(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20221226BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101D
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2022513982
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012484
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 優貴
(72)【発明者】
【氏名】一野 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】中谷 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】榮島 隆介
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-011169(JP,A)
【文献】特開2020-095020(JP,A)
【文献】特開2019-104974(JP,A)
【文献】特開2018-117115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内部に配置され内側でプラズマが形成される処理室と、前記処理室内に配置され上面に処理対象のウエハが載せられる試料台と、前記試料台に配置され温度調節された冷媒が通流する冷媒流路を内部に備えた金属製の基材と、前記冷媒流路と前記基材の上面との間に配置され温度を検知する少なくとも1つの温度センサと、前記温度センサからの出力を用いて前記基材または前記試料台上に載せられた処理中の前記ウエハの温度を検出する制御器とを備え、
前記制御器は、前記温度センサの出力から得られた温度と、実際の前記基材または前記ウエハの温度との間の差を誤差としたときに、前記誤差と、前記冷媒の設定温度との関係を表す一次関数に基づいて、前記基材または前記ウエハの温度を検出し、
前記一次関数は、前記冷媒の調節可能な温度の範囲における複数の連続した温度範囲の各領域に対応して異なっており、複数の前記一次関数は、同じ係数を含みかつ前記誤差が0となる点を持つ、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記試料台の上面と前記冷媒流路との間に配置されたヒータを備え、
前記検出された温度に応じて前記ヒータの出力が調節される、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記一次関数の係数は、前記冷媒が調節可能な全温度範囲において、前記誤差と前記冷媒の設定温度との関係を示す一次関数の係数と同じ値である、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記一次関数の係数は、当該プラズマ処理装置と実質的に同じ構成を備えた別のプラズマ処理装置が有する前記試料台の前記温度センサの出力から得られた温度と、実際の前記基材または前記ウエハの温度との間の代用誤差としたときに、前記代用誤差と前記冷媒の設定温度との関係を示す一次関数の係数と同じ値である、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
真空容器内部に配置され内側でプラズマが形成される処理室と、前記処理室内に配置され上面に処理対象のウエハが載せられる試料台と、前記試料台に配置され温度調節された冷媒が通流する冷媒流路を内部に備えた金属製の基材と、前記冷媒流路と前記基材の上面との間に配置され温度を検知する少なくとも1つの温度センサとを備えたプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、
前記温度センサの出力から得られた温度と、実際の前記基材または前記ウエハの温度との間の差を誤差としたときに、前記誤差と、前記冷媒の設定温度との関係を表す一次関数に基づいて前記基材または前記ウエハの温度を検出し、
前記一次関数は、前記冷媒の調節可能な温度の範囲における複数の連続した温度範囲の各領域に対応して異なっており、複数の前記一次関数は、同じ係数を含みかつ前記誤差が0となる点を持つ、
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理装置が、前記試料台の上面と前記冷媒流路との間に配置されたヒータを備え、
前記検出された温度に応じて前記ヒータの出力を調節する、
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項7】
請求項5に記載のプラズマ処理方法であって、
前記一次関数の係数は、前記冷媒が調節可能な全温度範囲において、前記誤差と前記冷媒の設定温度との関係を示す一次関数の係数と同じ値である、
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項8】
請求項5に記載のプラズマ処理方法であって、
前記一次関数の係数は、当該プラズマ処理装置と実質的に同じ構成を備えた別のプラズマ処理装置が有する前記試料台の前記温度センサの出力から得られた温度と、実際の前記基材または前記ウエハの温度との間の代用誤差としたときに、前記代用誤差と前記冷媒の設定温度との関係を示す一次関数の係数と同じ値である、
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空容器内部に配置された処理室と、処理室内の下部に配置されその上面に半導体ウエハ等の処理対象の基板状の試料が載置される試料台とを備え、前記処理室内で形成したプラズマを用いて前記試料を処理するプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置の一例が、特許文献1に開示されている。開示されたプラズマ処理装置において、真空容器内部の処理室内に配置された試料台を構成する金属製の円板または円筒形状を有する基材の内部に、冷媒が内側を通流し同心状に多重に配置された冷媒流路と、基材の温度を検知する複数の温度センサとが配置されている。温度センサは、基材の底面から多重の冷媒流路同士間を通り冷媒流路の上端と基材の上面との間の箇所まで延在したセンサ用の孔の内部の上端部まで挿入され、温度センサが各々の孔の上端の箇所で検知した出力から、基材の上面あるいはその上面を被覆するセラミクス等の誘電体製の膜の上面に載せられた試料の温度を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、以下の問題が生じていた。
具体的には、近年の半導体デバイスの高い集積度を実現するため、当該デバイスを製造するための半導体ウエハの処理条件はより広がってきている。例えば、処理の対象となる膜層の材料の種類も増大しており、各々の材料に適した処理中の温度を実現するため、真空容器内部でウエハを保持する試料台には、従来より広い範囲で温度条件を制御することが求められている。
【0006】
このような温度条件としては、従来はエッチングの速度(レート)を高くすることが難しく大量生産される半導体デバイスの製造用の工程としては対象にはならなかった酸化膜を処理する温度として、0℃以下(零下)の領域にウエハを維持して処理することが提案されている。また、有機材料を含む膜層を対象とするエッチング処理であって、処理中のウエハの温度を100℃前後あるいはそれ以上の値にして処理を行うことも提案されている。
【0007】
したがって、零下から100℃近傍あるいはそれ以上の領域までの温度範囲において、ウエハ及びこれを支持する試料台の温度を高い精度で制御することが求められている。一方、このような試料台の温度を制御するために、試料台の主要部を構成する金属製の部材の内部には、所定の温度に調節された冷媒が供給され循環する冷媒流路や、電流が供給されて発熱するヒータを備えることも行われている。そして、処理に適した所望のウエハまたは試料台の温度を高い精度で制御するため、試料台内部に配置された温度センサの出力からウエハまたは試料台の温度を検出あるいは推定し、この情報をフィードバックして冷媒の温度やヒータの発熱量を調節することが行われている。
【0008】
しかしながら、広い範囲で試料台またはウエハの温度を実現するため冷媒の温度を増減させると、同じく試料台内部に配置された冷媒流路を通流する冷媒に吸収されるヒータからの熱量は、少なからず増減することになる。このため、従来の技術では、試料台の温度の変化に伴って温度センサの出力が示す温度の値と実際の試料台の温度との差(検出誤差)が増大してしまう虞がある。
【0009】
このように検出誤差が増大すると、半導体デバイスを製造するためのウエハの処理の歩留まりが損なわれ、処理の効率が低下してしまうこととなる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、温度検出精度を高めることにより、歩留まりを向上させたプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明にかかるプラズマ処理装置の一つは、
真空容器内部に配置され内側でプラズマが形成される処理室と、前記処理室内に配置され上面に処理対象のウエハが載せられる試料台と、前記試料台に配置され温度調節された冷媒が通流する冷媒流路を内部に備えた金属製の基材と、前記冷媒流路と前記基材の上面との間に配置され温度を検知する少なくとも1つの温度センサと、前記温度センサからの出力を用いて前記基材または前記試料台上に載せられた処理中の前記ウエハの温度を検出する制御器とを備え、
前記制御器は、前記温度センサの出力から得られた温度と、実際の前記基材または前記ウエハの温度との間の差を誤差としたときに、前記誤差と、前記冷媒の設定温度との関係を表す一次関数に基づいて、前記基材または前記ウエハの温度を検出し、
前記一次関数は、前記冷媒の調節可能な温度の範囲における複数の連続した温度範囲の各領域に対応して異なっており、複数の前記一次関数は、同じ係数を含みかつ前記誤差が0となる点を持つことにより達成される。
【0012】
さらに、代表的な本発明にかかるプラズマ処理方法の一つは、
真空容器内部に配置され内側でプラズマが形成される処理室と、前記処理室内に配置され上面に処理対象のウエハが載せられる試料台と、前記試料台に配置され温度調節された冷媒が通流する冷媒流路を内部に備えた金属製の基材と、前記冷媒流路と前記基材の上面との間に配置され温度を検知する少なくとも1つの温度センサとを備えたプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、
前記温度センサの出力から得られた温度と、実際の前記基材または前記ウエハの温度との間の差を誤差としたときに、前記誤差と、前記冷媒の設定温度との関係を表す一次関数に基づいて前記基材または前記ウエハの温度を検出し、
前記一次関数は、前記冷媒の調節可能な温度の範囲における複数の連続した温度範囲の各領域に対応して異なっており、複数の前記一次関数は、同じ係数を含みかつ前記誤差が0となる点を持つことにより達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度検出精度を高めることにより、歩留まりを向上させたプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供できる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す実施形態のウエハ載置用電極の主要部の構成の概略を模式的に説明する縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置を処理ユニットとして備える真空処理装置の構成の概略を模式的に示す上面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す実施形態に係るウエハ載置用電極の金属製の基材の内部の構成を示す横断面図である。
【
図5】
図5は、
図2および4に示す実施形態の冷媒流路に供給される冷媒の温度の変化に対するウエハ載置用電極に備えられた温度センサの検出結果と実際のウエハ載置用電極の温度との差との関係を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す断面図である。特に、
図1は、プラズマを形成するための電界としてマイクロ波の電界を用いて、上記マイクロ波の電界と磁界とのECR(Electron Cyclotron Resonance)を生起してプラズマを形成し、上記プラズマを用いて半導体ウエハなどの基板状の試料をエッチング処理するプラズマエッチング装置を示している。
【0016】
図1に示すプラズマ処理装置100について説明する。プラズマ処理装置100は、プラズマが形成される処理室104を内部に備えた真空容器101を有している。真空容器101の円筒形状を有した上部の側壁の上端上方に、円板形状を有した誘電体窓103(例えば石英製)が蓋部材として載せられて当該真空容器101の一部を構成する。円筒形の真空容器101の側壁の上方に載せられた状態で、誘電体窓103周縁部の裏面(下面)と真空容器101の円筒形を有した側壁の上端との間には、Oリング等のシール部材が挟まれて配置されている。真空容器101内部の処理室104内が排気されて減圧されたとき、誘電体窓103が真空容器101に押し付けられることで、シール部材に変形が生じる。これにより、真空容器101または処理室104の内部と外部とが気密に区画される。
【0017】
また、真空容器101の下部には処理室104に面して円形の開口を有した真空排気口110が配置され、真空容器101の下方に配置されて接続された真空排気装置(図示省略)と連通している。さらに、真空容器101の上部の蓋部材を構成する誘電体窓103の下面の下方には、処理室104の円形の天井面を構成して処理室104に面したシャワープレート102が備えられている。シャワープレート102は、中央部に貫通して配置された複数のガス導入孔102aを有した円板形状を有しており、当該ガス導入孔102aを通してエッチング処理用のガスが処理室104に上方から導入される。本実施形態のシャワープレート102は、石英等の誘電体の材料から構成されている。
【0018】
真空容器101の上部の外側の上方側の箇所には、プラズマ116を処理室104内部に生成するための電界および磁界を形成する電界・磁界形成部160が配置されている。電界・磁界形成部160は、電界発生用電源106と、導波管105とを備える。導波管105は、誘電体窓103の上方に配置され且つプラズマ116を生成するための所定の周波数の高周波電界を処理室104内に導入するため当該電界が内部を伝送されるものである。導波管105の下部を構成する円筒形部分は、上下方向に軸を有して誘電体窓103の中央部の上方で処理室104内に連通する、誘電体窓103より径の小さい円筒である。さらに、導波管105の他方の端部に、導波管105の内部を伝送される高周波の電界を発信して形成する電界発生用電源106が備えられている。当該電界の所定の周波数は、特に限定されないが、本実施の形態では2.45GHzのマイクロ波が使用される。
【0019】
処理室104の誘電体窓103の上方にある導波管105の円筒形状部の下端部、および処理室104の円筒形状部を構成する真空容器101の側壁の外周側の周囲を囲んだ状態で、磁場発生コイル107が配置されている。磁場発生コイル107は、直流電流が供給されて磁場を形成する上下方向に複数の段に配置された電磁石およびヨークから構成されている。
【0020】
上記の構成において、シャワープレート102のガス導入孔102aから処理室104内に処理用のガスが導入された状態で、電界発生用電源106より発振されたマイクロ波の電界は、導波管105の内部を伝播して誘電体窓103およびシャワープレート102を透過して処理室104に上方から下向きに供給される。さらに、磁場発生コイル107に供給された直流電流により生起された磁界が処理室104内に供給され、マイクロ波の電界と相互作用を生じさせ、ECR(Electron Cyclotron Resonance)を生起する。当該ECRにより、処理用のガスの原子または分子が励起、解離または電離され、処理室104内に高密度のプラズマ116が生成される。
【0021】
プラズマ116が形成される空間の下方の処理室104の下部には、試料台を構成するウエハ載置用電極120が配置されている。
図2において、ウエハ載置用電極120の上部の中央部は、外周側より上面が高くされた円筒形の突起部分(凸状部)を備えており、凸状部の上面に試料(処理対象)である半導体ウエハ(以降、単にウエハとも言う)109が載せられる載置面120aを備えている。その載置面120aは、シャワープレート102または誘電体窓103に対向するように配置されている。
【0022】
図2にも示すように、ウエハ載置用電極120の一部を構成する電極基材(単に基材ともいう)108の上部中央部に配置される凸部の上面120bが誘電体膜140で被覆され、当該誘電体膜140が載置面120aを構成する。誘電体膜140の内部には、
図1に示す高周波フィルタ125を介して直流電源126と接続された静電吸着用としての複数の導電体製の膜である導電体膜111が配置されている。
【0023】
ここで、導電体膜111には、静電気による半導体ウエハ吸着用の直流電力が内部に供給され、これを覆う誘電体膜140の上部を挟んでウエハ109を吸着させる静電気を形成するための膜状の静電吸着用電極が含まれている。本実施形態の導電体膜111の静電吸着用電極は、上方から見て円またはこれとみなせる程度に近似した形状を有して相互に所定の距離だけ距離をあけて配置され絶縁された複数の膜であり、複数の膜状の電極の一方と他方とが異なる極性が付与される双極型のものであっても、または同じ極性が付与される単極型のものであってもでもよい。
図1では単一の導電体膜111のみが開示されているが、本実施形態の双極型の静電吸着電極は、各々異なる極性が付与される複数の膜状の金属製の電極が誘電体膜140内部に配置される。
【0024】
図1において、ウエハ載置用電極120の内部に配置された導電体製の円形または円筒形状を有した電極基材108は、整合器129を介し同軸ケーブル等の配線を含む給電経路を通して、高周波電源124と接続されている。これら高周波電源124と整合器129とは、高周波フィルタ125と導電体膜111との間の距離より近い箇所に配置されている。さらに、高周波電源124は、接地箇所112に接続されている。
【0025】
本実施形態において、ウエハ109の処理時に、高周波電源124から所定の周波数の高周波電力が供給されることにより、ウエハ109は、ウエハ載置用電極120の誘電体膜140の上面上に吸着されて保持される。保持されたウエハ109の上方に、プラズマ116の電位との差に応じた分布を有するバイアス電位が形成される。言い換えると、上記試料台は、プラズマ116が形成されている間に、高周波電源124から高周波電力が供給されるウエハ載置用電極120を有している。
【0026】
詳細は後述するが、電極基材108の内部には、伝達される熱を除去してウエハ載置用電極120を冷却するために、電極基材108またはウエハ載置用電極120の上下方向の中心軸周りに螺旋状または同心状に多重に配置され、温度が所定の範囲に調節された冷媒が内部を通流する冷媒流路152が備えられている。この冷媒流路152のウエハ載置用電極120への入口及び出口は、図示しない冷凍サイクルを備えて冷媒を熱伝達により所定の範囲内の温度に調節する温度調節器と、管路により接続されている。冷媒流路152内を流れる間に熱交換が行われて温度が変化した冷媒は、出口から流出して管路を介し温度調節器内部の流路を通って所定の温度範囲にされた後、電極基材108内の冷媒流路152に戻されて循環する。
【0027】
ウエハ載置用電極120の電極基材108の凸状部のウエハ109と同様の円形状を有した載置面120aの外周側には、これを囲んで上方から見てリング状に配置された凹み部120dが配置されている。この凹み部120dの試料台の載置面120aより高さが低く形成されたリング状の上面には、石英あるいはアルミナなどのセラミクスといった誘電体製の材料から構成されたリング状部材であるサセプタリング113(
図1)が載せられて、凹み部120dの底面あるいは凸状部の円筒形の側壁面がプラズマ116に対して覆われる。
【0028】
本実施形態のサセプタリング113において、
図1に示すように、リング状部分の外周縁を構成する円筒形の側壁部は、凹み部120dに載せられた状態で、側壁部の下端が当該凹み部120dより下方に延在してウエハ載置用電極120の電極基材108あるいは後述する絶縁プレート150の円筒形の側壁面を覆う寸法を有している。さらに、サセプタリング113が凹み部120dに載せられリング状部分の底面が凹み部120dまたはこれを覆った保護用の誘電体製の被膜の上面と接した状態で、サセプタリング113の平坦な上面が載置面120aより高くなる寸法を有している。
【0029】
本実施形態のプラズマ処理装置100は、上記電界発生用電源106、磁場発生コイル107、高周波電源124、高周波フィルタ125、直流電源126、高周波電源127、整合器128,129、負荷インピーダンス可変ボックス130等の電界や磁界を調節する装置、或いは後述する真空排気装置やガス供給量を調節するマスフローコントローラ等の圧力調節系を構成する装置や、ウエハ載置用電極120内部のヒータの発熱量や冷媒流路152に供給され循環する冷媒の温度を調節する温度調節器等の温度調節機構を含むプラズマ処理装置100の動作を調節する装置を備える。
【0030】
これらの装置は、各々が出力や流量、圧力等の動作の状態を検知する検知器を備えると共に、制御器170と有線または無線による介して通信可能に接続されている。これら装置の各々に備えられた検知器から出力される当該動作の状態を示す信号が制御器170に伝達されると、制御器170の演算器は、制御器170内部の記憶装置に記憶されたソフトウエアを読み出して、そのアルゴリズムに基づいて、受信した検知器からの信号からその状態の量を検出し、これを適切な値に調節するための指令信号を算出して発信する。指令信号を受信した電界・磁界調節系あるいは圧力調節系等に含まれる装置は、該指令信号に応じて動作を調節する。
【0031】
詳細は後述するが、このようなプラズマ処理装置100を含む真空処理装置では、真空容器101の側壁に連結された別の真空容器である真空搬送容器の内部の処理室104と同様の圧力まで減圧された真空搬送室内に、ウエハ搬送用のロボットが配置されている。真空搬送室と処理室104との間を連通する通路であるゲートが真空搬送室内に配置されたゲートバルブが開放されたとき、このロボットアーム先端上に処理前のウエハ109が載せられて、アームの伸長によって当該ゲート内を通り処理室104内部に搬入される。さらに、処理室104内のウエハ載置用電極120の載置面120aの上方まで搬送されたウエハ109は、リフトピンの上下の移動により上記リフトピン上に受け渡され、さらに載置面120a上に載せられた後、直流電源126から印加される直流電力により形成された静電気力によって、ウエハ載置用電極120の載置面120aに吸着されて保持される。
【0032】
アームの収縮によって処理室104から真空搬送室内部へと搬送用ロボットが退室した後、ゲートバルブがゲートを真空搬送室から気密に閉塞して、処理室104内部が密閉される。この状態で、エッチング処理用のガスが、ガス源と真空容器101との間を接続する配管から構成されたガス供給用の管路を通り処理室104内に供給される。当該配管上には、内部に当該ガスが流れる流路とその流路上に配置され当該流路の断面積を増減または開閉して流量を所望の範囲内の値に調節するバルブを有した流路調節器であるマスフローコントローラ(図示省略)が配置されている。マスフローコントローラにより流量または速度が調節されたガスが、配管の端部に接続された真空容器101内の流路から誘電体窓103と石英製のシャワープレート102の間のすき間の空間に導入される。導入されたガスは、この空間内で拡散した後にシャワープレート102のガス導入孔102aを通して処理室104に導入される。
【0033】
処理室104内部は、真空排気口110に連結された真空排気装置の動作により、真空排気口110を通して内部のガスや粒子が排気されている。シャワープレート102のガス導入孔102aからのガスの供給量と、真空排気口110からの排気量とのバランスに応じて、処理室104内がウエハ109の処理に適した範囲内の所定の値に調整される。
【0034】
また、ウエハ109が吸着保持されている間、ウエハ109とウエハ載置用電極120の載置面120aである誘電体膜140の上面との間のすき間には、誘電体膜140の上面の図示しない開口からHe(ヘリウム)などの熱伝達性を有したガスが供給され、これによりウエハ109とウエハ載置用電極120との間の熱伝達が促進される。なお、所定の範囲内の温度に調節された冷媒が、ウエハ載置用電極120の電極基材108内に配置された冷媒流路152内を通流して循環することで、ウエハ載置用電極120または電極基材108の温度は、ウエハ109が載置される前に予め調節されている。したがって、熱容量の大きなウエハ載置用電極120または電極基材108との間で熱伝達がされることで、処理前にウエハ109の温度はこれらの温度に近接するように調節され、処理の開始後もウエハ109からの熱が伝達されてウエハ109の温度が調節される。
【0035】
以下、エッチング処理について説明する。上記状態で、処理室104内にマイクロ波の電界と磁界とが供給され、ガスを用いてプラズマ116が生成される。プラズマ116が形成されると、電極基材108に高周波電源124から高周波(RF)電力が供給され、ウエハ109の上面の上方にバイアス電位が形成されて、プラズマ116の電位との間の電位差に応じてプラズマ116内のイオンなどの荷電粒子がウエハ109の上面に誘引される。さらに、上記荷電粒子が、ウエハ109の上面に予め配置されたマスクおよび処理対象の膜層を含む膜構造の上記処理対象の膜層表面と衝突して、エッチング処理が行われる。エッチング処理中は、処理室104内に導入された処理用のガスや処理中に発生した反応生成物の粒子が、真空排気口110から排気される。
【0036】
処理対象の膜層のエッチング処理が進行して、当該処理が所定のエッチング量または残り膜厚さまで達したことが図示しない終点検出器や膜厚さ検出器により検出されると、高周波電源124からの高周波電力の供給が停止され、また電界発生用電源106および磁場発生コイル107への電力の供給が停止されてプラズマ116が消勢され、エッチング処理が停止される。その後、ウエハ109の導電体膜111の静電吸着用電極に、直流電源126から処理中とは逆の電位となるように電力が供給されるなどの静電吸着力の除電処理が実施される。
【0037】
さらに、処理室104内部に希ガスが導入されて処理用のガスと置換される。その後、ウエハ109がウエハ載置用電極120の上面120bからリフトピンにより持ち上げられた後、ゲートバルブが開放したゲートを通って処理室104内に進入した搬送用ロボットのアーム先端に受け渡され、アームの収縮によって処理室104外に搬出される。処理されるべき別のウエハ109が在る場合には、当該ウエハ109が搬送用ロボットにより搬入されて上記と同様に処理が行われ、別のウエハ109が無い場合には、ゲートバルブが気密にゲートを閉塞して処理室104が密封されて処理室104での処理が終了する。
【0038】
そして、本実施形態のプラズマ処理装置100では、ウエハ109の処理中に、ウエハ載置用電極120の載置面120a外周の凹み部120dとサセプタリング113との間に配置された導体リング131に、第2の高周波電源である高周波電源127から第2の高周波電力を供給する。さらに、当該導体リング131は、第2の高周波電力の給電経路を構成するとともにウエハ載置用電極120の電極基材108の外周部の内部を貫通する貫通孔内に配置され、導体リング131に対し下方から上向きに押し付けられて保持された給電コネクタ161と接続されている。
【0039】
高周波電源127から出力された高周波電力は、高周波電源127と導体リング131との間を電気的に接続する給電経路上に沿って、給電経路上に配置された負荷の整合器128と負荷インピーダンス可変ボックス130を通って、サセプタリング113の内側に配置された導電体製の導体リング131に供給される。
【0040】
この際に、負荷インピーダンス可変ボックス130において給電経路上のインピーダンスが好適な範囲内の値に調節されることで、サセプタリング113の上部の相対的に高いインピーダンス部分に対して、高周波電源127から電極基材108を通してウエハ109の外周縁部までの第1の高周波電力に対するインピーダンスの値が相対的に低くされる。これにより、ウエハ109の外周側部分および外周縁部に高周波電力を効果的に供給し、ウエハ109の外周側部分または外周縁部での電界の集中を緩和して、これらの領域上方のバイアス電位の等電位面の高さの分布を、プラズマ中のイオンなどの荷電粒子のウエハ109上面への入射方向のバラつきを許容される所期の範囲内にして、処理の歩留まりを向上させる。
【0041】
本実施形態では、高周波電源127は接地箇所112に電気的に接続されている。なお、本例で導体リング131に高周波電源127から供給される第2の高周波電力の周波数は、ウエハ109の処理の条件に応じて適切に選択されるが、好ましくは高周波電源124と同じか定数倍の値にされる。
【0042】
図2は、
図1に示す実施形態のウエハ載置用電極の主要部の構成の概略を模式的に説明する縦断面図である。
図2において、本実施形態のプラズマ処理装置100のウエハ載置用電極120は、金属製の円板形状の基材であって高周波バイアス電力が供給される電極基材108と、その上面上に配置されたアルミナやイットリア等セラミクスを材料として構成された誘電体膜140を含む。ウエハ載置用電極120の主要部の構成を詳細に説明する。
【0043】
本図において、ウエハ載置用電極120の基材である金属製の電極基材108の上部に配置された誘電体膜140は、電極基材108の上部の中央部に配置された凸部の上面を覆って配置され、内部に上下方向に2つの層をなす膜状の導電体膜111を備えている。導電体膜111における下層の膜状の電極は、上方から見て凸部または誘電体膜140の上面の複数の領域(ゾーン)を占めるヒータ電極202である。本実施形態では、ヒータ電極202は、誘電体膜140の中心を含む中央の円形の領域と、その外周側でこれを囲んで当該中心について同心状に配置された複数個のリング状の領域内で、各領域を実質的に占有するように配置されている。ヒータ電極202のリング状の領域は、上記中心周りに複数(本例では3つ以上)の円弧状の小領域に分けられて各小領域を占めてヒータ電極202が配置されている。すなわち、本実施形態のヒータ電極202は、誘電体膜140内で、中央部の円形のゾーンとその周囲の円弧状の複数のゾーン内に、実質的にこれらと同じ面積を占めて、電極基材108の凸部上面の全体を覆って配置されている。
【0044】
一方、導電体膜111における上層の膜状の電極は、上方から見て誘電体膜140の中心を含む円形の領域と、その外周側でこれを当該中心に対して同心状に囲む少なくとも1つのリング状の領域とを占有する静電吸着用電極(ESC電極)201である。本例のウエハ載置用電極120または中心からの半径方向について、隣接する2つのESC電極同士の分離された箇所も、当該中心についての特定の同じ半径位置上に位置して、同心状に分離されており、その分離の位置は、ヒータ電極202が配置された隣接する2つのリング状の領域同士が、中心についての特定の同じ半径位置で同心状に分離されて分離されている箇所に重なっており、上方から見て一方が他方のものの投影された領域を含んでいる。
【0045】
本実施形態の複数のESC電極201の各々には直流電源126が接続され、制御器170からの指令信号に応じて定められた電圧が印加され、これらに応じた極性が付与される。これら電圧に応じた極性に対応して上方のウエハ109内の各電極の上方の領域に電荷が集積されて静電気力が生起される。本例の複数のESC電極201は、正または負の極性の何れかが付与され相互に正極、負極の電極の対が構成される、所謂双極型を構成する。これら正、負の各々の極性が付与されるESC電極201同士の面積の和は、同値またはこれと見做せる程度に近似する値を有する形状にされる。
【0046】
さらに、本実施形態のウエハ載置用電極120は、電極基材108の内部であって、上方から見て誘電体膜140内のヒータ電極202が配置された領域またはゾーンの投影された領域内の各々に電極基材108の温度を検知する複数の温度センサ203が配置されている。なお、電極基材108内部で温度センサ203の温度を検知する先端部より下方の位置に、ウエハ載置用電極120の上下方向の中心軸周りに同心または螺旋状に配置された冷媒流路152が配置されている。このため、電極基材108またはウエハ載置用電極120の温度は、当該ヒータ電極202の発熱と共に、冷媒流路152の内部を循環して流れる所定の温度に調節された冷媒によっても調節される。
【0047】
本例では、各ゾーン内のヒータ電極202各々に対応する1つの温度センサ203が、当該ゾーン下方の電極基材108内部に配置されたセンサ孔204内部に挿入され格納されて配置されていても良い。また、本実施形態に示すように、円形またはリング状の各領域に対応する温度センサが、当該領域の投影される範囲内の箇所に配置されたセンサ孔204に1つずつ格納されていても良い。
【0048】
誘電体膜140のESC電極201の上方の上面120bは、最外周縁部に配置されて内側を囲むリング状凸部206と、この内側の誘電体膜140上部に配置された複数個の凸部207とを備えており、これらの凸部の上面が誘電体膜140上面に載せられて静電吸着されるウエハ109の裏面と当接してこれと相互に押し付け合う。このような誘電体膜140内部のESC電極201に対して、直流電源126から直流電力が供給され特定の電位が付与されると、当該ESC電極201内部の電荷に応じてウエハ109の裏面を含む部材内の分子または原子が分極して電荷が生起される。ESC電極の上方の誘電体膜140の誘電体製の材料を挟んで静電気力が発生し、これによりウエハ109とESC電極201との間に引き付け合う静電気力が発生して、結果としてウエハ109が所定の吸着力で誘電体膜140上に吸着される。
【0049】
一方、真空容器101の底部下方には、ターボ分子ポンプとロータリーポンプ等の粗引き用ポンプとを含む真空ポンプを有する排気装置が、当該底部と接続されて処理室104と真空容器101底部の真空排気口110を介して連通されて配置されている。真空ポンプが駆動されることで、処理室104内部の圧力がウエハ109を内部に含んだ状態で高い真空度に維持される。通常、ウエハ109の処理中の処理室104内の圧力は、処理用ガス供給路からの処理用ガス及び希釈ガスとの混合ガスの供給の流量または速度と、真空排気口110からの排気の流量または速度とのバランスにより、ウエハ109の処理に適した範囲内の値にされる。
【0050】
このようなプラズマ処理装置100では、ウエハ109が誘電体膜140上面に誘引されて吸着され保持された状態で、図示しないガス通路を通してガス源からのHeガス等の熱伝達性の高いガスがウエハ109と誘電体膜140上面との間の隙間(以下、ギャップとも呼称する)に供給されて、電極基材108内に形成された冷媒流路152内に循環して通流する冷媒とウエハ109との間の熱の伝達が促進される。
【0051】
本実施形態で実施される1つのウエハ109上の処理対象の膜層のエッチング処理は、実施に好適な温度の範囲を含む処理の条件が異なる複数の工程(ステップ)を備え、前後のエッチング処理の工程の間にウエハ109またはこれを載せて保持するウエハ載置用電極120或いは誘電体膜140上面の温度を、前工程の条件から後工程の条件に遷移させるための遷移ステップを備えている。
【0052】
図3を参照して、本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置を備える真空処理装置300の構成を説明する。
図3は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置を処理ユニットとして備える真空処理装置の構成の概略を模式的に示す上面図である。
【0053】
本図に示す真空処理装置300は、大きく分けて、大気側ブロック301と真空側ブロック302とにより構成される。大気側ブロック301は、大気圧下で被処理物である半導体ウエハ等の基板状のウエハを搬送、収納位置決め等を行う部分である。真空側ブロック302は、大気圧から減圧された圧力下でウエハ等の基板状のウエハを搬送し、予め定められた真空処理室内において処理を行うブロックである。そして、真空側ブロック302の前述した搬送や処理を行う真空側ブロック302の箇所と大気側ブロック301との間には、これらを連結して配置されウエハを内部に有した状態で、圧力を大気圧と真空圧との間で変化させる装置が配置されている。
【0054】
大気側ブロック301は、内部に大気搬送ロボット309を備えた略直方体形状の容器であって、内部の圧力が真空処理装置300の周囲の雰囲気である大気の圧力と同じか僅かに高くされ、処理前および処理後のウエハが搬送される大気搬送室を内側に有する筐体306を含む。この筐体306の前面側に、処理用またはクリーニング用の被処理対象の半導体ウエハ等の基板状のウエハが収納されているカセットがその上に載せられる複数のカセット台307が備えられている。
【0055】
真空側ブロック302は、第1の真空搬送室304と大気側ブロック301との間に配置され、大気側と真空側との間でやりとりをするウエハを内部に有した状態で圧力を大気圧と真空圧との間でやりとりをするロック室305を一つまたは複数備えている。
【0056】
第1の真空搬送室304、第2の真空搬送室310は各々の平面視で略矩形状を有した真空容器を含むユニットであり、これらは、実質的に同一と見なせる程度の構成上の差異を有する2つのユニットである。真空搬送中間室311は、内部が他の真空搬送室または真空処理室と同等の真空度まで減圧可能な真空容器であって、真空搬送室304,310を互いに連通可能に連結している。真空搬送室304,310との間には、内部の室を連通して内側でウエハが搬送される通路を開放、遮断して分割するゲートバルブ320が配置されており、これらのゲートバルブ320が閉塞することによって、真空搬送中間室311と真空搬送室304,310との間は気密に封止される。
【0057】
また、真空搬送中間室311内部の室には、複数のウエハをこれらの面と面の間ですき間を開けて載せて水平に保持する収納部が配置されており、真空搬送室304,310との間でウエハが受け渡される際に、一旦収納される中継室の機能を備えている。すなわち、一方の真空搬送室内の真空搬送ロボット308によって搬入され前記収納部に載せられたウエハが、他方の真空搬送室内の真空搬送ロボット308により搬出されて、当該真空搬送室に連結された真空処理ユニット303またはロック室305に搬送される。
【0058】
第1の真空搬送室304と第2の真空搬送室310の、真空搬送中間室311に連結される面とは異なる他の面に、
図1に示すプラズマ処理装置100を含む真空処理ユニット303が接続されている。本実施形態では、真空処理ユニット303は上記の通り、真空容器101を含んで構成され、この真空容器101内部の処理室104にプラズマ116を形成するため供給される電界、磁界の発生手段、真空容器101内部の減圧される空間である処理室104を排気する真空ポンプを含む排気手段を含んで構成されたユニットであり、内部の処理室104においてプラズマ116を用いたエッチング処理が実施される。
【0059】
本例の真空処理装置300では、2つの真空処理ユニット303が第1の真空搬送室304及び第2の真空搬送室310に各々接続されている。これらの真空処理ユニット303では、ウエハ109のエッチング処理のみでなくアッシング処理、或いは他の半導体ウエハに施す処理が施されても良い。また、各真空処理ユニット303には、実施される処理に応じて真空容器101内部の処理室104に供給される処理ガスが流れる管路が連結されている。
【0060】
第1の真空搬送室304には最大2個の真空処理ユニット303が連結可能に構成されているが、本実施形態では2個の真空処理ユニット303が連結される。一方、第2の真空搬送室310には最大3個の真空処理ユニット303が連結可能に構成されているが、本実施形態では2個までの真空処理ユニット303が連結される。
【0061】
第1の真空搬送室304および第2の真空搬送室310は、その内部が搬送室とされている。第1の真空搬送室304には、真空下でロック室305と真空処理ユニット303または真空搬送中間室311の何れかとの間でウエハを搬送する第1の真空搬送ロボット308が、その内部の空間の中央部分に配置されている。第2の真空搬送室310にも、同様に真空搬送ロボット308が内部の中央部分に配置されており、真空処理ユニット303、真空搬送中間室311の何れかとの間でウエハの搬送を行うことができる。
【0062】
前記真空搬送ロボット308は、そのアーム上にウエハが載せられて、第1の真空搬送室304では真空処理ユニット303に配置されたウエハ台(例えばウエハ載置用電極)上と、ロック室305または真空搬送中間室311の何れかとの間でウエハの搬入、搬出を行う。これら真空処理ユニット303、ロック室305、真空搬送中間室311、第1の真空搬送室304および第2の真空搬送室310の搬送室との間には、それぞれ気密に閉塞、開放可能なゲートバルブ320により連通する通路が設けられており、この通路は、ゲートバルブ320により開閉される。
【0063】
図1の実施形態の真空処理装置では、ウエハに対し施される処理は、全ての真空処理ユニット303について処理時間含め同等な条件で行われる。また、ロック室305での単位時間あたりのウエハを搬送可能な枚数は、真空処理ユニット303における単位時間あたりウエハを処理可能な枚数よりも少なく、各真空搬送室に備えられた真空搬送ロボット308の単位時間当たりのウエハの搬送枚数よりも同じ若しくはわずかに少ない値である。これは、ロック室305において処理後のウエハを大気側ブロック301に搬出される際に、アッシング処理等の加熱される処理が施されたウエハの温度を、搬送やカセットへの収納に支障生じない程度まで低下させる時間を長く要して、ロック室305内でウエハが滞留している時間が相対的に長いためである。
【0064】
第1の真空搬送室304内に配置された真空搬送ロボット308(ロボット1とする)は、大気側ブロック301から真空側ブロック302へ導入された未処理のウエハを、ロック室305と、当該ウエハが搬送されるより前に予め設定された処理を施される目標の各真空処理ユニット303との間でウエハの受け渡しを行う機械である。一方、第2の真空搬送室310内に配置された真空搬送ロボット308(ロボット2とする)は、前記ロボット1が第1の真空搬送室304から真空搬送中間室311に搬送したウエハを、当該真空搬送中間室311と第2の真空搬送室310に連結された何れかの真空処理ユニット303との間でウエハの受け渡しを行う機械である。
【0065】
本実施形態では、何れかの真空処理ユニット303内でウエハに対する処理が終了した後に、当該真空処理ユニット303から処理済のウエハがロック室305へ向けて搬送されてくる。ここで、前述のとおりロック室305でウエハを大気ブロックへ搬送するために要する時間、すなわちウエハが収納された状態でロック室305内部が減圧された状態から、大気圧と同じかこれと見做せる程度まで昇圧させて大気側ブロック301に面したゲートバルブが開放されてウエハが取り出される迄のロック室305内のウエハの滞留する時間は、ウエハが真空処理ユニット303内に搬入され処理されて後取り出される迄滞留する時間よりも十分長い。このため、本実施形態では、ロボット1が、全ての処理済ウエハをロック室305に戻さなければならないため、処理済ウエハを自身のアームに保持したままロック室305の真空側ブロック302側のゲートバルブが開放されて搬入が出来るようになる迄の待ち時間が発生する。
【0066】
図4を参照して、
図2に示したウエハ載置用電極120の電極基材108の内部の構造について説明する。
図4は、
図2に示す実施形態に係るウエハ載置用電極の金属製である基材の内部の構成を示す横断面図である。特に、
図4は、電極基材108の
図2に示すA-A線で示される水平方向の断面を示している。
【0067】
本図に示されるように、本実施形態の電極基材108は、アルミニウムまたはその合金あるいはチタンまたはその合金等の金属製で円板または円筒形状を有して、その内部に中心周りに螺旋または同心状に多重に配置された冷媒流路152を備えている。本例の半径方向に多重に配置された冷媒流路152は、最外周の流路部分に冷媒が内部に流入する流入口401を有した一端部を備え、流入口401から流入した冷媒が上方から見て中心周りに時計の回転方向に向かうに伴って中心部に近接するように旋回する経路となっている。
図4に示される例では、冷媒流路152は、冷媒が流入口401から流路に沿って時計回りにおよそ3周回して流れて電極基材108の中心部に到達する経路となっている。
【0068】
さらに、冷媒流路152は、電極基材108の中心部において反時計回りに折り返された後、中心部から反時計回りの方向に向かうに伴って外周部に近接するように旋回する流路を有して、最外周の流路の内周側で、流入口401を有する一端部に近接した箇所に位置する他端部を有している。他端部には冷媒の流出口402が配置され、流入口401にから冷媒流路152内部を流れて中心部に到達した冷媒は、流路の折返し部から反時計回りにおよそ2周回して流れて冷媒流路152の他端部に到達して、流出口402を通って冷媒流路152から流出する。
【0069】
さらに、本実施形態では、電極基材108の内部には、ウエハ載置用電極120に備えられた誘電体膜140内部に配置された静電吸着用電極201に給電するためのコネクタやケーブルが内部に格納された貫通孔403、ヒータ電極202に給電するためのコネクタやケーブルが格納された貫通孔404、電極基材108内部でその上面と冷媒流路152との間に配置された温度センサ203が内部に収納されたセンサ孔204が備えられている。冷媒流路152はこれらの貫通孔を避けて配置され、このためこれら貫通孔の近傍の箇所で局所的に図上面内の方向に蛇行した箇所を複数備えている。
【0070】
なお、本例の電極基材108は、厚さ方向(上下方向)の寸法より径方向(水平方向)の寸法の方が十分に大きい円板形状を有している。このため、電極基材108内部に配置された冷媒流路152が存在している領域の上下方向の寸法より、径方向の寸法が十分に大きい。
【0071】
次に、
図5を用いて、
図1に示すプラズマ処理装置のウエハ載置用電極120の温度の調節の態様について説明する。
図5は、
図2および4に示す実施形態の冷媒流路に供給される冷媒の温度の変化に対するウエハ載置用電極に備えられた温度センサの検出結果と、実際のウエハ載置用電極の温度との差との関係を模式的に示すグラフである。
【0072】
本実施形態のプラズマ処理装置では、ウエハ載置用電極120上に載せられて吸着された状態でウエハの温度は、冷媒流路152に供給される冷媒の温度およびヒータ電極202に供給される直流電力の大きさに応じた発熱量に応じて変化する。このため、制御器170は、温度センサ203からの出力を受けて、検出された電極基材108の温度または推定されたウエハ109の温度の値に応じた指令信号を発信し、それにより冷媒の温度やヒータ電極202の発熱量が調節される。一方、本例が備えている温度センサ203、例えば抵抗体を用いた温度センサ203では、検出する温度の値の高低に応じて実際の温度との差(誤差)の大きさも増減する。そこで、制御器170では、温度センサ203からの出力を受信して得られた結果に対し予め定めた量だけ補正して、上記のような温度センサ203の検出の誤差を修正して、高い精度でウエハ載置用電極120またはウエハ109の温度を検出する。
【0073】
このため本例では、半導体デバイスを製造する工程としてのウエハ109の処理の開始前に予め、冷媒の温度調節器により冷媒の温度を、所定の範囲ごとに複数の値に設定してウエハ載置用電極120の冷媒流路に供給することで、電極基材108を異なる複数の温度に調節する。このように電極基材108が各々の温度に調節された状態で温度センサ203を用いて温度を検出すると共に、実際の電極基材108の上面またはウエハ載置用電極120の誘電体膜140の上面の温度との誤差を求める。さらに、これらの誤差の値と、冷媒の温度調節器の温度設定値(設定された冷媒温度)との相関を抽出して、これら相関を示す係数を算出する。これらの相関を示すグラフが
図5に示されている。
【0074】
発明者らの検討の結果、本例のウエハ載置用電極120の電極基材108内部に配置された温度センサ203の出力から得られる温度の誤差は、ウエハ109の実際の処理の条件として想定される範囲における冷媒の温度調節器が行う温度の設定値に対して所定の傾きを有して変化する、つまり実質的に冷媒の設定温度の一次関数として表せることが判った。
【0075】
そこで、本実施形態のプラズマ処理装置では、半導体デバイスを製造する工程として、ウエハ109を処理する運転を開始する前に、予め、上記のように温度調節器により冷媒の温度を想定される処理の条件としてのウエハ109の温度の範囲内の複数の値にして、温度センサ203の出力の誤差と冷媒の設定温度との相関を、一次関数(y=ax+b)に当てはめた場合に、その傾き(係数a)および定数bの値をパラメータとして求める。そして、制御器170は、当該パラメータおよび冷媒の温度調節器の設定値(x)から算出される関数の値(y)を誤差として推定し、製品の製造工程としてのウエハ109の処理の工程のためウエハ載置用電極120、またはこれに載せられたウエハ109の温度の推定また算出する際に、温度センサ203からの出力から検出した温度の値を、推定した誤差を用いて補正或いは校正する。補正された温度の値は、温度調節器やヒータ電極のフィードバック制御に用いられる。
【0076】
さらに、本実施形態では、上記想定される処理の条件としてのウエハ109の温度の範囲を、連続した複数(
図5では3つ)の領域509,510,511に分け、各々の温度の領域において誤差の校正用の関数として、上記校正用のパラメータとして検出された同じ(傾斜)係数aを有して、当該各々の温度の領域内で誤差0(ゼロクロス)点506,507,508を有する異なる一次関数による相関関数502,503,504を設定する。より具体的には、相関関数502は、1番目の領域509においてy=ax+b
1で表され、相関関数503は、2番目の領域510においてy=ax+b
2で表され、相関関数503は、3番目の領域511においてy=ax+b
3で表される。ただしいずれの関数も、当該領域内でy=0となる点を通る。係数aは、冷媒の温度調整可能な全範囲にわたって前記誤差と冷媒の設定温度との関係を示す単一の一次関数の係数aと同じ値である。
【0077】
また、係数aは、当該プラズマ処理装置と実質的に同じ構成を備えた別のプラズマ処理装置が有する試料台の温度センサの出力から得られた温度と、実際の前記基材または前記ウエハの温度との間の誤差を代用誤差としたときに、該代用誤差と冷媒の設定温度との関係を示す一次関数の係数aと同じ値としてもよい。また、相関関数502,503,504に基づいて、ヒータ電極202の発熱量を調整してもよい。
【0078】
このように分割された複数の温度の領域毎に同じ係数の異なる校正用の関数を用いることで、各温度の領域での誤差が低減される。
図5に示すように、実行が想定される処理中の温度の範囲全体を単一の一次関数としての相関関数501を用いた場合の比較例と比較し、ゼロ点から最大値または最小値までの差(誤差の修正量に対応する)が、本実施形態の校正用の関数502,503,504の方が小さくなっており、温度センサ203の出力を用いたウエハ109またはウエハ載置用電極120の温度の検出の精度が向上することがわかる。
【0079】
以上の通り、本実施形態により、ウエハ109の処理が想定される温度の範囲の全体にわたり、ウエハ109の温度を高い精度で実現でき、処理の歩留まりを改善することができる。
【0080】
さらに、本実施形態のプラズマ処理装置において、予め温度調節器により冷媒の温度を想定される処理の条件としてのウエハ109の温度の範囲内の複数の値にして検出された、温度センサ203の出力の誤差と冷媒の設定される温度との相関を示す一次関数の係数の値は、温度センサ203を含むウエハ載置用電極120およびこれと接続されて供給される冷媒の温度調節器について同等の構成を備えた他のプラズマ処理装置のウエハ載置用電極120についての検出誤差の補正あるいは校正に用いられる。この場合にも、
図5に示したように、想定される処理の条件としてのウエハ109の温度の範囲を、連続した複数(
図5では3つ)の領域に分け、各々の温度の領域において誤差の校正用の関数として、上記検出された係数及び当該温度の領域内で誤差0(ゼロクロス)点を有する異なる一次関数の相関関数が用いられても良い。
【符号の説明】
【0081】
100…プラズマ処理装置、
101…真空容器、
102…シャワープレート、
102a…ガス導入孔、
103…誘電体窓、
104…処理室、
105…導波管、
106…電界発生用電源、
107…磁場発生コイル、
108…電極基材、
109…ウエハ、
110…真空排気口、
111…導電体膜、
112…接地箇所、
113…サセプタリング、
116…プラズマ、
120…ウエハ載置用電極、
120a…載置面、
120b…上面、
120d…凹み部、
124…高周波電源、
125…高周波フィルタ、
126…直流電源、
127…高周波電源、
128,129…整合器、
130…負荷インピーダンス可変ボックス、
201…静電吸着用(ESC)電極、
202…ヒータ電極、
203…温度センサ、
204…センサ孔、
301…大気側ブロック、
302…真空側ブロック、
303…真空処理ユニット、
304…第1の真空搬送室、
305…ロック室、
306…筐体、
307…カセット台、
308…真空搬送ロボット、
309…大気搬送ロボット、
310…第2の真空搬送室、
311…真空搬送中間室、
320…ゲートバルブ、
401…流入口、
402…流出口、
403,404…貫通孔
【要約】
歩留まりを向上させたプラズマ処理装置は、真空容器内部に配置され内側でプラズマが形成される処理室と、この処理室内に配置され上面に処理対象のウエハが載せられる試料台と、この試料台内部に配置された円板又は円筒形状を有した金属製の基材、及びこの基材の内部でその中心周りに同心状に多重に配置され内側を予め定められた温度に調節された冷媒が通流する冷媒流路、並びにこの冷媒流路と前記基材の上面との間に配置され温度を検知する少なくとも1つの温度センサと、この温度センサからの出力を用いて前記基材または前記試料台上に載せられた処理中の前記ウエハの温度を検出する制御器とを備える。前記制御器は、前記温度センサの出力から得られた温度と、実際の前記基材または前記ウエハの温度との間の差を誤差としたときに、前記誤差と、前記冷媒の設定温度との関係を表す一次関数に基づいて、前記基材または前記ウエハの温度を検出し、前記一次関数は、前記冷媒の調節可能な温度の範囲における複数の連続した温度範囲の各領域に対応して異なっており、複数の前記一次関数は、同じ係数を含みかつ前記誤差が0となる点を持つ。