(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】映像補正装置及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20230112BHJP
G06T 5/30 20060101ALI20230112BHJP
G06T 7/11 20170101ALI20230112BHJP
G06T 7/155 20170101ALI20230112BHJP
H04N 23/76 20230101ALI20230112BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230112BHJP
【FI】
G06T1/00 500A
G06T5/30
G06T7/11
G06T7/155
H04N5/243
H04N5/232 290
(21)【出願番号】P 2019030865
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】三須 俊枝
(72)【発明者】
【氏名】三ツ峰 秀樹
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 5/00 - 7/90
H04N 5/225- 5/247
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力映像内の画素値を局所的に補正する映像補正装置であって、
入力映像の時系列から、動物体を除去した背景画像を生成する背景画像生成手段と、
前記背景画像の中から画素値の補正の対象とする領域を対象領域として、当該補正の度合いを決定するための参照とすべき領域を参照領域として定め、前記背景画像の全体について、前記背景画像の各画素位置が当該参照領域に属する画素値を持つか当該対象領域に属する画素値を持つかを少なくとも判別し、該判別結果を画像として表したラベル画像を生成する判別手段と、
前記ラベル画像に基づいて、前記背景画像について当該対象領域に属する画素値を持つ各画素位置の画素値の統計量を対象領域画素値統計量として、当該参照領域に属する画素値を持つ各画素位置の画素値の統計量を参照領域画素値統計量として算出する画素値統計手段と、
前記対象領域画素値統計量及び前記参照領域画素値統計量に基づき、当該対象領域に属する画素値を持つ各画素位置における入力映像の画素値を、当該参照領域に属する画素値を持つ各画素位置における該入力映像の画素値に近似するよう変換する
ために、算出した前記対象領域画素値統計量及び前記参照領域画素値統計量について当該対象領域及び当該参照領域における所定の平均色ベクトル及び分散・共分散行列を求め、それぞれの当該所定の平均色ベクトル及び分散・共分散行列を基に、所定の計算式により前記参照領域に属する画素値の分散と前記対象領域に属する画素値の分散とが一致するように前記対象領域に属する画素値に対するバイアス及びゲインを導出し、前記バイアス及びゲインに対応する補正パラメータを導出する補正パラメータ導出手段と、
前記ラベル画像に対応付けられた当該補正パラメータに基づいて、該入力映像の画素値を変換して補正済映像を生成する補正手段と、
を備えることを特徴とする映像補正装置。
【請求項2】
前記背景画像の中から画素値の補正の対象とする領域を対象領域として、当該補正の度合いを決定するための参照とすべき領域を参照領域として指定する領域指定手段を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の映像補正装置。
【請求項3】
前記対象領域内の背景画像の特徴を対象領域特徴として、及び前記参照領域内の背景画像の特徴を参照領域特徴として定量的に抽出する特徴抽出手段を更に備え、
前記判別手段は、前記参照領域特徴及び前記対象領域特徴に基づき、前記ラベル画像を生成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の映像補正装置。
【請求項4】
前記参照領域特徴及び前記対象領域特徴の各々は、対応する平均色ベクトルで表される特徴、或いは該平均色ベクトルと分散・共分散行列で表される特徴を含み、
前記判別手段は、各画像座標における前記背景画像の画素値と前記参照領域特徴との間のマハラノビス距離、及び前記背景画像の画素値と前記対象領域特徴との間のマハラノビス距離を用いた分類で前記ラベル画像を生成することを特徴とする、請求項3に記載の映像補正装置。
【請求項5】
前記ラベル画像に対し、モルフォロジフィルタ処理を施すモルフォロジフィルタ手段を更に備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の映像補正装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から5のいずれか一項に記載の映像補正装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョンカメラ等により撮影された映像を入力し、その画素値を補正する技術に関し、特に、入力映像内の陰影に起因する輝度又は色の差異を低減するよう、入力映像内の画素値を局所的に補正する映像補正装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
写真やビデオ映像の色や輝度、コントラストの補正方法として、撮影時に色補正フィルタ(アンバーやブルーなどの色を持つCC(Color Correction Filter)フィルタ)やND(Neutral Density Filter)フィルタ、或いは原色フィルタ(イエロー、シアン、マゼンタなどの色を持つフィルタ)などの光学フィルタを光路上に配する技法がある。また、絞り、シャッター速度、又は感度(ゲイン)を調整することで輝度(透過率、反射率)の加減が行われる。
【0003】
銀塩写真における印画紙焼き付け時においては、原色フィルタを光路上に配することや、露出時間を増減すること、現像時間や現像温度を加減すること、現像液の処方を変更することなどが行われる。そして、画像内で部分的な色や輝度の差異を補正又は強調するため、撮影時又は焼き付け時に部分的に濃度の異なるNDフィルタ(例えばハーフNDフィルタ)を使用することや、部分的に色味の異なる光学フィルタを用いることも行われる。
【0004】
また、銀塩写真や銀塩映画の印画紙焼き付け時やフィルムデュープ、ポジ起こし時においては、部分的に遮光、減光又は調色するマスクを露光時間の一部乃至全部において適用するいわゆる覆い焼き技法や焼込み技法によって、得られる写真の透過率や反射率、色味を部分的に調整することも行われる。
【0005】
一方で、デジタル画像やデジタルビデオ映像においては、撮像センサの感度の調整や、撮像センサの出力に適用するトーンカーブ、ルックアップテーブル、色変換行列、或いはバイアスを加えることによって色や輝度、コントラストを調整することが行われる。
【0006】
また、映像編集機等においては、画像の部分領域に対してマスクを適用し、マスク領域の内外において適用するトーンカーブ、ルックアップテーブル、色変換行列、或いはバイアスを違えて加えることで、画面内で部分的に色や輝度、コントラストを調整することも行われている。
【0007】
また、映像編集機等において、被写体が動物体である場合に当該マスク領域を被写体の動きに追従して移動させること(いわゆるマッチムーブ)で、色や輝度、コントラストを調整する領域を移動させることもある。
【0008】
尚、部分的に光量を調整可能とした液晶フィルタをカメラの光路上に配する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、補正対象が動画である場合に複数フレームから背景画像を作成し、該背景画像に基づいて部分的な補正値(光量調整信号)を生成する方法も開示されている。また、特許文献1には、背景画像にローパスフィルタを適用しシーンの明暗部境界における液晶フィルタの急激な濃度変化を回避し、撮像画像における不自然な境界線の発生を防ぐことも開示されている。
【0009】
被写体が適切な露光量となるようデジタルカメラ等の撮影装置の感度(ゲイン)、絞り、シャッター速度を自動調整する技術として、画像を部分領域に分割し部分領域ごとの輝度の差異等に応じて被写体や情景を推定して調整量を算出する分割測光方式や、顔画像検出(例えば、非特許文献1参照)等の被写体認検出を行った後で該被写体が適切な露光量となるよう調整量を算出する測光方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Paul Viola and Michael Jones, “Rapid Object Detection using a Boosted Cascade of Simple Features,” Proceeding of the 2001 IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, pp.511-518, Date of Conference: 8-14 Dec. 2001, Date Added to IEEE Xplore: 15 April 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、静止画や動画に対し色や輝度の補正を行う技法には、光学的に行うものや、画像処理で行うものなど種々のものがある。しかし、光学フィルタによる色や輝度の補正は、とくに銀塩写真以外においては、撮影時にのみ適用可能であり、撮影事後にその効果を変更することはできない。また、部分的に色味や輝度を補正したい場合、その部分形状に合わせて光学フィルタの濃度を変化させる必要があり、多様なシーンや時々刻々変化する動画への適用は困難である。
【0013】
また、映像編集機等の場合、事後の色や輝度の補正は可能であるが、例えばサッカー場のような競技場の一部が屋根の影で暗くなっている場合があるサッカー競技の撮影映像など、時々刻々、影領域が変化する映像の場合には、マスク形状を次々刻々変更する必要が生じ、膨大な手間がかかる。また、上述したマッチムーブは比較的明瞭な画像特徴を有する被写体の追随には好適であるものの、影領域は輪郭が不鮮明な影領域の追随には適していない。また、影領域の動きとテクスチャの動きは一般的には一致しないため(影領域は照明光の移動に起因する一方、テクスチャの移動は被写体の運動に起因するため)、マッチムーブが誤動作する危険性もある。
【0014】
さらに、上述した分割測光方式や顔画像検出等による測光技術は、或る特定の被写体に適切な露出を設定するには好適であるが、陰影パターンや被写体形状を正確に捉える方式ではないため部分的な露出補正に応用することは困難である。
【0015】
尚、分割測光方式は、その実装によっては被写体の内容(人物の顔であるか否か、風景であるか否か)などを推定し、該推定結果に応じた適切な露出設定を可能とする。このように分割測光方式は被写体を特定する機能を有するともいえるが、測光結果に応じて制御されるのは高々感度(ゲイン)、絞り、シャッター速度、及びNDフィルタであり、画面全体の一様な露出制御に留まる。
【0016】
一方で、特許文献1においては、光量調整信号の生成法の一例として輝度ヒストグラムに基づき、所定の輝度超となる時には液晶フィルタの透過率を減じ、また別の輝度未満となる時には液晶フィルタの透過率を増ずる方法が開示されている。特許文献1の
図3に示されるような液晶フィルタの透過率調整によれば、あたかもガンマやニー、ルックアップテーブルのような輝度変換曲線による輝度変換の効果が光学的に得られ、撮像素子のダイナミックレンジを有効に活用することができる。
【0017】
しかし、このような透過率調整は、シーンの明暗のみに応じて、明るい箇所を暗く抑え、暗い箇所を明るくするよう画面全体を補正するものであるため、特定の被写体部分(或いは背景部分)のみの輝度を増減する(換言すれば、特定の被写体以外の部分は明るかろうと暗かろうと補正しない)といった局所的な輝度補正を実現するものではない。例えばサッカー場のような競技場の一部が屋根の影で暗くなっている場合など、背景たる芝生において影になっている領域のみについて芝生及び選手の輝度を明るく持ち上げる目的においては、特許文献1の技術は有効ではない。
【0018】
そこで、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、入力映像内の陰影に起因する輝度又は色の差異を低減するよう、入力映像内の画素値を局所的に補正する映像補正装置及びそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の映像補正装置は、入力映像内の画素値を局所的に補正する映像補正装置であって、入力映像の時系列から、動物体を除去した背景画像を生成する背景画像生成手段と、前記背景画像の中から画素値の補正の対象とする領域を対象領域として、当該補正の度合いを決定するための参照とすべき領域を参照領域として定め、前記背景画像の全体について、前記背景画像の各画素位置が当該参照領域に属する画素値を持つか当該対象領域に属する画素値を持つかを少なくとも判別し、該判別結果を画像として表したラベル画像を生成する判別手段と、前記ラベル画像に基づいて、前記背景画像について当該対象領域に属する画素値を持つ各画素位置の画素値の統計量を対象領域画素値統計量として、当該参照領域に属する画素値を持つ各画素位置の画素値の統計量を参照領域画素値統計量として算出する画素値統計手段と、前記対象領域画素値統計量及び前記参照領域画素値統計量に基づき、当該対象領域に属する画素値を持つ各画素位置における入力映像の画素値を、当該参照領域に属する画素値を持つ各画素位置における該入力映像の画素値に近似するよう変換するために、算出した前記対象領域画素値統計量及び前記参照領域画素値統計量について当該対象領域及び当該参照領域における所定の平均色ベクトル及び分散・共分散行列を求め、それぞれの当該所定の平均色ベクトル及び分散・共分散行列を基に、所定の計算式により前記参照領域に属する画素値の分散と前記対象領域に属する画素値の分散とが一致するように前記対象領域に属する画素値に対するバイアス及びゲインを導出し、前記バイアス及びゲインに対応する補正パラメータを導出する補正パラメータ導出手段と、前記ラベル画像に対応付けられた当該補正パラメータに基づいて、該入力映像の画素値を変換して補正済映像を生成する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の映像補正装置において、前記背景画像の中から画素値の補正の対象とする領域を対象領域として、当該補正の度合いを決定するための参照とすべき領域を参照領域として指定する領域指定手段を更に備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の映像補正装置において、前記対象領域内の背景画像の特徴を対象領域特徴として、及び前記参照領域内の背景画像の特徴を参照領域特徴として定量的に抽出する特徴抽出手段を更に備え、前記判別手段は、前記参照領域特徴及び前記対象領域特徴に基づき、前記ラベル画像を生成することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の映像補正装置において、前記参照領域特徴及び前記対象領域特徴の各々は、対応する平均色ベクトルで表される特徴、或いは該平均色ベクトルと分散・共分散行列で表される特徴を含み、前記判別手段は、各画像座標における前記背景画像の画素値と前記参照領域特徴との間のマハラノビス距離、及び前記背景画像の画素値と前記対象領域特徴との間のマハラノビス距離を用いた分類で前記ラベル画像を生成することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の映像補正装置において、前記ラベル画像に対し、モルフォロジフィルタ処理を施すモルフォロジフィルタ手段を更に備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のプログラムは、コンピュータを、本発明の映像補正装置として機能させるためのプログラムとして構成されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、入力映像内の陰影を示すラベル画像を基に入力映像を補正して補正済映像を得るように構成されるため、リアルタイムに入力される映像であっても、その入力映像内の陰影に起因する輝度や色の差異が小さくなるよう当該入力映像の各画素値を補正することができる。特に、本発明では、好適には、そのラベル画像に対し本発明に係るモルフォロジフィルタを適用することで、入力映像に含まれるノイズや背景画像の模様に起因するラベル画像の所定サイズ以下のパターン(数画素単位の細かい任意形状の小領域)を除去し、当該補正済映像に生じ得る細かい輝度のむらを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による第1実施形態の映像補正装置の概略構成を例示するブロック図である。
【
図2】本発明による第1実施形態の映像補正装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】(a),(b)は、本発明による第1実施形態の映像補正装置における背景画像の生成に関する説明図である。
【
図4】(a),(b)は、本発明による第1実施形態の映像補正装置におけるラベル画像の生成に関する説明図である。
【
図5】(a),(b)は、本発明による第1実施形態の映像補正装置における入力映像内の暗領域の輝度(明るさ)を明領域の輝度と同等になるよう補正した補正済画像の生成に関する説明図である。
【
図6】本発明による第2実施形態の映像補正装置の概略構成を例示するブロック図である。
【
図7】本発明による第2実施形態の映像補正装置におけるモルフォロジフィルタの動作に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明による各実施形態の映像補正装置1について説明する。
【0028】
〔第1実施形態〕
(装置構成)
図1は、本発明による第1実施形態の映像補正装置1の概略構成を例示するブロック図である。第1実施形態の映像補正装置1は、テレビジョンカメラ等により撮影された映像を入力し、この入力映像I内の陰影に起因する輝度又は色の差異を低減するよう、入力映像I内の画素値を局所的に補正して補正済映像Jとして出力する装置であり、背景画像生成部10、領域指定部11、特徴抽出部12、判別部13、画素値統計部14、補正パラメータ導出部15、及び補正部16を備える。
【0029】
本願明細書中、時刻t、画像座標(x,y)における映像の画素値は、映像を表す文字の後に(t;x,y)を付して示すものとする。例えば、入力映像Iの、時刻t、画像座標(x,y)における画素値はI(t;x,y)と記す。尚、画素値はスカラー量であっても構わないし(例えば、モノクロ映像の場合)、ベクトル量であっても構わない(例えば、カラー映像において、赤、緑及び青の3成分からなるベクトル値)。
【0030】
以下の説明では、代表的な例として、第1実施形態の映像補正装置1は、画角が固定されたテレビジョンカメラ等により撮影された映像を入力し、入力映像I内の画素値をリアルタイムで補正して出力する例を説明する。ただし、第1実施形態の映像補正装置1は、収録済みの映像を再生入力し、その再生映像内の画素値をリアルタイムで補正して再記録するとしてもよい。
【0031】
背景画像生成部10は、入力映像Iの時系列(複数の入力映像フレーム)から、動物体を除去した背景画像Bを生成し、特徴抽出部12、及び判別部13に出力する。背景画像の生成は、背景差分法に用いられる既存の手法を用いることができる。例えば、背景画像生成部10は、特許第5227226号明細書の[数8]に示される背景生成法によって背景画像Bを生成する。
【0032】
尚、本例のように画角が固定された入力映像を対象としているときは、補正開始時に背景画像Bを作成すれば、繰り返し作成せずとも以降の入力映像に対して利用できる。ただし、入力映像内でシーンチェンジが発生するときや、日照条件等で明暗に差異が生じることもある。このような場合にも対応できるように、公知のシーンチェンジ検出技術を利用した入力映像に対するシーンチェンジ検出部を設け、そのシーンチェンジ検出時に、背景画像生成部10を自動的に再起動させてもよい。また、外部操作で任意時刻に背景画像Bの作成を背景画像生成部10に指示する機能部や、背景画像Bの作成を定期的にユーザに通知する機能部、或いは一定期間毎に背景画像Bを自動作成する機能部等を設けてもよい。
【0033】
以下、画像座標(x,y)における画像の画素値は、画像を表す文字の後に(x,y)を付して示すものとする。例えば、背景画像Bの、画像座標(x,y)における画素値はB(x,y)と記す。
【0034】
領域指定部11は、背景画像Bにおいて、背景画像Bの中から画素値の補正の対象とする領域を対象領域QTとして、当該補正の度合いを決定するための参照とすべき領域を参照領域QRとして、背景画像B上で外部から指定するユーザインタフェースを有する。
【0035】
このようなユーザインタフェースは、背景画像生成部10によって背景画像Bが生成されるとその背景画像Bをディスプレイ(図示せず)に表示させ、ユーザに対し対象領域QT及び参照領域QRを指定するように操作指示が提示されるように構成される。このユーザインタフェースの形態は、マウスや、ペンタブレット、液晶ペンタブレット、タッチパネル、ディジタイザ、トラックボール、ジョイスティック、ライトペンといった座標指定デバイスによって画像領域又は画像座標(絶対座標であっても、相対座標(カーソルの移動量)であってもよい)を指示するものであってもよいし、キーボードや画面上に表示されたグラフィカルユーザインタフェース(例えば、ボタン)で構成して、座標値を打ち込むものであっても構わない。尚、本例のユーザインタフェースは、ユーザが任意時刻で作動させることができ、背景画像生成部10に対し背景画像Bを生成するよう指示する機能も有している。また、シーンチェンジや定期的な制御で背景画像生成部10が背景画像Bを自動生成する構成とする場合では、その背景画像Bの生成をトリガとして、このユーザインタフェースによる設定を背景画像生成部10から領域指定部11にアナウンスする形態とすることもできる。
【0036】
これにより、領域指定部11は、背景画像B上において2つの領域、即ち対象領域QT及び参照領域QR(例えば、矩形領域)を指定することができ、指定された対象領域QT及び参照領域QRの情報は特徴抽出部12に出力される。
【0037】
特徴抽出部12は、背景画像生成部10により生成された背景画像Bと、領域指定部11によって指定された対象領域QT及び参照領域QRの情報を入力し、対象領域QT内の背景画像Bの特徴、及び参照領域QR内の背景画像Bの特徴を定量的に抽出し、その結果としてそれぞれ得られる対象領域特徴、及び参照領域特徴の各情報を判別部13に出力する。
【0038】
例えば、特徴抽出部12は、参照領域特徴として、[数1]に示すように、参照領域QR内の背景画像Bの平均色ベクトルμRを算出する。尚、以下において、ベクトルは列ベクトルとする。
【0039】
【0040】
この変形例として、特徴抽出部12は、平均色ベクトルμRに加えて、[数2]に示すように、参照領域QR内の背景画像Bの分散・共分散行列VRを算出し、参照領域特徴として含めてもよい。
【0041】
【0042】
尚、右上付きのTは、ベクトル又は行列の転置を表す演算子であり、対象領域を示す右下付きのTとは区別される。
【0043】
同様に、特徴抽出部12は、対象領域特徴として、[数3]に示すように、対象領域QT内の背景画像Bの平均色ベクトルμTを算出する。
【0044】
【0045】
この変形例として、特徴抽出部12は、平均色ベクトルμTに加えて、[数4]に示すように、参照領域QT内の背景画像Bの分散・共分散行列VTを算出し、対象領域特徴として含めてもよい。
【0046】
【0047】
判別部13は、特徴抽出部12から得られる参照領域特徴及び対象領域特徴に基づき、背景画像生成部10から得られる背景画像Bの全体について、背景画像Bの各画素位置が参照領域QRに属する画素値を持つか対象領域QTに属する画素値を持つかを少なくとも判別し、該判別結果を画像として表したラベル画像Lを生成して、画素値統計部14、及び補正部16に出力する。
【0048】
ここで、判別部13は、背景画像Bの各画素位置が参照領域QRに属する画素値を持つか対象領域QTに属する画素値を持つかの二択で分類する二値でラベル画像Lを生成する方法と、背景画像Bの各画素位置が参照領域QRに属する画素値を持つか対象領域QTに属する画素値を持つか、或いはそれ以外(otherwise)のが装置を持つかの三択で分類する多値(二値化以外の実数値を含む)でラベル画像Lを生成する方法がある。
【0049】
(二値のラベル画像L)
二値のラベル画像Lの生成例として、例えば、判別部13は、画像座標(x,y)における背景画像Bの画素値B(x,y)と参照領域QRにおける参照領域特徴との間のマハラノビス(Mahalanobis)距離dR(x,y)、及び画素値B(x,y)と対象領域QTにおける対象領域特徴との間のマハラノビス距離dT(x,y)をそれぞれ求め、距離dT(x,y)及び距離dR(x,y)の大小で二分類して二値化したラベル画像Lを生成する。
【0050】
マハラノビス距離dR及びdTは、次式の[数5]により計算される。
【0051】
【0052】
また、二値化したラベル画像Lの画素値L(x,y)は、例えば、次式の[数6]により決定される。
【0053】
【0054】
上記の[数6]により、背景画像Bの各画素位置において、対象領域QTに属する画素値を持つときはラベル画像L上では画素値0となり、参照領域QRに属する画素値を持つときはラベル画像L上では画素値1となる。尚、[数6]では、具体的な画素値として{0,1}のいずれかとしているが、例えば{0,255}などのように任意の数値で二値化してもよい。
【0055】
(多値のラベル画像L)
多値のラベル画像Lの生成例として、例えば、判別部13は、上記と同様に、マハラノビス距離dR(x,y)、及びマハラノビス距離dT(x,y)をそれぞれ求め、距離dT(x,y)及び距離dR(x,y)について、0<k1<k2なる2実数k1及びk2に対し、以下に示す[数7]又は[数8]のように、多値(二値化以外の実数値を含む)で三分類して多値化したラベル画像Lを生成する。
【0056】
【0057】
【0058】
上記の[数7]においてL(x,y)=0.5の画素は対象領域QT及び参照領域QRのいずれにも属さないものと扱ってもよいし、上記の[数8]のように画素値が大きいほど参照領域らしく、その画素値が小さいほど対象領域らしいものとして、3値を超える多値のラベル画像Lとしてもよい。
【0059】
画素値統計部14は、ラベル画像Lに基づいて、背景画像Bについて対象領域QTに属する画素値を持つ各画素位置(領域QT)の画素値の統計量を対象領域画素値統計量STとして、参照領域QRに属する画素値を持つ各画素位置(領域QR)の画素値の統計量を参照領域画素値統計量SRとして算出し、それぞれ補正パラメータ導出部15に出力する。
【0060】
画素値統計部14は、シーンチェンジや日照状況等の変化で生成された背景画像Bの生成時にのみ実行してもよいし、背景画像Bに対する対象領域QT及び参照領域QRの指定変更されたときなどラベル画像Lの生成時にのみ実行しても構わないし、また、背景画像Bやラベル画像Lの生成をタイマー等によって定期的に実行させたときに実行しても構わない。以下、画素値統計部14の実行のタイミングを時刻t0とする。
【0061】
対象領域画素値統計量ST及び参照領域画素値統計量SRとしては、例えば、3次元の色ヒストグラム、色成分ごとの1次元ヒストグラム、色ベクトルの平均ベクトル、色ベクトルの分散・共分散行列、各色成分の信号値の最小値、最大値、平均値、中央値、最頻値、或いは分散値(又は標準偏差)を用いることができる。
【0062】
[数6]や[数7]で示されるように、ラベル画像Lの画素値が、対象領域QTに属する画素値を持つ各画素位置(領域QT)において0、参照領域QRに属する画素値を持つ各画素位置(領域QR)において1をそれぞれとる場合に、対象領域の平均色ベクトルmT及び分散・共分散行列WT、並びに参照領域の平均色ベクトルmR及び分散・共分散行列WRは、それぞれ以下に示す[数9]及び[数10]により算出することができる。
【0063】
【0064】
【0065】
また、ラベル画像Lが、[数8]で示されるように多値で表される場合には、対象領域の平均色ベクトルmT及び分散・共分散行列WT、並びに参照領域の平均色ベクトルmR及び分散・共分散行列WRは、それぞれ以下に示す[数11]及び[数12]により算出することができる。
【0066】
【0067】
【0068】
補正パラメータ導出部15は、画素値統計部14で算出された対象領域画素値統計量ST及び参照領域画素値統計量SRに基づき、対象領域QTに属する画素値を持つ各画素位置(領域QT)における入力映像Iの画素値を、参照領域QRに属する画素値を持つ各画素位置(領域QR)における入力映像Iの画素値に近似するよう変換する補正パラメータを導出し、補正部16に出力する。この補正パラメータは、バイアス及びゲインで表されるものであってもよいし、色変換行列であってもよいし、色変換のためのルックアップテーブルであっても構わない。
【0069】
補正パラメータ導出部15の出力する補正パラメータがバイアスb及びゲインGである場合には、例えば、次式の[数13]のように入力及び出力の画素値の各色成分独立にバイアスb及びゲインGを定めてもよい。
【0070】
【0071】
尚、上記の[数13]において、右上付きの(R)、(G)及び(B)は色成分(又は色差成分)を区別する文字である。
【0072】
補正部16は、ラベル画像Lに対応付けられた補正パラメータ導出部15から得られる補正パラメータに基づいて、入力映像Iの画素値を変換して補正済映像Jを生成し、外部に出力する。
【0073】
補正パラメータ導出部15の出力する補正パラメータがバイアスb及びゲインGである場合には、補正部16は、次式の[数14]により出力すべき補正済映像の画素値J(t;x,y)を算出することができる。
【0074】
【0075】
ここで、ラベル画像Lが3値以上の多値をとる場合に、補正部16は、次式の[数15]のようにラベル画像Lの画素値に応じて補正の度合いを調整するよう構成してもよい。
【0076】
【0077】
ここで、ラベル画像Lが3値以上の多値をとる場合に、補正部16は、次式の[数15]のようにラベル画像Lの画素値に応じて補正の度合いを調整するよう構成してもよい。
【0078】
(装置動作)
以下、
図2に示すフローチャートに基づいて、
図3乃至
図5を参照しながら、第1実施形態の映像補正装置1の動作をより分かりやすく説明する。
図2は、本発明による第1実施形態の映像補正装置1の動作を示すフローチャートである。
図3(a),(b)は、背景画像Bの生成に関する説明図であり、
図4(a),(b)は、ラベル画像Lの生成に関する説明図である。また、
図5(a),(b)は、入力映像I内の暗領域の輝度(明るさ)を明領域の輝度と同等になるよう補正した補正済画像Jの生成に関する説明図である。
【0079】
まず、
図2に示すように、映像補正装置1は、背景画像生成部10により、入力映像Iの時系列(複数の入力映像フレーム)から、動物体を除去した背景画像Bを生成する(ステップS1)。
【0080】
例えば、
図3(a)に示すように、背景画像生成部10は、入力映像Iから抽出した複数の入力映像フレームを用いて、背景差分法により、時刻t=taの入力映像Iの各画素位置(x,y)の画素値I(t=ta;x,y)から、時刻t=tbの入力映像Iの各画素位置(x,y)の画素値I(t=tb;x,y)までを比較して差分すると、時刻t=taの入力映像I内に写り込んでいた動物体M1,M2や、時刻t=tbの入力映像I内に写り込んでいた動物体M1,M2,M3を抽出することができる。そして、
図3(b)に示すように、これらの動物体を除去した画素値B(x,y)を持つ背景画像Bを得ることができる。
【0081】
続いて、映像補正装置1は、特徴抽出部12により、背景画像生成部10により生成された背景画像Bと、領域指定部11によって指定された対象領域QT及び参照領域QRの情報を入力し、対象領域QT内の背景画像Bの特徴を対象領域特徴として、参照領域QR内の背景画像Bの特徴を参照領域特徴として定量的に抽出する(ステップS2)。
【0082】
例えば、
図4(a)に示すように、領域指定部11は、ユーザインタフェースを介して、背景画像Bの中から画素値の補正の対象とする領域を対象領域Q
Tとして、当該補正の度合いを決定するための参照とすべき領域を参照領域Q
Rとして指定する。尚、
図4(a)に示す例では、背景画像B内の暗領域(影領域)を対象領域Q
Tとし、背景画像B内の明領域(非影領域)を参照領域Q
Rとして指定した例を示している。そして、特徴抽出部12は、領域指定部11によって指定された対象領域Q
T及び参照領域Q
Rの情報を入力し、対象領域Q
T内の背景画像Bの特徴を対象領域特徴として、参照領域Q
R内の背景画像Bの特徴を参照領域特徴として定量的に抽出することができる。
【0083】
続いて、映像補正装置1は、判別部13により、参照領域特徴及び対象領域特徴に基づき、背景画像Bの全体について、背景画像Bの各画素位置が参照領域QRに属する画素値を持つか対象領域QTに属する画素値を持つかを少なくとも判別する領域分類を行い、その領域分類を画像として表したラベル画像Lを生成する(ステップS3)。
【0084】
例えば、
図4(b)に極端な例として示すように、判別部13は、背景画像Bの全体について、背景画像Bの各画素位置が参照領域Q
Rに属する画素値を持つか対象領域Q
Tに属する画素値を持つかを少なくとも判別する領域分類を行い、その領域分類を画像として表したラベル画像Lを生成することができる。
【0085】
続いて、映像補正装置1は、画素値統計部14により、ラベル画像Lに基づいて、背景画像Bについて対象領域QTに属する画素値を持つ各画素位置(領域QT)の画素値の統計量を対象領域画素値統計量STとして、参照領域QRに属する画素値を持つ各画素位置(領域QR)の画素値の統計量を参照領域画素値統計量SRとして算出する(ステップS4)。
【0086】
続いて、映像補正装置1は、補正パラメータ導出部15により、対象領域画素値統計量ST及び参照領域画素値統計量SRに基づき、対象領域QTに属する画素値を持つ各画素位置(領域QT)における入力映像Iの画素値を、参照領域QRに属する画素値を持つ各画素位置(領域QR)における入力映像Iの画素値に近似するよう変換する補正パラメータを導出する(ステップS5)。
【0087】
続いて、映像補正装置1は、補正部16により、ラベル画像Lに対応付けられた補正パラメータに基づいて、入力映像Iの画素値を変換して補正済映像Jを生成し、外部に出力する(ステップS6)。
【0088】
例えば、
図5(a)に示すように或る時刻t(t
0以降)に動物体M4,M5が写り込んだ入力映像Iが補正対象として補正部16に入力されたとすると、補正部16は、その入力映像Iにおける動物体M4,M5の有無に影響されず、背景画像B上で暗領域を示していた領域を、本例では補正境界BLを境に、背景画像B上で明領域を示していた領域と同等の輝度又は色合いに補正した補正済映像Jを生成することができる。
【0089】
このように、本実施形態の映像補正装置1は、入力映像I内の陰影を示すラベル画像Lを基に入力映像Iを補正して補正済映像Jを得るように構成されるため、リアルタイムに入力される映像であっても、その入力映像I内の陰影に起因する輝度や色の差異が小さくなるよう当該入力映像Iの各画素値を補正することができる。
【0090】
〔第2実施形態〕
(装置構成)
図6は、本発明による第2実施形態の映像補正装置1の概略構成を例示するブロック図である。第2実施形態の映像補正装置1において、
図1に示すものと同様の構成要素には、同一の参照番号を付している。
【0091】
第2実施形態の映像補正装置1は、背景画像生成部10、領域指定部11、特徴抽出部12、判別部13、画素値統計部14、補正パラメータ導出部15、補正部16、及びモルフォロジフィルタ17を備え、
図1に示すものと比較してモルフォロジフィルタ17を更に備える点で相違しており、その他の機能部は第1実施形態と同様に機能する。
【0092】
まず、第1実施形態の構成では、入力映像Iの信号対雑音比(S/N)が不良である場合(例えば、S/Nが20dB未満の場合)に、その雑音に起因して判別部13の出力するラベル画像L内には細かい(例えば、孤立点や3×3画素程度以下の孤立領域である)領域が生じうる。このような場合、補正部16により、そのラベル画像Lに基づいた補正パラメータを用いて入力映像Iを補正すると、補正済映像Jに細かいまだら模様が生じ、不自然な補正済映像Jが出力されてしまう可能性がある。このとき、ラベル画像Lに対し、例えば3×3等の空間ローパスフィルタを適用しても、十分に当該まだら模様を抑圧できないことがある。そこで、本実施形態では、ラベル画像Lに対し、モルフォロジフィルタ処理を適用することで、補正済映像Jのまだら模様を抑圧するようにした。
【0093】
モルフォロジフィルタ17は、判別部13によって生成されたラベル画像Lにおける対象領域QTに属する画素値を持つ各画素位置(領域QT)に対して走査(移動処理)しながら、モルフォロジフィルタ処理を適用することにより、領域QT内で所定サイズ以下のパターン(数画素単位の細かい任意形状の小領域)を除去し、当該モルフォロジフィルタ処理後のラベル画像Lを画素値統計部14、及び補正部16に出力する。
【0094】
(領域QTが暗領域のとき)
領域QTが暗領域の場合、モルフォロジフィルタ17は、ラベル画像Lにおける領域QTに対して、
図7の上段に示すラベル画像Lにおける注目画素P(x、y)について例えば半径k(2画素)の円形カーネル内で、[数16]に示す収縮演算ero
k及び膨張演算dil
kを順次適用するオープニング演算を適用する。例えば、
図7の中段に示すように、領域QTに収縮演算ero
kを適用することで、注目画素P(x、y)の画素値を、円形カーネル内で最小の画素値を示すLminに置き換えたero
k[L](x,y)の画素値を得ることができる。これにより、領域QT内の細かい白点状の小領域(例えば、孤立点や3×3画素程度以下の孤立領域)を消去することができる。
【0095】
【0096】
【0097】
(領域QTが明領域のとき)
領域QTが明領域の場合、モルフォロジフィルタ17は、ラベル画像Lにおける領域QTに対して、
図7の上段に示すラベル画像Lにおける注目画素P(x、y)について例えば半径k(2画素)の円形カーネル内で、[数16]に示す膨張演算dil
k及び収縮演算ero
kを順次適用するクロージング演算を適用する。例えば、
図7の下段に示すように、領域QTに収縮演算dil
kを適用することで、注目画素P(x、y)の画素値を、円形カーネル内で最大の画素値を示すLmaxに置き換えたdil
k[L](x,y)の画素値を得ることができる。これにより、領域QT内の細かい黒点状の小領域(例えば、孤立点や3×3画素程度以下の孤立領域)を消去することができる。
【0098】
【0099】
これにより、入力映像Iの信号対雑音比(S/N)が不良である場合(例えば、S/Nが20dB未満の場合)でも、より自然な補正済映像Jを生成することができる。
【0100】
尚、モルフォロジフィルタ17は、上述の例では、ラベル画像Lにおける領域QTに対してのみ、モルフォロジフィルタを適用する例を説明したが、ラベル画像L全体に対して、明領域であるか暗領域であるかでモルフォロジフィルタを切り替え適用する構成としてもよい。
【0101】
もしくは、モルフォロジフィルタ17はラベル画像L全体に対して、明領域であるか暗領域であるかでモルフォロジフィルタを切り替えることなく、以下の[数19]乃至[数21]のいずれかの演算を適用してもよい。
【0102】
【0103】
上記の[数19]における2重に順次適用するdilkを、半径2k(例えば4画素)の例えば円形のカーネルによる膨張演算dil2kに置き換えて、以下の[数20]のように実装してもよい。
【0104】
【0105】
【0106】
上記の[数21]における2重に順次適用するerokを、半径2k(例えば4画素)の例えば円形のカーネルによる収縮演算ero2kに置き換えて、以下の[数22]のように実装してもよい。
【0107】
【0108】
尚、[数19]及び[数20]はオープニング演算の後にクロージング演算を適用するモルフォロジフィルタである。一方、[数21]及び[数22]はクロージング演算の後にオープニング演算を適用するモルフォロジフィルタである。[数19]乃至[数22]のいずれによっても、細かい黒点状の小領域及び細かい白点状の小領域の両方を消去することができる。このような[数19]乃至[数22]のいずれかに従うモルフォロジフィルタであれば、明領域であるか暗領域であるかの判別が不要となり、明領域と暗領域が複雑に分類されるような場合では特に処理負担を軽減させ、且つ高精度に補正済映像Jのまだら模様を抑圧できるようになる。
【0109】
これにより、入力映像Iの信号対雑音比(S/N)が不良である場合(例えば、S/Nが20dB未満の場合)でも、より自然な補正済映像Jを生成することができる。
【0110】
このように、本実施形態の映像補正装置1においても、入力映像I内の陰影を示すラベル画像Lを基に入力映像Iを補正して補正済映像Jを得るように構成されるため、リアルタイムに入力される映像であっても、その入力映像I内の陰影に起因する輝度や色の差異が小さくなるよう当該入力映像Iの各画素値を補正することができる。
【0111】
特に、本実施形態の映像補正装置1は、そのラベル画像Lに対し本発明に係るモルフォロジフィルタを適用することで、入力映像Iに含まれるノイズや背景画像の模様に起因するラベル画像Lの所定サイズ以下のパターン(数画素単位の細かい任意形状の小領域)を除去し、当該補正済映像Jに生じ得る細かい輝度のむらを抑えることができる。
【0112】
上述した各実施形態の例に関して、映像補正装置1として機能するコンピュータを構成し、これらの装置の各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。具体的には、各手段を制御するための制御部をコンピュータ内の中央演算処理装置(CPU)で構成でき、且つ、各手段を動作させるのに必要となるプログラムを適宜記憶する記憶部を少なくとも1つのメモリで構成させることができる。即ち、そのようなコンピュータに、CPUによって該プログラムを実行させることにより、上述した各手段の有する機能を実現させることができる。更に、各手段の有する機能を実現させるためのプログラムを、前述の記憶部(メモリ)の所定の領域に格納させることができる。そのような記憶部は、装置内部のRAM又はROMなどで構成させることができ、或いは又、外部記憶装置(例えば、ハードディスク)で構成させることもできる。また、そのようなプログラムは、コンピュータで利用されるOS上のソフトウェア(ROM又は外部記憶装置に格納される)の一部で構成させることができる。更に、そのようなコンピュータに、各手段として機能させるためのプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録することができる。また、上述した各手段をハードウェア又はソフトウェアの一部として構成させ、各々を組み合わせて実現させることもできる。
【0113】
上述の各実施形態については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、上述の実施形態の例では、暗領域を対象領域とし明領域を参照領域として、その暗領域を明領域に近づけるべく補正する例を説明したが、明領域を暗領域に近づけるべく補正するとしてもよいし、特定の色合いを他の色合いに近づけるべく補正するとしてもよい。従って、本発明は、上述の各実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明によれば、映像内の陰影に起因する輝度や色の差異を小さくすることができるので、テレビジョンカメラ等で撮影した映像を扱う用途に有用である。
【符号の説明】
【0115】
1 映像補正装置
10 背景画像生成部
11 領域指定部
12 特徴抽出部
13 判別部
14 画素値統計部
15 補正パラメータ導出部
16 補正部
17 モルフォロジフィルタ