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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】二軸配向ポリプロピレンフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019509039
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2018007729
(87)【国際公開番号】W WO2018180164
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2017062981
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木下 理
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩司
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-040112(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012324(WO,A1)
【文献】特開2001-302723(JP,A)
【文献】特開2001-171056(JP,A)
【文献】特開平11-254522(JP,A)
【文献】特開平08-300470(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104089(WO,A1)
【文献】特開2014-055283(JP,A)
【文献】特開2014-051656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/02、 5/12- 5/22
B29C 55/00- 55/30、 61/00- 61/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(e)の特徴を有する二軸配向ポリプロピレンフィルム。
(a)ポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる。
(b)フィルムの幅方向あるいは縦方向における引裂強度(N/mm)≦(0.014×フィルム厚み(μm)+0.35)である。
(c)フィルムの幅方向及び縦方向における150℃における熱収縮率が7%以下である。
(d)フィルムの幅方向における引張弾性率が4.8GPa以上である。
(e)ポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物において、
プロピレン以外の共重合モノマー量の上限が0.1mol%であり、
質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3.0以上、5.4以下であり、
230℃、2.16kgfで測定されるメルトフローレート(MFR)が6.2g/10min以上、9.0g/10min以下である。
【請求項2】
フィルムの縦方向における引張弾性率が2.0GPa以上である請求項1に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
衝撃強度が0.6J以上である、請求項1に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
ヘイズが5%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。詳細には、耐熱性及び手切れ性に優れる二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレン樹脂の延伸フィルムは、食品や様々な商品の包装用、電気絶縁用、表面保護フィルム等、広範囲な用途で汎用的に用いられていた。
しかし、従来のポリプロピレンフィルムは引裂き強度が大きく、製袋した後開封する際の手切れ性も十分ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の事情に鑑み、より高い耐熱性と手切れ性を有する二軸配向ポリプロピレンフィルムの提供を課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意検討した結果、二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいて、高温での耐熱性に優れたものであっても、引裂強度をより低減することを可能とし、かつ特定方向の引裂強度を所定の値とすることができ、かつ、上記課題を解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
上記課題を解決し得た本発明は、下記(a)~(c)の特徴を有する二軸配向ポリプロピレンフィルムである。
(a)ポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる。
(b)フィルムの幅方向あるいは縦方向における引裂強度(N/mm)≦(0.014×フィルム厚み(μm)+0.35)以下である。
(c)フィルムの幅方向及び縦方向における150℃における熱収縮率が7%以下である。
【0006】
この場合において、前記フィルムの幅方向及び縦方向における縦方向の引張弾性率が2.0GPa以上であり、かつ前記引張弾性率の大きい方向での引張弾性率が4.0GPa以上であることが好適である。
【0007】
この場合において、衝撃強度が0.6J以上であることが好適である。
【0008】
この場合において、前記フィルムのヘイズ値が5%以下であることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、150℃での熱収縮率が小さく、高い熱寸法安定を有する。そのため、熱負けシワが小さく、折れにくいためフィルム加工性に優れる。それに加え、フィルムの横方向の引裂強度が小さいため、包装袋を開封する際のフィルムの手切れ性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ポリプロピレン系樹脂組成物)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、下記ポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる。ポリプロピレン系樹脂はプロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレン及び/又はα-オレフィンとの共重合体をいう。エチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィンの共重合量は0.5mol%以下が好ましい。
このとき、ポリプロピレン樹脂組成物は、下記の条件を満たすポリプロピレン樹脂(A)又は、ポリプロピレン樹脂(A)及びポリプロピレン樹脂(B)の混合物であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂(A)及びポリプロピレン樹脂(B)の特徴は以下のとおりである。
ポリプロピレン樹脂(A)は下記1)~4)の条件を満たす及びポリプロピレン系樹脂である。
1)メソペンタッド分率の下限が96%である。
2)プロピレン以外の共重合モノマー量の上限が0.1mol%である。
3)質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3.0以上、5.4以下である。4)230℃、2.16kgfで測定されるメルトフローレート(MFR)が6.2g/10min以上、9.0g/10min以下である。
【0011】
ポリプロピレン樹脂(B)は下記1)~4)の条件を満たす及びポリプロピレン系樹脂である。
1)メソペンタッド分率の下限が96%である。
2)プロピレン以外の共重合モノマー量の上限が0.1mol%である。
3)質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3.0以上、5.4以下である。4)230℃、2.16kgfで測定されるメルトフローレート(MFR)が9.2g/10min以上である。
【0012】
ポリプロピレン樹脂(A)及びポリプロピレン樹脂(B)の混合の割合は重量比率で85/15~65/35(重量%)であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂(B)の混合割合が15重量%以上であると、フィルムの幅方向あるいは縦方向の配向が大きくなりやすく、引裂強度が低下しやすい。ポリプロピレン樹脂(B)の混合割合が35重量%以下であると、例えば延伸工程でフィルムが破断するなどの問題が生じにくく、二軸配向フィルムを製造することが容易になる。
さらに下記で詳細に説明する。
【0013】
(ポリプロピレン樹脂(A))
ポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを、オレフィン単量体全体に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンが0.5mol%以下となるように共重合した重合体であるのが好ましい。共重合成分は0.3モル%以下が好ましく、0.1mol%以下がより好ましく、共重合成分を含まない完全ホモポリプロピレン樹脂が最も好ましい。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンは、0.5mol%を超えて共重合すると、結晶性や剛性が低下し過ぎて、引裂強度が大きくなることがある。この様な樹脂をブレンドして用いても良い。
【0014】
ポリプロピレン樹脂(A)の立体規則性の指標である13C-NMRで測定されるメソペンタッド分率([mmmm]%)は、96~99.5%であることが好ましい。より好ましくは、97%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。ポリプロピレン樹脂(A)のメソペンタッド率が小さいと、引裂強度が不充分となるおそれがある。99.5%が現実的な上限である。
【0015】
また、分子量分布の指標であるMw/Mnは、ポリプロピレン樹脂(A)では3.0~5.4が好ましい。より好ましくは3.0~5.0、さらに好ましくは3.2~4.5であり、特に好ましくは3.3~4.0である。
高分子量成分が存在すると、高分子量成分が低分子量成分の結晶化を促進する面があるが、分子同士の絡み合いが強くなり、結晶性が高くても引裂強度が大きくなる傾向もあるため、ポリプロピレン樹脂(A)のMw/Mnが5.4を超えないようにするのが好ましい。Mw/Mnが大きくなりすぎると高分子量成分が多くなり、引裂強度が大きくなる場合があったり、幅方向(TD)の引張弾性率(ヤング率)が小さくなる場合がある傾向にある。ポリプロピレン樹脂(A)のMw/Mnが3.0未満であると、製膜が困難になる、Mwは質量平均分子量を意味し、Mnは数平均分子量を意味する。
【0016】
ポリプロピレン樹脂(A)質量平均分子量(Mw)は、180,000~500,000が好ましい。より好ましいMwの下限は190,000、さらに好ましくは200,000であり、より好ましいMwの上限は320,000、さらに好ましくは300,000、特に好ましくは250,000である。
【0017】
ポリプロピレン樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、20,000~200,000が好ましい。より好ましいMnの下限は30,000、さらに好ましくは40,000、特に好ましくは50,000であり、より好ましいMnの上限は80,000、さらに好ましくは70,000、特に好ましくは60,000である。
【0018】
このときのポリプロピレン樹脂(A)のメルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)が6.2g/10分~10.0g/10分であることが好ましい。
ポリプロピレン樹脂(A)のMFRの下限は、6.5g/10分であることがより好ましく、7g/10分であることがさらに好ましく、7.5g/10分であることが特に好ましい。ポリプロピレン樹脂のMFRの上限は、9g/10分であることがより好ましく、8.5g/10分であることがさらに好ましく、8.2g/10分であることが特に好ましい。
メルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)が6.2g/10分以上であると、延伸により生じるフィルムの配向の程度が強くなるため、フィルムの剛性、特に幅方向(TD)の引張弾性率(ヤング率)が高くなるとともに、引裂強度が低下する。さらに、高温での熱収縮率もより小さくすることができる。また、メルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)が9.0g/10分以下であると破断なく製膜を行いやすい。
【0019】
ポリプロピレン樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)積算カーブを測定した場合、分子量10万以下の成分の量の下限は好ましくは35質量%であり、より好ましくは38質量%であり、さらに好ましくは40質量%であり、特に好ましくは41質量%であり、最も好ましくは42質量%である。
一方、GPC積算カーブでの分子量10万以下の成分の量の上限は好ましくは65質量%であり、より好ましくは60質量%であり、さらに好ましくは58質量%であり、特に好ましくは56質量%であり、最も好ましくは55質量%である。上記範囲であると延伸が容易となったり、厚み斑が小さくなったり、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく引裂強度をより低く抑えることができる。
なお、ポリプロピレン樹脂(A)の分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混錬機でブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。
【0020】
(ポリプロピレン樹脂(B))
ポリプロピレン樹脂(B)は、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを、オレフィン単量体全体に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンが0.5mol%以下となるように共重合した重合体であるのが好ましい。共重合成分は0.3mol%以下が好ましく、0.1mol%以下がより好ましく、共重合成分を含まない完全ホモポリプロピレン樹脂が最も好ましい。
エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンは、0.5mol%以下であると、結晶性や剛性がより向上し、引裂強度がより低下することがある。この様な樹脂をブレンより向上ドして用いても良い。
【0021】
ポリプロピレン樹脂(B)の立体規則性の指標である13C-NMRで測定されるメソペンタッド分率([mmmm]%)は、96~99.5%であることが好ましい。より好ましくは、97%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。ポリプロピレン樹脂(B)のポリプロピレンのメソペンタッド率が大きいと、弾性率が高くなり、引裂強度がより小さくなる。99.5%が現実的な上限である。
【0022】
また、分子量分布の指標であるMw/Mnは、ポリプロピレン樹脂(B)では3.0~5.4が好ましい。より好ましくは3.0~5.0、さらに好ましくは3.2~4.5であり、特に好ましくは3.3~4.0である。
ポリプロピレン樹脂(B)のMw/Mnが5.4をより小さいと、Mw/Mnが大きくなりすぎずると高分子量成分が少なくなり、引裂強度がより小さくなる場合があったり、幅方向(TD)の引張弾性率(ヤング率)が大きくなる場合がある傾向にある。ポリプロピレン樹脂(B)のMw/Mnが3.0未満であると、製膜が困難になる。Mwは質量平均分子量を意味し、Mnは数平均分子量を意味する。
【0023】
ポリプロピレン樹脂(B)の質量平均分子量(Mw)は、180,000~500,000が好ましい。より好ましいMwの下限は190,000、さらに好ましくは200,000であり、より好ましいMwの上限は320,000、さらに好ましくは300,000、特に好ましくは250,000である。
【0024】
ポリプロピレン樹脂(B)の数平均分子量(Mn)は、20,000~200,000が好ましい。より好ましいMnの下限は30,000、さらに好ましくは40,000であり、より好ましいMnの上限は70,000、さらに好ましくは60,000、特に好ましくは50,000である。
【0025】
このときのポリプロピレン樹脂(B)のメルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)が9.2g/10分以上であることが好ましい。
ポリプロピレン樹脂(B)のMFRの下限は、9.5g/10分であることがより好ましく、10g/10分であることがさらに好ましく、11g/10分であることが特に好ましい。ポリプロピレン樹脂のMFRの上限は、15g/10分であることがより好ましく、13g/10分であることがさらに好ましく、12g/10分であることが特に好ましい。
メルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)が9.2g/10分以上であると、幅方向(TD)の延伸により生じるフィルムの配向の程度が強くなるため、フィルムの引裂強度をより小さくすることができる。さらに、フィルムの耐熱性、特に幅方向(TD)の150℃における熱収縮引率が小さくなる。
【0026】
ポリプロピレン樹脂(B)をのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)積算カーブを測定した場合、分子量10万以下の成分の量の下限は好ましくは50質量%であり、より好ましくは52質量%であり、さらに好ましくは55質量%である。
一方、GPC積算カーブでの分子量10万以下の成分の量の上限は好ましくは65質量%であり、より好ましくは60質量%であり、さらに好ましくは58質量%である。上記範囲であると延伸が容易となったり、厚み斑が小さくなったり、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく引裂強度をより低く抑えることができる。
【0027】
ポリプロピレン樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の混合物は下記1)~4)の条件を満たす及びポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
1)メソペンタッド分率の下限が96%である。
2)プロピレン以外の共重合モノマー量の上限が0.1mol%である。
3)質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3.0以上、5.4以下である。4)230℃、2.16kgfで測定されるメルトフローレート(MFR)が6.5g/10min以上、9.0g/10min以下である。
【0028】
ポリプロピレン樹脂(A)及びポリプロピレン樹脂(B)の分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混錬機でブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。
【0029】
本発明で用いるポリプロピレン樹脂(A)及びポリプロピレン樹脂(B)は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等の公知の触媒を用いて、原料のプロピレンを重合させることにより得られる。中でも、異種結合をなくすためにはチーグラー・ナッタ触媒を用い、立体規則性の高い重合が可能な触媒を用いることが好ましい。
プロピレンの重合方法としては、公知の方法を採用すればよく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶剤中で重合する方法、液状のモノマー中で重合する方法、気体のモノマーに触媒を添加し、気相状態で重合する方法、または、これらを組み合わせて重合する方法等が挙げられる。
【0030】
二軸配向ポリプロピレン系フィルムを構成する樹脂組成物には、ポリプロピレン系樹脂以外にも、添加剤やその他の樹脂を含有させてもよい。添加剤やその他の樹脂の樹脂組成物中の含有量は20重量%以下とするのがよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。
その他の樹脂としては、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外のポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体や、各種エラストマー等が挙げられる。これらは、多段の反応器を用いて逐次重合するか、ポリプロピレン樹脂とヘンシェルミキサーでブレンドするか、事前に溶融混錬機を用いて作製したマスターペレットを所定の濃度になるようにポリプロピレンで希釈するか、予め全量を溶融混練して使用してもよい。
【0031】
(二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主成分とする樹脂組成物を押出機により溶融押し出しして未延伸シートを形成し、その未延伸シートを所定の方法により、延伸して熱処理することによって得ることができる。
未延伸シートは、複数の押出機やフィードブロック、マルチマニホールドを用いることで得られる。溶融押出し温度は200~280℃程度が好ましい。
【0032】
チルロール表面温度は25~35℃が好ましく、27~33℃がより好ましい。次いで、120~165℃の延伸ロールでフィルムを縦方向(MD)に延伸し、引き続き幅方向(TD)方向に延伸を行う。さらに、リラックスを施しながら、熱固定を行う。こうして得られた二軸ポリプロピレンフィルムに、必要に応じて、コロナ放電、プラズマ処理、火炎処理等を施した後、ワインダーで巻き取ることによりフィルムロールを得ることができる。
【0033】
縦方向(MD)の延伸倍率の下限は、好ましくは3倍であり、より好ましくは3.5倍であり、さらに好ましくは4.0倍である。上記未満であると膜厚ムラとなることがある。縦方向(MD)の延伸倍率の上限は好ましくは7倍であり、より好ましくは6倍である。上記を超えると引き続き行う幅方向(TD)延伸がしにくくなることがある。
縦方向(MD)の延伸温度の下限は好ましくは120℃であり、より好ましくは125℃であり、さらに好ましくは130℃である。上記未満であると機械的負荷が大きくなったり、厚みムラが大きくなったり、フィルムの表面荒れが起こることがある。縦方向(MDの延伸温度の上限は好ましくは160℃であり、より好ましくは155℃であり、さらに好ましくは150℃である。温度が高い方が熱収縮率の低下には好ましいが、ロールに付着し延伸できなくなったり、表面荒れが起こることがある。
【0034】
幅方向(TD)の延伸倍率の下限は好ましくは8倍であり、より好ましくは10倍である。上記未満であると幅方向(TD)の配向がフィルムの横方向の配向が大きくなりにくく、引裂強度が低下しにくい。幅方向(TD)延伸倍率の上限は好ましくは12倍である。上記を超えると熱収縮率が高くなったり、延伸時に破断することがある。フィルムを構成するポリピロピレン樹脂組成物がポリプロピレン樹脂(A)及びポリプロピレン樹脂(B)の混合物であるときは、幅方向(TD)延伸倍率はそれほど大きくしなくても、幅方向(TD)の配向が大きくなる傾向にある。
幅方向(TD)延伸での予熱温度は速やかに延伸温度付近にフィルム温度を上げるため、好ましくは縦方向(MD)延伸温度より15~35℃高く設定する。幅方向(TD)の延伸では従来の二軸配向ポリプロピレンフィルムより高温で行う。
幅方向(TD)の延伸温度の下限は好ましくは155℃であり、より好ましくは157℃であり、さらに好ましくは158℃、特に好ましくは160℃である。上記未満であると充分に軟化せずに破断したり、熱収縮率が高くなることがある。幅方向(TD)延伸温度の上限は好ましくは170℃であり、より好ましくは168℃であり、さらに好ましくは163℃である。熱収縮率を低くするためには温度は高い方が好ましいが、上記を超えると低分子成分が融解、再結晶化して配向が低下するだけでなく、表面荒れやフィルムが白化することがある。
【0035】
延伸後のフィルムは熱固定される。熱固定は従来の二軸配向ポリプロピレンフィルムより高温で行うことが可能である。熱固定温度の下限は好ましくは165℃であり、より好ましくは166℃である。上記未満であると熱収縮率が高くなることがある。また、熱収縮率を低くするために長時間の処理が必要になり、生産性が劣ることがある。熱固定温度の上限は好ましくは176℃であり、より好ましくは175℃である。上記を超えると低分子成分が融解、再結晶化して表面荒れやフィルムが白化することがある。
【0036】
熱固定時にはリラックス(緩和)させることが好ましい。幅方向(TD)緩和率の下限は好ましくは2%であり、より好ましくは3%である。上記未満であると熱収縮率が高くなることがある。幅方向(TD)緩和率の上限は好ましくは10%であり、より好ましくは8%である。上記を超えると厚みムラが大きくなることがある。
【0037】
さらに、熱収縮率を低下させるために、上記の工程で製造されたフィルムを一旦ロール状に巻き取った後、オフラインでアニールさせることもできる。オフラインアニールの温度の下限は好ましくは160℃であり、より好ましくは162℃であり、さらに好ましくは163℃である。上記未満であるとアニールの効果が得られないことがある。オフラインアニール温度の上限は好ましくは175℃であり、より好ましくは174℃であり、さらに好ましくは173℃である。上記を超えると透明性が低下したり、厚みムラが大きくなったりすることがある。
【0038】
オフラインアニール時間の下限は好ましくは0.1分であり、より好ましくは0.5分であり、さらに好ましくは1分である。上記未満であるとアニールの効果が得られないことがある。オフラインアニール時間の上限は好ましくは30分であり、より好ましくは25分であり、さらに好ましくは20分である。上記を超えると生産性が低下することがある。
【0039】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの面配向係数の下限は、0.011が好ましく、0.012がより好ましく、0.013がさらに好ましい。上記範囲であると、フィルムの耐熱性、剛性を大きくなりやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、結晶配向を有し、その方向や程度がフィルム物性に大きな影響を及ぼす。結晶配向の程度は面配向係数を指標として表すことができ、ポリプロピレン系樹脂の分子構造や、フィルム製造におけるプロセスや条件を制御することで上記の範囲内とすることが出来る。
【0040】
(二軸配向ポリプロピレンフィルム)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルム全体の厚みは9~200μmが好ましく、10~150μmがより好ましく、12~100μmがさらに好ましく、12~80μmが特に好ましい。
【0041】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの引裂強度(N/mm)は、幅方向(TD)あるいは縦方向(MD)において、0.014×フィルム厚み(μm)+0.35以下の範囲であることが必要であり、0.014×フィルム厚み(μm)+0.35を超えると、それぞれの方向にフィルムを引裂く際に、それぞれのフィルム厚みに応じて期待される引裂きやすさに大きな抵抗感を感じることなく、容易にフィルムを手で切ることが出来る。好ましくは0.014×フィルム厚み(μm)+0.30以下の範囲であり、より好ましくは0.014×フィルム厚み(μm)+0.28以下の範囲である。この範囲であると、従来の二軸配向ポリプロピレン系フィルムよりも引裂きやすさに大きな抵抗感を感じることがない。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの引裂強度(N/mm)は、特に幅方向(TD)において、0.014×フィルム厚み(μm)+0.35以下の範囲であることが好ましい。
【0042】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの引裂強度(N/mm)は、幅方向(TD)あるいは縦方向(MD)において、4.0以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは3.5以下である。
【0043】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいては、150℃での幅方向(TD)の熱収縮率は0.2~7.5%であることが好ましく、0.3~7%がより好ましく、0.4~6%がさらに好ましく、0.5~5%が特に好ましい。熱収縮率が上記範囲であれば、特に耐熱性に優れたフィルムということができ、例えば、製袋品への加工時の熱負けシワを低減することができる。そのため、高温にさらされる可能性のある用途でも使用できる。150℃熱収縮率は1.5%程度までなら、例えば低分子量成分を多くする、延伸条件、熱固定条件を調整することで可能であるが、それ以下に下げるには、オフラインでアニール処理をすること等が好ましい。
【0044】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいては、150℃での縦方向の熱収縮率は0.2~7%であることが好ましく、0.3~6%がより好ましい。熱収縮率が上記範囲であれば、耐熱性に優れたフィルムということができ、例えば、製袋品への加工時の熱負けシワを低減することができる。
そのため。高温にさらされる可能性のある用途でも使用できる。なお、150℃熱収縮率は1.5%程度までなら、例えば低分子量成分を多くする、延伸条件、熱固定条件を調整することで可能であるが、それ以下に下げるには、オフラインでアニール処理をすること等が好ましい。
【0045】
本発明の二軸配向ポリプロプレンフィルムの耐衝撃性(室温、25℃)の下限は好ましくは0.4Jであり、より好ましくは0.5Jである。上記範囲であるとフィルムとして十分な強靱性があり、取り扱い時に破断したりすることがない。耐衝撃性の上限は現実的な面から好ましくは1.5Jであり、より好ましくは1.3Jである。耐衝撃性は例えば低分子量成分が多い場合全体での分子量が低い場合、高分子量成分が少ない場合や高分子量成分の分子量が低い場合に耐衝撃性が低下する傾向となるため、用途に合わせてこれら成分を調整して範囲内とすることが出来る。
【0046】
発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向及び縦方向における引張弾性率が2.0GPa以上、かつ前記引張弾性率の大きい方向での引張弾性率が4.0GPa以上であることが好ましい。
【0047】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向(TD)の引張弾性率は、4.5~8GPaであることが好ましく、4.6~7.5GPaであることがより好ましく、4.7~7GPaであることがさらに好ましく、4.8~6.5GPaが特に好ましい。横方向の引張弾性率が上記範囲であれば、折れにくいフィルムにすることが可能となる。
【0048】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの縦方向(MD)の引張弾性率は、1.8~4GPaであることが好ましく、2.1~3.7GPaであることがより好ましく、2.2~3.5GPaであることがさらに好ましく、2.3~3.4GPaが特に好ましい。
【0049】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの折れにくさは、フィルムをリング状にホールドして圧縮し、その抗力をロードセルで検出される値で評価した(リングクラッシュ測定法)が、幅方向(TD)及び/又は縦方向(MD)におけるその値は120g以上であることが好ましい。測定方法は後述する。
【0050】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのヘイズは、5%以下が好ましく、0.2~5%がより好ましく、0.3~4.5%がさらに好ましく、0.4~4%が特に好ましい。上記範囲であると透明が要求される用途で使いやすくなることがある。ヘイズは例えば延伸温度、熱固定温度が高すぎる場合、冷却ロール(CR)温度が高く延伸原反シートの冷却速度が遅い場合、低分子量成分が多すぎる場合に悪くなる傾向があり、これらを調節することで上記の範囲内とすることが出来る。ヘイズの測定方法は後述する。
【0051】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの動摩擦係数は、0.5以下であることが好ましく、0.45以下であるのがより好ましく、0.40以下が特にこのましい。動摩擦係数は、0.5以下であるとロールフィルムからのフィルムの巻き出しがスムーズに行え、印刷加工しやすい。動摩擦係数の測定方法は後述する。
【0052】
(表面層)
発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムには、別途表面層を設けてもよく、使用するポリプロピレン樹脂として、プロピレン単独重合体、あるいはプロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンの共重合体を用いることができる。炭素数4以上のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテンなどが挙げられる。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテンなどが挙げられる。その他の共重合成分として、極性を有するマレイン酸等を使用しても良い。
エチレンや炭素数4以上のα-オレフィン、及びその他の共重合成分は合計で8.0mol%以下であることが好ましい。8.0mol%を超えて共重合すると、フィルムが白化して外観不良となったり、粘着性が生じて製膜が困難となったりする場合がある。
また、これらの樹脂を2種以上を混合して用いても良い。混合する場合、個々の樹脂は8.0mol%を超えて共重合されたものであっても良いが、混合物中のエチレン、炭素数4以上のα-オレフィン、及びその他の共重合成分は合計で8.0mol%以下であることが好ましい。
【0053】
表面層で用いるポリプロピレン樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等の公知の触媒を用いて、原料のプロピレンを重合させることにより得られる。中でも、異種結合をなくすためにはチーグラー・ナッタ触媒を用い、立体規則性の高い重合が可能な触媒を用いることが好ましい。
プロピレンの重合方法としては、公知の方法を採用すればよく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶剤中で重合する方法、液状のモノマー中で重合する方法、気体のモノマーに触媒を添加し、気相状態で重合する方法、または、これらを組み合わせて重合する方法等が挙げられる。
【0054】
表面層には、ポリプロピレン樹脂以外にも、添加剤やその他の樹脂を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。
その他の樹脂としては、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外のポリプロピレン系樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体や、各種エラストマー等が挙げられる。これらは、多段の反応器を用いて逐次重合するか、ポリプロピレン樹脂とヘンシェルミキサーでブレンドするか、事前に溶融混錬機を用いて作製したマスターペレットを所定の濃度になるようにポリプロピレンで希釈するか、予め全量を溶融混練して使用してもよい。
表面層に含有するアンチブロッキング剤を配合するのも好適な方法である。
アンチブロッキング剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、ゼオライト等の無機系のアンチブロッキング剤やアクリル系、ポリメタアクリル系、ポリスチレン系等の有機系アンチブロッキング剤等の中から、適宜選択して使用することができる。これらの中でも、シリカを用いるのが特に好ましい。
アンチブロッキング剤の好ましい平均粒子径は1.0~2.0μmであり、より好ましくは1.0~1.5μmである。
アンチブロッキング剤は、表面層中に0.5質量%以下とすることが好ましい。ここでいう平均粒径の測定法は、走査電子顕微鏡で写真撮影し、イメージアナライザー装置を用いて水平方向のフェレ径を測定し、その平均値で表示したものである。
【0055】
表面層の表面の濡れ張力が38mN/m以上であることが好ましい。
濡れ張力は38mN/m以上であると、印刷インキや接着剤との密着性が向上する。
濡れ張力は16LogΩ以上であるのがより好ましい。濡れ張力は38mN/m以上とするには、帯電防止剤や界面活性剤などの添加剤を使用することが通常行われているが、表面固有抵抗を下げる効果があるため、コロナ処理、火炎処理などの表面処理を行うことが挙げられる。
【0056】
表面層と本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムとの厚みの比率としては、表面層/二軸配向ポリプロピレンフィルムが0.01~0.5であることが好ましく、0.03~0.4であることがより好ましく、0.05~0.3であることがさらに好ましい。表面層/二軸配向ポリプロピレンフィルムが0.5を超えると、収縮率が大きくなる傾向を示す。また、フィルム全体の厚みに対する二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚みは50~99%であることが好ましく、さらに好ましくは60~97%、特に好ましくは70~95%である。残部は、表面層または表面層とその他の層(例えばC層)となる。表面層の実質的な厚みは、0.5~4μmが好ましく、1~3.5μmがより好ましく、1.5~3μmがさらに好ましい。
二軸配向ポリプロピレンフィルムと表面層とを1層ずつ有する2層構造のフィルムであってもよいが3層以上の構成としてもよい。好ましいのは二軸配向ポリプロピレンフィルム/表面層の2層構造である。また、表面層/二軸配向ポリプロピレンフィルム/表面層、/二軸配向ポリプロピレンフィルム/中間層(C)/表面層の3層構造やそれ以上の多層構造であってもよい。
なお、表面層が複数ある場合、それぞれの層がその特性を満たすものであれば、組成は異なっていてもよい。
表面層を設ける場合は、基材層用の樹脂組成物(例えば、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の混合物)と表面層用のポリプロピレン系樹脂をそれぞれ、別の押出機により溶融押し出しして積層された未延伸シートを形成し、その未延伸シートを所定の方法により、延伸して熱処理することによって得ることができる。
【0057】
(用途)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムは、スタンディングパウチなどに使用される食品包装用はもちろんのこと、ラベル用途等にも使用可能である。製袋工程にて、機械の流れ方向と直行する方向で折り曲げて、製袋する際には、横方向が手切れ方向となるため、横方向の引裂強度が重要となる。引裂強度の低い方が、手切れ性が良好なフィルムとなる。
【実施例
【0058】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、実施例および比較例で得られたフィルム物性の測定方法は、以下の通りである。
【0059】
1)立体規則性
メソペンタッド分率([mmmm]%)の測定は、13C-NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、「Zambelliら、Macromolecules,第6巻,925頁(1973)」に記載の方法に従って算出した。13C-NMR測定は、BRUKER社製「AVANCE500」を用い、試料200mgをo-ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2(体積比)の混合液に135℃で溶解し、110℃で行った。
【0060】
2)メルトフローレート(MFR;g/10分)
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。樹脂はペレット(パウダー)をそのまま必要量量り取り用いた。フィルムは必要量切り出した後、約5mm角にカットしたサンプルを用いた。
【0061】
3)分子量および分子量分布
分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて単分散ポリスチレン基準により求めた。GPC測定での使用カラム、溶媒等の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMHHR-H(20)HT×3
流量:1.0ml/min
検出器:RI
測定温度:140℃
【0062】
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分子量分布は、それぞれ、分子量校正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量(M)の分子数(N)により次式で定義される。
数平均分子量:Mn=Σ(N・M)/ΣNi
質量平均分子量:Mw=Σ(N・M )/Σ(N・M
分子量分布:Mw/Mn
ベースラインが明確でないときは、標準物質の溶出ピークに最も近い高分子量側の溶出ピークの高分子量側のすそ野の最も低い位置までの範囲でベースラインを設定することとした。
【0063】
4)厚み
基材層(A)と表面層(B)各層の厚みは、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを変性ウレタン樹脂で固めたものの断面をミクロトームで切り出し、微分干渉顕微鏡で観察して、測定した。
【0064】
5)熱収縮率(%)
JIS Z1712に準拠して、以下の方法で測定した。フィルムを、MD方向とTD方向のそれぞれにおいて、幅20mm、長さ200mmにカットし、150℃の熱風オーブン中に吊して5分間加熱した。加熱後の長さを測定し、元の長さに対する収縮した長さの割合で熱収縮率を求めた。
【0065】
6)引張弾性率(ヤング率(単位:GPa))
JIS K7127に準拠してフィルムのMD方向およびTD方向の引張弾性率を23℃にて、下記条件で測定した。
測定機器:島津製作所、オートグラフ ASS-100NJ
サンプルサイズ:幅15mm×長さ200mm
クロスヘッド速度:200mm/min
チャック間距離:100mm
弾性率測定の歪範囲:0.1~0.6%
【0066】
7)リングクラッシュ(g)
デジタル式リングクラッシュテスター(テスター産業社製)で、フィルムサンプルサイズ12.7mm×152mmを準備し、試料テーブルの上に、フィルムサンプルの厚みに合わせて、アタッチメントのスペーサーをセットし、MD、TD方向それぞれで、フィルムサンプルを円周に添って差し込む。23℃にて、圧縮版を下降速度 12mm/min.で圧縮した際の最大荷重をリングクラッシュ測定値とした。
【0067】
8)ヘイズ(単位:%)
JIS K7105に従って測定した。
【0068】
9)動摩擦係数
JIS K7125に準拠して、フィルムのコロナ処理を実施した面同士を重ね合わせ、23℃で測定した。
【0069】
10)屈折率、面配向係数
JIS K7142-1996 5.1(A法)により、アタゴ製アッベ屈折計を用いて測定した。MD、TD方向に沿った屈折率をそれぞれNx、Nyとし、厚み方向の屈折率をNzとした。面配向係数(ΔP)は、(Nx+Ny)/2-Nzで求めた。
【0070】
12)表面固有抵抗値(LogΩ)
JIS K6911に準拠し、フィルムを23℃、24時間エージング後、フィルムのコロナ処理面を測定した。
【0071】
13)濡れ張力(mN/m)
JIS K6768-1999に順じて、フィルムを23℃、相対湿度 50%で24時間エージング後、下記手順でフィルムのコロナ処理面を測定した。
1)測定は,温度23℃,相対湿度50%の標準試験室雰囲気(JIS K7100参照)で行う。
2)試験片をハンドコータ(4.1)の基板の上に置き,試験片の上に試験用混合液を数滴滴下して,直ちにワイヤバーを引いて広げる。綿棒又はブラシを使用して試験用混合液を広げる場合は,液体は少なくとも 6cm2以上の面積に速やかに広げる。液体の量は,たまりを作らないで,薄層を形成する程度にする。濡れ張力の判定は,試験用混合液の液膜を明るいところで観察し,3 秒後の液膜の状態で行う。液膜破れを生じないで,3秒以上,塗布されたときの状態を保っているのは,ぬれていることになる。濡れが3秒以上保つ場合は,さらに,次に表面張力の高い混合液に進み,また逆に、3秒以下で液膜が破れる場合は,次の表面張力の低い混合液に進む。この操作を繰り返し,試験片の表面を正確に、3秒間で濡らすことができる混合液を選ぶ。
3)各々の試験には,新しい綿棒を使用する。ブラシ又はワイヤバーは,残留する液体が蒸発によって組成及び表面張力を変化させるので,使用ごとにメタノールで洗浄し,乾燥させる。
4)試験片の表面を3秒間でぬらすことができる混合液を選ぶ操作を少なくとも3回行う。このようにして選ばれた混合液の表面張力をフィルムの濡れ張力として報告する。
【0072】
14)引裂強度(N/mm)
JIS K7128 トラウザー引裂法に従って測定した平均引裂強さを引裂強度とした。
【0073】
15)製袋品の手切れ性
1)シーラントフィルムとのラミネートフィルムの作成
連続式のドライラミネート機を用いて以下の様に行った。
実施例、比較例で得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムのコロナ面に接着剤を乾燥時塗布量が3.0g/m2となるようにグラビアコートした後、乾燥ゾーンに導き80℃、5秒で乾燥した。引き続き下流側に設けられたロール間でシーラントフィルムと貼り合わせた(ロール圧力0.2MP、ロール温度:60℃)。得られたラミネートフィルムは巻き取った状態で40℃、3日間のエージング処理を行った。
なお、接着剤は主剤(東洋モートン社製、TM329)17.9質量%、硬化剤(東洋モートン社製、CAT8B)17.9質量%および酢酸エチル64.2質量%を混合して得られたエーテル系接着剤を使用し、シーラントフィルムは東洋紡社製無延伸ポリプロピレンフィルム(パイレン(登録商標)CT P1128、厚み30μm)を使用した。
2)製袋品の作成
ラミネートフィルムの流れ方向に、2つ折後、120℃、1kg、1秒の条件で3方ヒートシールし、幅200mm、長さ200mmの製袋品を作成した。
3)手切れ性の評価
製袋品に横方向にノッチを入れて、横方向に手で引裂いた際の抵抗感の有無を評価者10人で実施した。抵抗感のあると回答した人数を評価項目として用いた。各3回ずつ評価した。
0人・・・・・◎:手切れ性に優れる。
1~5人・・・○:手切れ性が良好。
6~9人・・・△:手切れ性に劣る。
10人・・・・×:手切れ性がない。
【0074】
(実施例1)
基材層には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を79重量%とポリプロピレン単独重合体PP-2を20重量%と耐電防止剤(ステアリルジエタノールアミンステアレート(松本油脂(株) KYM-4K))を1重量%を混合したものを用いた。さらに、この混合物に平均粒子径が1μmのシリカ粒子を3000ppm添加した。
この混合物を60mm押出機を用いて、原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、135℃縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向両端をクリップで挟み、175℃で予熱後、160℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、170℃で熱固定した。このときの製膜条件を製膜条件aとし、表2に示した。
得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの片側表面側にソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取ったものを本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムとした。得られたフィルムの物性は、表3に示すとおりである。
【0075】
(実施例2、3)
表1に示すとおりフィルム厚みを変更した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性は、表3に示すとおりである。
【0076】
(実施例4)
基材層(A)に使用する混合原料は60mm押出機、表面層(B)に使用する混合原料は65mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、135℃縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向両端をクリップで挟み、175℃で予熱後、160℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、170℃で熱固定した。表2に示す製膜条件aで製膜し、ワインダーで巻き取って、基材層(A)と表面層(B)が1層ずつ積層された本発明の二軸配向積層ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面層(B)の表面側にソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取ったものを本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムとした。得られたフィルムの物性は、表3に示すとおりである。
【0077】
(実施例5)
表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を79重量%とポリプロピレン単独重合体PP-2と20重量%の混合物をポリプロピレン樹脂PP-1を99重量%に、横方向(TD)延伸倍率を10.0倍に変更した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性は、表3に示すとおりである。このときの製膜条件を製膜条件bとし、表2に示した。
【0078】
(比較例1)
表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を79重量%とポリプロピレン単独重合体PP-2と20重量%の混合物を、表1に示すポリプロピレン樹脂PP-1を99重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
得られたフィルムの物性は、表4に示すとおりである。
【0079】
(比較例2)
表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を79重量%とポリプロピレン単独重合体PP-2と20重量%の混合物を、ポリプロピレン単独重合体PP-1を59重量%とポリプロピレン単独重合体PP-2と40重量%の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレンフィルム製膜したが、破断して製膜することが出来なかった。
【0080】
(比較例3)
表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を79重量%とポリプロピレン単独重合体PP-2と20重量%の混合物を、ポリプロピレン樹脂PP-3を99重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性は、表4に示すとおりである。
【0081】
(比較例4)
表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を79重量%とポリプロピレン単独重合体PP-2と20重量%の混合物を、ポリプロピレン樹脂PP-4を99重量%に変更し、縦方向延伸温度を125℃、幅方向延伸予熱温度を170℃、幅方向延伸温度を158℃、熱固定温度を165℃に変更した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性は、表4に示すとおりである。このときの製膜条件を製膜条件cとし、表2に示した。
【0082】
(比較例5、6)
表1に示すとおりフィルム厚みを変更した以外は、比較例3と同様にして二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの物性は、表4に示すとおりである。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
実施例1~5で得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムは、幅方向(TD)の引裂強度は小さく、熱収縮率が小さかった。
それに対して、比較例1、3で得られたフィルムは、幅方向(TD)の引裂強度が大きかった。
比較例2では製膜ができなかった。
比較例4、5、6で得られたフィルムは、幅方向(TD)及び縦方向(MD)において、幅方向(TD)の引裂強度も大きく、熱収縮率が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムは、スタンディングパウチなどに使用される食品包装用はもちろんのこと、ラベル用途等にも使用可能である。製袋工程にて、機械の流れ方向と直行する方向で折り曲げて、製袋する際には、横方向が手切れ方向となるため、横方向の引裂強度が重要となる。引裂強度の低い方が、手切れ性が良好なフィルムとなる。