(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20230104BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
G01N35/02 H
G01N35/04 H
G01N35/02 G
(21)【出願番号】P 2021056698
(22)【出願日】2021-03-30
(62)【分割の表示】P 2018557610の分割
【原出願日】2017-11-13
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2016245769
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】圷 正志
(72)【発明者】
【氏名】牧野 彰久
(72)【発明者】
【氏名】三島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】安居 晃啓
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/035418(WO,A1)
【文献】特開2009-150859(JP,A)
【文献】特開2015-222267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0305227(US,A1)
【文献】特開2002-357612(JP,A)
【文献】特開平09-281113(JP,A)
【文献】特開2008-039552(JP,A)
【文献】特開平11-064342(JP,A)
【文献】特開2003-057251(JP,A)
【文献】特開平09-043248(JP,A)
【文献】特開2016-050934(JP,A)
【文献】特開2000-088860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0186360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象の検体を収容した一つ以上の検体容器を搭載した一つ以上の検体ラックを保持可能な検体ラック投入部と、
前記検体容器に収容された検体を分析する1つ以上の分析ユニットと、
前記検体ラック投入部に接続された第一の搬送部と1つ以上の前記分析ユニットのそれぞれと一端を接続された1つ以上の第二の搬送部とを有し、前記検体ラックを搬送する検体ラック搬送部と、
前記第一の搬送部の一端と前記1つ以上の第二の搬送部のそれぞれの他端とを繋ぐように接続され、前記検体ラック搬送部の第一の搬送部と1つ以上の前記第二の搬送部との間で搬送される複数の検体ラックを保持する検体ラックバッファ部と、を備えた自動分析装置の分析方法であって、
前記分析ユニットの稼動状況を表す情報である負荷情報をそれぞれの前記分析ユニットについて取得し、予め定めた設定値よりも前記負荷情報が大きい分析ユニットがある場合は、前記検体ラック投入部から前記検体ラック搬送部の第一の搬送部への搬出を停止して、前記検体ラック投入部から前記検体ラックバッファ部及び前記分析ユニットへの前記検体ラックの搬送を停止するように制御
するものであり、
各分析ユニットにおける前記負荷情報は、それぞれ、前記分析ユニットに搬送された前記検体ラックに搭載された前記検体容器に対して予め設定された分析項目に対応する分注処理のうち未処理の分注処理に対応する分析項目数と、前記分析ユニットの検体分注機構により分注処理に要する時間を表す負荷係数との積で得られることを特徴とする分析方法。
【請求項2】
分析対象の検体を収容した一つ以上の検体容器を搭載した一つ以上の検体ラックを保持可能な検体ラック投入部と、
前記検体容器に収容された検体を分析する1つ以上の分析ユニットと、
前記検体ラック投入部に接続された第一の搬送部と1つ以上の前記分析ユニットのそれぞれと一端を接続された1つ以上の第二の搬送部とを有し、前記検体ラックを搬送する検体ラック搬送部と、
前記第一の搬送部の一端と前記1つ以上の第二の搬送部のそれぞれの他端とを繋ぐように接続され、前記検体ラック搬送部の第一の搬送部と1つ以上の前記第二の搬送部との間で搬送される複数の検体ラックを保持する検体ラックバッファ部と、を備えた自動分析装置の分析方法であって、
前記分析ユニットの稼動状況を表す情報である負荷情報をそれぞれの前記分析ユニットについて取得し、予め定めた設定値よりも前記負荷情報が大きい分析ユニットがある場合は、前記検体ラック投入部から前記検体ラック搬送部の第一の搬送部への搬出を停止して、前記検体ラック投入部から前記検体ラックバッファ部及び前記分析ユニットへの前記検体ラックの搬送を停止するように制御
するものであり、
前記分析ユニットに搬送された前記検体ラックに搭載された前記検体容器に対して予め設定された分析項目数を取得する手順と、
前記予め設定された分析項目数のうち未処理の分注処理に対応する分析項目数を取得する手順と、
前記未処理の分注処理に対応する分析項目数と予め定めた分注処理に要する時間との積に基づいて負荷情報を算出する手順と、
前記負荷情報と予め定めた設定値とを比較する手順と
を備えたことを特徴とする分析方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の分析方法において、
前記分析ユニットが複数である場合に、前記複数の分析ユニットはそれぞれ処理能力が異なることを特徴とすることを特徴とする分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの生体試料の定性・定量分析を行う自動分析装置の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などの生体試料(以下、検体と称する)の定性・定量分析を行う自動分析装置は、多くの検体を短時間で分析処理することが可能であるため、多くの患者検体を扱う大病院や臨床検査センターを中心に普及が著しく、検体(生体試料)が収容された検体容器を検体ラックに搭載して投入口に投入するだけで、検体ラックの搬送から分析装置による分析処理までを自動で実行するような自動分析装置も普及している。
【0003】
また、複数異種の分析装置を有することによって多量多種の分析処理を実行できる自動分析装置も実用化されており、例えば、特許文献1(特開2014-62760号公報)には、多項目同時測定可能な複数の分析器間で検体の割振りを行う検体自動搬送システムであって、検体の測定項目を確認する手段と、複数の分析器の各々について、その時点での分析器の処理能力を判定する手段と、その時点での分析器の処理能力に応じて、確認した検体の測定項目を分析器に割り振る手段とを備えたシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、大病院や臨床検査センターのような施設で扱われる患者検体のような分析対象はその数が一定ではなく、一時に多くの検体の分析処理が要求される場合もある。この場合、上記従来技術においては、各検体に必要な分析項目によって分析依頼が1つの分析装置に偏ってしまうことも考えられ、処理待ちの検体が装置内で渋滞してしまって未処理の検体が搬送路上で長時間放置されることになる。しかしながら、このような状況は分析対象である検体に乾燥や温度変化が生じる可能性があるため良い環境とは言えず、検体の変質や分析結果への影響なども懸念される。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、多くの検体が投入されることにより生じる装置内での検体搬送の渋滞を緩和することができ、検体環境や分析処理能力を高いレベルで維持することができる分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、分析対象の検体を収容した一つ以上の検体容器を搭載した一つ以上の検体ラックを検体ラック投入部に保持する手順と、前記検体ラック投入部に投入された前記検体ラックを、複数の前記検体ラックを保持可能な検体ラックバッファ部に搬送する手順と、前記検体ラックバッファ部に保持された前記検体ラックを、1つ以上の分析ユニットの何れかに搬送する手順と、前記分析ユニットの稼動状況を表す情報である負荷情報をそれぞれの前記分析ユニットについて取得する手順とを有し、予め定めた設定値よりも前記負荷情報が大きい分析ユニットがある場合は、前記検体ラック投入部から前記検体ラックバッファ部への前記検体ラックの搬送及び前記検体ラックバッファ部から前記分析ユニットへの前記検体ラックの搬送を停止するように制御するとともに緊急検体が収容された検体容器を搭載した検体ラックを投入するための緊急検体ラック投入部に前記検体ラックが投入された場合は、予め定めた設定値と前記負荷情報との大小関係によらず、前記緊急検体ラック投入部に投入された前記検体ラックを前記緊急検体ラック投入部から前記分析ユニットに搬送するように制御するものとする。
【発明の効果】
【0008】
多くの検体が投入されることにより生じる装置内での検体搬送の渋滞を緩和することができ、検体環境や分析処理能力を高いレベルで維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】自動分析装置の制御装置を抜き出して示す機能ブロック図である。
【
図3】自動分析装置のサンプラ装置を抜き出して詳細に示す図である。
【
図4】検体容器を搭載した検体ラックの一例を示す図である。
【
図5】表示部に表示される搬入許可設定画面を示す図である。
【
図6】搬送制御処理の全体を示すフローチャートである。
【
図7】未分注項目数の演算処理を示すフローチャートである。
【
図8】未分注項目数の演算処理を示すフローチャートである。
【
図9】本発明を適用した自動分析装置における検体搬送処理のシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】本発明を適用した自動分析装置における検体搬送処理のシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】本発明を適用した自動分析装置における検体搬送処理のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。また、
図4は、検体容器を搭載した検体ラックの一例を示す図である。
【0012】
図1及び
図4において、自動分析装置100は、分析対象である血液や尿などの生体試料(以下、検体と称する)を収容した一つ以上(本実施の形態では5つ)の検体容器6が搭載された検体ラック5の自動分析装置100への投入、回収、及び自動分析装置100内での搬送を行うためのサンプラ装置1と、サンプラ装置1に接続された一つ以上(本実施の形態では2つ)の分析装置2,3(分析ユニット)と、自動分析装置100の全体の動作を制御する制御装置4(制御部)とから概略構成されている。
【0013】
自動分析装置100に投入される検体ラック5には、識別標識としてのバーコード51が添付されている。また、検体ラック5に搭載される検体容器6にも識別標識としてのバーコード61がそれぞれ添付される。検体ラック5には、開栓状態(開口部に設置されるゴム栓などの部材が除去された状態)の検体容器6が搭載されている。
【0014】
図3は、自動分析装置のサンプラ装置を抜き出して詳細に示す図である。
【0015】
図3において、サンプラ装置1は、検体ラック5を双方向に搬送可能な検体ラック搬送部14と、検体ラック搬送部14の一端に配置された検体ラックバッファ部10と、検体ラック搬送部14の他端に配置された緊急検体ラック投入部13と、検体ラック搬送部14の中途に配置された検体ラック投入部12と、検体ラック搬送部14の中途であって検体ラック投入部12の検体ラックバッファ部10側に配置された検体ラック収納部11とを備えている。
【0016】
検体ラック搬送部14は、ベルトコンベヤ、或いは、搬送方向に駆動されるツメとガイド部材とを有する搬送機構などにより構成されており、検体ラック5を双方向に搬送可能な単路構成となっている。
【0017】
検体ラック投入部12は、検体容器6を搭載した検体ラック5をオペレータが自動分析装置100に投入するためのものであり、複数の検体ラック5を検体に適切な環境下(例えば温度や湿度などが適切な環境下)で保持する機能を有している。オペレータにより検体ラック投入部12に投入された検体ラック5は、制御装置4による搬送制御処理(後述)に応じて適宜、検体ラック搬送部14側に搬出されて搬送される。
【0018】
検体ラック収納部11は、自動分析装置100での処理が終了した複数の検体ラック5を保持し、オペレータにより回収する(自動分析装置100からの取り出す)ためのものであり、検体ラック搬送部14で搬送されてきた検体ラック5は、制御装置4による搬送制御処理(後述)に応じて適宜、検体ラック収納部11に取り込まれる。
【0019】
緊急検体ラック投入部13は、緊急検体(緊急の分析処理が必要な検体)が収容された検体容器6を搭載した検体ラック5(特に)をオペレータが自動分析装置100に投入するためのものである。緊急検体ラック投入部13には、検体ラック5が投入されたことを検知する緊急検体ラック検出センサ16が配置されている。
【0020】
検体ラックバッファ部10は、周方向に回転可能に設けられた円板形状を有しており、検体ラックバッファ部10の外周と検体ラック搬送部14の端部とが隣接して対向するように配置されている。検体ラックバッファ部10は、周方向に複数並べて配置された検体ラック保持部101を有しており、検体ラック搬送部14との間で検体ラック5の授受が可能なように構成されている。このように構成された検体ラックバッファ部10は、搬送機構(検体ラック搬送部14、分析装置検体ラック引き込みライン21,31(後述)、など)で搬送されてきた検体ラック5を任意の検体ラック保持部101(空き)への受け入れや、検体ラック保持部101に保持された任意の検体ラック5の搬送機構への搬出が可能である。なお、本実施の形態においては、検体ラック保持部101のうち3つのみが空き状態であり、その他の検体ラック保持部101には検体ラック5が保持されている場合を例示している。
【0021】
検体ラック搬送部14の検体ラックバッファ部10側端部には、搬送されてきた検体ラック5における検体容器6の搭載状況(検体容器6の有無や搭載位置の情報)を取得する検体有無判定センサ17と、検体ラック5に添付されたバーコード51および検体容器6に添付されたバーコード61の読み取りを行う検体バーコードリーダ15が配置されている。検体バーコードリーダ15で読み取られた識別情報は制御装置4に送られ、この識別情報に基づいて検体と患者の対応が特定(確認)される。
【0022】
サンプラ装置1の検体ラックバッファ部10に隣接する位置であって検体ラック搬送部14とは異なる方向には、複数の分析装置が配置可能である。本実施の形態では、検体ラック搬送部14から検体ラックバッファ部10側を見た場合の検体ラックバッファ部10の右側(
図1、
図3中右側)に分析装置2(分析ユニット)を配置し、検体ラックバッファ部10の左側(
図1、
図3中左側)に分析装置3(分析ユニット)を配置した場合を例示している。
【0023】
分析装置2,3には、それぞれ、検体ラックバッファ部10に保持された検体ラック5を引き込むための分析装置検体ラック引き込みライン21,31が配置されており、検体ラックバッファ部10の外周と分析装置検体ラック引き込みライン21,31の検体ラックバッファ部10側の端部が隣接して対向するように配置されている。分析装置検体ラック引き込みライン21,31には、それぞれ、分析装置2,3での分析処理に検体を供するために検体容器6の検体を分析装置2,3内の図示しない反応セル等に分注する検体分注機構22,32が配置されている。分析装置2,3の反応セル等に分注された検体には、依頼項目(分析項目)に応じた試薬が添加されて測光機能により透過光や散乱光、比色反応などが測定される。なお、検体ラック搬送部14と分析装置検体ラック引き込みライン21,31とは、併せて、検体ラック投入部12と分析ユニット(分析装置2,3)との間で検体ラック5を搬送する検体ラック搬送部を構成すると言える。
【0024】
なお、分析装置2,3は、生化学検査用の分析装置や免疫検査用の分析装置等で構成され検査の目的や処理能力が異なる場合、同一の分析装置で構成され検査の目的(検査項目)が異なる場合、或いは、同一の分析装置で構成され検査の目的(検査項目)を同一にして処理能力を維持する場合などが考えられる。
【0025】
図2は、自動分析装置の制御装置を抜き出して示す機能ブロック図である。
【0026】
図2において、制御装置4は、各種設定画面や分析結果等の情報が表示される表示部41と、各種プログラムや分析処理に用いる各種パラメータ、分析結果等を記憶する記憶部42と、分析処理に用いる各種パラメータや指令等をオペレータにより入力する入力部43とを備えている。また、制御装置4は、搬送制御処理に用いられる機能部として、分析装置検体ラック引き込みライン21,31引き込まれた検体ラック5(引き込みが予定が設定された検体ラック5も含む)に搭載された検体容器6にそれぞれ設定された分析項目(依頼項目)の数を分析装置2,3のそれぞれについて演算する依頼項目数演算部44と、分析装置2,3の稼動状況を表す情報である負荷情報を分析装置2,3のそれぞれについて演算する負荷情報演算部45と、負荷情報演算部45で得られた演算結果(負荷情報)を分析装置2,3のそれぞれについて予め定めた搬入許可値(設定値)と比較する負荷情報比較部46とを有している。
【0027】
ここで、負荷情報は、分析装置2,3のそれぞれにおいて各検体の受け入れに要する処理(すなわち、分注処理等)に係るものであり、本実施の形態においては、検体容器6に収容された検体に設定された分析項目数のうち分注の済んでいない項目数(未分注項目数)と、検体に対する1回の分注処理の時間(負荷係数)との積を負荷情報とする。
【0028】
そして、本実施の形態では、負荷情報をそれぞれの分析装置2,3について取得し、予め定めた搬入許可値よりも負荷情報が大きい分析装置がある場合には、検体ラック投入部12から検体ラック搬送部14への検体ラック5の送出(言い換えると、検体ラック投入部12から分析装置2,3への検体ラック5の搬送)を停止するように搬送制御処理を実施する。
【0029】
図5は、表示部に表示される搬入許可設定画面を示す図である。
【0030】
図5において、搬入許可設定画面410には、分析装置Iとして登録された分析装置(例えば分析装置2)について負荷係数および搬入許可値を入力するための分析装置I負荷係数入力部411および分析装置I搬入許可値入力部413と、分析装置IIとして登録された分析装置(例えば分析装置3)について負荷係数および搬入許可値を入力するための分析装置II負荷係数入力部412および分析装置II搬入許可値入力部414と、搬入許可設定画面410への入力内容を確定して画面を閉じるCLOSEボタン415とが配置されている。
【0031】
なお、本実施の形態では、搬入許可値をオペレータが数値で入力する場合を例示したが、自動分析装置100の使用環境に応じて検体ラック5が検体ラック搬送部14に搬入される(又は、停止される)頻度を運用状況を見ながら選択的に設定できるように構成し、選択された設定にもとづいて搬入許可値が自動的に決定されるように構成してもよい。また、負荷係数についてもオペレータが数値で入力する場合を例示したが、搬入許可値と同様に選択的に設定できるように構成し、選択された設定にもとづいて負荷係数が自動的に決定されるように構成してもよい。また、負荷係数は、検体分注機構22,32の動作状況によって変化することが考えられ、例えば、検体分注機構22,32に通常とは異なる洗浄処理(特別な洗浄液を用いた洗浄処理、より時間をかけて念入りに洗浄を行う洗浄処理、など)が予約される場合は、その分の時間が負荷係数として計算されることとなるほか、1回の分注処理で分注可能な検体量を超える分注が必要な場合は、1つの項目に対応して複数回の分注処理を行う必要があるため、その分の時間が負荷係数に加算されることとなる。
【0032】
図6~
図8は、制御装置の搬送制御処理に係る処理を示すフローチャートである。
図6は搬送制御処理の全体を示すフローチャートであり、
図7及び
図8は未分注項目数の演算処理を示すフローチャートである。
【0033】
本実施の形態における搬送制御処理は、各分析装置2,3における未処理項目数(つまり、各分析装置2,3があと何回分注するか)を監視しつつ分注が完了する度にこの数を減算し、また、各分析装置の負荷係数をここに乗算することで連続した処理時間(すなわち負荷情報)算出し管理することを特徴とする。
【0034】
図6において、制御装置4は、検体ラック5が緊急検体ラック投入部13に投入されて緊急検体ラック検出センサ16で検出されたかどうかを判定し(ステップS100)、判定結果がYESの場合には、搬入許可値と負荷情報との大小関係によらずに検体ラック搬送部14への搬入を許可し、緊急検体ラック投入部13に投入された検体ラック5を検体ラック搬送部14を介して検体ラックバッファ部10に搬送して(ステップS160)、処理を終了する。
【0035】
また、ステップS100での判定結果がNOの場合には、変数nに0(ゼロ)を設定してリセットし(ステップS110)、さらに、変数n=n+1を設定する(ステップS120)。ここで、自動分析装置100に接続された分析装置のうち任意のn台目(まずは1台目)の分析装置nを選択し、分析装置nの負荷情報として分析装置nの負荷係数と分析装置nの未分注項目数の積を設定する(ステップS130)。続いて、分析装置nの負荷情報と搬入許可値とを比較し、搬入許可値の方が大きいかどうかを判定する(ステップS140)。ステップS140での判定結果がYESの場合には、全分析装置の負荷情報判定(ステップS140の判定)が終了したかどうかを判定し(ステップS150)、判定結果がNOの場合には、全ての分析装置について負荷情報判定が終了するまで(本実施の形態ではn=2での負荷情報判定が終了するまで)ステップS120~S140を繰り返す。そして、ステップS150での判定結果がYESの場合、言い換えると、自動分析装置100に接続された全ての分析装置2,3について負荷情報判定の結果がYESである場合には、検体ラック投入部12から検体ラック搬送部14への1つの検体ラック5の搬入を許可し、緊急検体ラック投入部13に投入された検体ラック5を検体ラック搬送部14を介して検体ラックバッファ部10に搬送して(ステップS160)、処理を終了する。また、ステップS140での判定結果がNOの場合、言い換えると、負荷情報判定の結果がNOである分析装置が1つでもある場合は、検体ラック投入部12から検体ラック搬送部14への検体ラック5の搬入を不許可とし(ステップS141)、処理を終了する。
【0036】
図7において、制御装置4は、検体ラック5が検体ラック搬送部14の検体ラックバッファ部10側の端部まで搬送されてくると、検体ラック5及び検体容器6の検体認識(バーコード51,61の読み取り)を行い(ステップS200)、読み取った検体情報に基づいて図示しない上位ホストに検体依頼情報の問い合わせを行ってその情報を取得する(ステップS210)。なお、本実施の形態では上位ホストに検体依頼情報を問い合わせる場合を例示したが、制御装置4の記憶部42に予め検体依頼情報を記憶しておいて読み出すように構成しても良い。
【0037】
続いて、変数nに0(ゼロ)を設定してリセットし(ステップS220)、さらに、変数n=n+1を設定する(ステップS230)。ここで、自動分析装置100に接続された分析装置のうち任意のn台目(まずは1台目)の分析装置nを選択し、分析装置nの依頼項目を取得した検体依頼情報から抽出し(ステップS240)、分析装置nの未分注項目数として分析装置nの現在の未分注項目数(分析装置検体ラック引き込みライン21,31で分注処理を行っている検体ラック5の検体容器6について未分注の項目数)と分析装置nの依頼項目数(検体バーコードリーダ15で識別情報を読み取った検体容器6の分析項目数)の和を設定する(ステップS250)。続いて、自動分析装置100に接続された全ての分析装置2,3のそれぞれについて未分注項目数の演算が終了したかどうかを判定し(ステップS260)、判定結果がNOの場合には判定結果がYESになるまでステップS230~S250の処理を繰り返し、ステップS260での判定結果がYESの場合には処理を終了する。
【0038】
図7において、制御装置4は、分析装置2,3の検体分注機構22,32での分注処理を行うごとに、分析装置nの未分注項目数から1を減算する(ステップS300)。
【0039】
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
【0040】
検体ラック投入部12に検体容器6を搭載した検体ラック5を設置して分析を開始すると、検体ラック搬送部14への搬入が許可されている場合、検体ラック5は検体ラック搬送部14を介して検体ラックバッファ部10に引き込まれる。そして、依頼項目に応じて分析装置2,3の分析装置検体ラック引き込みライン21,31のいずれかに搬送され、検体分注機構22,32によって検体容器6に収容された検体の分注処理が実施される。分注処理が終了した検体ラック5は、分析装置検体ラック引き込みライン21,31を逆方向に搬送され、検体ラックバッファ部10に戻され、検体ラック搬送部14を介して最終的に検体ラック収納部11に回収される。なお、分析装置2,3での分注処理を終えた検体ラック5を検体ラックバッファ部10内に測定結果の出力まで待機させ、必要に応じて自動再検等の処理をするようにしてもよい。また、検体ラック投入部12から検体ラック搬送部14への検体ラック5の搬入が許可されていない場合には、許可となるまでそのまま待機する。また、緊急検体が収容された検体容器6を搭載した検体ラック5を1つ投入することができる緊急検体ラック投入部13では、緊急に測定を実施する必要がある検体ラック5が設置されると、搬入の許可の有無によらず、検体ラック投入部12に設置されたラックを追い越して、検体ラックバッファ部10に搬入することが出来る。
【0041】
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0042】
大病院や臨床検査センターのような施設で扱われる患者検体のような分析対象はその数が一定ではなく、一時に多くの検体の分析処理が要求される場合もある。この場合、従来技術においては、各検体に必要な分析項目によって分析依頼が1つの分析装置に偏ってしまうことも考えられ、処理待ちの検体が装置内で渋滞してしまって未処理の検体が搬送路上で長時間放置されることになる。しかしながら、このような状況は分析対象である検体に乾燥や温度変化が生じる可能性があるため良い環境とは言えず、検体の変質や分析結果への影響なども懸念される。
【0043】
これに対して本実施の形態においては、分析対象の検体を収容した一つ以上の検体容器6を搭載した一つ以上の検体ラック5を保持可能な検体ラック投入部12と、検体容器6に収容された検体を分析する1つ以上の分析装置2,3と、検体ラック投入部12から分析装置2,3に検体ラック5を搬送する検体ラック搬送部14と、分析装置2,3の稼動状況を表す情報である負荷情報をそれぞれの分析装置2,3について取得し、予め定めた搬入許可値よりも負荷情報が大きい分析装置2,3がある場合は、検体ラック投入部12から分析装置2,3への検体ラック5の搬送を停止するように制御する制御装置4とを備えて構成したので、多くの検体が投入されることにより生じる装置内での検体搬送の渋滞を緩和することができ、検体環境や分析処理能力を高いレベルで維持することができる。
【0044】
特に、従来技術では、一時に多くの検体の分析処理が要求される場合に検体のTAT(ターンアラウンドタイム)を増長することになってしまう。装置におけるTATというのは、装置が検体を認識(検体容器に貼り付けられたバーコードを読み取る等)してから、測定結果を出力するまでの時間を意味するため、従来技術のように装置が検体を受け入れても未処理状態が長ければTATは増長してしまう。そして、そのような状態において別の分析装置での緊急の処理の依頼が生じたとしても、装置内に取り込まれてしまった以上、検体を取り出す行為が困難になってしまう。
【0045】
本実施の形態では、負荷が高い分析装置が一でもある場合には、検体ラック搬送部14への搬入を不許可とすることで搬入を抑制し、自動分析装置100内での過度な渋滞を回避することができる。一方で、全ての分析装置2,3の負荷が低いと判断した場合は、検体ラック搬送部14への搬入を許可することで、分析部の処理能力を維持することができる。また、緊急検体を収容した検体容器6を搭載した検体ラック5が投入された場合には、負荷情報を意識せずに分析装置2,3に搬入することができる。
【0046】
図9~
図11は、本発明を適用した自動分析装置における検体搬送処理のシミュレーション結果を示す図である。
図9~
図11では、第1分析装置および第2分析装置の2台の分析装置を接続した自動分析装置におけるシミュレーション結果を示している。
【0047】
図9は、検体ラックバッファ部10での再検待機をし、かつ、再検依頼が生じない場合のシミュレーション結果を示している。
【0048】
図9において、RackNo1の検体ラックに着目すると、START(時間軸上0)と同時に搬送が開始される。搬入された検体ラックは、第1分析装置に搬送され、分析が行われる。第1分析装置での測定が終了してから、第2分析装置に搬送されることになるが、RackNo2が第2分析装置で分析中のため待機する。RackNo2の分析が終了したら、RackNo1が第2分析装置に搬送され分析実施される。分析が終了したら、反応時間だけ待機し、再検依頼がなければ回収される。RackNo3のころから、分析装置の負荷状況に応じて階段状に時間軸がずらされて検体ラックが分析装置に搬送されることになる。つまり、2つの分析装置の負荷が上昇したので、搬入が不許可となり、2つの分析装置の分析処理(分注処理)が進みだすと徐々に負荷が下がりだし、あるタイミングにおいて搬入が実施される。
【0049】
図10は、検体ラックバッファ部10での再検待機し、かつ、再検依頼が生じる場合のシミュレーション結果を示している。
【0050】
図11は、RackNo4の検体ラックとして緊急検体を投入した場合のシミュレーション結果である。
【0051】
Rack No3が第1分析装置に搬送されるところ、RackNo4が割り込んで即座に分析処理が開始されていることがわかる。
【0052】
なお、本発明は上記した各実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本願発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…サンプラ装置、2,3…分析装置、4…制御装置、5…検体ラック、6…検体容器、10…検体ラックバッファ部、11…検体ラック収納部、12…検体ラック投入部、13…緊急検体ラック投入部、14…検体ラック搬送部、15…検体バーコードリーダ、16…緊急検体ラック検出センサ、17…検体有無判定センサ、21,31…分析装置検体ラック引き込みライン、22,32…検体分注機構、32…検体分注機構、41…表示部、42…記憶部、43…入力部、44…依頼項目数演算部、45…負荷情報演算部、46…負荷情報比較部、51,61…バーコード、100…自動分析装置、101…検体ラック保持部、410…搬入許可設定画面、411…負荷係数入力部、412…負荷係数入力部、413…搬入許可値入力部、414…搬入許可値入力部、415…CLOSEボタン