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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】硫黄含有化合物を含む微小粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/145 20060101AFI20221219BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 9/08 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 11/12 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K31/145
A61K9/14
A61K47/26
A61P11/00
A61P31/04
A61P9/08
A61P9/12
A61P11/08
A61P11/12
A61K47/18
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018563831
(86)(22)【出願日】2017-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 GB2017051637
(87)【国際公開番号】W WO2017212249
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】62/346,969
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1609940.0
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508066991
【氏名又は名称】ノバビオティクス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVABIOTICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】デボラ オネイル
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082660(JP,A)
【文献】特表2008-526735(JP,A)
【文献】国際公開第2015/054574(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0129946(US,A1)
【文献】特表2014-515356(JP,A)
【文献】国際公開第90/013538(WO,A1)
【文献】Formulation studies on cysteamine for the treatment of nephropathic cystinosis,The Open Access Institutional Repository at Robert Gordon University,2011年,p.1-223
【文献】Orphanet J Rare Dis,2014年,Vol.9,Article 189
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システアミン若しくはシスタミンまたはその薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくはエステルと安定化剤とを含む微小粒子を含む組成物であって、
前記安定化剤が、トレハロース又はマンニトールであり、
前記微小粒子の粒子径が1-13ミクロンである、
組成物。
【請求項2】
前記薬学的に許容可能な塩が、システアミン酒石酸塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記微小粒子の粒子径は4~8ミクロンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記微小粒子の粒子径は2~4ミクロンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記安定化剤はトレハロースである、請求項1~4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記安定化剤がマンニトールである、請求項1~4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
最大20%w/wのシステアミン若しくはシスタミンまたはその薬学的に許容可能な塩、水和物、若しくはエステルを含む、請求項1~6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
約5~10%w/wのシステアミン若しくはシスタミンまたはその薬学的に許容可能な塩、水和物、若しくはエステルを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
70~95%w/wの安定化剤を含む、請求項1~8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
80~95%w/wの安定化剤を含む、請求項1~9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
さらにロイシンを含む、請求項1~10の何れか一項に記載の組成物。
【請求項12】
1~10%のロイシンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
肺疾患の処置または予防で使用するための、請求項1~12の何れか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記肺疾患が呼吸器疾患である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記呼吸器疾患が、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺気腫、慢性閉塞性気道疾患、慢性咳、風邪、インフルエンザ、ハンタウイルス、肺炎、又は胸膜炎である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が鼻腔内に又は吸入による投与に使用される、請求項13~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1~16の何れか一項に記載の組成物と、少なくとも1つの追加の医薬品とを含む、治療用組成物。
【請求項18】
前記追加の医薬品は、抗菌剤、抗生物質、粘液溶解薬、気管支拡張薬、血管拡張薬、降圧薬、循環器系薬、およびカルシウムチャネル遮断薬からなる群から選択される、請求項17に記載の治療用組成物。
【請求項19】
請求項1~12の何れか一項に記載の組成物を含む、吸入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システアミンもしくはシスタミンなどの硫黄含有化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくはエステルを含む微小粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
嚢胞性線維症(CF)は、染色体に位置する嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子の変異により引き起こされる多系統疾患である。
【0003】
肺疾患は、依然として、CF患者の病的状態および死亡率の主な原因である[Davis PB, Drumm M, Konstan MW. Cystic fibrosis. Am J Respir Crit Care Med 1996; 154:1229; Goss CH, Rosenfeld M. Update on cystic fibrosis epidemiology; Curr Opin Pulm Med 2004; 10:510; Brennan AL, Geddes DM. Cystic fibrosis. Curr Opin Infect Dis 2002; 15:175; Gibson RL, Burns JL, Ramsey BW. Pathophysiology and management of pulmonary infections in cystic fibrosis. Am J Respir Crit Care Med 2003; 168: 918。
【0004】
CF肺疾患の主なドライバーの1つは感染症である(Sangel SD, Gibson RL, Emerson J, et al. Impact of Pseudomonas and Staphylococcus infection on inflammation and clinical status in young children with cystic fibrosis. J Pediatr 2009; 154:183; Cystic Fibrosis Foundation Annual Patient Registry 2013。http: //www. cff. org/research/ClinicalResearch/PatientRegistryReport/で利用可能(2015年8月7日にアクセス))。
【0005】
CFにおいて感染症を処置するアプローチは多面的であり、抗生物質、肺理学療法、分泌物排除を促進する吸入薬、および抗炎症剤が含まれる。確かに、抗生物質の使用の改善が、CF患者で生じた生存時間の増加のかなりの部分の要因である(Brennan AL, Geddes DM. Cystic fibrosis. Curr Opin Infect Dis 2002; 15:175; Sagel SD, Gibson RL, Emerson J, et al. Impact of Pseudomonas and Staphylococcus infection on inflammation and clinical status in young children with cystic fibrosis. J Pediatr 2009; 154: 183)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
肺疾患/病気、特に、CF肺などの粘液が豊富な環境に関連するものを処置および予防するために、より良好な療法に対するニーズが残っている。さらに、細菌感染症の処置または予防において、特にCF肺において現在利用可能な処置の有効性を高め得る、新規の補充療法または補助処置の導入と共に使用される抗生物質の量または用量を制限するニーズも残っている。
【0007】
驚くべきことに、当社は、微小粒子が、肺疾患患者へのシステアミンの有用な送達方式を提供することを示した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様により、硫黄含有化合物またはその薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくはエステルを含む微小粒子または複数の微小粒子を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用する場合、「硫黄含有化合物」は、システアミン、シスタミン、またはその誘導体を包含することを意図する。硫黄含有化合物はアミノチオールであり得る。アミノチオールの例としては、システアミンおよびその誘導体が挙げられる。用語「その誘導体」は、2-メチルチオエチルアミン(シンナマート)、2-メチルチオエチルウレア、N-(2-メチルチオエチル)p-アセトアミドベンズアミド、2-アミノエタンエチオール、N-(2-メチルチオエチル)p-アセトアミドベンゼンスルホンアミド、N-(2-プロピルチオエチル)-p-メトキシベンズアミド、N-(ブチルチオエチル)ニコチンアミド、N-(2-ドデシルチオエチル)p-ブトキシベンズアミド、N-(2-メチルチオエチル)p-トルエンスルホンアミド、N-(2-イソプロピルチオエチル)プロピオンアミド、N-(2-オクチルチオエチル)アセトアミド、N-(2-ブチルチオエチル)メタンスルホンアミド、N-(2-イソペンチルチオエチル)ブタン、ビス1,4-(2-アセトアミドエチルチオ)、2,3-ブタンジオール、2-ヘキサデシルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-アリルチオエチルアミンマレート、9-オクタデセン2-イルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-ドデシルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-イソペンチルチオエチルアミンマンデラート、2-オクタデシルチオエチルアミンサリチラート、2-.ベータ.-ヒドロキシエチルチオエチルウレア、2-.ベータ.-ヒドロキシエチルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-(2,3-ジヒドロキシプロピルチオ)エチルアミンp-トルエンスルホネート、2-(2-ヒドロキシプロピルチオ)エチルアミンオキサレート、N-(2-メチルチオエチル)フェニルアセトアミド、2-(2,2-ジメトキシエチルチオ)エチルアミンヒドロクロリド、2-(2,2-ジメトキシエチルチオ)エチルアミンウンデシレナート、2-(2,2-ジエトキシエチルチオ)エチルアミンウンデシレナート、2-(2,2-ジエトキシエチルチオ)エチルアミンアセテート、2-ウンデセニルチオエチルアミン、2-.ベータ.-ウレイドエチルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-.ベータ.-アセトアミドエチルチオエチルアミントロパート、2,2’-チオジエチルアミンフマラート、2,2’-チオジエチルウレア、3-.ベータ.-アミノエチルチオプロピルアミンヒドロクロリド、S-.ベータ.-ウレイドエチルチオカルバマート、2-エトキシカルボニルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-ジメチルアミノカルボニルチオエチルアミンサルフェート、2-ブトキシカルボニルメチルチオエチルウレア、2-エチルオキシカルボニルメチルチオエチルアミンヒドロクロリド、メチルヒドロクロリドの6-.ベータ.-アミノエチルチオヘキサノエート、5-.ベータ.-アミノエチルチオペンタン酸、2-フェニルチオエチルアミンジヒドロゲンホスフェート、2-p-t-ブチルフェニルチオエチルアミントリクロロアセテート、2-p-メトキシフェニルチオエチルアミンジタルトラート、2-トリルチオエチルアミンヒドロブロミド、2-(1-ビフェニルチオ)エチルアミンヒドロクロリド、2-N-ペンタクロロフェニルチオエチルアセトアミド、2-ベンジルチオエチルアミンマレート、2-ベンジルチオエチルアミンニコチナート、2-ベンジルチオ2-メチルプロピルアミンヒドロクロリド、2-ベンジルチオプロピルアミンラクテート、N-(2-ベンジルチオエチル)ニコチンアミドヒドロクロリド、N-(2-ベンジルチオエチル)10-ウンデセンアミド、N-(2-ベンジルチオエチル)ヘキサデカンアミド、S-.ベータ.-アミノエチルメルカプト酪酸、N-(2-ベンジルチオエチル)ホルムアミド、N-(2-ベンジルチオエチル)フェニルアセトアミド、N-[2-(2,6-ジメチルフェニル)エチル]ヘキサンアミド、2-o-アミノフェニルチオエチルアミンスクシナート、N-(2-ベンジルチオエチル)グルタミン、S-.ベータ.-アミノエチルメルカプト酢酸(3-S-.ベータ.-アミノエチル)メルカプトプロピオン酸、(3-S-.ガンマ.-アミノプロピル)メルカプト酢酸、S(2-p-メトキシベンズアミドエチル)メルカプト2-(2-ナフチルメチルチオ)エチルアミンヒドロクロリド、2-(2-ナフチルメチルチオ)エチルアミンジスクシネート、(2-テニル)2-チオエチルアミンヒドロブロミド、2-N-アセチル(2-テニルチオ-エチルアミン、2-o-クロロベンジルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-p-クロロベンジルチオエチルアミングリコレート、2-o-フルオロベンジルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-フルフリルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-テトラヒドロフルフリルチオエチルアミンp-アミノ-ベンゾエート、2-.ベータ.-フェニルエチルチオエチルアミングルタメート、2-ジフェニルメチルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-トリフェニルメチルチオエチルアミンヒドロクロリド半水和物、2-(2-ピリジルエチルチオ)エチルアミンヒドロクロリド、2-(2-p-トルエンスルホンアミドエチルチオ)ピリジンN-オキシド、2-.ベータ.-アミノエチルチオメチルピリジンN-オキシドジヒドロクロリド、2-.ベータ.-アミノエチルチオピリジンN-オキシドヒドロクロリド、2,4-ジクロロ2-ベンジルチオエチルアミンアスパルテート、N-[2-(3,4-ジクロロベンジルチオ)エチル]ブチルアミド、N-[2-(2,6-ジクロロベンジルチオ)エチル]ドデカンアミド、N-[2-(3,5-ジクロロベンジルチオ)エチル]トリフルオロアセトアミドヒドロクロリド、2-p-エトキシベンジルチオエチルアミンヒドロクロリド、N-[2-m-フルオロベンジルチオエチル]クロロアセトアミド、2-p-ブロモベンジルチオエチルアミンスクシネート、2-(3,4-ジメトキシベンジルチオ)エチルアミンマレート、2-(3,4-メチレンジオキシベンジルチオ)エチルアミンヒドロクロリド、2-(2,4-ジクロロセチルチオ)エチルアミン、2(3,4,5-トリメトキシベンジルチオ)エチルアミンヒドロシナメート、2-p-メトキシベンジルチオエチルアミンサリシレート、2-o-メチルベンジルチオエチルアミン酢酸フェニル、N-[2-p-ジメチルアミノベンジルチオエチル]メタン-スルホンアミド、2-p-フェノキシベンジルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-.ベータ.-アミノエチルチオピリジンヒドロクロリド、クエン酸2-ベンジルチオエチルアミン、N-[2-ベンジルチオエチル]2,4-ジヒドロキシ3,3-ジメチルブチルアミド、N-(2-ベンジルチオエチル)6,8-ジヒドロキシ7,7-ジメチル5-オキソ4-アザオクタンアミド、N-[2-(2-ピリジルチオ)エチル]プロピオンアミド、2-(2-ピリジルメチルチオ)エチルアミンジヒドロクロリド、2-ベンジルチオエチルアミンパントテナート、ベータ.-モルホリノエチルのS-(.ベータ.-アセトアミドエチル)メルカプトアセテート、S-(.ベータ.-フェニルアセトアミドエチル)メルカプトアセテートN’-メチル2-ピペラジノエチル、ベータ.-ピロリジノ-エチルのS-(.ベータ.-ウレイドエチル)メルカプトアセテート、.ベータ.-ジメチルアミノエチルのS-(.ベータ.-トリフルオロアセトアミドエチル)-.ベータ.メルカプト-プロピオネート、2-p-ニトロベンジルチオエチルアミンクロトネート、2-.ベータ.-モルホリノカルボニルエチルチオエチルアミンヒドロクロリド、N,N-ジ(ヒドロキシエチル)S-(.ベータ.-ベンズアミド-エチル)メルカプト-アセトアミド、N[2-N’-メチルピペラジノカルボニルチオエチル]アセトアミド、2-(1-ナフチルチオ)エチルアミンヒドロクロリド、N-(3-.ベータ.-ウレイドエチルチオプロピル)スクシンアミド酸、3-アリルチオプロピルアミン、3-(2,2’-ジメトキシエチルチオ)プロピルアミン、3-(2,2’-ジメトキシエチルチオ)プロピルアミンサルフェート、S-.ベータ.-アミノエチルメルカプト酢酸、S-.ベータ.-アミノエチルメルカプト酢酸の塩酸塩、N-(2-ベンジルチオエチル)アセトアミド、N-(2-ベンジルチオエチル)プロピオンアミド、N-(2-ベンジルチオエチル)ブチルアミド、N-(2-ベンジルチオエチル)メタンスルホンアミド、N-(2-ベンジルチオエチル)エタンスルホンアミド、N-(2-ベンジルチオエチル-プロパンスルホンアミド、N-(2-ベンジルチオエチル)ブタンスルホンアミド、S-(2-p-アセトアミドベンゼンスルホンアミドエチル)メルカプト酢酸、S-(2-p-アセトアミドベンズアミドエチル)メルカプト酢酸、N-(2-テニルチオエチル)アセトアミド、2-ベンジルチオプロピルアミン、2-ベンジルチオ2-メチルプロピルアミン、2-(2-p-トルエンスルホンアミドエチルチオ)ピリジンN-オキシド、S-(2-p-ブトキシベンズアミドエチル)メルカプト酢酸、2-t-ブチルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-メトキシカルボニルメチルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-エトキシカルボニルメチルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-プロポキシカルボニルメチルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-ブトキシカルボニルメチルチオエチルアミンヒドロクロリド、2,2’-チオジエチルアミンジヒドロクロリド、3-(2-アミノエチルチオ)アラニンヒドロクロリド、二酸性リン酸2-ベンジルチオエチルアンモニウム、2-メチルチオエチルアミン、N-(メチルチオエチル)p-アセトアミドベンズアミド、N-(2-メチルチオエチル)ニコチンアミド、N-(2-メチルチオエチル)ベンズアミド、N-(2-メチルチオエチル)p-ブトキシベンズアミド、N-(2-メチルチオエチル)ブチルアミド、N-(2-メチルチオエチル)プロピオンアミド、N-(2-メチルチオエチル)アセトアミド、N-(2-メチルチオエチル)ブタンスルホンアミド、N-(2-オクチルチオエチル)メタンスルホンアミド、2-セチルチオエチルアミンヒドロクロリド、2-(2-ヒドロキシエチルチオ)エチルアミンヒドロクロリド、2-メチルチオエチルアミン酢酸フェニル、およびウンデシレン酸2-メチルチオエチルアミンが包含される。
【0010】
あるいは、硫黄含有化合物は、シスタミンなどの有機ジスルフィドであり得る。
【0011】
本発明の硫黄含有化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で投与され得る。本発明の薬学的に許容可能な塩は、従来の化学法により、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から合成され得る。概して、斯かる塩は、遊離酸形態または塩基形態のこれらの化合物を、水もしくは有機溶媒中のまたはその2つの混合物中の化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることにより調製され得;概して、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed, Mack Publishing Company, Easton, Pa., US, 1985, p. 1418に見つけられ、この開示は参照により本明細書に組み込まれるものとする;また、Stahl et al, Eds, "Handbook of Pharmaceutical Salts Properties Selection and Use", Verlag Helvetica Chimica Acta and Wiley-VCH, 2002を参照されたい。句「薬学的に許容可能な」は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なく、合理的な利益/リスク比に見合い、ヒトまたは場合によっては動物の組織との接触用途に適切である化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために利用される。
【0012】
したがって、本発明には、親化合物がその酸性塩または塩基性塩を作ることにより修飾された本開示の化合物の薬学的に許容可能な塩、例えば、無機または有機の酸または塩基などから形成された、慣習的な非毒性塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。斯かる酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタン-スルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラート、およびウンデカン酸塩が挙げられる。塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩などの有機塩基との塩、N-メチル-D-グルカミン、ならびに、アルギニン、リジン等のようなアミノ酸との塩が挙げられる。また、塩基性窒素含有基は、例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物などの低級アルキルハロゲン化物;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジブチル硫酸;およびジアミル硫酸のようなジアルキル硫酸、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物、臭化ベンジルおよび臭化フェネチルなどのようなアラルキルハロゲン化物などの薬剤で四級化され得る。
【0013】
本発明の好適な態様では、微小粒子の粒子径は、約0.5~15ミクロン、例えば、4~8ミクロンを含む1~13ミクロンである。粒子径は、「体積平均径」として定義され得、従って、微小粒子の体積平均径は、約0.5~15ミクロン、例えば、4~8ミクロンを含む、1~13ミクロンであり得る。微小粒子の体積平均径は、2~4ミクロン/マイクロメートル(2-4μm)であり得る。
【0014】
平均は、アベレージの概念に似た計算値である。種々の平均計算がいくつかの基本資料(ISO 9276-2:2001: Representation of results of particle size analysis - Part 2: Calculation of average particle sizes/diameters and moments from particle size distributions; ASTM E 799-03 Standard Practice for Determining Data Criteria and Processing for Liquid Drop Size Analysis)で定義されている。平均値は、分布計算の根拠(数、表面、体積)と関係することから、平均には多数の定義がある。数、表面、および体積の分布の説明については、(TN154, Particle Size Result Interpretation: Number vs. Volume Distributions(www.horiba.com/us/particleで利用可能)を参照されたい。体積平均を定義するための式を以下に示す。この計算について考える最良の方法は、nサイズのチャネルの上限と下限を示すヒストグラム表について、そのチャネル内のパーセントと共に考えることである。各チャネルのDi値は幾何平均、つまり、上方直径×下方直径の平方根である。分子には、幾何Diを四乗し、そのチャネルのパーセントを掛け、全チャネルを合計したものをとる。分母には、幾何Diを三乗し、そのチャネルのパーセントを掛け、全チャネルを合計したものをとる。
【0015】
【数1】
【0016】
体積平均径には、D4,3またはD50/D90を含むいくつかの名前がある。
【0017】
本明細書で使用する場合、粒子に関連する用語「直径」または「d」は、特に規定がなければ、数平均粒子径を指す。数平均粒子径を説明するために使用可能な等式の例を以下に示す:
【0018】
【数2】
(式中、n=所与の直径(d)の粒子の数)
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「幾何学的サイズ」、「幾何学的径」、「体積平均サイズ」、「体積平均径」、または「dg」は、体積加重直径平均を指す。体積平均径を説明するために使用可能な等式の例を以下に示す:
【0020】
【数3】
(式中、n=所与の直径(d)の粒子の数)
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「体積中央値」は、「体積加重」分布の直径中央値を指す。中央値は、全体の505がより小さく、50%がより大きい直径であり、50%累積画分に相当する。
【0022】
幾何的粒子径分析は、当技術分野で既知であるように、Coulterカウンターにおいて、光散乱、光顕微鏡、走査型電子顕微鏡、または透過型電子顕微鏡により行うことが可能である。肺への送達についての理想的シナリオは、空気動力学径<5マイクロメートルというのが、一般的に信じられている考えである。例えば、Edwards et al., J Appl. Physiol. 85(2):379-85 (1998); Suarez & Hickey, Respir. Care. 45(6):652-66 (2000)を参照。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「空気動力学径」は、重力下で分析する粒子と同じ速度で落下する、1g/mLの密度の球の直径と等しい径を指す。微小粒子の空気動力学径(da)は、以下により、幾何学的径(dg)およびエンベロープ密度(pe)と関係する:
【0024】
【数4】
【0025】
空隙率はエンベロープ密度に影響を与え、これは、ひいては、空気動力学径に影響を与える。従って、空隙率を使用して、微小粒子が肺に入り込む場所と、微小粒子が肺内で医薬品を放出する速度の両方に影響を与えることが可能である。重力沈下(沈降)、慣性衝突、ブラウン拡散、妨害、および静電が、肺内の粒子付着に影響を与える。
【0026】
微小粒子の空気動力学径は、約0.5~15ミクロン、例えば、4~8ミクロンを含む、1~13ミクロンであり得る。微小粒子の空気動力学径は、2~4ミクロン/マイクロメートル(2-4μm)であり得る。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、本発明の第1態様の微小粒子と安定化剤とを含む組成物を提供する。ある場合には、安定化剤は、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類、およびそれらの対応する糖アルコール、多糖類、ならびに化学修飾された炭水化物からなる群から選択される。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、硫黄含有化合物またはその薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくはエステルと、本明細書で定義する安定化剤とを含む、組成物を提供する。
【0029】
安定化剤は、トレハロースなどの糖であり得る。
【0030】
安定化剤は、ラクトース、エリトリトール、リビトール、キシリトール、ガラクチトール、グルシトール、およびマンニトールからなる群から選択される糖アルコールであり得る。好適には、安定化剤はマンニトールである。
【0031】
本発明の好適な組成物では、組成物は、最大20%w/wの硫黄含有化合物、例えば、約5~10%w/wなど1~15%の硫黄含有化合物を含む。典型的には、組成物は、約5または10%の硫黄含有化合物を含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、特定の量を変化させて、該特定の量の+または-10%の微量な変動を許容することを意図する。
【0033】
本発明の好適な組成物では、組成物は最大85%の安定化剤を含む。組成物は、80~95%w/wの安定化剤、例えば、85~90%w/wの安定化剤を含み得る。典型的には、組成物は、約90%の安定化剤を含む。
【0034】
トレハロースまたはマンニトールを含む本発明の組成物において、システアミンは、製剤の安定性を高めることが示された。
【0035】
本発明の好適な実施形態では、硫黄含有化合物は、システアミンまたはシスタミン、好適にはシステアミンである。本発明のさらなる実施形態では、硫黄含有化合物は、システアミン酒石酸塩である。
【0036】
好適な実施形態では、組成物は、水性組成物として提供される。
【0037】
本発明の化合物は、さらにロイシンを含み得る。ロイシンは、驚くべきことに、製剤の安定性を改善することが示された。本発明の一実施形態では、組成物は、1~10%のロイシン、好適には約5%のロイシンを含む。
【0038】
組成物は、微小粒子、ミクロスフェア、および粉末からなる群から選択される固形剤中にあり得る。好適には、組成物は、乾燥粉末として提供される。粉末は、幾何学的径が、3~7ミクロンなどの4~8ミクロンを含む、約3~8ミクロンである粒子を含有し得る。一実施形態では、粉末は、幾何学的径が最大5ミクロン、例えば2~4ミクロンである粒子を含有する。
【0039】
本発明のさらなる態様は、肺疾患の処置または予防で使用するための、本発明の第1態様の微小粒子または本発明の組成物を提供する。
【0040】
本発明のさらなる態様は、本発明の第1態様の微小粒子または本発明の組成物を、肺疾患にかかっているまたは以前かかったことがある対象に投与するステップを含む、肺疾患を処置または予防する方法に関する。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「肺疾患」には、嚢胞性線維症を含む肺の任意の疾患または病気、特に、嚢胞性線維症と関連する肺感染症および慢性閉塞性肺疾患(COPD)が含まれる。COPDは、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺気腫、および慢性閉塞性気道疾患を含む肺疾患の集合の名称である。用語肺疾患には、また、粘液または感染性要素を有する任意の呼吸器疾患、例えば、慢性咳、風邪、インフルエンザ、ハンタウイルス、肺炎、および胸膜炎が含まれることも意図される。
【0042】
本発明のさらなる態様は、肺疾患の処置または予防に有用であり得る、本発明の第1態様の微小粒子または本発明の組成物と、少なくとも1つの追加の医薬品とを含む治療用組成物(または組み合わせ)を提供する。追加の医薬品は、抗菌剤、例えば抗ウイルス薬、抗真菌薬、または抗菌薬(例えば、抗生物質)など、粘液溶解薬、血管拡張薬、例えば気管支拡張薬、降圧薬、循環器系薬、およびカルシウムチャネル遮断薬などからなる群から選択され得る。好適には、追加の医薬品は抗生物質である。
【0043】
用語「抗生物質」は、細菌源に由来し得る抗菌薬を指すために使用する。抗生物質剤は、殺菌性および/または静菌性であり得る。
【0044】
抗生物質剤は、β-ラクタム環を含有し得る。β-ラクタム環は、いくつかの抗生物質ファミリーのコア構造の一部であり、主な抗生物質は、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、およびモノバクタムである。これらの抗生物質剤は、β-ラクタム抗生物質と呼ばれる。
【0045】
概して、抗生物質剤は、アミノグリコシド、アンサマイシン、カルバセフェム、β-ラクタム_カルバペネム、セファロスポリン(第1、第2、第3、第4、および第5世代のセファロスポリンを含む)、ペニシリン、モノバクタム)、グリシルサイクリン、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、ニトロフラン、オキサゾリジノン、キノロン、スルホンアミド、ポリペプチド、ならびにテトラサイクリンからなる群である。
【0046】
抗生物質剤は、アミノグリコシド、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン(第1、第2、第3、第4、および第5世代のセファロスポリンを含む)、リンコサミド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、キノロン、ペニシリン、スルホンアミド、ポリペプチド、ならびにテトラサイクリンからなる群であり得る。あるいは、または、加えて、抗生物質剤は、マイコバクテリアに対し有効であり得る。
【0047】
抗生物質剤は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、またはパロモマイシンなどのアミノグリコシドであり得る。
【0048】
抗生物質剤は、ゲルダナマイシンおよびハービマイシンなどであり得る。
【0049】
あるいは、抗生物質剤は、ロラカルベフなどのカルバセフェムであり得る。
【0050】
抗生物質剤は、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチンまたはメロペネムなどのカルバペネムである。
【0051】
あるいは、抗生物質剤は、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン(Cefalotin)もしくはセファロチン(Cefalothin)などのセファロスポリン(第1世代)、または、あるいは、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、もしくはセフロキシムなどのセファロスポリン(第2世代)であり得る。あるいは、抗生物質剤は、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフチブテン、セフチゾキシム、およびセフトリアキソンなどのセファロスポリン(第3世代)、または、セフェピムおよびセフトビプロールなどのセファロスポリン(第4世代)であり得る。
【0052】
抗生物質剤は、クリンダマイシンおよびアジスロマイシンなどのリンコサミド、または、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、およびスペクチノマイシンなどのマクロライドであり得る。
【0053】
あるいは、抗生物質剤は、アズトレオナムなどのモノバクタム、または、フラゾリドンもしくはニトロフラントインなどのニトロフランであり得る。
【0054】
抗生物質剤は、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンGもしくはV、ピペラシリン、テモシリン、およびチカルシリンなどのペニシリンであり得る。
【0055】
抗生物質剤は、リネゾリドまたはテジゾリドなどのオキサゾリジノンであり得る。
【0056】
抗生物質剤は、マフェニド、スルホンアミドクリソイジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニルイミド、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾール(コトリモキサゾール)(TMP-SMX)などのスルホンアミドであり得る。
【0057】
抗生物質剤は、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、およびテマフロキサシンなどのキノロンであり得る。
【0058】
抗生物質剤は、ポリペプチドであり得る。斯かるポリペプチドの例としては、バシトラシン、コリスチン、およびポリミキシンBが挙げられる。一実施形態では、抗生物質剤は、ポリペプチドではない。
【0059】
抗生物質剤は、リポペプチドであり得る。斯かるリポペプチドの例としては、ダプトマイシンおよびサーファクチンが挙げられる。
【0060】
あるいは、抗生物質剤は、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、およびオキシテトラサイクリンなどのテトラサイクリンであり得る。
【0061】
あるいは、抗生物質剤は、グリシルサイクリンであり得る。斯かるグリシルサイクリンの例としては、チゲサイクリンが挙げられる。
【0062】
あるいは、または、さらに、抗生物質剤は、マイコバクテリアに対して有効であり得る。特に、抗生物質剤は、クロファジミン、ランプレン、ダプソン、カプレオマイシン、サイクロセリン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピシン、リファブチン、リファペンチン、またはストレプトマイシンであり得る。
【0063】
一実施形態では、抗生物質剤は、マクロライドおよび/またはアミノグリコシドおよび/またはスルホンアミドである。
【0064】
一実施形態では、抗生物質は、トブラマイシン、アジスロマイシン、テリスロマイシン、シプロフラキシン(ciproflaxin)、セフタジジムから選択される。
【0065】
一実施形態では、抗生物質剤は、シプロフラキシンではない。別の実施形態では、抗生物質はトブラマイシンではない。
【0066】
抗生物質剤は、腸内細菌科細菌(例えば、E.coliもしくはKlebsiella spp.、例えば、K.ニューモニエなど)またはBurkholderia spp.などの非腸内細菌科細菌により引き起こされる感染症の処置または予防において活性であり得る。
【0067】
概して、抗生物質剤は、グラム陰性またはグラム陽性の細菌、例えば、Pseudomonas spp.により引き起こされる感染症の処置または予防において活性である。
【0068】
本発明の一実施形態では、抗生物質は、β-ラクタム抗生物質ではない。
【0069】
本発明の活性剤は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、および/または担体をさらに含有する医薬組成物として提供され得る。例えば、追加の医薬品は、薬剤と、ラクトースまたはマンニトールなどの担体とを含む組成物として提供され得る。
【0070】
本発明の好適な態様では、本発明の微小粒子または組成物と、追加の医薬品は同時に、連続して、または別個に投与され得る。微小粒子または組成物と、追加の医薬品は、組み合わせパッケージとして提供され得る。組み合わせパッケージは、さらに、微小粒子または組成物と追加の医薬品のそれぞれを同時に、別個に、または連続して投与するための指示書を含み得る。連続投与では、微小粒子または組成物と追加の医薬品を、任意の順序で投与することが可能である。
【0071】
少なくとも1つの追加の医薬品は、本発明の第1態様の前記微小粒子とは別個の微小粒子において提供され得る。あるいは、少なくとも1つの追加の医薬品は、微小粒子以外の形態で提供され得る。
【0072】
本発明の一実施形態では、本発明の第1態様の微小粒子または本発明の組成物は、少なくとも1つの追加の医薬品を含む。
【0073】
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも1つの追加の医薬品は、第1態様の微小粒子または本発明の組成物とは別個の微小粒子において投与される。
【0074】
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも1つの追加の医薬品は、微小粒子以外の形態で投与される。
【0075】
一実施形態では、システアミンなどの硫黄含有化合物を含む本発明の微小粒子もしくは組成物および/または硫黄含有化合物に加えて投与される追加の医薬品の体積平均径は、0.1~5マイクロメートル(例えば、1~5マイクロメートル、2~5マイクロメートルなど)である。別の実施形態では、本発明の微小粒子もしくは組成物および/または追加の医薬品の体積平均径は、大きい気管支への送達を標的にしているため、最大10マイクロメートルである。粒子径(幾何学的径および空気動力学径)は、エアロゾル化および吸入時に、気道の標的部位(例えば、上気道、肺の深部など)にたやすく付着する一方、好適には、口腔咽頭または鼻の領域への粒子の過剰な付着を避けるまたは最小限にする、容易に分散する粉末を提供するように選択される。好適な一実施形態では、多孔性微小粒子の体積平均径は、2~5マイクロメートル、例えば、2~4マイクロメートルである。
【0076】
吸入療法の効率を改善する治療用エアロゾル吸入剤の設計がかなり注目されている。Timsina et. al., Int. J Pharm., 101: 1-13 (1995); and Tansey, I. P., Spray Technol. Market, 4: 26-29 (1994)。特に、粒子凝集、つまり吸入療法の効率をかなり下げる現象を避けるというニーズの点で、乾燥粉末エアロゾルの表面テクスチャの設計も注目されている。French, D. L., Edwards, D. A. and Niven, R. W., J. Aerosol ScL, 27: 769-783 (1996)。大きな粒子径の乾燥粉末製剤(「DPF」)は、凝集の低下(Visser, J., Powder Technology 58: 1-10 (1989))、エアロゾル化の簡易化、および食作用の可能性の低下などの、改善された流動性特徴を有する。Rudt, S. and R. H. Muller, J. Controlled Release, 22: 263-272 (1992); Tabata, Y. and Y. Bcada, J. Biomed. Mater. Res., 22: 837-858 (1988)。吸入療法用乾燥粉末エアロゾルは、概して、主に5マイクロメートル未満の範囲の平均幾何的径で生成される。Ganderton, D., J Biopharmaceutical Sciences, 3: 101-105 (1992); and Gonda, I. "Physico-Chemical Principles in Aerosol Delivery," in Topics in Pharmaceutical Sciences 1991, Crommelin, D. J. and K. K. Midha, Eds., Medpharm Scientific Publishers, Stuttgart, pp. 95-115, 1992。大きな「担体」粒子(薬物を含有しない)は治療用エアロゾルと共に共送達され、他の可能性のある利点の中でも特に、効率的なエアロゾル化を達成するのに役立った。French, D. L., Edwards, D. A. and Niven, R. W., J. Aerosol ScL, 27: 769- 783 (1996)。
【0077】
吸入により現在投与される薬物は、主に、液体エアロゾル製剤にされる。しかしながら、多くの薬物および賦形剤、特にタンパク質、ペプチド(Liu, R., et al., Biotechnol. Bioeng., 37: 177-184 (1991))、およびポリ(ラクタイド-co-グリコライド)(PLGA)などの生分解性担体は、長期間の水性環境では不安定である。これにより、液体製剤としての保管が問題になる場合がある。さらに、タンパク質変性が、液体製剤を用いたエアロゾル化時に生じる可能性がある。これらおよび他の制限を考えて、乾燥粉末製剤(DPF)は、肺内送達用エアロゾル製剤としてさらに高い関心を集めている。Darnms, B. and W. Bains, Nature Biotechnology (1996); Kobayashi, S., et al, Pharm. Res., 13(1): 80-83 (1996); and Timsina, M., et al., hit. J. Pharm., 101: 1-13 (1994)。しかしながら、DPFの不利益の中には、超微細な微粒子粉末は、通常、流動性およびエアロゾル化特性に乏しく、これにより、口および喉への付着から逃れる吸入エアロゾル分率である呼吸可能エアロゾル分率が比較的小さくなるというのがある。Gonda, I., in Topics in Pharmaceutical Sciences 1991, D. Crommelin and K. Midha, Editors, Stuttgart: Medpharm Scientific Publishers, 95-117 (1992)。多くのエアロゾルに対する主な関心は、疎水性相互作用、静電相互作用、およびキャピラリー相互作用などの粒子-粒子相互作用により引き起こされる粒子の凝集である。本発明は、これらの問題に対処することを目的とする。
【0078】
したがって、さらなる態様において、本発明は、本発明の第1態様の微小粒子または本発明の組成物を含む吸入装置を提供する。その装置は、乾燥粉末吸入装置および定量噴霧式吸入器から選択され得る。
【0079】
本発明のさらなる態様において、組成物は、微小粒子またはスルフィドリル(SH)化合物と安定化剤との水性溶液を調製し、該溶液から水を蒸発させることによって得られる。好適には、蒸発ステップは噴霧乾燥による。
【0080】
したがって、本発明のさらなる態様は、微小粒子またはスルフィドリル(SH)化合物と安定化剤との水性溶液を調製するステップと、水性溶液から水を蒸発させるステップとを含む、本発明の組成物を調製するプロセスを提供する。好適には、蒸発ステップは噴霧乾燥による。
【0081】
本発明の微小粒子は、乾燥粉末の形態をとり得る。微小粒子は、ヒト対象による前記微小粒子の吸入から少なくとも2時間の期間にわたり、有効量のスルフィドリル(SH)化合物を放出し得る。好適な実施形態では、硫黄含有化合物の実質的に全てが、ヒト対象による前記微小粒子の吸入から24時間までに放出される。
【0082】
微小粒子は投与するのに利便性が高く、それにより、患者の服薬遵守の度合いを高める。本発明の微小粒子または組成物は、一吹きで投与することができる。あるいは、微小粒子は、システアミンの徐放を提供するように製剤化される。微小粒子は、システアミンの肺への局所送達または肺を介した全身送達を容易にし得る。
【0083】
本発明の微小粒子または組成物は、また、鼻腔内にまたは吸入により投与され得、適切な噴霧剤を使用して、または使用せず、乾燥粉末吸入器の形態で、または、加圧式の容器、ポンプ、スプレー、アトマイザ、ネブライザからのエアロゾルスプレーの態で送達され得る。好適には、本発明の微小粒子または組成物は、気道に投与される。
【0084】
本明細書で使用する場合、用語「含む(comprise)」、「含み(comprising)」、「含む(include)」、および「含み(including)」は、反対のことが明示的に示されない限り、制限のないオープンな用語であることが意図される。
【0085】
ここで、本発明を、単なる例示として、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】バッチ57♯08aの粒子径分布を示すグラフである。
図2】バッチ57♯08bの粒子径分布を示すグラフである。
図3】バッチ57♯07(プラセボ)の粒子径分布を示すグラフである。
図4】Lynovex(登録商標)/ラクトース研究が、Pseudomonas肺負荷の減少を実証することを示す図である。
図5】Lynovex(システアミン)およびトブラマイシンの組み合わせが、肺負荷の減少を引き起こすことを示す図である。
図6】マウスの体重が、Lynovexおよびトブラマイシンの組み合わせの存在下で減少しないことを示す図である。
【実施例
【0087】
実施例1:
経口吸入によるシステアミン酒石酸塩の送達のための潜在的な製剤化技法としての噴霧乾燥
1 材料
システアミン酒石酸塩:Recordatiにより製造され、バッチナンバー140514-1がNova Bioticsにより供給された。
オレイン酸:Fluka、75096-1L、ロットナンバーBCBN9185V
水:脱イオン、ミリポア、RiOs 5システム、シリアルナンバーF8HN7 8491K
L-ロイシン:Sigma、L-8000、ロットナンバー91k0906
トレハロース:Sigma、T9449-1006、ロットナンバー011M7000N
【0088】
2 方法
2.1 オレイン酸およびトレハロースとともに製剤化したシステアミン酒石酸塩の溶液を使用した噴霧乾燥初期研究
システアミン酒石酸塩のいくつかのバッチを、有効成分のみを含有する溶液ならびに有効成分と追加のトレハロースおよびオレイン酸(潜在的な味覚マスキング剤として加えた)を含有する溶液を噴霧乾燥することにより生成した。
【0089】
システアミン酒石酸塩を、開封前に30分間、室温まで温めた。噴霧乾燥する各バッチにつき、100mgのシステアミン酒石酸塩粉末を10mLの脱イオン水に加えて、総固形濃度を1%w/vにした。これを完全に溶解するまで撹拌した。
【0090】
追加の賦形剤(オレイン酸およびトレハロース)をシステアミン酒石酸塩溶液に加えて、噴霧乾燥後の粉末特性に対する影響を評価した。高効率のサイクロンおよびBuchi二流体ノズルを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を使用して、溶液を噴霧乾燥した。完全噴霧乾燥条件を以下の表1で提供する。
【0091】
【表1】
表1 噴霧乾燥条件
【0092】
これらの初期研究の結果により、製剤中にオレイン酸が存在することは、貧弱な粉末特性と回収率の低さを招くことが確認された。
【0093】
噴霧乾燥したバッチの要約を以下の表2に記載する。
【0094】
【表2】
表2 オレイン酸を含有する初期実行可能バッチの生成
【0095】
2.2 トレハロースと共に製剤化したシステアミン酒石酸塩の溶液を使用した噴霧乾燥初期研究(オレイン酸なし)
3.1(以下)で得られる噴霧乾燥結果に基づき、オレイン酸を製剤から除去することにした。
【0096】
システアミン酒石酸塩を、開封前に30分間、室温まで温めた。噴霧乾燥する各バッチにつき、100mgのシステアミン酒石酸塩粉末を10mLの脱イオン水に加えて、総固形濃度を1%w/vにした。これを完全に溶解するまで撹拌した。
【0097】
トレハロースをシステアミン酒石酸塩溶液に加えて、噴霧乾燥した粉末の特性に対する影響を評価した。高効率のサイクロンおよびBuchi二流体ノズルを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を使用して、溶液を噴霧乾燥した。完全噴霧乾燥条件を以下の表3で提供する。
【0098】
【表3】
表3 噴霧乾燥条件
【0099】
噴霧乾燥したバッチの要約を以下の表4に記載する。
【0100】
【表4】
表4 トレハロースの製剤化のための噴霧乾燥条件
*追加のデータを生成するために使用
【0101】
2.3 トレハロースおよびL-ロイシンとともに製剤化したシステアミン酒石酸塩の噴霧乾燥(噴霧乾燥したロイシンありのバッチナンバー052♯155、052♯140、052♯121、ロイシンなしの052♯122)
噴霧乾燥粉末の特性をさらに改善するため、L-ロイシンを製剤に加えた。
【0102】
システアミン酒石酸塩を、開封前に30分間、室温まで温めた。100mgのシステアミン酒石酸塩粉末、50mgのL-ロイシン、および850mgのトレハロースを、10mLの脱イオン水に加えて、総固形濃度を10%w/vにした。これを完全に溶解するまで撹拌した。バッチ052♯140および052♯155を調整して、2gのバッチサイズを生成した。
【0103】
高効率のサイクロンおよびBuchi二流体ノズルを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を使用して、溶液を噴霧乾燥した。完全噴霧乾燥条件を以下の表5で提供する。
【0104】
【表5】
表5 噴霧乾燥条件
【0105】
噴霧乾燥に続き、周囲温度で一晩、第2真空乾燥することにより生成物の含水量をさらに減少させた。次に、最終生成物を密封ガラスバイアルに保管してからカプセル充填した。噴霧乾燥溶液について、以下の表6で要約する。
【0106】
【表6】
*約1gの2つのバッチとして収集
表6 L-ロイシンを含有するシステアミン酒石酸塩製剤の噴霧乾燥
【0107】
2.4 粒子径分析
RODOS分散機付きのSympaTec HELOS粒子径分析器を使用して、粒子径分析を実行した。約50mgの製剤をホッパーに入れた。2バールの圧力の圧縮空気を使用して分散を達成した。全ての機器設定を、付録1の粒子径分析レポートに詳述する(データなし)。
【0108】
2.5 Andersenカスケードインパクターによる空気力学的粒子径分析
60L/分プレセパレータおよびステージ-1~6を備えたCopley Scientific 8 stage Andersenカスケードインパクター(ACI)を使用して、噴霧乾燥粉末の空気力学的粒子径を求めた。方法は、US Pharmacopiea 29 general chapter <601>およびEuropean Pharmacopeia 5.1. 2.9.18(乾燥粉末吸入用手順)に記載された通りとした。
【0109】
以下のパラメータを使用した:
用量:2xカプセル
カプセル:Qualicaps HPMC標準サイズ3
装置:Plastiape、3444、COQ、23970000AA
プレートコーティング:なし
気流:約60L/分(装置全体で4KPaの圧力差として決定)
作動時間:約4秒(4リットルの体積に相当する気流により決定)
プレート洗浄:EDTAを有する0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH8
検出:適切な発色団を提供するエルマン試薬を使用する、412nmのUV
【0110】
洗浄物中のシステアミン酒石酸塩濃度を、以下のセクション3.6に記載するように、412nmで測定した。
【0111】
次に、各ステージで堆積した粉末量を、セクション3.6で決定する吸光係数を使用して計算した。種々のステージで堆積した薬物量を分析することにより、次に、専用Copley Scientificソフトウェアを使用して、収集したペプチド粒子の微細粒子量(Fine Particle Dose(FPD))、微細粒子分率(Fine Particle Fraction(FPF))、空気力学的質量中央値分布(Mass Median Aerodynamic Distribution(MMAD))、および幾何標準偏差(GSD)を計算することが可能になった。
【0112】
微細粒子量(FPD)を、吸入時に肺に侵入することが可能な、つまり呼吸可能なサイズであると一般的に考えられる、吸入生成物の処方用量中の薬物量として定義した。これは、通常、約5ミクロン以下であると考えられる。
【0113】
微細粒子分率(FPF)は、送達用量のパーセンテージとして表されたFPDである。
【0114】
2.6 システアミン酒石酸塩の定量化
システアミン酒石酸塩の定量化を、Shimadzu UV-1650PC UV分光計を使用して実行した。システアミン酒石酸塩がUV発色団エルマン試薬を有さない場合は、5,5-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)を使用した。
【0115】
2.6.1 試薬の調製
反応緩衝液:0.1mMのEDTAを含有する0.1Mのリン酸ナトリウム、pH8
エルマン試薬溶液:40mgのエルマン試薬を10mLの反応緩衝液に溶解
34mgのシステアミン酒石酸塩を100mLの反応試薬に溶解して、1.5mMの溶液を生成。
【0116】
2.6.2 検量線の準備
システアミン酒石酸塩を以下の濃度の反応緩衝液に溶解することにより、標準を調製した:
【0117】
【表7】
表2 システアミン酒石酸塩標準
【0118】
50μLのエルマン試薬溶液と2.5mLの反応緩衝液を含有するバイアルのセットを準備した。
【0119】
アッセイ溶液または標準(250μL)を、前のステップで準備したバイアルに加えた。試薬を混ぜ、すぐに分光測光器で分析した。吸光度を412nmで測定した。
【0120】
標準より得られた値を使用して、検量線を生成した。システアミン酒石酸塩の実験サンプル濃度をこの曲線から求めた。
【0121】
3 結果
3.1 オレイン酸およびトレハロースと共にシステアミン酒石酸塩を噴霧乾燥することについての初期研究
セクション3.1に記載する初期研究により、(トレハロースありまたはなしで)オレイン酸を含有するシステアミン酒石酸塩の溶液を噴霧乾燥することにより、適切な乾燥粉末を生成することは不可能であることが確認された。使用した全ての条件下で、結果として生じた粉末は、サイクロンおよび収集ジャーの壁に付着するガラス状の固形物質からなった。
【0122】
オレイン酸を製剤から除去すると、結果の改善が得られた(セクション3.2参照)。オレイン酸の除去は、(蝋状の固体ではなく)微細の白色粉末の生成を招いた。しかしながら、粉末はなお粘着性で、比較的、流動特性は乏しかった。
【0123】
3.2 トレハロースおよびL-ロイシンを含有するシステアミン酒石酸塩製剤の噴霧乾燥
L-ロイシンを供給溶液に加えると粉末特性は改善され、白色の微細粉末が生じた。回収率(収率)は高く;50-83%の範囲だった。噴霧乾燥した粉末は、許容可能な取扱い特性を有し、最小の静電荷で収集容器から容易に回収することが可能だった。L-ロイシンを含有する製剤は、含有しない製剤よりも%収率が高く、流動特徴が改善した。
【0124】
L-ロイシンを含有する噴霧乾燥溶液から得られた収率を、以下の表7に要約する:
【0125】
【表8】
表7 L-ロイシンを含有する製剤からの噴霧乾燥収率
**残留水分は考慮しない
*2gバッチサイズ
【0126】
3.3 トレハロースとL-ロイシンを含有する噴霧乾燥システアミン酒石酸塩製剤の粒子径分析
トレハロースとL-ロイシンを含有するシステアミン酒石酸塩製剤の粒子径データの要約を表8に示す。
【0127】
【表9】
表8 粒子径分析(要約)
*体積で微小粒子の10%以下
**体積で微小粒子の50%以下
***体積で微小粒子の90%以下
****体積平均径
【0128】
3.4 Andersonカスケードインパクターによる空気力学的粒子径分析
トレハロースおよびL-ロイシンと共に製剤化したシステアミン酒石酸塩の噴霧乾燥バッチの空気力学的粒径データの要約を表9に示す。完全な粒子径分析レポートは付録2で詳述する(データなし)。
【0129】
【表10】
表9 空気力学的粒子径
*分析法の回収プロセス内での変化により含めない
【0130】
4 結果
システアミン酒石酸塩は、トレハロースあり、かつL-ロイシンありまたはなしで、首尾よく噴霧乾燥された。これらの研究では、システアミン酒石酸塩(10%w/w)、トレハロース(85%w/w)、およびL-ロイシン(5%w/w)を含有する製剤が、粉末回収率、取扱い特性、およびカプセルへの薬物装填の点で、優れていた。
【0131】
システアミン酒石酸塩/トレハロース/ロイシン製剤の改善された粉末取扱い特徴は、特に5%ロイシンを含有する製剤で、微細粒子分率(FPF)の上昇につながった。
【0132】
DPI送達についての実行可能初期研究により、噴霧乾燥粉末は、ラクトース担体なしで、商業的に利用可能なDPIを使用して送達可能であることが確認された。噴霧乾燥粉末を用いた実行可能初期研究は、2つのカプセルから送達される、20%~40%のFPFと3~6.9mgのFPMを提供した
【0133】
実施例2:
in vivoテスト用噴霧乾燥システアミン酒石酸塩製剤の生成
5 材料
システアミン酒石酸塩は、NovaBiotics(Recordati 140514-1)により供給された。他の試薬は全て、Sigmaにより供給され、分析グレードだった。
【0134】
6 方法
6.1 システアミン酒石酸塩製剤の噴霧乾燥
6.1.1 システアミン酒石酸塩5%(w/w)、L-ロイシン5%(w/w)、マンニトール90%(w/w)(バッチ57♯08a)
システアミン酒石酸塩粉末を、開封前に30分間、室温まで温めた。0.1gのシステアミン酒石酸塩粉末、0.1gのL-ロイシン、および1.8gのマンニトールを含有する溶液を、20mLの脱イオン水において調製して、総固形濃度を10%w/vにした。これを完全に溶解するまで撹拌した。
【0135】
高効率のサイクロンおよびBuchi二流体ノズルを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を使用して、溶液を噴霧乾燥した。完全噴霧乾燥条件を以下の表1で提供する。
【0136】
【表11】
表3 バッチ57♯08aの噴霧乾燥条件
【0137】
噴霧乾燥後、粉末を収集し、実験室フィルムを使用してガラスバイアルで保管し、%RH<10%の保護環境内でホイルをかぶせた。
【0138】
6.1.2 システアミン酒石酸塩10%(w/w)、L-ロイシン5%(w/w)、マンニトール85%(w/w)(バッチ57♯08b)
システアミン酒石酸塩粉末を、開封前に30分間、室温まで温めた。0.2gのシステアミン酒石酸塩粉末、0.1gのL-ロイシン、および1.7gのマンニトールを含有する溶液を、20mLの脱イオン水において調製して、総固形濃度を10%w/vにした。これを完全に溶解するまで撹拌した。
【0139】
高効率のサイクロンおよびBuchi二流体ノズルを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を使用して、溶液を噴霧乾燥した。完全噴霧乾燥条件を以下の表2で提供する。
【0140】
【表12】
表2 バッチ57♯08bの噴霧乾燥条件
【0141】
噴霧乾燥後、粉末を収集し、実験室フィルムを使用してガラスバイアルで保管し、%RH<10%の保護環境内でホイルをかぶせた。
【0142】
6.1.3 L-ロイシン5%(w/w)、マンニトール95%(w/w)を含有するプラセボバッチ(バッチ57♯07)
0.1gのL-ロイシンおよび1.9gのマンニトールを含有する溶液を、20mLの脱イオン水において調製して、総固形濃度を10%w/vにした。これを完全に溶解するまで撹拌した。
【0143】
高効率のサイクロンおよびBuchi二流体ノズルを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を使用して、溶液を噴霧乾燥した。完全噴霧乾燥条件を以下の表3で提供する。
【0144】
【表13】
表3 バッチ57♯07の噴霧乾燥条件
【0145】
噴霧乾燥後、粉末を収集し、実験室フィルムを使用してガラスバイアルで保管し、%RH<10%の保護環境内でホイルをかぶせた。
【0146】
6.2 粒子径分析
RODOS分散機付きのSympaTec HELOS粒子径分析器を使用して、粒子径分析を実行した。約50mgの噴霧乾燥したシステアミン酒石酸塩製剤を振動フィーダーに置き、ホッパーに供給した。2バールの圧力の圧縮空気を使用して、分散を達成した。
【0147】
6.3 噴霧乾燥粉末におけるシステアミン酒石酸塩含有量分析
システアミン酒石酸塩の定量化を、Shimadzu UV-1650PC UV分光計を使用して実行した。システアミン酒石酸塩がUV発色団エルマン試薬を有さない場合は、5,5-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)を使用して、システアミンのスルフィドリル基を測定した。
【0148】
6.3.1 試薬の調製
反応緩衝液:0.1mMのEDTAを含有する0.1Mのリン酸ナトリウム、pH8
エルマン試薬溶液:40mgのエルマン試薬を10mLの反応緩衝液に溶解
34mgのシステアミン酒石酸塩を100mLの反応試薬に溶解して、1.5mMの溶液を生成。
【0149】
6.3.2 検量線の準備
システアミン酒石酸塩を表4に示す濃度で反応緩衝液に溶解することにより、標準を調製した:
【0150】
【表14】
表4 システアミン酒石酸塩標準
【0151】
50μLのエルマン試薬溶液と2.5mLの反応緩衝液を含有するバイアルのセットを準備した。
【0152】
アッセイ溶液または標準(250μL)を、前のステップで準備したバイアルに加えた。試薬を混ぜ、すぐに分光測光器で分析した。吸光度を412nmで測定した。
【0153】
標準より得られた値を使用して、検量線を生成した。システアミン酒石酸塩の実験サンプル濃度をこの曲線から求めた。
【0154】
6.3.3 供給溶液および噴霧乾燥粉末におけるシステアミン含有量の分析
2つの噴霧乾燥バッチを生成するのに使用した供給液それぞれにおいて、システアミン酒石酸塩の含有量を測定した。各溶液の100μLのアリコットを10mLのDI水に希釈して、検量線の線形領域内に入る溶液を生成した。セクション3.3.2に記載するようにサンプルを分析し、システアミン酒石酸塩濃度を求めた。
【0155】
2つの噴霧乾燥製剤におけるシステアミン酒石酸塩の含有量を測定した。50mgの各粉末サンプルを0.5mLのDI水に希釈した。100μLのアリコットを10mLのDI水に希釈して、検量線の線形領域内に入る溶液を生成した。セクション3.3.2に記載するようにサンプルを分析し、システアミン酒石酸塩濃度を求めた。
【0156】
7 結果および考察
7.1 システアミン酒石酸塩製剤の噴霧乾燥
全供給液は首尾よく噴霧乾燥され、白色の微細粉末が生じた。回収率を以下の表4で要約する。
【0157】
【表15】
表5 噴霧乾燥システアミン製剤の回収率
【0158】
バッチの回収率は予想より低かったが、これは、バッチサイズが小さい(2g)ことが原因である可能性が高い。全粉末は良好な取扱い特性を有したが、10%システアミン製剤は、5%製剤よりわずかに粘着性が高かったことに注意されたい。
【0159】
7.2 粒子径分析
全時点での粒子径データの要約を表5に示し、代表的な粒子径の分布を図1-3に示す。
【0160】
【表16】
表6 粒子径分析(要約)

*体積で微小粒子の10%以下
**体積で微小粒子の50%以下
***体積で微小粒子の90%以下
****体積平均径
【0161】
各バッチで得られたサイズ分布例を図1-3に示す。
【0162】
7.3 供給液および噴霧乾燥粉末におけるシステアミン含有量の決定
生成した噴霧乾燥機供給液および噴霧乾燥粉末の両方について、システアミン含有量を分析した。得られた結果を以下の表6に示す。
【0163】
【表17】
表7 供給液および噴霧乾燥粉末におけるシステアミン含有量
【0164】
全サンプルにおいて、測定された濃度は、理論上の含有量に基づく予想濃度よりも高かった。
【0165】
実施例3:
Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853のマウスIN好中球減少性モデル(肺負荷モデル)におけるLynovex(システアミン)プレップの有効性評価
化学
動物を、200mg/kgまたは150mg/kgの何れかのシクロホスファミドを用いて、免疫抑制/予備処置した。Lynovex、化学名システアミンとビヒクルを、Lynovexとラクトースビヒクル、またはLynovexとマンニトール系ビヒクルの何れかとして調製した(両方ともUppertonより提供(Upperton製品))。これらは、処置およびビヒクル対照用に、それぞれ単独で、および組み合わせて調製した。トブラマイシンをラクトースにおいて吸入製剤として調製した。全処置を、Penn Century装置を使用して投与した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)とPseudomonas選択寒天が、細菌組織負荷のために必要だった。
【0166】
動物
オスのCD1マウス(処置群用にn=6、加えて予備処置群で5、併せて35マウス)を本研究では使用した。-4日目に、マウスを、200mg/kgのシクロホスファミドを用いて腹腔内で免疫抑制/予備処置し;-1日目に150mg/kgのシクロホスファミドを用いて腹腔内で免疫抑制/予備処置した。ラクトース中で調製したLynovex研究では、体積40μLで、5×106cfu/mlの接種原を有するP.aeruginosa ATCC27853を鼻腔内投与して感染を成立させ、続いて、15分間ケタミン/キシラジン麻酔剤カクテルで麻酔し、Upperton Lynovex製品では、4×106の接種原で感染を成立させた。
【0167】
処置
全処置を、Penn Century装置を使用して気管内に投与した。
【0168】
Lynovex(システアミン)を1.5mg単独で、および以下の濃度でラクトースと組み合わせて投与した。Lynovex0.75mg+2.25mgラクトース粉末、Lynovex1.5mg+1.5mgラクトース粉末、Lynovex2.25mg+0.75mg、およびラクトース3mgのビヒクルのみの対照。さらに、188μg/用量のトブラマイシンを、測定を補助するために、ラクトースと混ぜた吸入製剤として投与した。処置は、感染の約5分後に投与した。
【0169】
別の研究では、Lynovexを以下の用量で投与した:3mgの5%Lynovexと3mgの10%Lynovex。トブラマイシンと組み合わせたLynovexは以下の通りとした:1.5mgのビヒクル中に3mgの5%Lynovex+トブラマイシン0.188mg、1.5mgのビヒクル(マンニトール系、Uppertonが製造)中に3mgの10%Lynovex+トブラマイシン0.188mg、トブラマイシンのみの対照(ラクトースビヒクル中に0.188mg/用量)。処置は、感染の約10分後に一度投与した。
【0170】
組織における細菌負荷
感染の24時間後の臨床エンドポイントにおける各動物の肺組織負荷を求めた。肺を2mLのPBSにおいてホモジナイズし、連続してPBS中で希釈し、Pseudomonas選択寒天に蒔いてから24~48時間後に、37℃で定量化した。
【0171】
Lynovex/ラクトース研究を用いて、可変性感染症を、P.aeruginosa ATCC27853に感染させたマウスの肺において達成した。0.188mgのトブラマイシン吸入製剤の気管内投与は、ビヒクル処置マウスと比較して、肺負荷を統計的に著しく減少させ(P=0.0097Kruskal Wallis検定)、5/6の動物が感染症を検出限界未満まで除去した。1.5mgおよび2.25mgのLynovexの気管内投与もビヒクルと比較し肺負荷を減少させ(それぞれ、P=0.0072およびP=0.0349)、それぞれ5/6および4/6のマウスが感染症を検出限界未満まで除去した(図4)。
【0172】
Upperton製品を用いたLynovex研究では、頑強な感染症を、P.aeruginosa ATCC27853に感染させたマウスの肺において達成した。0.188mgのトブラマイシン吸入製剤の気管内投与は、ビヒクル処置マウスと比較して肺負荷が平均1.61log10cfu/g減少する、高度可変性負荷をもたらした(Kruskal Wallis検定)。5%または10%のLynovex3mgを単剤療法として気管内投与することは、ビヒクルと比較して肺負荷を減少させなかった。しかしながら、5%または10%のLynovexを0.188mgのトブラマイシンと組み合わせると、ビヒクルマウスと比較し、負荷は減少した(それぞれ、P<0.0001およびP<0.0001)。この減少を、トブラマイシンのみの処置と比較した(5%Lynovex+トブラマイシンではP<0.0001、10%Lynovex+トブラマイシンではではP<0.0015、Kruskal-Wallis検定)(図5)。
【0173】
さらに、マウスの体重を感染症前後で記録した。ビヒクル、Lynovex単剤療法、またはトブラマイシン単剤療法で処置したマウスは、感染症後に体重が減少した。対照的に、Lynovex+トブラマイシンの組み合わせで処置したマウスは、感染症後も体重を維持し、該マウスが、感染症後も比較的健康であることを示した。(図6
【0174】
乾燥粉末吸入用のトブラマイシンは、マンニトールではなくラクトースに懸濁されたことに注意されたい。ラクトースにおける懸濁は粉末の凝集を引き起こし、これは、Penn Century装置の多くが投与中に遮断されるような、送達上のいくつかの困難を招いた。Lynovex懸濁液は投与がはるかに容易で、送達装置が遮断されることに起因する問題もなく、全て送達された。組み合わせ療法アームにおける負荷の減少が印象的で、トブラマイシン単剤療法より著しくすぐれていた一方、トブラマイシン単剤療法で処置した一部のマウスのデータは、DPI送達の難しさにより、疑わしい可能性があった。不確かなトブラマイシン処置の動物を調べた場合でも、組み合わせアームの非常に高い有効性がなお残った。
図1
図2
図3
図4
図5
図6