(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20230112BHJP
H10B 43/27 20230101ALI20230112BHJP
H10B 41/27 20230101ALI20230112BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230112BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20230112BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L27/11582
H01L27/11556
H01L29/78 371
(21)【出願番号】P 2018231736
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】吉水 康人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】北川 白馬
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大口 寿史
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-023061(JP,A)
【文献】特開2004-063829(JP,A)
【文献】特開2008-244025(JP,A)
【文献】特開2002-373860(JP,A)
【文献】特開2018-041907(JP,A)
【文献】特開2014-179465(JP,A)
【文献】国際公開第2004/084287(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 27/11582
H01L 27/11556
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを含み酸性を示す第1液体を希釈する希釈部と、
前記希釈部により希釈される前または希釈された後の前記第1液体のpHを変化させるpH変化部と、
前記希釈部により希釈され、前記pH変化部によりpHが変化した前記第1液体を用いて基板を処理する基板処理部と、
前記希釈部と前記pH変化部とを接続する第1流路と、
前記希釈部に酸を供給する第2流路と、
前記希釈部または前記pH変化部からの廃液を排出する第3流路と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記pH変化部は、前記希釈部により希釈される前または希釈された後の前記第1液体のpHを変化させることで、前記金属イオンに由来する金属原子を含む
金属粒子を生成する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記pH変化部はさらに、前記第1液体から所定範囲外の粒径を有する前記金属粒子を除去し、前記第1液体に前記所定範囲内の粒径を有する前記金属粒子を残存させ、
前記基板処理部は、前記所定範囲外の粒径を有する前記金属粒子が除去され、前記所定範囲内の粒径を有する前記金属粒子が残存する前記第1液体により前記基板を処理する、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記pH変化部は、前記第1液体をアルカリ性または酸性を示す第2液体と混合することで、前記第1液体のpHを変化させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記pH変化部は、前記第1液体を濾過することで、前記第1液体から前記所定範囲外の粒径を有する前記金属粒子を除去し、前記第1液体に前記所定範囲内の粒径を有する前記金属粒子を残存させる、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記pH変化部は、前記第1液体をイオン交換膜により処理することで、前記第1液体のpHを変化させ、前記第1液体から前記所定範囲外の粒径を有する前記金属粒子を除去し、前記第1液体に前記所定範囲内の粒径を有する前記金属粒子を残存させる、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記pH変化部は、前記イオン交換膜に酸またはアルカリを供給して前記イオン交換膜のイオン交換基を回復させる回復部を備える、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記pH変化部は、前記第1液体に熱を与えて前記第1液体中に熱電対流を生じさせることで、前記第1液体のpHを変化させ、前記第1液体から前記所定範囲外の粒径を有する前記金属粒子を除去し、前記第1液体に前記所定範囲内の粒径を有する前記金属粒子を残存させる、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1流路は、前記希釈部に直接接続されており、かつ、前記pH変化部に直接接続されている、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記pH変化部は、前記希釈部により希釈される前または希釈された後の前記第1液体のpHを上昇させることで、前記金属粒子を生成する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第3流路は、前記第1流路に接続されている、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第3流路は、前記pH変化部に接続されている、請求項1に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置、基板処理方法、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリのチャネル半導体層に金属を供給して結晶化させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Zhiguo Meng et al., “Polycrystalline Silicon Films and Thin-Film Transistors Using Solution-Based Metal-Induced Crystallization”, Journal of Display Technology, VOL. 2, NO. 3, September 2006 (265-273)
【文献】Masakazu Muto et al., “A Noncontact Picolitor Droplet Handling by Photothermal Control of Interfacial Flow”, Analytical Sciences, January 2016, VOL. 32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板に金属粒子を適切に供給することが可能な基板処理装置、基板処理方法、および半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態によれば、基板処理装置は、金属イオンを含み酸性を示す第1液体を希釈する希釈部を備える。前記装置はさらに、前記希釈部により希釈される前または希釈された後の前記第1液体のpHを変化させるpH変化部を備える。前記装置はさらに、前記希釈部により希釈され、前記pH変化部によりpHが変化した前記第1液体を用いて基板を処理する基板処理部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態の半導体装置の製造方法を実行するための装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態の別の基板処理装置の構成を示す模式図である。
【
図5】第1実施形態の金属粒子について説明するための模式図である。
【
図6】第1実施形態の比較例の基板処理装置の構成を示す模式図である。
【
図7】第2実施形態の基板処理装置の構成を示す模式図である。
【
図8】第3実施形態の基板処理装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1~
図8において、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
図1に示す半導体装置は、3次元半導体メモリを備えている。
【0009】
図1に示す半導体装置は、半導体基板101と、下部絶縁膜102と、ソース側導電層103と、上部絶縁膜104と、複数の電極層105と、複数の絶縁層106と、カバー絶縁膜107と、ドレイン側導電層108と、第1層間絶縁膜109と、第2層間絶縁膜110と、複数のコンタクトプラグ111と、ブロック絶縁膜112と、電荷蓄積層113と、トンネル絶縁膜114と、チャネル半導体層115と、コア絶縁膜116とを備えている。
【0010】
半導体基板101は例えば、シリコン(Si)基板である。
図1は、半導体基板101の表面に平行で互いに垂直なX方向およびY方向と、半導体基板101の表面に垂直なZ方向とを示している。本明細書では、+Z方向を上方向として取り扱い、-Z方向を下方向として取り扱う。-Z方向は、重力方向と一致していてもよいし、重力方向と一致していなくてもよい。
【0011】
下部絶縁膜102は、半導体基板101内に形成された拡散層L上に形成されている。ソース側導電層103は、下部絶縁膜102上に形成されている。上部絶縁膜104は、ソース側導電層103上に形成されている。
【0012】
複数の電極層105と複数の絶縁層106は、上部絶縁膜104上に交互に積層されている。電極層105は、例えば金属層であり、ワード線や選択線として機能する。電極層105の層数は、例えば64層以上である。絶縁層106は、例えばシリコン酸化膜である。絶縁層106の層数は、例えば64層以上である。
図1は、電極層105および絶縁層106を貫通するメモリホールMと、電極層105および絶縁層106の階段領域上に形成されたコンタクトホールHとを示している。
【0013】
カバー絶縁膜107は、これら電極層105および絶縁層106上に形成されている。ドレイン側導電層108は、階段領域に隣接するようにカバー絶縁膜107上に形成されている。第1層間絶縁膜109は、階段領域上の空間を埋め込むようにカバー絶縁膜107上に形成されている。第2層間絶縁膜110は、ドレイン側導電層108および第1層間絶縁膜109上に形成されている。
【0014】
複数のコンタクトプラグ111は、カバー絶縁膜107、第1層間絶縁膜109、および第2層間絶縁膜110を貫通するコンタクトホールH内に形成されている。これらのコンタクトプラグ111は、互いに異なる電極層105に電気的に接続されている。各コンタクトプラグ111は例えば、チタン(Ti)含有層などのバリアメタル層と、タングステン(W)層などのプラグ材層により形成されている。
【0015】
ブロック絶縁膜112、電荷蓄積層113、トンネル絶縁膜114、チャネル半導体層115、およびコア絶縁膜116は、下部絶縁膜102、ソース側導電層103、上部絶縁膜104、電極層105、絶縁層106、カバー絶縁膜107、ドレイン側導電層108、および第2層間絶縁膜110を貫通するメモリホールMの側面に順々に形成されている。ブロック絶縁膜112は、例えばシリコン酸化膜である。電荷蓄積層113は、例えばシリコン窒化膜であるが、ポリシリコン層などの半導体層でもよい。トンネル絶縁膜114は、例えばシリコン酸化膜である。チャネル半導体層115は、例えばポリシリコン層であり、半導体基板101に電気的に接続されている。コア絶縁膜116は、例えばシリコン酸化膜である。
【0016】
ブロック絶縁膜112、電荷蓄積層113、トンネル絶縁膜114、チャネル半導体層115、およびコア絶縁膜116は、例えば次の手順で形成される。まず、メモリホールMの側面および底面に、ブロック絶縁膜112、電荷蓄積層113、およびトンネル絶縁膜114を順々に形成する。次に、メモリホールMの底面から、トンネル絶縁膜114、電荷蓄積層113、およびブロック絶縁膜112を除去する。その後、メモリホールM内にチャネル半導体層115とコア絶縁膜116とを順々に埋め込む。ブロック絶縁膜112、電荷蓄積層113、トンネル絶縁膜114、およびチャネル半導体層115は、メモリ膜の例である。
【0017】
図2は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0018】
まず、
図1に示すように、半導体基板101上に、下部絶縁膜102、ソース側導電層103、および上部絶縁膜104を順々に形成する。次に、上部絶縁膜104上に、複数の犠牲層117と複数の絶縁層106とを交互に形成する(
図2(a))。犠牲層117は、例えばシリコン窒化膜である。絶縁層106は例えば、シリコン酸化膜である。
【0019】
犠牲層117は、後の工程で電極層105に置き換えられる。なお、
図2(a)の工程で複数の電極層105と複数の絶縁層106とを交互に形成する場合には、犠牲層117から電極層105への置き換えは不要となる。
【0020】
次に、これら犠牲層117および絶縁層106を貫通し半導体基板101に到達するメモリホールMを形成する(
図2(a))。次に、メモリホールM内の犠牲層117および絶縁層106の側面に、ブロック絶縁膜112、電荷蓄積層113、トンネル絶縁膜114、およびチャネル半導体層115を順々に形成する(
図2(a))。
【0021】
図2(a)のチャネル半導体層115は、例えばアモルファスシリコン層である。チャネル半導体層115は例えば、400℃~600℃の温度および1Pa~500Paの圧力にてLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)により形成される。チャネル半導体層115のソースガスの例は、SiH
4ガス、Si
2H
6ガス、Siを含む有機ガスなどである(Siはシリコンを表し、Hは水素を表す)。上記のアモルファスシリコン層は、アモルファス層の例である。
【0022】
次に、金属粒子118を含有する薬液119を半導体基板101に供給する。その結果、メモリホールM内に薬液119が侵入し(
図2(a))、薬液119中の金属粒子118がチャネル半導体層115の側面に付着する(
図2(b))。本実施形態の金属粒子118は例えば、ニッケル水酸化物で形成されており、複数個のニッケル原子を含んでいる。その後、半導体基板101を水でリンスしてから窒素ガスで乾燥させる。
図2(b)のチャネル半導体層115の側面の金属原子の2次元濃度は、例えば2.0×10
13~1.0×10
16[atoms/cm
2]である。
【0023】
次に、チャネル半導体層115等を、500℃~600℃の温度および100Pa~常圧の圧力にてアニールする。その結果、金属粒子118または金属粒子118に含まれる金属原子がチャネル半導体層115内に入り込み、チャネル半導体層115が結晶化される。チャネル半導体層115は例えば、アモルファスシリコン層からポリシリコン層に結晶化される。この際、ポリシリコン層内の結晶粒の粒径は、金属粒子118または金属原子の入り込みの影響により大きくなる。
【0024】
その後、メモリホールM内のチャネル半導体層115の側面にコア絶縁膜116が形成される。また、犠牲層117が電極層105に置き換えられる。このようにして、
図1に示す半導体装置が製造される。
【0025】
図3は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を実行するための装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【0026】
図3の装置は、テーブル121と、駆動機構122と、アーム123と、制御部124とを備えている。アーム123は、薬液ノズル123aと、アルカリノズル123bと、水ノズル123cとを備えている。
【0027】
テーブル121は、基板(ウェハ)Wを支持するために使用され、駆動機構122は、テーブル121を駆動することで基板Wを回転させることができる。アーム123は、薬液ノズル123a、アルカリノズル123b、および水ノズル123cを基板Wの上方に移動させることができる。制御部124は、
図3の装置の種々の動作を制御し、例えば、駆動機構122の駆動、アーム123の移動、薬液ノズル123a、アルカリノズル123b、および水ノズル123cの吐出動作などを制御する。基板Wは例えば、
図2(a)に示す半導体基板101と、この半導体基板101に設けられた種々の層とを含む。
【0028】
薬液ノズル123aは、金属イオンを含み、酸性を示す薬液(金属イオン水溶液)を基板Wに吐出する。この金属は例えば、遷移金属または希土類金属であり、酸性下でイオン化し、アルカリ性下で水酸化物を形成して析出する。この金属の例は、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、鉛(Pd)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、マンガン(Mn)、ルテニウム(Rh)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、イリジウム(Ir)、タンタル(Ta)などであり、好ましくはニッケル(Ni)やAl(アルミニウム)である。また、薬液は例えば、金属イオンを含む硫酸水溶液、硝酸水溶液、塩酸水溶液、酢酸水溶液、ギ酸水溶液、シュウ酸水溶液、スルファミ酸水溶液、炭酸水溶液などである。薬液は、第1液体の例である。薬液ノズル123aから吐出される薬液は、後述する薬液流路41(
図4を参照)を流れる薬液と同様の性質を有する。
【0029】
アルカリノズル123bは、基板Wにアルカリを供給し、例えば、アルカリ水溶液を基板Wに吐出する。基板Wに薬液ノズル123aからの薬液とアルカリノズル123bからのアルカリとが供給されると、酸とアルカリとの中和反応が発生する。このアルカリは例えば、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液や、TMAH(テトラメチルアンモニウムハライド)水溶液およびコリン(trimethyl 2-oxyethyl ammonium hydroxide)水溶液などの有機アミン水溶液である。このアルカリは、第2液体の例であり、かつ、第1液体のpHを変化させる物質の例である。アルカリノズル123aから供給されるアルカリ水溶液は、後述するアルカリ流路51(
図4を参照)から供給されるアルカリと同様の性質を有する。
【0030】
水ノズル123cは、基板Wに水を吐出する。この水は例えば、基板Wをリンスするために使用される。
【0031】
【0032】
まず、駆動機構122が、テーブル121上の基板Wの回転を開始する。次に、薬液ノズル123aが、回転中の基板Wに薬液を吐出する。次に、アルカリノズル123bが、回転中の基板Wにアルカリ水溶液を吐出する。その結果、基板Wの表面で薬液がアルカリ水溶液と混合される。このように、本実施形態では、基板Wに薬液およびアルカリ水溶液をシーケンシャルに吐出する。
【0033】
本実施形態では、薬液をアルカリ水溶液と混合することで、薬液のpHを変化(上昇)させることができ、例えば、薬液のpHを7未満の値から7~9の範囲内の値へと変化させることができる。その結果、薬液中の金属イオンが水酸化物を形成し、例えば、ニッケルイオンNi2+がニッケル水酸化物Ni(OH)2に変化する。これにより、金属イオンに由来する金属原子を金属化合物(例えば金属水酸化物)の形で含む金属粒子を生成することができる。以下、このような金属化合物を「金属粒子」として説明する。
【0034】
基板Wの表面で薬液がアルカリ水溶液と混合されると、薬液中で金属粒子が生成され、
図2(a)に示す状態が実現される。
図2(a)では、金属粒子118を含有する薬液119が半導体基板101に供給されている。その結果、上述のように、メモリホールM内に薬液119が侵入し(
図2(a))、薬液119中の金属粒子118がチャネル半導体層115の側面に付着する(
図2(b))。このようにして、
図1に示す半導体装置が製造される。
【0035】
ここで、アルカリ水溶液は、薬液より前に基板Wに吐出してもよい。この場合、アルカリノズル123bが、回転中の基板Wにアルカリ水溶液を吐出し、その後に薬液ノズル123aが、回転中の基板Wに薬液を吐出する。その結果、基板Wの表面で薬液がアルカリ水溶液と混合され、
図1の半導体装置が製造される。
【0036】
薬液を吐出するタイミングと、アルカリ水溶液を吐出するタイミングは、制御部124により制御される。薬液よりも後にアルカリ水溶液を吐出する場合、制御部124は、薬液の吐出の終了後にアルカリ水溶液の吐出を開始してもよいし、薬液の吐出の終了前にアルカリ水溶液の吐出を開始してもよい。同様に、薬液よりも前にアルカリ水溶液を吐出する場合、制御部124は、アルカリ水溶液の吐出の終了後に薬液の吐出を開始してもよいし、アルカリ水溶液の吐出の終了前に薬液の吐出を開始してもよい。また、制御部124は、薬液を吐出する複数回の処理と、アルカリ水溶液を吐出する複数回の処理とを、交互に繰り返してもよい。これにより、基板W上に供給される金属粒子の量を増加させることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、薬液のpHを7未満の値から7~9の範囲内の値(例えば8付近の値)へと上昇させるが、その他の値に上昇させてもよい。ただし、薬液のpHを7~9の範囲内の値に上昇させると、例えばアモルファスシリコン膜の結晶化を効果的に促進して、粒径の大きい結晶粒を含むポリシリコン膜を形成することが可能となる。薬液を用いて処理された後のアモルファスシリコン膜の表面の金属原子の濃度は、2.0×1013~1.0×1016[atoms/cm2]とすることが望ましく、これにより粒径の大きい結晶粒を含むポリシリコン膜を形成することが可能となる。このような濃度は例えば、薬液のpHを7~9の範囲内の値に上昇させることで実現可能となる。薬液の供給対象のアモルファスシリコン膜の表面は例えば、親水性または/および疎水性であることが望ましい。
【0038】
一方、本実施形態では、アルカリノズル123bを酸ノズルに置き換え、酸ノズルから基板Wに酸を供給してもよい。基板Wの表面では、薬液が、アンモニア水溶液などのアルカリと混合される代わりに、炭酸水などの酸と混合される。実験によれば、薬液が炭酸水と混合された場合にも、
図2(a)に示す状態を実現でき、
図1の半導体装置を製造することができた。なお、薬液を炭酸水と混合すると、薬液中の金属イオンが炭酸イオンと結合し、例えば、ニッケルイオンNi
2+が炭酸ニッケルNiCO
3に変化する。炭酸水を吐出するタイミングの制御は、アルカリ水溶液を吐出するタイミングの制御と同様に行うことが可能である。
【0039】
この場合、酸は、基板Wに薬液が供給された後で基板Wに供給される。これにより、炭酸ニッケルNiCO3または塩基性炭酸ニッケルNiCO・2Ni(3OH)2・4H2Oが基板W上に形成される。
【0040】
なお、基板Wの表面に炭酸水を供給する場合、基板Wの表面に炭酸水を吐出してもよいし、基板Wの表面に炭酸ガスと水とを吐出し、基板Wの表面でこの水にこの炭酸ガスを溶け込ませることで、基板Wの表面に炭酸水を供給してもよい。同様に、基板Wの表面に上記の混合液を供給する場合には、基板Wの表面に炭酸ガスと硫酸ニッケル水溶液とを吐出し、基板Wの表面でこの硫酸ニッケル水溶液にこの炭酸ガスを溶け込ませることで、基板Wの表面に上記の混合液を供給してもよい。
【0041】
また、薬液をアルカリ水溶液と混合する代わりに、薬液の液面に例えばアンモニア性のガスを供給してもよい。これにより、装置やその配管の金属汚染を抑制することが可能となる。
【0042】
以上のように、
図3の装置は、基板Wの表面で薬液をアルカリまたは酸と混合し、これにより薬液中に金属粒子を生成し、基板Wにこの金属粒子を供給する。しかしながら、本実施形態では、薬液を事前にアルカリまたは酸と混合し、これにより薬液中に金属粒子を生成し、この薬液を基板Wに供給することで基板Wに金属粒子を供給してもよい。この方法を採用する場合、金属粒子の粒子径のばらつきをより抑制できるが、薬液を移送する配管の汚染が問題となるおそれがある。本実施形態では例えば、
図4の基板処理装置を採用することで、この問題に対処することができる。
【0043】
図4は、第1実施形態の基板処理装置の構成を示す模式図である。
【0044】
図4の基板処理装置は、ミキシングボックス1と、ミキシングボックス2と、分離機構3と、制御部4とを備えている。ミキシングボックス1は、希釈部の例である。ミキシングボックス2および分離機構3は、pH変化部の例である。ミキシングボックス1、2の各々は例えば、ミキシングバルブと呼ばれるバルブを備えており、ミキシングバルブには、流量制御系とバルブとを有し、ミキシングバルブの1/4程度のサイズを有する配管(後述する各流路に相当する)が挿入されている。これにより、ミキシングボックス1、2の各々は、ある液体と別の液体とを合流させることができる。これらの液体の合流地点は、ミキシングバルブのようなバルブに限定されず、タンクの場合もある。
【0045】
図4の基板処理装置はさらに、薬液流路11と、薬液流路11に設けられた弁12および逆止弁13と、水流路21と、水流路21に設けられた弁22および逆止弁23と、酸流路31と、酸流路31に設けられた弁32および逆止弁33と、薬液流路41と、薬液流路41に設けられた弁42、逆止弁43、逆止弁44、および三方弁45と、分岐流路46と、アルカリ流路51と、アルカリ流路51に設けられた弁52および逆止弁53と、薬液流路61と、分岐流路62と、分岐流路63と、薬液流路61に設けられた逆止弁64とを備えている。薬液流路61、分岐流路62、分岐流路63、および逆止弁64は、基板処理部の例である。
【0046】
以下の説明において、薬液流路11は例えば、ミキシングボックス1の上流に設けられている、またはミキシングボックス1の上流流路とも呼ぶ。また、薬液流路41、61等は例えば、ミキシングボックス1の下流に設けられている、またはミキシングボックス1の下流流路とも呼ぶ。さらに、薬液流路61等は例えば、ミキシングボックス2の下流に設けられている、またはミキシングボックス2の下流流路とも呼ぶ。
【0047】
薬液流路11は、金属イオンを高濃度に含み、酸性を示す薬液(金属イオン水溶液)をミキシングボックス1に供給する。この金属は例えば、遷移金属または希土類金属であり、酸性下でイオン化し、アルカリ性下で水酸化物を形成して析出する。この金属の例は、Au、Al、Cu、Ag、Pd、Ni、Pt、Mn、Rh、Co、Fe、Cr、Ti、Nb、Ir、Taなどであり、好ましくはNiやAlである。また、薬液は例えば、金属イオンを含む硫酸水溶液、硝酸水溶液、塩酸水溶液、酢酸水溶液、ギ酸水溶液、シュウ酸水溶液、スルファミ酸水溶液、炭酸水溶液などである。薬液は、第1液体の例である。なお、薬液はさらに、複数個の金属原子を例えば金属化合物の形で含む金属粒子を含んでいてもよい。薬液は、金属をイオン化状態に保つために例えばpHが7未満の酸性を示す。
【0048】
水流路21は、ミキシングボックス1に水などの希釈液を供給する。希釈液は、水以外の液体でもよい。
【0049】
酸流路31は、ミキシングボックス1に酸を供給する。この酸は例えば、金属イオン水溶液を構成する酸であることが好ましい。酸の例としては、硫酸水溶液や硝酸水溶液などが考えられる。酸は、金属化合物の洗浄液としての機能も有するため、薬液より低いpHを有することが好ましい。酸のpHは例えば1以下が好ましい。
【0050】
薬液流路11、水流路21、および酸流路31は、例えばフッ素系の樹脂またはテフロン材料からなる配管(管、チューブ)により構成されている。
【0051】
ミキシングボックス1は、薬液流路11に設けられた薬液ノズルと、水流路21に設けられた水ノズルとを備えており、薬液ノズルからの薬液を、水ノズルからの水と混合する。ミキシングボックス1は、薬液を水と混合することで、薬液を希釈することができる。ミキシングボックス1はさらに、酸流路31に設けられた酸ノズルを備えており、ミキシングボックス1の下流流路の薬液の供給を止めて酸ノズルから酸を供給することにより、金属粒子をイオン化させることができる。ミキシングボックス1は、水と混合された薬液を薬液流路41に排出する。具体的には、薬液は、ポンプ圧またはN2加圧によりバルブ制御で圧送されることで排出される。この際、薬液の流量が、超音波流量計により測定され、レギュレータにより制御される。
【0052】
薬液流路41は、ミキシングボックス1から排出され、金属イオンを含み、酸性を示す薬液をミキシングボックス2に供給する。本実施形態のミキシングボックス1は、薬液を水で希釈するため、薬液流路41を流れる薬液中の金属イオン濃度は、薬液流路11を流れる薬液中の金属イオン濃度よりも低下している。アルカリ流路51は、ミキシングボックス2にアルカリを供給する。これにより、酸とアルカリとの中和反応が発生する。このアルカリは例えば、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液や、TMAH水溶液およびコリン水溶液などの有機アミン水溶液である。このアルカリは、第2液体の例であり、かつ、第1液体のpHを変化させる物質の例である。
【0053】
薬液流路41を流れる液体(通常は薬液)は、三方弁45を通過してミキシングボックス2に供給される。しかし、薬液流路41を流れる液体を廃水として排出する場合には、この液体は、三方弁45から分岐流路46へと排出される。
【0054】
ミキシングボックス2は、薬液流路41に設けられた薬液ノズルと、アルカリ流路51に設けられたアルカリノズルとを備えており、薬液ノズルからの薬液を、アルカリノズルからのアルカリと混合する。ミキシングボックス2は、薬液をアルカリと混合することで、薬液のpHを変化(上昇)させることができ、例えば、薬液のpHを7未満の値から7~9の範囲内の値へと変化させることができる。その結果、薬液中の金属イオンが水酸化物を形成し、例えば、ニッケルイオンNi2+がニッケル水酸化物Ni(OH)2に変化する。これにより、金属イオンに由来する金属原子を金属化合物(例えば金属水酸化物)の形で含む金属粒子を生成することができる。ミキシングボックス2は、アルカリと混合された薬液を薬液流路61に排出する。以下、このような金属化合物を「金属粒子」として説明する。
【0055】
薬液流路61は、ミキシングボックス2から排出され、金属粒子を含む薬液を分離機構3に供給する。本実施形態のミキシングボックス2は、薬液のpHを7未満の値から8付近の値へと変化させるため、薬液流路61を流れる薬液は、アルカリ性を示している。
【0056】
分離機構3は、薬液から所定範囲外の粒径を有する金属粒子を除去し、薬液に所定範囲内の粒径を有する金属粒子を残存させる。本実施形態の分離機構3は、薬液を分離機構3内の濾過膜により濾過することで、一定値よりも大きい粒径を有する金属粒子を薬液から除去し、一定値以下の粒径を有する金属粒子を薬液に残存させる。その結果、分離機構3は、一定値よりも大きい粒径を有する金属粒子が除去され、一定値以下の粒径を有する金属粒子が残存する薬液を、分岐流路62に排出する。一方、分岐流路63は、分離機構3で生じた廃水を排出するために使用される。
【0057】
なお、分離機構3に大粒径の金属粒子が蓄積すると、分離機構3の詰まりなどの問題が生じる。そこで、分離機構3に蓄積した大粒径の金属粒子を除去するため、分離機構3に酸を供給すると、再び金属粒子をイオン化させることができる。また、この酸の供給に続けて水を供給することにより、分離機構3の液状態を中性化することができる。これにより、蓄積した金属粒子を排出することができる。分岐流路63は、これを廃水として排出させるために使用される(フィルタ洗浄)。
【0058】
分岐流路62に排出された薬液は、分岐流路62に設けられた薬液ノズルから基板(ウェハ)Wに吐出される。これにより、基板Wを薬液により処理することができ、具体的には、基板Wに薬液中の金属粒子を付与することができる。
【0059】
本実施形態の基板Wは例えば、シリコン基板と、シリコン基板上に形成されたアモルファスシリコン膜とを備えており、アモルファスシリコン膜が、薬液中の金属粒子を用いて結晶化される。具体的には、薬液中の金属粒子を基板Wの表面(アモルファスシリコン膜の表面)に付着させ、その後に基板Wをアニールすることで、アモルファスシリコン膜の結晶化を金属粒子中の金属原子により促進することができる。この場合、薬液を用いて処理された後の基板Wの表面の金属原子の濃度は、2.0×10
13~1.0×10
16[atoms/cm
2]とすることが望ましい。これら金属粒子および薬液は例えば、
図2(a)に示す金属粒子118および薬液119に相当する。基板Wは例えば、
図2(a)に示す半導体基板101と、この半導体基板101に設けられた種々の層とを含む。
【0060】
制御部4は、基板処理装置の種々の動作を制御する。制御部4の例は、プロセッサ、電気回路、コンピュータなどである。制御部4は例えば、ミキシングボックス1、ミキシングボックス2、および分離機構3の動作や、弁12、22、32、42、52の開閉および開度や、逆止弁13、23、33、43、44、53、64の開閉および開度や、三方弁45の開閉および開度などを制御する。
【0061】
本実施形態によれば、基板処理装置の金属汚染を抑制することや、基板Wに均一な粒径の金属粒子を付与することが可能となる。以下、金属汚染の抑制や金属粒子の粒径の詳細について説明する。
【0062】
図4では、薬液流路11を流れる薬液(金属イオン水溶液)が、金属イオンを高濃度に含んでおり、かつ酸性を示している。薬液中の金属イオンは、薬液流路11を構成する配管の内壁に付着することがあり、これにより薬液中の金属イオン濃度が変動する。ここで、薬液中の金属イオン濃度が高いほど、薬液は、金属イオンの付着などによる金属イオン濃度の変動による影響を受けにくい。よって、薬液流路11中の薬液の金属イオン濃度は高いほど望ましい。
【0063】
一方で、酸性の薬液中の金属イオンは、樹脂やテフロンなどで形成された配管内壁に付着しにくいが、金属粒子はこのような配管内壁にも付着しやすい。本実施形態の金属は、薬液のpHが低いほどイオン化しやすいため、薬液流路11中の薬液のpHは低いほど望ましい。このことを、
図5を参照しながら説明する。
【0064】
図5は、第1実施形態の金属粒子について説明するための模式図である。
【0065】
図5は、薬液流路11を構成する配管Tの一部と、配管Tの内壁の表面Sと、配管Tを流れる薬液Fと、薬液Fの流速Vの分布とを示している。符号Iは、薬液F中の金属イオンを示し、符号Pは、薬液F中の金属粒子を示している。
【0066】
図5に示すように、薬液Fにより運ばれた金属粒子Pが配管Tの表面Sに達すると、金属粒子Pが表面Sの凹部に捕獲され、ファンデルワールス力または静電気力により表面Sに吸着される。一方、金属イオンIは、配管Tの表面Sに吸着されにくい。金属粒子Pが表面Sに一度吸着されると、薬液Fの流れによって再度脱離することは難しい。金属粒子Pが表面Sに吸着されると、薬液F中の金属原子の濃度が低下し、基板Wに薬液Fが吐出される際の薬液中の金属原子の濃度がばらついてしまう。また、薬液流路11を構成する配管Tは、ミキシングボックス1の上流流路の配管であり、配管Tを洗浄することは困難である。
【0067】
そこで、本実施形態の薬液流路11は、金属イオンを高濃度に含み、かつpHが7から大きく離れた酸性の薬液を移送する(
図4)。これにより、薬液流路11中で金属がイオン化した状態となり、金属粒子が薬液流路11に吸着されることを抑制することが可能となる。これにより、金属粒子による薬液流路11の汚染を抑制することができる。
【0068】
ミキシングボックス1は、薬液流路11からの薬液を水で希釈して、薬液流路41に排出する。そのため、薬液流路41には、希釈によるpH上昇で生じた金属粒子が吸着される可能性がある。そこで、本実施形態のミキシングボックス1は、酸流路31からの酸を薬液流路41に排出することで、薬液流路41の酸洗浄を行う。配管Tの表面Sに吸着した金属粒子を流体により除去することは難しいため、この金属粒子を除去するには配管Tにこのように酸を通液することが好ましい。これにより、金属粒子を酸に金属イオンとして溶解させることができ、金属イオンを外部に排出することができる。
【0069】
一方、ミキシングボックス2は、金属イオンを含む薬液を薬液流路41から供給されると、薬液をアルカリ流路51からのアルカリと混合して、薬液を酸性からアルカリ性へと変化させる。これにより、金属イオンは金属水酸化物に変化し、金属水酸化物を含む金属粒子として析出する。
【0070】
本実施形態の基板処理装置は、薬液を水で希釈するミキシングボックス(ミキシングボックス1)と、薬液をアルカリと混合するミキシングボックス(ミキシングボックス2)とを別々に備えている。このような構成の利点等を、
図6を参照しながら説明する。
【0071】
図6は、第1実施形態の比較例の基板処理装置の構成を示す模式図である。
【0072】
図6の基板処理装置は、ミキシングボックス1、ミキシングボックス2、分離機構3、薬液流路41、弁42、逆止弁43、逆止弁44、薬液流路61、分岐流路62、および分岐流路63を備えておらず、代わりにミキシングボックス5と薬液流路65とを備えている。
【0073】
ミキシングボックス5は、薬液流路11から薬液を供給され、薬液を水流路21からの水で希釈し、薬液をアルカリ流路51からのアルカリと混合する。この薬液はその後、ミキシングボックス5から薬液流路65に排出され、基板Wに吐出される。
【0074】
ここで、本実施形態(
図4)では例えば、薬液流路11を流れる薬液中の金属イオン濃度は数10%であり、薬液流路41を流れる薬液中の金属イオン濃度は数ppmであり、ミキシングボックス1は薬液を大量の水で希釈する。この場合、ミキシングボックス2で薬液を酸性からアルカリ性に変化させるためには、大量のアルカリ水溶液が必要となる。このような大量の水と大量のアルカリ水溶液を、比較例(
図6)のように1つのミキシングボックス5で取り扱うことは難しい。さらに、
図6の基板処理装置だと、薬液を希釈するために一度に大量の水溶液(流量)が必要になるため、コストが高く、かつ環境負荷が高い。一方、本実施形態の基板処理装置によれば、水溶液の流量を少なくすることができ、コスト削減や環境負荷低減が可能となる。
【0075】
そこで、本実施形態の基板処理装置は、薬液を水で希釈するミキシングボックス(ミキシングボックス1)と、薬液をアルカリと混合するミキシングボックス(ミキシングボックス2)とを別々に備えている(
図4)。これにより、大量の水と大量のアルカリ水溶液を容易に取り扱うことが可能となる。なお、ミキシングボックス2内で薬液をアルカリと混合した後に、薬液を素早くミキシングボックス2から基板Wに供給するために、ミキシングボックス2の薬液排出口から分岐流路62の薬液ノズルまでの距離は短く設定することが望ましい。
【0076】
また、本実施形態の基板処理装置は、複数枚の基板Wを順番に処理する場合に、1枚の基板Wを処理するごとに、ミキシングボックス1の下流流路の酸洗浄を効率的に実施することができる。本実施形態では、ミキシングボックス1の上流の薬液流路11は汚染されにくいため、その酸洗浄を省略することができる。一方、ミキシングボックス1は薬液を希釈して薬液のpHを上昇させるため、ミキシングボックス1の下流の薬液流路41は汚染されやすくなり、その酸洗浄を実施することが望ましい。また、ミキシングボックス2では金属粒子が生成されるため、ミキシングボックス2の下流の薬液流路61や分岐流路62はさらに汚染されやすくなり、その酸洗浄を実施することはさらに望ましい。本実施形態によれば、ミキシングボックス1から酸洗浄用の酸を供給することで、薬液流路41、薬液流路61、分岐流路62をいずれも洗浄することが可能となる。また、その後にミキシングボックス1から水流路21の水を供給することで、薬液流路41、薬液流路61、分岐流路62をいずれも水によりリンスすることが可能となる。このようにして、ミキシングボックス1の下流流路のコンデションを整えることができる。
【0077】
本実施形態の分離機構3は、基板Wに所望の粒径の金属粒子を付与するために設けられている。本実施形態の分離機構3は、薬液を濾過する濾過膜として、テフロン製、ナイロン製、または樹脂製の濾過膜を備えている。これにより、基板Wに供給する金属粒子の粒径を一定値以下に制御することが可能となる。すなわち、本実施形態によれば、分離機構3を通過後の薬液に含まれる金属粒子の粒径の均一性を、分離機構3を通過前の薬液に比べて向上させることが可能となる。
【0078】
分離機構3が濾過膜を用いて粒径を制御する場合、濾過膜での圧損を抑制するために、濾過膜の表面積は大きくすることが望ましい。その結果、分離機構3の容積が大型化し、ミキシングボックス2の薬液排出口から分岐流路62の薬液ノズルまでの距離が長くなるおそれがある。この距離を短くしたい場合には、例えば後述する実施形態の手法を採用してもよい。
【0079】
以上のように、本実施形態の基板処理装置は、金属イオンを含み酸性を示す薬液を水で希釈するミキシングボックス1と、希釈された薬液のpHをアルカリにより上昇させて金属粒子を生成するミキシングボックス2とを備え、金属粒子を含む薬液を用いて基板Wを処理する。
【0080】
よって、本実施形態によれば、金属イオンを含み酸性を示す薬液をミキシングボックス1の上流流路で搬送することで、例えばミキシングボックス1の上流流路の金属汚染を抑制することが可能となる。ミキシングボックス1は、この薬液を水で希釈することで、薬液を基板Wの処理により適した状態にすることができる。
【0081】
さらに、本実施形態によれば、ミキシングボックス1と異なるミキシングボックス2で薬液をアルカリと混合することで、例えばアルカリと混合された薬液を基板Wに素早く供給することが可能となる。これにより、薬液中の金属粒子の粒径の均一性を向上させることや、基板処理装置の金属汚染を抑制することが可能となる。また、本実施形態によれば、ミキシングボックス2と基板Wとの間に分離機構3を設けることで、薬液中の金属粒子の粒径の均一性をさらに向上させることが可能となる。
【0082】
このように、本実施形態によれば、基板Wに金属粒子を適切に供給可能な基板処理装置を実現することが可能となる。
【0083】
なお、本実施形態のミキシングボックス2は、薬液のpHを7未満の値から7~9の範囲内の値(例えば8付近の値)へと上昇させるが、その他の値に上昇させてもよい。ただし、薬液のpHを7~9の範囲内の値に上昇させると、例えばアモルファスシリコン膜の結晶化を効果的に促進して、粒径の大きい結晶粒を含むポリシリコン膜を形成することが可能となる。薬液を用いて処理された後のアモルファスシリコン膜の表面の金属原子の濃度は、2.0×1013~1.0×1016[atoms/cm2]とすることが望ましく、これにより粒径の大きい結晶粒を含むポリシリコン膜を形成することが可能となる。このような濃度は例えば、薬液のpHを7~9の範囲内の値に上昇させることで実現可能となる。薬液の供給対象のアモルファスシリコン膜の表面は例えば、親水性または/および疎水性であることが望ましい。
【0084】
一方、ミキシングボックス2は、薬液を、アンモニア水溶液などのアルカリと混合する代わりに、炭酸水などの酸と混合してもよい。この場合、ミキシングボックス2は、薬液のpHを下降させることとなる。実験によれば、ミキシングボックス2で薬液を炭酸水と混合した場合にも、薬液中の金属粒子の粒径の均一性を向上させることや、基板処理装置の金属汚染を抑制することができた。なお、薬液を炭酸水と混合すると、薬液中の金属イオンが炭酸イオンと結合し、例えば、ニッケルイオンNi2+が炭酸ニッケルNiCO3に変化する。ミキシングボックス2で炭酸水を使用することには、例えば、半導体基板やチャネル半導体層などを構成するシリコンがミキシングボックス2にてエッチングされることを抑制できるという利点がある。
【0085】
また、薬液をアルカリ水溶液と混合する代わりに、薬液の液面に例えばアンモニア性のガスを供給してもよい。これにより、基板処理装置やその配管の金属汚染を抑制することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態では、ミキシングボックス1の下流にミキシングボックス2を配置する代わりに、ミキシングボックス1の上流にミキシングボックス2を配置してもよい。この場合、ミキシングボックス2で所望のpHを保ち、その後にミキシングボックス1が薬液を水で希釈して所望の濃度を有する金属粒子を分離機構3に排出する。実験によれば、ミキシングボックス1の上流にミキシングボックス2を配置した場合にも、ミキシングボックス1の下流にミキシングボックス2を配置した場合と同様に基板Wを適切に処理することができた。同様の効果は、ミキシングボックス1、2の配置を入れ換えずに、薬液流路11の流入先をミキシングボックス2に移動させ、アルカリ流路51の流入先をミキシングボックス1に移動させることでも得ることができる。
【0087】
本実施形態の基板Wは、
図4の基板処理装置で処理してもよいし、
図3の装置で処理してもよい。
図3の装置は、基板Wの表面で薬液をアルカリ(または酸)と混合するのに対し、
図4の基板処理装置は、アルカリ(または酸)と混合済の薬液を基板Wに供給する。アルカリと混合済の薬液を基板Wに供給する場合、金属粒子の粒子径のばらつきをより抑制できるが、薬液を移送する配管の汚染が問題となるおそれがある。しかしながら、本実施形態によれば、
図4の基板処理装置を採用することで、アルカリと混合済の薬液を基板Wに供給する場合にもこのような金属汚染を抑制することが可能となる。
【0088】
このように、本実施形態によれば、
図4の基板処理装置や、
図3の装置を採用することで、基板Wに金属粒子を適切に供給することが可能となる。
【0089】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態の基板処理装置の構成を示す模式図である。
【0090】
図7の基板処理装置は、ミキシングボックス2、分離機構3、薬液流路41、弁42、逆止弁43、逆止弁44、三方弁45、および分岐流路46を備えておらず、代わりにイオン交換膜6、三方弁66、および分岐流路67を備えている。イオン交換膜6は、pH変化部の例である。イオン交換膜6は、
図4の分離機構4と同じ位置に配置されている。
【0091】
ミキシングボックス1は、上述のように、金属イオンを含み酸性を示す薬液を水で希釈する。本実施形態のミキシングボックス1は、希釈された薬液を薬液流路61に排出する。薬液流路61は、この薬液をイオン交換膜6に供給する。
【0092】
薬液流路61を流れる液体(通常は薬液)は、三方弁66を通過してイオン交換膜6に供給される。しかし、薬液流路61を流れる液体を廃水として排出する場合には、この液体は、三方弁66から分岐流路67へと排出される。
【0093】
イオン交換膜6は、薬液中の所定のイオンを捕獲し、別のイオンを薬液に放出する作用を有する。本実施形態のイオン交換膜6は、アニオン性の陰イオン交換膜であり、薬液中の陰イオン(例えば硝酸イオンや硫酸イオン)を捕獲し、水酸化イオン(OH-)を薬液に放出する。
【0094】
よって、本実施形態の基板処理装置は、薬液をイオン交換膜6により処理することで、薬液のpHを変化(上昇)させることができ、例えば、薬液のpHを7未満の値から7~9の範囲内の値へと変化させることができる。その結果、薬液中の金属イオンが水酸化物を形成する。これにより、金属イオンに由来する金属原子を含む金属粒子を生成することができる。イオン交換膜6により処理された薬液、すなわち、イオン交換膜6を通過した薬液は、分岐流路62に排出される。一方、分岐流路63は、イオン交換膜6で生じた廃水を排出するために使用される。
【0095】
本実施形態では、薬液がイオン交換膜6を通過すると、薬液に水酸化イオンが放出されることで、薬液中で中和反応が発生する。イオン交換膜6を通過後の薬液のpHは、例えばイオン交換膜6の膜面積に応じて決定される。
【0096】
本実施形態のイオン交換膜6は、第1実施形態の分離機構3と同様に、濾過膜としても機能する。よって、薬液がイオン交換膜6を通過すると、一定値よりも大きい粒径を有する金属粒子が薬液から除去され、一定値以下の粒径を有する金属粒子が薬液に残存する。このような薬液が、分岐流路62に排出される。
【0097】
本実施形態のアルカリ流路51は、イオン交換膜6にアルカリ水溶液を供給する。これにより、イオン交換膜6のイオン交換基を回復することができ、具体的には、イオン交換基に水酸化イオンを再度付与することができる。このアルカリ水溶液は例えば、アンモニア水溶液やコリン水溶液である。アルカリ流路51、弁52、および逆止弁53は、回復部の例である。本実施形態の基板処理装置は、ミキシングボックス1の下流流路を酸流路31からの酸で洗浄し、その後にミキシングボックス1の下流流路を水流路21からの水でリンスし、その後にアルカリ流路51からのアルカリ水溶液をイオン交換膜6に供給する。
【0098】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、基板Wに金属粒子を適切に供給可能な基板処理装置を実現することが可能となる。
【0099】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態の基板処理装置の構成を示す模式図である。
【0100】
図8の基板処理装置は、ミキシングボックス2、分離機構3、薬液流路41、弁42、逆止弁43、逆止弁44、三方弁45、および分岐流路46を備えておらず、代わりに分離機構7、三方弁66、および分岐流路67を備えている。分離機構7は、pH変化部の例である。分離機構7は、
図4の分離機構4や
図7のイオン交換膜6と同じ位置に配置されている。
【0101】
ミキシングボックス1は、上述のように、金属イオンを含み酸性を示す薬液を水で希釈する。本実施形態のミキシングボックス1は、希釈された薬液を薬液流路61に排出する。薬液流路61は、この薬液を分離機構7に供給する。
【0102】
薬液流路61を流れる液体(通常は薬液)は、三方弁66を通過して分離機構7に供給される。しかし、薬液流路61を流れる液体を廃水として排出する場合には、この液体は、三方弁66から分岐流路67へと排出される。
【0103】
分離機構7は、上述のミキシングボックス2、分離機構3、イオン交換膜6と同様の機能を、熱および熱電対流を利用して実現する。具体的には、分離機構7は、薬液に熱を与えて薬液中に熱電対流を生じさせることで、薬液のpHを変化させて金属粒子を生成し、薬液から所定範囲外の粒径を有する金属粒子を除去し、薬液に所定範囲内の粒径を有する金属粒子を残存させる。マイクロ流路の分野で知られているように、液体が流れる流路に対してレーザー加熱または電界印加を行うことで、液体に含まれる粒子の粒径を選別することができる。分離機構7は、これを薬液中の金属粒子に適用する。上記の熱電対流の例は、レーザー加熱により生じるマランゴニ対流である。
【0104】
よって、分離機構7は、所定範囲外の粒径を有する金属粒子が除去され、所定範囲内の粒径を有する金属粒子が残存する薬液を分岐流路62に排出する。一方、分岐流路63は、分離機構7で生じた廃水を排出するために使用される。
【0105】
ここで、第1実施形態の分離機構3は、薬液を濾過膜により濾過することで、一定値よりも大きい粒径を有する金属粒子を薬液から除去し、一定値以下の粒径を有する金属粒子を薬液に残存させる。これは、第2実施形態のイオン交換膜6でも同様である。これらの場合には、基板Wに供給する金属粒子の粒径の上限を設定することはできるが、基板Wに供給する金属粒子の粒径の下限を設定することはできない。一方、本実施形態の分離機構7によれば、金属粒子の粒径の上限だけでなく、金属粒子の粒径の下限も設定することが可能となる。
【0106】
本実施形態によれば、第1および第2実施形態と同様に、基板Wに金属粒子を適切に供給可能な基板処理装置を実現することが可能となる。
【0107】
以下、第1~第3実施形態の変形例について説明する。以下の変形例の方法は例えば、
図3の装置を用いて行われる。ただし、
図3の説明では、基板Wに薬液およびアルカリ水溶液をシーケンシャルに吐出したが、以下の変形例では、このようなシーケンシャルな吐出は行わなくてもよい。
【0108】
基板Wに供給される薬液中の金属粒子は、1μm未満の粒径を有する金属ナノ粒子であることが望ましい。金属ナノ粒子は、溶液中で互いに凝集しないように表面処理が施されているため、配管に付着しにくいという利点がある。例えば、金属ナノ粒子の表面には、有機単分子層(self-assembled monolayer)が形成されている。この有機単分子層により金属粒子間の凝集や配管付着力を制御することができる。この場合の薬液の溶媒は、水でもよいし有機溶媒でもよい。また、基板Wに供給される薬液中の金属粒子は、同じ分子量を有する有機金属錯体で形成されていてもよい。また、この場合の金属粒子は金属ナノ粒子なので、金属ナノ粒子を含む薬液は酸やアルカリで処理せずに基板Wに供給することができる。
【0109】
基板Wの表面を予め有機アミン化合物で終端させ被膜を形成した後に、基板Wに酸性の薬液を供給してもよい。有機アミン化合物がアルカリ水溶液と同等の働きをするため、事前に薬液とアルカリを混合する必要がなく、装置やその配管の金属汚染を抑制することが可能となる。また、予め有機アミン化合物で基板Wの表面を終端させておけば、
図3の場合のようなシーケンシャルな吐出を行わなくても、基板Wに酸性の薬液を供給することで有機アミン化合物の被膜と薬液とが中和反応を起こし、基板Wに金属粒子を供給することができる。有機アミン化合物の例は、トリアジンである。
【0110】
あるいは、基板Wの表面に予めスパッタリングにより金属薄膜(例えばNi薄膜)を形成し、金属薄膜に酸を供給して金属薄膜を溶かした後に、基板Wにアルカリを供給するという手法を採用してもよい。これにより、酸またはアルカリが金属粒子を含まなくても、金属薄膜から溶けた金属から金属粒子を生成し、基板Wに金属粒子を供給することができる。金属薄膜に酸を供給して金属薄膜を溶かす代わりに、基板Wにアルカリを供給することで金属薄膜を溶かしてもよい。
【0111】
なお、アミン化合物の被膜の形成、および/または、金属薄膜の形成は、基板Wに
図2に示すアモルファス膜を形成した後に行われる。
【0112】
また、基板Wの表面をスプレーにより負に帯電させた後、金属イオンを含む薬液を基板Wに供給してもよい。これにより、金属イオンを基板Wの表面の負電荷により還元することで、基板Wに金属粒子を供給することができる。
【0113】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0114】
1:ミキシングボックス、2:ミキシングボックス、3:分離機構、
4:制御部、5:ミキシングボックス、6:イオン交換膜、7:分離機構、
11:薬液流路、12:弁、13:逆止弁、
21:水流路、22:弁、23:逆止弁、
31:酸流路、32:弁、33:逆止弁、
41:薬液流路、42:弁、43:逆止弁、
44:逆止弁、45:三方弁、46:分岐流路、
51:アルカリ流路、52:弁、53:逆止弁、
61:薬液流路、62:分岐流路、63:分岐流路、64:逆止弁、
65:薬液流路、66:三方弁、67:分岐流路、
101:半導体基板、102:下部絶縁膜、103:ソース側導電層、
104:上部絶縁膜、105:電極層、106:絶縁層、107:カバー絶縁膜、
108:ドレイン側導電層、109:第1層間絶縁膜、110:第2層間絶縁膜、
111:コンタクトプラグ、112:ブロック絶縁膜、113:電荷蓄積層、
114:トンネル絶縁膜、115:チャネル半導体層、116:コア絶縁膜、
117:犠牲層、118:金属粒子、119:薬液、
121:テーブル、122:駆動機構、123:アーム、123a:薬液ノズル、
123b:アルカリノズル、123c:水ノズル、124:制御部