(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20230111BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20230111BHJP
G05G 1/02 20060101ALI20230111BHJP
G06F 3/0488 20220101ALI20230111BHJP
G06F 3/04842 20220101ALI20230111BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G05G5/03 Z
G05G1/02 Z
G06F3/0488
G06F3/04842
B06B1/06 A
(21)【出願番号】P 2019037739
(22)【出願日】2019-03-01
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】登丸 徹也
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128741(JP,A)
【文献】国際公開第2015/121955(WO,A1)
【文献】特開2017-130021(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012605(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0248916(US,A1)
【文献】小林 優人 Masato KOBAYASHI,第22回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集 [USB] 第22回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集 The 22<SP>st</SP> Annual Conference of the Virtual Reality Society of Japan
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B1/00-3/04
G05G1/00-25/04
G06F3/01
3/048-3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者が操作する面である操作面(111)を有する操作部(110)と、
前記操作面に対する操作体(F)の操作状態を検出する検出部(112)と、
前記検出部によって検出される前記操作状態に応じて、所定の機器(50)に対する入力を行う制御部(130)と、
前記制御部によって制御され、前記操作面を振動させる駆動部(120)と、を備える入力装置であって、
前記所定の機器は、表示部(51)を有しており、
前記表示部には、複数の操作ボタン(52a1~52a4)が表示され、
前記表示部上における複数の前記操作ボタンの選択位置は、前記操作面上における前記操作体の座標位置の変化と対応付けされており、
前記制御部は、
前記操作面上における前記操作体の移動によって、対応する前記表示部上での前記操作ボタンの選択位置が、複数の前記操作ボタンのうち、いずれかの操作ボタン(52a1)から他の操作ボタン(52a2)に移動すると判定したときには、所定時間(t1)だけ前記駆動部によって、所定の振動を前記操作面に発生させることで、前記操作面を、振動が生じていない状態における前記操作面と前記操作体との間の摩擦力よりも前記摩擦力が小さい、第1低摩擦状態とする制御を行い、かつ、前記検出部が前記操作体の接触を検出した状態においては、前記操作者が前記操作体を動かす前に、前記駆動部を駆動させ、前記操作面を第2低摩擦状態とする制御を行い、
前記操作体の移動する速度が大きいほど、前記所定時間を相対的に短く設定し、
前記第2低摩擦状態における前記摩擦力は、前記操作面に振動が生じていない状態における前記摩擦力よりも小さく、前記第1低摩擦状態における前記摩擦力よりも大きい、入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作体の移動する速度が大きいほど、前記操作体の移動を判定するための判定閾値を相対的に小さくする、請求項1
に記載の入力装置。
【請求項3】
操作者が操作する面である操作面(111)を有する操作部(110)と、
前記操作面に対する操作体(F)の操作状態を検出する検出部(112)と、
前記検出部によって検出される前記操作状態に応じて、所定の機器(50)に対する入力を行う制御部(130)と、
前記制御部によって制御され、前記操作面を振動させる駆動部(120)と、を備える入力装置であって、
前記所定の機器は、表示部(51)を有しており、
前記表示部には、複数の操作ボタン(52a1~52a4)が表示され、
前記表示部上における複数の前記操作ボタンの選択位置は、前記操作面上における前記操作体の座標位置の変化と対応付けされており、
前記制御部は、
前記操作面上における前記操作体の移動によって、対応する前記表示部上での前記操作ボタンの選択位置が、複数の前記操作ボタンのうち、いずれかの操作ボタン(52a1)から他の操作ボタン(52a2)に移動すると判定したときには、所定時間(t1)だけ前記駆動部によって、所定の振動を前記操作面に発生させることで、前記操作面を、振動が生じていない状態における前記操作面と前記操作体との間の摩擦力よりも前記摩擦力が小さい、第1低摩擦状態とする制御を行い、かつ、前記検出部が前記操作体の接触を検出した状態においては、前記操作者が前記操作体を動かす前に、前記駆動部を駆動させ、前記操作面を第2低摩擦状態とする制御を行い、前記操作体の移動する速度が大きいほど、前記操作体の移動を判定するための判定閾値を相対的に小さくし、
前記第2低摩擦状態における前記摩擦力は、前記操作面に振動が生じていない状態における前記摩擦力よりも小さく、前記第1低摩擦状態における前記摩擦力よりも大きい、入力装置。
【請求項4】
操作者が操作する面である操作面(111)を有する操作部(110)と、
前記操作面に対する操作体(F)の操作状態を検出する検出部(112)と、
前記検出部によって検出される前記操作状態に応じて、所定の機器(50)に対する入力を行う制御部(130)と、
前記制御部によって制御され、前記操作面を振動させる駆動部(120)と、を備える入力装置であって、
前記所定の機器は、表示部(51)を有しており、
前記表示部には、複数の操作ボタン(52a1~52a4)が表示され、
前記表示部上における複数の前記操作ボタンの選択位置は、前記操作面上における前記操作体の座標位置の変化と対応付けされており、
前記制御部は、
前記操作面上における前記操作体の移動によって、対応する前記表示部上での前記操作ボタンの選択位置が、複数の前記操作ボタンのうち、いずれかの操作ボタン(52a1)から他の操作ボタン(52a2)に移動すると判定したときには、所定時間(t1)だけ前記駆動部によって、所定の振動を前記操作面に発生させることで、前記操作面を、振動が生じていない状態における前記操作面と前記操作体との間の摩擦力よりも前記摩擦力が小さい、第1低摩擦状態とする制御を行い、かつ、前記検出部が前記操作体の接触を検出した状態においては、前記操作者が前記操作体を動かす前に、前記駆動部を駆動させ、前記操作面を第2低摩擦状態とする制御を行い、前記操作体の移動する速度が大きいほど、複数の前記操作ボタンの大きさを相対的に小さく設定
し、
前記第2低摩擦状態における前記摩擦力は、前記操作面に振動が生じていない状態における前記摩擦力よりも小さく、前記第1低摩擦状態における前記摩擦力よりも大きい、入力装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定時間の後に、前記駆動部によって、前記操作体に前記所定の振動とは別の振動を発生させる、請求項1
ないし4のいずれか1つに記載の入力装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記所定時間の後に、前記操作体の前記操作面に対する押圧力に応じて移動後の前記他の操作ボタンに対応する前記操作面上における前記操作体の座標位置を決定する、請求項1
ないし5のいずれか1つに記載の入力装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記検出部が前記操作体の前記操作面への接触を検出したときに、前記操作面を前記第2低摩擦状態とする制御を行う、請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の入力装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記検出部が前記操作体の前記操作面への接触を検出する前に、前記操作面を前記第2低摩擦状態とする制御を行う、請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパッドやタッチパネルのように、指等の操作体による入力操作を可能とする入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の入力装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この入力装置は、表示装置とは別位置に設けられ、操作面上での指の操作位置を検出するタッチパッドと、この検出結果に基づいて操作面を振動させ、指と操作面との間の摩擦力を制御するアクチュエータと、アクチュエータの作動を制御する制御部とを備える。この入力装置は、表示装置に表示されるアイコン、すなわち操作ボタンに対して、タッチパッド上で、指操作を行うことで、アイコンに対する入力が可能な構成とされる。
【0003】
タッチパッド上の領域は、表示装置のアイコンに対応する部分がターゲット領域として定義され、当該アイコンの周辺に対応する部分が周辺領域として定義されている。そして、指がタッチパッドの操作面上を移動し、周辺領域以外の領域から、周辺領域を通り、ターゲット領域内に至るときに、制御部は、アクチュエータを作動させ、周辺領域において振動を発生させる。
【0004】
指が周辺領域以外の領域を移動する際には、制御部は、アクチュエータを作動させない。この場合、操作面における振動の発生がなく、指と操作面との間には所定の摩擦力が発生する。また、指が周辺領域を通過するときには、上記の振動発生によって指と操作面との間にスクイーズ膜と呼ばれる空気膜が発生して、操作面に対する指の摩擦力は、振動を発生させない場合よりも低下する。つまり、振動している操作面における指の移動速度は、振動してない場合よりも大きくなる。その後、指がターゲット内を移動する際、制御部が操作面における振動を発生させないため、指と操作面との間には所定の摩擦力が発生する。
【0005】
よって、この入力装置は、周辺領域以外から周辺領域を通り、ターゲット領域内に至るように操作者が指操作した場合、周辺領域における摩擦力を低下させ、ターゲット領域内に向けて指が引き込まれるような「引込み感」を操作者に想起させる構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、操作者が指操作する際の指の移動速度や摩擦係数は、人それぞれ異なるのに加え、例えば、指操作時の温度や湿度などの環境や、運転中の操作か、急いでの操作か、慣れている操作か等の操作状況によっても異なる。そのため、操作面の振動によって得られる引込み感や、引込み感が得られる周辺領域を通過してターゲット上で指を停止させるまでの時間には、個人差が生じてしまう。その結果、引込み作用の後に指が停止される位置は、ターゲット内の期待された位置、例えば中心位置などに対して、ずれる場合がある。このような場合、操作者が、次の指操作を開始して、次の引込み感が得られるまでの時間が速いまたは遅いといった差、つまり操作感の差が生じてしまう。
【0008】
本発明の目的は、上記の点に鑑み、引込み感を与えつつも、操作者が指操作した際の操作感の差が従来よりも低減された入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の入力装置は、操作者が操作する面である操作面(111)を有する操作部(110)と、操作面に対する操作体(F)の操作状態を検出する検出部(112)と、検出部によって検出される操作状態に応じて、所定の機器(50)に対する入力を行う制御部(130)と、制御部によって制御され、操作面を振動させる駆動部(120)と、を備える入力装置であって、所定の機器は、表示部(51)を有しており、表示部には、複数の操作ボタン(52a1~52a4)が表示され、表示部上における複数の操作ボタンの選択位置は、操作面上における操作体の座標位置の変化と対応付けされており、制御部は、操作面上における操作体の移動によって、対応する表示部上での操作ボタンの選択位置が、複数の操作ボタンのうち、いずれかの操作ボタン(52a1)から他の操作ボタン(52a2)に移動すると判定したときには、所定時間(t1)だけ駆動部によって、所定の振動を操作面に発生させることで、操作面を、振動が生じていない状態における操作面と操作体との間の摩擦力よりも摩擦力が小さい、第1低摩擦状態とする制御を行い、かつ、検出部が操作体の接触を検出した状態においては、操作者が操作体を動かす前に、駆動部を駆動させ、操作面を第2低摩擦状態とする制御を行い、操作体の移動する速度が大きいほど、所定時間を相対的に短く設定し、第2低摩擦状態における摩擦力は、操作面に振動が生じていない状態における摩擦力よりも小さく、第1低摩擦状態における摩擦力よりも大きい。
【0010】
これによれば、制御部が、所定の操作が行われたと判定された際に、所定時間だけ駆動部を振動させ、操作面を、操作体との摩擦力が、該操作面に振動が生じていない状態の摩擦力よりも小さくされた第1低摩擦状態とする入力装置となる。そのため、操作面における操作体の位置に関わりなく、操作体が移動するタイミングで、所定時間だけ所定の振動が発生され、操作面を、操作者に引込み感を想起させる第1低摩擦状態とする制御が実行される。よって、操作体の動きに応じて引込み感が得られ、操作者に対して違和感を与えずに、安定した操作感が得られるとの効果が生じる。
【0011】
また、制御部は、操作面に接触した操作体が動かされる前に、駆動部によって、操作面を、操作体との摩擦力が、該操作面に振動が生じていない状態の摩擦力よりも小さく、かつ、第1低摩擦状態におけるそれよりも大きい、第2低摩擦状態とする。これにより、第1低摩擦状態の後、駆動部を停止させた後の高摩擦状態において、指が止まりにくくなることが抑制され、より安定した操作感が得られる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車両における入力装置の搭載状態を示す説明図である。
【
図3A】第1実施形態における表示画面上の操作ボタンの選択状態を変更する一例を示す説明図である。
【
図3B】
図3Aに対応するタッチパッドでの指の移動状態を示す説明図である。
【
図4】第1実施形態における制御内容を示すフローチャートである。
【
図5A】第1実施形態の変形例であって、ローテーション操作における表示画面の一例を示す説明図である。
【
図5B】
図5Aに対応するタッチパッドでの指の移動状態を示す説明図である。
【
図6A】第1実施形態の変形例であって、スライダー操作における表示画面の一例を示す説明図である。
【
図6B】
図6Aに対応するタッチパッドでの指の移動状態を示す説明図である。
【
図7A】指をゆっくり動かして表示画面上の操作ボタンの選択状態を変更する一例を示す説明図である。
【
図7B】
図7Aに対応するタッチパッドでの指の移動状態を示す説明図である。
【
図8A】指を速く動かして表示画面上の操作ボタンの選択状態を変更する一例を示す説明図である。
【
図8B】
図8Aに対応するタッチパッドでの指の移動状態を示す説明図である。
【
図9】第2実施形態における制御内容を示すフローチャートである。
【
図10A】第2実施形態における指の移動速度に対する所定時間の関係の第1の例を示すグラフである。
【
図11A】第2実施形態における指の移動速度に対する所定時間の関係の第2の例を示すグラフである。
【
図12A】第2実施形態における指の移動速度に対する所定時間の関係の第3の例を示すグラフである。
【
図13A】第2実施形態の変形例における指の移動速度に対する摩擦力の関係の第1の例を示すグラフである。
【
図13B】指の移動速度に対する摩擦力の関係の第2の例を示すグラフである。
【
図13C】指の移動速度に対する摩擦力の関係の第3の例を示すグラフである。
【
図14】第1実施形態での操作面における摩擦力変化の一例を示すグラフである。
【
図15】第3実施形態での操作面における摩擦力変化の一例を示すグラフである。
【
図16】第3実施形態における制御内容を示すフローチャートである。
【
図17】第3実施形態の変形例における制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態の入力装置100について、
図1~
図4を参照して説明する。本実施形態の入力装置100は、例えば、ナビゲーション装置50を操作するための遠隔操作デバイスに適用したものである。入力装置100は、
図1に示すように、例えばナビゲーション装置50と共に、車両10に搭載されている。
【0016】
まず、入力装置100と共に車両10に搭載されるナビゲーション装置50について、簡単に説明する。
【0017】
ナビゲーション装置50は、地図上における自車の現在位置情報、進行方向情報、あるいは操作者の希望する目的地への案内情報等を表示する航路誘導システムである。ナビゲーション装置50は、
図1に示すように、表示部としての液晶ディスプレイ51を有している。液晶ディスプレイ51は、操作者が表示画面52を視認可能な位置、例えば車両10のインストルメントパネル11の車両幅方向の中央部に配置される。
【0018】
ナビゲーション装置50は、
図1に示すように、入力装置100に対して別体で形成されており、入力装置100から離れた位置に設定されている。ナビゲーション装置50は、例えば、Controller Area Networkバス(CANバス(登録商標))によるCAN通信で入力装置100と接続されている。ナビゲーション装置50は、本発明の所定の機器に対応する。
【0019】
液晶ディスプレイ51の表示画面52には、地図上における自車位置が表示されると共に、
図2に示すように、例えばナビゲーション装置50に対する操作用の各種操作ボタン52a1~52a4が表示される。各種操作ボタン52a1~52a4は、例えば、地図の拡大表示、縮小表示、および目的地案内設定等のために用いられるボタンであり、いわゆる操作アイコンと呼ばれる。以下、各種操作ボタン52a1~52a4を区別するため、第1操作ボタン52a1、第2操作ボタン52a2、第3操作ボタン52a3、第4操作ボタン52a4と称する。
【0020】
なお、表示画面52上における各種操作ボタン52a1~52a4の選択位置は、後述する入力装置100のうち、操作面111上における指Fの座標位置の変化と対応付けされる。この詳細については、後述する。
【0021】
(入力装置の構成)
入力装置100は、
図1に示すように、例えば車両10のセンターコンソール12にて、アームレスト13と隣接する位置であって、操作者の手が届き易い範囲に配置される。入力装置100は、
図2に示すように、操作部110、駆動部120、および制御部130等を備える。
【0022】
操作部110は、いわゆるタッチパッドを形成するものであり、例えば操作者の指F等の操作体によって、ナビゲーション装置50に対する入力操作を行う部位である。操作部110は、操作面111、タッチセンサ112、および筐体113等を有している。
【0023】
操作面111は、例えば、アームレスト13と隣接する位置で操作者側に露出して、操作者が指操作を行う平面部であり、その表面全体が指の滑りを良くする素材等により構成されている。操作面111は、操作者の指操作、例えば、表示画面52に表示される各種操作ボタン52a1~52a4に対する選択や押込み決定等の所定の操作により、ナビゲーション装置50への入力が可能な設定とされている。
【0024】
タッチセンサ112は、
図2に示すように、操作面111の裏面側に設けられた、例えば静電容量式の検出部である。タッチセンサ112は、例えば矩形の平板状とされ、操作面111に対する操作者の指Fによる操作状態を検出する。
【0025】
タッチセンサ112は、例えば、操作面111上のx軸方向に沿って延びる電極と、y軸方向に沿って延びる電極とが格子状に配列された構成とされ、
図2に示すように後述する制御部130と接続されている。各電極は、タッチセンサ112の表面に近接する操作者の指Fの位置に応じて、発生する静電容量が変化し、この発生する静電容量の信号を感度値として制御部130に出力する。タッチセンサ112の表面は、絶縁材よりなる絶縁シートによって覆われている。なお、タッチセンサ112は、上記静電容量式のものに限らず、他の感圧式等、各種タイプのものが使用され得る。
【0026】
筐体113は、
図2に示すように、操作面111およびタッチセンサ112を収容しつつ、これらを支持する部材であり、その底面部に複数の支持部113aが形成されている。支持部113aは、操作面111およびタッチセンサ112を後述する駆動部120により振動可能となるように支持している。筐体113は、例えば、その外表面が扁平とされ、センターコンソール12に設けられた不図示の凹部に配置される。
【0027】
駆動部120は、操作面111に対して、直交方向に超音波振動を発生させる部材であり、例えば
図2に示すように、タッチセンサ112の裏面側の所定位置に設けられる。駆動部120は、例えば、接着剤、両面テープ、ネジ部材、あるいは半田付け等の任意の方法によって、タッチセンサ112に接合されている。駆動部120は、後述する制御部130と配線接続されており、制御部130により振動発生の制御がなされる。なお、配線としては、超音波振動による振動ストレスを低減するため、例えば、フレキシブル配線が使用され得る。
【0028】
駆動部120は、例えば、超音波振動子が用いられる。超音波振動子は、電圧が印加されると体積が変化する一方、外部から力を受けると電圧を発生するといったピエゾ効果を有する物質、例えば、圧電セラミックス等により形成されている。駆動部120は、電極を有しており、この電極に交流電圧が印加されると、圧電効果によって振動する。駆動部120の振動周波数は、印加される交流電圧の周波数に相関しており、適宜変更され得る。
【0029】
制御部130は、タッチセンサ112から得られる信号に基づいて、駆動部120の駆動制御を行うものであり、CPU、RAM、および記憶媒体等を有している。具体的には、制御部130は、タッチセンサ112から得られる信号から、操作者の指Fの操作状態として、操作面111上における指Fの接触位置すなわち座標位置や、指Fの移動方向、およびその移動距離等を取得する。また、制御部130は、指Fの操作状態として、操作面111上において、いずれかの操作ボタン上での押込み操作の有無等を取得する。そして、制御部130は、これらの操作状態に応じて、駆動部120による振動の発生状態を制御し、操作面111に所定の振動を発生させて、指Fに対する引込み制御を実行する構成とされている。
【0030】
なお、ここでいう「引込み制御」とは、操作者が指Fで操作面111上における所定の操作を行った際に、操作者に指Fに対する引込み感を想起させるために、制御部130が行う駆動部120の駆動制御を意味する。この詳細については、後述する。
【0031】
以上が、本実施形態の入力装置100の基本的な構成である。
【0032】
(入力装置の作動)
次に、本実施形態の入力装置100の作動および作用効果について、
図3A~
図4を参照して説明する。
【0033】
ここでは、
図3A、
図3Bに示すように、第1操作ボタン52a1を選択していた状態から、操作者の指操作により、第2操作ボタン52a2を選択した状態に変更する操作を行った場合を代表例として説明する。
【0034】
このとき、操作面111上での指操作は、例えば
図3Bに示すように、「1」~「4」の4つに区分される。
【0035】
以下、説明の簡略化のため、便宜的に、
図3B中の「1」~「4」に対応する操作を、それぞれ「操作1」、「操作2」、「操作3」、「操作4」と称する。
【0036】
操作1は、操作面111の所定の位置に指Fを置き、その後、目的とする領域に向かって動かし始める初期動作に相当する。操作2は、操作1の後、所定の速度で目的とする領域に向けて移動させる動作に相当する。操作3は、操作2の後、目的とする領域に指Fを減速させながら近づける動作に相当する。操作4は、操作3の後、操作面111のうち目的とする所定位置で指Fを完全に停止させている状態に相当する。操作者がこれらの操作1~操作4を行った場合、制御部130は、
図4に示す制御フローを実行する。
【0037】
まず、ステップS100で、制御部130は、タッチセンサ112から出力された信号に基づき、指Fの操作面111に対するタッチ位置すなわち座標位置を取得する。また、指Fが操作面111のうち第1操作ボタン52a1に対応する位置をタッチした際、制御部130は、表示画面52上の第1操作ボタン52a1の外周枠部の太さや、操作ボタン自体の色等を強調表示させる制御を行う。
【0038】
次に、ステップS110で、制御部130は、指Fの移動発生の有無を捉えるために、指の移動積算値が予め設定した移動判定閾値を超えたか否かを判定する。ステップS110で、移動積算値が移動判定閾値を超えたと判定した場合、すなわち肯定判定の場合、制御部130は、操作のための指Fの移動が発生したとして、処理をステップS120に移行する。一方、ステップS110で否定判定の場合、制御部130は、処理をステップS100に戻す。
【0039】
なお、「移動積算値」としては、ステップS100で取得した指Fのタッチ座標の変化量が用いられることができる。移動積算値は、例えば、指Fによる操作面111への接触を検出した際の最初のタッチ座標を初期座標として、当該初期座標を取得した時点から所定の経過時間における初期座標からのタッチ座標の変化量とされ得る。また、「移動判定閾値」とは、操作者が操作面111上において指Fを移動させたか否かを判定するために用いられる閾値であり、所定の値が設定される。
【0040】
ステップS120では、制御部130は、
図3B中の「操作1」に対応する表示ボタンの遷移処理を行う。つまり、制御部130は、
図3Aに示すように、操作ボタンに対する選択状態の表示を、第1操作ボタン52a1が強調された状態から、指Fの移動方向側に対応する方向側にある第2操作ボタン52a2が強調された状態に変更する。
【0041】
次に、ステップS130で、制御部130は、
図3B中の「操作2」に対応する振動発生の処理を行う。ここでは、制御部130は、予め定めた所定時間t1だけ、駆動部120を作動させることによって、操作面111に所定の振動、例えば超音波振動を発生させる。
【0042】
具体的には、制御部130によって、駆動部120が作動されると、超音波振動によって、操作面111と指Fとの間に空気層が形成されて、操作面111と指Fとの間の摩擦力が低減される。よって、指Fには、第2操作ボタン52a2に向けてあたかも引込まれるような引込み感が得られる形となる。言い換えると、制御部130は、駆動部120を作動させて、所定時間t1だけ操作面111と指Fとの間を低摩擦状態とする制御を行う。所定時間t1は、確実な引込み感が得られるような時間として予め設定されている。所定時間t1が経過すると、制御部130は、処理をステップS140に進める。
【0043】
ステップS140では、制御部130は、
図3B中の「操作3」に対応して、低摩擦振動解除の処理、すなわち駆動部120の駆動を停止させる処理を行う。つまり、制御部130は、操作面111と指Fとの間を低摩擦状態からもとの高摩擦状態に戻し、予め定めた所定時間t2だけ、ウエイト状態とする。所定時間t2は、指Fが安定して停止するまでの時間として予め設定されている。そして、制御部130は、
図3B中の「操作4」に対応する座標位置変更を行う。つまり、制御部130は、操作面111上の指Fの座標位置を、第1操作ボタン52a1に対応する位置から、第2操作ボタン52a2に対応する位置、例えば、第2操作ボタン52a2の中心位置などに決定して変更する。
【0044】
そして、ステップS150で、ステップS110において算出した指Fの移動積算値をリセットして、ステップS100に戻る。
【0045】
以上のように、本実施形態では、制御部130は、操作面111における指Fの位置に関わりなく、指Fが移動するタイミングで、所定時間t1だけ所定の振動、例えば超音波振動を発生させる引込み制御を実行する。よって、操作者が指Fの動きに応じて引込み感が得られるため、操作者に対して違和感を与えずに、安定した操作感が得られる入力装置となる。
【0046】
また、操作面における指の位置に対応して振動制御を行う、従来の入力装置では、停止した指の位置がターゲット内、かつ周辺領域に近接した部分の場合、わずかな指の動きに伴って、振動が発生する、または停止するといった不安定な状態が発生し得る。
【0047】
しかしながら、本実施形態では、制御部130が、操作面111上の指Fの位置ではなく、指Fが移動するタイミングに対応して引込み制御を行うため、上記のような不安定な状態となることが抑制される。
【0048】
さらに、制御部130は、所定時間t1経過後に、超音波振動の発生を停止して、所定時間t2だけ、ウエイト状態とし、その後に、操作面111上における指Fの座標位置の変更を行う。そのため、指Fが操作面111のうち狙った操作ボタン、例えば第2操作ボタン52a2に対応する領域を通り過ぎることを防止できる。
【0049】
なお、上記の制御は、
図3A、
図3Bの一例に限られず、各種操作ボタン52a1~52a4のうちいずれか1つの選択状態から、操作者の操作面111における指操作により、他の操作ボタンを選択状態にする場合についても同様に行われる。
【0050】
また、上記した「低摩擦状態」および「高摩擦状態」は、あくまで相対的なものである。つまり、「低摩擦状態」とは、駆動部120を駆動させることにより操作面111と指Fとの間の摩擦力が、駆動部120を駆動させていない状態よりも低下した状態と意味する。そして、「高摩擦状態」とは、駆動部120を駆動させていない状態を意味する。
【0051】
(第1実施形態の変形例)
図4のステップS120は、ステップS110と、ステップS150の間であれば、どのステップ位置に設けてもよい。
【0052】
また、制御部130は、所定時間t1の後に、駆動部120によって、指Fに対してクリック感を与えるための、所定の振動とは別の振動(超音波振動とは別の振動)を発生させるようにしてもよい。これにより、操作者は、クリック感によって、指Fが操作ボタン52a1~52a4のいずれか1つから他の操作ボタンに引込みされたことを明確に認識することができる。
【0053】
また、制御部130は、所定時間t1の後に、指Fの操作面111に対する押圧力に応じて移動後の他の操作ボタン52a2に対応する操作面111上における指Fの座標位置を決定するようにしてもよい。例えば、押圧力が一定値以下になったら、あるいは、押圧力の変化が一定値以上になったら、新たな座標位置の決定をする。具体的には、タッチセンサ112から得られる静電容量の信号から、操作面111に対して直交する方向の力、すなわち押圧力を算出し、この力の変化量に基づいて、移動後の指Fの座標を決定してもよい。この押圧力は、指Fを移動させている状態では、その変化量が大きくなり、指Fを操作面111上で静止させている状態では、その変化量が小さくなる。つまり、指Fによる押圧力の変化量、すなわち荷重の変化量が所定以下となった場合、指Fが操作面111上で静止状態であるとして、移動後の指Fの座標を決定してもよい。これにより、より正確な座標位置の決定が可能となる。
【0054】
また、上記第1実施形態の入力装置は、例えば、
図5A、
図5Bに示すように、表示画面52の操作スイッチ52b1、例えば車高調整スイッチに対して、ローテーション操作を行う場合にも適用され得る。さらに、上記第1実施形態の入力装置は、
図6A、
図6Bに示すように、表示画面52の操作スイッチ52b2、例えば車速調整スイッチに対して、スライダー操作を行う場合についても適用され得る。
【0055】
具体的には、ローテーション操作、あるいはスライダー操作が行われる際には、制御部130は、
図3B中の「操作1」、「操作2」、「操作3」に対応する処理、すなわち
図4中のステップS120、ステップS130、ステップS140を繰り返し行う。これにより、例えば、車両高さや車速などを所定の量に調整するコントロールをする際に、操作者は、的確な触覚が得られ、安定した調整が可能となる。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態の入力装置について、
図7A~
図12Bを参照して説明する。第2実施形態の入力装置は、上記第1実施形態と同一の構成であるが、制御部130における制御の内容を変更した点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0057】
第2実施形態では、制御部130は、指Fの移動速度に応じて、所定時間t1、t2、および指Fの移動判定閾値を設定する。
【0058】
ここで、表示画面52上に、例えば
図7Aに示すように、各種操作ボタン52a1~52a4に加えて、第5操作ボタン52a5、第6操作ボタン52a6、および第7操作ボタン52a7等が設けられ、これらの操作ボタンが一列に並んで表示されているとする。このような状況における操作面111での指操作では、以下のような状況が発生し得る。
【0059】
例えば、操作者が指Fを相対的にゆっくり移動させるときには、
図7Bに示すように、各操作ボタン52a1~52a7の間は、短い移動距離となる。その結果、
図7Aに示すように、全体的に大きく操作ボタン間を移動可能となる。
【0060】
一方、操作者が指Fを相対的に速く移動させるときには、
図8Bに示すように、全体的に操作者が指Fを相対的にゆっくり移動させるときと同じ移動距離であっても、指Fは、操作面111の一端から他端に短時間で到達してしまう。その結果、
図8Aに示すように、移動可能な操作ボタン数が少なくなってしまう。
【0061】
上記した状況は、
図5A~
図6Bで説明したローテーション操作やスライダー操作でも同様に生じ得る。つまり、速く指操作をした場合、同じ移動量での操作可能な操作ボタン数や、操作量が指の移動速度に反比例して減少してしまい、操作者にとって、非感覚的なものとなる。
【0062】
よって、本実施形態では、制御部130は、指Fの移動速度に応じて、所定時間t1を決定する。なお、所定時間t2、および指Fの移動有無を判定するための移動判定閾値についても、指Fの移動速度に応じて決定されてもよい。
【0063】
制御部130が行う引込み制御のフローチャートは、
図9に示すように、
図4で説明した上記第1実施形態のフローチャートに対して、ステップS100とステップS110との間に、ステップS102およびステップS104が追加されたものである。
【0064】
制御部130は、
図9に示すように、ステップS100で指Fの操作面111に対するタッチ位置を取得した後、処理をステップS102に進め、指Fの移動速度を算出する。制御部130は、指Fが移動判定閾値に至る前の段階で、指Fの移動量を移動時間で除して移動速度を算出する。
【0065】
続いて、ステップS104で、制御部130は、予め記憶されたマップから、所定時間t1、所定時間t2、および移動判定閾値を設定する。マップは、例えば、
図10Aもしくは
図10Bに示すように、指Fの移動速度が所定の値までは大きくなるほど、所定時間t1、t2、および移動判定閾値が反比例して直線的に小さくなり、指Fの移動速度が所定の値以上では、これらの値が一定とされている。
【0066】
そして、制御部130は、ステップS104の後に、ステップS110~ステップS150を実施する。
【0067】
これにより、指Fの移動速度と設定される所定時間t1とが反比例する関係となり、移動速度が大きいほど、所定時間t1が相対的に短く設定される。また、必要に応じて、所定時間t2および移動判定閾値についても、所定時間t1と同様に設定される。よって、指Fの移動速度が異なる場合であっても、操作面111上を指Fが移動していく際に、同一の移動範囲内で、複数の操作ボタン52a1~52a7を順によぎっていく数が変わらない入力装置となる。
【0068】
なお、所定時間t1、t2、および移動判定閾値を設定するためのマップとしては、この他にも、例えば、
図11A~
図12Bに示すものとされてもよい。
図11A、
図11Bのマップは、例えば、人間の持つ非線形特性に併せて、所定時間t1、t2、および移動判定閾値の設定を行う場合などに用いられ得る。また、
図12A、
図12Bのマップは、例えば、指Fの移動速度に対して、所定時間t1、t2、および移動判定閾値をステップ変化させる場合に用いられ得る。所定時間t1、t2、および移動判定閾値をステップ変化させた場合には、操作者に対して、制御作用の差を分かりやすくすると共に、制御部130による計算処理負荷を低減することが可能となる。
【0069】
(第2実施形態の変形例1)
上記第2実施形態に対して、所定時間t1を設定するマップに代えて、
図13A~
図13Cに示すように、指Fの移動速度に対して、操作面111と指Fとの間に発生する摩擦力を変更するマップが用いられてもよい。
図13Aのマップは、指Fの移動速度が所定の値までは大きくなるほど、摩擦力が直線的に大きくなり、指Fの移動速度が所定の値以上になると、摩擦力が一定にされる例である。
【0070】
なお、超音波振動に伴うスクイーズ効果による摩擦力を変化させる方法としては、例えば振幅を調整することが挙げられる。具体的には、超音波振動の振幅を小さく調整することで、摩擦力を調整前よりも大きくすることができ、逆に振幅を大きく調整することで、摩擦力を調整前よりも小さくすることができる。
【0071】
また、摩擦力に係るマップの設定にあたっては、
図13Bに示すような非線形のもの、または
図13Cに示すようなステップ状のもの等を適用することも可能である。
【0072】
(第2実施形態の変形例2)
上記第2実施形態に対して、制御部130は、指Fの移動速度に併せて、各種操作ボタン52a1~52a7の大きさを変化させる制御を行ってもよい。この場合、例えば、制御部130は、指Fの移動する速度が大きいほど、各種操作ボタン52a1~52a7の大きさを相対的に小さく設定する。これにより、操作者は、指Fの移動速度が、大きいのか、小さいのかを視覚的に認識することができる。
【0073】
(第3実施形態)
第3実施形態の入力装置について、
図14~
図16を参照して説明する。
【0074】
本実施形態の入力装置は、上記第1実施形態での駆動部120の振動による低摩擦状態を第1低摩擦状態として、指Fのタッチ位置が最初に検出された際に、制御部130が駆動部120を駆動させ、第2低摩擦状態を生じさせる点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0075】
制御部130は、本実施形態では、指Fと操作面111との間について、第1低摩擦状態および第2低摩擦状態の2つの制御を行う。
【0076】
具体的には、第1低摩擦状態は、操作者の指Fに引込み感を想起させるための操作面111の振動状態である。制御部130は、この第1低摩擦状態に加えて、第1低摩擦状態後の高摩擦状態において指Fを止めやすくするために、少なくとも操作面111への指Fのタッチ位置が最初に検出されたとき、駆動部120を駆動させ、操作面111を第2低摩擦状態にする。
【0077】
なお、ここでいう「タッチ位置が最初に検出される」とは、操作者が操作体で操作面111に接触した時から操作体を操作面111から離すまでの間における、最初の操作面111への接触時のタッチ位置の検出を意味する。つまり、操作者が操作体を操作面111に接触させてから離すまでの一連の動作を複数回行ったときには、その都度における最初の操作面111への接触時のタッチ位置の検出が「タッチ位置が最初に検出された」こととなる。
【0078】
さて、例えば、
図3Bで示す指操作により、
図3Aに示すように、表示画面52の第1操作ボタン52a1から第2操作ボタン52a2に選択状態を変える場合を代表例として、より具体的に説明する。
【0079】
まず、上記第1実施形態の入力装置にて、
図3A、
図3Bの操作を行った際における操作者の指Fと操作面111との間の摩擦力変化について、
図14を参照して説明する。
【0080】
上記第1実施形態では、
図14に示すように、操作者が操作面111を指Fでタッチした直後においては、制御部130が駆動部120を駆動させないため、操作者の指Fと操作面111との間は、高摩擦状態である。この高摩擦状態は、
図3Bに示す操作1における操作面111の状態に相当し、指Fを動かす前の静止状態と指Fを動かしている動作状態とに分けられる。この高摩擦状態における摩擦力は、静止状態では、静止摩擦力F
0であり、動作状態では動摩擦力F
1である。
【0081】
その後、
図3Bに示す操作2においては、制御部130が所定時間t1だけ駆動部120を駆動させ、操作面111を第1低摩擦状態としているため、摩擦力は、動摩擦力F
1よりも低い動摩擦力F
2である。
【0082】
続いて、
図3Bに示す操作3においては、制御部130が所定時間t2ほど駆動部120を停止させ、操作面111を高摩擦状態に戻しているため、摩擦力は、第1低摩擦状態での動摩擦力F
2よりも高い動摩擦力F
3である。なお、動摩擦力F
3は、基本的には、動摩擦力F
1と同じ大きさになる。
【0083】
そして、
図2Bに示す操作4では、操作1における最初の静止状態と同じ状態に戻るため、摩擦力は、静止摩擦力F
0になる。
【0084】
ここで、操作面111が第1低摩擦状態から高摩擦状態に移行した際、指Fが操作者の目的とする領域で止まりにくくなることが懸念される。具体的には、
図14に示すように、指Fと操作面111との間の摩擦力は、駆動部120を駆動させておらず、かつ指Fを静止させた状態、つまり静止摩擦力F
0が最も高い。そして、操作者がこの静止摩擦力F
0よりも大きな力で指Fを動かすことで、指Fは、操作面111上を移動する。その後、制御部130により操作面111は、第1低摩擦状態、高摩擦状態の順に移行する。操作面111が第1低摩擦状態から高摩擦状態に移行したとき、指Fは、最初の静止摩擦力F
0よりも大きい力で動き出しており、摩擦力がF
2からF
3に戻った場合であっても、F
3がF
0よりも小さいため、止まりにくいおそれがある。
【0085】
これに対して、本実施形態の入力装置は、操作面111が第1低摩擦状態後の高摩擦状態において、指Fをより止めやすくするため、指Fが最初に操作面111に接触したとき、制御部130が操作面111を第2低摩擦状態に移行させる制御を行う構成とされる。
【0086】
具体的には、
図15に示すように、制御部130は、引込み感を想起させるための第1低摩擦状態の前に、駆動部120を駆動させ、操作面111を第2低摩擦状態とする制御を行う。第2低摩擦状態は、制御部130が駆動部120を例えば第1低摩擦状態での振幅よりも小さい振幅で駆動させた状態であり、
図3Bの操作1における操作面111の状態に相当する。
【0087】
このとき、制御部130は、第2低摩擦状態における静止摩擦力F4が、少なくとも動摩擦力F3よりも小さくなるように、駆動部120を駆動させる。つまり、第2低摩擦状態における摩擦力は、静止状態では、動摩擦力F3よりも小さいF4であり、動作状態では、F4よりも小さく、かつ第1低摩擦状態でのF2よりも大きい動摩擦力F5である。
【0088】
これにより、操作者は、操作面111に指Fを最初に置いた後にその指Fを動かす場合、少なくとも静止摩擦力F4よりも大きな力で指Fを動かすことになる。また、高摩擦状態では、動摩擦力F3が静止摩擦力F4よりも大きくなり、第2低摩擦状態よりも指Fが止まり易いため、操作者は、指Fを目的とする領域に止めやすくなる。
【0089】
次に、本実施形態における制御部130による制御フローについて、
図16を参照して説明する。なお、
図16に示すフローチャートは、
図4に示すフローチャートについて、ステップS100からステップS110の間に、ステップS106およびステップS108を追加したものに相当する。そのため、ここでは、上記第1実施形態との相違点であるステップS106、ステップS108を主に説明する。
【0090】
まず、制御部130は、
図16に示すように、ステップS100で指Fのタッチ位置を取得した後、処理をステップS106に進める。ステップS106では、制御部130は、所定時間t1、t2および移動判定閾値を設定し、処理をステップS108に進める。
【0091】
続いて、ステップS108で、制御部130は、駆動部120を駆動させ、操作面111を少なくとも高摩擦状態での動摩擦力F3よりも小さい静止摩擦力F4となる、第2低摩擦状態に移行させる制御を行う。その後、制御部130は、処理をステップS110に進める。
【0092】
ステップS110で肯定判定の場合、制御部130は、ステップS120以降の処理を順次進める。なお、ステップS130では、制御部130が、上記第1実施形態で説明したのと同様に、駆動部120を駆動させるが、このときの操作面111の状態が第1低摩擦状態に相当する。一方、ステップS110で否定判定の場合、制御部130は、処理をステップS110の処理を繰り返す。
【0093】
本実施形態では、以上の制御フローにより、制御部130は、第1低摩擦状態に加え、第2低摩擦状態の制御を行う。これにより、操作面111が第1低摩擦状態から高摩擦状態に移行した後であっても、操作者が指Fを的確に止めやすくなるとの効果が得られる。
【0094】
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態では、制御部130は、最初に操作面111での指Fのタッチ位置が検出された後に、駆動部120を駆動させて、操作面111を第2低摩擦状態とする例について説明した。しかしながら、この例に限られず、制御部130は、操作者が指Fを操作面111に置く前から、駆動部120を駆動させ、操作面111を第2低摩擦状態としてもよい。
【0095】
この場合、制御部130は、
図17に示すような制御フローを実行する。
図17に示すフローチャートは、ステップS108をステップS100の前で実行し、かつ、ステップS110で否定判定の場合に、処理をステップS100に戻す点で、
図16のフローチャートと相違する。
【0096】
例えば、本変形例では、制御部130は、入力装置の電源がONになった後、所定のタイミングで、駆動部120を駆動させ、操作面111を第2低摩擦状態にする。そして、操作者が指Fを操作面111に置いた場合、制御部130は、ステップS100以降の処理を実行する。本変形例によっても、上記第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0097】
本実施形態によれば、上記第1実施形態の効果に加え、引込み感を想起させた後に操作者が指Fを目的とする領域に止めやすく、さらに安定した操作感が得られる入力装置となる。なお、制御部130が第2低摩擦状態の制御を行いつつ、第2実施形態における指Fの移動速度に応じた所定時間t1、t2および移動判定閾値を決定する構成とされてもよいことは、言うまでもない。
【0098】
(他の実施形態)
本発明は、実施例に準拠して記述されたが、本発明は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範疇や思想範囲に入るものである。
【0099】
(1)本開示に記載の制御部130およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部130およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部130およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0100】
(2)上記各実施形態では、制御部130が駆動部120を駆動させることで、操作面111に対して直交方向に超音波振動を発生させて、スクイーズ効果によって、引込み制御を行ったが、これに限定されるものではない。制御部130は、例えば、操作面111に対して面の拡がる方向で、指Fの移動する方向に往復する振動を発生させて、指Fの移動する往路側の方が、復路側よりも振動の速度あるいは加速度を小さくさせることで、引込み作用を発生させてもよい。具体的には、振動の復路側では、指Fと操作面111との間の摩擦力が小さく、指Fは、移動することなくその場に置いていかれ、逆に、振動の往路側では指Fと操作面111との間の摩擦力が大きくなり、指Fが操作面111と共に移動される。この移動の繰り返しによって、指Fの移動する方向に引込みが可能となる。
【0101】
(3)上記各実施形態では、操作部110として、いわゆるタッチパッド式のものを採用した例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、操作部110としては、ローテーション操作や、スライダー操作をするものにおいては、液晶ディスプレイ51の表示画面52が透過されて操作面111に視認されるいわゆるタッチパネル式のものも適用可能である。
【0102】
(4)上記各実施形態では、操作体を操作者の指Fとして説明したが、これに限らず、ペンを模したスティックとしてもよい。
【0103】
(5)上記各実施形態では、入力装置100による入力制御の対象である所定の機器として、ナビゲーション装置50を例に挙げたが、これに限定されることなく、車両用の空調装置、あるいは車両用オーディオ装置等の他の機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
50 ナビゲーション装置(所定の機器)
51 液晶ディスプレイ(表示部)
52a1~52a4 複数の操作ボタン
100 入力装置
111 操作面
112 タッチセンサ(検出部)
120 駆動部
130 制御部
F 操作者の指(操作体)
t1 所定時間