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7201892担持金属触媒及びその製造方法、担体の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】担持金属触媒及びその製造方法、担体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/10 20060101AFI20221228BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20221228BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20221228BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20221228BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20221228BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20221228BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20221228BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20221228BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
B01J35/10 301H
B01J37/16 ZNM
B01J23/42 M
B01J32/00
B01J35/10 301G
B01J37/04 102
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/92
H01M4/90 M
H01M4/88 K
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022500382
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004402
(87)【国際公開番号】W WO2021161929
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2020020878
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000226219
【氏名又は名称】日揮ユニバーサル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 敏広
(72)【発明者】
【氏名】西野 華子
(72)【発明者】
【氏名】東山 和寿
(72)【発明者】
【氏名】内田 誠
(72)【発明者】
【氏名】飯山 明裕
(72)【発明者】
【氏名】柴沼 知哉
(72)【発明者】
【氏名】小泉 直人
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/221168(WO,A1)
【文献】特表2008-527673(JP,A)
【文献】特表2015-513449(JP,A)
【文献】特開2002-231257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
H01M 4/86
H01M 4/92
H01M 4/90
H01M 4/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子の集合体である担体と、前記導電性粒子上に分散されて担持された活性金属粒子を備え、
前記導電性粒子は、複数の細孔を含み、
前記細孔は、平均入口細孔径が1~20nmであり、
前記平均入口細孔径の標準偏差が、前記平均入口細孔径の50%以下であり、
前記活性金属粒子のうち前記導電性粒子の表層領域に担持されているものの数分率が50%以上であり、
前記表層領域は、前記導電性粒子の表面上の領域、又は前記表面から深さ15nm以内の前記細孔内の領域である、担持金属触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の担持金属触媒であって、
前記導電性粒子は、カーボン粒子である、担持金属触媒。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の担持金属触媒であって、
前記細孔は、平均細孔間距離が5~20nmであり、
前記平均細孔間距離の標準偏差が、前記平均細孔間距離の50%以下である、担持金属触媒。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の担持金属触媒であって、
前記導電性粒子は、一次粒子が平均5個以上連結された連結構造体である、担持金属触媒。
【請求項5】
請求項4に記載の担持金属触媒であって、
前記連結構造体の平均直列連結数は、3以上である、担持金属触媒。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の担持金属触媒であって、
前記導電性粒子は、平均一次粒子径が20~100nmである、担持金属触媒。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1つに記載の担持金属触媒であって、
前記表層領域に担持されている活性金属粒子のうち、前記細孔内に担持されているものの数分率が40%以上である、担持金属触媒。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1つに記載の担持金属触媒であって、
前記活性金属粒子は、白金又は白金合金の粒子である、担持金属触媒。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか1つに記載の担持金属触媒であって、
前記活性金属粒子の平均粒子径が1~8nmである、担持金属触媒。
【請求項10】
請求項1~請求項9の何れか1つに記載の担持金属触媒であって、
[前記活性金属粒子の平均粒子径/前記平均入口細孔径]の値が0.2~0.8である、担持金属触媒。
【請求項11】
請求項1~請求項10に記載の担持金属触媒であって、
前記活性金属粒子のうち前記導電性粒子の表層領域に担持されているものの数分率が60%以上である、担持金属触媒。
【請求項12】
カソード側触媒層を有する燃料電池であって、
前記カソード側触媒層は、請求項1~請求項11の何れか1つに記載の担持金属触媒を含む、燃料電池。
【請求項13】
導電性粒子の集合体である担体の製造方法であって、
前記方法は、集積体生成工程と、結合工程と、炭素化工程を備え、
前記集積体生成工程では、炭素源球体が集積した炭素源集積体を形成し、
前記結合工程では、前記炭素源集積体を含む分散液を無撹拌又はレイノルズ数が1400以下となる撹拌の状態で前記炭素源球体同士を結合させることによって、炭素源結合体を形成し、
前記炭素化工程では、前記炭素源結合体を炭素化する、方法。
【請求項14】
担持金属触媒の製造方法であって、
混合工程と、還元工程と、担持工程を備え、
前記混合工程では、活性金属前駆体を含む活性金属前駆体溶液と、界面活性剤と、有機溶媒を混合して活性金属前駆体混合溶液を生成し、
前記還元工程では、前記活性金属前駆体混合溶液中の活性金属前駆体を還元して活性金属粒子を生成し、
前記担持工程では、導電性粒子の集合体である担体と前記活性金属粒子を混合することによって前記活性金属粒子を前記導電性粒子上に分散させて担持させ、
前記導電性粒子は、複数の細孔を含み、
前記細孔は、平均入口細孔径が1~20nmであり、
前記平均入口細孔径の標準偏差が、前記平均入口細孔径の50%以下であり、
前記混合溶液中における動的光散乱法で測定される個数中位径が前記平均入口細孔径の0.5~2倍である、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記有機溶は、疎水性を有する有機溶媒であって、シクロヘキサン、ヘプタン、及びトルエンから選択される少なくとも1つを含む、方法。
【請求項16】
請求項14又は請求項15に記載の方法であって、
前記界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤である、方法。
【請求項17】
請求項14~請求項16の何れか1つに記載の方法であって、
前記還元工程では、前記還元は、還元剤と有機溶と水と界面活性剤を含む還元剤混合溶液と、前記活性金属前駆体混合溶液を混合することによって行う、方法。
【請求項18】
担持金属触媒の製造方法であって、
混合工程と、還元工程と、担持工程を備え、
前記混合工程では、活性金属前駆体を含む活性金属前駆体溶液と、高分子保護剤と、還元剤を混合して混合溶液を生成し、
前記還元工程では、前記混合溶液中の活性金属前駆体を還元して活性金属粒子を生成し、
前記担持工程では、導電性粒子の集合体である担体と前記活性金属粒子を混合することによって前記活性金属粒子を前記導電性粒子上に分散させて担持させ、
前記導電性粒子は、複数の細孔を含み、
前記細孔は、平均入口細孔径が1~20nmであり、
前記平均入口細孔径の標準偏差が、前記平均入口細孔径の50%以下であり、
前記混合溶液中における動的光散乱法で測定される個数中位径が前記平均入口細孔径の0.5~2倍である、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記高分子保護剤は、ポリビニルピロリドンとポリアクリル酸とポリビニルアルコールの少なくとも1種を含む、方法。
【請求項20】
請求項14~請求項19の何れか1つに記載の方法であって、
前記活性金属前駆体は、白金前駆体化合物を含む、方法。
【請求項21】
請求項14~請求項20の何れか1つに記載の方法であって、
前記導電性粒子は、カーボン粒子である、方法。
【請求項22】
請求項14~請求項21の何れか1つに記載の方法であって、
前記細孔は、平均細孔間距離が5~20nmであり、
前記平均細孔間距離の標準偏差が、前記平均細孔間距離の50%以下である、方法。
【請求項23】
請求項14~請求項22の何れか1つに記載の方法であって、
前記導電性粒子は、一次粒子が平均5個以上連結された連結構造体である、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記連結構造体の平均直列連結数は、3以上である、方法。
【請求項25】
請求項14~請求項24の何れか1つに記載の方法であって、
前記導電性粒子の一次粒子は、平均粒子径が20~100nmである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担持金属触媒及びその製造方法、担体の製造方法に関する。本発明の担持金属触媒は、燃料電池の電極触媒(特にカソード触媒)として好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、MCND(メソポーラスカーボンナノデンドライト)に触媒成分を担持して得られる担持金属触媒が開示されている。MCNDは、細孔構造が発達しており、細孔内に触媒成分を担持することによって触媒成分の利用効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-10806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成でも、触媒成分の利用効率は十分に高いとはいえず、利用効率をさらに高めることが望まれている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、活性金属粒子の利用効率に優れた担持金属触媒を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、導電性粒子の集合体である担体と、前記導電性粒子上に分散されて担持された活性金属粒子を備え、前記導電性粒子は、複数の細孔を含み、前記細孔は、平均入口細孔径が1~20nmであり、前記平均入口細孔径の標準偏差が、前記平均入口細孔径の50%以下であり、前記活性金属粒子のうち前記導電性粒子の表層領域に担持されているものの数分率が50%以上であり、前記表層領域は、前記導電性粒子の表面上の領域、又は前記表面から深さ15nm以内の前記細孔内の領域である、担持金属触媒が提供される。
【0007】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、以下の知見を得た。特許文献1のMCNDは、銀アセチリドを爆発的に反応させることによって形成しているので、MCNDの細孔径は非常にばらつきが大きい。触媒成分の利用効率を高めるには、触媒成分を細孔の浅い位置に担持する必要があるが、MCNDは細孔径のばらつきが大きいので、細孔内での触媒成分の担持位置を制御することが困難である。このため、触媒成分が細孔の深い位置に担持されてしまう。細孔の深い位置では、触媒反応で利用される反応物や、触媒反応で生成される生成物の拡散抵抗により触媒反応速度が低くなり、触媒の利用効率が低くなってしまう。このため、特許文献1のMCNDを用いた担持金属触媒は、触媒成分の利用効率が十分でなかった。
【0008】
そして、この知見に基づき、担体に設けられている細孔の細孔径のバラツキを小さくした上で、担体を構成する導電性粒子の表層領域に活性金属粒子の50%以上を担持させることによって、活性金属粒子の利用効率を高めることができることを見出し、本発明の完成に到った。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】担持金属触媒1の模式図である。
図2図2Aは、担持金属触媒1の断面の模式図であり、図2Bは、図2A中の領域Bの拡大図である。
図3】単粒子で構成される導電性粒子2の模式図である。
図4】連結構造体2aで構成される導電性粒子2の模式図である。
図5】炭素源球体7が集積した炭素源集積体8の模式図である。
図6】炭素源集積体8同士が連結される状態を示す模式図である。
図7】燃料電池の模式図である。
図8】製造例1のカーボン粒子の二次電子像である。
図9】製造例2のカーボン粒子の二次電子像である。
図10】製造例3のカーボン粒子の二次電子像である。
図11】製造例4のカーボン粒子の二次電子像である。
図12】製造例5のカーボン粒子の二次電子像である。
図13】製造例6のカーボン粒子の二次電子像である。
図14】製造例7のカーボン粒子の二次電子像である。
図15】製造例8において、結合工程での炭素源球体の濃度を変化させて得られる種々の炭素源結合体の電子顕微鏡像である。
図16】製造例9において、結合工程での加熱温度を変化させて得られる種々の炭素源結合体の電子顕微鏡像である。
図17】製造例10において、炭素化工程の後のアニール温度を変化させて得られる種々のカーボン粒子の電子顕微鏡像である。
図18】左側の画像Aは、実施例1の担持金属触媒の断面二次電子像であり、右側の画像は、そのZコントラスト像である。
図19】参考例1の逆ミセル法での、Rwと、個数中位径の関係を示すグラフである。
図20】実施例3の担持金属触媒の表面のZC像(Zコントラスト像)及びSE像(二次電子像)である。
図21】左側の画像は、実施例4の担持金属触媒の二次電子像であり、右側の画像は、そのZコントラスト像である。
図22】左側の画像は、比較例2の担持金属触媒の二次電子像であり、右側の画像は、そのZコントラスト像である。
図23】上段左側の画像は、実施例5の担持金属触媒の二次電子像であり、上段右側の画像は、そのZコントラスト像であり、下段の左側及び右側の画像は、実施例5の担持金属触媒の別の二次電子像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.担持金属触媒1
図1図4に示すように、本発明の一実施形態の担持金属触媒1は、担体3と、活性金属粒子4を備える。以下、各構成について詳細に説明する。
【0012】
2.担体3の構成
担体3は、導電性粒子2の集合体であり、好ましくは粉末状である。なお、図1図4では、導電性粒子2を1つだけ図示している。
【0013】
導電性粒子2は、導電性を有する粒子である。導電性粒子2の組成は特に限定されないが、導電性や製造容易性等の観点から導電性粒子2は、カーボン粒子であることが好ましく、メソポーラスカーボン粒子であることがさらに好ましく、偏差の小さな細孔径及び細孔間隔、並びに細孔の周期的配列を有する規則性メソポーラスカーボン(Ordered Mesoporous Carbon, OMC)粒子であることがさらに好ましい。
【0014】
導電性粒子2の形状は、特に限定されず、図3に示すように、(好ましくは略球状の)単粒子で構成されていてもよく、図4に示すように、複数の(好ましくは略球状の)一次粒子2bが(好ましくは平均5個以上)連結された連結構造体2aであることが好ましい。以下の説明では、単粒子も便宜上「一次粒子」と称する。連結構造体2aはアグリゲートと称し、一次粒子2bで囲まれた流路2eが形成されて、物質の拡散抵抗が低下して触媒反応が進行しやすくなるので好ましい。流路2eは、「一次孔」と称することもできる。また、連結構造体2aと連結構造体2aが凝集して形成されるアグリゲートの凝集体は二次粒子、アグロメレートと称する。アグロメレートは二次凝集体なので、比較的容易に解砕が可能である。このアグロメレートの間の間隙が作る細孔は、「二次孔」と称することもできる。
【0015】
導電性粒子2の平均一次粒子径は、20~100nmであることが好ましい。この値が小さすぎると細孔5の入口径が小さくなりすぎる場合があり、この値が大きすぎると、担体3の比表面積が小さくなりすぎる場合があるからである。この平均粒子径は、具体的には例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。細孔5は、導電性粒子2の一次粒子表面に開口し、ナノスケールのサイズであり、「ナノ孔」と称することもできる。
【0016】
ここで、導電性粒子2がカーボン粒子の連結構造体2aである場合を例にあげて、導電性粒子2の平均一次粒子径の測定方法の例を説明する。まず、導電性粒子2の粉末に対して、収差補正レンズ付き走査透過型電子顕微鏡(STEM、日立ハイテクノロジーズ社製、HD-2700)を用いて、図8に示すような二次電子像を撮影する。二次電子像から、カーボン粒子が、太い部分と細い部分が交互に連続しており、一次粒子が平均5個以上連結された連結構造体となっていることが分かる。太い部分の最大直径を一次粒子径とし、100箇所以上計測し、その平均値を求める。また、細い部分の最小直径を、一次粒子同士の連結部の直径とし、100箇所以上計測し、その平均値を求める。
【0017】
図4に示すように、連結構造体2aは、その連結方向に沿って太い部分と細い部分が交互に連続しており、太い部分が一次粒子2bであり、細い部分が一次粒子2b同士の連結部2cである。連結構造体2aの平均一次粒子径をAとし、連結部2cの平均直径をBとすると、B/Aは、0.1~0.9が好ましく、0.2~0.8がさらに好ましい。B/Aが小さすぎると連結構造体2aの強度が十分でない場合がある。B/Aは、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
一次粒子2bの平均粒子径は、導電性粒子2が単粒子である場合にはその円相当径の平均値であり、導電性粒子2が連結構造体2aである場合には、連結構造体2aの太い部分の最大幅の平均値である。本明細書において、平均は、50以上(好ましくは100以上)の測定値の平均であることが好ましい。
【0019】
連結構造体2aの平均連結数(連結構造体2aに含まれる一次粒子2b数の平均値)は、5以上が好ましく、10以上がさらに好ましく、100以上がさらに好ましい。この平均連結数は、例えば5~10000であり、具体的には例えば、5、10、50、100、500、1000,5000、10000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。連結構造体2aの平均直列連結数(直列的に連結されている一次粒子2b数の平均値)は、3以上であることが好ましく、5以上がさらに好ましい。直列的に連結とは、一つの線(直線又は曲線)に沿って連結されることを意味すする。直列連結数は、分岐が生じている一次粒子を起点に数える。例えば、図4のラインLの枝では、直列連結数が4である。平均直列連結数は、50以上(好ましくは100以上)の枝についての直列連結数の平均値である。この平均直列連結数は、例えば3~100であり、具体的には例えば、3、5、10、50、100であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。導電性粒子2がこのような構造を有すると物質の拡散抵抗が特に低くなる。
【0020】
図1図3に示すように、導電性粒子2は、複数の細孔5を備える。複数の細孔5は、サイズ、配置、形状等が規則的であることが好ましい。細孔5は、深さ方向に沿って、直径が一定であってもよく、変化してもよい。なお、図2では、導電性粒子2が中心中空となっているが、導電性粒子2及び一次粒子は、中心中空であっても中心中実であってもよい。
【0021】
細孔5の平均入口細孔径は、1~20nmである。平均入口細孔径は、細孔5の入口の円相当径の平均値である。平均入口細孔径が小さすぎると活性金属粒子4を細孔5内に担持させるのが困難になる場合があり、平均入口細孔径が大きすぎると、活性金属粒子4が細孔5内の深い位置に担持されて触媒反応に利用されにくくなる。平均入口細孔径は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
ここで、導電性粒子2がカーボン粒子である場合を例に挙げて、細孔5の平均入口細孔径の測定方法の例を説明する。50万倍~100万倍の間の倍率で二次電子像観察を行い、細孔サイズの計測を行う。その際に、電子顕微鏡像の明度と濃淡を調整し、カーボン粒子の一次粒子の外表面と外表面に開口した細孔の境界が明瞭と成る様にする。粒子径計測ソフトウエア(ニレコ社製、ルーゼックスAP)を用いて各細孔の円相当径を100個以上計測し平均入口細孔径とその標準偏差を求める。
【0023】
なお、以下の三点に相当する場合、細孔としてカウントしないこととする。(1)カーボン粒子の一次粒子は球形または紡錘形であるため、側面近傍に位置する細孔は電子顕微鏡観測によってその正確なサイズを計測することができない。(2)電子顕微鏡像の明度と濃淡を調節した後でも、試料の形状や観察条件によってカーボン粒子外表面と細孔の境界線が十分に明瞭とならない場合が有る。(3)試料が正焦点の範囲に無い場合、細孔サイズを正確に求めることができない。
【0024】
細孔5の平均入口細孔径の標準偏差は、平均入口細孔径の50%以下であり、30%以下が好ましい。標準偏差が小さいほど、細孔5の入口径のばらつきが小さく、導電性粒子2の担持位置の制御が容易になる。この標準偏差は、具体的には例えば、平均入口細孔径の0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい
【0025】
細孔5の平均細孔間距離は、5~20nmであることが好ましい。平均細孔間距離は、隣り合う細孔5の円重心点間距離から求めた細孔間距離の平均値である。平均細孔間距離が小さすぎると、触媒反応の反応物の供給が追いつかずに反応速度が低下する場合がある。平均細孔間距離が大きすぎると、細孔5の数が少なくなりすぎる場合や、細孔外表面に活性金属粒子4が担持され易くなる場合がある。
【0026】
ここで、導電性粒子2がカーボン粒子である場合を例に挙げて、細孔5の平均細孔間距離の測定方法の例を説明する。50万倍~100万倍の間の倍率で二次電子像観察を行い、細孔サイズの計測を行う。その際に、電子顕微鏡像の明度と濃淡を調整し、カーボン粒子の一次粒子の外表面と外表面に開口した細孔の境界が明瞭と成る様にする。粒子径計測ソフトウエア(ニレコ社製、ルーゼックスAP)を用いて各細孔の円相当径を100個以上計測する。
【0027】
なお、以下の三点に相当する場合、細孔としてカウントしないこととする。(1)カーボン粒子の一次粒子は球形または紡錘形であるため、側面近傍に位置する細孔は電子顕微鏡観測によってその正確なサイズを計測することができない。(2)電子顕微鏡像の明度と濃淡を調節した後でも、試料の形状や観察条件によってカーボン粒子外表面と細孔の境界線が十分に明瞭とならない場合が有る。(3)試料が正焦点の範囲に無い場合、細孔サイズを正確に求めることができない。
【0028】
次に、細孔の円相当径を求める際に、円に近似した細孔の円重心座標を記録し、隣り合う細孔の円重心点間距離から細孔間距離を100カ所以上求め、平均細孔間距離とその標準偏差を算出する。
【0029】
細孔5の平均細孔間距離の標準偏差は、平均細孔間距離の50%以下が好ましく、30%以下がさらに好ましい。標準偏差が小さいほど、導電性粒子2が均一に担持されやすい。この標準偏差は、具体的には例えば、平均入口細孔径の0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
3.担体3の製造方法
担体3は、上述した物性の細孔5を形成可能な任意の方法で製造可能であり、担体3の製造方法として、例えば、ハードテンプレート法及びソフトテンプレート法が挙げられる。
【0031】
ハードテンプレート法は、微粒子やゼオライト等の固体をテンプレートとする手法である。例えば導電性粒子2がカーボン粒子である場合、メソポーラスシリカなどの規則的な細孔を有するテンプレートを準備し、このテンプレートの細孔内に、炭素源(例:スクロースなどの糖類)を含浸させ、炭素源を炭素化させ、テンプレートを除去することによって、規則的な細孔を有するカーボン粒子を得ることができる。テンプレートの部分が細孔となる。
【0032】
ソフトテンプレート法は、ミセルやエマルション、リポソーム、ポリマーブレンド、液晶等のソフトマターの相分離構造等をテンプレートとする手法である。
【0033】
例えば、導電性粒子2がカーボン粒子である場合、導電性粒子2は、集積体生成工程と、結合工程と、炭素化工程を備える方法によって製造可能である。
【0034】
<集積体生成工程>
図5に示すように、集積体生成工程では、炭素源球体7が集積した炭素源集積体8を形成する。炭素源集積体8が導電性粒子2の一次粒子となる。
【0035】
炭素源球体7は、一例では、ミセルの表面に炭素源で皮膜を形成することによって形成することができる。炭素源球体7は、メチロール基や水酸基のような反応性官能基を有しており、例えば反応性官能基の縮合反応によって炭素源球体7同士を結合させることができる。炭素源球体7は球体であり、隙間なく集積させることができないので、炭素源集積体8には必然的に複数の炭素源球体7で囲まれた隙間8aが形成される。隙間8aが導電性粒子2の細孔5となる。隙間8aは規則的に形成されるので、細孔5も規則的に形成される。
【0036】
炭素源球体7及び炭素源集積体8の製造例は、以下の通りである。
まず、炭素源であるフェノール:0.6057gと、ホルムアルデヒド溶液:2.1mLと、0.1MのNaOH:15.1613gを混合して混合溶液を作製する。
次に、混合溶液を70℃バス中で、345rpmで0.5時間撹拌する。
次に、テンプレート分子であるPluronic F-127(BASF社製、非イオン性界面活性剤、疎水ブロックが一対の親水ブロックで挟まれて構成されるトリブロック共重合体、以下「F-127」と称する。):0.96gと、超純水:15.0033gを添加した後、65℃バス中で、345rpmで2時間撹拌する。
次に、超純水:50gを添加した後、65℃バス中で、345rpmで16~18時間撹拌し、その後、25℃で静定し、上澄み液:17.7mLを取り出す。
以上の反応によって、F-127で構成されたミセルがレゾールで被覆された炭素源球体7が生成され、炭素源球体7が自己集積して炭素源集積体8が形成される。
【0037】
ミセルは、例えば親水ブロックと疎水ブロックを有するブロック共重合体を水などの分散媒中に分散させることで形成することができる。ブロック共重合体は、疎水ブロックが一対の親水ブロックで挟まれて構成されるトリブロック共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体には、例えば疎水ブロックがプロピレンオキシドの重合体、親水ブロックがエチレンオキシドの重合体で構成されるものが使用できる。
【0038】
皮膜は、例えば、レゾールで構成される。レゾールは、反応性官能基を有するフェノール樹脂である。レゾールの皮膜は、ミセルが含まれる分散媒中でフェノールとホルムアルデヒドを、ホルムアルデヒドが過剰となる条件で重合させることで形成することができる。炭素源球体7は、一例では、トリブロック共重合体で構成されたミセルがレゾール皮膜で被覆されて構成される。
【0039】
<結合工程>
結合工程では、炭素源集積体8を含む分散液を無撹拌又は撹拌の状態で、炭素源球体7同士を結合させることによって、炭素源結合体を形成する。
【0040】
炭素源球体7同士を結合させる際、炭素源集積体8を含む分散液を無撹拌又はレイノルズ数が1400以下となる撹拌(以下、「低速撹拌」)の状態で炭素源球体7同士を結合すると、図6に示すように、同じ炭素源集積体8内に含まれる炭素源球体7同士が結合されることに加えて、異なる炭素源集積体8内に含まれる炭素源球体7同士の結合も生じる。この場合、炭素源集積体8同士が平均5個以上連結された連結構造を有する炭素源結合体が得られる。このような炭素源結合体を炭素化することによって、一次粒子2bが平均5個以上連結された連結構造体2aを形成することができる。レイノルズ数は、1200以下が好ましく、1000以下がさらに好ましい。レイノルズ数は、例えば0~1400であり、具体的には例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0041】
レイノルズ数Reは、以下の式に基づいて算出可能である。
Re=d×n×ρ/μ
(ここでd:撹拌子の翼径[m]、n:回転数[s-1]、ρ:液密度[kg/m]、μ:液粘度[Pa・s]である。)
【0042】
一例では、d=20×10-3m、n=0.83s-1(50rpmの場合)、130℃、純水の場合、ρ=934.5kg/m、μ=0.208mPa・sの場合、レイノルズ数Re=1490となる。
【0043】
一方、分散液を高速で撹拌しながら炭素源球体7同士を結合すると、同じ炭素源集積体8内に含まれる炭素源球体7同士での結合が支配的となり、単粒子の炭素源結合体が得られる。このような炭素源結合体を炭素化することによって、一次粒子2bが互いに連結されていない単粒子構造の導電性粒子2が得られる。
【0044】
分散媒は、水であることが好ましい。また、炭素源球体7同士の結合は、分散液を加熱することによって行うことが好ましい。反応温度は、例えば100~150℃であり、具体的には例えば、100、110、120、130、140、150℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。反応時間は、例えば5~48時間であり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、48時間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0045】
反応によって得られる炭素源結合体の構造は、反応温度と反応時間および反応液濃度を変化させることによって変化させることができる。反応温度を高くしたり、反応時間を長くしたり、反応液濃度を増加することによって、炭素源集積体8の連結数及び一次粒子径を増やすことができる。
【0046】
<炭素化工程>
炭素化工程では、炭素源結合体を炭素化することによって、導電性粒子2を得ることができる。
【0047】
ところで、上記結合工程で得られた炭素源結合体をそのまま加熱して炭素化すると、一次粒子2b(単粒子状態の一次粒子2b、又は連結構造体2aとなっている一次粒子2b)同士が三次元的に連結されて一次粒子2bが過度に凝集した構造になりやすい。そこで、炭素化の前に、上記炭素源結合体を再分散させた後に乾燥させることが好ましい。これによって一次粒子2bの凝集を緩和することができる。また、炭素源結合体を再分散させて得られた分散液を薄く広げた後に乾燥させることが好ましい。これによって、一次粒子2bの凝集をさらに緩和することができる。分散液を薄く広げる方法としては、ガラス板の表面などの面上に分散液を滴下する方法が挙げられる。一例では、ホットプレートで加熱したガラス板上に分散液を滴下することによって、分散液を薄く広げた状態で乾燥させることができる。
【0048】
また、炭素源結合体は、炭素源結合体を再分散させて得られた分散液を噴霧乾燥させることによって、一次粒子2bの凝集を緩和させてもよい。乾燥は、凍結乾燥が好ましい。
【0049】
炭素源結合体の炭素化は、不活性ガス(例:窒素ガス)雰囲気下で炭素源結合体を加熱することによって、行うことができる。炭素源結合体の炭素化は、例えば、炭素源結合体を600~1000℃に加熱することによって行うことができる。この温度は、例えば具体的には例えば、600、650、700、750、800、850、900、950、1000℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0050】
炭素化工程の後に導電性粒子2をアニール処理するアニール工程を備えてもよい。アニール処理の温度や時間を変化させることによって導電性粒子2の構造を制御することが可能である。アニール処理は、例えば、真空中で導電性粒子2を加熱することによって行うことができる。アニール処理の温度は、例えば、800~2000℃である。この温度は、具体的には例えば、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0051】
<その他>
連結構造体2aは、上記の方法以外に、連結剤を用いて一次粒子2bを互いに連結させることによって生成してもよい。一次粒子2bは、分散液を高速で撹拌しながら炭素源球体7同士を結合させることによって生成してもよく、炭素源の粗大粒子(炭素源粗大粒子)を分割することによって生成してもよい。ここで炭素源粗大粒子は後述する製造例6に記す手法で製造してもよく、その一次粒子径が100nmよりも大きい粒子である。連結剤としては、例えば、複数の反応性官能基を有する化合物が挙げられる。各反応性官能基が一次粒子2bと連結することによって、連結剤を介して一次粒子2bが互いに連結される。
具体的な連結剤としては、例えば、スクロースの様な糖類やフルフリルアルコールの様なアルコール類を使用することができる。
【0052】
4.活性金属粒子4の構成
図1に示すように、活性金属粒子4は、導電性粒子2上に分散されて担持される。活性金属粒子4は、触媒として機能しうる金属又は合金の微粒子である。活性金属粒子4は、白金又は白金合金の粒子であることが好ましい。白金合金としては、白金と遷移金属の合金が好ましい。遷移金属としては、コバルトやニッケルが挙げられる。
【0053】
図1図2に示すように、活性金属粒子4は、導電性粒子2の表面2d上の領域、又は細孔5内に担持される。細孔5内の深い位置では物質の拡散速度が小さいので、細孔5内の深い位置に担持された活性金属粒子4は、ほとんど又は全く触媒反応に寄与しない。このため、活性金属粒子4のうち細孔5内の深い位置に担持されているものの数分率が大きいと、その分だけ、活性金属粒子4の利用効率が低下する。活性金属粒子4の利用効率が低下すると、必要な反応速度を確保するために、より多くの活性金属粒子4を担持する必要があり、触媒のコストアップにつながってしまう。
【0054】
このため、活性金属粒子4は、導電性粒子2の表層領域に担持されているものの割合が高いことが好ましい。表層領域とは、導電性粒子2の表面2d上の領域、又は表面2dから深さX(=15nm)以内の細孔5内の領域(つまり、図2Bの一点鎖線よりも外側の領域)を意味する。
【0055】
具体的には、活性金属粒子4のうち表層領域に担持されているもの(以下、「表層担持粒子」)の数分率(表層領域に担持されている活性金属粒子4の数/全ての活性金属粒子4の数)が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。この場合、活性金属粒子4の利用効率が優れている。この数分率は、具体的には例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、100%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0056】
ここで、活性金属粒子4が白金粒子であり、導電性粒子2がカーボン粒子である場合を例に挙げて、表層担持粒子の数分率の算出方法の例について説明する。
【0057】
まず、白金粒子を担持したカーボン粒子の粉末をシリコンウエハ基板上に載せ、金蒸着によって試料粒子外表面に保護層を形成する。その後収束イオンビーム(FIB)装置(FB2200、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いてガリウムイオンビームで試料粒子を切断し、電子顕微鏡観察用試料切片を調製する。その後、切断面を電子顕微鏡観察する際に、図18に示すZコントラスト像(原子番号コントラスト像)から試料上に存在する金属粒子(Au粒子およびPt粒子)を観測し、同時にエネルギー分散型X線分光器を用いて、各々の金属粒子の組成を分析し、Pt粒子とAu粒子を見分ける。そしてAu粒子が存在する部分から、Au粒子が存在せずにPt粒子のみ存在する部分への変化点(境界線)を、カーボン粒子の外表面と断面の境界線と定義する。電子顕微鏡像上で、上記試料外表面境界線から試料粒子中心方向に15nmの位置に外表面境界線と平行のとなる線分を引き、外表面境界線と15nm位置の線分の間にあるPt粒子数と、15nm位置の線分より粒子中心方向の深い位置にあるPt粒子数との割合から、表層担持粒子の数分率を算出する。
【0058】
なお、Xは、5nm又は10nmであってもよく、5nm以下がより好ましい。さらに、Xは、一次粒子2bの平均粒子径×Yと設定してもよい。Yは、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5であり、0.3が好ましい。さらに、Xは、細孔5の平均入口細孔径×Zと設定してもよい。Zは、例えば、1,2,3,4,5であり、1が好ましい。
【0059】
また、導電性粒子2の表層領域に担持されている活性金属粒子4のうち、細孔5内に担持されているものの数分率が40%以上であることが好ましい。担持金属触媒1は電解質材料で厚く被覆されることがあり、この場合に、電解質材料で被覆された活性金属粒子4は活性が低下してしまう場合がある。細孔5内に担持されている活性金属粒子4の数分率を高くすることによって、活性金属粒子4の活性の低下の影響を抑制することができる。この数分率は、具体的には例えば、40、45、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、90、95、99、100%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0060】
実際の燃料電池自動車の運転において、電極触媒上の電流密度が小さな低速走行時には、担体表面に存在する電解質材料が担体表面に存在する活性金属粒子に密着しその活性が低下してしまう場合が有る(表面の活性金属粒子上の速度低下)。一方で大電流密度の高速走行時には、カソード触媒上で生じる大量の水によって、担体表面に存在する活性金属粒子への電解質材料の密着が緩和されその活性が回復するが、触媒層全体の反応速度が高いために細孔内深部への拡散抵抗により細孔内深部の活性金属上の速度が低下してしまう場合が有る(細孔内深部活性金属粒子上の速度低下)。以上の理由からも、燃料電池自動車のすべての運転状況をカバーするには、過半の活性金属粒子を細孔内部に配置しつつ、担体表面近傍から細孔内部(15nm以下)の領域に活性金属粒子を配置することにより、燃料電池自動車向け触媒としてはより優れたものを作製できる。またこの観点から、表面から10nm以下、好ましくは5nm以下の範囲に活性金属粒子を配置するとさらに効果的と考えられる。
【0061】
活性金属粒子4の平均粒子径は、1~8nmであることが好ましい。この平均粒子径は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。活性金属粒子4の平均粒子径が1nm未満であれば、電極反応の進行と共に溶解する場合があり、8nmより大きくなると電気化学的活性表面積が小さくなり所望の電極性能が得られない場合がある。活性金属粒子4の平均粒子径は、円相当径の平均値である。
【0062】
ここで、活性金属粒子4が白金粒子である場合を例に挙げて、その平均粒子径の算出方法を説明する。まず、白金粒子を担持した触媒を電子顕微鏡用カーボン支持膜付きグリッドのせ、それを電子顕微鏡観察して得られた像から白金粒子の円相当径の平均粒子径を算出する。
【0063】
[活性金属粒子4の平均粒子径/細孔5の平均入口細孔径]の値が0.2~0.8であることが好ましい。このような関係の場合に、活性金属粒子4が表層領域に担持されやすい。この値は、具体的には例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0064】
5.担持金属触媒の製造方法
活性金属粒子4の担持方法にはまず通常の含浸法が考えられる。ただし、通常の含浸法では細孔の入り口付近にのみ位置選択的に担持することはできず、電解質材料による吸着阻害や物質拡散抵抗に加え、活性金属粒子4の粒子径分布が広くなるため燃料電池のカソードとして使用した場合動作時に活性金属粒子4の粒子成長が進行し、劣化を引き起こす。
【0065】
このため、活性金属粒子4を予め液相中で合成したのち担持する方法が好ましい。すなわち、逆ミセル法や保護コロイド法により、液相中で大きさの揃った活性金属粒子4をあらかじめ合成したのち、規則的細孔を有する担体に担持する。導電性粒子2の細孔5のサイズが揃っているので、活性金属粒子4の担持位置の選択性を高めることができるため、劣化の抑制、活性金属粒子4の使用量の低減につながる。
【0066】
5-1.逆ミセル法
逆ミセル法では、担持金属触媒の製造方法は、混合工程と、還元工程と、担持工程を備える。以下、各工程について説明する。
【0067】
<混合工程>
混合工程では、活性金属前駆体を含む活性金属前駆体溶液と、界面活性剤と、有機溶媒を混合して混合溶液(以下、「活性金属前駆体混合溶液」と称する。)を生成する。
【0068】
活性金属前駆体は、還元されて活性金属を形成するための原料となる化合物を示し、例えば活性金属の酸、塩、又は錯体が挙げられる。活性金属前駆体としては、例えば塩化金属酸やその塩(例:カリウム塩)や、活性金属のアンミン錯体、エチレンジアミン錯体、アセチルアセトナート錯体などを用いることができる。活性金属が白金の場合には、白金前駆体化合物、例えば、塩化白金酸(例:ヘキサクロリド白金酸、テトラクロリド白金酸)、アセチルアセトナート白金〔Pt(acac)〕、塩化白金酸塩(例:塩化白金酸カリウム〔KPtCl〕)、白金アンミン錯体などを用いることができる。活性金属前駆体溶液は、水溶液であることが好ましい。また、活性金属前駆体は一種類である必要はなく、第二、第三の金属塩を添加しても良い。
【0069】
界面活性剤としては、逆ミセルを形成可能な任意のものが利用可能である。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤(例えば、石けん、硫酸化油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩)、カチオン性界面活性剤(例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩)、ノニオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル)及び両性界面活性剤(例えば、ベタイン、スルホベタイン)等を挙げることができ、ノニオン性界面活性剤が好ましく、フェニレン基を有するものがさらに好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルがさらに好ましく、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルがさらに好ましい。ポリオキシアルキレンの平均付加モル数は、2~10が好ましく、3~7がさらに好ましく、5がさらに好ましい。平均付加モル数は、具体的には例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0070】
水と界面活性剤のモル比Rwは1~7であることが好ましく、さらに2~5であることが好ましい。また、界面活性剤の濃度は臨界ミセル濃度以上であることが好ましく、40~160mmol/Lであることが好ましい。
【0071】
有機溶媒としては、疎水性を有する有機溶媒が好ましく、シクロヘキサン、ヘプタン、及びトルエンから選択される少なくとも1つを含むものがさらに好ましい。
【0072】
<還元工程>
還元工程では、活性金属前駆体混合溶液中の活性金属前駆体を還元して活性金属粒子4を生成する。液温は20℃~30℃であることが好ましい。
【0073】
活性金属前駆体は、混合溶液中に還元剤を添加することによって還元することができる。還元剤としては、MBRH、MH(但し、Mはリチウム、ナトリウムまたはカリウムを示し、Rは水素原子または炭化水素基を示し、炭化水素基は直鎖でも分岐でも、飽和でも不飽和でもよい。)、水素等が挙げられ、NaBHが好ましい。
【0074】
前記還元は、還元剤と有機溶と水と界面活性剤を含む還元剤混合溶液と、前記活性金属前駆体混合溶液を混合することによって行うことが好ましい。この場合、固体の還元剤を活性金属前駆体混合溶液に直接添加する場合と比べ、活性金属前駆体の還元速度が制御され、Pt粒子の単分散性が向上し、その結果表層担持率が増加することが期待される。


【0075】
還元剤混合溶液中の界面活性剤は、上述の<混合工程>で列挙した群から選択可能であり、<混合工程>で混合したものと同一であることが好ましい。
【0076】
還元剤混合溶液の水と界面活性剤のモル比Rwは1~7であることが好ましく、さらに2~5であることが好ましく、活性金属前駆体混合溶液と同濃度であるとなお好ましい。
【0077】
還元剤混合溶液中の有機溶媒としては、疎水性を有する有機溶媒が好ましく、シクロヘキサン、ヘプタン、及びトルエンから選択される少なくとも1つを含むものがさらに好ましく、活性金属前駆体混合溶液と同一であるとなお好ましい。
【0078】
還元工程で得られた活性金属粒子4は、逆ミセルに包含された状態になっており、逆ミセルの直径は、活性金属粒子4自体の直径よりも大きくなっている。このため、活性金属粒子4が細孔5内の深い位置に担持されることが抑制され、表層領域に担持される活性金属粒子4の数分率が高められる。
【0079】
混合溶液中における動的光散乱法で測定される個数中位径は、逆ミセル径である。この逆ミセル径が細孔5の平均入口細孔径の0.5~2倍であることが好ましい。この場合に、表層領域に担持される活性金属粒子4の数分率が特に高められる。この倍率は、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0080】
溶媒中では逆ミセルは、活性金属粒子を内包した微小水滴を取り囲む界面活性剤層と、その周りに形成された溶媒層で構成される。逆ミセル径が担体細孔入口径よりも十分に小さい(逆ミセル径が細孔5の入口細孔径の0.5倍未満)場合は、界面活性剤層の外側に形成された溶媒層によって、界面活性剤層が細孔入口内壁と隔離されているために、細孔壁と界面活性剤の相互作用が弱く、逆ミセルは細孔内部の深い位置まで崩壊せずに侵入する。これに対して逆ミセル径が細孔5の入口細孔径の2倍を超過する場合は、細孔入口径に対して、逆ミセル径が大きすぎて細孔内に侵入できず、その結果、細孔外表面に活性金属粒子が担持されてしまう。一方で、逆ミセル径が細孔5の入口細孔径の0.5~2倍の範囲にある場合は、溶媒層に包まれた界面活性剤層直径と細孔入口径が概ね一致するために、逆ミセルが細孔入口に侵入する過程で、界面活性剤分子の疎水部と担体細孔壁の間に強い吸着を伴い逆ミセルの安定性が失われミセル構造が崩壊する。その際に、活性金属粒子は界面活性剤の親水部に吸着しているため、界面活性剤を介して活性金属粒子は細孔入口付近にトラップされ、細孔入口から短い距離に固定されることとなる。
【0081】
<担持工程>
担持工程では、導電性粒子2の集合体である担体3と、還元工程で得られた活性金属粒子4を混合することによって活性金属粒子4を導電性粒子2上に分散させて担持させる。
【0082】
担体3は、「2.担体3の構成」で説明したものを用いることができる。混合は、還元工程後の混合溶液と、担体3を混合することが好ましい。担持後の担持金属触媒は界面活性剤の除去のため、親水基と疎水基を有する溶剤で洗浄することが好ましく、この溶剤はアルコールであることが好ましい。この際のアルコールはメタノールないしエタノールであることが好ましい。
【0083】
5-2.保護コロイド法
保護コロイド法では、担持金属触媒の製造方法は、混合工程と、還元工程と、担持工程を備える。以下、各工程について説明する。
【0084】
<混合工程>
混合工程では、活性金属前駆体を含む活性金属前駆体溶液と、高分子保護剤と、還元剤を混合して混合溶液を生成する。
【0085】
活性金属前駆体及びその溶液の説明は、逆ミセル法と同様である。
【0086】
高分子保護剤は、活性金属前駆体に付着して親水保護コロイドを形成可能な任意の物資であり、ポリビニルピロリドンとポリアクリル酸とポリビニルアルコールの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0087】
還元剤としては、活性金属前駆体を還元可能な任意の還元剤が利用可能であり、例えば、逆ミセル法の説明で挙げた還元剤やアルコール(エチレングリコール、エタノール、メタノール等)が利用可能であり、アルコールが好ましい。
<還元工程>
還元工程では、混合溶液中の活性金属前駆体を還元して活性金属粒子4を生成する。
【0088】
活性金属前駆体の還元は、混合溶液中の還元剤を用いて行うことができ、還元剤にアルコールを使用する場合混合溶液を還流することによって行うことが好ましい。
【0089】
還元工程で得られた活性金属粒子4は、親水保護コロイドとなっており、親水保護コロイド全体の直径は、活性金属粒子4自体の直径よりも大きくなっている。このため、活性金属粒子4が細孔5内の深い位置に担持されることが抑制され、表層領域に担持される活性金属粒子4の数分率が高められる。
【0090】
混合溶液中における動的光散乱法で測定される個数中位径が親水保護コロイド全体の直径に相当し、この個数中位径が、逆ミセル法と同様に、細孔5の平均入口細孔径の0.5~2倍であることが好ましい。この倍率は、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0091】
<担持工程>
担持工程の説明は、逆ミセル法と同様である。
【0092】
6.燃料電池200
図7に燃料電池の模式図を示す。図7において、燃料電池200は、電解質膜230を挟んでアノード201側の触媒層220A、ガス拡散層210Aとカソード202側の触媒層220K、ガス拡散層210Kがそれぞれ対向するように構成される。アノード側ガス拡散層210A、アノード側触媒層220A、電解質膜230、カソード側触媒層220K、カソード側ガス拡散層210Kがこの順に並ぶ構成である。燃料電池200のアノード201とカソード202の間に負荷203を接続することにより、負荷203に対し電力を出力する。
【0093】
カソード側触媒層220Kが担持金属触媒1を含むことが好ましい。カソード反応が細孔5の深い位置で起こると、反応によって発生した水が適切に排出されず、活性金属粒子4の活性が低下してしまうという問題が発生するが、本発明の担持金属触媒1は、導電性粒子2の表層領域に担持される活性金属粒子4の数分率が高いので、カソード側触媒層220Kが担持金属触媒1を含むことによって上記問題が緩和される。
【実施例
【0094】
1.担体の製造
以下に示す方法で担体を製造した。
【0095】
1-1.製造例1(ミセルテンプレート、無撹拌、連結構造体)
製造例1では、ミセルをテンプレートとして、カーボン粒子の粉末である担体を製造した。
【0096】
<集積体生成工程>
まず、炭素源であるフェノール:0.6057gと、ホルムアルデヒド溶液:2.1mLと、0.1MのNaOH:15.1613gを混合して混合溶液を作製した。
次に、混合溶液を70℃バス中で、345rpmで0.5時間撹拌した。
次に、テンプレート分子であるPluronic F-127(BASF社製、非イオン性界面活性剤、疎水ブロックが一対の親水ブロックで挟まれて構成されるトリブロック共重合体、以下「F-127」と称する。):0.96gと、超純水:15.0033gを添加した後、65℃バス中で、345rpmで2時間撹拌した。
次に、超純水:50gを添加した後、65℃バス中で、345rpmで16~18時間撹拌し、その後、25℃で静定し、上澄み液:17.7mLを取り出した。
以上の反応によって、F-127で構成されたミセルがレゾールで被覆された炭素源球体7が生成され、炭素源球体7が自己集積して炭素源集積体8が形成された。
【0097】
<結合工程>
上澄み液:17.7mLと超純水:56gを混合して得られる分散液を、オートクレーブ内で、無撹拌で130℃で24時間静置することによって、炭素源球体7同士を結合させて炭素源結合体を形成した。
次に、濾過によって炭素源結合体を取り出し、水洗浄した後、50℃で真空加熱乾燥させた。
【0098】
<炭素化工程>
次に、真空加熱乾燥後の炭素源結合体0.05gにエタノール:50gを加えて、炭素源結合体を再分散してエタノールゾルを得た。
次に、ホットプレート加熱した硝子板上にエタノールゾルを滴下して、加熱乾燥した。
次に、加熱乾燥後の炭素源結合体を窒素中、800℃で3時間加熱することによって炭素化させて、カーボン粒子の粉末を得た。
【0099】
得られた粉末に対して、収差補正レンズ付き走査透過型電子顕微鏡(STEM、日立ハイテクノロジーズ社製、HD-2700)を用いて、図8に示す二次電子像を撮影した。二次電子像から明らかな通り、カーボン粒子は、太い部分と細い部分が交互に連続しており、一次粒子が平均5個以上連結された連結構造体となっていることが分かった。連結構造体は、一次粒子の平均連結数が10以上、平均直列連結数が4.3であった。
【0100】
太い部分の最大直径を一次粒子径とし、100箇所以上計測し、その平均値を求めたところ、55.7±5.4nmであった。また、細い部分の最小直径を、一次粒子同士の連結部の直径とし、100箇所以上計測し、その平均値を求めたところ、37.7±5.4nmであった。
【0101】
次に、50万倍~100万倍の間の倍率で二次電子像観察を行い、細孔サイズの計測を行った。その際に、電子顕微鏡像の明度と濃淡を調整し、カーボン粒子の一次粒子の外表面と外表面に開口した細孔の境界が明瞭と成る様にした。粒子径計測ソフトウエア(ニレコ社製、ルーゼックスAP)を用いて各細孔の円相当径を100個以上計測し平均入口細孔径とその標準偏差を求めたところ、5.2±0.5nmであった。±の後の数値は、標準偏差を示す。
【0102】
なお、以下の三点に相当する場合、細孔としてカウントしないこととした。(1)カーボン粒子の一次粒子は球形または紡錘形であるため、側面近傍に位置する細孔は電子顕微鏡観測によってその正確なサイズを計測することができない。(2)電子顕微鏡像の明度と濃淡を調節した後でも、試料の形状や観察条件によってカーボン粒子外表面と細孔の境界線が十分に明瞭とならない場合が有る。(3)試料が正焦点の範囲に無い場合、細孔サイズを正確に求めることができない。
【0103】
次に、細孔の円相当径を求める際に、円に近似した細孔の円重心座標を記録し、隣り合う細孔の円重心点間距離から細孔間距離を100カ所以上求め、平均細孔間距離とその標準偏差を算出したところ、12.6±1.4nmであった。
【0104】
1-2.製造例2(ミセルテンプレート、15rpmで撹拌、連結構造体)
分散液を15rpm(レイノルズ数450に相当)で撹拌しながら結合工程を行った以外は、製造例1と同様の方法で、カーボン粒子の粉末である担体を製造した。
【0105】
得られたカーボン粒子の粉末に対して、製造例1と同様に、図9に示す二次電子像を撮影した。二次電子像から明らかな通り、カーボン粒子は、太い部分と細い部分が交互に連続しており、一次粒子が平均5個以上連結された連結構造体となっていることが分かった。
【0106】
1-3.製造例3(ミセルテンプレート、濃度1/2に希釈、連結構造体)
結合工程において、上澄み液:17.7mLと超純水:112gを混合して分散液を得た以外は、製造例1と同様の方法で、カーボン粒子の粉末である担体を製造した。
【0107】
得られたカーボン粒子の粉末に対して、製造例1と同様に、図10に示す二次電子像を撮影した。二次電子像から明らかな通り、カーボン粒子は、太い部分と細い部分が交互に連続しており、一次粒子が平均5個以上連結された連結構造体となっていることが分かった。
【0108】
1-4.製造例4(ミセルテンプレート、50rpmで撹拌、単粒子)
分散液を50rpm(レイノルズ数1490に相当)で撹拌しながら結合工程を行った以外は、製造例1と同様の方法で、カーボン粒子の粉末である担体を製造した。
【0109】
得られたカーボン粒子の粉末に対して、製造例1と同様に、図11に示す二次電子像を撮影した。二次電子像から明らかな通り、カーボン粒子は、単粒子となっていることが分かった。
【0110】
1-5.製造例5(ミセルテンプレート、340rpmで撹拌、単粒子)
分散液を340rpm(レイノルズ数10190に相当)で撹拌しながら結合工程を行った以外は、製造例1と同様の方法で、カーボン粒子の粉末である担体を製造した。
【0111】
得られたカーボン粒子の粉末に対して、製造例1と同様に、図12に示す二次電子像を撮影した。二次電子像から明らかな通り、カーボン粒子は、単粒子となっていることが分かった。
【0112】
1-6.製造例6(ミセルテンプレート、粗大粒子)
<レゾール前駆体ゲル形成工程>
まず、エタノール:69.11gと、超純水:4.48mLと、F-127:3.62gを混合して混合溶液を作製した。
次に、混合溶液を室温で0.5時間撹拌した。
次に、炭素源であるレゾルシノール:11.01gを添加した後、室温で0.5時間撹拌した。
次に、37%ホルマリン:7.3048gを添加した後、室温で0.5時間撹拌した。
次に、5mol/dm塩酸:1.182gを添加した後、30℃、300rpmで72時間撹拌した。
次に、静定後、二相分離した下層を16.0226g取り出した。
【0113】
<レゾール前駆体ゲル重合工程>
次に、取り出した下層を90℃で、24時間、静置した。
【0114】
<炭素化工程>
次に、窒素中、800℃で3時間加熱することによって炭素化させて、カーボン粒子の粉末を得た。
【0115】
得られたカーボン粒子の粉末に対して、製造例1と同様に、図13に示す二次電子像を撮影した。二次電子像から明らかな通り、カーボン粒子は、粗大粒子となっていた。
【0116】
製造例1と同様の方法で平均入口細孔径とその標準偏差及び、平均細孔間距離とその標準偏差を求めたところ、4.6±1.1nm、10.4±1.1nmであった。
【0117】
1-7.製造例7(メソポーラスシリカテンプレート)
製造例7では、メソポーラスシリカをテンプレートとして、カーボン粒子の粉末である担体を製造した。
【0118】
<テンプレート調製工程>
まず、超純水:787.88mLと、28%アンモニア水:13.32gを混合して混合溶液を作製した。
次に、混合溶液を室温で0.5時間撹拌した。
次に、エタノール696gと、テンプレート分子であるCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム):8.5434gと、超純水70.42gを添加した後、室温で2時間撹拌した。
次に、TEOS:17.3gと、アセチルアセトン:3.67gと、チタンイソプロポキシド:0.50gを添加した後、室温で16時間撹拌した。これによって、メソポーラスシリカのナノ粒子が得られた。
【0119】
<炭素源含浸転写工程>
メソポーラスシリカのナノ粒子:1gと、炭素源であるスクロース1.25gと、超純水:1.25gと、濃硫酸:0.14gを混合し、室温で撹拌して、液を全てナノ粒子に吸収させた。
【0120】
<炭素化工程>
次に、窒素中、900℃で6時間加熱することによって、ナノ粒子内の炭素源を炭素化させた。
【0121】
<テンプレート除去工程>
次に、2.5wt%NaOH水溶液:50mLを添加し、100℃で1時間撹拌することによってナノ粒子のテンプレートを除去して、カーボン粒子の粉末を得た。
【0122】
得られたカーボン粒子の粉末に対して、製造例1と同様に、図14に示す二次電子像を撮影した。二次電子像から明らかな通り、カーボン粒子は、球状分散粒子となっていた。
【0123】
製造例1と同様の方法で平均入口細孔径とその標準偏差及び、平均細孔間距離とその標準偏差を求めたところ、2.5±0.4nm、2.4±0.5nmであった。
【0124】
1-8.製造例8(結合工程での炭素源球体の濃度依存性)
図15は、製造例1の結合工程において、上澄み液量を変化させた場合(つまり、分散液中の炭素源球体7の濃度を変化させた場合)に得られる炭素源結合体の電子顕微鏡像を示す。ここで使用した上澄み液量は、1倍量の場合は17.7mLであり、1/2倍量、1.25倍量、1.5倍量、2倍量、4倍量の場合、それぞれ8.9mL、22.1mL、26.6mL、35.4mL、70.8mLとした。上澄み液量を増加させることによって炭素源結合体の一次粒子径および連結部の直径が増大し、構造を制御することができる。
【0125】
1-9.製造例9(結合工程での加熱温度依存性)
図16は、製造例1の結合工程において、オートクレーブ処理中の加熱温度を変化させた場合に得られる炭素源結合体の電子顕微鏡像を示す。加熱温度を変化させることによって一次粒子径および連結部の直径、およびナノ孔形状が変化し、構造を制御することができる。
【0126】
1-10.製造例10(アニール温度の影響)
図17は、製造例1の結合工程での上澄み液量を1.25倍量とした上で、炭素化工程での窒素中での加熱温度を700℃とし、その後に1000℃、1200℃、又は1400℃で真空アニール処理を行った場合に得られるカーボン粒子の粉末の電子顕微鏡像を示す。アニール温度によって、カーボン粒子の一次粒子径、連結部直径、およびナノ孔構造が変化し、構造制御できることが分かる。
【0127】
1-10.製造例10(噴霧凍結乾燥)
製造例10は、炭素化工程を以下のように行う点を除いて、製造例1と同様の方法で担体を製造した。
【0128】
<炭素化工程>
まず、製造例1の結合工程で得られた真空加熱乾燥後の炭素源結合体粉末0.3gを超純水40mL中に超音波ホモジナイザーを用いて5分間処理し分散液を調製した。次にこの分散液を液体窒素750mL中に噴霧した。得られた凍結微粉末をフリーズドライ装置中で16時間フリーズドライ工程を経ることで炭素源結合体の乾燥粉末を得た。
【0129】
次に、上記工程で得られた乾燥粉末を窒素中、700℃で2時間加熱することによって炭素化させて、カーボン粒子の粉末を得た。得られたカーボン粒子の粉末は、粒子同士の凝集度が非常に低かった。
【0130】
2.活性金属粒子の担持
以下の方法に従って、活性金属粒子を担体に担持させた。
【0131】
2-1.実施例1(逆ミセル法、Rw=3、粗大粒子)
<混合工程>
60mmol/Lの界面活性剤(NP-5、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、平均付加モル数=5)/シクロヘキサン溶液をメスフラスコで調製した。
調製した溶液を1日静置させた後、40mmol/L(Pt:7684ppm)のHPtCl水溶液をRwが3(mol/mol)となるように添加して活性金属前駆体混合溶液を生成した。ここでRwとは、水と界面活性剤のモル比(水/界面活性剤)である。
【0132】
<還元工程>
得られた活性金属前駆体混合溶液を、室温で5時間撹拌しながら、Ptに対して20当量のNaBHを添加した。この際、NaBHによってHPtClが還元され溶液に色調の変化が生じ、白金粒子が逆ミセルに包含されている状態になる。動的散乱法で測定した逆ミセルの個数中位径は5.9nmであった。これは、製造例6で得られたカーボン粒子の平均入口細孔径(=4.6nm)の1.28倍であった。
【0133】
<担持工程>
製造例6で得られたカーボン粒子をPt担持量が20wt%となるように還元工程後の溶液に投入し、室温で終夜撹拌した。
次に、得られた生成物をメンブレンフィルターで濾過し、メンブレンフィルター上でメタノール(100mL)洗浄し、減圧乾燥によって界面活性剤を除去した。以上の工程で、白金粒子がカーボン粒子に担持された担持金属触媒が得られた。
【0134】
カーボン粒子に担持された白金粒子の平均粒子径を以下の方法で算出した。まず、Pt担持した触媒を電子顕微鏡用カーボン支持膜付きグリッドのせ、それを電子顕微鏡観察して得られた像から楕円近似より白金粒子の平均粒子径を算出した。その結果、白金粒子の平均粒子径は、2.9nmであった。
【0135】
表層領域に担持されている白金粒子(以下、「表層担持粒子」)の数分率を以下の方法で算出した。まず、白金粒子を担持したカーボン粒子の粉末をシリコンウエハ基板上に載せ、金蒸着によって試料粒子外表面に保護層を形成した。その後収束イオンビーム(FIB)装置(FB2200、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いてガリウムイオンビームで試料粒子を切断し、電子顕微鏡観察用試料切片を調製した。その後、切断面を電子顕微鏡観察する際に、図18の右側に示すZコントラスト像(原子番号コントラスト像)から試料上に存在する金属粒子(Au粒子およびPt粒子)を観測し、同時にエネルギー分散型X線分光器を用いて、各々の金属粒子の組成を分析し、Pt粒子とAu粒子を見分けた。そしてAu粒子が存在する部分から、Au粒子が存在せずにPt粒子のみ存在する部分への変化点(境界線)を、カーボン粒子の外表面と断面の境界線と定義した。電子顕微鏡像上で、上記試料外表面境界線B1から試料粒子中心方向に15nmの位置に外表面境界線と平行のとなる線分B2を引き、外表面境界線B1と15nm位置の線分B2の間にあるPt粒子数と、15nm位置の線分より粒子中心方向の深い位置にあるPt粒子数との割合から、表層担持粒子の数分率を算出した。その結果、表層担持粒子の数分率は86%であった。
【0136】
また、表層担持粒子のうち細孔内に担持されているもの(以下、「表層細孔担持粒子」)の数分率を以下の方法で算出した。白金担持カーボン粒子のSTEM観察において、二次電子像から細孔入口の平面方向の位置を特定し、次にZコントラスト像からカーボン粒子上および内部に担持されている観察視野中すべての白金の平面方向の位置を特定した。次に、得られた細孔入口の位置と白金の位置を比較することで細孔内に担持されている白金の数分率を算出した。この際、二次電子像で観察されないが、Zコントラスト像で観察される白金は細孔内部に担持されていると判断した。Zコントラスト像の取得の際の焦点深度を参考にカーボン粒子の裏半球に存在する白金は除外した。その結果、表層細孔担持粒子の数分率は74.4%であった。
【0137】
2-2.参考例1(逆ミセル法、Rw=2~6、粗大粒子)
Rwを2~6の間で変化させた以外は、実施例1と同様に、混合工程及び還元工程を実施し、還元工程後の混合溶液中における動的光散乱法で測定される個数中位径を測定した。その結果を図19に示す。図19の横軸がRw、縦軸が個数中位径である。
【0138】
個数中位径の測定条件は、以下の通りである。
測定装置:堀場製作所社製、型式:SZ-100V2
ゲート時間を640nsとした、ナノアナリシスモードで測定した。測定は3回以上行い、その平均値を個数中位径とした。
【0139】
図19に示すように個数中位径の値は、Rwの値に依存しており、Rw=3では、6nm程度であった。
【0140】
2-3.実施例2(逆ミセル法、Rw=3、連結構造体)
担持工程において製造例1で得られたカーボン粒子を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、白金粒子がカーボン粒子に担持された担持金属触媒が得られた。実施例1と同様の方法で各種測定を行ったところ、白金粒子の平均粒子径は、2.9nmであり、表層担持粒子の数分率は98%であった。また、表層細孔担持粒子の数分率は56%であった。
【0141】
2-4.実施例3(保護コロイド法、粗大粒子)
<混合工程>
0.66mmol/LのHPtCl水溶液:713mLと、脱イオン水:28mg、エチレングリコール:98mg、ポリビニルピロリドン(PVP):20mgを混合して、混合溶液を生成した。
【0142】
<還元工程>
得られた混合溶液を120℃のオイルバスで還流し、溶液に色調の変化が起きた段階でオイルバスから引き上げた。この際、エチレングリコールによってHPtClが還元され色調の変化が生じ、白金粒子がポリビニルピロリドンで包まれて、親水保護コロイドの状態になる。動的散乱法で測定した保護コロイドの個数中位径は3.5nmであった。これは、製造例6で得られたカーボン粒子の平均入口細孔径(=4.6nm)の0.76倍であった。
【0143】
<担持工程>
製造例6で得られたカーボン粒子を還元工程後の溶液に投入し、室温で終夜撹拌した。
次に、得られた生成物をメンブレンフィルターで濾過し、メンブレンフィルター上でメタノール(100mL)洗浄し、乾燥させた。以上の工程で、白金粒子がカーボン粒子に担持された担持金属触媒が得られた。担持金属触媒の表面のZC像(Zコントラスト像)及びSE像(二次電子像)を図20に示す。
【0144】
白金粒子のうち、カーボン粒子の表面上に担持されているものの数分率を以下の方法で算出した。まず、図20のZC像において、凹部内に担持されている白金粒子の数と、凸部(カーボン粒子の表面)上に担持されている白金粒子の数を数えた。凸部上に担持されている白金粒子の数を、白金粒子の総数で除することによって数分率を算出した。その結果、細孔内(凹部)に担持されている白金粒子の数分率は60%であった。
【0145】
2-5.実施例4(保護コロイド、連結構造体)
担持工程において製造例1で得られたカーボン粒子を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、白金粒子がカーボン粒子に担持された担持金属触媒が得られた。図21のZコントラスト像において白金粒子の平均粒子径を算出したところ、2.8nmであった。また、表層担持粒子の数分率は97%であった。表層細孔担持粒子の数分率は51%であった。
【0146】
2-6.比較例1(従来法、ケッチェンブラック)
<担持工程>
平底ビーカーにイオン交換水を50mL、HPtCl水溶液(白金換算で20g/L)をPt重量として150mgとなるように混合した。次に、炭素担体としてケッチェンブラック(グレード:EC300J)を150mg加え攪拌した。この混合物をホットスターラー上で攪拌しながら80℃で加熱し、水分を蒸発させ、粉体とした。
【0147】
<還元工程>
この粉体を耐熱皿に移し、150℃で1時間、300℃で2時間(昇温速度10℃/min)水素気流下で還元処理をした。
【0148】
カーボン粒子に担持された白金粒子径を実施例1と同様の方法で算出した。その結果、白金の平均粒子径は、4.5nmであった。実施例1と同様の方法で、表層担持粒子の数分率を算出したところ、31%であった。
【0149】
2-7.比較例2(従来法、連結構造体)
<担持工程>
平底ビーカーに超純水を37mL、HPtCl水溶液(白金換算で20g/L)を0.82g、亜硫酸水素ナトリウム1.96gを混合した。次に超純水150gを加え、5重量%水酸化ナトリウムおよび30%過酸化水素水を交互に添加して、最終的にpHが5.0となる様に調整した。この過程で加えた30%過酸化水素水の合計添加量は15mLとした。次に、製造例1で得られたカーボン粒子を500mg加え攪拌した。この混合物をホットスターラー上で攪拌しながら90℃で加熱し後放冷し、濾過、超純水洗浄、乾燥を行い粉末を得た。
【0150】
<還元工程>
この粉体を石英U字菅に移し、300℃で2時間(昇温速度10℃/min)水素気流下で還元処理をした。
【0151】
得られた担持金属触媒の表面のZC像(Zコントラスト像)及びSE像(二次電子像)を図22に示す。カーボン粒子に担持された白金粒子径を実施例1と同様の方法で算出した。その結果、白金の平均粒子径は、1.1nmであった。STEMを用いて二次電子像とZC像を比較した結果、白金粒子は表層も担体粒子内部も均一に非選択的に担持されていた。
【0152】
また、比較例2では、表層部と中心部に存在する活性金属の濃度に差は無く、担体全体に一様に活性金属が担持されていたのに対し、本願実施例1では、図18のように、表層部と中心部に存在する活性金属の濃度に差があった(表層部>中心部)。
【0153】
2-8.実施例5(逆ミセル法、Rw=3、OMC-NS、2液混合法)
<混合工程>
60mmol/Lの界面活性剤(NP-5、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、平均付加モル数=5)/シクロヘキサン溶液100mLをメスフラスコで調製した。
調製した溶液を1日静置させた後、40mmol/L(Pt:7684ppm)のHPtCl水溶液をRwが3(mol/mol)となるように添加して活性金属前駆体混合溶液を生成した。
【0154】
<還元工程>
同様にして、60mmol/Lの界面活性剤(NP-5、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、平均付加モル数=5)/シクロヘキサン溶液をメスフラスコで調製した。
調製した溶液を1日静置させた後、Rwが3(mol/mol)となるように、NaBH水溶液を添加して還元剤混合溶液を生成した。ここでNaBHの濃度は、Ptに対して20当量となるように添加した。その後、活性金属前駆体混合溶液に還元剤混合溶液を添加し、攪拌しながら混ぜ合わせた。
【0155】
この際、NaBHによってHPtClが還元され溶液に6.1nmであった。これは、製造例6で得られたカーボン粒子の平均入口細孔径(=4.6nm)の1.3倍であった。
【0156】
<担持工程>
実施例1と同様の方法で担持工程を行うことによって、白金粒子がカーボン粒子に担持された担持金属触媒が得られた。このときPt担持量が20wt%となるようにした。得られた担持金属触媒の表面のZC像(Zコントラスト像)及びSE像(二次電子像)を図23に示す。
【0157】
実施例1と同様の方法で算出した白金粒子の平均粒子径は、4.8nmであった。実施例1と同様の方法で算出した表層細孔担持粒子の数分率は、60%以上であった。
【0158】
<酸素還元活性>
調製した触媒の酸素還元活性は、回転電極法により測定した。触媒粉末を少量の超純水を加えたエタノール液中に超音波分散して触媒インクを調製した。直径10mmの黒鉛円板上に触媒インクを滴下し、エタノール蒸気雰囲気中で乾固し、Pt担持量が11μg/cm(代表値)となる様に数回に分けてインクの滴下と乾固を繰り返した。次に5wt%ナフィオン溶液を、乾固後のナフィオン膜厚が0.05μmとなる様に滴下し、常温で乾燥後、130℃に保った電気炉に投入し、3時間固化した。触媒塗布した黒鉛円板をステンレス製ロッドに固定したものを作用極とし回転電極装置に取り付けた後、0.1M過塩素酸電解液を満たしたパイレックス製三極セルに作用極を浸漬した。30分電解液を窒素パージした後に、0.05V~1.0Vの間、500mV/sの速度で波形の変化が無くなるまで掃引を繰り返した。次に0.05V~1.0Vの間、50mV/sの速度で掃引し、サイクリックボルタモグラムを取得し、水素吸着波の面積から電気化学表面積(ECA)を求めた。次に電解液を30分間、酸素パージし、0.25Vから1.0Vの間、5mV/sで掃引し対流ボルタモグラムを取得した。取得した対流ボルタモグラムの0.70V、0.75V、0.85V、0.90Vにおける電流値を用いたKoutecky-Levichプロットから面積比活性と質量活性を算出した。表1に示す通り、逆ミセル法により調製した実施例5の触媒(20wt%Pt/OMC触媒)は市販触媒(田中貴金属工業社製、型式TEC10E50E、50wt%Pt/CB触媒)と比較して1.5倍~6.1倍の質量活性を示した。
【0159】
【表1】
【符号の説明】
【0160】
1:担持金属触媒、2:導電性粒子、2a:連結構造体、2b:一次粒子、2c:連結部、2d:表面、3:担体、4:活性金属粒子、5:細孔、7:炭素源球体、8:炭素源集積体、8a:隙間、200:燃料電池、201:アノード、202:カソード、203:負荷、210A:アノード側ガス拡散層、210K:カソード側ガス拡散層、220A:アノード側触媒層、220K:カソード側触媒層、230:電解質膜
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