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  • 特許-積層体およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20230110BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230110BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20230110BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230110BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230110BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20230110BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20230110BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20230110BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H05B33/04
H01L23/30 F
H05B33/14 A
C08L101/00
C08L53/02
C08F297/04
H01L23/30 R
H05B33/02
H05B33/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019538994
(86)(22)【出願日】2018-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2018022181
(87)【国際公開番号】W WO2019044108
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2017165160
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】栗原 竜太
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大道
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/153030(WO,A1)
【文献】特開2010-074165(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096389(WO,A1)
【文献】特開2016-036998(JP,A)
【文献】特開2011-219576(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 23/29
H01L 51/50
C08L 53/02
H05B 33/02
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1柔軟層と、第2柔軟層と、第3柔軟層と、第4柔軟層と、前記第1~第4柔軟層により包埋された電子デバイスとを備える積層体であって、
前記第1~第4柔軟層は、全て、前記電子デバイスと接触しており、
前記第1柔軟層は、前記電子デバイスの一方側に位置し、
前記第2柔軟層は、前記電子デバイスの他方側に位置し、
前記第1柔軟層と、前記第2柔軟層とが異なる柔軟層であり、
前記第1~第4柔軟層は、全て、曲げ弾性率が80MPa以上1000MPa以下であり、且つ、40℃90%RHにおける水蒸気透過度が15[g/(m・24h)・100μm]以下である、積層体。
【請求項2】
前記第1~第4柔軟層の少なくとも1層は、熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点が90℃以上である、請求項に記載の積層体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とする、請求項またはに記載の積層体。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]の主鎖および側鎖における炭素-炭素不飽和結合の90%以上、および、芳香環における炭素-炭素不飽和結合の90%以上を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とする、請求項に記載の積層体。
【請求項6】
前記第1~第4柔軟層の少なくとも1層は、紫外線吸収剤を含む、請求項1~のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記第1~第4柔軟層の少なくとも1層は、全光線透過率が85%以上であり、且つ、385nm以下の分光光線の透過率が1%以下である、請求項1~のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
請求項1からのいずれかに記載の積層体を製造する積層体の製造方法であって、
積層物を包装袋に封入した包装体を真空脱気する工程と、
前記真空脱気した包装体を加熱および加圧して積層体を作製する工程と、を含み、
前記加熱の温度をT1、前記第1~第4柔軟層のガラス転移温度もしくは融点をT2、前記包装袋のビカット軟化温度をT3、前記包装袋の溶融温度をT4とした場合、T1~T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係を満たす、積層体の製造方法。
【請求項9】
前記包装袋がポリエチレン系樹脂からなる層を1層以上含む、請求項記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」ということがある。)等の電子デバイス用いた装置の薄膜化およびフレキシブル化が進んでいる。そのため、電子デバイスを用いて、様々な可撓性に優れた装置の開発が進められている。
【0003】
電子デバイスは、水および空気によってダメージを受けやすい有機材料を含む。よって、電子デバイスを備えた装置では、水および空気から有機材料を保護するために、電子デバイスを封止することが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/153030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電子デバイスを備えた装置では、表面に電子デバイスを設けた基板とバリア部材との間に封止剤を充填してなる密着封止構造を採用しており、封止材が電子デバイスの片面にのみ配置されているため、耐湿性が十分でないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、可撓性および耐湿性に優れた、電子デバイスを備える積層体を提供することを目的とする。
また、本発明は、可撓性および耐湿性に優れた、電子デバイスを備える積層体を製造可能な積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定の曲げ弾性率および水蒸気透過度を有する柔軟層と、該柔軟層により包埋された電子デバイスとを備えると、可撓性および耐湿性に優れた、電子デバイスを備える積層体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の積層体は、柔軟層と、該柔軟層により包埋された電子デバイスとを備える積層体であって、前記柔軟層は、曲げ弾性率が80MPa以上1000MPa以下であり、且つ、40℃90%RHにおける水蒸気透過度が15[g/(m・24h)・100μm]以下である、ことを特徴とする。このように、所定の曲げ弾性率および水蒸気透過度を有する柔軟層により電子デバイスが包埋されると、可撓性および耐湿性に優れた、電子デバイスを備える積層体が得られる。
なお、本発明において、「包埋」は、完全に包囲している場合のみならず、例えば、電子デバイスに接続される引き出し線(ケーブル)の取り出し部分など、柔軟層で直接包囲されていない部分があってもよい。
また、本発明において、「柔軟層」は、電子デバイスを包埋する層であり、柔軟層が2層以上の層からなる場合、柔軟層を構成する層は、全て電子デバイスと接触する層である。
【0009】
ここで、本発明の積層体は、前記柔軟層は2層以上の層からなることが好ましい。前記柔軟層が2層以上の層からなれば、電子デバイスを容易に包埋することができる。
【0010】
ここで、本発明の積層体は、前記電子デバイスの一方側に位置する柔軟層と、前記電子デバイスの他方側に位置する他の柔軟層とが異なる柔軟層であることが好ましい。前記電子デバイスの一方側に位置する柔軟層と、前記電子デバイスの他方側に位置する他の柔軟層とが異なれば、異なる柔軟層をそれぞれ適した位置に配置することができ、もって積層体の機能を向上させることができる。
なお、本発明において、「柔軟層と、他の柔軟層とが異なる」は、例えば、厚さ、材質、色の少なくともいずれかが異なることを意味する。
【0011】
ここで、本発明の積層体は、前記柔軟層の少なくとも1層が、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。前記柔軟層の少なくとも1層が熱可塑性樹脂を含めば、積層体の可撓性をより向上させることができる。
【0012】
ここで、本発明の積層体は、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点が90℃以上であることが好ましい。前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点が90℃以上であれば、電子デバイスの発熱に耐えることができる。
【0013】
ここで、本発明の積層体は、前記熱可塑性樹脂が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物(直鎖状共役ジエン、分岐鎖状共役ジエン)に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とすることが好ましい。前記熱可塑性樹脂が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とすれば、積層体の可撓性をさらに向上させることができる。
なお、本発明において、「芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]」は、「芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を50質量%超含有する重合体ブロック[A]」を意味し、「鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]」は、「鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を50質量%超含有する重合体ブロック[B]」を意味する。
【0014】
ここで、本発明の積層体は、前記熱可塑性樹脂が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]の主鎖および側鎖における炭素-炭素不飽和結合の90%以上、および、芳香環における炭素-炭素不飽和結合の90%以上を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とすることが好ましい。前記熱可塑性樹脂が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]の主鎖および側鎖における炭素-炭素不飽和結合の90%以上、および、芳香環における炭素-炭素不飽和結合の90%以上を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とすれば、積層体の可撓性をより一層向上させることができる。
【0015】
ここで、本発明の積層体は、前記柔軟層の少なくとも1層が紫外線吸収剤を含むことが好ましい。前記柔軟層の少なくとも1層が紫外線吸収剤を含めば、積層体の紫外線による劣化を抑止することができる。
【0016】
ここで、本発明の積層体は、前記柔軟層の少なくとも1層は、全光線透過率が85%以上であり、且つ、385nm以下の分光光線の透過率が1%以下であることが好ましい。前記柔軟層の少なくとも1層は、全光線透過率が85%以上であり、且つ、385nm以下の分光光線透過率が1%以下であれば、積層体の透明性および耐候性を向上させることができる。
【0017】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の積層体の製造方法は、上述した積層体のいずれかを製造する積層体の製造方法であって、積層物を包装袋に封入した包装体を真空脱気する工程と、前記真空脱気した包装体を加熱および加圧して積層体を作製する工程とを含み、前記加熱の温度をT1、前記柔軟層のガラス転移温度もしくは融点をT2、前記包装袋のビカット軟化温度をT3、前記包装袋の溶融温度をT4とした場合、T1~T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係を満たす、ことを特徴とする。このように、T1~T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係を満たせば、可撓性および耐湿性に優れた積層体を製造することができる。
なお、本発明において、「積層物」は、「柔軟層と電子デバイスとを備えた積層物であって、加熱および加圧を行う前(例えば、オートクレーブを行う前)のもの」を意味し、「包装袋」は、「積層物を封入するための袋」を意味し、「包装体」は、「積層物を包装袋に入れたもの」を意味し、積層体は、「加熱および加圧した包装体における包装袋から取り出したもの」を意味する。
また、本発明において、「加熱の温度T1」は、貼り合わせが開始してから終了するまでの最高温度を意味し、「柔軟層のガラス転移温度もしくは融点T2」は、柔軟層が2層以上の層からなり、各層の材質(熱可塑性樹脂)が同じでない場合、柔軟層の材質(熱可塑性樹脂)のガラス転移温度もしくは融点のうち最も高い温度を意味し、また、柔軟層の材質が複数のガラス転移温度もしくは融点を有する場合には、最も高いガラス転移温度もしくは融点を意味し、「包装袋のビカット軟化温度T3」は、包装袋が複数層からなる場合、包装袋の最内層の材質のビカット軟化温度を意味し、「包装袋の溶融温度T4」は、包装袋が複数層からなる場合、包装袋の最内層の材質の溶融温度を意味する。
【0018】
ここで、本発明の積層体の製造方法は、前記包装袋がポリエチレン系樹脂からなる層を1層以上含むことが好ましい。前記包装袋がポリエチレン系樹脂を1層以上含めば、可撓性および耐湿性に優れた積層体をより確実に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の積層体によれば、可撓性および耐湿性を向上させることができる。
また、本発明の積層体の製造方法によれば、可撓性および耐湿性に優れた、電子デバイスを備える積層体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の積層体の実施形態の一例の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の積層体は、例えば、表示装置、発光装置、などとして用いられる。そして、本発明の積層体の製造方法は、例えば、表示装置、発光装置、などとして用いられる積層体を製造することができる。
【0022】
(積層体)
本発明の積層体は、所定の曲げ弾性率および水蒸気透過度を有する2層以上の柔軟層と、該2層以上の柔軟層により埋包された電子デバイスと、任意のその他の層とを備える、積層体である。
【0023】
本発明の積層体の一例を、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の積層体の実施形態の一例の断面を示す図であり、図1において、1は積層体を、2a,2b,2c,2dは柔軟層を、3は電子デバイスを、4は取り出し線を示す。図1に示すように、電子デバイス3は、4層の柔軟層2a,2b,2c,2dにより包埋されている。なおここで、2b,2cは、内部に電子デバイス3を挿入するための空隙部が形成された枠状の柔軟層である。
ここで、図1においては、柔軟層を4層備える積層体が示されているが、これに限定されるものではない。
また、積層体は、熱拡散性および意匠性を向上させるために、例えば、積層体1の裏面側の柔軟層2dの表面に、任意のその他の層として、アルミ箔等の金属層がさらに配置されていてもよく、また、積層体1の裏面側の柔軟層2dに金属フィラーが添加されていてもよい。
さらに、積層体1は、電子デバイス3の発熱に対する耐性を向上させるために、例えば、電子デバイス3に接触する柔軟層(図1では全ての柔軟層2a~2d)に耐熱性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
<柔軟層>
柔軟層は、所定の曲げ弾性率および水蒸気透過度を有する。これにより、積層体の可撓性および耐湿性を向上させることができる。
なお、電子デバイスを包埋する柔軟層が2層以上の層からなる場合、柔軟層を構成する2層以上の層は、全てが電子デバイスと接触する層であり、全てが所定の曲げ弾性率および水蒸気透過度を有する。つまり、柔軟層の外側に形成された電子デバイスと接触しない層は、所定の曲げ弾性率および水蒸気透過度を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0025】
本発明の積層体において、柔軟層により後述する電子デバイスが包埋されている。
包埋形態としては、特に制限はないが、包埋しやすさの観点から、2層以上の柔軟層により電子デバイスが包埋されることが好ましい。
またここで、積層体の機能を向上させる観点から、柔軟層が2層以上の層からなる場合、電子デバイスの一方側に位置する柔軟層と、電子デバイスの他方側に位置する他の柔軟層とが異なる柔軟層である、ことが好ましい。
【0026】
柔軟層の厚さは、特に制限はなく、0.01mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、0.1mm以上であることが特に好ましく、5mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることが特に好ましい。柔軟層の厚さを、上記好ましい範囲内とすることにより、電子デバイスの包埋性に優れた積層体を製造することができる。
また、柔軟層の厚さを、電子デバイス保護の観点から、後述する電子デバイスの厚さの1.0倍以上とすることが好ましい。
柔軟層は、シート表面に凹凸パターン、エンボス形状、段差、溝形状、等を備えて微小範囲で不均一な厚さ構造を有してもよい。
【0027】
柔軟層を作製する方法としては、特に制限はなく、例えば、溶融押出し成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、などが挙げられる。これらの中でも、柔軟層の表面へのエンボス形状の付形し易さの観点から、溶融押出し成形法が好ましい。
【0028】
柔軟層の表面は、平面状やエンボス加工を施した形状等とすることができる。また、柔軟層同士のブロッキングを防止するために、柔軟層の片面に、離型フィルムを重ねて保管することもできる。
【0029】
<<曲げ弾性率>>
柔軟層の曲げ弾性率は、80MPa以上であり、100MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがより好ましく、240MPa以上であることが特に好ましく、1000MPa以下であり、900MPa以下であることが好ましく、800MPa以下であることがより好ましく、700MPa以下であることが特に好ましい。
曲げ弾性率が80MPa以上であることにより、ハンドリング性が良好な積層体を製造することができ、曲げ弾性率が1000MPa以下であることにより、積層体の可撓性を向上させることができる。また、曲げ弾性率を前記より好ましい範囲内とすることにより、ハンドリング性と可撓性を両立した積層体を確実に製造することができる。
なお、「曲げ弾性率」は、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を射出成形により作製し、JIS K 7171に準拠して曲げ試験を行うことにより測定することができる。
【0030】
<<水蒸気透過度>>
柔軟層の40℃90%RHにおける水蒸気透過度は、15[g/(m・24h)・100μm]以下であり、14[g/(m・24h)・100μm]以下であることが好ましく、13[g/(m・24h)・100μm]以下であることがより好ましく、12[g/(m・24h)・100μm]以下であることが特に好ましい。
40℃90%RHにおける水蒸気透過度が15[g/(m・24h)・100μm]以下であることにより、積層体の耐湿性を向上させることができる。
なお、「水蒸気透過度」は、水蒸気透過テスター(LYSSY社製L80-5000型)を用いて、JIS K7129(A法)に基づいて温度:40℃、相対湿度:90%RHの条件下で測定することができる。
【0031】
柔軟層の少なくとも1層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、また、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。柔軟層の少なくとも1層が熱可塑性樹脂を含むことにより、積層体の可撓性をより向上させることができる。また、柔軟層の少なくとも1層が紫外線吸収剤を含むことにより、積層体の紫外線による劣化を防止することができる。
さらに、全ての柔軟層が熱可塑性樹脂を含むことがより好ましく、加熱により、電子デバイスを取り出して、電子デバイスのリサイクルを容易に行うことができる。
【0032】
<<熱可塑性樹脂>>
熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物から製造されるブロック共重合体およびその水素化物;芳香族ビニル化合物およびイソブテンもしくはイソブテン誘導体から製造されるブロック共重合体およびその水素化物;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチルペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチルペンテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・ビニルノルボルネン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン・ノルボルネン共重合体、エチレン・テトラシクロドデセン共重合体、ノルボルネン誘導体の開環メタセシス重合体水素化物、シクロヘキサジエン重合体等のシクロオレフィンポリマー;エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体を金属化合物と反応させて得られたアイオノマー樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルオキシド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のビスフェノール類と塩化カルボニル等のカルボニル化合物の反応で得られるポリカーボネート樹脂;ポリスチレン、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸トリシクロデシル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体等;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体等の含ハロゲン系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド等の芳香族系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6T等のポリアミド系樹脂;これらの熱可塑性樹脂にアルコキシシリル基や酸無水物基が導入されてなる変性熱可塑性樹脂;などが挙げられる。
これらの中でも、熱可塑性樹脂は、(i)芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物から製造されるブロック共重合体およびその水素化物が好ましく、(ii)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物(直鎖状共役ジエン、分岐鎖状共役ジエン)に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]であることがより好ましく、(iii)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]の主鎖および側鎖における炭素-炭素不飽和結合の90%以上、および、芳香環における炭素-炭素不飽和結合の90%以上を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]がさらに好ましく、(iv)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とすることが特に好ましく、(v)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]の主鎖および側鎖における炭素-炭素不飽和結合の90%以上、および、芳香環における炭素-炭素不飽和結合の90%以上を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とすることが最も好ましい。
また、熱可塑性樹脂は、溶媒に溶解することが好ましい。柔軟層の少なくとも1層における熱可塑性樹脂を溶媒に溶解させれば、柔軟層の少なくとも1層から電子デバイスを取り出して、電子デバイスのリサイクルを容易に行うことができる。
【0033】
<<<変性ブロック共重合体水素化物[E]>>>
変性ブロック共重合体水素化物[E]は、前駆体であるブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入された高分子である。
【0034】
-ブロック共重合体水素化物[D]-
本発明に用いる特定のブロック共重合体水素化物[D]は、前駆体であるブロック共重合体[C]を水素化してなる高分子であり、より詳しくは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]と鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]とを有する高分子であるブロック共重合体[C]を水素化してなる高分子である。
前記ブロック共重合体水素化物[D]は、主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合の好ましくは90%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上が水素化され、芳香環の炭素-炭素不飽和結合の好ましくは90%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上が水素化されている。なおここで、「主鎖および側鎖における炭素-炭素不飽和結合の水素化」は、「ブロック共重合体[C]における鎖状共役ジエン化合物に由来の二重結合の水素化」を意味し、「芳香環における炭素-炭素不飽和結合の水素化」は、「ブロック共重合体[C]における芳香環に由来の二重結合の水素化」を意味する。
水素化の程度を示す水素化率が高いほど、柔軟層の耐光性、耐熱性および透明性が良好である。
ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、ブロック共重合体[C]およびブロック共重合体水素化物[D]の1H-NMRを測定する方法等により求めることができる。
【0035】
炭素-炭素不飽和結合の水素化方法や反応形態等は、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を向上させることができる点で、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。重合体鎖切断反応の少ない水素化方法としては、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号等に記載された方法を挙げることができる。
【0036】
水素化反応終了後においては、水素化触媒および/または重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液からブロック共重合体水素化物[D]を回収することができる。回収されたブロック共重合体水素化物[D]の形態としては、特に制限はないが、ペレット形状にして、その後のアルコキシシリル基の導入反応に供することが好ましい。
【0037】
ブロック共重合体水素化物[D]の分子量としては、特に制限はないが、柔軟層の耐熱性や機械的強度の観点から、THFを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、35,000以上であることが好ましく、38,000以上であることがより好ましく、40,000以上であることが特に好ましく、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが特に好ましい。
また、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はないが、柔軟層の耐熱性や機械的強度の観点から、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることが特に好ましい。
【0038】
--ブロック共重合体[C]--
ブロック共重合体[C]は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[A]を1個以上と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を主成分として含有する重合体ブロック[B]を1個以上有する高分子であるが、重合体ブロック[A]2個以上と、重合体ブロック[B]1個以上とからなる高分子であることが好ましい。
ブロック共重合体[C]中における重合体ブロック[A]の数は、3個以下であることが好ましく、2個であることがより好ましい。
ブロック共重合体[C]中における重合体ブロック[B]の数は、2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
ブロック共重合体[C]中における重合体ブロック[A]および重合体ブロック[B]の数をそれぞれ上記範囲内にすることにより、ブロック共重合体[C]を水素化して得られるブロック共重合体水素化物[D]において、重合体ブロック[A]由来の水素化重合体ブロック(以下、「水素化重合体ブロック[Ah]」ということがある。)と重合体ブロック[B]由来の水素化重合体ブロックとの相分離が不明瞭となるのを防止して、水素化重合体ブロック[Ah]に基づく高温側のガラス転位温度(以下、「Tg2」ということがある。)が低下するのを防止し、ひいては、得られる柔軟層の耐熱性が低下するのを防止することができる。
なお、ブロック共重合体水素化物〔D〕の高温側のガラス転移温度Tg2としては、特に制限はなく、90℃~125℃が好ましい。
【0039】
ブロック共重合体[C]のブロックの形態は、特に制限はなく、鎖状型ブロックであっても、ラジアル型ブロックであってもよいが、機械的強度の観点から、鎖状型ブロックであることが好ましい。ここで、ブロック共重合体[C]の特に好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体([A]-[B]-[A])、である。
【0040】
重合体ブロック[A]の全量がブロック共重合体[C]に占める重量分率をwAとし、重合体ブロック[B]の全量がブロック共重合体[C]に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比wA:wBは30:70~60:40であることが好ましく、35:65~55:45であることがより好ましく、40:60~50:50であることが特に好ましい。
そして、ブロック共重合体〔C〕中の、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の全量がブロック共重合体[C]に占める質量分率と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位の全量がブロック共重合体〔C〕に占める質量分率との間の比率も、30:70~60:40であることが好ましく、35:65~55:45であることがより好ましく、40:60~50:50であることが特に好ましい。
wAの質量分率を60%以下にすることにより、得られる柔軟層の柔軟性(可撓性)が低下するのを防止することができる。一方、wAの質量分率を30%以上にすることにより、柔軟層の耐熱性が低下するのを防止することができる。
【0041】
ブロック共重合体[C]の分子量は、特に制限はないが、柔軟層の耐熱性や機械的強度の観点から、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、35,000以上であることが好ましく、38,000以上であることがより好ましく、40,000以上であることが特に好ましく、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが特に好ましい。
また、ブロック共重合体[C]の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はないが、柔軟層の耐熱性や機械的強度の観点から、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることが特に好ましい。
【0042】
ブロック共重合体[C]の製造方法は特に限定されず、例えば、国際公開第2003/018656号、国際公開第2011/096389号、等に記載の方法を採用することができる。
【0043】
〔重合体ブロック[A]〕
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔a〕を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[A]中における構造単位〔a〕の含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
重合体ブロック[A]中における構造単位〔a〕の含有量が90質量%以上であると、得られる柔軟層の耐熱性が低下するのを防止することができる。
【0044】
重合体ブロック[A]は、構造単位〔a〕以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、後述する鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕および/またはその他のビニル化合物に由来する構造単位〔j〕が挙げられる。重合体ブロック[A]中における鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕およびその他のビニル化合物に由来する構造単位〔j〕の合計含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
重合体ブロック[A]が構造単位〔a〕以外の構造単位〔b〕および/または構造単位〔j〕を含む場合は、重合体ブロック[A]は、通常、構造単位〔a〕、〔b〕、〔j〕を不規則的に繰り返してなる部分を有することが好ましい。
重合体ブロック[A]中における構造単位〔b〕および構造単位〔j〕の合計含有量が10質量%以下であると、得られる柔軟層の耐熱性が低下するのを防止することができる。
ブロック共重合体[C]が複数の重合体ブロック[A]を有する場合、重合体ブロック[A]同士は、互いに同一であってもよく、相異していてもよい。
【0045】
〔〔芳香族ビニル化合物〕〕
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン等の「置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類」;4-メトキシスチレン等の「置換基として炭素数1~6のアルコキシ基を有するスチレン類」;4-フェニルスチレン等の「置換基としてアリール基を有するスチレン類」;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;などが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、低吸湿性の観点から、スチレン、「置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類」等の「極性基を含有しない芳香族ビニル化合物」が好ましく、さらに、工業的な入手の容易さから、スチレンがより好ましい。
【0046】
〔〔その他のビニル化合物〕〕
その他のビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物および鎖状共役ジエン化合物以外のビニル化合物、例えば、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物、などが挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。また、これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、低吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテン、4,6-ジメチル-1-ヘプテン等の炭素数2~20の鎖状ビニル化合物(鎖状オレフィン);ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の炭素数5~20の環状ビニル化合物(環状オレフィン);1,3-シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン化合物;などであって、極性基を含有しないものが好ましい。
【0047】
〔重合体ブロック[B]〕
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[B]中における構造単位〔b〕の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
重合体ブロック[B]中における構造単位〔b〕の含有量が70質量%以上であると、得られる柔軟層は柔軟性(可撓性)を有するため好ましい。
【0048】
重合体ブロック[B]は、構造単位〔b〕以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、上述した芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔a〕および/または上述したその他のビニル化合物に由来する構造単位〔j〕が挙げられる。重合体ブロック[B]中における芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔a〕およびその他のビニル化合物に由来する構造単位〔j〕の合計含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
重合体ブロック[B]が構造単位〔b〕以外の構造単位〔a〕および/または構造単位[j]を含む場合は、重合体ブロック[B]は、通常、構造単位〔a〕、〔b〕、〔j〕を不規則的に繰り返してなる部分を有することが好ましい。
重合体ブロック[B]中における構造単位〔a〕および構造単位〔j〕の合計含有量が30質量%以下であると、得られる柔軟層の柔軟性(可撓性)が損なわれるのを防止することができる。
ブロック共重合体[C]が重合体ブロック[B]を複数有する場合、重合体ブロック[B]同士は、互いに同一であってもよく、相異なっていてもよい。
【0049】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕の一部が、1,2-結合および/または3,4-結合で重合した構造単位(1,2-および/または3,4-付加重合由来の構造単位)を有し、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕の残部が、1,4-結合(1,4-付加重合由来の構造単位)で重合した構造単位を有していてもよい。
【0050】
1,2-結合および/または3,4-結合で重合した鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物、必要に応じて、芳香族ビニル化合物、その他のビニル化合物を、ランダム化剤として電子供与原子を有する特定の化合物の存在下で重合させることにより得ることができる。1,2-結合および/または3,4-結合で重合した鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位の含有量は、ランダム化剤の添加量により制御することができる。
【0051】
電子供与原子(例えば、酸素(O)、窒素(N))を有する化合物としては、エーテル化合物、アミン化合物、ホスフィン化合物、などが挙げられる。これらの中でも、ランダム共重合体ブロックの分子量分布を小さくすることができ、その水素添加反応を阻害し難いという観点から、エーテル化合物が好ましい。
【0052】
電子供与原子を有する化合物の具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジ(2-テトラヒドロフリル)メタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、テトラメチルエチレンジアミン、などが挙げられる。これらの電子供与原子を有する化合物の含有量は、鎖状共役ジエン化合物100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、10質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
【0053】
鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、クロロプレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、低吸湿性の観点から、極性基を含有しない鎖状共役ジエン化合物が好ましく、さらに、工業的な入手の容易さから、1,3-ブタジエン、イソプレンがより好ましい。
【0054】
-変性ブロック共重合体水素化物[E]-
変性ブロック共重合体水素化物[E]は、上記ブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入された高分子である。
ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入することにより、変性ブロック共重合体水素化物[E]に電子デバイスに対する充分な接着性が付与される。
【0055】
--アルコキシシリル基--
導入するアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の、トリ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基等の、(炭素数1~20アルキル)ジ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基等の、(アリール)ジ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;などが挙げられる。
また、アルコキシシリル基は、ブロック共重合体水素化物[D]に、炭素数1~20のアルキレン基や、炭素数2~20のアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していてもよい。
【0056】
〔アルコキシシリル基の導入量〕
ブロック共重合体水素化物[D]100質量部に対するアルコキシシリル基の導入量としては、特に制限はなく、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることが特に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
アルコキシシリル基の導入量が10質量部以下であると、得られる変性ブロック共重合体水素化物[E]をシート状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、ゲル化したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下したりするのを防止することができ、また、アルコキシシリル基の導入量が0.1質量部以上であると、シートを電子デバイスと接着するのに十分な接着力が得られないという不具合が生じるのを防止することができる。
アルコキシシリル基が導入されたことは、アルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物[E]のIRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、アルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物[E]の1H-NMRスペクトルにて算出することができる。
【0057】
〔アルコキシシリル基の導入方法〕
ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入する方法としては、特に制限はなく、例えば、ブロック共重合体水素化物[D]に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応(グラフト化反応)させることにより、アルコキシシリル基を導入する方法、より詳細には、ブロック共重合体水素化物[D]、エチレン性不飽和シラン化合物および有機過酸化物からなる混合物を、二軸混練機にて溶融状態で所望の時間混練する方法、などが挙げられる。
【0058】
前述した導入方法で用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、ブロック共重合体水素化物[D]とグラフト化反応し、ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
グラフト化反応に使用する有機過酸化物としては、特に制限はないが、1分間半減期温度が170℃以上190℃以下のものが好ましく、例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキシド、1,4-ビス(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
二軸混練機による混練温度としては、特に制限はないが、180℃以上であることが好ましく、185℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることが特に好ましく、220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが特に好ましい。
また、加熱混練時間としては、特に制限はないが、0.1分間以上であることが好ましく、0.2分間以上であることがより好ましく、0.3分間以上であることが特に好ましく、10分間以下であることが好ましく、5分間以下であることがより好ましく、2分間以下であることが特に好ましい。
加熱混練温度および加熱混練時間(滞留時間)を上記好ましい範囲内にすることにより、連続的な混練および押出しを効率的に行うことができる。
【0061】
得られた変性ブロック共重合体水素化物(E)の形態としては、特に制限はないが、通常は、ペレット形状にして、その後の成形加工や添加剤の配合に供することが好ましい。
【0062】
変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量としては、導入されるアルコキシシリル基の分子量が、通常、小さいため、原料として用いたブロック共重合体水素化物[D]の分子量と実質的には変わらない。ただし、ブロック共重合体水素化物[D]に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応(グラフト化反応)させるため、重合体の架橋反応および切断反応が併発し、変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量分布の値は大きくなる。
【0063】
変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量としては、特に制限はないが、柔軟層の耐熱性や機械的強度の観点から、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、35,000以上であることが好ましく、38,000以上であることがより好ましく、40,000以上が特に好ましく、200,000以下が好ましく、150,000以下がより好ましく、100,000以下が特に好ましい。
また、変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量分布(Mw/Mn)としては、特に制限はないが、柔軟層の耐熱性や機械的強度の観点から、3.5以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。
【0064】
<<<ガラス転移温度Tg、融点>>>
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgもしくは融点は、電子デバイスの発熱に対する耐熱性の観点から、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらにより好ましく、110℃以上であることが特に好ましく、電子デバイスの耐熱性の観点から、160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらにより好ましく、125℃以下であることが特に好ましい。
なお、「ガラス転移温度Tg」は、例えばJIS-K7244-2法に基づき粘弾性測定装置(製品名「ARES」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を使用して、周波数1Hz、-100℃から+150℃の範囲で、昇温速度5℃/分で動的粘弾性特性を測定し、損失正接tanδのピークトップ温度より、算出することができる。
また、「融点」は、例えば、JIS K7121に基づき、示差走査熱量測定DSCにより測定することができる。
【0065】
<<紫外線吸収剤>>
柔軟層の少なくとも1層に紫外線吸収剤を配合することにより、より紫外線を遮蔽することができる。
紫外線吸収剤の具体例としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、などが挙げられる。
【0066】
<<その他の添加剤>>
柔軟層の少なくとも1層に添加するその他の添加剤としては、粘着付与剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、光安定剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
柔軟層に添加剤を配合する方法としては、一般に用いられる公知の方法が適用でき、例えば、(i)柔軟層のペレットおよび添加剤を、タンブラー、リボンブレンダー、ヘンシェルタイプミキサー等の混合機を使用して均等に混合した後、二軸押出機等の連続式溶融混練機により溶融混合し、押出すことで、ペレット状にする方法や、(ii)柔軟層を、サイドフィーダーを備えた二軸押出機により、サイドフィーダーから各種添加剤を連続的に添加しながら、溶融混練し、押出すことで、ペレット状にする方法、が挙げられる。これらの方法によって、添加剤を柔軟層に均一に分散させたものを製造することができる。
【0068】
-粘着付与剤-
粘着付与剤を配合することにより、粘着性や接着性を付与することができる。
粘着付与剤の具体例としては、例えば、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ-1-オクテン、エチレン-α-オレフィン共重合体等の低分子量体およびその水素化物;ポリイソプレン、ポリイソプレン-ブタジエン共重合体等の低分子量体およびその水素化物;などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、透明性および耐光性を維持し、充填性の効果に優れている点で、低分子量のポリイソブチレン水素化物、低分子量のポリイソプレン水素化物、が好ましい。
【0069】
粘着付与剤の添加量としては、要求される粘着性に応じて適宜選定できるが、柔軟層の取り扱いの容易性の観点から、柔軟層100質量部に対して、30質量部以下とすることが好ましく、20重量部以下とすることがより好ましい。
【0070】
-赤外線吸収剤-
赤外線吸収剤を配合することにより、赤外線を遮蔽することができる。
赤外線吸収剤の具体例としては、酸化錫、アルミニウムドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛、酸化チタン、ニオブドープ酸化チタン、酸化タングステン、ナトリウムドープ酸化タングステン、セシウムドープ酸化タングステン、タリウムドープ酸化タングステン、ルビジウムドープ酸化タングステン、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム等の金属酸化物微粒子;フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物、ジイモニウム化合物、ポリメチン化合物、ジフェニルメタン化合物、アントラキノン化合物、ペンタジエン化合物、アゾメチン化合物、6ホウ化ランタン等の近赤外線吸収色素;などが挙げられる。
【0071】
-酸化防止剤-
酸化防止剤を配合することにより、加工性等を高めることができる。
酸化防止剤の具体例としては、リン系酸化防止剤、フェノ-ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0072】
-ブロッキング防止剤-
ブロッキング防止剤を配合することにより、変性ブロック共重合体水素化物(E)を主成分とするペレットのブロッキングを防止することができる。
ブロッキング防止剤の具体例としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウム、ミリスチン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸バリウム、ベヘン酸亜鉛、モンタン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、などが挙げられる。
【0073】
-光安定剤-
光安定剤を配合することにより、耐久性を高めることができる。
光安定剤の具体例としては、ヒンダードアミン系光安定剤、などが挙げられる。
【0074】
紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、光安定剤等の添加量としては、これらの添加剤の合計添加量が、柔軟層100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、0.05質量部以上であることが特に好ましく、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
【0075】
柔軟層は、所定の全光線透過率および385nm以下の分光光線の透過率を有することが好ましい。これにより、積層体の透明性および耐候性を向上させることができる。
なお、柔軟層が2層以上の層からなる場合は、少なくとも1層の柔軟層が所定の全光線透過率および385nm以下の分光光線透過率を有することが好ましく、全ての柔軟層が所定の全光線透過率および385nm以下の分光光線透過率を有することがより好ましい。
【0076】
<<全光線透過率>>
少なくとも1層の柔軟層の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
全光線透過率を85%以上とすることにより、積層体の透明性を向上させることができる。
なお、「全光線透過率」は、分光光度計(V-670、日本分光社製)を使用して、JIS K7361に従い測定することができる。
【0077】
<<385nm以下の分光光線透過率>>
少なくとも1層の柔軟層の385nm以下の分光光線透過率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
385nm以下の分光光線透過率を10%以下とすることにより、積層体の耐候性を向上させることができる。
なお、「385nm以下の分光光線の透過率」は、分光光度計(V-670、日本分光社製)を使用して測定することができる。
【0078】
<電子デバイス>
電子デバイスの具体例としては、LED搭載テープ、有機EL素子、液晶素子、プリント基板、などが挙げられる。電子デバイスは、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、脂環式オレフィンポリマー等のフレキシブル基板を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0079】
(積層体の製造方法)
積層体は、一般的に、柔軟層となる樹脂シートに電子デバイスを挟んで樹脂シート同士を接着すること等によって製造される。
本発明の積層体の製造方法は、上述した本発明の積層体を製造する積層体の製造方法であって、積層物を包装袋に封入した包装体を真空脱気する工程と、真空脱気した包装体を加熱および加圧して積層体を作製する工程と、を含む。
【0080】
<真空脱気工程>
真空脱気工程は、積層物を包装袋に封入した包装体を真空脱気する工程である。
【0081】
<<包装袋>>
包装袋は、ビカット軟化温度および溶融温度が後述する所定の関係を満たす限り、特に制限はないが、ポリエチレン系樹脂からなる層を1層以上含むことが好ましく、ポリエチレン系樹脂からなる層を最内層にすることがより好ましい。
【0082】
<<<ビカット軟化温度>>>
ビカット軟化温度T3としては、特に制限はないが、包埋性の観点から、80℃以上であることが好ましく、85℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることが特に好ましく、製造される積層体の寸法安定性の観点から、135℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。
【0083】
「ビカット軟化温度」は、JIS K7206A法に基づいて、東洋精機製HDT(ヒートディストーションテスター)装置を用いて測定することができる。この測定方法は、プラスチック試験片に10Nの試験荷重をかけて、昇温速度50℃/時間で伝熱媒体を昇温させ、針状圧子が試験片の表面から1mm侵入したときの伝熱媒体の温度を測定するものである。ここで、「ビカット軟化温度」に達した樹脂は、容易に変形を生じる。つまり、包装袋がビカット軟化温度に達した場合、包装袋の熱収縮や伸びなど変形にともなう応力は極めて小さくなる。
なおここで、包装袋のビカット軟化温度は、包装袋が複数の層からなる場合、包装袋の最内層の材料のビカット軟化温度を意味する。
【0084】
<<<溶融温度>>>
溶融温度T4としては、特に制限はないが、電子デバイスの耐熱温度の観点から、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、135℃以下
であることが特に好ましい。
【0085】
「溶融温度」は、示差走査熱量計(DSC)(日立ハイテクサイエンス株式会社製、DSC6200)を用いて融点ピークを溶融温度として測定することができる。溶融温度に達した樹脂は液状になり、包装袋の形状を保持できない。よって、溶融温度に達した包装袋の状態は、ビカット軟化温度に達した包装袋が形状を保持している状態とは明確に異なる。
なおここで、包装袋の溶融温度は、包装袋が複数の層からなる場合、包装袋の最内層の材料の溶融温度を意味する。
【0086】
<<<ポリエチレン系樹脂>>>
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、長鎖分岐を有する直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、および、それらの混合物、などが挙げられる。
【0087】
<加熱加圧工程>
加熱加圧工程は、真空脱気した包装体を加熱および加圧して積層体を作製する工程である。ここで、加熱および加圧は、オートクレーブ装置で行うオートクレーブ処理であることが好ましい。
加熱の温度をT1、2層以上の柔軟層のガラス転移温度もしくは融点をT2、包装袋のビカット軟化温度をT3、包装袋の溶融温度をT4とした場合、T1~T4のそれぞれの温度が、T4>T1≧T2≧T3の関係を満たす。
つまり、例えば、ビカット軟化温度(T3)95℃、溶融温度(T4)130℃のポリエチレンフィルムで包装袋を作製し、ガラス転移温度Tg(T2)105℃の柔軟層を用いて、オートクレーブで加熱温度(T1)110℃で張り合わせを行うことにより、昇温中は包装袋のビカット軟化温度(T3)95℃以下であるため、真空を保つ。貼り合せ温度(加熱温度(T1)110℃)に到達すると、包装袋のビカット軟化温度(T3)95℃を超えており、柔軟層端部に応力が強くかかることはない。また、貼り合せ温度(加熱温度(T1)110℃)は、包装袋の溶融温度(T4)130℃以下であり、柔軟層のガラス転移温度Tg(T2)105℃よりも高いため、包装袋が溶け落ちることもなく、良好に貼り合わせが終了する。
【0088】
加熱温度T1としては、特に制限はないが、包埋性の観点から、100℃超であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらにより好ましく、115℃以上であることが特に好ましく、電子デバイスの耐熱性の観点から、150℃未満であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、135℃以下であることがさらにより好ましく、128℃以下であることが特に好ましい。
【0089】
加熱加圧工程における加圧時の圧力としては、特に制限はないが、0.2MPa以上であることが好ましく、また、0.8MPa以下であることが好ましい。
【実施例
【0090】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。本実施例における測定乃至評価は、以下の方法によって行った。
【0091】
(1)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体[C]、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量を、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として40℃において測定し、標準ポリスチレン換算値を算出した。なお、測定装置としては、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)装置(HLC8320GPC、東ソー社製)を用いた。
【0092】
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[D]の主鎖、側鎖および芳香環の水素化率は、ブロック共重合体[C]およびブロック共重合体水素化物[D]の1H-NMRを測定して算出した。
【0093】
(3)wAとwBとの比(wA:wB)
重合体ブロック[A]の全量がブロック共重合体[C]全体に占める質量分率をwAとし、重合体ブロック[B]の全量がブロック共重合体[C]全体に占める質量分率をwBとしたときの、「wAとwBとの比(wA:wB)」については、ブロック共重合体[C]を製造する過程において、各重合体ブロックの重合に用いた芳香族ビニル化合物、鎖状共役ジエン化合物およびその他のビニル化合物の部数と、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定された各重合体ブロック重合終了段階での用いたモノマーの重合体への重合転化率により、各重合体ブロックの質量分率を算出した。
【0094】
(4)曲げ弾性率
柔軟層としての柔軟シート[S]のシート材料である、後述の変性ブロック共重合体水素化物[E1]、柔軟性樹脂組成物[F2]、樹脂組成物[E2]を射出成形して、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を作製し、JIS K 7171に準拠して曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した。
【0095】
(5)水蒸気透過度
柔軟層としての柔軟シート[S]のシート材料である、後述の変性ブロック共重合体水素化物[E1]、柔軟性樹脂組成物[F2]、樹脂組成物[E2]を射出成形して、厚さ300μm~350μmの試験片を作製し、JIS Z0208の方法に準じて、40℃、90%RHの環境条件で測定した。シート材料の特性を明確にするために、実測値から、シート厚さ100μmでの値に換算して比較した。
柔軟シート[S]の水蒸気透過度(透湿度)は、水蒸気透過テスター(LYSSY社製L80-5000型)を用いて、JIS K7129(A法)に基づいて温度:40℃、相対湿度:90%RHの条件下で測定した。
【0096】
(6)全光線透過率
柔軟層としての柔軟シート[S]の全光線透過率を、分光光度計(V-670、日本分光社製)を使用して、JIS K7361に従い測定した。
柔軟シート[S]を、2枚のポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略す)製離形フィルムに挟み、真空ラミネータ(PVL0202S、日清紡メカトロニクス社製)を使用して、150℃で10分間加熱加圧処理したシートを測定対象として使用した。
【0097】
(7)波長385nmの光線透過率
柔軟層としての柔軟シート[S]の波長385nmの透過率を、分光光度計(V-670、日本分光社製)を使用して測定した。
柔軟シート[S]を、2枚のポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略す)製離形フィルムに挟み、真空ラミネータ(PVL0202S、日清紡メカトロニクス社製)を使用して、150℃で10分間加熱加圧処理したシートを測定対象として使用した。
【0098】
(8)フレキシブル積層体の製造
電子デバイスとしては、厚さ3mm、幅8mmの高輝度SMD3528型LEDチップを、厚さ25μm、幅10mm、長さ30cmのポリイミド基板に実装した、LED搭載テープ(L)を使用した。
柔軟シート[S]1枚以上/LED搭載テープ[L]/柔軟シート[S]1枚以上の順に積み重ねた積層物を、所定の構成を有する包装袋に入れ、小型真空包装器(「T-100」、日本包装機械(株)製)を用いて、真空包装を行って、真空包装体を得た。
その後、得られた真空包装体を取り出し、小型オートクレーブ(「タンデライオン」、羽生田鉄工所(株)製)を用いて、保持温度110℃、保持圧力0.3Mpa、保持時間20分、取り出し温度40℃にて加圧加熱を行い、電子デバイスが柔軟層により包埋された積層体[Z]を製造した。
【0099】
(9)フレキシブル積層体の寸法安定性(積層体初期評価の「寸法安定性」)
上記(8)で製造した積層体[Z]の端部および中央部の厚さを測定し、下記基準で寸法安定性を評価した。
<評価基準>
良好○:下記式(1)の値が0.1以下である
許容△:下記式(1)の値が0.1超0.2以下である
不良×:下記式(1)の値が0.2超である
2×|端部の厚さ―中央部の厚さ|/(端部の厚さ+中央部の厚さ)・・・式(1)
【0100】
(10)フレキシブル積層体の電子デバイス包埋性(積層体初期評価の「包埋性」)
上記(8)で製造した積層体[Z]を目視で観察を行い、下記基準で包埋性を評価した。
<評価基準>
良好○:電子デバイスと柔軟層との界面隙間なし
不良×:電子デバイスと柔軟層との界面隙間あり
【0101】
(11)フレキシブル積層体の点灯試験(積層体初期評価の「点灯試験」)
上記(8)で製造した積層体[Z]について点灯試験を行い、下記基準で評価した。
<評価基準>
良好○:電子デバイス中のLED素子が全て点灯
不良×:電子デバイス中に点灯しないLED素子が一つでもあり
【0102】
(12)フレキシブル積層体の可撓性試験
上記(8)で製造した積層体[Z]を直径150mmのコンクリート製円柱に沿わせて曲げた後に、下記基準で外観目視評価および点灯試験評価を行った。
<評価基準(外観目視評価)>
良好○:積層体[Z]にヒビ等の外観変化がなし
不良×:積層体[Z]にヒビ等の外観変化があり
<評価基準(点灯試験評価)>
良好○:電子デバイス中のLED素子が全て点灯
不良×:電子デバイス中に点灯しないLED素子が一つでもあり
【0103】
(13)フレキシブル積層体の耐湿性試験
上記(8)で製造した積層体[Z]を40℃の水中に100時間水没させた後に、下記基準で点灯試験評価を行った。
<評価基準>
良好○:電子デバイス中のLED素子が全て点灯
不良×:電子デバイス中に点灯しないLED素子が一つでもあり
【0104】
(14)フレキシブル積層体の耐候性試験
上記(8)で製造した積層体[Z]の視認側面に対し、キセノンランプ(X75SC、スガ試験機製)にて、照度60W/m、ブラックパネル温度63℃で光を300時間照射した。
照射後の積層体[Z]の光照射面側を、曲率半径Rが75mmになるように、ゆっくりと曲げ、目視にて積層体[Z]のヒビ割れ等の欠陥発生有無の確認を行い、光照射から確認までの操作を計10サイクル行い、下記基準で評価した。
<評価基準>
良好○:欠陥発生なし
許容△:欠陥が5サイクル以降に発生
不良×:欠陥が4サイクル以内に発生
【0105】
[製造例1]
<柔軟シート[S1]の製造>
攪拌装置を備え、内部が十分に窒素置換された反応器に、脱水シクロヘキサン400部、脱水スチレン10部、およびジブチルエーテル0.475部を投入した。全容を60℃で攪拌しながら、n-ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.91部を加えて重合を開始させた。引続き、全容を60℃で攪拌しながら、脱水スチレン15部を40分間に亘って連続的に反応器内に添加して重合反応を進め、添加終了後、そのまま、さらに、60℃で20分間全容を攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により測定したところ、この時点での重合転化率は99.5%であった。
次に、反応液に、脱水イソプレン50部を130分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分間攪拌を続けた。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレン25部を70分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま60分攪拌した。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。
【0106】
ここで、反応液に、イソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させ、重合体溶液を得た。重合体溶液に含まれるブロック共重合体[C1]は、[A]-[B]-[A]型のトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は45,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、wA:wB=50:50であった。
【0107】
次に、上記の重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)4.0部、および脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液に含まれるブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は47,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0108】
水素化反応終了後、反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、得られた溶液に、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリトリトール・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「AO60」、ADEKA社製)0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液からシクロヘキサン、キシレンおよびその他の揮発成分を除去した。溶融ポリマーをダイからストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりカッティングしてブロック共重合体水素化物[D1]からなるペレット94部を得た。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は47,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、水素化率は、「主鎖および側鎖」並びに「芳香族」のいずれもほぼ100%であった。
【0109】
得られたブロック共重合体水素化物[D1]のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部、および、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60~70秒で混練した。得られた混練物を、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット97部を得た。
【0110】
変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解させた後、得られた溶液を脱水メタノール400部中に注いで、変性ブロック共重合体水素化物[E1]を凝固させた。凝固物を25℃で真空乾燥して、精製した変性ブロック共重合体水素化物[E1]9.0部を得た。
【0111】
変性ブロック共重合体水素化物[E1]のFT-IRスペクトルには、1090cm-1にSi-OCH基、825cm-1と739cm-1にSi-CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのSi-OCH基、Si-CH基に由来する吸収帯(1075cm-1、808cm-1、および766cm-1)と異なる位置に観察された。
また、変性ブロック共重合体水素化物[E1]のH-NMRスペクトル(重クロロホルム中)を測定したところ、3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づくピークが観察された。ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[D1]100部に対してビニルトリメトキシシラン1.9部が結合したことが確認された。変性ブロック共重合体水素化物[E1]のガラス転移温度T2は121℃であった。
【0112】
上記で得た変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット100部に、紫外線吸収剤である(2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-tert-ブチル-p-クレゾール(住友化学社製、製品名「SUMISORB(登録商標)300」)0.2部を添加して、均一に混合した。この混合物を直径37mmのスクリューを備えた二軸混練機(東芝機械社製、TEM37B)を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅400mm)、キャストロール(エンボスパターン付き)、およびシート引き取り装置を備えた押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、キャストロール温度60℃の条件にて押出し成形し、変性ブロック共重合体水素化物[E1]を主成分とする柔軟シート[S1](厚さ760μm)を得た。
柔軟シート[S1]は、押出しシートの片面をニップロールでエンボスロールに押し当てることにより、エンボスパターンを転写した。得られた柔軟シート[S1]はロールに巻き取り回収した。
【0113】
[製造例2]
<柔軟シート[S2]の製造>
製造例1で得た変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット100部に、紫外線吸収剤である2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-tert-ブチル-p-クレゾール(住友化学社製、製品名「SUMISORB(登録商標)300」)0.2部を添加して、均一に混合した。この混合物(液状物)を添加できるサイドフィーダーを備えた二軸押出機(製品名「TEM37BS」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度190℃で押し出した。一方、サイドフィーダーから粘着付与剤としてイソブテン重合体水素化物(製品名「日油ポリブテンSH10」、日油社製)を、変性ブロック共重合体水素化物[E1]100部に対して10部の割合となるように連続的に添加して、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングして変性ブロック共重合体水素化物[E1]を主成分とする柔軟性樹脂組成物[F2]のペレット104部を得た。柔軟性樹脂組成物[F2]のガラス転移温度T2は110℃であった。
【0114】
柔軟性樹脂組成物[F2]のペレットを使用する以外は、製造例1と同様の押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度170℃、Tダイ温度170℃、キャストロール温度50℃の条件にて押出し成形し、変性ブロック共重合体水素化物[E1]を主成分とする柔軟シート[S2](厚さ760μm、幅330mm)を得た。
【0115】
[製造例3]
<柔軟シート[S3]の製造>
エチレン・酢酸ビニル共重合体(エバフレックス(登録商標)EV250、三井・デュポンポリケミカル社製、酢酸ビニル含有量:28%、融点:72℃)のペレットを使用して、有機過酸化物として2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ(登録商標)25B、日油社製)0.1部、および、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(M-60、日本化成社製)0.5部を添加し、二軸混練機を用いて、樹脂温度100℃で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、樹脂組成物[E2]のペレット94部を得た。樹脂組成物[E2]の融点T2は71℃であった。
樹脂組成物[E2]のペレットを使用して、製造例1と同様の押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度100℃、Tダイ温度100℃、キャストロール温度25℃の条件にて押出し成形し、樹脂組成物[E2]を主成分とする柔軟シート[S3](厚さ760μm、幅330mm)を得た。
【0116】
[製造例4]
<柔軟シート[S4]の製造>
製造例1で得た変性ブロック共重合体水素化物[E1]を、製造例1と同様の押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、キャストロール温度60℃の条件にて押出し成形し、変性ブロック共重合体水素化物[E1]を主成分とする柔軟シート[S4](厚さ760μm)を得た。
柔軟シート[S4]は、押出しシートの片面をニップロールでエンボスロールに押し当てることにより、エンボスパターンを転写した。得られた柔軟シート[S4]はロールに巻き取り回収した。
【0117】
(実施例1)
製造例1で得られた柔軟シート[S1]について、水蒸気透過度、全光線透過率、および385nm光線透過率を測定した。また、曲げ弾性率測定用の試験片を作製し、曲げ弾性率測定を実施した。測定結果を表1に示す。
次に、フレキシブル層1:柔軟シート[S1]3枚/LED搭載テープ[L]/フレキシブル層2:柔軟シート[S4]1枚の順に積み重ねた後、この積層物を包装袋[P-1]に入れた。なお、包装袋[P-1]は、リニアローデンシティポリエチレンフィルム(「LL-XHT」、二村化学(株)製、ビカット軟化温度T3:95℃、溶融温度T4:130℃)60μm厚を300mm×300mmのサイズに裁断し、インパルスシーラーを用いて、シール幅10mmにて3方をシールして作製した。なお、本実施例における「柔軟層」は、LED搭載テープ[L]とフレキシブル層2とからなる電子デバイスと接触する柔軟シートである。
その後、密封包装した積層物(包装体)をオートクレーブ装置に入れて、30分間、加熱温度(T1)123℃、圧力0.8MPaで加熱加圧し、電子デバイスが柔軟シートにより包埋された積層体[Z1]を製造した。
得られた積層体[Z1]について、寸法安定性評価、電子デバイス包埋性評価、点灯試験、可撓性試験、耐湿性試験、耐候性試験を行った。結果を下記および表1に示す。
評価結果は全て「良好○」であった。
【0118】
(実施例2)
実施例1において、オートクレーブ装置での条件を、加熱温度(T1)128℃、圧力0.2MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電子デバイスが柔軟シートにより包埋された積層体[Z2]を製造した。
得られた積層体[Z2]について、寸法安定性評価、電子デバイス包埋性評価、点灯試験、可撓性試験、耐湿性試験、耐候性試験を行った。結果を下記および表1に示す。
評価結果は全て「良好○」であった。
【0119】
(実施例3)
製造例2で得られた柔軟シート[S2]について、水蒸気透過度、全光線透過率、および385nm光線透過率を測定した。また、曲げ弾性率測定用の試験片を作製し、曲げ弾性率測定を実施した。測定結果を表1に示す。
次に、フレキシブル層1:柔軟シート[S2]3枚/LED搭載テープ[L]/フレキシブル層2:柔軟シート[S2]1枚の順に積み重ねた後、この積層物を実施例1で用いた包装袋[P-1]に入れた。
その後、密封包装した積層物をオートクレーブに入れて、30分間、加熱温度(T1)115℃、圧力0.8MPaで加熱加圧し、電子デバイスが柔軟シートにより包埋された積層体[Z3]を製造した。
得られた積層体[Z3]について、寸法安定性評価、電子デバイス包埋性評価、点灯試験、可撓性試験、耐湿性試験、耐候性試験を行った。結果を下記および表1に示す。
評価結果は全て「良好○」であった。
【0120】
(実施例4)
製造例4で得られた柔軟シート[S4]について、水蒸気透過度、全光線透過率、および385nm光線透過率を測定した。また、曲げ弾性率測定用の試験片を作製し、曲げ弾性率測定を実施した。測定結果を表1に示した。
次に、フレキシブル層1:柔軟シート[S4]3枚/LED搭載テープ[L]/フレキシブル層2:柔軟シート[S4]1枚の順に積み重ねた後、この積層物を実施例1で用いた包装袋[P-1]に入れた。
その後、密封包装した積層物をオートクレーブに入れて、30分間、加熱温度(T1)125℃、圧力0.4MPaで加熱加圧し、電子デバイスが柔軟シートにより包埋された積層体[Z4]を製造した。
得られた封止体[Z4]について、寸法安定性評価、電子デバイス包埋性評価、点灯試験、可撓性試験、耐湿性試験、耐候性試験を行った。結果を下記および表1に示す。
寸法安定性評価、電子デバイス包埋性評価、点灯試験、可撓性試験、耐湿性試験は「良好○」であったが、耐候性試験を行ったところ、5サイクル目に僅かに欠陥が発生し、「許容△」であった。
【0121】
(比較例1)
製造例3で得られた柔軟シート[S3]について、水蒸気透過度、全光線透過率、および385nm光線透過率を測定した。また、曲げ弾性率測定用の試験片を作製し、曲げ弾性率測定を実施した。測定結果を表1に示した。
次に、フレキシブル層1:柔軟シート[S3]2枚/LED搭載テープ[L]/フレキシブル層2:柔軟シート[S3]1枚の順に積み重ねた後、この積層物を実施例1で用いた包装袋[P-1]に入れた。
その後、密封包装した積層物をオートクレーブに入れて、30分間、加熱温度(T1)115℃、圧力0.8MPaで加熱加圧し、電子デバイスが柔軟シートにより包埋された積層体[Z5]を製造した。
得られた積層体[Z5]について、寸法安定性評価、電子デバイス包埋性評価、点灯試験、可撓性試験、耐湿性試験を行った。なお、耐候性試験は実施しなかった。結果を下記および表1に示す。
電子デバイス包埋性評価、点灯試験、可撓性試験は「良好○」であったが、寸法安定性評価が「不良×」であり、また、耐湿性試験では、点灯しないLED素子があったため、「不良×」であった。
【0122】
(実施例5)
実施例1において、積層物製造時に使用する包装袋を、キャストポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工株式会社製、トレファン「ZK100」、ビカット軟化温度T3:150℃、溶融温度T4:165℃)60μm厚を300mm×300mmのサイズに裁断し、インパルスシーラーを用いて、シール幅10mmにて3方をシールして作製した包装袋[P-2]に変更したこと以外は、実施例1と同様に、積層体[Z6]を製造した。
得られた積層体[Z6]について、寸法安定性評価、電子デバイス包埋性評価、点灯試験、可撓性試験、耐湿性試験を行った。なお、耐候性試験は実施しなかった。結果を下記および表1に示す。
電子デバイス包埋性評価、点灯試験、可撓性試験、耐湿性試験は「良好○」であったが、寸法安定性評価は「許容△」であった。
【0123】
【表1】
【0124】
表1より、所定の曲げ弾性率および水蒸気透過度を有する柔軟シートと、柔軟シートに包埋された電子デバイスとを備える実施例1~5の積層体は、所定の曲げ弾性率および水蒸気透過度を有する柔軟シートを有さない比較例1の積層体と比較して、可撓性および耐湿性が良好であり、さらに、寸法安定性も良好であることが分かる。
また、表1より、紫外線吸収剤を配合して、柔軟シートの光透過性を制御した実施例1~3の積層体は、耐候性に優れた積層体が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の積層体によれば、可撓性および耐湿性を向上させることができる。
また、本発明の積層体の製造方法によれば、可撓性および耐湿性に優れた、電子デバイスを備える積層体を製造することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 積層体
2a 柔軟層
2b 柔軟層
2c 柔軟層
2d 柔軟層
3 電子デバイス
4 取り出し線
図1