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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】欠陥観察装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20230105BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20230105BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/22 502J
H01J37/28 B
H01L21/66 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019079938
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020177835
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晟
(72)【発明者】
【氏名】原田 実
(72)【発明者】
【氏名】嶺川 陽平
(72)【発明者】
【氏名】平井 大博
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-098123(JP,A)
【文献】特開2004-191187(JP,A)
【文献】特開2013-246062(JP,A)
【文献】国際公開第2017/210455(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/28
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子顕微鏡と、コントローラと、を備える欠陥観察装置であって、
前記荷電粒子顕微鏡は、試料に照射する観察用エネルギーを照射するエネルギー源と、試料を載置するテーブルと、検出器と、を備え、
前記コントローラは:
(A)第1の撮像条件を用いて、前記試料における所定の部位が撮像された、第1タイプの画像である第1画像を取得し、前記第1画像に於ける前記所定の部位が撮像された領域を示す第1座標を取得し、
(B)第2の撮像条件を用いて、前記所定の部位が撮像された、第2タイプの画像である第2画像を取得し、
(C)像質変換プログラムに、前記第1画像又は前記第2画像を入力することで、1以上の前記所定の部位の画像を取得し、
(D)前記所定の部位の画像に基づいて、前記第1座標と、前記第2画像に於ける前記所定の部位が撮像された領域を示す第2座標と、の差分を推定し、
(E)(D)で推定した差分と、前記第1座標と、に基づいて、前記第2座標を取得し

ここで、(C)に於ける1以上の前記所定の画像の取得は:
(1)前記像質変換プログラムによって、前記第1画像を、前記第1タイプから前記第2タイプに変換し、1以上の前記所定の部位の画像とする、第1取得処理、
(2)前記像質変換プログラムによって、前記第2画像を、前記第2タイプから前記第1タイプに変換し、1以上の前記所定の部位の画像とする、第2取得処理、
(3)前記像質変換プログラムによって、前記第1画像及び前記第2画像を、前記第1タイプ及び前記第2タイプとは異なる第3タイプに変換し、1以上の前記所定の部位の画像とする、第3取得処理、
の1以上の取得処理を備え
前記コントローラは、前記第1取得処理乃至前記第3取得処理の少なくとも2以上を処理可能であり、
前記コントローラは:
(G)所定の基準に基づいて、前記第1取得処理乃至前記第3取得処理の少なくとも2以上から、いずれか1つ以上の取得処理を選択する、欠陥観察装置。
【請求項2】
荷電粒子顕微鏡と、コントローラと、を備える欠陥観察装置であって、
前記荷電粒子顕微鏡は、試料に照射する観察用エネルギーを照射するエネルギー源と、試料を載置するテーブルと、検出器と、を備え、
前記コントローラは:
(A)第1の撮像条件を用いて、前記試料における所定の部位が撮像された、第1タイプの画像である第1画像を取得し、前記第1画像に於ける前記所定の部位が撮像された領域を示す第1座標を取得し、
(B)第2の撮像条件を用いて、前記所定の部位が撮像された、第2タイプの画像である第2画像を取得し、
(C)像質変換プログラムに、前記第1画像又は前記第2画像を入力することで、1以上の前記所定の部位の画像を取得し、
(D)前記所定の部位の画像に基づいて、前記第1座標と、前記第2画像に於ける前記所定の部位が撮像された領域を示す第2座標と、の差分を推定し、
(E)(D)で推定した差分と、前記第1座標と、に基づいて、前記第2座標を取得し

ここで、(C)に於ける1以上の前記所定の部位の画像の取得は:
(1)前記像質変換プログラムによって、前記第1画像を、前記第1タイプから前記第2タイプに変換し、1以上の前記所定の部位の画像とする、第1取得処理、
(2)前記像質変換プログラムによって、前記第2画像を、前記第2タイプから前記第1タイプに変換し、1以上の前記所定の部位の画像とする、第2取得処理、
(3)前記像質変換プログラムによって、前記第1画像及び前記第2画像を、前記第1タイプ及び前記第2タイプとは異なる第3タイプに変換し、1以上の前記所定の部位の画像とする、第3取得処理、
の1以上の取得処理を備え
前記コントローラは、前記第1取得処理乃至前記第3取得処理の少なくとも2以上を処理可能であり、
前記コントローラは:
(F)前記第1取得処理乃至前記第3取得処理の少なくとも2以上から、いずれか1つ以上の取得処理を選択するための操作指示を受信し、
前記第1の撮像条件と前記第2の撮像条件では、前記エネルギー源の加速電圧、プローブ電流のいずれか1つ以上が異なり、
前記第1取得処理および前記第2取得処理は事前に取得した前記第1タイプの画像と前記第2タイプの画像を元に、機械学習により得られたパラメータを用いることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項3】
請求項に記載の欠陥観察装置であって、
前記第3取得処理は前記第3タイプの画像を用いて機械学習により得られたパラメータを用いることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項4】
請求項に記載の欠陥観察装置であって、
前記第3タイプの画像は、前記第3取得処理により取得した画像、または、シミュレーション画像、または、別装置にて取得した画像のいずれかであることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項5】
請求項に記載の欠陥観察装置であって、
前記第3取得処理は前記第1タイプおよび前記第2タイプの画像に対し、画像処理により位置合わせに有効な情報を明瞭にすることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項6】
荷電粒子顕微鏡と、コントローラと、を備える欠陥観察装置であって、
前記荷電粒子顕微鏡は、試料に照射する観察用エネルギーを照射するエネルギー源と、試料を載置するテーブルと、検出器と、を備え、
前記コントローラは:
(A)第1の撮像条件を用いて、前記試料における所定の部位が撮像された、第1画像を取得し、前記第1画像に於ける前記所定の部位が撮像された領域を示す第1座標を取得し、
(B)第2の撮像条件を用いて、前記所定の部位が撮像された、第2画像を取得し、
(C)機械学習プログラムに、前記第1画像又は前記第2画像を入力することで、1以上の前記所定の部位の画像を取得し、
(D)前記所定の部位の画像に基づいて、前記第1座標と、前記第2画像に於ける前記所定の部位が撮像された領域を示す第2座標と、の差分を推定し、
(E)(D)で推定した差分と、前記第1座標と、に基づいて、前記第2座標を取得し、
ここで、前記機械学習プログラムは:
(C1)前記試料とは別なサンプル試料を対象に、前記第1の撮像条件を用いて撮像された第1サンプル画像と、
(C2)前記サンプル試料を対象に、前記第2の撮像条件を用いて撮像された第2サンプル画像と、
を用いて学習された、欠陥観察装置。
【請求項7】
請求項記載の欠陥観察装置であって、
前記エネルギー源は、前記試料に載置された前記試料に収束させた荷電粒子線を照射する荷電粒子光学系であり、前記検出器は、前記荷電粒子光学系により前記収束させた荷電粒子ビームが照射された前記試料から発生した2次荷電粒子を検出し、前記コントローラは、前記荷電粒子光学系を制御して前記第1の撮像条件を用いて前記第1画像を取得するとともに前記第1の撮像条件とは異なる前記第2の撮像条件を用いて前記第2画像を取得することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項8】
請求項記載の欠陥観察装置であって、前記コントローラは取得した前記第1画像から関心領域を抽出し、前記コントローラはさらに前記荷電粒子光学系を制御して前記第1画像から抽出した前記関心領域の詳細な画像を取得することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項9】
請求項記載の欠陥観察装置であって、
前記コントローラは、前記荷電粒子光学系を制御して、前記第1の撮像条件と前記第2の撮像条件では、前記試料に照射する前記荷電粒子線の加速電圧またはプローブ電流のいずれか1つ以上を変えることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項10】
請求項記載の欠陥観察装置であって、前記コントローラは前記機械学習プログラムを用いて、取得した前記第2画像の画質を取得した前記第1画像の画質に合わせる像質変換処理を行い、前記像質変換処理を施した画像において前記第1画像から抽出した関心領域に対応する位置について前記関心領域に対する位置ずれ量を算出し、前記算出した位置ずれ量に基づいて前記像質変換処理を施した画像において前記第1画像から抽出した関心領域に対応する関心領域を抽出することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項11】
請求項10記載の欠陥観察装置であって、前記コントローラは前記荷電粒子光学系を制御して前記像質変換処理を施した画像から抽出した前記関心領域に前記荷電粒子線を照射し、前記荷電粒子線が照射された前記関心領域から発生した2次荷電粒子を前記検出器で検出した信号を受けて、前記荷電粒子線が照射された前記関心領域の組成を分析することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項12】
請求項記載の欠陥観察装置であって、
前記コントローラが制御する前記第1の撮像条件は欠陥画像自動収集処理を行うための撮像条件であり、
前記コントローラが制御する前記第2の撮像条件が前記所定の部位の組成を分析して前記第2画像を自動で分類処理を行うための撮像条件であることを特徴とする欠陥観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子顕微鏡などを用いて、試料である半導体ウェハ上に形成された回路パターンや欠陥を観察する、欠陥観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの製造では、製造プロセスを迅速に立ち上げ、高歩留まりの量産体制に早期に移行させることが、収益確保のため重要である。この目的のため、製造ラインには各種の検査装置や観察装置、計測装置が導入されている。
【0003】
特許文献1に開示の技術は、試料観察装置において、試料観察のため画像を撮像するための時間を短縮してスループット向上させることと試料の高品質な画像を得ることとを両立させることを目的とした技術を開示している。
【0004】
より具体的には、荷電粒子顕微鏡で試料を撮像する撮像条件を変えて取得した試料の同一箇所の画質が悪い劣化画像と画質が良い高画質画像とを記憶する画像記憶部と、画像記憶部に記憶した劣化画像と高画質画像とを用いて劣化画像から高画質画像を推定するための推定処理パラメータを求める演算部と、荷電粒子顕微鏡で試料の所望の箇所を撮像して得られた試料の所望の箇所の劣化画像を演算部で求めた推定処理パラメータを用いて処理して所望の領域の高画質画像を推定する高画質画像推定部と、高画質画像推定部で推定した推定高画質画像を出力する出力部とを備える、試料観察装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-137275号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Jun-Yan Zhu、 et al. "Unpaired Image-to-Image Translation using Cycle-Consistent Adversarial Networks" arXiv preprint arXiv:1703.10593(2017)
【文献】Phillip Isola、 et al. "Image-to-Image Translation with Conditional Adversarial Networks" arXiv preprint arXiv:1611.07004(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
欠陥観察装置とは、検査装置が出力した欠陥位置座標(試料上の欠陥の位置を示した座標情報)をもとに、ウェハ上の欠陥位置を高解像度に撮像し、画像を出力する装置であり、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Eelectron Microscope)を用いた観察装置(以下、レビューSEMと記載)が広く使われている。
【0008】
半導体の量産ラインでは観察作業の自動化が望まれており、レビューSEMは試料内の欠陥位置における画像を自動収集する欠陥画像自動収集処理(ADR:Automatic Defect Review)と、収集した欠陥画像を自動で分類する欠陥画像自動分類処理(ADC:Automatic Defect Classification)と、欠陥の組成を自動で分析するエネルギー分散型X線分析(EDS、EDX:Energy Dispersive X-ray Spectrometry)を行う機能を搭載している。
【0009】
欠陥観察装置においては単位時間あたりにより多くの画像を取得する(スループット高く動作する)ことや、ユーザによるパラメータ調整の負荷低減が重要である。
【0010】
各欠陥に対してADRを実施後にEDSを実施するなど、複数の処理を実施する場合、撮像条件の変更やステージ移動の誤差などにより、撮像範囲のずれが発生するため、それぞれの処理ごとに欠陥検出を行う必要がある。しかし、ADRを実施後にEDSを実施するなど、撮像条件を変更した場合、画像の像質が大きく異なるため欠陥検出用パラメータを撮像条件ごとに調整する必要があり、ユーザによるパラメータ調整の負担が大きくなる。
【0011】
そこで、第1の撮像条件下(例えば、ADRでの撮像条件下)で撮像した画像と第2の撮像条件下(例えば、EDSの撮像条件下)で取得した画像の位置ずれ量算出が可能であれば、第1の撮像条件下の画像における欠陥座標を用いて第2の撮像条件下の画像における欠陥座標を算出できる。
【0012】
しかし、実施には、第1の撮像条件下の画像と第2の撮像条件下の画像は、それぞれの撮像条件が異なるために像質が大きく異なり、位置ずれ量算出に必要な画像位置合わせ処理を適用することは困難である。
【0013】
特許文献1に記載された方法では、上記したような画質が大きく異なる2つの画像について、精度よく位置ずれ量の算出を行える程度までに両画像の位置合わせ行うことについては記載されていない。
【0014】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、第1の撮像条件下の画像における欠陥座標を用いて第2の撮像条件下の画像における欠陥座標を算出できるようにして、第2の撮像条件下において欠陥検出用パラメータの調整を不要とすることにより、スループット向上およびユーザの負荷低減を可能にする欠陥観察装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するために、本発明では、
荷電粒子顕微鏡と、コントローラと、を備える欠陥観察装置であって、
前記荷電粒子顕微鏡は、試料に照射する観察用エネルギーを照射するエネルギー源と、試
料を載置するテーブルと、検出器と、を備え、
前記コントローラは:
(A)第1の撮像条件を用いて、前記試料における所定の部位が撮像された、第1タイ
プの画像である第1画像を取得し、前記第1画像に於ける前記所定の部位が撮像された領域を示す第1座標を取得し、
(B)第2の撮像条件を用いて、前記所定の部位が撮像された、第2タイプの画像であ
る第2画像を取得し、
(C)像質変換プログラムに、前記第1画像又は前記第2画像を入力することで、1以
上の所定の部位の画像を取得し、
(D)前記所定の画像に基づいて、前記第1座標と、前記第2画像に於ける前記所定の
部位が撮像された領域を示す第2座標と、の差分を推定し、
(E)(D)で推定した差分と、前記第1座標と、に基づいて、前記第2座標を取得し

ここで、(C)に於ける1以上の前記所定の画像の取得は:
(1)前記像質変換プログラムによって、前記第1画像を、前記第1タイプから前記第2タイプに変換し、1以上の前記所定の部位の画像とする、第1取得処理、
(2)前記像質変換プログラムによって、前記第2画像を、前記第2タイプから前記第
1タイプに変換し、1以上の前記所定の部位の画像とする、第2取得処理、
(3)前記像質変換プログラムによって、前記第1画像及び前記第2画像を、前記第1及び第2タイプとは異なる第3タイプに変換し、1以上の前記所定の部位の画像とする、第3取得処理、
の1以上の取得処理を備え、
前記コントローラは、前記第1取得処理乃至前記第3取得処理の少なくとも2以上を処理可能であり、
前記コントローラは:
(G)所定の基準に基づいて、前記第1取得処理乃至前記第3取得処理の少なくとも2以上から、いずれか1つ以上の取得処理を選択する、欠陥観察装置とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1の撮像条件を用いて撮像した画像と第2の撮像条件を用いて取得した画像の位置ずれ量算出を可能にすることにより、第1の撮像条件を用いて撮像した画像における欠陥座標を用いて第2の撮像条件を用いて撮像した画像における欠陥座標を算出できるようにしたので、第2の撮像条件を用いて撮像する場合において欠陥検出用パラメータの調整を不要とすることができ、スループット向上およびユーザの負荷低減を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に係る欠陥観察装置の概略の構成を示すブロック図である。
図2】実施例1に係る欠陥観察装置の制御部と記憶部と演算部の内部構成を示すブロック図である。
図3】実施例1に係る欠陥観察方法の処理の流れを示すフロー図である。
図4】実施例1に係る学習シーケンスの処理の流れを示すフロー図である。
図5】実施例1に係る学習シーケンスのうち、学習用画像取得工程の詳細な処理の流れを示すフロー図である。
図6】実施例1に係る学習シーケンスのうち、推定処理パラメータ学習工程の詳細な処理の流れを示すフロー図である。
図7】実施例1に係る欠陥観察装置のニューラルネットワークの構成を示すブロック図である。
図8】実施例1に係る欠陥観察装置のGUIの一例を示す画面の正面図である。
図9】実施例1に係る欠陥観察装置の変換確認画面の一例を示す画面の正面図である。
図10】実施例2に係る欠陥観察装置のニューラルネットワークの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
欠陥観察装置を実用化するにあたっては、単位時間あたりにより多くの画像を取得できるようにする(スループット高く動作する)ことや、ユーザによるパラメータ調整の負荷を低減することが重要である。
【0019】
しかし、各欠陥に対してADRにより観察対象である欠陥の画像を抽出することを実施後に、EDSにより観察対象である欠陥の組成の分析を実施するなど、複数の処理を実施する場合、撮像条件の変更やステージ移動の誤差などにより、撮像範囲のずれが発生してしまう可能性がある。この位置ずれの発生を防ぐために、それぞれの処理ごとに観察対象である欠陥を検出して位置ずれの補正を行う必要がある。しかし、撮像条件を変更した場合、得られる画像の像質が大きく異なるため、欠陥検出用パラメータを撮像条件ごとに調整する必要がある。その結果、ユーザによるパラメータ調整の負担が大きくなる。
【0020】
そこで、第1の撮像条件下(例えば、ADRでの撮像条件下)で撮像した画像と第2の撮像条件下(例えば、EDSの撮像条件下)で取得した画像の位置ずれ量算出が可能であれば、第1の撮像条件下の画像における欠陥座標を用いて第2の撮像条件下の画像における欠陥座標を算出でき、第2の撮像条件下において欠陥検出用パラメータの調整が不要となるためスループット向上およびユーザの負荷低減が可能となる。
【0021】
しかし、SEMを用いて画像を取得する場合、例えば欠陥を観察するための第1の撮像条件(例えば、ADRでの撮像条件)と、欠陥を分析するための第2の撮像条件(例えば、EDSの撮像条件)において、試料に照射する1次電子の加速エネルギが大きく異なる。その結果、第1の撮像条件下で得られる画像と第2の撮像条件下で得られる画像とは像質が大きく異なってしまい、そのままでは位置ずれ量算出に必要な画像位置合わせ処理を適用することは困難である。
【0022】
本発明は、第1の撮像条件下(例えば、ADRでの撮像条件)で撮像した画像と第2の撮像条件下(例えば、EDSの撮像条件)で取得した画像の位置ずれ量算出を可能にすることにより、第1の撮像条件を用いて撮像した画像における関心領域である欠陥の座標を用いて第2の撮像条件を用いて撮像した画像における欠陥座標を算出できるようにした。これにより、第2の撮像条件下において欠陥検出用パラメータの調整を不要にして、スループット向上およびユーザの負荷低減を可能にしたものである。
【0023】
また、本発明は、第1の撮像条件下の画像における関心領域である欠陥の座標を用いて第2の撮像条件下の画像における欠陥座標を算出できるようにして、欠陥観察のスループットを向上させるために、荷電粒子顕微鏡と、この荷電粒子顕微鏡を制御する制御部と記憶部と演算部とを有するコントローラとを備える欠陥観察装置において、制御部で,荷電粒子顕微鏡を第1の条件で制御して試料の観察対象領域の第1の画像を取得し、演算部において、取得した第1の画像から観察対象である関心領域の第1の位置情報を抽出し、制御部で、荷電粒子顕微鏡を第2の条件で制御して試料の関心領域の第2画像を取得し、演算部において、取得した第2の画像の画質を記憶部に記憶しておいた画質変換処理パラメータを用いて第1の画像の像質に合わせる像質変換処理を行い、像質変換処理を施した第2の画像における関心領域を抽出し、この抽出した関心領域の組成を分析するように欠陥観察装置を構成したものである。
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。
【0025】
ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【実施例1】
【0026】
本実施例では、試料を撮像する撮像装置として、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Elecron Microscope)を備えた欠陥観察装置を対象に説明する。しかし、本実施例に関わる撮像装置は、SEM以外でも良く、光学顕微鏡やイオンなどの荷電粒子を用いた撮像装置でも良い。また、観察対象の画像として、半導体ウェハ上の欠陥を撮像した画像を対象に説明するが、フラットパネルディスプレイや生体試料など他の試料を撮像した画像でも良い。
【0027】
図1は、本実施例に係るSEMを用いた撮像装置101(以下、SEM101と記す)を含む欠陥観察装置100の構成を表している(ただし、図1に示した構成においては、SEM101よりも低い倍率で欠陥の位置を検出するための光学顕微鏡を備えたシステムの表示を省略している)。欠陥観察装置100は、試料の撮像を行う荷電粒子光学系を有するSEM101と、制御システム部120とを備えて構成されている。
【0028】
SEM101は、観察対象である試料ウェハ108を搭載してX-Y平面内又はX-Y-Z空間内で移動可能なステージ109、荷電粒子光学系として試料ウェハ108に照射する荷電粒子ビームである電子ビーム115を発生させる電子源110、電子ビーム115が照射された試料ウェハ108から発生した二次電子117や反射電子118やX線(図示せず)などを検出する検出器111の他、電子ビーム115を試料ウェハ108上に収束させる電子レンズ(図示せず)や、電子ビーム115を試料ウェハ108上で走査するための偏向器(図示せず)を備えて構成される。
【0029】
制御システム部120は、全体の制御を行う制御部102、磁気ディスクや半導体メモリなどに情報を記憶する記憶部103、プログラムに従い演算を行う演算部104、装置に接続された外部の記憶媒体との情報の入出力を行う外部記憶媒体入出力部105、ユーザとの情報の入出力を制御するユーザインターフェース制御部106、ネットワーク114を介して図示していない欠陥画像分類装置などと通信を行うネットワークインターフェース部107、試料の組成を分析する分析部112を備えている。
【0030】
図2は、制御システム部120の制御部102、記憶部103、演算部104について本実施例にかかる構成を示したものである。
【0031】
制御部102は、全体制御部200、ステージ制御部201、電子ビームスキャン制御部202、検出器制御部203、撮像条件制御部204を備えている。
【0032】
記憶部103は、生成されたデジタル画像を付帯情報とともに記憶する画像記憶部205、画像の撮像条件などを記憶する画像撮像条件記憶部206、像質変換処理に係わるパラメータを記憶する変換処理パラメータ記憶部207と、実施する像質変換の変換元および変換先の撮像条件を記憶する変換フラグ記憶部208を備える。
【0033】
また、演算部104は、処理パラメータに基づいて撮像条件の異なる画像の像質を合わせる像質変換処理部209、SEM101による撮像条件をADRに適した撮像条件に設定した状態で撮像して得られる第一タイプの画像と、EDSに適した撮像条件に設定した状態で撮像して得られる第二タイプの画像を第一タイプの画像と同じ像質へ変換した画像との誤差を算出する変換誤差算出部210、この変換誤差算出部210で算出された変換誤差をもとに推定処理のパラメータを更新する変換処理パラメータ更新部211、第一タイプの画像と変換した画像を元に推定誤差算出処理のパラメータを更新する推定誤差算出処理パラメータ更新部212、撮像して得られた画像を処理して欠陥位置の抽出や欠陥画像の位置合わせなどの処理を行う画像処理部213を備える。
【0034】
また、ユーザインターフェース制御部106には、キーボードやマウス、ディスプレイ1130などから構成される入出力端末113が接続されている。
【0035】
図1及び図2に示した構成を有する欠陥観察装置100を用いた試料の観察方法(観察手順)に関して、図3を用いて説明する。
【0036】
まず、観察対象となる半導体ウェハ(試料ウェハ)108をステージ109上にロードする(S301)。次に、撮像条件制御部204は、観察対象である試料ウェハ108に対応した撮像条件を、画像撮像条件記憶部206から読み込む(S302)。また、撮像条件制御部204は、像質変換を行う際の像質変換元の撮像条件および像質変換先の撮像条件を、変換フラグ記憶部208から読み込む(S303)。
【0037】
試料ウェハ108上に形成された半導体パターンは、多数の製造工程を経て製造されており、各工程において外観が大きく異なる場合がある。更に、帯電のしやすさなど試料の特性も異なる場合がある。そのため、処理された工程やデバイスの部位ごとに撮像条件を調整し、記憶させるのが一般的である。同様の理由により、変換処理パラメータ記憶部207に記憶する像質変換処理パラメータも撮像条件および工程ごとに管理することで推定精度が向上する。
【0038】
撮像条件と変換フラグ読み込み後、全体制御部200は、試料ウェハ108が処理された工程と変換フラグに対応した像質変換処理パラメータが変換処理パラメータ記憶部207に記憶されているか判定する(S304)。
【0039】
全体制御部200により、変換処理パラメータ記憶部207に変換処理パラメータが記憶されていないと判定された場合(S304で「無」の場合)は、後述する学習シーケンスにより像質変換処理パラメータを学習して、変換処理パラメータ記憶部207に記憶し(S305)、次のステップS306に進む。
【0040】
一方、全体制御部200により、変換処理パラメータ記憶部207に像質変換処理パラメータが記憶されていると判定された場合(S304で「有」の場合)は、像質変換処理パラメータを変換処理パラメータ記憶部207から読み出す(S306)。
【0041】
次に、試料ウェハ108上の観察対象領域をSEM101を用いてADR用撮像条件下で順次撮像して、一連の観察を行う。
【0042】
この一連の観察においては、まず、ステージ制御部201でステージ109を制御して、試料ウェハ108上の観察対象領域がSEM101の撮像視野に含まれるように調整する(S307)。次に、電子ビームスキャン制御部202でSEM101を制御して、電子ビーム115を試料ウェハ108上に照射して走査する。電子ビーム115が照射された観察対象領域から発生した二次電子117や反射電子118は、検出器制御部203で制御された検出器111により検出される。
【0043】
二次電子117や反射電子118を検出した検出器111からの検出信号は、画像処理部213に入力されて処理され、観察対象領域の画像(デジタル画像)を取得する(S308)。取得した観察対象領域の画像は、画像記憶部205に記憶する。
【0044】
さらに、S308で取得した画像を画像処理部213で処理して、デジタル画像から欠陥の座標p1を抽出する(S309)。次に、抽出した欠陥の座標p1の情報を用いて電子ビームスキャン制御部202でSEM101を制御して、高倍率な欠陥画像を取得する(S310)。取得した高倍率な欠陥画像は、画像記憶部205に記憶する。
【0045】
以上のS307からS310までの撮像処理を、試料ウェハ108の複数の観察対象領域について繰り返し実行する。なお、観察対象領域とは、例えば、図示していない光学式欠陥検査装置により予め検出された欠陥部位を含む領域でも良いし、ユーザが指定した領域でも良い。
【0046】
次に、EDS用撮像条件下で順次撮像して、一連の観察を行う。まず、ステージ制御部201でステージ109を制御して、試料ウェハ108上の観察対象領域がSEM101の撮像視野に含まれるように調整する(S311)。
【0047】
次に、画像撮像条件記憶部206に記憶された画像撮像条件に基づいて電子ビームスキャン制御部202でSEM101の電子ビーム115の照射条件(電子ビーム115の加速電圧など)をEDS用の条件に設定して、電子ビーム115を試料ウェハ108上に照射して走査する。
【0048】
EDS用の条件に設定した電子ビーム115が照射された観察対象領域から発生した二次電子117や反射電子118を検出器制御部203で制御された検出器111で検出し、画像処理部213で処理して、観察対象領域の画像(デジタル画像)を取得する(S312)。取得した観察対象領域の画像は、画像記憶部205に記憶する。
【0049】
ただし、ステージ109の制御誤差などにより位置ずれが発生するため、S309にてADR用撮像条件下で撮像して得られた画像から抽出した欠陥位置と、S312でEDS用撮像条件下で撮像して得られた画像の欠陥位置とは異なる場合がある。そのためS312でEDS用撮像条件下で撮像して得られた画像内における欠陥位置を抽出する必要がある。
【0050】
そこで、S312でEDS用撮像条件下で撮像して得られた画像と、同一欠陥を含むS308でADR用撮像条件下で撮像して得られたデジタル画像との像質を合わせるために、像質変換処理部209において、変換処理パラメータ記憶部207に記憶しておいた変換処理パラメータを用いて、画像記憶部205に記憶した画像の像質変換処理を行う(S313)。
【0051】
次に、像質変換処理部209で像質変換処理を施すことにより像質変換した画像を利用して、画像処理部213において、S312でEDS用撮像条件下で撮像して取得した画像とS308でADR用撮像条件下で撮像して取得した同一欠陥を含む画像の位置合わせを行い、位置ずれ量Δを算出する(S314)。
【0052】
次に、画像処理部213において、S309でADR用撮像条件下で撮像して得られた画像から抽出した欠陥座標と、S314で算出した位置ずれ量Δを元に、ADR用撮像条件下で撮像して得られた画像における欠陥位置を抽出する(S315)。次に、電子ビームスキャン制御部202で電子ビーム115の照射条件をEDS用の条件に設定した状態で、S315で抽出した欠陥位置に電子ビーム115を照射する。この電子ビーム115が照射された欠陥位置から発生したX線を、検出器制御部203で制御された検出器111で検出する。この検出器111で検出されたX線スペクトルから分析部112で組成分析を行う(S316)。
【0053】
以上のS311からS316までの処理を、試料ウェハ108の複数の観察対象領域について繰り返し実行する。なお、観察対象領域とは、図3の(a)の観察対象領域と同一である。
【0054】
また、学習シーケンス(S305)の実行は、ユーザインターフェース制御部106の入出力端末113のディスプレイ1130に表示されるGUI(Graphic User Interface)などを通したユーザ指示により、適宜実行されても良い。
【0055】
また、像質変換処理部209において行う像質変換処理(S313)は、S308で取得した画像の像質をS312で取得される画像の像質への変換処理、または、S312で取得した画像の像質をS308で取得される画像の像質への変換処理を実施する。
【0056】
S305における学習シーケンスとは、図4に示す通り、学習用画像の取得(S401)と、推定処理パラメータ学習(S402)の一連の流れを指す。
【0057】
S401における学習用画像の取得は、試料ウェハ108について、ADR用撮像条件下とEDS用撮像条件下で画像を複数枚取得する処理である。この処理の流れを、図5を用いて説明する。
【0058】
まず、全体制御部200で試料ウェハ108から学習用画像を取得する領域を設定する(S501)。これは、与えられた観察対象領域をサンプリングして抽出しても良いし、試料面内においてランダムに設定しても良い。次に、画像撮像条件記憶部206に記憶されたデータに基づいて、撮像条件制御部204でADR用の撮像条件に設定する(S502)。次に、この設定した学習用画像の取得領域がSEM101の撮像視野に含まれるようにステージ制御部201でステージ109を制御して、ステージ移動(S503)を行う。
【0059】
次に、電子ビームスキャン制御部202でSEM101を制御して、学習用画像の取得領域を電子ビーム115でスキャンし、学習用画像の取得領域から発生した二次電子117や反射電子118を検出器111で検出する。この二次電子117や反射電子118を検出した検出器111からの出力信号を画像処理部213で処理して、ADR用画像の取得(S504)を行う。ステージ移動(S503)とADR用画像の取得(S504)とを繰返して行い、S501にて設定した領域の画像を取得した後、画像を画像記憶部205に記憶する。
【0060】
設定した領域の画像を取得し終えたら、次に、画像撮像条件記憶部206に記憶されたデータに基づいて、撮像条件制御部204でEDS用の撮像条件に切り替える(S505)。次に、この設定した学習用画像の取得領域がSEM101の撮像視野に含まれるようにステージ制御部201でステージ109を制御して、ステージ移動(S506)を行う。
【0061】
次に、電子ビームスキャン制御部202でSEM101を制御して、学習用画像の取得領域を電子ビームでスキャンし、学習用画像の取得領域から発生した二次電子117や反射電子118を検出器111で検出する。この二次電子117や反射電子118を検出した検出器111からの出力信号を画像処理部213で処理して、SEM101で学習用画像の取得領域を撮像して、EDS用画像の取得(S507)を行う。ステージ移動(S506)とEDS用画像の取得(S507)とを繰返して行い、S501にて設定した領域の画像を取得した後、画像を画像記憶部205に記憶する。
【0062】
なお、ADR用画像とEDS用画像の取得領域は同一であっても良いし、異なっていても良い。また、ADR用画像とEDS用画像の撮像順序は問わないし、交互に取得しても良い。
【0063】
次に推定処理パラメータの学習を行う(S402)。
S402における推定処理パラメータ学習の詳細な処理のフローを、図6に沿って説明する。
【0064】
まず、S401で撮像して得た全ての画像に対して、画像処理部213において、ノイズ除去などの画像前処理を行う(S601)。
【0065】
次に、変換処理パラメータ更新部211で、推定処理のパラメータと誤差算出処理のパラメータを初期化する(S602)。この際、以前に学習した推定処理のパラメータや誤差算出処理のパラメータを変換処理パラメータ記憶部207から読み出して初期値として利用しても良い。
【0066】
次に、像質変換処理部209で、変換処理パラメータ更新部211において更新された変換処理パラメータに基づいて、EDS用撮像条件下で取得した画像からADR用撮像条件下で取得した画像の像質への変換を行い(S603)、変換誤差算出部210で変換誤差を算出し(S604)、S604で算出された変換誤差が小さくなるように変換処理パラメータ更新部211において変換処理パラメータを更新する(S605)。以上のS603~S605処理を繰り返すことで学習を行う。最後に、得られたパラメータを撮像条件などの付帯情報とともに変換処理パラメータ記憶部207に記憶する(S606)。
【0067】
EDS用画像からADR用画像の像質への変換の一方法として非特許文献1に記載されているニューラルネットを用いれば良い。具体的には、図7に示すように、EDS実画像711からADR画質変換画像712に像質への変換を行うニューラルネットA:701と、ニューラルネットA:701によりEDS実画像711から変換されたADR画質変換画像712とADR実画像713を識別するニューラルネットB:702と、ADR実画像713からEDS画質変換画像714に像質を変換するニューラルネットC:703と、ニューラルネットC:703によりADR実画像713から変換されたEDS画質変換画像714とEDS実画像711を識別するニューラルネットD:704を用いれば良い。
【0068】
変換誤差算出(S604)では、変換誤差算出部210で、それぞれのニューラルネットにおける誤差を算出する。ニューラルネットA:701の誤差は、ニューラルネットA:701によりEDS実画像711から変換されたADR画質変換画像712をニューラルネットB:702に入力した際の出力値と、ニューラルネットA:701によりEDS実画像711から変換されたADR画質変換画像712をニューラルネットC:703により変換したEDS画質変換画像714と、元画像であるEDS実画像711との差を使用する。
【0069】
誤差の算出にニューラルネットA:701によりEDS実画像711から変換されたADR画質変換画像712画像をニューラルネットC:703により変換したEDS画質変換画像714と元画像であるEDS実画像711との差を使用することで、元画像を再構築できるだけの情報を保持したまま像質の変換を行うよう学習することが可能となる。
【0070】
ニューラルネットB:702では、EDS実画像711がニューラルネットA:701により変換されたADR画質変換画像712とADR実画像713のいずれかを入力とし、ADR画質変換画像712を入力とした場合には(1-出力値)を、ADR実画像713を入力とした場合には(出力値)を誤差とすることで、ADR画質変換画像712を入力した際には1を、ADR実画像713を入力した際には0を出力するよう学習することができる。
【0071】
ニューラルネットC:703の誤差は、ニューラルネットC:703によりADR実画像713から変換されたEDS画質変換画像714をニューラルネットD:704に入力した際の出力値と、ニューラルネットC:703によりADR実画像713から変換されたEDS画質変換画像714をニューラルネットA:701により変換したADR画質変換画像712と、元画像であるADR実画像713との差を使用する。
【0072】
ニューラルネットD:704では、ADR実画像713がニューラルネットC:703により変換されたEDS画質変換画像714とEDS実画像711のいずれかを入力とし、EDS画質変換画像714を入力とした場合には(1-出力値)を、EDS実画像711を入力とした場合には(出力値)を誤差とすることで、EDS画質変換画像714を入力した際には1を、EDS実画像711を入力した際には0を出力するよう学習することができる。
【0073】
また、ニューラルネットB:702、D:704を学習する際の誤差は、変換後画像を入力した場合に出力値が大きく、実画像を入力した場合に出力値が小さくなるよう学習できれば他の値でも良い。
【0074】
変換処理パラメータ更新(S605)においては、ニューラルネットの学習において一般的な誤差逆伝播法を用いれば良い。また、推定誤差を算出する際に、取得した学習用画像対(ADR画像とEDS画像の組合せ)の全てを用いても良いが、ミニバッチ方式を取っても良い。つまり、学習用画像対の中から数枚の画像をランダムに抜き出し、パラメータを更新することを繰り返し実行しても良い。また、ニューラルネットA:701~D:704を学習する順序および頻度は問わない。例えばニューラルネットA:701、C:703を、ニューラルネットB:702、D:704の学習回数の2倍の回数の学習を行っても良い。
【0075】
また、撮像範囲が同様であるADR画像とEDS用画像を用いる場合は、ニューラルネットA:701のみを学習しても良いし、ニューラルネットA:701、B:702のみを学習してもよい。ニューラルネットA:701のみを学習する一手法として特許文献1に記載されている手法を用いればよい。
【0076】
またニューラルネットA:701、B:702を学習する一手法として、非特許文献2に記載されているニューラルネットを使用すれば良い。具体的にはニューラルネットA:701の変換誤差には、ニューラルネットA:701によってEDS用画像を変換した画像と対となるADR用画像との差分と変換後画像をニューラルネットB:702に入力した際の出力値を用いれば良い。
【0077】
以上の、S603~S605の処理を予め設定された指定回数繰り返すことで学習を行う。ただし、得られた変換誤差に応じて繰り返し処理を途中で終了するようにしても良い。最後に得られた推定処理パラメータを工程名などの付帯情報とともに変換処理パラメータ記憶部207に記憶して保存する(S606)。
【0078】
S313の像質変換処理ではニューラルネットA:701を使用すれば良い。ただし、本実施例はEDS用画像をADR用画像の像質へ変換する前提で記述しているが、ADR用画像とEDS用画像の像質を合わせる際にはADR用画像をEDS用画像の像質へ変換、EDS用画像をADR用画像の像質へ変換、ADR用画像とEDS用画像を第3の像質へ変換の3つの方法が考えられる。
【0079】
そして多種多様な構造をもつ試料を、多種多様な撮像条件で観察可能なSEMを用いる場合において、位置ずれ量算出に適した変換方法は異なると想定される。そのため、入力画像ごとに位置ずれ量算出に有効な変換方法を判定しても良いし、2つ以上の変換方法を実施して総合的に判断しても良いし、GUIなどにより指定された変換方法を実施しても良い。
【0080】
なお、第3の像質の画像は第3の撮像条件下の画像だけではなく、シミュレーション画像など本欠陥観察装置にて取得した画像以外でも良い。また、第3の像質への変換は第3の像質の画像の取得や機械学習を行わず、エッジ抽出、シェーディング補正、ノイズ除去、コントラスト調整などの画像処理を適用して像質を合わせても良い。なお、前記位置ずれ量算出に有効な変換方法とは、画像間の位置合わせに有効な画像中のパターン形状や欠陥部位が変換後画像において明瞭であることを意味する。
【0081】
次に、本実施例にかかるGUIについて説明する。まず、学習用画像取得工程S500において、ADR画像、EDS画像、第3の像質の画像の取得条件を設定するためのGUI:800を備える(図8)。
【0082】
また、第3の像質の画像について別試料の画像やシミュレーション画像など、事前に準備されている画像を用いるよう設定するためのGUIを備えても良い。本GUI:800を通して「撮像条件」801の欄に設定した項目ごとに「ADR」802の撮像条件、「EDS」803の撮像条件、「第3」の画像804の撮像条件、「使用する画像変換」810を設定した後、「学習開始」ボタン805を押すことでS305の学習シーケンスを実行することができる。
【0083】
「撮像条件」801の欄で設定する項目には、S502またはS505で設定するSEM101で試料ウェハ108に照射する電子ビーム115の電流であるプローブ電流、電子を加速するための加速電圧、加算フレーム数、などがある。
【0084】
また、学習シーケンスを実行している最中に「キャンセル」ボタン806を押すと、学習シーケンスを中断することができる。更に、GUI:800には、学習用画像取得枚数を設定する入力部807、最大繰り返し数を設定する入力部808が表示されている。
【0085】
また、第3の像質への変換に画像処理を行う場合には、GUI:800で画像処理パラメータを設定するためのGUIを備え、第3の像質への変換を学習する必要はない。
【0086】
また、「変換確認」ボタン809を押すと、図9に示すような画面(GUI)900に切替る。この画面900上には、Channel選択部901、画像ID選択ボタン902、変換処理選択ボタン903、「実行」ボタン(OKボタン)904、画像表示領域905、位置合わせ結果表示領域906が表示される。
【0087】
Channel選択部901では、二次電子像(SE)や反射電子像(BSE)などの画像の種類を指定する。画像ID選択ボタン902は、画像記憶部205に記憶した画像の番号を指定する。
【0088】
変換処理選択ボタン903は、画像表示領域905に表示されたADR用の撮像条件下で取得した画像とEDS用の撮像条件下で取得した画像とについて、いずれの画像を変換するかを選択する。
【0089】
すなわち、ADR用の撮像条件下で取得した画像をEDS用の撮像条件下で取得した画像の像質への変換を行うか、EDS用の撮像条件下で取得した画像をADR用の撮像条件下で取得した画像の像質への変換を行うか、EDS用の撮像条件下で取得した画像とADR用の撮像条件下で取得した画像を第3の像質へ変換を行うかのいずれか1つを選択する。
【0090】
図9に示した例では、EDS用の撮像条件下で取得した画像をADR用の撮像条件下で取得した画像の像質への変換を選択した状態を示している。
【0091】
「実行」ボタン904を押すと、変換パラメータを用いて指定された画像IDに対する変換処理および位置合わせ処理が実行される。画像表示領域905には、ADR用の撮像条件下で取得した画像とEDS用の撮像条件下で取得した画像と、変換処理選択ボタン903で選択された変換方法で画質変換された画像(図9に示した例では、EDS用の撮像条件下で取得した画像をADR用の撮像条件下で取得した画像の像質に変換された画像)を表示する。
【0092】
位置合わせ結果表示領域906には、位置合わせ処理結果が表示される。位置合わせ結果と共に位置合わせ時に用いた相関値などを表示しても良い。
【0093】
また、本実施例はADRを実行後、EDSを行う前提で記述しているが、ADRを実行後、撮像条件を変更してもう一度ADRを行っても良いし、欠陥位置が必要な別の欠陥観察フローを行っても良い。
【0094】
以上に説明したように、本実施例によれば、予めADRの撮像条件とEDSの撮像条件でそれぞれ学習用画像を取得し、この取得した学習用画像のうち、例えばEDSの撮像条件で取得した画像の像質を、対応する位置をADRの撮像条件で取得した画像の像質に合わせるように像質を変換する変換処理パラメータを調整しておくことにより(逆に、ADRの撮像条件で取得した画像の像質を、対応する位置をEDSの撮像条件で取得した画像の像質に合わせるように像質を変換する変換処理パラメータを調整しておくことにより)、欠陥観察時に、変換処理パラメータをいちいち調整する手間を省くことを可能にしたものである。
【0095】
本実施例によれば、第1の撮像条件下(例えばADR)で撮像した画像と第2の撮像条件下(例えばEDS)で取得した画像の位置ずれ量算出を可能にすることにより、第1の撮像条件下の画像における欠陥座標を用いて第2の撮像条件下の画像における欠陥座標を算出できるようにして、第2の撮像条件下において欠陥検出用パラメータの調整を不要として欠陥の分析を行えるようにしたことにより、欠陥の分析を含む欠陥観察のスループット向上およびユーザの負荷低減を可能にした。
【実施例2】
【0096】
実施例1においては、図6に示した画質変換処理方法のステップS603において、EDS実画像からADR画質変換画像への画質を変換する方法として図7に示したニューラルネットワークを用いた方法を説明したが、本実施例においては、畳み込みニューラルネットワークを用いた方法について説明する。本実施例において、EDS実画像からADR画質変換画像への画質を変換する方法以外は、実施例1で説明したものと同じであるので、説明を省略する。
【0097】
実施例1の図6の画質変換処理のステップS603におけるEDS実画像からADR画質変換画像への画質を変換する方法に替わる画質変換方法として、本実施例においては、図10に示すような、畳み込みニューラルネットワーク1001~1003を用いる。
ここで、Y:1011はEDS実画像、F1(Y):1012、F2(Y):1013は中間データを示し、F(Y):1014がADR画質変換画像の推定結果である。
【0098】
中間データと最終結果は下記の数式、(数1)~(数3)により算出される。ただし、(数1)~(数3)において、“*”は畳み込み演算を表す。ここで、W1はn1個のc0×f1×f1サイズのフィルタであり、c0は入力画像のチャネル数、f1は空間フィルタのサイズを表す。入力画像にc0×f1×f1サイズのフィルタをn1回畳み込むことでn1次元の特徴マップが得られる。
【0099】
B1はn1次元のベクトルであり、n1個のフィルタに対応したバイアス成分である。同様に、W2はn1×f2×f2サイズのフィルタ、B2はn2次元のベクトル、W3はn2×f3×f3サイズのフィルタ、B3はc3次元のベクトルである。
【0100】
F1(Y)= max(0、W1*Y+B1) ・・・(数1)
F2(Y)= max(0、W2*F1(Y)+B2) ・・・(数2)
F(Y)= W3*F2(Y)+B3 ・・・(数3)
このうち、c0とc3はEDS実画像とADR画質変換画像のチャネル数により決まる値である。また、f1やf2、n1、n2は学習シーケンス前にユーザが決定するハイパーパラメータであり、たとえばf1=9、f2=5、n1=128、n2=64とすれば良い。実施例1で説明した図4の推定処理パラメータ学習(S402)に対応する処理において調整するパラメータは、W1、W2、W3、B1、B2、B3である。
【0101】
なお、以上示した畳み込みニューラルネットワークの構成として、他の構成を用いても良い。例えば、層の数を変更しても良く、4層以上のネットワークなどを用いても良い。
【0102】
実施例1で説明した図6の推定処理パラメータ更新処理(S605)に対応する処理においては、ニューラルネットワークの学習において一般的な誤差逆伝搬法を用いれば良い。
【0103】
また、推定誤差を算出する際に、取得した学習用画像対の全てを用いても良いが、ミニバッチ方式を取っても良い。つまり、学習用画像対の中から数枚の画像をランダムに抜き出し、パラメータを更新することを繰り返し実行しても良い。
【0104】
さらには、ひとつの画像対からパッチ画像をランダムに切り出し、ニューラルネットワークの入力画像Yとしても良い。これにより、学習が効率的に行える。
【0105】
実施例1で説明した図6の変換誤差算出処理(S604)に対応する処理は、推定結果F(Y)と高画質画像の差異(誤差)を評価する処理であり、本処理で求めた推定誤差が小さくなるようにパラメータの更新が行われる。画像間の差異(誤差)を定量化する方法としては、平均二乗誤差(Measn Square Error)などを用いれば良い。
【0106】
本実施例によれば、欠陥観察装置に、上記に説明した処理機能を備えることで、高スループット撮像条件で撮像した劣化画像から高画質な画像を推定することが可能となり、高画質な画像を取得するための条件でSEM101を用いて試料ウェハ108を撮像して比較的長い時間をかけて高画質な画像を取得することが必要なくなるので、高スループット化と高画質化を両立させることが可能となる。
【0107】
すなわち、上記した実施例1と実施例2とに記載した欠陥観察装置は、試料を載置するテーブルと、このテーブルに載置された試料に荷電粒子ビームを走査して照射する荷電粒子ビーム源と、この荷電粒子ビーム源により荷電粒子ビームを走査して照射された試料から発生した二次荷電粒子を検出する検出器とを有する荷電粒子顕微鏡と、この荷電粒子顕微鏡を制御する制御部と、この制御部で荷電粒子顕微鏡を制御する情報を含む情報を記憶する記憶部、荷電粒子顕微鏡で取得した試料の画像を処理する演算部と、荷電粒子顕微鏡で検出した試料から発生した二次荷電粒子の検出信号に基づいて試料を分析する分析部とを有するコントローラと、を備える欠陥観察装置において、制御部で,荷電粒子顕微鏡を第1の条件で制御して試料の観察対象領域の第1の画像を取得し、演算部において、取得した第1の画像から観察対象領域の第1の位置情報を抽出し、制御部で、荷電粒子顕微鏡を第2の条件で制御して試料の観察対象領域の第2画像を取得し、演算部において、取得した第2の画像の画質を記憶部に記憶しておいた画質変換処理パラメータを用いて第1の画像の像質に合わせる像質変換処理を行い、像質変換処理を施した第2の画像を処理するように欠陥観察装置を構成したものである。
【0108】
そして、制御部は、第1の画像から抽出した観察対象領域の第1の位置情報を用いて像質変換処理を施した第2の画像を処理して、像質変換処理を施した第2の画像から観察対象領域を抽出するようにした。
【0109】
また、制御部は,演算部で抽出した観察対象領域の第1の位置情報に基づいて、荷電粒子顕微鏡を第3の条件で制御して試料の観察対象領域の第1の画像よりも高倍率な第3の画像を取得し、分析部は、像質変換処理を施した第2の画像から抽出した観察対象領域の情報に基づいて観察対象領域の組成を分析するようにした。
【0110】
また、上記した実施例1と実施例2とに記載した荷電粒子顕微鏡装置を用いた欠陥観察方法は、荷電粒子顕微鏡装置の制御部で,荷電粒子顕微鏡を第1の条件で制御して試料の観察対象領域の第1の画像を取得し、荷電粒子顕微鏡装置の演算部において、取得した第1の画像から観察対象領域の第1の位置情報を抽出し、制御部で、荷電粒子顕微鏡を第2の条件で制御して試料の観察対象領域の第2画像を取得し、演算部において、取得した第2の画像の画質を記憶部に記憶しておいた変換処理パラメータを用いて第1の画像の像質に合わせる像質変換処理を行い、この像質変換処理を施した第2の画像を処理するようにしたものである。
【0111】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0112】
100・・・欠陥観察装置 101・・・撮像装置(SEM) 102・・・制御部 103・・・記憶部 104・・・演算部 120・・・制御システム部。
図1
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図10