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特許7196333安定なセクキヌマブ注射剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】安定なセクキヌマブ注射剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221219BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P17/06
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/20
A61K47/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021556363
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 CN2020090776
(87)【国際公開番号】W WO2020233540
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】201910412754.0
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521431815
【氏名又は名称】通化▲東▼宝葯▲業▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TONGHUA DONGBAO PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 徳朋
(72)【発明者】
【氏名】魏 ▲シャン▼▲シャン▼
(72)【発明者】
【氏名】范 馨丹
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 忠雨
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 楠
(72)【発明者】
【氏名】冷 春生
(72)【発明者】
【氏名】常 ▲曉▼慧
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-502910(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065979(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190378(WO,A1)
【文献】特表2018-523676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
PubMed
医中誌WEB
J-STAGE
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セクキヌマブ50mg/ml~250mg/mlと、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩5~50mmol/Lと、メチオニン5~40mmol/Lと、低級糖アルコール150mmol/L~370mmol/Lと、ポリソルベート80 0.01%(v/v)~0.02%(v/v)と、注射用水とからなり、pHが5.0~7.0であり、前記低級糖アルコールがキシリトールであることを特徴とする安定なセクキヌマブ注射剤。
【請求項2】
前記注射剤は、セクキヌマブ100mg/ml~250mg/mlと、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩10~40mmol/Lと、メチオニン5~40mmol/Lと、低級糖アルコール180mmol/L~350mmol/Lと、ポリソルベート80 0.01%(v/v)~0.02%(v/v)と、注射用水とからなり、pHが5.5~6.5である、ことを特徴とする請求項1に記載の安定なセクキヌマブ注射剤。
【請求項3】
前記注射剤は、セクキヌマブ140mg/ml~200mg/mlと、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩10~35mmol/Lと、メチオニン5~30mmol/Lと、低級糖アルコール180mmol/L~300mmol/Lと、ポリソルベート80 0.02%(v/v)と、注射用水とからなり、pHが5.5~6.5である、ことを特徴とする請求項1に記載の安定なセクキヌマブ注射剤。
【請求項4】
前記注射剤は、セクキヌマブ140mg/ml~160mg/mlと、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩10~30mmol/Lと、メチオニン5~20mmol/Lと、低級糖アルコール210mmol/L~280mmol/Lと、ポリソルベート80 0.02%(v/v)と、注射用水とらなり、pHが5.5~6.5である、ことを特徴とする請求項1に記載の安定なセクキヌマブ注射剤。
【請求項5】
前記注射剤は、セクキヌマブ150mg/mlと、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/Lと、メチオニン5mmol/Lと、低級糖アルコール210mmol/L~280mmol/Lと、ポリソルベート80 0.02%(v/v)と、注射用水とらなり、pHが5.5~6.5である、ことを特徴とする請求項1に記載の安定なセクキヌマブ注射剤。
【請求項6】
前記pHが5.8である、ことを特徴とする請求項1に記載の安定なセクキヌマブ注射剤。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の安定なセクキヌマブ注射剤の製造方法において、
1)バッファーの調製
処方量に従って、ヒスチジン、メチオニン、低級糖アルコールを秤量し、注射用水で処方濃度まで希釈し、均一に撹拌しながら混合し、バッファーAとするステップと、
処方量に従って、ヒスチジン塩酸塩、メチオニン、低級糖アルコールを秤量し、注射用水で処方濃度まで希釈し、均一に撹拌しながら混合し、バッファーBとするステップと、
バッファーAをバッファーBに加えて最終のpHに調整し、最終のバッファーとするステップと、
2)最終製品の製造
a.精製後のセクキヌマブを限外ろ過により濃縮するステップと、
b.濃縮後のタンパク質サンプルを取り出し、体積を測定し、そのタンパク質濃度を測定し、タンパク質濃度が100~120mg/mlになると、バッファー交換を開始する、濃縮タンパク質濃度の測定ステップと、
c.濃縮後のタンパク質液の体積に等しい最終バッファーをサンプルカップに加え、均一に混合し、タンパク質濃度が100~120mg/mlとなるまで濃縮する交換操作を複数回繰り返す、交換操作ステップと、
d.バッファー交換後のセクキヌマブを限外ろ過により濃縮し、ポリソルベート80を加え、滅菌ろ過により得るステップと、
を含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の安定なセクキヌマブ注射剤を含む、乾癬を治療するための医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、発明の名称が「安定なセクキヌマブ注射剤及びその製造方法」である、2019年05月17日に中国特許庁へ提出された中国特許出願201910412754.0に基づく優先権を主張し、その全内容は、全体として援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明はバイオ医薬品および製剤の分野に属し、具体的には、安定なセクキヌマブ注射剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
乾癬は慢性免疫介在性皮膚疾患であり、世界中で約1億2500万人の患者がおり、中国では乾癬患者が650万人に達する。
【0004】
セクキヌマブは、完全ヒト化モノクローナル抗IL~17Aの炎症性サイトカインIgG1抗体であり、IL~17Aと結合することにより、IL~17Aとその受容体との相互作用を直接遮断し、免疫および炎症応答を変化させ、治療の目的を達成する。
【0005】
Cosentyx(登録商標)「活性成分:Secukinumab、セクキヌマブ」はNovartis社によって開発されたIL~17Aを標的とした世界初の画期的な生物医薬品であり、乾癬治療においてTNFαを標的としたエンブレルやヒュミラなどの従来の生物製剤を上回る効果が実証される。現在、まだ中国で市販されてなく、中国で対応する医薬品品種が不足する。生物抗体系薬物としては、抗体製剤の安定性が薬物の品質管理において重要な項目であるが、出願人は、予備調査の結果、通常、先発医薬品(CN201580076632.9)がトレハロースを安定化剤として使用して製剤化され、その他の安定化剤が確認されていないことで、この薬は国際および中国国内の医薬品種類が極めて少なく、代替可能性が低いことを発現した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術課題を解決するために、本発明は、セクキヌマブ50mg/ml~250mg/mlと、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩5~50mmol/Lと、メチオニン5~40mmol/Lと、低級糖アルコール150mmol/L~370mmol/Lと、ポリソルベート800.01%~0.02%と、残部の注射用水とからなり、pHが5.0~7.0である安定なセクキヌマブ注射剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
出願人は、本願発明において、好ましくはソルビトール又はキシリトールである低級糖アルコール類をスクリーニングした。ソルビトールは、注射剤の分野で、無糖製剤の担体および薬物の安定剤として、よく用いられ、通常の濃度範囲は10%~25%である。
【0008】
キシリトールは、糖尿病患者用の砂糖代替品として、5%~10%の濃度範囲でよく用いられる。
【0009】
今までソルビトールおよびキシリトールのセクキヌマブ注射剤への適用に関する報告がまだない。
【0010】
本発明者は、前期での文献調査および実験的スクリーニングにより、新しいタイプの安定剤、すなわち低級糖アルコール、特にソルビトール又はキシリトールを見出した。本発明者は、安定化剤スクリーニングにおいて、低級糖アルコールを添加した後、それぞれ先発医薬品の好ましい実施例と比較し、長時間(4℃)、加速(25℃)および高温(40℃)で、物理的安定性(SECーHPLC(SEC高分子タンパク質:中国薬局方2015版総則)、光遮蔽法により測定した可視粒子(中国薬局方2015版総則0904を参照)および不溶性微粒子(中国薬局方2015版総則0903を参照))、化学的安定性(CEXーHPLCリジン変異体、中国薬局方2015版第三部分の付録IIIBを参照)を含む安定性試験を実施し検討した。安定性の結果は、本発明により製造された安定なセクキヌマブ注射剤は、従来技術の安定なセクキヌマブ注射剤(トレハロースを安定化剤として使用されている、すなわち、先発医薬品注射液処方)よりも優れた安定性を有していることを示す。
【0011】
好ましくは、本発明は、セクキヌマブ100mg/ml~250mg/mlと、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩10~40mmol/Lと、メチオニン5~40mmol/Lと、低級糖アルコール180mmol/L~350mmol/Lと、ポリソルベート800.01%~0.02%と、残部の注射用水とからなり、pH5.5~6.5である安定なセクキヌマブ注射剤を提供する。
【0012】
好ましくは、本発明は、セクキヌマブ140mg/ml~200mg/mlと、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩10~35mmol/Lと、メチオニン5~30mmol/Lと、低級糖アルコール180mmol/L~300mmol/Lと、ポリソルベート800.02%と、残部の注射用水とからなり、pH5.5~6.5である安定なセクキヌマブ注射剤を提供する。
【0013】
好ましくは、本発明は、セクキヌマブ140mg/ml~160mg/mlと、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩10~30mmol/Lと、メチオニン5~20mmol/Lと、低級糖アルコール210mmol/L~280mmol/Lと、ポリソルベート800.02%と、残部の注射用水とからなり、pH5.5~6.5である安定なセクキヌマブ注射剤を提供する。
【0014】
好ましくは、上記のいずれか一項に記載の安定なセクキヌマブ注射剤において、前記低級糖アルコールがソルビトール又はキシリトールである。
【0015】
さらに、好ましくは低級糖アルコールがキシリトールである。
【0016】
さらに、好ましくはpHが5.8である。
【0017】
さらに、本発明は、安定なセクキヌマブ注射剤の製造方法において、
1)バッファーの調製
処方量に従って、ヒスチジン、メチオニン、低級糖アルコールを秤量し、注射用水で処方濃度まで希釈し、均一に撹拌しながら混合し、バッファーAとするステップ、
処方量に従って、ヒスチジン塩酸塩、メチオニン、低級糖アルコールを秤量し、注射用水で処方濃度まで希釈し、均一に撹拌しながら混合し、バッファーBとするステップ、
バッファーAをバッファーBに加えて最終のpHに調整し、最終のバッファーとするステップと、
2)最終製品の製造
a.精製後のセクキヌマブを限外ろ過により濃縮するステップと、
b.濃縮後のタンパク質サンプルを取り出し、体積を測定し、そのタンパク質濃度を測定し、タンパク質濃度が100~120mg/mlになると、バッファー交換を開始する、濃縮タンパク質濃度の測定ステップと、
c.濃縮後のタンパク質液の体積に等しい最終のバッファーをサンプルカップに加え、均一に混合し、タンパク質濃度が100~120mg/mlとなるまで濃縮する交換操作を複数回繰り返す、交換操作ステップと、
d.バッファー交換後のセクキヌマブを限外ろ過により濃縮し、ポリソルベート80を加え、滅菌ろ過により得るステップと、
を含む、製造方法を提案する。
【0018】
さらに、具体的な調製方法は、以下の通りである。
【0019】
バッファーの調製:
【0020】
バッファーA:処方量に従って、ヒスチジン10~30mmol/L、メチオニン5~20mmol/L、ソルビトール210mmol/L~280mmol/Lを秤量し、総体積が7000mlとなるように注射用水で希釈し、均一に撹拌しながら混合する。
【0021】
バッファーB:処方量に従って、ヒスチジン塩酸塩10~30mmol/L、メチオニン5~20mmol/L、ソルビトール210mmol/L~280mmol/L、総体積7000mlとなるように注射用水で希釈し、均一に撹拌しながら混合する。
【0022】
バッファーAをバッファーBに加え、pHが5.5~6.5となるようにpHを調整し、最終のバッファーとした。
【0023】
最終製品の製造:
【0024】
a.精製後のセクキヌマブを限外ろ過システムにおけるサンプルカップに入れ、透過速度が20~30ml/min、かつ圧力が20PSI以下になるように限外ろ過システムを起動する。PSI「Pounds per square inch」
【0025】
b.濃縮タンパク質濃度の測定:濃縮後のタンパク質サンプルを取り出し、体積を測定し、超微量分光光度計でそのタンパク質濃度を測定し、濃度が100~120mg/mlになると、バッファー交換を開始する。
【0026】
c.バッファー交換:濃縮後のタンパク質の体積に等しいバッファーをサンプルカップに加え、均一に混合し、タンパク質濃度が100~120mg/mlとなるまで濃縮する交換操作を8回繰り返し、また、交換後のたびに、限外ろ過システムの透過側からの流出液のpHおよび導電率が調製されたバッファーと同じ又は近いとなるまで、透過側液体のpHおよび導電率を検出し、バッファー交換の終了を示す。
【0027】
d.バッファー交換のセクキヌマブを上記の手順に従って限外ろ過により170~180mg/mlとなるように濃縮し、サンプルを回収し、その体積を記録し、バッファーで限外ろ過システムの管路を洗浄し、洗浄液を回収してタンパク質濃度が140~160mg/ml、体積が1100mlとなるように濃縮されたプロテインに加え、ポリソルベート80の終濃度が0.02%となるようにポリソルベート80を加える。得られた原液を無菌環境下で0.22μmのフィルターメンブレンを用いてろ過し、分注体積1ml/本、合計1000本でプレフィルドシリンジに分注しラベルを付ける。
【0028】
上記のセクキヌマブ原料の製造プロセスは、先発医薬品特許CN101001645Aを参照し、先発医薬品メーカーと同等の物理的及び化学的性質を有するセクキヌマブ製品が得られる。精製後のセクキヌマブは、酢酸緩衝成分を含み、pH値が5程度である。この条件は、製剤の安定化に不利である。製剤の安定性を確保するためには、バッファー交換が必要である。
【0029】
さらに、本発明は、乾癬を治療するための医薬品の製造における上記の安定なセクキヌマブ注射剤の使用を提供する。
【0030】
本発明者は、多くの実験スクリーニングより、界面活性剤、糖又は糖アルコール、アミノ酸、賦形剤などを含む範囲から、ソルビトールやキシリトールのような低級糖アルコールをスクリーニングし、それぞれpH、緩衝剤でスクリーニングし、対応する注射剤を製造し、先発医薬品よりも好ましい安定なセクキヌマブ注射剤を製造し、本発明は、安定性が著しく向上し、従来技術の欠点を克服し、セクキヌマブ注射剤の安定性がさらに向上し、優れた産業上の利用可能性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、安定なセクキヌマブ注射剤及びその製造方法を開示するものであり、当業者はこれらの記載を参考し、プロセスパラメータを適切に改善して実現されることが可能である。なお、全ての類似な置換および変更が当業者にとって自明であり、それらは本発明に含まれたものとみなされることに留意する必要がある。本発明の方法および応用は、好ましい実施例を用いて説明したが、当業者は、本発明の技術を実施および適用するために、本発明の内容、思想、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された方法および応用を修正または適切な変更および組み合わせを行うことができることが明らかである。
【0032】
本発明により提供される安定なセクキヌマブ注射剤及びその製造方法に用いられる原料および試薬は、市場から購入することができる。
【0033】
以下、実施例により、本発明をさらに説明する。
実施例
【0034】
実験例1:バッファー
プレフィルドシリンジで、バッファー種類(リン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩)による影響を評価する。
【0035】
処方1:セクキヌマブ150mg/ml、リン酸二水素ナトリウム及リン酸水素二ナトリウム20mmol/L、メチオニン5mmol/L、トレハロース200mmol/L、ポリソルベート800.02%、pH5.8;
【0036】
処方2:セクキヌマブ150mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、トレハロース200mmol/L、ポリソルベート800.02%、pH5.8;
【0037】
処方3:セクキヌマブ150mg/ml、クエン酸及クエン酸ナトリウム20mmol/L、メチオニン5mmol/L、トレハロース200mmol/L、ポリソルベート800.02%、pH5.8。
【0038】
上記の3つの処方注射液をプレフィルドシリンジに充填し、長時間(4℃)、加速(25℃)および高温(40℃)で安定性試験を行い、物理的安定性(SECーHPLC(SEC高分子タンパク質:中国薬局方2015版総則)、光遮蔽法により測定した可視粒子(中国薬局方2015版総則0904を参照)および不溶性微粒子(中国薬局方2015版総則0903を参照))、化学的安定性(CEXーHPLCリジン変異体、中国薬局方2015版第三部分の付録IIIBを参照)を評価した。結果から、ヒスチジン緩衝塩系の方が品種安定性に優れたことが分かる。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
実験例2:pH
セクキヌマブ150mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、トレハロース200mmol/L、ポリソルベート800.02%の処方をもとに、それぞれpHを4.5、5.0、5.5、5.8、6.0、6.5、7.0に調整し、セクキヌマブの安定性に対する異なるpHの影響を調べた。それらのサンプルを高温条件下で4週間保存し、SECーHPLC、CEXーHPLCによりセクキヌマブの安定性を評価した。SECーHPLC、CEXーHPLCから、pH6.0程度でタンパク質の凝集および加水分解が最も少ないことが確認された。
実験例3:安定化剤
【0046】
注射剤型のために開発された予備的な処方は、異なる安定化剤が長時間(4℃)、加速(25℃)および高温(40℃)の保存条件下でセクキヌマブの可溶性および不溶性凝集体の形成(SEC-HPLC、DLS、光遮蔽法により測定された可視粒子および不溶性微粒子)、化学的安定性(CEX-HPLC)に対する保存期間の影響を評価するためである。安定化剤は、ソルビトール、キシリトールおよびトレハロースを選択した。処方は、以下の通りである。
【0047】
処方1:セクキヌマブ150mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、ソルビトール239mmol/L、ポリソルベート800.02%、pH5.8;
【0048】
処方2:セクキヌマブ150mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、キシリトール241mmol/L、キシリトール0.02%、pH5.8;
【0049】
処方3:セクキヌマブ150mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、トレハロース200mmol/L、ポリソルベート800.02%、pH5.8
【0050】
初期段階での個別安定性試験により、使用されたソルビトールおよびキシリトールの濃度が安定性に最適な濃度であった。
【0051】
試験の結果から、キシリトールおよびソルビトールを安定化剤として選択した処方が、トレハロースに比べて、その安定性がトレハロース群よりも優れたことがわかり、先発医薬品に関する特許の公開によると、先発医薬品CN201580076632.9の最適なフォーミュラは処方3であった。したがって、本発明は、従来技術の問題点を克服し、注射剤の安定性をさらに改善する。
【0052】
【表7】
【0053】
【表8】
【0054】
【表9】
【0055】
【表10】
【0056】
【表11】
【0057】
【表12】
実施例1
【0058】
セクキヌマブ150mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、ソルビトール239mmol/L、ポリソルベート80 0.02%、残りの成分は注射用水であった。pHが5.8であった。
製造方法は、発明内容を参考にする。
実施例2
【0059】
セクキヌマブ150mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、キシリトール241mmol/L、ポリソルベート80 0.02%、残りの成分は注射用水であった。pHが5.8であった。
製造方法は、発明内容を参考にする。
実施例3
【0060】
セクキヌマブ150mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、ソルビトール210mmol/L、ポリソルベート80 0.02%、残りの成分が注射用水であった。pHが5.8であった。
【0061】
製造方法は、発明内容を参考にする。
実施例4
【0062】
セクキヌマブ150mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、ソルビトール280mmol/L、ポリソルベート80 0.02%、残りの成分は注射用水であった。pHが5.8であった。
【0063】
製造方法については、発明内容を参考にする。
実施例5
【0064】
セクキヌマブ140mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩10mmol/L、メチオニン5mmol/L、ソルビトール210mmol/L、ポリソルベート80 0.02%、残りの成分は注射用水であった。pHが5.8であった。
【0065】
製造方法は、発明内容を参考にする。
実施例6
【0066】
セクキヌマブ160mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩30mmol/L、メチオニン20mmol/L、キシリトール280mmol/L、ポリソルベート80 0.02%、残りの成分は注射用水であった。pHが5.8であった。
【0067】
製造方法は、発明内容を参考にする。
実施例7
【0068】
セクキヌマブ150mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、キシリトール210mmol/L、ポリソルベート80 0.02%、残りの成分は注射用水であった。pHが5.8であった。
【0069】
製造方法は、発明内容を参考にする。
実施例8
【0070】
セクキヌマブ150 mg/ml、ヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩20mmol/L、メチオニン5mmol/L、キシリトール280mmol/L、ポリソルベート80 0.02%、残りの成分は注射用水であった。pHが5.8であった。
【0071】
製造方法は、発明内容を参考にする。
効果例
【0072】
以上の実施例および実験における各添加物は、表13を参照する。
【0073】
【表13】
【0074】
以上、本発明により提供される安定なセクキヌマブ注射剤及びその製造方法を詳細に説明した。本明細書において具体例により本発明の原理および実施形態を論述したが、以上の実施例の説明は、本発明の方法及び要旨を理解するために用いられたものでは過ぎない。当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、幾つの改良及び修飾を加えることができ、それらの改良及び修飾も本発明の特許範囲に含まれることに留意する必要がある。