IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

特許7200569ゴム混合液、ニトリル基含有共重合体ゴム組成物、架橋性ゴム組成物およびゴム架橋物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ゴム混合液、ニトリル基含有共重合体ゴム組成物、架橋性ゴム組成物およびゴム架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/02 20060101AFI20221227BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20221227BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221227BHJP
【FI】
C08L9/02
C08K5/10
C08K3/013
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018179791
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020050722
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 一法
(72)【発明者】
【氏名】中野 博
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-012132(JP,A)
【文献】特開2011-213844(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042764(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/026707(WO,A1)
【文献】特開2009-235304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリル基含有共重合体ゴム、可塑剤および水を含有するゴム混合液であって、
前記ニトリル基含有共重合体ゴムが、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位および共役ジエン単量体単位を含有し、
前記ニトリル基含有共重合体ゴム中の前記α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が、全単量体単位に対して、15~48重量%であり、
前記ニトリル基含有共重合体ゴム中の前記共役ジエン単量体単位の含有量が、全単量体単位に対して、45~85重量%であり、
前記ニトリル基含有共重合体ゴム中の、前記α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位および前記共役ジエン単量体単位以外のその他の単量体の単位の含有量が、全単量体単位に対して、10重量%以下であり、
前記可塑剤が、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物であり、
前記ゴム混合液中の前記可塑剤の含有量が、前記ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、1~100重量部であり、
前記ゴム混合液中の、前記ニトリル基含有共重合体ゴム、前記可塑剤および前記水以外の成分の含有量が、前記ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、10重量部以下であり、
前記ゴム混合液中の無機充填剤の含有量が、前記ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、1重量部以下であるゴム混合液。
【請求項2】
前記ニトリル基含有共重合体ゴムが、前記共役ジエン単量体単位として、1,3-ブタジエン単位およびイソプレン単位を含有する請求項1に記載のゴム混合液。
【請求項3】
さらに老化防止剤を含有する請求項1または2に記載のゴム混合液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のゴム混合液を凝固することにより得られるニトリル基含有共重合体ゴム組成物。
【請求項5】
請求項に記載のニトリル基含有共重合体ゴム組成物および架橋剤を含有する架橋性ゴム組成物。
【請求項6】
請求項に記載の架橋性ゴム組成物を架橋することにより得られるゴム架橋物。
【請求項7】
請求項に記載のニトリル基含有共重合体ゴム組成物を製造するための製造方法であって、
前記ニトリル基含有共重合体ゴムおよび前記可塑剤および水を含有し、前記ニトリル基含有共重合体ゴム、前記可塑剤および前記水以外の成分の含有量が、前記ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、10重量部以下であるゴム混合液を調製する工程、および、前記ゴム混合液を凝固させる工程を含む製造方法。
【請求項8】
前記ニトリル基含有共重合体ゴムを含有する共重合体ゴムラテックスを調製する工程、および、前記可塑剤を含有する可塑剤エマルジョンを調製する工程をさらに含み、前記共重合体ゴムラテックスおよび前記可塑剤エマルジョンを混合することにより、前記ニトリル基含有共重合体ゴムおよび前記可塑剤を含有する前記ゴム混合液を調製する請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状保持性に優れた架橋性ゴム組成物を得ることができるゴム混合液およびニトリル基含有共重合体ゴム組成物、ならびに、これらを用いて得られる架橋性ゴム組成物およびゴム架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、および、共役ジエン単量体単位を含有するゴム(ニトリル基含有共重合体ゴム)は、耐油性に優れるゴムとして知られており、その加硫物は主にホース、ベルト、ガスケット、パッキン、シール、ロールなど産業用・自動車用の各種油類まわりのゴム製品の材料として用いられている。
【0003】
ニトリル基含有共重合体ゴムのラテックスとして、たとえば、特許文献1には、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10~65重量%、共役ジエン単位15~89.9重量%、ならびに、カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位0.1~20重量%、を有するニトリル共重合体ゴム(A)のラテックスと、アスペクト比が30~2,000である無機充填剤(B)と、HOY法によるSP値が8~10.2(cal/cm1/2である可塑剤(C)と、を含有し、前記ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対する、前記可塑剤(C)の比率が、0.1~200重量部であるニトリル共重合体ラテックス組成物が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載のニトリル共重合体ラテックス組成物は、ガソリン透過性が小さいゴム架橋物を得ることを目的としていることから、特定の無機充填剤を用いることを特徴とするものであり、ニトリル共重合体ゴムのα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量も多い方が好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-235304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゴム架橋物は、通常、ゴムおよび架橋剤を含有する架橋性ゴム組成物を調製し、架橋性ゴム組成物を所望の形状に成形した後、成形した架橋性ゴム組成物を架橋させることにより、製造される。各工程は、必ずしも絶え間なく行われるわけではなく、たとえば、調製した架橋性ゴム組成物を保管することがある。架橋性ゴム組成物の形状保持性が十分ではない場合、保管の際に架橋性ゴム組成物を積み重ねると、重さで架橋性ゴム組成物が変形して、取り扱い性が損なわれるおそれがある。また、成形した後の架橋性ゴム組成物を保管する場合には、保管中に架橋性ゴム組成物が変形してしまうと、所望の最終製品を得ることができない。さらには、架橋性ゴム組成物を保管することなく、調製後速やかに架橋工程に供する場合であっても、架橋反応の完了には一定の時間を要するので、架橋性ゴム組成物の架橋が完了する前に、架橋性ゴム組成物が変形してしまうことを回避する必要がある。特に、加熱によって架橋させる場合や、比較的大きなゴム架橋物を架橋させる際には、変形が生じやすい。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、常温で保管した場合だけでなく、高温に曝された場合であっても、形状保持性に優れた架橋性ゴム組成物を得ることができるゴム混合液およびニトリル基含有共重合体ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の限定された含有量を有するニトリル基含有共重合体ゴム、特定の可塑剤および水を含有するゴム混合液を用いると、形状保持性に優れた架橋性ゴム組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、ニトリル基含有共重合体ゴム、可塑剤および水を含有するゴム混合液であって、前記ニトリル基含有共重合体ゴム中のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が、全単量体単位に対して、15~48重量%であり、前記可塑剤が、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物であり、前記ゴム混合液中の前記可塑剤の含有量が、前記ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、1~100重量部であり、前記ゴム混合液中の無機充填剤の含有量が、前記ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、1重量部以下であるゴム混合液が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記のゴム混合液を凝固することにより得られるニトリル基含有共重合体ゴム組成物が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記のニトリル基含有共重合体ゴム組成物および架橋剤を含有する架橋性ゴム組成物が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、上記の架橋性ゴム組成物を架橋することにより得られるゴム架橋物が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、上記のニトリル基含有共重合体ゴム組成物を製造するための製造方法であって、前記ニトリル基含有共重合体ゴムおよび前記可塑剤を含有するゴム混合液を調製する工程、および、前記ゴム混合液を凝固させる工程を含む製造方法が提供される。
【0014】
本発明の製造方法は、前記ニトリル基含有共重合体ゴムを含有する共重合体ゴムラテックスを調製する工程、および、前記可塑剤を含有する可塑剤エマルジョンを調製する工程をさらに含むことが好ましく、前記共重合体ゴムラテックスおよび前記可塑剤エマルジョンを混合することにより、前記ニトリル基含有共重合体ゴムおよび前記可塑剤を含有する前記ゴム混合液を調製することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、常温で保管した場合だけでなく、高温に曝された場合であっても、形状保持性に優れた架橋性ゴム組成物を得ることができるゴム混合液およびニトリル基含有共重合体ゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<ゴム混合液>
本発明のゴム混合液は、ニトリル基含有共重合体ゴム、可塑剤および水を含有する。本発明のゴム混合液においては、水中に、ニトリル基含有共重合体ゴムおよび可塑剤が分散または溶解していることから、本発明のゴム混合液を用いて得られる架橋性ゴム組成物は、形状保持性に優れたものとなる。
【0017】
本発明のゴム混合液に含有されるニトリル基含有共重合体ゴムは、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有する。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成するα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、特に限定されないが、ニトリル基を有し、炭素数が、好ましくは3~18であるエチレン性不飽和化合物を用いることができる。このようなα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、アクリロニトリル;α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリルなどのα-ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのα-アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。なお、これらのα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ニトリル基含有共重合体ゴム中における、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、15~48重量%であり、好ましくは20~45重量%、より好ましくは25~40重量%、特に好ましくは30~40重量%である。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐油性が低下してしまう。一方、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が多すぎると、ニトリル基含有共重合体ゴムと可塑剤との親和性が悪くなり、得られるゴム組成物やゴム架橋物から可塑剤が表面に浮き出てしまう(ブリードする)おそれがある。
【0019】
本発明のゴム混合液に含有されるニトリル基含有共重合体ゴムは、共役ジエン単量体単位を含有することが好ましい。共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4~6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3-ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3-ブタジエンまたは1,3-ブタジエンおよびイソプレンの組み合わせがさらに好ましく、形状保持性に一層優れた架橋性ゴム組成物を得ることができることから、1,3-ブタジエンおよびイソプレンの組み合わせが特に好ましい。なお、これらの共役ジエン単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
共役ジエン単量体単位を形成するために、1,3-ブタジエンとイソプレンとを組み合わせて用いる場合の、1,3-ブタジエン単位とイソプレン単位との重量比(1,3-ブタジエン単位/イソプレン単位)としては、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは60/40~90/10であり、特に好ましくは70/30~85/15である。
【0021】
ニトリル基含有共重合体ゴム中における、共役ジエン単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは45~85重量%、より好ましくは55~80重量%、特に好ましくは60~75重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記範囲にすることにより、得られるゴム架橋物を、良好なゴム弾性を保ちながら、機械的特性に優れたものとすることができる。
【0022】
ニトリル基含有共重合体ゴムは、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位および共役ジエン単量体単位に加えて、これらの単量体単位を形成する単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を含有していてもよい。
【0023】
このようなその他の単量体としては、α-オレフィン単量体、非共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸ならびにそのモノエステル、多価エステルおよび無水物、架橋性単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが挙げられる。
【0024】
α-オレフィン単量体としては、好ましくは炭素数が2~12のものであり、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが例示される。
【0025】
非共役ジエン単量体としては、炭素数が5~12のものが好ましく、たとえば、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0026】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが好ましく挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの炭素数1~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル」の略記。以下同様。);アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸エトキシドデシル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸エトキシペンチルなどの炭素数2~18のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどの炭素数2~12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの炭素数1~12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1~12のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;などが挙げられる。
【0027】
α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸としては、たとえば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸モノエステルとしては、たとえば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn-ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn-ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn-ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn-ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸多価エステルとしては、たとえば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジn-ブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジn-ブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn-ブチルなどが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物としては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0028】
架橋性単量体としては、たとえば、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物;エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリル酸エステル類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのトリメタクリル酸エステル類;などの多官能エチレン性不飽和単量体のほか、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチロール(メタ)アクリルアミドなどの自己架橋性単量体などが挙げられる。
【0029】
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o-トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0030】
共重合性老化防止剤としては、たとえば、N-(4-アニリノフェニル)アクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)シンナムアミド、N-(4-アニリノフェニル)クロトンアミド、 N-フェニル-4-(3-ビニルベンジルオキシ)アニリン、N-フェニル-4-(4-ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0031】
これらの共重合可能なその他の単量体として、複数種類を併用してもよい。
ニトリル基含有共重合体ゴム中における、その他の単量体の単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
【0032】
ニトリル基含有共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは10~200、より好ましくは50~200、さらに好ましくは100~150である。ニトリル基含有共重合体ゴムのムーニー粘度を上記範囲とすることにより、良好な成形性および一層優れた形状保持性を有する架橋性ゴム組成物を得ることができる。
【0033】
本発明のゴム混合液に含有される可塑剤は、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物である。本発明のゴム混合液は、このような可塑剤を含有することから、優れた成形性を有する架橋性ゴム組成物を得ることができ、優れたゴム弾性を有するゴム架橋物を得ることができる。
【0034】
エステル化合物を形成するジカルボン酸としては、下記一般式(1)で表されるジカルボン酸が挙げられる。
HOOCRCOOH (1)
(式中のRは炭素数2~10のアルキレン基を表し、COOHはカルボキシ基を表す。)
【0035】
式(1)中のRとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であってよいが、直鎖状のアルキレン基が好ましい。また、アルキレン基の炭素数は、好ましくは2~10であり、より好ましくは4~8である。
【0036】
エステル化合物を形成するジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸などが挙げられる。
【0037】
エステル化合物を形成するエーテル結合含有アルコールとしては、一価のアルコールが好ましい。また、エーテル結合含有アルコールの炭素数は、好ましくは4~10であり、より好ましくは6~8である。エーテル結合含有アルコールに含有されるエーテル結合の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~2である。
【0038】
エーテル結合含有アルコールの具体例としては、メトキシプロピルアルコール、エトキシエチルアルコール、プロポキシメチルアルコールなどの炭素数4でエーテル結合数1のアルコール;ジメトキシエチルアルコール、メトキシエトキシメチルアルコール(CHO-CO-CHOH)などの炭素数4でエーテル結合数2のアルコール;メトキシブチルアルコール、エトキシプロピルアルコール、プロポキシエチルアルコールなどの炭素数5でエーテル結合数が1のアルコール;ジメトキシプロピルアルコール、メトキシエトキシエチルアルコール(CHO-CO-COH)、ジエトキシメチルアルコールなどの炭素数5でエーテル結合数2のアルコール;ブトキシエチルアルコール、プロポキシプロピルアルコール、エトキシブチルアルコール、メトキシペンチルアルコールなどの炭素数6でエーテル結合数1のアルコール;ジメトキシブチルアルコール、メトキシエトキシプロピルアルコール(CHO-CO-COH)、ジエトキシエチルアルコールなどの炭素数6でエーテル結合数2のアルコール;ブトキシプロピルアルコール、プロポキシブチルアルコール、エトキシペンチルアルコール、メトキシヘキシルアルコールなどの炭素数7でエーテル結合数1のアルコール;ジメトキシペンチルアルコール、メトキシエトキシブチルアルコール(CHO-CO-COH)、メトキシプロポキシプロピルアルコール(CHO-CO-COH)などの炭素数7でエーテル結合数2のアルコール;ペントキシプロピルアルコール、ブトキシブチルアルコール、プロポキシペンチルアルコール、エトキシヘキシルアルコール、メトキシヘプチルアルコールなどの炭素数8でエーテル結合数1のアルコール;ブトキシエトキシエチルアルコール(CO-CO-COH)、ジプロポキシエチルアルコール、エトキシプロポキシプロピルアルコール(CO-CO-COH)、プロポキシエトキシプロピルアルコール(CO-CO-COH)、メトキシブトキシプロピルアルコール(CHO-CO-COH)、ジエトキシブチルアルコールなどの炭素数8でエーテル結合数2のアルコール;などが挙げられる。
【0039】
エステル化合物としては、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとを任意に組み合わせて得られるものを用いることができる。通常、モノエステル化合物およびジエステル化合物が用いられるが、好ましいのはジエステル化合物である。好ましいジエステル化合物の具体例としては、ジブトキシエチルアジペート、ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペートなどが挙げられ、特に好ましくはジ(ブトキシエトキシエチル)アジペートである。また、エステル化合物として、市販品を用いることも可能である。エステル化合物の市販品としては、アデカサイザーRS-107(アジピン酸エーテルエステル系可塑剤)ADEKA社製、BXA(ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート)大八化学社製、Proviplast 01422(アジピン酸ジブトキシエトキシエチル)Proviro社製、D931(アジピン酸ビス(2-ブトキシエチル))三菱ケミカル社製、Proviplast 0142(アジピン酸ジ(ブトキシエチル))Proviro社製、などが挙げられる。
【0040】
本発明のゴム混合液中の可塑剤の含有量は、ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、1~100重量部であり、好ましくは12~50重量部、より好ましくは15~40重量部、特に好ましくは15~30重量部である。可塑剤の含有量が少なすぎると、得られるゴム組成物の加工性(添加剤の混合容易性)が劣るため、得られる架橋性ゴム組成物の成形性に劣り、得られるゴム架橋物の引張応力が劣る。また、可塑剤の含有量が多すぎると、得られる架橋性ゴム組成物の形状保持性が劣る。
【0041】
本発明のゴム混合液は、老化防止剤をさらに含有することが好ましい。老化防止剤としては特に限定されないが、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール(アンテージBHT、川口化学工業社製)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(サンダント 2246、三新化学工業社製)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド(サンダント 103、三新化学工業社製)、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(イルガノックス1010、BASFジャパン製)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス1076、BASFジャパン製)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス1135、BASFジャパン製)、ヘキサメチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(イルガノックス259、BASFジャパン製)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(イルガノックス1520L、BASFジャパン製)などを用いることができる。
本発明のゴム混合液中の老化防止剤の含有量は、ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、好ましくは0.01~5重量部、より好ましくは0.1~3重量部、さらに好ましくは0.1~2重量部である。
【0042】
本発明のゴム混合液は、無機充填剤を含有してもよいし、含有しなくてもよいが、無機充填剤を含有する場合には、無機充填剤の含有量を、ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、1重量部以下とする必要がある。本発明のゴム混合液中の無機充填剤の含有量が0~1重量部の範囲であることにより、形状保持性に優れた架橋性ゴム組成物を得ることができる。無機充填剤の含有量としては、好ましくは0.8重量部以下、より好ましくは0.6重量部以下、さらに好ましくは0.4重量部以下、特に好ましくは0.2重量部以下であり、実質的に無機充填剤を含有しないことも好ましい。
【0043】
無機充填剤は、ゴムの補強または増量その他の機能向上を目的に通常用いられる無機材料であってよく、たとえば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどが挙げられる。また、特許文献1の特許請求の範囲に記載の無機充填剤も挙げることができる。
【0044】
本発明のゴム混合液は、ニトリル基含有共重合体ゴム、可塑剤および水以外の成分の含有量が、ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、さらに好ましくは2重量部以下、特に好ましくは1重量部未満である。ニトリル基含有共重合体ゴム、可塑剤および水以外の成分の含有量を上記範囲とすることにより、形状保持性に一層優れた架橋性ゴム組成物を得ることができる。ニトリル基含有共重合体ゴム、可塑剤および水以外の成分としては、上記した無機充填剤の他、乳化剤、凝固剤、老化防止剤などが挙げられる。
【0045】
本発明のゴム混合液は、ニトリル基含有共重合体ゴムを含有する共重合体ゴムラテックスを調製する工程、可塑剤を含有する可塑剤エマルジョンを調製する工程、および、得られた共重合体ゴムラテックスおよび得られた可塑剤エマルジョンを混合することにより、ゴム混合液を調製する工程、を含む製造方法により得られるものが好ましい。このような製造方法については後述する。
【0046】
本発明のゴム混合液の固形分濃度は、好ましくは10~40重量%であり、より好ましくは15~30重量%である。固形分濃度は、ゴム混合物を加熱することにより水分を蒸発させ、残った固形分を回収して、重量を測定することにより、算出できる。固形分濃度は、ゴム混合液を105~110℃程度で2時間以上加熱することにより水分を蒸発させ、残った固形分重量を加熱乾燥前のゴム混合液の重量で割り返すことで算出できる。
【0047】
<ニトリル基含有共重合体ゴム組成物>
本発明のニトリル基含有共重合体ゴム組成物は、上記したゴム混合液を凝固することにより得られるものであり、この構成を備えることから、形状保持性に優れた架橋性ゴム組成物を得ることができる。たとえば、ニトリル基含有共重合体ゴムおよび可塑剤を、ロールやニーダーなどの混合機を用いて、乾式混合することにより、ニトリル基含有共重合体ゴム組成物を調製した場合には、得られる架橋性ゴム組成物の形状保持性が劣るものとなる。
【0048】
ニトリル基含有共重合体ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは5~150、より好ましくは10~100、さらに好ましくは20~80である。ニトリル基含有共重合体ゴム組成物のムーニー粘度を上記範囲とすることにより、良好な成形性および一層優れた形状保持性を有する架橋性ゴム組成物を得ることができる。
【0049】
本発明のニトリル基含有共重合体ゴム組成物としては、ニトリル基含有共重合体ゴムおよび可塑剤を含有するゴム混合液を調製する工程、および、前記ラテックスを凝固させる工程を含む製造方法により得られるものが好ましい。このような製造方法については後述する。
【0050】
本発明のニトリル基含有共重合体ゴム組成物は、上記したゴム混合液を凝固させた後、得られた凝固物(含水クラム)を乾燥させて得られるものであることが好ましい。すなわち、本発明のニトリル基含有共重合体ゴム組成物の水分含有量は、好ましくは1.5重量%以下であり、より好ましくは1.0重量%以下であり、下限は特に限定されないが、0.05重量%以上であってよい。水分含有量は、ニトリル基含有共重合体ゴム組成物を105~110℃程度で2時間以上加熱することにより水分を蒸発させ、残った固形分重量を加熱乾燥前のニトリル基含有共重合体ゴム組成物の重量で割り返すことで算出できる。
【0051】
<ゴム混合液およびニトリル基含有共重合体ゴム組成物の製造方法>
本発明のニトリル基含有共重合体ゴム組成物を製造する方法としては、ニトリル基含有共重合体ゴムおよび可塑剤を含有するゴム混合液を調製する工程、および、前記ゴム混合液を凝固させる工程を含む製造方法が好ましい。
【0052】
上記の製造方法では、まず、ニトリル基含有共重合体ゴムおよび可塑剤を含有するゴム混合液を調製する工程を実施する。この工程では、上記した本発明のゴム混合液が得られる。
【0053】
ゴム混合液を調製する工程においては、ニトリル基含有共重合体ゴムを含有する共重合体ゴムラテックスおよび可塑剤を含有する可塑剤エマルジョンを混合することにより、ゴム混合液を調製することが好ましい。ラテックスに分散または溶解したニトリル基含有共重合体ゴムと、可塑剤エマルジョンに分散または溶解させた可塑剤とを混合することにより、形状保持性に優れた架橋性ゴム組成物を得ることができるゴム混合液を、容易に得ることができる。
【0054】
共重合体ゴムラテックスは、水およびニトリル基含有共重合体ゴムを含有する。共重合体ゴムラテックスのニトリル基含有共重合体ゴムの含有量(固形分濃度)は、好ましくは5~60重量%であり、より好ましくは10~50重量%である。
【0055】
可塑剤エマルジョンは、水および可塑剤を含有する。可塑剤エマルジョン中の可塑剤の含有量は、好ましくは10~80重量%であり、より好ましくは20~70重量%である。
【0056】
共重合体ゴムラテックスと可塑剤エマルジョンとの混合法としては、これらを十分均一に混合できる方法であれば限定はなく、回分式、連続式のいずれでもよい。
【0057】
ゴム混合液を調製する工程において、共重合体ゴムラテックスおよび可塑剤エマルジョンに加えて、老化防止剤を混合してもよい。老化防止剤は、共重合体ゴムラテックスおよび可塑剤エマルジョンとそのまま混合してもよいが、老化防止剤を含有する老化防止剤エマルジョンを調製した後、老化防止剤エマルジョンを共重合体ゴムラテックスおよび可塑剤エマルジョンと混合することが好ましい。
【0058】
本発明のニトリル基含有共重合体ゴム組成物は、共重合体ゴムラテックスと可塑剤エマルジョンと任意で老化防止剤とを十分に混合した後、得られた混合液を凝固することにより、製造することができる。凝固法に限定はないが、たとえば、メタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコールまたは塩析による方法が挙げられる。塩析による凝固には、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウムなど公知の凝固剤を使用することができる。凝固させて得られた凝固物を、水洗し、これにより得られた含水クラムを乾燥して、本発明のニトリル基含有共重合体ゴム組成物を製造してもよい。また場合によっては、遠心脱水をおこなってもよい。
【0059】
共重合体ゴムラテックスおよび可塑剤エマルジョンは、ニトリル基含有共重合体ゴムを含有する共重合体ゴムラテックスを調製する工程、および、可塑剤を含有する可塑剤エマルジョンを調製する工程を行うことにより、各々調製することが好ましい。また、老化防止剤を含有するエマルジョンを用いる場合には、老化防止剤エマルジョンを調製する工程をさらに行うことが好ましい。
【0060】
<可塑剤を含有する可塑剤エマルジョンの調製方法>
可塑剤エマルジョンは、たとえば、可塑剤および乳化剤を水に分散または溶解させることにより、調製することができる。得られる可塑剤エマルジョン中の乳化剤の含有量は、可塑剤の重量に対して、好ましくは1~20重量%、より好ましくは1.5~15重量%である。
【0061】
乳化剤としては、たとえば、オレイン酸カリウム、ロジン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどのノニオン界面活性剤;ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン界面活性剤などが挙げられ、共重合体ゴムラテックスの乳化重合に用いる乳化剤と同一のものも使用することができる。これらの乳化剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができ、たとえば、オレイン酸カリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを併用するなど、アニオン界面活性剤を2種類組み合わせて用いてもよい。
【0062】
<老化防止剤を含有する老化防止剤エマルジョンの調製方法>
老化防止剤エマルジョンは、たとえば、老化防止剤および乳化剤を水に分散または溶解させることにより、調製することができる。得られる老化防止剤エマルジョン中の乳化剤の含有量は、老化防止剤の重量に対して、好ましくは1~20重量%、より好ましくは1.5~15重量%である。
【0063】
乳化剤としては、たとえば、オレイン酸カリウム、ロジン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどのノニオン界面活性剤;ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン界面活性剤などが挙げられ、共重合体ゴムラテックスの乳化重合に用いる乳化剤と同一のものも使用することができる。
【0064】
<ニトリル基含有共重合体ゴムを含有する共重合体ゴムラテックスの調製方法>
共重合体ゴムラテックスは、たとえば、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体および共役ジエン単量体を含む単量体混合物を共重合させることにより、調製することができる。
【0065】
共重合の方法としては、特に限定されないが、工業的生産性の観点から乳化重合法が好ましい。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤に加えて、通常用いられる重合副資材を使用することができる。
【0066】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどの非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩とホルマリンとの重縮合物の塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩などのアニオン性乳化剤;α,β-不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β-不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテルなどの共重合性乳化剤;などが挙げられる。アニオン性乳化剤が塩化合物である場合は、金属塩であることが好ましく、アルカリ金属塩であることがより好ましい。これらの乳化剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、脂肪酸の塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびナフタレンスルホン酸塩とホルマリンとの重縮合物の塩が好ましく、脂肪酸の塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびナフタレンスルホン酸塩とホルマリンとの重縮合物の塩の少なくとも3種を組み合わせて用いることがより好ましい。乳化剤の添加量は、重合に用いる単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは2~4重量部である。
【0067】
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物;t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチルなどのアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとエチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウムなどの還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。更に、エチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム四水塩などのキレート剤、炭酸ナトリウムや硫酸ナトリウムなどのビルダーを併用することもできる。重合開始剤の添加量は、重合に用いる単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.01~2重量部、より好ましくは0.01~0.5重量部、特に好ましくは0.02~0.05重量部である。
【0068】
分子量調整剤としては、特に限定されないが、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;α-メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイドなどの含硫黄化合物などが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t-ドデシルメルカプタンがより好ましい。分子量調整剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.05~2.0重量部、より好ましくは0.1~1.5重量部である。
【0069】
乳化重合の媒体には、通常、水が使用される。水の量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは80~500重量部、より好ましくは80~300重量部である。
【0070】
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じて安定剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤などの重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
【0071】
また、得られたニトリル基含有共重合体ゴムについて、必要に応じて、ニトリル基含有共重合体ゴムの水素化(水素添加反応)を行ってもよい。この場合における、水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。水素化されたニトリル基含有共重合体ゴムのヨウ素価は、好ましく120以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは60以下、特に好ましくは30以下である。ニトリル基含有共重合体ゴムを水素化することにより、耐熱性、耐候性、耐オゾン性などを向上させることができる。ヨウ素価は、JIS K6235に準じて測定できる。
【0072】
なお、乳化重合の温度は、好ましくは0~70℃、より好ましくは5~30℃、特に好ましくは5~15℃である。
【0073】
以上のように単量体混合物を乳化重合し、重合停止剤を添加したり、空気または酸素を導入したり、重合系を冷却したりして、重合反応を停止する。
【0074】
重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノンや2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノンなどのハイドロキノン誘導体、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルなどの安定なフリーラジカルを含む化合物などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.01~4.0重量部である。
【0075】
<架橋性ゴム組成物>
本発明の架橋性ゴム組成物は、ニトリル基含有共重合体ゴム組成物および架橋剤を含有する。本発明の架橋性ゴム組成物は、上記したゴム混合液を凝固することにより得られるニトリル基含有共重合体ゴム組成物を含有するものであることから、形状保持性に優れており、架橋性ゴム組成物およびその成形体が、架橋前に変形することを抑制できるものである。
【0076】
架橋剤としては、特に限定されず、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤が挙げられるが、ニトリル基含有共重合体ゴムが、カルボキシル基を有する単量体単位を有する場合には、ポリアミン系架橋剤を用いることもできる。架橋剤としては、なかでも、様々な架橋成形方法を取り得るという点で硫黄系架橋剤が好ましい。
【0077】
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼノピン-2)、含リンポリスルフィド、高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物;などが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0078】
有機過酸化物系架橋剤としては、ジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ビス-(t-ブチル-ペルオキシ)-n-ブチルバレレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキシン-3、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、p-クロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシベンゾエートなどが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0079】
ポリアミン系架橋剤としては、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(-CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物および架橋時にその化合物の形態になるものが好ましい。その具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などの脂肪族多価アミン類;2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(o-クロロアニリン)などの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物などが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0080】
本発明の架橋性ゴム組成物中における、架橋剤の含有量は特に限定されないが、ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~5重量部である。
【0081】
架橋剤として硫黄系架橋剤を使用する場合は、架橋助剤として、亜鉛華、グアニジン系架橋促進剤、チアゾール系架橋促進剤、チウラム系架橋促進剤、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤などを併用することが好ましい。
【0082】
また、架橋剤として有機過酸化物系架橋剤を使用する場合は、架橋助剤として、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミドなどを併用することが好ましい。
【0083】
また、架橋剤としてポリアミン系架橋剤を使用する場合は、架橋助剤として、下記一般式(2)で表される化合物や、環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤、グアニジン系塩基性架橋促進剤、アルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤などの塩基性架橋促進剤を併用することが好ましい。
-NH-R (2)
(上記一般式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数5~12のシクロアルキル基である。)
【0084】
架橋助剤は、単独で使用してもよいし、また、複数種を併用してもよく、クレイ、炭酸カルシウム、シリカなどに分散させ、加工性を改良したものを使用してもよい。架橋助剤の使用量は特に限定されず、ゴム架橋物の用途、要求性能、架橋剤の種類、架橋助剤の種類などに応じて決めればよい。
【0085】
本発明の架橋性ゴム組成物は、可塑剤として、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物を含有するものであるが、該エステル化合物以外の可塑剤をさらに含有してもよい。また、本発明の架橋性ゴム組成物は、ゴム混合液が含有していた該エステル化合物に加えて、ゴム混合液を凝固した後に、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物をさらに添加することにより得られたものであってもよい。本発明の架橋性ゴム組成物中の可塑剤の含有量は、ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、好ましくは1~100重量部、より好ましくは10~80重量部、さらに好ましくは15~80重量部、特に好ましくは30~70重量部である。可塑剤の含有量が少なすぎると、架橋性ゴム組成物の成形性が劣り、得られるゴム架橋物のゴム弾性が劣るおそれがある。また、可塑剤の含有量が多すぎると、架橋性ゴム組成物の形状保持性が劣るおそれがある。本発明の架橋性ゴム組成物は、比較的多量の可塑剤を含有する場合であっても、形状保持性に優れる。本発明の架橋性ゴム組成物中の可塑剤の含有量は、ゴム混合液に含まれていた可塑剤、および、ゴム混合液を凝固させた後に任意で添加される可塑剤の合計量である。
【0086】
可塑剤(ただし、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物を除く)としては、特に限定されないが、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、アルキルスルホン酸エステル化合物類可塑剤、エポキシ化植物油系可塑剤などを用いることができる。具体例としては、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸イソノニルエステル、トリメリット酸混合直鎖アルキルエステル、ジペンタエリスリトールエステル、ピロメリット酸2-エチルヘキシルエステル、ポリエーテルエステル(分子量300~5000程度)、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸系のポリエステル(分子量300~5000程度)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸トリクレシル、セバシン酸ジブチル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、エポキシ化大豆油、ジヘプタノエート、ジ-2-エチルヘキサノエート、ジデカノエートなどが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0087】
本発明の架橋性ゴム組成物は、補強剤をさらに含有することができる。補強剤としては、たとえば、カーボンブラック、シリカなどが挙げられる。
【0088】
カーボンブラックとしては、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、オースチンブラック、グラファイトなどが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0089】
シリカとしては、石英粉末、珪石粉末などの天然シリカ;無水珪酸(シリカゲル、アエロジルなど)、含水珪酸などの合成シリカ;などが挙げられ、これらの中でも、合成シリカが好ましい。またこれらシリカはカップリング剤等で表面処理されたものであってもよい。
【0090】
本発明の架橋性ゴム組成物中の補強剤の含有量は、ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、好ましくは1~200重量部、より好ましくは15~150重量部、特に好ましくは30~100重量部である。
【0091】
また、本発明の架橋性ゴム組成物には、ニトリル基含有共重合体ゴムおよび可塑剤に加えて、ゴム分野において通常使用される配合剤、たとえば、炭酸カルシウム、タルクやクレイなどの充填材、酸化亜鉛や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、メタクリル酸亜鉛やアクリル酸亜鉛などのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸金属塩、共架橋剤、架橋助剤、架橋遅延剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、ジエチレングリコールなどの活性剤、カップリング剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。
【0092】
本発明の架橋性ゴム組成物には、ニトリル基含有共重合体ゴム以外のゴムを配合してもよい。
このようなゴムとしては、アクリルゴム、エチレン-アクリル酸共重合体ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴムなどが挙げられる。
【0093】
ニトリル基含有共重合体ゴム以外のゴムを配合する場合における、架橋性ゴム組成物中のニトリル基含有共重合体ゴム以外のゴムの配合量は、ニトリル基含有共重合体ゴム100重量部に対して、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0094】
本発明の架橋性ゴム組成物は、上記した各成分を好ましくは非水系で混合することで調製される。本発明の架橋性ゴム組成物を調製する方法に限定はないが、通常、架橋剤および熱に不安定な成分を除いた成分を、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダーなどの混合機で一次混練した後、オープンロールなどに移して架橋剤や熱に不安定な成分を加えて二次混練することにより調製できる。なお、一次混練は、通常、10~200℃、好ましくは30~180℃の温度で、1分間~1時間、好ましくは1分間~30分間行い、二次混練は、通常、10~90℃、好ましくは20~60℃の温度で、1分間~1時間、好ましくは1分間~30分間行う。
【0095】
また、このようにして得られる本発明の架橋性ゴム組成物は、配合物・ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が、好ましくは5~80、より好ましくは10~60、さらに好ましくは15~40である。架橋性ゴム組成物の配合物・ムーニー粘度を上記範囲とすることにより、良好な成形性および一層優れた形状保持性が得られる。
【0096】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明の架橋性ゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~1時間である。
【0097】
また、架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0098】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム混合液を用いて得られた架橋性ゴム組成物を架橋して得られるものであり、形状保持性に優れるとともに、常態物性に優れるものである。
【0099】
このため、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、ショックアブソーバシール、ロングライフクーラント(LLC)など冷却液の密封用シールであるクーラントシールやオイルクーラントシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置およびボールねじ等)用のシール、バルブおよびバルブシート、BOP(Blow Out Preventer)、プラターなどの各種シール材;インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、などの各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材、クラッチフェーシング材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することができる。これらの中でも、ロール、ベルト、ホースに好適に使用できる。さらにこれらの中でも、特にロールに好適である。
【実施例
【0100】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
【0101】
[単量体組成]
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、および、共役ジエン単量体単位を含有するゴム(ニトリル基含有共重合体ゴム)のアクリロニトリル単位の含有量を、JIS K6384に従い、セミミクロケルダール法により、ニトリル基含有共重合体ゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
【0102】
[重合転化率]
反応途中の重合反応液に適量の重合停止剤を加え、重合停止した重合反応液を強熱乾燥することにより、全固形分を求めた。そして、全固形分量から乳化剤のナトリウム塩、分子量調整剤、重合開始剤、および重合停止剤を合計した副資材固形分を引き、重合に用いた単量体混合物の全重量から未反応の単量体混合物の重量を引いた値に相当する補正された全固形分量(全固形分量―副資材固形分量)を、重合に用いた単量体混合物の全重量で除することにより重合転化率を算出した。なお、前述した以外の重合副資材は計算への影響が軽微であるため、今回の計算では考慮しなかった。
【0103】
[ポリマー・ムーニー粘度(ML1+4、100℃)]
ニトリル基含有共重合体ゴムのムーニー粘度(ポリマー・ムーニー粘度)をJIS K6300に従って、100℃で測定した。
【0104】
[共重合体ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)]
ニトリル基含有共重合体ゴム組成物のムーニー粘度(ポリマー・ムーニー粘度)をJIS K6300に従って、100℃で測定した。
【0105】
[架橋性ゴム組成物の配合物・ムーニー粘度(ML1+4、100℃)]
架橋性ゴム組成物のムーニー粘度(配合物・ムーニー粘度)をJIS K6300に従って、100℃で測定した。
【0106】
[コールドフロー、ホットフロー]
架橋性ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、60℃で20分間プレス成形した後、冷水にて20分間冷却をして厚さ2mmのシート状の架橋性ゴム組成物を得た。得られた架橋性ゴム組成物のシートをJIS K6251で規定のダンベル状3号形打ち抜き刃で打ち抜いてダンベル状3号形試験片を製作した。得られた試験片の長手方向の一端を固定して、23℃、または50℃の雰囲気に吊り下げ、自重による試験片の伸びからフロー性を評価した。フローはダンベル状試験片の中央部に予め記した間隔20mmの標線に対して伸びた長さを求めた。コールドフローは23℃で3日後、30日後に評価した。ホットフローは50℃で3時間後、24時間後に評価した。
【0107】
製造例1
反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部、オレイン酸カリウム0.2部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩2.2部、イオン交換水240部、アクリロニトリル37部、およびt-ドデシルメルカプタン0.15部を、この順に仕込んだ。次いで、反応器内部を窒素で置換した後、イソプレン15.75部、ブタジエン47.25部を添加し、反応器を5℃に冷却した。次いでクメンハイドロパーオキサイド0.05部、ならびに、適量の還元剤およびキレート剤を添加した。次いで、反応器を5℃に保ったまま内容物を攪拌し、仕込み全単量体に対する重合転化率が90%に達した時点で、反応器内へ2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル3.0部を添加して重合反応を停止させた後、重合反応液から未反応の単量体を除去することで、ニトリル基含有共重合体ゴムのラテックス(A-1)を得た。得られたニトリル基含有共重合体ゴムラテックス(A-1)の一部を採って、別の反応器に、塩化カルシウム(凝固剤)8部を溶解した凝固水300部を入れ、これを50℃で攪拌しながら、上記にて得られたラテックスを凝固水中へ滴下しながら重合体クラムを析出させた後、凝固水から重合体クラムを分取して水洗後、50℃で減圧乾燥してニトリル基含有共重合体ゴムを得た後、アクリロニトリル単位の含有量およびポリマー・ムーニー粘度(ML1+4、100℃)を測定した。測定した結果は、表-1に記載する。
【0108】
製造例2
反応器に仕込んだ各単量体の量を、アクリロニトリル50部、イソプレン22.5部、ブタジエン27.5部に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、ニトリル基含有共重合体ゴムラテックス(A-2)を得て、同様に評価した。測定した結果は、表-1に記載する。
【0109】
製造例3
反応器に仕込んだ各単量体の量を、アクリロニトリル37部、イソプレン0部、ブタジエン63部に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、ニトリル基含有共重合体ゴムラテックス(A-3)を得て、同様に評価した。測定した結果は、表-1に記載する。
【0110】
製造例4
反応器に仕込んだt-ドデシルメルカプタンの量を、1.0部に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、ニトリル基含有共重合体ゴムラテックス(A-4)を得て、同様に評価した。測定した結果は、表-1に記載する。
【0111】
製造例5
反応器に仕込んだt-ドデシルメルカプタンの量を、1.0部に変更した以外は製造例3と同様の操作を行い、ニトリル基含有共重合体ゴムラテックス(A-5)を得て、同様に評価した。測定した結果は、表-1に記載する。
【0112】
【表1】
表1に記載の「共役ジエン単位中の1,3-ブタジエン単位比率(wt%)」および「共役ジエン単位中のイソプレン単位比率(wt%)」は、それぞれ、重合に用いた1,3-ブタジエンおよびイソプレンの使用量から算出した理論値である。
【0113】
製造例6
反応器にイオン交換水45部、オレイン酸カリウム2.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部を入れ、撹拌しながら60℃に加温した後、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール50部を添加して1時間撹拌した後、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールの老化防止剤エマルジョンを得た。
【0114】
製造例7
反応器にイオン交換水30部、炭酸ナトリウム0.05部、およびオレイン酸カリウム1.2部を入れ、撹拌しながら50℃に加温した後、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤(商品名「アデカサイザー RS-107」、ADEKA社製)50部を添加して1時間撹拌した後、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤の可塑剤エマルジョンを得た。
【0115】
実施例1
製造例1で得られたニトリル基含有共重合体ゴムのラテックス(A-1)に、ラテックス中のゴム分100部に対して、製造例6で得られた老化防止剤エマルジョンを、老化防止剤エマルジョン中の4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールが0.8部になるように添加した後、製造例7で得られた可塑剤エマルジョンを、可塑剤エマルジョン中のアジピン酸エーテルエステル系可塑剤が20部になるように添加して、ゴム混合液を得た。
【0116】
次いで、別の反応器に、塩化カルシウム(凝固剤)8部を溶解した凝固水1500部を入れ、これを50℃で攪拌しながら、上記にて得られたゴム混合液を凝固水中へ滴下しながら重合体クラムを析出させた後、凝固水から重合体クラムを分取して水洗後、50℃で減圧乾燥して、ニトリル基含有共重合体ゴム組成物を得た。得られたニトリル基含有共重合体ゴム組成物の一部を採って、ニトリル基含有共重合体ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を測定した。測定した結果は、表-2に記載する。
【0117】
また、バンバリーミキサを用いて、得られたニトリル基含有共重合体ゴム組成物中のニトリル基含有共重合体ゴム100部に対し、SRFカーボンブラック(商品名「シーストS」、東海カーボン社製)60部、ステアリン酸1部、酸化亜鉛5部、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(可塑剤、商品名「DOP」、大八化学工業社製)30部を添加して混練し、次いで、混合物をロールに移して、粉末硫黄(325メッシュ)1.5部、ジベンゾチアジルジスルフィド(商品名「ノクセラーDM」、大内新興化学工業社製)2部を添加して混練することで、架橋性ゴム組成物を調製した。調製した架橋性ゴム組成物の配合物・ムーニー粘度(ML1+4、100℃)、コールドフローおよびホットフローを測定した。測定した結果は、表-2に記載する。
【0118】
実施例2
ニトリル基含有共重合体ゴムのラテックス中のゴム分100部に対する、可塑剤エマルジョン中のアジピン酸エーテルエステル系可塑剤の量を50部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ゴム混合液およびニトリル基含有共重合体ゴム組成物を得て、同様に評価した。
さらに、バンバリーミキサに添加したフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の量を0部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価した。
測定した結果は、表-2に記載する。
【0119】
実施例3
バンバリーミキサに添加したフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)をアジピン酸エーテルエステル系可塑剤に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
【0120】
実施例4
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-2)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
【0121】
実施例5
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-2)を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
【0122】
実施例6
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-3)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
【0123】
実施例7
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-3)を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
【0124】
実施例8
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-4)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
【0125】
実施例9
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-5)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
【0126】
比較例1
反応器に、塩化カルシウム(凝固剤)8部を溶解した凝固水1500部を入れ、これを50℃で攪拌しながら、製造例1で得られた共重合体ゴムラテックス(A-1)を凝固水中へ滴下しながら重合体クラムを析出させた後、凝固水から重合体クラムを分取して水洗後、50℃で減圧乾燥してニトリル基含有共重合体ゴムを得た。
【0127】
また、バンバリーミキサを用いて、得られたニトリル基含有共重合体ゴム100部に対し、SRFカーボンブラック(商品名「シーストS」、東海カーボン社製)60部、ステアリン酸1部、酸化亜鉛5部、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(可塑剤、商品名「DOP」、大八化学工業社製)30部、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤(商品名「アデカサイザー RS-107」、ADEKA社製)20部を添加して混練し、次いで、混合物をロールに移して、粉末硫黄(325メッシュ)1.5部、ジベンゾチアジルジスルフィド(商品名「ノクセラーDM」、大内新興化学工業社製)2部を添加して混練することで、架橋性ゴム組成物を調製した。調製した架橋性ゴム組成物の配合物・ムーニー粘度(ML1+4、100℃)、コールドフローおよびホットフローを測定した。測定した結果は、表-2に記載する。
【0128】
比較例1は系中に実施例1と等量の可塑剤が仕込まれているにも関わらず、配合物・ムーニー粘度は高い値を示した。しかし、コールドフロー、ホットフロー共に、短期間では1.0cm未満の変化で留まっているが、コールドフロー30日後、ホットフロー24時間後では共に試験片が切れ、測定不能となっていた。これは、ニトリル基含有共重合体ゴムに可塑剤を混ぜる際、バンバリーミキサの壁面に可塑剤分が付着し、仕込んだ可塑剤の全てがゴム中に入らなかったことによるものと推測される。また、配合物・ムーニー粘度が実施例1と比較して高いにも関わらず、コールドフロー試験、ホットフロー試験で試験片が切れたのは、バンバリーミキサでのゴムへの可塑剤混練では、可塑剤の分散が不均一となり、部分的に可塑剤分が多い箇所と少ない箇所ができ、可塑剤分が多い箇所ではよりムーニー粘度が低くなる為、その箇所が破断点となり、試験片が切れ測定不能になったものと推測される。
【0129】
比較例2
バンバリーミキサに添加したフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の量を50部、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤の量を0部に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
配合物・ムーニー粘度、コールドフローおよびホットフローは比較例1と同様の傾向を示した。
【0130】
比較例3
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-2)を用いた以外は、比較例1と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
配合物・ムーニー粘度、コールドフローおよびホットフローは比較例1と同様の傾向を示した。
【0131】
比較例4
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-2)を用いた以外は、比較例2と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
配合物・ムーニー粘度、コールドフローおよびホットフローは比較例1と同様の傾向を示した。
【0132】
比較例5
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-3)を用いた以外は、比較例1と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
配合物・ムーニー粘度は比較例1と同様の傾向を示し、コールドフローおよびホットフローでは比較例1と比較してもさらに悪化していることが確認できた。これは、ニトリル基含有共重合体ゴム中にイソプレン単位が含まれていないことで、ニトリル基含有共重合体ゴムのグリーン強度が低下していることに起因するものと推測される。
【0133】
比較例6
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-3)を用いた以外は、比較例2と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
配合物・ムーニー粘度、コールドフローおよびホットフローは比較例5と同様の傾向を示した。
【0134】
比較例7
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-4)を用いた以外は、比較例2と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
配合物・ムーニー粘度、コールドフローおよびホットフローは比較例5と同様の傾向を示した。これは基本的には比較例1と同様の現象によるものと推測されるが、ニトリル基含有共重合体ゴムのポリマー・ムーニー粘度が低いことから、試験片作製後早期に破断が生じ、コールドフロー3日後、ホットフロー3時間後で測定不能になったものと推測される。
【0135】
比較例8
共重合体ゴムラテックス(A-1)に代えて、共重合体ゴムラテックス(A-5)を用いた以外は、比較例2と同様の操作を行った。測定した結果は、表-2に記載する。
配合物・ムーニー粘度、コールドフローおよびホットフローは比較例5と同様の傾向を示した。これは基本的には比較例7と同様の現象によるものと推測されるが、ニトリル基含有共重合体ゴム中にイソプレン単位が含まれていないことから、ニトリル基含有共重合体ゴムのグリーン強度が低下していることも一因であると推測される。
【0136】
【表2】
【0137】
表2に示す結果から、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の限定された含有量を有するニトリル基含有共重合体ゴム、特定の可塑剤および水を含有するゴム混合液を調製した上で、このゴム混合液を凝固することによりニトリル基含有共重合体ゴム組成物を調製し、このニトリル基含有共重合体ゴム組成物を用いて架橋性ゴム組成物を調製することによって、常温で保管した場合だけでなく、高温に曝された場合であっても、形状保持性に優れる架橋性ゴム組成物が得られることが分かった(実施例1~9)。
一方、ゴム混合液を調製することなく、固形のニトリル基含有共重合体ゴム、可塑剤および架橋剤を混練して架橋性ゴム組成物を調製すると、得られる架橋性ゴム組成物は、室温で保管した場合であっても形状保持性に劣ることが分かった(比較例1~8)。