(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】回転テーブルおよび真円度測定機
(51)【国際特許分類】
G12B 5/00 20060101AFI20221228BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
G12B5/00 A
G01B5/00 L
(21)【出願番号】P 2019054310
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 順介
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-83652(JP,A)
【文献】特開平6-66559(JP,A)
【文献】特開2018-80748(JP,A)
【文献】実開昭59-83218(JP,U)
【文献】特開2014-34997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G12B 5/00
G01B 5/00
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置される載物台と、垂直な回転中心軸線まわりに回転駆動される回転ベースと、前記回転ベースに設置されて前記載物台を支持する支持機構と、前記回転ベースに対して前記載物台の水平出し調整を行う水平出し調整機構と、前記回転ベースの回転力を前記載物台に伝達する伝達機構と、を有し、
前記支持機構は、前記回転ベースに支持されかつ前記載物台の下面側を球面状の摺動面を介して支持する支持部材を有し、
前記水平出し調整機構は、前記載物台の中央から下向きに延びる水平出し軸部と、前記水平出し軸部に当接する2組の水平出し変位機構と、を有し、
前記伝達機構は、内側に前記支持機構を挿通可能な環状の伝達部材と、前記伝達部材と前記回転ベースとを連結しかつ第1軸線まわりに回動可能な第1連結機構と、前記伝達部材と前記載物台とを連結しかつ第2軸線まわりに回動可能な第2連結機構と、を有し、前記第1軸線と前記第2軸線とは交差方向に配置されていることを特徴とする回転テーブル。
【請求項2】
請求項1に記載した回転テーブルにおいて、
前記回転ベースの上面に沿って変位可能な可動ベースと、前記可動ベースの前記回転ベースに対する心出し調整を行う心出し調整機構と、を有し、
前記可動ベースには、前記支持部材および前記水平出し変位機構が支持され、
前記心出し調整機構は、前記回転ベースの中央から上向きに延びる心出し軸部と、前記心出し軸部に当接する2組の心出し変位機構と、を有し、
前記第1連結機構は、前記伝達部材に接続される部分と前記回転ベースに接続される部分とが前記第1軸線に沿って変位可能であり、
前記第2連結機構は、前記伝達部材に接続される部分と前記載物台に接続される部分とが前記第2軸線に沿って変位可能であることを特徴とする回転テーブル。
【請求項3】
請求項2に記載した回転テーブルにおいて、
前記水平出し軸部および前記心出し軸部は、それぞれ前記回転中心軸線と同軸に配置され、かつ各々の端面が互いに対向配置されていることを特徴とする回転テーブル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した回転テーブルにおいて、
前記第1連結機構が、前記伝達部材に接続される部分および前記回転ベースに接続される部分のいずれか一方に設置されたストロークベアリングと、いずれか他方に設置されかつ前記ストロークベアリングに挿通されるシャフトとを有することを特徴とする回転テーブル。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した回転テーブルにおいて、
前記第1連結機構が、前記伝達部材に接続される部分および前記回転ベースに接続される部分のいずれか一方に設置されて前記回転中心軸線の方向に延びる一対のピンと、前記ピンにそれぞれストロークベアリングを介して回転自在かつ前記回転中心軸線の方向に移動可能に支持された一対のローラと、いずれか他方に設置されかつ一対の前記ローラの間に挟持されて長手方向に移動可能なシャフトとを有することを特徴とする回転テーブル。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載した回転テーブルにおいて、
前記第2連結機構が、前記伝達部材に接続される部分および前記載物台に接続される部分のいずれか一方に設置されたストロークベアリングと、いずれか他方に設置されかつ前記ストロークベアリングに挿通されるシャフトとを有することを特徴とする回転テーブル。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載した回転テーブルにおいて、
前記第2連結機構が、前記伝達部材に接続される部分および前記載物台に接続される部分のいずれか一方に設置されて前記回転中心軸線の方向に延びる一対のピンと、前記ピンにそれぞれストロークベアリングを介して回転自在かつ前記回転中心軸線の方向に移動可能に支持された一対のローラと、いずれか他方に設置されかつ一対の前記ローラの間に挟持されて長手方向に移動可能なシャフトとを有することを特徴とする回転テーブル。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載した回転テーブルを有することを特徴とする真円度測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転テーブルおよび真円度測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
真円度測定機は、円柱・円筒などの回転対称形状を有する測定対象物(ワーク)の真円度・円筒度・同軸度などを測定するための装置である。そのために、真円度測定機は、回転テーブル上にワークを搭載し、その表面に変位計の測定子を接触させ、回転テーブルを回転させつつ回転テーブルの回転角と測定子の変位とを同時に検出することで、ワークの周面形状を測定している。
【0003】
真円度測定機では、回転テーブルとして、心出し調整機構および水平出し調整機構を有する求心テーブルが用いられる(特許文献1および特許文献2参照)。
求心テーブルは、上面が水平な回転ベースと、回転ベースの上面に沿って変位可能な可動ベースと、可動ベースに支持された載物台とを有する。載物台は、球面状の摺動面を介して可動ベースに支持され、摺動面に沿って変位することで可動ベースに対して傾斜可能である。
心出し調整機構は、マイクロメータヘッドに類する変位機構を2組備え、回転ベースに対して可動ベースを2方向(互いに直交するCx方向およびCy方向)に微小移動させることで、載物台の心出し調整が可能である。
水平出し調整機構は、心出し調整機構の調整機構に対向する同様な変位機構を2組備え、可動ベースに対して載物台を2方向(互いに直交するLx方向およびLy方向)に微小移動させることで、球面支持された載物台を傾斜させ、これにより載物台の水平出し調整が可能である。
【0004】
特許文献1の真円度測定機では、心出し調整機構および水平出し調整機構の一部として、回転ベースから上向きに延びる軸部が用いられるとともに、水平出し調整機構の一部として、載物台から下方へ延びる2本のピン部材が用いられている。
軸部には、心出し調整機構の2組の変位機構(Cx,Cy方向)および水平出し調整機構の2組の変位機構(Lx,Ly方向)が四方から当接されている。
2本のピン部材は、載物台の外周寄りの部位に、載物台の回転中心に対して90度間隔で設置され、それぞれ2組の変位機構(Lx,Ly方向)に係合されている。水平出し調整機構では、ピン部材を各々変位させることで、可動ベースに球面支持された載物台を傾斜させる。この際、可動ベースと載物台とは、球面支持する摺動面では回転が伝達できないため、前述したピン部材を介して可動ベースからの回転力を載物台に伝達している。
【0005】
特許文献2の真円度測定機では、心出し調整機構および水平出し調整機構の一部として、載物台から下方へ延びる軸部が用いられるとともに、水平出し調整機構の一部として、回転ベースから上向きに延びる2本のピン部材が用いられている。特許文献2の軸部およびピン部材は、それぞれ特許文献1におけるピン部材および軸部と上下が反転しているが、それぞれ同様の機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2569390号公報
【文献】特許第2863070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献1および特許文献2の真円度測定機では、心出しまたは水平出し調整機構において、回転テーブルの回転中心軸線に対して90度間隔で配置された2本のピン部材を用いており、これらのピン部材を介して回転テーブルの回転力を載物台に伝達している。このため、各ピン部材を介して載物台に伝達される回転力は、その回転中心に対して各ピン部材がある側に偏ることがある。
伝達される回転力に偏りがあると、回転テーブルに角加速度が生じた際(回転テーブルの加減速時や駆動モータの振動が伝播した際など)に、慣性力によって載物台に半径方向の力が生じ、回転精度が悪化する要因となる。
駆動モータからの振動は、回転力の伝達経路に弾性体を組み込む等で緩和できる可能性がある。しかし、高い回転位置決め精度が要求される真円度測定機において、伝達経路の剛性を低下させる弾性体の組込みは採用できない。また、回転テーブルの加減速を緩やかにすることで、載物台に生じる慣性力を軽減できる。しかし、作業効率を考慮すると、現実的に採用することができない。
このようなことから、水平出し調整機構を有する回転テーブルにおいて、回転力の偏りを防止することが求められていた。
【0008】
本発明の目的は、水平出し調整が可能かつ回転力の偏りを防止できる回転テーブルおよび真円度測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の回転テーブルは、ワークが載置される載物台と、垂直な回転中心軸線まわりに回転駆動される回転ベースと、前記回転ベースに設置されて前記載物台を支持する支持機構と、前記回転ベースに対して前記載物台の水平出し調整を行う水平出し調整機構と、前記回転ベースの回転力を前記載物台に伝達する伝達機構と、を有し、前記支持機構は、前記回転ベースに支持されかつ前記載物台の下面側を球面状の摺動面を介して支持する支持部材を有し、前記水平出し調整機構は、前記載物台の中央から下向きに延びる水平出し軸部と、前記水平出し軸部に当接する2組の水平出し変位機構と、を有し、前記伝達機構は、内側に前記支持機構を挿通可能な環状の伝達部材と、前記伝達部材と前記回転ベースとを連結しかつ第1軸線まわりに回動可能な第1連結機構と、前記伝達部材と前記載物台とを連結しかつ第2軸線まわりに回動可能な第2連結機構と、を有し、前記第1軸線と前記第2軸線とは交差方向に配置されていることを特徴とする。
【0010】
このような本発明では、支持機構により回転ベースに載物台が支持され、水平出し調整機構により回転ベースに対して載物台の水平出し調整をすることができ、伝達機構により回転ベースの回転力を載物台に伝達することができる。
ここで、伝達機構は、水平出し調整機構と機能的に分離されているため、水平出し調整機構の構造に拘束されず、第1連結機構および第2連結機構は環状の伝達部材に均等配置することができ、回転テーブルの回転中心軸線に対して対称に配置することができる。その結果、第1連結機構および第2連結機構を介して載物台に伝達される回転ベースからの回転力を、回転中心軸線に対して対称とすることができ、水平出し調整が可能かつ回転力の偏りを防止することができる。
さらに、本発明では、伝達機構において環状の伝達部材を用いたため、その内側に支持機構を挿通することができ、伝達機構と支持機構あるいは水平出し調整機構とを分離しても、回転テーブルとしての機能を確保することができる。
【0011】
本発明の回転テーブルにおいて、前記回転ベースの上面に沿って変位可能な可動ベースと、前記可動ベースの前記回転ベースに対する心出し調整を行う心出し調整機構と、を有し、前記可動ベースには、前記支持部材および前記水平出し変位機構が支持され、前記心出し調整機構は、前記回転ベースの中央から上向きに延びる心出し軸部と、前記心出し軸部に当接する2組の心出し変位機構と、を有し、前記第1連結機構は、前記伝達部材に接続される部分と前記回転ベースに接続される部分とが前記第1軸線に沿って変位可能であり、前記第2連結機構は、前記伝達部材に接続される部分と前記載物台に接続される部分とが前記第2軸線に沿って変位可能であることが好ましい。
【0012】
このような本発明では、回転ベースに対して、可動ベース、支持機構および載物台が水平方向へ変位可能とされ、その変位は心出し調整機構により調整可能である。伝達機構においては、第1連結機構が第1軸線に沿って変位可能とされ、第2連結機構が第2軸線に沿って変位可能とされることで、回転ベースと載物台との水平方向の変位を許容できる。従って、前述した水平出し調整の機能に加えて、心出し調整の機能を追加することができる。
【0013】
本発明の回転テーブルにおいて、前記水平出し軸部および前記心出し軸部は、それぞれ前記回転中心軸線と同軸に配置され、かつ各々の端面が互いに対向配置されていることが好ましい。
【0014】
このような本発明では、対向する一対の端面より上側が水平出し軸部、下側が心出し軸部となり、回転中心軸線の周りに同じ構成の変位機構を4つ、90度間隔で設置し、隣接する2本を上側の水平出し軸部に当接させ、他の2本を下側の心出し軸部に当接させることで、水平出し調整機構および心出し調整機構を構成することができる。その結果、部品の共通化および構造の簡素化を促進することができる。
【0015】
本発明の回転テーブルにおいて、前記第1連結機構が、前記伝達部材に接続される部分および前記回転ベースに接続される部分のいずれか一方に設置されたストロークベアリングと、いずれか他方に設置されかつ前記ストロークベアリングに挿通されるシャフトとを有することが好ましい。
このような本発明では、第1連結機構において、ストロークベアリングにより簡単な構造で、水平出し調整あるいは心出し調整に必要な変位を許容し、円滑な動作をすることができる。
【0016】
本発明の回転テーブルにおいて、前記第1連結機構が、前記伝達部材に接続される部分および前記回転ベースに接続される部分のいずれか一方に設置されて前記回転中心軸線の方向に延びる一対のピンと、前記ピンにそれぞれストロークベアリングを介して回転自在かつ前記回転中心軸線の方向に移動可能に支持された一対のローラと、いずれか他方に設置されかつ一対の前記ローラの間に挟持されて長手方向に移動可能なシャフトとを有することが好ましい。
このような本発明では、第1連結機構において、一対のローラに挟持されたシャフトにより、水平出し調整あるいは心出し調整に必要な変位を許容するとともに、ローラがピンに沿って移動することで、回転ベースと載物台との間(周方向の一部または全周)で回転テーブルの回転中心軸線の方向の変位が生じても、これを許容することができる。
【0017】
本発明の回転テーブルにおいて、前記第2連結機構が、前記伝達部材に接続される部分および前記載物台に接続される部分のいずれか一方に設置されたストロークベアリングと、いずれか他方に設置されかつ前記ストロークベアリングに挿通されるシャフトとを有することが好ましい。
このような本発明では、第2連結機構において、ストロークベアリングにより簡単な構造で、水平出し調整あるいは心出し調整に必要な変位を許容し、円滑な動作をすることができる。
【0018】
本発明の回転テーブルにおいて、前記第2連結機構が、前記伝達部材に接続される部分および前記載物台に接続される部分のいずれか一方に設置されて前記回転中心軸線の方向に延びる一対のピンと、前記ピンにそれぞれストロークベアリングを介して回転自在かつ前記回転中心軸線の方向に移動可能に支持された一対のローラと、いずれか他方に設置されかつ一対の前記ローラの間に挟持されて長手方向に移動可能なシャフトとを有することが好ましい。
このような本発明では、第2連結機構において、一対のローラに挟持されたシャフトにより、水平出し調整あるいは心出し調整に必要な変位を許容するとともに、ローラがピンに沿って移動することで、回転ベースと載物台との間(周方向の一部または全周)で回転テーブルの回転中心軸線の方向の変位が生じても、これを許容することができる。
【0019】
本発明の真円度測定機は、前述した本発明の回転テーブルを有することを特徴とする。
このような本発明では、前述した本発明の回転テーブルで説明した通りの作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、水平出し調整が可能かつ回転力の偏りを防止できる回転テーブルおよび真円度測定機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態の真円度測定機を示す斜視図。
【
図2】前記実施形態の回転ベース、載物台および伝達機構を示す分解斜視図。
【
図3】前記実施形態の回転テーブルを示す
図2のIII-III線断面図。
【
図4】前記実施形態の回転テーブルを示す
図2のIV-IV線断面図。
【
図5】前記実施形態の第1連結機構を示す分解斜視図。
【
図6】前記実施形態の第2連結機構を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に基づく真円度測定機1が示されている。
真円度測定機1は、本体ケース2の上面に、測定対象物であるワークWを載置する回転テーブル10を有する。本体ケース2には、回転テーブル10に隣接してコラム3が設置され、コラム3にはプローブ4が支持されている。プローブ4は、コラム3に形成された移動機構5によりX軸方向およびZ軸方向に移動可能であり、回転テーブル10に載置されたワークWの任意の表面位置を測定可能である。
【0023】
本体ケース2には、測定制御装置6が接続されている。
測定制御装置6は、いわゆるパーソナルコンピュータなどのコンピュータシステムで構成され、キーボードやポインティングデバイスなどの操作部7からの操作を受け付け、指定された測定プログラムを実行して回転テーブル10および移動機構5の動作を制御し、得られた測定結果などを表示部8に表示可能である。
【0024】
回転テーブル10は、上面にワークWを載置可能な円盤状の載物台11を有し、側面は円筒状のカバー12で囲われている。
カバー12には、四方に向けて心出し調整用のCx調整ノブ13、Cy調整ノブ14、水平出し調整用のLx調整ノブ15、Ly調整ノブ16が設置されている。
回転テーブル10において、載物台11はZ軸方向に延びる回転中心軸線Cまわりに回転可能に支持され、本体ケース2の内部に設置された図示しない駆動モータ等で回転駆動される。
【0025】
図2に示すように、回転テーブル10は、上面に載物台11を有するとともに、円筒状のカバー12の内部にそれぞれ円盤状の回転ベース21および可動ベース31を有する。
図3および
図4に示すように、回転ベース21は、本体ケース2の内部から回転中心軸線Cに沿って上向きに延びる駆動軸22の上端に固定されている。可動ベース31は、回転ベース21の上面に配置されている。
可動ベース31と駆動軸22の上面との間には、周方向に均等配置された複数の転動ボール32が介在され、転動ボール32が転動することで、可動ベース31は回転ベース21の上面に沿った任意の方向へ変位可能である。
【0026】
可動ベース31の上方には、複数の支柱33を介して支持部材34が設置されている。
支持部材34は、上面に凹状の球面に形成された摺動面341を有し、載物台11の下面側に近接した高さに保持されている。載物台11の下面には凸状の球面に形成された摺動面111が形成されている。
支持部材34の摺動面341と載物台11の摺動面111との間には転動ボール35が介在され、各々は図示しないリテーナで保持されている。支持部材34の摺動面341および載物台11の摺動面111は、曲率中心が回転中心軸線C上の同位置とされ、転動ボール35を介して互いに転動することで載物台11は支持部材34ないし可動ベース31および回転ベース21に対して傾斜可能である。
【0027】
本実施形態では、転動ボール32、可動ベース31、支柱33、支持部材34および転動ボール35により、回転ベース21に設置されて載物台11を支持する本発明の支持機構91が構成されている。
【0028】
駆動軸22の上面中央には、上方へ延びる心出し軸部221が形成され、心出し軸部221は可動ベース31の中央開口311を挿通して可動ベース31の上面側まで延長されている。
載物台11の下面中央には、下方へ延びる水平出し軸部112が形成され、水平出し軸部112は支持部材34の中央開口342を挿通して支持部材34の下面側まで延長されている。
水平出し軸部112および心出し軸部221は、それぞれ回転中心軸線Cと同軸に配置され、互いに同径であるとともに、各々の端面が互いに対向配置されている。
【0029】
可動ベース31の上面には、2組の心出し変位機構40および2組の水平出し変位機構50が設置されている。
2組の心出し変位機構40は、回転中心軸線Cに対してCx調整ノブ13およびCy調整ノブ14が配置された方向(
図1参照)に配置されている。
2組の水平出し変位機構50は、回転中心軸線Cに対してLx調整ノブ15およびLy調整ノブ16が配置された方向(
図1参照)に配置されている。
【0030】
2組の心出し変位機構40は、それぞれ可動ベース31の上面に固定側部分41が固定され、固定側部分41には送りねじ軸42が軸受を介して回転自在に支持されている。送りねじ軸42は回転中心軸線Cに向けて延びている。固定側部分41には移動側部分43が送りねじ軸42に沿って移動自在に設置され、移動側部分43のナット部分に送りねじ軸42が螺合されている。移動側部分43は、一部が心出し軸部221の周面に対向され、リテーナで保持された転動ボール44を介して心出し軸部221の周面に当接されている。なお、移動側部分43は、図示しない弾性部材により心出し軸部221に近接する方向へ付勢されている。
【0031】
2組の心出し変位機構40のうち、一方の送りねじ軸42にはCx調整ノブ13が接続され(
図3参照)、他方の送りねじ軸42にはCy調整ノブ14が接続されている(
図4参照)。
従って、Cx調整ノブ13を操作することで、Cx調整ノブ13が接続された心出し変位機構40において移動側部分43および固定側部分41を相対変位させ、可動ベース31を回転ベース21に対してCx方向に変位させることができる。
また、Cy調整ノブ14を操作することで、Cy調整ノブ14が接続された心出し変位機構40において移動側部分43および固定側部分41を相対変位させ、可動ベース31を回転ベース21に対してCy方向に変位させることができる。
【0032】
本実施形態では、回転ベース21(これに固定された駆動軸22)から延びる心出し軸部221と、これに当接する2組の心出し変位機構40(Cx調整ノブ13およびCy調整ノブ14を有する)とにより、Cx方向およびCy方向の心出し調整機構92が構成されている。
【0033】
2組の水平出し変位機構50は、それぞれ前述した心出し変位機構40の固定側部分41、送りねじ軸42、移動側部分43および転動ボール44と同様な固定側部分51、送りねじ軸52、移動側部分53および転動ボール54を有し、転動ボール54が水平出し軸部112の周面に当接されている。なお、移動側部分53は、図示しない弾性部材により水平出し軸部112に近接する方向へ付勢されている。
【0034】
2組の水平出し変位機構50のうち、一方の送りねじ軸52にはLx調整ノブ15が接続され(
図3参照)、他方の送りねじ軸52にはLy調整ノブ16が接続されている(
図4参照)。
従って、Lx調整ノブ15を操作することで、Lx調整ノブ15が接続された水平出し変位機構50において移動側部分53および固定側部分51を相対変位させ、水平出し軸部112を介して載物台11を摺動面111,341に沿って回転させ、Lx方向へ傾斜させることができる。
また、Ly調整ノブ16を操作することで、Ly調整ノブ16が接続された水平出し変位機構50において移動側部分53および固定側部分51を相対変位させ、水平出し軸部112を介して載物台11を摺動面111,341に沿って回転させ、Ly方向へ傾斜させることができる。
【0035】
本実施形態では、載物台11から延びる水平出し軸部112と、これに当接する2組の水平出し変位機構50(Lx調整ノブ15およびLy調整ノブ16を有する)とにより、Lx方向およびLy方向の水平出し調整機構93が構成されている。
【0036】
回転ベース21の外周には、直径方向に対向する2位置にそれぞれ第1連結機構61が設置され(
図2および
図3参照)、一対の第1連結機構61の間にはリング状(円環状)の伝達部材63が支持されている。
伝達部材63には、一対の第1連結機構61と直交方向に対向する2位置にそれぞれ第2連結機構62が設置され、各々は載物台11の下面に接続されている。
【0037】
図5において、第1連結機構61は、回転ベース21の外周に固定される第1ブロック611と、伝達部材63に固定される第1シャフト612とを有する。第1ブロック611の上端部にはストロークベアリング613が嵌め込まれ、ストロークベアリング613には第1シャフト612が挿通される。
【0038】
図2および
図3のように、第1シャフト612は第1軸線A1に沿って配置され、回転ベース21および第1ブロック611と、第1シャフト612および伝達部材63とは、第1軸線A1まわりに相対回転可能である。また、第1シャフト612がストロークベアリング613を介して受けられているため、回転ベース21と伝達部材63とは第1軸線A1の方向へ相対変位可能である。
図5および
図3のように、第1ブロック611には中間部に挿通孔614が形成され、心出し調整機構92のCx調整ノブ13およびCy調整ノブ14を挿通させることができ、相互の干渉を避けることができる。
【0039】
図6において、第2連結機構62は、伝達部材63の外周に固定される第2シャフト621と、載物台11の下面に固定される第2ブロック622とを有する。第2ブロック622の下面側には回転中心軸線Cの方向(Z軸方向)に延びる一対のピン623が固定され、各々にはストロークベアリング624を介してローラ625が回転自在に支持されている。一対のローラ625は、それぞれ円筒状に形成され、外周面の中間部分の溝の内側に第2シャフト621を挟持可能である。
【0040】
図2および
図4のように、第2シャフト621は第2軸線A2に沿って配置されている。第2軸線A2は、第1連結機構61の第1軸線A1に対して直交方向とされている。
伝達部材63および第2シャフト621と、第2ブロック622および載物台11とは、第2軸線A2まわりに相対回転可能、かつローラ625が第2シャフト621に転動することで第2軸線A2の方向へ相対変位可能である。
さらに、ピン623とローラ625との間にはストロークベアリング613が介在され、回転ベース21と伝達部材63とはピン623の方向(回転中心軸線Cの方向、Z軸方向)へも相対移動可能である。
【0041】
本実施形態では、第1連結機構61、第2連結機構62および伝達部材63により、本発明の伝達機構94が構成されている。
伝達機構94は、第1連結機構61および第2連結機構62の各々において、回転中心軸線Cまわりの回転を規制される。従って、伝達機構94により、回転ベース21の回転力を載物台11へと伝達することができる。
前述した支持機構91は、中間に転動ボール32,35を有し、駆動軸22からの回転力を載物台11に十分に伝達することができない。しかし、本実施形態では、伝達機構94により、回転ベース21の回転力を載物台11へと確実に伝達することができる。
さらに、第1連結機構61および第2連結機構62が、それぞれ伝達部材63の直径方向に対向配置されるため、各々で伝達される回転力が回転中心軸線Cに対して対称な偶力となり、加減速時などであっても回転力の偏りを防止することができる。
【0042】
一方、伝達機構94は、第1連結機構61により第1軸線A1まわりに回動可能かつ第1軸線A1に沿って移動可能であり、第2連結機構62により第1軸線A1と直交する第2軸線A2まわりに回動可能かつ第2軸線A2に沿って移動可能であり、さらに第1軸線A1および第2軸線A2の各々と直交する回転中心軸線Cに沿って移動可能である。
従って、水平出し調整機構93により載物台11を回転ベース21に対してLx方向およびLy方向に傾けた場合でも、その動作を妨げることがない。
また、心出し調整機構92により載物台11を回転ベース21に対してCx方向およびCy方向に変位させた場合でも、その動作を妨げることがない。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
本実施形態では、支持機構91により回転ベース21に載物台11が支持され、水平出し調整機構93により回転ベース21に対して載物台11の水平出し調整をすることができ、伝達機構94により回転ベース21の回転力を載物台11に伝達することができる。
ここで、伝達機構94は、水平出し調整機構93と機能的に分離されているため、水平出し調整機構93の構造に拘束されず、第1連結機構61および第2連結機構62は環状の伝達部材63に均等配置することができ、回転テーブル10の回転中心軸線Cに対して対称に配置することができる。その結果、第1連結機構61および第2連結機構62を介して載物台11に伝達される回転ベース21からの回転力を、回転中心軸線Cに対して対称とすることができ、水平出し調整が可能かつ回転力の偏りを防止することができる。
さらに、本実施形態では、伝達機構94において環状の伝達部材63を用いたため、その内側に支持機構91を挿通することができ、伝達機構94と支持機構91あるいは水平出し調整機構93とを分離しても、回転テーブル10としての機能を確保することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、回転ベース21に対して、可動ベース31から支持機構91ないし載物台11が水平方向へ変位可能とされ、その変位は心出し調整機構92により調整可能である。伝達機構94においては、第1連結機構61が第1軸線A1に沿って変位可能とされ、第2連結機構62が第2軸線A2に沿って変位可能とされることで、回転ベース21と載物台11との水平方向の変位を許容できる。従って、前述した水平出し調整機構93による水平出し調整の機能に加えて、心出し調整機構92による心出し調整の機能を得ることができる。
【0045】
本実施形態では、水平出し軸部112および心出し軸部221が、それぞれ回転中心軸線Cと同軸に配置され、互いに同径、かつ各々の端面が互いに対向配置されるように構成した。このため、水平出し軸部112および心出し軸部221では、対向する一対の端面より上側が水平出し軸部112、下側が心出し軸部221となり、回転中心軸線Cの周りに同じ構成の変位機構40,50を計4つ、90度間隔で設置し、隣接する2本を上側の水平出し軸部112に当接させ、他の2本を下側の心出し軸部221に当接させることで、水平出し調整機構93および心出し調整機構92を構成することができる。その結果、部品の共通化および構造の簡素化を促進することができる。
【0046】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、第1連結機構61において、第1ブロック611にストロークベアリング613を嵌め込み、伝達部材63に第1シャフト612を固定した。これに対し、第1ブロック611に第1シャフト612を固定し、伝達部材63にストロークベアリング613を嵌め込んでもよく、同様な効果を得ることができる。
前記実施形態では、第2連結機構62において、第2ブロック622に一対のピン623ないしローラ625を設置し、伝達部材63に固定した第2シャフト621を挟持した。これに対し、伝達部材63に一対のピン623ないしローラ625を設置し、第2ブロック622に固定した第2シャフト621(第2軸線A2方向)を挟持してもよい。
【0047】
前記実施形態では、回転ベース21と伝達部材63とを連結する第1連結機構61として、第1ブロック611、第1シャフト612およびストロークベアリング613による、第1軸線A1まわりに回動可能かつ第1軸線A1に沿って移動可能(回転中心軸線Cに沿って移動は不可)な構成を用いた。これに対し、回転ベース21に、第2連結機構62のような一対のピン623ないしローラ625を設置し、伝達部材63に固定した第2シャフト621を挟持する構成とし、回転中心軸線Cに沿って移動可能としてもよい。
第1連結機構61が回転中心軸線Cに沿って移動可能とされる場合には、第2連結機構62において回転中心軸線Cに沿って移動可能である必要はない。すなわち、第2連結機構62に、第1ブロック611、第1シャフト612およびストロークベアリング613を用い、第2軸線A2まわりに回動可能かつ第2軸線A2に沿って移動可能(回転中心軸線Cに沿って移動は不可)な構成としてもよい。
【0048】
前記実施形態では、水平出し軸部112および心出し軸部221を同径としたが、異なる径であってもよい。水平出し変位機構50および心出し変位機構40は同じ高さでなく、異なる高さに設置してもよい。例えば、水平出し変位機構50は水平出し軸部112の下端の高さに配置し、心出し変位機構40は心出し軸部221の上端の高さに配置してもよい。
その他、真円度測定機1を構成する他の部分、例えば本体ケース2、内蔵される駆動モータ等、コラム3、プローブ4、移動機構5および測定制御装置6などは、実施にあたって適宜構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、回転テーブルおよび真円度測定機に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1…真円度測定機、10…回転テーブル、11…載物台、111…摺動面、112…水平出し軸部、12…カバー、13…Cx調整ノブ、14…Cy調整ノブ、15…Lx調整ノブ、16…Ly調整ノブ、2…本体ケース、21…回転ベース、22…駆動軸、221…心出し軸部、3…コラム、31…可動ベース、311…中央開口、32…転動ボール、33…支柱、34…支持部材、341…摺動面、342…中央開口、35…転動ボール、4…プローブ、40…心出し変位機構、41…固定側部分、42…送りねじ軸、43…移動側部分、44…転動ボール、5…移動機構、50…水平出し変位機構、51…固定側部分、52…送りねじ軸、53…移動側部分、54…転動ボール、6…測定制御装置、61…第1連結機構、611…第1ブロック、612…第1シャフト、613…ストロークベアリング、614…挿通孔、62…第2連結機構、621…第2シャフト、622…第2ブロック、623…ピン、624…ストロークベアリング、625…ローラ、63…伝達部材、7…操作部、8…表示部、91…支持機構、92…心出し調整機構、93…水平出し調整機構、94…伝達機構、A1…第1軸線、A2…第2軸線、C…回転中心軸線、W…ワーク。