(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】位置制御装置および飛しょう体
(51)【国際特許分類】
B64C 13/18 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
B64C13/18 Z
(21)【出願番号】P 2018173721
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宗輝
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-115623(JP,A)
【文献】特開2004-130852(JP,A)
【文献】特開昭58-096309(JP,A)
【文献】特開2001-306144(JP,A)
【文献】特開2002-318100(JP,A)
【文献】特表2013-540987(JP,A)
【文献】特開2012-106515(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0155026(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1146748(KR,B1)
【文献】特開昭63-201806(JP,A)
【文献】特開平11-201700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛しょう体の機体固定座標系における加速度を、慣性座標系における慣性座標系加速度に変換する慣性座標系変換部と、
前記慣性座標系変換部により変換された前記慣性座標系加速度を積分して、前記飛しょう体の推定速度を算出する速度算出部と、
前記速度算出部により算出された推定速度を積分して、前記飛しょう体の推定位置を導出する位置算出部と、
前記位置算出部により算出された推定位置が位置指令値となるよう制御するための速度指令値を求める位置制御コントローラと、
前記速度指令値と前記推定速度との差分である速度差分を算出する速度差分算出部と、
前記推定速度が前記速度指令値となるように制御する慣性座標系加速度指令値を
前記速度差分から求める速度コントローラと、
前記慣性座標系加速度指令値を、前記機体固定座標系における加速度指令値に座標変換する機体固定座標系変換部と、
を備える位置制御装置。
【請求項2】
前記加速度指令値と前記加速度との加速度差分により求められた角速度指令値と、前記飛しょう体の機体固定座標系における角速度との差分を求め、前記角速度指令値となるよう飛しょう体の運動を制御するために操舵装置へ入力する舵角指令値を生成する角速度コントローラとを、更に備える、
請求項1に記載の位置制御装置。
【請求項3】
前記位置指令値を外部装置から受け付ける位置指令値受付部を、更に備える、
請求項1または2に記載の位置制御装置。
【請求項4】
飛しょう体の機体固定座標系における機体の加速度及び角速度を計測する慣性計測装置と、
前記加速度を機体固定座標系から慣性座標系に座標変換し、慣性座標系加速度とする慣性座標系変換部と、
前記慣性座標系変換部により変換された前記慣性座標系加速度を積分して、前記飛しょう体の推定速度を算出する速度算出部と、
前記速度算出部により算出された推定速度を積分して、前記飛しょう体の推定位置を導出する位置算出部と、
前記位置算出部により算出された推定位置と位置指令値の差分を用いて速度指令値を求める位置制御コントローラと、
前記速度指令値と前記推定速度との差分である速度差分を算出する速度差分算出部と、
前記推定速度を前記速度指令値となるように制御する慣性座標系加速度指令値を
前記速度差分から求める速度コントローラと、
前記慣性座標系加速度指令値を、前記機体固定座標系における加速度指令値に座標変換する機体固定座標系変換部と、
前記加速度指令値と前記加速度との加速度差分を求め、前記加速度差分から角速度指令値を求める加速度コントローラと、
前記角速度指令値と前記角速度との差分を求め、舵角指令値を生成する角速度コントローラと、
前記機体の運動を前記舵角指令値により制御する舵角装置と、
を備える飛しょう体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、位置制御装置および飛しょう体に関する。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体には、機体の状態を観測するために複数のセンサ装置が搭載されており、搭載された複数のセンサ装置を用いて飛行する際の機体の運動を制御している。上記複数のセンサ装置の中で一般的なセンサ装置として、慣性計測装置がある。慣性計測装置は、一般的に加速度センサ及び角速度センサから構成され、飛しょう体の機体に生じる角速度や加速度を計測する。
【0003】
また、飛しょう体の位置や高度を制御する場合、上記慣性計測装置以外に、電波高度計や速度計(ピトー管など)を機体に搭載する必要がある。例えば、飛しょう体をレベルフライトの状態で飛行させる場合、飛しょう体の高度を常に監視する必要がある。そのため、電波高度計を備えない場合、慣性制御装置から出力される加速度を積分処理することにより、飛しょう体の速度及び飛行している位置を算出することが行なわれている。飛しょう体にレベルフライトを行なわせる場合、慣性制御装置の出力する加速度から速度及び位置の推定を行なうことにより、電波高度計や速度計などを搭載する必要がなく、機体の重量の低下や製造原価の低減を行なうことができる。
【0004】
しかしながら、加速度データに積分処理を行って飛しょう体の自己位置を算出し、レベルフライトを含めた飛行の制御を行なう場合には、従来は慣性座標系における飛しょう軌道の経路情報を、予め詳細に設定しておく必要があった。そのため、煩雑な飛しょう軌道を導出する計算が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-201806号公報
【文献】特開昭58-096309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電波高度計や速度センサを用いることなく、飛しょう体の高精度な位置制御を行うことができる位置制御装置および飛しょう体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の位置制御装置は、慣性座標系変換部と、速度算出部と、位置算出部と、位置制御コントローラと、速度差分算出部と、速度コントローラと、機体固定座標系変換部とを持つ。慣性座標系変換部は、飛しょう体の機体固定座標系における加速度を機体固定座標系から慣性座標系に座標変換する。速度算出部は、前記慣性座標系変換部により変換された前記慣性座標系加速度を積分して、前記飛しょう体の推定速度を算出する。位置算出部は、前記速度算出部により算出された推定速度を積分して、前記飛しょう体の推定位置を導出する。位置制御コントローラは、前記位置算出部により算出された推定位置と位置指令値から速度指令値を求める。速度差分算出部は、前記速度指令値と前記推定速度との差分である速度差分を算出する。速度コントローラは、前記推定速度と前記速度指令値の差分から慣性座標系における加速度指令値を求める。機体固定座標系変換部は、前記慣性座標系における加速度指令値を、前記機体固定座標系における加速度指令値に座標変換する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の飛しょう体100の構成例を示すブロック図。
【
図2】慣性座標系と機体固定座標系との対応を説明する図。
【
図3】実施形態の飛しょう体100における慣性制御処理の動作例を説明するフローチャート。
【
図4】実施形態の飛しょう体100の飛行における位置制御処理の動作例を示す図。
【
図5】実施形態の飛しょう体100の飛行における位置制御処理の他の動作例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の位置制御装置および飛しょう体を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の飛しょう体100の構成例を示すブロック図である。
飛しょう体100は、例えば、位置制御装置10と、慣性計測装置20と、操舵装置30とを備える。位置制御装置10は、例えば、慣性座標系変換部102と、速度算出部103と、位置算出部104と、第1演算部106と、位置制御コントローラ107と、第2演算部108と、速度コントローラ109と、機体固定座標系変換部110と、第3演算部111と、加速度コントローラ112と、第4演算部113と、角速度コントローラ114とを備える。
【0010】
慣性計測装置20は、飛しょう体100の飛行における加速度A及び角速度VAの各々を、所定の周期T毎に計測し、慣性座標系変換部102、第3演算部111及び第4演算部113に出力する。ここで、加速度A(Ax,Ay,Az)及び角速度VA(VAx,VAy,VAz)の各々はベクトルで表すことができ、飛しょう体100の機体に固定された座標系である機体固定座標系において定義される。
【0011】
慣性座標系変換部102は、機体固定座標系における加速度A(Ax,Ay,Az)を慣性座標系に対応させるように、以下の(1)式を用いた座標変換を行う。
【0012】
【0013】
(1)式の座標変換行列Tにおける角度Ψ、Φ及びΘの各々は、慣性座標系(または、地面固定座標系)と機体固定座標系との対応関係、すなわち機体固定座標系の軸の各々が、対応する慣性座標系の軸それぞれに対して有する角度を示している。
図2は、慣性座標系と機体固定座標系との対応を説明する図である。慣性座標系は、地上の所定の位置に固定された座標系であり、X軸、Y軸及びZ軸から形成されている。飛しょう体100は、慣性座標系の示す3次元空間を飛行する。機体固定座標系は、飛しょう体100の機体に固定された座標系であり、x軸、y軸及びz軸から構成されている。また、x軸はX軸に対応し、y軸はY軸に対応し、z軸はZ軸に対応している。この対応関係より、角度Ψは、X軸とx軸との成す角度である。角度Φは、Y軸とy軸との成す角度である。角度Θは、Z軸とz軸との成す角度である。
【0014】
図1に戻り、慣性座標系変換部102は、上記(1)式により、機体固定座標系における加速度A(Ax,Ay,Az)を、慣性座標系における加速度(ベクトル)Ae(AeX,AeY,AeZ)に変換する。そして、慣性座標系変換部102は、(1)式により求めた加速度Ae(AeX,AeY,AeZ)を速度算出部103に出力する。
【0015】
速度算出部103は、直前の周期に算出した推定速度(ベクトル)V(VX,VY,VZ)に対して、加速度Ae(AeX,AeY,AeZ)を周期Tにより積分して求められる変化速度(ベクトル)ΔV(ΔVX,ΔVY,ΔVZ)を加算して、現在の周期における推定速度V(VX,VY,VZ)とする。そして、速度算出部103は、求めた推定速度V(VX,VY,VZ)を位置算出部104に出力する。
【0016】
位置算出部104は、直前の周期に算出した推定位置P(PX,PY,PZ)に対して、推定速度V(VX,VY,VZ)を周期Tにより積分して求められる位置変化(ベクトル)ΔP(ΔPX,ΔPY,ΔPZ)を加算して、現在の周期における推定位置P(PX,PY,PZ)を求める(導出する)。そして、位置算出部104は、求めた推定位置P(PX,PY,PZ)を第1演算部106に出力する。
【0017】
第1演算部106は、位置指令値受付部として、あらかじめ設定されるもしくは外部装置(不図示)から供給される位置指令値Pcmd(PcmdX,PcmdY,PcmdZ)を受け付ける。また、第1演算部106は、受け付けた位置指令値Pcmd(PcmdX,PcmdY,PcmdZ)と、位置算出部104から供給される推定位置P(PX,PY,PZ)との差分を求め、位置差分ΔP(ΔPX,ΔPY,ΔPZ)とする。そして、第1演算部106は、求めた位置差分ΔP(ΔPX,ΔPY,ΔPZ)を位置制御コントローラ107に出力する。外部装置とは、例えば、飛しょう体100と無線通信を行うことで遠隔操作する飛しょう体制御装置である。飛しょう体制御装置は、例えば、地上の施設や車両、他の飛しょう体等に設けられる。
【0018】
位置制御コントローラ107は、第1演算部106から供給される位置差分ΔP(ΔPX,ΔPY,ΔPZ)から速度指令値(ベクトル)Vcn(VcnX,VcnY,VcnZ)を求める。そして、位置制御コントローラ107は、求めた速度指令値(ベクトル)Vcn(VcnX,VcnY,VcnZ)を第2演算部108に出力する。
【0019】
第2演算部108は、位置制御コントローラ107から供給される速度指令値Vcn(VcnX,VcnY,VcnZ)と、速度算出部103から供給される推定速度V(VX,VY,VZ)との差分を求め、速度差分ΔV(ΔVX,ΔVY,ΔVZ)とする。そして、第2演算部108は、求めた速度差分(ベクトル)ΔV(ΔVX,ΔVY,ΔVZ)を速度コントローラ109に出力する。
【0020】
速度コントローラ109は、第2演算部108から供給される速度差分ΔV(ΔVX,ΔVY,ΔVZ)から加速度指令値(ベクトル)Acn(AcnX,AcnY,AcnZ)を求める。そして、速度コントローラ109は、求めた加速度指令値Aecn(AecnX,AecnY,AecnZ)を機体固定座標系変換部110に出力する。
【0021】
機体固定座標系変換部110は、速度コントローラ109から供給される加速度指令値Aecn(AecnX,AecnY,AecnZ)を、以下の(2)式により、慣性座標系から機体固定座標系に変換し、加速度指令値Acn(Acnx,Acnx,Acnx)とする。
【0022】
【数2】
ここで、(2)式において、座標変換行列T
-1は、(1)式における座標変換行列Tの逆行列を示している。そして、機体固定座標系変換部110は、(2)式により求めた加速度指令値Acn(Acnx,Acnx,Acnx)を第3演算部111に出力する。
【0023】
第3演算部111は、機体固定座標系変換部110から供給される加速度指令値Acn(Acnx,Acnx,Acnx)と、慣性計測装置20から供給される加速度A(Ax,Ay,Az)との差分を求め、加速度差分(ベクトル)ΔA(ΔAx,ΔAy,ΔAz)とする。そして、第3演算部111は、求めた加速度差分ΔA(ΔAx,ΔAy,ΔAz)を加速度コントローラ112に出力する。
【0024】
加速度コントローラ112は、第3演算部111から供給される加速度差分ΔA(ΔAx,ΔAy,ΔAz)から、角速度指令値(ベクトル)VAcn(VAcnx,VAcny,VAcnz)を求める。そして、加速度コントローラ112は、求めた角速度指令値VAcn(VAcnx,VAcny,VAcnz)を第4演算部113に出力する。
【0025】
第4演算部113は、加速度コントローラ112から供給される角速度指令値VAcn(VAcnx,VAcny,VAcnz)と、慣性計測装置20から供給される角速度VA(VAx,VAy,VAz)との差分を求め、角速度差分(ベクトル)ΔVA(ΔVAx,ΔVAy,ΔVAz)とする。そして、第4演算部113は、求めた角速度差分ΔVA(ΔVAx,ΔVAy,ΔVAz)を角速度コントローラ114に出力する。
【0026】
角速度コントローラ114は、第4演算部113から供給される角速度差分ΔVA(ΔVAx,ΔVAy,ΔVAz)から、操舵における舵角の制御量を示す舵角指令値を求める。そして、角速度コントローラ114は、求めた舵角指令値を操舵装置30へ出力する。
【0027】
操舵装置30は、角速度コントローラ114から供給される舵角指令値に対応して、操舵翼の調整により舵角の制御を行い、飛しょう体100に生じる力の調整を行う。
【0028】
図3は、実施形態の飛しょう体100の飛行における位置制御処理の流れの一例を説明するフローチャートである。以下のフローチャートは、例えば、所定の制御周期Tで繰り返し実行されてよい。
【0029】
まず、慣性座標系変換部102は、慣性計測装置20から供給される加速度A(Ax,Ay,Az)を読み込む(ステップS101)。一方、所定の制御周期Tが経過していない場合、慣性座標系変換部102は、ステップS101の処理を繰り返す。
【0030】
次に、慣性座標系変換部102は、慣性座標系のX軸、Y軸及びX軸の各々と、機体固定座標系のx軸、y軸、z軸それぞれとが成す角度Ψ、Φ、Θによる変換行列Tを生成する。そして、慣性座標系変換部102は、生成した変換行列Tを用いた(1)式により、機体固定座標系における加速度A(Ax,Ay,Az)を、慣性座標系における加速度Ae(Aex,Aey,Aez)に座標変換し、速度算出部103に出力する(ステップS102)。
【0031】
次に、速度算出部103は、慣性座標系変換部102から供給される加速度Ae(Aex,Aey,Aez)を、所定の周期Tの期間で積分し、直前の周期からの速度の変化速度ΔV(ΔVX,ΔVY,ΔVZ)を求める。そして、速度算出部103は、直前の周期における、飛しょう体100の慣性座標系における速度Ve(VeX,VeY,VeZ)に対して、算出した変化速度ΔV(ΔVX,ΔVY,ΔVZ)を加算し、加算結果を現在の速度Ve(VeX,VeY,VeZ)とする(ステップS103)。速度算出部103は、算出した速度Ve(VeX,VeY,VeZ)を位置算出部104及び第2演算部108の各々に出力する。
【0032】
次に、位置算出部104は、速度算出部103から供給される速度Ve(VeX,VeY,VeZ)を、所定の周期Tの期間で積分し、直前の周期からの位置の位置変化ΔP(ΔPX,ΔPY,ΔPZ)を求める。そして、位置算出部104は、直前の周期における、飛しょう体100の慣性座標系における推定位置P(PX,PY,PZ)に対して、算出した位置変化ΔP(ΔPX,ΔPY,ΔPZ)を加算し、加算結果を現在の推定位置P(PX,PY,PZ)とする(ステップS104)。位置算出部104は、算出した推定位置P(PX,PY,PZ)を第1演算部106に出力する。
【0033】
次に、第1演算部106は、予め設定されているもしくは外部装置から供給される位置指令値Pcmd(PcmdX,PcmdY,PcmdZ)と、位置算出部104から供給される推定位置P(PX,PY,PZ)との位置差分ΔP(PX,PY,PZ)を求める(ステップS105)。そして、第1演算部106は、位置差分ΔP(PX,PY,PZ)を位置制御コントローラ107に出力する。
【0034】
次に、位置制御コントローラ107は、供給される位置差分ΔP(PX,PY,PZ)から速度指令値Vcn(VcnX,VcnY,VcnZ)を算出する(ステップS106)。そして、位置制御コントローラ107は、算出した速度指令値Vcn(VcnX,VcnY,VcnZ)を、第2演算部108に出力する。
【0035】
次に、第2演算部108は、位置制御コントローラ107から供給される速度指令値Vcn(VcnX,VcnY,VcnZ)と、速度算出部103から供給される推定速度V(VX,VY,VZ)との速度差分ΔV(ΔVX,ΔVY,ΔVZ)を算出する(ステップS107)。そして、第2演算部108は、算出した速度差分ΔV(ΔVX,ΔVY,ΔVZ)を速度コントローラ109に出力する。
【0036】
次に、速度コントローラ109は、供給される速度差分ΔV(ΔVX,ΔVY,ΔVZ)から加速度指令値Aecn(AecnX,AecnY,AecnZ)を算出する(ステップS108)。そして、速度コントローラ109は、算出した加速度指令値Aecn(AecnX,AecnY,AecnZ)を、機体固定座標系変換部110に出力する。
【0037】
次に、機体固定座標系変換部110は、(1)式における座標変換行列Tの逆行列T-1を用いた(2)式により、慣性座標系における加速度指令値Aecn(AecnX,AecnY,AecnZ)を、機体固定座標系における加速度指令値Acn(AcnX,AcnY,AcnZ)に座標変換し、第3演算部111に出力する(ステップS109)。
【0038】
次に、第3演算部111は、機体固定座標系変換部110から供給される加速度指令値Acn(AcnX,AcnY,AcnZ)と、慣性計測装置20から供給される加速度A(AX,AY,AZ)との加速度差分ΔA(ΔAX,ΔAY,ΔAZ)を算出する(ステップS110)。そして、第3演算部111は、算出した加速度差分ΔA(ΔAX,ΔAY,ΔAZ)を、加速度コントローラ112に出力する。
【0039】
次に、加速度コントローラ112は、第3演算部111から供給される加速度差分ΔA(ΔAX,ΔAY,ΔAZ)から角速度指令値VAcn(VAcnx,VAcny,VAcnz)を算出する(ステップS111)。そして、加速度コントローラ112は、算出した角速度指令値VAcn(VAcnx,VAcny,VAcnz)を第4演算部113に出力する。
【0040】
次に、第4演算部113は、加速度コントローラ112から供給される角速度指令値VAcn(VAcnx,VAcny,VAcnz)と、慣性計測装置20から供給される角速度VA(VAx,VAy,VAz)との角速度差分ΔVA(ΔVAx,ΔVAy,ΔVAz)を算出する(ステップS112)。そして、第4演算部113は、算出した角速度差分ΔVA(ΔVAx,ΔVAy,ΔVAz)を、角速度コントローラ114に出力する。角速度コントローラ114は、所定の飛しょう体に生じる力を得るための舵角指令値を算出し、舵角装置116に出力する。
【0041】
図4は、実施形態の飛しょう体100の飛行における位置制御処理の動作例示す図である。
図4においては、X軸及びY軸の2次元平面XYに対して垂直なZ軸(高さ)における飛しょう体100の飛行状態を示している。飛しょう体100は位置制御が行なわれていない状態で、任意の方向に飛行している場合について考える。例えば、位置P1において位置制御を行なう場合、位置指令値が供給されると、すでに説明した
図3のフローチャートの動作に基づき、位置指令値に対応した位置制御が行なわれる。
【0042】
上述した位置制御装置を用いた飛しょう体によれば、機体固定座標系として得られる加速度を慣性座標系に変換し、慣性座標系に変換された加速度から、順次、慣性座標系における推定速度、推定位置を求め、位置指令値に対応した位置に移動するための加速度指令値を求めて、この慣性座標系における加速度指令値を機体固定座標系に座標変換し、機体固定座標系における加速度及び角速度の制御指令値を得て位置制御を行なう。このため、上述した位置制御装置を用いることにより、飛行経路をあらかじめ決定する必要がなく、
図4に示すように、飛しょう体100の飛行が開始された後、任意の飛行経路により位置制御させることが可能となり、飛行経路を設定せずに任意の目標座標を与えることで位置制御を行なわせることができる。
【0043】
また、上述した位置制御装置を用いることにより、
図4に示すように、任意の高さH1に位置制御を行い、この高さH1を維持するように巡航飛行を行わせること、すなわちレベルフライトが可能となる。ゆえにあらかじめ詳細な飛行経路を定める必要がないだけでなく、一定の高さH1を飛行させる際に一般的に用いられる電波高度計などの高度を測定するセンサを必要としないため、飛しょう体100の構成品を削減することで重量を低減し、かつ製造原価を低減させることができる。
【0044】
図5は、実施形態の飛しょう体100の飛行における位置制御処理の他の動作例を示す図である。
図4の場合は、一般的に用いられている緯度経度及び高度からなる地面固定座標系を示している。しかしながら、
図5の場合は、慣性計測装置で計測される加速度を変換する際、地面固定座標系ではない固定座標系を用いている。すなわち、実施形態によれば、座標変換行列Tにより、機体固定座標系を任意の座標系に座標変換できるため、変換先が地面固定座標系である必要はなく、意図した飛しょう軌跡となるよう位置指令値と座標系を自由に選択することができる。
【0045】
例えば、
図5の場合は、位置指令値を供給する外部装置が、例えば山の斜面を2次元平面(X’軸及びY’軸からなる平面X’Y’)として設定し、斜面からの距離を高さ(Z’軸)として設定している。平面X’Y’は、
図4における平面XYに対して角度θずれている。これにより、位置制御装置は、この他の動作例の場合、山の斜面からの距離(H2)を一定とする位置指令値を供給することにより、山の斜面を基準として、電波高度計を用いる必要なく安定したレベルフライトを行なわせることが可能であり、安定した高度で飛しょう体100を巡航飛行させることができる。
【0046】
以上述べた実施形態の位置制御装置によれば、機体固定座標系として得られる加速度を慣性座標系に変換し、慣性座標系に変換された加速度から、慣性座標系における飛しょう体の推定速度、推定位置を求めることができる。このため、実施形態の位置制御装置によれば、高度計が搭載されていなくとも、レベルフライトを行なう際に、飛しょう体の慣性座標系における推定位置により高度を容易に推定することができる。
【0047】
また、実施形態の位置制御装置によれば、慣性座標系における飛しょう体の推定速度、推定位置を求めた後、位置指令値に対応した位置に飛行させるために必要な加速度指令値を求め、この加速度指令値を機体固定座標系に変換して用いる。このため、位置制御装置を用いることにより、飛行経路を決定させる必要がなく、位置目標の座標を与えることで位置制御させることが可能となり、位置目標の座標を途中で任意に変更しても位置制御を行なわせることができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
10…位置制御装置、20…慣性計測装置、30…操舵装置、100…飛しょう体、102…慣性座標系変換部、103…速度算出部、104…位置算出部、106…第1演算部、107…位置制御コントローラ、108…第2演算部、109…速度コントローラ、110…機体固定座標系変換部、111…第3演算部、112…加速度コントローラ、113…第4演算部、114…角速度コントローラ