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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20230101AFI20230110BHJP
   B01F 21/00 20220101ALI20230110BHJP
   B01F 23/20 20220101ALI20230110BHJP
   B01D 61/52 20060101ALI20230110BHJP
   B01D 61/46 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C02F1/469
B01F21/00
B01F23/20
B01D61/52
B01D61/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019018164
(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2020124672
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友野
(72)【発明者】
【氏名】新井 伸説
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-212468(JP,A)
【文献】特開2015-150529(JP,A)
【文献】特開2015-221397(JP,A)
【文献】特開平9-236570(JP,A)
【文献】特開2013-258159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46 - 1/48
1/44
B01D 61/00 - 71/82
B01F 21/00 - 25/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気脱イオン装置と前記電気脱イオン装置で発生する水素ガスを処理する水素処理装置とを連通させる移送ライン中の水素ガス含有水を処理する水処理方法であって、
前記水素ガス含有水中に水素ガスの気泡が混入しているか否かを観察する気泡観察工程と、
前記移送ライン内の圧力を測定する圧力測定工程と、
記移送ライン内の圧力を調整する圧力調整工程とを備え
前記圧力調整工程において、前記気泡観察工程で前記水素ガス含有水中に前記水素ガスの気泡が混入していることが観察された場合には、前記圧力測定工程で測定された前記移送ライン内の圧力に基づき、前記移送ライン内の圧力を調整する
水処理方法。
【請求項2】
前記圧力調整工程において調整される前記移送ライン内の圧力の設定範囲が0.1MPa-0.99MPaである請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記圧力調整工程を、前記水素ガス含有水が前記水素処理装置に供給される直前で行う請求項1又は請求項2に記載の水処理方法。
【請求項4】
電気脱イオン装置と、
前記電気脱イオン装置の陰極室から流出する水素ガス含有水から水素ガスを分離除去する水素処理装置と、
前記陰極室の排出口に連通し、前記水素ガス含有水を前記水素処理装置に供給可能な移送ラインと
圧力制御手段とを備え、
前記移送ラインに面積式流量計、圧力計及び圧力調整弁が設けられ
前記圧力制御手段は、前記面積式流量計により前記水素ガス含有水中に前記水素ガスの気泡が混入していることが観察された場合には、前記圧力計により測定された前記移送ライン内の圧力に基づき、前記圧力調整弁を制御する
水処理システム。
【請求項5】
前記圧力調整弁により調整される前記移送ライン内の圧力の設定範囲が0.1MPa-0.99MPaである請求項4に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記圧力調整弁が前記水素処理装置の直近に設けられる請求項4又は請求項5に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理方法及び水処理システムに関し、特に電気脱イオン装置の陰極室で発生する水素ガスを安全に処理することのできる水処理方法及び水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機物質、特に難分解性の有機物質を含有する原水の処理装置や処理システムには、電気脱イオン装置が多用されており、例えば、半導体の製造工程等で使用される超純水を製造するための超純水製造装置では、一次純水システムにおいて、TOC成分を除去して、脱イオン水を製造するために電気脱イオン装置が用いられている。このような電気脱イオン装置は、一般的に、図2に示すように、陽極を有する陽極室と陰極を有する陰極室との間に複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列することで、濃縮室と脱塩室とを交互に区画形成した構成を有している。脱塩室にはイオン交換樹脂が充填されており、陽極室及び陰極室には、導電性の確保のために電極水が通液されている。
【0003】
上述のような電気脱イオン装置の脱塩室に原水を通水すると、原水中の不純物イオンが脱塩室内のイオン交換樹脂に吸着され、高度に脱塩された純水(脱イオン水)が製造される。一方、脱塩室内のイオン交換樹脂に吸着された不純物イオンは、イオン交換膜を介して直流電流を通電することにより、濃縮室に移動するため、濃縮室からはイオンが濃縮された濃縮水が流出する。このとき、電気脱イオン装置の陰極室においては、下記式(1)で示す反応により、OHとともに水素が発生するので、電気脱イオン装置の陰極室から流出する排水には、上記反応により発生した水素ガスが混入している。
2HO+2e → 2OH+H (1)
【0004】
水素ガスは爆発性があり可燃性のガスであるため、電気脱イオン装置の陰極室から流出する排水を処理するに当たっては、この水素ガスへの対処が必須である。そこで、通常は、電気脱イオン装置の陰極室から流出する排水を、移送ラインにより水素処理装置へ移送し、気泡塔やスクラバー等を用いて気液分離した後、分離した水素ガスを窒素などの不活性ガスで希釈してから外部に排気することで安全性の確保を図っている。
【0005】
上述の水素処理装置を用いた排気方法自体には、安全上の問題は特にない。しかしながら、水素処理装置へ移送するまでの間に、水素ガスを含有する排水から気泡として発生した水素ガスが、移送ラインを構成する配管内の屈曲部等に溜まってしまうことがあり、これを放置すると安全性に問題が生じるおそれがある。この対策として、配管内に水素ガスが溜まらないような配管ルートの構成や流速の確保等を行っているが、設置スペースの制限等から、水素ガスが溜まらないような配管ルートの構成が困難な場合もあることから、さらなる対策が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、電気脱イオン装置の陰極室で発生する水素ガスを安全に処理することのできる水処理方法及び水処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は第一に、電気脱イオン装置と前記電気脱イオン装置で発生する水素ガスを処理する水素処理装置とを連通させる移送ライン中の水素ガス含有水を処理する水処理方法であって、前記水素ガス含有水中に気泡が混入しているか否かを観察する気泡観察工程と、前記移送ライン内の圧力を測定する圧力測定工程と、前記気泡観察工程による観察結果及び前記圧力測定工程による測定結果に基づき、前記移送ライン内の圧力を調整する圧力調整工程とを備える水処理方法を提供する(発明1)。
【0008】
かかる発明(発明1)によれば、気泡観察工程において水素ガス含有水中に気泡が混入しているか否かを観察するとともに、圧力測定工程において移送ライン内の圧力を測定し、圧力調整工程において、気泡観察工程による観察結果及び圧力測定工程による測定結果に基づき移送ライン内の圧力を調整することで、移送ライン内で気泡として発生している水素ガスを水中に溶解させることができるので、たとえ水素ガス含有水の流量が減少した場合であっても、移送ライン内で水素ガスが気泡として発生するのを防ぐことができる。したがって、電気脱イオン装置と水素処理装置とを連通させる移送ラインが、どのような配管ルートを有していても、水素ガス含有水を水素処理装置へ移送するまでの間に、移送ライン内に水素ガスが溜まるのを防ぐことができ、もって電気脱イオン装置で発生する水素ガスを安全に処理することができる。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記圧力調整工程において調整される前記移送ライン内の圧力の設定範囲が0.1MPa-0.99MPaであることが好ましい(発明2)。
【0010】
かかる発明(発明2)によれば、移送ライン内で気泡として発生している水素ガスをより効率的に水中に溶解させることができる。
【0011】
上記発明(発明1,2)においては、前記圧力調整工程を、前記水素ガス含有水が前記水素処理装置に供給される直前で行うことが好ましい(発明3)。
【0012】
移送ライン内の圧力の調整によって水中に溶解させた水素ガスの気泡は、時間の経過とともに再び発生する可能性がある。かかる発明(発明3)によれば、水素ガス含有水を水素処理装置に供給する直前で、気泡として発生している水素ガスを水中に溶解させることができるので、安全性を保った状態で水素ガス含有水を水素処理装置に供給することができる。
【0013】
本発明は第二に、電気脱イオン装置と、前記電気脱イオン装置から流出する水素ガス含有水から水素ガスを分離除去する水素処理装置と、前記陰極室の排出口に連通し、前記水素ガス含有水を前記水素処理装置に供給可能な移送ラインとを備え、前記移送ラインに面積式流量計、圧力計及び圧力調整弁が設けられる水処理システムを提供する(発明4)。
【0014】
かかる発明(発明4)によれば、面積式流量計にて、水素ガス含有水中に気泡が混入していることが観察された際に、圧力計により測定された移送ライン内の圧力に基づき、圧力調整弁により移送ライン内の圧力を調整することで、移送ライン内で気泡として発生している水素ガスを水中に溶解させることができるので、たとえ水素ガス含有水の流量が減少した場合であっても、移送ライン内で水素ガスが気泡として発生するのを防ぐことができる。したがって、電気脱イオン装置と水素処理装置とを連通させる移送ラインが、どのような配管ルートを有していても、水素ガス含有水を水素処理装置へ移送するまでの間に、移送ライン内に水素ガスが溜まるのを防ぐことができ、もって電気脱イオン装置で発生する水素ガスを安全に処理することができる。
【0015】
上記発明(発明4)においては、前記圧力調整弁により調整される前記移送ライン内の圧力の設定範囲が0.1MPa-0.99MPaであることが好ましい(発明5)。
【0016】
かかる発明(発明2)によれば、移送ライン内で気泡として発生している水素ガスをより効率的に水中に溶解させることができる。
【0017】
上記発明(発明4,5)においては、前記圧力調整弁が前記水素処理装置の直近に設けられることが好ましい(発明6)。
【0018】
圧力調整弁の二次側では背圧がなくなるため、移送ライン内の圧力の調整によって水中に溶解させた水素ガスの気泡が、再び発生する可能性がある。かかる発明(発明3)によれば、圧力調整弁により、水素処理装置の直近で気泡として発生している水素ガスを水中に溶解させることができるので、安全性を保った状態で水素ガス含有水を水素処理装置に供給することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水処理方法及び水処理システムによれば、気泡観察工程において水素ガス含有水中に気泡が混入しているか否かを観察するとともに、圧力測定工程において移送ライン内の圧力を測定し、圧力調整工程において、気泡観察工程による観察結果及び圧力測定工程による測定結果に基づき移送ライン内の圧力を調整することで、移送ライン内で気泡として発生している水素ガスを水中に溶解させることができるので、たとえ水素ガス含有水の流量が減少した場合であっても、移送ライン内で水素ガスが気泡として発生するのを防ぐことができる。したがって、電気脱イオン装置と水素処理装置とを連通させる移送ラインが、どのような配管ルートを有していても、水素ガス含有水を水素処理装置へ移送するまでの間に、移送ライン内に水素ガスが溜まるのを防ぐことができ、もって電気脱イオン装置で発生する水素ガスを安全に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る水処理システムを示す模式図である。
図2】一般的な電気脱イオン装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の水処理方法及び水処理システムの実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
【0022】
〔水処理システム〕
図1は本発明の一実施形態に係る水処理システム10を示す模式図である。図1に示す水処理システム10は、電気脱イオン装置1、水素処理装置2、面積式流量計3、圧力計4、圧力調整弁5、圧力制御手段6を主に備える。電気脱イオン装置1は、原水W中の不純物イオンを除去して脱イオン水W1を製造するものである。水素処理装置2は、電気脱イオン装置1の陰極室12から流出する水素ガス含有水Dから水素ガスを分離除去するものである。面積式流量計3は、移送ラインL3を流通する水素ガス含有水Dの流量を測定するものである。圧力計4は、移送ラインL3内の圧力を測定するものである。圧力調整弁5は、移送ラインL3内の圧力を調整するものである。圧力制御手段6は、圧力計4により測定された移送ライL3ン内の圧力に基づき、圧力調整弁5を制御するものである。
【0023】
電気脱イオン装置1には、図1に示すように、原水Wを供給するための原水供給ラインL1が連通しているとともに、脱塩室において製造された脱イオン水W1を排出するための処理水排出ラインL2が連通している。また、電気脱イオン装置1の陰極室12には、陰極室12から流出する水素ガス含有水Dを水素処理装置2に供給するための移送ラインL3が連通している。なお、電気脱イオン装置1には、上述の原水供給ラインL1、処理水排出ラインL2及び移送ラインL3以外にも、濃縮室の濃縮水や陽極室11から流出する排水を排出するためのライン等が連通しているが、図1ではその表示を省略している。
【0024】
[電気脱イオン装置]
電気脱イオン装置1は、原水W中の不純物イオンを除去して脱イオン水W1を製造するものであって、陽極を有する陽極室11と陰極を有する陰極室12との間に複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列することで、濃縮室と脱塩室とを交互に区画形成した構成を有し、濃縮室及び脱塩室にはイオン交換樹脂が充填されている。なお、図1において、濃縮室及び脱塩室は省略して表示している。
【0025】
電気脱イオン装置1の脱塩室に原水Wを通水すると、原水W中の不純物イオンが脱塩室内のイオン交換樹脂に吸着され、脱イオン水W1が製造される。製造された脱イオン水は、処理水排出ラインL2により外部へ排出される。一方、脱塩室内のイオン交換樹脂に吸着された不純物イオンは、イオン交換膜を介して直流電流を通電することにより、濃縮室に移動するため、濃縮室からはイオンが濃縮された濃縮水が流出する。このとき、電気脱イオン装置の陰極室12においては、下記式(1)で示す反応により、OHとともに水素が発生するので、電気脱イオン装置1の陰極室12から流出する排水には、上記反応により発生した水素ガスが混入している。
2HO+2e → 2OH+H (1)
【0026】
[水素処理装置]
水素処理装置2は、電気脱イオン装置1の陰極室12から流出する水素ガス含有水Dから水素ガスを分離除去するものであって、移送ラインL3を介して電気脱イオン装置1の陰極室12の排出口121と接続している。水素処理装置2は、水素ガス含有水Dから水素を分離除去することができれば、その構成は特に制限されるものではなく、気泡塔やスクラバー等を有し、これらを用いて水素ガス含有水Dを気液分離した後、分離した水素ガスを窒素などの不活性ガスで希釈してから外部に排気するよう構成したものを用いることができる。
【0027】
[面積式流量計]
面積式流量計3は、移送ラインL3を流通する水素ガス含有水Dの流量を測定するものであって、本実施形態においては、水素ガス含有水Dの流量の測定に加えて、水素ガス含有水D中に気泡が混入しているか否かを観察するためにも用いられる。面積式流量計3としては、例えば、垂直方向に延びるテーパ管と、このテーパ管の内部を流通する液体の流量の大小に応じて上下する浮き子とを備えるフロート式のものを使用することができる。面積式流量計3においては、液体中に気泡が混入していると、テーパ管内で異常なフロート作動が起こる、いわゆるハンチング現象が発生するため、目視により水素ガス含有水D中に気泡が混入しているか否かを確認することが可能となる。面積式流量計3において、水素ガス含有水D中に気泡が混入していることが観察された際には、移送ラインL3内で気泡として発生している水素ガスを水中に溶かし込むよう、後述する圧力計4により測定された移送ラインL3内の圧力に基づき、圧力制御手段5により圧力調整弁5を制御すればよい。なお、面積式流量計3は、移送ラインL3において、圧力調整弁5の一次側に設けられることが好ましい。
【0028】
[圧力計]
圧力計4は、移送ラインL3内の圧力を測定するものである。圧力計4は、移送ラインL3内の圧力を測定することができれば、その構成は特に制限されるものではなく、市販のものが適用できる。圧力計4により測定された移送ラインL3内の圧力に基づき、後述する圧力制御手段6により圧力調整弁5が制御される。なお、圧力計4は、移送ラインL3において、面積式流量計3の一次側に設けられることが好ましい。
【0029】
[圧力調整弁]
圧力調整弁5は、移送ラインL3内の圧力を調整するものである。圧力調整弁5は、その開閉により移送ラインL3内の圧力を調整することができれば、その構成は特に制限されるものではなく、市販のものが適用できる。圧力調整弁5の開閉により、移送ラインL3内の圧力を調整することで、移送ラインL3内で気泡として発生している水素ガスを水中に溶かし込むことが可能となる。圧力調整弁5により調整される移送ラインL3内の圧力の設定範囲は、0.1MPa-0.99MPaであることが好ましい。圧力調整弁5により、移送ラインL3内の水素ガス含有水Dに加えられる圧力を0.1MPa-0.99MPaの範囲に調整することにより、移送ラインL3内で発生している水素ガスの気泡を効率的に水中に溶かし込むことが可能となる。
【0030】
また、圧力調整弁5は、移送ラインL3において、水素処理装置2の直近に設けられることが好ましい。圧力調整弁5の二次側では背圧がなくなるため、移送ラインL3内の圧力の調整によって水中溶かし込んだ水素ガスの気泡が、再び発生する可能性があるが、圧力調整弁5を水素処理装置2の直近に設けることにより、水素処理装置2の直前で気泡として発生している水素ガスを水中に溶かし込むことができるので、安全性を保った状態で水素ガス含有水を水素処理装置2に導入することが可能となる。
【0031】
[圧力制御手段]
圧力制御手段6は、圧力計4により測定された移送ラインL3内の圧力に基づき、圧力調整弁5を制御するものである。圧力制御手段6は、圧力計4により測定された移送ラインL3内の圧力に基づき、圧力調整弁5を制御することができれば、その構成は特に制限されるものではなく、コンピュータ等を用いて自動的に圧力調整弁5を制御するものであってもよいし、作業員が手動により圧力調整弁5を制御するものであってもよい。
【0032】
〔水処理方法〕
次に、上述した水処理システム1を用いた水処理方法について説明する。まず、電気脱イオン装置1の脱塩室に原水Wを通水すると、原水W中の不純物イオンが脱塩室内のイオン交換樹脂に吸着され、脱イオン水W1が製造される。製造された脱イオン水は、処理水排出ラインL2により外部へ排出される。一方、脱塩室内のイオン交換樹脂に吸着された不純物イオンは、イオン交換膜を介して直流電流を通電することにより、濃縮室に移動するため、濃縮室からはイオンが濃縮された濃縮水が流出する。このとき、電気脱イオン装置の陰極室12においては、下記式(1)で示す反応により、OHとともに水素が発生するので、電気脱イオン装置1の陰極室12から流出する排水Dには、上記反応により発生した水素ガスが混入している。
2HO+2e → 2OH+H (1)
電気脱イオン装置1の陰極室12から流出した水素ガス含有水Dは、移送ラインL3を経て、水素処理装置2に導入される。
【0033】
水素ガス含有水Dを水素処理装置2へ移送するまでの間、移送ラインL3においては、面積式流量計3により水素ガス含有水D中に気泡が混入しているか否かを観察する(気泡観察工程)とともに、圧力計4により移送ラインL3内の圧力を測定する(圧力測定工程)。そして、気泡観察工程で水素ガス含有水D中に水素ガスの気泡が混入していることが観察された場合には、圧力測定工程で測定された移送ラインL3内の圧力に基づき、圧力調整弁5により移送ラインL3内の圧力を調整する(圧力調整工程)。なお、圧力調整弁5による移送ラインL3内の圧力の調整は、制御手段6により制御される。
【0034】
圧力調整弁5により移送ラインL3内の圧力を調整することにより、移送ラインL3内で気泡として発生している水素ガスを水中に溶解させることができるので、たとえ水素ガス含有水Dの流量が減少した場合であっても、移送ラインL3内で水素ガスが気泡として発生するのを防ぐことができる。
【0035】
なお、圧力調整工程において調整される移送ラインL3内の圧力の設定範囲は、0.1MPa-0.99MPaであることが好ましい。移送ラインL3内の圧力が上記設定範囲であることにより、移送ラインL3内で気泡として発生している水素ガスをより効率的に水中に溶解させることができる。
【0036】
また、圧力調整工程は、水素処理装置2の直近に設けられた圧力調整弁5によって、水素ガス含有水Dが水素処理装置2に供給される直前で行われることが好ましい。移送ラインL3内の圧力の調整によって水中に溶解させた水素ガスの気泡は、時間の経過とともに再び発生する可能性がある。水素処理装置2の直近に設けられた圧力調整弁5により、水素ガス含有水Dが水素処理装置2に供給される直前で気泡として発生している水素ガスを水中に溶解させることで、安全性を保った状態で水素ガス含有水を水素処理装置2に供給することができる。
【0037】
以上、本発明について図面を参照にして説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、上記実施形態においては、圧力調整弁5の制御を圧力制御手段6により行っているが、圧力調整弁5自体が圧力制御手段を有する構成であってもよい。また、上記実施形態においては、説明を容易にするために、当該水処理システムが一台の電気脱イオン装置を備える場合を例としているが、電気脱イオン装置は複数台が並列又は直列に接続されていてもよい。
【実施例
【0038】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳説するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例]
図1に示す水処理システム10を用いて、電気脱イオン装置の陰極室から流出する水素ガス含有水の処理を行った。電気脱イオン装置の電源を入れると、陰極室から排出される水素ガス含有水を流通する移送ラインに設けられる面積式流量計において、大量の水素ガスによる気泡が目視で確認された。このときの水量は電気脱イオン装置一台当たりおよそ1m/hであり、移送ラインの配管圧力は0.03MPa程度だった。
【0040】
面積式流量計の下流側にある圧力調整弁を絞っていき、背圧を立てていくと、水素ガス含有水中の水素ガスによる気泡が消えることが確認できた。このときの移送ライン内の圧力はおよそ0.3MPa程度だった。なお、水素ガスによる気泡は、移送ライン内の圧力が0.1MPa程度でも消えていくことが確認できた。
【0041】
<結果・考察>
圧力調整弁によって移送ライン内に圧力をかけることにより、水素ガス含有水中で発生していた水素ガスが水中に溶解し、気液混合状態ではなくなることが分かった。なお、圧力調整弁の二次側では背圧がなくなるため、移送ライン内の圧力の調整によって水中に溶解させた水素ガスの気泡が、再び発生する可能性がある。そのため、圧力調整弁は、水素処置装置の直近に設ける必要がある。
【0042】
[比較例]
図1に示す水処理システム10を用いて、電気脱イオン装置の陰極室から流出する水素ガス含有水の処理を行った。電気脱イオン装置の電源を入れると、陰極室から排出される水素ガス含有水を流通する移送ラインに設けられる面積式流量計において、大量の水素ガスによる気泡が目視で確認された。このときの水量は電気脱イオン装置一台当たりおよそ1m/hであり、移送ラインの配管圧力は0.03MPa程度だった。
【0043】
<結果・考察>
圧力調整弁によって移送ライン内に圧力をかけない場合、水素ガスによる気泡が混入した水素ガス含有水が、気液混合状態のままで水素処理装置に通水されていた。水素ガス含有水の流速が遅い場合等には、水素ガスによる気泡が次々と発生し、移送ライン内の上部へ移動して溜まっていくことが懸念される。
【0044】
本発明は、半導体の製造工程等で使用される超純水を製造するための超純水製造装置等で用いられる電気脱イオン装置で発生する水素ガスを、安全に処理することのできる水処理方法及び水処理システムとして有用である。
【符号の説明】
【0045】
10 水処理システム
1 電気脱イオン装置
11 陽極室
12 陰極室
121 排出口
2 水素処理装置
3 面積流量計
4 圧力計
5 圧力調整弁
6 圧力制御手段
L1 原水供給ライン
L2 処理水排出ライン
L3 移送ライン
W 原水
W1 処理水(脱イオン水)
W2 濃縮水
D 水素ガス含有水
図1
図2