IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サウジ アラビアン オイル カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許-地層の構造トモグラフィ特性の特定 図1
  • 特許-地層の構造トモグラフィ特性の特定 図2A
  • 特許-地層の構造トモグラフィ特性の特定 図2B
  • 特許-地層の構造トモグラフィ特性の特定 図3
  • 特許-地層の構造トモグラフィ特性の特定 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】地層の構造トモグラフィ特性の特定
(51)【国際特許分類】
   E21B 47/12 20120101AFI20230111BHJP
【FI】
E21B47/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020531505
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018061932
(87)【国際公開番号】W WO2019112790
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】15/833,782
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ハワード ケー.
(72)【発明者】
【氏名】セルヴィン,ヘスス マヌエル フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェディング,フローデ
(72)【発明者】
【氏名】コロンボ,ダニエレ
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-507446(JP,A)
【文献】特開昭62-262803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0017687(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0003648(US,A1)
【文献】特開平04-036665(JP,A)
【文献】特開昭63-266333(JP,A)
【文献】特開2000-230956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線を放射し、前記光線の周波数を変調するように構成される可変周波数光源と
前記可変周波数光源に取り付けられ、前記光線を入口で受光し出口へ導くように構成される光ファイバケーブルと
前記光ファイバケーブルに取り付けられ、前記光ファイバケーブルを通って後方散乱される光の特定の周波数を検出するようにそれぞれが構成される複数の光検出器と
前記光ファイバケーブルに取り付けられ、刺激に応じて前記光ファイバケーブルを変形させるように構成される作動機構であって、電磁場の変化を検出するように構成されるアンテナと、前記アンテナに接続され、前記電磁場の変化を検出することに応じて前記光ファイバケーブルを変形させるように構成される電気機械トランスデューサと、を備える、前記作動機構
前記アンテナによって検出されるノイズをフィルタ処理するように構成されるフィルタ回路と、
前記フィルタ処理された信号を増幅するように構成される増幅器と、
前記増幅器と前記フィルタ回路の少なくとも一方に電力を供給するように構成されるエネルギー貯蔵装置と、を備える、
地下検出装置。
【請求項2】
前記複数の光検出器のそれぞれは、光の異なる周波数を検出するように構成される、
請求項1に記載の地下検出装置。
【請求項3】
前記電気機械トランスデューサは、圧電素子を備える、
請求項に記載の地下検出装置。
【請求項4】
前記エネルギー貯蔵装置は、バッテリ又はコンデンサを備える、
請求項に記載の地下検出装置。
【請求項5】
前記作動機構は、
水分の存在下で膨張するように構成される親水性ゲルと
前記親水性ゲルと前記光ファイバケーブルとに結合されるダイヤフラムとを備え、
前記親水性ゲルの膨張は前記ダイヤフラムを誘導して前記光ファイバケーブルを変形させる、
請求項1に記載の地下検出装置。
【請求項6】
周囲の環境からエネルギーを採取するように構成されるエネルギー採取装置をさらに備え、
前記エネルギー貯蔵装置は、前記採取されたエネルギーを貯蔵するように構成される
請求項1に記載の地下検出装置。
【請求項7】
前記エネルギー採取装置は、
削孔内で電磁エネルギーを採取するように構成されるアンテナと
前記アンテナと前記エネルギー貯蔵装置に連結され、前記採取されたエネルギーを貯蔵のために調整するように構成される整流回路とを備える、
請求項6に記載の地下検出装置。
【請求項8】
前記エネルギー採取装置は、
削孔内で機械エネルギーを採取するように構成される圧電装置と
前記圧電装置と前記エネルギー貯蔵装置に連結され、前記採取されたエネルギーを貯蔵のために調整するように構成される整流回路とを備える、
請求項6に記載の地下検出装置。
【請求項9】
アンテナを用いて、掘削孔内の磁場の変化からエネルギーを採取するステップと、
前記採取されたエネルギーをエネルギー貯蔵装置内に貯蔵するステップと、
前記貯蔵されたエネルギーを用いて、前記掘削孔内の設備に電力を供給するステップと、
可変周波数光源を用いて、変調周波数を有する光線を、前記掘削孔内に配置された光ファイバケーブルに沿って導くステップと
特定の刺激に反応する地下検出装置を用いて、前記光ファイバケーブルに変形を誘発するステップと
前記光ファイバケーブルに取り付けられた複数の光検出器を用いて、前記光ファイバケーブル内の複数の周波数の後方散乱を検出するステップであって、前記光検出器のそれぞれは、光の特定の周波数を検出するように構成される、ステップと
前記複数の周波数の前記後方散乱を検出するステップに応じて、前記掘削孔が形成される地層の物理的特性を特定するステップとを備える、
方法。
【請求項10】
前記光ファイバケーブルに変形を誘発するステップは、
アンテナを用いて電磁場の変化を検出するステップと
前記電磁場の前記変化に応じて、前記アンテナに連結したトランスデューサを用いて前記光ファイバケーブル内に前記変形を誘発するステップとを備える、
請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記光ファイバケーブルに変形を誘発するステップは、
前記掘削孔内の含水量に応じて親水性ゲルを膨張させるステップと
前記膨張した親水性ゲルを用いて、前記光ファイバケーブル内に前記変形を誘発するステップとを備える、
請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記エネルギー貯蔵装置は、スーパーキャパシタ又はバッテリを備える、
請求項に記載の方法。
【請求項13】
トランスデューサを用いて、掘削孔内の周囲のノイズからエネルギーを採取するステップと
前記採取されたエネルギーをエネルギー貯蔵装置内に貯蔵するステップと
前記貯蔵されたエネルギーを用いて、前記掘削孔内の設備に電力を供給するステップと
可変周波数光源を用いて、変調周波数を有する光線を、前記掘削孔内に配置された光ファイバケーブルに沿って導くステップと、
特定の刺激に反応する地下検出装置を用いて、前記光ファイバケーブルに変形を誘発するステップと、
前記光ファイバケーブルに取り付けられた複数の光検出器を用いて、前記光ファイバケーブル内の複数の周波数の後方散乱を検出するステップであって、前記光検出器のそれぞれは、光の特定の周波数を検出するように構成される、ステップと、
前記複数の周波数の前記後方散乱を検出するステップに応じて、前記掘削孔が形成される地層の物理的特性を特定するステップと、を備える、
法。
【請求項14】
前記エネルギー貯蔵装置は、スーパーキャパシタ又はバッテリを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
複数の掘削孔内に設置された複数の地下検出装置であって、
光線を放射し、前記光線の周波数を変調するように構成される可変周波数光源と
前記可変周波数光源に取り付けられ、前記光線を受光するように構成される光ファイバケーブルと
前記光ファイバケーブルに取り付けられ、前記光ファイバケーブルを通って後方散乱される光の特定の周波数を検出するようにそれぞれが構成される複数の光検出器と
前記光ファイバケーブルに取り付けられ、刺激に応じて前記光ファイバケーブルを変形させるように構成される作動機構であって、電磁場の変化を検出するように構成されるアンテナと、前記アンテナに接続され、前記電磁場の変化を検出することに応じて前記光ファイバケーブルを変形させるように構成される電気機械トランスデューサと、を備える、前記作動機構と、
前記アンテナによって検出されるノイズをフィルタ処理するように構成されるフィルタ回路と、
前記フィルタ処理された信号を増幅するように構成される増幅器と、
前記増幅器と前記フィルタ回路の少なくとも一方に電力を供給するように構成されるエネルギー貯蔵装置をそれぞれ備える、前記複数の地下検出装置と
前記複数の地下検出装置によって生成されるデータを、監視及び格納するように構成される集中処理センタとを備える、
分散型ジオフォンシステム。
【請求項16】
前記作動機構は、
水分の存在下で膨張するように構成される親水性ゲルと
前記親水性ゲルと前記光ファイバケーブルとに結合されるダイヤフラムとを備え、
前記親水性ゲルの膨張は前記ダイヤフラムを誘導して前記光ファイバケーブルを変形させる、
請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年12月6日付で出願された米国特許出願第15/833,782号の優先権を主張し、その全ての内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、掘削孔(borehole)内のセンサに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバを用いる音響検出は、ファイバを通過する光の短いパルスに由来した、ファイバに沿うレイリー後方散乱(Rayleigh back-scattering)を利用する。ファイバの移動又は変形がミクロンスケールであっても、後方散乱特性は変化する。このように、パルス通過時間の関数としての、散乱強度の変化の記録は、ファイバに沿った位置の関数としての、ファイバの移動に対応する。こうして得られたのが分布型音響センサであって、一時的に又は恒久的に設置して油田での坑井診断に用いることができる。このようなファイバベースのセンサを用いることにより、坑井又は掘削孔内での少量の漏れ、流動、及び泡の音響的兆候を検出することができる。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、地層の構造トモグラフィ特性の特定に関する。
【0005】
本開示内で説明される主題の例示的な実施は、以下の特徴を有する地下検出装置である。すなわち、可変周波数光源は、光線を放射し、前記光線の周波数を変調するように構成される。光ファイバケーブルが、前記可変周波数光源に取り付けられる。前記光ファイバケーブルは、前記光線を入口で受光し出口へ導くように構成される。複数の光検出器が、前記光ファイバケーブルに取り付けられる。前記複数の光検出器のそれぞれは、前記光ファイバケーブルを通って後方散乱される光の特定の周波数を検出するように構成される。作動機構は、前記光ファイバケーブルに取り付けられる。前記作動機構は、刺激に応じて前記光ファイバケーブルを変形させるように構成される。
【0006】
例示的な実施と単独又は組み合わせて実施できる例示的な実施の側面として、以下が含まれる。すなわち、前記複数の光検出器のそれぞれは、光の異なる周波数を検出するように構成される。
【0007】
例示的な実施と単独又は組み合わせて実施できる例示的な実施の側面として、以下が含まれる。すなわち、前記作動機構は、電磁場の変化を検出するように構成されるアンテナを含む。電気機械トランスデューサは、前記アンテナに接続される。前記電気機械トランスデューサは、前記電磁場の変化を検出することに応じて前記光ファイバケーブルを変形させるように構成される。
【0008】
例示的な実施と単独又は組み合わせて実施できる例示的な実施の側面として、以下が含まれる。すなわち、前記電気機械トランスデューサは、圧電素子を含む。
【0009】
例示的な実施と単独又は組み合わせて実施できる例示的な実施の側面として、以下が含まれる。すなわち、フィルタ回路は、前記アンテナによって検出されるノイズをフィルタ処理するように構成される。増幅器は、前記フィルタ処理された信号を増幅するように構成される。エネルギー貯蔵装置は、前記増幅器と前記フィルタ回路の少なくとも一方に電力を供給するように構成される。
【0010】
例示的な実施と単独又は組み合わせて実施できる例示的な実施の側面として、以下が含まれる。すなわち、前記エネルギー貯蔵装置は、バッテリ又はコンデンサを含む。
【0011】
例示的な実施と単独又は組み合わせて実施できる例示的な実施の側面として、以下が含まれる。すなわち、前記作動機構は、水分の存在下で膨張するように構成される親水性ゲルを含む。ダイヤフラムは、前記親水性ゲルと前記光ファイバケーブルとに結合される。前記親水性ゲルの膨張により、前記ダイヤフラムが前記光ファイバケーブルを変形させる。
【0012】
例示的な実施と単独又は組み合わせて実施できる例示的な実施の側面として、以下が含まれる。すなわち、エネルギー採取装置は、周囲の環境からエネルギーを採取するように構成される。エネルギー貯蔵装置は、前記採取されたエネルギーを貯蔵するように構成される。
【0013】
例示的な実施と単独又は組み合わせて実施できる例示的な実施の側面として、以下が含まれる。すなわち、前記エネルギー採取装置は、前記掘削孔内で電磁エネルギーを採取するように構成されるアンテナを含む。整流回路は、前記アンテナに連結され、前記採取されたエネルギーを貯蔵のために調整するように構成される。エネルギー貯蔵装置は、前記整流回路に連結される。前記エネルギー貯蔵装置は、前記採取されたエネルギーを貯蔵するように構成される。
【0014】
例示的な実施と単独又は組み合わせて実施できる例示的な実施の側面として、以下が含まれる。すなわち、前記エネルギー採取装置は、前記掘削孔内で機械エネルギーを採取するように構成される圧電装置を含む。整流回路は、前記圧電装置に連結される、前記整流回路は、前記採取されたエネルギーを貯蔵のために調整するように構成される。エネルギー貯蔵装置は、前記整流回路に連結される。前記エネルギー貯蔵装置は、前記採取されたエネルギーを貯蔵するように構成される。
【0015】
本開示内で説明される主題の例示的な実施は、以下の特徴を有する方法である。すなわち、変調周波数を有する光線を、可変周波数光源を用いて、掘削孔内に配置された光ファイバケーブルに沿って導く。変形を、特定の刺激に反応する地下検出装置を用いて、前記光ファイバケーブルに誘発する。前記光ファイバケーブル内の複数の周波数の後方散乱を、前記光ファイバケーブルに取り付けられた複数の光検出器を用いて検出する。前記光検出器のそれぞれは、光の特定の周波数を検出するように構成される。前記複数の周波数の前記後方散乱の検出に応じて、前記掘削孔が形成される地層の物理的特性を特定する。
【0016】
例示的な方法と単独又は組み合わせて実施できる例示的な方法の側面として、以下が含まれる。すなわち、前記光ファイバケーブルに変形を誘発することは、アンテナを用いて電磁場の変化を検出することを含む。前記光ファイバケーブル内の前記変形は、前記電磁場の前記変化に応じて、前記アンテナに連結したトランスデューサにより誘発される。
【0017】
例示的な方法と単独又は組み合わせて実施できる例示的な方法の側面として、以下が含まれる。すなわち、前記光ファイバケーブルに変形を誘発することは、前記掘削孔内の含水量に応じて親水性ゲルを膨張させることを含む。前記光ファイバケーブル内の前記変形は、前記膨張した親水性ゲルにより誘発される。
【0018】
例示的な方法と単独又は組み合わせて実施できる例示的な方法の側面として、以下が含まれる。すなわち、エネルギーは、アンテナを用いて前記掘削孔内の磁場の変化から採取する。前記採取されたエネルギーは、エネルギー貯蔵装置内に貯蔵される。前記掘削孔内の設備には、前記貯蔵されたエネルギーが供給される。
【0019】
例示的な方法と単独又は組み合わせて実施できる例示的な方法の側面として、以下が含まれる。すなわち、エネルギーは、トランスデューサを用いて前記掘削孔内の周囲のノイズから採取される。前記採取されたエネルギーは、エネルギー貯蔵装置内に貯蔵される。前記掘削孔内の設備には、前記貯蔵されたエネルギーが供給される。
【0020】
例示的な方法と単独又は組み合わせて実施できる例示的な方法の側面として、以下が含まれる。すなわち、前記エネルギー貯蔵装置は、スーパーキャパシタ又はバッテリのいずれかを含む。
【0021】
本開示内で説明される主題の例示的な実施は、以下の特徴を有する分散型ジオフォンシステムである。すなわち、複数の地下検出装置が複数の掘削孔内に設置される。前記地下検出装置のそれぞれは、光線を放射し、前記光線の周波数を変調するように構成される可変周波数光源を含む。光ファイバケーブルは、前記可変周波数光源に取り付けられる。前記光ファイバケーブルは、前記光線を受光するように構成される。複数の光検出器は、前記光ファイバケーブルに取り付けられる。前記複数の光検出器は、前記光ファイバケーブルを通って後方散乱される光の特定の周波数を検出するようにそれぞれが構成される。作動機構は、前記光ファイバケーブルに取り付けられる。前記作動機構は、刺激に応じて前記光ファイバケーブルを変形させるように構成される。集中処理センタは、前記複数の地下検出装置によって生成されるデータを、監視及び格納するように構成される。
【0022】
例示的なシステムと単独又は組み合わせて実施できる例示的なシステムの側面として、以下が含まれる。すなわち、前記作動機構は、電磁場の変化を検出するように構成されるアンテナを含む。電気機械トランスデューサは、前記アンテナに接続される。前記電気機械トランスデューサは、前記電磁場の変化を検出することに応じて前記光ファイバケーブルを変形させるように構成される。
【0023】
例示的なシステムと単独又は組み合わせて実施できる例示的なシステムの側面として、以下が含まれる。すなわち、前記作動機構は、水分の存在下で膨張するように構成される親水性ゲルを含む。ダイヤフラムは、前記親水性ゲルと前記光ファイバケーブルとに結合される。前記親水性ゲルの膨張により、前記ダイヤフラムが前記光ファイバケーブルを変形させる。
【0024】
本開示で説示される主題の1つ又は複数の実施の詳細は、添付の図面及び以下の説明で示される。主題の他の特徴、態様及び利点は、明細書、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、掘削孔内に設置した掘削孔センサーシステムの例を示す概略図である。
【0026】
図2A図2Aは、水分センサの例を示す概略図である。
【0027】
図2B図2Bは、電磁センサの実施例を示す概略図である。
【0028】
図3図3は、ダウンホールセンサーシステムの概略図である。
【0029】
図4図4は、本開示の特定の態様で用いることができる例示的な方法のフローチャートである。
【0030】
各図面における同様の参照番号及び名称は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
光ファイバは、センサでの使用に関していくつかの制限がある。第1に、検出は、もっぱらファイバの機械的な撓みに基づくことである。第2に、最大使用周波数は、本システムでは、サンプリング周波数の半分(ナイキスト周波数)であり、ファイバの長さ、より具体的には、光が始点から終点までの往復移動時間に依存することである。例えば、長さ1メートルあたり約6ナノ秒(ns)である。典型的な水平坑井の長さは約5kmにのぼることもあり、移動時間は30,000ナノ秒、すなわちサンプリング周波数は33kHzである。50kmのパイプラインへの適用は、約3kHzのサンプリング周波数に制限されることになる。本開示の態様により、現行の技術よりもはるかに高い周波数で、音場/超音波場、電場、及び磁場を長期間にわたり低コストで検出することが可能となる。
【0032】
本開示は、現行の光ファイバ分布型音響センサ(Distributed Acoustic Sensors、DAS)を、周波数多重化(frequency multiplexing)にまで拡張すること及び適合させることに向けられる。周波数多重化では、それぞれが異なる周波数帯域を有する複数の光源を用いることができる。一般に、周波数多重化は、有効なサンプリング周波数を増やすことができ、それによって帯域幅を広げることができる。周波数多重化によって帯域幅を広げるには、単一周波数レーザを用いて分散型ファイバセンサの状態を調べるのではなく、複数の異なるレーザ周波数を用いて分散型ファイバセンサの状態を並行に調べる。周波数多重化によりサンプリング周波数を数倍に増やすことができ、無線周波又は超音速信号の分散センシングが可能となる。光ファイバケーブルは、チューブの背後又はケーシングの背後に坑井の通路に沿って取り付けられた、又はインターベンション(intervention)ベースのシステムとして穴を通る、複数のセンサに由来するデータコレクタとして機能することができる。センサは、センサの目的によって様々な特性を有することができる。電場又は磁場の感知のため、別々のアンテナ及びトランスデューサがファイバの側面に貼り付けられ、アンテナで電気信号、磁気信号、又は両方を受信する。トランスデューサが検出可能な機械的たわみをファイバに与える一方、DASは分散型電磁センシングを提供できる。電磁センシングに加えて、掘削孔内の水分の変化を検出することもできる。実施によっては、適切なエネルギー貯蔵及びエネルギー採取システムを設けてシステムの展開可能寿命(deployable lifetime)を延ばすことができる。
【0033】
図1は、地層104内に形成された掘削孔102内に設けられた地下検出装置100の例を示す概略図である。実施によっては、複数の地下検出装置が複数の掘削孔内に設けられて分散型ジオフォン(geophone)システムを形成する。地下検出装置100は、特定の周波数で変調された光線を放射するように構成された可変周波数光源106を含む。光ファイバケーブル108は、可変周波数光源106に取り付けられている。光ファイバケーブル108は、光線を受光し、その光線をケーブル長に沿って案内するように構成される。複数の光検出器110が光ファイバケーブル108に取り付けられ、後方散乱光を検出するように構成される。実施によっては、複数の光検出器110のそれぞれは、光ファイバケーブル108を通って後方散乱される光の特定周波数を検出するように構成される。実施によっては、複数の光検出器110のそれぞれは、光の異なる周波数又は周波数帯域を検出するように構成される。作動機構112が光ファイバケーブル108に取り付けられる。作動機構112は、刺激に応じて光ファイバケーブル108を変形させたり、撓ませたり、変位させたりすることにより光を後方散乱させることができる。複数の光検出器110は、この後方散乱に基づいて変位を特定することができる。実施によっては、集中処理センタ114は、1つ以上の地下検出装置によって生成されたデータを監視及び格納するように構成される。
【0034】
光ファイバケーブル108は、周波数の広帯域に適応できる。その結果、複数の光検出器110と組み合わされたレーザ周波数を掃引(変調)することにより、各周波数(又は特定の周波数帯域)における後方散乱強度を別々に特定できる。さらに、時間の関数としてのレーザ周波数の変調により、「N」が異なるレーザプローブを並行に効果的に多重化することが可能になる(ここで、「N」は全体の掃引帯域を各検出帯域の幅で除した値である)。そのような多重化は、DAS検出帯域幅を数百倍に広げることができる。読み出し速度を最適化する或いは増加させるために、実施によっては、並行に作動する複数の単一チャンネルデジタイザに光ファイバを介して繋がれる単一チャンネル検出器のアレイが用いられる。現在の後方散乱データと前の後方散乱データとを比較する信号処理は、カスタマイズされた集積回路で実行できる。例えば、先に述べた5kmの坑井を用いた場合、周波数多重化によるスループットの100倍の増加は、有効なサンプリング周波数を33×100kHz、すなわち3.3MHzまで増加させることになり、この値は、約1MHzまでのRF信号又は超音波信号の分散センシングにとって十分である。
【0035】
図2Aは、本開示の態様で利用できる水分センサの例を図示したものである。図示の例では、作動機構112は、水分が存在すると膨張するように構成される親水性ゲル202を含む。ダイヤフラム204は、親水性ゲル202及び光ファイバケーブル108に結合されている。親水性ゲル202の膨張は、光ファイバケーブル108を変形させるようにダイヤフラム204を誘導(induce)する。
【0036】
図2Bは、例えば、本開示の態様において、作動機構112内で利用できる電磁センサ及びトランスデューサの例を図示したものである。図示の実施では、作動機構112は、電磁場254の変化を検出するように構成されるアンテナ252を含む。アンテナ252は、ダイポール(dipole)アンテナ、フェライトループスティック(ferrite loopstick)アンテナ、又は測定したい電磁場に適した他のどのようなアンテナであってもよい。電気機械トランスデューサ(electromechanical transducer)256はアンテナ252に接続される。電気機械トランスデューサ256は、電磁場254の変化の検出に応じて光ファイバケーブル108を変形させるように構成される。電気機械トランスデューサ256は、圧電素子、静電型ダイヤフラム、ダイヤフラムを有する電気コイル、又は他の電気機械式装置を含むことができる。
【0037】
実施によっては、複数の作動機構112を、単一の光ファイバケーブル108上で用いることができる。そのような実施では、作動機構112を同じライン上で用いることができる。例えば、電磁センサ及び水分センサを同じライン上で用いることができる。実施によっては、同じセンサータイプのセンサを複数用いることができる。例えば、複数の電磁センサを同じ光ファイバライン上に取り付けることができる。
【0038】
図3は、ダウンホールセンサーシステム300の概略図を示す。先に述べた様々なコンポーネントに加えて、ダウンホール作動機構は、アンテナ252によって検出されたノイズをフィルタ処理するように構成されるフィルタ回路302を含むことができる。さらに、フィルタ処理された信号を増幅するために、ダウンホールに増幅器304を含むことができる。フィルタ回路302及び増幅器304の追加により、作動機構112の感度及び精度が高まる。実施によっては、増幅器304、フィルタ回路302、又はその両方に電力を供給するために、エネルギー貯蔵装置306を含むことができる。エネルギー貯蔵装置306は、バッテリ、コンデンサ、又は任意の他のエネルギー貯蔵装置を含むことができる。
【0039】
実施によっては、地下検出装置300は、周囲の環境からエネルギーを採取し、採取されたエネルギーを貯蔵するように構成されたエネルギー貯蔵装置306内にエネルギーを貯蔵するように構成されるエネルギー採取装置308を含む。実施によっては、エネルギー採取装置308は、掘削孔内の電磁エネルギーを採取するように構成されるアンテナを含むことができる。実施によっては、図2Bに示すアンテナ252は、エネルギーの採取及び電気機械トランスデューサ256の駆動の両方に用いることができる。このような実施において、整流回路310はアンテナに連結する。整流回路310は、貯蔵用に採取されたエネルギーを整流するように、さもなければ調整するように構成される。例えば、整流回路310は、ノイズのある振動電流を、バッテリの充電に用いることができる直流電流に変換できる。そのような実施において、エネルギー貯蔵装置306は整流回路310に連結され、採取されたエネルギーを貯蔵するように構成される。実施によっては、エネルギー貯蔵装置306は、スーパーキャパシタ、バッテリ、又は他の任意のエネルギー貯蔵機構を含む。
【0040】
実施によっては、採取装置308は、掘削孔内のノイズのエネルギーを採取するための電気機械トランスデューサを含むことができる。実施によっては、図2Bに示す作動機構112は、エネルギーの採取及び光ファイバケーブル108の変形の両方に用いることができる。電気機械トランスデューサは、圧電装置、静電式トランスデューサ、電気コイル及びダイヤフラム、または他の任意の電気機械トランスデューサを含むことができる。このような実施では、整流回路310は、電気機械トランスデューサに連結される。整流回路310は、貯蔵のために採取されたエネルギーを整流するように、さもなければ調整するように構成される。例えば、整流回路は、ノイズのある振動電流を、バッテリの充電に利用可能な一定の直流電流に変換することができる。そのような実施では、エネルギー貯蔵装置306は整流回路310に連結され、採取されたエネルギーを貯蔵するように構成される。実施によっては、エネルギー貯蔵装置306は、スーパーキャパシタ、バッテリ、または他の任意のエネルギー貯蔵機構を含む。
【0041】
図4は、本開示の態様で用いることができる例示的な方法400のフローチャートである。ステップ402では、可変周波数光源を用いて、変調周波数を有する光線が、掘削孔内に配置された光ファイバケーブルに沿って導かれる。ステップ404では、特定の刺激、例えば、先に述べた図2Aの水分センサ(モイスチャーセンサ)及び図2Bの電気機械式センサに反応する地下検出装置を用いて、光ファイバケーブル108内で変形が誘発される。実施によっては、異なる地下検出装置が、特定の周波数で後方散乱を引き起こすことができる。実施によっては、1本の光ファイバケーブル上に複数の作動機構112を含めることができる。ステップ406では、複数の周波数の後方散乱が、光ファイバケーブルに取り付けられた複数の光検出器110によって光ファイバケーブル内で検出される。複数の光検出器110のそれぞれは、光の特定の周波数を検出するように構成される。実施によっては、複数の光検出器110のそれぞれは、異なる周波数帯域での変化を検出するように構成される。ステップ408では、掘削孔が形成される地層の物理的特性が、複数の周波数の後方散乱を検出するステップに対応して特定される。例えば、含水量の変化は、第1の周波数での後方散乱を検出することによって特定でき、電磁場の変化は、第2の周波数での後方散乱を検出することによって特定できる。
【0042】
電磁センサを用いる実施では、電磁場の変化は、アンテナ252を用いて検出される。電磁場を変化させることによって、アンテナ252に電流が誘導される。電気機械トランスデューサ256は、誘導電流に応じて駆動される。電気機械トランスデューサ256によって、光ファイバケーブル108が変形する。先に述べたように、電気機械トランスデューサ256は、圧電素子、静電式ダイヤフラム、ダイヤフラムを有する電気コイル他、任意の電気機械式装置を含むことができる。
【0043】
水分センサを用いる実施では、掘削孔内の含水量に応じて親水性ゲルが膨張する。光ファイバケーブル内の変形は、膨張した親水性ゲルが光ファイバケーブル108に取り付けられたダイヤフラム204を変形させるときに誘発される。このダイヤフラムは、坑井内での使用に適するエラストマを含むことができる。すなわち、エラストマは化学的に不活性であり、掘削孔102内で見られる温度に対して耐性がある。例えば、Teflon(登録商標)、Viton(登録商標)他、任意の不活性エラストマを用いることができる。
【0044】
電磁エネルギーが掘削孔内の磁場の変化から採取される実施においては、エネルギーがアンテナ252などのアンテナを用いて採取される。そのような場合、採取されたエネルギーは、エネルギー貯蔵装置306内で調整され、貯蔵される。作動機構112などのダウンホール設備には、貯蔵されたエネルギーを用いて電力が供給され得る。
【0045】
エネルギーが掘削孔内の周辺のノイズから採取される実施では、そのエネルギーはトランスデューサを用いて採取されてから、エネルギー貯蔵装置306内で調整され、貯蔵される。作動機構112などのダウンホール設備には、貯蔵されたエネルギーを用いて電力が供給され得る。
【0046】
どのようなエネルギー採取メカニズムを用いるかに関わらず、採取されたエネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵装置306は、バッテリ、スーパーキャパシタ、または任意の他のエネルギー貯蔵装置であってよい。
【0047】
本開示は多くの特定の実施の詳細を含むが、これらを特許請求の範囲に対する制限と解釈すべきではなく、特定の実施に特有な特徴の説明として解釈すべきである。別々の実施のコンテキストにおいて本開示で述べる特定の特徴を、単一の実施の中で組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施のコンテキストにおいて記載される様々な特徴を、別々の複数の実施の中で又は任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、特徴は、ことによると、特定の組み合わせで作用するものとして先に説明され、そしてそのように最初から請求されてさえいるが、請求された組合せに由来する1つ以上の特徴を、場合によっては、その組み合わせから取り除くことができ、そして、請求された組み合わせを、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形に向けてもよい。
【0048】
同様に、操作は特定の順序で示されているが、これは、望ましい結果を得るために、そうした操作を、図示する特定の順序で又は逐次に実行する必要があると理解すべきではなく、また、例示する全ての操作を実行する必要があると理解すべきでもない。さらに、先に述べた各実施における様々なシステムコンポーネント間の分離は、全ての実施においてそのような分離を必要とすると理解すべきでなく、記載のコンポーネント及びシステムを、全体として単一製品に統合できる、又は、複数製品にパッケージ化できると理解すべきである。
【0049】
以上、主題の特定の実施について述べた。その他の実施も特許請求の範囲に含まれる。場合によっては、特許請求の範囲に記載するアクションを異なる順序で実行することができ、それでも依然として望ましい結果を得ることができる。さらに、添付の図に示した工程は、望ましい結果を得るためには、必ずしも図示する特定の順序、すなわち逐次の順序を必要としない。
図1
図2A
図2B
図3
図4