部を構成すると、充電によって凸部の先端にリチウム金属が析出することが抑制される。析出したリチウム金属は、負極集電体、より具体的には金属箔などの導電性シートの表面近傍に形成された空間内に収容される。そのため、負極の膨張を抑制する効果を高めることができる。
【0077】
樹脂材料としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、およびシリコーン樹脂よりなる群から選択される少なくとも一つが挙げられる。樹脂材料としては、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂の硬化物を用いてもよい。凸部は、例えば、樹脂製の粘着テープを導電性シートの表面に貼り付けることにより形成できる。また、導電性シートの表面に樹脂材料を含む溶液または分散液を塗布して乾燥させることにより凸部を形成してもよい。凸部は、導電性シートの表面に硬化性樹脂を所望の形状に塗布し、硬化させることにより形成することもできる。
【0078】
導電性シートの表面には、負極合材層(図示せず)が形成されてもよい。この場合、負極合材および導電性シートは、層の一例である。負極合材層は、リチウム金属を含んでもよい。負極合材層は、導電性シートの表面の全体に形成されてもよい。負極合材層は、例えば、リチウム金属を、導電性シートの表面の一部あるいは全部に電析または蒸着等することによって形成される。あるいは、負極合材層は、黒鉛等の負極活物質を含むペーストを、導電性シートの表面の一部あるいは全部に塗布することにより形成される。負極合材層と複数の凸部との形成順序は特に限定されず、負極合材層を形成した後、複数の凸部を形成してもよいし、複数の凸部を形成した後、負極合材層を形成してもよい。ただし、複数の凸部の表面全体を負極合材が覆わないようにする。負極合材層の厚みは特に限定されず、例えば、30~300μmである。負極合材層は、第1表面を形成されてもよいし、第2表面を有するように形成されてもよい。
【0079】
[正極]
正極は、例えば、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合材層とを備える。正極合材層は、例えば、正極活物質と導電材と結着材とを含む。正極合材層は、正極集電体の両面に形成されてもよい。正極は、例えば、正極集電体の両面に、正極活物質と導電材と結着材とを含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延することにより得られる。
【0080】
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出する材料である。正極活物質としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属フッ化物、ポリアニオン、フッ素化ポリアニオン、遷移金属硫化物等が挙げられる。正極活物質は、製造コストが安く、平均放電電圧が高い点で、リチウム含有遷移金属酸化物であってもよい。
【0081】
リチウム含有遷移金属酸化物に含まれる遷移金属元素としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、W等が挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物は、遷移金属元素を一種含んでもよく、二種以上含んでいてもよい。遷移金属元素は、Co、Ni、およびMnよりなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。リチウム含有遷移金属酸化物は、必要に応じて、一種または二種以上の典型金属元素を含むことができる。典型金属元素としては、Mg、Al、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sb、Pb、Bi等が挙げられる。典型金属元素は、Al等であってもよい。
【0082】
導電材は、例えば、炭素材料である。炭素材料としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、および黒鉛等が挙げられる。正極合材層は、導電材を一種または二種以上含んでもよい。
【0083】
結着材としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ゴム状重合体等が挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。正極合材層31は、結着材を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
【0084】
正極集電体の材質としては、例えば、Al、Ti、Fe等を含む金属材料が挙げられる。金属材料は、Al、Al合金、Ti、Ti合金、およびFe合金等であってもよい。Fe合金は、SUSであってよい。
【0085】
正極集電体の形態としては、例えば、多孔質あるいは無孔のシートが挙げられる。金属材料のシートとは、例えば、金属箔(金属フィルム)、金属メッシュ等である。正極集電体の表面には、導電材として例示した炭素材料が塗布されていてもよい。これにより、抵抗値の低減、触媒効果の付与、正極合剤層と正極集電体との結合強化等が期待できる。
【0086】
[セパレータ]
セパレータには、イオン透過性および絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートとしては、例えば、微多孔を有する薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質は特に限定されないが、高分子材料であってもよい。高分子材料としては、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース等が挙げられる。オレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレンとプロピレンとの共重合体等が挙げられる。セパレータは、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、無機フィラー等が挙げられる。
【0087】
セパレータは、形態および/または組成が異なる複数の層を含むものであってもよい。このようなセパレータは、例えば、ポリエチレン微多孔フィルムとポリプロピレンの微多孔フィルムとの積層体、セルロース繊維を含む不織布と熱可塑性樹脂繊維を含む不織布との積層体であってもよい。微多孔フィルム、織布、不織布等の表面に、ポリアミド樹脂の塗膜が形成されたものをセパレータとして用いてもよい。このようなセパレータは、複数の凸部と接触した状態で圧力が加わっても、高い耐久性を有する。また、耐熱性および/または強度を確保する観点から、セパレータは、正極に対向する面および/または負極に対向する面に、無機フィラーを含む層を備えていてもよい。
【0088】
(非水電解質)
非水電解質としては、リチウムイオン伝導性を有するものが使用される。このような非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解したリチウムイオンおよびアニオンとを含んでいる。非水電解質は、液状であってもよいし、ゲル状であってもよい。また、非水電解質は、固体電解質であってもよい。
【0089】
液状の非水電解質は、リチウム塩を非水溶媒に溶解させることにより調製される。リチウム塩が非水溶媒中に溶解することにより、リチウムイオンおよびアニオンが生成されるが、非水電解質には、解離していないリチウム塩が含まれていてもよい。
【0090】
ゲル状の非水電解質は、リチウム塩とマトリックスポリマー、あるいは、リチウム塩と非水溶媒とマトリックスポリマーとを含む。マトリックスポリマーとしては、例えば、非水溶媒を吸収してゲル化するポリマー材料が使用される。このようなポリマー材料としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、およびポリエーテル樹脂よりなる群から選択される少なくとも一つが挙げられる。
【0091】
リチウム塩またはアニオンとしては、リチウム二次電池の非水電解質に利用される公知のものが使用できる。アニオンとしては、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、CF3SO3
-、CF3CO2
-、イミド類のアニオン、オキサレート錯体のアニオン等が挙げられる。イミド類のアニオンとしては、N(SO2CF3)2
-、N(CmF2m+1SO2)x(CnF2n+1SO2)y-(mおよびnは、それぞれ独立して0または1以上の整数であり、xおよびyは、それぞれ独立して0、1または2であり、x+y=2を満たす。)等が挙げられる。オキサレート錯体のアニオンは、ホウ素および/またはリンを含有してもよい。オキサレート錯体のアニオンとしては、ビスオキサレートボレートアニオン、BF2(C2O4)-、PF4(C2O4)-、PF2(C2O4)2
-等が挙げられる。非水電解質は、これらのアニオンを一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
【0092】
リチウム金属がデンドライト状に析出するのを抑制する観点から、非水電解質は、PF6
-、イミド類のアニオン、およびオキサレート錯体のアニオンよりなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい。イミド類のアニオンは、N(SO2CF3)2
-、N(SO2C2F5)2
-、N(SO2F)2
-であってもよい。特に、オキサレート錯体のアニオンを含む非水電解質を用いると、オキサレート錯体のアニオンとリチウムとの相互作用により、リチウム金属が細かい粒子状で均一に析出し易くなる。そのため、リチウム金属の局所的な析出に伴う不均一な負極の膨張を抑制できる。オキサレート錯体のアニオンと他のアニオンとを組み合わせてもよい。他のアニオンは、PF6
-、および/またはイミド類のアニオンであってもよい。
【0093】
非水溶媒としては、例えば、エステル、エーテル、ニトリル、アミド、またはこれらのハロゲン置換体が挙げられる。非水電解質は、これらの非水溶媒を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。ハロゲン置換体としては、フッ化物等が挙げられる。
【0094】
エステルとしては、例えば、炭酸エステル、カルボン酸エステル等が挙げられる。環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート等が挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、フルオロプロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0095】
上記エーテルとしては、環状エーテル、および鎖状エーテルが挙げられる。環状エーテルとしては、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、1,2-ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0096】
非水電解質中のリチウム塩の濃度は、例えば、0.5mol/L以上、3.5mol/L以下である。ここで、リチウム塩の濃度は、解離したリチウム塩の濃度と未解離のリチウム塩の濃度との合計である。非水電解質中のアニオンの濃度を、0.5mol/L以上、3.5mol/L以下としてもよい。
【0097】
非水電解質は、添加剤を含んでもよい。添加剤は、負極上に被膜を形成するものであってもよい。添加剤に由来する被膜が負極上に形成されることにより、デンドライトの生成が抑制され易くなる。このような添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート、FEC、ビニルエチルカーボネート(VEC)等が挙げられる。添加剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
(リチウム二次電池)
以下、本開示にかかるリチウム二次電池の構成を、巻回型の電極群を備える円筒形電池を例にして、図面を参照しながら説明する。ただし、本開示は以下の構成に限定されるものではない。
【0099】
図5は、本実施形態の一例であるリチウム二次電池10の縦断面図である。
図6は、本実施形態の一例である正極の構成を模式的に示す断面図である。
図7は、本実施形態の一例である負極の構成を模式的に示す断面図である。リチウム二次電池10において、充電時に負極12上にリチウム金属が析出し、放電時に当該リチウム金属が非水電解質(図示せず)に溶解する。
【0100】
リチウム二次電池10は、円筒形の電池ケースと、電池ケース内に収容された巻回式の電極群14および図示しない非水電解質とを備える円筒形電池である。電池ケースは、有底円筒形の金属製容器であるケース本体15と、ケース本体15の開口部を封口する封口体16とで構成される。ケース本体15と封口体16との間には、ガスケット27が配置されており、これにより電池ケースの密閉性が確保されている。ケース本体15内において、電極群14の巻回軸方向の両端部には、絶縁板17、18がそれぞれ配置されている。
【0101】
ケース本体15は、例えば、ケース本体15の側壁を部分的に外側からプレスして形成された段部21を有する。段部21は、ケース本体15の側壁に、ケース本体15の周方向に沿って環状に形成されていてもよい。この場合、段部21の開口部側の面で封口体16が支持される。
【0102】
封口体16は、フィルタ22、下弁体23、絶縁部材24、上弁体25およびキャップ26を備えている。封口体16では、これらの部材がこの順序で積層されている。封口体16は、キャップ26がケース本体15の外側に位置し、フィルタ22がケース本体15の内側に位置するように、ケース本体15の開口部に装着される。封口体16を構成する上記の各部材は、例えば、円板形状またはリング形状である。下弁体23と上弁体25とは、各々の中央部で互いに接続されるとともに、各々の周縁部の間には絶縁部材24が介在している。フィルタ22と下弁体23とは、各々の中央部で互いに接続している。上弁体25とキャップ26とは、各々の中央部で互いに接続している。つまり、絶縁部材24を除く各部材は、互いに電気的に接続している。
【0103】
下弁体23には、図示しない通気孔が形成されている。そのため、異常発熱等により電池ケースの内圧が上昇すると、上弁体25がキャップ26側に膨れて、下弁体23から離間する。これにより、下弁体23と上弁体25との電気的接続が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体25が破断し、キャップ26に形成された図示しない開口部からガスが排出される。
【0104】
電極群14は、正極11と負極集電体34を含む負極12とセパレータ13とを有する。正極11、負極12、負極集電体34、およびセパレータ13として、上述した正極、負極、負極集電体およびセパレータの何れかを用いることができる。正極11、負極12およびセパレータ13は、いずれも帯状である。帯状の正極11および負極12の幅方向が巻回軸と平行となるように、正極11および負極12は、これらの電極の間にセパレータ13を介在させた状態で渦巻状に巻回されている。電極群14の巻回軸に垂直な断面においては、正極11と負極12とは、これらの電極間にセパレータ13を介在させた状態で、電極群14の半径方向に交互に積層された状態である。つまり、各電極の長手方向が巻回方向であり、各電極の幅方向が軸方向である。
【0105】
正極11は、正極リード19を介して、正極端子を兼ねるキャップ26と電気的に接続されている。正極リード19の一端部は、例えば、正極11の長手方向の中央付近に接続されている。正極11から延出した正極リード19は、絶縁板17に形成された図示しない貫通孔を通って、フィルタ22まで延びている。正極リード19の他端は、フィルタ22の電極群14側の面に溶接されている。
【0106】
負極12は、負極リード20を介して負極端子を兼ねるケース本体15と電気的に接続されている。負極リード20の一端部は、例えば、負極12の長手方向の端部に接続されており、他端部は、ケース本体15の内底面に溶接されている。
【0107】
正極11は、正極集電体30および正極合材層31を備え(
図6参照)、正極リード19を介して、正極端子として機能するキャップ26と電気的に接続している。正極リード19の一端は、例えば、正極11の長手方向の中央付近に接続されている。正極11から延出した正極リード19は、絶縁板17に形成された図示しない貫通孔を通って、フィルタ22まで延びている。正極リード19の他端は、フィルタ22の電極群14側の面に溶接されている。
【0108】
負極12は、負極集電体34を備え(
図7参照)、負極リード20を介して、負極端子として機能するケース本体15と電気的に接続している。負極集電体34は、導電性シート342と、複数の凸部341とを備える。負極リード20の一端は、例えば、負極12の長手方向の端部に接続されており、他端は、ケース本体15の底部内面に溶接されている。
【0109】
第1表面S1および第2表面S2のそれぞれには、複数の凸部341が形成される。隣接する凸部341間において、第1表面S1とセパレータ13との間、および、第2表面S2とセパレータ13との間に、それぞれ空間35が形成される。リチウム二次電池10では、充電により、空間35内にリチウム金属が析出し、析出したリチウム金属は、放電により、非水電解質中に溶解する。空間35内に析出したリチウム金属を収容することができるため、リチウム金属の析出に伴う負極12の見かけの体積変化を低減できる。よって、負極の膨張を抑制できる。また、電極群14では、空間35内に収容されるリチウム金属にも圧力が加わるため、リチウム金属の剥離が抑制される。よって、充放電効率の低下を抑制することもできる。
【0110】
ここで、負極12の見かけの体積とは、負極12の体積と、析出したリチウム金属の体積と、複数の凸部341によって確保される空間の容積と、の合計の体積である。
【0111】
(その他)
図示例では、巻回型の電極群を備える円筒形のリチウム二次電池について説明したが、この場合に限らず、本実施形態は適用できる。リチウム二次電池の形状は、その用途等に応じて、円筒形の他に、コイン型、角型、シート型、扁平型等の各種形状から適宜選択することができる。電極群の形態も特に限定されず、積層型であってもよい。また、リチウム二次電池の電極群および非水電解質以外の構成については、公知のものを特に制限なく利用できる。
【0112】
[実施例]
以下、本開示に係るリチウム二次電池を実施例および比較例に基づいて具体的に説明する。本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0113】
[実施例1]
(1)正極の作製
Li、Ni、CoおよびAlを含有するリチウム含有遷移金属酸化物(NCA;正極活物質)と、アセチレンブラック(AB;導電材)と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF;結着材)とを、NCA:AB:PVdF=95:2.5:2.5の質量比で混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて撹拌して、正極合材スラリーを調製した。次に、得られた正極合材スラリーを、正極集電体として機能するAl箔の両面に塗布した後、乾燥して、ローラーを用いて正極合材の塗膜を圧延した。最後に、得られた正極集電体と正極合材との積層体を所定の電極サイズに切断し、正極集電体の両面に正極合材層を備える正極を作製した。
【0114】
(2)負極の作製
両方の表面に、
図4に示すような複数の凸部を備える負極集電体を作製した。より具体的には、矩形の電解銅箔(厚み10μm)の両方の表面の各々に、厚み35μm、幅1mmのポリエチレン製の複数の粘着テープを平行かつ等間隔に貼り付けることにより、第1表面および第2表面の各々に複数の縞状凸部を形成した。すなわち、粘着テープを凸部として用いた。ここで、第1表面の複数の粘着テープは、第2表面の複数の粘着テープと平行になるように形成した。第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の粘着テープの長手方向に伸びる中心線に対し、当該粘着テープに最も近い第2表面の粘着テープの長手方向に伸びる中心線が凸部の幅方向に0.5mmずれるようにして、貼り付けた。
【0115】
第1凸部の最小幅および第2凸部の最小幅は、いずれも1mmであった。負極集電体の第1表面における隣接する2つの第1凸部間の離間距離P1、および第2表面における隣接する2つの第2凸部間の離間距離P2はいずれも5mmであった。負極集電体の第1表面の面積に占める複数の第1凸部の第1表面に対する投影面積の合計の割合は、16.7%であった。また、負極集電体の第2表面の面積に占める複数の第2凸部の第2表面に対する投影面積の合計の割合は、16.7%であった。
【0116】
第1表面の第1凸部と第2表面の第2凸部は、
図1Aに示すような位置関係にある。第1凸部の第1側面T1と第2凸部の第3側面T3との距離(すなわち、ズレ量G1)は、第1幅W1の1/2であった。そのため、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の各第1凸部は一部のみが複数の第2凸部の何れかの一部と重複している。
【0117】
得られたものを、所定の電極サイズに切断して、両方の表面に縞状凸部を3本ずつ備える負極集電体を形成した。負極集電体には、ニッケル製の負極リードの一端部を溶接により取り付けた。
【0118】
(3)非水電解質の調製
ECとDMCとを、EC:DMC=30:70の容積比で混合した。得られた混合溶媒に、LiPF6を1モル/Lと、LiBF2(C2O4)を0.1モル/Lと、なるようにそれぞれ溶解させて、液体の非水電解質を調製した。
【0119】
(4)電池の作製
上記で得られた正極に、Al製のタブを取り付けた。上記で得られた負極に、Ni製のタブを取り付けた。不活性ガス雰囲気中で、正極と負極とを、セパレータとして機能するポリエチレン薄膜を介して、複数の縞状凸部の長手方向が巻回方向になるようにして渦巻状に巻回し、巻回型の電極体を作製した。このとき、複数の縞状凸部のほぼすべては、セパレータに接触していた。得られた電極体を、Al層を備えるラミネートシートで形成される袋状の外装体に収容し、電極群を収容した外装体に上記非水電解質を注入した後、外装体を封止してリチウム二次電池を作製した。
【0120】
[実施例2]
(2)負極の作製において、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の粘着テープの第2側面と当該粘着テープに対応する第2表面の粘着テープの第3側面との離間距離が1.25mmとなるようにして、貼り付けた。すなわち、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の複数の粘着テープの各々が第2表面の複数の粘着テープの何れとも重複しないように粘着テープを貼り付けた。第1表面の複数の第1凸部および第2表面の複数の第2凸部は、
図2に示すような位置関係にある。ズレ量G2は、離間距離P1の1/4であった。負極の粘着テープのズレ量以外は実施例1と同様にして、リチウム二次電池を作製した。
【0121】
[実施例3]
(2)負極の作製において、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の粘着テープの第2側面と当該粘着テープに対応する第2表面の粘着テープの第3側面との離間距離が2.5mmとなるようにして、貼り付けた。すなわち、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の複数の粘着テープの各々が第2表面の複数の粘着テープの何れとも重複しないように粘着テープを貼り付けた。第1表面の複数の第1凸部および第2表面の複数の第2凸部は、
図2に示すような位置関係にある。ズレ量G2は、離間距離P1の1/2であった。負極の粘着テープのズレ量以外は実施例1と同様にして、リチウム二次電池を作製した。
【0122】
[比較例1]
(2)負極の作製において、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の複数の粘着テープと第2表面の複数の粘着テープとが完全に重複するように、これらの粘着テープを貼り付けた。これ以外は実施例1と同様にして、負極およびリチウム二次電池を作製した。
【0123】
[比較例2]
(2)負極の作製において、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の粘着テープの長手方向に伸びる中心線に対し、当該粘着テープに最も近い第2表面の粘着テープの長手方向に伸びる中心線が凸部の幅方向に0.25mmずれるようにして貼り付けた。第1表面の第1凸部および第2表面の第2凸部は、
図1Aに示すような位置関係にある。ズレ量G1は、第1幅W1の1/4であった。負極の粘着テープのズレ量以外は実施例1と同様にして、リチウム二次電池を作製した。
【0124】
[評価]
得られた電池について、充放電試験を行い、充放電特性を評価した。
充放電試験では、25℃の恒温槽内において、以下の条件で電池の充電を行った後、20分間休止して、以下の条件で放電を行った。
【0125】
(充電)
電極の単位面積(平方センチメートル)あたり10mAの電流で、電池電圧が4.3Vになるまで定電流充電を行い、その後、4.3Vの電圧で、電極の単位面積あたりの電流値が1mAになるまで定電圧充電を行った。
(放電)
電極の単位面積あたり10mAの電流で、電池電圧が2.5Vになるまで定電流放電を行った。
【0126】
上記充電および放電を1サイクルとし、2サイクル目の充電を行った後、電池を解体して、負極を取り出した。解体は、不活性ガス雰囲気中で行った。取り出した負極を、DMCで洗浄した後、乾燥し、負極の厚みを測定した。負極の厚みは、ピーコックデジタルシックネスゲージG2-205Mを用い、負極内の任意の5点について計測し、平均化することにより求めた。充放電前の負極の集電体の厚みを100%とし、この集電体の厚みに対する2サイクル目の負極の厚みの比率(%)を、負極膨張率とした。評価結果を表1に示す。
【0127】
【0128】
[実施例4]
(2)負極の作製において、離間距離P1およびP2の各々を10mmにしたこと以外は、実施例1と同様にして負極およびリチウム二次電池を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。第1表面の第1凸部および第2表面の第2凸部は、
図1Aに示すような位置関係にある。ズレ量G1は、第1幅W1の1/2であった。
【0129】
[実施例5]
(2)負極の作製において、離間距離P1およびP2の各々を10mmにした。また、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の粘着テープの第2側面と当該粘着テープに対応する第2表面の粘着テープの第3側面との離間距離が2.5mmとなるようにして、貼り付けた。これ以外は、実施例2と同様にして負極およびリチウム二次電池を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。第1表面の複数の第1凸部および第2表面の複数の第2凸部は、
図2に示すような位置関係にある。ズレ量G2は、離間距離P1の1/4であった。
【0130】
[実施例6]
(2)負極の作製において、離間距離P1およびP2の各々を10mmにした。また、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の粘着テープの第2側面と当該粘着テープに対応する第2表面の粘着テープの第3側面との離間距離が5mmとなるようにして、貼り付けた。これ以外は、実施例3と同様にして負極およびリチウム二次電池を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。第1表面の複数の第1凸部および第2表面の複数の第2凸部は、
図2に示すような位置関係にある。ズレ量G2は、離間距離P1の1/2であった。
【0131】
[比較例3]
(2)負極の作製において、離間距離P1およびP2の各々を10mmにしたこと以外は、比較例1と同様にして負極およびリチウム二次電池を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0132】
[比較例4]
(2)負極の作製において、離間距離P1およびP2の各々を10mmにしたこと以外は、比較例2と同様にして負極およびリチウム二次電池を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。第1表面の第1凸部および第2表面の第2凸部は、
図1Aに示すような位置関係にある。ただし、ズレ量G1は、第1幅W1の1/4であった。
【0133】
【0134】
[実施例7]
(2)負極の作製において、両方の表面に
図3に示すような複数の凸部341を備える負極集電体34を作製した。より具体的には、矩形の電解銅箔(厚み10μm)の両方の表面に、厚み35μm、幅1mm、長さ11mmのポリエチレン製の複数の粘着テープを貼り付けた。詳細には、複数の粘着テープのうち、一部の粘着テープの長手方向が他の粘着テープの長手方向と90°に交差するように貼り付けた。これにより、第1表面および第2表面の各々に短冊型の複数の凸部341を配置した。離間距離P1およびP2の各々は、約6.4mmであった。第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の粘着テープの長手方向に伸びる中心線に対し、当該粘着テープに最も近い第2表面の粘着テープの長手方向に伸びる中心線が0.5mmずれるようにして、貼り付けた。すなわち、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の各粘着テープの凸部は一部のみが第2表面の複数の凸部の何れかの一部と重複している。第1表面の第1凸部および第2表面の第2凸部は、
図1Aに示すような位置関係にある。ズレ量G1は、第1幅W1の1/2であった。
【0135】
上記で得られた負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、リチウム二次電池を作製し、評価した。評価結果を表3に示す。
【0136】
[実施例8]
(2)負極の作製において、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の粘着テープの第2側面と、当該粘着テープに平行な対応する第2表面の粘着テープの第3側面との離間距離が約1.6mmとなるようにして貼り付けた。これ以外は、実施例7と同様にして、負極およびリチウム二次電池を作製し、評価した。評価結果を表3に示す。第1表面の複数の第1凸部および第2表面の複数の第2凸部は、
図2に示すような位置関係にある。ズレ量G2は、離間距離P1の1/4であった。
【0137】
[実施例9]
(2)負極の作製において、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の粘着テープの第2側面と、当該粘着テープに対応する第2表面の粘着テープの第3側面との離間距離が約3.2mmずれるようにして貼り付けた。これ以外は、実施例7と同様にして、負極およびリチウム二次電池を作製し、評価した。評価結果を表3に示す。第1表面の複数の凸部および第2表面の複数の凸部は、
図2に示すような位置関係にある。ズレ量G2は、離間距離P1の1/2であった。
【0138】
[比較例5]
(2)負極の作製において、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の複数の粘着テープと第2表面の複数の粘着テープとが完全に重複するように、粘着テープを貼り付けた。これ以外は、実施例7と同様にして、負極およびリチウム二次電池を作製し、評価した。評価結果を表3に示す。
【0139】
[比較例6]
(2)負極の作製において、第1表面の法線方向から見たとき、第1表面の粘着テープの長手方向に伸びる中心線に対し、当該粘着テープに最も近い第2表面の粘着テープの長手方向に伸びる中心線が凸部の幅方向に0.25mmずれるようにして貼り付けた。これ以外は、実施例7と同様にして、負極およびリチウム二次電池を作製し、評価した。評価結果を表3に示す。第1表面の第1凸部および第2表面の第2凸部は、
図1Aに示すような位置関係にある。ズレ量G1は、第1幅W1の1/4であった。
【0140】
【0141】
表1~表3に示されるように、実施例1~9の電池は、比較例1~6に示す電池と比較して、負極の膨張率が小さい。負極集電体の一方の表面と他方の表面とで、凸部のズレ量G1およびズレ量G2が大きくなるほど電池の膨張率は抑制される。特に、実施例2~3、5~6、8~9の電池の膨張率は小さい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本開示のリチウム二次電池は、電極膨張率が小さく放電容量および安全性に優れるため、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末のような電子機器、ハイブリッド、プラグインハイブリッドを含む電気自動車、太陽電池と組み合わせた家庭用蓄電池等に用いることができる。
【符号の説明】
【0143】
10 リチウム二次電池
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 電極群
15 ケース本体
16 封口体
17、18 絶縁板
19 正極リード
20 負極リード
21 段部
22 フィルタ
23 下弁体
24 絶縁部材
25 上弁体
26 キャップ
27 ガスケット
30 正極集電体
31 正極合材層
34 負極集電体
341 凸部
3411、3411A、3411B 第1凸部
3412 第2凸部
342 導電性シート
342a 帯状領域