(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】干渉計及び配置調整方法
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02055 20220101AFI20230105BHJP
【FI】
G01B9/02055
(21)【出願番号】P 2018145329
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大峠 怜也
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115988(JP,A)
【文献】特開昭63-37202(JP,A)
【文献】特開2008-233063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/00-9/10
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物面と、参照面とに低可干渉性の光を照射する光源と、
前記光源の
光軸を基準とする前記参照面の角度、又は前記参照面に対する前記対象物面の相対的な角度を取得する取得部と、
前記対象物面から反射した測定光と、前記参照面から反射した参照光とによる干渉光の空間強度を検出する素子からなる検出部と、
前記空間強度を検出する素子で検出された前記干渉光の空間強度の分布から、相対的に大きな前記干渉光の強度に対応する前記空間強度を検出する素子上の位置と、前記空間強度を検出する素子上の基準点との距離を特定する距離特定部と、
前記取得部により取得された前記角度と、前記距離特定部により特定された前記距離とに基づいて、前記測定光の光路長と前記参照光の光路長との光路長差を特定する解析部と、
前記対象物面、又は前記参照面の少なくとも一方を、前記光路長差が小さくなるように移動させる移動制御部と、
を備える干渉計。
【請求項2】
前記移動制御部は、前記対象物面又は前記参照面のいずれか一方の面を前記光源の光軸に沿って移動させ、前記干渉光が前記検出部により検出される位置を特定する、
請求項1に記載の干渉計。
【請求項3】
前記取得部は、所定の長さの範囲における前記素子により検出された干渉光の縞の数と、前記低可干渉性の光の波長とに基づいて前記角度を取得する、
請求項1又は2に記載の干渉計。
【請求項4】
前記取得部は、前記光軸を基準とする傾斜角を取得し、
前記移動制御部は、前記光軸を基準とする前記対象物面の角度又は前記光軸を基準とする前記参照面の角度のいずれか一方を前記傾斜角になるように傾ける、
請求項1から3のいずれか一項に記載の干渉計。
【請求項5】
前記取得部は、前記干渉光の明線同士又は暗線同士の間隔を前記素子の隣接する二つの画素間の距離より長くする前記相対的な角度を取得する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の干渉計。
【請求項6】
コンピュータが実行する、
対象物面及び参照面に低可干渉性の光を照射する光源の光軸を基準とする傾斜角を取得するステップと、
前記光軸を基準とする前記参照面の角度
を、取得した前記傾斜角と等しくなるように傾斜させるステップと、
前記対象物面及び前記参照面に前記光を照射させるステップと、
前記対象物面又は前記参照面のうち、前記傾斜角と等しくなるように変化させた面を前記光軸に沿って移動させるステップと、
光の空間強度を検出する素子により、前記対象物面から反射した測定光と前記参照面から反射した参照光とによる干渉光の空間強度を検出するステップと、
前記空間強度を検出する素子で検出された前記干渉光の強度分布から、相対的に大きな前記干渉光の強度に対応する前記空間強度を検出する素子上の位置と、前記空間強度を検出する素子上の基準点との距離を特定するステップと、
前記傾斜角と、前記距離とに基づいて、前記測定光の光路長と前記参照光の光路長との光路長差を特定するステップと、
前記対象物面又は前記参照面の少なくとも一方を前記光路長差が小さくなるように移動させるステップと、
を有する配置調整方法。
【請求項7】
コンピュータが実行する、
対象物面及び参照面に低可干渉性の光を照射させるステップと、
光の空間強度を検出する素子により、前記対象物面から反射した測定光と、前記参照面から反射した参照光とによる干渉光の空間強度を検出するステップと、
前記干渉光に基づいて、前記参照面に対する前記対象物面の相対的な角度である相対角を取得するステップと、
前記空間強度を検出する素子で検出された前記干渉光の強度分布から、相対的に大きな前記干渉光の強度に対応する前記空間強度を検出する素子上の位置と、前記空間強度を検出する素子上の基準点との距離を特定するステップと、
前記相対角と、前記距離とに基づいて、前記測定光の光路長と前記参照光の光路長との光路長差を特定するステップと、
前記対象物面又は前記参照面の少なくとも一方を前記光路長差が小さくなるように移動させるステップと、
を有する配置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉計及び配置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低可干渉性の光を照射する光源を用いた干渉計が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の干渉計を使用する作業者は、対象物面の測定を行う前に、対象物面から反射した測定光と参照面から反射した参照光とが干渉した干渉光が検出される位置を特定する。このとき、作業者は、低可干渉性の光が干渉可能な距離より短い距離ずつ対象物面を移動させる必要があり、対象物面を何度も移動させる必要があった。その後、作業者は、干渉光の強度が最も大きくなる位置を特定する。その際、作業者は、干渉光が検出される位置を特定するときに移動させた距離より短い距離で対象物面を移動させるため、干渉光の強度の確認と、対象物面の移動とを何度も繰り返す必要があった。このように、作業者は、干渉計の調整作業に時間がかかっていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、干渉計の調整作業にかかる時間を短縮する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様である干渉計は、対象物面と、参照面とに低可干渉性の光を照射する光源と、前記光源の光軸を基準とする前記対象物面の角度、前記光軸を基準とする前記参照面の角度、又は前記参照面に対する前記対象物面の相対的な角度を取得する取得部と、前記対象物面から反射した測定光と、前記参照面から反射した参照光とによる干渉光の空間強度を検出する素子からなる検出部と、前記空間強度を検出する素子で検出された前記干渉光の空間強度の分布から、相対的に大きな前記干渉光の強度に対応する前記空間強度を検出する素子上の位置と、前記空間強度を検出する素子上の基準点との距離を特定する距離特定部と、前記取得部により取得された前記角度と、前記距離特定部により特定された前記距離とに基づいて、前記測定光の光路長と前記参照光の光路長との光路長差を特定する解析部と、前記対象物面、又は前記参照面の少なくとも一方を、前記光路長差が小さくなるように移動させる移動制御部と、を備える。
【0007】
例えば、前記移動制御部は、前記対象物面又は前記参照面のいずれか一方の面を前記光源の光軸に沿って移動させ、前記干渉光が前記検出部により検出される位置を特定する。
【0008】
前記取得部は、所定の長さの範囲における前記素子により検出された干渉光の縞の数と、前記低可干渉性の光の波長とに基づいて前記角度を取得してもよい。
【0009】
例えば、前記取得部は、前記光軸を基準とする傾斜角を取得し、前記移動制御部は、前記光軸を基準とする前記対象物面の角度又は前記光軸を基準とする前記参照面の角度のいずれか一方を前記傾斜角になるように傾ける。
【0010】
例えば、前記取得部は、前記干渉光の明線同士又は暗線同士の間隔を前記素子の隣接する二つの画素間の距離より長くする前記相対的な角度を取得する。
【0011】
本発明の第2の態様である配置調整方法は、コンピュータが実行する、対象物面及び参照面に低可干渉性の光を照射する光源の光軸を基準とする傾斜角を取得するステップと、前記光軸を基準とする前記対象物面の角度又は前記光軸を基準とする前記参照面の角度のいずれかを、取得した前記傾斜角と等しくなるように傾斜させるステップと、前記対象物面及び前記参照面に前記光を照射させるステップと、前記対象物面又は前記参照面のうち、前記傾斜角と等しくなるように変化させた面を前記光軸に沿って移動させるステップと、光の空間強度を検出する素子により、前記対象物面から反射した測定光と前記参照面から反射した参照光とによる干渉光の空間強度を検出するステップと、前記空間強度を検出する素子で検出された前記干渉光の強度分布から、相対的に大きな前記干渉光の強度に対応する前記空間強度を検出する素子上の位置と、前記空間強度を検出する素子上の基準点との距離を特定するステップと、前記傾斜角と、前記距離とに基づいて、前記測定光の光路長と前記参照光の光路長との光路長差を特定するステップと、前記対象物面又は前記参照面の少なくとも一方を前記光路長差が小さくなるように移動させるステップと、を有する。
【0012】
本発明の第3の態様である配置調整方法は、コンピュータが実行する、対象物面及び参照面に低可干渉性の光を照射させるステップと、光の空間強度を検出する素子により、前記対象物面から反射した測定光と、前記参照面から反射した参照光とによる干渉光の空間強度を検出するステップと、前記干渉光に基づいて、前記参照面に対する前記対象物面の相対的な角度である相対角を取得するステップと、前記空間強度を検出する素子で検出された前記干渉光の強度分布から、相対的に大きな前記干渉光の強度に対応する前記空間強度を検出する素子上の位置と、前記空間強度を検出する素子上の基準点との距離を特定するステップと、前記相対角と、前記距離とに基づいて、前記測定光の光路長と前記参照光の光路長との光路長差を特定するステップと、前記対象物面又は前記参照面の少なくとも一方を前記光路長差が小さくなるように移動させるステップと、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、干渉計の調整作業にかかる時間を短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】光路長差と干渉縞画像との関係を模式的に示す図である。
【
図3】対象物面が参照面に対して傾いている場合の干渉縞画像について説明するための図である。
【
図5】検出部の複数の画素のそれぞれが検出した干渉光の強度を、複数の画素のそれぞれの位置に対してプロットしたグラフを模式的に示す図である。
【
図6】対象物面の角度と距離と光路長差との関係を説明するための図である。
【
図7】光路長差を小さくする処理のフローチャートである。
【
図8】相対角γを用いて光路長差ΔLを特定することについて説明するための図である。
【
図9】相対角γが大きくなるほど干渉縞の間隔Δdが小さくなることを説明するための図である。
【
図10】対象物面が参照面に対して平行な状態で干渉光が検出される位置を特定する場合について説明するための図である。
【
図11】対象物面が参照面に対して傾いた状態で干渉光が検出される位置を特定する場合について説明するための図である。
【
図12】干渉光が検出される位置を特定する処理のフローチャートである。
【
図13】変形例3に係る干渉計の概要を示す図である。
【
図14】変形例4に係る干渉計の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
[実施の形態に係る干渉計の概要]
図1は、干渉計1の概要を説明するための図である。干渉計1は、低可干渉性の光を照射する光源11と、検出部12と、制御部13と、可動ステージ15と、レンズ2(2a、2b、及び2c)と、ピンホール3と、ビームスプリッタ4と、参照面5と、対象物面6とを備える。参照面5は、光源11の光軸と垂直になるように配置される。対象物面6は、参照面5に対して干渉縞が数本以下で観察される程度に概略平行になるように配置される。
【0016】
光源11が照射した光は、レンズ2aと、ピンホール3と、レンズ2bとを通過することにより拡大され、コリメートされる。コリメートされた光は、ビームスプリッタ4において分岐される。ビームスプリッタ4において分岐された一方の光は直進して対象物面6に至り、もう一方の光は参照面5に至る。対象物面6で反射した測定光及び参照面5で反射した参照光は、それぞれビームスプリッタ4を経由してレンズ2cに至る。
【0017】
図1の光路長L2は、ビームスプリッタ4から対象物面6に至り、対象物面6で反射して再びビームスプリッタ4に至るまでの測定光の光路長を示す。
図1の光路長L1は、ビームスプリッタ4から参照面5に至り、参照面5で反射して再びビームスプリッタ4に至るまでの参照光の光路長を示す。測定光及び参照光は、ビームスプリッタ4を通過後、レンズ2cを経由して検出部12に入射する。検出部12は、例えばデジタルカメラであり、入射した干渉光に基づく干渉縞画像を生成する。
【0018】
以下、光路長L1と光路長L2との光路長差ΔLと、検出部12が生成する干渉縞画像との関係について、
図2を参照しながら説明する。
【0019】
図2は、光路長差ΔLと干渉縞画像との関係を模式的に示す図である。
図2において、左から右に向かう矢印は、光路長差ΔLが大きくなること示す。
図2の左端の画像は、光路長差ΔLが小さい(例えばΔL=0)ときに検出部12が生成した干渉縞画像であり、干渉縞の明暗の差が大きな干渉縞画像である。
【0020】
図2の左から2番目の画像は、左端の画像が取得されたときの光路長差ΔLよりも光路長差ΔLが大きいときに検出部12が生成した干渉縞画像である。また、
図2の左から3番目の画像は、左から2番目の画像が取得されたときの光路長差ΔLよりも光路長差ΔLが大きいときに検出部12が生成した干渉縞画像である。
図2の右端の画像は、光路長差ΔLが大きく、測定光と参照光とが干渉する可干渉距離Δlよりも、光路長差ΔLが大きいときに検出部12が生成した画像である。
図2の右端の画像は、明暗の差がなく干渉縞が確認できない。このように、検出部12が生成する干渉縞画像は、光路長差ΔLが小さいほど明暗の差が大きくなり、光路長差ΔLが0であるとき明暗の差が最も大きくなる。
【0021】
以上、対象物面6が参照面5に対して干渉縞が数本以下で観察される程度に概略平行になるように配置された場合に検出部12が生成する干渉縞画像について説明した。続いて、対象物面6が参照面5に対して傾いた状態で配置された場合に検出部12が生成する干渉縞画像について説明する。
【0022】
図3は、対象物面6が参照面5に対して傾いている場合の干渉縞画像について説明するための図である。
図3の一点鎖線は、参照面5により発生した参照光の光軸を示す。一点鎖線上の点Sは、光軸(z軸)上において、測定光の光路長L1と参照光の光路長L2との光路長差ΔLが0となる点である。
【0023】
図3(a)の左側の図は、光軸をZ軸として紙面内において光軸と垂直な軸をX軸とし、XZ面に対して垂直な軸をY軸として表している。つまり、参照面5に対してY軸周りに角度θで傾いている対象物面6をXZ面内で見た模式図である。
図3(a)に示すように、対象物面6が参照面5に対して傾いている場合、測定光の光路長L1と参照光の光路長L2との光路長差ΔLは、対象物面6における複数の位置それぞれで、異なる光路長差となる。対象物面6の中心と点Sとが一致している場合、複数の位置それぞれの光路長差ΔLは、対象物面6の中心からの距離が大きくなるほど大きくなる。
【0024】
図3(a)の右側のXY面を紙面においた画像は、対象物面6が参照面5に対して角度θで傾き、対象物面6の中心と点Sとが一致している場合に検出部12で検出された干渉縞画像である。
図3(a)に示すように、対象物面6が傾いている場合に検出部12が生成する干渉縞画像は、位置に応じて干渉縞の明暗が異なっている。また、干渉縞の明暗の差は、干渉縞画像の中心(光路長差ΔLが0となる位置)で、最も大きくなり、干渉縞画像の中心から干渉縞画像の端部になるほど(対象物面6の中心から離れるほど)小さくなる。
【0025】
次に、点Sの位置と対象物面6の中心とが一致していない場合について
図3(b)を参照しながら説明する。点Sの位置と対象物面6の中心とが一致していない場合、光路長差ΔLが0となる位置は、対象物面6の中心から移動する。
図3(b)の左側の図に、対象物面6の中心から移動した光路長差ΔLが0となる位置を点Qで示す。
図3(b)の右側の画像は、検出部12が生成した干渉縞画像を示す。
図3(b)に示すように、干渉縞の明暗の差が最も大きくなる位置は、干渉縞画像の中心から移動する。このとき、干渉縞画像の中心から干渉縞の明暗の差が最も大きくなる位置までの距離ΔXは、点Sと点Qとの距離に相当する。
【0026】
以上の説明を踏まえて、干渉計1の動作の概要について説明する。干渉計1は、対象物面6が参照面5に対して傾いている状態で、光路長差ΔLが異なる複数の干渉光を同時に検出する。次に、干渉計1は、検出した光路長差ΔLの異なる複数の干渉光に基づく干渉縞画像に基づいて、干渉縞画像の中心から干渉縞の明暗の差が最も大きくなる位置までの距離ΔXを特定する。そして、干渉計1は、参照面5に対する対象物面6の角度θと、特定した距離ΔXとに基づいて、光路長差ΔLが0となる位置を特定する。
【0027】
このようにすることで、干渉計1は、一度の測定で光路長差ΔLが異なる複数の干渉光を検出することができる。そのため、干渉計1は、対象物面6を移動させる回数を減らせるので、調整時間を短縮することができる。
【0028】
[干渉計1の機能構成]
図4は、干渉計1の機能構成を示す図である。干渉計1は、
図1を参照しながら説明した構成と、記憶部14とを備える。
【0029】
光源11は、
図1を参照しながら説明した光学系を経由して、対象物面6と、参照面5とに低可干渉性の光を照射する。光源11は、例えば波長780nm、可干渉距離10μmの光を照射する。
【0030】
検出部12は、例えば複数の画素を備えるデジタルカメラである。検出部12は、検出部12に入射した対象物面6から反射した測定光と、参照面5から反射した参照光とによる干渉光の空間強度を検出する。空間強度は、空間上の複数の位置それぞれにおける干渉光の強度である。空間強度は、例えば、2次元平面上の複数の位置それぞれにおける干渉光の強度である。また、検出部12は、検出部12が有する受光最小部位である複数の画素のそれぞれの位置と、複数の画素のそれぞれが検出した干渉光の強度とを対応付けた干渉縞画像を生成してもよい。
【0031】
記憶部14は、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体を含む。また、記憶部14は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。
【0032】
可動ステージ15は、対象物面6を配置する台座、及び一以上のアクチュエータを備える。可動ステージ15は、制御部13の指示に基づいてアクチュエータを動作させることにより、台座に配置された対象物面6を光軸方向に移動させることができる。また、可動ステージ15は、参照面5に対する対象物面6の角度を変更することもできる。
【0033】
制御部13は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部13は、記憶部14に記憶されたプログラムを実行することによって、取得部131、距離特定部132、解析部133、及び移動制御部134の機能を実現する。
【0034】
取得部131は、対象物面6の角度θを取得する。例えば、取得部131は、可動ステージ15の角度を計測する角度センサを備え、角度センサが計測した光源11の光軸を基準とする角度を対象物面6の角度θとして取得する。
【0035】
距離特定部132は、検出部12で検出された干渉光の空間強度の分布に基づいて、相対的に大きな干渉光の強度を検出した画素の位置を特定する。例えば、距離特定部132は、検出部12で検出された2次元平面上における干渉光の空間強度の分布のうち、1次元上の空間強度の分布に基づいて、相対的に大きな干渉光の強度を検出した画素の位置を特定する。具体的には、まず、距離特定部132は、対象物面6が参照面5に対して傾いた状態で検出部12に干渉光の強度を検出させる。続いて、距離特定部132は、一方向に配列された複数の画素のそれぞれが検出した干渉光の強度における複数のピークを抽出する。次に、距離特定部132は、抽出した複数のピークのうち隣接するピークの差、又はピークの比を算出することにより、相対的に大きな干渉光の強度を検出した画素の位置を特定する。以下の説明において、相対的に大きな干渉光の強度を検出した画素の位置を最大位置ということがある。
図5を参照しながら、最大位置を特定する方法の一例について説明する。
【0036】
図5は、検出部12の複数の画素のそれぞれが検出した干渉光の強度を、複数の画素のそれぞれの位置に対してプロットしたグラフを模式的に示す図である。
図5に示すピークPは、距離特定部132が抽出した強度のピークを示す。ピークPの添え字kは、強度のピークを抽出した順序を示す。距離特定部132は、隣接するピークP間の差の絶対値を算出する。例えば、距離特定部132は、ピークP
kとピークP
k+1との差の絶対値、ピークP
k+1とピークP
k+2との差の絶対値、及びピークP
k+2とピークP
k+3との差の絶対値をそれぞれ算出する。
【0037】
距離特定部132は、算出した複数の差の絶対値のうち、差の絶対値が最も大きなピークの組に基づいて、最大位置を特定する。例えば、距離特定部132は、差の絶対値が最も大きなピークの組のうち、より大きな強度を検出したピークPに対応する画素の位置を最大位置として特定する。また、距離特定部132は、差の絶対値が最も大きなピークの組のそれぞれに対応する画素の位置の中点を最大位置として特定してもよい。
【0038】
なお、距離特定部132は、特定した位置から所定の距離内に含まれる位置を、最大位置として特定しなおしてもよい。所定の距離は、干渉計1の構成により定まる距離である。干渉計1の構成により定まる距離は、干渉計1の光学系の製造上の誤差、検出部12の画素の誤差、又は実験によって定めればよい。このように、最大位置として特定する場合は、大まかに最大位置を特定するので、光路長差ΔLを厳密に0にする必要がないときに有効である。
【0039】
距離特定部132は、検出部12の基準点を特定し、検出部12の基準点と光軸との交点を特定する。なお、干渉計1の製造時に光軸が検出部12の中心を通るように調整されるので、距離特定部132は、検出部12の中心を検出部12の基準点と光軸との交点であると特定する。距離特定部132は、特定した最大位置と、検出部12の基準点と光軸との交点との距離ΔXを特定する。具体的には、距離特定部132は、検出部12の中心から特定した位置までの距離を距離ΔXとして特定する。
【0040】
解析部133は、取得部131により取得された角度θと、距離特定部132により特定された距離ΔXとに基づいて、測定光の光路長L1と参照光の光路長L2との光路長差ΔLを特定する。以下、角度θと距離ΔXと光路長差ΔLとの関係について説明する。
図6は、対象物面6の角度θと距離ΔXと光路長差ΔLとの関係を説明するための図である。
図6においては、参照面5は光軸Z軸に垂直であり、対象物面6が点Oを中心に参照面5に対して角度θだけ傾いていることを示す。また、検出部12は干渉縞画像を生成したものとして説明する。
【0041】
図6において、点0のx軸座標をX
0とし、Z軸座標をZ
0とする。点Mは、対象物面6が参照面5に対して傾いた状態で検出部12が生成した干渉縞画像について最も大きな明暗の差が特定された位置に対応する対象物面6上の位置を示す。点Mのx軸座標をX
1とし、Z軸座標をZ
1とする。Z
1における光路長差は0である。Z
0とZ
1との距離は光路長差ΔLに対応する。このとき、光路長差ΔLは、角度θと距離ΔXとを用いて式(1)で表される。
ΔL=ΔX・tanθ・・・(1)
解析部133は、式(1)を用いて光路長差ΔLを特定する。
【0042】
移動制御部134は、解析部133により特定された光路長差ΔLが小さくなるように対象物面6を移動させる。具体的には、移動制御部134は、可動ステージ15を制御することにより対象物面6を移動させる。
【0043】
[光路長差ΔLを小さくする処理]
干渉計1が光路長差ΔLを小さくする処理の流れについて説明する。
図7は、光路長差ΔLを小さくする処理のフローチャートである。まず、制御部13は、光源11に対象物面6及び参照面5に低可干渉性の光を照射させる(ステップS1)。対象物面6及び参照面5に低可干渉性の光が照射されると、検出部12は、測定光と参照光とによる干渉光を検出する。
【0044】
続いて、取得部131は、角度センサが計測した対象物面6の角度θを取得する(ステップS2)。次に、距離特定部132は、検出部12が検出した干渉光に基づいて、干渉縞の明暗の差が最も大きな位置を特定し、明暗の差が最も大きな位置から、検出部12と光軸との交点までの距離ΔXを特定する(ステップS3)。
【0045】
取得部131が角度θを取得し、距離特定部132が距離ΔXを特定すると、解析部133は、角度θと距離ΔXとに基づいて光路長差ΔLを特定する(ステップS4)。続いて、移動制御部134は、光路長差ΔLが小さくなるように対象物面6を移動させる(ステップS5)。そして、移動制御部134は、対象物面6が参照面5と概略平行になるように対象物面6を傾ける(ステップS6)。
【0046】
[第1の実施の形態に係る干渉計1の効果]
以上説明したように、干渉計1は、対象物面6の角度θを取得し、干渉縞の明暗の差が相対的に大きな位置から検出部12と光軸との交点までの距離ΔXを特定する。そして、干渉計1は、角度θと距離ΔXとに基づいて光路長差ΔLを特定する。このようすることで、干渉計1は、光路長差ΔLの特定に係る時間を短縮することができる。この結果、干渉計1は、作業者が光路長差を調整する作業にかかる時間を短縮することができる。
【0047】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態に係る干渉計1は、角度センサを備えず、参照面5に対する対象物面6の相対的な角度である相対角γを取得する。干渉計1は、後述する相対角γを特定する処理により取得した相対角γを用いて、基準となる光軸上における参照面5と対象物面6との光路長差ΔLを特定する。以下、相対角γを用いて参照面5と対象物面6との光路長差ΔLを特定することについて、第1の実施の形態と異なる点について説明し、同様の点については適宜省略する。
【0048】
図8は、相対角γを用いて光路長差ΔLを特定することについて説明するための図である。
図8において、角度θは、光軸に対する対象物面6の角度を示す。角度θ-γは、光軸に対する参照面5の角度を示す。
【0049】
距離L3は、素子上において干渉光の強度が最大となる位置に対応する光路長差である。距離L4は、素子上の基準点の位置に対応する光路長差である。基準となる光軸上の光路長差ΔLは、距離L3と距離L4との差で表される。距離L3と距離L4との差は、角度θと相対角γと距離ΔXとを用いて、式(2)で表される。
【0050】
【0051】
ここで、角度θが取りうる値の範囲について説明する。干渉計1が備える結像レンズのN/Aに制限があるため、特別な観測系を用いない場合、干渉計1は、角度θが大きいと干渉光を観測できなくなる。さらに、角度θが0度近傍でない場合、結像レンズの収差により発生する誤差が増大する。そのため、干渉計1においては、光軸に対する対象物面6の角度θは、0度近傍に設定する。角度θの範囲は、望ましくは数°以下であり、実際には1°よりも小さい角度で調整されることが多い。以下の説明においては、角度θは、1°より小さいものとして説明する。
【0052】
続いて、相対角γが取りうる値の範囲について説明する。相対角γは、干渉縞の間隔Δdに関係し、相対角γの大きさにより、干渉縞の間隔Δdが決まる。具体的には、干渉縞の間隔Δdは、相対角γが大きくなるほど小さくなる。
図9は、相対角γが大きくなるほど干渉縞の間隔Δdが小さくなることを説明するための図である。
図9においては、光軸を基準とする参照面5の角度を90度、参照面5に対する対象物面6の相対的な角度を相対角γとする。
【0053】
光路長差Liは、干渉縞画像における、ある明線(i)の位置に対応する干渉光の光路長差である。光路長差Li+1は、干渉縞画像における明線(i)に隣接する明線(i+1)の位置に対応する干渉光の光路長差である。光路長差Liと光路長差Li+1との差はλ/2である。したがって、明線(i)の位置から明線(i+1)の位置までの距離に相当する干渉縞の間隔Δdは、相対角γを用いて式(3)で表される。
Δd=[λ/(2tanγ)] 式(3)
【0054】
式(2)に示したように、干渉縞の間隔Δdは、tanγに反比例するので、相対角γが大きくなるほど小さくなる。干渉縞の間隔Δdが小さくなり、検出部12の分解能以下になってしまうと、干渉計1は、明線(i)と明線(i+1)とを分解できなくなる。言い換えると、干渉計1は、明線(i)と明線(i+1)とが異なる明線であると特定できなくなる。この場合、干渉計1は、干渉光の強度が最大になる明線を特定することができないので、干渉光の強度が最大になる位置が特定できなくなる。したがって、相対角γは、検出部12の分解能以上である必要がある。
【0055】
そこで、取得部131は、干渉縞の間隔が検出部12の分解能以上になる相対角γを取得する。例えば、取得部131は、干渉光の明線同士又は暗線同士の間隔を検出部12の隣接する二つの画素間の距離より長くする相対角γを取得する。隣接する二つの画素間の距離は、例えば、画素の中心から、隣接する画素の中心までの距離である。相対角γの具体的な値を例えば0.02°とした場合、干渉縞の間隔Δdは、1.089mmである。撮像素子の1画素のサイズは10μm以下が一般的であり、対象物面上を1/100に縮小する光学系であったとしても、干渉縞の間隔Δdを隣接する二つの画素間の距離より長くできる。
【0056】
角度θと相対角γが1°以下のような場合には、tanθtanγ<3.05×10
-4である。よって、[1-tanθtanγ]は、1に近似できる。この近似を用いることにより、光路長差ΔLは、式(4)で表される。
【数2】
【0057】
(相対角γを特定する処理)
取得部131は、検出部12により検出された干渉光に基づいて相対角γを特定する。具体的には、取得部131は、検出部12が生成した干渉縞画像の所定の長さの範囲における干渉縞の数と、低可干渉性の光の波長λとに基づいて相対角γを特定する。より具体的には、取得部131は、干渉縞画像における所定の長さの範囲wにおいて、波長λの光による干渉縞の数がt本である場合、式(5)を用いて相対角γを特定する。
【0058】
【数3】
所定の長さの範囲は、例えば干渉縞と垂直な方向における干渉縞画像の端部からもう一方の端部までの長さである。また、取得部131は、干渉光の強度が所定の強度以上の強度を検出した画素を含む範囲を所定の長さの範囲としてもよい。所定の強度は、干渉縞の数が計測できる強度以上であればよく、また光源11が照射する光の波長分布により定めてもよい。
【0059】
取得部131は、検出された干渉光に基づいて干渉縞の本数tを取得する。例えば、取得部131は、既知の画像解析方法を用いて干渉縞画像を解析することにより干渉縞の縞を特定し、長さの範囲に含まれる干渉縞の本数tを特定する。このようにすることで、干渉計1は、角度センサを備える必要がないため、製造コストを低減できる。
【0060】
以下、第1の実施の形態と同様に、干渉計1は、相対角γを用いて、光路長差ΔLを特定する。そして、干渉計1は、光路長差ΔLが小さくなるように、参照面5又は対象物面6を移動させる。
【0061】
[第2の実施の形態に係る干渉計1の効果]
以上説明したように、第2の実施の形態に係る干渉計1は、参照面5と対象物面6との相対的な角度である相対角γを、干渉縞の本数tに基づいて特定する。次に、干渉計1は、特定した相対角γに基づいて、参照面5と対象物面6との基準となる光軸上の光路長差ΔLを特定する。そして、干渉計1は、光路長差ΔLが小さくなるように参照面5又は対象物面6を移動させる。
【0062】
このようにすることで、干渉計1は、角度センサを備えなくてもよくなる。そのため、干渉計1を製造する事業者は、干渉計1の製造コストを低減できる。また、干渉計1は、相対角γを用いて光路長差ΔLを求めることができるので、参照面5又は対象物面6を何度も移動させる必要がなく、光路長差ΔLの特定にかかる時間を短縮することができる。この結果、干渉計1は、作業者が光路長差を調整する作業にかかる時間を短縮することができる。
【0063】
<第3の実施の形態>
第1の実施の形態においては、光源11が照射する光が干渉可能な距離内に対象物面6が配置されていることを前提としていた。しかしながら、干渉計1に対象物面6を配置したときの位置が、測定光と参照光とが干渉する干渉可能な距離内に含まれていない場合がある。この場合、作業者は、対象物面6を光軸に沿って移動させながら、検出部12に干渉光が検出される光軸上の位置を特定する必要がある。
【0064】
従来の干渉計においては、対象物面6が参照面5に平行になるように配置した状態で、干渉光が検出される位置を特定していた。そのため、作業者は、測定光と参照光とが干渉する干渉可能な距離より短い距離で対象物面6を移動させなければならなかった。そのため、作業者は何度も対象物面6を移動させる必要があり、位置を特定する作業に時間がかかっていた。以下、検出部12に干渉光が検出される位置を特定する作業について具体的に説明する。
【0065】
図10は、対象物面6が参照面5に対して平行な状態で干渉光が検出される位置を特定する場合について説明するための図である。測定光と参照光とを干渉させることができる干渉可能範囲は、光軸上において光路長差ΔLが0になる位置を中心とする干渉可能な距離内に制限されている。
図10の範囲A0は、干渉可能範囲を示す。
【0066】
図10(a)は、対象物面6が干渉可能範囲A0に含まれていない状態を示す模式図である。
図10(b)は、
図10(a)の状態から、対象物面6が干渉可能な距離より短い距離aだけ移動された状態を示す図である。
図10(c)は、
図10(a)の状態から、対象物面6が、干渉可能な距離より長い距離bだけ移動された状態を示す図である。このように、作業者は、干渉可能な距離より短い距離で対象物面6を移動しないと、干渉可能範囲A0に対象物面6を含めることができない。そのため、従来の干渉計を使用する作業者は、干渉光が検出される位置を特定するときに、対象物面6を干渉可能な距離より短い距離で移動させなければならず、干渉光が検出される位置を特定するのに時間がかかっていた。
【0067】
次に、第3の実施の形態に係る干渉計1の概要について
図11を参照しながら説明する。
図11は、対象物面6が参照面5に対して傾いた状態で干渉光が検出される位置を特定する場合について説明するための図である。
図11(a)は、対象物面6が参照面5に対して傾いていることを示す模式図である。
図11の高低差Δhは、光軸上における対象物面6の一方の端部からもう一方の端部までの距離を示す。
図11(a)において、対象物面6の中心Sは干渉可能範囲A0の外にあるが、対象物面6の下端は干渉可能範囲A0内に含まれている。そのため、検出部12は干渉光を検出することができる。
【0068】
図11(b)は、
図11(a)と同様に、対象物面6が参照面5に対して傾いていることを示す模式図である。
図11(b)において、対象物面6の中心Sは干渉可能範囲A0の外にあるが、対象物面6の上端は干渉可能範囲A0内に含まれている。そのため、検出部12は、干渉光を検出することができる。このように、検出部12は、対象物面6が参照面5に対して傾いているとき、干渉可能範囲A0に、対象物面6が参照面5に対して傾いた角度に対応する距離を加えた検出可能範囲A1に対象物面6の一部が含まれているとき、干渉光を検出することができる。
図11(c)は、干渉光を検出可能な検出可能範囲A1を模式的に示す図である。
【0069】
第3の実施の形態に係る干渉計1は、光源11が照射する光が干渉可能な距離に、対象物面6を参照面5に対して傾いた角度に対応する距離を加えた検出可能距離で、対象物面6を移動させる。このようにすることで、干渉計1は、対象物面6を移動させる回数を減らせるので、検出部12に干渉光が検出される位置を特定するのにかかる時間を短縮することができる。以下、第3の実施の形態に係る干渉計1の機能構成について、第1の実施の形態と異なる点について説明し、同様の点については適宜省略する。
【0070】
[第3の実施の形態に係る干渉計1の機能構成]
取得部131は、対象物面6を傾ける角度θとして、光軸を基準とする傾斜角を取得する。取得部131は、例えば作業者が制御部13に入力した傾斜角を取得する。また、取得部131は、記憶部14に記憶された傾斜角を取得してもよい。
【0071】
移動制御部134は、光軸を基準とする対象物面6の角度θを取得部131により取得された傾斜角になるように変化させる。移動制御部134は、取得された傾斜角に基づいて対象物面6を移動させる移動距離を特定する。例えば、移動制御部134は、光源11が照射する光の可干渉距離Δlに、傾斜角により定まる対象物面6の一方の端部からもう一方の端部までの光軸上の距離を示す高低差Δhを加えた距離を移動距離として特定する。
【0072】
対象物面6が検出部12でm本の干渉縞が検出されるように傾いている場合、高低差Δhは、光源11が照射する光の波長λを用いて、m×λ/2と表される。このことを利用して、移動制御部134は、一方向に配列されたN個の画素においてm本の干渉縞が検出されるように、対象物面6を傾けてもよい。移動制御部134は、波長λと干渉縞の本数mとに基づいて高低差Δhを特定し、特定した高低差Δhを加えた距離を移動距離として特定する。
【0073】
具体的な数値をあげて説明する。例えば、干渉縞の本数mが100本であり、光源の波長λが780nmであり、可干渉距離Δlが10μmの場合、対象物面6の高低差Δhは39μmである。このとき、実質的な干渉可能範囲は、高低差Δh(=39μm)に可干渉距離Δl(=10μm)を加えた49μmである。干渉計1は、可干渉距離(10μm)に対し、約5倍粗い距離で対象物面6を移動させることができる。
【0074】
続いて、移動制御部134は、光源11から低可干渉性の光が対象物面6及び参照面5に照射されると、対象物面6を光源11の光軸に沿って特定した移動距離だけ移動させる。そして、移動制御部134は、検出部12により検出される光の強度に基づいて、干渉光が検出部12により検出される位置を特定する。
【0075】
(干渉光が検出される位置を特定する処理)
以下、
図12を参照しながら、干渉光が検出される位置を特定する処理の流れについて説明する。
図12は、干渉光が検出される位置を特定する処理のフローチャートである。まず、取得部131は、対象物面6を傾ける光軸を基準とする角度θを取得する(ステップS11)。続いて、移動制御部134は、対象物面6を角度θになるように傾ける(ステップS12)。
【0076】
移動制御部134が対象物面6を傾けると、移動制御部134は、対象物面6及び参照面5に光を照射させる(ステップS13)。そして、移動制御部134は、検出部12が干渉光を検出したか否かを判定する(ステップS14)。移動制御部134は、検出部12が干渉光を検出していないと判定すると(ステップS14でNo)、光源11の波長λに基づく可干渉距離Δlに、角度θにより定まる高低差Δhを加えた距離だけ対象物面6を移動させる(ステップS15)。移動制御部134は、ステップS14とステップS15とを干渉光が検出されたと判定するまで繰り返す。以下、ステップS16からステップS19までの処理は、
図9の光路長差ΔLを小さくする処理のフローチャートにおけるステップS3からステップS6までの処理と同様なので説明を省略する。
【0077】
[第3の実施の形態に係る干渉計1の効果]
以上説明したように、第3の実施の形態に係る干渉計1は、対象物面6を傾けた状態で干渉光が検出される位置を特定する。このようにすることで、干渉計1は、光源11が照射する光が干渉可能な距離より長い距離で対象物面6を移動させることができるので、干渉光が検出される位置を短時間で特定することができる。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、取得部131は、相対角γを取得する処理と同様の処理を用いて、光軸を基準とする参照面5の角度、又は光軸を基準とする対象物面6の角度を取得することができる。また、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0079】
(変形例1)
以上の説明においては、参照面5は光源11の光軸に対して垂直になるように配置されているものとしたが、これに限らず、参照面5が可動ステージに配置されていてもよい。この場合、取得部131は、光軸を基準とする参照面5の角度θ、又は対象物面6に対する参照面5の相対的な角度である相対角γを取得する。そして、移動制御部134は、参照面5を光路長差ΔLが小さくなるように移動させる。このようにすることでも、干渉計1は、光路長差ΔLを小さくする作業にかかる時間を短縮することができる。
【0080】
(変形例2)
距離特定部132は、複数の干渉光に基づいて干渉縞の明暗の差が最大となる位置X1を特定してもよい。例えば、距離特定部132は、干渉縞解析における位相シフト法の原理を利用して、対象物面6を参照面5に対して光軸方向に移動させて得られる複数の干渉光に基づいて、干渉縞の明暗の差が最大となる位置X1を特定する。例えば、フィゾー干渉計又はトワイマングリーン干渉計などの反射光により対象物面6の形状を測定する干渉計の場合であって、光源の波長λの半分の距離をN分割して対象物をさせるとき、距離特定部132は、式(6)に従って画素単位で振幅分布A(x)を特定する。
【0081】
【数4】
距離特定部132は、干渉縞の明暗の周期(空間周波数)に関係なく、画素単位で振幅分布A(x)を特定することができるので、位置X
1の特定精度が向上し、光路長差ΔLをより正確に特定することができる。
【0082】
(変形例3)
本発明は、位相の異なる複数の干渉光を同時に検出する干渉計にも適用できる。
図13は、変形例3に係る干渉計1aの概要を示す図である。変形例3に係る干渉計1は、λ/4板7と、3分割ビームスプリッタ8と、偏光板9とをさらに備える。また、変形例3に係る干渉計1は、ビームスプリッタ4に替えて、偏光ビームスプリッタ10を備える。距離特定部132は、複数の検出部12で同時に得られた複数の干渉光に基づいて干渉縞の明暗の差が最大となる位置X
1を特定する。このようにすることで、距離特定部132は、対象物面6を参照面5に対して相対的に移動させることなく、振幅分布A(x)を特定することができる。
【0083】
(変形例4)
本発明は、参照面5に対する相対的な対象物面6の形状を高精度に測定する場合に用いられるフィゾー型干渉計においても適用できる。
図14は、参照面5に対する相対的な対象物面6の形状を高精度に測定する場合に用いられるフィゾー型干渉計において低可干渉性の光を用いる干渉計1bの概要を示す図である。
【0084】
光源11が照射した光は、偏光ビームスプリッタ101aにおいて偏光して分岐される。偏光ビームスプリッタ101aにおいて偏光して分岐された一方の光は直進して偏光ビームスプリッタ101bに至り、もう一方の光はミラー102を経由して偏光ビームスプリッタ101bに至る。偏光ビームスプリッタ101a及び偏光ビームスプリッタ101bのそれぞれとミラー102との距離は距離Laで配置されており、二つの光の光路長差は2Laである。
【0085】
二つの光のそれぞれは、各種光学系を通過して、距離Lbで配置された対象物面6及び参照面5に入射し、それぞれの面で反射する。対象物面6で反射した測定光の光路長と、参照面5で反射した参照光の光路長との光路長差は、2Lbである。測定光及び参照光は、各種光学系を経由して、3分割ビームスプリッタ8で複数の光に分岐される。分岐された複数の光のそれぞれは、複数の検出部12のそれぞれで検出される。干渉計1bは、距離Laと距離Lbとを等しくすることで、二つの偏光ビームスプリッタ101a及び101bを反射したS偏光の参照光と、二つの偏光ビームスプリッタ101a及び101bを通過した測定光とを、異なる位相差で干渉させることができる。このようにすることで、干渉計1bは、異なる位相の複数の干渉縞画像を瞬間的に取得することができる。
【0086】
干渉計1bは、対象物面6及び参照面5に低可干渉性の光を照射して複数の検出部12で干渉光を検出する。次に、干渉計1bは、光軸を基準とする参照面5の角度θ、又は光軸を基準とする対象物面6の角度θを取得する。干渉計1bは、干渉縞明暗の振幅が大きい位置と検出部12の基準点との交点との距離ΔXと、角度θとに基づいてLaとLbとの差である光路長差ΔLを特定する。なお、干渉計1bは、角度θに替えて参照面5に対する対象物面6の相対的な角度である相対角γを取得し、距離ΔXと相対角γとに基づいて光路長差ΔLを特定してもよい。そして、干渉計1bは、光路長差ΔLが小さくなるように干渉計1bの光学系を調整する。このようにすることで、干渉計1bは、他の実施の形態、又は他の変形例と同様に、光路長差ΔLを小さくする作業を短くすることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 干渉計
2 レンズ
3 ピンホール
4 ビームスプリッタ
5 参照面
6 対象物面
7 λ/4板
8 3分割ビームスプリッタ
9 偏光板
10 偏光ビームスプリッタ
11 光源
12 検出部
13 制御部
14 記憶部
15 可動ステージ
101 偏光ビームスプリッタ
102 ミラー
131 取得部
132 距離特定部
133 解析部
134 移動制御部