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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20221227BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L21/302 101D
H05H1/46 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021524472
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032428
(87)【国際公開番号】W WO2022044216
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 一也
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-198983(JP,A)
【文献】特開2014-220360(JP,A)
【文献】国際公開第2008/044633(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記第一の高周波電力が第一の期間と前記第一の期間に隣接する第二の期間と振幅が0である第三の期間を有する第一の波形により変調されるとともに前記第二の高周波電力が期間Aと期間Bを有する第二の波形により変調される場合、前記期間Aの各々の前記第二の高周波電力が前記第一の期間と前記第二の期間に供給されるように前記第二の高周波電源を制御する制御装置をさらに備え、
前記第二の期間の振幅は、前記第一の期間の振幅より小さく、かつ0より大きく、
前記期間Aの振幅は、前記期間Bの振幅より大きいことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記第一の高周波電力が第一の期間と前記第一の期間に隣接する第二の期間を有する第一の波形により変調されるとともに前記第二の高周波電力が期間Aと期間Bを有する第二の波形により変調される場合、前記期間Aの各々の前記第二の高周波電力が前記第一の期間と前記第二の期間に供給されるように前記第二の高周波電源を制御する制御装置をさらに備え、
前記第一の高周波電源は、パルス変調されていない高周波電力を供給する高周波電源とパルス変調された高周波電力を供給する高周波電源を具備し、
前記第二の期間の振幅は、前記第一の期間の振幅より小さく、かつ0より大きく、
前記期間Aの振幅は、前記期間Bの振幅より大きいことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記第一の高周波電力が第一の期間と前記第一の期間に隣接する第二の期間を有する第一の波形により変調されるとともに前記第二の高周波電力が期間Aと期間Bを有する第二の波形により変調される場合、前記期間Aの各々の前記第二の高周波電力が前記第一の期間と前記第二の期間に供給されるように前記第二の高周波電源を制御する制御装置をさらに備え、
前記第二の高周波電源は、パルス変調されていない高周波電力を供給する高周波電源とパルス変調された高周波電力を供給する高周波電源を具備し、
前記第二の期間の振幅は、前記第一の期間の振幅より小さく、かつ0より大きく、
前記期間Aの振幅は、前記期間Bの振幅より大きいことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置において、
前記制御装置は、前記期間Aの各々の前記第二の高周波電力が前記第一の期間の一部と前記第二の期間の一部に供給されるように前記第二の高周波電源を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項に記載のプラズマ処理装置において、
前記期間Bの振幅は0であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置において、
前記期間Aは、前記第一の期間より長いことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項に記載のプラズマ処理装置において、
前記期間Bの振幅は0であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項に記載のプラズマ処理装置において、
前記制御装置は、前記第二の高周波電力が前記第三の期間に供給されないように前記第二の高周波電源を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置において、
前記第二の高周波電力の反射電力を抑制する整合器をさらに備え、
前記制御装置は、前記第一の期間から前記第二の期間への移行後または前記第二の期間から前記第一の期間への移行後、前記第二の高周波電力の整合が行われるように前記整合器を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置において、
前記期間Aは、前記第二の期間より長いことを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance:ECR)方式のプラズマエッチング装置では、半導体素子に入射するイオンを加速するために、RF(Radio Frequency)高周波電力を使用している。
【0003】
近年、半導体デバイスの集積度の向上に伴い、エッチングにおける形状制御性とウエハ面内均一性の両立が要求されている。高精度なプラズマエッチングを実現する技術の一つとして、プラズマが強プラズマ状態と弱プラズマまたはプラズマ消滅状態とを周期的に形成するように、プラズマ形成手段に供給するエネルギーの大きさを調整するプラズマエッチング方法が、特許文献1に示されている。
【0004】
また特許文献2には、時間変調されたソース電源(マイクロ波)に対し、同期させたRFバイアス電力を印加し、時間変調されたマイクロ波に対し位相を変調させたRFバイアス電力を印加する手法が開示されている。
【0005】
さらに、プラズマ生成用ソース電源がパルスオン・オフの二つの状態だけでなく、パルスハイ・パルスロー・オフの三つ(あるいはそれ以上)の区間に分けてパルス印加できるようにした技術もある。特許文献3は、パルスロー区間にRFバイアス電力を印加することにより、粗密差があるパターン垂直エッチングを実現する方法を開示している。
【0006】
さらに特許文献4には、マイクロ波出力値をパルスオン区間での二値以上の出力値とすることで、エッチング速度分布を均一とし、かつ、等方性エッチングを抑制可能とするエッチングを実現する方法が開示されている。
【0007】
これらすべての従来技術は、プラズマを生成するソース電源をパルス化して、低密度プラズマ、低解離エッチングを目指し、プラズマ種・プラズマ密度を考慮してRFバイアス電力を印加して、適切なイオン量、イオンエネルギーでウエハに引き込んでエッチング形状や選択比、ウエハ面内均一性を目指すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭59-47733号公報
【文献】特開2015-115564号公報
【文献】特開2017-69542号公報
【文献】特開2020-17565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、パルス化したプラズマ生成用のソース電力を印加することにより低解離でのエッチングを実現できるが、従来技術ではさまざまな課題がある。
【0010】
例えば、単にソース電力をパルス化してもRFバイアス電力が連続波の場合、プラズマ失火時にはRFバイアス電力を印加できない。これに対しプラズマの失火を防ぐために、パルス化したソース電力のオフ期間を短く制限し、パルス繰り返し周波数を大きくすると、プラズマ密度が小さくならないという不具合がある。
【0011】
一方、マイクロ波電力とRFバイアス電力をパルス化して同期させた場合、エッチングレートが小さくなるという問題がある。かかる場合、ソースパワーであるマイクロ波電力とRFバイアス電力は、共にオフの期間がある程度存在することになり、これによりエッチングレートが低下する。またソースパワーのパルスオン時間、デューティー比次第では、エッチング速度が非常に遅くなる。
【0012】
またマイクロ波電力のパルス発振と同じタイミングでRFバイアス電力を印加する場合、RFバイアス電力とのマッチングが不十分な状態で、エッチングが行われる可能性がある。このため、異常放電や各電源の反射波異常により、エッチングの面内均一性の悪化や再現性の低下を引き起こすおそれがある。
【0013】
これに対して、マイクロ波電力をパルス発振した後、プラズマの安定時間が過ぎるまで待ってからRFバイアス電力を印加することも一案である。これによりエッチング速度分布が均一となり、面内均一性が向上する。しかし、かかる技術によればRFバイアス電力のゼロ区間があるため、サイドエッチングが進むことからエッチングの形状不良を完全には避けられない。
【0014】
さらにマイクロ波電力のパルス発振をハイ・ローに2値化して、マイクロ波のロー区間にRFバイアスを印加することもできる。しかし、この技術の問題点は、マイクロ波のロー区間ではプラズマ中のデポジション成分がほとんどなくサイドエッチングが発生しやすいことに加え、プラズマ失火を阻止できる限界までマイクロ波電力を印加したプラズマのもとで、RFバイアス電力の整合をとることが困難になるということである。
【0015】
以上より、マイクロ波電力をパルス発振して低プラズマ密度でエッチングを行った場合でも、エッチングの形状制御性を維持し、エッチングレートを低下させない技術が求められている。
【0016】
本発明は、異なるマイクロ波電力を発振可能なマイクロ波電源を用いて、エッチング形状を高精度に制御するプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、代表的な本発明にかかるプラズマ処理装置の一つは、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記第一の高周波電力が第一の期間と前記第一の期間に隣接する第二の期間と振幅が0である第三の期間を有する第一の波形により変調されるとともに前記第二の高周波電力が期間Aと期間Bを有する第二の波形により変調される場合、前記期間Aの各々の前記第二の高周波電力が前記第一の期間と前記第二の期間に供給されるように前記第二の高周波電源を制御する制御装置をさらに備え、
前記第二の期間の振幅は、前記第一の期間の振幅より小さく、かつ0より大きく、
前記期間Aの振幅は、前記期間Bの振幅より大きいことにより達成される。
代表的な本発明にかかるプラズマ処理装置の一つは、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記第一の高周波電力が第一の期間と前記第一の期間に隣接する第二の期間を有する第一の波形により変調されるとともに前記第二の高周波電力が期間Aと期間Bを有する第二の波形により変調される場合、前記期間Aの各々の前記第二の高周波電力が前記第一の期間と前記第二の期間に供給されるように前記第二の高周波電源を制御する制御装置をさらに備え、
前記第一の高周波電源は、パルス変調されていない高周波電力を供給する高周波電源とパルス変調された高周波電力を供給する高周波電源を具備し、
前記第二の期間の振幅は、前記第一の期間の振幅より小さく、かつ0より大きく、
前記期間Aの振幅は、前記期間Bの振幅より大きいことにより達成される。
代表的な本発明にかかるプラズマ処理装置の一つは、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記第一の高周波電力が第一の期間と前記第一の期間に隣接する第二の期間を有する第一の波形により変調されるとともに前記第二の高周波電力が期間Aと期間Bを有する第二の波形により変調される場合、前記期間Aの各々の前記第二の高周波電力が前記第一の期間と前記第二の期間に供給されるように前記第二の高周波電源を制御する制御装置をさらに備え、
前記第二の高周波電源は、パルス変調されていない高周波電力を供給する高周波電源とパルス変調された高周波電力を供給する高周波電源を具備し、
前記第二の期間の振幅は、前記第一の期間の振幅より小さく、かつ0より大きく、
前記期間Aの振幅は、前記期間Bの振幅より大きいことにより達成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、異なるマイクロ波電力を発振可能なマイクロ波電源を用いて、エッチング形状を高精度に制御するプラズマ処理装置を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置である、ECRプラズマエッチング装置の略構成図である。
図2図2は、第1実施形態における、(a)マイクロ波電力、(b)プラズマ密度、(c)プラズマインピーダンス、(d)RFバイアス電力のタイミングチャートを示す図である。
図3A図3Aは、第1実施形態における、(a)マイクロ波電力、(b)ガス種Aのプラズマ密度、(c)ガス種Bのプラズマ密度のタイミングチャートを示す図である。
図3B図3Bは、(a)図3Aにおけるプラズマ密度の拡大図、(b)ウエハのパターン形状の拡大断面図、(c)ウエハのパターン形状の拡大断面図である。
図4A図4Aは、第1実施形態における、(a)マイクロ波電力、(b)ガス種Aのプラズマ密度、(c)ガス種Bのプラズマ密度のタイミングチャートを示す図である。
図4B図4Bは、(a)図4Aにおけるプラズマ密度の拡大図、(b)ウエハのパターン形状の拡大断面図、(c)ウエハのパターン形状の拡大断面図である。
図5図5は、第3実施形態における、(a)パルス化したマイクロ波電力、(b)パルス化したRFバイアス電力のタイミングチャートの例を示した図である。
図6図6は、第4実施形態における、(a)マイクロ波電力、(b)プラズマ密度、(c)プラズマインピーダンス、(d)RFバイアス電力のタイミングチャートを示す図である。
図7図7は、第5実施形態における、(a)マイクロ波電力、(b)プラズマ密度、(c)プラズマインピーダンス、(d)RFバイアス電力のタイミングチャートを示す図である。
図8A図8Aは、比較例における、(a)マイクロ波電力、(b)プラズマ密度、(c)プラズマインピーダンス、(d)RFバイアス電力、(e)Vppのタイミングチャートを示す図である。
図8B図8Bは、比較例における、(a)マイクロ波電力、(b)プラズマ密度、(c)プラズマインピーダンス、(d)RFバイアス電力、(e)Vppのタイミングチャートを示す図である。
図9図9は、第6実施形態における、(a)マイクロ波電力、(b)プラズマ密度、(c)プラズマインピーダンス、(d)RFバイアス電力、(e)Vppのタイミングチャートを示す図である。
図10図10は、第7実施形態における、(a)マイクロ波電力、(b)プラズマ密度、(c)プラズマインピーダンス、(d)RFバイアス電力、(e)RFバイアス反射波、(f)Vppのタイミングチャートを示す図である。
図11A図11Aは、第8実施形態におけるECRプラズマエッチング装置の略構成図である。
図11B図11Bは、図11AのECRプラズマエッチング装置に供給されるマイクロ波電力の波形を示す図である。
図11C図11Cは、図11AのECRプラズマエッチング装置に供給されるRFバイアス電力の波形を示す図である。
図12図12は、ECRプラズマエッチング装置により処理されるウエハのエッチング形状を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態にかかる、ECR方式のマイクロ波プラズマエッチング装置(以下、プラズマ処理装置1とする)の縦断面の概略構成図である。プラズマ処理装置1における、処理室、試料台、試料等の各部は、概略的に円筒や円柱や円板等の軸対称形状を有する。
本明細書中で、「切り替え時をまたいで電力が印加される」とは、該切り替え時の前から電力の印加が開始され、該切り替え後までその電力の印加が続くことをいい、例えば期間Aの各々の第二の高周波電力が、第一の高周波電力における第一の期間と第二の期間に供給されることなどをいう。
【0021】
(プラズマ処理装置の構成)
図1で、プラズマ処理装置1の真空容器101内部の処理室122の下部には、真空排気装置119が接続されている。また、処理室122の内部上部には、シャワープレート102及び石英天板103が配置されている。シャワープレート102は、複数の孔を有している。ガス供給装置120から供給されるプラズマエッチング処理用のガスを、シャワープレート102の孔を通じて処理室122内に導入する。シャワープレート102の上には、石英天板103が配置され、石英天板103との間にガス供給用の間隙が設けられている。石英天板103は、上方からの電磁波を透過させ、処理室122の上方を気密に封止する。
【0022】
石英天板103の上には、空洞共振部104が配置されている。空洞共振部104の上部は開口しており、垂直方向に延在する垂直導波管と電磁波の方向を90度曲げる屈曲部を兼ねた導波管変換器からなる導波管105が接続されている。導波管105等は、電磁波を伝播する発振導波管であり、導波管105の端部には、チューナー107を経て、プラズマ生成用のマイクロ波電源106が接続されている。
【0023】
第一の高周波電源であるマイクロ波電源106はプラズマ生成用の電源であり、制御部123からの制御に基づいて電磁波(第一の高周波電力)を発振する。本実施形態のマイクロ波電源106は、2.45GHzのマイクロ波発振が可能である。第一の高周波電力は、ハイ区間TH(第一の期間)とロー区間TL(第一の期間に隣接する第二の期間)とを交互に繰り返す第一の波形により変調される。
【0024】
マイクロ波電源106から発振されたマイクロ波は、導波管105を伝播し、空洞共振部104、石英天板103、シャワープレート102を経由して処理室122内に伝播する。処理室122の外周には、磁場発生コイル109が配置されている。磁場発生コイル109は複数のコイルからなっており、処理室122に磁場を形成する。マイクロ波電源106から発振された高周波電力は、磁場発生コイル109により形成された磁場とECRとの相互作用により、処理室122内に高密度プラズマ121を生成する。
【0025】
処理室122の下方には、石英天板103に対向して試料台110が配置されている。試料台110は、試料であるウエハ111を載置した状態で保持する。
【0026】
試料台110は材質としてはアルミやチタンからなる。試料台110上面には誘電体膜112を有する。試料台110の誘電体膜112の上面には、アルミナセラミックス等による溶射膜が配置されている。
【0027】
また、誘電体膜112内部にはウエハ111を静電吸着するための導電体膜(電極)113、114が設置され、直流電圧(図示しない)を印加することにより、ウエハ111を静電吸着することができる。さらに試料台110の導電体膜113、114には、第二の高周波電源であるRFバイアス電源117から、第二の高周波電力(以後、RFバイアスと記述)が印加される。第二の高周波電力は、オン区間BON(期間A)とオフ区間BOF(期間B)とを繰り返す第二の波形により変調される。
【0028】
RFバイアス電源117にはマッチングボックス(整合器)115が接続され、これによりRFバイアスの整合がとられている。プラズマ密度がマイクロ波のパルス状の発振により変わり、プラズマインピーダンスが高速に変動してもRFバイアスの整合がなされるように、マッチングボックス115は機能する。より具体的に、マッチングボックス115は、固体素子による高速整合、プラズマ負荷(プラズマインピーダンス)が急激に変化する期間を無効とし、それ以外の期間を整合有効範囲とする整合区間の設定、プラズマ(負荷)の乱れを無効とする整合の固定、プラズマ(負荷)の予測による整合の適切化などを行い、数ミリ秒レベルでの整合を達成している。
【0029】
RFバイアス電源117は、イオン引込み用の高周波電力を発生し、試料台110へ供給する。RFバイアス電源117もRFバイアスパルスユニット118からのパルスに基づいて、パルス変調されたRFバイアスを発生する。
【0030】
なお、本実施形態のRFバイアス電源117において、RFバイアス周波数は特に限定されないが、例えば周波数は400kHzを用いることができる。
【0031】
高周波RFバイアスにおける電圧の最大値と最小値の差(Vピークトウピーク:以下、Vppと略す)をモニタするため、RFバイアス給電ライン上に電圧モニタ(不図示)を設置している。
【0032】
マイクロ波電源106にはマイクロ波パルスユニット108が接続されている。マイクロ波パルスユニット108からのオン信号により、マイクロ波電源106がマイクロ波を設定された繰り返し周波数でパルス変調することができる。マイクロ波電源106から出力される高周波電力を、マイクロ波電力という。
【0033】
なお、このマイクロ波電源106は、50ワット~2000ワットまでの範囲で発振でき、かつパルス発振したときの応答性を確保して精度よく発振するために、マグネトロン方式のマイクロ波電源ではなく、ソリッドステート方式のマイクロ波電源が用いられている。
【0034】
制御部123はプラズマエッチング装置の制御装置であり、マイクロ波電源106、RFバイアス電源117に接続されて、第一の高周波電力及び第二の高周波電力の出力を制御する。
【0035】
図示していないが、これ以外にも制御部123は、ガス供給装置120、真空排気装置119、直流電源116等にも電気的に接続されて、これらを制御する。
【0036】
制御部123は、図示しない入力手段による入力設定(レシピともいう)に基づいて、マイクロ波電源106のハイ電力、マイクロ波電源106のロー電力、RFバイアス電源117のハイ電力、RFバイアス電源117のロー電力、マイクロ波パルスユニットでのパルスオン・オフのタイミング、およびRFバイアス電源117のオン・オフの繰り返し周波数やデューティー比、RFバイアス電源117のデュレイ時間等、マイクロ波電源106やRFバイアス電源117のパラメータを制御する。
【0037】
またこれ以外にも、制御部123は、エッチングを実施するためのガスの流量、処理圧力、コイル電流、試料台温度、エッチング時間等、エッチングパラメータを制御する。
【0038】
(プラズマ処理装置の動作)
エッチング処理を開始するにあたり、処理室122内へウエハ111が搬送される。試料台110にウエハ111を吸着させた後、レシピに基づいて、エッチングガスがガス供給装置120からマスフローコントロ-ラ(図示省略)を介して、石英天板103と石英シャワープレート102の間を通過して、石英シャワープレート102のガス孔より処理室122に導入される。さらに真空容器101内を所定の圧力とし、マイクロ波電源106の発振により処理室122内にプラズマ121を発生させる。またRFバイアス電源117からRFバイアスを出力し、プラズマ121からウエハ111へイオンを引き込むことでエッチング(プラズマ処理)が進行する。エッチングガスやエッチングにより発生した反応生成物は、排気装置119から排気される。
【0039】
本実施形態において、シャワープレート102、試料台110、磁場発生コイル109、真空排気装置119、およびウエハ111等は、処理室122の中心軸に対し同軸に配置されている。したがって、エッチングガス、プラズマ、飽和イオン電流、および反応生成物は、それぞれ同軸な分布をもつようになり、その結果、エッチングレートに関して軸対称分布に均一性を向上させている。
【0040】
ここで、マイクロ波パルスのパラメータと、RFバイアスのパラメータを以下のように設定する。
マイクロ波電源106のハイ電力P1:600ワット(50-2000ワットの範囲で変更可)、
マイクロ波電源106のロー電力P2:150ワット(20-1600ワットの範囲で変更可)、
マイクロ波電力のハイ・ロー周波数F1:500ヘルツ、
マイクロ波電力のハイ・ロー周期T1=1/F1(秒)、
マイクロ波電力のハイ・ローデューティ比D1:40%、
マイクロ波電力のハイ区間TH:1ミリ秒、
マイクロ波電力のロー区間TL:1ミリ秒、
マイクロ波電力のオン・オフ周波数F2:100ヘルツ、
マイクロ波電力のオン・オフ周期:T2=1/F2(秒)、
マイクロ波電力のオン・オフデューティ比D2:80%、
マイクロ波電力のオン時間T3=T2・D2、
マイクロ波電力のオン周波数F3(=1/T3):125ヘルツ、
(ただし、マイクロ波電力のハイ・ロー周波数F1は、マイクロ波電力のオン周波数F3の倍数となっていること。マイクロ波電力のハイ区間THの開始時を基準点PSTとする。)
RFバイアスのオン電力:100ワット(10-500ワットの範囲で変更可)、
RFバイアスのオフ電力:0ワット
RFバイアスのハイ・ロー周期TB(=T1):2ミリ秒、
RFバイアスの周波数FB1(=1/TB):500ヘルツ(10-5000ヘルツの範囲で変更可)、
RFバイアスのオン区間BON:1ミリ秒、
RFバイアスのオフ区間BOF:1ミリ秒、
RFバイアスのデューティー比:30%(1-100%の範囲で変更可)、
RFバイアスのディレイ時間TD:0.6ミリ秒、
RFバイアスのディレイRD(=TD/T1):30%、
(ただし、マイクロ波電力のオン時間以外は、RFバイアスを使用しない。)
【0041】
以上のパラメータを設定した際に、マイクロ波電力のハイ区間THからマイクロ波電力のロー区間TLの切り替え時をまたぐ間に、RFバイアスを印加したときのシーケンスを図2に示す。
【0042】
図2において、マイクロ波電力(a)のグラフは201、プラズマ密度(b)のグラフは202、プラズマインピーダンス(c)のグラフは204、RFバイアス(d)のグラフは205で示している。
【0043】
この例においてエッチングで高い形状制御性を得るためには、パルス時間範囲、マイクロ波のパワー範囲、エッチングに使用するガス種に制限がある。
【0044】
エッチングガス種については二種類以上のガスを混合した混合ガスが望ましく、かかる場合デポジション用の堆積性ガスと、エッチャントとなるガスの混合ガスを使用するとさらに好ましい。本実施形態では、エッチャント用のガスとしての塩素ガス(流量100ml/秒)と、デポジション用のガスとしてのCHFガス(流量10ml/秒)の混合ガスを用いる。
【0045】
上記のような混合ガスを用いることなく、単体のエッチャントガスでエッチングされた反応生成物が再付着するような条件であっても問題ない。例えばCFガスでシリコンをエッチングする場合は、エッチャント用のガスをCFガスとして、デポジション用のガスをシリコンエッチングしたときのシリコン系の反応生成物とみなせば、二種類混合ガスを用いた場合と同様の効果が得られる。
【0046】
次に、マイクロ波のパワー範囲について、マイクロ波のロー電力P2(第二の期間の振幅)は、マイクロ波のハイ電力P1(第一の期間の振幅)よりも小さく、且つ0より大きい。ここで、マイクロ波のハイ電力P1とマイクロ波のロー電力P2との差が小さく、例えば20パーセント以下なら、プラズマ密度変化幅が小さくマイクロ波パワー変動に対するプラズマ密度の遅れがほとんどないために、エッチング形状の効果が得られない。
【0047】
これとは逆に、マイクロ波のハイ電力P1とマイクロ波のロー電力P2の差が大きく、例えばプラズマ密度で7.5×1016(m-3)を上回るプラズマが、ハイ電力P1が1600ワットであり、ロー電力P2がプラズマ失火寸前の50ワット以下で生成されるときには、RFバイアスの整合が正しく行うことが困難になる。あるいは、ハイ電力P1とロー電力P2の差が大きいと、ハイ区間からロー区間へ移行する時間を考慮しなければならないため、プラズマ密度が図2のグラフ202通りに変化しないという問題が発生する。
【0048】
概略、マイクロ波のハイ電力P1の範囲は50ワットから2000ワットであり、マイクロ波のロー電力P2の範囲は20ワットから1600ワットであるときに、ハイ電力P1に対するロー電力P2が20%以上であるように、ハイ電力P1とロー電力P2との差を定めることが望ましい。
【0049】
マイクロ波電力ハイ・ロー周波数F1およびマイクロ波電力ハイ・ローデューティー比D1について説明する。マイクロ波電力ハイ区間THとマイクロ波電力ロー区間TLのマイクロ波パワーの変化に対して、プラズマ密度はいくらかの遅れ時定数をともなって追従する。マイクロ波パワーの変化に対して、プラズマ密度が一定に飽和する時間、またはマイクロ波電力がオンからオフになったとき、それに追従してプラズマが密度低下し失火するいわゆるアフターグロー時間は、約0.2から5ミリ秒程度である。
【0050】
それ以上、マイクロ波電力ハイ・ロー周期T1を短く、マイクロ波電力ハイ・ロー周波数F1を大きくすると、マイクロ波電力のハイとローの高速繰り返しに対し、プラズマ密度が追従できず、プラズマが安定せずプラズマ密度は飽和することなく、プラズマ密度の増減を繰り返す。その結果として、プラズマ密度は中間値付近で小さく増減を繰り返すこととなる。
【0051】
これは、プラズマ密度の立ち上りの際にRFバイアスを適切に印加するという観点からエッチング形状の精度向上が得られにくく、またパルスRFバイアスのジッタを招き、RFバイアス整合の難易度が増大することからも現実的ではない。
【0052】
これとは逆に、マイクロ波電力ハイ・ロー周期T1を長く、マイクロ波電力ハイ・ロー周波数F1を小さくすると、マイクロ波電力のハイ区間THとマイクロ波電力のロー区間TLとの遷移区間で、プラズマ密度が変化する区間がマイクロ波電力ハイ・ロー周期T1に対して十分短くなる。そのためエッチング形状の精度向上が期待できない。
【0053】
以上のことから、マイクロ波電力ハイ・ロー周波数F1は、おおむね200ヘルツ~5000ヘルツとし、マイクロ波電力ハイ・ローデューティー比D1は10%から90%とすることが望ましい。また、制御部123は、第一の期間から第二の期間への移行後または第二の期間から第一の期間への移行後、RFバイアス電力の整合が行われるように、マッチングボックス115を制御して、RFバイアス電力の反射電力を抑制すると好ましい。
【0054】
つぎに、RFバイアス周波数FB1については、マイクロ波電力ハイ・ロー周波数F1と同じとして問題ない。ただし、RFバイアス電力の期間A(オン区間BON)における振幅は、期間B(オフ区間BOF)における振幅(好ましくはゼロである)よりも大きい。RFバイアスの印加タイミングは、図2のグラフ202下側のハッチング領域で、マイクロ波電力ハイ区間THからマイクロ波電力ロー区間TLに遷移し、プラズマ密度の立ち下る区間206までに、RFバイアスが適切に(RFバイアスの反射波がRFバイアス電力の5%以下で)印加されていることが重要である。
【0055】
図2(d)に示すように、RFバイアスの印加を、マイクロ波電力ハイ区間TH終了時から時間TAだけ先行して行う。換言すれば、制御部123が、期間Aの各々の第二の高周波電力が、第一の期間の一部と第二の期間の一部に供給されるように、RFバイアス電源117を制御する。この場合の時間TAを設定するにあたっては、RFバイアス整合動作中やRFバイアスがランプ中でないこと、さらにこの区間でエッチングが進んでいることを考慮することが好ましい。
【0056】
図2の例では、時間TAをマイクロ波電力ハイ区間THの40%としているが、実際にはエッチング形状の調整によって定められる。例えばエッチングレートを増やし、高密度プラズマ下でのエッチングを進めたい場合、時間TAを図の例に比べて伸ばすことができる。逆に低密度プラズマ下でエッチングを進めたい、サイドエッチングが十分におさえられている場合には、RFバイアスオン時間やRFバイアスデューティー比を伸ばして、マイクロ波電力ロー区間TLでRFバイアスを印加することができる。
【0057】
図3Aに、上記のシーケンスで、それぞれ種類の違うガスでエッチングを行った時における、プラズマ密度の変化を示した。図3Bに、プラズマ密度の変化を拡大して示すとともに、ある時刻でのエッチング形状を模式的に示した。
【0058】
上記エッチング条件で、マイクロ波電力(a)がグラフ301のようにマイクロ波電力ハイ区間THとマイクロ波電力ロー区間TLを繰り返す際の、エッチャント用のガス種A(塩素)のプラズマ密度(b)をグラフ302、デポジション用のガス種B(CHF)のプラズマ密度(c)をグラフ303に示している。
【0059】
マイクロ波電力ハイ区間THからマイクロ波電力ロー区間TLに切り替わると、ただちにプラズマ密度は低下しはじめるが、図3B(a)に示すように、応答時間がありいくらかの時定数の遅れを伴ってプラズマ密度は低下する。その後プラズマ電力ロー区間TLのプラズマロー電力に相当するプラズマ密度で、グラフ302,303は漸近安定する。
【0060】
2種類のガス、特にデポジション用のガスとエッチャント用のガスを混合して使用する場合は、エッチャント用のガス種A(塩素)のプラズマ密度は実線グラフ302のように変化し、デポジション用のガス種B(CHF)のプラズマ密度は点線グラフ303のように変化する。エッチャント用のガスとデポジション用のガスのそれぞれのプラズマ密度時定数には差があり、おおむねエッチャント用のガスによるプラズマ307に比べて、デポジション用のガスによるプラズマ308の密度の方が時定数は大きい(平衡状態になるまで時間がかかる)。
【0061】
したがって図3B(a)に示すハッチング領域の期間304(時刻305から時刻306の間)、エッチャント用のガスによるプラズマよりも、デポジション用のガス種B(CHF)によるプラズマの方が比率でいうと多くなっている。これは、この短い期間だけデポジション用のガス種Bを多く供給してデポジションリッチになっていることと同様である。
【0062】
したがって、この期間304にRFバイアスを印加していないと、パターンのサイドに必要以上にデポジションがついてしまい、過度にテーパ形状になるだけではなく、パターン底部にイオンが入射せず垂直方向のエッチングが進行しない。一方、この期間304に適切な量の(例えば50ワットの)RFバイアスを印加することで、垂直方向のエッチングを確保しつつ、サイドエッチングを完全に抑え、あるいは適切な分だけ側壁保護膜310を調整し、垂直なエッチング形状を得ることが可能となる。図3B(b)に時刻305の際のプラズマエッチング状態を示し、図3B(b)に時刻306の際のプラズマエッチング状態を示す。
【0063】
これに対し、この期間304にエッチャント用のガスとデポジション用のガスの比率を変えて、デポジションリッチにしてエッチングを構築しても同じ効果があるともいえる。しかし、ミリ秒レベルの短い期間だけガスを変えることは現実的ではなく、また選択比や均一性など、他のエッチング性能に与える影響が非常に大きいため調整が難しくなる。
【0064】
本実施形態によれば、従来のエッチングのパルスパラメータ方式である、例えばプラズマが安定するまで待ってRFバイアスを印加する方式や、マイクロ波電力のハイ・ロー区間の切り替わり直後から印加する方式に、マイクロ波電力ハイ区間THとマイクロ波電力ロー区間TLの切り替え時をまたいでRFバイアスを印加することを追加するのみで、サイドエッチングを抑え形状を垂直にすることができる。このため、他のエッチング性能に大きな影響を与えることがない。
【0065】
[第2実施形態]
図4Aは、図3Aの例とは逆に、マイクロ波電力ロー区間TLからマイクロ波電力ハイ区間THの切り替え時をまたいでRFバイアスを印加したときの各ガスのプラズマ密度のグラフを示し、図4Bは、プラズマ密度の変化を拡大して示すとともに、エッチング形状を概略的に示したものである。
【0066】
ここでは、第1実施形態のプラズマ処理装置1を用い、さらにエッチングガス、マイクロ波やRFバイアス電力、マイクロ波パルスパラメータ等も共通としている。第1実施形態と異なるのは、RFバイアスディレイ時間TDを1.6ミリ秒、RFバイアスディレイRDを80%と設定した点である。
【0067】
図4Aに示すように、マイクロ波電力ロー区間TLからマイクロ波電力ハイ区間THに切り替わると、プラズマ密度は上昇し始め、やがて飽和する。
【0068】
本実施形態では、エッチャント用のガス種A(塩素)のプラズマ密度はグラフ302のように変化し、デポジション用のガス種B(CHF)のプラズマ密度はグラフ303のように変化する。図4B(a)のハッチング領域の期間401(時刻402から時刻403の間)、エッチャント用のガス種A(塩素)のプラズマの方が、デポジション用のガス種Bのプラズマよりも、高い密度となっている。
【0069】
この期間401にRFバイアスオンすることにより、多くのエッチャントである塩素イオンがRFバイアスで加速され、塩素イオンはパターン底部に入射する。その結果垂直なエッチングが進み、形状パターン403における狭い領域での抜け性能が向上する。しかしその一方、若干サイドエッチングが進むという特性もある。図4B(b)に時刻402の際のプラズマエッチング状態を示し、図4B(b)に時刻403の際のプラズマエッチング状態を示す。
【0070】
従来のプラズマエッチングで、図12Aに示すようなサイドエッチング形状が得られるならば、マイクロ波電力ハイ区間THからマイクロ波電力ロー区間TLへの切り替え時をまたいでRFバイアスを印加することにより、図12Bに示すエッチング形状を得られる。
【0071】
これとは逆に、従来のプラズマエッチングで、図12Cに示すようにテーパのサイドエッチング形状が得られるならば、マイクロ波電力ロー区間TLからマイクロ波電力ハイ区間THへの切り替え時をまたいでRFバイアスを印加する方式をとることが望ましい。
【0072】
(第3実施形態)
図5は、マイクロ波電源から、マイクロ波のハイ電力P1、マイクロ波のロー電力P2に加えて、マイクロ波電力のオフ電力P0=0の3ステージでのパルス発振を可能とした場合のシーケンスにおいて、マイクロ波パルスのパラメータおよび範囲を示した図である。マイクロ波電力(a)の変化をグラフ501に示し、RFバイアスの変化(b)をグラフ502に示す。この例では、マイクロ波電力は、ハイ区間TH(第一の期間)と、ロー区間TL(第二の期間)と、振幅ゼロのオフ区間(T2-T3:第三の期間)とを有する。
【0073】
マイクロ波パルスのパラメータは、マイクロ波のハイ電力P1、マイクロ波電力のロー電力P2、マイクロ波電力ハイ・ロー周波数F1、マイクロ波電力ハイ・ローデューティー比D1(=TH/T1)、マイクロ波電力オン・オフ周波数F2、マイクロ波電力オン・オフデューティー比D2(=T3/T2)の6つである。
【0074】
これらによってマイクロ波電力ハイ・ロー周期(T1)、マイクロ波電力オン・オフ周期(T2)が決まり、またマイクロ波電力オン時間(T3)とマイクロ波電力オン周波数(F3)が決まる。
【0075】
グラフ501に示すマイクロ波電力は、オフの状態からオンの状態に切り替わった後、複数回ハイ電力(P1)とロー電力(P2)の出力を繰り返し、その後オフ(P0)の状態に戻る。このような出力を実施するために、マイクロ波電力オン周波数をF3とし、nを自然数としたときに、F1>F3とし且つF1=n×F3と設定することが必要である。
【0076】
なお、nが1の場合にもエッチングは可能であるが、その場合のマイクロ波電力は、F1=1×F3=F3であるため、マイクロ波電力のオフとハイとローの3ステージの単純繰り返しとなる。しかし、この例では第1実施形態のようにマイクロ波電力ハイ区間THとマイクロ波電力ロー区間TLの切り替え時をまたいでRFバイアスを印加しても十分な効果は得られず、RFバイアスの整合の観点から制御が難しくなるため、nは2以上とすることが好ましい。
【0077】
図5において、グラフ502は、マイクロ波電力に応じたRFバイアスのパルスパラメータを示す。基本的には第1実施形態と同じであるが、異なるのはマイクロ波電力オン時間T3以外(すなわち第三の期間)では、RFバイアスを印加しないという原則に従い、グラフ502の点線に示すようにRFバイアスの印加を行わない(RFバイアスの振幅をゼロとする)点である。
【0078】
マイクロ波電力オン時間T3以外でRFバイアスの印加を中断することにより、エッチング(レート)の面内均一性の改善という効果が得られる。上記実施形態で設定された形状制御性向上のため設定したパルスパラメータが、面内均一性に悪影響を及ぼすことはありうる。形状制御性向上と面内均一性を両立するため、マイクロ波電力の印加を、図5に示すような3ステージで行う方式とする。
【0079】
本実施形態のECR方式プラズマエッチング装置においては、印加されるマイクロ波電力の平均パワーに依存して、プラズマエッチングにより生成される反応生成物の面内分布の偏りと、プラズマ処理室内分布によってエッチングレートの分布に凹凸が生じる。これを矯正するために、マイクロ波電力オン・オフデューティー比を調整してエッチングレート分布、面内均一性を最良になるよう調整するものである。
【0080】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について説明する。図6は、発振されるマイクロ波電力をハイ電力P1とロー電力P2の2値化したことに加えて、印加されるRFバイアスもハイ電力P3、ロー電力P4と2値化した状態で示す、図2と同様な図である。ここで、マイクロ波電力(a)のグラフは601、プラズマ密度(b)のグラフは602、プラズマインピーダンス(c)のグラフは604、RFバイアス(d)のグラフは605で示している。
【0081】
RFバイアスのパラメータは、RFバイアスのハイ電力P3、RFバイアスハイデューティー比RHD(=BON/TB)、RFバイアスハイディレイHDL(基準点PSTからハイ電力P3の立ち上がりまでの時間)、RFバイアスのロー電力P4、RFバイアスローデューティー比RLD(=BOF/TB)、RFバイアスローディレイLDL(基準点PSTからロー電力P4の立ち下がりまでの時間)、の6つである。本実施形態では、RFバイアスのハイ電力P3が印加される期間A(オン区間BON)は第一の期間(ハイ区間TH)よりも長く、また第二の期間(ハイ区間TL)よりも長い。
【0082】
マイクロ波電力のパラメータとして、マイクロ波のハイ電力P1を600ワット、マイクロ波のロー電力P2を150ワット、RFバイアスのオン電力を100ワット、マイクロ波電力ハイ・ロー周期T1を2ミリ秒、マイクロ波電力ハイ・ロー周波数F1を500ヘルツ、マイクロ波電力ハイ区間THを1ミリ秒とし、RFバイアスハイ・ロー周波数を500ヘルツ、RFバイアスハイデューティー比RHDを70%、RFバイアスローデューティー比RLDを30%、RFバイアスハイディレイHDLを50%、RFバイアスローディレイLDLを20%としたときに印加されるRFバイアスの変化は、グラフ604のようになる。
【0083】
RFバイアスのパラメータの制限は特にない。ただし、マイクロ波電力のパルスパラメータと同じように、RFバイアスもハイ区間とロー区間を繰り返す場合、つまりRFバイアスの1サイクル内にRFバイアスオフがない場合には、“RFバイアスハイデューティー比RHD“と”RFバイアスローデューティー比RLD“の和が100%になっていなければならず、RFバイアス各デューティー比とRFバイアス各デュレイが適切なパーセンテージになっていなければならない。
【0084】
図6に示す例では、RFバイアスハイディレイHDLが50%であり、RFバイアスハイデューティー比RHDが70%であるから、その和は120%となり、さらにRFバイアスローディレイLDLが20%であり、RFバイアスローデューティー比RLDの30%を加算すると、元のRFハイディレイとなる。
【0085】
ここで、マイクロ波電力ハイ区間THからマイクロ波電力ロー区間TLへの切り替えと、マイクロ波電力ロー区間TLからマイクロ波電力ハイ区間THへの切り替えのいずれも、RFバイアスハイ電力のオン区間内で行っている。この効果の一つは、上記実施形態を使ってサイドとテーパのエッチング形状のバランスをとることができることにあり、もう一つの効果は、詳細を後述するが、図9に示すようにVppの変動をできるだけ抑制することができることにある。
【0086】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。図7は、図6と同様な図である。図7において、第4実施形態と同じRFバイアスの6つのパラメータを用いて、マイクロ波電力ハイ区間THからマイクロ波電力ロー区間TLへの切り替えのタイミングでRFバイアスのハイ電力P3を印加し、同時にマイクロ波電力ロー区間TLからマイクロ波電力ハイ区間THへの切り替えタイミングで、RFバイアスのロー電力P4を印加している。このとき供給されるRFバイアスの変化をグラフ704で示す。ここでは簡略化して、RFバイアスのハイ電力P3とRFバイアスのロー電力P4の大きさを同じとしている。すなわち、RFバイアスは、ゼロとP3との間でパルス状に繰り返し変化する。
【0087】
ここでは、マイクロ波電力のパラメータとして、マイクロ波のハイ電力P1を600ワット、マイクロ波のロー電力P2を150ワット、RFバイアスのオン電力P3を100ワット、マイクロ波電力ハイ・ロー周期T1を2ミリ秒、マイクロ波電力ハイ・ロー周波数F1を500ヘルツ、マイクロ波電力ハイ区間THを1ミリ秒とし、RFバイアスハイデューティー比RHDを30%、RFバイアスローデューティー比RLDを35%、RFバイアスハイディレイHDLを35%、RFバイアスローディレイLDLを90%としている。
【0088】
この場合、“RFバイアスハイデューティー比“と”RFバイアスローデューティー比“の和が100%という制限はない。
【0089】
本実施形態では、プラズマ密度が増加、減少しているタイミングのみ選択してRFバイアスを印加する方式である。本実施形態は、極端なエッチング制御、例えば、パターンの側壁には完全にデポジション膜を形成したいが、パターンの底部のエッチングを確実に進めたい場合、あるいはエッチング面内分布の均一性よりも、デポジションとエッチングを短時間で繰り返すサイクルエッチングを進めたい場合等に使用すると好ましい。
【0090】
(比較例)
比較例について説明する。図8A,8Bは、図7と同様な図であるが、Vppを(e)に追加している。上述した実施形態と同様に、マイクロ波電力ハイ区間THとマイクロ波電力ロー区間TLとがパルス状に交互に繰り返されるようにマイクロ波電力を供給する方式であるが、第1比較例として示す図8Aにおいては、グラフ801で示すようにRFバイアスが連続波(一定)である。この時の試料台上における電圧のVppの変化を、グラフ802により示している。
【0091】
一方、第2比較例として示す図8Bにおいては、グラフ803で示すようにマイクロ波電力ハイ区間THの開始と同時にRFバイアスのハイ電力を印加し、マイクロ波電力ロー区間TLの開始と同時にRFバイアスのロー電力を印加する。この時の試料台上における電圧のVppの変化を、グラフ804により示している。
【0092】
グラフ801に示すように、連続波のRFバイアスを印加すると、プラズマインピーダンスの増減に対応してVppが増減する。連続波のRFバイアスでは、RFバイアス整合も任意タイミング(逐次に)おこなわれるので、反射波もプラズマインピーダンスの増減に応じて発生するため、Vppの変動はグラフ802よりもさらに大きく変動するおそれがある。
【0093】
次に、図8Bに示すように、マイクロ波電力ハイ区間THの開始と同時にRFバイアスのハイ電力を印加し、マイクロ波電力ロー区間TLの開始と同時にRFバイアスのロー電力を印加する方式では、プラズマ密度及びプラズマインピーダンスの増減に対して、RFバイアスはグラフ803に示すように変化するので、マイクロ波電力ハイ区間THの後半における、RFバイアスのハイ区間のVppと、マイクロ波電力ロー区間TLの後半における、RFバイアスのロー区間のVppはほぼ等しくなっている。
【0094】
しかし、マイクロ波電力ロー区間TLに切り替わった瞬間に、RFバイアスの大きさを変化させることは、RFバイアスの反射波とVppの変動にとってかなりの影響が生じる。影響の一つは、RFバイアスの変動と整合動作の競合により、整合ポイントを見つけられない、あるいは整合と逆の方向の動作になってしまうことがあり、それにより通常の整合完了時間より余分に時間がかかることがある。その結果、試料台に適切にRFバイアス、Vppが印加されない恐れがあるということである。したがって、マイクロ波電力のハイ・ロー切り替えにまたがって、RFバイアスを印加することが好ましい。
【0095】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。図9は、図8Bと同様な図であり、マイクロ波電力、RFバイアスと、Vppとの関係を示すシーケンスを示した図である。マイクロ波電力(a)のグラフは901、プラズマ密度(b)のグラフは902、プラズマインピーダンス(c)のグラフは903、RFバイアス(d)のグラフは904、Vpp(e)のグラフは905で示している。
【0096】
グラフ904に示すように、RFバイアスは、マイクロ波電力ロー区間TLからマイクロ波電力ハイ区間THに切り替える前にロー電力からハイ電力に変更され、またマイクロ波電力ハイ区間THからマイクロ波電力ロー区間TLに切り替わった後に、ハイ電力からロー電力に変更されている。
【0097】
RFバイアスの増加によりVppは大きくなるが、プラズマ密度は既に安定しており、反射波はほとんど現れない。その後、マイクロ波電力ロー区間TLからマイクロ波電力ハイ区間THに切り替わると、プラズマ密度が上昇し、逆にプラズマインピーダンスは減少する。よってVppが低下し、プラズマインピーダンスが安定するとともにVppも安定することになる。
【0098】
次に、マイクロ波電力ハイ区間THからマイクロ波電力ロー区間TLに切り替わると、インピーダンスの上昇に伴いVppも上昇するが、上昇途中にRFバイアスがロー電力に切り替わるため、Vppは低下に転ずる。RFバイアスの整合態様によって若干変化するが、Vppの変動はグラフ905に示すようになる。具体的には、マイクロ波電力ハイ区間TH・マイクロ波電力ロー区間TLの切り替えごとに、若干Vppは増加、減少の挙動を示すが、Vppの変化の方向は同じであり、Vppの変動幅は、図8A、図8Bの方式と比較し非常に小さいものとなる。
【0099】
Vppの変動幅が大きい状態でエッチングを進めると、以下のような問題が発生する。問題の一つはエッチング処理の再現性、安定性に関わる。具体的には、マイクロ波電力とRFバイアスの印加タイミングの差で、Vppが大きく変動することでエッチング性能差を招来し、ひいては機差の要因となる。
【0100】
もう一つの問題は、エッチング形状の平坦度、ラフネスに関わる。RFバイアスのVppを大きく変動させながらエッチングを進めると、パターン側壁やパターン底面へのイオン入射が時間軸に沿ってバラつき、パターン荒れや、場合によってはスカロッピング(段付き)のようなエッチング形状不良が発生することはあり、エッチング処理されたウエハより形成された素子の電気性能を悪化させるおそれがある。本実施形態によれば、かかる不具合を抑制できる。
【0101】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。図10は、図2と同様な図であるが、(e)にRFバイアス反射波の変化を示し、(f)にVppの変化を示している。図10を参照して、マッチングボックス115において行われるRFバイアスの整合方法について説明する。
【0102】
本実施形態では、マイクロ波電力ハイ区間THからマイクロ波電力ロー区間TLに移行する前から、すでにRFバイアスは印加されている。
【0103】
しかし、RFバイアスを開始した直後の区間は、RFバイアスの設定で整合有効期間には入っておらず、その結果RFバイアスの整合動作は行われない。マイクロ波電力のハイ電力印加に応じてプラズマ密度は飽和(安定)領域に近づくが、グラフ1004で示すようにRFバイアスの反射波が多少生じてしまう。グラフ1005は、試料台にかかる400KHzのRFバイアスの実効的なVppの変化を示す。RFバイアスの印加を開始した直後の区間は、プラズマ密度が最も高いため、グラフ1001で示すようにプラズマインピーダンスは最も低く、RFバイアスのVppは小さい。RFバイアスの反射波とRFバイアス電力のランプを考慮すると、Vppが徐々に上がってちょうど安定した領域でマイクロ波電力ハイ区間THが終了する。
【0104】
その後、マイクロ波電力ハイ区間THからマイクロ波電力ロー区間TLに切り替わるが,RFバイアスの印加は維持される。この切り替え直後に、プラズマ密度は低下しグラフ1001で示すようにプラズマインピーダンスが大きくなると、Vppはそれに伴って上昇する。この上昇中のインピーダンスに対して、RFバイアスの整合をとるように設定する。
【0105】
グラフ1001で示すようにプラズマインピーダンスは急に上昇するため、完全に反射波をゼロにすることは難しいが、それでも図10にハッチングで示す整合領域の中心区間(整合ポイントという)ではもっともRFバイアスの反射波が小さくなり、Vppは最も大きくなる。
【0106】
その後は、グラフ1001で示すようにプラズマインピーダンスの上昇速度はゆるみ、RFバイアスの整合がなくても反射波は無視できる程度に小さくなり、Vppは低下しない。
【0107】
以上の動作を、マイクロ波電力ハイ・ロー周期T1で周期的に繰り返して行うが、上記に得られた整合ポイントをホールドする(動かさない)ことでも、ほぼ同じ整合結果がえられる。
【0108】
さらに好ましくは、マイクロ波電力ハイ区間THからマイクロ波電力ロー区間TLの切り替え直後の平均プラズマインピーダンスを算出して、これに対して整合をとる方式を採用することもできる。
【0109】
上記実施形態と同様に、基本的には、マイクロ波電力ハイ区間TH、マイクロ波電力ロー区間TLに先行する区間で、すでにRFバイアスを印加した状態とし、マイクロ波電力ハイ区間TH、マイクロ波電力ロー区間TLの切り替え直後のプラズマインピーダンスの平均値を、RFバイアスの整合ポイントとし、プラズマ密度が変化するタイミングをねらってRFバイアスを印加することが好ましい。
【0110】
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。図11Aは、2セットのマイクロ波電源装置と、2セットのRFバイアス電源装置を有するプラズマ処理装置の概略断面図である。図11Bは、本実施形態で用いられるマイクロ波電力の変化を示す図であり、図11Cは、本実施形態で用いられるRFバイアスの変化を示す図である。
【0111】
第1のマイクロ波電源装置は、内周部マイクロ波電源1101、内周導波管1113、内周空洞共振器1115とを有し、第2のマイクロ波電源装置は、外周部マイクロ波電源1102、外周導波管1114、外周空洞共振器1116とを有する。内周部マイクロ波パルスユニット1103は、内周部マイクロ波電源1101の出力を制御し、外周部マイクロ波パルスユニット1104は、外周部マイクロ波電源1102の出力をそれぞれ制御する。
【0112】
2つのRFバイアス電源装置は、内周部RFバイアス電源1105と外周部RFバイアス電源1106であり、それぞれ電極内周部導電性膜1117と電極外周部導電性膜1118にマッチングボックスを介して接続されている。
【0113】
内周部RFバイアスパルスユニット1107は、内周部RFバイアス電源1105の出力を制御し、外周部RFバイアスパルスユニット1108は、外周部RFバイアス電源1106の出力を制御する。
【0114】
2つのマイクロ波電源は、マイクロ波電力をパルス状に(オン・オフ繰り返すようパルス変調して)発振し、または連続波で(パルス変調しないで)発振できるようになっており、2つのRFバイアス電源もRFバイアスをパルス状に(オン・オフ繰り返すようパルス変調して)印加し、または連続波で(パルス変調しないで)印加できるようになっている。
【0115】
図11Aのグラフ1109に示すように、一方のマイクロ波電源からマイクロ波電力をオン・オフ繰り返して発振し、他方のマイクロ波電源から連続波を発振する。これにより処理室内に印加されるマイクロ波電力の和により、図11Bのグラフ1111に示すように、マイクロ波電力のハイ・ロー・オフとなる3ステージの発振方式を実現でき、図5(a)に示すようなマイクロ波電力を実現できる。
【0116】
さらに、2つのRFバイアス電源についても、図11Aのグラフ1110に示すように、マイクロ波電力と同様に一方のRFバイアスの印加を、RFバイアスのオン電力・オフ電力と2値化して印加し、他方のRFバイアスを連続波として印加すると、試料台に印加されるRFバイアスの総量は、図11Cのグラフ1112に示すように変化し、RFバイアスのハイ電力・ロー電力・電力オフという3ステージの印加方式を実現できる。
【0117】
RFバイアスの整合については、RFバイアスのオン・オフのパルス側の整合を調整することが重要であって、マイクロ波電源の電力オンから電力オフへの切り替えの直後の区間だけ、整合有効区間とすることが望ましい。
【0118】
さらに、以上に対し、各マイクロ波電源が、マイクロ波電力のハイ・ロー・オフの3ステージを可とした場合、これを組み合わせて例えば5ステージのマイクロ波電力を発振できる。RFバイアス電源も同様で複数のRFバイアスのハイ・ロー・オフの組み合わせで5ステージのRFバイアスを印加することができる。
【0119】
RFバイアスのオン電力の印加タイミングが複雑化する懸念があるが、基本的にマイクロ波電力オフ区間には、すべてのRFバイアスは印加しないという原則に従えば、以上の実施形態をさらに高精度化して、さらなるエッチング形状制御性の向上が可能となる。
【0120】
本実施形態では、すべてのRFバイアス電源は同じ発振周波数(400キロヘルツ)としたが、2つのRFバイアス電源の周波数が異なっていても(例としては400キロヘルツと2メガヘルツ)同様な効果がある。複数のRFバイアスの異なる周波数を持つバイアスの印加で、面内均一性の向上が期待できる。
【0121】
各マイクロ波電源の発振周波数も異なって(例としては2.45ギガヘルツと915メガヘルツ)いてよい。かかる場合、内周部マイクロ波電源からのマイクロ波と、外周部マイクロ波電源からのマイクロ波の分離や干渉が抑制でき、RFバイアス同様に面内均一性の制御性が向上することが期待できる。
【0122】
以上の実施形態はECR型のプラズマエッチング装置で説明したが、容量結合型プラズマや誘導結合型プラズマ等のプラズマの生成方式に対応するプラズマエッチング装置等においても同様に適用可能である。以上の実施形態の一つを、他の実施形態と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1…プラズマ処理装置、101…真空容器、102…シャワープレート、103…石英天板、104…空洞共振部、105…導波管、106…マイクロ波電源、107…チューナー、108…マイクロ波パルスユニット、109…磁場発生コイル、110…試料台、111…ウエハ、112…誘電体膜、113、114…導電体膜、115…マッチングボックス、117…RFバイアス電源、118…RFバイアスパルスユニット、119…真空排気装置、120…ガス供給装置、121…プラズマ、122…処理室、123…制御部、1101…内周部マイクロ波電源、1102…外周部マイクロ波電源、1103…内周部マイクロ波パルスユニット、1105…内周部RFバイアス電源、1106…外周部RFバイアス電源、1107…内周部RFバイアスパルスユニット、1108…外周部RFバイアスパルスユニット
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12