(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】アンダーランプロテクタを備える車体フレーム構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/02 20060101AFI20221227BHJP
B60R 19/24 20060101ALI20221227BHJP
B60R 19/56 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B62D21/02 Z
B60R19/24 N
B60R19/56
(21)【出願番号】P 2019049406
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】堤 道夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和駿
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144484(JP,A)
【文献】特開昭57-151467(JP,A)
【文献】特開2008-056182(JP,A)
【文献】特開2009-202619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/02
B60R 19/24
B60R 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に沿うウェブ、並びに該ウェブの上端と下端からそれぞれ車幅方向に延出される上部フランジ及び下部フランジによって断面コ字状に形成されるサイドフレームに、下方に延出されるステーを介してアンダーランプロテクタが取り付けられる車体フレーム構造であって、
前記ステーは、前記ウェブに取り付けられる取付部を有し、該取付部は車体前後方向の中間側に位置する内側端部を有するものであって、
前記上部フランジに、前記内側端部の上方に位置する補強プレートが取り付けられる、ことを特徴とするアンダーランプロテクタを備える車体フレーム構造。
【請求項2】
前記補強プレートは、前記上部フランジに沿う横板部と前記ウェブに沿う縦板部とを一体に連結して断面L字状に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のアンダーランプロテクタを備える車体フレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両同士が衝突した際、一方の車両が他方の車両の下に潜り込むことを防止するためのアンダーランプロテクタを備える車体フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば乗用車と衝突した際に乗用車が下に潜り込むのを防止するため、トラックの前方と後方には、突入防止装置(一般に、前方の装置はフロントアンダーランプロテクタと称し、後方の装置はリアアンダーランプロテクタと称する)を装着することが義務化されている。例えば特許文献1では、ステーを介して車両のフレームに取り付けられるアンダーランプロテクタについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでアンダーランプロテクタに対する強度試験は、保安基準が改正されて強化されることになり、アンダーランプロテクタが取り付けられる車体フレーム構造も含めてより高い強度が求められることになった。例えば、所定の負荷荷重が加わった際に許容されるリアアンダーランプロテクタの移動量を規定した強度試験においては、従来の負荷荷重に対して改正後は2倍の負荷を加えることとしている。また試験で使用される車体フレームは、従来は剛体フレームを使用可能であったが、改正後は実際の車両で使用される実フレームでの評価が求められている。
【0005】
このような改正後の強度試験の内容を踏まえつつ本発明者が検討を重ねたところ、負荷荷重を加えた際のアンダーランプロテクタの移動量は、サイドフレームの変形が大きく影響していることが見出された。
【0006】
この点につき、
図4~
図7を参照しながら説明する。
図4は、車幅方向に間隔をあけて配置された一対のサイドフレーム12と、各サイドフレーム12に取り付けられる一対のステー13と、これらのステー13に取り付けられるアンダーランプロテクタ14とを備える従来の車体フレーム構造を示している。また
図5(a)は、この車体フレーム構造を車体前後方向の後方から示した背面図であり、
図5(b)は、これを車幅方向の外方から示した側面図である。ここでサイドフレーム12は、車体前後方向に沿うウェブ12a、並びにウェブ12aの上端と下端からそれぞれ車幅方向に延出される上部フランジ12b及び下部フランジ12cによって断面コ字状に形成されている。またステー13は、ウェブ12aの外面に取付部13cを当て付けるとともにボルト等によって固定してサイドフレーム12に取り付けられている。
【0007】
このような車体フレーム構造に対する強度試験は、概ね
図4に示すような位置でアンダーランプロテクタ14に対して所定の負荷荷重Lを加え、その際のアンダーランプロテクタ14の移動量によって評価を行う。ここでアンダーランプロテクタ14に負荷荷重Lを加えると、サイドフレーム12にはステー13の長さに応じた曲げモーメントが作用するため、サイドフレーム12は下向きに撓むように曲げられることになる。ここでウェブ12aは、ステー13が取り付けられている取付部13cにおいては、ウェブ12aとステー13が重なって二重板になっており、それ以外の部位では一枚板となっているため、それらの移行部分で剛性が変化する。このためサイドフレーム12は、
図6(a)に破線で示すように、剛性が変化する部位を起点として下方に曲げられることになる。
【0008】
また強度試験においては、
図4に示すようにアンダーランプロテクタ14の車幅方向端部にも負荷荷重Lを加えるため、サイドフレーム12は、車幅方向の内方に向かっても曲げられることになる。ここで
図7(a)は、車幅方向の外方からステー13の取付部13cの周辺を示した側面図であり、
図7(b)は、上方から取付部13cの周辺を示した平面図である。
図7(b)に示すように、アンダーランプロテクタ14の端部に負荷荷重Lが加わる際、サイドフレーム12は、図中に破線で示すように、取付部13cにおける車体前後方向の中間側に位置する内側端部13dが車幅方向の内方に向けて移動するため、内側端部13dを起点としてウェブ12aが車幅方向の内方に向けて曲げられることになる。そして耐えうる限度を超えるとウェブ12aが変形し、この変形をきっかけにサイドフレーム12の下向きの曲げも更に進むため、アンダーランプロテクタ14は、荷重が加わる方向に大きく移動してしまうことになる。
【0009】
なお上述した特許文献1は、ステーを補強することによってアンダーランプロテクタの移動量の抑制を図るものであって、サイドフレームの変形に起因するアンダーランプロテクタの移動量を抑えるものではなく、この問題の解決は未だ困難な状態にあった。
【0010】
本発明はこのような問題を解決することを課題とするものであって、サイドフレームの変形に伴うアンダーランプロテクタの移動量の増大を抑制することができる車体フレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車体前後方向に沿うウェブ、並びに該ウェブの上端と下端からそれぞれ車幅方向に延出される上部フランジ及び下部フランジによって断面コ字状に形成されるサイドフレームに、下方に延出されるステーを介してアンダーランプロテクタが取り付けられる車体フレーム構造であって、前記ステーは、前記ウェブに取り付けられる取付部を有し、該取付部は車体前後方向の中間側に位置する内側端部を有するものであって、前記上部フランジに、前記内側端部の上方に位置する補強プレートが取り付けられる、ことを特徴とする。
【0012】
そして前記補強プレートは、前記上部フランジに沿う横板部と前記ウェブに沿う縦板部とを一体に連結して断面L字状に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車体フレーム構造によれば、サイドフレームの強度を高めることができるため、アンダーランプロテクタの移動量を抑制することができる。またサイドフレームの仕様は従来から大きく変える必要がないため、現行の金型を流用して費用を抑えることが可能となる。更に、サイドフレームにおける強度の向上は、補強すべき部分に限定して行っているため、コストアップや質量の増大を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従う車体フレーム構造の一実施形態をフロントとリアに適用したトラックの側面図である。
【
図2】
図1におけるリアに適用した車体フレーム構造をより詳細に示した図であって、
図2(a)は車幅方向の外方から示した側面図であり、
図2(b)は車幅方向の内方から示した斜視図である。
【
図3】補強プレートを固定するための他の手段について示した図である。
【
図4】従来の車体フレーム構造について示した斜視図である。
【
図5】従来の車体フレーム構造をより詳細に示した図であって、
図5(a)は車体前後方向の後方から示した背面図であり、
図5(b)は車幅方向の外方から示した側面図である。
【
図6】従来の車体フレーム構造に対して強度試験を行った際のサイドフレームの変形状況について示した図であって、
図6(a)は車幅方向の外方から示した側面図であり、
図6(b)は車幅方向の内方から示した側面図である。
【
図7】従来の車体フレーム構造に対して強度試験を行った際のステーの取付部周辺における変形状況について示した図であって、
図7(a)は車幅方向の外方から示した側面図であり、
図7(b)は上方から示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に従う車体フレーム構造の一実施形態について説明する。なお、本明細書等における「上」「下」「前」「後」「左」「右」とは、車体フレーム構造を適用した車両において、運転席に着座した者を基準とした場合の向きをいう。また図面は、本実施形態を説明するにあたって必要な部分を優先して示していて、説明が特段不要な部分は省略している。
【0016】
図1は、本発明に従う車体フレーム構造を前方と後方に適用した車両100について示している。なお、以下の説明においては後方に設けた車体フレーム構造1について説明するが、前方に設ける場合も、基本的には後方の車体フレーム構造1と同様の構成が採用される。
【0017】
図2に示すように本実施形態の車体フレーム構造1は、車体前後方向に沿って延在するとともに車幅方向に間隔をあけて設けられる一対のサイドフレーム2と、各サイドフレーム2に取り付けられる一対のステー3と、車幅方向に延在するとともにこれらのステー3に取り付けられるリアアンダーランプロテクタ4(以下、単に「アンダーランプロテクタ4」と称する)と、補強プレート5とを備えている。
【0018】
サイドフレーム2は、車体前後方向に沿って延在するウェブ2aと、ウェブ2aの上端から車幅方向の内方に向けて延出される上部フランジ2bと、ウェブ2aの下端から車幅方向の内方に向けて延出される下部フランジ2cとを有していて、ウェブ2a、上部フランジ2b、及び下部フランジ2cによって断面コ字状をなすように形成されている。図示したように本実施形態のウェブ2aは、その上端と下端は前方から後方に向かって略水平に延在するものであり、ウェブ2aの上端と下端からそれぞれ延出される上部フランジ2bと下部フランジ2cも、前方から後方に向かって略水平に延在している。
【0019】
ステー3は、上方が幅広であって下方に向かって幅狭になる断面コ字状のステー本体部3aと、ステー本体部3aの後端に設けられる取付プレート部3bとを備えている。本実施形態のステー3は、ウェブ2aにおける車幅方向の外面に対してステー本体部3aの上端部をボルトとナットで固定することにより、サイドフレーム2に取り付けられる。なお、ウェブ2aに固定されるステー本体部3aの上端部を取付部3cと称し、取付部3cにおける車体前後方向の中間側に位置する端部を内側端部3dと称する。
【0020】
アンダーランプロテクタ4は、中空の矩形状をなすように形成されていて、
図4に示す従来のものと同様に、一対のステー3に架け渡されるようにして取り付けられる。本実施形態におけるアンダーランプロテクタ4は、
図2(a)に示すように、取付プレート部3bに対してボルトとナットで固定されるように構成されている。
【0021】
補強プレート5は、車体前後方向に沿って水平方向に延在する横板部5aと、車体前後方向に沿って水平方向に延在する垂直方向に延在する縦板部5bとを一体に連結して断面L字状に形成されるものである。このような補強プレート5は、
図2に示すように車幅方向の内方から、横板部5aが上部フランジ2bの下面に重なるようにしつつ縦板部5bはウェブ2aの車幅方向内面に重なるようにして、サイドフレーム2に取り付けられる。なお本実施形態ではリベットを使用して、横板部5aは上部フランジ2bに固定し、縦板部5bはウェブ2aに固定している。また補強プレート5をサイドフレーム2に取り付ける際の車体前後方向の位置は、
図2(a)に示すように、横板部5aと縦板部5bの略中央が内側端部3dの上方に位置するところとしている。
【0022】
このような車体フレーム構造1においては、補強プレート5によって、サイドフレーム2における内側端部3dが位置する周辺の強度を高めることができる。ここでウェブ2aは、ウェブ2aと取付部3cが重なる部位は二重板になっており、それ以外の部位では一枚板になっているため、それらの移行部分である内側端部3dの周辺では剛性が変化することになる。従って車体フレーム構造1において、
図4に示す従来の車体フレーム構造と同様の強度試験を行った場合、サイドフレーム2には、内側端部3dの周辺を起点として下方に曲げられるように力が作用するものの、補強プレート5によってその曲がりが抑制されるため、アンダーランプロテクタ14が前方に向けて移動する量を抑えることができる。
【0023】
また、
図4に示すようにしてアンダーランプロテクタ4に対して所定の負荷荷重Lを加えた場合、サイドフレーム2は、
図7を示しながら説明したように、取付部3cの内側端部3dを起点として車幅方向の内方に向けて曲げられるような力も受けることになる。一方、本実施形態においては、補強プレート5によって、サイドフレーム2における内側端部3dが位置する周辺の強度を高めているため、このような車幅方向の内方に向けての曲がりも抑制することができる。従って、従来の車体フレーム構造で問題視されていた、車幅方向の内方に向けての曲がりに起因するサイドフレーム12の下向きの曲げも抑制されるため、アンダーランプロテクタ14の移動量を抑えることができる。
【0024】
なお、本実施形態の車体フレーム構造1では、補強プレート5を追加しつつ、サイドフレーム2の仕様は従来のものと大きく変わることがないため、現行の金型を流用して費用を抑えることができる。またサイドフレーム2における強度の向上は、補強プレート5によって補強すべき部分に限定して行っているため、コストアップや質量の増大を最小限に抑えることができる。
【0025】
以上、本発明に従う車体フレーム構造の一実施形態について説明したが、本実施形態は一例に過ぎず、本発明には特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。
【0026】
例えば上述した実施形態において、補強プレート5はリベットによってサイドフレーム2に固定されていたが、
図3に示すように、ボルトやナットを用いて固定するようにしてもよいし、溶接によって固定してもよい。また上述した補強プレート5は、横板部5aと縦板部5bで断面L字状に形成されるものであったが、横板部5aのみとしてもよい。また縦板部5bのみで補強してもよい。更に補強プレート5は、上述したようにサイドフレーム2に対して車幅方向の内方から取り付けられるものに限られず、車幅方向の外方から取り付けられるものでもよい。
【符号の説明】
【0027】
1:車体フレーム構造
2:サイドフレーム
2a:ウェブ
2b:上部フランジ
2c:下部フランジ
3:ステー
3a:ステー本体部
3b:取付プレート部
3c:取付部
3d:内側端部
4:アンダーランプロテクタ(リアアンダーランプロテクタ)
5:補強プレート
5a:横板部
5b:縦板部
100:車両