(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20230111BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20230111BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/087 325
G03G9/097 351
G03G9/08 384
(21)【出願番号】P 2019562165
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048136
(87)【国際公開番号】W WO2019131877
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2017253857
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018068762
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018068773
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真司
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-168915(JP,A)
【文献】特開平04-361272(JP,A)
【文献】特開平03-274577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、着色剤、帯電制御剤および増粘剤を含む着色樹脂粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体であり、
前記増粘剤が、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂であり、前記窒素原子の含有量が、前記静電荷像現像用トナーに対し150~1500質量ppmであり、
前記結着樹脂100質量部に対する、前記増粘剤の含有量が、0.2~2.2質量部であ
り、
前記結着樹脂が、前記スチレン系単量体単位を65~85質量%の割合で、前記(メタ)アクリレート系単量体単位を15~35質量%の割合で含有する静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
結着樹脂、着色剤および帯電制御剤を含む着色樹脂粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体であり、前記共重合体が架橋剤により架橋されており、前記架橋剤は架橋性樹脂を含み、前記架橋性樹脂がウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル樹脂であり、前記窒素原子の含有量が、前記静電荷像現像用トナーに対し150~1500質量ppmであり、
前記結着樹脂100質量部に対する、前記架橋剤の含有量が、0.3~5.0質量部である静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記結着樹脂が、前記スチレン系単量体単位を60~90質量%の割合で、前記(メタ)アクリレート系単量体単位を10~40質量%の割合で含有する請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
請求項
1に記載の静電荷像現像用トナーを製造する方法であって、
重合性単量体、着色剤、帯電制御剤および増粘剤を含有し、25℃における粘度が100~1000mPa・sである重合性単量体組成物を、水系分散媒体中に分散させて液滴を形成した後、重合を行うことにより着色樹脂粒子を得る工程を含み、
前記重合性単量体が、少なくとも、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体を含み、
前記増粘剤が、窒素原子を含む樹脂であり、前記窒素原子の含有量が、前記静電荷像現像用トナーに対し150~1500質量ppmである静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記重合性単量体が、架橋性の重合性単量体をさらに含有し、
前記架橋性の重合性単量体の使用量が、前記重合性単量体全量100質量部中、2.0質量部以下である請求項
4に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
請求項2または
3に記載の静電荷像現像用トナーを製造する方法であって、
重合性単量体、着色剤、帯電制御剤および架橋剤を含有する重合性単量体組成物を、水系分散媒体中に分散させて液滴を形成した後、重合を行うことにより着色樹脂粒子を得る工程を含み、
前記重合性単量体が、少なくとも、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体を含み、
前記架橋剤は架橋性樹脂を含み、前記架橋性樹脂が窒素原子を含む樹脂であり、前記窒素原子の含有量が、前記静電荷像現像用トナーに対し150~1500質量ppmである静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、およびプリンター等の、電子写真法を利用した画像形成装置の現像に用いることができる静電荷像現像用トナーおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置、静電記録装置、および静電印刷装置等の画像形成装置は、感光体上に形成される静電潜像を、静電荷像現像用トナーで現像することで所望の画像を形成する方法が広く実施され、複写機、プリンター、ファクシミリ、およびこれら複合機等に適用されている。
【0003】
たとえば、電子写真法を用いた電子写真装置では、一般には光導電性物質からなる感光体の表面を種々の手段で一様に帯電させた後、当該感光体上に静電潜像を形成し、次いで当該静電潜像を、トナーを用いて現像し(現像工程)、必要に応じて用紙等の記録材にトナー画像を転写した(転写工程)後、加熱等によりトナーを記録材に定着させて(定着工程)、印刷物を得るものである。
【0004】
上記画像形成の工程の中でも、定着工程では、通常、定着時に定着ロールの温度を150℃以上に加熱する必要があり、エネルギー源として多くの電力が消費される。これに対し、近年、上記画像形成装置に対する、消費エネルギーの低減化、および印刷の高速化の要請の高まりに伴い、低い定着温度でも高い定着率を維持できるトナー(低温定着性に優れたトナー)の設計が求められている。
【0005】
優れた低温定着性と、高温領域での安定した定着性とを有するトナーとして、たとえば、特許文献1では、少なくとも着色剤、離型剤、および結着樹脂を含有するトナーにおいて、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂と、ガラス転移温度が-60℃以上10℃未満であるウレタンおよび/またはウレア結合を有する非晶質ポリエステル樹脂と、ガラス転移温度が30℃以上70℃未満であるウレタンおよび/またはウレア結合を有する非晶質ポリエステル樹脂とを組み合わせて用いる技術が開示されている。
【0006】
一方で、近年、複写機やプリンター等の電子写真方式で得られた画像をプロフェッショナル分野へ応用する取り組みが盛んに行われており、これまでの文字を印刷する用途から写真・グラフィック等の画像をより美しく出力することが必要になってきた。そのため、その出力画像にはこれまで以上に高光沢性(高グロス性)を有することが強く望まれて来ている。
【0007】
これに対し、上記特許文献1に記載のトナーは、定着温度を低くした場合でも、高温領域において安定した定着性を示すものである一方で、特許文献1に記載のトナーを用いて得られる出力画像は、グロスが低く、光沢性に劣るものであり、そのため、高グロス性という観点より、改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、高グロスが得られ、かつ、高温領域において安定した定着性を示す静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく検討を行ったところ、結着樹脂、着色剤、および帯電制御剤を含む着色樹脂粒子を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、結着樹脂として、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体を用い、かつ、着色樹脂粒子中に、特定の窒素原子を有する樹脂を、静電荷像現像用トナーに対する、窒素原子の量が150~1500質量ppmの量にて含まれるものとなるように含有させることにより、高グロス性を示し、かつ、高温領域において安定した定着性を実現できる静電荷像現像用トナーを得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の観点によれば、結着樹脂、着色剤、帯電制御剤および増粘剤を含む着色樹脂粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体であり、前記増粘剤が、窒素原子を含む樹脂であり、前記窒素原子の含有量が、前記静電荷像現像用トナーに対し150~1500質量ppmである静電荷像現像用トナーが提供される。
【0012】
本発明の第1の観点に係る静電荷像現像用トナーにおいて、前記増粘剤が、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する樹脂であることが好ましい。
本発明の第1の観点に係る静電荷像現像用トナーにおいて、前記増粘剤が、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂であることが好ましい。
本発明の第1の観点に係る静電荷像現像用トナーにおいて、前記結着樹脂100質量部に対する、前記増粘剤の含有量が、0.2~5.0質量部であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の第2の観点によれば、結着樹脂、着色剤および帯電制御剤を含む着色樹脂粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体であり、前記共重合体が架橋剤により架橋されており、前記架橋剤は架橋性樹脂を含み、前記架橋性樹脂が窒素原子を含む樹脂であり、前記窒素原子の含有量が、前記静電荷像現像用トナーに対し150~1500質量ppmである静電荷像現像用トナーが提供される。
【0014】
本発明の第2の観点に係る静電荷像現像用トナーにおいて、前記架橋性樹脂が、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する樹脂であることが好ましい。
本発明の第2の観点に係る静電荷像現像用トナーにおいて、前記架橋性樹脂が、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂であることが好ましい。
本発明の第2の観点に係る静電荷像現像用トナーにおいて、前記架橋性樹脂が、ウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂であることが好ましい。
本発明の第2の観点に係る静電荷像現像用トナーにおいて、前記結着樹脂100質量部に対する、前記架橋剤の含有量が、0.3~5.0質量部であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の第1の観点および第2の観点に係る静電荷像現像用トナーにおいて、前記結着樹脂が、前記スチレン系単量体単位を60~90質量%の割合で、前記(メタ)アクリレート系単量体単位を10~40質量%の割合で含有することが好ましい。
【0016】
さらに、本発明によれば、上記本発明の第1の観点に係る静電荷像現像用トナーを製造する方法であって、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤および増粘剤を含有し、25℃における粘度が100~1000mPa・sである重合性単量体組成物を、水系分散媒体中に分散させて液滴を形成した後、重合を行うことにより着色樹脂粒子を得る工程を含み、前記重合性単量体が、少なくとも、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体を含み、前記増粘剤が、窒素原子を含む樹脂であり、前記窒素原子の含有量が、前記静電荷像現像用トナーに対し150~1500質量ppmである静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
本発明の第1の観点に係る静電荷像現像用トナーの製造方法において、前記重合性単量体が、架橋性の重合性単量体をさらに含有し、前記架橋性の重合性単量体の使用量が、前記重合性単量体全量100質量部中、2.0質量部以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明によれば、上記本発明の第2の観点に係る静電荷像現像用トナーを製造する方法であって、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤および架橋剤を含有する重合性単量体組成物を、水系分散媒体中に分散させて液滴を形成した後、重合を行うことにより着色樹脂粒子を得る工程を含み、前記重合性単量体が、少なくとも、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体を含み、前記架橋剤は架橋性樹脂を含み、前記架橋性樹脂が窒素原子を含む樹脂であり、前記窒素原子の含有量が、前記静電荷像現像用トナーに対し150~1500質量ppmである静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0018】
さらに、本発明によれば、さらに別の観点に係る発明として、結着樹脂、着色剤、帯電制御剤および増粘剤を含む着色樹脂粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体であり、前記増粘剤が、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する樹脂である静電荷像現像用トナーを提供することもできる。
【0019】
また、本発明によれば、さらに別の観点に係る発明として、結着樹脂、着色剤および帯電制御剤を含む着色樹脂粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体であり、前記共重合体が架橋剤により架橋されており、前記架橋剤は架橋性樹脂を含み、前記架橋性樹脂は、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂である静電荷像現像用トナーを提供することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高グロスが得られ、かつ、高温領域において安定した定着性を示す静電荷像現像用トナーおよびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称することがある。)は、結着樹脂、着色剤、帯電制御剤および増粘剤を含む着色樹脂粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位(アクリレート系単量体単位および/またはメタクリレート系単量体単位の意味。以下同様。)とを含む共重合体であり、前記増粘剤が、窒素原子を含む樹脂であり、このような窒素原子を有する樹脂を、静電荷像現像用トナーに対する、窒素原子の量が150~1500質量ppmとなる量にて含むものである。
【0022】
まず、第1実施形態のトナーを構成する着色樹脂粒子の製造方法について説明する。
【0023】
第1実施形態のトナーを構成する着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法と、乳化重合凝集法、分散重合法、懸濁重合法および溶解懸濁法等の湿式法とに大別され、画像再現性などの印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、分散重合法、および懸濁重合法等の重合法がより好ましく、これらのなかでも懸濁重合法がさらに好ましい。
【0024】
上記乳化重合凝集法は、乳化させた重合性単量体を重合し、樹脂微粒子を得て、着色剤等と凝集させ、着色樹脂粒子を製造する方法である。また、上記溶解懸濁法は、結着樹脂や着色剤等のトナー成分を有機溶媒に溶解または分散した溶液を水系媒体中で分散することで液滴形成し、次いで、有機溶媒を除去することで着色樹脂粒子を製造する方法であり、それぞれ公知の方法を用いることができる。
【0025】
第1実施形態のトナーを構成する着色樹脂粒子は、湿式法、および乾式法のいずれでも製造することができるが、湿式法の中でも好ましい(A)懸濁重合法を採用し、または乾式法の中でも代表的な(B)粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行なわれる。まず、(A)懸濁重合法について説明する。
【0026】
(A)懸濁重合法
(1)重合性単量体組成物の調製工程
(A)懸濁重合法においては、まず、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤および増粘剤、さらに必要に応じて用いられる離型剤および分子量調整剤等のその他の添加物を混合、溶解して重合性単量体組成物の調製を行なう。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、たとえば、メディア式分散機を用いて行なう。
【0027】
第1実施形態において、重合性単量体とは、重合可能な化合物をいい、重合性単量体が重合することで結着樹脂となる。重合性単量体としては、得られる結着樹脂を、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体とする観点より、主として、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体を用いる。
【0028】
スチレン系単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられる。これらのスチレン系単量体は、1種類のみ使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、スチレン、ビニルトルエン、およびメチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0029】
(メタ)アクリレート系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、およびメタクリル酸ジメチルアミノエチルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系単量体は、1種類のみ使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、およびアクリル酸ブチルが好ましく、アクリル酸n-ブチルがより好ましい。
【0030】
第1実施形態で用いる結着樹脂中における、スチレン系単量体単位の含有割合は、好ましくは60~90質量%、より好ましくは65~85質量%、さらに好ましくは70~80質量%である。また、(メタ)アクリレート系単量体単位の含有割合は、好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~35質量%、さらに好ましくは20~30質量%である。スチレン系単量体単位および(メタ)アクリレート系単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるトナーを耐熱保存性、低温定着性にバランス良く優れたものとすることができる。
【0031】
また、第1実施形態で用いる結着樹脂を得るための重合性単量体として、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体以外の重合性単量体を用いてもよい。このようなその他の重合性単量体として、架橋性の重合性単量体を用いることが好ましい。架橋性の重合性単量体としては、2個以上の重合可能な官能基を持つ単量体および/または重合可能な官能基と架橋可能な官能基とを有する単量体であればよいが、たとえば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、およびジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールに炭素-炭素二重結合を有するカルボン酸が2個以上エステル結合したエステル化合物;N,N-ジビニルアニリン、およびジビニルエーテル等の、その他のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらのなかでも、架橋性の観点より、ジビニルベンゼンが好ましい。これらの架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
第1実施形態における、架橋性の重合性単量体の使用量は、結着樹脂を得るために用いる重合性単量体全量100質量部中、好ましくは2.0質量部以下であり、より好ましくは0.1~1.0質量部、さらに好ましくは0.2~0.7質量部、さらにより好ましくは0.2~0.5質量部である。すなわち、第1実施形態で用いる結着樹脂中における、架橋性の重合性単量体単位の含有割合は、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは0.1~1.0質量%、さらに好ましくは0.2~0.7質量%、さらにより好ましくは0.2~0.5質量%である。架橋性の重合性単量体の使用量および含有割合を上記範囲とすることにより、結着樹脂を架橋した際における架橋度を比較的低いものとすることができ、これにより、得られるトナーを、高温領域において安定した定着性を有するものとしながら、高グロス性がより高められた出力画像を与えるものとすることができる。
【0033】
また、第1実施形態で用いる結着樹脂を得るための、その他の重合性単量体として、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体以外のモノビニル単量体を使用してもよい。モノビニル単量体としては、たとえば、アクリル酸、およびメタクリル酸;アクリロニトリル、およびメタクリロニトリル等のニトリル化合物;アクリルアミド、およびメタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、およびブチレン等のオレフィン;が挙げられる。これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。第1実施形態における、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体以外のモノビニル単量体の使用量は、結着樹脂を得るために用いる重合性単量体全量100質量部中、好ましくは3質量部以下であり、より好ましくは0.1~2.5質量部、さらに好ましくは0.5~2.0質量部である。すなわち、第1実施形態で用いる結着樹脂中における、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体以外のモノビニル単量体単位の含有割合は、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは0.1~2.5質量%、さらに好ましくは0.5~2.0質量%である。
【0034】
また、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いると、トナーの保存性と低温定着性とのバランスが良好になるため、任意のマクロモノマーを用いることが好ましい。マクロモノマーとは、分子鎖の末端に重合可能な炭素-炭素不飽和結合を有するもので、数平均分子量(Mn)が、通常1,000~30,000の反応性の、オリゴマーまたはポリマーのことをいう。マクロモノマーは、マクロモノマーを重合せずに得られる重合体のTg(ガラス転移温度)よりも、高いTgを有する重合体を与えるものが好ましい。
【0035】
第1実施形態では、着色剤を用いるが、カラートナー(通常、ブラックトナー、シアントナー、イエロートナー、マゼンタトナーの4種類のトナーが用いられる。)を製造する場合、ブラック着色剤、シアン着色剤、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤をそれぞれ用いることができる。
【0036】
ブラック着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、チタンブラック、ならびに酸化鉄亜鉛、および酸化鉄ニッケル等の磁性粉等の顔料や染料を用いることができる。
【0037】
シアン着色剤としては、たとえば、銅フタロシアニン顔料、その誘導体、およびアントラキノン顔料や染料等の化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Blue2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、60等が挙げられる。
【0038】
イエロー着色剤としては、たとえば、モノアゾ顔料、およびジスアゾ顔料等のアゾ顔料、縮合多環顔料や染料等の化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Yellow3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、93、97、120、138、151、155、180、181、185、186、214、219、C.I.Solvent Yellow98、162、179等が挙げられる。
【0039】
マゼンタ着色剤としては、たとえば、モノアゾ顔料、およびジスアゾ顔料等のアゾ顔料、縮合多環顔料や染料等の化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Red31、48、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、251、、C.I.Solvent Violet31、47、59およびC.I.Pigment Violet19等が挙げられる。
【0040】
第1実施形態において、それぞれの着色剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよく、着色剤の使用量は、結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部に対して、好ましくは1~10質量部である。
【0041】
帯電制御剤としては、各種の正帯電性または負帯電性の帯電制御剤を用いることができる。たとえば、カルボキシル基または含窒素基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、およびニグロシン等の樹脂でない帯電制御剤;4級アンモニウム塩構造含有共重合体、スルホン酸基またはスルホン酸塩構造含有共重合体、およびカルボキシル基またはカルボン酸塩構造含有共重合体等の帯電制御樹脂;等を用いることができる。これらのなかでも、トナーの印字耐久性が良好になることから、帯電制御剤としては、帯電制御樹脂を含むものを用いることが好ましい。第1実施形態においては、帯電制御剤として、樹脂でない帯電制御剤と、帯電制御樹脂とを併用してもよいし、帯電制御樹脂を単独で用いてもよいが、トナーの印字耐久性の観点より、帯電制御樹脂を単独で用いることがより好ましい。帯電制御剤の使用量は、結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~8質量部である。
【0042】
また、第1実施形態では、増粘剤として、窒素原子を含む樹脂を用いる。このような樹脂として、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する樹脂を用いることが好ましく、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂を用いることがより好ましい。第1実施形態においては、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体からなる結着樹脂、着色剤、および帯電制御剤に加えて、増粘剤として、窒素原子を含む樹脂を、窒素原子が静電荷像現像用トナーに対し150~1500質量ppmの量にて含まれるように配合することにより、得られるトナーを、高温領域において安定した定着性を有しながら、高グロスな出力画像を与えるものとすることができる。特に、増粘剤として、窒素原子を有する樹脂を用い、かつ、このような窒素原子を有する樹脂を、トナーに対する、窒素原子の量が150~1500質量ppmとなる量にて配合することにより、窒素原子を含む樹脂(増粘剤)と、結着樹脂との間で水素結合を介した疑似架橋点(フレキシブルな架橋点)を形成させることができるものと推定され、第1実施形態によれば、これにより、架橋樹脂の弾性を維持しながら、疑似架橋点による耐熱性の向上が実現でき、結果として、高温領域において安定した定着性を有しながら、高グロスな出力画像を与えることができると考えられる。
【0043】
特に、着色剤として、ブラック着色剤を用いた場合には、他の着色剤を使用した場合と比較して、高温領域における定着性が低くなる傾向にある一方で、第1実施形態によれば、窒素原子を含む樹脂を配合することにより、その効果が大きいため、好ましい。
【0044】
窒素原子を含む樹脂としては、分子構造中に、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する樹脂であることが好ましく、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂であることがより好ましく、ウレア結合を有するポリエーテル樹脂であることがさらに好ましい。ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂としては、たとえば、エーテル結合を有する重合体または共重合体が挙げられ、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する、ポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、ポリオキシブチレン系ポリエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等が挙げられる。
【0045】
ウレタン結合(-NHCOO-結合)は、通常、イソシアネート化合物(R-NCO)と、ヒドロキシ化合物とが反応することにより形成される結合であり、また、ウレア結合(-NHCONH-結合)は、通常、イソシアネート化合物(R-NCO)と、アミノ化合物とが反応することにより形成される結合である。そして、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂を用いる場合における、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂中における、このようなイソシアネート化合物由来の単量体単位の含有割合(すなわち、ウレタン結合およびウレア結合の含有割合)は、高グロス性および高温領域における定着性をより適切に高めるという観点より、好ましくは0.15質量%以上であり、より好ましくは0.25~2.5質量%、さらに好ましくは0.50~2.0質量%である。なお、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂中における、このようなイソシアネート化合物由来の単量体単位の含有割合は、たとえば、公知の一般的な窒素元素を定量可能な分析方法により求めることができる。
【0046】
ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂は、たとえば、ポリイソシアネートや、ポリエーテルポリオール、ポリアミンを用いて合成される。
【0047】
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネートや芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの環状構造を有するポリイソシアネート;などが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
これらは、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイドおよびポリオール類の付加重合物;(ポリ)アルキレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α-オレフィンオキサイドなどが挙げられる。
また、アルキレンオキサイドと付加重合するポリオール類としては、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4-ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4-ジヒドロキシフェニルメタン、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジメチロール尿素およびその誘導体などのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールメラミンおよびその誘導体、ポリオキシプロピレントリオールなどのトリオール;などが挙げられる。
グリコール類としては、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの(ポリ)アルキレングリコール;エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体;などが挙げられる。
これらは、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
ポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
脂肪族ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、(N-アミノエチル)―2-エタノールアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなどが挙げられる。
芳香族ポリアミンとしては、1,2-、1,3-および1,4-フェニレンジアミン、2,4’-および4,4’-ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4-ジアミノフェニル)スルホン、2,6-ジアミノピリジン、m-アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン-4,4’,4’ ’-トリアミン、ナフチレンジアミン、2,4-および2,6-トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ビス(o-トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3-ジメチル-2,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジメチル-2,6-ジアミノベンゼン、1,4-ジイソプロピル-2,5-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノメシチレン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、2,3-ジメチル-1,4-ジアミノナフタレン、2,6-ジメチル-1,5-ジアミノナフタレン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,5-ジエチル-3’-メチル-2’,4-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-2,2’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,5,5’-テトライソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
これらは、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
第1実施形態で用いる窒素原子を含む樹脂は、第1実施形態に係る発明の効果が得られやすいという観点より、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは800~10000、より好ましくは1000~5000、さらに好ましくは1200~3000である。重量平均分子量(Mw)は、たとえば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により、ポリスチレン換算の値にて求めることができ、具体的な測定条件例を以下に示す。
精秤した樹脂0.1gをそれぞれ100mLガラス製サンプル瓶に入れた後、テトラヒドロフラン(THF)49.9gをそれぞれ加えた。次に、スターラーチップを入れ、マグネティックスターラーを用いて室温で1時間攪拌後、0.2μmPTFE製フィルターで濾過し、樹脂のTHF溶液を得る。最後に、THF溶液のそれぞれ100μLをGPC測定装置に注入してGPC測定する。重量平均分子量(Mw)は、得られたGPCの溶出曲線を基に市販の単分散標準ポリスチレンによる検量線から換算する。
(GPC測定条件)
GPC:HLC-8220(東ソー社製)
カラム:TSK-GEL MULTIPORE HXL-M 2本直結(東ソー製)
溶離液:THF
流量:1.0mL/min
温度:40℃
【0051】
また、第1実施形態で用いる窒素原子を含む樹脂は、低温定着性の観点より、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは50~120℃、より好ましくは60~110℃、さらに好ましくは70~100℃である。
【0052】
第1実施形態のトナーにおいては、上記増粘剤に由来する窒素原子の含有量が、トナーに対し150~1500質量ppmであり、これによって、高グロスが得られ、かつ、高温領域において安定した定着性を示すことができる。上記増粘剤に由来する窒素原子の含有量は、好ましくは200~1300質量ppmであり、より好ましくは250~1200質量ppm、さらに好ましくは400~1000質量ppmである。上記増粘剤に由来する窒素原子の含有量は、増粘剤としての樹脂中に含まれる窒素原子の含有量と、増粘剤の使用量とを調整することによって、調整することができる。
上記窒素原子の含有量は、窒素測定装置を用いて、化学発光法により、測定することができる。トナーには、増粘剤以外の成分に由来する窒素原子が含有されることがあるが、上記窒素原子の含有量は、増粘剤に由来する窒素原子のみの含有量であるので、化学発光法により測定される窒素原子含有量から、増粘剤以外の成分に由来する窒素原子の含有量を減ずる必要がある。
【0053】
増粘剤としての窒素原子を含む樹脂の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上、また、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、さらに好ましくは2.2質量部以下、特に好ましくは2.0質量部以下である。窒素原子を含む樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、得られるトナーを、高グロス性を適切に高めながら、高温領域における定着性をより向上させることできる。
【0054】
なお、第1実施形態において、増粘剤としての窒素原子を含む樹脂を添加する際には、窒素原子を含む樹脂を溶媒に溶解して、溶液の状態で添加することが好ましく、これにより、窒素原子を含む樹脂の添加効果をより適切に発揮させることができる。溶媒としては、窒素原子を含む樹脂を溶解可能な溶媒であればよく、特に限定されないが、たとえば、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、N-ホルミルモルホリンなどが挙げられる。窒素原子を含む樹脂を溶媒に溶解して、溶液の状態で添加する際における、溶液中における窒素原子を含む樹脂の割合は、特に限定されないが、好ましくは10~60質量%、より好ましくは30~55質量%である。
【0055】
なお、窒素原子を含む樹脂としては、たとえば、市販品を用いてもよく、たとえば、ウレア結合を有するポリエーテル樹脂の市販品の例として、商品名:BYK-D410、BYK-410、BYK-D411(以上、いずれも、ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられ、これらは、ウレア結合を有するポリエーテル樹脂が、溶媒に溶解したものであるが、そのまま、あるいは、希釈して用いることができる。
【0056】
また、その他の添加物として、離型剤をさらに添加することが好ましい。離型剤を添加することにより、定着時におけるトナーの定着ロールからの離型性を改善できる。離型剤としては、一般にトナーの離型剤として用いられるものであれば、特に制限無く用いることができる。
離型剤としては、たとえば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどの低分子量ポリオレフィンワックス類;分子末端酸化低分子量ポリプロピレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量末端変性ポリプロピレン、およびこれらと低分子量ポリエチレンのブロックポリマー、分子末端酸化低分子量ポリエチレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量ポリエチレン、およびこれらと低分子量ポリプロピレンのブロックポリマーなどの末端変性ポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックスおよびその変性ワックス;モンタン、セレシン、オゾケライト等の鉱物系ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;多価アルコールの脂肪酸エステル化合物;これらの混合物などが挙げられる。
離型剤の中でも、多価アルコールの脂肪酸エステル化合物が、トナーの低温定着性を向上させ、印字耐久性を悪化させないことから好ましい。多価アルコールの脂肪酸エステル化合物としては、たとえば、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトララウレート等のペンタエリスリトールエステル;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサラウレート等のジペンタエリスリトールエステル;ポリグリセリンの脂肪酸エステル化合物;などが挙げられる。中でも、ペンタエリスリトールエステルが好ましい。
離型剤の使用量は、結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部に対して、その下限が、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、特に好ましくは12質量部以上であり、その上限が、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0057】
さらに、その他の添加物として、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤としては、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、および2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン-4-チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N、N’-ジメチル-N、N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、N、N’-ジオクタデシル-N、N’-ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。分子量調整剤は、重合開始前または重合途中に添加することができる。分子量調整剤の使用量は、結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0058】
第1実施形態においては、以上の各成分をメディア式分散機などで混合することで、重合性単量体組成物を調製することができる。第1実施形態においては、このようにして調整される重合性単量体組成物の25℃における粘度を、100~1000mPa・sの範囲とすることが好ましく、150~800mPa・sの範囲とすることがより好ましく、200~700mPa・sの範囲とすることがさらに好ましい。第1実施形態においては、重合性単量体組成物中に、増粘剤としての窒素原子を含む樹脂を含有させるため、その粘度が比較的高いものとなる一方で、窒素原子を含む樹脂を溶媒に溶解させて溶液の状態で添加するとともに、該溶液中における濃度を調整することで、重合性単量体組成物の粘度を調整することができる。重合性単量体組成物の25℃における粘度を、上記範囲とすることにより、得られるトナーを、高温領域における定着性により優れたものとすることができる。なお、重合性単量体組成物の25℃における粘度は、たとえば、B型粘度計を用いて測定することできる。
【0059】
(2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)
次いで、上記(1)重合性単量体組成物の調製工程により得られた重合性単量体組成物を、水系分散媒体中に分散させ、懸濁させることで懸濁液(重合性単量体組成物分散液)を得ることができる。ここで、懸濁とは、水系分散媒体中で重合性単量体組成物の液滴を形成させることを意味する。液滴形成のための分散処理は、たとえば、インライン型乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化・分散機(特殊機化工業社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行なうことができる。
【0060】
第1実施形態において、水系分散媒体は、水単独でもよいが、低級アルコール、および低級ケトン等の水に溶解可能な溶剤を併用することもできる。
【0061】
第1実施形態において、水系分散媒体には、分散安定化剤を含有させることが好ましい。分散安定化剤としては、たとえば、硫酸バリウム、および硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、および酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の金属化合物や、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、およびゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;等の有機化合物が挙げられる。
【0062】
上記分散安定化剤の中でも、金属化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定化剤は、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、洗浄後の分散安定化剤残存量が少ないので、得られるトナーは、画像を鮮明に再現することができ、特に、高温高湿下の画像品質を悪化させないので好ましい。
【0063】
上記分散安定化剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。分散安定化剤の添加量は、結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.2~10質量部である。
【0064】
また、重合性単量体組成物を、水系分散媒体中へ分散させた後、液滴形成前に、重合開始剤を添加することが好ましい。なお、重合開始剤は、上記(1)重合性単量体組成物の調製工程において添加してもよい。
【0065】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、および2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ-t-ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルブタノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、およびt-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;が挙げられる。これらの中で、残留重合性単量体を少なくすることができ、印字耐久性も優れることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0066】
重合開始剤の使用量は、結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.3~15質量部、さらに好ましくは1.0~10質量部である。
【0067】
(3)重合工程
上記(2)懸濁液を得る工程(液滴形成工程)により得られた、所望の懸濁液(重合性単量体組成物の液滴を含有する水系分散媒体)を加熱し、重合を開始させることで、着色樹脂粒子の水分散液が得られる。
【0068】
第1実施形態における重合温度は、50℃以上であることが好ましく、60~98℃であることがより好ましい。また、第1実施形態における重合時間は、1~20時間であることが好ましく、2~15時間であることがより好ましい。
【0069】
なお、重合性単量体組成物の液滴を安定に分散させた状態で重合を行うという観点より、重合工程においては、上記(2)懸濁液を得る工程(液滴形成工程)に引き続いて、攪拌による分散処理を行ないながら重合反応を進行させてもよい。
【0070】
第1実施形態において、このようにして得られる着色樹脂粒子に、そのまま外添剤を添加してトナーとして用いてもよいが、重合工程により得られる着色樹脂粒子をコア層とし、その外側にコア層と異なるシェル層を作ることで得られる、いわゆるコアシェル型(または、「カプセル型」ともいう)の着色樹脂粒子としてもよい。コアシェル型の着色樹脂粒子は、低軟化点の物質よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、トナーの定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができる。
【0071】
上記コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては、特に制限はなく従来公知の方法によって製造することができるが、in situ重合法や相分離法が、製造効率の観点から好ましい。
【0072】
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造法を以下に説明する。
in situ重合法においては、着色樹脂粒子が分散している水系分散媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)とシェル用重合開始剤を添加し、重合を行なうことでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
【0073】
シェル用重合性単量体としては、上述した重合性単量体と同様のものを用いることができる。その中でも、スチレン、メチルメタクリレート等のTgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0074】
シェル用重合性単量体の重合に用いるシェル用重合開始剤としては、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウム等の過硫酸金属塩;2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、および2,2’-アゾビス-(2-メチル-N-(1,1-ビス(ヒドロキシメチル)2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の水溶性のアゾ化合物;等の重合開始剤を挙げることができる。シェル用重合開始剤の使用量は、シェル用重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
【0075】
シェル層の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60~95℃である。また、シェル層の重合時間は、好ましくは1~20時間、より好ましくは2~15時間である。
【0076】
(4)洗浄、濾過、脱水、および乾燥工程
上記(3)重合工程により得られる着色樹脂粒子の水分散液に対し、重合終了後に、常法に従い、洗浄、濾過、脱水、および乾燥の一連の操作を、必要に応じて数回繰り返し行なうことが好ましい。
【0077】
まず、着色樹脂粒子の水分散液中に残存する分散安定化剤を除去するために、着色樹脂粒子の水分散液について、酸またはアルカリを添加し洗浄を行なうことが好ましい。使用した分散安定化剤が、酸に可溶な無機化合物である場合、着色樹脂粒子の水分散液へ酸を添加して、洗浄を行うことが好ましく、一方、使用した分散安定化剤が、アルカリに可溶な無機化合物である場合、着色樹脂粒子の水分散液へアルカリを添加して、洗浄を行うことが好ましい。
【0078】
また、分散安定化剤として、酸に可溶な無機化合物を使用した場合、着色樹脂粒子の水分散液へ酸を添加し、pHを、好ましくは6.5以下、より好ましくは6以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、および蟻酸、酢酸等の有機酸を用いることができるが、分散安定化剤の除去効率が大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0079】
(B)粉砕法
また、粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行なわれる。
まず、結着樹脂、着色剤、帯電制御剤および増粘剤としての窒素原子を含む樹脂、ならびに必要に応じて用いられる離型剤および分子量調整剤等のその他の添加物を混合機、たとえば、ボールミル、V型混合機、FMミキサー(商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー、フォールバーグ等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。さらに、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級することで、粉砕法により、着色樹脂粒子を得ることができる。
【0080】
なお、粉砕法で用いる結着樹脂、着色剤、帯電制御剤および増粘剤としての窒素原子を含む樹脂、ならびに必要に応じて用いられる離型剤および分子量調整剤等のその他の添加物は、上述の(A)懸濁重合法で挙げたものを用いることができる。また、粉砕法により得られる着色樹脂粒子は、上述の(A)懸濁重合法により得られる着色樹脂粒子と同じく、in situ重合法等の方法によりコアシェル型の着色樹脂粒子とすることもできる。
【0081】
(着色樹脂粒子)
上述の(A)懸濁重合法、または(B)粉砕法により着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとコアシェル型でないものの両方を含むものである。
【0082】
着色樹脂粒子の体積平均粒径Dvは、画像再現性の観点から、好ましくは3~15μmであり、より好ましくは4~12μm、さらに好ましくは4~9μm、特に好ましくは5~8μmである。着色樹脂粒子の体積平均粒径Dvが、上記範囲未満である場合には、トナーの流動性が低下し、カブリ等による画質の劣化が起り易くなる場合がある。一方、着色樹脂粒子の体積平均粒径Dvが、上記範囲を超える場合には、得られる画像の解像度が低下する場合がある。
【0083】
また、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比である粒径分布(Dv/Dp)は、画像再現性の観点から、好ましくは1.0~1.3であり、より好ましくは1.0~1.2である。上記着色樹脂粒子の粒径分布(Dv/Dp)が、上記範囲を超える場合には、トナーの流動性が低下し、カブリ等による画質の劣化が起り易くなる場合がある。なお、着色樹脂粒子の体積平均粒径Dv、および個数平均粒径Dpは、たとえば、粒度分析計(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)等を用いて測定することができる。
【0084】
上述した着色樹脂粒子は、そのままで、あるいは着色樹脂粒子にキャリア粒子(フェライト、および鉄粉等)を混合することで、トナーとして使用してもよいが、トナーの帯電性、流動性、保存性等を調整するために、高速撹拌機(たとえば、商品名:FMミキサー(日本コークス社製)等)を用いて、着色樹脂粒子に外添剤を添加・混合し、1成分トナーとしてもよいし、さらには、着色樹脂粒子および外添剤、さらにはキャリア粒子を混合し、2成分トナーとしてもよい。
【0085】
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、および酸化セリウム等からなる無機微粒子;ポリメタクリル酸メチル樹脂、シリコーン樹脂、およびメラミン樹脂等からなる有機微粒子などが挙げられる。この中でも、無機微粒子が好ましく、シリカおよび酸化チタンがより好ましく、シリカが特に好ましい。また、外添剤として、2種類以上の微粒子を併用することが好ましい。
【0086】
外添剤は、着色樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.1~6質量部の割合、より好ましくは0.2~5質量部の割合で用いることが望ましい。
【0087】
第1実施形態のトナーは、結着樹脂として、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体を用い、かつ、増粘剤として窒素原子を含む樹脂を配合することにより、高グロス性を示し、かつ、高温領域において優れた定着性、具体的には、優れた耐ホットオフセット性を実現することできるとともに、多枚数の連続印刷を行なっても、カブリ等による画質の劣化が起こり難く印字耐久性にも優れるトナーである。
【0088】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称することがある。)は、結着樹脂、着色剤および帯電制御剤を含む着色樹脂粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体であり、前記共重合体が架橋剤により架橋されており、前記架橋剤は架橋性樹脂を含み、前記架橋性樹脂が窒素原子を含む樹脂であり、このような窒素原子を有する樹脂を、静電荷像現像用トナーに対する、窒素原子の量が150~1500質量ppmとなる量にて含むものである。
【0089】
まず、第2実施形態のトナーを構成する着色樹脂粒子の製造方法について説明する。
【0090】
第2実施形態のトナーを構成する着色樹脂粒子の製造方法としては、上述した第1実施形態と同様に、乾式法と、湿式法とが挙げられ、湿式法が好ましく、乳化重合凝集法、分散重合法、および懸濁重合法等の重合法がより好ましく、これらのなかでも懸濁重合法がさらに好ましい。
【0091】
第2実施形態のトナーを構成する着色樹脂粒子は、湿式法、および乾式法のいずれでも製造することができるが、湿式法の中でも好ましい(A)懸濁重合法を採用し、または乾式法の中でも代表的な(B)粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行なわれる。まず、(A)懸濁重合法について説明する。
【0092】
(A)懸濁重合法
(1)重合性単量体組成物の調製工程
(A)懸濁重合法においては、まず、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤および架橋剤、さらに必要に応じて用いられる離型剤および分子量調整剤等のその他の添加物を混合、溶解して重合性単量体組成物の調製を行なう。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、たとえば、メディア式分散機を用いて行なう。
【0093】
第2実施形態において、重合性単量体とは、重合可能な化合物をいい、重合性単量体が重合することで結着樹脂となる。重合性単量体としては、得られる結着樹脂を、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体とするこという観点より、主として、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体を用いる。
【0094】
スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体としては、上述した第1実施形態と同様のものを用いることができ、結着樹脂中における、スチレン系単量体単位の含有割合および(メタ)アクリレート系単量体単位の含有割合も、上述した第1実施形態と同様とすることができる。
【0095】
また、第2実施形態で用いる結着樹脂を得るための重合性単量体として、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体以外の重合性単量体を用いてもよい。このようなその他の重合性単量体として、架橋性の重合性単量体を用いることが好ましく、架橋性の重合性単量体としては、上述した第1実施形態と同様のものを用いることができ、その使用量も、上述した第1実施形態と同様とすることができる。なお、第2実施形態で用いる結着樹脂を得るための重合性単量体は、重量平均分子量(Mw)が、500以下であることが好ましい。
【0096】
また、第2実施形態で用いる結着樹脂を得るための、その他の重合性単量体として、スチレン系単量体および(メタ)アクリレート系単量体以外のモノビニル単量体を使用してもよく、モノビニル単量体としては、上述した第1実施形態と同様のものを用いることができ、その使用量も、上述した第1実施形態と同様とすることができる。
【0097】
さらに、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いると、トナーの保存性と低温定着性とのバランスが良好になるため、任意のマクロモノマーを用いることが好ましい。マクロモノマーとしては、第1実施形態と同様のものを用いることができる。
【0098】
また、第2実施形態のトナーにおいては、結着樹脂として、架橋性樹脂を含む架橋剤により架橋された共重合体を用いる。第2実施形態において、架橋性樹脂とは、架橋性基を有する樹脂を意味し、したがって、架橋性樹脂には、架橋性の重合性単量体は含まれない。架橋性樹脂は、架橋性基を2個以上有することが好ましく、架橋性基を2~4個有することがより好ましい。
【0099】
第2実施形態のトナーにおいては、架橋剤として、窒素原子を含む架橋性樹脂を用い、なおかつ、第2実施形態のトナーに対する、架橋性樹脂に由来する窒素原子の含有量を、150~1500質量ppmに調整する。
【0100】
第2実施形態のトナーにおいて、共重合体を架橋する際に、架橋剤として、窒素原子を含む架橋性樹脂を、窒素原子の含有量が上記の範囲となるように用いることにより、得られるトナーを、高温領域において安定した定着性を有しながら、高グロスな出力画像を与えるものとすることができる。特に、架橋性樹脂として、架橋性基と窒素原子を含み、架橋性基が2個以上である樹脂を特定の量で配合することにより、共重合体分子間あるいは共重合体の単一分子内で柔軟な架橋構造が適切な量で形成されるものと推定され、第2実施形態のトナーによれば、これにより、結着樹脂の弾性を維持しながら、架橋点による耐熱性の向上が実現でき、結果として、高温領域において安定した定着性を有しながら、高グロスな出力画像を与えることができると考えられる。
【0101】
特に、着色剤として、ブラック着色剤を用いた場合には、他の着色剤を使用した場合と比較して、高温領域における定着性が低くなる傾向にある一方で、第2実施形態のトナーによれば、窒素原子を含む架橋性樹脂を配合することにより、その効果が大きいため、好ましい。
【0102】
第2実施形態のトナーにおいては、上記架橋性樹脂に由来する窒素原子の含有量が、トナーに対し150~1500質量ppmであり、これによって、高グロスが得られ、かつ、高温領域において安定した定着性を示すことができる。上記架橋性樹脂に由来する窒素原子の含有量は、好ましくは300~1500質量ppmであり、より好ましくは350~1200質量ppmであり、さらに好ましくは400~900質量ppmである。上記架橋性樹脂に由来する窒素原子の含有量は、架橋性樹脂中に含まれる窒素原子の含有量と、架橋性樹脂の使用量とを調整することによって、調整することができる。
【0103】
上記窒素原子の含有量は、窒素測定装置を用いて、化学発光法により、測定することができる。第2実施形態のトナーには、架橋性樹脂以外の成分に由来する窒素原子が含有されることがあるが、上記窒素原子の含有量は、架橋性樹脂に由来する窒素原子のみの含有量であるので、化学発光法により測定される窒素原子の含有量から、架橋性樹脂以外の成分に由来する窒素原子の含有量を減ずる必要がある。
【0104】
第2実施形態で用いる架橋性樹脂が有する架橋性基としては、特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(CH2=CH-)、ビニリデン基(CH2=C<)、ビニレン基(-CH=CH-)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。本明細書において、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を意味する。
【0105】
第2実施形態で用いる架橋性樹脂としては、分子構造中に、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する樹脂であることが好ましく、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂であることがより好ましい。ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂としては、たとえば、エーテル結合を有する重合体または共重合体が挙げられ、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する、ポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、ポリオキシブチレン系ポリエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等が挙げられる。
【0106】
共重合体を架橋する際に、架橋剤として、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂を含むものを用いることにより、得られるトナーを、高温領域において安定した定着性を有しながら、高グロスな出力画像を与えるものとすることができる。特に、架橋性樹脂として、架橋性基と、ウレタン結合および/またはウレア結合とを有し、架橋性基が2個以上であるポリエーテル樹脂を配合することにより、共重合体分子間あるいは共重合体の単一分子内で柔軟な架橋構造が形成されるものと推定され、第2実施形態のトナーによれば、これにより、結着樹脂の弾性を維持しながら、架橋点による耐熱性の向上が実現でき、結果として、高温領域において安定した定着性を有しながら、高グロスな出力画像を与えることができると考えられる。
【0107】
第2実施形態で用いる架橋性樹脂としては、なかでも、架橋性基として、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有しており、かつ、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂が好ましい。
【0108】
特に、着色剤として、ブラック着色剤を用いた場合には、他の着色剤を使用した場合と比較して、高温領域における定着性が低くなる傾向にある一方で、第2実施形態によれば、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する架橋性樹脂を配合することにより、その効果が大きいため、好ましい。
【0109】
ウレタン結合(-NHCOO-結合)は、通常、イソシアネート化合物(R-NCO)と、ヒドロキシ化合物とが反応することにより形成される結合であり、また、ウレア結合(-NHCONH-結合)は、通常、イソシアネート化合物(R-NCO)と、アミノ化合物とが反応することにより形成される結合である。そして、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂を用いる場合における、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂中における、このようなイソシアネート化合物由来の単量体単位の含有割合(すなわち、ウレタン結合およびウレア結合の含有割合)は、高グロス性および高温領域における定着性をより適切に高めるという観点より、好ましくは0.15質量%以上であり、より好ましくは0.25~2.5質量%、さらに好ましくは0.50~2.0質量%である。なお、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂中における、このようなイソシアネート化合物由来の単量体単位の含有割合は、たとえば、公知の一般的な窒素元素を定量可能な分析方法により求めることができる。
【0110】
第2実施形態で用いられるウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂は、たとえば、ポリイソシアネートや、ポリエーテルポリオール、ポリアミンを用いて合成される。
【0111】
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネートや芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられ、その具体例としては、上述した第1実施形態で例示されているものと同様のものが挙げられる。
【0112】
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイドおよびポリオール類の付加重合物;(ポリ)アルキレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられ、その具体例としては、上述した第1実施形態で例示されているものと同様のものと同様のものが挙げられる。
【0113】
ポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンなどが挙げられ、その具体例としては、上述した第1実施形態で例示されているものと同様のものと同様のものが挙げられる。
【0114】
第2実施形態で用いる架橋性樹脂は、本願の効果が得られやすいという観点より、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは800~10000、より好ましくは1000~5000、さらに好ましくは1200~3000である。重量平均分子量(Mw)は、たとえば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により、ポリスチレン換算の値にて求めることができ、具体的には、上述した第1実施形態と同様の条件にて測定することができる。
【0115】
また、第2実施形態で用いる架橋性樹脂は、低温定着性の観点より、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは50~120℃、より好ましくは60~110℃、さらに好ましくは70~100℃である。
【0116】
架橋剤の使用量は、結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.3~5.0質量部、より好ましくは0.5~4.0質量部である。架橋剤の使用量を上記範囲とすることにより、得られるトナーを、高グロス性を適切に高めながら、高温領域における定着性をより向上させることできる。
【0117】
なお、第2実施形態において、架橋剤を添加する際には、架橋剤を溶媒に溶解して、溶液の状態で添加することが好ましく、これにより、架橋剤の添加効果をより適切に発揮させることができる。溶媒としては、架橋剤を溶解可能な溶媒であればよく、特に限定されないが、たとえば、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、N-ホルミルモルホリンなどが挙げられる。架橋剤を溶媒に溶解して、溶液の状態で添加する際における、溶液中における架橋剤の割合は、特に限定されないが、好ましくは10~60質量%、より好ましくは30~55質量%である。
【0118】
なお、架橋剤としては、市販品を用いてもよく、たとえば、(メタ)アクリロイル基ならびにウレタン結合および/またはウレア結合を有するポリエーテル樹脂の市販品の例として、商品名:TA-640BU2(日油社製)などが挙げられる。
【0119】
第2実施形態では、着色剤及び帯電制御剤を用いるが、着色剤及び帯電制御剤としては、上述した第1実施形態と同様のものを用いることができる。
【0120】
また、その他の添加物として、離型剤をさらに添加することが好ましい。離型剤としては、上述した第1実施形態と同様のものを用いることができ、その使用量も、上述した第1実施形態と同様とすることができる。
【0121】
さらに、その他の添加物として、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤としては、上述した第1実施形態と同様のものを用いることができ、その使用量も、上述した第1実施形態と同様とすることができる。
【0122】
第2実施形態においては、以上の各成分をメディア式分散機などで混合することで、重合性単量体組成物を調製することができる。第2実施形態においては、このようにして調製される重合性単量体組成物の25℃における粘度を、上述した第1実施形態と同様の理由より、上述した第1実施形態と同様の範囲とすることが好ましい。
【0123】
(2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)
次いで、上記(1)重合性単量体組成物の調製工程により得られた重合性単量体組成物を、水系分散媒体中に分散させ、懸濁させることで懸濁液(重合性単量体組成物分散液)を得ることができる。第2実施形態においては、上記(1)重合性単量体組成物の調製工程により得られた重合性単量体組成物を用いる以外は、上述した第1実施形態と同様にして、懸濁液を得ることができる。
【0124】
(3)重合工程
上記(2)懸濁液を得る工程(液滴形成工程)により得られた、所望の懸濁液(重合性単量体組成物の液滴を含有する水系分散媒体)を加熱し、重合を開始させることで、着色樹脂粒子の水分散液が得られる。第2実施形態においては、上記(2)懸濁液を得る工程により得られた懸濁液を用いる以外は、上述した第1実施形態と同様にして、着色樹脂粒子の水分散液を得ることができる。
【0125】
(4)洗浄、濾過、脱水、および乾燥工程
上記(3)重合工程により得られる着色樹脂粒子の水分散液に対し、重合終了後に、常法に従い、洗浄、濾過、脱水、および乾燥の一連の操作を、必要に応じて数回繰り返し行なうことが好ましく、これらは上述した第1実施形態と同様の方法にて行うことができる。
【0126】
(B)粉砕法
また、粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行なわれる。
まず、結着樹脂、着色剤および帯電制御剤、ならびに必要に応じて用いられる離型剤および分子量調整剤等のその他の添加物を上述した第1実施形態と同様の混合機を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を用い、上述した第1実施形態と同様の方法により、着色樹脂粒子を得ることができる。
【0127】
なお、粉砕法で用いる結着樹脂、着色剤および帯電制御剤、ならびに必要に応じて用いられる離型剤および分子量調整剤等のその他の添加物は、上述の(A)懸濁重合法で挙げたものを用いることができる。また、粉砕法により得られる着色樹脂粒子は、上述の(A)懸濁重合法により得られる着色樹脂粒子と同じく、コアシェル型の着色樹脂粒子とすることもできる。
【0128】
(着色樹脂粒子)
上述の(A)懸濁重合法、または(B)粉砕法により着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとコアシェル型でないものの両方を含むものである。
【0129】
着色樹脂粒子の体積平均粒径Dvは、画像再現性の観点から、好ましくは3~15μmであり、より好ましくは4~9μm、さらに好ましくは5~8μmである。着色樹脂粒子の体積平均粒径Dvが、上記範囲未満である場合には、トナーの流動性が低下し、カブリ等による画質の劣化が起り易くなる場合がある。一方、着色樹脂粒子の体積平均粒径Dvが、上記範囲を超える場合には、得られる画像の解像度が低下する場合がある。
【0130】
また、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比である粒径分布(Dv/Dp)は、画像再現性の観点から、好ましくは1.0~1.3であり、より好ましくは1.0~1.2である。上記着色樹脂粒子の粒径分布(Dv/Dp)が、上記範囲を超える場合には、トナーの流動性が低下し、カブリ等による画質の劣化が起り易くなる場合がある。なお、着色樹脂粒子の体積平均粒径Dv、および個数平均粒径Dpは、上述した第1実施形態と同様の方法にて測定することができる。
【0131】
上述した着色樹脂粒子は、そのままで、あるいは着色樹脂粒子にキャリア粒子(フェライト、および鉄粉等)を混合することで、トナーとして使用してもよいが、トナーの帯電性、流動性、保存性等を調整するために、高速攪拌機(たとえば、商品名:FMミキサー(日本コークス社製)等)を用いて、着色樹脂粒子に外添剤を添加・混合し、1成分トナーとしてもよいし、さらには、着色樹脂粒子および外添剤、さらにはキャリア粒子を混合し、2成分トナーとしてもよい。
【0132】
外添剤としては、上述した第1実施形態と同様のものを用いることができ、その使用量も、上述した第1実施形態と同様とすることができる。
【0133】
第2実施形態のトナーは、結着樹脂として、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含み、かつ、特定の条件で架橋された共重合体を配合することによって、高グロス性を示し、かつ、高温領域において優れた定着性、具体的には、優れた耐ホットオフセット性を実現することできるトナーである。
【実施例】
【0134】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例および比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0135】
(1)トナー中の増粘剤由来の窒素原子含有量、およびトナー中の架橋性樹脂由来の窒素原子含有量の測定
トナー中の増粘剤由来の窒素原子含有量、およびトナー中の架橋性樹脂由来の窒素原子含有量の測定は、窒素測定装置を用いて、化学発光法により行なった。具体的には、トナーサンプルを触媒存在下で熱分解し、トナー中の窒素成分を酸化して得た一酸化窒素ガスをオゾンと反応させることで生じる化学発光の光の強度を測定し、予め作成した検量線を用いてトナー中の窒素原子含有量を定量した。実施例1-1~1-7および比較例1-1~1-4のトナーの窒素原子含有量と、増粘剤を用いていないトナー(比較例1-1)の窒素原子含有量との差を、トナー中の増粘剤由来の窒素原子含有量とした。また、実施例2-1~2-4および比較例2-1~2-3のトナーの窒素原子含有量と、架橋性樹脂を用いていないトナー(比較例2-1)の窒素原子含有量の差によってトナー中の架橋性樹脂由来の窒素原子含有量を算出した。
【0136】
(2)重合性単量体組成物の粘度
重合性単量体組成物の粘度の測定は、B型粘度計(ブルックフィールド社製、機器名「デジタル・レオメータDV-I+」)を用いて行なった。具体的には、重合性単量体組成物の温度を、恒温水槽を用いて25℃にしたのち、スピンドル回転数60rpmで、1分間スピンドルを回転させた後、粘度を測定した。上記スピンドルは、下記の測定粘度範囲により、以下のものを用いた。
100mPa・s未満:スピンドルNo.1
100mPa・s以上、200mPa・s未満:スピンドルNo.2
200mPa・s以上、1,500mPa・s未満:スピンドルNo.3
【0137】
(3)着色樹脂粒子の体積平均粒径Dv、および粒径分布Dv/Dp
測定試料(着色樹脂粒子)を約0.1g秤量し、ビーカーに取り、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸水溶液(富士フィルム社製、商品名:ドライウエル)0.1mlを加えた。そのビーカーへ、さらにアイソトンIIを10~30mL加え、20Wの超音波分散機で3分間分散させた後、粒径測定機(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)を用いて、アパーチャー径;100μm、媒体;アイソトンII、測定粒子個数;100,000個の条件下で、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、および個数平均粒径(Dp)を測定し、粒径分布(Dv/Dp)を算出した。
【0138】
(4)グロスの評価
市販の非磁性一成分現像方式のプリンターの定着ロール部の温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、ベタ画像の紙面上トナー量が0.30(mg/cm2)となるようにプリンターの調整を行った後、定着ロールの温度(定着温度)を170℃として、5cm四方のベタ画像を用紙(Xerox社製、商品名:Vitality)に印字した。得られた5cm四方のベタ画像を、グロスメーター(日本電色工業社製、商品名:VGS-SENSOR)を用いて、入射角60°によりグロスの値を測定した。なお、グロスの値は、大きい程光沢感があることを示す。
【0139】
(5)ホットオフセット温度
上記(4)グロスの評価と同様の改造プリンターを用いて、ホットオフセット試験を行った。ホットオフセット試験は、定着ロール部の温度を150℃から5℃ずつ230℃まで変化させて、黒ベタ(印字濃度100%)、および白ベタ(印字濃度0%)の印字領域を有する印字パターンを印刷し、それぞれの温度で、白ベタ(印字濃度0%)の印字領域に印字汚れが認められた際に、定着ロールにトナーの融着が発生していないか、すなわち、ホットオフセット現象の有無を目視にて観察した。このホットオフセット試験においては、定着ロールにトナーの融着が発生した最低の設定温度を、ホットオフセット温度とした。
【0140】
(6)常温常湿(N/N)環境下での印字耐久性試験
市販の非磁性一成分現像方式プリンター(解像度600dpi、印刷速度28枚/分)を用いて、印字用紙をセットし、現像装置のトナーカートリッジに、トナーを充填した後、印字用紙をセットした。温度23℃、湿度50%RHの常温常湿(N/N)環境の各環境下で24時間放置した後、同環境にて、5%印字濃度で10,000枚まで連続印字を行なった。500枚毎にベタ印字(印字濃度100%)をして反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名:RD918)でそのベタ印字部の印字濃度を測定した。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行ない、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製、製品名:スコッチメンディングテープ810-3-18)に付着させ、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B-A)をかぶり値とした。この値が小さい方が、かぶりが少なく良好であることを示す。
印字濃度が1.3以上で、かつ、カブリ値が5以下の画質を維持できる連続印字枚数を調べ、下記基準で評価した。
〇:上記基準での印刷が可能であった連続印字枚数が10000枚以上
△:上記基準での印刷が可能であった連続印字枚数が7000枚以上、10000枚未満
×:上記基準での印刷が可能であった連続印字枚数が7000枚未満
【0141】
(実施例1-1)
モノビニル単量体としてスチレン77部およびアクリル酸n-ブチル23部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.3部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:♯25B)12部、帯電制御剤として正帯電性帯電制御樹脂(藤倉化成社製、商品名:FCA-676P、4級アンモニウム塩含有スチレン/アクリル樹脂)5.0部、分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン1.0部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6、Tg=94℃)0.1部、離型剤としてペンタエリスリトールテトラステアレート20部、および増粘剤としてウレア結合を有するポリエーテル樹脂の50%ジメチルスルホキシド溶液(ビックケミー・ジャパン社製、商品名:BYK-D410)0.5部(ウレア結合を有するポリエーテル樹脂換算で0.25部、窒素原子の含有量がトナーに対し153質量ppmとなる量)を、攪拌装置で攪拌、混合した後、さらにメディア式分散機により、均一に分散させることで、重合性単量体組成物を得た。そして、得られた重合性単量体組成物について、上記方法に従って、粘度の測定を行った。重合性単量体組成物の粘度を表1に示す。
なお、実施例1-1で使用したウレア結合を有するポリエーテル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が1500であり、ガラス転移温度(Tg)が94.5℃であった。
【0142】
他方、室温下で、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)9.0部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)7.0部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。
【0143】
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、上記にて得られた重合性単量体組成物を投入し、さらに攪拌して、そこへ重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルブタノエート4.4部を添加した後、高速乳化・分散機(特殊機化工業社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)を用いて、12,000rpmの回転数で高速剪断攪拌して分散を行なうことで、重合性単量体組成物の液滴形成を行なった。
【0144】
次いで、上記にて液滴形成された重合性単量体組成物の水分散液を、反応器上部から投入し、89℃に昇温して重合反応を行ない、重合転化率が95%に達したときに、シェル用重合性単量体としてメチルメタクリレート1部、およびイオン交換水10部に溶解した水溶性のシェル用重合開始剤である2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド)0.1部を添加した。さらに3時間、温度を90℃に維持して、重合を継続した後、水冷して反応を停止し、着色樹脂粒子の水分散液を得た。なお、着色樹脂粒子中に含まれる結着樹脂を構成する各単量体単位の割合は、仕込み量とほぼ同じ割合であった(後述する実施例1-2~1-7、比較例1-1~1-4においても同様。)。
【0145】
次いで、上記にて得られた着色樹脂粒子の水分散液に、pHが6.5以下となるまで硫酸を滴下することによって、攪拌しながら酸洗浄を行なった。そして、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えて再スラリー化し、水洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を室温(25℃)で数回繰り返し行なって、得られた固形分を濾過分離した後、真空乾燥機の容器内に入れ、圧力30torr、温度50℃の条件下で、72時間真空乾燥を行なうことで、乾燥した着色樹脂粒子を得た。得られた着色樹脂粒子を用いて、上記した方法にしたがって、体積平均粒径Dv、および粒径分布Dv/Dpの測定を行った。結果を表1に示す。
【0146】
次いで、上記により得られた着色樹脂粒子100部に、疎水化処理された個数平均一次粒径が7nmのシリカ微粒子0.5部、および疎水化処理されたBET比表面積が50m2/gのシリカ微粒子1.2部を添加し、高速攪拌機(日本コークス社製、商品名:FMミキサー)を用いて、混合攪拌して外添処理を行なうことで、実施例1-1の静電荷像現像用トナーを作製した。そして、得られた静電荷像現像用トナーを用いて、上記した方法に従って、増粘剤由来の窒素原子含有量の測定、グロスの評価、ホットオフセット温度の測定、および常温常湿(N/N)環境下での印字耐久性試験を行った。結果を表1に示す。
【0147】
(実施例1-2)
増粘剤の使用量を1.0部(ウレア結合を有するポリエーテル樹脂換算で0.5部、窒素原子の含有量がトナーに対し306質量ppmとなる量)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0148】
(実施例1-3)
増粘剤の使用量を1.5部(ウレア結合を有するポリエーテル樹脂換算で0.75部、窒素原子の含有量がトナーに対し459質量ppmとなる量)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0149】
(実施例1-4)
増粘剤の使用量を2.0部(ウレア結合を有するポリエーテル樹脂換算で1.0部、窒素原子の含有量がトナーに対し613質量ppmとなる量)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0150】
(実施例1-5)
増粘剤の使用量を3.0部(ウレア結合を有するポリエーテル樹脂換算で1.5部、窒素原子の含有量がトナーに対し920質量ppmとなる量)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0151】
(実施例1-6)
増粘剤として、ウレア結合を有するポリエーテル樹脂の50%N-メチル-2-ピロリドン溶液(ビックケミー・ジャパン社製、商品名:BYK-410)4.0部(ウレア結合を有するポリエーテル樹脂換算で2.0部、窒素原子の含有量がトナーに対し1227質量ppmとなる量)を使用した以外は、実施例1-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
なお、実施例1-6で使用したウレア結合を有するポリエーテル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が1500であり、ガラス転移温度(Tg)が94.5℃であった。
【0152】
(実施例1-7)
増粘剤として、ウレア結合を有するポリエーテル樹脂の50%N-メチル-2-ピロリドン溶液(ビックケミー・ジャパン社製、商品名:BYK-411)3.0部(ウレア結合を有するポリエーテル樹脂換算で1.5部、窒素原子の含有量がトナーに対し520質量ppmとなる量)を使用した以外は、実施例1-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
なお、実施例1-7で使用したウレア結合を有するポリエーテル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が1800であった。
【0153】
(比較例1-1)
増粘剤を配合しなかった以外は、実施例1-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0154】
(比較例1-2)
ジビニルベンゼンの配合量を0.6部に変更した以外は、比較例1-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0155】
(比較例1-3)
増粘剤の使用量を0.2部(ウレア結合を有するポリエーテル樹脂換算で0.1部、窒素原子の含有量がトナーに対し61質量ppmとなる量)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0156】
(比較例1-4)
増粘剤として、ウレア結合を有するポリエーテル樹脂の50%N-メチル-2-ピロリドン溶液(ビックケミー・ジャパン社製、商品名:BYK-411)9.0部(ウレア結合を有するポリエーテル樹脂換算で4.5部、窒素原子の含有量がトナーに対し1533質量ppmとなる量)を使用した以外は、実施例1-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0157】
【表1】
表1中、増粘剤の使用量は、溶媒を含有しない増粘剤のみの使用量を示した。
【0158】
(実施例1-1~1-7、比較例1-1~1-4の評価)
表1より、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含む共重合体からなる結着樹脂、着色剤、帯電制御剤、および増粘剤としての窒素原子を含む樹脂を含む着色樹脂粒子を含有し、増粘剤に由来する窒素原子の含有量が静電荷像現像用トナーに対し150~1500質量ppmである静電荷像現像用トナーによれば、高グロスが得られ、かつ、ホットオフセット温度が高く、高温領域において安定した定着性を示すものであり、しかも、印字耐久性も良好であった(実施例1-1~1-7)。
一方、増粘剤としての窒素原子を含む樹脂を配合しない場合には、ホットオフセット温度が低く、高温領域における定着性に劣る結果となり(比較例1-1)、また、ホットオフセット温度を高めるために、架橋性の重合性単量体の使用量を増加させると、ホットオフセット温度は高くなるものの、高グロス性に劣る結果となった(比較例1-2)。
さらに、増粘剤に含まれる窒素原子の含有量が150質量ppm未満である場合には、ホットオフセット温度が低く、高温領域における定着性に劣る結果となり(比較例1-3)、増粘剤に含まれる窒素原子の含有量が1500質量ppmより多い場合には、印字耐久性に劣る結果となった(比較例1-4)。
【0159】
(実施例2-1)
モノビニル単量体としてスチレン77部およびアクリル酸n-ブチル23部、架橋剤として、ウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル樹脂である架橋性樹脂(日油社製、商品名:TA-640BU2、(メタ)アクリロイル基を3個有する)0.7部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:♯25B)12部、帯電制御剤として正帯電性帯電制御樹脂(藤倉化成社製、商品名:FCA-676P、4級アンモニウム塩含有スチレン/アクリル樹脂)5.0部、分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン1.0部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6、Tg=94℃)0.1部、離型剤としてペンタエリスリトールテトラステアレート20部を、攪拌装置で攪拌、混合した後、さらにメディア式分散機により、均一に分散させることで、重合性単量体組成物を得た。
なお、実施例2-1で使用したウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が2300であった。
【0160】
他方、室温下で、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)9.0部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)7.0部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。
【0161】
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、上記にて得られた重合性単量体組成物を投入し、さらに攪拌して、そこへ重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルブタノエート4.4部を添加した後、高速乳化・分散機(特殊機化工業社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)を用いて、12,000rpmの回転数で高速剪断攪拌して分散を行なうことで、重合性単量体組成物の液滴形成を行なった。
【0162】
次いで、上記にて液滴形成された重合性単量体組成物の水分散液を、反応器上部から投入し、89℃に昇温して重合反応を行ない、重合転化率が95%に達したときに、シェル用重合性単量体としてメチルメタクリレート1部、およびイオン交換水10部に溶解した水溶性のシェル用重合開始剤である2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド)0.1部を添加した。さらに3時間、温度を90℃に維持して、重合を継続した後、水冷して反応を停止し、着色樹脂粒子の水分散液を得た。なお、着色樹脂粒子中に含まれる結着樹脂を構成する各単量体単位の割合は、仕込み量とほぼ同じ割合であった(後述する実施例1-2~1-4、比較例1-1~1-3においても同様。)。
【0163】
次いで、上記にて得られた着色樹脂粒子の水分散液に、pHが6.5以下となるまで硫酸を滴下することによって、攪拌しながら酸洗浄を行なった。そして、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えて再スラリー化し、水洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を室温(25℃)で数回繰り返し行なって、得られた固形分を濾過分離した後、真空乾燥機の容器内に入れ、圧力30torr、温度50℃の条件下で、72時間真空乾燥を行なうことで、乾燥した着色樹脂粒子を得た。得られた着色樹脂粒子を用いて、上記した方法にしたがって、体積平均粒径Dv、および粒径分布Dv/Dpの測定を行った。結果を表2に示す。
【0164】
次いで、上記により得られた着色樹脂粒子100部に、外添剤として、疎水化処理された個数平均一次粒径が7nmのシリカ微粒子0.5部、および疎水化処理されたBET比表面積が50m2/gのシリカ微粒子1.2部を添加し、高速攪拌機(日本コークス社製、商品名:FMミキサー)を用いて、混合攪拌して外添処理を行なうことで、実施例2-1の静電荷像現像用トナーを作製した。そして、得られた静電荷像現像用トナーを用いて、上記した方法に従って、架橋性樹脂由来の窒素原子含有量の測定、グロスの評価およびホットオフセット温度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0165】
(実施例2-2)
架橋剤の使用量を1.0部に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0166】
(実施例2-3)
架橋剤の使用量を1.3部に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0167】
(実施例2-4)
架橋剤の使用量を1.6部に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0168】
(比較例2-1)
架橋剤として、架橋性樹脂を用いず、架橋性の重合性単量体として、ジビニルベンゼンを0.3部使用した以外は、実施例2-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0169】
(比較例2-2)
ジビニルベンゼンの配合量を0.6部に変更した以外は、比較例2-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0170】
(比較例2-3)
架橋剤として、ウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を有する水素化ポリブタジエン樹脂である架橋性樹脂(日本曹達社製、商品名:TEAI-1000、(メタ)アクリロイル基を2個有する)を2部使用した以外は、実施例2-1と同様にして、静電荷像現像用トナーを得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0171】
【0172】
(実施例2-1~2-4、比較例2-1~2-3の評価)
表2より、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリレート系単量体単位とを含み、かつ、特定の条件で架橋剤により架橋された共重合体からなる結着樹脂、着色剤、および帯電制御剤を含む着色樹脂粒子を含有する静電荷像現像用トナーによれば、高グロスが得られ、かつ、ホットオフセット温度が高く、高温領域において安定した定着性を示すものであった(実施例2-1~2-4)。
一方、特定の条件で架橋剤により架橋された共重合体からなる結着樹脂を配合しない場合には、高グロス性と高ホットオフセット温度を両立できない結果となった(比較例2-1、2-2)。
比較例2-3では、高グロス性には優れるものの、ホットオフセット温度に劣る結果となった。