(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】コンパクションを制御する方法
(51)【国際特許分類】
C03B 17/06 20060101AFI20230112BHJP
C03B 25/12 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C03B17/06
C03B25/12
(21)【出願番号】P 2019568339
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 US2018037596
(87)【国際公開番号】W WO2018232153
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-01
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】バーデット,スティーヴン ロイ
(72)【発明者】
【氏名】マダプシ,シュリラム パランサンダラム
(72)【発明者】
【氏名】ペイン,ジェレミー ネイサン
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-020864(JP,A)
【文献】特開2012-076974(JP,A)
【文献】特表2009-502706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパクションを制御する方法であって、
a)
450~900℃の温度範囲内の複数の温度における冷却速度により形成された種々の冷却速度で成形された複数のガラスリボンからカットされた複数のガラスシートのコンパクション値を測定するステップ、
b)測定されたコンパクション値と前記ステップa)の冷却速度とを
【数1】
の線形方程式に当てはめることにより線形回帰させて、
前記複数の温度に対応する複数の回帰係数を取得するステップ、
ここで、qは冷却速度[℃毎秒]を表しており、bは回帰係数を表しており、Cはコンパクション[ppm]を表しており、iはデータ集合の全数を表しており、nは回帰係数の全数を表しており、kは回帰の切片を表している、
c)前記ステップb)の
前記複数の温度に対応した複数の予め定められた冷却速度を有する、予め定められた冷却曲線を選定するステップ、
d)前記複数の回帰係数および前記複数の予め定められた冷却速度を用いて、予測コンパクション値を計算するステップ、
e)前記予測コンパクション値が最小化されるように前記予め定められた冷却速度を修正して、目標冷却速度を取得するステップ、
f)前記目標冷却速度を用いて後続のガラスリボンを引き出すステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法はさらに、修正された冷却速度によって前記予め定められた冷却速度を置換するステップ、および前記ステップd)および前記ステップe)を反復するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記予測コンパクション値は、
【数2】
に等しく、ここで、mは450℃から900℃までの範囲にわたった温度増分の数を表している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
コンパクションを制御する方法であって、
a)第1のドロー速度で成形体からガラスリボンを引き出すステップ、
b)前記ガラスリボンの中心線に沿った、前記成形体の底部エッジからの複数の距離において、温度を測定するステップ、
c)測定された温度に基づく複数の距離での前記ガラスリボンの冷却速度を計算するステップ、
d)前記ガラスリボンからカットされたガラスシートのコンパクション値を測定するステップ、
e)前記ステップa)~前記ステップd)を、複数のドロー速度で引き出される複数のガラスリボンについて反復して、複数の測定されたコンパクション値を取得するステップ、
f)前記複数の測定されたコンパクション値と、前記複数のガラスリボンの複数の距離での冷却速度とを
【数1】
の線形方程式に当てはめることにより線形回帰させて、450~900℃の温度範囲内の複数の温度に対応する複数の回帰係数を取得するステップ、ここで、qは冷却速度[℃毎秒]を表しており、bは回帰係数を表しており、Cはコンパクション[ppm]を表しており、iはデータ集合の全数を表しており、nは回帰係数の全数を表しており、kは回帰の切片を表している、
g)前記複数の温度の各温度に対応した予め定められた冷却速度を有する、予め定められた冷却曲線を選定するステップ、
h)前記複数の回帰係数および前記複数の予め定められた冷却速度を用いて、予め定められたドロー速度での予測コンパクション値を取得するステップ、
i)前記予め定められたドロー速度での予測コンパクション値が最小化されるように前記予め定められた冷却速度を修正して、目標冷却速度を取得するステップ、
j)前記目標冷却速度を用いて後続のガラスリボンを引き出すステップ
を含む、方法。
【請求項5】
前記方法はさらに、前記ステップi)の修正された冷却速度によって前記ステップh)の前記予め定められた冷却速度を置換するステップ、および前記ステップh)および前記ステップi)を反復して、前記ステップj)までに新たな目標冷却速度を取得するステップを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記予測コンパクション値は、
【数4】
に等しく、ここで、mは450℃から900℃までの範囲にわたった温度増分の数を表している、請求項4記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2017年6月14日付にて提出の米国特許仮出願第62/519347号の優先権の利益を主張し、この出願の内容は本願の依拠するところであって、以下に完全に記載されているかのごとく、その全体が引用により本願に組み込まれるものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概してガラス基板の歪みを低減する方法に関しており、より具体的にはガラス基板のコンパクションの最小化に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)の形態のガラスディスプレイパネルは、携帯電話機からコンピュータモニタ、TVディスプレイにいたる、ますます多様化する用途において用いられている。これらの用途には、欠陥の無い無垢な表面を有するガラスシートが要求される。LCDは、エンベロープ形成のために共に封止された複数の薄膜ガラスシートから成る。LCDを含む要素間の適正な見当合わせもしくは位置合わせを維持するためのサイクルが熱的に行われる場合、当該ディスプレイを含むガラスシートの寸法が変化しないことが強く所望される。
【0004】
典型的には、LCDは、アモルファスシリコン(α‐Si)薄膜トランジスタ(TFT)タイプまたは多結晶シリコン(p‐Siまたはポリ‐Si)TFTタイプから成っている。ポリ‐Siのほうがより高い駆動電流およびより高い電子移動度を有し、これによりピクセルの応答時間が低減される。また、p‐Si処理を使用すると、ガラス基板上に直接にディスプレイ駆動回路を構成することができる。これに対して、α‐Siは、集積回路パッケージング技術を利用してディスプレイ周辺に取り付けられなければならない別個のドライバチップを必要とする。
【0005】
しかし、p‐SiTFTの製造にはα‐SiTFTよりも高い処理温度が要求されることから、処理中にガラスの収縮(コンパクション)の危険が増大する。加えて、ピクセル密度の増大によるディスプレイ解像度の連続した改善には、製造中、例えばガラス基板上に薄膜トランジスタを堆積している間、ディスプレイ構成要素の適正な位置合わせを保証するため、ガラスの熱的安定性の相応の改善が要求される。
【0006】
ガラスメーカは、顧客プロセスにおいて後に熱的サイクルが行われる場合、ガラス基板を顧客に発送する前に、基板が収縮しないよう、または収縮がきわめて小さくなるよう、ガラス基板に対して熱処理を行うことが多い。こうした熱処理は「予収縮」または「プレコンパクション」として知られている。例えばp‐SiTFTに要求される高温処理では、低いコンパクションを保証するために、当該ガラス基板に長い熱処理時間、例えば600℃で5時間の熱処理時間が要求されうる。さらに、こうした熱処理にはさらにガラス基板の取り扱いが含まれるが、これは基板表面の損傷のおそれを増大させ、また全体の製造コストも増大させる。
【0007】
定量的には、コンパクションとは、熱的サイクルによって形成されるガラス構造における微細な変化の結果として、基板平面内のガラス基板が示す単位長さ当たりの長さ変化である(つまり、コンパクションとは、ガラスの熱履歴から生じる歪みであり、ガラスの仮想温度に密接に関連している)。コンパクションは、ガラス基板上にマークを配置し、当該マーク間の初期距離を測定することによって物理的に求めることができる。この場合、基板に対して予め定められた熱処理が行われ、基板は室温に戻されている。次いで、マーク間の距離が測定される。この場合、コンパクションは、
コンパクション=106・(熱処理前の距離-熱処理後の距離)/(熱処理前の距離)
により、百万分率(ppm)で与えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コンパクションはLCDパネルメーカにとって重要であるので、これまで、アウトプットを増大すべく溶融ガラス流の増大が行われた際には、製造プロセスは、流れの増大前に存在した完成した基板と同じコンパクションを維持するための充分な時間が冷却中に得られるよう、線形にスケーリングされていた。当該アプローチはある程度は機能するが、成形体と基板をガラスリボンから分離する位置との間に大きな距離が必要となりうるという欠点を有する。当該距離が長くなると、付加的な製造空間およびその実現のための付加的な資本が必要となる。実際に、既存の機構の物理的制約のため、コンパクションを低減すべくドロー距離を増大すると、所与のガラス成形設備において利用可能な最大流が制限されうる。また、適切なコンパクションの保証には、適切なプロセス条件を取得するための膨大な実験がしばしば要求される。選択されたプロセス条件によって取得されるコンパクションを予測することができれば、有益である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、コンパクションを制御する方法であって、
a)種々の冷却速度で成形された複数のガラスリボンからカットされた複数のガラスシートのコンパクションを測定するステップ、
b)測定されたコンパクションとステップa)の冷却速度とを相関させて、複数の温度に対応する複数の回帰係数を取得するステップ、
c)ステップb)の複数の温度に対応した複数の予め定められた冷却速度を有する、予め定められた冷却曲線を選定するステップ、
d)複数の回帰係数および複数の予め定められた冷却速度を用いて、予め定められた冷却曲線から予測コンパクションを計算するステップ、
e)予測コンパクションが最小化されるように予め定められた冷却速度を修正して、目標冷却速度を取得するステップ、
f)目標冷却速度を用いて後続のガラスリボンを引き出すステップ
を含む方法が、開示されている。
【0010】
本方法はさらに、ステップe)の修正された冷却速度によってステップd)の予め定められた冷却速度を置換するステップ、およびステップd)およびステップe)を反復して、ステップf)までに新たな目標冷却速度を取得するステップを含むことができる。当該回帰プロセスは、コンパクションを最小化する目標冷却速度が取得されるまで、必要な回数だけ反復可能である。
【0011】
ステップb)は線形回帰、例えば、
【0012】
【0013】
の形態を含むことができ、ここで、qは冷却速度[℃毎秒]を表しており、bは回帰係数を表しており、Cはコンパクション[ppm]を表しており、iはデータ集合の全数を表しており、nは回帰係数の全数を表しており、kは回帰の切片を表している。
【0014】
予測コンパクション値は、方程式
【0015】
【0016】
から計算可能であり、ここで、kは回帰の切片であり、mはx℃からy℃までの範囲にわたった温度増分の数を表しており、nは温度増分の数を表しており、bは回帰係数を表しており、qは冷却速度を表している。
【0017】
幾つかの実施形態では、xは450℃に等しく、yは900℃に等しい。
【0018】
別の実施形態では、コンパクションを制御する方法であって、
a)第1のドロー速度で成形体からガラスリボンを引き出すステップ、
b)ガラスリボンの中心線に沿った、成形体の底部エッジからの複数の距離において、温度を測定するステップ、
c)測定された温度に基づく複数の距離でのガラスリボンの冷却速度を計算するステップ、
d)ガラスリボンからカットされたガラスシートのコンパクションを測定するステップ、
e)ステップa)~ステップd)を、複数のドロー速度で引き出される複数のガラスリボンについて反復して、複数の測定されたコンパクション値を取得するステップ、
f)複数の測定されたコンパクション値と、複数のガラスリボンの複数の距離での冷却速度とを相関させて、予め定められた温度範囲内の複数の温度に対応する複数の回帰係数を取得するステップ、
g)複数の温度の各温度に対応した予め定められた冷却速度を有する、予め定められた冷却曲線を選定するステップ、
h)複数の回帰係数および複数の予め定められた冷却速度を用いて、予め定められたドロー速度での予測コンパクション値を取得するステップ、
i)予め定められたドロー速度での予測コンパクション値が最小化されるように予め定められた冷却速度を修正して、目標冷却速度を取得するステップ、
j)目標冷却速度を用いて後続のガラスリボンを引き出すステップ
を含む方法が、記載されている。
【0019】
本方法はさらに、ステップi)の修正された冷却速度によってステップh)の予め定められた冷却速度を置換するステップ、およびステップh)およびステップi)を反復して、ステップj)までに新たな目標冷却速度を取得するステップを含む。当該回帰プロセスは、コンパクションを最小化する目標冷却速度が取得されるまで、必要な回数だけ反復可能である。
【0020】
ステップf)は、線形回帰、例えば
【0021】
【0022】
の形態の線形方程式の系を含むことができ、ここで、qは冷却速度[℃毎秒]を表しており、bは回帰係数を表しており、Cはコンパクション値[ppm]を表しており、iはデータ集合の全数を表しており、nは温度増分の全数を表しており、kは回帰の切片を表している。
【0023】
予測コンパクション値は、
【0024】
【0025】
として計算可能であり、ここで、kは切片であり、mはx℃からy℃までの範囲にわたった温度増分の数を表しており、nは温度増分を表しており、bは回帰係数であり、qは冷却速度である。
【0026】
幾つかの実施形態では、xは450℃に等しく、yは900℃に等しい。
【0027】
本明細書に開示する実施形態の付加的な特徴および利点を以下の詳細な説明に記載するが、その一部は、当該説明から当該分野の技術者に容易に理解され、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲および添付の図面を含む、本明細書に記載した発明を実施することにより、当該分野の技術者に認識されるであろう。
【0028】
上述した一般的な説明および以下の詳細な説明の双方に提示した実施形態は、本明細書に開示する実施形態の本質および特性を理解するための概観または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。添付の図面はより深い理解の提供のために設けられ、本明細書に組み込まれてその一部を成すものである。各図面は開示の種々の実施形態を示しており、当該説明と共に、開示の基本方式および動作を説明するために用いる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】例示の冷却曲線の幾つかのバリエーションを示すプロットのグラフである。
【
図2】例示のフュージョンダウンドロー装置を示す概略図である。
【
図3】A~Lの標識が付された種々のドロー条件集合の関数としてのコンパクションのプロットである。
【
図4】
図3のドロー条件とコンパクションとの相関により取得された回帰係数のプロットである。
【
図5】
図4の回帰係数を用いて形成された幾つかの目標冷却曲線(成形体からの距離の関数としての温度)を示すプロットのグラフである。
【
図6】
図5の冷却曲線から取得された、測定されたコンパクションのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本開示の実施形態につき、その例を添付の図面に示し、詳細に説明する。可能なかぎり、各図面を通して同一の部材または類似の部材の参照には同一の参照番号を用いる。ただし、本開示は多数の異なる形態で実現可能であり、記載した実施形態に限定されると解釈されてはならない。
【0031】
範囲は、本明細書においては、特定の1つの「おおよその」値からかつ/または特定の別の「おおよその」値まで表現可能である。こうした範囲を表現している場合、特定の1つの値からかつ/または特定の他の値までが別の実施形態に含まれる。同様に、「約」なる接頭語を用いて値を近似として表現している場合、特定の値は別の実施形態を形成することを理解されたい。さらに、範囲それぞれの端点は、他方の側の端点と関連して、また他方の側の端点から独立に、双方とも有意であることも理解されたい。
【0032】
本明細書に使用している方向を表す語(例えば上方、下方、右方、左方、前方、後方、最上方、最下方)は、図での表示への参照を成しているに過ぎず、絶対方向の示唆を意図していない。
【0033】
別様のことが明示的に言明されていないかぎり、本明細書に記載したいずれの方法も、特定の順序でのステップの実行を要求するものとの解釈を全く意図しておらず、またいずれの装置も、特定の方向づけを要求するものとの解釈を全く意図していない。よって、方法の請求項が実際にそのステップのしたがうべき順序に言及していない箇所、または装置の各請求項が個々の構成要素についての序列もしくは方向づけに言及していない箇所、またはそれ以外の特許請求の範囲もしくは説明において各ステップが特定の順序に限定されるべきことが殊に言明されておらず、または装置の構成要素についての特定の序列もしくは方向づけが言明されていない箇所では、いかなる観点においても、順序、序列もしくは方向づけの示唆を全く意図していない。このことは、ステップの配置、動作フロー、構成要素の序列もしくは構成要素の方向づけに関する論理の問題、文法的組成もしくは句読法から導出される通常の意義、および本明細書に記載した実施形態の数もしくはタイプを含めて、表現されていないあらゆる潜在的な解釈の基礎を支えるものである。
【0034】
本明細書に使用しているように、「1つの」、「或る」および「前記1つの」なる単数形は、文脈が明瞭に別様のことを言明していないかぎり、複数の指示を含む。したがって、例えば「1つの」構成要素なる指示は、文脈が明瞭に別様のことを指示していないかぎり、2つ以上のこうした構成要素を有する態様を含む。
【0035】
本明細書に使用しているように、「溶融ガラス」とは、冷却に応じてガラス状態を取りうる溶融材料を意味するものと解釈されたい。溶融ガラスなる語は「溶解物」なる語と同義に用いられる。溶融ガラスは、例えば大部分がケイ酸塩のガラスを形成しうるが、本開示はこれに限定されない。
【0036】
本明細書に使用しているように、「冷却曲線」なる語は、距離の関数としての温度、または代替的に時間の関数としての温度を表す。典型的には、距離とは、溶融ガラスのリボンが引き出される、成形体の底部エッジに対する距離を表す。時間は、既知のドロー速度が与えられた場合の距離に直接に関連づけ可能であることを理解されたい。冷却曲線は、1つもしくは複数の線形の(一定の)冷却速度、1つもしくは複数の非線形の冷却速度、または線形の冷却速度および非線形の冷却速度の組み合わせを含むことができる。例えば、
図1には、成形体下方の距離の関数として温度をプロットした例示の冷却曲線8aが示されている。冷却曲線8aは単一の線形の冷却速度を含むのに対して、冷却曲線8bは複数の線形の冷却速度(線分)を示している。曲線8cは、非線形の冷却曲線を含む。冷却速度は、関心点(例えば関心温度)での曲線またはセグメントに対する接線の傾きとして求められる。
図1に示した冷却曲線は例示および説明のための提示に過ぎず、限定ではないことを理解されたい。
【0037】
ドロープロセス、例えばフュージョンダウンドロープロセスなどのダウンドロープロセスによるガラスシートの製造には、慎重な温度制御が要求される。成形プロセス中、厚さ1ミリメートル(mm)未満の多くのケース、または幅3メートル超の幾つかのケースでは、薄膜ガラスリボンが基本的にそのエッジによって支持される自由空間を通して成形体から引き出される際の温度の影響が激甚なものとなりうる。例えば、ガラスリボンの中心線でのガラスリボンの厚さは、約1mm以下、例えば約0.7mm以下、約0.5mm以下、約0.3mm以下となりうるし、幾つかの実施形態では、約0.1mm以下となることもある。
【0038】
例として、
図2には、フュージョンガラス製造装置10の一例が示されている。幾つかの実施形態では、ガラス製造装置10は、溶解容器14を含みうるガラス溶解炉12を含むことができる。溶解容器14に加えて、ガラス溶解炉12は、選択手段として、原材料を加熱してこれを溶融ガラスへ変換するように構成された1つもしくは複数の付加的な構成要素、例えば加熱要素(例えば燃焼バーナおよび/または燃焼電極)を含むことができる。例えば、溶解
容器14は、電流が原材料を通流することで原材料のジュール加熱によりエネルギが印加される直接加熱と燃焼バーナとの双方によって原材料にエネルギが印加される電気増幅型の溶解容器であってよい。本明細書に使用しているように、電気増幅型の溶解容器とは、ジュール加熱と上表面燃焼加熱との双方から熱エネルギを取得する溶解容器であり、ジュール加熱によって原材料および/または溶解物に付与されるエネルギ量は、約20%以上となる。本明細書に使用しているように、電気増幅型の溶解容器は、液中燃焼プロセスを含まない。幾つかの実施形態では、上表面燃焼バーナ(Y)とジュール加熱との双方によって溶融材料に印加される全熱エネルギに対する、ジュール加熱(X)により溶融材料に印加される熱エネルギは、約20%から約80%の範囲となりうる。例えば、上表面燃焼バーナの熱エネルギに対する、ジュール加熱により溶融材料に印加される熱エネルギの比X:Yは、20%:80%、30%:70%、40%:60%、50%:50%、60%:40%、70%:30%または80%:20%であってよく、別の実施形態では他の比も使用可能である。
【0039】
別の実施形態では、ガラス溶解炉12は、溶解容器からの熱損失を低減する熱管理装置(例えば絶縁構成要素)を含むことができる。また別の実施形態では、ガラス溶解炉12は、原材料をガラス溶解物に溶解させることのできる電気装置および/または電気機械装置を含むことができる。さらに別の実施形態では、ガラス溶解炉12は、支持構造体(例えば支持シャシ、支持メンバ等)または他の構成要素を含むこともできる。
【0040】
ガラス溶解容器14は、典型的には、耐熱性材料、例えば耐熱性セラミック材料、例えばアルミナもしくはジルコニアを含む耐熱性セラミック材料から形成されるが、当該耐熱性セラミック材料は、他の耐熱性材料、例えばイットリウム(例えばイットリア、イットリア安定化ジルコニア、リン酸イットリウム)、ジルコン(ZrSiO4)もしくはアルミナ‐ジルコニア‐シリカまたはクロム酸化物を含むことができ、代替の使用または任意の組み合わせでの使用も可能である。幾つかの例では、ガラス溶解容器14は耐熱性セラミック煉瓦から構成可能である。
【0041】
幾つかの実施形態では、溶解炉12は、ガラス物品、例えば不定長さのガラスリボンを作製するように構成されたガラス製造装置の構成要素として組み込み可能であるが、別の実施形態では、ガラス製造装置は、以下に限定されるものではないものの、他のガラス物品、例えばガラスロッド、ガラスチューブ、ガラスエンベロープ(例えば電球等の照明装置用のガラスエンベロープ)およびガラスレンズを形成するように構成可能であり、また他の多くのガラス物品も考えられる。幾つかの例では、溶解炉は、スロットドロー装置、フロートバス装置、ダウンドロー装置(例えばフュージョンダウンドロー装置)、アップドロー装置、プレス装置、ロール装置、チューブドロー装置または本開示から利益を得ることのできるあらゆる他のガラス製造装置を含むガラス製造装置の構成要素として組み込み可能である。例として、
図2には、個別のガラスシートを形成する後続の処理またはスプールへのガラスリボンの巻き取りのためのガラスリボンのフュージョンドローを行うフュージョンダウンドローガラス製造装置10の構成要素としてのガラス溶解炉12が示されている。
【0042】
ガラス製造装置10(例えばフュージョンダウンドロー装置10)は、選択手段として、ガラス溶解容器14の上流に配置された上流ガラス製造装置16を含むことができる。幾つかの例では、上流ガラス製造装置16の一部または全体を、ガラス溶解炉12の一部として組み込むことができる。
【0043】
図2の実施形態に示したように、上流ガラス製造装置16は、原材料貯蔵部18、原材料送出装置20およびこれに接続されたモータ22を含むことができる。貯蔵部18は、矢印26で示したような1つもしくは複数の供給ポートを介してガラス溶解炉12の溶解容器14に供給可能な量の原材料を貯蔵するように構成可能である。原材料24は、典型的には、1種もしくは複数種のガラス形成用金属酸化物および1種もしくは複数種の改質剤を含む。幾つかの例では、原材料送出装置20は、所定量の原材料24が貯蔵部18から溶解容器14へ送出されるよう、モータ22によって動かすことができる。別の例では、モータ22は、溶融ガラスの流れ方向に関する溶解容器14の下流で測定された溶融ガラスレベルに基づいて制御される速度で原材料24が導入されるよう、原材料送出装置20に動力を供給することができる。その後、溶解容器14内の原材料24は加熱可能となり、溶融ガラス28が形成される。典型的には、初期溶解ステップでは、原材料は、粒子、例えば種々の「砂」から成るものとして、溶解容器に添加される。また、原材料は、先行の溶解動作および/または成形動作からのスクラップガラス(すなわちカレット)を含んでいてもよい。典型的には、溶解プロセスの開始には燃焼バーナが使用される。電気増幅型の溶解プロセスでは、(例えば原材料が液化し始めて)原材料の電気抵抗が充分に低下すると、原材料に接触するように配置された電極間に電位が生じることで電気増幅が開始され、これにより原材料を通る電流が生じ、典型的には当該時点で原材料が溶融状態に入るかまたは溶融状態にある。
【0044】
ガラス製造装置10はまた、選択手段として、溶融ガラス28の流れ方向に関するガラス溶解炉12の下流に配置された下流ガラス製造装置30を含むこともできる。幾つかの例では、下流ガラス製造装置30の一部は、ガラス溶解炉12の一部として組み込み可能である。また、幾つかのケースでは、後に検討する第1の接続導管32または下流ガラス製造装置30の他の一部をガラス溶解炉12の一部として組み込むこともできる。下流ガラス製造装置の各要素は、接続導管32を含めて、貴金属から形成可能である。適切な貴金属には、白金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウムおよびパラジウムまたはこれらの合金から成る金属群から選択される白金族金属が含まれうる。例えば、ガラス製造装置の下流の構成要素は、約70重量%から約90重量%までの白金と約10重量%から約30重量%までのロジウムとを含む白金‐ロジウム合金から形成可能である。また、他の適切な金属として、モリブデン、レニウム、タンタル、チタン、タングステンおよびこれらの合金が含まれていてもよい。
【0045】
下流ガラス製造装置30は、溶解容器14の下流に配置されかつ上述した第1の接続導管32を介して溶解容器14に結合された第1の状態調節容器(すなわち処理容器)、例えば清澄容器34を含むことができる。幾つかの例では、溶融ガラス28は、溶解容器14から第1の接続導管32を介して清澄容器34へ重力によって供給可能である。例えば、重力により、第1の接続導管32の内部通路を通して、溶解容器14から清澄容器34へ、溶融ガラス28を流すことができる。また、溶解容器14の下流、例えば溶解容器14と清澄容器34との間に、他の状態調節容器も配置可能であることを理解されたい。幾つかの実施形態では、溶解プロセスの続行のために1次溶解容器からの溶融ガラスを2次容器内でさらに加熱する状態調節容器、または清澄容器への導入前に1次溶解容器内の溶融ガラスの温度を下回る温度まで溶融ガラスを冷却する状態調節容器を、溶解容器と清澄容器との間に配置することができる。
【0046】
上述したように、種々の技術によって溶融ガラス28から気泡を除去することができる。例えば、原材料24は、加熱時に化学還元反応を起こして酸素を放出する多価化合物(すなわち清澄剤)、例えばスズ酸化物を含むことができる。他の適切な清澄剤には、以下に限定されるものではないものの、ヒ素、アンチモン、鉄およびセリウムが含まれるが、上述したように、ヒ素およびアンチモンの使用は環境上の理由から幾つかの用途では不可能である。清澄容器34は溶解容器温度を上回る温度まで加熱され、これにより清澄剤が加熱される。溶解物中に含まれる1種もしくは複数種の清澄剤から熱によって誘導される化学還元によって生じた酸素気泡は、清澄容器内の溶融ガラスを通って上昇し、このとき、溶解炉内で形成された溶融ガラス中の気体が、清澄剤によって生じた酸素気泡に合体可能または拡散可能となる。次いで、膨張した気泡が、増大した浮力によって、清澄容器内の溶融ガラスの自由表面へと上昇可能となり、その後、清澄容器から排気可能となる。酸素気泡は、さらに、溶融ガラスを通って上昇する際に、清澄容器内の溶融ガラスの機械的混合を誘導することができる。
【0047】
下流ガラス製造装置30は、さらに、別の状態調節容器、例えば清澄容器34から下流へ流れ出る溶融ガラスを混合する混合装置36、例えば攪拌容器を含むことができる。混合装置36は、均質なガラス溶解合成物を形成するために使用可能であり、これにより、当該混合装置がなければ清澄容器内の清澄された溶融ガラスに存在しうる化学的不均一性または熱的不均一性が低減される。図示したように、清澄容器34は、第2の接続導管38を介して混合装置36に結合可能である。幾つかの実施形態では、溶融ガラス28は、清澄容器34から第2の接続導管38を介して混合装置36へ、重力によって供給可能である。例えば、重力により、第2の接続導管38の内部通路を通して、清澄容器34から混合装置36へ、溶融ガラス28を流すことができる。典型的には、混合装置内の溶融ガラスは自由表面を有し、当該自由表面と混合装置の上部との間に広がる自由容積が存在する。混合装置36が溶融ガラスの流れ方向に関する清澄容器34の下流に示されているのに対し、混合装置36は他の実施形態では清澄容器34の上流に配置されてもよいことに注意されたい。幾つかの実施形態では、下流ガラス製造装置30は、複数の混合装置、例えば清澄容器34の上流の混合装置と清澄容器34の下流の混合装置とを含むことができる。当該複数の混合装置は同じ設計から成っていてよく、または相互に異なる設計から成っていてもよい。幾つかの実施形態では、1つもしくは複数の容器および/または導管は、内部に配置される静的混合ベーンを含むことができ、これにより溶融材料の混合および後続の均質化が促進される。
【0048】
下流ガラス製造装置30はさらに、別の状態調節容器、例えば混合装置36の下流に配置可能な送出容器40を含むことができる。送出容器40は、下流の成形装置への供給のために、溶融ガラス28を状態調節可能である。例えば、送出容器40は、流出導管44を介した成形体42への溶融ガラス28の一貫した流れを形成および調整するアキュムレータおよび/または流れコントローラとして機能することができる。送出容器40内の溶融ガラスは幾つかの実施形態で自由表面を有し、ここで、当該自由表面から送出容器の上部まで上昇方向に自由容積が延在する。図示したように、混合装置36は、第3の接続導管46を介して送出容器40に結合可能である。幾つかの例では、溶融ガラス28は、混合装置36から第3の接続導管46を介して送出容器40へ、重力によって供給可能である。例えば、重力により、第3の接続導管46の内部通路を通して、混合装置36から送出容器40へ、溶融ガラス28を流すことができる。
【0049】
下流ガラス製造装置30はさらに成形装置48を含むことができ、当該成形装置48は、流入導管50を含む上述した成形体42を含む。流出導管44は、送出容器40から成形装置48の流入導管50へ溶融ガラス28を送出するように配置可能である。フュージョンダウンドローガラス製造装置内の成形体42は、成形体の上面に配置されたトラフ52と、成形体の底部エッジ(根部)56に沿ったドロー方向に収束する収束成形面54(1つの面のみが図示されている)とを有しうる。送出容器40、流出導管44および流入導管50を経て成形体トラフへ送出される溶融ガラスは、トラフの壁から溢れ、収束する成形面54に沿って下降し、溶融ガラスの別流となる。成形体トラフ内の溶融ガラスは自由表面を有し、当該自由表面から内部に成形体を配置したエンクロージャの上部まで自由容積が延在していることに注意されたい。溶融ガラスの別流は根部の下方でこれに沿って合流し、溶融ガラスが冷却されて材料の粘度が増大する際のガラスリボンの寸法を制御するために、例えば重力、エッジロールおよびプリングロール(図示せず)によって下方への張力をガラスリボンに適用することにより、ドロー方向60で根部56から引き出される溶融ガラス58の単一のガラスリボンを形成する。したがって、ガラスリボン58は、粘性‐弾性遷移を起こし、ガラスリボン58に安定した寸法特性を与える機械的性質を獲得する。ガラスリボン58は、幾つかの実施形態では、ガラス分割装置(図示せず)により、ガラスリボンの弾性領域において個別のガラスシート62に分割可能であるが、別の実施形態では、ガラスリボンは、スプールに巻き取られて、さらなる処理のために保存可能である。
【0050】
自由空間を通して引き出されるガラスリボンに沿った方向およびこれに対する横断方向での小さな温度の変動でさえ、ガラスリボンおよびそこからカットされるガラスシートの反りを生む残留応力を生じさせることは、容易に理解されるであろう。また、リボンは、典型的には1000℃超の温度で成形体を出るが、典型的には垂直下方の方向へ引き出されるところ、利用可能な垂直方向距離は実用上の条件から制限されていることが多いため、きわめて短い距離のうちに数百度未満の温度まで冷却しなければならないことへの注意も重要である。
【0051】
また、ダウンドローガラス製造プロセスの編成および動作、特に光学品質ガラスの製造に要求される資本的支出がきわめて大きくなりうることも認識すべきである。例えば、通常非金属の耐熱性材料から構成される溶解容器14および成形体42を除き、装置の残部は、溶融ガラスを溶解容器から成形体へ輸送する介在容器および導管を含めて、1種もしくは複数種の貴金属から形成されている。したがって、既存の装置限界を超える製造容積の需要の変化は、対処が困難であり、高価となる。
【0052】
溶融ガラス流量の増大の一態様として、製造装置に印加される熱負荷の増大が挙げられるが、これは、溶解炉から下方の成形体へのプロセスの熱平衡を乱しかねない。つまり、流量が増大すると、溶融ガラスを適切に冷却し、特にプロセスのドロー部分において適切な溶融ガラスの粘性および成形特性を達成する方法を発見する必要がある。
【0053】
適切にかつ一貫した環境を維持するために、成形体と、溶融ガラスリボンが粘性流体から弾性固体へ遷移しつつ引き出される際に通る自由空間領域との双方が、溶融ガラスリボンを周囲環境から分離する構造体内に含まれる。より具体的には、ガラスリボンが引き出される際に通る自由空間の容積は、成形体の下方に配置されたハウジングの少なくとも4つの側面、すなわち接続壁と囲い板もしくは開放箱または実質的に垂直方向のトンネルを形成する耐熱性絶縁材との集合体によって包囲されている。リボンの温度制御(例えばリボンの冷却)に必須の加熱装置および/または冷却装置(図示せず)は、ハウジング内でドロー方向60に沿って、かつドロー方向に直交する幅(ラテラル)方向において、配置されている。こうした加熱装置および冷却装置は、電気加熱要素、冷却剤が通流する冷却コイル、または他の装置、例えばリボンの温度を制御するように構成されたレーザーから形成可能である。こうした装置は当業者に公知であるので、ここでこれ以上は説明しない。
【0054】
上記したように、ドロープロセス中、粘性リボンが弾性固体に遷移する温度範囲で充分に制御された温度レジームを維持することが特に有益である。また、ガラスリボンの徐冷に必要となる利用可能空間を最大化するため、溶融ガラスが成形体を出た後、溶融ガラスリボンを可能なかぎり急速に冷却することが望ましい。徐冷期間の増大により、ガラスが付加的な応力緩和を起こす時間を得ることができる。
【0055】
応力緩和の挙動は、多くのガラス製品にとって重要である。例えば、液晶ディスプレイガラスに対しては、薄膜トランジスタをガラス基板上に堆積する間、熱処理が行われる。当該熱処理サイクル中のガラスの応力緩和により、コンパクション、すなわちガラスの稠密化によってもたらされるガラス寸法の持続的変化が生じうる。精密な製品、例えばLCDの製造のためのガラス品質は、ガラス全体にわたる均質な熱履歴の取得に依存しており、不均一な応力緩和作用があると、光学不均質性(例えば複屈折)による最終製品の品質の低下が生じうる。基板としてガラスシートが使用され、処理中に高温にさらされる場合、ガラスの応力緩和は、後続の製造プロセスに影響する寸法変化を引き起こすことがある。顧客プロセス中の最小寸法変化はガラスの重要な属性となりうる。よって、特定のプロセス条件集合のもとでコンパクションを正確に予測する手段が得られれば有益である。
【0056】
ガラスの応力緩和にとって支配的な2つの重要な要因は、熱力学特性および動力学特性である。熱力学的には、ガラスは、応力緩和しようとする非平衡の系である。熱力学的な動力の存在はガラスの応力緩和にとっての必要条件であるが、それ自体では不充分である。また、ガラスは、応力緩和の動力学特性を可能にする充分な熱エネルギおよび充分な時間を有さなければならない。等圧条件を仮定したとき、ガラスの動特性は、組成、温度および熱履歴の各要因に依存する。熱履歴の重要性は、同じ組成かつ同じ温度の2つのガラスの動的挙動が熱履歴の詳細に依存して数オーダーの規模で変動しうるため、看過できない。
【0057】
液晶ディスプレイ、例えばアクティブマトリクス液晶ディスプレイ装置(AMLCD)の製造は複雑であり、基板ガラスの性質がきわめて重要である。何よりもまず、液晶ディスプレイ装置の製造に使用されるガラス基板は、厳密に制御された物理的寸法を有する必要がある。
【0058】
液晶ディスプレイの分野では、多結晶シリコンをベースとした薄膜トランジスタ(TFT)が、より有効に電子を輸送できるその能力のために好まれている。多結晶シリコン(p‐Si)をベースとしたトランジスタは、アモルファスシリコン(α‐Si)をベースとしたトランジスタよりも高い移動度を有することを特徴としている。これにより、より小さくより高速なトランジスタの製造が可能となり、このことから最終的により明るくより高速なディスプレイが得られる。p‐Siベースのトランジスタの問題点の1つは、その製造において、α‐Siのトランジスタの製造に使用されるよりも高いプロセス温度が要求されることである。プロセス温度は、α‐Siトランジスタの製造において典型的に使用されている約350℃のピーク温度に比べ、約450℃から約700℃までの範囲に及びうる。p‐Siの堆積に好適な温度では、殆どのAMLCDガラス基板がコンパクションを起こす。熱的安定または寸法変化とも称されるコンパクションは、ガラスの仮想温度における変化に起因してガラス基板に生じる不可逆の寸法変化(収縮)である。「仮想温度」とは、ガラスの構造状態を示すために用いられる概念である。高温から急速に冷却されたガラスは、典型的には、「凍結された」高温構造のために、同じ温度からより緩慢に冷却された同一のガラスよりも高い仮想温度を呈する。ガラスが高温で維持されれば、ガラス構造は、熱処理温度構造へ向かって応力緩和するのにより長い時間を得ることができる。LCDに使用されるガラス基板の仮想温度は、薄膜トランジスタ(TFT)プロセス中に発生する、関連する熱処理温度をほぼつねに上回るので、高温熱処理の結果として生じる構造的な応力緩和が仮想温度の低下を生じさせ、これによりガラス密度の増大および相応の収縮(コンパクション)が生じる。
【0059】
ガラスがコンパクションする傾向を最小化することは、コンパクションによってディスプレイ製造プロセス中(例えばトランジスタの堆積中)に潜在的な位置合わせの問題が発生し、ひいては完成したディスプレイに性能の問題が発生しかねないため、有利である。
【0060】
ガラスのコンパクションを最小化するための幾つかのアプローチが存在する。1つのアプローチは、ガラスを熱的に前処理して、p‐SiTFT製造中にガラスがさらされる温度に近い仮想温度を形成することである。当該アプローチには幾つかの難点が存在する。その第一は、p‐SiTFTの製造中に使用される複数の加熱ステップが僅かずつ異なる仮想温度をガラス内に発生させ、これが前処理によって完全には補償できない点である。その第二は、ガラスの熱的安定が特定のp‐SiTFTの製造の詳細に密接に関連しており、異なるエンドユーザに対する異なる前処理を意味しうる点である。その最後は、前処理がプロセスの費用および複雑性を増大させる点である。
【0061】
別のアプローチとして、製造中の冷却速度を緩慢化することも挙げられる。当該アプローチは利点も有するが、幾つかの製造技術、例えばフュージョンプロセスでは、ドロープロセス中の緩慢な冷却の実行に利用可能な空間が制限されている。その結果、相対的に高速なガラスリボンの急冷が起こり、相対的に高温の構造(高い仮想温度)が「凍結される」。こうした製造プロセスによっても(1つもしくは複数の)冷却速度の制御は可能であるが、コンパクションを最小化するのに最適な冷却速度の開発は困難となりうる。
【0062】
所与のガラスの冷却速度は、履歴として、類似したプロセス条件のもとで製造された類似のガラスから「借用されて」いる。つまり、1つのプロセス条件集合のもとにある1つのガラス組成に適用される冷却曲線を、例えば、第1のガラスに類似した組成を有する別のガラスの製造に始点として適用することができる。同様に、プロセス条件に対する変更、例えばスループット(例えばガラス流量)の増大は、低いほうの流れの冷却速度で開始される。どちらのケースにおいても、例えば新たなガラス条件および/またはプロセス条件に対してコンパクションを最小化するための当該初期冷却曲線の最適化は「最尤推定」ベースで行われ、ここで、変更は、経験とかなりの運とによって、初期冷却曲線を含む個々の冷却速度に対してなされる。得られたガラスは検査され、選択した属性、例えばコンパクションが不満足な状態であれば、冷却速度が修正される。当該プロセスは、ガラスの実際のドローおよび検査によりリアルタイムで行われる反復プロセスである。これには長時間の労力がかかりうるうえ、最適なコンパクション性能を形成するための最適な冷却曲線が得られないこともある。
【0063】
コンパクションの文脈における最も有益な冷却曲線は、ガラスが概して低い粘度状態(例えば約1010P(約0.1×1010Pa・s)未満)にある時間中の高速の冷却速度と、その後の、ガラスの徐冷点またはその近傍の粘度領域(徐冷点はガラスの粘度が1013.18P(0.1×1013.18Pa・s)に等しいときの温度として定義されている)での大幅に緩慢なガラス冷却速度とから成ると長く考えられてきた。例えば、米国特許第8136371号明細書には、徐冷点と徐冷点より50℃低い点との間で緩慢な冷却を行う冷却レジームが記載されている。本明細書で後に検討するように、本発明者らは、予測しえなかったことであるが、冷却速度に対するコンパクションの敏感性が徐冷点の充分下方の温度まで及びうることを発見した。したがって、履歴の冷却速度を最小のガイドで単純に調節するのみでは、コンパクションを最小化するための適切な温度範囲での緩慢な冷却レジームを定めることができない。よって、コンパクションの最大幅での低減とトライアンドエラーによる適切な冷却曲線の探索にかかる時間の低減との双方を保証するために、所与のプロセス条件集合および/またはガラス組成集合に対してコンパクションを予測できれば有益である。
【0064】
したがって、コンパクションを予測可能な一部経験的な方法を開示する。第1のステップでは、複数のプロセス条件からデータが取得される。当該データは、通常の安定した製造における動作ドローから、またはラボでの実験から、取得可能である。当該データは、例えば、成形体の根部からの時間および/または距離の関数としての、ガラスリボンの中心線に沿ったガラスリボンの温度(なぜならこれら2つは直接に関連づけ可能であるからである)、冷却速度(温度と根部からの時間および/または距離とから取得可能である)、および各ガラスリボンからカットされた少なくとも1つのガラスシートに対して測定されたコンパクションを含むことができる。冷却速度は、例えば、予め定められた距離または温度のインターバルで、例えば10℃ごと、15℃ごとに、または所望の測定分解能が得られる他のいずれかの適切なインターバルで、計算可能である。上述した観点から、ガラスリボンの温度が成形体の根部からの距離の関数として、またこれと等価の時間の関数として変化し、よって、インターバルが時間、位置(距離)または温度に基づいて選定可能であることは明らかである。殆どのシナリオで、約450℃を下回る温度および約900℃を上回る温度での冷却速度の除外が許容可能である。なぜなら、450℃を下回る温度および900℃を上回る温度では、コンパクションが冷却速度の影響を受けないと見なしうるからである。つまり、約900℃を上回る温度では、リボンの応力緩和がコンパクションをさほど心配しなくてよい程度に充分に高速であると見なすことができ、約450℃を下回る温度では、ガラスリボンが充分に冷却されていてコンパクションの挙動が凍結されているため、こうした低温では熱処理による影響を受けないと見なすことができる。所望に応じて、データの信頼性を高めるために、各プロセス条件でのコンパクションにつき複数のガラスシートを測定することができる。当該データは、複数のドロー装置から、または所与のガラス組成に対するドロー条件から、取得可能である。
【0065】
上述したデータが収集されかつ/または計算されると、単純な線形回帰方程式の系が、冷却速度を予測変数とし、コンパクションを応答変数として、次の方程式(1)、すなわち
【0066】
【0067】
に示すように使用可能となる。ここで、qは冷却速度[℃毎秒]を表しており、bは回帰係数を表しており、Cはコンパクション[百万分率(ppm)]を表しており、iはデータ集合の数(プロセス条件の素集合の数)を表しており、nは回帰係数の数を表しており、kは回帰の切片を表している。
【0068】
データ集合の数が回帰係数の数と等しくなることはないので、基本的な成分回帰技術を使用して適切な係数集合を発見することができる。代替的に、係数の計算は、係数間の差を損失とする損失パラメータを定義することによっても制御可能である。こうした技術は公知であるので、ここでこれ以上は説明しない。
【0069】
回帰係数が計算されると、所与の目標冷却曲線に対して、x℃からy℃までの予め定められた温度範囲内の冷却速度が取得可能となり、回帰係数を用いて、方程式(2)、すなわち
【0070】
【0071】
により、コンパクション値が計算される。ここで、xからyまでの予め定められた範囲にわたって合計が行われる。幾つかの実施形態では、合計は、有限の温度範囲、例えば450℃から900℃までの範囲にわたって行われうるが、450℃から900℃までの範囲は例示に過ぎず、所望に応じて他の温度範囲も使用可能である。例えば、幾つかの実施形態では、xは450℃以上であってよく、yは950℃以下であってよい。
【0072】
この場合、コンパクションの最小化は、初期冷却曲線の修正と修正された新たな冷却曲線の予測コンパクションの後続の計算とを含む再帰的な計算プロセスとなり、部分的には、回帰係数の検査により取得される知識によって進めることができる。このことを以下の例に即して説明する。
【0073】
Corning(登録商標)Lotus(商標)ガラスを、異なる厚さ、異なる流量および異なる冷却速度を含む異なるプロセス条件のもとで、異なるドロー装置からガラスリボンとして引き出し、種々のリボンからカットされたガラスシートにつき、コンパクション値を測定した。全体で、12個の異なるプロセス条件に対するデータを収集した。各リボンからカットされたガラスシートを、認識マークを付したテーブル上に配置し、ガラスシートが取り外し可能かつその後正確に再配置可能となるように固定することにより、各プロセス条件集合からのガラスリボンのコンパクションを測定した。対応する認識マークをガラスシート上にマーキングした。ガラスシートを取り外し、オーブン内で温度590℃まで加熱し、当該温度で全30分間維持した。オーブン速度(オーブンのパワーオフ後の自然冷却速度)でガラスシートが室温まで冷却された後、ガラスシートをテーブル上の元の位置に再配置し、ガラスシート上の認識マークとテーブル上の認識マークとの間の距離を測定した。2つの認識マーク集合間の距離が、コンパクション値[ppm]を表している。各プロセス条件に対するガラスシートのコンパクションを複数回測定して平均した。全12個のプロセス条件集合に対するコンパクションが
図3にプロットされている。データはコンパクション値において大きな分散を示しているが、0.7mm厚さで形成されたガラスシート(サンプルC)が最小のコンパクションを呈しており、0.3mm厚さで形成されたガラスシート(サンプルGおよびサンプルL)が最大のコンパクションを呈している。
【0074】
上述したサンプルのプロセスデータおよびコンパクション値を、n=46(46個の回帰係数)かつi=12(12個のデータ集合)で方程式(1)の形態に設定し、回帰係数bについて解いた。回帰係数の数は、冷却速度データの計算において選定された温度インターバルに依存して変化する。当該例では、450℃から950℃までの範囲において10℃のインターバルでデータを収集したが、必要と所望の分解能とに応じて、他のインターバルおよび範囲も使用可能である。温度の関数としての回帰係数のプロットが
図4に記されている。より大きな負の数は、より大きなコンパクションへの影響を表している。参考として、Corning Lotusガラスの徐冷点は810℃である。
図4の検査によれば、約660℃から約850℃までの範囲における当該特定のガラスの冷却速度が、コンパクションに対して最も強く影響していることがわかる。さらに重要なのは、コンパクションへの最も強い影響が、徐冷点より優に100℃低い約710℃の温度で発生していることである。こうした結果は検査したガラスに属し、他のガラス組成に対する特定の値は異なりうることを強調しておく。ただし、回帰係数の検査により冷却曲線の修正のガイドに有効なコンパクションの挙動への洞察が得られること、およびコンパクションが徐冷点の充分下方の温度でも有意に影響されうることは通用する。
【0075】
図5には、上述した例に関する4個の冷却曲線が示されている。曲線Bは、ベースライン(履歴冷却曲線)を表しており、これに対して、曲線C1~C3は、ベースラインの冷却曲線の冷却速度を変化させることで取得された3個の目標冷却曲線を表している。ガラスは、当該4個の冷却曲線を用いて、フュージョンダウンドロープロセスで引き出された。付加的に、コンパクションにつき、方程式(2)を用いた予測と測定との双方を行った。
【0076】
曲線C1~C3の検査により、冷却曲線C1,C2がベースラインの曲線Bの挙動に密に追従し、冷却曲線C3が(
図4の図示に相応に)約700℃の領域において冷却速度の大幅な緩慢化を呈しており、比較的緩慢な冷却速度が成形体の根部までの距離につき他の冷却曲線よりも大きな距離にわたって延在していることがわかる。
図6のグラフには、(ボックスのプロットにより)
図5の冷却曲線のそれぞれに対して測定されたコンパクション値と、各冷却曲線に対する測定サンプルの数とが示されている。また、各冷却曲線に対するコンパクションを、方程式(2)を用いて予測した。次表1に結果を示す。ここには、予測された(モデル化された)コンパクション値と測定されたコンパクション値とが単位ppmで記されている。
【0077】
【0078】
表1は、モデル化された(予測された)コンパクション値間の良好な一致を示している。また、当該データにより、冷却曲線C3において、ベースラインの冷却曲線からの結果に比べ、測定されたコンパクション値で優に1ppmの改善が得られることも示されている。
【0079】
図5に戻って、さらに、目標冷却曲線C1~C3によりコンパクション以外も考慮可能であることに注意されたい。例えば、コンパクションのための冷却曲線の調節は、ガラスリボンの他の属性、例えばリボンの平坦性に影響することがある。よって、コンパクションの低減は望ましいことではあるが、他の属性が損なわれるほど低減されるべきではない。
図5に示したように、冷却曲線の上方への移動(上方への傾斜)は、コンパクションを低減する意図的な効果を有するが、ガラスリボンが成形体から引き出される際のリボンの物理的安定性に影響することもある。代替的に、冷却曲線の下方への傾斜は、リボンの応力を低減する効果があり、このため平坦性は改善されるが、コンパクションの増大という損失が生じる。したがって、コンパクションの改善には、他のリボン属性への何らかの損失作用、例えば残留応力およびリボン形状に対しての重みづけが必要である。
【0080】
フュージョン成形プロセスにおけるガラスリボンでの熱歪みにより、リボンおよびリボンからカットされるガラスシートの双方における応力および形状が求められるが、これは粘性弾性モデルから計算可能である。こうしたモデルは、ガラスリボンにおける応力評価にとって有効な測定基準の開発に使用可能である。理想的には、ガラスリボンにおける熱応力または引張応力はゼロとなるべきであり、これによりガラスリボンは実質的に反りがゼロとなるべきである。しかし、こうした応力処理をガラスリボンの全幅にわたって普遍的に適用することは不可能である。例えば、ガラスリボンは、典型的に、ドロープロセス中の表面張力作用に大きく依存する、「ビード」と称される厚膜化されたラテラル方向のエッジ部分を有する。その結果、当該ビードから生じる応力を個別にモデル化することができる。ガラスリボンの形状への当該ビードの作用につき、個別の測定基準が開発可能である。この場合、概して、他の変数および考察を考慮したより完全な冷却曲線の開発に、ガラスの粘性弾性材料モデルとリボン温度に対してパラメータ化された熱モデルとの双方の開発が含まれうる。最適化すべき対象(例えばコンパクション)の種々の成分に重みを割り当てることができ、対象が最小化されるまで熱モデルのパラメータを操作することにより、リボンの最適な温度領域が計算可能となる。実際のプロセスへの計算された温度領域の適用は、ヒータパワー、空気流、水冷等を操作することによって行われる。
【0081】
当該分野の技術者には、開示の思想および観点から逸脱することなく、本開示の実施形態に対する種々の修正形態および変形形態がなされうることが明らかであろう。よって、本開示が添付の特許請求の範囲およびその等価物の観点に該当するこうした修正形態および変形形態をカバーすることが意図されている。
【0082】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0083】
実施形態1
コンパクションを制御する方法であって、
a)種々の冷却速度で成形された複数のガラスリボンからカットされた複数のガラスシートのコンパクション値を測定するステップ、
b)測定されたコンパクション値と前記ステップa)の冷却速度とを相関させて、複数の温度に対応する複数の回帰係数を取得するステップ、
c)前記ステップb)の複数の温度に対応した複数の予め定められた冷却速度を有する、予め定められた冷却曲線を選定するステップ、
d)前記複数の回帰係数および前記複数の予め定められた冷却速度を用いて、予測コンパクション値を計算するステップ、
e)前記予測コンパクション値が最小化されるように前記予め定められた冷却速度を修正して、目標冷却速度を取得するステップ、
f)前記目標冷却速度を用いて後続のガラスリボンを引き出すステップ
を含む、方法。
【0084】
実施形態2
前記方法はさらに、修正された冷却速度によって前記予め定められた冷却速度を置換するステップ、および前記ステップd)および前記ステップe)を反復するステップを含む、実施形態1記載の方法。
【0085】
実施形態3
前記ステップb)は、線形回帰を含む、実施形態1記載の方法。
【0086】
実施形態4
前記線形回帰は、
【0087】
【0088】
の形態の線形方程式の系を含み、ここで、qは冷却速度[℃毎秒]を表しており、bは回帰係数を表しており、Cはコンパクション[ppm]を表しており、iはデータ集合の全数を表しており、nは回帰係数の全数を表しており、kは回帰の切片を表している、実施形態3記載の方法。
【0089】
実施形態5
前記予測コンパクション値は、
【0090】
【0091】
に等しい、実施形態4記載の方法。
【0092】
実施形態6
xは450℃以上であり、yは900℃以下である、実施形態5記載の方法。
【0093】
実施形態7
コンパクションを制御する方法であって、
a)第1のドロー速度で成形体からガラスリボンを引き出すステップ、
b)前記ガラスリボンの中心線に沿った、前記成形体の底部エッジからの複数の距離において、温度を測定するステップ、
c)測定された温度に基づく複数の距離での前記ガラスリボンの冷却速度を計算するステップ、
d)前記ガラスリボンからカットされたガラスシートのコンパクション値を測定するステップ、
e)前記ステップa)~前記ステップd)を、複数のドロー速度で引き出される複数のガラスリボンについて反復して、複数の測定されたコンパクション値を取得するステップ、
f)前記複数の測定されたコンパクション値と、前記複数のガラスリボンの複数の距離での冷却速度とを相関させて、予め定められた温度範囲内の複数の温度に対応する複数の回帰係数を取得するステップ、
g)前記複数の温度の各温度に対応した予め定められた冷却速度を有する、予め定められた冷却曲線を選定するステップ、
h)前記複数の回帰係数および前記複数の予め定められた冷却速度を用いて、予め定められたドロー速度での予測コンパクション値を取得するステップ、
i)前記予め定められたドロー速度での予測コンパクション値が最小化されるように前記予め定められた冷却速度を修正して、目標冷却速度を取得するステップ、
j)前記目標冷却速度を用いて後続のガラスリボンを引き出すステップ
を含む、方法。
【0094】
実施形態8
前記方法はさらに、前記ステップi)の修正された冷却速度によって前記ステップh)の前記予め定められた冷却速度を置換するステップ、および前記ステップh)および前記ステップi)を反復して、前記ステップj)までに新たな目標冷却速度を取得するステップを含む、実施形態7記載の方法。
【0095】
実施形態9
前記ステップf)は、線形回帰を含む、実施形態7記載の方法。
【0096】
実施形態10
前記線形回帰は、
【0097】
【0098】
の形態の線形方程式の系を含み、ここで、qは冷却速度[℃毎秒]を表しており、bは回帰係数を表しており、Cはコンパクション[ppm]を表しており、iはデータ集合の全数を表しており、nは回帰係数の全数を表しており、kは回帰の切片を表している、実施形態9記載の方法。
【0099】
実施形態11
前記予測コンパクション値は、
【0100】
【0101】
に等しい、実施形態10記載の方法。
【0102】
実施形態12
xは450℃以上であり、yは900℃以下である、実施形態11記載の方法。