(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】心臓ペースメーカを用いる心筋リモデリングのための技術ならびに関連するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/365 20060101AFI20230104BHJP
【FI】
A61N1/365
(21)【出願番号】P 2019540291
(86)(22)【出願日】2017-10-06
(86)【国際出願番号】 US2017055536
(87)【国際公開番号】W WO2018067931
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-10-05
(32)【優先日】2016-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519124811
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ バーモント アンド ステイト アグリカルチュラル カレッジ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF VERMONT AND STATE AGRICULTURAL COLLEGE
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、マルクス
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-524450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0051660(US,A1)
【文献】特表2010-512958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0137631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/365
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に植え込むための心臓ペースメーカであって、
ハウジングと、
前記患者の現在の活動レベルを検出し、前記現在の活動レベルを示す出力を生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記ハウジングの内部にある少なくとも1つのプロセッサであって、前記センサからの出力に応じるものであり、前記少なくとも1つのセンサからの出力に基づいて前記患者が現在不活動であることを検出し、
前記患者が現在不活動であることが検出されるとき、第1期間の間、前記患者の心拍数を第1心拍数に増加させるように構成された第1信号を生成し、前記第1心拍数は安静時の心拍数を超え、かつ100拍/分未満であり、
前記第1期間が経過したという決定に応答して、第2期間の間、前記患者の心拍数を第2心拍数に増加させるように構成された第2信号を生成し、前記第2心拍数は100拍/分~140拍/分であることによって、
前記患者の心拍数の調節によって前記患者の心筋のリモデリングを刺激するように構成された前記少なくとも1つのプロセッサと、を含むことを特徴とする、心臓ペースメーカ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサが運動検出器を含むことを特徴とする、請求項1に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記少なくとも1つのセンサからの出力に基づいて前記患者が現在活動中であることが検出されるとき、前記第1信号または前記第2信号の生成を停止するようにさらに構成されることを特徴とする、請求項1に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロセッサが、少なくとも部分的には、前記患者の身長と、体重と、性別とのうちの1つ以上に基づいて前記第2心拍数を選択するようにさらに構成されることを特徴とする、請求項1に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項5】
前記第1心拍数が90拍/分超、かつ100拍/分未満であることを特徴とする、請求項1に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプロセッサによる、前記第2信号が数時間前以内に生成されなかったという決定に応答して、前記第2信号が生成されることを特徴とする、請求項1に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項7】
前記数時間前が6時間であることを特徴とする、請求項6に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項8】
前記第1期間が少なくとも2分間、かつ10分間未満の長さを有する期間であることを特徴とする、請求項1に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項9】
前記第1期間が5分間であることを特徴とする、請求項8に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項10】
前記第2期間が少なくとも30分間、かつ2時間未満の長さを有する期間であることを特徴とする、請求項1に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項11】
前記第2期間が1時間であることを特徴とする、請求項10に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項12】
前記第2心拍数が110拍/分~140拍/分であることを特徴とする、請求項1に記載の心臓ペースメーカ。
【請求項13】
心臓ペースメーカの作動方法であって、
前記心臓ペースメーカの少なくとも1つのプロセッサが、
少なくとも1つのセンサからの出力に基づいて患者が現在不活動であることを検出する工程と、
前記患者が現在不活動であることが検出されるとき、第1期間の間、前記患者の心拍数を第1心拍数に増加させるペーシング用の第1信号を生成する工程であって、前記第1心拍数は安静時の心拍数を超え、かつ100拍/分未満である、工程と、
前記第1期間が経過したという決定に応答して、第2期間の間、前記患者の心拍数を第2心拍数に増加させるさせるペーシング用の第2信号を生成する工程であって、前記第2心拍数は100拍/分~140拍/分である、工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
前記患者が肥満であることを特徴とする、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、高血圧と、左室駆出率の保持された心不全または心筋を弛緩する能力の障害とのうちの1つ以上を有することを特徴とする、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が現在不活動であることを検出する工程が、前記患者が現在眠っていることを検出する工程を含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第2心拍数が、少なくとも部分的には、前記患者の身長と、体重と、性別とのうちの1つ以上に基づくことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのプロセッサによる、数時間前以内に前記第2信号が生成されなかったという決定に応答して、前記第2信号が生成されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記数時間前が6時間であることを特徴とする、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2心拍数が110拍/分~140拍/分であることを特徴とする、請求項
18に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記少なくとも1つのセンサからの10秒前以内の時間窓の出力に基づき、前記患者が現在不活動であることを検出するように構成されている、請求項1に記載の心臓ペースメーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、心臓ペースメーカを用いる心筋リモデリングのための技術ならびに関連するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
座りがちな生活習慣を有し運動が不足している人は、一般的に、活動的な人よりも心臓関連の健康問題をより多く抱えていることが知られている。座りがちな生活習慣は、心臓の主腔のサイズを減少させる可能性がある。これは、筋厚を増加させ、それによって心腔サイズを減少させる持続性高血圧の影響でも起こりうる。その原因にかかわらず、心腔容積の減少は1回拍出量を減少させるが、これは心臓の心拍出量に影響を与える可能性がある。心拍出量の制限は、運動能力を著しく低下させる。
【0003】
左室駆出率の保持された心不全(HFpEF)は、現在、心不全の最も多い原因である。HFpEFは、しばしば、高血圧(HTN)、求心性左室肥大(LVH)、左心室(LV)腔サイズの減少およびLV硬度の上昇と関連している。LV充満障害および小さな腔サイズは、心拍出予備能の制限を通じて運動耐容能を低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】一実施形態による、身体に植え込まれた、心臓に延びているワイヤを有する心臓ペースメーカを示す図。
【
図2】一実施形態による、心臓ペースメーカの詳細を示す図。
【
図3A】一実施形態による、心臓ペースメーカの詳細を示す図。
【
図3B】一実施形態による、心臓ペースメーカの詳細を示す図。
【
図3C】一実施形態による、心臓ペースメーカの詳細を示す図。
【
図4】一実施形態による、心臓ペースメーカの作動方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一態様によれば、患者に植え込むための心臓ペースメーカであって、ハウジングと、患者の活動レベルを検出するように構成された少なくとも1つのセンサと、ハウジングの内部にあり、センサに接続された少なくとも1つのプロセッサであって、少なくとも1つのセンサからの出力に基づいて患者の不活動を検出し、患者の当該不活動が検出されるとき、第1期間の間、患者の心拍数を第1心拍数に増加させるように構成された第1信号を生成し、第1心拍数は安静時の心拍数を超え、かつ100拍/分未満であり、第1期間が経過したという決定に応答して、第2期間の間、患者の心拍数を第2心拍数に増加させるように構成された第2信号を生成し、第2心拍数が100拍/分~140拍/分であることによって患者の心拍数の調節によって患者の心筋のリモデリングを刺激するように構成された少なくとも1つのプロセッサと、を含むペースメーカが提供される。
【0006】
一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサは運動検出器を含む。
一実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも1つのセンサからの出力に基づいて患者の活動が検出されるとき、第1信号または第2信号の生成を停止するようにさらに構成される。
【0007】
一実施形態によれば、第2心拍数は、患者の身長、体重および性別のうちの1つ以上の少なくとも一部分に基づく。
一実施形態によれば、第1心拍数は90拍/分超、かつ100拍/分未満である。
【0008】
一実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサによる、第2信号が数時間前以内に生成されなかったという決定に応答して第2信号が生成される。
一実施形態によれば、数時間前は6時間である。
【0009】
一実施形態によれば、第1期間は少なくとも2分間、かつ10分間未満の長さを有する。
一実施形態によれば、第1期間はおおよそ5分間である。
【0010】
一実施形態によれば、第2期間は少なくとも30分間、かつ2時間未満の長さを有する。
一実施形態によれば、第2期間はおおよそ1時間である。
【0011】
一実施形態によれば、第2心拍数は110拍/分~140拍/分である。
一態様によれば、少なくとも1つのプロセッサを用いて、少なくとも1つのセンサからの出力に基づいて患者の不活動を検出する工程と、患者の当該不活動が検出されるとき、第1期間の間、患者の心拍数を第1心拍数に増加させるように構成された第1信号を生成する工程であって、第1心拍数は安静時の心拍数を超え、かつ100拍/分未満である、工程と、第1期間が経過したという決定に応答して、第2期間の間、患者の心拍数を第2心拍数に増加させるように構成された第2信号を生成する工程であって、第2心拍数は100拍/分~140拍/分である、工程とを含む方法が提供される。
【0012】
一実施形態によれば、患者は、そうでないと示されていない限り、現在認められているペースメーカによる治療の対象である。
一実施形態によれば、患者は肥満である。
【0013】
一実施形態によれば、患者は、高血圧と、左室駆出率の保持された心不全または心筋を弛緩する能力の障害とのうちの1つ以上を有する。
一実施形態によれば、患者の当該不活動を検出する工程は、患者が眠っていることを検出する工程を含む。
【0014】
一実施形態によれば、第2心拍数は、少なくとも一部分において、患者の身長、体重および性別のうちの1つ以上に基づく。
一実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサによる、数時間前以内に第2信号が生成されなかったという決定に応答して、前記第2信号が生成される。
【0015】
一実施形態によれば、数時間前は6時間である。
一実施形態によれば、第2心拍数は110拍/分~140拍/分である。
以下の図を参照して種々の態様および実施形態が説明される。当然のことながら、図は必ずしも縮尺どおりには描かれていない。図面において、種々の図に示されている同一またはほぼ同一の構成要素のそれぞれは同じ数字で表されている。明快さのために、どの図面においてもすべての構成要素に表示がされているわけではない。
【0016】
正常な安静時拍数を超えての心拍数の増加は、心臓を肥大させる可能性がある。心拍数が大きく上昇し、かつ/または長期間にわたり上昇している場合、患者は心腔拡大および/または心不全を発症する可能性がある。これは一般に頻脈誘発性心筋症と呼ばれる臨床表現型である。あるいは、心拍数が中等度に上昇または断続的に上昇している場合、心腔の拡大は有益である可能性がある。例えば、プロ自転車競技者のような持久力を必要とする運動選手は、拡大しているとみなされるレベルにまで心腔サイズを拡大させることができる。これによって、彼らの心拍出量を異例なレベルにまで増加させ、超生理的なレベルにまで彼らの運動能力を高めることが可能である。これらの変化は不活動によって逆行するため良性とみなされ、スポーツ心臓と呼ばれる。しかしながら、制御されない速い心室伝導を伴う心房細動を発症する患者は、同じく、彼らの心腔容積の同様な拡大を発症する可能性がある。心拍数が長期間にわたり制御されない場合、それによって頻脈誘発性心筋症を引き起こす可能性がある。投薬の有無にかかわらず、正常レベルへの心拍数の回復によって、心腔サイズを急速に正常化することができる。
【0017】
一般に、心筋組織は可塑性を有し、かつリモデリングすることができる。心筋はまた、高血圧誘発性の心筋の肥厚(しばしば左室肥大(LVH)と呼ばれる)のように、循環要求の変化にすばやく適合する。心拍数(HR)はまた、心筋リモデリングにも影響を及ぼす。持久運動によるHRの増加および妊娠時のHRの増加は、正常な大きさの2倍にまでLV腔を拡大させる一因となる。このタイプのLVリモデリングは良性であり可逆性である。
【0018】
LV重量の増加のないLV腔拡張は、動物において、頻脈ペーシングによって誘発することができる。この表現型は、正常な心拍数の回復と同時にすばやく復帰することができる。頻脈誘発性LV腔拡大は、心房細動を伴う心室頻拍後の患者においても見られる。この設定では、正常な心室拍数の回復はLV腔サイズを減少させるのに十分であろうと考えられる。
【0019】
本発明者は、心筋ペーシング誘発性LVリモデリングを引き起こす技術を認め評価した。特に、心室拍数が制御された後、速い心室伝導を伴う心房細動後のHFpEF患者において正常なLV腔寸法が回復するという症候の改善が見られ、拡張機能の改善が見られた。本発明者は、活動期間に実施される従来の調整ではなく、不活動期間に患者の心拍数を増加させるペースメーカを構成することによって、このような改善を実現する技術を認め評価した。これによって、患者の心臓の有益なリモデリングが引き起こされてもよい。例えば、患者の心拍数は、その患者が眠っている間、患者の心腔に有益な拡大を引き起こすのに十分なレベルに増加されてもよい。この増加は、運動の1以上の生理学的態様を模倣してもよく、それによって心筋の調子を整えてもよい。
【0020】
本発明者は、さらに、心拍数の特定の範囲は、患者の心拍数がこの範囲内に上げられるとき、患者に不快感を引き起こすことなく、患者の心腔への有益な変化(例えばそれらの容積を増加させる)を安全に引き起こすことができることを認め評価した。特に、100拍/分(bpm)超、かつ140bpm未満の心拍数は、軽度から中等度の血圧低下、左室拡張末期圧(LVEDP)の低下、高カロリー使用、またはその組み合わせなどの生理学的効果を引き起こすことが観察されている。この窓内の心拍数は、睡眠または、制限された運動が行われる他の状況などの、患者の不活動期間の間に適用されるとき、患者に実質的な不快感を引き起こさないことも見出されている。
【0021】
一実施形態によれば、患者に取り付けられるペースメーカは、患者が不活動であると決定されたとき、101bpm~140bpm窓内の拍数に患者の心拍数を増加させるように構成されてもよい(本明細書において、101bpmは単に100bpm超である心拍数の下限を指すことを明確にするために用いられているが、100bpm超の任意の心拍数、例えば100.5bpmも同等に使用することができる)。いくつかの実施態様において、ペースメーカは、心拍数モニタおよび/または運動検出器(例えば加速度計)などの、患者の活動レベルを検出する1以上のセンサで構成されてもよい。患者が不活動であることを最初に確認した後、心拍数を目標心拍数まで徐々に高め、目標拍数付近に所定の期間維持してもよい。
【0022】
一実施形態によれば、ペースメーカは、あるしきい値を超えて患者の活動レベルが上がったと決定されるとき、患者の心拍数の増加を停止する(例えば、ペースメーカに心拍数の調整しようとする命令および/または信号を生成することを停止させる)ように構成されてもよい。このように、ペースメーカは、ペースメーカが心拍数を上げている期間の間、活動レベルを定期的に決定するように構成されてもよい。この特徴は、リモデリング効果を引き起こすように設計された人工刺激と、患者の身体活動によって引き起こされる心臓活動との組み合わせによって、患者の心拍数が危険なレベルにまで上がらないように安全性を提供するものであってもよい。
【0023】
一実施形態によれば、ペースメーカは、上記した101bpm~140bpm窓内に心拍数を上げる前の期間、安静時の心拍数を超えるが、なお101bpm~140bpm窓未満であるように患者の心拍数を上げるように構成されてもよい。本発明者は、上記のように、有益な血行力学的効果および/または心腔のリモデリングを引き起こす101bpm~140bpmへの心拍数の増加の前に、比較的短い最初の心拍数の増加を実施する生理学的利点があり得ることを認め評価した。これらのさらなる利点は、血圧低下、心房細動の発生率の低下、心不全の減少および/または重症度の低い症状、左房圧および/または左室拡張末期圧(LVEDP)の低下、高カロリー使用、またはその組み合わせを含んでもよい。さらに、本明細書において、「間質リモデリング刺激」と呼ぶこの最初の増加は、少なくとも一部の患者において数値化することが困難な場合もある間質および/または分子レベルでの心臓への変化を引き起こしてもよい。この最初の刺激は、心腔サイズの増加を可能にするために、間質をリモデリングし、それによって組織硬度を低下させる。これは、最近、頻脈のブタモデルにおいて明らかにされた。
【0024】
一実施形態によれば、患者に取り付けられるペースメーカは、所定の時間窓内で特定の回数だけ101bpm~140bpm窓内の拍数に患者の心拍数を増加させるように構成されてもよい。例えば、連続する6時間の時間窓の間1回のみ(例えば、午前6時~午後12時、午後12時~午後6時、午後6時~午前12時および午前12時~午前6時のそれぞれの間1回のみ)。ペースメーカは、もう1回このような作動を開始するかどうかを決定するときログが参照されてもよいように、101bpm~140bpm窓内へ患者の心拍数を上げるために実施された以前の作動(例えば回数、期間など)に関するログを保持するように構成されてもよい。このような作動の回数および期間に関する記述があるルールもまた、このような決定において参照されてもよい。
【0025】
一実施形態によれば、患者に取り付けられるペースメーカは、生理的な安静時の心拍数よりもほんの少し上のレベルに患者の心拍数を増加させるように構成されてもよい。例えば、安静時の心拍数が60bpmである患者に取り付けられるペースメーカは、患者の心拍数を70bpmに増加させるように構成されてもよい。本発明者は、心拍数の低下が、心腔の充満容積を増加させ、それが心臓内の血圧を増加させることを決定した。これはしたがって、より高い中心血圧を生じさせる場合があり、少なくともある場合には、心房細動などの問題を生じさせる場合がある。患者の安静時を超える心拍数への増加は、中心血圧の低下によってこのような問題を緩和する場合がある。場合によっては、このような増加は、患者の心拍数が101bpm~140bpm窓内の拍数に上げられている期間に続いて適用されてもよい。例えば、このような期間が終了するとき(例えば、期間が終了するか、または患者の活動が検出されることによって)、次いで、ペースメーカに心拍数をその安静時拍数に低下させる代わりに、ペースメーカは、その代わりとして安静時拍数のすぐ上の拍数に心拍数を低下させるように構成されてもよい。
【0026】
ペースメーカは、心臓を刺激し心臓が打つ拍数を変化させるために低エネルギー電気パルスを用いる。一般的に言って、本明細書に記載の技術がペースメーカに使用されるとき、ペースメーカは、「安静時の心拍数」とも呼ばれる遅いかまたは自然な心臓のリズムを作り出す。本明細書において、「安静時の心拍数」とは、眠っている患者などの、安静時における患者に付随する範囲内にある心拍数のことをいう。正常な安静時の心拍数は、40~90拍/分の範囲内であり、患者によって異なる場合もあるし、時とともに異なる場合もある(例えば所定の患者の身体変化など)。本明細書において、ペースメーカが心拍数を目標拍数に「増加させる」(または別様に目標拍数に心拍数を変える)という場合、これは、ペースメーカが、心臓を刺激するための電気信号を発生し、心臓の拍数をこの目標拍数に変化させることをいう。
【0027】
本明細書に記載の技術は、心拍数を正常な安静時の心拍数を超えるレベルに増加させるようにプログラムされたペースメーカを利用する。一実施形態において、ペースメーカのプロセッサに接続された1以上のセンサが、ペーシングを制御するフィードバックループに組み込まれることが望ましい場合がある。
【0028】
ペースメーカによっては、位置検出器、夜機能および/または遠隔監視装置などの他の機能を含んでもよい。ペースメーカによっては、血液温度、呼吸速度および他の要素を監視し、心拍数をこれらの変化に合わせることもできる。ペースメーカにおける夜機能の特徴は、生理学的パラメータを監視することができる少なくとも1つのセンサを用いる基礎拍数の制御を含む。安静期および、活動期の再開などの異なる期はセンサによって検出され、それに応答して、ペースメーカの基礎拍数を適合させる信号が送られる。速い心調律を促して心筋を刺激するために、患者の実際の安静に応答して、正常にプログラムされた安静時拍数または基礎拍数を超えて基礎拍数を増加させことができる。
【0029】
心臓の電気活動およびペースメーカの機能は、場合によっては、遠隔監視されてもよい。例えば医療関係者は、ペーシングを遠隔監視し、患者の安静時にペーシングレベルを増加したレベルに合わせることができる。もう1つのペースメーカの特徴は、心拍適合ペースメーカである。これらの装置は、患者の要求を決定する機構、患者の要求に応答してペーシング頻度を制御するためのペーシング頻度制御素子および、ペーシング頻度が遅くなりすぎるのを予防するためのペーシング頻度制限機構を含む。
【0030】
本発明の方法は患者において実施されてもよい。本明細書において、患者はヒトまたはヒト以外の脊椎動物であるが、好ましくはヒトである。好ましくは、ヒトは心拍出予備能を増加させる必要のある患者である。例えばこのような患者は、正常よりも小さい心臓容積を有していてもよい。場合によっては、患者はすでにペースメーカを使用していてもよく、ペースメーカの使用を必要とする適応症を有していてもよい。本例において、ペースメーカは、本発明の方法を実施するようにプログラムされることができる。
【0031】
他の実施形態において、患者は、現在認められているペースメーカによる治療を必要としなくてもよい。例えば、患者は肥満患者であってもよい。これに代えてあるいはこれに加えて、患者は高血圧および/または左室駆出率の保持された心不全を有していてもよい。このような患者は、このような患者の活動の間、心拍数の増加に付随する健康リスクによって通常はペースメーカを装着しなくてもよい。しかしながら、心拍数の増加が不活動期間の間適用され、活動期間の間は適用されず、その結果として同じリスクは存在しない場合があるため、本明細書に記載の技術はこのような患者に用いられてもよい。
【0032】
より一般的には、ペースメーカによる治療を必要とする患者は、心臓の問題を発症する素因を有する患者、例えば以下の特徴:通常、血液量の減少(例えば出血)または、直立するとき下肢のうっ血を生じる重力によって生じる静脈血の戻りの低下;例えば心室肥大または弛緩障害(変弛緩)によって引き起こされる心室拡張不全(心室コンプライアンス低下)、または心室充満の低下をきたす流入弁(僧帽弁および三尖弁)狭窄症、の1以上を有する患者である。
【0033】
本発明のペースメーカによる治療を必要とする患者は、限定するものではないが、心臓の問題に対する素因、すなわち心腔サイズの減少および関連する心臓機能障害、心腔サイズの減少に関連する心臓の状態を有する患者(心筋症、高血圧、外傷を有する患者または、患者の運動する能力が障害された環境での患者)を含んでもよい。高い心血管疾患に関連する要素の例は、限定するものではないが、HIV、糖尿病、冠動脈疾患、高血圧、心筋症、アテローム性動脈硬化症、能力障害、寝たきり、大気汚染、心不全の遺伝的病歴または家族歴、高レベルのコレステロール、肥満、アルコール、コカイン、喫煙または心臓に対して毒性を示す他の薬物の使用(癌の治療)、健康な身体組織を破壊する自己免疫疾患および心筋に影響する感染を含む。
【0034】
高い心血管疾患リスクを反映するバイオマーカーの例は、限定するものではないが、冠動脈石灰化、頚動脈内膜中膜厚、頸動脈総プラーク面積、高フィブリノーゲンおよびPAI-1血中濃度、ホモシステイン上昇、非対称性ジメチルアルギニンの血中濃度上昇、C反応性タンパク質によって測定された炎症、脳ナトリウム利尿ペプチド(B型とも呼ばれる)(BNP)の血中濃度の上昇を含む。
【0035】
実施例のセクションに記載されているように、ペーシングによるLVリモデリングの実行可能性を分析するために設計された研究はブタモデルにおいて実施された。この概念実証研究は、正常なEF表現型の典型的なスペクトルにおいてペーシングによるLVリモデリングが達成できることを明らかにするために、正常な血圧(HTNなし)を有する対照動物および、片側腎動脈狭窄によって誘発された高血圧性LVH動物(HTN/LVH)(2K1Cモデル)を含む。必要なHR要件への洞察を提供するために、LVの幾何学的形状および機能に対する軽度ないし中等度レベルの頻脈の影響が縦断的に研究されてもよい。この実験計画は、群内および群間の比較が考慮に入れられるだろう。拡張機能に対する有益な効果は、9週間の生存研究でのHTN/LVH動物において明らかにされてもよい。表現型を発症させ、ペーシングによるLVリモデリングの影響を研究するためにこの期間を必要としてもよい。
【0036】
ペースメーカは、心房細動において観察された心拍数を提供することができる。一実施形態によれば、ペースメーカは、小さな心腔容積を有する患者において同じ効果を提供してもよい。結果として生じる心腔サイズの増加によって、患者がより運動し、症状が軽減することを可能にしてもよい。
【0037】
本明細書において、患者の心腔容積の正常化を実施するための方法および装置が提供される。心腔容積は当業者に周知である。小さな心腔容積を有する患者は、正常な心拍出量よりも少ない心拍出量を有する患者である。このような患者は、心エコー図もしくは任意の他の心臓イメージング様式、心拍出量、息切れなどの症状または、熟練した医師に公知の任意の他の手段に基づいて小さな心腔容積を有すると診断された患者であってもよい。
【0038】
図1は、心臓との関係において本明細書に記載された、一実施形態によって構成されたペースメーカ装置を示す。
図1の例において、そこから延びているワイヤ4を有するペースメーカ6が示されている。この例において、ワイヤ4は、鎖骨下静脈12を通って、上大静脈2の先に延びている。ワイヤは、任意選択で、右心房10へのワイヤおよび右心室8へのワイヤに分割される。センサまたは電極は、一般的には、心臓の電気活動を検出し、ペースメーカ中のプロセッサにワイヤを通してデータを送る。受信されたデータによって検出された心臓のリズムが安静時の心臓のリズムである場合、プロセッサは、心臓に電気パルスを送るようにペースメーカに命令する。次いで、パルスはワイヤを通って心臓に到達し、そこで心臓は刺激されて心拍数を増加させる。
【0039】
本明細書において、心臓ペースメーカは、心臓に電気刺激を送る内蔵ユニットである。一般的に、ペースメーカは、異常に少ない心拍数および/またはリズムに関連する心拍出量の低下の症状を緩和するために患者に植え込まれる。ペースメーカは、一般に持続性無症候性2型または3型房室(AV)ブロックならびに無症候性洞性および心房性徐脈に用いられる。本発明の方法は、当該技術分野で公知の標準的なペースメーカを用いて遂行してもよいが、本明細書に記載の技術は、異なる機能を果たすようにプログラムされた、すなわち患者が不活動であるという決定に応答して特定の回数心拍数を増加させるようにプログラムされたペースメーカを利用する。ペースメーカは、例えば米国特許出願公開第2001/012954号明細書、米国特許第4688573号明細書、米国特許第4803987号明細書、米国特許第5467773号明細書、米国特許第3885552号明細書、米国特許第5694940号明細書、米国特許第6485416号明細書、米国特許第3885552号明細書、米国特許第4567892号明細書(これらはいずれも参照によって組み込まれる)に記載されている。
【0040】
ペースメーカは、いくつかのペースメーカ構成要素、例えばアナログ整流子、領域増幅器、ピーク振幅増幅器、パルス幅ホールド制御回路、ペーサーパルスセレクタ、ペーサーパルス増幅器、ECG増幅器、高速心電
図ECGプリアンプ、制御論理システム、VCOオーディオシステムまたはその組み合わせを含んでもよい。本明細書に記載の技術は、ペースメーカに用いられるハードウェアおよび/またはソフトウェアの特定の組み合わせに限定されないため、ペースメーカは、ペースメーカ内のプロセッサおよびソフトウェアによって、かつ/またはペースメーカの回路構成によってもよい、本明細書に記載の種々の決定および計算を行うように構成されてもよい。本明細書でいうプロセッサは、記載された機能を実施するようにプログラムされた汎用プロセッサを含んでもよく、かつ/または注文製のプロセッサ(例えばASIC)を含んでもよい。いくつかの実施態様において、ペースメーカは、センサデータおよび/または、患者の活動レベルの計算に用いられるデータなどのデータを記憶することができる揮発性および/または不揮発性メモリを含んでもよい。
【0041】
一実施形態によれば、ペースメーカ6は、患者の活動レベルに関連するセンサデータを得るように構成された1以上のセンサ3を含んでもよい。これらは、
図1に示す任意選択のセンサおよび/または運動/身体活動検出器5に加えて、またはその代わりとして提供されてもよい。限定するものではないリストとして、センサ3は、酸素飽和度センサ、静脈pHセンサ、QT間隔検出器、運動センサ(例えば加速度計)、毎分換気量(MV)センサ、1回心拍出量センサ、中心静脈温度センサ、分時換気量センサ、ピーク心内膜加速度センサ、心周期中の右心室インピーダンスセンサまたはその組み合わせをいくつか含んでもよい。ペースメーカ6は1以上のセンサに接続されてもよく、1以上のセンサから受信したセンサデータに基づいて患者の活動レベルを判断してもよい。このような判断を行う場合、ペースメーカは、5秒前、10秒前などの前の時間窓からのセンサデータを解析してもよい。さらに、ペースメーカは、センサデータを解釈するために用いられるデータにアクセスしてもよく、複数のセンサが用いられる場合、センサ入力を組み合わせて活動レベルの判断を行うために用いられるデータにアクセスしてもよい。
【0042】
図1の例は、必ずしも、関連性があるセンサデータを収集するために存在してもよいセンサ3の構成要素を示すものではないことは明らかであろう。例えば、静脈pH検出器には、患者の血液試料を採取し、血液のpHレベルを測定するためのいくつかの機構を組み込んでもよい。明快さのために、前述の限定するものではないセンサ技術のリストのための可能な構成要素は図示されていないが、一実施形態によれば
図1のシステムに存在してもよい。
【0043】
一実施形態において、ペースメーカ6は、ただ1つのペーシングリードが心臓腔(心房または心室のいずれか)に挿入される単腔ペースメーカであってもよい。他の実施形態において、ペースメーカは、2つの心臓腔にリードが挿入される二腔ペースメーカであってもよい。1本のリードが心房をペーシングし、1本のリードが心室をペーシングする。二腔型は、心房・心室間の機能の協調において心臓を補助することによって、心臓の自然なペーシングにより酷似する。
【0044】
一実施形態において、心臓ペースメーカシステムは、電池、コンピュータ化された発生器またはプロセッサおよび、一端の電極とも呼ばれるセンサを有するワイヤ(リード)を含んでもよい。電池および発生器/プロセッサは、ハウジング6の内部に配置されてもよいし、外部に配置されてもよい。電池は発生器/プロセッサに動力を供給する。ワイヤはハウジングから延びており、発生器を心臓に接続する。
【0045】
例示的心臓ペースメーカを
図2に示す。ワイヤ24の形態のセンサが、ハウジング20から延びている。ハウジングは1以上のプロセッサ22を含む。センサは患者の心臓に植え込まれてもよく、任意の数およびタイプのセンサを含んでもよい。それらの例は上記されている。センサワイヤは、それが心臓の複数の腔と相互作用するように分割することができるが、単に1つの腔と相互作用してもよい。センサは心拍数を検出し、ペースメーカ内のプロセッサ22に信号を送る。このように、センサは、時間の関数として心臓内で感知される心拍動を表す信号を受信するための入力回路を有していてもよい。安静時または別様に不活動の心拍数が検出されるとき、出力信号がプロセッサ22によって生成され、電極28を介して心臓に出力される。出力信号は、安静時の心拍数レベルを超える心拍数に増加させるために心臓を刺激するように構成されてもよい。
図2の例において、ペースメーカ20は遠隔監視装置もまた含む。
【0046】
患者は、任意の期間、心拍数が増加するように刺激されてもよい。心拍数が増加される期間は、前もって決められていてもよい。例えば、装置は、少なくとも5分間、10分間、15分間、30分間、60分間またはそれ以上の間心拍数を上昇させるように設定されてもよい。
【0047】
一実施形態によれば、ペースメーカ6のプロセッサは、患者の身体活動の検出と同時に心拍数を増加させる信号の送出を停止するように構成されてもよい。このような検出は、センサ3および/またはセンサおよび/または運動/身体活動検出器5からの1以上の信号に基づいてもよい。例えば、患者が安静から起きたとき、センサは患者による運動を感知してもよく、プロセッサへのセンサデータ入力は、プロセッサに、心臓活動の増加を引き起こす電気信号の送信を停止させるだろう。
【0048】
一実施形態において、ペースメーカ20は、身体の位置または運動に応じるようにプログラムされてもよい。例えば、ペースメーカは、患者の身体活動の変化を検出し、正常な心拍数を達成するペーシング頻度に自動的に調整するためのセンサを含んでもよく、かつ/またはそのための外部センサに接続されてもよい。例えば、患者が夜寝ている間、安静時よりも高い心拍数でペーシングするようにペースメーカが設定されている場合、患者が起きて動き回っていることを示唆する運動をセンサが検出すれば、拍数は安静時レベルに減少されてもよい。患者が、ある期間、例えば5分間運動を停止すれば、その時はペースメーカは再び安静時拍数よりも高い拍数を提供してもよい。
【0049】
心臓ペースメーカはまた、運動センサに接続され、短い運動を認識するための分類装置を有する位置検出器を含む制御装置を含んでもよい。このタイプのセンサはまた、安静時拍数においてペースメーカの作動の誘因となる運動または位置を検出するために用いてもよい。
【0050】
低い心拍数が検出される場合、刺激の拍数が増加されるように、ペースメーカはフィードバックセンサを含んでもよい。ペースメーカ6は一時的ペースメーカでもよく、恒久的ペースメーカでもよいが、そのどちらも本明細書に記載の技術に有用である。
【0051】
上記のように、本明細書に記載の技術は、患者の不活動の検出に続く、プログラムされた適切なペースメーカによる患者の心拍数の調整に関する。これらの技術は、不活動を検出するための1以上の機構および、心臓に電気刺激を与えるための信号を生成する1以上の機構を利用する。これらの技術は、これらの機械装置の特定の配置に限定されず、またペースメーカの任意の構成要素に関するそれらの配置にも限定されないが、例として、
図3A~
図3Cは、本明細書に記載の技術を実施するために用いられてもよい要素のいくつかの例示的配置を示す。
【0052】
図3Aは、患者の心臓からの患者の心拍数を示す電気信号によって不活動を検出するように構成されたペースメーカ310を示す。ペースメーカ310内のプロセッサは、上記のように、受信された信号に基づいて患者の不活動を検出し、それに応答して患者の心拍数を増加させる電気刺激を生成するようにプログラムされてもよい。加えて、ペースメーカ310内のプロセッサは、上記のように、受信された信号に基づいて患者の活動を検出し、電気刺激がその時生成されていると決定されるとき、その電気刺激を止めるようにプログラムされてもよい。
【0053】
図3Bは、患者の活動レベルを示すペースメーカ内に位置する運動センサからの信号によって不活動を検出するように構成されたペースメーカ320を示す。ペースメーカ320内のプロセッサは、上記のように、運動センサから受信された患者の運動の程度に基づいて患者の不活動を検出し、それに応答して患者の心拍数を増加させる電気刺激を生成するようにプログラムされてもよい。加えて、ペースメーカ320内のプロセッサは、上記のように、運動センサから受信された患者の運動の程度に基づいて患者の活動を検出し、電気刺激がその時生成されていると決定されるとき、その電気刺激を止めるようにプログラムされてもよい。
【0054】
図3Cは、患者の活動レベルを示すペースメーカ内に位置する運動センサからの信号に基づいて、かつ/または中心静脈圧力センサからの信号に基づいて不活動を検出するように構成されたペースメーカ330を示す。中心静脈圧力センサは、例えば中心静脈カテーテル(CVC)を含むが、患者内のいくつかの適切な位置、例えば頚静脈内、鎖骨下静脈内、腋窩静脈内または大腿静脈内のいずれかに配置されてもよい。ペースメーカ320内のプロセッサは、上記のように、運動センサおよび中心静脈圧力センサから受信された信号の一方または両方に基づいて患者の不活動を検出し、それに応答して患者の心拍数を増加させる電気刺激を生成するようにプログラムされてもよい。一実施形態において、2つのセンサ入力のいくつかの組み合わせに従って患者の活動または不活動を特定するためペースメーカ330のプロセッサによって数学的関係が適用されてもよい。ペースメーカ330内のプロセッサは、上記のように、運動センサおよび中心静脈圧力センサから受信された信号の一方または両方に基づいて患者の活動を検出し、その時電気刺激が生成されていると決定されるとき、その電気刺激を止めるようにプログラムされてもよい。
【0055】
図3A~
図3Cの例示的構成のそれぞれにおいて、ペースメーカ310、320および330は、本明細書に記載の技術の実施に用いられてもよい、1以上の揮発性および/または不揮発性媒体が記憶するデータを含んでもよい。例えば、患者の年齢および/または性別に基づいて目標心拍数が選択される実施形態において、患者の年齢および/または性別を示すデータは、このような媒体に記憶され、目標拍数に心拍数を増加させるように構成された心臓への電気刺激を生成するとき、ペースメーカのプロセッサによってアクセスされてもよい。代わりとして、ペースメーカは、ペースメーカが患者に取り付けられる前の特定の患者のために構成されてもよく、種々の検出された活動レベルについての目標心拍数がそのペースメーカ内に記憶されてもよい。このように、ペースメーカのプロセッサには、検出された活動レベルに基づくこれらの目標心拍数にアクセスし、それに応答して適切な電気刺激を生成することだけが必要となる。上記は単に例として提供されるが、しかしながら、1以上のセンサ入力に応答して患者の心拍数を増加させるための上記の電気刺激を提供するペースメーカを構成する多数の技術が想定されてもよく、本発明はこの点で限定されない。
【0056】
図4は、一実施形態による、心臓ペースメーカの作動方法のフローチャートである。上記のように、本発明者は、患者の心拍数が101bpm~140bpmの間に上げられるとき、患者に不快感を引き起こすことなく、患者の心腔への有益な変化が安全に引き起こされることを認め評価した。
図4に示す方法400は、それぞれ
図1に示すペースメーカ6または、
図3A~
図3Cに示すペースメーカ310、320もしくは330などの適切に構成されたペースメーカを用いてこのような効果を生じさせる例示的方法である。
【0057】
方法400は、患者の不活動期間が特定される作業402において開始される。ペースメーカは、(例えば、ペースメーカ内のプロセッサおよびソフトウェアによって、かつ/またはペースメーカの回路構成によって)1以上のセンサから受信されたデータに基づいて不活動を検出するように構成されてもよい。センサは、
図1に示すセンサ3および/またはセンサ5などのセンサを含んでもよく、ペースメーカのハウジングの内部に配置された1以上のセンサ(例えば加速度計)、ペースメーカのハウジングの外部に配置された1以上のセンサ(例えば心拍数検出器)ならびに/またはハウジングの内部および外部の両方に配置された1以上のセンサを含んでもよい。センサは、患者の活動または不活動の決定においてペースメーカによって解釈されることができる活動または不活動を示すセンサデータを提供してもよい。このような決定は、特定の時間窓(例えば前の5秒間)内で受信されたセンサデータについての算術演算を実施し、その結果を前もって決められたあるしきい値に対して比較することを含んでもよい。このようなしきい値は、患者の任意の数の身体特性、例えば身長、体重、年齢、性別またはその組み合わせによって異なっていてもよい。一実施形態において、データは、患者に特化したペースメーカ(例えばペースメーカ内部の、またはペースメーカに別様にアクセス可能な揮発性メモリまたは不揮発性メモリ)に記憶されてもよい。例えば、センサデータは、不活動期間を正確に認識するために、安静時および活動時における患者を観察し、ペースメーカを校正することによって収集されてもよい。
【0058】
作業402における不活動が特定される方法のいかんにかかわらず、作業404において、ペースメーカは第1上昇心拍数で間質リモデリング刺激を適用する。上記のように、間質リモデリング刺激は、100bpmを超える心拍数への増加からなる心臓リモデリングの利点に加えて生理学的利点を提供し得る。間質リモデリング刺激は、患者の心臓を、患者の安静時の心拍数よりも高く100bpmよりも低い拍数に調節するようにペースメーカを設定すること(例えばペースメーカのプロセッサによって)を含む。一実施形態によれば、この間質リモデリング刺激のための心拍数は、70bpm~100bpm、または80bpm~100bpm、または90bpm~100bpm、または95bpm~100bpmであってもよく、例えば99bpmであってもよい。
【0059】
間質リモデリング刺激は、任意の適切な時間適用されてもよいが、好ましくは分のオーダーの期間、例えば2分間~15分間、例えば3分間~12分間、例えば4分間~8分間、例えば5分間適用されてもよい。
【0060】
一実施形態によれば、作業404の間、ペースメーカは定期的または常時患者の活動レベルを決定してもよく、活動レベルがしきい値を超えて上がる場合、間質リモデリング刺激の適用を止めてもよい。作業404中の活動レベルの決定は、作業402において不活動を特定するために用いられたものと同じまたは異なるセンサデータに基づいてもよく、作業402において用いられたものと同じまたは異なるしきい値を利用してもよい。
【0061】
間質リモデリング刺激が終了したら、作業406において、ペースメーカは、本明細書において「容積増加刺激」と呼ぶ患者の心拍数を101bpm~140bpmに増加させる刺激をその時の時間窓内で実施したかどうかを決定する。容積増加刺激を日常的に適用するが、心臓に潜在的に刺激を与え過ぎるほど頻繁ではないようにするために、方法400は、連続する時間窓内で1回のみ容積増加刺激を適用するように計画される。例えば、時間窓は、その時の4時間窓内ですでに容積増加刺激が適用されていた場合、方法400が容積増加刺激を適用しないように、連続する4時間間隔であってもよい。時間窓は、同じサイズであっても異なるサイズであってもよい。例えば、夜中に容積増加刺激をより頻繁に適用するために、夜中の時間窓は昼間の時間窓よりも相対的に短くてもよい。
【0062】
作業406において、容積増加刺激がその時の時間窓内に適用されたことが決定されれば、方法400は終了する。そうでなければ、方法400は、容積増加刺激が適用される作業408に進む。
【0063】
容積増加刺激は、患者の心臓を101bpm超、かつ140bpm未満の拍数に調節するようにペースメーカを設定すること(例えばペースメーカのプロセッサによって)を含む。この範囲に心拍数の目標を定めることは、心臓に障害を与えずに、かつ/または患者に不快感を与えずに心臓の有益なリモデリングを引き起こすために不可欠であることが見出された。101bpm未満では、心臓への刺激は、心臓の有益なリモデリングを引き起こすには不十分な場合がある。140bpmを超えると、刺激は心房細動または他の有害な影響を引き起こす場合がある。一実施形態によれば、容積増加刺激のための前述の心拍数は、101bpm~140bpm、または110~140bpm、または105bpm~130bpm、または115bpm~135bpm、または120bpm~130bpm、または122bpm~128bpmであってもよく、例えば125bpmであってもよい。
【0064】
一実施形態によれば、選択される目標心拍数は、患者の1以上の身体特性、例えば性別、年齢、身長、体重などに基づいてもよい。
容積増加刺激は、任意の適切な時間適用されてもよいが、好ましくは30分間~120分間、例えば40分間~100分間、例えば50分間~80分間、例えば60分間適用されてもよい。容積増加刺激の各適用は、異なる期間適用されてもよい。なぜなら、前もって決められた時間窓にわたって患者に異なる長さの刺激を適用することが有益な場合があるからである。例えば、夜間に適用される容積増加刺激の適用は、日中適用される容積増加刺激の適用よりも短くても長くてもよい。
【0065】
一実施形態によれば、作業408および/または作業410に続いて、任意選択のステップが適用されてもよい。上記のように、患者に取り付けられるペースメーカは、患者の心拍数を超えて、安静時のほんの少し上のレベルに増加させるように構成されてもよい。これによって中心血圧を低下させる場合があり、それによって少なくともある場合には心房細動などの問題を緩和し得る。このように、心拍数の増加のさらなるステップが、ステップ402~408またはステップ402~410に続いて適用されてもよく、そこで心拍数は安静時を超えるが100bpm未満の拍数に増加される。例えば、作業408における容積増加刺激の終了後、心拍数は安静時拍数を超えて増加されてもよい。あるいは作業406において、容積増加刺激がその時の時間窓内で適用されたことが決定された後、心拍数をその自然レベルに復帰させるのではなく、心拍数は安静時拍数を超えて増加されてもよい。いずれの場合においても、心拍数は、例えば、70~100bpm、70~90bpm、75~85bpmに増加されてもよく、または患者の安静時の心拍数の100%~140%に、または患者の安静時の心拍数の110%~130%に、または患者の安静時の心拍数の115%~130%に、または患者の安静時の心拍数の120%~135%に増加されてもよい。
【0066】
本発明は以下の例示的研究によってさらに詳しく説明されるが、いかなる場合もそれを本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
例示的研究 下記の例示的研究の結果は、壁厚を減少させ、LV腔容積を正常化し、心筋線維症を減少させ、かつ/またはLVコンプライアンスを改善するために中等度の心拍数の増加を用いることができることを示唆している。この結果はまた、心拍数を増加させるための記載された技術の影響は補正することができ、可逆的であり、心不全を誘発しないことを示唆している。これらの発見は、HFpEFおよびその前駆疾患基質の新規治療的アプローチの理論的根拠を提供し得る。
【0067】
これらの研究に10頭の成熟雌ユカタンミニブタ(月齢9ヶ月、40~45kg)を用いた。すべてのブタにペースメーカを植え込んだ。同時に、8頭のブタにおいて、左室肥大を誘発するために片側腎動脈狭窄(RAS)を作成した。2頭のブタには、RASを作成しない疑似手術を行った。
【0068】
ペーシング介入前の平均内因性心拍数は93±6/分であった。150/分での2週間の強い心房ペーシングの後、LV容積は著しく増加した。評価された洞リズムにおけるLV拡張末期容積および収縮期容積は、それぞれ54±3%および106±23%増加(ともにp<0.01)し、一方で駆出分画は58±1%から45±1%に減少(p<0.05)した。壁厚減少によってはLV重量は変化しなかった。2週間後のLV容積の実質的増加および駆出分画の減少により、続いて、心房ペーシング頻度を125/分に低下させた。2週間後、LV内腔サイズは小さくなっていたが、ベースラインと比較してなお拡大していた。LV拡張末期容積および収縮期容積は、それぞれ29±24%(p=0.09)および50±19%(p<0.01)増加していた。重要なことには、駆出分画は52±1%に正常化していた。その後、ペーシングを停止させた。2週間後、LV腔サイズはペーシング前のベースラインレベルに復帰した。
【0069】
他の4頭の動物において、我々は125/分の影響を確認した。ペーシング前の最初の3週間の心拍数は88±4/分であった。125/分での2週間のペーシングの後に、洞リズムにおけるLV拡張末期容積は25±14%増加(p<0.05)し、収縮末期容積は増加する傾向(p=0.09)を示した。駆出分画は55±1%であり、ベースラインと差異はなかった。左心室重量もまた変化していなかった。ペーシングの停止後、LV容積は、2週間以内にベースライン値に復帰した。 6頭の動物において、我々は、心拍数誘発性構造変化の前後のLV拡張末期圧力容積関係を連続的に評価することができた。125/分での2週間のペーシングに続いて、我々は、心腔容積の増加による圧力容積関係の右方移動を見出した。125/分での2週間のペーシング後に名目上はベースライン充満圧力に低下したにもかかわらず、これは有意に達しなかった(p=0.24)。しかしながら、拡張コンプライアンス(ボリュームチャレンジを用いΔEDV/ΔEDPで表す)は、125/分での2週間のペーシング後に、ベースラインにおける1.95±0.72mL/mmHgから3.18±0.57mL/mmHgに増加(p<0.05)した。
【0070】
RAS動物および偽動物からのホモジネートにおけるI型およびIII型コラーゲンレベルに有意差はなかった。
いくつかの観察がなされた。
【0071】
1)心拍数の中等度の上昇は、求心性肥大したLVにおいて、駆出分画を減少させることなく、LV容積を増加させ重量/容積比を低下させることができる。
2)LV構造におけるこの変化は可逆的であり、補正することができ、心不全を伴わない。
【0072】
3)この結果は、拍数誘発性(リ)モデリングが、心筋線維症を減少させ、拡張コンプライアンスを改善することを示唆している。
治療標的としての心拍数の理論的根拠は、いくつかの生理学的観察および臨床観察に由来する。心拍数は、その高い変動を通じて、心臓の仕事量における中心的役割を果たしている。スポーツ心臓および妊娠時などにおける多くの生理学的適応において、心拍数は重要な役割を果たしていると考えられている。心拍数は、拡張型心筋症においてすでに確立された治療標的であり、そこでは心拍数の低下は、LV腔サイズを減少させる。対照的に、極端な頻脈は、頻脈誘発性心筋症において明らかなように、LVを強く拡張させることが知られている。したがって、我々は、中等度の上昇心拍数を、心腔容積を回復させ、LV壁厚を減少させ、間質リモデリングプロセスを誘発するために用いることができ、それらは全体でLV充満を改善することができると推測している。そうであれば、求心性肥大を有し、LV充満障害を有する患者は、構造的リモデリングが安全に達成できれば、このことから潜在的に利益を得るであろう。
【0073】
心拍数の影響を補正する潜在能力は、最初に試験した150/分の拍数を125/分の拍数に低下させた後に明らかとなった。2回目の実験シリーズにおいて、LV腔サイズのこの減少が、単に150/分でのペーシング後の腔容積の継続的な復帰の結果ではなく、125/分でのペーシングに特有であることが確認された。我々はまた、170/分の心拍数によって誘発される大変著しい腔拡張でさえも、心不全およびバイオマーカー上昇を伴わず、125/分の拍数によって復帰することができると決定されることから、病的ではないと決定した。2週間以内に、腔寸法は逆行し、駆出分画は正常化された。これらの速い構造変化は、極端な安静臥床、宇宙飛行または再調整にさらされたヒト患者において報告された生理学的適応を超えるレベルにまで推し進められた場合であっても、求心性肥大において生理学的心臓リモデリングプロセスの迅速性が保たれることを明らかにした。
【0074】
125/分を超える拍数でのペーシング後の結果は、遂次的な駆出分画の拍数依存性減少を示唆するが、試験した心拍数のいずれにおいても、心不全を示唆する臨床徴候またはバイオマーカーの変化は見られなかった。これは、観察された構造変化が生理学的適応の範囲内であり、代償不全を起こさないことを示唆している。ブタおよび他の同様なサイズの動物は、200/分を超える心拍数にさらされる場合、BNPおよびノルアドレナリンレベルの上昇を伴う明白な心不全を発症することはよく知られているため、これは重要な発見である。
【0075】
125/分でのペーシング後の拡張末期圧力容積関係に関する我々の分析は、LV拡張末期圧力の低下の傾向と拡張コンプライアンスの実質的改善を伴う右方移動を明らかにしている。これは主として壁厚減少によって促進されてもよいが、この発見において、心筋結合組織のペーシング誘発性減少が貢献性のある役割を果たすことができるだろう。ペーシングされないRAS動物と比較して、ペーシングされたRAS動物および偽動物の両方において、心筋結合組織のレベルは同様に低かった。すべてのペーシングされた動物における結合組織の全体的に大変低いレベルは、頻脈誘発性心筋症の動物モデルで見られるような、個々の筋細胞の伸長および菲薄化を維持するためにコラーゲンレベルを低下させる同時間質マトリックスリモデリングプロセスの結果である可能性が高かった。分析された組織が、そのベースラインの幾何学的形態に復帰することが可能であった心臓由来のものであるため、心拍数の間欠的増加は、永続的な腔拡大を必要とせずに組織の線維化を抑制するのに十分であってよいと考えられる。
【0076】
上記のように、心拍数101bpm~140bpmへ目標を定めることは、心臓に障害を与えずに、かつ/または患者に不快感を与えずに心臓の有益なリモデリングを引き起こすために不可欠であることが見出された。上記の例示的研究において125bpmの拍数が用いられたが、しかしながら、101~140bpmの範囲の他の心拍数についても同様な結果が見られることを信じるに足る理由がある。100bpm未満では、心臓への刺激は心臓の有益なリモデリングを引き起こすのに不十分な場合がある。140bpmを超えると、刺激は心房細動または他の有害な影響を引き起こす場合がある。
【0077】
以上、本発明の少なくとも一実施形態のいくつかの態様を説明したが、種々の改変、変更および改善が当業者に容易に思い浮かぶことを理解すべきである。このような改変、変更および改善は本開示の一部であり、本発明の精神と範囲に含まれるものとする。
【0078】
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、そうではないことが明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0079】
本明細書および特許請求の範囲で使用される語句「および/または」は、そのように結合される要素、例えば、ある場合では結合して存在し、別の場合では離散的に存在する要素の「一方または両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」によって列挙される複数の要素、例えばそのように結合される要素の「1以上」は同様に解釈されるべきである。「および/または」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素も、具体的に特定されたこれらの要素に関連するか否かに関わらず任意選択で存在してもよい。したがって、限定するものではない例として、「Aおよび/またはB」への言及は、オープンエンドな言語、例えば「含む」とともに用いられるとき、一実施形態においてAのみ(任意選択でB以外の要素を含む)に言及することができ、他の実施形態においてBのみ(任意選択でA以外の要素を含む)に言及することができ、さらに他の実施形態においてAおよびBの両方(任意選択で他の要素を含む)に言及することができる。
【0080】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中で項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわちいくつかのまたはリストの要素、かつ任意選択でさらなるリストされない項目のうち、少なくとも1つだけでなく2以上も包含する、と解釈するものとする。それとは反対に明確に示す用語のみ、例えば「ただ1つ」のまたは「1つだけの」または特許請求の範囲で用いられる場合の「からなる」などの用語は、いくつかのまたはリストの要素のうち厳密に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で使用される用語「または」は、「どちらか」、「の1つ」、「のただ1つ」、または「の1つだけ」などの排他的用語に先行するとき、もっぱら排他的選択肢(例えば「どちらか一方、ただし両方ではない」)を示すと解釈されるものとする。特許請求の範囲で用いられる「本質的に~からなる」は、特許法の分野において用いられるその普通の意味を有するものとする。
【0081】
1以上の要素のリストに関して本明細書および特許請求の範囲で使用される語句「少なくとも1つ」は、要素のリストにおける要素のいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリストに具体的に挙げられるありとあらゆる要素の少なくとも1つを含むとは必ずしも限らず、要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを排除しないと理解されるべきである。この定義は、要素が具体的に特定されるかに関連するか否かに関わらず、語句「少なくとも1つ」が言及する要素のリストに具体的に特定された要素以外の要素が任意選択で存在してもよいことも可能にする。したがって、限定するものではない例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態において少なくとも1つの、任意選択で2以上のAを含むがBが存在しない(かつ任意選択でB以外の要素を含む)ことに言及することができ、他の実施形態において、少なくとも1つの、任意選択で2以上のBを含むがAが存在しない(かつ任意選択でA以外の要素を含む)ことに言及することができ、さらに他の実施形態において、少なくとも1つの、任意選択で2以上のAおよび少なくとも1つの、任意選択で2以上のB(かつ任意選択で他の要素を含む)ことに言及することができる。
【0082】
そうではないことが明確に示されない限り、本明細書において特許請求された2以上のステップまたは作業を含む任意の方法において、方法のステップまたは作業の順序は、その方法のステップまたは作業が記載されている順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。