(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電子的に選択可能な組織の深さ分析のオキシメトリプローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20221219BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61B5/1455
G01N21/27 Z
(21)【出願番号】P 2018555232
(86)(22)【出願日】2017-04-20
(86)【国際出願番号】 US2017028699
(87)【国際公開番号】W WO2017184906
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-03-18
(32)【優先日】2016-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507416414
【氏名又は名称】ビオプティックス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VIOPTIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベクテル,ケイト・リーアン
(72)【発明者】
【氏名】キーティング,ジェニファー・エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】コールリッジ,スコット
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-528334(JP,A)
【文献】米国特許第08938279(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第19923657(DE,A1)
【文献】特表2015-529520(JP,A)
【文献】特表2015-514446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドヘルドのオキシメータハウジングを提供することと、
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジングに収容されるプロセッサを提供することと、
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容され、前記プロセッサに電子的に結合されるメモリを提供することと、
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジングの外部からアクセス可能であり、前記プロセッサに電子的に結合されるディスプレイを提供することと、
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容されるバッテリを提供することと、
前記バッテリに、前記プロセッサ、前記メモリ、および前記ディスプレイに対して電力を供給させることと、
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に少なくとも部分的に収容されるプローブ先端を提供することと、
前記プローブ先端の面上に
おいて直線上に配置された第1の源構造体
および第2の源構造体を設けることと、
前記プローブ先端の面上に複数の検出器構造体を設けることと
を備え、前記複数の検出器構造体のうちの第1の数の検出器構造体は、前記直線の第1の側に配置され、前記複数の検出器構造体のうちの第2の数の検出器構造体は、前記直線の第2の側に配置され、前記直線の前記第1の側および前記第2の側は、前記直線において互いに反対側であり、前記第1の数と前記第2の数とは等しく、前記直線の前記第1の側にある前記検出器構造体は、前記第2の側にある前記検出器構造体の各々に対して、前記直線上にある点の周りに対称であり、
前記源構造体に、第1の波長を有する第1の光および第2の波長を有する第2の光を、測定されるべき組織内に照射させることとを備え、前記第1の波長は前記第2の波長よりも短く、さらに、
閾値距離よりも前記源構造体に近
く、かつ対称的な検出を生成するために前記点の周りに対称である検出器構造体による前記第1の光の検出を可能にすることと、
前記プロセッサによって、前記検出された第1の光に基づいて、前記閾値距離よりも前記源構造体に近い検出器構造体によって生成される第1の検出器応答を、前記メモリに記憶される複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、
前記プロセッサによって、前記第1の検出器応答に対する前記シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線に基づいて、測定されるべき組織の第1の組織について第1の測定情報を判断することと、
前記閾値距離よりも前記源構造体から遠
く、かつ対称的な検出を生成するために前記点の周りに対称である検出器構造体による前記第2の光の検出を可能にすることと、
前記プロセッサによって、前記検出された第2の光に基づいて、前記閾値距離よりも前記源構造体から遠い検出器構造体によって生成される第2の検出器応答を、前記メモリに記憶される前記複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、
前記プロセッサによって、前記第2の検出器応答に対する前記シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線に基づいて、第2の測定情報を判断することと、
前記プロセッサを介して、前記閾値距離よりも前記源構造体から遠い前記検出器構造体によって検出される前記第2の光に基づいて、前記測定されるべき組織の第2の組織について第2の測定情報を判断することと、
前記第1の測定情報に基づいて、前記組織の表面から下の第1の深さにおける第1の組織領域のための第1の酸素飽和度の測定値を計算するとともに前記ディスプレイに表示することと、
前記第2の測定情報に基づいて、前記組織の表面から下の第2の深さにおける第2の組織領域のための第2の酸素飽和度の測定値を計算するとともに前記ディスプレイに表示することと、
前記第1の測定情報および前記第2の測定情報に基づいて、前記組織の表面から下の前記第1の深さおよび前記第2の深さの組み合わせにおける第3の組織領域のための第3の酸素飽和度の測定値を計算するとともに前記ディスプレイに表示することとを備え、
前記第1の組織領域は、前記測定されるべき組織の表面より下の第1の深さであり、前記第2の組織領域は、前記測定されるべき組織の表面より下の第2の深さであり、前記第1の深さは、前記第2の深さよりも小さい、方法。
【請求項2】
前記第1の測定情報は第1の酸素測定情報であり、前記第2の測定情報は第2の酸素測定情報である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容され、前記プロセッサに結合されるマルチプレクサを提供することと、
前記マルチプレクサに、前記閾値距離よりも前記源構造体に近い検出器構造体から信号を前記プロセッサに経路付けるさせることとを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マルチプレクサに、前記閾値距離よりも前記源構造体から遠い検出器構造体から信号を前記プロセッサに経路付けないようにさせることを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記検出器構造体は前記源構造体から平均距離を有し、前記閾値距離は前記平均距離である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ハンドヘルドのオキシメータハウジングと、
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジングに収容されるプロセッサと、
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容され、前記プロセッサに電子的に結合され、複数のシミュレート反射率曲線を記憶するメモリと、
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジングの外部からアクセス可能であり、前記プロセッサに電子的に結合されるディスプレイと、
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容されるバッテリとを備え、前記バッテリは前記プロセッサ、前記メモリ、および前記ディスプレイに結合され、前記プロセッサ、前記メモリ、および前記ディスプレイに電力を供給し、さらに、
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に少なくとも部分的に収容されるプローブ先端と、
前記プローブ先端の面上
において直線上に配置された第1の源構造体
および第2の源構造体と、
前記プローブ先端の面上の複数の検出器構造体とを備え、
前記複数の検出器構造体のうちの第1の数の検出器構造体は、前記直線の第1の側に配置され、前記複数の検出器構造体のうちの第2の数の検出器構造体は、前記直線の第2の側に配置され、前記直線の前記第1の側および前記第2の側は、前記直線において互いに反対側であり、前記第1の数と前記第2の数とは等しく、前記直線の前記第1の側にある前記検出器構造体は、前記第2の側にある前記検出器構造体の各々に対して、前記直線上にある点の周りに対称であり、
前記プロセッサは、
閾値距離よりも前記源構造体に近
く、かつ対称的な検出を生成するために前記点の周りに対称である検出器構造体による第1の光の検出を可能にすることと、
前記プロセッサによって、前記検出された第1の光に基づいて、前記閾値距離よりも前記源構造に近い検出器構造体によって生成される第1の検出器応答を、前記メモリに記憶される前記複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、
前記プロセッサによって、前記第1の検出器応答に対する前記シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線に基づいて、測定されるべき組織の第1の組織について第1の測定情報を判断することと、
前記閾値距離よりも前記源構造体から遠
く、かつ対称的な検出を生成するために前記点の周りに対称である検出器構造体による第2の光の検出を可能にすることと、
前記プロセッサによって、前記検出された第2の光に基づいて、前記閾値距離よりも前記源構造から遠い検出器構造体によって生成される第2の検出器応答を、前記メモリに記憶される前記複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、
前記プロセッサによって、前記第2の検出器応答に対する前記シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線に基づいて、第2の測定情報を判断することと、
前記プロセッサを介して、前記閾値距離よりも前記源構造から遠い前記検出器構造体によって検出される前記第2の光に基づいて、前記測定されるべき組織の第2の組織について第2の測定情報を判断することと、
前記第1の測定情報に基づいて、前記組織の表面から下の第1の深さにおける第1の組織領域のための第1の酸素飽和度の測定値を計算するとともに前記ディスプレイに表示することと、
前記第2の測定情報に基づいて、前記組織の表面から下の第2の深さにおける第2の組織領域のための第2の酸素飽和度の測定値を計算するとともに前記ディスプレイに表示することと、
前記第1の測定情報および前記第2の測定情報に基づいて、前記組織の表面から下の前記第1の深さおよび前記第2の深さの組み合わせにおける第3の組織領域のための第3の酸素飽和度の測定値を計算するとともに前記ディスプレイに表示することとのために適合され、
前記第1の組織領域は、前記測定されるべき組織の表面より下の第1の深さであり、前記第2の組織領域は、前記測定されるべき組織の表面より下の第2の深さであり、前記第1の深さは、前記第2の深さよりも小さい、装置。
【請求項7】
前記第1の測定情報は第1の酸素測定情報であり、前記第2の測定情報は第2の酸素測定情報である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容され、前記プロセッサに結合されるマルチプレクサを備え、前記プロセッサは、前記マルチプレクサに、前記閾値距離よりも前記源構造体に近い検出器構造体から信号を前記プロセッサに経路付けるさせることに対して適合される、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記マルチプレクサに、前記閾値距離よりも前記源構造体から遠い検出器構造体から信号を前記プロセッサに経路付けないようにさせることに対して適合される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記検出器構造体は前記源構造体から平均距離を有し、前記閾値距離は前記平均距離である、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の酸素飽和度測定値、前記第2の酸素飽和度測定値または前記第3の酸素飽和度測定値を判断するために、前記測定されるべき組織の組織深さのユーザ選択を与えることを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセッサによって、前記第2の検出器応答に対する前記シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線に基づいて、前記第2の測定情報を判断することは、
残差二乗和計算を実行して、最低適合誤差を有する特定の反射率データ曲線を求めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記プロセッサと前記検出器構造体との間に結合されたマルチプレクサを提供することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記プロセッサは、
前記第1の酸素飽和度測定値、前記第2の酸素飽和度測定値または前記第3の酸素飽和度測定値を判断するために、前記測定されるべき組織の組織深さのユーザ選択を与えるように適合される、請求項6に記載の装置。
【請求項15】
前記プロセッサと前記検出器構造体との間に結合されたマルチプレクサをさらに備える、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載
関連出願への相互参照
この出願は、2016年4月20日に出願された米国特許出願第62/325,403号、第62/325,416号、第62/325,413号、2016年4月21日に出願された米国特許出願第62/325,919号、2016年4月22日に出願された第62/326,630号、第62/326,644号、第62/326,673号、2016年7月18日に出願された第62/363,562号の利益を主張する。これらの出願は、これらの出願に引用されている他のすべての参考文献と共に、ここに引用により援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、異なる組織深さをプロービングするためにユーザが選択できる源-検出器間隔を有する源および検出器を含むか、異なる組織深さをプロービングするためにユーザが選択できる波長の光(可視光、IR、またはその両方)を照射する源を有するか、またはその両方である、コンパクトでハンドヘルドのオキシメータプローブなどのような、オキシメータプローブに関する。
【0003】
オキシメータは、さまざまな目的でヒトおよび生体内の組織酸素飽和度を測定するために用いられる医療機器である。たとえば、オキシメータは、病院および他の医療施設において医療および診断目的で(たとえば手術のための手術室、患者監視のための術後室、またはたとえば低酸素症について監視する救急車もしくは他の移動型監視)、競技場においてスポーツおよび運動目的で(たとえばプロのスポーツ選手監視)、個人の私的なまたは自宅での監視に(たとえば局所的組織の健康状態、領域的組織の健康状態、全体的な健康監視、またはマラソンのための人のトレーニング)、ならびに獣医用途で(たとえば動物監視)用いられる。
【0004】
特に、領域および局所レベルの両方で患者の組織酸素飽和度を評価することは、それが患者の局所的および領域的な組織健康状態の指標であり、一般的な健康の指標となり得るので、重要である。ゆえに、オキシメータは、患者の組織酸素化状態が不安定であると疑われ得る手術中および回復期などの臨床設定で用いられることが多い。たとえば、手術中、オキシメータはさまざまな理想的でない状況下で正確な組織酸素飽和度測定を迅速に果たすことが可能でなければならない。既存のオキシメータは、絶対精度がそれほど重要でなくトレンドデータのみで十分である手術後の組織監視には十分であるが、組織が生存可能であるかまたは除去する必要があるかを判断するために抜取検査が用いられ得る手術中は精度が求められる。
【0005】
パルスオキシメータおよび組織オキシメータは、異なる原理で動作する2種類のオキシメータである。パルスオキシメータは機能するために脈拍が必要である。パルスオキシメータは典型的に、脈動動脈血によって吸光度を測定する。これに対して、組織オキシメータは機能するために脈拍は不要であり、血液供給から切離された組織弁の組織酸素飽和度測定を行うために用いられ得る。
【0006】
ヒト組織は、一例として、さまざまな光吸収分子を含む。そのような発色団は、酸素化および脱酸素化ヘモグロビン、メラニン、水、脂質、ならびにシトクロムを含む。酸素化および脱酸素化ヘモグロビンは、可視および近赤外スペクトル範囲のほとんどについて組織内の最も優勢な発色団である。光吸収は、光の一定の波長において酸素化および脱酸素化ヘモグロビンについて大きく異なる。組織オキシメータは、これらの光吸収の差を利用することによって、ヒト組織内の酸素レベルを測定し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存のオキシメータの成功にもかかわらず、既存のオキシメータの成功にもかかわらず、たとえば、特定の組織深さを分析するために選択可能な源-検出器距離を有するか、異なる組織深さをプロービングするためにユーザが選択できる波長の光(可視光、IR、またはその両方)を照射するか、またはその両方であるオキシメータを提供することによって、オキシメータを改善する要求が続いている。したがって、改善された組織オキシメトリ装置およびこれらの装置を使用して測定を行う方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の概要
オキシメータプローブが、組織の特定の組織深さを分析するために提供され、オキシメータプローブは、ユーザ選択可能な源-検出器距離を有するか、異なる組織深さをプロービングするためにユーザが選択できる波長の光(可視光、IR、またはその両方)を照射するか、またはその両方である。オキシメータプローブは、自己完結型光学素子(源および検出器)、コンピュータ処理、ディスプレイ、および自己完結型使用のための電源(バッテリ)を有する。
【0009】
選択可能な組織深さ分析により、ユーザは、オキシメータを使用しながら変動され得る特定の組織深さの酸素濃度測定を行うことができる。たとえば、オキシメータは、乳房組織のような組織を再建するために使用されている組織弁上でオキシメータ測定を行うように設定することができ、組織弁が取り付けられる、組織弁の下の組織のオキシメータ測定を行うように用いることができる。これにより、ユーザは、組織弁が患者に再付着するように生き残れるよう、組織弁が健康で再建に使用できるかどうか、および組織弁が接続されている組織が適切に健康であるかどうかを判断できる。
【0010】
ある実現例では、ある方法は、ハンドヘルドのオキシメータハウジングを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジングに収容されるプロセッサを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容され、プロセッサに電子的に結合されるメモリを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジングの外部からアクセス可能であり、プロセッサに電子的に結合されるディスプレイを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容されるバッテリを提供することと、バッテリに、プロセッサ、メモリ、およびディスプレイに対して電力を供給させることとを備える。
【0011】
プローブ先端が設けられ、プローブ先端は、プローブ先端の面上に第1の源構造と、第1のプローブ先端の面上に複数の検出器構造とを含む。この方法は、源構造に、第1の波長を有する第1の光および第2の波長を有する第2の光を、測定されるべき組織内に照射させることを備え、第1の波長は第2の波長よりも短い。
【0012】
この方法は、閾値距離よりも源構造体に近い検出器構造体による第1の光の検出を可能にすることと、プロセッサを介して、閾値距離よりも源構造に近い検出器構造によって検出される第1の光に基づいて、測定されるべき組織の第1の組織について第1の測定情報を判断することとを備える。
【0013】
この方法は、閾値距離よりも源構造体から遠い検出器構造体による第2の光の検出を可能にすることと、プロセッサを介して、閾値距離よりも源構造から遠い検出器構造によって検出される第2の光に基づいて、測定されるべき組織の第2の組織について第2の測定情報を判断することとを備える。第1の組織は、測定されるべき組織の表面より下の第1の深さであり、第2の組織は、測定されるべき組織の表面より下の第2の深さであり、第1の深さは、第2の深さよりも小さい。
【0014】
ある実現例では、オキシメータプローブは、ハンドヘルドのオキシメータハウジングと、ハンドヘルドのオキシメータハウジングに収容されるプロセッサと、ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容され、プロセッサに電子的に結合されるメモリと、ハンドヘルドのオキシメータハウジングの外部からアクセス可能であり、プロセッサに電子的に結合されるディスプレイと、ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容されるバッテリとを備え、バッテリはプロセッサ、メモリ、およびディスプレイに結合され、プロセッサ、メモリ、およびディスプレイに電力を供給する。
【0015】
オキシメータプローブは、ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に少なくとも部分的に収容されるプローブ先端を備える。プローブ先端は、プローブ先端の面上の第1の源構造と、第1のプローブ先端の面上の複数の検出器構造とを備える。プロセッサは、源構造に、第1の波長を有する第1の光および第2の波長を有する第2の光を、測定されるべき組織内に照射させることに対して適合される。第1の波長は第2の波長よりも短い。
【0016】
プロセッサは、閾値距離よりも源構造体に近い検出器構造体による第1の光の検出を可能にすることと、閾値距離よりも源構造に近い検出器構造によって検出される第1の光に基づいて、測定されるべき組織の第1の組織について第1の測定情報を判断することとのために適合される。プロセッサは、閾値距離よりも源構造体から遠い検出器構造体による第2の光の検出を可能にすることと、閾値距離よりも源構造から遠い検出器構造によって検出される第2の光に基づいて、測定されるべき組織の第2の組織について第2の測定情報を判断することとのために適合される。第1の組織は、測定されるべき組織の表面より下の第1の深さであり、第2の組織は、測定されるべき組織の表面より下の第2の深さであり、第1の深さは、第2の深さよりも小さい。
【0017】
ある実現例では、ある方法は、ハンドヘルドのオキシメータハウジングを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジングに収容されるプロセッサを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容され、プロセッサに電子的に結合されるメモリを提供することとを備え、メモリは、シミュレート反射率曲線を記憶し、方法はさらに、ハンドヘルドのオキシメータハウジングの外部からアクセス可能であり、プロセッサに電子的に結合されるディスプレイを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容されるバッテリを提供することと、バッテリに、プロセッサ、メモリ、およびディスプレイに対して電力を供給させることとを備える。
【0018】
ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に少なくとも部分的に収容されるプローブ先端が設けられる。この方法は、プローブ先端の面上に源構造を設けることと、第1のプローブ先端の面上に複数の検出器構造を設けることとを備える。
【0019】
この方法は、源構造に、測定されるべき組織内に光を照射させることと、検出器構造に、測定されるべき組織からの反射に続いて光を検出させることと、検出器構造に、検出器構造によって検出された光から反射率測定値を生成させることとを備える。
【0020】
プロセッサは、反射率測定値の第1の部分をシミュレート反射率曲線に適合させ、反射率データの第1の部分は、閾値距離よりも源構造に近い検出器構造の第1の部分によって生成される。
【0021】
プロセッサは、反射率測定値の第2の部分をシミュレート反射率曲線に適合させ、反射率データの第2の部分は、検出器構造の第1の部分、および検出器構造の第1のさらなる検出器構造によって生成される。検出器構造のうちの第1のさらなる検出器構造は、閾値距離よりも源構造から遠い。
【0022】
プロセッサは、反射率測定値の第1の部分の適合が反射率測定値の第2の部分の適合よりもより近い適合であるかどうかを判断する。反射率データの第1の部分の適合が反射率測定値の第2の部分よりも近い適合である場合、プロセッサは、反射率データの第1の部分を使用して組織の第1の光学特性を判断し、ディスプレイ上に第1の光学特性を表示する。
【0023】
プロセッサは、反射率測定値の第3の部分をシミュレート反射率曲線に適合させる。反射率データの第3の部分は、検出器構造の第1の部分、検出器構造の第1のさらなる検出器構造、および検出器構造の第2のさらなる検出器構造によって生成される。検出器構造の第2のさらなる検出器構造は、源構造から閾値距離を通り過ぎて、検出器構造の第1のさらなる検出器構造よりも遠くにある。
【0024】
プロセッサは、反射率測定値の第2の部分の適合が反射率測定値の第3の部分の適合よりもより近い適合であるかどうかを判断する。反射率データの第2の部分の適合が反射率測定値の第3の部分よりも近い適合である場合、プロセッサは、反射率データの第2の部分を使用して組織の第2の光学特性を判断し、ディスプレイ上に第2の光学特性を表示する。
【0025】
反射率データの第3の部分の適合が反射率測定値の第2の部分よりも近い適合である場合、プロセッサは、反射率データの第3の部分を使用して組織の第3の光学特性を判断し、ディスプレイ上に第3の光学特性を表示する。
【0026】
ある実現例では、ある方法は、ハンドヘルドのオキシメータハウジングを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジングに収容されるプロセッサを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容され、プロセッサに電子的に結合されるメモリを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジングの外部からアクセス可能であり、プロセッサに電子的に結合されるディスプレイを提供することと、ハンドヘルドのオキシメータハウジング内に収容されるバッテリを提供することと、バッテリに、プロセッサ、メモリ、およびディスプレイに対して電力を供給させることとを備える。
【0027】
第1の配列を有する第1の源構造と第1の複数の検出器構造とを含む第1のプローブ先端が提供される。この方法は、第1のプローブ先端をハンドヘルドのオキシメータハウジングに結合することを備える。第2の配列を有する第2の源構造と第2の複数の検出器構造とを含む第2のプローブ先端が提供される。第1および第2の配列は異なる配列である。この方法は、第1のプローブ先端の第2のプローブ先端との置き換えを、第2のプローブ先端をハンドヘルドのオキシメータハウジングに結合することによって行って、第1の配列を第2の配列に変更することを備える。
【0028】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を考慮することにより明らかになるであろう。図面において、同様の参照記号は図面全体にわたって同様の特徴を表す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】オキシメータプローブと、いくつかの組織深さをプロービングするための照射された放射と検出された放射とを示す。
【
図1B】実現例におけるプローブ先端の端面図を示す。
【
図1C】実現例におけるオキシメータプローブ101のブロック図を示す。
【
図2】オキシメータプローブによって分析することができるさまざまな組織深さの図を示す。
【
図3】単一の検出器および検出器の組み合わせを用いたオキシメータプローブによってプロービングされる組織の異なる組織深さの別の図を示す。
【
図4】実現例におけるオキシメータプローブのブロック図である。
【
図5】2つの源S1およびS2と8つの検出器D1~D8とを円形の構成で含むプローブ先端のプローブ面を示す。
【
図6】プローブ先端がプローブユニットから取り外し可能であり、プローブユニットが異なるプローブ先端で置き換えられ得るオキシメータプローブを示す。
【
図7】ベースユニットと、プローブ先端を含む取り外し可能なケーブルとを含む組織オキシメータを示す。
【
図8】2つの異なる源-検出器間隔を有する2つの異なるプローブ先端のブロック図を示す。
【
図9】検出器構造のうちの選択されたものによって生成された反射率データを重み付けする方法のフロー図を示す。
【
図10】複数のモンテカルロシミュレーション反射率曲線の例示的なグラフである。
【
図11A】組織オキシメトリ装置が光学特性を判断するために反射率データおよびシミュレート反射率曲線を使用する、組織オキシメトリ装置による組織(たとえば、実際の組織)の光学特性を判断するための方法のフロー図である。
【
図11B】1つの実現例に従って、微細グリッドにおいて反射率データ点に最もよくあてはまる特定のシミュレート反射率曲線を見つける方法のフロー図である。
【
図12】組織オキシメトリ装置によって実際の組織の光学特性および組織特性を判断する別の方法のフロー図である。
【
図13】選択検出器によって生成された反射率データを重み付けする方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な記載
本発明は、一般に、組織酸素を測定するための無線ハンドヘルド式オキシメータプローブに関する。 オキシメータプローブは、組織の異なる組織深さから組織酸素飽和度を測定するために様々にアクセスすることができる源および複数の検出器を有する。
【0031】
図1Aは、ハンドヘルドのオキシメータプローブ101を示す。 このオキシメータプローブは、標的組織の組織酸素飽和度測定を行うために使用される。 ある実現例では、オキシメータプローブは組織オキシメータであるが、他の実現例では、オキシメータプローブはパルスオキシメータであってもよい。オキシメータプローブ101は2つの部分、すなわちプローブユニット105とプローブ先端110とを有する。
【0032】
ハンドヘルドのオキシメータプローブは、スポット測定、医院、スポーツイベント(個人的および職業的スポーツ用途など)、自宅、退職者コミュニティ、ホスピスケア、最初の対応者(たとえば、医療補助員、救急医療技術者、救急車での処置、消防士など)、術前ケア、術後ケア、小児ケア、老人ケア、医療リハビリセンター、獣医学的使用および他の使用などのための手術のための無菌環境など、さまざまな環境で使用できる。使用環境は、無菌から、概ね衛生的で清浄な環境(たとえば、病院内の非無菌回復室、医院、その他の医療機関、家庭用およびその他の環境)、および典型的には衛生的ではない、泥、塵、砂および埃っぽい環境、雪(スキー場、スキーパトロール、登山など)、雨、氷、身体に近い水域(水泳プール、海岸、ボートなど)のような環境にまで及び得る。
【0033】
オキシメータプローブは、ディスプレイ115(たとえば、LCDディスプレイ)およびボタン120を有する。ボタンが押されると、光がプローブ先端で測定対象組織内に照射され、標的組織からの反射光がプローブ先端で受光される。透過および受光された光は、オキシメータプローブによって処理され、組織の組織酸素飽和度を判断する。受光された光から、プローブは、その組織について、測定された組織酸素飽和度を判断する。測定された組織酸素飽和度の指標(たとえば、数値)がディスプレイ上に表示される。
【0034】
オキシメータプローブは人間工学的に形状化され、ユーザの手に快適にフィットする。使用中、プローブは、ユーザの手の中でユーザの親指と他の指との間で保持される。プローブ先端の面(図示せず)がユーザとは反対方向を向き、測定対象の標的組織の方を向いているとき、ディスプレイはユーザの目の方に向いている。
【0035】
一実現例では、光145がプローブ先端の源から標的組織内に透過され、光150が反射されてプローブ先端に戻され、光は1つ以上の検出器によって検出される。検出器は、源からの距離が増大する位置に配置される。検出器によって検出される光は、源からの検出器の距離が増加するにつれて増加する組織内の深さから反射されて戻る。
【0036】
プローブユニットは、異なる組織深さでの組織酸素飽和度を判断するために、検出器の1つまたは検出器の組み合わせから反射光についての測定情報を収集することができる。
【0037】
図1Bは、実現例におけるプローブ先端110の端面図を示す。プローブ先端110は、組織酸素濃度測定が行われるべき組織(たとえば、患者の皮膚)に接触するように構成される。プローブ先端110は、第1および第2の源構造120aおよび120b(概して源構造120)と、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の検出器構造125a~125h(概して検出器構造125)とを含む。代替的実現例では、オキシメータプローブは、より多くのもしくはより少ない源構造を含むか、より多くのもしくはより少ない検出器構造を含むか、またはその両方を含む。
【0038】
各源構造120は、光(たとえば、赤外光)を照射するように適合され、照射される光を生成する4つの光源のような、1つ以上の光源を含む。各光源は、1つ以上の波長の光を照射することができる。各光源は、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、有機発光ダイオード(OLED)、量子ドットLED(QMLED)、または他のタイプの光源を含むことができる。
【0039】
各源構造は、光源をプローブ先端の面127に光学的に結合する1つ以上の光ファイバを含むことができる。一実現例では、各源構造は4つのLEDを含み、4つのLEDをプローブ先端の面に光学的に結合する単一の光ファイバを含む。代替的実現例では、各源構造は、LEDをプローブ先端の面に光学的に結合する2つ以上の光ファイバ(たとえば、4つの光ファイバ)を含む。
【0040】
各検出器構造は、1つ以上の検出器を含む。一実現例では、各検出器構造は、源構造から照射され、組織から反射された光を検出するように適合された単一の検出器を含む。検出器は、光検出器、光抵抗器、または他のタイプの検出器とすることができる。検出器構造は、2つ以上の(たとえば、8つの)固有の源-検出器距離が形成されるように、源構造に対して配置される。
【0041】
一実現例では、最短の源-検出器距離はほぼ等しい。たとえば、源構造120aと検出器構造125dとの間の最短の源-検出器距離(S1-D4)と、源構造120bと検出器構造125aとの間の最短の源-検出器距離(S2-D8)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125eとの間の次に長い源-検出器距離(たとえばS1-D4およびS2-D8の各々より長い)(S1-D5)と、源構造120bと検出器構造125aとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D1)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125cとの間の次に長い源-検出器距離(たとえばS1-D5およびS2-D1の各々より長い)(S1-D3)と、源構造120bと検出器構造125gとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D7)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125fとの間の次に長い源-検出器距離(たとえばS1-D3およびS2-D7の各々より長い)(S1-D6)と、源構造120bと検出器構造125bとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D2)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125cとの間の次に長い源-検出器距離(たとえばS1-D6およびS2-D2の各々より長い)(S1-D2)と、源構造120bと検出器構造125fとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D6)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125gとの間の次に長い源-検出器距離(たとえばS1-D2およびS2-D6の各々より長い)(S1-D7)と、源構造120bと検出器構造125cとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D3)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125aとの間の次に長い源-検出器距離(たとえばS1-D7およびS2-D3の各々より長い)(S1-D1)と、源構造120bと検出器構造125eとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D5)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125hcとの間の次に長い源-検出器距離(たとえば最長の源-検出器距離、S1-D1およびS2-D5の各々より長い)(S1-D8)と、源構造120bと検出器構造125dとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D4)とは、ほぼ等しい。他の実現例では、源-検出器距離は、すべて固有であるか、またはほぼ等しい8つ未満の距離を有することができる。
【0042】
以下の表1は、ある実現例による8つの固有の源-検出器距離を示す。最も近い源-検出器距離間の増加は約0.4ミリメートルである。
【0043】
【0044】
一実現例では、検出器構造125aおよび125eは、源120aと120bとを接続する直線上にある点の周りに対称的に配置される。検出器構造125bおよび125fは、その点の周りに対称的に配置される。検出器構造125cおよび125gは、その点の周りに対称的に配置される。検出器構造125dおよび125hは、その点の周りに対称的に配置される。この点は、源構造120aと120bとの間においてその接続線上の中心に置くことができる。
【0045】
源-検出器距離対検出器構造125によって検出された反射率のプロットにより、データ点がx軸に沿って十分に離間している反射率曲線を提供することができる。源構造120aと120bと検出器構造125との間の距離のこれらの間隔は、データの冗長性を低減し、相対的に正確な反射率曲線の生成に至り得る。
【0046】
一実現例では、源構造および検出器構造をプローブ表面上のさまざまな位置に配置して、(上に示したような)所望の距離を与えることができる。たとえば、2つの源が線を形成し、この線の上下に等しい数の検出器が存在する。検出器の位置(線の上)は、2つの源の線上の選択された点について、別の検出器(線の下)と点対称になる。一例として、選択された点は、2つの源間の中間であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。他の実現例では、この位置決めは、円形、楕円形、卵形、無作為、三角形、矩形、四角形、または他の形状などの形状に基づいて配置することができる。
【0047】
以下の特許出願は、さまざまなオキシメータ装置および酸素測定動作を記載しており、以下の特許出願における議論は、本願に記載された本発明の局面と任意の組み合わせで組み合わせることができる。以下の特許出願、すなわち2015年11月17日に出願された特許出願第14/944,139号、2013年5月3日に出願された第13/887,130号、2016年5月24日に出願された第15/163,565号、2013年5月3日に出願された13/887,220号、2016年7月19日に出願された第15/214,355号、2013年5月3日に出願された第13/887,213号、2015年12月21日に出願された第14/977,578号、2013年6月7日に出願された第13/887,178号、2016年7月26日に出願された第15/220,354号、2013年8月12日に出願された第13/965,156号、2016年11月22日に出願された第15/359,570号、2013年5月3日に出願された第13/887,152号、2016年4月16日に出願された第29/561,749号、2012年5月3日に出願された第61/642,389号,第61/642,393号,第61/642,395号,第61/642,399号、2012年8月10日に出願された第61/682,146号は、これらの出願において引用されるすべての参照文献とともにここに引用により援用される。
【0048】
図1Cは、実現例におけるオキシメータプローブ101のブロック図を示す。オキシメータプローブ101は、ディスプレイ115、プロセッサ116、メモリ117、スピーカ118、1つ以上のユーザ選択デバイス119(たとえば、1つ以上のボタン、スイッチ、ディスプレイ115に関連するタッチ入力デバイス)、源構造の組120、検出器構造の組125、および電源(たとえば、バッテリ)127を含む。前述の挙げられた構成要素は、オキシメータプローブ101のシステムバスアーキテクチャであってもよいバス128を介して一緒に接続されてもよい。この図は、各構成要素に接続する1つのバスを示しているが、このバス接続は、これらの構成要素またはオキシメータプローブ101に含まれる他の構成要素を接続するのに役立つ任意の相互接続方式の例である。たとえば、スピーカ118は、ポートを介してサブシステムに接続されてもよく、またはプロセッサ116への内部直接接続を有してもよい。さらに、記載された構成要素は、実現例ではオキシメータプローブ101の可動ハウジング(
図1参照)に収容される。
【0049】
プロセッサ116は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、マルチコアプロセッサ、または他のプロセッサタイプを含むことができる。メモリ117は、揮発性メモリ117a(たとえば、RAM)、不揮発性メモリ117b(たとえば、ディスクまたはフラッシュ)などのさまざまなメモリを含むことができる。オキシメータプローブ101の異なる実現例は、任意の組み合わせまたは構成において、任意の数の列挙された構成要素を含むことができ、図示されていない他の構成要素も含むことができる。
【0050】
電源127は、使い捨て電池のようなバッテリとすることができる。使い捨て電池は、蓄積された電荷が消費された後に廃棄される。いくつかの使い捨て電池化学技術は、アルカリ、亜鉛炭素、または酸化銀を含む。バッテリは、ハンドヘルドの装置の使用を数時間の間可能にするのに十分な蓄積電荷を有する。
【0051】
他の実現例では、バッテリは再充電可能であり、バッテリは、蓄積された電荷が消費された後、複数回充電され得る。いくつかの充電式電池化学技術は、ニッケルカドミウム(NiCd)、ニッケル金属水素化物(NiMH)、リチウムイオン(Liイオン)および亜鉛空気を含む。たとえば、ハンドヘルドのユニットに接続するコードを備えたACアダプタを介して、バッテリを充電することができる。ハンドヘルドのユニット内の回路系は、再充電回路(図示せず)を含むことができる。充電式電池化学のバッテリは、使い捨て電池として使用されてもよく、バッテリは再充電されずに使用後廃棄される。
【0052】
図2は、実現例において、1つの源Sと、4つの検出器D1、D2、D3、およびD4とを含むプローブ先端の図を示す。検出器は、源から増大する一定の距離(R1<R2<R3<R4)で配置される。R1に位置する検出器D1は、源に最も近く、組織表面から第1の組織深さまで延びる第1の組織層内で反射する光を検出する。R2に位置する検出器D2は、第1の組織深さから第2の組織深さまで延びる第2の組織層内で反射する光を検出する。第2の組織深さは、第1の組織深さよりも組織表面から深い。R3に位置する検出器D3は、第2の組織深さから第3の組織深さまで延びる第3の組織層内で反射する光を検出する。第3の組織深さは、第2の組織深さよりも組織表面から深い。R4に位置する検出器D4は、第3の組織深さから第4の組織深さまで伸びる第4の組織層内で反射する光を検出し、第4の組織深さは、第3の組織深さよりも組織表面から深い。オキシメータプローブは、これらの検出器の1つ以上から収集された測定情報を使用して、組織深さの1つ以上について組織酸素飽和度を判断する。
【0053】
図2は、プローブ先端が各組織層について単一の検出器を含むことを示しているが、プローブ先端は、各組織層について、2つの検出器、3つの検出器、4つの検出器、5つの検出器、6つの検出器、7つの検出器、8つの検出器、9つの検出器、10の検出器、またはより多くの検出器を含み得る。プローブ先端は、2つの源、3つの源、4つの源、5つの源、6つの源、7つの源、8つの源、9つの源、10個の源、またはそれ以上の源などの複数の源を含むこともできる。源および検出器の配置は、8つの固有の源-検出器距離があり、各源-検出器距離は少なくとも1回繰返される、
図1Bの構成とすることができる。
【0054】
図3は、単一の検出器または複数の検出器の組み合わせから収集された測定情報に関し、オキシメータプローブによって分析され得る複数の異なる組織深さを示す。たとえば、検出器D1、D2、D3、およびD4から測定情報を収集することによって、それぞれ第1、第2、第3、および第4の組織層について組織酸素飽和度を判断することができる。組織酸素飽和度は、検出器D1-D2;D2-D3;D3-D4;およびD1-D4の組み合わせから測定値を収集することによって、それぞれ第5、第6、第7および第8の組織層についても判断することができる。
【0055】
プローブ先端は、さまざまな組織深さについて組織酸素飽和度を判断するために、2つ以上の源と、4つより多いかまたは4つ未満の検出器とを含み得ることが理解されよう。また、源-検出器距離の2つ以上が同じであってもよいことも理解されよう。たとえば、較正目的、または収集されたデータの自己チェックのために、冗長な源-検出器距離を使用することができる。
【0056】
一実現例では、オキシメータプローブは、空間分解分光法を使用して、異なる組織深さについて組織酸素飽和度情報を求める。具体的には、オキシメータプローブは、光源および検出器についての記憶された源-検出器距離、反射光について検出器の1つ以上から収集される測定情報、および組織酸素飽和度情報を計算するための空間分解分光法を使用する。
【0057】
図4は、実現例におけるオキシメータプローブのブロック図である。オキシメータプローブのプローブユニットは、プロセッサと、プロセッサに電子的に結合されたマルチプレクサとを含む。プローブ先端は、源Sおよび検出器D1~D4を含む。プローブユニットは、検出器とプロセッサとの間の電子経路内にアナログ/デジタル変換器(図示せず)も含む。プローブ先端は、
図1Bに示され、上で説明された、2つの源および8つの検出器の構成など、より多くの源およびより多くのまたはより少ない検出器を含むことができる。
【0058】
プロセッサは、検出器の1つ以上によって検出された反射光の測定情報を選択的に収集するようにマルチプレクサを制御する。プロセッサは、測定情報を使用して、組織の組織深さの1つ以上について組織酸素飽和度を判断する。
【0059】
2つ以上の源を含む実現例では、それらの源は、1つの源が光を照射するように活性化されるか、2つの源が光を照射するように活性化されるか、3つの源が光を照射するように活性化されるか、またはそれより多い数の源が光を照射するように活性化されるように、プロセッサによって制御され得る。プロセッサは、組織が異なる深さでプロービングされるように光を照射する源の1つ以上について検出器の1つ以上からのデータ収集を可能にし、それによって、
図2から
図3に関して上記したように、異なる組織深さでの酸素飽和度を判断することができる。
【0060】
図5は、実現例において2つの源S1およびS2と8つの検出器D1~D8とを含むプローブ先端のプローブ面を示す。源および検出器は、円形の構成で配置される。プローブ面は、より多くのまたはより少ない源およびより多くのまたはより少ない検出器を含むことができる。プロセッサは、マルチプレクサを制御して、源の一方または両方から照射された光について検出器の1つ以上からプロセッサに測定情報を送信させる。代替的実現例では、源および検出器は、台形、長方形、正方形、三角形、線形、任意、卵形、楕円形、これらの形状の1つもしくは複数の組み合わせ、または他の形状などの、他の構成で配置される。源および検出器は、曲面のような非平面構成に配置することもでき、曲面の湾曲は、頸部、頭部、膝、肘、足、または他の身体部分のような身体部分の形状を補足して、源および検出器を湾曲した形状に一致させることができる。
【0061】
図6は、プローブ先端605がプローブユニット610から取り外し可能であるオキシメータプローブ601を示す。プローブ先端605を取り外して、異なるプローブ先端615で置き換えることができ、それら2つのプローブ先端は異なる源-検出器間隔を有する。たとえば、第1のプローブ先端は、
図1Bに示すプローブ先端の源および検出器の構成を有することができ、第2のプローブ先端は、
図5に示すプローブ先端の源および検出器の構成を有することができる。2つの異なるプローブ先端は、異なる組織深さについて組織酸素飽和度を判断するために、形成されたオキシメータプローブとして、プローブユニットと共に使用することができる。一実現例では、異なるプローブ先端は、異なる数の源、異なる数の検出器、または異なる数の源および異なる数の検出器の両方を有する。
【0062】
図7は、ベースユニット705と取り外し可能なケーブル712とを含む組織オキシメータ701を示しており、ケーブルはケーブルの端部に取り付けられたプローブ先端710を含む。プローブ先端は、1つ以上の源および1つ以上の検出器を含む。1つ以上の源および1つ以上の検出器は、複数の異なる源-検出器距離によって分離される。光を照射する源と光を検出する検出器との間の源-検出器距離は、組織の表面下の異なる組織深さで組織をプロービングするために様々に設定することができる。ベースユニットは、たとえば、源のうちの1つ以上が光を送るように構成され、検出器の1つ以上が反射後の光を検出するように構成されるように、ユーザによって構成することができる。
【0063】
ベースユニットは、光を照射するための1つ以上の光源を選択するためのユーザ入力を受信し、光を検出するために検出器の1つ以上を選択するためのユーザ入力を受信するための、1つ以上のユーザインタフェースを含む。ユーザ入力を受信するように構成されたベースユニットの1つ以上のユーザインタフェースは、ボタン、タッチインタフェースディスプレイ、ダイヤル、スイッチ、または他のインタフェースを含むことができる。ベースユニットは、光を照射するための1つ以上の光源および光を検出するための1つ以上の検出器を選択するために、接続されたコンピューティングデバイスから情報を受信するように適合された1つ以上の通信ポートを含み得る。
【0064】
一実現例では、ケーブルおよびプローブ先端はベースユニットから取り外し可能であり、異なるケーブルおよびプローブ先端で置き換えることができる。2つの異なるケーブルの2つの異なるプローブ先端は、異なる組織深さをプロービングするために、1つ以上の源と1つ以上の検出器との間に、1つ以上の異なる源-検出器距離を有する。
【0065】
図8は、2つの異なる源-検出器間隔を有する2つの異なるプローブ先端のブロック図を示す。プローブ先端は、1つの源と4つの検出器とを含む。組織の異なる組織深さが組織オキシメータによってプロービングされるように、プローブ先端を切り換えることができる。たとえば、第1のプローブ先端を有するオキシメータプローブは、相対的に浅い組織深さおよび深い組織深さをプロービングすることができ、第2のプローブ先端を有するオキシメータプローブは、相対的に深い組織深さおよび中間の組織深さをプロービングすることができる。プローブ先端は、2つ以上の源と、より少ないまたはより多くの検出器とを含むことができることが理解されよう。一実現例では、各プローブ先端は、1つ以上の源と1つ以上の検出器との配置を円形配置で有する。
【0066】
一実現例では、光源の少なくとも1つと検出器の少なくとも1つとの間の距離は、約200マイクロメートル以下、たとえば150マイクロメートル以下、100マイクロメートル以下、75マイクロメートル以下、または他の距離である。源のうち、検出器の1つから200マイクロメートル以下に位置決めされる少なくとも1つは、可視光、赤外光、またはその両方を照射する。可視スペクトルで照射される光は、青色と赤色もしくは580ナノメートル未満の波長を有する光の間の波長、またはその両方、たとえば緑色光、橙色光、黄色光、もしくは青色光と赤色光との間波長間に波長を有する他の色の光を含むことができる。
【0067】
相対的に短い波長(たとえば、青色光と赤色光との間の波長)の光を、プローブの先端から、表皮のような組織の薄い最上部の層(たとえば、20マイクロメートルから約150マイクロメートルまたはそれ未満)をプロービングするために送ってもよい。これらの相対的に短い波長の光は、真皮中に深く浸透しないか、または真皮に浸透しないため、真皮からの、これらのより短い波長の光からの測定情報は、表皮からの測定情報に有意に寄与しない。したがって、メラニンのような表皮中の発色団をオキシメータプローブによってプロービングすることができ、真皮中の発色団は表皮中のメラニンについての測定に寄与しないことがあり得る。
【0068】
約20マイクロメートルより深く、約50マイクロメートルより深く、約75マイクロメートルより深く、約100マイクロメートルより深く、約125マイクロメートルより深く、または約150マイクロメートルより深く(たとえば、真皮、皮下脂肪、またはその両方の中へのような、表皮の組織深さよりも深く)など、組織の相対的に深いところまでプロービングするために、相対的により長い波長を有する光を選択することができる。
【0069】
一実現例では、実質的にすべての波長の光(たとえば、可視光、IR、またはその両方)についての測定情報が、源から組織内に送られ、検出器によって検出される。各波長について検出器によって生成された反射率データの分析を、反射率データをシミュレート反射率曲線に適合させることなどによって行って、測定値(たとえば、吸収係数、低減された散乱係数、メラニン濃度、酸素飽和度、血液量、これら測定値の任意の組み合わせ、または他の測定値)を判断することができる。その後、プロセッサは、測定された値、反射率データ、または他の情報を使用して、さまざまな組織深さにおけるさまざまな組織層について測定された値を判断することができる。たとえば、プロセッサは、真皮における発色団の測定値からは実質的に独立した、表皮についての1つ以上の測定値(たとえば、吸収係数、低減された散乱係数、メラニン濃度、酸素飽和度、血液量、これら測定値の任意の組み合わせ、または他の測定値)を判断できる。反射率データをシミュレート反射率曲線に適合させることについては、以下でさらに説明する。
【0070】
プロセッサは、表皮中の発色団についての測定値からは実質的に独立した、真皮についての1つ以上の測定値(たとえば、酸素飽和値)を判断することもできる。
【0071】
実現例では、選択波長(たとえば、青と赤との間のような相対的に短い波長、もしくは赤、IR、またはそれらの両方などの相対的に長い波長)を源から送り、検出器のうち選択されたもの(たとえば、20個の検出器のうちの検出器2~5および11~20を選択するか、20個の検出器のうちの検出器1および6~8を選択するか、20個の検出器のうちの検出器9~13を選択するか、または他の数の検出器を選択する)で検出して、表皮または真皮などの組織をプロービングし、表皮についての測定情報は、真皮についての測定情報とは実質的に無関係であり、真皮についての測定情報は、表皮についての測定情報、またはこれらの組織層のより微細なグラデーションとは実質的に独立している。たとえば、表皮をプロービングするために、青色と赤色との間の可視光の相対的に短い波長を、源から送り、源に相対的に近い検出器(たとえば、源に100マイクロメートルまたはそれより近い)によって検出することができる。
【0072】
たとえば、乳房再建のために組織弁置換手術に使用される埋め込まれた皮膚組織弁などの真皮またはそれより深くをプロービングするために、相対的により長い波長の光(たとえば、赤色、赤外線、またはその両方)を、源から送り、源から相対的に遠い検出器(たとえば、源から100マイクロメートル以上遠くにある)によって検出することができる。オキシメータプローブは、選択波長(たとえば、短波長または長波長)および選択検出器(たとえば、源に100マイクロメートルより近いもの、または源から100マイクロメートルより遠いもの)の組み合わせの選択についての入力を受けるようにされ、選択された組み合わせは、表皮または真皮のような組織の異なる組織層をプロービングするためにプローブによって使用される。オキシメータプローブは、ユーザがプロービングのためにまたは実質的に自動的に選択した選択組織深さに基づいて、これらの波長および検出器の選択を行うように適合される。
【0073】
ある実現例では、1つ以上の源は、第1のスペクトル範囲であり第2のスペクトル範囲ではない波長の光を照射するために、または第2のスペクトル範囲であり第1のスペクトル範囲ではない光を照射するために、適合させることができ、第1および第2のスペクトル範囲は重ならなくてもよい。第1のスペクトル範囲は、青色光と赤色光との間の波長など、可視範囲の光を含むことができる。第2のスペクトル範囲は、赤色光、赤外光、またはその両方を含むことができる。
【0074】
データ重み付け検出器構造。源構造120からの増大した距離に位置する検出器構造125は、組織から、低減された量の反射を受ける。したがって、相対的に短い源-検出器距離(たとえば、
図1BのS1-D4およびS2-D8)を有する検出器構造125によって生成された反射率データは、相対的に長い源-検出器距離(たとえば、
図1BのS1-D8およびS2-D4)を有する検出器構造によって生成される反射率データと比較して、本来、より高い信号を示す傾向がある。したがって、適合アルゴリズムは、シミュレート反射率曲線を、相対的に長い源-検出器距離(たとえば、平均距離より大きい源-検出器距離)を有する検出器構造によって生成される反射率データよりも密に、相対的に短い源-検出器距離(たとえば、源構造と検出器構造との間の平均距離以下の源-検出器距離)を有する検出器構造125によって生成される反射率データに対して、優先的に適合させてもよい。反射率データから光学特性を相対的に正確に判断するためには、この距離に比例するスキューは望ましくないかもしれず、以下で説明するように反射率データを重み付けすることによって補正されてもよい。
【0075】
図9は、選択検出器構造125によって生成された反射率データを重み付けする方法のフロー図を示す。このフロー図は、1つの実現例を表している。ステップは、実現例の範囲から逸脱することなく、フロー図に対して追加、削除、または結合することができる。
【0076】
1400において、オキシメータプローブ101は、源構造120aのような源構造の1つから組織内に光を照射する。照射された光が組織から反射した後、検出器構造125は光を検出し(ステップ1405)、組織についての反射率データを生成する(ステップ1410)。ステップ1400,1405、および1410は、複数の波長の光について、および源構造120bなどの1つ以上の他の源構造について繰り返されてもよい。1415において、オキシメータプローブ101は、反射率データの第1の部分を、シミュレート反射率曲線315に適合させる。反射率データの第1の部分は、源構造から閾値距離未満である検出器構造の第1の部分によって生成される。閾値距離は、源構造と検出器構造との間の平均距離(たとえば、おおよそミッドレンジ距離)であってもよい。1420において、反射率データの第2の部分についての反射率データが、シミュレート反射率曲線に適合される。反射率データの第2の部分は、検出器構造の第1の部分、および閾値距離と比較して源から次に大きい源-検出器距離にある別の検出器構造によって生成される。たとえば、検出器構造の第1の部分が検出器構造125c、125d、125eおよび125fを含む場合、次に大きい源-検出器距離にある検出器構造は検出器構造125gである(表1参照)。
【0077】
1425で、ステップ1415で生成された適合をステップ1420で生成された適合と比較して、ステップ1420で生成された適合が1415で生成された適合より良いかどうかを判断する。当業者には理解されるように、曲線へのデータの適合の「近さ」は、さまざまなパラメータに基づいて定量化可能であり、適合の近さは、曲線へのより近い適合を有するデータを判断するべく、直接比較可能である。さらに理解されるように、より近い適合は、しばしば、より良い適合またはより緊密な適合とも言われる。ステップ1420で生成された適合がステップ1415で生成された適合よりも良い場合、源から次に増加された源-検出器距離に配置されるさらなる検出器構造(考慮される例によれば、源構造125c)を含む検出器構造によって生成される反射率データを用いてステップ1420および1425が繰り返される。代替的に、ステップ1420で生成された適合がステップ1415で生成された適合よりも良くない場合には、閾値距離よりも大きい源-検出器距離に配置された検出器構造125関する反射率データは、適合には用いられない。その後、オキシメータプローブ101は、ステップ1415または(ステップ1415で判断された適合よりも良い場合には)ステップ1420において生成された適合を用いて、組織の光学特性および酸素飽和度を判断する(ステップ1430)。その後、酸素飽和度は、ステップ1435で、オキシメータプローブ101によって、ディスプレイ115などにおいて、報告される。
【0078】
代替的実現例によれば、ステップ1420で生成された適合がステップ1415で生成された適合よりも良くない場合、反射率データは、閾値距離よりも大きい源-検出器距離を有する検出器構造について、重み付け係数により重み付けされ、この重み付けされた反射率データが適合に及ぼす影響が低減されるようにする。適合で使用されない反射率データは、ゼロの重みを有すると考えられてもよく、当該の組織層の下の組織からの反射率と関連付けられてもよい。当該の組織層の下の組織からの反射は、この特定の反射率を示す反射率曲線において特徴的なよじれを示すと言われる。
【0079】
シミュレート反射率曲線に反射率データを適合させる曲線適合アルゴリズムは、反射率データの不確実性の量および反射率データの絶対位置を考慮に入れ得ることに留意されたい。反射率データの不確実性は、検出器構造の1つによる反射率データの生成からのノイズ量に対応し、このノイズ量は、反射率データの大きさの平方根としてスケーリングすることができる。
【0080】
さらなる実現例によれば、オキシメータプローブ101は、反射率データの測定に関連するノイズの量に基づいて反射率データを反復的に重み付けする。具体的には、相対的に大きな源-検出器距離を有する検出器構造によって生成される反射率データは、一般に、相対的に短い源-検出器距離を有する検出器構造によって生成される反射率データと比較して、より低い信号対ノイズ比を有する。相対的に大きい源-検出器距離を有する検出器構造によって生成される反射率データを重み付けすることにより、このデータが他の反射率データと実質的に等しく適合に寄与することを可能にする。
【0081】
記憶された、シミュレートされた反射率曲線。具体的な実施形態によると、メモリは多数のモンテカルロシミュレートされた反射率曲線315(「シミュレート反射率曲線」)を記憶し、これはコンピュータによって生成され、その後メモリに記憶され得る。シミュレート反射率曲線315の各々は、1つ以上のシミュレート光源からシミュレート組織内に発せられてシミュレート組織から1つ以上のシミュレート検出器内に反射される光(たとえば近赤外光)のシミュレーションを表わす。シミュレート反射率曲線315は、組織オキシメトリプローブ127の光源120および検出器125の構成などの、シミュレート光源およびシミュレート検出器の具体的な構成についてのものである。したがって、シミュレート反射率曲線315は、組織オキシメトリ装置100によって発光および集光される光をモデル化する。
【0082】
さらに、シミュレート反射率曲線315の各々は、組織発色団の特定の濃度および組織散乱体の密度に関連する具体的な組織吸収および組織散乱値などの、一意の実際の組織状態を表わす。メモリ117に記憶されるシミュレート反射率曲線の数は比較的大きくてもよく、組織オキシメトリ装置100によって生存率を分析される実際の組織内に存在し得る光学特性と組織特性との実際的な組合せのすべてではないがほぼすべてを表わし得る。メモリ117はモンテカルロシミュレート反射率曲線を記憶するとしてここに説明されるが、メモリ117は、拡散近似を使用するなど、モンテカルロ法以外の方法によって生成されるシミュレート反射率曲線を記憶してもよい。
【0083】
図10は反射率曲線の例のグラフであり、これは、組織オキシメトリプローブ127の光源および検出器の構成のうちの1つなどの、光源120および検出器125の具体的な構成についてのものであり得る。グラフの横軸は、光源120と検出器125との間の距離(すなわち光源-検出器距離)を表わす。光源120と検出器125との間の距離が適切に選択され、シミュレート反射率曲線が光源120および検出器125についてのシミュレーションである場合は、シミュレート反射率曲線におけるデータ点同士の間の横方向の間隔は比較的均一になる。そのような比較的均一の間隔は、
図4のシミュレート反射率曲線に見ることができる。グラフの縦軸は、組織から反射して検出器125によって検出される光のシミュレート反射率を表わす。シミュレート反射率曲線によって示されるように、検出器125に達する反射率は、光源120と検出器125との間の距離によって変化する。
【0084】
一具体化によると、メモリ117はシミュレート反射率曲線315ごとに選択された数の点を記憶し、シミュレート反射率曲線の全体を記憶しない場合がある。シミュレート反射率曲線315ごとに記憶される点の数は、光源-検出器の対の数と一致し得る。たとえば、組織オキシメトリプローブ115が2つの光源120aおよび120cならびに8個の検出器125a~125hを含む場合は、組織オキシメトリプローブ100は16個の光源-検出器の対を含み、メモリ117はしたがってシミュレート反射率曲線ごとに16個の選択データ点を記憶し得、記憶されたデータ点は具体的な光源-検出器距離(すなわち光源と検出器との間の距離)についてのものである。
【0085】
したがって、メモリ117に記憶されるシミュレート反射率曲線データベースのサイズは16×3×5850であり得、各光源120によって生成され発せられ得る3つの異なる波長について16個の点が曲線ごとに記憶され、光学特性範囲にわたって合計5850本の曲線がある。代替的に、メモリ117に記憶されるシミュレート反射率曲線データベースのサイズは16×4×5850であり得、各光源によって生成され発せられ得る4つの異なる波長について16個の点が曲線ごとに記憶され、光学特性範囲にわたって合計5850本の曲線がある。5850本の曲線は、たとえば、39個の吸収係数μ'
s値および150個の吸収係数μa値のマトリクスに由来する。μ'
s値の範囲は5:5:24センチメートル-1からかもしれない(μ'
sはgの値に依存する)。μa値の範囲は0.01:0.01:1.5センチメートル-1からかもしれない。上述の範囲は例の範囲であり、光源-検出器の対の数、各光源によって生成される波長の数、およびシミュレート反射率曲線の数はより小さくても大きくてもよいことが理解されるであろう。
【0086】
組織分析
図11Aは、組織オキシメトリ装置100によって組織(たとえば実際の組織)の光学特性を求めるための方法のフロー図であり、組織オキシメトリ装置は反射率データおよびシミュレート反射率曲線315を用いて光学特性を求める。光学特性は、組織の吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
sを含み得る。組織の吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
sを組織の酸素飽和値に変換するためのさらなる方法は、以下により詳細に説明される。このフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0087】
500において、組織オキシメトリ装置100は、光源120aなどの光源120の1つから組織内に光(たとえば近赤外光)を発する。組織オキシメトリ装置は一般に、光源から発光されているときに組織と接触している。放射光が組織から反射した後、ステップ505において検出器125がこの光の一部を検出し、ステップ510において組織の反射率データ点を生成する。ステップ500、505、および510は、光の複数の波長(たとえば赤色光、近赤外光、またはその両方)について、および光源120cなどの1つ以上の他の光源について繰返され得る。単一波長についての反射率データ点は、たとえば組織オキシメトリプローブ115が16個の光源-検出器距離を提供する場合、16個の反射率データ点を含むかもしれない。反射率データ点は、反射率データ点のNベクトルと称されることもある。
【0088】
515において、反射率データ点(たとえば生反射率データ点)が光源-検出器の対のゲインに対して補正される。光源-検出器の対の校正の間、光源-検出器の対についてゲイン補正が生成され、メモリ117に記憶される。ゲイン補正の生成については、以下でさらに詳細に説明する。
【0089】
520において、プロセッサ116は、(たとえば残差二乗和計算を介して)反射率データ点をシミュレート反射率曲線315に適合させて、反射率データ点に最良適合する(すなわち最低適合誤差を有する)特定の反射率データ曲線を求める。1つの特定の具体化によると、シミュレート反射率曲線のデータベースの「粗(coarse)」グリッドであるシミュレート反射率曲線の比較的小さいセットが選択されて適合ステップ520に利用される。たとえば、39個の散乱係数μ'
s値および150個の吸収係数μa値と仮定すると、シミュレート反射率曲線の粗グリッドは、粗グリッド内の合計40本のシミュレート反射率曲線について5個おきの散乱係数μ'
s値および8個おきの吸収係数μaを取ることによって、プロセッサ116によって求められるかもしれない。上述の具体値は例の実施形態についてのものであり、他のサイズの粗グリッドもプロセッサ116によって利用されるかもしれないことが理解されるであろう。反射率データ点を粗グリッドに適合させることによる結果は、最良適合するシミュレート反射率曲線の粗グリッド内の座標(μa,μ'
s)coarseである。
【0090】
525において、最低適合誤差を有する粗グリッドからの特定のシミュレート反射率曲線がプロセッサ116によって利用されてシミュレート反射率曲線の「微細(fine)」グリッドが定義され、微細グリッド内のシミュレート反射率曲線は、最低適合誤差を有する粗グリッドからのシミュレート反射率曲線の周りにある。
【0091】
すなわち、微細グリッドは規定サイズであり、粗グリッドからの最低誤差シミュレート反射率曲線が微細グリッドの中心を規定する。微細グリッドは粗グリッドと同数のシミュレート反射率曲線を有してもよいし、またはより多いもしくはより少ないシミュレート反射率曲線を有してもよい。微細グリッドは、ステップ530において微細グリッド内の近傍の吸収係数μa値および散乱係数μ'
s値のピーク表面アレイを求めるのに十分な数の点を提供するために実質的に微細である。具体的には、粗グリッドからの最低誤差値に加えて特定のオフセットを利用するプロセッサ116によって閾値が設定され得る。閾値未満の誤差を有する微細グリッド上の散乱係数μ'
sおよび吸収係数μaの位置はすべて、ピーク表面アレイを求める際に用いるために識別され得、反射率データについての散乱係数μ'
sおよび吸収係数μaがさらに求められる。具体的には、ピークについて誤差適合がなされ、ピークにおける吸収係数μaおよび散乱係数μ'
s値が求められる。ステップ540において、ピークにおける吸収係数μaおよび散乱係数μ'
s値の重み付け平均(たとえばセントロイド計算)が組織オキシメトリ装置によって利用され、組織の反射率データ点についての吸収係数μaおよび散乱係数μ'
s値が求められ得る。
【0092】
重み付け平均についての吸収係数μaおよび散乱係数μ'
s値の重みは、閾値マイナス微細グリッド誤差としてプロセッサ116によって求められ得る。微細グリッド上の点は閾値未満の誤差を用いて選択されるため、これによって正の重みが与えられる。重み付け平均の重み付け計算(たとえばセントロイド計算)によって、組織の反射率データ点についての予想される散乱係数μ'
sおよび吸収係数μa(すなわち(μa,μ'
s)fine)が提供される。さまざまな非線形最小二乗法の1つ以上を用いて適合して散乱係数μ'
sの真の最小誤差ピークを求めるなど、他の方法も組織オキシメトリ装置によって利用され得る。
【0093】
一具体化によると、プロセッサ116は反射率データ点およびシミュレート反射率曲線の対数を計算し、各対数を光源-検出器距離(たとえばセンチメートルで表わされる)の平方根で割る。光源-検出器距離の平方根で割られる対数値は、上述のステップ(たとえばステップ515、520、525、および530)において反射率データ点およびシミュレート反射率曲線についてプロセッサ116によって利用されて、シミュレート反射率曲線に対する反射率データ点の適合が改善され得る。
【0094】
別の具体化によると、オフセットは実質的にゼロに設定され、これによって粗グリッド最小と微細グリッド最小との差のオフセットが有効に与えられる。
図11Aに関して上記に説明された方法は粗グリッドからの最小適合誤差に依拠するため、微細グリッド上の真の最小誤差は典型的により低い。理想的には、閾値は微細グリッド上の最低誤差から求められ、これは典型的にプロセッサによるさらなる演算を必要とする。
【0095】
以下は、一具体化に係る微細グリッド内の反射率データ点に最良適合する特定のシミュレート反射率曲線を見つけるためのさらなる詳細な説明である。
図11Bは、一具体化に係る微細グリッド内の反射率データ点に最良適合する特定のシミュレート反射率曲線を見つけるための方法のフロー図である。このフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0096】
ステップ525において反射率データ点に最良適合する粗グリッドから特定のシミュレート反射率曲線(μa,μ'
s)coarseを求めた後、ステップ550において、プロセッサ116はシミュレート反射率曲線の完全シミュレート反射率曲線データベース(すなわち16×3×5850の(μa,μ'
s)データベース)内の(μa,μ'
s)coarseの周りの領域内の誤差表面を演算する。誤差表面はerr(μa,μ'
s)と示される。その後、ステップ555において、プロセッサ116は、errminと称される、err(μa,μ'
s)内の最小誤差値を探す。プロセッサ116は次に、ステップ560において、ピーク表面がゼロよりも大きい場合はpksurf(μa,μ'
s)=k+errmin-err(μa,μ'
s)によって示される、またはピーク表面がゼロ以下である場合はpksurf(μa,μ'
s)=k+errmin-err(μa,μ'
s)=0によって示されるerr(μa,μ'
s)からのピーク表面アレイを生成する。当該式において、kは、約10個の要素のゼロよりも大きい幅を有するerr(μa,μ'
s)の最小点におけるピークから選択される。ステップ565において、pksurf(μa,μ'
s)のピークの質量中心(すなわちセントロイド計算)は、点の高さを重みとして用いる。質量中心の位置は、組織の反射率データ点についての吸収係数μaおよび散乱係数μ'
sの補間結果である。
【0097】
組織の反射率データ点についての吸収係数μ
aおよび散乱係数μ
'
sを求めるための
図5Aおよび
図5Bに関して上記に説明された方法は、光源120の各々によって生成される波長(たとえば3個または4個の波長)の各々ごとに繰返され得る。
【0098】
酸素飽和度判定
第1の具体化によると、プロセッサ116は、各光源120によって生成される光の3個または4個の波長について(上述のように)求められる吸収係数μa(たとえば3個または4個の吸収係数μa)を利用することによって、組織オキシメトリ装置100によってプローブされる組織の酸素飽和度を求める。第1の具体化によると、酸素飽和度に対する吸収係数μaの最良適合を見つけるための酸素飽和値のルックアップテーブルが生成される。ルックアップテーブルは、可能性のある全体のヘモグロビン、メラニン、および酸素飽和値の範囲を仮定し、これらのシナリオごとにμaを計算することによって生成され得る。そして、単位ベクトルのノルム(norm)で分割して、システム誤差を減少させて曲線の相対形状にのみ依存することによって、吸収係数μa点が単位ベクトルに変換される。そして、単位ベクトルがルックアップテーブルと比較されて最良適合が見つけられ、これによって酸素飽和度が与えられる。
【0099】
第2の具体化によると、プロセッサ116は、脱酸素化ヘモグロビンおよび酸素化ヘモグロビンのネットアナライト信号(net analyte signal:NAS)を計算することによって組織の酸素飽和度を求める。NASは、システム内の他のスペクトル構成要素に直交するスペクトルの部分と定義される。たとえば、脱酸素化ヘモグロビンのNASは、酸素化ヘモグロビンスペクトルおよびメラニンスペクトルに直交するスペクトルの部分である。そして、ベクトルがそれぞれのNASを掛け、二乗されたNASのノルムで割ることによって、脱酸素化および酸素化ヘモグロビンの濃度が計算され得る。そして、酸素飽和度が、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの合計で割られる酸素化ヘモグロビンの濃度として容易に計算される。LorberによるAnal. Chem. 58:1167-1172(1986)が引用により本明細書中に援用され、組織の酸素飽和度を求めるための第2の具体化のさらなる詳細な理解のための枠組みを提供する。
【0100】
組織オキシメトリ装置100の一実施形態によると、反射率データは30ヘルツで検出器125によって生成され、酸素飽和値は約3へルツで計算される。求められた酸素飽和値(たとえば少なくとも3つの酸素飽和値)の移動平均が、1ヘルツの更新速度を有するかもしれないディスプレイ112上に表示され得る。
【0101】
光学特性
上記に簡単に説明されたように、メモリ117に記憶される各シミュレート反射率曲線315は、組織の一意の光学特性を表わす。より具体的には、所与の波長についてのシミュレート反射率曲線の一意の形状は組織の光学特性の一意の値、すなわち、散乱係数(μs)、吸収係数(μa)、組織の異方性(g)、および組織の屈折率を表わし、それらから組織の特性が判断されてもよい。
【0102】
比較的小さい光源-検出器距離について検出器125によって検出される反射率は、低減された散乱係数μ'
sに主に依存する。低減された散乱係数は、散乱係数μsおよび組織の異方性gを組込んだ「集合(lumped)」特性であり、μ'
s=μs(1-g)であり、1/μ'
sのサイズの多くのステップのランダムウォークの光子の拡散を記述するために用いられ、各ステップは等方散乱を含む。そのような記述は、多くの小さいステップ1/μsを用いる光子移動の記述と同等であり、これらのステップの各々は、吸収事象の前に多くの散乱事象がある場合、すなわちμa<<μ'
sである場合は一部偏向角度のみを含む。
【0103】
対照的に、比較的大きい光源-検出器距離について検出器125によって検出される反射率は、有効吸収係数μeffに主に依存し、これは
【0104】
【0105】
と定義され、これはμaおよびμ'
sの両方の関数である。
したがって、比較的小さい光源-検出器距離(たとえば光源120aと検出器125eとの間のD1および光源120cと検出器125aとの間のD9)ならびに比較的大きい光源-検出器距離(たとえば光源120aと検出器125aとの間のD5および光源120cと検出器125eとの間D10)における反射率を測定することによって、μaおよびμ'
sの両方を互いに独立して求めることができる。組織の光学特性は次に、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビン濃度の計算のための十分な情報、およびしたがって組織の酸素飽和度を提供し得る。
【0106】
データ収集最適化のための反復適合。
図12は、組織オキシメトリ装置100によって組織の光学特性を求めるための別の方法のフロー図である。このフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0107】
600において、組織オキシメトリ装置100は、光源120aなどの光源の1つから組織内に光(たとえば近赤外光)を発する。放射光が組織から反射した後、検出器125がステップ605において光を検出し、ステップ610において組織の反射率データ点を生成する。ステップ600、605、および610は、光の複数の波長について、および光源120cなどの1つ以上の他の光源について繰返され得る。615において、組織オキシメトリ装置100は反射率データをシミュレート反射率曲線315に適合させ、反射率データが最良適合を有するシミュレート反射率曲線を求める。その後、ステップ620において、組織オキシメトリ装置100は、反射率データに最良適合するシミュレート反射率曲線の光学特性に基づいて、組織の光学特性(たとえばμaおよびμ'
s)を求める。
【0108】
625において、組織オキシメトリ装置100は、ステップ620で求めた光学特性(たとえばmfp=1/(μa+μ'
s))から組織内の光の平均自由工程を求める。具体的には、平均自由工程は、すべての光源-検出器の対(たとえば、対1:光源120a-検出器125e、対2:光源120a-検出器125f、対3:光源120a-検出器125g、対4:光源120a-検出器125h、対5:光源120a-検出器125a、対6:光源120a-検出器125b、対7:光源120a-検出器125c、対8:光源120a-検出器125d、…対9:光源120c-検出器125e、対10:光源120b-検出器125f…など)についての反射率データを含む累積反射率曲線から得られる光学特性から求められ得る。
【0109】
630において、組織オキシメトリ装置100は、組織の所与の領域について計算した平均自由工程が最短の光源-検出器距離(たとえば光源120aと検出器125eとの間のD1、および光源120cと検出器125aとの間のD9)の2倍よりも長いか否かを判断する。平均自由工程が最短の光源-検出器距離の2倍よりも長い場合は、最短の光源-検出器距離を有する光源-検出器の対(たとえば、対1:光源120a-検出器125eおよび対9:光源120c-検出器125a)の検出器から収集される反射率データを利用することなく、収集された反射率データはシミュレート反射率曲線に再適合される(すなわち再分析される)。たとえば、ステップ615~630は、光源120aが検出器125eの光源として作用している状態で検出器125eからの反射率データを使用せずに、かつ、光源120cが検出器125aの光源として作用している状態で検出器125aからの反射率データを使用せずに繰返される。平均自由工程を計算し、1つ以上の光源-検出器の対についての反射率データを捨てる処理は、適合に対する反射率データに寄与する光源-検出器の対のうち、計算された平均自由工程の半分よりも短い光源-検出器距離を有する対がなくなるまで繰返され得る。その後、ステップ635において、最良適合するシミュレート反射率曲線から酸素飽和度が求められ、組織オキシメトリ装置110によってたとえばディスプレイ112上に報告される。
【0110】
光源120の1つから組織内に発せされ、平均自由工程の半分未満だけ進む光は、実質的に非拡散反射される。この光の再発光距離は、組織位相関数および局所組織構成に大きく依存する。したがって、この光の反射率データを使用すると、複数の散乱事象を経験した光の反射率データと比較して、光学特性および組織特性の判定の精度が低下する傾向がある。
【0111】
データ重み付け。光源120から増大した距離に位置決めされる検出器125は、組織から受ける反射率の量が低下する。したがって、比較的短い光源-検出器距離(たとえばD1)を有する検出器125によって生成される反射率データは、比較的長い光源-検出器距離(たとえばD5およびD10)を有する検出器によって生成される反射率データと比較して、本質的により低いノイズを示す傾向がある。したがって、適合アルゴリズムは、シミュレート反射率曲線を、比較的長い光源-検出器距離(たとえば光源と検出器との間の平均距離よりも大きい光源-検出器距離)を有する検出器によって生成される反射率データよりも緊密に、比較的短い光源-検出器距離(たとえば平均距離以下の光源-検出器距離)を有する検出器125によって生成される反射率データに優先的に適合させ得る。反射率データから光学特性を比較的正確に求めるためには、この距離に比例したスキューは望ましくない場合があり、すぐ下に説明されるように反射率データを重み付けすることによって補正され得る。
【0112】
図13は、選択された検出器125によって生成される反射率データを重み付けするための方法のフロー図である。このフロー図は1つの例の実施形態を表わす。実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図にステップを追加、削除、または組合わせることができる。
【0113】
700において、組織オキシメトリ装置100は、光源120aなどの光源の1つから組織内に光を発する。放射光が組織から反射した後、検出器125はステップ705において光を検出し、ステップ710において組織の反射率データ点を生成する。ステップ700、705、および710は、光の複数の波長について、および光源120cなどの1つ以上の他の光源について繰返され得る。715において、組織オキシメトリ装置100は反射率データの第1の部分をシミュレート反射率曲線に適合させる。反射率データの第1の部分は、光源から閾値距離未満にある検出器の第1の部分によって生成される。閾値距離は、光源と検出器との間の平均距離(たとえばほぼ中間の距離)であってもよい。720において、反射率データの第2の部分についての反射率データが、シミュレート反射率曲線に適合される。反射率データの第2の部分は、検出器の第1の部分と、閾値距離と比較して2番目に大きい光源からの光源-検出器距離にある別の検出器によって生成される。たとえば、検出器の第1の部分が検出器125c、125d、125e、および125fを含む場合は、2番目に大きい光源-検出器距離にある検出器は検出器125gである(たとえば検出器125cよりも光源120aに近い、
図2Aおよび
図2B参照)。
【0114】
725において、ステップ715で生成された適合がステップ720で生成された適合と比較され、ステップ720で生成された適合がステップ715で生成された適合よりも良好であるか否かが判断される。当業者によって理解されるように、曲線に対するデータの適合の「接近」はさまざまなパラメータに基づいて定量化可能であり、適合の接近は、曲線に対するより近い適合(より近い適合)を有するデータを求めることに直接相当する。さらに理解されるように、より近い適合はより良好な適合またはより緊密な適合とも称される。ステップ720で生成された適合がステップ715で生成された適合よりも良好である場合は、次に大きい光源からの光源-検出器距離に位置決めされる付加的な検出器(考察中の例によると検出器125c)を含む検出器によって生成される反射率データを用いて、ステップ720および725が繰返される。代替的に、ステップ720で生成された適合がステップ715で生成された適合よりも良好でない場合は、閾値距離よりも大きい検出器-光源距離に位置決めされる検出器125についての反射率データは適合に用いられない。その後、ステップ730において、組織オキシメトリ装置100は715または(ステップ715で求められた適合よりも良好である場合は)ステップ720で生成された適合を用いて、組織の光学特性および酸素飽和度を求める。その後、ステップ735において、酸素飽和度が組織オキシメトリ装置110によってたとえばディスプレイ112上に報告される。
【0115】
代替実施形態によると、ステップ720で生成された適合がステップ715で生成された適合よりも良好でない場合は、反射率データは、閾値距離よりも大きい光源-検出器距離を有する検出器についての重み係数によって重み付けされ、これによって、重み付けされた反射率データの適合への影響が減少する。適合に用いられない反射率データはゼロの重みを有していると考えることができ、対象の組織層の下の組織からの反射率と関連付けられ得る。対象の組織層の下の組織からの反射率は、この特定の反射率を示す反射率曲線における特徴的な歪み(kink)を示すといわれている。
【0116】
なお、反射率データをシミュレート反射率曲線に適合させる曲線適合アルゴリズムは、反射率データの不確実性の量および反射率データの絶対位置を考慮し得る。反射率データにおける不確実性は、検出器の1つによる反射率データの生成からのノイズ量に対応し、ノイズ量は、反射率データの大きさの平方根としてスケール変更し得る。
【0117】
さらなる実施形態によると、組織オキシメトリ装置100は、反射率データの測定と関連付けられるノイズ量に基づいて、反射率データを反復的に重み付けする。具体的には、比較的大きい光源-検出器距離を有する検出器によって生成される反射率データは、一般に、比較的短い光源-検出器距離を有する光検出器によって生成される反射率データと比較して信号雑音比が大きい。比較的大きい光源-検出器距離を有する検出器によって生成される反射率データを重み付けすることによって、このデータが他の反射率データと等しく適合に寄与することを可能にする。
【0118】
発明の本説明は例示および説明の目的で提示された。これは、網羅的であること、または発明を説明された厳密な形態に限定することを意図しておらず、上記の教示に鑑みて多くの修正および変形が可能である。実施形態は、発明の原理およびその実際的な用途を最もよく説明するために選択および説明された。この説明によって、当業者は、発明を特定の使用に好適であるようにさまざま実施形態で、さまざま修正を加えて最適に利用および実践することができるであろう。様々な記載された実現例の要素は任意の組合せによって組合わせることができる。発明の範囲は以下の請求項によって定義される。