(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】コアの冷却構造およびそれを備えた電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/08 20060101AFI20221216BHJP
H01F 27/10 20060101ALI20221216BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20221216BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20221216BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
H01F27/08 150
H01F27/10
H01F27/24 P
H01F37/00 S
H02M3/28 Y
(21)【出願番号】P 2021540684
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028424
(87)【国際公開番号】W WO2021033485
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019151844
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 義一
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健太
(72)【発明者】
【氏名】福田 智仁
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/037690(WO,A1)
【文献】実開昭54-095864(JP,U)
【文献】特開2015-095502(JP,A)
【文献】特開平02-077105(JP,A)
【文献】特開2007-298066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/08
H01F 27/10
H01F 27/24
H01F 37/00
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路の部品としてのコアに適用されるコアの冷却構造であって、
第1コア部と第2コア部とを含み、対向するように配置された前記第1コア部と前記第2コア部とによって磁路が形成される前記コアと、
前記コアが取り付けられた筺体と、
を有し、
前記第1コア部では、前記磁路に沿うように一方向に延在する一つ以上の第1放熱フィンが形成され、
前記第2コア部は、前記筺体に嵌め込まれる態様で取り付けられ、
前記第2コア部には、第2放熱フィンが配置され、
前記筺体には、一方側から他方側へ前記筺体を貫通する開口部が形成され、
前記第2コア部は、前記筺体における前記一方側に開口する前記開口部に配置されて、前記第2放熱フィンが前記他方側に開口する前記開口部から露出する、コアの冷却構造。
【請求項2】
磁気回路の部品としてのコアに適用されるコアの冷却構造であって、
第1コア部と第2コア部とを含み、対向するように配置された前記第1コア部と前記第2コア部とによって磁路が形成される前記コアと、
前記コアが取り付けられた筺体と、
を有し、
前記第1コア部では、前記磁路に沿うように一方向に延在する一つ以上の第1放熱フィンが形成され、
前記第2コア部は、前記筺体に嵌め込まれる態様で取り付けられ、
前記第2コア部には、第2放熱フィンが配置され、
前記第2コア部と前記筺体との間には、冷却流体が流れる第1の冷却流路が形成され、
前記第1の冷却流路は、前記第1の冷却流路を流れる冷却水によって前記第2コア部が直接冷却される態様で形成され
、
前記第2コア部の表面には、防食処理部が形成され、かつ、前記防食処理部が形成されていない未処理部が配置された、コアの冷却構造。
【請求項3】
前記筺体は、熱を放出する放熱部を備えた、請求項1または2に記載のコアの冷却構造。
【請求項4】
前記筺体内には、第2の冷却流路が形成された、請求項3記載のコアの冷却構造。
【請求項5】
前記放熱部は、空冷フィンを含む、請求項3記載のコアの冷却構造。
【請求項6】
前記筺体は、
前記第2コア部が取り付けられる筺体第1部と、
前記第1コア部が取り付けられる筺体第2部と
を含み、
前記筺体第1部と前記筺体第2部とは、前記コアを挟み込む態様で対向するように配置され、
前記第1コア部と前記筺体第2部との間には、冷却水が流れる第3の冷却流路が形成され、
前記第3の冷却流路は、前記第3の冷却流路を流れる冷却水によって、前記第1コア部が直接冷却される態様で形成された、請求項2記載のコアの冷却構造。
【請求項7】
前記筺体は、熱を放出する放熱部を備え、
前記放熱部は、前記筺体第1部に形成された第4の冷却流路を含む、請求項
6記載のコアの冷却構造。
【請求項8】
前記第1コア部の表面には、他の防食処理部が形成された、請求項6または7に記載のコアの冷却構造。
【請求項9】
磁気回路の部品としてのコアに適用されるコアの冷却構造であって、
第1コア部と第2コア部とを含み、対向するように配置された前記第1コア部と前記第2コア部とによって磁路が形成される前記コアと、
前記コアが取り付けられた筺体と、
を有し、
前記第1コア部では、前記磁路に沿うように一方向に延在する一つ以上の第1放熱フィンが形成され、
前記第2コア部は、前記筺体に嵌め込まれる態様で取り付けられ、
前記筺体は、
前記第2コア部が取り付けられる筺体第1部と、
前記第1コア部が取り付けられる筺体第2部と
を含み、
前記筺体第1部と前記筺体第2部とは、前記コアを挟み込む態様で対向するように配置され、
前記第2コア部は、前記磁路に沿って延在するとともに、前記磁路と交差する方向に間隔を隔てて配置された第2放熱フィンを備え、
前記筺体第1部には、前記コアが配置されている側から、前記コアが配置されている側とは反対側に向かって前記筺体第1部を貫通する第1開口部が形成され、
前記第2放熱フィンは、前記第1開口部から露出している、コアの冷却構造。
【請求項10】
前記筺体第1部は、熱を放出する放熱部を備え、
前記放熱部は空冷フィンを含む、請求項9記載のコアの冷却構造。
【請求項11】
前記筺体第2部には、前記コアが配置されている側から、前記コアが配置されている側とは反対側に向かって前記筺体第2部を貫通する第2開口部が形成され、
前記第1放熱フィンは、前記第2開口部から露出している、請求項9または10に記載のコアの冷却構造。
【請求項12】
前記第1コア部および前記第2コア部のそれぞれの表面には、防食処理部が形成された、請求項
9~
11のいずれか1項に記載のコアの冷却構造。
【請求項13】
前記コアと前記筺体との間には、熱界面材料を介在させた、請求項1~12のいずれか1項に記載のコアの冷却構造。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のコアの冷却構造を備えた電力変換装置であって、
前記コアが実装されたプリント基板と、
前記プリント基板と前記筺体との間に配置されたスイッチング素子およびダイオード素子と
を備え、
前記コアの前記第1コア部と前記第2コア部とは、前記プリント基板に形成された貫通穴を介して、前記プリント基板を挟み込む態様で対向するように配置され、
前記第1コア部は、前記プリント基板の一方の主面の側に配置され、
前記筺体および前記第2コア部は、前記プリント基板の他方の主面の側に配置された、電力変換装置。
【請求項15】
前記第2コア部は、前記筺体に嵌め込まれる態様で取り付けられた、請求項14記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気回路部品としてのコアを冷却する機能を有するコアの冷却構造およびそれを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置等のパワーエレクトロニクス機器、または、電気・電子機器には、小型化が求められている。パワーエレクトロニクス機器に搭載されるパワー半導体素子等、または、電気・電子機器に搭載される半導体素子等の電気・電子部品は、冷却技術の向上により小型化が進んできている。一方、冷却が困難であり小型化が進んでいない電気・電子部品の一つに、トランスまたはリアクトル等の磁気回路部品がある。
【0003】
磁気回路部品からの発熱には、鉄損による発熱と銅損による発熱とがある。鉄損とは、コアにおいて発生する損失であり、コアロスと称される。銅損とは、コアに巻回された配線(巻線)において発生する損失である。
【0004】
最近では、銅損による発熱については、巻線の形状を変更することが行われている。すなわち、巻線の断面形状を円形から矩形に変更し断面積を増加させることによって、損失を低減する対策が採られている。さらに、巻線等の放熱構造を改善することによって、コアの冷却能力を向上させて、コアの小型化に向けた発熱対策が採られてきている。
【0005】
しかしながら、コアロスを積極的に低減し、コアの小型化に寄与する提案は少ない。たとえば、特許文献1では、角型コアの外周面に凹凸を形成した構造が提案されている。特許文献2では、放熱フィンを有するヒートシンクに、リアクトルを埋め込む構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-19418号公報
【文献】特開2013-172096号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】https://www.tokin.com/product/pdf_dl/f_core.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トランスまたはリアクトル等に使用されているコアには、冷却をより効率的に行って放熱を向上させることが求められている。本開示は、このような開発のもとになされたものであり、一つの目的は、放熱が効果的に行われるコアの冷却構造を提供することであり、他の目的は、そのようなコアの冷却構造を適用した電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る一のコアの冷却構造は、磁気回路の部品としてのコアに適用されるコアの冷却構造であって、コアと筺体とを有する。コアは、第1コア部と第2コア部とを含み、対向するように配置された第1コア部と第2コア部とによって磁路が形成される。筺体に、コアが取り付けられている。第1コア部では、磁路に沿うように一方向に延在する一つ以上の第1放熱フィンが形成されている。第2コア部は、筺体に嵌め込まれる態様で取り付けられている。第2コア部には、第2放熱フィンが配置されている。筺体には、一方側から他方側へ筺体を貫通する開口部が形成されている。第2コア部は、筺体における一方側に開口する開口部に配置されて、第2放熱フィンが他方側に開口する開口部から露出している。
本開示に係る他のコアの冷却構造は、磁気回路の部品としてのコアに適用されるコアの冷却構造であって、コアと筺体とを有する。コアは、第1コア部と第2コア部とを含み、対向するように配置された第1コア部と第2コア部とによって磁路が形成される。筺体に、コアが取り付けられている。第1コア部では、磁路に沿うように一方向に延在する一つ以上の第1放熱フィンが形成されている。第2コア部は、筺体に嵌め込まれる態様で取り付けられている。第2コア部には、第2放熱フィンが配置されている。第2コア部と筺体との間には、冷却流体が流れる第1の冷却流路が形成されている。第1の冷却流路は、第1の冷却流路を流れる冷却水によって第2コア部が直接冷却される態様で形成されている。第2コア部の表面には、防食処理部が形成され、かつ、防食処理部が形成されていない未処理部が配置されている。
【0010】
本開示に係るさらに他のコアの冷却構造は、磁気回路の部品としてのコアに適用されるコアの冷却構造であって、コアと筺体とを有する。コアは、第1コア部と第2コア部とを含み、対向するように配置された第1コア部と第2コア部とによって磁路が形成される。筺体に、コアが取り付けられている。第1コア部では、磁路に沿うように一方向に延在する一つ以上の第1放熱フィンが形成されている。第2コア部は、筺体に嵌め込まれる態様で取り付けられている。筺体は、筺体第1部と筺体第2部とを含む。筺体第1部には、第2コア部が取り付けられる。筺体第2部には、第1コア部が取り付けられる。筺体第1部と筺体第2部とは、コアを挟み込む態様で対向するように配置されている。第2コア部は、磁路に沿って延在するとともに、磁路と交差する方向に間隔を隔てて配置された第2放熱フィンを備えている。筺体第1部には、コアが配置されている側から、コアが配置されている側とは反対側に向かって筺体第1部を貫通する第1開口部が形成されている。第2放熱フィンは、第1開口部から露出している。
【0011】
本開示に係る電力変換装置は、上述したコアの冷却構造を備えた電力変換装置であって、プリント基板とスイッチング素子およびダイオードとを備えている。プリント基板には、コアが実装されている。スイッチング素子およびダイオード素子は、プリント基板と筺体との間に配置されている。コアの第1コア部と第2コア部とは、プリント基板に形成された貫通穴を介して、プリント基板を挟み込む態様で対向するように配置されている。第1コア部は、プリント基板の一方の主面の側に配置されている。筺体および第2コア部は、プリント基板の他の方の主面の側に配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る一のコアの冷却構造によれば、コアが、第1コア部と第2コア部とを含み、第1コア部は第1放熱フィンを備え、第2コア部は、熱を放出する放熱部を備えた筺体に嵌め込まれる態様で取り付けられている。これにより、コアの熱が効率的に放熱されて、コアを冷却することができる。
【0013】
本開示に係る他のコアの冷却構造によれば、コアが、第1コア部と第2コア部とを含む。第1コア部は、熱を放出する第1放熱部を備えた筺体第1部に取り付けられている。第2コア部は、熱を放出する第2放熱部を備えた筺体第2部に取り付けられている。これにより、コアの熱が効率的に放熱されて、コアを冷却することができる。
【0014】
本開示に係る電力変換装置によれば、上述したコアの冷却構造を備えていることで、電力変換装置のコアを効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施の形態1に係るコアの冷却構造の一例を示す斜視図である。
【
図2】同実施の形態において、
図1に示される断面線II-IIにおける断面図である。
【
図3】同実施の形態において、コアの冷却構造の分解斜視図である。
【
図4】同実施の形態において、
図2に示される断面線IV-IVにおける断面図である。
【
図5】同実施の形態において、フィンが形成されたコアの構造を説明するための分解斜視図である。
【
図6】同実施の形態において、コアにおけるフィンの部分拡大断面図である。
【
図7】同実施の形態において、コアロスと温度との関係を示す第1のグラフである。
【
図8】同実施の形態において、コアロスと温度との関係を示す第2のグラフである。
【
図9】同実施の形態において、電力変換装置の第1例としてのDC-DC変換器に係る回路図である。
【
図10】同実施の形態において、コアの冷却構造を適用した電力変換装置の第1例の構造を模式的に示す平面図である。
【
図11】同実施の形態において、
図10に示される断面線XI-XIにおける断面図である。
【
図12】同実施の形態において、電力変換装置の構造を示す分解斜視図である。
【
図13】同実施の形態において、電力変換装置の第2例の構造を模式的に示す平面図である。
【
図14】同実施の形態において、電力変換装置の第3例の構造を示す断面図である。
【
図15】同実施の形態において、電力変換装置の第4例の構造を示す断面図である。
【
図16】本開示の実施の形態2に係る電力変換装置の第1例の構造を示す断面図である。
【
図17】同実施の形態において、電力変換装置のコアの構造の一例を示す分解斜視図である。
【
図18】同実施の形態において、電力変換装置の第1例の構造を示す分解斜視図である。
【
図19】同実施の形態において、電力変換装置の第2例の構造を示す断面図である。
【
図20】本開示の実施の形態3に係る電力変換装置の第1例の構造を示す断面図である。
【
図21】同実施の形態において、
図20に示す断面線XXI-XXIにおける断面図である。
【
図22】同実施の形態において、コアの構造の一例を示す分解斜視図である。
【
図23】同実施の形態において、
図20に示される断面線XXIII-XXIIIにおける断面図である。
【
図24】同実施の形態において、コアの構造の他の例を示す分解斜視図である。
【
図25】同実施の形態において、電力変換装置の第2例の構造を示す断面図である。
【
図26】同実施の形態において、
図25に示される断面線XXVI-XXVIにおける断面図である。
【
図27】同実施の形態において、
図25に示される断面線XXVII-XXVIIにおける断面図である。
【
図28】本開示の実施の形態4に係る電力変換装置の第1例の構造を示す断面図である。
【
図29】同実施の形態において、電力変換装置のコアの構造の一例を示す分解斜視図である。
【
図30】同実施の形態において、電力変換装置のコアの構造の他の例を示す分解斜視図である。
【
図31】同実施の形態において、電力変換装置の第2例の構造を模式的に示す平面図である。
【
図32】同実施の形態において、
図31に示される断面線XXXII-XXXIIにおける断面図である。
【
図33】本開示の実施の形態5に係る電力変換装置の第1例の構造を示す断面図である。
【
図34】同実施の形態において、電力変換装置のコアの構造の一例を示す分解斜視図である。
【
図35】同実施の形態において、電力変換装置のコアの構造の他の例を示す分解斜視図である。
【
図36】同実施の形態において、電力変換装置の第2例の構造を示す断面図である。
【
図37】本開示の実施の形態6に係る電力変換装置の第1例の構造を示す断面図である。
【
図38】同実施の形態において、電力変換装置の第2例の構造を示す断面図である。
【
図39】同実施の形態において、電力変換装置の第3例の構造を示す断面図である。
【
図40】同実施の形態において、電力変換装置の第4例の構造を示す断面図である。
【
図41】同実施の形態において、電力変換装置の第5例の構造を示す断面図である。
【
図42】同実施の形態において、電力変換装置の第6例の構造を示す断面図である。
【
図43】同実施の形態において、電力変換装置の第7例の構造を示す断面図である。
【
図44】同実施の形態において、電力変換装置の第8例の構造を示す断面図である。
【
図45】同実施の形態において、電力変換装置の第9例の構造を示す断面図である。
【
図46】同実施の形態において、電力変換装置の第10例の構造を示す断面図である。
【
図47】本開示の実施の形態7に係る電力変換装置の第1例の構造を示す断面図である。
【
図48】同実施の形態において、電力変換装置の第2例の構造を示す断面図である。
【
図49】同実施の形態において、電力変換装置の第3例の構造を示す断面図である。
【
図50】同実施の形態において、電力変換装置の第4例の構造を示す断面図である。
【
図51】本開示の実施の形態8に係る電力変換装置の構造を示す分解斜視図である。
【
図52】同実施の形態において、上部コアの製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【
図53】同実施の形態において、下部コアの製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【
図54】同実施の形態において、上部コアの製造方法の他の例を説明するための斜視図である。
【
図55】同実施の形態において、下部コアの製造方法の他の例を説明するための斜視図である。
【
図56】同実施の形態において、他の上部コアの構造を説明するための斜視図である。
【
図57】各実施の形態に係る電力変換装置の一例として、実施の形態7に係る電力変換装置を搭載したパワーエレクトロニクス機器が取り付けられた走行機器の構造を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
(コアの冷却構造)
実施の形態1に係るコアの冷却構造の一例について説明する。
図1および
図2に示すように、コアの冷却構造1では、コア3と筺体11とを備えている。コア3は、筺体11に取り付けられている。コア3は、第1コア部としての上部コア3aと、第2コア部としての下部コア3bとを備えている。コア3は、プリント基板31に実装されている。この明細書では、コア3がプリント基板31に実装された状態には、コア3が筺体11に取り付けられた状態でプリント基板31が筺体11に組付けられた状態も含まれる。
【0017】
プリント基板31は、筺体11上に支柱41を介在させて配置されている。支柱41として、たとえば、絶縁性の樹脂スペーサ、または、導電性の金属スペーサ等を適用することができる。筺体11には凹部13が形成されている。下部コア3bは、凹部13にTIM(Thermal Interface Material)材19を介在させて嵌め込まれている。
【0018】
図3に示すように、上部コア3aは、たとえば、アルファベットの「E」の形状を有するE型である。E型の上部コア3aは、3つの脚部3aaを有する。下部コア3bは、たとえば、アルファベットの「I」の形状を有するI型である。プリント基板31には、脚部3aaに対応する貫通穴31aが形成されている。
【0019】
上部コア3aと下部コア3bとは、脚部3aaを貫通穴31aに挿通させて、プリント基板31を挟み込む態様で対向するように配置されている。プリント基板31には、コア3に巻回される配線パターン33が形成されている。
図4に示すように、コア3がプリント基板31に実装された状態において、上部コア3aの脚部3aaが下部コア3bに接触する。
【0020】
図5に示すように、上部コア3aには、第1放熱フィンとしての一方向に延在するフィン5aが形成されている。フィン5aは、一方向と交差する他の方向に間隔を隔てて複数形成されている。配線パターン33に電流が流れることで、コア3には、閉じられた磁路(矢印参照)が形成される。磁路は、一方向に延在するフィン5aに沿うように形成されて、フィン5aとは交差しない。すなわち、上部コア3aには、磁路に沿うように一方向に延在する一つ以上のフィン5aが形成されている。
【0021】
図6に示すように、フィン5aとフィン5aとの間隔L1は、冷却風を取り込むために、最も広い部分では、たとえば、2mm以上に設定されている。フィン5aの厚さL2は、コア3の強度を確保するために、最も狭い部分では、たとえば、1.4mm以上に設定されている。このような寸法関係から、フィン5aのピッチPTは、たとえば、2.7mm以上に設定されていることが望ましい。
【0022】
フィン5aの高さL4は、たとえば、1.5mm以上に設定されている。成型金型によってフィン5aを一次成型する際に、成型金型からのフィン5aの取り出しやすさを考慮して、フィン5aの高さL4に対して、長さL3が0.1mm以上となる抜き勾配が設定されている。すなわち、フィン5aは、上部コア3aとは別体ではなく、同じ材料から一体的に形成されている。
【0023】
コア3においては、フィン5aとフィン5aとの間に位置する底の部分の幅(L1-2×L3)が大きいほど、コア3としての有効断面積を確保することができるとともに、抜き勾配を確保することができる。しかしながら、底の部分の幅を大きくすると、フィン5aを有するコア3の表面積が制限されることになる。このため、フィン5aの有効断面積等とコア3の表面積とのトレードオフを考慮しながら、コア3を設計することが必要とされる。コアの冷却構造1の基本的な構造は、上記のように構成される。
【0024】
上述したコアの冷却構造1では、コア3が、上部コア3aと下部コア3bとを備えている。上部コア3aには、一体的に形成されたフィン5aを備えている。下部コア3bは、筺体11の凹部13に取り付けられている。これにより、コア3の冷却を効率的に行うことができる。後述するように、筺体11に、たとえば、水冷装置等を設けることで、放熱効果を向上させることができる。また、コア3の熱伝導率、TIM材19の熱伝導率、筺体11等の熱伝導率に基づいて、定量的な放熱設計を行うことが可能になる。
【0025】
さらに、フィン5aは、磁路に沿って順方向に延在するように形成されている。つまり、フィン5aは、磁束に対して順方向に形成されている。これにより、フィン5aも、磁路が形成されるコアとしての断面積を確保することができ、たとえば、トランスまたはリアクトルとして、安定した特性を得ることができる。
【0026】
また、下部コア3bが、筺体11の凹部13に嵌め込まれることによって、コアの冷却が効率的に行われて、冷却のためにコア3の体格(サイズ)を大きくする必要がなくなり、コアの小型化に寄与することができる。さらに、フィン5aも、磁路が形成されるコア3の断面積の一部となることで、上部コア3aの低背化を図ることができ、コア3の小型化に寄与することができる。
【0027】
こうして、上述したコアの冷却構造1では、コア3の冷却が効率的に行われて温度変化が抑えられるとともに、トランスまたはリアクトルとして、安定した特性を得ることができる。ここで、温度変化を抑えて安定したコア特性(トランス特性)を得る効果について、非特許文献1に挙げられているコアロスの温度特性のグラフを用いて説明する。
図7および
図8のそれぞれに、温度とコアロスとの関係を示す。横軸は温度(℃)である。縦軸はコアロス(kW/m
3)であり、単位体積当たりの磁心損失を表す。
【0028】
図7では、コアの材質がBH1、BH2、BH5のそれぞれについて、磁界の磁束密度Bmが100mT、周波数が200kHzの場合における、コアロスと温度との関係を示すグラフである。
図8では、コアの材質がBH1、BH2、BH5のそれぞれについて、磁界の磁束密度Bmが100mT、周波数が500kHzの場合における、コアロスと温度との関係を示すグラフである。
【0029】
一般的に、パワーエレクトロニクス機器に適用されているトランス等に用いられているフェライトコアは、120℃以下のもとで使用されることが多い。
図7または
図8に示すように、コアの温度が上昇すると、コアロスが減少する傾向を示す。コアの温度がある一定温度を超えると、コアロスは上昇する。コアの温度上昇によってコアロスが減少する傾向を示す場合には、コアが熱暴走に対して強い性質(耐性)を有していることになる。
【0030】
一方、コアの温度上昇によってコアロスが増加する場合には、コアの熱暴走を充分に配慮する必要がある。たとえば、
図7に示される、コアの材質がBH1の場合において、コアの温度が120℃程度の範囲においてコアを使用する場合を想定すると、200kW/m
3のコアロスを前提として、熱暴走に配慮して設計する必要がある。
【0031】
これに対して、上述したコアの冷却構造1を適用し、コアの温度が、~100℃(Δ-20℃)以下となるように設定することによって、コアロスは155kW/m3程度で管理すればよいことになる。
【0032】
また、SiCまたはGaN等の新しい素子を使用している電源では、高周波駆動が可能とされるが、一方で、コアロスが増加することが課題とされる。上述したコアの冷却構造1を適用することで、コアの温度管理と、定量的な放熱設計が可能になる。
【0033】
図8に示される、周波数が500kHzの場合では、たとえば、自然空冷または循環風によって、1400kW/m
3のコアロスが確保されるような熱設計ではなく、より定量的な熱設計を行うことで、コアロスを低減させることができる。たとえば、コアの温度を、~90℃(Δ-30℃)程度に管理することができる定量的な熱設計を行うことで、コアロスを1200kW/m
3程度に設定することが可能になる。さらに、コアの小型化を図ることができる実装設計も可能になる。
【0034】
従来のコアでは、コアの放熱の向上にはコアの表面積に重点が行われていた。これに対して、上述したコアの冷却構造では、コアを必要以上に大きくするような設計を行う必要はなくなる。コアが、必要以上に大きくならないことで、コアロスの低減にも繋がり、コアとしての性能を向上させるとともに、省資源化および低コスト化に寄与することができる。
【0035】
(コアの冷却構造を適用した電力変換装置)
(第1例)
次に、上述したコアの冷却構造1を適用した電力変換装置の第1例について説明する。ここでは、電力変換装置の一例として、ブリッジインバータ方式のDC/DC変換器を挙げる。
図9に、そのDC/DC変換器の回路図の一例を示す。DC/DC変換器は、電子機器等に入力された直流の電源電圧を、必要とされる直流の電源電圧に変換する機器である。
【0036】
DC/DC変換器に入力されたDC電源電圧が、たとえば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子53によって、AC電圧に変換される。AC電圧に変換された電源電圧は、トランス57によって、必要とされる電源電圧に対応したAC電圧に変換される。そのAC電圧に変換された電源電圧は、ダイオード55によって整流されて、必要とされるDC電源電圧として出力される。
【0037】
次に、電力変換装置51の構造について具体的に説明する。
図10、
図11および
図12に示すように、電力変換装置51では、コアの冷却構造1が適用されている。コア3は、プリント基板31に実装されている。スイッチング素子およびダイオード55等は、筺体11に取り付けられている。スイッチング素子53とダイオード55とは、プリント基板31と筺体11との間に挟み込まれるように配置されている。
【0038】
トランス57のコア3は、上部コア3aと下部コア3bとを備えている。上部コア3aにフィン5aが形成されている。上部コア3aおよび下部コア3bのそれぞれは、E型である。上部コア3aと下部コア3bとは、プリント基板31を挟み込むように配置されて、対応する上部コア3aの脚部3aaと下部コア3bの脚部3bbとが、貫通穴31aを介して接触する。下部コア3bは、筺体11の凹部13にTIM材19を介在させて嵌め込まれている。
【0039】
トランスのコア3を構成する巻線は、プリント基板31に形成された配線パターン33によって構成されている。プリント基板31は、複数のプリント基板を重ねた多層構造が採用されている。なお、
図11および
図12では、図面の煩雑さを避けるために、プリント基板31は、1枚のプリント基板として示されている。
【0040】
スイッチング素子53に電気的に接続されている一次側の巻線(電圧V1、巻き数n1)は、配線パターン33aによって構成されている。配線パターン33aは、上層のプリント基板と中層(内層)のプリント基板とに形成されている。ダイオード55に電気的に接続されている二次側の巻線(電圧V2、巻き数n2)は、配線パターン33bによって構成されている。配線パターン33bは、最下層のプリント基板と中層(内層)のプリント基板とに形成されている。
【0041】
筺体11には、放熱部としての冷却流路21が形成されている。冷却流路21には、たとえば、冷却水が流される。冷却流路21は、スイッチング素子53の直下の領域、コア3の直下の領域およびダイオード55の直下の領域を、順次、冷却水が流れるように配置されている。冷却流路21は、冷却水を冷却する冷却装置61に接続されている。
【0042】
上述したコアの冷却構造1を適用した電力変換装置51では、上部コア3aには、フィン5aが形成され、下部コア3bは、筺体11の凹部13に取り付けられている。また、筺体11には、スイッチング素子53、ダイオード55およびコア3を冷却する冷却流路21が配置されて、冷却流路21に冷却水が流される。これにより、スイッチング素子53、ダイオード55およびコア3から発生した熱を、筺体11から効率的に放熱させることができる。
【0043】
また、その放熱に関して、コア3の熱伝導率、TIM材19の熱伝導率、筺体11等の熱伝導率に基づいて、定量的な放熱設計を行うことができる。特に、コア3を定量的に熱設計することができることで、コア3に求められるサイズを必要最小限まで小型化することができる。
【0044】
なお、筺体11の熱抵抗が低く、冷却流路21を流れる冷却水によって電力変換装置51を十分に冷却できるような場合には、トランスのコア3の直下の筺体11の部分に、冷却流路を配置しなくてもよい。また、筺体11の肉厚も、必要最小限でよい。また、冷却流路21には冷却水を流す場合について説明したが、冷却水に限られず、冷却油または不凍液を添加した液体を流すようにしてもよい。また、エアコン等に使用する冷媒を流すようにしてもよい。
【0045】
(第2例)
コアの冷却構造1を適用した電力変換装置の第2例として、冷却流路に冷媒が流される電力変換装置について説明する。
【0046】
図13に示すように、電力変換装置51には、放熱部として、圧縮機65、減圧部67および回収部69を含む冷却器63が適用される。冷却器63には、電力変換装置51へ供給する経路(冷却流路21)と、電力変換装置51以外の、通常使用する冷却装置(図示せず)に供給する経路(二重線の矢印参照)とが並列に接続されている。なお、これ以外の構成については、
図10等に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材については同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0047】
上述した電力変換装置51では、圧縮機65によって圧縮された高温の冷媒は、放熱部66において放熱された後、減圧部67において減圧される。減圧されて低温化した冷媒は、スイッチング素子53、コア3およびダイオード55を順次冷却する。ダイオード55を冷却した冷媒は回収部69に回収されて、圧縮機65によって再び圧縮される。以下、このサイクルが繰り返されることになる。
【0048】
上述した電力変換装置51によれば、第1例に係る電力変換装置51の場合と同様に、スイッチング素子53、ダイオード55およびコア3から発生した熱を、冷媒を介して筺体11から効率的に放熱させることができる。また、その放熱に関して、コア3の熱伝導率、TIM材19の熱伝導率、筺体11等の熱伝導率に基づいて、定量的な放熱設計を行うことができる。
【0049】
なお、上述した電力変換装置51では、冷却器63には、電力変換装置51へ供給する経路(冷却流路21)と、通常使用する冷却装置に供給する経路(二重線の矢印参照)とが並列に接続されている場合について説明したが、これらの経路が直列に接続されていてもよい。
【0050】
(第3例)
コアの冷却構造1を適用した電力変換装置の第3例として、空冷フィンを適用した電力変換装置について説明する。
【0051】
図14に示すように、電力変換装置51では、筺体11に空冷フィン23が設けられている。スイッチング素子およびダイオード55等は、筺体11に取り付けられている。スイッチング素子53とダイオード55とは、プリント基板31と筺体11との間に挟み込まれるように配置されている。
【0052】
なお、これ以外の構成については、
図1および
図2等に示すコアの冷却構造1を適用した電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0053】
上述した電力変換装置51では、スイッチング素子53、ダイオード55およびコア3で発生した熱は、筺体11を経て空冷フィン23に伝導する。空冷フィン23に伝導した熱は、自然空冷または強制空冷によって放熱されることになる。このとき、筺体11には比熱によって熱が蓄積されるため、筺体11はヒートスプレッダの機能も果たすことになる。また、コア3において発生した熱は、フィン5aによって放熱されることになる。
【0054】
(第4例)
コアの冷却構造1を適用した電力変換装置の第4例として、空冷フィンを適用した電力変換装置について説明する。
【0055】
図15に示すように、電力変換装置51では、筺体11に空冷フィン23が設けられている。表面実装のスイッチング素子およびダイオード(図示せず)等は、プリント基板31に実装されている。プリント基板31と筺体11との間には、TIM材19aが挟み込まれている。
【0056】
なお、これ以外の構成については、
図1および
図2等に示すコアの冷却構造1を適用した電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0057】
上述した電力変換装置51では、プリント基板31に実装されたスイッチング素子、ダイオード、または、配線(いずれも図示せず)等において発生した熱は、プリント基板31およびTIM材19を経て筺体11に伝導する。筺体11に伝導した熱は、第3例と同様に、空冷フィン23に伝導し、自然空冷または強制空冷によって放熱されることになる。また、筺体11には比熱によって熱が蓄積されるため、筺体11はヒートスプレッダの機能も果たすことになる。さらに、コア3において発生した熱は、フィン5aによって放熱されることになる。
【0058】
実施の形態2.
(第1例)
実施の形態2に係るコアの冷却構造を備えた電力変換装置の第1例について説明する。
図16、
図17および
図18に示すように、電力変換装置51では、コアの冷却構造1が適用されている。コア3は、プリント基板31に実装されている。スイッチング素子53とダイオード55とは、プリント基板31と筺体11との間に挟み込まれるように配置されている。
【0059】
トランス57のコア3は、上部コア3aと下部コア3bとを備えている。上部コア3aにフィン5aが形成されている。下部コア3bにフィン5bが形成されている。上部コア3aおよび下部コア3bのそれぞれは、E型である。上部コア3aと下部コア3bとは、プリント基板31を挟み込むように配置されて、対応する上部コア3aの脚部3aaと下部コア3bの脚部3bbとが、貫通穴31aを介して接触する。
【0060】
筺体11には、フィン5bを含む下部コア3bの形状に対応した凹部13が形成されている。下部コア3bは、筺体11のその凹部13に嵌め込まれている。なお、これ以外の構成については、
図1等に示す電力変換装置51等の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0061】
上述した電力変換装置51では、実施の形態1において説明した電力変換装置51による効果に加えて、次のような効果が得られる。
【0062】
筺体11には、フィン5bを含む下部コア3bの形状に対応した凹部13が形成されている。これにより、下部コア3bを含むコア3の位置決めが容易になり、電力変換装置51の組立が容易になる。また、下部コア3bと筺体11との接触面積が増えて、TIM材を必ずしも介在させる必要がなくなる。
【0063】
さらに、コア3では、上部コア3aと下部コア3bとが同じ形状となり、コア3を成型する金型を一つに絞ることも可能になる。また、2種類の部品を管理する必要がなくなり、低コスト化、生産性の向上を図ることができる。
【0064】
(第2例)
図19に示すように、電力変換装置51の第2例では、フィン5bを有する下部コア3bと筺体11との間に、充填材29が注入されている。充填材29としては、たとえば、熱伝導樹脂またはポッティング材等がある。
【0065】
電力変換装置51の第2例では、筺体11の凹部13内に充填材29を介在させて下部コア3bが嵌め込まれていることで、下部コア3bと筺体11との接触熱抵抗を下げることができて、電力変換装置51を効率よく冷却することができる。
【0066】
また、プリント基板31と筺体11との間に、たとえば、
図15に示すのと同様に、TIM材19aを挟み込むようにしてもよく、プリント基板31を効果的に冷却することができる。
【0067】
実施の形態3.
(第1例)
実施の形態3に係る電力変換装置の第1例について説明する。
図20に示すように、電力変換装置51では、下部コア3bのフィン5bが、筺体11から露出している。筺体11には、凹部13に加えて、筺体11を貫通する開口部15が形成されている。
図21に示すように、開口部15の周囲には、段付き部17が形成されている。
【0068】
図22に示すように、コア3における上部コア3aはE型であり、下部コア3bもE型である。下部コア3bには、段付き部17に当接する、フィン5bが位置していない部分が設けられている。
図23および
図20に示すように、下部コア3bが段付き部17に載置された状態で、フィン5bが、開口部15から露出することになる。
【0069】
なお、これ以外の構成については、
図16等に示す電力変換装置51等の構成と同様なので、同一部材については同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0070】
上述した電力変換装置51では、実施の形態1において説明した電力変換装置51による効果に加えて、次のような効果が得られる。電力変換装置51では、下部コア3bのフィン5bが、筺体11の開口部15から露出している。これにより、コア3を強制的に空冷することが可能になり、コア3からの放熱をより効果的に行うことができる。
【0071】
また、コア3からの放熱性能が高められることで、同じ放熱性能であれば、コア3のサイズを小型化することができ、小型化が図られたトランスまたはリアクトルをパワーエレクトロニクス機器に搭載することが可能になる。さらに、筺体11と下部コア3bとの間に、必ずしもTIM材を介在させる必要がなくなる。
【0072】
また、パワーエレクトロニクス機器において、搭載されている他の半導体部品等を冷却している冷却風を共有することができれば、パワーエレクトロニクス機器のさらなる小型化、低コスト化に寄与することができる。
【0073】
なお、コア3として、上部コア3aも下部コア3bもE型である場合を例に挙げたが、
図24に示すように、上部コア3aがE型であり、下部コア3bがI型であるコア3であってもよい。
【0074】
また、
図22および
図24に示されるコア3では、上部コア3aのフィン5aの数が4つであるのに対して、下部コア3bのフィン5bの数が3つである。このとき、上部コア3aからの放熱量が、下部コア3bからの放熱量を上回る場合があることが想定される。さらに、下部コア3bが筺体11の凹部13に嵌め込まれた構造においても、上部コア3aからの放熱量が、下部コア3bからの放熱量を上回る場合があることが想定される。
【0075】
上述した電力変換装置51では、下部コア3bのフィン5bを、筺体11から露出させて強制的に空冷し、下部コア3bのフィン5bからの放熱を促進させることで、上部コア3aからの放熱量と、下部コア3bからの放熱量とのバランスを図ることができる。
【0076】
なお、上部コア3aのフィン5aの枚数を含む形状と、下部コア3bのフィン5bの枚数を含む形状とを同じ形状にしてもよい。この場合においても、上部コア3aからの放熱量と下部コア3bからの放熱量とのバランスに配慮した設計を行ったうえで実施することが望ましい。
【0077】
また、この場合には、コアを成型する際の金型を上部コア3aと下部コア3bとで共通化することができる。また、2種類の部品を管理する必要がなくなり、低コスト化、生産性の向上を図ることができる。
【0078】
(第2例)
実施の形態3に係る電力変換装置の第2例について説明する。
図25に示すように、電力変換装置51では、下部コア3bと筺体11との間に緩衝材20が介在している。
【0079】
図26に示すように、開口部15の周囲には、段付き部17が形成されている。緩衝材20は、その段付き部17を覆い、さらに、開口部15の内側に多少入り込んだ態様で配置されている。
図27に示すように、下部コア3bは、開口部15の内側に多少入り込んだ態様で配置された緩衝材20を、筺体11と下部コア3bとで挟み込むように配置されている。
【0080】
なお、これ以外の構成については、
図20等に示す電力変換装置51等の構成と同様なので、同一部材については同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0081】
上述した電力変換装置51では、第1例に係る電力変換装置51による効果に加えて、次のような効果が得られる。上述した電力変換装置51では、コア3の下部コア3bを筺体11の開口部15に装着する際に、開口部15の内側に多少入り込んだ態様で配置された緩衝材20によって、下部コア3bが損傷を受けるのを阻止することができる。
【0082】
なお、緩衝材20として、たとえば、TIM材を適用した場合には、コア3から筺体11への熱の伝導が促進されて、放熱に寄与することができる。また、緩衝材20としては、ガスケットを適用することができる。さらに、Oリングに使用されるゴムまたは樹脂材料を、シート状にしたもの、ジョイントシート、テフロン(登録商標)のシート等も適用することができる。また、たとえば、
図15に示されているのと同様に、プリント基板31と筺体11との間にTIM材を介在させることで、プリント基板31の冷却も図ることができる。
【0083】
実施の形態4.
(第1例)
実施の形態4に係る電力変換装置の第1例について説明する。
図28に示すように、電力変換装置51では、下部コア3bと筺体11との間に冷却流路21が形成されている。冷却流路21には、たとえば、冷却水が流される。
【0084】
下部コア3bは、筺体11の段付き部17の上に封止材27を介在させて配置されている。下部コア3bとしては、放熱を効果的に行うために、フィン5bを有する下部コア3bが配置されている。また、下部コア3bとしては、
図29に示すように、E型であってもよいし、
図30に示すように、I型であってもよい。コア3は、冷却流路21を流れる冷却水によって直接冷却されることになる。封止材27として、たとえば、ガスケットまたはTIM材を適用することができる。
【0085】
なお、これ以外の構成については、
図16等に示す電力変換装置51等の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0086】
上述した電力変換装置51では、実施の形態1において説明した効果に加えて、次のような効果が得られる。コア3で発生する熱は、下部コア3bのフィン5bを経て、冷却流路21を流れる冷却水に直接放熱される。これにより、高い放熱能力を得ることができる。また、このことにより、同じ放熱性能であれば、コア3のサイズをさらに小型化することができ、小型化が図られたトランスまたはリアクトルをパワーエレクトロニクス機器に搭載することが可能になる。
【0087】
また、パワーエレクトロニクス機器において、搭載されている他の半導体部品等を冷却している冷却水を共有することができれば、パワーエレクトロニクス機器のさらなる小型化、低コスト化に寄与することができる。さらに、コア3を直接冷却することができることで、筺体11の周辺に配置された他の冷却環境を利用した放熱も可能となって、パワーエレクトロニクス機器のさらなる小型化、低コスト化に寄与することができる。
【0088】
なお、冷却流路21には冷却水を流す場合について説明したが、冷却水に限られず、冷却油または不凍液を添加した液体を流すようにしてもよい。また、エアコン等に使用する冷媒を流すようにしてもよい。
【0089】
(第2例)
実施の形態4に係る電力変換装置の第2例について説明する。
図31および
図32に示すように、電力変換装置51では、下部コア3bと筺体11との間に形成された冷却流路21に加えて、スイッチング素子53およびダイオード55のそれぞれの直下にも、冷却流路21が配置されている。冷却流路21には、たとえば、冷却水が流される。冷却流路21は、冷却装置61に繋がっている。
【0090】
なお、これ以外の構成ついては、
図10等に示す電力変換装置51等の構成と同様なので、同一部材については同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0091】
上述した電力変換装置51では、第1例に係る電力変換装置51による効果に加えて、次のような効果が得られる。筺体11には、コア3を冷却する冷却流路21に加えて、スイッチング素子53およびダイオード55を冷却する冷却流路21が配置されて、冷却流路21に冷却水が流される。これにより、スイッチング素子53、ダイオード55およびコア3から発生した熱を、筺体11から効率的に放熱させることができる。
【0092】
また、その放熱に関して、コア3の熱伝導率、筺体11等の熱伝導率に基づいて、定量的な放熱設計を行うことができる。特に、コア3を定量的に熱設計することができることで、コア3に求められるサイズを必要最小限まで小型化することができる。
【0093】
なお、冷却流路21には冷却水を流す場合について説明したが、冷却水に限られず、冷却油または不凍液を添加した液体を流すようにしてもよい。また、エアコン等に使用する冷媒を流すようにしてもよい。冷媒を使用する場合には、冷媒の漏れに配慮し、たとえば、ガスケット等の封止材27と下部コア3bとの密着性に構造的な強度を確保して使用する必要がある。
【0094】
封止材27として、ガスケットの他に、たとえば、Oリングに使用されるゴムまたは樹脂材料を、シート状にしたもの、ジョイントシート、テフロンシート等も適用することができる。
【0095】
また、上述した電力変換装置51では、冷却水によって、最初にコア3が冷却され、次に、スイッチング素子53等が冷却される場合の他に、スイッチング素子53の直下を流れる冷却水の温度上昇を考慮したうえで、最初にスイッチング素子53が冷却され、次に、コア3が冷却されるように冷却水を流してもよい。
【0096】
なお、たとえば、
図15に示されているのと同様に、プリント基板31と筺体11との間にTIM材を介在させることで、プリント基板31の冷却も図ることができる。
【0097】
実施の形態5.
(第1例)
実施の形態5に係る電力変換装置の第1例について説明する。
図33に示すように、電力変換装置51では、下部コア3bのフィン5bが、筺体11の開口部15から露出している。
図34または
図35に示すように、フィン5bの表面には、防食用の処理が施された防食処理部7bが形成されている。
【0098】
なお、これ以外の構成については、
図20等に示す電力変換装置51等の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0099】
下部コア3bに防食処理部7bを形成する際に、たとえば、ニッケルメッキ等の導電性材料によって、表面処理を行う場合には、磁界によって誘導電流または渦電流が流れることになる。このため、磁界に交差する方向で下部コア3bの全周囲にわたって表面処理を行わないことが重要である。
【0100】
コアの表面にできる限り表面処理を施す場合であっても、上部コア3aと下部コア3bとが接触する部分については、表面処理を行わないようにする実装設計する必要がある。
図34に示すように、脚部3aaと脚部3bbとが互いに接触する部分については、表面処理を行わないようにする。
図35に示すように、脚部3aaと下部コア3bとが互いに接触する部分についても、表面処理を行わないようにする。
【0101】
また、導電性材料によってコア3に防食処理部を形成する場合には、防食処理部は、最大、トランス巻線1巻分に相当するため、トランス巻線比に対応した電圧が、防食処理部の端に生じることになる。このため、防食処理部の電圧が、コア3の表面絶縁電圧以下の電圧となるように、防食処理部を形成しない未処理部分を配置しておく必要がある。
【0102】
上述した電力変換装置51では、実施の形態3において説明した電力変換装置51による効果に加えて、次のような効果が得られる。下部コア3bのフィン5bに防食処理部7bを形成することで、たとえば、腐食性のガス等の腐食性物質の混入に対して、高い耐性を有することができる。また、防食処理部7bによって、下部コア3bに対する衝撃による損傷が抑制されることで、コア3の取り扱いが容易になる。
【0103】
(第2例)
実施の形態5に係る電力変換装置の第2例について説明する。
図36に示すように、電力変換装置51では、下部コア3bと筺体11との間に冷却流路21が形成されている。冷却流路21には、たとえば、冷却水が流される。フィン5bの表面には、防食用の処理が施された防食処理部7bが形成されている。防食処理部7bは、防食処理部7bの電圧が、コア3の表面絶縁電圧以下の電圧となるように、冷却流路21の冷却水に触れる部分にだけ形成されている。
【0104】
なお、これ以外の構成については、
図28等に示す電力変換装置51等の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0105】
上述した電力変換装置51では、実施の形態4において説明した電力変換装置51による効果に加えて、次のような効果が得られる。下部コア3bのフィン5bに防食処理部7bを形成することで、たとえば、冷却水に混入した腐食性物質に対して、高い耐性を有することができる。また、防食処理部7bによって、下部コア3bに対する衝撃による損傷が抑制されることで、コア3の取り扱いが容易になる。さらに、冷却流路21の部分のチッピング等が少なくなり、コア3の冷却構造1を備えた電力変換装置51の耐久性を向上させることができる。
【0106】
なお、第1例および第2例において、たとえば、
図15に示されているのと同様に、プリント基板31と筺体11との間にTIM材を介在させることで、プリント基板31の冷却も図ることができる。
【0107】
実施の形態6.
実施の形態6では、筺体として、下部コアが取り付けられる下部筺体と、上部コアが取り付けられる上部筺体とを備えた電力変換装置について説明する。
【0108】
(第1例)
電力変換装置の第1例について説明する。
図37に示すように、コアの冷却構造1を備えた電力変換装置51では、筺体11として、下部筺体11aと上部筺体11bとを備えている。下部筺体11aと上部筺体11bとは、プリント基板31およびコア3を挟み込むように配置されている。コア3として、フィンが形成されていないコア3が適用されている。
【0109】
下部筺体11aに下部コア3bが取り付けられている。下部コア3bは、下部筺体11aに形成された凹部13aにTIM材19aを介在させて嵌め込まれている。上部筺体11bに、上部コア3aが取り付けられている。上部コア3aは、上部筺体11bに形成された凹部13bにTIM材19bを介在させて嵌め込まれている。
【0110】
なお、これ以外の構成については、
図2等に示す電力変換装置51等の構成と同様なので、同一部材については同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0111】
(第2例)
電力変換装置の第2例について説明する。
図38に示すように、電力変換装置51では、下部筺体11aに、下部コア3bが取り付けられている。下部コア3bは、下部筺体11aに形成された凹部13aに充填剤29aを介在させて嵌め込まれている。上部筺体11bに、上部コア3aが取り付けられている。上部コア3aは、上部筺体11bに形成された凹部13bに充填剤29bを介在させて嵌め込まれている。
【0112】
なお、これ以外の構成については、
図37に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材については同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0113】
(第3例)
電力変換装置の第3例について説明する。
図39に示すように、電力変換装置51では、上部コア3aにはフィン5aが形成されている。下部コア3bには、フィン5bが形成されている。下部コア3bは、下部筺体11aに取り付けられている。上部コア3aは、上部筺体11bに取り付けられている。
【0114】
下部コア3bは、下部筺体11aに形成された凹部13aに嵌め込まれている。上部コア3aは、上部筺体11bに形成された凹部13bに嵌め込まれている。なお、これ以外の構成については、
図16等に示す電力変換装置51等の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0115】
(第4例)
電力変換装置の第4例について説明する。
図40に示すように、電力変換装置51では、下部筺体11aに、下部コア3bが取り付けられている。下部コア3bは、下部筺体11aに形成された凹部13aに充填剤29aを介在させて嵌め込まれている。上部筺体11bに、上部コア3aが取り付けられている。上部コア3aは、上部筺体11bに形成された凹部13bに充填剤29bを介在させて嵌め込まれている。
【0116】
なお、これ以外の構成については、
図39に示す電力変換装置51等の構成と同様なので、同一部材については同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0117】
第1例~第4例に係る電力変換装置51のそれぞれでは、コア3は、上部コア3aと下部コア3bを備え、筺体11は、上部筺体11bと下部筺体11aとを備えている。下部コア3bが下部筺体11aに取り付けられている。上部コア3aが上部筺体11bに取り付けられている。
【0118】
これにより、上部コア3aからの放熱量と、下部コア3bからの放熱量とが、同じ放熱量になるように設計することが可能になる。このため、放熱設計が簡単化されて、両者の放熱量の差がより少なくなるように冷却することが可能になる。その結果、トランスのコア3のさらなる小型化を図ることができる。また、コア3としての性能を安定させやすくすることができる。
【0119】
次に、電力変換装置のさらに他の例として、空冷または水冷による冷却構造を備えた電力変換装置のバリエーションについて説明する。
【0120】
(第5例)
電力変換装置の第5例について説明する。
図41に示すように、上部筺体11bには、空冷フィン23bが取り付けられている。下部筺体11aには、空冷フィン23aが取り付けられている。なお、これ以外の構成については、
図37に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0121】
上述した空冷フィン23a、23bは、
図37に示す電力変換装置51の他に、
図38~
図40のそれぞれに示される電力変換装置51にも適用することができる。
【0122】
(第6例)
電力変換装置の第6例について説明する。
図42に示すように、上部筺体11bには、水冷フィン25bが取り付けられている。下部筺体11aには、水冷フィン25aが取り付けられている。水冷フィン25bには、冷却流路26bが設けられている。水冷フィン25aには、冷却流路26aが設けられている。
【0123】
なお、これ以外の構成については、
図37に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。上述した水冷フィン25a、25bは、
図37に示す電力変換装置51の他に、
図38~
図40のそれぞれに示される電力変換装置51にも適用することができる。
【0124】
(第7例)
電力変換装置の第7例について説明する。
図43に示すように、上部筺体11bには、冷却流路21bが形成されている。下部筺体11aには、冷却流路21aが形成されている。なお、これ以外の構成については、
図38に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0125】
(第8例)
電力変換装置の第8例について説明する。
図44に示すように、上部筺体11bには、冷却流路21bが形成されている。下部筺体11aには、冷却流路21aが形成されている。なお、これ以外の構成については、
図40に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0126】
(第9例)
電力変換装置の第9例について説明する。
図45に示すように、電力変換装置51では、下部コア3bが、下部筺体11aに形成された凹部13aに、封止材27aを介在させて嵌め込まれている。下部コア3bと下部筺体11aとの間に冷却流路21aが形成されている。下部筺体11aには、さらに、冷却流路21aが形成されている。
【0127】
上部コア3aが、上部筺体11bに形成された凹部13bに、封止材27bを介在させて嵌め込まれている。上部コア3aと上部筺体11bとの間に冷却流路21bが形成されている。冷却流路21a、21bには、たとえば、冷却水が流される。なお、これ以外の構成については、
図22に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0128】
(第10例)
電力変換装置の第10例について説明する。
図46に示すように、電力変換装置51では、
図46に示すように、下部コア3bのフィン5bの表面に防食処理部7bが形成されている。防食処理部7bは、冷却流路21aを流れる冷却水に接触するフィン5bの部分に形成されている。
【0129】
上部コア3aのフィン5aの表面に防食処理部7aが形成されている。防食処理部7aは、冷却流路21bを流れる冷却水に接触するフィン5aの部分に形成されている。なお、これ以外の構成については、
図45に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0130】
空冷または水冷による冷却構造を備えた電力変換装置のバリエーションとして説明した第5例~第10例に係る電力変換装置では、実施の形態1~6において説明した対応する電力変換装置51による効果と同様の効果を得ることができる。
【0131】
また、上述した電力変換装置51のバリエーションでは、冷却を効率よく行い、たとえば、TIM材を充填材とするなどして筺体11の横方向への熱抵抗を下げて、筺体11のサイズをできる限り小さくすることで、冷却構造を備えた電力変換装置51の小型化を図っている。
【0132】
さらに、コア3の熱設計温度によっては、充填材としてのTIM材を用いずに、たとえば、シートまたはグリス等の簡便なTIM材を用いるようにしてもよい。また、
図11に示されるように、さらに、コア3(下部コア3b)の近傍の筺体11の部分に冷却流路を設けるようにしてもよい。
【0133】
すでに述べているように、冷却流路21には、冷却水に限られず、冷却油または不凍液を添加した液体を流すようにしてもよい。また、エアコン等に使用する冷媒を流すようにしてもよい。また、たとえば、
図15に示されているのと同様に、プリント基板31と筺体11との間にTIM材を介在させることで、プリント基板31の冷却も図ることができる。
【0134】
実施の形態7.
(第1例)
実施の形態7に係る電力変換装置の第1例について説明する。
図47に示すように、電力変換装置51では、下部コア3bが、封止材27aを介在させて下部筺体11aに取り付けられている。下部コア3bのフィン5bが、下部筺体11aから露出している。下部筺体11aには、凹部13aに加えて、下部筺体11aを貫通する開口部15aが形成されている。フィン5bは、開口部15aから露出している。下部筺体11aには、空冷フィン23aが設けられている。
【0135】
上部コア3aが、封止材27bを介在させて上部筺体11bに取り付けられている。上部コア3aのフィン5aが、上部筺体11bから露出している。上部コア3aには、凹部13bに加えて、上部筺体11bを貫通する開口部15bが形成されている。フィン5aは、開口部15bから露出している。なお、これ以外の構成については、
図25等に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0136】
上述した電力変換装置51では、上部コア3aのフィン5aと下部コア3bのフィン5bとの双方が、筺体11から露出している。これにより、コア3の冷却において、分割された上部コア3aと下部コア3bとを、同程度に冷却することができ、コア3(トランス)の小型化をさらに図ることができる。また、コア3として、特性が安定した領域で使用することができる。なお、上述した電力変換装置51では、上部筺体11bにも空冷フィンを設けるようにしてもよい。
【0137】
(第2例)
実施の形態7に係る電力変換装置の第2例について説明する。
図48に示すように、電力変換装置51では、下部コア3bのフィン5bが、下部筺体11aから露出している。露出したフィン5bの表面には、防食処理部7aが形成されている。上部コア3aのフィン5aが、上部筺体11bから露出している。露出したフィン5aの表面には、防食処理部7bが形成されている。
【0138】
なお、これ以外の構成については、
図47に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0139】
上述した電力変換装置51では、第1例に係る電力変換装置51による効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、露出したフィン5a、5bのそれぞれの表面には、防食処理部7a、7bが形成されている。これにより、たとえば、腐食性ガスが発生するおそれの環境下においても強い耐性を有することができる。
【0140】
また、第1例および第2例では、すでに述べたように、たとえば、
図15に示されているのと同様に、プリント基板31と筺体11との間にTIM材を介在させることで、プリント基板31の冷却も図ることができる。
【0141】
(第3例)
実施の形態7に係る電力変換装置の第3例について説明する。第3例に係る電力変換装置では、下方に向かって延びる空冷フィン23aの長さが、第1例に係る電力変換装置における空冷フィン23aの長さと異なる。
図49に示すように、第3例に係る電力変換装置51における下部筺体11aでは、空冷フィン23aは、フィン5bの下端よりも上方に位置するように形成されている。
【0142】
なお、これ以外の構成については、
図47に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0143】
上述した電力変換装置51では、空冷フィン23aがフィン5bの下端よりも上方に位置することで、冷却効果に加えて電力変換装置51の小型化を図ることができる。
【0144】
(第4例)
実施の形態7に係る電力変換装置の第4例について説明する。第4例に係る電力変換装置では、下方に向かって延びる空冷フィン23aの長さが、第2例に係る電力変換装置における空冷フィン23aの長さと異なる。
図50に示すように、第4例に係る電力変換装置51における下部筺体11aでは、空冷フィン23aは、フィン5bの下端よりも上方に位置するように形成されている。
【0145】
なお、これ以外の構成については、
図48に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0146】
上述した電力変換装置51では、空冷フィン23aがフィン5bの下端よりも上方に位置することで、冷却効果に加えて電力変換装置51の小型化を図ることができる。
【0147】
実施の形態8.
実施の形態8に係る電力変換装置51について説明する。
図51に示すように、コア3は、上部コア3aと下部コア3bとを備えている。上部コア3aは、アルファベットの「I」の形状を有するI型である。下部コア3bは、アルファベットの「E」の形状を有するE型である。E型の下部コア3bは、3つの脚部3bbを有する。
【0148】
プリント基板31には、脚部3bbに対応する貫通穴31aが形成されている。上部コア3aと下部コア3bとは、脚部3bbを貫通穴31aに挿通させて、プリント基板31を挟み込む態様で対向するように配置される。なお、これ以外に構成については、
図1~
図3等に示す電力変換装置51の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0149】
上述した電力変換装置51では、I型の上部コア3aには、フィン5aが形成されている。これにより、上部コア3aの熱は、フィン5aによって放熱される。下部コア3bは、筺体11(
図2等参照)へ接触している。また、下部コア3bは、TIM材19(
図2等参照)を介して筺体11へ嵌め込まれている。これにより、下部コア3bの熱は、筺体11によって放熱される。その結果、コア3の熱が効率的に放熱されて、コア3を冷却することができる。
【0150】
また、コア3における上部コア3aでは、フィン5aは、磁路に沿うように一方向に延在している。これにより、実施の形態1等において説明したように、フィン5aは磁路が形成されるコアとしての断面積を確保することができ、たとえば、トランスまたはリアクトルとして、安定した特性を得ることができる。
【0151】
上述した電力変換装置51では、さらに、生産性を大幅に向上させることができる。このことについて説明する。
【0152】
一般的に、コアは、ダストコアまたはフェライトコア等の数100μm以下の粒状の素材を所望の形状に押し固め、焼結することによって形成される。このため、コアの生産性は比較的良いとされる。
【0153】
上述したように、I型の上部コア3aは、一方向に延在し、一方向と交差する他の方向に沿った第1断面形状としての断面形状は、一方向に延在する上部コア3aの全長にわたり同一形状である。また、E型の下部コア3bは、他の方向に延在し、一方向に沿った第2断面形状としての断面形状は、他の方向に延在する下部コア3bの全長にわたり同一形状である。なお、同一形状とは、幾何学的(数学的)に同一であることを意図するものではなく、たとえば、製造上の誤差等を含む。
【0154】
このような形状により、上部コア3aおよび下部コアのそれぞれは、一つの方向に沿って材料を圧縮する圧縮成形による製造が可能となる。また、一つの方向に沿って材料を押し出しする押出成形による製造が可能となる。
【0155】
圧縮成形による製造方法について説明する。まず、上部コアを成形する金型(図示せず)と下部コアを成形する金型(図示せず)とに、粒状の素材を充填する。次に、
図52に示すように、上部コアとなる金型内に充填された粒状の素材を、矢印Y1に示す方向に圧縮することによって、上部コア3aが成形される。また、
図53に示すように、下部コアとなる金型内に充填された粒状の素材を、矢印Y2に示す方向に圧縮することによって、下部コア3bが成形される。その後、成形された上部コア3aと下部コア3bとを焼き込むことで、上部コア3aと下部コア3bとが完成する。
【0156】
次に、押出成形による製造方法ついて説明する。まず、粒状の素材を上部コアとなる成形体を成形する押出型(図示せず)に充填する。また、粒状の素材を下部コアとなる成形体を成形する押出型(図示せず)に充填する。次に、圧力を付与しながらそれぞれの押出型から成形体を押し出す(矢印Y1:
図54参照、矢印Y2:
図55参照)。
【0157】
これにより、
図54に示すように、押出方向と交差する方向の断面形状が全長にわたって同じ形状の、上部コア3aとなるI型の成形体2aが形成される。また、
図55に示すように、押出方向と交差する方向の断面形状が全長にわたって同じ形状の、下部コア3bとなるE型の成形体2bが形成される。
【0158】
次に、
図54に示すように、I型の成形体2aを所望の長さLに切断することによって、上部コア3aが形成される。また、
図55に示すように、E型の成形体2bを所望の長さLに切断することによって、下部コア3bが形成される。その後、所望の長さLにそれぞれ切断された上部コア3aと下部コア3bとを焼き込むことで、上部コア3aと下部コア3bとが完成する。
【0159】
圧縮成形による製造方法では、金型内に充填された素材を一つの方向に圧縮することによって、上部コア3aと下部コア3bとを形成することができ、生産性が向上し、コア3の生産コストを低減することができる。
【0160】
押出成形による製造方法では、押出型に充填された素材を一つの方向に押し出すことで、複数の上部コアとなる成形体を連続的に形成することができる。また、複数の下部コアとなる成形体を連続的に形成することができる。これにより、生産性を大幅に向上させることができる。
【0161】
また、成形体を切断する長さを変えることで、仕様の異なる上部コアまたは下部コアにも適用することができる。これにより、押出型の共用化も図ることができ、生産設備への投資も抑えることが可能になる。
【0162】
さらに、このような圧縮成形による製造方法または押出成形による製造方法を適用することで、熟練した技能を要することなく、形状精度の高い上部コア3aと下部コア3bとを比較的容易に製造することができる。その結果、コストを増大させることなくコア3の品質を均一に、かつ安定に保つことができる。
【0163】
なお、圧縮成形による製造方法または押出成形による製造方法において必要とされるフィン5aの取り出しやすさ(抜き勾配)については、
図6について説明したとおりである。また、実施の形態1等において説明したコア3については、2つの方向からの圧縮によって容易に製造することができる。
【0164】
たとえば、
図3に示された上部コア3aを製造する場合には、
図56に示すように、矢印Y3に示す方向と矢印Y4に示す方向とに圧縮することで製造することができる。矢印Y3に示す方向は、フィン5aが延在する方向と交差する方向であり、フィン5aを圧縮成形する方向である。矢印Y4に示す方向は、脚部3aaを有する上部コア3aが延在する方向である。
【0165】
(電力変換装置の適用例)
ここでは、実施の形態7における第1例または第2例に係る電力変換装置を適用したパワーエレクトロニクス機器の一例について説明する。
【0166】
図57に示すように、電力変換装置51を搭載したパワーエレクトロニクス機器71が、車輪77を有する走行機器73に取り付けられている。電力変換装置51のコア3のフィン5a、フィン5b(
図47~
図50参照)と空冷フィン23aとが露出している。パワーエレクトロニクス機器71の周辺には、風路用ガイド75a、75bが配置されている。走行機器73が走行(右向き矢印参照)する際に、風路用ガイド75a、75bによって、フィン5a、5bおよび空冷フィン23aに空気(左向き矢印参照)が導かれることになる。
【0167】
上述したパワーエレクトロニクス機器71が取り付けられた走行機器73では、風路用ガイド75aと走行機器73との間のパワーエレクトロニクス機器71が配置されている領域の断面積が、風路用ガイド75aの入り口側および出口側の断面積と比べて小さい。
【0168】
このため、パワーエレクトロニクス機器71が配置されている領域を流れる空気の速度が、風路用ガイド75aの入り口側および出口側のそれぞれの領域を流れる空気の速度よりも速くなる。これにより、パワーエレクトロニクス機器71が配置されている領域が負圧となって、空気が吸い込まれやすくなり、電力変換装置51が効果的に冷却されることになる。
【0169】
なお、パワーエレクトロニクス機器71の走行機器73への取り付け態様として、風路用ガイド75a等を設けずに、パワーエレクトロニクス機器71の全体を露出させる取り付け態様も可能である。ただ、この場合には、走行時に巻き上げる土埃または砂埃、さらには、雨水等からパワーエレクトロニクス機器71を防護するラビリンス構造(図示せず)を採用することが望ましいが、コストを要することになる。コスト削減の観点からでは、風路用ガイド75a等を設けて負圧によって空気を送り込むことが望ましい。
【0170】
また、風路用ガイド75a等の配置構造としては、走行機器73の双方向の動きに対して同じ冷却効果が得られるように、吸込み口の形状と吐き出し口の形状とを同じ形状にすることが望ましい。
【0171】
なお、各実施の形態において説明した冷却構造を適用した電力変換装置については、必要に応じて種々組み合わせることが可能である。
【0172】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本開示は上記で説明した範囲ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明は、磁気回路部品としてのコアを適用した電力変換装置に有効に利用される。
【符号の説明】
【0174】
1 コアの冷却構造、2a、2b 成形体、3 コア、3a 上部コア、3aa 脚部、5a フィン、7a 防食処理部、3b 下部コア、3bb 脚部、5b フィン、7b 防食処理部、11 筺体、13 凹部、15 開口部、17 段付き部、19 TIM材、20 緩衝材、21 冷却流路、23 空冷フィン、27 封止材、29 充填材、11a 下側筺体、11b 上側筺体、13a 凹部、15a 開口部、19a TIM材、21a 冷却流路、23a 空冷フィン、25a 水冷フィン、26a 冷却流路、27a 封止材、29a 充填材、13b 凹部、15b 開口部、19b TIM材、21b 冷却流路、23b 空冷フィン、25b 水冷フィン、26b 冷却流路、27b 封止材、29b 充填材、31 プリント基板、31a 貫通穴、33 配線パターン、33a 配線パターン、33b 配線パターン、41 支柱、51 電力変換装置、53 スイッチング素子、55 ダイオード、57 トランス、61 水冷装置、63 冷却器、65 圧縮機、66 放熱部、67 減圧部、69 回収部、71 パワーエレクトロニクス機器、73 走行機器、75 風路用ガイド、77 車輪、Y1、Y2、Y3、Y4 矢印。