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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】堆積物ソースの位置の特定
(51)【国際特許分類】
   G01V 9/00 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
G01V9/00 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020504148
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 US2018043273
(87)【国際公開番号】W WO2019023126
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】20170100354
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(31)【優先権主張番号】15/670,605
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100215049
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 美代子
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】マイケル,ニコラオス エー.
(72)【発明者】
【氏名】サラギオティス,クリストス
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0204377(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0167254(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0173622(US,A1)
【文献】特表2011-521260(JP,A)
【文献】国際公開第2009/142872(WO,A1)
【文献】Nikolas A. Michael et al.,The Functioning of Sediment Routing Systems Using a Mass Balance Approach: Example from the Eocene of the Southern Pyrenees ,The Journal of Geology ,The University of Chicago,2013年,Vol.121,p.581-606
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00ー99/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理装置により、指定の層序間隙に対して、複数の坑井に対する坑井データを受け取るステップと
前記データ処理装置を用いて、前記受け取った坑井データに基づいて、前記複数の坑井のそれぞれに対する平均粒径を特定するステップと
前記データ処理装置を用いて、前記複数の坑井のそれぞれの位置をグリッド上にプロットするステップであって、各グリッド点は、潜在的な粒子ソース位置に対応する、ステップと、
前記データ処理装置を用いて、各グリッド点と各坑井位置に粒度を割り当ててデータセットを収集するステップであって、各グリッド点には、仮定の初期粒子サイズが割り当てられ、各坑井位置には、それぞれの特定された平均粒子サイズが割り当てられる、ステップと、
前記データ処理装置を用いて、第1の粒子ソース位置を特定するステップであって、各グリッド点からの前記データセットを、前記複数の坑井のそれぞれと前記粒子ソースとの間の距離が増加するにつれて前記平均粒子サイズが指数関数的に減少することを表す指数曲線に適合させるステップと、最も高い適合度を有する位置を、前記第1の粒子ソース位置として選択するステップと、を含む、ステップと、
前記データ処理装置を用いて、複数の粒子ソース位置を反復的に特定するステップであって、各グリッド点からの前記データセットを、前記複数の坑井のそれぞれと前記粒子ソースとの間の距離が増加するにつれて前記平均粒子サイズが指数関数的に減少することを表す指数曲線に適合させるステップと、前記第1の粒子ソース位置を考慮して、追加の粒子ソース位置を選択するステップと、を含む、ステップと、
前記データ処理装置を用いて、前記粒子ソース位置を用いて炭化水素の位置を特定するステップと、
前記粒子ソース位置を用いて特定された前記炭化水素の位置に坑井を掘削するステップとを備える、
方法。
【請求項2】
各坑井に対する平均粒径を特定するステップは、前記指定の層序間隙における複数の粒径クラスのそれぞれの比率を特定するステップを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の坑井は、少なくとも30個の坑井を備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2の層序間隙に対して、前記複数の坑井に関する第2の坑井データのセットを受け取るステップと;
前記受け取ったデータに基づいて、前記複数の坑井のそれぞれに対する第2の平均粒径を特定するステップと;
前記第2の層序間隙の前記平均粒径に基づいて、第2の複数の粒子ソース位置を反復的に特定するステップであって、前記複数の粒子ソース位置は、前記粒子ソースの前記位置を含む、ステップと;
将来の坑井のために、前記第2の粒子ソースの前記位置に近い位置に、坑井を掘削するステップと;を更に備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の粒径クラスのそれぞれの前記比率は、その粒径クラスの粒子の総厚さを、前記指定の層序間隙の総厚さで除した値に基づいて特定される、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法を含む動作をプロセッサに実行させるための命令が記憶された、
非一時的なコンピュータ読取可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年8月7日に提出された米国特許出願第15/670,605号、及び2017年7月27日に提出されたギリシャ特許出願第20170100354号の優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、堆積学(sedimentology)に関する。
【背景技術】
【0003】
堆積学では、堆積物の様々な層相及び種類の分布及び広がりが研究される。堆積学における学識情報は、地層のマッピングに用いることができる。
【発明の概要】
【0004】
本開示では、堆積物ソース(source、源)の位置の特定に関する技術について述べる。
【0005】
本開示において示される主題の例示的な実施は、以下の特徴を有する方法である。すなわち、指定の層序間隙に対して、複数の坑井に対する坑井データを受け取る。前記受け取ったデータに基づいて、前記複数の坑井のそれぞれに対する平均粒径を特定する。前記層序間隙の前記平均粒径に基づいて、粒子ソースの位置を特定する。
【0006】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる方法の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、各坑井に対する平均粒径を特定することは、前記指定の層序間隙における複数の粒径クラスのそれぞれの比率を特定することを含む。
【0007】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる方法の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、前記複数の粒径クラスのそれぞれの前記比率は、粒径クラスの粒子の総厚さを、前記指定の層序間隙の総厚さで除した値に基づいて特定される。
【0008】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる方法の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、前記粒子ソースの位置を特定することは、指数減衰方程式を用いることを含む。前記平均粒径は、前記粒子ソースからの距離が増加するにつれて指数関数的に減少する。
【0009】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる方法の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、前記層序間隙の前記平均粒径に基づいて、複数の粒子ソース位置を反復的に特定する。前記複数の粒子ソース位置は、前記粒子ソースの前記位置を含む。
【0010】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる方法の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、前記複数の坑井は、少なくとも30個の坑井を含む。
【0011】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる方法の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、将来の坑井のために、前記粒子ソースの前記位置に近い位置で坑井を掘削する。
【0012】
本開示において示される主題の例示的な実施は、プロセッサに以下の特徴を備えた所定の操作を実行させる命令を格納する非一時的なコンピュータ読取可能媒体である。すなわち、指定の層序間隙に対して、複数の坑井に対する坑井データを受け取る。前記受け取ったデータに基づいて、前記複数の坑井のそれぞれに対する平均粒径を特定する。前記層序間隙の前記平均粒径に基づいて、粒子ソースの位置を特定する。
【0013】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる非一時的なコンピュータ読取可能媒体の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、各坑井に対する平均粒径を特定することは、前記指定の層序間隙における複数の粒径クラスのそれぞれの比率を特定することを含む。
【0014】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる非一時的なコンピュータ読取可能媒体の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、前記複数の粒径のそれぞれの前記比率は、その粒径クラスの粒子の総厚さを前記層序間隙の総厚さで除した値に基づいて特定される。
【0015】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる非一時的なコンピュータ読取可能媒体の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、前記粒子ソース位置を特定することは、指数関数的減衰の式を用いることを含む。前記平均粒径は、前記粒子ソースからの距離が増加するにつれて指数関数的に減少する。
【0016】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる非一時的なコンピュータ読取可能媒体の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、前記層序間隙の前記平均粒径に基づいて、複数の粒子ソース位置を反復的に特定することを含む。前記複数の粒子ソース位置は、前記粒子ソースの前記位置を含む。
【0017】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる非一時的なコンピュータ読取可能媒体の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、前記複数の坑井は、少なくとも30個の坑井を含む。
【0018】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる非一時的なコンピュータ読取可能媒体の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、将来の坑井のために、前記粒子ソースの前記位置に近い位置で坑井を掘削する。
【0019】
本開示において示される主題の例示的な実施は、以下の特徴を有する第2の方法である。すなわち、指定の層序間隙に対して、複数の坑井に対する坑井データを受け取る。前記受け取ったデータに基づいて、前記複数の坑井のそれぞれに対する平均粒径を特定する。前記層序間隙の前記平均粒径に基づいて、粒子ソースの位置を特定する。前記平均粒径は前記複数の坑井の1つと前記粒子ソースとの間の距離が増加するにつれて指数関数的に減少する。前記層序間隙の前記平均粒径に基づいて、複数の粒子ソース位置を反復的に特定する。前記複数の粒子ソース位置は前記粒子ソースの前記位置を含む。将来の坑井のために、前記粒子ソースの前記位置によって特定される最適な位置に、坑井を掘削する。
【0020】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる第2の方法の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、各坑井に対する平均粒径を特定することは、前記指定の層序間隙における複数の粒径クラスのそれぞれの比率を特定することを含む。
【0021】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる第2の方法の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、前記複数の坑井は、少なくとも30個の坑井を含む。
【0022】
単独又は組み合わせられた実施の例と組み合わせることができる第2の方法の例示の態様には、以下が含まれる。すなわち、第2の層序間隙に対して、前記複数の坑井に関する第2の坑井データのセットを受け取る。前記受け取ったデータに基づいて、前記複数の坑井のそれぞれに対する第2の平均粒径を特定する。前記第2の層序間隙の前記平均粒径に基づいて、第2の複数の粒子ソース位置を反復的に特定する。前記複数の粒子ソース位置は、前記粒子ソースの前記位置を含む。将来の坑井のために、前記第2の粒子ソースの前記位置に近い位置に、坑井を掘削する。
【0023】
本開示で述べる主題の特定の実施は、それぞれ、以下の利点の1つ以上を実現するように実施することができる。堆積物ソースの位置を知ることは、炭化水素貯留層の層相の特定に役立てることができる。さらに、主題の態様により、貯留層のモデリングは改善され、堆積システムを、より深く把握することが可能になる。
【0024】
本開示に記載された主題における一又は複数の実施の詳細は、添付図面及び引き続く明細書に説明される。本主題の他の特徴、態様及び利点は、明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、粒径画分(grain-size fraction)の実際の分布を示す図である。
【0026】
図2図2A及び図2Bは、堆積盆(basin)内の坑井(wells、油井)の位置を示す生産堆積盆のグラフである。
【0027】
図3図3は、平均粒径分布に対するソースからの距離のプロット図である。
【0028】
図4図4は、特定されたソースの位置とともに示す、坑井のプロット図である。
【0029】
図5図5A及び図5Bは、堆積盆内の坑井の位置及び堆積物ソースを示す生産堆積盆のグラフである。
【0030】
図6図6は、特定されたソースの位置とともに示す、坑井のプロット図である。
【0031】
図7図7は、適合度(goodness of fit)に対する特定されたソースの数のプロット図である。
【0032】
図8図8は、特定されたソースの位置とともに示す、坑井のプロット図である。
【0033】
図9図9は、堆積物ソースの位置を特定するための方法の例を示すフローチャートである。
【0034】
図10図10は、本開示の各態様を実行するために用いることが可能な汎用コンピュータを示すブロック図である。
【0035】
種々の図面における類似の参照番号及び記号は、同様の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、地層中の珪砕屑性堆積物ソースを発見する方法について述べる。本方法は、堆積盆全体又は対象地域にわたる、対象である特定の層序間隙から坑井データを取得することと、坑井間の堆積物の傾向に基づいて1つ又は複数のソースの位置の推定を提供することとを含む。掘り屑(cuttings、カッティングス)、コアサンプル、又は指定の地質間隙内の他の何れのデータからも、坑井データを取得できる。粒径分布は、最初に、坑井ごとに、指定の層序間隙において特定され、平均粒径は、指定の層序間隙において坑井ごとに特定される。ソースの位置は、このデータに基づいて堆積盆レベルで特定できる。
【0037】
図1は、地層100内における、種類及び大きさの異なる粒子の典型的な進行を示すものである。図示の地層100は、大きさ、形状、及び種類が様々な岩石粒(本開示で単に「粒子」という)を含有する堆積物流102を含む。異なる種類の粒子は、砂や細粒などの異なる層相に分類できる。堆積物流102は、集水域104から始まって、砂利堆積扇状地106、沖積平野108、沿岸フェンス部(costal fence)110、及び、棚斜面の割れ目(shelf-slope break)112を通って流動し、深い海盆(marine basin)114に行き着く。堆積物流102はこれら様々な区域を通過するにつれて、大きさの異なる粒子は、堆積物流102から脱落する可能性がある。通例では、大きくて重く粗い粒子は、砂などの小さくて軽い細かい粒子よりも早く、流れ102から脱落するのが普通である。断面116は、流れ102がそのソースから離れるように流れ続けた場合の、砂利118と砂120との割合の例を示す。例えば、砂利堆積扇状地106は、砂利の大きさの粒子を、深い海盆114よりも多く含み得る。場合によっては、平均粒径は、指数関数的減衰の式に従って減少し得る。つまり、平均粒径は、流れ102がその粒子ソースから離れるにつれて、指数関数的に減少し得る。これらの例では、本開示で後述するように、この指数関数的減衰を使って粒子ソースの位置を特定することができる。
【0038】
図2Aは例としての生産堆積盆202を示し、直交座標を持つグリッド上に、複数の坑井204がプロットされている。直交グリッドの分解能は、望ましい計算速度と計算精度に応じて、細かくすることも粗くすることもできる。直交グリッドは主に距離の特定に用いられ、各グリッド点は潜在的なソースの位置であり、初期の、又は、ソースにおける、想定される平均粒径を割り当てることができる。初期の、又は、ソースにおける、粒径を割り当てる工程についての更なる詳細は、本開示内で後により詳細に述べる。凡例208を参照すると、坑井はアスタリスクで示され、グリッド点206は丸印で示され、堆積フェアウェイ(堆積盆202の縁)は実線で示され、第1の距離(D1)は直線で示される。生産堆積盆202は、複数の坑井204、例えば少なくとも30か所の坑井を含むことができる。複数の坑井204のうちの1つ以上の坑井から坑井サンプルを採取し、分析し、各坑井の粒径分布を特定できる。坑井サンプルとして、地層又は層序層を表すのに十分な大きさの、岩石片、コアサンプル、又は、他の任意の石油物理ログデータのサンプルが含まれる。念のためであるが、先に述べた工程は、各坑井内の単一層序層のためのものである。
【0039】
図2Bは、各グリッド点206と各坑井204との間の距離の実際の計算方法を示す。距離は、例えばピタゴラスの定理を用いるなど、様々な方法で計算できる。さらに、指定の層序間隙に対する各グリッド位置に初期粒径を割り当てることができる。この初期粒径(GS)はデータに依存する可能性があり、データセットで観察される最大平均粒径よりも大きい。この最大平均サイズは、予想される粒子の種類に依存する場合がある。例えば、砂の最大粒径が2ミリメートルであるのに対し、ソースの礫岩質系(conglomeratic system)の平均粒径は40ミリメートルとすることができる。データセットの収集及び展開については、以下により詳細に説明する。データセットには、坑井位置及び各グリッド点に対するGSが含まれることになる。坑井の場合、GSは経験的に特定されるのに対し、各グリッド点のGSは推定することができる。坑井204で観察される粒子の系及び種類に従ってGSを変えることができる。例えば、礫岩が支配的な環境では平均40mmのGSを、砂質系では2mmのGSを用いることができる。
【0040】
岩相(lithological)情報を含むサンプルを、各坑井204から採取し、各坑井に対する平均粒径を特定することにより、データセットを構築できる。サンプルには、各坑井の指定の層序間隙を表すのに十分なサンプルサイズを含む岩相を推定できる、岩石片、コアサンプル、又は、測定された若しくは導き出された他の任意の岩石物理ログデータのサンプル、を含むことができる。下式を用いて、指定の層序間隙における、各坑井の平均粒径(粒子サイズ)を特定できる。
【数1】
ここで、^(ハット付き)GSは、坑井の平均粒径であり、^gsC、^gsS、^gsvfs、^gsSilt、^gsFは、坑井内における指定間隙の指定岩相種類、すなわち、礫岩(conglomerate)、砂、非常に細かい砂岩、シルト(silt)、及び他の(粘土岩を含む)細粒の指定平均粒径であり、%Conglomerate(礫岩)は、坑井内の指定間隙に対する礫岩の割合であり、%Sand(砂)、%vfSand(非常に細かい砂)、%Silt(シルト)、%Fines(細粒)は、坑井内の指定間隙に対する各岩相種類の割合である。各粒径の比率は、岩相種類ごとの粒径の粒子の合計数(厚さ)を粒子の合計数(地層の厚さ)で除した値に基づいて特定できる。
【0041】
図3は、指定層序間隙における、各坑井からのサンプルに基づいて構築されたデータセットに対して回帰分析を適用した結果の例を示している。先に述べたように、より大きな粒子は、粒子ソースから坑井へ進むにつれて粒子の流れ102から脱落する可能性がある。場合によっては、流れ102が粒子ソースから遠くなるにつれて、流れ102の平均粒径は指数関数的に減少する。これらの例では、下式に基づいて平均粒径が変化する可能性がある。
【数2】
ここで、「Dx」は、堆積物ソースからの指定距離「x」における平均粒径であり、「D」は、堆積物ソースにおける平均粒径であり、「a」は、指数曲線をデータに適合(フィット)させることによって特定される地層に固有の係数である。坑井サンプルからのデータセットと式2を用いて回帰分析を行うことで潜在的なソースの位置を特定できる。図3に、その結果をプロットする。
【0042】
図4に示すように、図3と同様のプロットから最適なフィット曲線(best-fit curve)が特定されると、第1の堆積物ソース位置402は、坑井204と同じグリッドの直交座標上にプロットすることができる。式2を用いて、各グリッド点からデータを適合させ、フィッティング(適合)係数D及びaを見つけてみて、R値も計算する。Rは適合度を特定する。最も高い適合度すなわち最も高いRを有する位置が第1のソースと見なされる。その後、この第1のソースを用いて追加のソースを特定し、それぞれの追加ソースからの距離を新しい適合ごとに考慮して、第1のソースと潜在的な第2のソースとを結合する次の最適な位置を見つける。図5Aは、図2Aと同じチャートにプロットされた第1の堆積物ソース位置402を示す。第1の堆積物ソース位置402が特定された後、第2のソースを特定するために第2のグリッド点502を用いて工程を繰り返すことができる。すなわち、同じ層序間隙に対して、同じ坑井データのセットを分析して、第2のグリッド点502を用いて第2のソースの位置を特定できる。この例を図5Bに示す。第1のソースと潜在的な第2のソースとの間の最小距離は、それぞれ個々の坑井及び粒径に対する分析に用いられ、図3に見られる曲線と同様の新たな回帰曲線セットを導く。最終的には、グリッド上のすべての点が相互に試験及びチェックされ、どの点がデータに最適なのかが特定される。データセットと式2による同じ回帰分析を用いて、第2のソースの位置を特定できる。図6は、第1のソースの位置402と坑井204とともにプロットされた第2のソースの位置602を示す。
【0043】
工程を複数回繰り返すことにより、特定されたソースと、各坑井ごとのグリッド位置との間の最小距離を用いて、複数のソースの位置を特定できる。図7は、特定されたソースの数に対する適合度の尺度(R)を示すプロットである。この例では、最初の6つのソースがR値の最大の改善を示す。R値は、回帰がデータにどの程度適合するかを示す尺度である。R値が1に近いほど、回帰はデータをより良好に表す。データセットと適合式(fit equation)とに関して、R値は下式を用いて計算される。
【数3】
ここで、上線付きyは、yデータポイントの平均(例えば、坑井からの^GS)であり、yiは、データの個々のポイント(例えば、ソースから「x」の距離における^GS)であり、fiは、点yiと同じxの距離における適合式(Dxなど)の個々のポイントである。図8にプロットされているこれらのソースは、一次ソースと見なすことができる。残りのソースは、二次ソース804と見なすことができる。前述のソースはすべて、単一の層序間隙で特定されたものである。
【0044】
複数の坑井に対する坑井データの第2のセットを受け取った後、第2の層序間隙に対して同一工程を用いることができる。第2の平均粒径は、受け取ったデータの第2のセットに基づいて、各坑井内の第2の層序間隙に対して特定できる。第2の複数の粒子ソース位置は、第2の層序間隙の平均粒径に基づいて繰り返し特定できる。
【0045】
場合によっては、一次及び二次の堆積物ソースの一つを用いて、地層内の炭化水素の位置を特定できる。坑井は、将来の生産のための坑井又は探査のための坑井のために、一次の堆積物ソースのどれか1つに近い位置で掘削できる。実施によっては、より大きな平均粒径は、より高品質の炭化水素貯留層(reservoir)と相関する可能性がある。実施によっては、堆積物ソースは炭化水素ソースではない。
【0046】
図9は、生産堆積盆にある堆積物ソースを特定するための方法900のフローチャートである。ステップ902では、指定の層序間隙に対して、複数の坑井に対する坑井データを受け取る。坑井データには指定の層序間隙における坑井内の粒径分布が含まれる。ステップ904では、受け取ったデータに基づいて、複数の坑井のそれぞれに対する平均粒径が特定される。ステップ906では、粒子ソースの位置が、層序間隙の平均粒径に基づいて特定される。ステップ908では、複数の粒子ソース位置が、層序間隙の平均粒径に基づいて繰り返し特定される。ステップ910では、将来の坑井のために、粒子ソースの位置で坑井が掘削される。場合によっては、同じ坑井を利用して、同じ堆積盆内で第2の層序間隙又は地層において同様の方法を用いることができる。その方法は、任意の数の層序間隙又は地層に用いることができる。
【0047】
本明細書で記述された主題及び機能的な操作の実施は、デジタル電子回路、有形に具体化されたコンピュータのソフトウェア又はファームウェア、コンピュータハードウェアに、又はそれらの一又は複数の組み合わせで実施でき、これらデジタル電子回路、ソフトウェア、ファームウェア、及びコンピュータハードウェアは、本明細書に開示される構造及びそれらの構造的な同等物を含む。本明細書で記述された主題に係る実施は、1又は複数のコンピュータプログラム、つまり、コンピュータプログラム命令の一又は複数のモジュールとして実施されることができ、コンピュータプログラム命令は、データ処理装置により実施されるシステムによる実行のために、有形の非一時的なコンピュータ読取可能なコンピュータ記憶媒体上にエンコードされ、又はコンピュータ若しくはコンピュータにより実施されるシステムの動作を制御する。代替的に又は追加的に、プログラム命令は、人工的に生成された伝播信号、例えば、マシン生成の電気的、光学的、又は電磁気的な信号にエンコードされ、この信号は、データ処理装置による実行のために受振器装置への送信用の情報をエンコードするために生成される。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読取可能な記憶デバイス、コンピュータ読取可能な記憶基板、ランダム若しくはシリアルアクセスメモリアレイ若しくはデバイス、又は、それらの1つ以上の組み合わせであっても、それらに含まれてもよい。さらに、コンピュータ記憶媒体は伝搬信号ではないが、コンピュータ記憶媒体は、人工的に生成された伝搬信号内に符号化されたコンピュータプログラム命令のソース又は行き先とすることができる。コンピュータ記憶媒体は、1つ以上の個別の物理的要素又は媒体(複数の、CD、ディスク他の記憶デバイスなど)であっても、それらに含まれてもよい。
【0048】
本開示で述べる操作は、1つ又は複数のコンピュータ読取可能な記憶デバイスに格納されたデータ又は他のソースから受信したデータに対して、データ処理装置によって実行される操作として実装できる。
【0049】
用語「データ処理装置」は、データを処理するためのあらゆる種類の装置、デバイス、及びマシンを含み、例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、チップ上のシステム、又は、上記のうちの複数若しくは組み合わせが含まれる。装置としては、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)及びASIC(特定用途向け集積回路)などの専用ロジック回路が含まれる。装置としては、ハードウェアに加えて、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、仮想マシン、又は、それらの1つ以上の組み合わせを構成するコードなど、該当のコンピュータプログラムの実行環境を作成するコードも含めることができる。装置及び実行環境は、Webサービス、分散コンピューティング、グリッドコンピューティングインフラストラクチャなど、様々な異なるコンピューティングモデルインフラストラクチャを実現できる。
【0050】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、又はコードとしても知られる)は、コンパイル言語若しくはインタープリタ言語を含むプログラミング言語、又は宣言型若しくは手続き型の言語の形式で記載でき、またコンピュータプログラムは、コンピューティング環境で使用するための任意の形式で展開でき、スタンドアロンプログラム、モジュール、コンポーネント、サブルーチン、又は他の適切なユニットとして含む。コンピュータプログラムは、ファイルシステム内のファイルに対応できるが、必ずしも対応する必要はない。プログラムは、他のプログラム又はデータを保持するファイルの一部(例えばマークアップ言語ドキュメントに格納された一又は複数のスクリプト)に保存でき、該他のプログラムは、問題のプログラム専用の単一ファイル内に、或いは複数の連携したファイル(例えば一又は複数のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部)に格納できる。コンピュータプログラムは、一又は複数のコンピュータ上に展開でき、該コンピュータは、一のサイトに位置し、又は複数のサイトに分散されて配置され、これらは通信ネットワークによって相互接続される。
【0051】
本明細書で説示されたプロセス及び論理フローは、一又は複数のプログラム可能なプロセッサによって実行でき、該コンピュータは、入力データを操作して出力データを生成することによって動作を実行する一又は複数のコンピュータプログラムを実行する。このプロセス及び論理フロー、及び装置は、特定用途のロジック回路、例えばFPGA(field programmable gate array)、又はASIC(application-specific integrated circuit)として実行できる。
【0052】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサは、汎用又は特定用途のマイクロプロセッサ、これらの両方、及び任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ又は複数のプロセッサを含む。一般的には、プロセッサは、読み取り専用メモリ(ROM)又はランダムアクセスメモリ(RAM)あるいはその両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの重要な要素は、命令に従って動作を実行するためのプロセッサ、及び命令及びデータを保存するための1つ又は複数のメモリデバイスである。一般に、コンピュータは、データを保存するための1つ又は複数の大容量記憶装置を含むか、或いはこれらからデータを受信し、転送し、又はこの両方を行うように動作可能に結合される。しかし、コンピュータは、そのようなデバイスを持つ必要はない。さらには、コンピュータは、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、モバイルオーディオ若しくはビデオプレーヤー、ゲームコンソール、全地球測位システム(GPS)受信機、又はポータブルストレージデバイス、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)、フラッシュドライブ等の別のデバイスに組み込むことができる。
【0053】
ユーザとのインタラクションを提供するために、本明細書で記載された主題の実施は、ユーザに情報を表示するためのディスプレイデバイス、例えばCRT(陰極線管)、LCD(液晶ディスプレイ)、LED(発光ダイオード)又はプラズマモニターと、ユーザがコンピュータに入力を提供するキーボード及びポインティングデバイス、例えばマウス、トラックボールを有するコンピュータ上で実施できる。他の種類のデバイスが、ユーザとのインタラクションを提供するために使用できる。同様に、例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、触覚フィードバック、及びあらゆる形態の感覚のフィードバックであり得る。ユーザからの入力は、音響入力、音声入力、触覚入力を包含する、あらゆる形式で受信できる。さらに、コンピュータは、ユーザによって使用されるクライアントコンピューティングデバイスからのドキュメントを受信し及び該ドキュメントをデバイスに送信することによって(例えば、Webブラウザから受けたリクエストに応答してユーザのクライアントデバイス上においてWebブラウザにWebページを送ることにより)ユーザとインタラクションできる。
【0054】
本明細書で記述された主題の実施は、バックエンドコンポーネントを例えばデータサーバとして含むコンピューティングシステム、ミドルウェアコンポーネントを、例えばアプリケーションサーバとして含むコンピューティングシステム、フロントエンドコンポーネントを、例えばクライアントコンピュータとして含むコンピューティングシステム、及び、一又は複数のこのようなバックエンド、ミドルウェア、又はフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含むコンピューティングシステムにおいて実施でき、クライアントコンピュータは、ユーザが本明細書においで記述される主題の実施とインタラクションできるグラフィカルユーザインタフェース又はWebブラウザを有する。システムのコンポーネントは、有線又は無線のデジタルデータ通信(又はデータ通信の組み合わせ)、例えば通信ネットワークの任意の形式又は媒体によって相互接続されることができる。通信ネットワークの例示は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、インターネットワーク(インターネット等)、及びピアツーピアネットワーク(アドホックピアツーピアネットワーク等)が含まれる。
【0055】
コンピューティングシステムは、クライアント及びサーバを含むことができる。クライアント及びサーバは、一般的には、互いに離れており、また典型的には、通信ネットワークを介してインタラクションする。クライアント及びサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で動作すると共に互にクライアント・サーバ関係にあるコンピュータプログラムによって生じる。実施によっては、(クライアントデバイスと相互に作用するユーザにデータを表示したり、ユーザからのユーザ入力を受信したりする目的のため等)サーバは、データ(HTMLページ等)をクライアントデバイスへ送信する。クライアントデバイスで生成されたデータ(ユーザインタラクションの結果等)は、サーバでクライアントデバイスから受信できる。
【0056】
このようなタイプのシステムの一例が図10に示され、この図10は、本開示で述べる主題の様々な態様の方法の実行に適するプログラマブルコンピュータ1002のブロック図を示す。コンピュータ1002は、プロセッサ1005と、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プログラムメモリ(例えば、フラッシュROMなどの書き込み可能な読取専用メモリ(ROM))又は他のコンピュータ読取可能なメモリを含むことができるメモリ1006と、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、又は他の形式の記憶媒体などの記憶デバイス1012とが含まれる。コンピュータ1002は、例えば、ROMに事前にプログラムすることができる、又は別のソース(例えば、フロッピーディスク、CD-ROM、又は別のコンピュータ)からプログラムをロードすることによりプログラム(及び再プログラム)することができる。コンピュータ1002の構成要素は、通信ネットワーク1030などのデジタルデータ通信の任意の形態又は媒体により、インタフェース1004を介して相互接続できる。通信ネットワークの例には、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)及びワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネットワーク(インターネットなど)、及びピアツーピアネットワーク(アドホックピアツーピアネットワークなど)が含まれる。距離データ型1016や平均粒径データ型1018などのデータ型は、コンピュータ1002に格納することも、データベース1008にリモートで格納することもできる。
【0057】
本明細書は多くの特定の実施の詳細を含む一方で、これらは、任意の発明の範囲又は請求される得る範囲の制限として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の発明の特定の実施固有の特徴の説明として解釈されるべきである。個別の実施の観点で本明細書において説明された機能は、組み合わせて又は単一の実施で、実現できる。逆に、単一の実施の観点で既述された様々な特徴は、複数の実施で、個別に、又は任意のサブコンビネーションで実施されることもできる。さらには、既述の特徴は特定の組み合わせで動作するものとして説示され、最初はそのようなものとして請求されていたとしても、一又は複数の特徴は、請求された組み合わせから場合によっては削除され、またサブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形であり得る。
【0058】
同様に、操作は特定の順序で図面に描かれている一方で、これは、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序で又は順番でそのような操作が特定の順序で、又は順次に実行されることことを要求するものとして理解されるべきではない。ある状況では、マルチタスク又は並列処理を行うことが有利であり得る。さらに、既述の実施における様々なシステムモジュール及びコンポーネントの分離又は統合が、全ての実施においてそのような分離又は統合を必要とするものとして理解されるべきではない。また、記載されたプログラムコンポーネント及びシステムは、一般的には、単一のソフトウェア製品に統合でき、又は複数のソフトウェア製品にパッケージ化できることが理解されるべきである。
【0059】
以上、主題の特定の実施について述べた。他の実施は、以下の特許請求の範囲内にある。場合によっては、請求項に列挙されるアクションを異なる順序で実行しても、望ましい結果を得ることができる。さらに、添付の図に描かれている工程は、望ましい結果を達成するために、図示する特定の順序又は連続順序を必ずしも必要としない。ある特定の実施では、マルチタスク及び並列処理が有利な場合がある。
【符号の説明】
【0060】
1002 コンピュータ
1004 インタフェース
1006 メモリ
1008 データベース
1012 記憶装置
図1
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図10