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特許7200056タッチセンサ、制御装置、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】タッチセンサ、制御装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20221226BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
G01N27/22 Z
H01H36/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019121772
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021009035
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】福原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 紀博
(72)【発明者】
【氏名】青木 善朗
(72)【発明者】
【氏名】後呂 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 羊平
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116630(JP,A)
【文献】特開2015-211026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0043976(US,A1)
【文献】特開2014-56512(JP,A)
【文献】特開2015-179393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 36/00 - 36/02
G01N 27/00 - 27/10
G01N 27/14 - 27/24
H03K 17/74 - 17/98
G06F 3/041- 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、
前記電極と対象物の間の静電容量を、所定の周期で検出静電容量として検出する静電容量検出部と、
前記検出静電容量と基準静電容量の差分に基づいて、前記対象物に対する操作の有無の判断を行なう制御部と、
を備えており、
前記制御部は、
前記検出静電容量で前記基準静電容量を更新し、
前記検出静電容量が前記基準静電容量よりも小さくかつ前記差分が所定値よりも大きい場合、前記基準静電容量の更新を停止し、
更新停止前の前記基準静電容量に基づく静電容量の範囲を設定し、
前記検出静電容量が前記静電容量の範囲内であるとき、当該検出静電容量で前記基準静電容量を更新する、
タッチセンサ。
【請求項2】
前記静電容量の範囲は、前記基準静電容量の±20%である、
請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記対象物は、車両の一部である、
請求項1または2に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
電極と対象物の間の静電容量を、所定の周期で検出静電容量として検出する静電容量検出部の動作を制御する制御装置であって、
前記検出静電容量と基準静電容量の差分に基づいて、前記対象物に対する操作の有無の判断を行ない、
前記検出静電容量で前記基準静電容量を更新し、
前記検出静電容量が前記基準静電容量よりも小さくかつ前記差分が所定値よりも大きい場合、前記基準静電容量の更新を停止し、
更新停止前の前記基準静電容量に基づく静電容量の範囲を設定し、
前記検出静電容量が前記静電容量の範囲内であるとき、当該検出静電容量で前記基準静電容量を更新する、
制御装置。
【請求項5】
電極と対象物の間の静電容量を、所定の周期で検出静電容量として検出する静電容量検出部の動作を制御装置に制御させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムが実行されることにより、前記制御装置に、
前記検出静電容量と基準静電容量の差分に基づいて、前記対象物に対する操作の有無の判断を行なわせ、
前記検出静電容量で前記基準静電容量を更新させ、
前記検出静電容量が前記基準静電容量よりも小さくかつ前記差分が所定値よりも大きい場合、前記基準静電容量の更新を停止させ、
更新停止前の前記基準静電容量に基づく静電容量の範囲を設定させ、
前記検出静電容量が前記静電容量の範囲内であるとき、当該検出静電容量で前記基準静電容量を更新させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサに関連する。本発明は、当該タッチセンサに搭載されうる制御装置、および当該制御装置に所定の動作を実行させるコンピュータプログラムにも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、静電容量方式のタッチセンサを開示している。当該タッチセンサにおいては、電極により生成される電界内に位置する対象物にユーザの指などが近づくことによって疑似的なコンデンサが形成され、当該電極自体の容量が増加する。この容量の増加が検知されることにより、ユーザによる対象物への操作がなされたかが判別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-188822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ノイズ環境下においても正確に対象物への操作を判別可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための一態様は、タッチセンサであって、
電極と、
前記電極と対象物の間の静電容量を、所定の周期で検出静電容量として検出する静電容量検出部と、
前記検出静電容量と基準静電容量の差分に基づいて、前記対象物に対する操作の有無の判断を行なう制御部と、
を備えており、
前記制御部は、
前記検出静電容量で前記基準静電容量を更新し、
前記検出静電容量が前記基準静電容量よりも小さくかつ前記差分が所定値よりも大きい場合、前記基準静電容量の更新を停止し、
更新停止前の前記基準静電容量に基づく静電容量範囲を設定し、
前記検出静電容量が前記静電容量範囲内であるとき、当該検出静電容量で前記基準静電容量を更新する。
【0006】
上記の目的を達成するための一態様は、電極と対象物の間の静電容量を、所定の周期で検出静電容量として検出する静電容量検出部の動作を制御する制御装置であって、
前記検出静電容量と基準静電容量の差分に基づいて、前記対象物に対する操作の有無の判断を行ない、
前記検出静電容量で前記基準静電容量を更新し、
前記検出静電容量が前記基準静電容量よりも小さくかつ前記差分が所定値よりも大きい場合、前記基準静電容量の更新を停止し、
更新停止前の前記基準静電容量に基づく静電容量範囲を設定し、
前記検出静電容量が前記静電容量範囲内であるとき、当該検出静電容量で前記基準静電容量を更新する。
【0007】
上記の目的を達成するための一態様は、電極と対象物の間の静電容量を、所定の周期で検出静電容量として検出する静電容量検出部の動作を制御装置に制御させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムが実行されることにより、前記制御装置に、
前記検出静電容量と基準静電容量の差分に基づいて、前記対象物に対する操作の有無の判断を行なわせ、
前記検出静電容量で前記基準静電容量を更新させ、
前記検出静電容量が前記基準静電容量よりも小さくかつ前記差分が所定値よりも大きい場合、前記基準静電容量の更新を停止させ、
更新停止前の前記基準静電容量に基づく静電容量範囲を設定させ、
前記検出静電容量が前記静電容量範囲内であるとき、当該検出静電容量で前記基準静電容量を更新させる。
【0008】
上記の各態様によれば、検出静電容量が基準静電容量よりも小さくかつ両者の差分が所定の値よりも大きい場合、基準静電容量の更新が停止され、検出静電容量が更新停止前の基準静電容量に基づいて設定される静電容量範囲内に収まるまで基準静電容量の更新が再開されない。換言すると、環境ノイズによる検出静電容量への影響が大きいとみなされている間は、低下している検出静電容量を基準として対象物への操作が行なわれたとの判断がなされる事態の発生を抑制できる。したがって、ノイズ環境下においても正確に対象物への操作を判別可能にできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノイズ環境下においても正確に対象物への操作を判別可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るタッチセンサの機能構成を例示している。
図2】上記のタッチセンサの動作原理を示している。
図3】上記のタッチセンサの動作の流れの一例を示している。
図4】上記のタッチセンサの動作の流れの一例を示している。
図5】上記のタッチセンサの動作を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。図1は、一実施形態に係るタッチセンサ1の機能構成を例示している。
【0012】
タッチセンサ1は、電極11を備えている。電極11は、ユーザの身体の一部(指Fなど)がタッチ操作を行ないうる対象物2と対向するように配置されている。対象物2は、誘電体である。本明細書で用いられる「タッチ操作」という語は、対象物2に対するユーザの身体の一部の接近または接触を伴う操作を意味する。
【0013】
タッチセンサ1は、静電容量検出部12を備えている。静電容量検出部12は、電極11と対象物2の間の静電容量を検出するための充放電回路121を備えている。
【0014】
充放電回路121は、電極11と電気的に接続されている。充放電回路121は、充電動作と放電動作を行ないうる。充電動作時の充放電回路121は、不図示の電源から供給される電流を電極11へ供給する。放電動作時の充放電回路121は、電極11から電流を放出させる。
【0015】
電極11に供給された電流により、対象物2の周囲に電界が発生する。ユーザの指Fなどがこの電界に近づくと、電極11との間に疑似的なコンデンサが形成される。これにより、電極11と対象物2の間の静電容量が増加する。静電容量が増加すると、放電動作時における電極11から放出される電流が増加する。
【0016】
タッチセンサ1は、制御装置13を備えている。制御装置13は、制御部131を備えている。制御部131は、充放電回路121の動作を制御する機能を有している。制御部131は、所定の周波数で充放電回路121を動作させる。本明細書で用いられる「所定の周波数で充放電回路を動作させる」という表現は、所定の周波数で充放電回路に充電動作と放電動作を繰り返させることを意味する。
【0017】
静電容量検出部12は、変換回路122を備えている。電極11から放出された電流は、変換回路122に入力される。変換回路122は、入力された電流量に応じて発信周波数が変化する回路、および当該回路から出力されるパルスを計数するカウンタを含んでいる。すなわち、変換回路122は、検出された静電容量に対応する電流量に応じた数値を有するデータを出力する。
【0018】
当該データは、制御部131に入力される。制御部131は、当該データが示す数値に基づいて、電極11と対象物2の間の静電容量を取得できる。このようにして、制御部131は、電極11と対象物2の間の静電容量を、静電容量検出部12に検出させる。
【0019】
図2に例示されるように、制御部131は、静電容量検出部12に検出させた静電容量に基づいて、対象物2にタッチ操作が行なわれたかを判断する機能も有している。具体的には、制御部131は、電極11と対象物2の間の静電容量を、所定の周期Tで静電容量検出部12に繰り返し検出させる。周期Tは、例えば20ミリ秒である。以降の説明においては、静電容量検出部12によって検出された電極11と対象物2の間の静電容量を、「検出静電容量C」と称する。
【0020】
ユーザの指Fなどが対象物2に接近すると、前述の通り、電極11と対象物2の間の静電容量が増加する。制御部131は、基準静電容量Crからの増加量が所定の閾値Cthを超えると、対象物2にタッチ操作が行なわれたと判断する。図示の例においては、時点t1から時点t2までの間、タッチ操作が行なわれたと判断される。
【0021】
図1に示されるように、制御装置13は、記憶部132を備えている。記憶部132は、基準静電容量Crに対応するデータが格納されている。制御部131は、検出された静電容量に対応する変換回路122から入力されたデータと記憶部132に格納されているデータとを比較することにより、上記のタッチ操作が行なわれたかの判断を行なう。
【0022】
図2には基準静電容量Crが一定値をとるかのように記載されている。しかしながら、基準静電容量Crは、取得された検出静電容量Cの値で更新される。図3図4を参照しつつ、制御部131による一連の処理の流れを説明する。
【0023】
制御部131は、検出静電容量Cを取得する(STEP1)。具体的には、検出静電容量Cに対応する数値データを、変換回路122から受け付ける。
【0024】
続いて、対象物2に対してタッチ操作が行なわれたかが判断される。まず、制御部131は、検出静電容量Cが基準静電容量Crを下回っているかを判断する(STEP2)。具体的には、変換回路122から入力されたデータと記憶部132に格納されているデータとを比較することによって、当該判断がなされる。当該判断は、検出静電容量Cの変動がタッチ操作と環境ノイズのいずれによりもたらされたのかを区別するために行なわれる。検出静電容量Cが基準静電容量Crを上回る現象は、タッチ操作により生じることが一般的である。他方、検出静電容量Cが基準静電容量Crを上回る現象は、環境ノイズの影響であることが一般的である。
【0025】
検出静電容量Cが基準静電容量Crを下回っていないと判断されると(STEP2においてNO)、制御部131は、検出静電容量Cの基準静電容量Crからの増加量が所定の閾値Cthを上回っているかが判断する(STEP3)。具体的には、変換回路122から入力されたデータと記憶部132に格納されているデータとを比較することにより、当該判断がなされる。
【0026】
検出静電容量Cの基準静電容量Crからの増加量が所定の閾値Cth以下であると判断されると(STEP3においてNO)、制御部131は、対象物2に対してタッチ操作が行なわれていないと判断する。この場合、制御部131は、検出静電容量Cに対応する数値データで記憶部132に格納されている基準静電容量Crに対応する数値データを更新する(STEP4)。すなわち、検出静電容量Cが、新たな基準静電容量Crになる。処理は、STEP1へ戻り、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cが取得される。
【0027】
検出静電容量Cの基準静電容量Crからの増加量が所定の閾値Cthを上回っていると判断されると(STEP3においてYES)、制御部131は、対象物2に対してタッチ操作が行なわれたと判断する(STEP5)。この場合、図1に例示されるように、制御部131は、タッチ操作が行なわれたことを示す検出信号Sを出力する。この場合においても、制御部131は、検出静電容量Cに対応する数値データで記憶部132に格納されている基準静電容量Crに対応する数値データを更新する(STEP4)。すなわち、検出静電容量Cが、新たな基準静電容量Crになる。処理は、STEP1へ戻り、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cが取得される。
【0028】
検出静電容量Cが基準静電容量Crを下回っていると判断されると(STEP2においてYES)、環境ノイズ対策処理が開始される。制御部131は、検出静電容量Cの基準静電容量Crからの減少量が所定の閾値Cthを上回っているかを判断する(STEP6)。具体的には、変換回路122から入力されたデータと記憶部132に格納されているデータとを比較することにより、当該判断がなされる。なお、STEP6において使用される閾値CthとSTEP3において使用される閾値Cthは、必ずしも同一であることを要しない。
【0029】
検出静電容量Cの基準静電容量Crからの増加量が所定の閾値Cth以下であると判断されると(STEP6においてNO)、制御部131は、環境ノイズの影響が小さいと判断し、検出静電容量Cに対応する数値データで記憶部132に格納されている基準静電容量Crに対応する数値データを更新する(STEP4)。すなわち、検出静電容量Cが、新たな基準静電容量Crになる。処理は、STEP1へ戻り、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cが取得される。
【0030】
検出静電容量Cの基準静電容量Crからの減少量が所定の閾値Cthを上回っていると判断されると(STEP6においてYES)、制御部131は、環境ノイズの影響が大きいと判断し、検出静電容量Cによる基準静電容量Crの更新を停止する(STEP7)。制御部131は、更新停止時からの経過時間Teのカウントを開始する。
【0031】
さらに、制御部131は、基準静電容量Crの更新停止時からの経過時間Teが所定の閾値Tth以上であるかを判断する(STEP8)。換言すると、基準静電容量Crの更新停止が所定の時間長さだけ継続されたかが判断される。経過時間Teが所定の閾値Tth未満であると判断されると(STEP8においてNO)、処理はSTEP1に戻り、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cが取得される。
【0032】
経過時間Teが所定の閾値Tthを上回っていると判断されると(STEP9においてYES)、制御部131は、更新停止前の基準静電容量Crに基づいて静電容量の範囲γを設定する(STEP9)。範囲γは、環境ノイズの影響が解消された場合に想定される検出静電容量Cの範囲として定められる。例えば、記憶部132に格納されている基準静電容量Crの値の±20%の範囲となるように定められる。なお、範囲γの設定は、基準静電容量Crの更新停止(STEP7)とともに行なわれてもよい。
【0033】
続いて制御部131は、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cを取得する(STEP11)。この処理はSTEP1と同様であるので、繰り返しとなる説明は省略する。
【0034】
続いて制御部131は、検出静電容量Cが基準静電容量Crを下回っているかを判断する(STEP12)。この処理はSTEP2と同様であるので、繰り返しとなる説明は省略する。
【0035】
検出静電容量Cが基準静電容量Crを下回っていないと判断されると(STEP12においてNO)、制御部131は、検出静電容量Cの基準静電容量Crからの増加量が所定の閾値Cthを上回っているかが判断する(STEP13)。
【0036】
検出静電容量Cの基準静電容量Crからの増加量が所定の閾値Cth以下であると判断されると(STEP13においてNO)、制御部131は、対象物2に対してタッチ操作が行なわれておらず、ノイズ環境にも顕著な変化はないと判断する。基準静電容量Crの更新は停止されたまま、処理はSTEP11に戻り、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cが取得される。
【0037】
検出静電容量Cの基準静電容量Crからの増加量が所定の閾値Cthを上回っていると判断されると(STEP13においてYES)、制御部131は、取得された検出静電容量CがSTEP9で設定された静電容量の範囲γ内であるかを判断する(STEP14)。
【0038】
取得された検出静電容量Cが範囲γ内にあると判断されると(STEP14においてYES)、制御部131は、検出静電容量Cに対応する数値データで記憶部132に格納されている基準静電容量Crに対応する数値データを更新する(STEP15)。すなわち、検出静電容量Cが、新たな基準静電容量Crになる。処理は、STEP1へ戻り、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cが取得される。
【0039】
取得された検出静電容量Cが範囲γ内にないと判断されると(STEP14においてNO)、制御部131は、対象物2に対してタッチ操作が行なわれたと判断する(STEP16)。この場合、制御部131は、タッチ操作が行なわれたことを示す検出信号Sを出力する。この場合においても、制御部131は、検出静電容量Cに対応する数値データで記憶部132に格納されている基準静電容量Crに対応する数値データを更新する(STEP15)。すなわち、検出静電容量Cが、新たな基準静電容量Crになる。処理は、STEP1へ戻り、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cが取得される。
【0040】
検出静電容量Cが基準静電容量Crを下回っていると判断されると(STEP12においてYES)、制御部131は、検出静電容量Cの基準静電容量Crからの減少量が所定の閾値Cthを上回っているかを判断する(STEP17)。
【0041】
検出静電容量Cの基準静電容量Crからの増加量が所定の閾値Cth以下であると判断されると(STEP17においてNO)、制御部131は、対象物2に対してタッチ操作が行なわれておらず、ノイズ環境にも顕著な変化はないと判断する。基準静電容量Crの更新は停止されたまま、処理はSTEP11に戻り、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cが取得される。
【0042】
検出静電容量Cの基準静電容量Crからの減少量が所定の閾値Cthを上回っていると判断されると(STEP17においてYES)、制御部131は、環境ノイズの影響が大きいと判断し、経過時間Teのカウントを開始する。
【0043】
さらに、制御部131は、基準静電容量Crの更新停止時からの経過時間Teが所定の閾値Tth以上であるかを判断する(STEP18)。換言すると、環境ノイズの影響が大きい期間が所定の時間長さだけ継続されたかが判断される。経過時間Teが所定の閾値Tth未満であると判断されると(STEP18においてNO)、処理はSTEP11に戻り、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cが取得される。
【0044】
経過時間Teが所定の閾値Tthを上回っていると判断されると(STEP18においてYES)、制御部131は、経過時間Teのカウント開始時の検出静電容量に基づいて静電容量の範囲γを再設定する(STEP19)。範囲γは、最新の環境ノイズの影響が解消された場合に想定される検出静電容量Cの範囲として定められる。例えば、経過時間Teのカウント開始時の検出静電容量の値の±20%の範囲となるように定められる。なお、範囲γの設定は、経過時間Teのカウント開始とともに行なわれてもよい。その後、処理はSTEP11に戻り、所定の周期Tに対応する時間の経過後に、次の検出静電容量Cが取得される。
【0045】
図5を参照しつつ、上記のように構成されたタッチセンサ1の動作例を説明する。図5において、黒丸は、所定の周期Tごとに取得される検出静電容量Cを表している。白丸は、検出静電容量Cが取得された時点において参照される基準静電容量Crを表している。
【0046】
時点t1において取得された検出静電容量Cは、当該時点における基準静電容量Crよりも小さい(図3のSTEP2におけるYESに対応)。したがって、検出静電容量Cの基準静電容量Crからの減少量が閾値Cthを上回っているかが判断される(図3のSTEP6に対応)。
【0047】
本例においては、時点t1における検出静電容量Cと基準静電容量Crとの差分は、閾値Cthを上回っていない(図3のSTEP6におけるNOに対応)。したがって、時点t1において取得された検出静電容量Cによって基準静電容量Crが更新される(図3のSTEP4に対応)。すなわち、時点t1において取得された検出静電容量Cは、所定の周期Tに対応する時間が経過した後の時点t2において取得される検出静電容量Cに対する基準静電容量Crとなる。
【0048】
時点t2において取得された検出静電容量Cは、当該時点における基準静電容量Crよりも小さい(図3のSTEP2におけるYESに対応)。したがって、検出静電容量Cの基準静電容量Crからの減少量が閾値Cthを上回っているかが判断される(図3のSTEP6に対応)。
【0049】
本例においては、時点t2において取得された検出静電容量Cと基準静電容量Crとの差分は、閾値Cthを上回っている(図3のSTEP6におけるYESに対応)。したがって、基準静電容量Crの更新が停止される(図3のSTEP7に対応)。
【0050】
その後、所定の周期Tに対応する時間が経過する度に、検出静電容量Cの取得が繰り返される(図3のSTEP1に対応)。検出静電容量Cが取得される度に、基準静電容量Crの更新停止からの経過時間Teが、所定の閾値Tth以上であるかが判断される(図3のSTEP8に対応)。
【0051】
図5に示される例においては、時点t3において経過時間Teが閾値Tthに達している(図3のSTEP8におけるYESに対応)。したがって、更新停止前である時点t3における基準静電容量Crに基づいて、静電容量の範囲γが設定される(図3のSTEP9に対応)。
【0052】
その後、所定の周期Tに対応する時間が経過する度に、検出静電容量Cの取得が繰り返される。検出静電容量Cが取得される度に、その値が範囲γの範囲内であるかが判断される(図4のSTEP12からSTEP14の流れに対応)。
【0053】
図5に示される例においては、時点t5において取得された検出静電容量Cが、範囲γ内に収まっている(図4のSTEP14におけるYESに対応)。したがって、時点t5において取得された検出静電容量Cによって基準静電容量Crが更新される(図4のSTEP15に対応)。すなわち、時点t5において取得された検出静電容量Cは、所定の周期Tに対応する時間が経過した後の時点t6において取得される検出静電容量Cに対する基準静電容量Crとなる。
【0054】
時点t6において取得された検出静電容量Cは、当該時点における基準静電容量Crよりも大きい(図3のSTEP2におけるNOに対応)。したがって、検出静電容量Cの基準静電容量Crからの増加量が閾値Cthを上回っているかが判断される(図3のSTEP3に対応)。
【0055】
本例においては、時点t6において取得された検出静電容量Cと基準静電容量Crとの差分は、閾値Cthを上回っていない(図3のSTEP2におけるNOに対応)。したがって、時点t6において取得された検出静電容量Cによって基準静電容量Crが更新される(図3のSTEP4に対応)。すなわち、時点t6において取得された検出静電容量Cは、所定の周期Tに対応する時間が経過した後の時点t7において取得される検出静電容量Cに対する基準静電容量Crとなる。
【0056】
時点t7において取得された検出静電容量Cは、当該時点における基準静電容量Crよりも大きい(図3のSTEP2におけるNOに対応)。したがって、検出静電容量Cの基準静電容量Crからの増加量が閾値Cthを上回っているかが判断される(図3のSTEP3に対応)。
【0057】
本例においては、時点t7において取得された検出静電容量Cと基準静電容量Crとの差分は、閾値Cthを上回っている(図3のSTEP3におけるYESに対応)。したがって、対象物2に対してタッチ操作が行なわれたと判断される(図3のSTEP5に対応)。
【0058】
上記のような構成の有利性について説明する。図5における時点t5に対応する箇所に示されている三角マークは、比較例として、基準静電容量の更新が継続された場合に当該時点において参照される基準静電容量Crを表している。すなわち、時点t5における基準静電容量Crは、その直前の時点t4に取得された基準静電容量Cに対応している。
【0059】
時点t5において取得された検出静電容量Cの時点t4において取得された検出静電容量Cからの増加量は、閾値Cthを上回っている。したがって、この検出静電容量Cの増大は、環境ノイズの影響の範囲内においてもたらされたものでありながら、対象物2に対するタッチ操作が行なわれたと判断されてしまう。
【0060】
本実施形態においては、検出静電容量Cが基準静電容量Crよりも小さくかつ両者の差分が閾値Cthよりも大きい場合、基準静電容量Crの更新が停止され、検出静電容量Cが更新停止前の基準静電容量Crに基づいて設定される静電容量の範囲γ内に収まるまで基準静電容量Crの更新が再開されない。換言すると、環境ノイズによる検出静電容量Cへの影響が大きいとみなされている間は、低下している検出静電容量Cを基準としてタッチ操作が行なわれたとの判断がなされる事態の発生を抑制できる。したがって、環境ノイズ環境下においても正確にタッチ操作を判別可能にできる。
【0061】
上記のような構成を有するタッチセンサ1は、例えば車両の一部であるドアハンドルに内蔵されうる。ドアハンドルは、対象物の一例である。この場合、ユーザの指Fなどがドアハンドルに触れる操作が行なわれたと判断されると、制御装置13から検出信号Sが出力される。検出信号Sは、例えば車両のドアの施錠装置に送信されうる。施錠装置は、検出信号Sに応じてドアの施錠動作や解錠動作を遂行しうる。
【0062】
上述した制御部131の機能は、上述した処理を実現するコンピュータプログラムを実行可能なマイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの専用集積回路によって実現されうる。制御部131は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されてもよい。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。制御部131は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによって実現されてもよい。
【0063】
上述した記憶部132の機能は、半導体メモリやハードディスク装置などの記憶装置により実現されうる。上述した汎用メモリの少なくとも一部が、記憶部132として使用されてもよい。制御部131と記憶部132は、互いに独立した複数の素子として提供されてもよいし、単一の素子にパッケージされていてもよい。
【0064】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0065】
図3に例示されるように、基準静電容量Crの更新が停止された状態が所定の時間長さだけ継続された場合(STEP8においてYES)、制御部131は、当該時点において取得された検出静電容量Cに対応する数値データで記憶部132に格納されている基準静電容量Crに対応する数値データを更新するリセット更新を行なってもよい(STEP10)。ノイズ環境が一定時間継続している状況下で基準静電容量Crの値を、当該環境に適応した値にリセットすることにより、当該環境下においてなされるタッチ操作の検出精度を向上できる。同様の処理は、図4のSTEP18における経時完了時に行なわれてもよい。
【0066】
上記の実施形態においては、基準静電容量Crの更新停止を解除するための静電容量の範囲γは、上限値と下限値を有している。範囲γは下限値のみによって規定されてもよいが、上限値を設けることによってSTEP16におけるタッチ操作の検出精度を向上できる。
【0067】
タッチセンサ1は、車両におけるドアハンドル以外の箇所にも配置されうる。タッチセンサ1により検出されるタッチ操作は、必ずしもユーザの指Fにより行なわれることを要しない。掌、肘、膝、足先などの身体部位によるタッチ操作も検出されうる。
【0068】
タッチセンサ1は、ユーザによるタッチ操作の検出が必要とされる適宜のユーザインターフェースに使用されうる。そのようなユーザインターフェースを備えた装置の例としては、建物の空調設備、建物の調光設備、室内あるいは室外で使用される音響映像機器、調理機器、空調機器、玩具などが挙げられる。
【符号の説明】
【0069】
1:タッチセンサ、2:対象物、11:電極、12:静電容量検出部、13:制御装置、131:制御部、C:検出静電容量、Cr:基準静電容量、Cth:閾値、Te:基準静電容量の更新停止からの経過時間、Tth:閾値、γ:静電容量の範囲
図1
図2
図3
図4
図5