(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】チクソトロピー性レオロジー改質剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20221220BHJP
C08L 75/00 20060101ALI20221220BHJP
C08K 5/3412 20060101ALI20221220BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20221220BHJP
C10M 133/20 20060101ALI20221220BHJP
C09D 175/02 20060101ALI20221220BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20221220BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20221220BHJP
C09D 175/08 20060101ALI20221220BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20221220BHJP
C09D 127/06 20060101ALI20221220BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20221220BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20221220BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20221220BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
C09K3/00 103G
C08L75/00
C08K5/3412
C08G18/38 014
C10M133/20
C09D175/02
C09D175/04
C09D175/06
C09D175/08
C09D7/20
C09D127/06
C09D163/00
C09D167/00
C09K3/10 D
C10N30:02
(21)【出願番号】P 2020551843
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 US2019023909
(87)【国際公開番号】W WO2019190997
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-09-17
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517213094
【氏名又は名称】アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ADVANSIX RESINS & CHEMICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】アシルバサム,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】フローレス-バスケス,ハイメ・アー
(72)【発明者】
【氏名】モーギル,カルッティケイ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-319627(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007028890(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00
C08K 5/3412
C08G 18/38
C10M 133/20
C09D 175/02
C09D 175/04
C09D 175/06
C09D 175/08
C09D 7/20
C09D 127/06
C09D 163/00
C09D 167/00
C09K 3/10
C09K 3/00
C10N 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式
【化1】
(式中、R
1及びR
4は、ポリエーテル、ポリエステル、又はポリカーボネート置換アルキル鎖を含有する4~22炭素原子の、同一若しくは異なる直鎖状又は分岐鎖状のアルキルラジカル又はアルケニルラジカルであり、
R
2は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、及び/又はアルキル置換芳香族基であり、及び
R
3は、脂肪族直鎖状若しくは分岐鎖状基、脂環式基、及び/又はアルキル置換芳香族基である)
を有する少なくとも1つのポリウレタン-ポリウレアポリマー、及び
以下の一般式
【化2】
(式中、Rは、1又は2個の無置換炭素の線状アルキル基である)
に従う1又は複数のカプロラクタム誘導溶媒を含む溶媒、
を含む、レオロジー改質剤組成物。
【請求項2】
前記溶媒が、前記組成物の総重量の20重量%~95重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記溶媒が、前記組成物の総重量の40重量%~80重量%の量で存在する、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記溶媒が、さらに、前記溶媒の合計又は合わせた重量の1重量%~10重量%の範囲内の量で存在するN-ブチルカプロラクタムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリウレタン-ポリウレアポリマーが、
以下の式
O=C=N-R
2-N=C=O
(式中、R
2は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、及び/又はアルキル置換芳香族基である)
を有するジイソシアネートと
以下の式
H
2N-R
3-NH
2
(式中、R
3は、C
2~C
12脂肪族直鎖状若しくは分岐鎖状基、脂環式基、及び/又はアルキル置換芳香族基である)
を有するジアミンとから合成される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のレオロジー改質剤組成物を製造するための方法であって、
イソシアネート末端ウレタンポリマーを提供すること、及び
前記イソシアネート末端ウレタンポリマーを、ジアミン、触媒、及び溶媒と混合して、ポリウレタン-ポリウレアポリマーを形成すること、
を含み、
前記イソシアネート末端ウレタンポリマーを提供することが、
モノヒドロキシル含有化合物を過剰のジイソシアネートに添加して、前記モノヒドロキシル含有化合物と前記ジイソシアネートとを含む混合物を形成すること、及び
前記モノヒドロキシル含有化合物と前記ジイソシアネートとの前記混合物を撹拌して、前記イソシアネート末端ウレタンポリマーを形成すること、を含み、
前記溶媒は、以下の一般式
【化3】
(式中、Rは、1又は2個の無置換炭素の線状アルキル基である)
に従う1又は複数のカプロラクタム誘導溶媒を含む、
方法。
【請求項7】
前記イソシアネート末端ウレタンポリマーを、前記ジアミン、前記触媒、及び前記溶媒と混合することが、
前記ジアミン、前記触媒、及び前記溶媒を一緒に混合して溶液を形成すること、及び
前記イソシアネート末端ウレタンポリマーを前記溶液に添加すること、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ジアミン、前記触媒、及び前記溶媒を一緒に混合して溶液を形成することが、前記ジアミン、前記触媒、及び前記溶媒を加熱することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記イソシアネート末端ウレタンポリマーを前記溶液に添加することが、少なくとも1時間にわたって行われる、請求項7又は8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記過剰のジイソシアネートを、真空蒸留によって除去することをさらに含む、請求項6~9の記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ジイソシアネートが、以下の式
O=C=N-R
2-N=C=O
(式中、R
2は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、及び/又はアルキル置換芳香族基であり)を有し、
前記ジアミンが、以下の式
H
2N-R
3-NH
2
(式中、R
3は、C
2~C
12脂肪族直鎖状若しくは分岐鎖状基、脂環式基、及び/又はアルキル置換芳香族基である)を有する、
請求項6~10の記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が、塩化リチウムを含む、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1又は複数のカプロラクタム誘導溶媒が、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムを含む、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒が、さらに、前記溶媒の合計又は合わせた重量の1重量%~10重量%の範囲内の量で存在するN-ブチルカプロラクタムを含む、請求項6~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ワニス、顔料ペースト、シーラント、化粧品、セラミック、潤滑剤、インク、接着剤、PVCプラスチゾルコーティング、エポキシ系コーティング、または不飽和ポリエステル樹脂系コーティング、及び
請求項1~5のいずれか一項に記載のレオロジー改質剤組成物、
を含む、最終用途組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容が参照により本明細書に援用される、THIXOTROPIC RHEOLOGY MODIFYING AGENT COMPOSITIONSと題する2018年3月27日出願の米国特許仮出願第62/648,630号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、レオロジー改質剤に関し、詳細には、ポリウレタン-ポリウレア系レオロジー改質剤と共に用いるのに適する溶媒、及びレオロジー改質剤の製造におけるそのような溶媒の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
レオロジー改質剤は、コーティングの適用時の垂れを防止し、着色塗料及びコーティングに用いられる顔料の沈降を回避することを可能とする、又はそのように塗料及びコーティングの流動特性を改善する。レオロジー改質剤は、ポリウレタン、ポリウレタン/ポリウレア、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン、及びポリウレタン-ポリエーテル/ポリエステル/ポリカーボネート/ポリアミドバインダーなどを例とする主成分を含有するコーティングに用いるのに適している。
【0004】
ポリウレタン-ポリウレア系レオロジー改質剤の製造は、一般的に周知である。典型的なプロセスでは、異なるアルキル、アルケニル、又はアリール鎖を有するモノヒドロキシル含有化合物を、イソシアネート末端ウレタンが得られる比率の過剰のジイソシアネートと反応させる。次に、過剰のジイソシアネートが、存在する場合は除去されて、イソシアネート末端ウレタンポリマーが得られる。ポリウレアセグメントは、イソシアネート末端ウレタンをジアミンと反応させることによって導入される。反応中の反応媒体の粘度を制御し、生成物であるポリウレタン-ポリウレアをコーティング製剤に容易に用いられる溶液の形態で排出可能とするために、適切な溶媒が用いられる。溶媒の補助なしでは、最終レオロジー改質剤は、固体又は高粘度の半固体である。
【0005】
ポリウレタン-ポリウレア官能性レオロジー改質剤の製造及び保存のために用いられる溶媒は、望ましくは、極性分子構造を含む特性を有し、非プロトン性であり、したがっていかなる活性又は解離性の水素も含まず、ポリウレタン及びポリウレアなどの極性硬質セグメントに対する良好な溶解力を有し、熱安定性であり、耐加水分解性であり、低い蒸気圧で高い沸点を有する。
【0006】
典型的な既存の溶媒としては、N-ジアルキルアセタミド(「DMA」)、N-ジアルキルホルムアミド(「DMF」)、N-ジアルキルオクタナミド/デカナミド混合物(Stepan Companyから入手可能であるHallcomid(登録商標)M-8-10など)、及びN-ジアルキルアミドエステル(Solvayから入手可能であるRhodiasolv Polarcleanなど)などのアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N-ブチルピロリドン(NBP)、N-オクチル-2-ピロリドン(NOP)などのN-アルキルピロリドンが挙げられる。しかし、アミドエステルは、加水分解を受け易く、その結果、酸性環境中では、長鎖アミドは、溶媒としてよりも界面活性剤として挙動し、溶解力が不足する可能性がある。上述の溶媒の多くは、毒性又は発癌性のいずれかであることが知られている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、これまでは固体又は粘性液体として一般的には製剤されてきた種類のポリウレタン-ポリウレア系レオロジー改質剤と共に用いるのに適する溶媒に関する。本発明の溶媒は、レオロジー改質剤を、ポリウレタン-ポリウレア系レオロジー改質剤を含むコーティング製剤の製造により適している液体又は溶液の形態で製造し製剤することを可能とするものである。本発明の溶媒は、例えばN-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-ブチルカプロラクタムなど、及びこれらの混合物を含む非プロトン性で無毒性のN-アルキル置換カプロラクタムであり、ポリウレタン及びポリウレアに見られるものなどの極性基に対する良好な溶解力を有し、熱安定性であり、低い蒸気圧で高い沸点を有する。
【0008】
本開示は、レオロジー改質剤組成物を提供し、少なくとも1つのポリウレタン-ポリウレアポリマー、及び以下の一般式に従う1又は複数のカプロラクタム誘導溶媒を含む溶媒を含み:
【0009】
【0010】
式中、Rは、1又は2個の無置換炭素の線状アルキル基である。
溶媒は、組成物の総重量の20重量%~95重量%の量で存在してよい。溶媒は、組成物の総重量の40重量%~80重量%の量で存在してよい。
【0011】
1又は複数のカプロラクタム誘導溶媒は、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムのうちの少なくとも1つを含んでよい。
1又は複数のカプロラクタム誘導溶媒は、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムを含んでよい。溶媒は、N-ブチルカプロラクタムをさらに含んでよい。N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量の1重量%~10重量%の範囲内の量で存在してよい。
【0012】
ポリウレタン-ポリウレアポリマーは、以下の式を有してよく:
【0013】
【0014】
式中、R1及びR4は、ポリエーテル、ポリエステル、又はポリカーボネート置換アルキル鎖を含有する4~22炭素原子の、同一若しくは異なる直鎖状又は分岐鎖状のアルキルラジカル又はアルケニルラジカルであり;
R2は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、及び/又はアルキル置換芳香族基であり;並びに
R3は、脂肪族直鎖状若しくは分岐鎖状基、脂環式基、及び/又はアルキル置換芳香族基である。
【0015】
ポリウレタン-ポリウレアポリマーの合成は、以下の式を有するジイソシアネートであって:
O=C=N-R2-N=C=O
式中、R2は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、及び/又はアルキル置換芳香族基である、ジイソシアネートと;以下の式を有するジアミンであって:
H2N-R3-NH2
式中、R3は、C2~C12脂肪族直鎖状若しくは分岐鎖状基、脂環式基、及び/又はアルキル置換芳香族基である、ジアミンと、から行われてよい。
【0016】
本開示は、また、上記で述べたレオロジー改質剤組成物のいずれをも製造するための方法も提供し、方法は、イソシアネート末端ウレタンポリマーを提供すること;及びイソシアネート末端ウレタンポリマーを、ジアミン、触媒、及び溶媒と混合して、ポリウレタン-ポリウレアポリマーを形成すること、を含み、溶媒は、以下の一般式に従う1又は複数のカプロラクタム誘導溶媒を含み:
【0017】
【0018】
式中、Rは、1又は2個の無置換炭素の線状アルキル基である。
イソシアネート末端ウレタンポリマー、ジアミン、触媒、及び溶媒を混合することは、ジアミン、触媒、及び溶媒を一緒に混合して溶液を形成すること;及びイソシアネート末端ウレタンポリマーをその溶液に添加することを含む。ジアミン、触媒、及び溶媒を一緒に混合して溶液を形成することは、ジアミン、触媒、及び溶媒を加熱することを含んでよい。イソシアネート末端ウレタンポリマーの溶液への添加は、少なくとも1時間にわたって行われてよい。
【0019】
イソシアネート末端ウレタンポリマーを提供することは、モノヒドロキシル含有化合物を過剰のジイソシアネートに添加して、モノヒドロキシル含有化合物とジイソシアネートとを含む混合物を形成すること、及びモノヒドロキシル含有化合物とジイソシアネートとの混合物を撹拌して、イソシアネート末端ウレタンポリマーを形成すること、を含んでよい。イソシアネート末端ウレタンポリマーを提供することは、真空蒸留によって過剰のジイソシアネートを除去することをさらに含んでよい。ジイソシアネートは、以下の式を有してよく:
O=C=N-R2-N=C=O
式中、R2は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、及び/又はアルキル置換芳香族基であり;並びに
ジアミンは、以下の式を有し:
H2N-R3-NH2
式中、R3は、C2~C12脂肪族直鎖状若しくは分岐鎖状基、脂環式基、及び/又はアルキル置換芳香族基である。
【0020】
触媒は、塩化リチウムを含んでよい。
1又は複数のカプロラクタム誘導溶媒は、N-メチルカプロラクタム又はN-エチルカプロラクタムのうちの少なくとも1つを含んでよい。1又は複数のカプロラクタム誘導溶媒は、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムを含んでよい。溶媒は、N-ブチルカプロラクタムをさらに含んでよい。N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量の1重量%~10重量%の範囲内の量で存在してよい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、これまでは固体又は粘性液体として一般的には製剤されてきた種類のポリウレタン-ポリウレア系レオロジー改質剤と共に用いるのに適する溶媒に関する。本発明の溶媒は、レオロジー改質剤を、ポリウレタン-ポリウレア系レオロジー改質剤を含むコーティング製剤の製造により良好に適している液体又は溶液の形態で製造し製剤することを可能とするものである。本開示の溶媒は、一般的には、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-ブチルカプロラクタムなど、及びこれらの混合物を含む非プロトン性で無毒性のN-アルキル置換カプロラクタムであり、ポリウレタン及びポリウレアに見られるものなどの極性基に対する良好な溶解力を有し、熱安定性であり、低い蒸気圧で高い沸点を有する。
【0022】
I.ポリウレタン-ポリウレアポリマー
本発明のレオロジー改質剤に有用であるポリウレタン-ポリウレアポリマーは、以下の式Iを有してよく:
【0023】
【0024】
式中、R1及びR4は、ポリエーテル、ポリエステル、又はポリカーボネート置換アルキル鎖を含有する4~22炭素原子の、同一若しくは異なる直鎖状又は分岐鎖状のアルキルラジカル又はアルケニルラジカルであり;
R2は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、及び/又はアルキル置換芳香族基であり;並びに
R3は、脂肪族直鎖状若しくは分岐鎖状基、脂環式基、及び/又はアルキル置換芳香族基である。
【0025】
ポリウレタン-ポリウレアポリマーは、ジイソシアネートとジアミンとから合成されてよい。適切なジイソシアネートは、以下の式IIを有してよく:
O=C=N-R2-N=C=O
式II
式中、R2は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、及び/又はアルキル置換芳香族基である。
【0026】
式IIのジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、若しくはアリール-脂肪族ジイソシアネート単独、又はこれらの混合物を包含する。そのようなジイソシアネートの具体例としては、1,4-テトラ-メチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、及びこれらの混合物、p-及びm-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナートジシクロヘキシル-メタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビスフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-ジイソシアナートジシクロヘキシルメタン、2,4’-及び4,4’-ジイソシアナートジフェニルメタンの異性体混合物、並びにC36ダイマーが挙げられる。また、50~100%の2,4-異性体分率を有するトルエンジイソシアネートも挙げられる。
【0027】
適切なジアミンは、以下の式IIIを有してよく:
H2N-R3-NH2
式III
式中、R3は、C2~C12脂肪族直鎖状若しくは分岐鎖状基、脂環式基、及び/又はアルキル置換芳香族基である。
【0028】
このような場合、適切なジアミンとしては、例えば1,3-プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジアミノドデカン、又はネオペンタンジアミンなどの直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい鎖長C2~C12の線状ジアミン、さらには4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン又は3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタンなどの環状ジアミン、及びメタ-キシリレンジアミン又はパラ-キシリレンジアミンなどの芳香族-脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0029】
モノヒドロキシル含有化合物は、様々なアルキル、アルケニル、又はアリール鎖を有していてよく、例えばn-ブタノール又はブチルトリグリコールなどであり、上述した種類の過剰のジイソシアネートと、イソシアネート末端ウレタンが得られる比率で反応される。次に、過剰のジイソシアネートが、存在する場合は除去されて、イソシアネート末端ウレタンポリマーが得られる。次に、イソシアネート末端ウレタンを、反応中の反応媒体の粘度を制御し、及び生成物であるポリウレタン-ポリウレアポリマーを以下で考察する種類の最終用途組成物に容易に用いられる最終溶液の形態で排出可能とするための本発明の溶媒の存在下で、ジアミンと反応させることによって、ポリウレアセグメントが導入される。
【0030】
II.溶媒
本発明の溶媒は、カプロラクタム又は(イプシロン)ε-カプロラクタムから誘導され、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-ブチルカプロラクタム、及びこれらの組み合わせ又は混合物が挙げられる。これらの溶媒は、生殖毒素又は発癌性物質のいずれかであると見出されたことはなく、そのように考えられてもいない。このように、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、及びN-ブチルカプロラクタムなどの本発明のカプロラクタム誘導溶媒は、レオロジー改質剤の製剤のために用いられてきた例えばNMPなどの従来の溶媒よりも著しく安全であると考えられる。
【0031】
本開示は、少なくとも1つのポリウレタン-ポリウレアポリマー及び1又は複数のカプロラクタム誘導溶媒を含む組成物を提供する。カプロラクタム誘導溶媒は、以下の一般式IVに従ってよく:
【0032】
【0033】
式中、Rは、1、2、又は4個の無置換炭素の線状アルキル基である。例えば、Rがメチル基(-CH3)である場合、カプロラクタム誘導溶媒は、式Vに従うN-メチルカプロラクタムである。
【0034】
【0035】
Rがエチル基(-CH2CH3)である場合、カプロラクタム誘導溶媒は、式VIに従うN-エチルカプロラクタムである。
【0036】
【0037】
Rがブチル基(-CH2CH2CH2CH3)である場合、カプロラクタム誘導溶媒は、式VIIに従うN-ブチルカプロラクタムである。
【0038】
【0039】
溶媒は、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、及び/又はN-ブチルカプロラクタムの2つ以上の組み合わせ又は混合物を含んでもよい。
例えば、溶媒は、上述のカプロラクタム誘導溶媒のうちの2つを、具体的には、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタム;N-メチルカプロラクタム及びN-ブチルカプロラクタム;又はN-エチルカプロラクタム及びN-ブチルカプロラクタムを含んでよい。
【0040】
溶媒がN-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムを含む場合、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムの各々は、溶媒の合計又は合わせた重量の、少なくは1重量パーセント(重量%)、2重量%、4重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、33重量%、35重量%、40重量%、45重量%、若しくは49重量%、又は多くは51重量%、55重量%、60重量%、65重量%、67重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、92重量%、94重量%、96重量%、98重量%、若しくは99重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、例えば、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムの各々は、溶媒の合計又は合わせた重量のパーセントとして、1重量%~99重量%、2重量%~98重量%、10重量%~90重量%、20重量%~80重量%、33重量%~67重量%、又は40重量%~60重量%の範囲内であってよい。
【0041】
溶媒がN-メチルカプロラクタムとN-エチルカプロラクタムとから成る場合、N-メチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量の、少なくは1重量パーセント(重量%)、2重量%、4重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、33重量%、35重量%、40重量%、45重量%、若しくは49重量%、又は多くは51重量%、55重量%、60重量%、65重量%、67重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、92重量%、94重量%、96重量%、98重量%、若しくは99重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、例えば、N-メチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量のパーセントとして、1重量%~99重量%、2重量%~98重量%、10重量%~90重量%、20重量%~80重量%、33重量%~67重量%、又は40重量%~60重量%の範囲内であってよい。
【0042】
溶媒がN-メチルカプロラクタム及びN-ブチルカプロラクタムを含む場合、N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量の、少なくは1重量%、2重量%、若しくは4重量%、又は多くは6重量%、8重量%、若しくは10重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、例えば、N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量のパーセントとして、1重量%~10重量%、2重量%~8重量%、4重量%~6重量%、1重量%~4重量%、1重量%~6重量%、又は2重量%~10重量%の範囲内であってよい。
【0043】
溶媒がN-メチルカプロラクタムとN-ブチルカプロラクタムとから成る場合、N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量の、少なくは1重量%、2重量%、若しくは4重量%、又は多くは6重量%、8重量%、若しくは10重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、例えば、N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量のパーセントとして、1重量%~10重量%、2重量%~8重量%、4重量%~6重量%、1重量%~4重量%、1重量%~6重量%、又は2重量%~10重量%の範囲内であってよい。
【0044】
溶媒がN-エチルカプロラクタム及びN-ブチルカプロラクタムを含む場合、N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量の、少なくは1重量%、2重量%、若しくは4重量%、又は多くは6重量%、8重量%、若しくは10重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、例えば、N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量のパーセントとして、1重量%~10重量%、2重量%~8重量%、4重量%~6重量%、1重量%~4重量%、1重量%~6重量%、又は2重量%~10重量%の範囲内であってよい。
【0045】
溶媒がN-エチルカプロラクタムとN-ブチルカプロラクタムとから成る場合、N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量の、少なくは1重量%、2重量%、若しくは4重量%、又は多くは6重量%、8重量%、若しくは10重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、例えば、N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量のパーセントとして、1重量%~10重量%、2重量%~8重量%、4重量%~6重量%、1重量%~4重量%、1重量%~6重量%、又は2重量%~10重量%の範囲内であってよい。
【0046】
溶媒は、カプロラクタム誘導溶媒の3つすべて、すなわちN-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、及びN-ブチルカプロラクタムを含んでもよい。所望に応じて、溶媒は、上述の3つのカプロラクタム誘導溶媒のうちの1又は2つのみから成っていてもよい。
【0047】
溶媒がカプロラクタム誘導溶媒の3つすべてを含む場合、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムは、合わせて又は個別に、溶媒の合計又は合わせた重量の、少なくは1重量%、2重量%、4重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、33重量%、35重量%、40重量%、45重量%、若しくは49重量%、又は多くは51重量%、55重量%、60重量%、65重量%、67重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、92重量%、94重量%、96重量%、98重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、例えば、N-メチルカプロラクタム又はN-エチルカプロラクタムの各々は、溶媒の合計又は合わせた重量のパーセントとして、1重量%~98重量%、2重量%~96重量%、10重量%~80重量%、15重量%~70重量%、20重量%~60重量%、又は25重量%~50重量%の範囲内であってよい。N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量の、少なくは1重量%、2重量%、若しくは4重量%、又は多くは6重量%、8重量%、若しくは10重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、例えば、N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量のパーセントとして、1重量%~10重量%、2重量%~8重量%、4重量%~6重量%、1重量%~4重量%、1重量%~6重量%、又は2重量%~10重量%の範囲内であってよい。
【0048】
溶媒がカプロラクタム誘導溶媒の3つすべてから成る場合、N-メチルカプロラクタム及びN-エチルカプロラクタムは、合わせて又は個別に、溶媒の合計又は合わせた重量の、少なくは1重量%、2重量%、4重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、33重量%、35重量%、40重量%、45重量%、若しくは49重量%、又は多くは51重量%、55重量%、60重量%、65重量%、67重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、92重量%、94重量%、96重量%、98重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、例えば、N-メチルカプロラクタム又はN-エチルカプロラクタムは各々、溶媒の合計又は合わせた重量のパーセントとして、1重量%~98重量%、2重量%~96重量%、10重量%~80重量%、15重量%~70重量%、20重量%~60重量%、又は25重量%~50重量%の範囲内であってよい。N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量の、少なくは1重量%、2重量%、若しくは4重量%、又は多くは6重量%、8重量%、若しくは10重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、例えば、N-ブチルカプロラクタムは、溶媒の合計又は合わせた重量のパーセントとして、1重量%~10重量%、2重量%~8重量%、4重量%~6重量%、1重量%~4重量%、1重量%~6重量%、又は2重量%~10重量%の範囲内であってよい。
【0049】
レオロジー改質剤組成物全体では、少なくとも1つのポリウレタン-ポリウレアポリマーは、少なくは5重量%、20重量%、若しくは25重量%、又は多くは55重量%、60重量%、80重量%、又は例えば5~80重量%、20~60重量%、若しくは25~55重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよく、溶媒は、少なくは20重量%、40重量%、若しくは45重量%、又は多くは75重量%、80重量%、若しくは95重量%、又は例えば20~95重量%、40~80重量%、若しくは45~75重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよい。
【0050】
本開示のレオロジー改質剤組成物は、有利には、非常に良好な保存安定性を有する。そのようなレオロジー改質剤組成物中に本開示の溶媒の1又は複数を用いることにより、そのような組成物を、固体、濁り(濁度)、及びゲル化のない、したがって、長期的な保存安定性を有するように製剤することが可能となる。本開示の溶媒は、極性の非プロトン性であり、ポリウレタン-ポリウレアポリマーに対する良好な溶解力を有し、最終用途組成物の製造時に非反応性である。
【0051】
本発明の溶媒を用いて製剤されたレオロジー改質剤組成物は、液体混合物などの最終用途組成物への添加剤として、レオロジー制御のために、及びそのような組成物にチクソトロピー性を付与するために、並びに一般的に、平滑化を促進しながらコーティング成分の沈降及びコーティングの垂れを防止するためのチクソトロピー流動を提供するために、用いられ得る。例示的な最終用途組成物としては、水性、溶剤系、及び無溶剤コーティング組成物、PVCプラスチゾル、エポキシ系コーティング、及び不飽和ポリエステル樹脂系組成物が挙げられる。具体的な用途としては、例えば、ワニス、顔料ペースト、ポリマー製剤、シーラント、化粧品、セラミック、潤滑剤、インク、及び接着剤が挙げられる。
【0052】
最終用途組成物又は最終レオロジー改質剤組成物中に、本発明の溶媒を用いて製剤されたレオロジー改質剤組成物は、最終用途又は最終組成物の総重量に基づいて、少なくは0.1重量%、0.3重量%、若しくは0.5重量%、又は多くは1重量%、3重量%、若しくは5重量%、又は例えば0.1~5重量%、0.3~3重量%、若しくは0.5~1重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内の量で存在してよい。
【0053】
本明細書で用いられる場合、「上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内」の句は、文字通り、いずれの範囲もそのような句の前に列挙された値のいずれか2つから選択されてよいことを意味し、その値が、リストの低い方の部分にあるか、又はリストの高い方の部分にあるかに関わらない。例えば、一対の値は、2つの低い方の値から、2つの高い方の値から、又は1つの低い方の値及び1つの高い方の値から選択されてよい。
【0054】
実施例
以下の例は、本開示に従う溶媒及び溶媒の組み合わせが、加水分解、低い溶解力、及び毒性又は発癌性の副作用などの既存の溶媒に付随する問題を起こすことなく、ウレア系レオロジー改質剤の合成におけるいくつかの典型的な既存の溶媒と少なくとも同等に良好な性能を示すことを実証するものである。ウレア系レオロジー改質剤を、3つのTDIアダクトのうちの1つをm-キシリレンジアミン又はヘキサメチレンジアミンのいずれかと反応させることによって合成した。3つのTDIアダクトは、トルエンジイソシアネート(TDI、80%の2,4-異性体)と、n-ブタノール(TDI-ブタノール)、ブチルトリグリコール(TDI-ブチルトリグリコール)、又はポリエチレングリコールモノメチルエーテル400(TDI-mPEG400)とから製造した。TDI、n-ブタノール、ブチルトリグリコール、及びmPEG400は、Sigma Aldrichから入手した。
【0055】
TDIアダクトの合成
TDIアダクトの各々は、n-ブタノール、ブチルトリグリコール、又はmPEG400を、撹拌器を取り付けた過剰のTDIを含有する反応容器に添加することによって製造した。容器への添加は、30℃で2時間にわたって行った。添加の終了後、撹拌をさらに2時間継続した。この追加の2時間の後、150~170℃での真空蒸留(0.1ミリバール)によって過剰のTDIを除去した。各TDIアダクトのイソシアネート(NCO)含有量を測定し、TDI-ブタノールアダクトに対しては16.47%、TDI-ブチルトリグリコールアダクトに対しては10.58%、及びTDI-mPEG400アダクトに対しては5.1%であることが分かった。各バッチで見出された遊離TDIは、0.5%未満であった。
【0056】
ウレタン-ウレアレオロジー改質剤の合成
例1~29の各々において、塩化リチウム(LiCl)触媒、及びm-キシリレンジアミン又はヘキサメチレンジアミンのいずれかを、表1に示した溶媒又は溶媒の組み合わせを含有する100mLフラスコに添加した。フラスコを、窒素下で80℃に加熱した。すべてのLiClの溶解が観察されたところで、表1に示したように、14.5g又は16gのTDIアダクトのうちの1つを、フラスコへゆっくり添加した。反応が発熱反応であることから、TDIアダクトは、14.5gの添加については1時間にわたって、16gの添加については1.5時間にわたって添加して、反応温度を85℃未満に維持した。反応混合物の温度は、温度計を用いてモニタリングした。TDIアダクトの添加後、80℃でさらに30分間反応を継続し、その後室温まで冷却させた。
【0057】
【0058】
得られたウレタン-ウレア溶液は、TDI-ブタノールアダクト及びTDI-ブチルトリグリコールアダクトから形成された溶液については、黄色がかった色であり、TDI-mPEG400アダクトから形成された溶液については、暗褐色であることが観察された。ウレタン-ウレア溶液は、約40重量%~約50重量%の範囲内の固形分を有していた。ウレタン-ウレア溶液を、長期間にわたって又は溶液がゲル化するまで、室温での安定性について評価した。結果を表2に示す。
【0059】
例1~11は、TDI-ブタノールアダクトから形成したウレタン-ウレア溶液である。表2に示されるように、TDI-ブタノールアダクト及びm-キシリレンジアミンから形成した溶液はすべて、1週間以内にゲル化した。N-メチルカプロラクタム(例1、5)、N-エチルカプロラクタム(例6)、N-ブチルカプロラクタム(例7)、及びN-メチルカプロラクタムとN-エチルカプロラクタムとの混合物(例8)を含む溶液は、N-メチルピロリドン(例2、9)を含む溶液と同等に良好な性能を示し、すべて4~6日間でゲル化した。驚くべきことに、N-ブチルピロリドン(例3)又はメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペントエート(例4)を含む溶液は、非常により性能が悪かった。N-ブチルピロリドンを含む溶液は、1時間でゲル化し、メチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペントエートを含む溶液は、反応中にゲル化した。TDI-ブタノールのアミンに対するモル比の変動は、溶液の安定性に対して影響しないものと思われた(例1及び2を例5及び9と比較)。しかし、例10及び11に示されるように、m-キシリレンジアミンではなくヘキサメチレンジアミンを用いてウレタン-ウレア溶液を形成すると、溶液の安定性が高まり、12~28日間のより長いゲル時間が得られる結果となった。
【0060】
例12~21は、TDI-ブチルトリグリコールアダクトから形成したウレタン-ウレア溶液である。表2に示されるように、TDI-ブチルトリグリコールアダクトとm-キシリレンジアミン又はヘキサメチレンジアミンのいずれかとから形成した溶液はすべて、長期間にわたって沈澱が見られずに安定であったが、N-ブチルピロリドン(例14)又はメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペントエート(例15)を含む溶液は、1日しか観察しなかった。
【0061】
【0062】
例22~29は、TDI-mPEG400アダクトから形成したウレタン-ウレア溶液である。表に示したように、N-メチルカプロラクタム(例22)、N-エチルカプロラクタム(例27)、N-メチルカプロラクタムとN-ブチルカプロラクタムとの混合物(例28)、及びN-エチルカプロラクタムとN-ブチルカプロラクタムとの混合物(例23)を含む溶液は、N-メチルピロリドンを含む溶液(例24、29)とほぼ同等に良好な性能を示した。N-メチルピロリドンを含む溶液中では、沈澱は形成されなかったが、他の溶液は、ある程度の沈澱を形成し、それは振とうすると溶解した。N-ブチルピロリドンを含む溶液(例25)も、振とうすると溶解するある程度の沈澱を形成した。驚くべきことに、メチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペントエートを含む溶液(例26)は、他のいずれの溶液よりも著しく高いレベルの沈澱を形成した。
【0063】
したがって、これらの例は、本開示に従う溶媒及び溶媒の組み合わせが、全体として、加水分解、低い溶解力、及び毒性又は発癌性の副作用などの既存の溶媒に付随する問題を起こすことなく、N-メチルピロリドンなどのウレア系レオロジー改質剤の合成において典型的な既存の溶媒と同等に良好な性能を示すこと、並びにN-ブチルピロリドン及びメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペントエートなどの他の典型的な既存の溶媒よりも著しく良好な性能を示すことができることを実証するものである。
【0064】
本開示を、例示的な設計を有するものとして記載してきたが、本開示は、本開示の趣旨及び範囲の中でさらに改変され得る。したがって、本出願は、その全体としての原理を用いる本開示のいずれの変更、使用、又は適合も包含することを意図している。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野における公知の又は慣習的な実践の範囲内に含まれるような本開示からの逸脱も包含することを意図しており、そのような逸脱は、添付の請求項の範囲内に含まれる。