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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230113BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20230113BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230113BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20230113BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20230113BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H02M7/48 E
E02F9/00 C
E02F9/20 C
F02D29/02 321A
F02D29/04 G
F02D29/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019175691
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021052561
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明
(72)【発明者】
【氏名】太田 泰典
(72)【発明者】
【氏名】今井 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】矢野 学
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-088142(JP,A)
【文献】特開2014-198969(JP,A)
【文献】国際公開第2012/172685(WO,A1)
【文献】特開2015-033233(JP,A)
【文献】特開2010-124536(JP,A)
【文献】特開2017-093057(JP,A)
【文献】特開2009-189209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 3/00
H02J 7/00
B60L 3/00
B60L 50/00
E02F 9/00
E02F 9/20
F02D 29/02
F02D 29/04
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を制御する制御装置と、前記制御装置に電力を供給する低電圧電源と、前記低電圧電源が設けられる低電圧回路と、前記作業機械を動作させるのに必要な電動駆動源と、前記電動駆動源に電力を供給する高電圧電源と、前記高電圧電源が設けられる高電圧回路と、を備える作業機械において、
前記高電圧回路に設けられるコンデンサと、
前記低電圧回路と前記高電圧回路との間に設けられる第1プリチャージ装置と、
前記高電圧回路に設けられ、前記高電圧電源からの電力によって前記コンデンサのプリチャージを行う第2プリチャージ装置と、を備え、
前記制御装置は、
記第2プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージを実行し、
記第2プリチャージ装置による前記コンデンサのプリチャージが行えなかった場合には、前記低電圧電源からの電力を前記第1プリチャージ装置により昇圧させて前記コンデンサのプリチャージを実行する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
メインポンプと、
前記メインポンプから吐出される作動流体によって駆動するアクチュエータと、
前記メインポンプから前記アクチュエータに導かれる作動流体の流れを制御するコントロールバルブと、
前記電動駆動源によって駆動されるパイロットポンプと、
前記パイロットポンプの吐出圧を元圧として前記コントロールバルブを操作するための操作信号であるパイロット圧を生成する操作装置と、
前記電動駆動源を駆動するインバータ回路と、を備え、
前記コンデンサは、前記インバータ回路の直流側に設けられる平滑コンデンサである、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項に記載の作業機械において、
前記第1プリチャージ装置は、前記低電圧回路と前記高電圧回路との間に設けられるDC-DCコンバータであり、
前記第2プリチャージ装置は、前記高電圧回路に設けられるリレー回路であり、メインリレーに並列に接続されるプリチャージリレーおよびプリチャージ抵抗を有する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項に記載の作業機械において、
前記制御装置は、
前記高電圧電源が異常であるか否かを判定し、前記高電圧電源が異常である場合、前記第2プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージが可能でないと判定し、前記第1プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージを行う、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項に記載の作業機械において、
前記制御装置は、
前記第2プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージを開始してから所定時間を経過したときにプリチャージが完了していない場合、前記第2プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージが可能でないと判定し、前記第1プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージを行う、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
作業機械を制御する制御装置と、前記制御装置に電力を供給する第1電源と、前記第1電源が設けられる第1電気回路と、前記作業機械を動作させるのに必要な電動駆動源と、前記電動駆動源に電力を供給する第2電源と、前記第2電源が設けられる第2電気回路と、を備える作業機械において、
前記第2電気回路に設けられるコンデンサと、
前記第1電源からの電力によって前記コンデンサのプリチャージを行う第1プリチャージ装置と、
前記第2電源からの電力によって前記コンデンサのプリチャージを行う第2プリチャージ装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、
記第2プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージが可能であるか否かを判定し、
記第2プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージが可能でないと判定された場合には、前記第1プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージを行い、前記電動駆動源の出力を制限する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項7】
作業機械を制御する制御装置と、前記制御装置に電力を供給する第1電源と、前記第1電源が設けられる第1電気回路と、前記作業機械を動作させるのに必要な電動駆動源と、前記電動駆動源に電力を供給する第2電源と、前記第2電源が設けられる第2電気回路と、エンジンと、前記エンジンに接続され前記第2電源に電力を供給可能な発電機と、を備える作業機械において、
前記第2電気回路に設けられるコンデンサと、
前記第1電源からの電力によって前記コンデンサのプリチャージを行う第1プリチャージ装置と、
前記第2電源からの電力によって前記コンデンサのプリチャージを行う第2プリチャージ装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、
記第2プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージが可能であるか否かを判定し、
アイドリングストップ条件が成立したか否かを判定し、
前記第2プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージを完了することができた場合には、前記アイドリングストップ条件が成立したときに前記エンジンを停止させ、
前記第2プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージが可能でないと判定された場合には、前記第1プリチャージ装置により前記コンデンサのプリチャージを行い、前記アイドリングストップ条件が成立したとしても前記エンジンを停止させない、
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮、燃費の向上等を目的として、油圧ショベル等の作業機械の電動化が進められている。例えば、エンジンの動力により駆動するポンプ等の機器は、ユーザの使用状態によらず、エンジンが稼働している限り動作を続け、エネルギーを消費していた。これに対し、電動モータ等の電動駆動源によってポンプ等の機器を駆動することにより、必要な場合に必要なだけ電動駆動源を稼働させることが可能となり、燃料消費量の低減が可能となる。
【0003】
特許文献1には、パイロットポンプを電動モータで駆動し、操作レバーの操作量に応じて、電動モータの出力を変更する電動式の作業機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-214970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような作業機械では、イグニッションスイッチがオン操作されると、作業機械に設けられる電動駆動源のコントローラ等の機器をスタートアップしてからエンジンの始動を行う。このスタートアップでは、電気回路に設けられるコンデンサに突入電流が流れることに起因して電気回路が損傷することを防止するために、電気回路に設けられるコンデンサのプリチャージ(予備充電)が行われる。しかしながら、なんらかの原因でプリチャージを行うことができない場合、各機器をスタートアップさせることができなくなり、作業機械を動作させることができなくなってしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、作業機械が動作できない状況を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による作業機械は、作業機械を制御する制御装置と、制御装置に電力を供給する低電圧電源と、低電圧電源が設けられる低電圧回路と、作業機械を動作させるのに必要な電動駆動源と、電動駆動源に電力を供給する高電圧電源と、高電圧電源が設けられる高電圧回路と、高電圧回路に設けられるコンデンサと、低電圧回路と高電圧回路との間に設けられる第1プリチャージ装置と、高電圧回路に設けられ、高電圧電源からの電力によってコンデンサのプリチャージを行う第2プリチャージ装置と、を備える。制御装置は、第2プリチャージ装置によりコンデンサのプリチャージを実行、第2プリチャージ装置によるコンデンサのプリチャージが行えなかった場合には、低電圧電源からの電力を第1プリチャージ装置により昇圧させてコンデンサのプリチャージを実行する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業機械が動作できない状況を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る作業機械の一例であるハイブリッド式油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図。
図2】本実施形態に係る油圧ショベルの駆動システムを示す図。
図3】車体コントローラの機能ブロック図。
図4】本実施形態に係る車体コントローラにより実行されるスタートアップ処理の内容を示すフローチャート。
図5】本実施形態の変形例2に係る油圧ショベルの駆動システムを示す図。
図6】本実施形態の変形例3に係る車体コントローラにより実行されるスタートアップ処理の内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、作業機械がハイブリッド式油圧ショベルである場合を例に説明する。
【0011】
図1は、ハイブリッド式油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。図1に示すように、ハイブリッド式油圧ショベル(以下、油圧ショベルと記す)1は、多関節型のフロント作業装置(以下、単に作業装置と記す)1Aと、車体1Bと、を備える。車体1Bは、左右一対のクローラを左右一対の走行油圧モータ65によって駆動することにより走行する下部走行体51と、下部走行体51上に設けられ、旋回油圧モータ64により下部走行体51に対して旋回する上部旋回体52と、を有する。
【0012】
作業装置1Aは、複数のフロント部材(ブーム5、アーム6およびバケット7)が直列的に連結されている。ブーム5の基端部は上部旋回体52の前部に回動可能に支持されている。ブーム5の先端部にはアーム6が回動可能に連結され、アーム6の先端部には作業具としてのバケット7が回動可能に連結されている。ブーム5は油圧シリンダ61によって駆動され、アーム6は油圧シリンダ62によって駆動され、バケット7は油圧シリンダ63によって駆動される。以下、油圧シリンダ61,62,63、旋回油圧モータ64、および走行油圧モータ65を総称して、油圧アクチュエータ60とも記す。これらの油圧アクチュエータ60は、後述するメインポンプ4から吐出される作動流体としての作動油によって駆動するアクチュエータである。
【0013】
上部旋回体52を構成する旋回フレーム52a上の前部の片側(例えば、前方を向いて左側)には、運転室8が設けられている。運転室8には、オペレータが着座する運転席と、オペレータによって操作される操作装置45(図2参照)と、が設けられる。旋回フレーム52a上の運転室8の後方には、原動機であるエンジン2、発電電動機3、メインポンプ4等を有する駆動システムが収容される原動機室9が設けられる。
【0014】
図2を参照して、本実施形態に係る油圧ショベル1の駆動システム100について説明する。図2は、本実施形態に係る油圧ショベル1の駆動システム100を示す図である。駆動システム100は、油圧アクチュエータ60の動作を制御する油圧システム101と、油圧システム101の油圧ポンプ(メインポンプ4およびパイロットポンプ11)を駆動する電動システム102と、メインポンプ4および発電電動機3に機械的に接続されるエンジン2と、エンジン2に機械的に接続されるスタータモータ21と、を備える。
【0015】
エンジン2には、エンジン2の状態の監視およびエンジン2の動作を制御するエンジンコントローラ2aが設けられている。エンジンコントローラ2aは、車体コントローラ13からの指令に基づいて、エンジン2の出力トルク、回転速度(エンジン回転数)等を制御する。
【0016】
油圧システム101は、エンジン2および発電電動機3に機械的に接続されるメインポンプ4と、メインポンプ4から油圧アクチュエータ60に供給される作動油の流れを制御するコントロールバルブ41と、電動モータ12に機械的に接続され電動モータ12によって駆動されるパイロットポンプ11と、パイロットポンプ11に接続され、パイロットポンプ11の吐出圧を元圧としてコントロールバルブ41を操作するための操作信号であるパイロット圧を生成する操作装置45と、を備える。なお、図2では、油圧アクチュエータ60の一例として油圧シリンダ61を代表して記載し、その他の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ62,63、旋回油圧モータ64および走行油圧モータ65)の図示は省略している。つまり、図示しないが、コントロールバルブ41および操作装置45は、複数の油圧アクチュエータ60のそれぞれに対応して設けられる。
【0017】
本実施形態に係る操作装置45は、傾動可能なレバー45aを有する油圧パイロット式の操作レバー装置である。操作装置45は、レバー45aを操作することによりパイロットポンプ11から出力されるパイロット圧(元圧)を減圧する機構を有する減圧弁45bを備えている。パイロットポンプ11は、タンクに貯留されている作動油を吸い込み、吐出する。なお、図示しないが、パイロットポンプ11と操作装置45の減圧弁45bとを接続するパイロットラインには、パイロットリリーフ弁が設けられ、このパイロットリリーフ弁によりパイロット圧の最高圧力が規定される。
【0018】
減圧弁45bは、パイロットポンプ11の吐出圧を元圧として、オペレータにより操作されるレバー45aの操作量と操作方向に応じたパイロット圧(操作圧と称することもある)を発生する。減圧弁45bで生成された操作圧はコントロールバルブ41の受圧室41a,41bに導かれ、コントロールバルブ41を駆動する制御信号として利用される。
【0019】
メインポンプ4から吐出された作動油は、コントロールバルブ41を通じて油圧アクチュエータ60に導かれることにより、油圧アクチュエータ60が駆動する。例えば、ブーム5を操作する操作装置45のレバー45aを第1方向に傾けるように操作すると、レバー45aの操作量に応じた操作圧が減圧弁45bで生成され、コントロールバルブ41の第1受圧室41aに作用する。これにより、メインポンプ4から吐出された作動油が油圧シリンダ61のロッド室に供給されるとともに、ボトム室から作動油がタンクに排出され、油圧シリンダ61が収縮する。油圧シリンダ61が収縮することにより、ブーム5が倒伏するように回動する。また、ブーム5を操作する操作装置45のレバー45aを第1方向とは反対の第2方向に傾けるように操作すると、レバー45aの操作量に応じた操作圧が減圧弁45bで生成され、コントロールバルブ41の第2受圧室41bに作用する。これにより、メインポンプ4から吐出された作動油が油圧シリンダ61のボトム室に供給されるとともに、ロッド室から作動油がタンクに排出され、油圧シリンダ61が伸長する。油圧シリンダ61が伸長することにより、ブーム5が起立するように回動する。
【0020】
電動システム102は、メインポンプ4およびエンジン2に機械的に接続される発電電動機3と、油圧ショベル1の各部の状態を監視し、油圧ショベル1の各部の動作を制御する制御装置としての車体コントローラ13と、車体コントローラ13に電力を供給する第1電源としての低電圧電源14と、低電圧電源14が設けられる第1電気回路としての低電圧回路40と、油圧ショベル1を動作させるのに必要な電動駆動源である電動モータ12と、電動モータ12に電力を供給する第2電源としての高電圧電源17と、高電圧電源17が設けられる第2電気回路としての高電圧回路70と、低電圧回路40と高電圧回路70との間に設けられるDC-DCコンバータ20と、高電圧回路70に接続される補機である電動コンプレッサ29と、を備える。
【0021】
DC-DCコンバータ20は、双方向DC-DCコンバータであり、高電圧回路70に接続される高電圧側スイッチング回路と、高電圧側スイッチング回路のスイッチング素子を制御する駆動回路と、低電圧回路40に接続される低電圧側スイッチング回路と、低電圧側スイッチング回路のスイッチング素子を制御する駆動回路と、高電圧側スイッチング回路と低電圧側スイッチング回路との間に設けられるトランスと、駆動回路によってスイッチング素子の開閉動作を制御するコンバータコントローラ20aと、を備えている。
【0022】
DC-DCコンバータ20のコンバータコントローラ20aは、車体コントローラ13からの信号に基づいて、昇圧モード、降圧モード、停止モードおよびプリチャージモードのいずれかの制御モードを設定する。
【0023】
DC-DCコンバータ20は、昇圧モードが設定されている場合、コンバータコントローラ20aがスイッチング素子の開閉動作を制御することにより、低電圧回路40の電力を昇圧して高電圧回路70に供給する。DC-DCコンバータ20は、降圧モードが設定されている場合、コンバータコントローラ20aがスイッチング素子の開閉動作を制御することにより、高電圧回路70の電力を降圧して低電圧回路40に供給する。DC-DCコンバータ20は、停止モードが設定されている場合、昇圧および降圧のいずれも実行しない。
【0024】
DC-DCコンバータ20は、電流制御機能を有しており、この機能を用いて後述する高電圧回路70に設けられる平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行う。つまり、DC-DCコンバータ20は、低電圧電源14からの電力によって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージ(予備充電)を行う第1プリチャージ装置として機能する。DC-DCコンバータ20は、プリチャージモードが設定されている場合、コンバータコントローラ20aがスイッチング素子の開閉動作を制御することにより、低電圧回路40の電力を昇圧して高電圧回路70に供給する。なお、プリチャージモードでは、DC-DCコンバータ20の高電圧回路70への出力電流は、昇圧モードのときの出力電流に比べて小さい電流となるように制御される。例えば、プリチャージモードが設定されると、コンバータコントローラ20aは、高電圧回路70への出力電流を数A(アンペア)に設定し(例えば5~10A(アンペア)以下に設定し)、高電圧回路70の電圧を0V(ボルト)から徐々に定格電圧まで上昇させる。
【0025】
発電電動機3は、エンジン2とメインポンプ4との間に機械的に接続されている。発電電動機3は、例えば、永久磁石式の同期電動機であり、エンジン2によって回転駆動されることにより発電を行い、発電電力を高電圧回路70に供給する。また、発電電動機3は、高電圧回路70から電力が供給されることによりエンジン2の駆動を補助(アシスト)する。すなわち、発電電動機3は、エンジン2によって回転駆動されることにより発電を行う機能(発電機機能)と、供給される電力によりエンジン2の駆動を補助する機能(電動機機能)とを有している。
【0026】
発電電動機3は、アシスト条件が成立している場合に電動機として機能し、アシスト条件が成立していない場合に発電機として機能する。アシスト条件は、例えば、高電圧電源17の電池残量が所定値よりも大きく、かつ、操作装置45のレバー45aの操作量が所定値よりも大きいときに成立する。また、アシスト条件は、高電圧電源17の電池残量が所定値よりも小さい場合、あるいは、操作装置45のレバー45aの操作量が所定値よりも小さいときには成立しない。なお、アシスト条件は、これに限定されるものではない。
【0027】
操作装置45の操作量は、操作センサ45s(図3参照)によって検出され、検出結果を表す信号が車体コントローラ13に出力される。操作センサ45sには、操作圧を検出する圧力センサ、あるいは、レバー45aの傾き角度を検出する角度センサ等を採用することができる。
【0028】
電動モータ12は、例えば永久磁石式の同期電動機であり、パイロットポンプ11に機械的に接続され、電力が供給されることによりパイロットポンプ11を駆動する。電動モータ12は、操作装置45のレバー45aの操作量に基づいて、回転数が制御される。電動モータ12は、全ての操作装置45のレバー45aの操作量が0(ゼロ)である場合には、停止状態にる。また、電動モータ12は、操作装置45のレバー45aの操作量の増加に応じて、回転数が増加するように制御される。複数の操作装置45のレバー45aが操作される複合操作のときには、双方の操作量を加味して回転数が制御される。このように、操作装置45のレバー45aの操作量に応じて電動モータ12の回転数が制御されるため、燃費を向上することができる。なお、電動モータ12を駆動させることができない場合、パイロットポンプ11によってパイロット圧を生成することができないため、操作装置45を操作したとしても油圧ショベル1を動作させることができなくなる。このため、電動モータ12は、油圧ショベル1を動作させるのに必要な電動駆動源であるといえる。
【0029】
高電圧電源17が接続される高電圧回路70は、発電電動機3用の第1のインバータ15と、電動モータ12用の第2のインバータ16と、第1のインバータ15、第2のインバータ16、および高電圧電源17に接続される高電圧電力ライン26A,26Bと、を有する。
【0030】
高電圧電源17は、第1のインバータ15を介して発電電動機3に電気的に接続されるとともに、第2のインバータ16を介して電動モータ12に電気的に接続されている。高電圧電源17は、電力を蓄えることのできる蓄電装置17aと、蓄電装置17aの状態を監視して制御するためのバッテリコントローラ17bと、を備える。蓄電装置17aは、例えば、蓄電素子としてのリチウムイオン二次電池を複数備えた蓄電装置であり、定格電圧は48V(ボルト)である。高電圧電源17の蓄電装置17aは、発電電動機3によって発生した発電電力が供給されることによって充電(蓄電)される。また、高電圧電源17の蓄電装置17aは、充電された電力を発電電動機3および電動モータ12に放電(給電)する。
【0031】
バッテリコントローラ17bは、車体コントローラ13からの指令に基づいて高電圧電源17の充電動作や放電動作を制御する。また、バッテリコントローラ17bは、高電圧電源17の電流値I、電圧値V、温度T等の状態情報をセンサにより監視し、車体コントローラ13に出力している。
【0032】
第1のインバータ15は、発電電動機3に電気的に接続され、発電電動機3の駆動を制御する。第1のインバータ15は、例えば、トランジスタや絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などからなる複数(例えば6個)のスイッチング素子を有する第1のインバータ回路15aと、スイッチング素子の開閉動作を制御する発電電動機コントローラ15bと、インバータ回路15aの直流側の高電圧電力ライン26A,26B間に設けられた第1の平滑コンデンサ15cと、を有する。第1の平滑コンデンサ15cは、一対の高電圧電力ライン26A,26B間の電圧を平滑化する。
【0033】
第1のインバータ15は、発電電動機コントローラ15bが第1のインバータ回路15aのスイッチング素子の開閉動作を制御することにより、発電電動機3の発電時において、発電電動機3による発電電力を直流電力に変換して高電圧電力ライン26A,26Bに供給する。一方、第1のインバータ15は、発電電動機コントローラ15bが第1のインバータ回路15aのスイッチング素子の開閉動作を制御することにより、発電電動機3のモータ駆動時において、高電圧電源17から高電圧電力ライン26A,26Bに供給される直流電力を三相の交流電力に変換して発電電動機3に供給し、発電電動機3を回転駆動する。
【0034】
第2のインバータ16は、電動モータ12に電気的に接続され、電動モータ12の駆動を制御する。第2のインバータ16は、例えば、トランジスタや絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などからなる複数(例えば6個)のスイッチング素子を有する第2のインバータ回路16aと、スイッチング素子の開閉動作を制御するモータコントローラ16bと、インバータ回路16aの直流側の高電圧電力ライン26A,26B間に設けられた第2の平滑コンデンサ16cと、を有する。高電圧回路70に設けられる第2の平滑コンデンサ16cは、一対の高電圧電力ライン26A,26B間の電圧を平滑化する。
【0035】
第2のインバータ16は、モータコントローラ16bが第2のインバータ回路16aのスイッチング素子の開閉動作を制御することにより、高電圧電源17から高電圧電力ライン26A,26Bに供給される直流電力を三相の交流電力に変換して電動モータ12に供給し、電動モータ12を回転駆動する。
【0036】
第1および第2の平滑コンデンサ15c,16cは、例えば、電解コンデンサあるいはフィルムコンデンサであって、スイッチング素子の高速スイッチング(オン・オフ)動作により生じる電圧・電流の脈動(リップル)を抑制する。
【0037】
また、高電圧回路70には、リレー回路18が設けられる。リレー回路18は、図示するように、高電圧電力ライン26A,26Bにおける平滑コンデンサ15c,16cよりも高電圧電源17側に設けられている。
【0038】
リレー回路18は、高電圧電力ライン26Bに設けられたメインリレー18bと、メインリレー18bに並列に接続されるプリチャージリレー18cおよびプリチャージ抵抗18dと、を有する。メインリレー18bは、高電圧電源17を高電圧回路70から切り離すことのできるリレーである。なお、本実施形態では、メインリレー18bを高電圧電力ライン26Bに設ける例について説明するが、一対の高電圧電力ライン26A,26Bの双方にメインリレーを設けてもよい。プリチャージリレー18cおよびプリチャージ抵抗18dは、直列に接続される。リレー回路18は、高電圧電源17からの電力によって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージ(予備充電)を行う第2プリチャージ装置として機能する。プリチャージ抵抗は18d、平滑コンデンサ15c,16cへの突入電流を緩和するための抵抗器である。
【0039】
プリチャージリレー18cを導通状態として平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行ってからメインリレー18bを導通状態とすることにより、メインリレー18bおよび高電圧回路70に接続される機器に突入電流が流れることを防止することができる。その結果、メインリレー18bの溶着および高電圧回路70に接続される機器の損傷を防止することができる。
【0040】
電動コンプレッサ29は、油圧ショベル1の運転室8内の空気を冷やすエア・コンディショナーのコンプレッサであり、高電圧回路70を介して供給される電力によって駆動される補機である。
【0041】
低電圧電源14が接続される低電圧回路40は、低電圧電源14と各コントローラ13,2a,17b,20a,15b,16bを接続する低電圧電力ライン25と、バッテリリレー27と、スタータリレー28と、を有する。なお、低電圧電力ライン25には、スタータモータ21も接続されている。
【0042】
低電圧電源14は、電力を蓄えることのできる蓄電装置であり、例えば、定格電圧が24V(ボルト)の鉛蓄電池である。低電圧電源14は、充電された電力を車体コントローラ13、エンジンコントローラ2a、バッテリコントローラ17b、スタータモータ21、コンバータコントローラ20a、発電電動機コントローラ15b、およびモータコントローラ16bに放電(給電)する。
【0043】
バッテリリレー27は、低電圧電源14を低電圧回路40から切り離すことができるリレーであり、スタータリレー28は、スタータモータ21を低電圧回路40から切り離すことができるリレーである。バッテリリレー27は、後述するイグニッションスイッチ22がオン位置に操作されると導通状態となり、イグニッションスイッチ22がオフ位置に操作されると遮断状態となる。スタータリレー28は、車体コントローラ13からオン(導通)信号が入力されることによりオン(導通)状態となり、車体コントローラ13からオフ(遮断)信号が入力されることによりオフ(遮断)状態となる。なお、スタータリレー28は、通常時は遮断状態となっているノーマルオープンタイプのリレーであり、車体コントローラ13から制御電流(オン信号)が供給されると導通状態となる。
【0044】
車体コントローラ13にはイグニッションスイッチ22が接続され、イグニッションスイッチ22の操作位置は車体コントローラ13で検出される。イグニッションスイッチ22は、オペレータによって操作されるスイッチであり、例えば、オフ位置、オン位置およびスタート位置に操作可能なキースイッチである。なお、イグニッションスイッチ22は、キースイッチに限定されることなく、オフ信号、オン信号およびスタート信号を車体コントローラ13に出力可能なプッシュ式のスイッチとしてもよい。
【0045】
イグニッションスイッチ22がオフ位置からオン位置に操作されると、バッテリリレー27が導通状態となり、低電圧電源14から車体コントローラ13、エンジンコントローラ2aおよびバッテリコントローラ17b等の機器に電力が供給され、それらの機器が起動する。
【0046】
スタータモータ21は、例えば、永久磁石式の電動機である。イグニッションスイッチ22がオン位置に操作された状態から、さらに、スタート位置に操作されると、車体コントローラ13は、スタータリレー28にオン(導通)信号を出力する。これにより、スタータリレー28が導通状態となり、低電圧電源14からスタータモータ21に電力が供給され、スタータモータ21が駆動する。したがって、イグニッションスイッチ22がスタート位置に操作されると、エンジン2の出力軸がスタータモータ21によって駆動されて始動する。イグニッションスイッチ22は、スタート位置についてはモーメンタリ動作を行うように構成されており、オペレータがスタート位置への操作を止めると自動的にオン位置まで戻る。
【0047】
車体コントローラ13、エンジンコントローラ2a、バッテリコントローラ17b、コンバータコントローラ20a、発電電動機コントローラ15b、およびモータコントローラ16bは、CAN等の車体通信網23によって接続され、相互に情報の授受が可能である。
【0048】
各コントローラ13,2a,17b,20a,15b,16bは、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)、記憶装置としてのROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)、ならびに入出力インタフェース(I/Oインタフェース)、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。各コントローラ13,2a,17b,20a,15b,16bは、それぞれ複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0049】
図3は、車体コントローラ13の機能ブロック図である。車体コントローラ13は、記憶装置に記憶されているプログラムを実行することにより、電源異常判定部131、リレー制御部132、プリチャージ完了判定部133、コンバータモード設定部134、および表示制御部135として機能する。
【0050】
車体コントローラ13は、第1プリチャージ装置としてのDC-DCコンバータ20および第2プリチャージ装置としてのリレー回路18の一方(本実施形態では、リレー回路18)により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うように設定されている。しかしながら、高電圧電源17の異常、あるいはリレー回路18に異常がある場合には、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行う。これを実現するために、車体コントローラ13は、リレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能であるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、DC-DCコンバータ20およびリレー回路18のいずれかによって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行う。以下、詳しく説明する。
【0051】
電源異常判定部131は、バッテリコントローラ17bから出力される信号に基づいて、高電圧電源17が異常であるか否かを判定する。高電圧電源17の異常とは、高電圧電源17が十分に放電できない状態のことを指す。高電圧電源17が異常であるか否かの判定は、バッテリコントローラ17bから出力される信号に含まれる電流値I、電圧値V、温度T等の高電圧電源17の状態を表す情報に基づいて判定することができる。
【0052】
電源異常判定部131は、例えば、高電圧電源17の内部スイッチを閉じたときにバッテリコントローラ17bの電流センサによって検出される高電圧電源17の電流値Iが、閾値I0未満である場合には高電圧電源17の電流状態は正常であると判定し、電流値Iが閾値I0以上である場合には高電圧電源17の電流状態は異常であると判定する。閾値I0は、過電流の状態であるか否かを判定するための閾値であり、予め車体コントローラ13の記憶装置に記憶されている。
【0053】
電源異常判定部131は、各状態情報に基づき、状態の異常判定(過電流判定、過電圧判定、過温度判定等)を行い、それらの判定結果が全て正常であると判定された場合、高電圧電源17が正常である、すなわち高電圧電源17は異常でないと判定し、電源異常フラグをオフに設定する。一方、それらの判定結果のうち、一つでも異常であると判定された場合、高電圧電源17が異常であると判定し、電源異常フラグをオンに設定する。なお、電源異常判定部131は、バッテリコントローラ17bからの信号が途絶えている場合にも、高電圧電源17が異常であると判定し、電源異常フラグをオンにする。
【0054】
高電圧電源17が異常である場合、リレー回路18によって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うことができない。一方、高電圧電源17が異常でない場合、後述するように、リレー回路18に異常がなければ、リレー回路18によって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うことができる。したがって、電源異常判定部131は、リレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能であるか否かを判定する第1の判定部として機能している。
【0055】
リレー制御部132は、電源異常判定部131により高電圧電源17が異常であると判定されると、リレー回路18のメインリレー18bおよびプリチャージリレー18cにオフ(遮断)信号を出力する。リレー制御部132は、電源異常判定部131により高電圧電源17が異常でないと判定されると、リレー回路18のメインリレー18bにオフ(遮断)信号を出力するとともに、プリチャージリレー18cにオン(導通)信号を出力する。なお、本実施形態では、メインリレー18bおよびプリチャージリレー18cは、通常時は遮断状態となっているノーマルオープンタイプのリレーであり、車体コントローラ13から制御電流(オン信号)が供給されると導通状態となる。
【0056】
コンバータモード設定部134は、電源異常判定部131により高電圧電源17が異常であると判定された場合、すなわちリレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定された場合、DC-DCコンバータ20のコンバータコントローラ20aに、プリチャージモードに設定する信号を出力する。DC-DCコンバータ20のコンバータコントローラ20aは、車体コントローラ13からプリチャージモードに設定する信号が入力されたとき、制御モードをプリチャージモードに設定する。
【0057】
ここで、高電圧電源17に異常がない場合であっても、車体コントローラ13からプリチャージリレー18cにオン(導通)信号を出力する信号線が断線していたり、プリチャージリレー18cが故障している等、プリチャージリレー18cに異常がある場合、正常に、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを完了することができない。そこで、本実施形態では、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したか否かをプリチャージ完了判定部133によって判定する。
【0058】
具体的には、プリチャージ完了判定部133は、プリチャージリレー18cにオン(導通)信号が出力されてからの時間、すなわちリレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを開始してからの時間を計測し、その計測時間tが所定時間t0を経過したときに、プリチャージが完了しているか否かを判定する。プリチャージの完了の判定は、高電圧回路70の電圧Vcが所定電圧Vc0以上である否かによって行う。所定時間t0は、平滑コンデンサ15c,16cにプリチャージを開始してから完了するまでに要する時間に基づいて定められ、予め、記憶装置に記憶されている。平滑コンデンサ15c,16cにプリチャージを開始してから完了するまでに要する時間は、実験等により得ることができる。所定電圧Vc0は、高電圧電源17の定格電圧に基づいて定められ、予め記憶装置に記憶されている。
【0059】
プリチャージ完了判定部133は、計測時間tが所定時間t0を経過したときに、高電圧回路70の電圧Vcが所定電圧Vc0未満である場合には、プリチャージが正常に完了しなかった、すなわちリレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定する。プリチャージ完了判定部133は、計測時間tが所定時間t0を経過したときに、高電圧回路70の電圧Vcが所定電圧Vc0以上である場合には、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したと判定する。
【0060】
平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したということは、プリチャージリレー18cに異常がないといえる。また、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了しなかったということは、プリチャージリレー18cに異常があるといえる。したがって、プリチャージ完了判定部133は、プリチャージリレー18cに異常があるか否かを判定するリレー異常判定部として機能している。
【0061】
また、プリチャージリレー18cが異常である場合、リレー回路18によって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うことができない。一方、プリチャージリレー18cが異常でない場合、高電圧電源17に異常がなければ、リレー回路18によって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うことができる。したがって、プリチャージ完了判定部133は、リレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能であるか否かを判定する第2の判定部として機能している。
【0062】
本実施形態では、車体コントローラ13に、第1のインバータ15の直流側の端子電圧Vc1を検出する第1電圧センサ15sと、第2のインバータ16の直流側の端子電圧Vc2を検出する第2電圧センサ16sと、DC-DCコンバータ20の高電圧回路70側の端子電圧Vc3を検出する第3電圧センサ20sと、が接続され、各電圧センサ15s,16s,20sの検出結果を表す信号が車体コントローラ13に入力される。
【0063】
プリチャージ完了判定部133は、各電圧センサ15s,16s,20sで検出された電圧に基づいて、プリチャージが正常に完了したか否かを判定する。プリチャージ完了判定部133は、各電圧センサ15s,16s,20sからの信号に基づいて、計測時間tが所定時間t0を経過したときに、電圧値Vc1,Vc2,Vc3のそれぞれが所定電圧Vc0以上である場合には、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したと判定し、リレー異常フラグをオフに設定する。一方、プリチャージ完了判定部133は、各電圧センサ15s,16s,20sからの信号に基づいて、計測時間tが所定時間t0を経過したときに、電圧値Vc1,Vc2,Vc3のうち少なくとも一つが所定電圧Vc0未満である場合には、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージは正常に完了しなかったと判定し、リレー異常フラグをオンに設定する。
【0064】
リレー制御部132は、プリチャージ完了判定部133により、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したと判定された場合、プリチャージリレー18cにオフ(遮断)信号を出力し、メインリレー18bにオン(導通)信号を出力する。プリチャージ完了判定部133により、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージは正常に完了していないと判定された場合、プリチャージリレー18cおよびメインリレー18bのそれぞれにオフ(遮断)信号を出力する。
【0065】
コンバータモード設定部134は、プリチャージ完了判定部133において、リレー回路18による平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージは正常に完了しなかったと判定された場合、すなわちリレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定された場合、DC-DCコンバータ20のコンバータコントローラ20aに、プリチャージモードに設定する信号を出力する。DC-DCコンバータ20のコンバータコントローラ20aは、車体コントローラ13からプリチャージモードに設定する信号が入力されたとき、制御モードをプリチャージモードに設定する。
【0066】
プリチャージ完了判定部133は、リレー回路18による平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了しているか否かを判定する処理と同様、DC-DCコンバータ20による平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了しているか否かを判定する処理を実行する。なお、処理の内容は、同じであるので、説明を省略する。なお、この場合の所定時間tの閾値は、上記閾値t0と同じ値としてもよいし、異なる値としてもよい。
【0067】
表示制御部135は、プリチャージ完了判定部133において、DC-DCコンバータ20による平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージは正常に完了しなかったと判定された場合、すなわちDC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定された場合、表示装置81に表示制御信号を出力し、エンジン2の始動が不可の状態であることを表すエラー表示画像を表示装置81の表示画面に表示させる。
【0068】
表示装置81は、車体コントローラ13に接続され車体コントローラ13からの表示制御信号に基づいて、様々な表示画像を表示画面に表示する。表示装置81は、例えば、タッチパネル式の液晶モニタであり、運転室8内に設置されている。
【0069】
図4は、車体コントローラ13により実行されるスタートアップ処理の内容を示すフローチャートである。図4に示すスタートアップ処理は、イグニッションスイッチ22がオフ位置からオン位置に操作され、各コントローラ13,2a,17b,20a,15b,16bに低電圧電源14の電力が供給され、各コントローラ13,2a,17b,20a,15b,16bで自己診断が行われ、各コントローラ13,2a,17b,20a,15b,16bが正常であることが判定された後、実行される。なお、複数のコントローラ13,2a,17b,20a,15b,16bのいずれかにおいて、異常(故障)が検出された場合、車体コントローラ13は、故障状態にあるコントローラを示す表示画像を表示装置81の表示画面に表示させ、オペレータに知らせる。
【0070】
また、車体コントローラ13は、スタートアップ処理において、所定の条件が満たされることによりエンジン始動待機状態(ステップS176,S186)となるまでは、エンジン始動禁止状態となっている。車体コントローラ13は、エンジン始動禁止状態のときには、イグニッションスイッチ22がスタート位置に操作されたとしても、スタータリレー28にオン(導通)信号を出力しない。すなわち、車体コントローラ13がエンジン始動待機状態でないときには、エンジン2の始動が禁止されている。一方、車体コントローラ13は、エンジン始動待機状態のときに、イグニッションスイッチ22がスタート位置に操作されると、スタータリレー28にオン(導通)信号を出力し、スタータモータ21を駆動し、エンジン2を始動する。
【0071】
図4に示すように、ステップS110において、車体コントローラ13は、高電圧電源17に異常があるか否かを判定する。ステップS110において、高電圧電源17に異常がないと判定されるとステップS120へ進む。ステップS110において、高電圧電源17に異常があると判定されると、すなわちリレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定されると、ステップS125へ進む。
【0072】
ステップS120において、車体コントローラ13は、電源異常フラグをオフに設定し、ステップS130へ進む。ステップS125において、車体コントローラ13は、電源異常フラグをオンに設定し、ステップS155へ進む。
【0073】
ステップS130において、車体コントローラ13は、プリチャージリレー18cにオン(導通)信号を出力し、ステップS135へ進む。なお、メインリレー18bは、遮断された状態が維持されている。これにより、プリチャージリレー18cが導通状態となり、高電圧電源17の電力によって、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが行われる。
【0074】
ステップS135において、車体コントローラ13は、リレー回路18のプリチャージリレー18cにより平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したか否かを判定する。ステップS135において、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したと判定されると、ステップS140へ進む。ステップS135において、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了しなかったと判定されると、すなわちリレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定されると、ステップS145へ進む。
【0075】
ステップS140において、車体コントローラ13は、リレー異常フラグをオフに設定し、ステップS150へ進む。ステップS145において、車体コントローラ13は、プリチャージリレー18cにオフ(遮断)信号を出力し、リレー異常フラグをオンに設定し、ステップS155へ進む。
【0076】
ステップS150において、車体コントローラ13は、プリチャージリレー18cにオフ(遮断)信号を出力し、メインリレー18bにオン(導通)信号を出力し、ステップS170へ進む。
【0077】
ステップS170において、車体コントローラ13は、発電電動機コントローラ15bにスタンバイ指示を出力し、ステップS173へ進む。発電電動機コントローラ15bは、車体コントローラ13からの指示が入力されると、初期処理を実行し、第1のインバータ15によって発電電動機3を駆動できるスタンバイ状態となる。
【0078】
ステップS173において、車体コントローラ13は、モータコントローラ16bにスタンバイ指示を出力し、ステップS176へ進む。モータコントローラ16bは、車体コントローラ13からの指示が入力されると、初期処理を実行し、第2のインバータ16によって電動モータ12を駆動できるスタンバイ状態となる。
【0079】
ステップS176において、車体コントローラ13は、エンジン始動禁止状態を解除してエンジン始動待機状態となり、図4に示すスタートアップ処理を終了する。
【0080】
ステップS155において、車体コントローラ13は、コンバータコントローラ20aに、制御モードをプリチャージモードに設定する信号を出力し、ステップS160へ進む。DC-DCコンバータ20の制御モードがプリチャージモードに設定されると、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが行われる。
【0081】
ステップS160において、車体コントローラ13は、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したか否かを判定する。ステップS160において、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したと判定されるとステップS165へ進み、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了しなかったと判定されるとステップS190へ進む。
【0082】
ステップS165において、車体コントローラ13は、メインリレー18bにオン(導通)信号を出力し、ステップS180へ進む。
【0083】
ステップS180において、車体コントローラ13は、ステップS170と同様、発電電動機コントローラ15bにスタンバイ指示を出力し、ステップS183へ進む。発電電動機コントローラ15bは、車体コントローラ13からの指示が入力されると、初期処理を実行し、第1のインバータ15によって発電電動機3を駆動できるスタンバイ状態となる。
【0084】
ステップS183において、車体コントローラ13は、ステップS173と同様、モータコントローラ16bにスタンバイ指示を出力し、ステップS186へ進む。モータコントローラ16bは、車体コントローラ13からの指示が入力されると、初期処理を実行し、第2のインバータ16によって電動モータ12を駆動できるスタンバイ状態となる。
【0085】
ステップS186において、車体コントローラ13は、ステップS176と同様、エンジン始動禁止状態を解除してエンジン始動待機状態となり、図4に示すスタートアップ処理を終了する。
【0086】
ステップS190において、車体コントローラ13は、表示制御信号を表示装置81に出力し、エンジン2の始動が不可の状態であることを表すエラー表示画像を表示装置81の表示画面に表示させ、図4に示すスタートアップ処理を終了する。ここで、異常の原因が特定されている場合には、その情報をエラー表示画像とともに表示してもよい。例えば、異常の原因が高電圧電源17の過電圧異常である場合には、その情報を表示装置81の表示画面に表示させてもよい。なお、ステップS160において、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了しなかったと判定された場合、エンジン始動禁止状態は解除されず、エンジン2を始動することはできない。
【0087】
ステップS176,S186において、エンジン始動待機状態になると、エンジン2の始動が可能になる。エンジン2が始動された後、車体コントローラ13は、電源異常フラグの設定状態に基づいて、駆動システム100の各部を制御する。先ず、図2を参照して、電源異常フラグがオフに設定されている場合の制御内容について説明する。
【0088】
エンジン2が始動された後は、基本的には、発電電動機3がエンジン2によって駆動されることにより発電を行う。発電電動機3で発生した電力は、高電圧回路70に供給され、電動モータ12および電動コンプレッサ29が駆動し、高電圧電源17の充電が行われる。また、発電電動機3が発電機として機能している状態において、車体コントローラ13は、DC-DCコンバータ20の制御モードを降圧モードに設定し、DC-DCコンバータ20によって高電圧回路70の電力を降圧して低電圧回路40に供給する。DC-DCコンバータ20から供給された電力は、低電圧回路40の各機器に供給されるとともに、低電圧電源14にも供給され、低電圧電源14の充電が行われる。
【0089】
発電電動機3が、電動機として駆動し、エンジン2を補助してメインポンプ4を駆動する場合には、高電圧電源17から高電圧回路70に電力が供給され、発電電動機3、電動モータ12および電動コンプレッサ29を駆動する。また、発電電動機3が電動機として機能している状態において、車体コントローラ13は、DC-DCコンバータ20の制御モードを降圧モードに設定し、DC-DCコンバータ20によって高電圧回路70の電力を降圧して低電圧回路40に供給する。DC-DCコンバータ20から供給された電力は、低電圧回路40の各機器に供給されるとともに、低電圧電源14にも供給され、低電圧電源14の充電が行われる。
【0090】
電動モータ12は、操作装置45のレバー45aの操作量に応じて、回転数が制御される。なお、電源異常フラグがオフの状態では、電動モータ12の回転数は、最大回転数Nmaxまで上昇させることができる。また、電動コンプレッサ29は、運転室8内に設けられる温度センサで検出された実温度が、オペレータにより設定された目標温度に近づくように制御される。
【0091】
次に、電源異常フラグがオンに設定されている場合の制御内容について説明する。エンジン2が始動された後は、基本的には、発電電動機3がエンジン2によって駆動されることにより発電を行う。また、車体コントローラ13は、エンジン2を発電電動機3で補助するアシスト条件が成立した場合であっても、発電電動機3を発電機として機能させる。つまり、電源異常フラグがオンに設定されている場合、発電電動機3は、電動機としての機能が制限され、発電機としてのみ機能する。
【0092】
発電電動機3で発生した電力は、高電圧回路70に供給され、電動モータ12および電動コンプレッサ29が駆動する。車体コントローラ13は、モータコントローラ16bに、電動モータ12の出力を制限する指令を出力し、電動モータ12の出力の一部または全部を制限するとともに、出力変動を抑制する。本実施形態では、電動モータ12は、操作装置45のレバー45aの操作量にかかわらず一定の回転数Ncとなるように電動モータ12を制御する。なお、一定の回転数Ncは、最大回転数Nmaxよりも小さい値である。また、車体コントローラ13は、電動コンプレッサ29に、電動コンプレッサ29の出力を制限する指令を出力し、電動コンプレッサ29の出力の一部または全部を制限するとともに出力変動を抑制する。
【0093】
車体コントローラ13は、車体通信網23を介して集めた各モータの回転数やトルク、各部の電圧や電流値に基づいて、高電圧回路70および低電圧回路40に接続された機器の消費電力が発電電動機3の発電電力を超えないように、電動モータ12および電動コンプレッサ29の出力を制限する。なお、電動モータ12と電動コンプレッサ29の出力制限は、電動モータ12の出力を優先して確保し、余剰分で電動コンプレッサ29を駆動することが好ましい。これにより、高電圧電源17から電力供給が得られない状況にあっても、動作が制限された状態で油圧ショベル1の稼働が可能となる。
【0094】
このように、本実施形態では、車体コントローラ13は、電源異常フラグがオンに設定されている場合、すなわち、リレー回路18のプリチャージリレー18cにより平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定された場合であって、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを完了することができたときには、電動モータ12および電動コンプレッサ29の出力を制限する。これにより、エンジン2の負荷を軽減し、エンジンストールの発生を防止することができる。
【0095】
リレー異常フラグがオンに設定されている場合には、高電圧電源17は正常な状態であるため、上述したような電動モータ12および電動コンプレッサ29の出力を制限する制限制御は実行しない。つまり、通常通りに油圧ショベル1を動作させることができる。
【0096】
車体コントローラ13は、リレー異常フラグがオンに設定されている場合には、表示制御信号を表示装置81に出力し、プリチャージリレー18cに異常があることを表す表示画像を表示装置81の表示画面に表示させ、オペレータに知らせる。これにより、オペレータは、プリチャージリレー18cおよびプリチャージリレー18cと車体コントローラ13との間の信号線のメンテナンスを行い、プリチャージリレー18cの異常を解消することができる。
【0097】
高電圧電源17に異常がある場合の動作をまとめると次のようになる。オペレータがイグニッションスイッチ22をオン位置に操作すると、高電圧電源17に異常があると判定され、DC-DCコンバータ20によって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが行われる(図4のS110でY→S125→S155)。プリチャージが正常に完了すれば、エンジン始動待機状態となる(図4のS160でY→S165→S180→S183→S186)。その後、エンジン2が始動されると、電動モータ12および電動コンプレッサ29の出力が制限された状態で駆動される。すなわち、動作が制限された状態ではあるが、油圧ショベル1を稼働させることができる。
【0098】
高電圧電源17に異常がない場合であって、プリチャージリレー18cに異常があるときの動作をまとめると次のようになる。オペレータがイグニッションスイッチ22をオン位置に操作すると、プリチャージリレー18cに異常があると判定され、DC-DCコンバータ20によって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが行われる(図4のS110でN→S120→S130→S135でN→S145→S155)。プリチャージが正常に完了すれば、エンジン始動待機状態となる(図4のS160でY→S165→S180→S183→S186)。その後、エンジン2が始動されると、電動モータ12および電動コンプレッサ29の出力は制限されることなく駆動される。すなわち、動作が制限されることなく、油圧ショベル1を稼働させることができる。
【0099】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0100】
油圧ショベル(作業機械)1は、油圧ショベル1を制御する車体コントローラ(制御装置)13と、車体コントローラ13に電力を供給する低電圧電源(第1電源)14と、低電圧電源14が設けられる低電圧回路(第1電気回路)40と、油圧ショベル1を動作させるのに必要な電動モータ(電動駆動源)12と、電動モータ12に電力を供給する高電圧電源(第2電源)17と、高電圧電源17が設けられる高電圧回路(第2電気回路)70と、を備える。
【0101】
油圧ショベル1は、高電圧回路70に設けられる平滑コンデンサ(コンデンサ)15c,16cと、低電圧電源14からの電力によって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うDC-DCコンバータ(第1プリチャージ装置)20と、高電圧電源17からの電力によって平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うリレー回路(第2プリチャージ装置)18と、をさらに備える。
【0102】
車体コントローラ13は、基本的には、DC-DCコンバータ20およびリレー回路18の一方(本実施形態では、リレー回路18)により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うように設定されている。車体コントローラ13は、DC-DCコンバータ20およびリレー回路18の一方(本実施形態では、リレー回路18)により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能であるか否かを判定する。車体コントローラ13はDC-DCコンバータ20およびリレー回路18の一方(本実施形態では、リレー回路18)により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定されると、DC-DCコンバータ20およびリレー回路18の他方(本実施形態では、DC-DCコンバータ20)により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行う。
【0103】
これにより、リレー回路18によってプリチャージができなかった場合に、油圧ショベル1が動作できなくなるという事態を回避することができる。したがって、本実施形態によれば、油圧ショベル1が動作できない状況を少なくすることができる。
【0104】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0105】
<変形例1>
上記実施形態では、DC-DCコンバータ20が双方向DC-DCコンバータである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1のプリチャージ装置としてのDC-DCコンバータ20は、低電圧電源14から低電圧回路40に供給される電力を昇圧して、高電圧回路70に供給可能な昇圧コンバータであってもよい。この場合、エンジン2にはオルタネータが機械的に接続され、オルタネータの発電電力によって低電圧電源14が充電(蓄電)される。なお、上記実施形態では、DC-DCコンバータ20によって、高電圧回路70の電力を降圧して、低電圧回路40に供給し、低電圧電源14を充電することができるので、オルタネータを省略することができる。
【0106】
<変形例2>
上記実施形態では、低電圧電源14が設けられる低電圧回路40と、高電圧電源17が設けられる高電圧回路70との間にDC-DCコンバータ20を設ける例について説明したが本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示すように、第1電源314が設けられる第1電気回路340と第2電源317が設けられる第2電気回路370とが同電位である場合には、第1電気回路340および第2電気回路370のそれぞれにプリチャージ装置としてのリレー回路18,318を設けるようにしてもよい。リレー回路318は、第2電気回路370に設けられるリレー回路18と同様、メインリレー18b、プリチャージリレー18cおよびプリチャージ抵抗18dを有する。
【0107】
本変形例では、上記実施形態で説明したDC-DCコンバータ20に代えて、第1電気回路340と第2電気回路370との間に制御コンバータ320が設けられる。制御コンバータ320は、スタータモータ21の駆動時、およびオルタネータが設けられている場合にはオルタネータの発電時に、第2電気回路370に電圧の揺らぎが生じることを抑制するために設けられる。
【0108】
<変形例3>
上記実施形態では、基本的には、リレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うように設定されている車体コントローラ13において、リレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能であるか否かを判定し、プリチャージが可能でないと判定された場合にDC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。図6に示すように、車体コントローラ13は、基本的には、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うように設定され、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能であるか否かを判定し、プリチャージが可能でないと判定された場合にリレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行うようにしてもよい。
【0109】
図6のフローチャートでは、図4のステップS110,S120,S125の処理が削除され、ステップS130,S135,S140,S145,S150,S155,S160,S165の処理が、それぞれステップS430,S435,S440,S445,S450,S455,S460,S465の処理に置き換えられている。
【0110】
ステップS430において、車体コントローラ13は、図4のステップS155と同様の処理として、コンバータコントローラ20aに、制御モードをプリチャージモードに設定する信号を出力する処理を実行し、ステップS435へ進む。
【0111】
ステップS435において、車体コントローラ13は、図4のステップS160と同様の処理として、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したか否かを判定する処理を実行する。ステップS435において、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したと判定されるとステップS440へ進み、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了しなかったと判定されるとステップS445へ進む。
【0112】
ステップS440において、車体コントローラ13は、コンバータ異常フラグをオフに設定し、ステップS450へ進む。ステップS450において、車体コントローラ13は、メインリレー18bにオン(導通)信号を出力し、ステップS170へ進む。
【0113】
ステップS445において、車体コントローラ13は、コンバータ異常フラグをオンに設定し、ステップS455へ進む。ステップS455において、車体コントローラ13は、図4のステップS130と同様の処理として、プリチャージリレー18cにオン(導通)信号を出力する処理を実行し、ステップS460へ進む。
【0114】
ステップS460において、車体コントローラ13は、図4のステップS135と同様の処理として、リレー回路18のプリチャージリレー18cにより平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したか否かを判定する処理を実行する。ステップS460において、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したと判定されると、ステップS465へ進む。ステップS460において、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了しなかったと判定されると、ステップS190へ進む。
【0115】
ステップS465において、車体コントローラ13は、図4のステップS150と同様の処理として、プリチャージリレー18cにオフ(遮断)信号を出力し、メインリレー18bにオン(導通)信号を出力し、ステップS180へ進む。
【0116】
本変形例では、DC-DCコンバータ20の異常を表すコンバータ異常フラグがオンに設定されている場合には、車体コントローラ13は、コンバータコントローラ20aに、制御モードを停止モードに設定する信号を出力する。また、車体コントローラ13は、表示制御信号を表示装置81に出力し、DC-DCコンバータ20が異常であることを表す表示画像を表示装置81の表示画面に表示させる。
【0117】
なお、本変形例では、高電圧電源17が異常であるか否かを判定する処理を省略する例について説明したが、ステップS445とステップS455との間で、高電圧電源17が異常であるか否かを判定する処理を実行してもよい。この場合、高電圧電源17が異常であると判定されると、ステップS190へ進み、高電圧電源17が異常でないと判定されると、ステップS455へ進む。
【0118】
<変形例4>
上記実施形態では、コントロールバルブ41を駆動するバルブ駆動装置として、電動モータ12とパイロットポンプ11を有するものを採用する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、コントロールバルブ41のスプールと、電動モータの可動片とをリンクワイヤーで接続し、電動モータの駆動によりスプールを直接動作させることのできる直動型のバルブ駆動装置を採用してもよい。この場合、パイロットポンプ11は省略され、油圧パイロット式の操作装置45に代えて電気式の操作レバーが採用され、電気式操作レバーの操作量に応じて、電動モータを駆動し、コントロールバルブ41のスプールを電動モータで直接駆動させる。なお、コントロールバルブ41は、スプールをソレノイドによって駆動させる電動駆動式のバルブとすることもできる。この場合、ソレノイドが電動駆動源となる。
【0119】
<変形例5>
上記実施形態では、油圧ショベル1を動作させるのに必要な電動駆動源として、パイロットポンプ11を駆動する電動モータ12を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、エンジン2を冷却させるための冷却ファンの電動モータも油圧ショベル1を動作させるのに必要な電動駆動源の一つといえる。冷却ファンを駆動させることができないと、エンジン2を冷却することができず、油圧ショベル1のエンジン2を始動させることができないためである。また、エンジン2の始動が可能な場合であってもエンジン2の温度上昇を抑制することができないため、油圧ショベル1の動作は著しく制限されることになる。なお、本変形例では、パイロットポンプ11をエンジン2によって駆動する。本変形例では、高電圧電源17の異常、あるいはプリチャージリレー18cの異常がある場合であってもDC-DCコンバータ20によって、高電圧回路70に設けられるコンデンサのプリチャージが可能であるため、冷却ファンを駆動することができる。その結果、油圧ショベル1を動作させることができる。つまり、本変形例によれば、上記実施形態と同様、油圧ショベル1が動作できない状況を少なくすることができる。
【0120】
<変形例6>
油圧ショベル1は、アイドリングストップ条件が成立した場合に、エンジン2を停止させるアイドリングストップ機能を備えている場合がある。上記実施形態では、電源異常フラグがオンに設定されている場合に、電動モータ12および電動コンプレッサ29の出力を制限する例について説明したが、これに加えてアイドリングストップ機能を制限するようにしてもよい。
【0121】
本変形例に係る車体コントローラ13は、アイドリングストップ条件が成立したか否かを判定する。アイドリングストップ条件は、油圧ショベル1の操作装置45のレバー45aの操作が所定時間tcなされていない場合に成立する。また、アイドリングストップ条件は、油圧ショベル1の操作装置45のレバー45aの操作がなされている場合、あるは、油圧ショベル1の操作装置45のレバー45aの操作がなされていない場合であって所定時間tcが経過していない場合には成立しない。
【0122】
車体コントローラ13は、操作装置45の操作量を検出する操作センサ45sの検出結果およびコントローラ13の記憶装置に記憶されている閾値tcに基づいて、アイドリングストップ条件が成立しているか否かを判定する。なお、車体コントローラ13は、操作装置45の操作量Lが閾値L0未満である場合、操作がなされていないと判定し、操作量Lが閾値L0以上である場合、操作がなされていると判定する。閾値L0は、操作装置45の操作がなされているか否かを判定するための閾値であり、予め、車体コントローラ13の記憶装置に記憶されている。
【0123】
車体コントローラ13は、リレー回路18のプリチャージリレー18cにより平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを正常に完了することができた場合には、アイドリングストップ条件が成立したときにエンジン2を停止させる。一方、車体コントローラ13は、高電圧電源17が異常な状態であり、リレー回路18のプリチャージリレー18cにより平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定された場合であって、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを完了することができたときには、アイドリングストップ条件が成立したとしてもエンジン2を停止させない。これにより、エンジン2を駆動させて、発電電動機3によって発電電力を発生し続けることができるため、電源(14,17)の電池残量が低下することに起因して、油圧ショベル1を動作させることができなくなるという事態を回避することができる。したがって、本変形例によれば、アイドリングストップ機能を有する油圧ショベル1において、油圧ショベル1が動作できない状況を少なくすることができる。
【0124】
なお、上記アイドリングストップ条件は、一例であり、種々のアイドリングストップ条件を採用することができる。例えば、油圧ショベル1の運転室8に設けられるゲートロックレバーが開かれ、オペレータが運転室8から降りることができる状態となったときに、アイドリングストップ条件が成立するようにしてもよい。
【0125】
<変形例7>
上記実施形態では、第1の平滑コンデンサ15cと第2の平滑コンデンサ16cとを設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1および第2の平滑コンデンサ15c,16cのいずれか一方を省略してもよい。
【0126】
<変形例8>
上記実施形態では、高電圧電源17の電流値I、電圧値V、温度T等の状態情報を個別に閾値と比較して、それらの状態が異常な状態であるか否かを判定し、それらの判定結果から高電圧電源17が異常であるか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。高電圧電源17が異常であるか否かの判定方法は、種々採用することができる。
【0127】
<変形例8-1>
例えば、高電圧電源17の電流値I、電圧値V、温度T等の状態情報のうち、複数の状態情報から高電圧電源17の異常を判定するための判定指標を演算し、その判定指標と記憶装置に記憶されている閾値とを比較することによって、高電圧電源17が異常であるか否かを判定してもよい。
【0128】
<変形例8-2>
高電圧電源17の電圧のばらつきを表す指標と記憶装置に記憶されている閾値とを比較することによって、高電圧電源17が異常であるか否かを判定してもよい。
【0129】
<変形例8-3>
高電圧電源17に漏電検出回路を設け、この検出回路によって漏電電流を検出するようにしてもよい。この場合、車体コントローラ13は、漏電電流が検出されたことを表す信号が入力されたとき、高電圧電源17が異常であると判定する。
【0130】
<変形例8-4>
車体コントローラ13は、バッテリコントローラ17bに設けられるセンサが異常であることを表す信号が入力されたとき、高電圧電源17が異常であると判定してもよい。
【0131】
<変形例9>
上記実施形態では、車体コントローラ13が、バッテリコントローラ17bから取得した高電圧電源17の状態情報に基づいて、高電圧電源17が異常であるか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。上記実施形態で説明した異常判定をバッテリコントローラ17bが行ってもよい。この場合、バッテリコントローラ17bから車体コントローラ13に、異常判定結果を表す信号が出力される。車体コントローラ13は、バッテリコントローラ17bから異常であることを表す判定結果を取得した場合、高電圧電源17が異常であると判定し、バッテリコントローラ17bから異常でないこと(正常であること)を表す判定結果を取得した場合、高電圧電源17は異常でないと判定する。
【0132】
<変形例10>
上記実施形態では、高電圧回路70に接続される補機として電動コンプレッサ29が設けられている例について説明したが、補機はこれに限定されない。例えば、高電圧回路70に接続される補機としては、油圧システムを制御するための電磁比例弁、エンジン2を冷却するファンの電動モータ等がある。
【0133】
<変形例11>
上記実施形態では、高電圧電源17が異常であるか否かを判定し、高電圧電源17が異常である場合、リレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定し、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。図4に示すステップS110,S120,S125は省略してもよい。この場合、高電圧電源17の内部配線が断線している等、高電圧電源17が異常な状態である場合、ステップS135において、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了しなかったと判定される。したがって、ステップS135は、プリチャージリレー18cおよび高電圧電源17に異常があるか否かを判定する処理に相当する。このため、本変形例では、ステップS140において、車体コントローラ13は、リレー異常フラグおよび電源異常フラグをオフにし、ステップS150へ進む。また、ステップS145において、車体コントローラ13は、プリチャージリレー18cにオフ(遮断)信号を出力し、リレー異常フラグおよび電源異常フラグをオンにし、ステップS155へ進む。
【0134】
<変形例12>
上記実施形態では、リレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを開始してから所定時間t0を経過したときにプリチャージが完了していない場合、リレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定し、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージを行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4に示すステップS145の処理が完了した後、ステップS190へ進むようにしてもよい。本変形例では、ステップS110において、高電圧電源17が異常であると判定されると、ステップS125へ進み、ステップS125の処理が完了するとステップS155へ進む。つまり、高電圧電源17が異常であり、リレー回路18により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが可能でないと判定されると、DC-DCコンバータ20により平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが行われる。
【0135】
<変形例13>
上記実施形態では、低電圧電源14が鉛蓄電池である例について説明したが、低電圧電源14はこれに限らず、種々の蓄電装置を採用することができる。同様に、上記実施形態では、高電圧電源17がリチウムイオン二次電池等の蓄電素子を備える蓄電装置17aを備える例について説明したが、高電圧電源17はこれに限られない。高電圧電源17としては、ニッケル水素二次電池等の蓄電素子を備えた蓄電装置を備えるものとしてもよいし、電気二重層のキャパシタを備えるものとしてもよい。
【0136】
<変形例14>
上記実施形態では、プリチャージ完了判定部133は、各電圧センサ15s,16s,20sからの信号に基づいて、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。高電圧回路70の電圧(バス電圧)は、いずれの場所でも同様の検出結果が得られるため、各電圧センサ15s,16s,20sのうち少なくとも一つの信号に基づいて、平滑コンデンサ15c,16cのプリチャージが正常に完了したか否かを判定してもよい。なお、複数の電圧センサ15s,16s,20sからの信号に基づいて判定処理を実行することで、判定結果の信頼性を向上することができる。
【0137】
<変形例15>
上記実施形態では、インバータ15,16の平滑コンデンサ15c,16cがプリチャージ対象である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、高電圧回路70に昇圧コンバータを設ける場合には、昇圧コンバータのコンデンサもプリチャージ対象となる。
【0138】
<変形例16>
上記実施形態では、作業機械として、電動駆動源を有する油圧ショベル1を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。電動駆動源を有するホイールローダ、クレーン等、種々の作業機械に本発明を適用することができる。
【0139】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0140】
1…油圧ショベル(作業機械)、2…エンジン、3…発電電動機(発電機)、4…メインポンプ、11…パイロットポンプ、12…電動モータ(電動駆動源)、13…車体コントローラ(制御装置)、14…低電圧電源(第1電源)、15c,16c…平滑コンデンサ(コンデンサ)、16…インバータ、16a…インバータ回路、17…高電圧電源(第2電源)、18…リレー回路(第2プリチャージ装置)、18b…メインリレー、18c…プリチャージリレー、18d…プリチャージ抵抗、20…DC-DCコンバータ(第1プリチャージ装置)、40…低電圧回路(第1電気回路)、41…コントロールバルブ、45…操作装置、60…油圧アクチュエータ、70…高電圧回路(第2電気回路)、314…第1電源、317…第2電源、318…リレー回路(第1プリチャージ装置)、340…第1電気回路、370…第2電気回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6