(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】放射線検出装置及び放射線撮影システム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20221219BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20221219BHJP
G01T 1/202 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01T1/20 G
A61B6/00 300S
A61B6/00 300Q
A61B6/00 333
G01T1/20 E
G01T1/20 B
G01T1/202
(21)【出願番号】P 2019111274
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】長野 和美
(72)【発明者】
【氏名】猿田 尚志郎
(72)【発明者】
【氏名】市村 知昭
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529083(JP,A)
【文献】特開2018-107343(JP,A)
【文献】特開2019-086482(JP,A)
【文献】米国特許第09698193(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
G01T 1/202
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した放射線を光に変換する第1のシンチレータと、前記第1のシンチレータからの前記光を電気信号に変換する第1の光電変換部を備える第1のセンサ基板と、を含む第1の放射線パネルと、
前記第1の放射線パネルを介して入射した前記放射線を光に変換する第2のシンチレータと、前記第2のシンチレータからの前記光を電気信号に変換する第2の光電変換部を備える第2のセンサ基板と、を含む第2の放射線パネルと、
を有し、
前記第1のセンサ基板は、前記第1の光電変換部を含む基板中央領域の厚みをt1とし、前記第1の光電変換部を含まない基板周辺領域の厚みをt2とするとき、t1<t2となる凹部を有する基板であり、
前記第2のシンチレータは、前記凹部に、少なくとも一部の領域が収容されていることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記第2のシンチレータの厚みをt3とするとき、t2-t1>t3であることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記第2のシンチレータは、前記凹部に、前記第1のセンサ基板の厚み方向において一部の領域が収容されていることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記第2のシンチレータは、前記凹部に、前記第1のセンサ基板の厚み方向において全部の領域が収容されていることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記第2のシンチレータとの間の隙間が樹脂で充填されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記第2のセンサ基板は、前記第2の光電変換部を含む基板中央領域の厚みをt4とし、前記第2の光電変換部を含まない基板周辺領域の厚みをt5とするとき、t4<t5となる凹部を有する基板であり、
前記第2のセンサ基板の当該凹部に、前記放射線に基づく散乱線の発生を防止する散乱線防止部材を更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記第1のシンチレータは、前記第1の光電変換部において前記放射線が入射する側に配置されており、
前記第2のシンチレータは、前記第2の光電変換部において前記放射線が入射する側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
前記第1のシンチレータおよび前記第2のシンチレータは、柱状結晶を有する蛍光体であってヨウ化セシウムを含む蛍光体であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項9】
入射した放射線を光に変換する第1のシンチレータおよび第2のシンチレータ
と、
前記第1のシンチレータからの前記光を電気信号に変換する光電変換部を備えるセンサ基板と、
を有し、
前記第2のシンチレータの少なくとも一部は、
前記センサ基板において前記第1のシンチレータが設けられ
ている側の面とは反対側の面
の凹部に設けられることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項10】
前記センサ基板と実装基板とを電気的に接続するための接続配線部を更に有し、
前記接続配線部は、前記センサ基板における基板周辺領域に設けられた接続パッド部に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の放射線検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の放射線検出装置と、
前記放射線を発生させる放射線発生装置と、
前記第1のシンチレータからの前記光を電気信号に変換する第1の光電変換部で得られた電気信号と前記第2のシンチレータからの前記光を電気信号に変換する第2の光電変換部で得られた電気信号とを用いて、前記放射線に係る画像を生成する画像生成装置と、
を有することを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項12】
前記画像は、エネルギーサブトラクション画像であること特徴とする請求項
11に記載の放射線撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射した放射線を検出する放射線検出装置、及び、当該放射線検出装置を含み構成された放射線撮影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、放射線検出装置は、放射線撮影による医療画像診断や非破壊検査等に広く利用されている。現在、放射線撮影は、患者が、放射線検出装置を含む放射線撮影装置(放射線撮影システム)の設置された放射線ルームへ移動して行われる撮影や、放射線ルームに運べない患者のための可搬型の放射線撮影装置を用いた撮影等の、数多くの撮影が提案されている。この際、放射線撮影装置は、放射線検出装置に加えて放射線発生装置(放射線管球)、高圧発生器及びバッテリ等から構成されており、フィルムカセッテ或いは輝尽性蛍光板を用いたイメージングプレートとともに、複数の病室等に持ち運びして使用されうる。
【0003】
現在、上述の放射線検出装置を用いて、例えば、被写体に対してエネルギー成分が異なる放射線の放射線画像を複数取得し、取得した放射線画像の差分から、特定の被写体部分を分離または強調したエネルギーサブトラクション画像を取得する方法が知られている。例えば、特許文献1や特許文献2には、ワンショット法(1回曝射法)によるエネルギーサブトラション撮影に関する放射線検出装置として、2つの放射線パネルを備えた装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-156719号公報
【文献】特許第5376897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1や特許文献2には、2つの放射線パネルを備えた放射線検出装置が記載されている。このような放射線検出装置では、一般的に、2つの放射線パネルに加えて、フィルターや2つの放射線パネルと電気的に接続される実装基板等が積層されて構成されうる。この点、特許文献1や特許文献2に記載の放射線検出装置では、単に2つの放射線パネルを積層する構成であるため、装置が厚型化してしまうという問題があった。さらに、特許文献1や特許文献2に記載の放射線検出装置では、単に2つの放射線パネルを積層する構成であるため、放射線パネルに含まれるシンチレータの周辺に広範囲の空隙部があり、この広範囲の空隙部によって装置が荷重に弱く堅牢性が足りないという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、2つの放射線パネルを備えた放射線検出装置において、厚型化を抑制するとともに堅牢性の向上を実現する仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射線検出装置は、入射した放射線を光に変換する第1のシンチレータと、前記第1のシンチレータからの前記光を電気信号に変換する第1の光電変換部を備える第1のセンサ基板と、を含む第1の放射線パネルと、前記第1の放射線パネルを介して入射した前記放射線を光に変換する第2のシンチレータと、前記第2のシンチレータからの前記光を電気信号に変換する第2の光電変換部を備える第2のセンサ基板と、を含む第2の放射線パネルと、を有し、前記第1のセンサ基板は、前記第1の光電変換部を含む基板中央領域の厚みをt1とし、前記第1の光電変換部を含まない基板周辺領域の厚みをt2とするとき、t1<t2となる凹部を有する基板であり、前記第2のシンチレータは、前記凹部に、少なくとも一部の領域が収容されている。
本発明の放射線検出装置における他の態様は、入射した放射線を光に変換する第1のシンチレータおよび第2のシンチレータと、前記第1のシンチレータからの前記光を電気信号に変換する光電変換部を備えるセンサ基板と、を有し、前記第2のシンチレータの少なくとも一部は、前記センサ基板において前記第1のシンチレータが設けられている側の面とは反対側の面の凹部に設けられる。
また、本発明は、上述した放射線検出装置を含み構成された放射線撮影システムを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2つの放射線パネルを備えた放射線検出装置において、厚型化を抑制するとともに堅牢性の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る放射線検出装置において、放射線の入射する側から見た概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る放射線検出装置において、
図1のI-I断面における内部構成の一例を示す図である。
【
図3】比較例に係る放射線検出装置において、
図1のI-I断面における内部構成の一例を示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る放射線検出装置において、
図1のI-I断面における内部構成の一例を示す図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る放射線検出装置において、
図1のI-I断面における内部構成の一例を示す図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態を示し、第1~第3の実施形態のうちのいずれかの実施形態に係る放射線検出装置100を含む放射線撮影システムの概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。なお、以下に記載する本発明の各実施形態において、放射線は、典型的には、X線であるが、本発明においては、このX線に限定されるものではなく、例えば、α線、β線またはγ線等であってもよい。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放射線検出装置100において、放射線の入射する側から見た概略図である。
図1に示すように、放射線検出装置100の放射線が入射する側には、第1の放射線パネルに含まれる第1のセンサ基板111及び第1の保護層113が配置されている。また、
図1には、第1のセンサ基板111と電気的に接続される第1の接続配線部130が示されている。また、
図1では、放射線の入射方向をZ軸方向とし、このZ軸方向と直交する2軸方向であって第1のセンサ基板111の放射線入射面である第1面1110aを定める相互に直交する2軸方向をX軸方向及びY軸方向とした、XYZ座標系を図示している。
【0013】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る放射線検出装置100において、
図1のI-I断面における内部構成の一例を示す図である。この
図2では、
図1に示したXYZ座標系に対応させたXYZ座標系を図示するとともに、放射線Rの入射方向を白抜き矢印で図示している。また、
図2において、
図1に示す構成と同様の構成については同じ符号を付している。また、以降の説明においては、
図2に示す第1の実施形態に係る放射線検出装置100を「放射線検出装置100-1」と記載する。
【0014】
第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1は、
図2に示すように、第1の放射線パネル110、第2の放射線パネル120、第1の接続配線部130、第1の実装基板140、第2の接続配線部150、及び、第2の実装基板160を有して構成されている。放射線検出装置100-1は、
図2に示すように、第1の放射線パネル110と第2の放射線パネル120を積層して構成されている。
【0015】
第1の放射線パネル110は、
図2に示すように、第1のセンサ基板111、第1のシンチレータ112、及び、第1の保護層113を有して構成されている。
【0016】
第1のセンサ基板111は、放射線Rが入射する放射線入射面である第1面1110aに配置された第1の光電変換部1111、及び、第1の接続パッド部1112を備えて構成されている。なお、
図2では、第1の光電変換部1111は、第1のセンサ基板111の内部に配置されている態様を例示しているが、本実施形態においてはこの態様に限定されず、第1のセンサ基板111の上部に配置されている態様も、本実施形態に適用可能である。第1の光電変換部1111は、第1のシンチレータ112からの光を電気信号である放射線画像信号に変換する構成部である。第1の光電変換部1111は、例えば、X軸方向及びY軸方向の2次元状に複数の画素が配設されて形成されている。また、第1の光電変換部1111の各画素は、光を電荷に変換する光電変換素子と、光電変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を出力するためのスイッチング素子とを含みうる。第1の接続パッド部1112には、第1のセンサ基板111を第1の実装基板140と接続するためのフレキシブルケーブルなどの第1の接続配線部130が接続される。この第1の接続パッド部1112は、例えば第1の接続配線部130を加熱加圧により圧着することによって配置されるので、具体的には、第1の接続パッド部1112を含む基板周辺領域1114は、少なくとも0.30mm以上あることが望ましい。
【0017】
また、第1のセンサ基板111には、第1面1110aとは反対側の第2面1110bに、第1の光電変換部1111を含む(具体的には、第1の光電変換部1111及びその外周辺の一部を含む)基板中央領域1113の厚みをt1とし、第1の光電変換部1111を含まない(第1の接続パッド部1112を含む)基板周辺領域1114の厚みをt2とするとき、以下の(1)式
t1<t2 ・・・(1)
を満たす凹部1110cが設けられている。
具体的に、第1のセンサ基板111の基板中央領域1113の厚みt1は、第1のセンサ基板111の基板中央領域1113におけるZ軸方向の長さに相当する。また、第1のセンサ基板111の基板周辺領域1114の厚みt2は、第1のセンサ基板111の基板周辺領域1114におけるZ軸方向の長さに相当する。即ち、第1のセンサ基板111の基板周辺領域1114の厚みt2と第1のセンサ基板111の基板中央領域1113の厚みt1との差によって、第1のセンサ基板111の基板中央領域1113に凹部1110cが形成される。
【0018】
第1のシンチレータ112は、第1の保護層113を介して入射した放射線Rを光に変換する構成部である。この第1のシンチレータ112によって変換された光は、第1の光電変換部1111に入射する。
図2では、第1のシンチレータ112は、第1の光電変換部1111において放射線Rが入射する側に配置されている。第1の保護層113は、第1のシンチレータ112を保護する機能の他、電磁シールドまたは反射層として機能しうる。第1のシンチレータ112で変換された光は、第1の保護層113で反射されうる。本実施形態においては、第1のシンチレータ112及び第1の保護層113は、第1の波長変換部を構成しうる。
【0019】
第2の放射線パネル120は、
図2に示すように、第2のセンサ基板121、第2のシンチレータ122、及び、第2の保護層123を有して構成されている。
【0020】
第2のセンサ基板121は、放射線Rが入射する放射線入射面である第1面1210aに配置された第2の光電変換部1211、及び、第2の接続パッド部1212を備えて構成されている。なお、
図2では、第2の光電変換部1211は、第2のセンサ基板121の内部に配置されている態様を例示しているが、本実施形態においてはこの態様に限定されず、第2のセンサ基板121の上部に配置されている態様も、本実施形態に適用可能である。第2の光電変換部1211は、第2のシンチレータ122からの光を電気信号である放射線画像信号に変換する構成部である。第2の光電変換部1211は、例えば、X軸方向及びY軸方向の2次元状に複数の画素が配設されて形成されている。また、第2の光電変換部1211の各画素は、光を電荷に変換する光電変換素子と、光電変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を出力するためのスイッチング素子とを含みうる。第2の接続パッド部1212には、第2のセンサ基板121を第2の実装基板160と接続するためのフレキシブルケーブルなどの第2の接続配線部150が接続される。また、
図2には、第2のセンサ基板121において、第1面1210aとは反対側の面を第2面1210bとして示している。
【0021】
第2のシンチレータ122は、第1の放射線パネル110を介して入射した放射線Rを光に変換する構成部である。この第2のシンチレータ122によって変換された光は、第2の光電変換部1211に入射する。
図2では、第2のシンチレータ122は、第2の光電変換部1211において放射線Rが入射する側に配置されている。第2の保護層123は、第2のシンチレータ122を保護する機能の他、電磁シールドまたは反射層として機能しうる。第2のシンチレータ122で変換された光は、第2の保護層123で反射されうる。本実施形態においては、第2のシンチレータ122及び第2の保護層123は、第2の波長変換部を構成しうる。
【0022】
第1の接続配線部130は、第1のセンサ基板111と第1の実装基板140とを電気的に接続するためのフレキシブルケーブルなどの接続配線部である。第1の実装基板140は、例えば、第1の接続配線部130を介して第1のセンサ基板111と各種の信号を送受信する通信を行う実装基板である。
【0023】
第2の接続配線部150は、第2のセンサ基板121と第2の実装基板160とを電気的に接続するためのフレキシブルケーブルなどの接続配線部である。第2の実装基板160は、例えば、第2の接続配線部150を介して第2のセンサ基板121と各種の信号を送受信する通信を行う実装基板である。
【0024】
以下、
図2に示す各構成部について、更に具体的に説明する。
第1のセンサ基板111及び第2のセンサ基板121の材料は、例えば、ガラス基板などの透明な絶縁性基板でありうる。
【0025】
また、本実施形態においては、第1の放射線パネル110及び第2の放射線パネル120には、それぞれ、第1の光電変換部1111及び第2の光電変換部1211を保護するセンサ保護層(不図示)を更に含みうる。この際、センサ保護層は、それぞれ、第1の光電変換部1111及び第2の光電変換部1211を覆うように配置される。また、センサ保護層は、例えば、SiN、TiO2、LiF、Al2O3またはMgOで構成されうる。或いは、センサ保護層は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂で構成されてもよい。ただし、センサ保護層は、第1のシンチレータ112によって変換された光を通過することができるように、第1のシンチレータ112で変換された光の波長について高い透過率を有する材料で構成される。
【0026】
第1のシンチレータ112及び第2のシンチレータ122は、それぞれ、第1の光電変換部1111及び第2の光電変換部1211の領域に対応して配置され、例えば、柱状結晶を有する蛍光体や、粒子状結晶を有する蛍光体が用いられる。例えば、柱状結晶を有する蛍光体からなるシンチレータは、蛍光体で発生した光が柱状結晶内を伝搬するので光散乱が少なく高い解像度の放射線画像を得ることができる。柱状結晶を有する蛍光体からなるシンチレータの材料としては、ハロゲン化アルカリを主成分とする材料が好適に用いられ、例えば、CsI:Tl、CsI:Na、CsBr:Tl、NaI:Tl、LiI:Eu、KI:Tl等が用いられる。その作製方法は、例えばCsI:Tlでは、CsI(ヨウ化セシウム)とTlIを同時に蒸着することで形成できる。一方、粒子状結晶を有する蛍光体からなるシンチレータは、放射線を光に変換する複数のシンチレータ粒子と、複数のシンチレータ粒子を互いに固定するバインダーとを含み、塗布などで容易に形成することができるために安価な蛍光体層を得ることができる。例えば、粒子状結晶を有する蛍光体からなるシンチレータの材料としては、微量のテルビウム(Tb)が添加された硫酸化ガドリニウム(GOS:Tb)等が用いられる。また、粒子状結晶を有する蛍光体からなるシンチレータにおいて、シンチレータ粒子は、耐湿性、発光効率、熱プロセス耐性、残光性の観点で、一般式Me2O2S:Reで示される金属酸硫化物で構成されることが好ましい。ここで、例えば、Meは、La、Y、Gdのいずれか1つであり、Reは、Tb、Sm、Eu、Ce、Pr、Tmの少なくとも1つである。また、粒子状結晶を有する蛍光体からなるシンチレータにおいて、バインダーは、例えば樹脂で構成される。この際、バインダーは、有機溶剤に溶解するものであり、かつチクソトロピックな特性を有するものが好ましい。具体的には、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタアクリレート等のアクリル系、ポリビニルブチラール溶剤系グレードなどのポリビニルアセタール系樹脂で構成されることが好ましい。また、バインダーは、これらの樹脂の2種類以上の組み合わせで構成されてもよい。そして、シンチレータ粒子及びバインダーは、バインダーを溶解する有機溶剤に添加される。これによってペーストが形成される。なお、粒子状結晶を有する蛍光体からなるシンチレータは、ペーストをセンサ基板に直接塗布して形成されてもよいし、または、別の工程でシート状に形成してから接着材を介してセンサ基板に貼り合わせ形成されてもよい。
【0027】
第1の保護層113は、第1のシンチレータ112を保護する他、電磁シールドまたは反射層として機能しうる。第1のシンチレータ112で変換された光は、第1の保護層113で反射されうる。第1の保護層113は、例えば、金属箔または金属薄膜で構成されうる。ここで、第1の保護層113の厚みは、1μm以上かつ100μm以下であることが好ましい。これは、第1の保護層113の厚みが1μmより薄いと、第1の保護層113の形成時にピンホール欠陥が発生しやすく、また遮光性に劣るからである。他方、第1の保護層113の厚みが100μmを超えると、放射線Rの吸収量が大きくなり過ぎ、また、第1の保護層113によって形成される段差が大きくなり過ぎるからである。第1の保護層113の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、アルミ合金などの金属材料を挙げることができる。また、第1の保護層113は、金属材料層に耐擦傷性を向上させるためにPETなど所望の樹脂層を最外層に配置することができる。また、第1の保護層113は、第1のシンチレータ112の形成側に接着性を有するシートなどの樹脂層を配置することができる。この樹脂層は、粘着材料やホットメルト材料で第1のシンチレータ112及び第1のセンサ基板111と第1の保護層113とを貼り合わせるために使用される。
【0028】
第2の放射線パネル120は、第1の放射線パネル110と同様の材料を使用することができる。また、
図2では、凹部1110cが形成された第1のセンサ基板111と凹部が形成されていない第2のセンサ基板121を用いる例を図示しているが、ともに凹部が形成されたセンサ基板111及び121を使用してもよい。
【0029】
次に、比較例に係る放射線検出装置について説明する。
図3は、比較例に係る放射線検出装置200において、
図1のI-I断面における内部構成の一例を示す図である。この
図3では、
図1に示したXYZ座標系に対応させたXYZ座標系を図示するとともに、放射線Rの入射方向を白抜き矢印で図示している。
【0030】
比較例に係る放射線検出装置200は、
図3に示すように、第1の放射線パネル210、第2の放射線パネル220、第1の接続配線部230、第1の実装基板240、第2の接続配線部250、及び、第2の実装基板260を有して構成されている。放射線検出装置200は、
図3に示すように、第1の放射線パネル210と第2の放射線パネル220を積層して構成されている。
【0031】
第1の放射線パネル210は、
図3に示すように、第1のセンサ基板211、第1のシンチレータ212、及び、第1の保護層213を有して構成されている。
【0032】
第1のセンサ基板211は、放射線Rが入射する放射線入射面である第1面2110aに形成された第1の光電変換部2111、及び、第1の接続パッド部2112を備えて構成されている。第1の光電変換部2111は、第1のシンチレータ212からの光を電気信号である放射線画像信号に変換する構成部である。第1の接続パッド部2112には、第1のセンサ基板211を第1の実装基板240と接続するための第1の接続配線部230が接続される。
図3に示す比較例に係る放射線検出装置200では、第1のセンサ基板211において第1面2110aとは反対側の第2面2110bに凹部が設けられていない点で、
図2に示す第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1とは異なる。また、
図3に示す第1のシンチレータ212及び第1の保護層213は、それぞれ、
図2に示す第1のシンチレータ112及び第1の保護層113に相当する構成である。
【0033】
第2の放射線パネル220は、
図3に示すように、第2のセンサ基板221、第2のシンチレータ222、及び、第2の保護層223を有して構成されている。この
図3に示す第2の放射線パネル220は、
図2に示す第2の放射線パネル120に相当する構成である。
【0034】
また、
図3に示す第1の接続配線部230及び第1の実装基板240は、それぞれ、
図2に示す第1の接続配線部130及び第1の実装基板140に相当する構成である。また、
図3に示す第2の接続配線部250及び第2の実装基板260は、それぞれ、
図2に示す第2の接続配線部150及び第2の実装基板160に相当する構成である。
【0035】
ここで、
図2に示す第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1と、
図3に示す比較例に係る放射線検出装置200との比較を行う。
図3に示す比較例に係る放射線検出装置200では、第1のセンサ基板211の第2面2110bに凹部が設けられていないのに対して、
図2に示す第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1では、第1のセンサ基板111の第2面1110bに凹部1110cが設けられている。そして、
図2に示す第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1では、凹部1110cが設けられているため、第2の放射線パネル120の第2のシンチレータ122は、この凹部1110cに、少なくとも一部の領域が収容されるように配置されている。
図2に示す例では、第2の放射線パネル120の第2のシンチレータ122は、凹部1110cに、第1のセンサ基板111の厚み方向において一部の領域が収容されるように配置されている。より詳細に、
図2に示す第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1では、第1の放射線パネル110及び第2の放射線パネル120の積層構造において、凹部1110cに、第2のシンチレータ122及び第2の保護層123を含む第2の波長変換部が嵌合するように配置されて構成されている。かかる
図2に示す第1の実施形態の構成によれば、第1のセンサ基板111の凹部1110cに、第2のシンチレータ122の少なくとも一部の領域が収容されるように配置したため、放射線検出装置100-1の厚み(Z軸方向の長さ)を薄くすることができる。さらに、
図2に示す第1の実施形態の構成によれば、第2のシンチレータ122の周辺の空隙部を小さくすることができ、その結果、放射線検出装置100-1の耐荷重性を高めることができる。即ち、
図2に示す第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1によれば、厚型化を抑制するとともに堅牢性の向上を実現することができる。
【0036】
また、本実施形態では、
図2に示す第1の放射線パネル110と第2の放射線パネル120との積層構造においては、第1のセンサ基板111の基板中央領域1113における凹部1110cの底面を第2の放射線パネル120と樹脂等で貼り合わせることができる。さらに、本実施形態では、第1の放射線パネル110における凹部1110cの底面を第2の放射線パネル120と貼り合わせるだけでなく、嵌合する凹部1110cと第2の放射線パネル120との間に形成される隙間を樹脂で充填することもできる。これらの構成により、放射線検出装置100-1の剛性、堅牢性を更に向上させることができる。
【0037】
[実施例]
次に、
図2に示す第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1の実施例について説明する。
【0038】
第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1の実施例では、まず、第1のシンチレータ112からの光を受光する第1の光電変換部1111と、第1の接続パッド部1112とが形成された第1のセンサ基板111を作製した。この際、第1のセンサ基板111の厚みを0.5mmとした。
【0039】
続いて、第1のセンサ基板111における第1の光電変換部1111が形成された領域に、エッチングからの保護を目的として微粘着の樹脂フィルムを転写した。さらに、第1のセンサ基板111の第2面1110bに凹部1110cの底面を形成するために、第1のセンサ基板111の第2面1110bにおける凹部形成領域以外の領域に、同様に微粘着の樹脂フィルムを転写した。
【0040】
その後、第1のセンサ基板111を10%のフッ酸溶液に浸漬させた。この際の浸漬時間は、例えば予め算出したエッチングレートよって決定し、所望の厚みまでエッチングを行う。本実施例では、例えば400μmのエッチングを行い、第1のセンサ基板111の凹部1110cが形成された基板中央領域1113の厚みt1として、100μm程度を得た。
【0041】
このエッチング後、第1のセンサ基板111を純水を用いて十分にリンスする。続いて、第1のセンサ基板111の両面に各々貼り付けた樹脂フィルムを剥離し、凹部1110cを有する第1のセンサ基板111を得た。さらに、第1の光電変換部1111に対してポリイミドからなる保護層材料を塗布し、これを200度で2時間硬化させることによってセンサ保護層(不図示)を形成した。
【0042】
続いて、センサ保護層(不図示)が形成された第1のセンサ基板111上に、CsI:Tlからなる第1のシンチレータ112を、第1の光電変換部1111の領域に合わせて形成した。具体的には、第1の光電変換部1111の領域に対応してマスキングを行い、その後、蒸着によって所望の領域に第1のシンチレータ112を500μmの厚みで形成した。
【0043】
続いて、PETからなる層にAlからなる防湿保護層が積層されたフィルム状シートにシート接着層を配置した第1の保護層113を、第1のシンチレータ112の全体を覆うように貼り合わせた。この貼り合わせには、真空ラミネーターを使用し、積層シートを配置して、0.4Pa、90℃で5分保持し、第1のシンチレータ112の全体が第1の保護層113によって被覆され、また、第1の保護層113の周端が第1のセンサ基板111に接着シートを介して全周接するように接着した。
【0044】
続いて、第1のセンサ基板111に設けられた第1の接続パッド部1112に第1の接続配線部130を熱圧着した。これにより、第1の接続配線部130を介して第1の実装基板140と電気的に接続された第1の放射線パネル110を得た。
【0045】
次に、第2のセンサ基板121に凹部を形成しない以外の他の工程は、第1のセンサ基板111と同様にして、第2のセンサ基板121を作製した。その後、上述した第1のシンチレータ112及び第1の保護層113と同様の工程によって、第2のセンサ基板121の第1面1210a上に、第2のシンチレータ122及び第2の保護層123を形成した。続いて、第2のセンサ基板121に設けられた第2の接続パッド部1212に第2の接続配線部150を熱圧着した。これにより、第2の接続配線部150を介して第2の実装基板160と電気的に接続された第2の放射線パネル120を得た。
【0046】
その後、第1の放射線パネル110と第2の放射線パネル120との貼り合わせを行った。具体的には、第1のセンサ基板111の第2面1110bの凹部1110c及び平面部にエポキシ樹脂を塗布し、第2の放射線パネル120の第2のシンチレータ122及び第2の保護層123が凹部1110cに嵌合するように両パネルを重ねて貼り合わせた。この貼り合わせにより、第1のセンサ基板111の凹部1110cと第2の放射線パネル120との間の隙間がエポキシ樹脂で充填された、第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1を得た。
【0047】
上述した工程を経て作製した第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1を評価等するため、
図3に示す比較例に係る放射線検出装置200の作製も行った。
図3に示す比較例に係る放射線検出装置200の第1の放射線パネル210及び第2の放射線パネル220としては、上述した工程を経て作製した第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1の第2の放射線パネル120と同様の工程によって、作製した。その後、作製した第1の放射線パネル210と第2の放射線パネル220とを重ね合わせて、比較例に係る放射線検出装置200を作製した。
【0048】
上述した実施例において作製した第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1は、比較例に係る放射線検出装置200よりも厚み(Z軸方向の長さ)が薄く、また、比較例に係る放射線検出装置200よりも装置盤面への耐荷重性が良好であった。即ち、第1の実施形態の実施例によれば、第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1では、厚型化を抑制できるとともに堅牢性の向上を実現できることが分かった。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第2の実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0050】
第2の実施形態に係る放射線検出装置において放射線の入射する側から見た概略図は、
図1に示す第1の実施形態に係る放射線検出装置100において放射線の入射する側から見た概略図と同様である。
【0051】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る放射線検出装置100において、
図1のI-I断面における内部構成の一例を示す図である。この
図4では、
図1に示したXYZ座標系に対応させたXYZ座標系を図示するとともに、放射線Rの入射方向を白抜き矢印で図示している。また、
図4において、
図1及び
図2に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、以降の説明においては、
図4に示す第2の実施形態に係る放射線検出装置100を「放射線検出装置100-2」と記載する。
【0052】
第2の実施形態に係る放射線検出装置100-2は、
図4に示すように、第1の放射線パネル110、第2の放射線パネル120、第1の接続配線部130、第1の実装基板140、第2の接続配線部150、及び、第2の実装基板160を有して構成されている。放射線検出装置100-2は、
図4に示すように、第1の放射線パネル110と第2の放射線パネル120を積層して構成されている。
【0053】
第2の実施形態では、第1のセンサ基板111には、第2面1110bに、第1の光電変換部1111を含む(具体的には、第1の光電変換部1111及びその外周辺の一部を含む)基板中央領域1113の厚みをt1とし、第1の光電変換部1111を含まない(第1の接続パッド部1112を含む)基板周辺領域1114の厚みをt2、第2のシンチレータ122の厚みをt3とするとき、以下の(2)式
t2-t1>t3 ・・・(2)
を満たす凹部1110cが設けられている。
【0054】
また、本実施形態では、
図4に示す第1の放射線パネル110と第2の放射線パネル120との積層構造においては、第1のセンサ基板111の基板中央領域1113における凹部1110cの底面を第2の放射線パネル120と樹脂等で貼り合わせることができる。
図4に示す第2の実施形態に係る放射線検出装置100-2では、(2)式を満たす凹部1110cが設けられているため、第2の放射線パネル120の第2のシンチレータ122は、この凹部1110cに、第1のセンサ基板111の厚み方向において全部の領域が収容されるように配置されている。
図4に示すように、第2のシンチレータ122を第1のセンサ基板111の凹部1110cに嵌合するように配置することにより、第1のセンサ基板111は、第2のシンチレータ122の防湿保護及び剛性保護を兼ねることができる。また、
図4に示すように、第1のセンサ基板111と第2のセンサ基板121との貼り合わせ面に、第2の放射線パネル120の第2の接続パッド部1212及び第2の接続配線部150を含まないように配置することにより、防湿性をより向上させることができる。また、本実施形態では、第1のセンサ基板111の凹部1110cと第2の放射線パネル120を嵌合させた後、この凹部1110cに残る隙間を適切な樹脂等によって充填しうる。また、本実施形態では、第2のシンチレータ122で発光した光を第2の光電変換部1211で効率よく得るために、第1のセンサ基板111の凹部1110cに金属反射層を設ける、または、凹部1110cに充填する樹脂に反射性を有する粒子、例えば酸化チタンなどを含有させた樹脂を用いることができる。
【0055】
[実施例]
次に、
図4に示す第2の実施形態に係る放射線検出装置100-2の実施例について説明する。
【0056】
第2の実施形態に係る放射線検出装置100-2の実施例では、まず、上述した第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1の実施例と同様の工程によって、第1の放射線パネル110を得た。
【0057】
続いて、第2のセンサ基板121上に、第2のシンチレータ122を300μmの厚みで形成して、第2の放射線パネル120を得た。
【0058】
その後、第1の放射線パネル110と第2の放射線パネル120との貼り合わせを行った。具体的には、第1のセンサ基板111の凹部1110cに第2のシンチレータ122が嵌合するように両方の放射線パネルを配置し、第1のセンサ基板111の第2面1110bの平面部と第2のセンサ基板121の第1面1210aとの接する部分をエポキシ樹脂により貼り合わせた。第2のシンチレータ122は、第1のセンサ基板111の凹部1110cに囲まれて配置されることよって防湿性・剛性が向上する。以上の工程により、第2の実施形態に係る放射線検出装置100-2を得た。
【0059】
上述した実施例において作製した第2の実施形態に係る放射線検出装置100-2は、比較例に係る放射線検出装置200よりも厚み(Z軸方向の長さ)が薄く、また、比較例に係る放射線検出装置200よりも装置盤面への耐荷重性が良好であった。即ち、第2の実施形態の実施例によれば、第2の実施形態に係る放射線検出装置100-2では、厚型化を抑制できるとともに堅牢性の向上を実現できることが分かった。
【0060】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第3の実施形態の説明では、上述した第1及び第2の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1及び第2の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0061】
第3の実施形態に係る放射線検出装置において放射線の入射する側から見た概略図は、
図1に示す第1の実施形態に係る放射線検出装置100において放射線の入射する側から見た概略図と同様である。
【0062】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る放射線検出装置100において、
図1のI-I断面における内部構成の一例を示す図である。この
図5では、
図1に示したXYZ座標系に対応させたXYZ座標系を図示するとともに、放射線Rの入射方向を白抜き矢印で図示している。また、
図5において、
図1、
図2及び
図4に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。また、以降の説明においては、
図5に示す第3の実施形態に係る放射線検出装置100を「放射線検出装置100-3」と記載する。
【0063】
第3の実施形態に係る放射線検出装置100-3は、
図5に示すように、第1の放射線パネル110、第2の放射線パネル120、第1の接続配線部130、第1の実装基板140、第2の接続配線部150、第2の実装基板160、及び、散乱線防止部材170を有して構成されている。放射線検出装置100-3は、
図5に示すように、第1の放射線パネル110と第2の放射線パネル120、及び、第2の放射線パネル120と散乱線防止部材170とを積層して構成されている。
【0064】
第3の実施形態に係る放射線検出装置100-3では、第1の放射線パネル110の第1のセンサ基板111における第2面1110bに加えて、第2の放射線パネル120の第2のセンサ基板121における第2面1210bにも凹部1210cが形成されている。
図5に示すように、第2のセンサ基板121は、第2面1210bに、第2の光電変換部1211を含む(具体的には、第2の光電変換部1211及びその外周辺の一部を含む)基板中央領域1213の厚みをt4とし、第2の光電変換部1211を含まない(第2の接続パッド部1212を含む)基板周辺領域1214の厚みをt5とするとき、以下の(3)式
t4<t5 ・・・(3)
を満たす凹部1210cが設けられている。さらに、第3の実施形態に係る放射線検出装置100-3では、第2の放射線パネル120の第2のセンサ基板121における凹部1210cに、
図5に示すように、放射線Rに基づく散乱線の発生を防止する散乱線防止部材170が配置されている。
【0065】
第3の実施形態に係る放射線検出装置100-3では、
図5に示すように、凹部1110c及び1210cは、光電変換部1111及び1211の領域を基準に形成されている。このため、2つのセンサ基板111及び121の両方の凹部1110c及び1210cを重ね合わせることで、より正確に放射線画像の重ね合わせを行うことができる。また、このような放射線検出装置100-3において、例えばシンチレータ面から放射線Rを入射する場合には、
図5に示すように第2のセンサ基板121の凹部1210cに散乱線防止部材170を配置することにより、装置の厚型化を抑制しつつ、S/Nの向上した放射線画像を取得することができる。また、センサ基板面から放射線Rを入射する場合には、凹部1210cにグリッドやフィルターを配置することにより、装置の厚型化を抑制しつつ、S/Nの向上した放射線画像を取得することができる。
【0066】
なお、
図5に示す例では、
図2に示す第1の実施形態に係る第2の放射線パネル120の第2のセンサ基板121における第2面1210bに凹部1210cを形成する態様を示しているが、本実施形態においては、この態様に限定されるものではない。例えば、
図4に示す第2の実施形態に係る第2の放射線パネル120の第2のセンサ基板121における第2面1210bに凹部1210cを形成する態様も、本実施形態に適用可能である。
【0067】
[実施例]
次に、
図5に示す第3の実施形態に係る放射線検出装置100-3の実施例について説明する。
【0068】
第3の実施形態に係る放射線検出装置100-3の実施例では、まず、上述した第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1の実施例の第1の放射線パネル110と同様の作製工程によって、第1の放射線パネル110及び第2の放射線パネル120を得た。
【0069】
その後、上述した第1の実施形態に係る放射線検出装置100-1の実施例と同様の工程によって、第1の放射線パネル110と第2の放射線パネル120との貼り合わせを行った。
【0070】
続いて、第2の放射線パネル120の第2のセンサ基板121における凹部1210cが埋まるように、凸状の放射線Rの散乱線防止部材170を形成して、第3の実施形態に係る放射線検出装置100-3を得た。
【0071】
上述した実施例において作製した第3の実施形態に係る放射線検出装置100-3は、比較例に係る放射線検出装置200よりも厚み(Z軸方向の長さ)が薄く、また、比較例に係る放射線検出装置200よりも装置盤面への耐荷重性が良好であった。即ち、第3の実施形態の実施例によれば、第3の実施形態に係る放射線検出装置100-3では、厚型化を抑制できるとともに堅牢性の向上を実現できることが分かった。さらに、第3の実施形態に係る放射線検出装置100-3では、散乱線防止部材170を設けたので、放射線Rの散乱線による影響を軽減できるため、S/Nが良好な放射線画像を得ることができた。また、
図5に示すように、同じような凹部1110c及び1210cが形成されたセンサ基板111及び121を使用することにより、積層の位置合わせが容易となった。
【0072】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第4の実施形態の説明では、上述した第1~第3の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1~第3の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0073】
第4の実施形態は、上述した第1~第3の実施形態に係る放射線検出装置100を、放射線撮影システムの一部に適用した形態である。
【0074】
図6は、本発明の第4の実施形態を示し、第1~第3の実施形態のうちのいずれかの実施形態に係る放射線検出装置100を含む放射線撮影システムの概略構成の一例を示す図である。
【0075】
図6に示す放射線検出装置100は、上述した第1~第3の実施形態のうちのいずれかの実施形態に係る放射線検出装置100である。
図6に示す放射線撮影システムにおいて、放射線ルーム(例えばX線ルーム)及びコントロールルームには、例えば、放射線検出装置100、放射線発生装置6050、画像生成装置6070、及び、ディスプレイ6080が構成されている。ここで、放射線発生装置6050は、放射線R(例えばX線)を発生させる装置である。また、画像生成装置6070は、放射線検出装置100の第1の光電変換部1111で得られた電気信号である放射線画像信号と第2の光電変換部1211で得られた電気信号である放射線画像信号とを用いて、放射線Rに係る画像を生成する装置である。この画像生成装置6070は、イメージプロセッサ等を含む信号処理部を備えて構成されている。
【0076】
具体的に、例えば、放射線発生装置6050で発生した放射線R(例えばX線)は、患者等の被検者6060の胸部6061を透過し、放射線検出装置100に入射する。入射した放射線R(例えばX線)には、被検者6060の体内部の情報が含まれている。そして、放射線検出装置100では、入射した放射線Rに応じた電気的情報である放射線画像信号が得られる。
【0077】
ここで、本実施形態では、放射線検出装置100に入射する放射線Rのエネルギー分布を、低エネルギー成分と高エネルギー成分との2つのエネルギー成分に大まかに分類して説明を行う。第1のシンチレータ112に放射線Rが入射すると、高エネルギー成分の放射線Rになるほど透過率が高くなることから、まず、第1のシンチレータ112では、放射線Rの低エネルギー成分が吸収され、これが光に変換される。そして、この第1のシンチレータ112で発生した光が第1の光電変換部1111で電気信号である放射線画像信号に変換される。即ち、第1の光電変換部1111では、主として低エネルギー成分の放射線Rに係る放射線画像信号が取得される。また、第1のシンチレータ112で吸収されずに第1のシンチレータ112を透過した高エネルギー成分の放射線Rは、第1の放射線パネル110を透過して第2のシンチレータ122に入射することになる。第2のシンチレータ122では、この入射した高エネルギー成分の放射線Rが吸収され、これが光に変換される。そして、この第2のシンチレータ122で発生した光が第2の光電変換部1211で電気信号である放射線画像信号に変換される。即ち、第2の光電変換部1211では、主として高エネルギー成分の放射線Rに係る放射線画像信号が取得される。その後、第1の光電変換部1111で取得された低エネルギー成分の放射線Rに係る放射線画像信号と、第2の光電変換部1211で取得された高エネルギー成分の放射線Rに係る放射線画像信号は、画像生成装置6070において、デジタル信号に変換された後、各種の信号処理がなされる。例えば、画像生成装置6070は、信号処理の1つとして、上述した第1の光電変換部1111で取得された低エネルギー成分の放射線Rに係る放射線画像信号と、第2の光電変換部1211で取得された高エネルギー成分の放射線Rに係る放射線画像信号とを用いてエネルギーサブトラクション処理を行い、エネルギーサブトラクション画像を生成する。
【0078】
そして、画像生成装置6070で生成された放射線Rに係る画像(例えば、上述したエネルギーサブトラクション画像)は、コントロールルーム(制御室)のディスプレイ6080(表示部)により検査結果として表示されうる。また、この画像生成装置6070で生成された放射線Rに係る画像は、電話、LAN、インターネット等のネットワーク6090(伝送処理手段)により遠隔地へ転送されうる。これにより、画像生成装置6070で生成された放射線Rに係る画像を、ドクタールーム等の別の場所におけるディスプレイ6081に検査結果として表示し、遠隔地の医師が診断することが可能である。また、この放射線Rに係る画像及び検査結果を、例えば、光ディスク等に保存することもできるし、フィルムプロセッサ6100によってフィルム6110等の記録媒体に記録することもできる。
【0079】
[実施例]
次に、
図6に示す第4の実施形態に係る放射線撮影システムの実施例について説明する。
【0080】
第4の実施形態に係る放射線撮影システムの実施例では、放射線RとしてX線を用いて、放射線検出装置100と放射線発生装置6050との間に、軟X線除去用の20mmAlフィルターをセットした。次いで、放射線検出装置100と放射線発生装置6050との距離を130cmに調整し、放射線検出装置100を電気駆動系に接続した。この状態で、放射線発生装置6050において、管電圧80kV、管電流250mA、50msで、放射線RとしてX線パルスを3回爆射し、放射線検出装置100において放射線画像信号を取得した。本実施例では、上述したように、放射線検出装置100の第1の光電変換部1111及び第2の光電変換部1211において、異なるエネルギー成分の2つの放射線画像信号を取得した。そして、画像生成装置6070では、この異なるエネルギー成分の2つの放射線画像信号を用いて、エネルギーサブトラクション画像を生成した。
【0081】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
100:放射線検出装置、110:第1の放射線パネル、111:第1のセンサ基板、1110a:第1のセンサ基板の第1面、1110b:第1のセンサ基板の第2面、1110c:凹部、1111:第1の光電変換部、1112:第1の接続パッド部、1113:基板中央領域、1114:基板周辺領域、112:第1のシンチレータ、113:第1の保護層、120:第2の放射線パネル、121:第2のセンサ基板、1210a:第2のセンサ基板の第1面、1210b:第2のセンサ基板の第2面、1211:第2の光電変換部、1212:第2の接続パッド部、122:第2のシンチレータ、123:第2の保護層、130:第1の接続配線部、140:第1の実装基板、150:第2の接続配線部、160:第2の実装基板、R:放射線