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特許7210025デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/063 20060101AFI20230116BHJP
   H01S 3/113 20060101ALI20230116BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20230116BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230116BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20230116BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
H01S3/063
H01S3/113
H01S3/00 F
G01N21/27 H
G02B6/32
G02B6/42
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019508985
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2018031344
(87)【国際公開番号】W WO2019123719
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2017246805
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、総括実施型研究、研究プロジェクト名「ERATO美濃島知的シンセサイザプロジェクト」に係る産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】美濃島 薫
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 善晶
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-156452(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047712(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/045266(WO,A1)
【文献】特開2017-138129(JP,A)
【文献】特開2008-311629(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012915(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/064957(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 -3/02
3/04 -3/0959
3/098-3/102
3/105-3/131
3/136-3/213
3/23 -5/50
G01J 3/00 -4/04
7/00 -9/04
G01N 21/00 -21/01
21/17 -21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び前記第1方向とは逆向きの第2方向に沿って第1レーザー光を導波すると共に増幅する第1導波部と、第2レーザー光を第3方向及び前記第3方向とは逆向きの第4方向に沿って導波すると共に増幅する第2導波部とが設けられた基台と、
前記第1レーザー光を前記第1導波部に導入する第1導入部と、
前記第2レーザー光を前記第2導波部に導入する第2導入部と、
前記基台の前記第1方向の奥側の端部に設けられると共に前記第1導波部に接続され、前記第1方向に沿って前記第1導波部で導波された前記第1レーザー光の一部を前記第2方向に沿って反射すると共に、前記第1方向に沿って前記第1導波部で導波された前記第1レーザー光の残部を前記第1方向に沿って出射する第1反射部と、
前記基台の前記第3方向の奥側の端部に設けられると共に前記第2導波部に接続され、前記第3方向に沿って前記第2導波部で導波された前記第1レーザー光の一部を前記第4方向に沿って反射すると共に、前記第3方向に沿って前記第2導波部で導波された前記第2レーザー光の残部を前記第3方向に沿って出射する第2反射部と、
可飽和吸収体を備え、前記第1導波部の前記第1方向の手前側の端部及び前記第2導波部の前記第3方向の手前側の端部から離間して設けられ、前記第1導波部から第2方向に沿って出射されて前記可飽和吸収体に入射した前記第1レーザー光の少なくとも一部を反射すると共に、前記第2導波部から第4方向に沿って出射されて前記可飽和吸収体に入射した前記第2レーザー光の少なくとも一部を反射し、反射した前記第1レーザー光を前記第1導波部に入射させ、且つ反射した前記第2レーザー光を前記第2導波部に入射させる第3反射部と、
を備え、
前記第1反射部と前記第3反射部との間を伝搬する前記第1レーザー光の光路長と前記第2反射部と前記第3反射部との間を伝搬する前記第2レーザー光の光路長が異なる、
デュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項2】
前記第1レーザー光の偏光の向きと前記第2レーザー光の偏光の向きが互いに異なり、
前記第1導波部は前記第1レーザー光の偏光の向きを保持しつつ前記第1レーザー光を導波すると共に増幅し、
前記第2導波部は前記第2レーザー光の偏光の向きを保持しつつ前記第2レーザー光を導波すると共に増幅する、
請求項1に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項3】
前記第1レーザー光の進行方向に沿った前記第1導波部の長さと前記第2レーザー光の進行方向における前記第2導波部の長さが互いに異なる、
請求項1又は2に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項4】
前記第1導波部及び前記第2導波部はそれぞれ、第1コアと、前記第1コアの周囲に設けられ、前記第1コアより低い屈折率を有する第1クラッドとを有する第1導波路を備え、
前記第1導波部における前記第1導波路の長さと前記第2導波部における前記第1導波路の長さが互いに異なる、
請求項1からの何れか一項に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項5】
前記第1導波部は、第1コアと、前記第1コアの周囲に設けられ、前記第1コアより低い屈折率を有する第1クラッドと、を有する第1導波路を備え、
前記第2導波部は、前記第1コアとは異なる屈折率を有する第2コアと、前記第2コアの周囲に設けられ、前記第2コアより低い屈折率を有する第2クラッドと、を有する第2導波路を備える、
請求項1からの何れか一項に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項6】
前記第1レーザー光が前記第1導波部から第2方向に沿って出射される位置と前記第1レーザー光が前記第3反射部に照射される位置との間で前記第1レーザー光が伝搬する距離と、前記第2レーザー光が前記第2導波部から第4方向に沿って出射される位置と前記第2レーザー光が前記第3反射部に照射される位置との間で前記第2レーザー光が伝搬する距離とは、互いに異なる、
請求項1からの何れか一項に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項7】
前記第3反射部は前記基台に直接、又は、間接的に接続される、
請求項1からの何れか一項に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項8】
前記第1導波部の前記第1方向の手前側の端部及び前記第2導波部の前記第3方向の手前側の端部と前記第3反射部との間に第1集光部及び第2集光部が設けられ、
前記第1集光部は、前記第1導波部から前記第2方向に沿って出射された前記第1レーザー光を前記第3反射部に結像させると共に、前記第3反射部によって反射された前記第1レーザー光を前記第1方向に沿って前記第1導波部に入射させ、
前記第2集光部は、前記第2導波部から前記第4方向に沿って出射された前記第2レーザー光を前記第3反射部に結像させると共に、前記第3反射部によって反射された前記第2レーザー光を前記第3方向に沿って前記第2導波部に入射させ、
前記第1集光部及び前記第2集光部は一体に構成されている、
請求項1からの何れか一項に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項9】
前記第1レーザー光が前記第1導波部から第2方向に沿って出射される位置と前記第1レーザー光が前記第1集光部に照射される位置との間で前記第1レーザー光が伝搬する距離と、前記第2レーザー光が前記第2導波部から第4方向に沿って出射される位置と前記第2レーザー光が前記第2集光部に照射される位置との間で前記第2レーザー光が伝搬する距離とは、互いに異なる、
請求項に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項10】
前記第1集光部、前記第2集光部、及び、前記第3反射部は前記基台に直接、又は、間接的に接続される、
請求項又はに記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れか一項に記載のデュアル光周波数コム生成光学系と、
前記第1導入部及び前記第2導入部に接続され、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を発する光源と、を備える、
レーザー装置。
【請求項12】
請求項1から請求項10の何れか一項に記載のデュアル光周波数コム生成光学系と、
前記第1導入部に接続され、前記第1レーザー光を発する第1光源と、
前記第2導入部に接続され、前記第2レーザー光を発する第2光源と、を備える、
レーザー装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のレーザー装置と、
前記レーザー装置から導出される第1光周波数コム及び前記第1光周波数コムとは異なる繰り返し周波数を有する第2光周波数コムの少なくとも一方の進路上に配置された試料より前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムの進行方向の奥側に配置され、測定対象の前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムを干渉させる干渉部と、
前記干渉部で得られる干渉信号の進行方向の奥側に配置され、前記干渉信号から前記試料の情報を抽出する試料情報抽出部と、
を備える、
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの光周波数コムを出力するデュアル光周波数コム生成光学系、及び該デュアル光周波数コム生成光学系を備えるレーザー装置及び計測装置に関する。本願は、2017年12月22日に、日本に出願された特願2017-246805号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
周波数軸上においてスペクトル強度が櫛状に精密且つ等間隔に並べられた光は、光周波数コムと呼ばれている。例えば、超短パルスレーザーであるモード同期レーザーのスペクトル分布には、等間隔に並ぶ多数の光周波数モード列が現れる。すなわち、モード同期レーザーから光周波数コムが出射される。櫛状のスペクトル強度を有する光周波数コムは、時間、空間、周波数の精密なものさしとして広く活用されている。光周波数領域における光周波数モード列の間隔は、繰り返し周波数と呼ばれている。
【0003】
例えば、非特許文献1に記載されているように、繰り返し周波数が互いに異なる2つの光周波数コムのマルチヘテロダイン検出を行うことによって、光周波数領域における分子や原子の情報を取り出すことができる。繰り返し周波数が互いに異なる2つの光周波数コムは、デュアル光周波数コムと呼ばれている。デュアル光周波数コムを出力するモード同期レーザーを2台用いて、広帯域、高精度且つ高分解能な分光計測が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】I. Coddington, N. Newbury and W. Swann, “Dual-comb spectroscopy,” Optica, Vol. 3, No. 4, pp. 414-426 (2016).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の非特許文献1に開示されているように、デュアル光周波数コムを生成するためにモード同期レーザー等のレーザー装置を2台用いると、これらのレーザー装置が互いに異なる環境外乱や機械的な擾乱を受ける。2台のレーザー装置が互いに異なる環境外乱や機械的な擾乱を受けることによって、マルチヘテロダイン検出時に得られる干渉信号の信号対雑音比(Signal- to noise ratio:SN比)が低くなる。一方、干渉信号のSN比を高くしようとすると、2台のレーザー装置を相対的に位相同期させるための大規模な光学系が必要となり、レーザー装置が大型になる。
【0006】
本発明は、上述の事情を勘案したものであって、互いに繰り返し周波数が異なる光周波数コムの信号対雑音比を高め、且つ光学系や装置全体の小型化を図ることが可能なデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系は、第1方向及び前記第1方向とは逆向きの第2方向に沿って第1レーザー光を導波すると共に増幅する第1導波部と、第2レーザー光を第3方向及び前記第3方向とは逆向きの第4方向に沿って導波すると共に増幅する第2導波部とが設けられた基台と、前記第1レーザー光を前記第1導波部に導入する第1導入部と、前記第2レーザー光を前記第2導波部に導入する第2導入部と、前記基台の前記第1方向の奥側の端部に設けられると共に前記第1導波部に接続され、前記第1方向に沿って前記第1導波部で導波された前記第1レーザー光の一部を前記第2方向に沿って反射すると共に、前記第1方向に沿って前記第1導波部で導波された前記第1レーザー光の残部を前記第1方向に沿って出射する第1反射部と、前記基台の前記第3方向の奥側の端部に設けられると共に前記第2導波部に接続され、前記第3方向に沿って前記第2導波部で導波された前記第1レーザー光の一部を前記第4方向に沿って反射すると共に、前記第3方向に沿って前記第2導波部で導波された前記第2レーザー光の残部を前記第3方向に沿って出射する第2反射部と、可飽和吸収体を備え、前記第1導波部の前記第1方向の手前側の端部及び前記第2導波部の前記第3方向の手前側の端部から離間して設けられ、前記第1導波部から第2方向に沿って出射されて前記可飽和吸収体に入射した前記第1レーザー光の少なくとも一部を反射すると共に、前記第2導波部から第4方向に沿って出射されて前記可飽和吸収体に入射した前記第2レーザー光の少なくとも一部を反射し、反射した前記第1レーザー光を前記第1導波部に入射させ、且つ反射した前記第2レーザー光を前記第2導波部に入射させる第3反射部と、を備え、前記第1反射部と前記第3反射部との間を伝搬する前記第1レーザー光の光路長と前記第2反射部と前記第3反射部との間を伝搬する前記第2レーザー光の光路長が異なる。
【0008】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第1レーザー光の偏光の向きと前記第2レーザー光の偏光の向きが互いに異なっていてもよい。前記第1導波部は前記第1レーザー光の偏光の向きを保持しつつ前記第1レーザー光を導波すると共に増幅し、前記第2導波部は前記第2レーザー光の偏光の向きを保持しつつ前記第2レーザー光を導波すると共に増幅してもよい。
【0009】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第1レーザー光の進行方向に沿った前記第1導波部の長さと前記第2レーザー光の進行方向における前記第2導波部の長さが互いに異なってもよい。
【0010】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第1導波部及び前記第2導波部はそれぞれ、第1コアと、前記第1コアの周囲に設けられ、前記第1コアより低い屈折率を有する第1クラッドとを有する第1導波路を備えてもよい。前記第1導波部における前記第1導波路の長さと前記第2導波部における前記第1導波路の長さが互いに異なってもよい。
【0011】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第1導波部は、第1コアと、前記第1コアの周囲に設けられ、前記第1コアより低い屈折率を有する第1クラッドとを有する第1導波路を備えてもよい。前記第2導波部は、前記第1コアとは異なる屈折率を有する第2コアと、前記第2コアの周囲に設けられ、前記第2コアより低い屈折率を有する第2クラッドとを有する第2導波路を備えてもよい。
【0012】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第1レーザー光が前記第1導波部から第2方向に沿って出射される位置と前記第1レーザー光が前記第3反射部に照射される位置との間で前記第1レーザー光が伝搬する距離と、前記第2レーザー光が前記第2導波部から第4方向に沿って出射される位置と前記第2レーザー光が前記第3反射部に照射される位置との間で前記第2レーザー光が伝搬する距離とは、互いに異なってもよい。
【0013】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第3反射部は前記基台に直接、又は、間接的に接続されてもよい。
【0014】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第1導波部の前記第1方向の手前側の端部及び前記第2導波部の前記第3方向の手前側の端部と前記第3反射部との間に第1集光部及び第2集光部が設けられ、前記第1集光部は、前記第1導波部から前記第2方向に沿って出射された前記第1レーザー光を前記第3反射部に結像させると共に、前記第3反射部によって反射された前記第1レーザー光を前記第1方向に沿って前記第1導波部に入射させ、前記第2集光部は、前記第2導波部から前記第4方向に沿って出射された前記第2レーザー光を前記第3反射部に結像させると共に、前記第3反射部によって反射された前記第2レーザー光を前記第3方向に沿って前記第2導波部に入射させ、前記第1集光部及び前記第2集光部は一体に構成されてもよい。
【0015】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第1レーザー光が前記第1導波部から第2方向に沿って出射される位置と前記第1レーザー光が前記第1集光部に照射される位置との間で前記第1レーザー光が伝搬する距離と、前記第2レーザー光が前記第2導波部から第4方向に沿って出射される位置と前記第2レーザー光が前記第2集光部に照射される位置との間で前記第2レーザー光が伝搬する距離とは、互いに異なってもよい。
【0016】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第1集光部、前記第2集光部、前記第3反射部は前記基台に直接、又は、間接的に接続されてもよい。
【0017】
本発明のレーザー装置は、上述のデュアル光周波数コム生成光学系と、前記第1導入部及び第2導入部に接続され、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を発する光源と、を備えている。
【0018】
本発明のレーザー装置は、上述のデュアル光周波数コム生成光学系と、前記第1導入部に接続され、前記第1レーザー光を発する第1光源と、前記第2導入部に接続され、前記第2レーザー光を発する第2光源と、を備えている。
【0019】
本発明の計測装置は、上述のレーザー装置と、前記レーザー装置から導出される第1光周波数コム及び前記第1光周波数コムとは異なる繰り返し周波数を有する第2光周波数コムの少なくとも一方の進路上に配置された試料より前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムの進行方向の奥側に配置され、測定対象の前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムを干渉させる干渉部と、前記干渉部で得られる干渉信号の進行方向の奥側に配置され、前記干渉信号から前記試料の情報を抽出する試料情報抽出部と、を備えている。
【発明の効果】
【0020】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置によれば、互いに繰り返し周波数が異なる光周波数コムの相対的なSN比を高め、且つ光学系の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態のレーザー装置の平面図である。
図2図1に示すレーザー装置をY-Y線で矢視した断面図である。
図3】本発明の第1実施形態の計測装置の平面図である。
図4】本発明の第2実施形態のレーザー装置の平面図である。
図5】本発明の第3実施形態のレーザー装置の平面図である。
図6図5に示すレーザー装置をZ-Z線で矢視した断面図である。
図7】本発明の第4実施形態のレーザー装置の平面図である。
図8図7に示すレーザー装置をY´-Y´線で矢視した断面図である。
図9】本発明の第5実施形態のレーザー装置の平面図である。
図10】本発明の第6実施形態のレーザー装置の平面図である。
図11】本発明の第7実施形態のレーザー装置の平面図である。
図12】本発明の第8実施形態のレーザー装置の平面図である。
図13】本発明の第9実施形態のレーザー装置の平面図である。
図14図1に示すレーザー装置の変形例を示し、図1のY-Y線で矢視した断面図に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図1に示すように、本発明の第1実施形態のレーザー装置160Aは、光源150、偏波保持型光ファイバ151、偏波分離素子152、偏波保持型光ファイバ153A,153B、デュアル光周波数コム生成光学系110Aを備える。偏波保持型光ファイバ151の一方の端部は、光源150に接続されている。偏波保持型光ファイバ151の他方の端部は、偏波分離素子152に接続されている。偏波保持型光ファイバ153A,153Bのそれぞれの一方の端部は、偏波分離素子152に接続されている。偏波保持型光ファイバ153A,153Bのそれぞれの他方の端部は、デュアル光周波数コム生成光学系110Aに接続されている。
【0024】
光源150は、少なくとも、光軸Aに対して偏光の向きが第1の向きP1であるレーザー光(第1レーザー光)S1と、光軸Aに対して偏光の向きが第2方向であるレーザー光(第2レーザー光)S2とを含むレーザー光を発する。光軸Aは、光の進行方向を示している。光軸Aが図1の紙面に垂直な方向を向くとすると、第1の向きP1は紙面の上側及び下側を向く方向であり、第2の向きP2は紙面の左側及び右側を向く方向である。なお、第1の向きP1と第2の向きP2は、互いに異なれば、それぞれ任意の方向に向いていてよい。例えば、偏波保持型光ファイバ151の遅軸と速軸を第1の向きP1と第2の向きP2としてレーザー光S1,S2を導波してもよい。第1実施形態の光源150は、レーザー光S1,S2と、光軸Aに対して偏光の向きが第1の向きP1及び第2の向きP2とは異なる任意の方向であるレーザー光とを発する半導体レーザーで構成されている。
【0025】
偏波分離素子152は、光源150から発せられたレーザー光からレーザー光S1のみを偏波保持型光ファイバ153Aに取り出し、レーザー光S2のみを偏波保持型光ファイバ153Bに取り出す。偏波分離素子152は、偏波保持型光カプラで構成されている。光軸Aを中心とする偏波保持型光ファイバ153Aのクラッドの偏光軸は、レーザー光S1のみを偏波保持型光ファイバ153Aで導波可能とするように設定されている。光軸Aを中心とする偏波保持型光ファイバ153Bのクラッドの偏光軸は、レーザー光S2のみを偏波保持型光ファイバ153Bで導波可能とするように設定されている。
【0026】
デュアル光周波数コム生成光学系110Aは、第1導入部161、第2導入部162、第1導波部141、第1反射部121、第2導波部142、第2反射部122、集光部(第1集光部,第2集光部)180、第3反射部190を備えている。第1導入部161は、偏波保持型光ファイバ153Aの他方の端部に接続されている。第2導入部162は、偏波保持型光ファイバ153Bの他方の端部に接続されている。第1導波部141及び第1反射部121は、第1導入部161からD1方向(第1方向)に沿って、D1方向の奥側に設けられている。第2導波部142及び第2反射部122は、第2導入部162からD3方向(第3方向)に沿って、D3方向の奥側に設けられている。集光部180は、第1導入部161よりD1方向の手前側、且つ第2導入部162よりD3方向の手前側に設けられている。第3反射部190は、集光部180よりD1方向の手前側に設けられている。
【0027】
第1実施形態では、光源150、偏波保持型光ファイバ151、偏波分離素子152が図1の紙面に平行な面内でD1,D3方向に略直交する方向(以下、レーザー光導入方向、という)に沿って配置されている。偏波保持型光ファイバ153A,153Bのそれぞれの他方の端部側は、レーザー光導入方向からD1,D3方向に合流するように湾曲し、第1導入部161及び第2導入部162に至る。デュアル光周波数コム生成光学系110Aでは、第1導入部161、第1導波部141、第1反射部121、集光部180及び第3反射部において第1レーザー光L1が通過する部分によって、第1モード同期移行部E1が構成される。第1モード同期移行部E1によって、第1レーザー光L1はモード同期状態に移行する。第2導入部162、第2導波部142、第2反射部122と、集光部180及び第3反射部において第2レーザー光が通過する部分によって、第2モード同期移行部E2が構成される。第2モード同期移行部E2によって、第2レーザー光L2はモード同期状態に移行する。第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2は、少なくとも部分的に一体化され、D1,D3方向に延在している。
【0028】
第1導入部161は、出射端165Aと、二色性コーティング174で構成されている。二色性コーティング174は、D1方向とは逆向きのD2方向の奥側に間隔をおいて設けられている。第2導入部162は、出射端165Bと、二色性コーティング174で構成されている。二色性コーティング174は、第1導入部161及び第2導入部162からデュアル光周波数コム生成光学系110Aに導入されたレーザー光S1,S2を反射する。二色性コーティング174は、第1導波部141及び第2導波部142によって増幅されたレーザー光S1,S2(以下、レーザー増幅光L1,L2という)を透過させる。レーザー増幅光L1,L2の波長は、第1導波部141及び第2導波部142によって増幅される前のレーザー光S1,S2の波長とは異なる。
【0029】
第1実施形態では、二色性コーティング174は、出射端165AのD1方向の奥側の端面及び出射端165BのD3方向の奥側の端面に設けられる。しかしながら、二色性コーティング174によって反射されたレーザー光S1,S2を第1導波部141及び第2導波部142に入射させることができれば、二色性コーティング174の位置は特に限定されない。
【0030】
第1導波部141は、出射端165AのD1方向の奥側の端部に接続され、D1,D2方向に沿ってレーザー光S1及びレーザー増幅光(第1レーザー光)L1を導波すると共に増幅する。第2導波部142は、出射端165BのD3方向の奥側の端部に接続され、D3方向及びD3方向とは逆向きのD4方向に沿ってレーザー光S2及びレーザー増幅光(第2レーザー光)L2を導波すると共に増幅する。第1導波部141は、光増幅ファイバ(第1導波路)143Aで構成されている。第2導波部142は、光増幅ファイバ(第2導波路)143Bで構成されている。
【0031】
第1実施形態の光増幅ファイバ143A,143Bとしては、例えば偏波保持型の希土類添加光ファイバが挙げられる。図2に示すように、光増幅ファイバ143A,143Bはそれぞれ、コア(第1コア)201と、コア201の周囲に設けられたクラッド(第1クラッド)211と、を有する。クラッド211は、コア201より低い屈折率を有する。希土類添加光ファイバのコア201に添加される希土類元素としては、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ツリウム(Tm)等が挙げられる。希土類添加光ファイバに添加される希土類元素は、増幅される前のレーザー光S1,S2の波長(以下、第1波長という)及びレーザー増幅光L1,L2の波長(以下、第2波長という)を考慮して適宜選定される。
【0032】
図1及び図2に示すように、2本の光増幅ファイバ143A,143Bは、共通の基台130に設けられている。基台130は、長手方向において第1導波部141及び第2導波部142と略同等の寸法を有する直方体である。第1実施形態では、第1導波部141及び第2導波部142は、2本の光増幅ファイバ143A,143Bである。図2に示すように、基台130の上面130aには、2つのV字状の溝131A,131Bが形成されている。溝131A,131Bは、基台130の幅方向で互いに間隔をあけて形成されている。基台130の幅方向は、図2の紙面に平行な方向である。光増幅ファイバ143Aは溝131Aに嵌まり、光増幅ファイバ143Bは溝131Bに嵌まっている。基台130の素材は、例えば金属、樹脂等であるが、特に限定されない。
【0033】
第1実施形態では、光増幅ファイバ143A,143Bは、略同等の長さを有する。平面視では、光増幅ファイバ143A,143BのD1,D3方向の奥側の端部は、基台130のD1,D3方向の奥側の端面と重なる。光増幅ファイバ143A,143BのD1,D3方向の手前側の端部は、基台130のD1,D3方向の手前側の端面からさらに手前側に延出し、出射端165A,165Bに接続している。
【0034】
図1に示すように、第1反射部121及び第2反射部122は、基台130のD1方向の奥側の端面(端部)に設けられている。第1反射部121は、第1導波部141に接続され、D1方向に沿って第1導波部141で導波されたレーザー増幅光L1の一部をD2方向に沿って反射する。第1反射部121は、D1方向に沿って第1導波部141で導波されたレーザー増幅光L1の残部をD1方向に沿って出射する。第2反射部122は、第2導波部142に接続され、D3方向に沿って第2導波部142で導波されたレーザー増幅光L2の一部をD4方向に沿って反射する。第2反射部122は、D3方向に沿って第2導波部142で導波された第2レーザー増幅光L2の残部をD3方向に沿って出射する。
【0035】
第1反射部121及び第2反射部122において、D2,D4方向に沿って反射するレーザー増幅光L1,L2と、D1,D3方向に沿って出射されるレーザー増幅光L1,L2のパワー比は、第1反射部121及び第2反射部122に照射されるレーザー増幅光L1,L2の全体を100とすると、例えば1:99程度である。第1反射部121及び第2反射部122のぞれぞれのD1,D3方向の奥側の端部には、偏波保持型光ファイバ134A,134Bが接続されている。偏波保持型光ファイバ134A,134Bは、第1反射部121及び第2反射部122から出射された光周波数コムC1,C2(第1光周波数コム、第2光周波数コム、図3参照)を導波する。
【0036】
第1実施形態では、光増幅ファイバ143AのD1方向の奥側の端面にミラーコーティングが施されることによって、第1反射部121は、端面ミラー127Aで構成されている。端面ミラー127Aは、第1導波部141及び基台130と一体になっており、基台130から取り外せない。光増幅ファイバ143BのD3方向の奥側の端面にミラーコーティングが施されることによって、第2反射部122は、端面ミラー127Bで構成されている。端面ミラー127Bは、第2導波部142及び基台130と一体になっており、基台130から取り外せない。
【0037】
集光部180は、第1集光部180Aと第2集光部180Bとを備える。第1実施形態では、第1集光部180Aと第2集光部180Bは一体であり、第2方向及び第4方向において互いの位置が揃っている。以下では、第1実施形態のように、第2方向及び第4方向において第1集光部180Aと第2集光部180Bの位置が互いに揃う実施形態の説明及び図面では、第1集光部180Aと第2集光部180Bをまとめて集光部180という場合がある。第1集光部180Aは、第1導入部161からD2方向に沿って出射されたレーザー増幅光L1を第3反射部190に結像させ、第3反射部190によって反射されたレーザー増幅光L2をD1方向に沿って第1導入部161に入射させる。第2集光部180Bは、第2導入部162からD4方向に沿って出射されたレーザー増幅光L2を第3反射部190に結像させ、第3反射部190によって反射されたレーザー増幅光L2をD3方向に沿って第2導入部162に入射させる。
【0038】
集光部180は、D2,D4方向において互いに間隔をあけて設けられた2つの屈折率分布型(Gradient Index:GRIN)レンズ182,184で構成されている。GRINレンズ182,184はそれぞれ、端面182c,184cに入射したレーザー増幅光L1,L2を端面182d,184dでコリメートする。第1実施形態では、GRINレンズ182,184における第1モード同期移行部E1が第1集光部180Aとして機能する。第1モード同期移行部E1は、レーザー増幅光L1が通過する部分及びその近傍で構成される。GRINレンズ182,184における第2モード同期移行部E2が第2集光部180Bとして機能する。第2モード同期移行部E2は、レーザー増幅光L2が通過する部分及びその近傍で構成される。
【0039】
第3反射部190は、第1導波部141のD1方向の手前側の端部、及び、第2導波部142のD3方向の手前側の端部から離間して設けられている。第3反射部190は、集光部180において、GRINレンズ184からD1,D3方向の手前側に焦点距離だけ離れた位置の近傍に配置されている。第3反射部190は、第1導波部141からD2方向に沿って出射されたレーザー増幅光L1の少なくとも一部を反射し、第2導波部142からD4方向に沿って出射されたレーザー増幅光L2の少なくとも一部を反射する。第3反射部190は、反射したレーザー増幅光L1を第1導波部141に入射させ、反射したレーザー増幅光L2を第2導波部142に入射させる。
【0040】
第3反射部190では、集光状態で照射されるレーザー増幅光L1,L2のパワーに応じて、レーザー増幅光L1,L2の反射率が変化する。第3反射部190としては、例えば、可飽和吸収ミラー(SAM:Saturable Absorber Mirror)が挙げられる。SAMは、分布ブラッグ反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)と可飽和吸収体で構成されている。DBRは、厚み方向において高屈折率材料と低屈折率材料が交互に積層された積層体で構成されている。厚み方向は、デュアル光周波数コム生成光学系110AにDBRを配置した際のD1-D4方向である。SAMに照射されるレーザー増幅光L1,L2のパワーが所定値より低いときには、可飽和吸収体での吸収が強くなる。この場合、レーザー増幅光L1,L2の大部分が可飽和吸収体に吸収され、僅かなパワーのレーザー増幅光L1,L2がSAMによって反射される。一方、SAMに照射されるレーザー増幅光L1,L2のパワーが所定値以上になると、可飽和吸収体での吸収が飽和する。この場合、レーザー増幅光L1,L2の大部分が可飽和吸収体を透過すると共にDBRによって反射され、高パワーのレーザー増幅光L1,L2がSAMによって反射される。
【0041】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
次に、デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aの動作と、デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aを用いて光周波数コムC1,C2を生成する動作原理について説明する。
【0042】
光源150から発せられたレーザー光は、偏波保持型光ファイバ151に導波され、偏波分離素子152に入射する。偏波分離素子152によって、レーザー光S1,S2が分離され、レーザー光S1のみが偏波保持型光ファイバ153Aに導波され、レーザー光S2のみが偏波保持型光ファイバ153Bに導波される。
【0043】
偏波保持型光ファイバ153Aを導波したレーザー光S1は、D2方向に沿って出射端165Aを通り、二色性コーティング174によって反射される。二色性コーティング174で反射されたレーザー光S1は、再び出射端165Aを通り、D1方向に沿って光増幅ファイバ143Aに入射する。偏波保持型光ファイバ153Bを導波したレーザー光S2は、D4方向に沿って出射端165Bを通り、二色性コーティング174によって反射される。二色性コーティング174で反射されたレーザー光S2は、再び出射端165Bを通り、D3方向に沿って光増幅ファイバ143Bに入射する。
【0044】
光増幅ファイバ143A,143Bに入射したレーザー光S1,S2はD1,D3方向に沿って導波すると共に増幅される。このことによって、レーザー増幅光L1,L2が生成される。光増幅ファイバ143A,143Bが希土類添加光ファイバであると、第2波長は、第1波長とは異なる。
【0045】
D1方向に沿って光増幅ファイバ143Aで導波されたレーザー増幅光L1は、端面ミラー127Aによって反射され、D2方向に沿って光増幅ファイバ143Aを導波する。D3方向に沿って光増幅ファイバ143Bで導波されたレーザー増幅光L2は、端面ミラー127Bによって反射され、D4方向に沿って光増幅ファイバ143Bを導波する。
【0046】
D2,D4方向に沿って光増幅ファイバ143A,143Bで導波されたレーザー増幅光L1,L2は、出射端165A,165Bを通り、二色性コーティング174を透過する。二色性コーティング174からD2,D4方向に沿って出射されたレーザー増幅光L1,L2は、自由空間内で拡散し、GRINレンズ182に入射する。D2,D4方向に沿ってGRINレンズ182に入射したレーザー増幅光L1,L2は、コリメートされた後、GRINレンズ184によって集光され、可飽和吸収ミラー192に入射する。
【0047】
可飽和吸収ミラー192に入射したレーザー増幅光L1,L2には、集光したレーザー増幅光L1,L2のパワーが所定値より低ければ大きな損失が付与される。集光したレーザー増幅光L1,L2のパワーが所定値以上であれば、レーザー増幅光L1,L2には僅かな損失が付与される。損失が与えられたレーザー増幅光L1,L2は可飽和吸収ミラー192によって反射され、D1,D3方向に沿って進行すると共に拡散し、GRINレンズ184に入射する。D1,D3方向に沿ってGRINレンズ184に入射したレーザー増幅光L1,L2は、コリメートされ、GRINレンズ182によって集光する。GRINレンズ182によって集光したレーザー増幅光L1,L2は、二色性コーティング174を透過し、出射端165A,165Bを通り、光増幅ファイバ143A,143Bに入射する。
【0048】
D1,D3方向に沿って光増幅ファイバ143A,143Bに入射したレーザー増幅光L1,L2は、光増幅ファイバ143A,143Bによって繰り返し増幅される。
【0049】
第1反射部121又は第2反射部122と第3反射部190との間の往復回数が所定の回数より少ないときは、レーザー増幅光L1,L2のパワーが低いので、第1モード同期移行部E1や第2モード同期移行部E2における利得は小さい。この場合、デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aは、レーザー増幅光L1,L2が連続光である状態で動作する。第1反射部121又は第2反射部122と第3反射部190との間の往復回数が所定の回数以上になり、レーザー増幅光L1,L2のパワーが所定のパワーより高くなると、第1モード同期移行部E1や第2モード同期移行部E2における利得は非常に大きくなる。この場合、デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aは、レーザー増幅光L1,L2がパルス光である状態で動作する。
【0050】
デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aでは、レーザー増幅光L1,L2がそれぞれ連続光又はパルス光である状態で発振する間にモード同期状態に移行し、光周波数コムC1,C2(図3参照)が生成される。光周波数コムC1は、第1反射部121から偏波保持型光ファイバ134Aに導出される。光周波数コムC2は、第2反射部122から偏波保持型光ファイバ134Bに導出される。
【0051】
光周波数コムC1の繰り返し周波数frep1は、第1モード同期移行部E1の共振器長によって決まる。以下、第1モード同期移行部E1の共振器長を第1共振器長という。第1共振器長は、光増幅ファイバ143Aの長さと、出射端165AのD2方向の手前側の端部から可飽和吸収ミラー192のD2方向の奥側の面までの長さに相当する。一方、光周波数コムC2の繰り返し周波数frep2は、第2モード同期移行部E2の共振器長によって決まる。以下、第2モード同期移行部E2の共振器長を第2共振器長という。第2共振器長は、光増幅ファイバ143Bの長さと、出射端165BのD4方向の手前側の端部から可飽和吸収ミラー192のD4方向の奥側の面までの長さに相当する。デュアル光周波数コム生成光学系110Aでは、第1モード同期移行部E1の共振器におけるレーザー増幅光L1の光路長は、レーザー増幅光L1の屈折率と第1共振器長によって決まる。第2モード同期移行部E2の共振器におけるレーザー増幅光L2の光路長は、レーザー増幅光L2の屈折率と第2共振器長によって決まる。
【0052】
第1実施形態では、第1共振器長と第2共振器長は互いに等しい。しかしながら、レーザー増幅光L1の偏光の向きが第1の向きP1であるのに対し、レーザー増幅光L2の偏光の向きが第2の向きP2であるため、レーザー増幅光L1,L2の屈折率は互いに異なる。したがって、レーザー増幅光L1,L2の屈折率差Δnに応じて、第1モード同期移行部E1の光増幅ファイバ143Aに対するレーザー増幅光L1の光路長と、第2モード同期移行部E2の光増幅ファイバ143Bに対するレーザー増幅光L2の光路長は、互いに異なる。第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2との光路長差をΔLとすると、繰り返し周波数frep2は、(frep1+Δfrep)で表される。繰り返し周波数差Δfrepは、光路長差ΔLに依存する。
【0053】
上述の動作原理に基づき、デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aでは、強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L1がD1方向に沿って偏波保持型光ファイバ134Aに導波される。一方、強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L2がD3方向に沿って偏波保持型光ファイバ134Bに導波される。レーザー増幅光L1,L2のそれぞれの屈折率及び第2波長等を考慮し、光増幅ファイバ143A,143Bの長さは、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLが所望の繰り返し周波数frep1,frep2に相当するように設定されている。
【0054】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aでは、レーザー増幅光L1を第1モード同期移行部E1でモード同期状態に移行させつつ、共振させる。同時に、レーザー増幅光L2を第2モード同期移行部E2でモード同期状態に移行させつつ、共振させる。この際、レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが互いに異なるので、レーザー増幅光L1,L2の屈折率が異なり、第1モード同期移行部E1におけるレーザー増幅光L1の光路長と第2モード同期移行部E2におけるレーザー増幅光L2の光路長が互いに異なる。このことによって、第1モード同期移行部E1から、偏光の向きが第1の向きP1であり且つ繰り返し周波数frep1を有する光周波数コムC1を得ることができる。同時に、第2モード同期移行部E2から、偏光の向きが第2の向きP2であり、且つ光周波数コムC1とは異なる繰り返し周波数frep2を有する光周波数コムC2を得ることができる。
【0055】
デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aでは、偏光の向きが互いに異なるレーザー光S1,S2及びレーザー増幅光L1,L2を用いることで、レーザー増幅光L1,L2の屈折率を互いに異ならせ、第1共振器長と第2共振器長を互いに異ならせることができる。このことによって、第1モード同期移行部E1及び第2モード同期移行部E2を備える1台のモード同期レーザーで繰り返し周波数が異なる光周波数コムC1,C2を発生させることができる。デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aでは、第1導波部141及び第2導波部142が共通の基台130に設けられ、第1モード同期移行部E1及び第2モード同期移行部E2が集光部180及び第3反射部190を共有する。このことによって、モード同期レーザー(すなわち、レーザー増幅光L1,L2のモード同期に係る構成)が受ける環境外乱や機械的な擾乱を、第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2で共通にすることができる。このことによって、光周波数コムC1,C2のそれぞれに含まれる環境外乱や機械的な擾乱の差を抑えることができる。環境外乱や機械的な擾乱を第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2の共通雑音として容易に除去し、光周波数コムC1,C2の相対的なSN比を高くすることができる。このことによって、光周波数コムC1,C2による干渉信号のSN比を高くし、測定精度を高くすることができる。デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aでは、第1導波部141及び第2導波部142が共通の基台130に設けられ、第1モード同期移行部E1及び第2モード同期移行部E2が集光部180及び第3反射部190を共有する。このことによって、従来のように光周波数コムC1,C2を生成するモード同期レーザーを個別に用意する場合に比べて、デュアル光周波数コム生成光学系110A及びレーザー装置160Aの小型化を図ることができる。
【0056】
[計測装置の構成]
次に、本発明の第1実施形態の計測装置200の構成について説明する。図3に示すように、計測装置200は、デュアル光周波数コム生成光学系110Aを有するレーザー装置160A、干渉部59、試料情報抽出部58を備える。干渉部59は、出力用の偏波保持型光ファイバ134A,134B、光周波数コムC1,C2同士を干渉させる。試料情報抽出部58は、干渉部59で干渉した光周波数コムC1,C2の干渉信号から試料の情報を抽出する。
【0057】
計測装置200では、レーザー装置160Aで生成された光周波数コムC1は、偏波保持型光ファイバ134Aを通って、出射端91から出射される。レーザー装置160Aで生成された光周波数コムC2は、偏波保持型光ファイバ134Bを通って、出射端92から出射される。光周波数コムC1,C2の進路X35,X36のうち、光周波数コムC2の進路X36上に、計測装置200の測定対象の試料Sが配置されている。光周波数コムC1の進路X35に沿って、進路X35を干渉部59に向けて折り返すためのミラー55が設けられている。
【0058】
干渉部59は、光周波数コムC1と試料Sの情報を含む光周波数コムC2とを干渉させる。以下、試料Sの情報を含む光周波数コムC2を光周波数コムC3とする。干渉部59は、試料Sより光周波数コムC3の進行方向の奥側に配置され、光ビームスプリッタやハーフミラーで構成されている。第1実施形態では、光周波数コムC1,C2の偏光の向きが互いに異なっている。ミラー55及び干渉部59は、偏波保持型であることが好ましい。
【0059】
第1実施形態において、ミラー55及び干渉部59が偏波保持型でない場合、偏波保持型光ファイバ134A又は偏波保持型光ファイバ134Bを途中で一旦切断し、切断された箇所の偏波保持型光ファイバ134A又は偏波保持型光ファイバ134B同士を、互いの遅軸又は速軸が断面視で直交するように合わせ、融着してもよい。別の方法として、出射端91を偏波保持型光ファイバ134Aに対して90°回転させた状態で設置してもよい。他の方法として、出射端92を偏波保持型光ファイバ134Bに対して90°回転させた状態で設置してもよい。
【0060】
試料情報抽出部58は、干渉部59で光周波数コムC1,C3が互いに干渉することで発生するマルチヘテロダイン信号(干渉信号)の進行方向の奥側に配置されている。試料情報抽出部58は、マルチヘテロダイン信号から試料Sに関する情報を取得可能であって、一般に知られている光学系で構成されている。このような光学系として、例えば受光器で電気信号に変換する装置等が挙げられる。
【0061】
[計測装置を用いた計測方法]
計測装置200では、偏波保持型光ファイバ134A,134Bから出射された光周波数コムC1,C2のうち光周波数コムC2は進路X36に沿って進行し、試料Sを通過する。試料Sを通過する際に、光周波数コムC2に試料Sが有する光学的な情報が付加され、光周波数コムC3になる。一方、光周波数コムC1は進路X35に沿って進行し、ミラー55によって折り返される。
【0062】
進路X36に沿って進行する光周波数コムC3と進路X35に沿って進行する光周波数コムC1は、干渉部59で合わさり、互いに干渉する。光周波数コムC1,C3の干渉によって、マルチヘテロダイン信号が生じる。マルチヘテロダイン信号は進路X37に沿って進行し、試料情報抽出部58に入射する。図3に示すように、試料情報抽出部58において、マルチヘテロダイン信号は、例えば高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)によって、高周波数帯域のモード分解スペクトルに変換される。モード分解スペクトルの波形Wから、試料Sの光学的な情報が抽出される。図3では、波形Wを破線で示している。モード分解スペクトルにおいて周波数軸上で隣り合うスペクトル同士の周波数間隔は、繰り返し周波数差Δfrepに相当する。
【0063】
[計測装置の作用効果]
計測装置200では、進路X36上を進行する光周波数コムC2に試料Sの光学的な情報を付加できる。干渉部59では、光周波数コムC1,C3を互いに干渉させることによって、光周波数コムC1,C3に共通して含まれる環境外乱や機械的な擾乱を除去し、高周波数帯域で容易に観測可能なモード分解スペクトルを得ることができる。試料情報抽出部58では、得られたモード分解スペクトルのスペクトル分布の波形Wから試料Sの情報を抽出できる。したがって、本発明に係る計測装置200によれば、高SN比の光周波数コムC1,C2を用いるので、試料Sの情報を高精度に取得できる。計測装置200において光周波数コムC1,C2の発生に関する構成を共通化しているので、従来のように光周波数コムC1,C2を生成する光学系をそれぞれ個別のスペースに用意する必要がない。すなわち、光周波数コムC1,C2の発生に係る構成のうち、導波路の構成部分を互いに近接させて共通の基台130に固定し、自由空間系の構成部分を互いに共有することによって、計測装置200の小型化を図ることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。第2実施形態以降の各実施形態に関する説明及び図面において、第1実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系110A、レーザー装置160A及び計測装置200と共通する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。第2実施形態以降の各実施形態では、基本的に第1実施形態と異なる構成及び作用について説明し、説明する構成及び作用以外は第1実施形態と共通する。
【0065】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図4に示すように、本発明の第2実施形態のレーザー装置160Bは、第1実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系110Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系110Bを備えている。レーザー装置160Bにおける光源150から出射端(第1導入部、第2導入部)165Cまでの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置160Aにおける光源150から第1導入部161及び第2導入部162までの構成と同様である。
【0066】
デュアル光周波数コム生成光学系110Bでは、デュアル光周波数コム生成光学系110Aにおける出射端165A,165Bが出射端165Cに置き換えられている。デュアル光周波数コム生成光学系110Bでは、デュアル光周波数コム生成光学系110AにおけるGRINレンズ182,184が凸レンズ186に置き換えられている。すなわち、デュアル光周波数コム生成光学系110Aの第1導入部161及び第2導入部162がデュアル光周波数コム生成光学系110Bの出射端165Cで構成されている。デュアル光周波数コム生成光学系110Aの集光部180がデュアル光周波数コム生成光学系110Bの凸レンズ186で構成されている。
【0067】
出射端165Cは、偏波保持型光ファイバ153A,153Bのそれぞれの他方の端部に接続されている。出射端165Cは、偏波保持型光ファイバ153A,153Bを1つのコリメータレンズに取り付けたものとして構成されている。出射端165Cは、D2,D4方向の手前側から入射したレーザー増幅光L1,L2をコリメートしてD2,D4方向の奥側に向けて斜めに出射する。出射端165Cは、D2,D4方向を含む平面において互いに離間して出射したレーザー増幅光L1,L2を互いに近づかせる。その後、出射端165Cは、所定の位置Tでクロスさせた後、互いに離間させる。出射端165Cの一例は、Dual Fiber Collimator(販売元:AFR(Advanced Fiber Resources, Ltd.)、型番:C-1.8-2-55等)である。
【0068】
レーザー増幅光L1,L2は、所定の位置Tで重なった後に再び互いに離間しつつ、D2,D4方向の奥側に進行する。凸レンズ186は、レーザー増幅光L1,L2の進行方向をD2,D4方向に対して平行に戻す。凸レンズ186は、レーザー増幅光L1,L2を第3反射部190で集光させる。第3反射部190は、凸レンズ186の焦点距離近傍に配置されている。
【0069】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
デュアル光周波数コム生成光学系110B及びレーザー装置160Bでは、第1実施形態で説明した内容と同様の光の導波、伝搬及び動作原理によって、偏波保持型光ファイバ134A,134Bから、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が出射される。
【0070】
但し、デュアル光周波数コム生成光学系110B及びレーザー装置160Bでは、レーザー増幅光L1,L2は、D2,D4方向の手前側から出射端165Cに入射し、コリメートされ、D2,D4方向の奥側に向けて斜めに出射する。レーザー増幅光L1,L2は、D2,D4方向を含む平面において互いに離間して出射端165Cから出射し、所定の位置Tでクロスした後、互いに離間する。その後、レーザー増幅光L1,L2は、凸レンズ186によって集光されると共に、可飽和吸収ミラー192に入射する。
【0071】
レーザー増幅光L1,L2は、可飽和吸収ミラー192のDBRによって反射され、可飽和吸収ミラー192への入射時と同じ経路を、入射時とは逆向きに進行する。
【0072】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置160Bは、デュアル光周波数コム生成光学系110Bを有するので、基本的にレーザー装置160Aと同様の効果を奏する。デュアル光周波数コム生成光学系110B及びレーザー装置160Bでは、集光部180が単体の凸レンズ186で構成される。このことによって、デュアル光周波数コム生成光学系110B及びレーザー装置160Bのうち、特に自由空間系の構成部分の小型化を図ることができる。
【0073】
第2実施形態では、集光部180の構成は、レーザー増幅光L1,L2を第3反射部に集光状態で照射させることができる構成を全て含む。集光部180は、GRINレンズ182,184や、凸レンズ186に限定されない。
【0074】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第2実施形態の計測装置は、図3に示す計測装置200のレーザー装置160Aに替えて、図4に示すレーザー装置160Bを備えている。レーザー装置以外の第2実施形態の計測装置の構成は、計測装置200と同様である。レーザー装置160Bでは、レーザー装置160Aと同様に偏波保持型光ファイバ134A,134Bから光周波数コムC1,C2が得られる。第2実施形態の計測装置は、計測装置200と同様に動作し、計測装置200と同様の効果を奏する。レーザー装置160Bによれば、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを容易に制御できる。このことによって、モード分解スペクトルにおいて周波数軸上で隣り合うスペクトル同士の周波数間隔を容易に制御すると共に、第2実施形態の計測装置の測定分解能を容易に調整できる。レーザー装置160Bによれば、集光部180が小型になるので、第2実施形態の計測装置全体の小型化を図ることができる。
【0075】
(第3実施形態)
次に、本発明を適用した第3実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0076】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図5に示すように、本発明を適用した第3実施形態のレーザー装置160Cは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系110Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系110Cを備える。レーザー装置160Cにおける光源150から出射端(第1導入部、第2導入部)165A,165Bまでの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置160Aにおける光源150から第1導入部161及び第2導入部162までの構成と同様である。
【0077】
デュアル光周波数コム生成光学系110Cでは、第1導波部141は、光増幅ファイバ143Aと光ファイバ144Aで構成されている。光ファイバ144AのD1方向の手前側の端部は、光増幅ファイバ143AのD1方向の奥側の端部に接続されている。第2導波部142は、光増幅ファイバ143Bと光ファイバ144Bで構成されている。光ファイバ144BのD3方向の手前側の端部は、光増幅ファイバ143BのD3方向の奥側の端部に接続されている。光ファイバ144A,144Bのそれぞれのコア202(図6参照)に対して希土類元素は添加されていない。光ファイバ144Aは、レーザー増幅光L1を導波するのみで、増幅しない。光ファイバ144Bは、レーザー増幅光L2を導波するのみで、増幅しない。
【0078】
D1方向とD3方向は、互いに平行になっている。第1導波部141における光増幅ファイバ143Aの長さは、第2導波部142における光増幅ファイバ143Bより長さΔFだけ長い。光ファイバ144Aの長さが光ファイバ144Bの長さより長さΔFだけ短いので、第1導波部141及び第2導波部142は略同等の長さを有する。
【0079】
2本の光ファイバ144A,144Bは、2本の光増幅ファイバ143A,143Bと共通の基台130に設けられている。第3実施形態では、基台130は、長手方向において第1導波部141及び第2導波部142と略同等の寸法を有する。図6に示すように、光ファイバ144Aは溝131Aに嵌められ、光ファイバ144Bは溝131Bに嵌められている。
【0080】
光ファイバ144AのD1方向の奥側の端部に、第1反射部121の端面ミラー127Aが接続されている。光ファイバ144BのD3方向の奥側の端部に、第2反射部122の端面ミラー127Bが接続されている。平面視では、光ファイバ144A,144BのD1,D3方向の奥側の端部は、基台130のD1,D3方向の奥側の端面と重なる。
【0081】
第3実施形態では、レーザー光S1の偏光の向きとレーザー光S2の偏光の向きが必ずしも互いに異なる必要はない。図5に示すように、光源150は、光軸Aに対して偏光の向きが第1の向きP1のみであるレーザー光S1,S2を発してもよい。例えば、偏波保持型光ファイバ151の遅軸のみ、又は速軸のみに偏光の向きを合わせてレーザー光S1,S2を導波できる。第3実施形態の光源150は、少なくともレーザー光S1,S2を発する半導体レーザーで構成されている。
【0082】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
デュアル光周波数コム生成光学系110C及びレーザー装置160Cでは、第1実施形態で説明した内容と同様の光の導波、伝搬及び動作原理によって、偏波保持型光ファイバ134A,134Bから、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が得られる。
【0083】
デュアル光周波数コム生成光学系110C及びレーザー装置160Cでは、レーザー増幅光L1は、光ファイバ144Aを導波する。その後、レーザー増幅光L1は、端面ミラー127Aによって反射され、D2方向に沿って光ファイバ144Aを導波した後に、光増幅ファイバ143Aを導波し、増幅される。レーザー増幅光L2は、光ファイバ144Bを導波する。その後、レーザー増幅光L2は、端面ミラー127Bによって反射され、D4方向に沿って光ファイバ144Bを導波した後に、光増幅ファイバ143Bを導波する。
【0084】
第1共振器長と第2共振器長は、互いに等しい。レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通の第1の向きP1であってもよいが、光増幅ファイバ143A,143Bの長さはΔFだけ異なる。第1モード同期移行部E1の光増幅ファイバ143Aに対するレーザー増幅光L1の光路長と、第2モード同期移行部E2の光増幅ファイバ143Bに対するレーザー増幅光L2の光路長は、互いに異なる。第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2との光路長差ΔLは、長さΔFによって決まる。繰り返し周波数frep2は、(frep1+Δfrep)で表される。繰り返し周波数差Δfrepは、光路長差ΔLに依存する。
【0085】
上述の動作原理に基づき、デュアル光周波数コム生成光学系110C及びレーザー装置160Cでは、強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L1がD1方向に沿って偏波保持型光ファイバ134Aに導波される。強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L2は、D3方向に沿って偏波保持型光ファイバ134Bに導波される。長さΔFは、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLが所望の繰り返し周波数frep1,frep2に相当するように設定されている。一例として、波長1550nmにおける光ファイバ144A,144Bのコアの屈折率は、1.468程度であり、波長1550nmにおける光増幅ファイバ143A,143Bのコアの屈折率は、1.48程度である。但し、光増幅ファイバ143A,143Bのコアでは希土類原子の吸収があるため、希土類原子の添加濃度及び励起光のパワーによって前述の屈折率は変化する。例えば、デュアル光周波数コム生成光学系110Cにおける空間部の長さを10cmに固定し、光ファイバ144Aの長さを10cm、光増幅ファイバ143Aの長さを20cmとする。デュアル光周波数コム生成光学系110Cにおける空間部の長さは、基台130のD2,D4方向の奥側の端面と第3反射部190の反射面との距離である。光ファイバ144Bの長さを15cm、光増幅ファイバ143Bの長さを15cmとする。この場合、第1導波部141と第2導波部142のそれぞれの物理長は互いに等しく、40cmである。しかしながら、第1導波部141の光路長と、第2導波部142の光路長は、0.6mm異なる。このような光路長の差は、長さΔFが0.05mmであることを意味する。長さΔFが0.05mmであれば、繰り返し周波数frep1は552.3964024MHzになり、繰り返し周波数frep2は552.9185872MHzになり、Δfrepは約0.611MHzになる。
【0086】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置160Cは、デュアル光周波数コム生成光学系110Cを有するので、基本的にレーザー装置160Aと同様の効果を奏する。長さΔFは光増幅ファイバ143A,143Bの製造時に固定されるパラメータである。そのため、長さΔFは、デュアル光周波数コム生成光学系110Cの周囲の環境等に影響を受けやすいパラメータ(レーザー増幅光L1,L2の波長や偏波の向き等)に比べて高精度に調整可能であって、予め正確に設計可能であり、安定している。デュアル光周波数コム生成光学系110C及びレーザー装置160Cでは、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを、長さΔFによって制御できる。長さΔFを変えることによって光周波数コムC1,C2の分散量を変えることができる。光周波数コムC1,C2の分散量を変えることで、光周波数コムC1,C2のスペクトルの幅を変えることができる。
【0087】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第3実施形態の計測装置は、図3に示す計測装置200のレーザー装置160Aに替えて、図5に示すレーザー装置160Cを備える。レーザー装置160C以外の第3実施形態の計測装置の構成は、計測装置200と同様である。第3実施形態では、レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通して第1の向きP1であってもよいので、ミラー55及び干渉部59は、偏波保持型である必要はない。レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通している場合、ミラー55及び干渉部59は、光周波数コムC1,C3の偏光の向きを保持しない光学部品等で構成されてもよい。
【0088】
レーザー装置160Cでは、レーザー装置160Aと同様に偏波保持型光ファイバ134A,134Bから光周波数コムC1,C2が得られる。第3実施形態の計測装置は、計測装置200と同様に動作し、計測装置200と同様の効果を奏する。レーザー装置160Cによれば、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを容易且つ高精度に制御できる。このことによって、モード分解スペクトルにおいて周波数軸上で隣り合うスペクトル同士の周波数間隔を高精度に制御できる。第3実施形態の計測装置によれば、測定分解能を容易に且つ高精度に調整できる。第3実施形態の計測装置によれば、レーザー装置160Cにおいて光周波数コムC1,C2のスペクトルの幅を調整し、測定帯域を容易に且つ高精度に調整できる。
【0089】
(第4実施形態)
次に、本発明を適用した第4実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0090】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図7に示すように、本発明の第4実施形態のレーザー装置160A´は、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系110Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系110A´を備える。レーザー装置160A´における光源150から出射端(第1導入部、第2導入部)165A,165Bまでの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置160Aにおける光源150から第1導入部161及び第2導入部162までの構成と同様である。
【0091】
デュアル光周波数コム生成光学系110A´は、デュアル光周波数コム生成光学系110Aにおける第2導波部142の光増幅ファイバ143Bを光増幅ファイバ(第2導波路)143Cに置き換えた光学系である。
【0092】
図8に示すように、光増幅ファイバ143Cは、コア(第2コア)202と、コア202の周囲に設けられたクラッド(第2クラッド)212と、を有する。コア202は、第1実施形態の光増幅ファイバ143A,143Bのコア201とは異なる屈折率を有する。クラッド212は、コア202より低い屈折率を有する。後で説明する第4実施形態の計測装置において、光周波数コムC1,C2を干渉させてマルチヘテロダイン検出を行うので、レーザー増幅光L1,L2の波長は、互いに同一であることが好ましい。このことから、コア202に添加される希土類元素は、コア201に添加される希土類元素と同一であることが好ましい。レーザー増幅光L1にとってのコア201の屈折率とレーザー増幅光L2にとってのコア202の屈折率が異なるようにするために、コア201,202では、添加される希土類元素の種類は互いに同一であるが、その希土類元素が添加される添加濃度が互いに異なっている。但し、コア201,202のそれぞれへの希土類元素の添加濃度は同一であり、かつコア201,202の直径が互いに異なってもよい。クラッド212は、光増幅ファイバ143A,143Bのクラッド211と同一の組成で構成されてもよく、コア202より低い屈折率を有すればクラッド211とは異なる組成で構成されてもよい。
【0093】
第4実施形態では、第3実施形態と同様に、レーザー光S1の偏光の向きとレーザー光S2の偏光の向きが必ずしも互いに異なる必要はない。図7に示すように、光源150は、光軸Aに対して偏光の向きが第1の向きP1のみであるレーザー光S1,S2を発してもよい。例えば、偏波保持型光ファイバ151の遅軸のみ、又は速軸のみを第1の向きP1に合わせてレーザー光S1,S2を導波できる。
【0094】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
デュアル光周波数コム生成光学系110A´及びレーザー装置160A´では、第1実施形態で説明した内容と同様の光の導波、伝搬及び動作原理によって、偏波保持型光ファイバ134A,134Bから、図3に示すように互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2が出射される。
【0095】
デュアル光周波数コム生成光学系110A´及びレーザー装置160A´では、D3方向に沿って出射端165Bを通ったレーザー増幅光L2は、光増幅ファイバ143Cを導波し、増幅される。その後、レーザー増幅光L2は、端面ミラー127Bによって反射され、D4方向に沿って光増幅ファイバ143Cを導波し、増幅され、再び出射端165Bを通る。
【0096】
第4実施形態では、第1共振器長及び第2共振器長は同等であり、レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通して第1の向きP1であってもよい。その場合、光増幅ファイバ143Aのコア201の屈折率と、光増幅ファイバ143Cのコア202の屈折率は、Δnだけ異なる。その結果、第1モード同期移行部E1の光増幅ファイバ143Aに対するレーザー増幅光L1の光路長と、第2モード同期移行部E2の光増幅ファイバ143Bに対するレーザー増幅光L2の光路長は、互いに異なる。第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2との光路長差ΔLは、屈折率差Δnによって決まる。繰り返し周波数frep2は、(frep1+Δfrep)で表される。繰り返し周波数差Δfrepは、光路長差ΔLに依存する。
【0097】
上述の動作原理に基づき、デュアル光周波数コム生成光学系110A´及びレーザー装置160A´では、強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L1がD1方向に沿って偏波保持型光ファイバ134Aに導波される。強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L2は、D3方向に沿って偏波保持型光ファイバ134Bに導波される。長さΔFは、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLが所望の繰り返し周波数frep1,frep2に相当するように、設定されている。例えば、コア径が4μmのEDFを光増幅ファイバ143Aに用い、且つコア径が8μmのEDFを光増幅ファイバ143Cに用いると、光増幅ファイバ143Aと光増幅ファイバ143Cでは非線形屈折率が0.4×10-16cm/W異なる。その場合、屈折率差Δnを0.4×10-16cm/Wとして設定できる。
【0098】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置160A´は、デュアル光周波数コム生成光学系110A´を有するので、基本的にレーザー装置160Aと同様の効果を奏する。長さΔnは、光増幅ファイバ143A,143Cの製造時に固定されるパラメータであり、デュアル光周波数コム生成光学系110A´の周囲の環境等に影響を受けやすいパラメータ(レーザー増幅光L1,L2の波長や偏波の向き等)に比べて高精度に調整可能であって、予め正確に設計可能であり、安定している。デュアル光周波数コム生成光学系110A´及びレーザー装置160A´では、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを、高精度に調整可能な長さΔFによって制御できる。デュアル光周波数コム生成光学系110C及びレーザー装置160Cでは、屈折率差Δnを変えるためにコア201,202への希土類元素の添加濃度を互いに異ならせることによって、コア201,202におけるレーザー増幅光L1,L2の吸収量を変化させ、光周波数コムC1,C2の分散量を変えることができる。光周波数コムC1,C2の分散量を変えることで、光周波数コムC1,C2のスペクトルの幅を変えることができる。
【0099】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第4実施形態の計測装置は、図3に示す計測装置200のレーザー装置160Aに替えて、図7に示すレーザー装置160A´を備える。レーザー装置160A´以外の第4実施形態の計測装置の構成は、計測装置200と同様である。第4実施形態では、レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通して第1の向きP1であってもよいので、ミラー55及び干渉部59は、偏波保持型である必要はない。レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通している場合、ミラー55及び干渉部59は、光周波数コムC1,C3の偏光の向きを保持しない光学部品等で構成されてもよい。
【0100】
レーザー装置160A´では、レーザー装置160Aと同様に偏波保持型光ファイバ134A,134Bから光周波数コムC1,C2が出射される。第4実施形態の計測装置は、計測装置200と同様に動作し、計測装置200と同様の効果を奏する。レーザー装置160A´によれば、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを容易且つ高精度に制御できるので、モード分解スペクトルにおいて周波数軸上で隣り合うスペクトル同士の周波数間隔を高精度に制御できる。第4実施形態の計測装置によれば、測定分解能を容易に且つ高精度に調整できる。第4実施形態の計測装置によれば、レーザー装置160A´において光周波数コムC1,C2のスペクトルの幅を調整することによって、測定帯域を容易に且つ高精度に調整できる。
【0101】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0102】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図9に示すように、本発明を適用した第5実施形態のレーザー装置160Dは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系110Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系110Dを備える。レーザー装置160Dにおける光源150から出射端(第1導入部、第2導入部)165A,165Bまでの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置160Aにおける光源150から第1導入部161及び第2導入部162までの構成と同様である。
【0103】
デュアル光周波数コム生成光学系110D及びレーザー装置160Dでは、GRINレンズ182は、互いに一体化されたGRINレンズ部182A,182Bで構成される。互いに一体化されているとは、GRINレンズ部182A,182B同士の相対位置が固定されていることを意味する。
【0104】
第1集光部180Aとして機能するGRINレンズ部182Aと、第2集光部180Bとして機能するGRINレンズ部182Bは、D2方向又はD4方向において互いに略同一の長さを有するが、D2,D4方向における位置が長さΔMだけずれて配置される。D2,D4方向において、二色性コーティング174の奥側の端面からGRINレンズ部182Aの手前側の端面182cまでの距離と、二色性コーティング174の奥側の端面からGRINレンズ部182Bの手前側の端面182cまでの距離は、長さΔMだけ異なる。
【0105】
GRINレンズ184は、互いに一体化されたGRINレンズ部184A,184Bで構成される。互いに一体化されているとは、GRINレンズ部184A,184B同士の相対位置が固定されていることを意味する。第1集光部180Aとして機能するGRINレンズ部184Aと、第2集光部180Bとして機能するGRINレンズ部184Bは、D2,D4方向において互いに略同一の長さを有するが、D2,D4方向における位置が長さΔM´だけずれて配置される。D2,D4方向において、二色性コーティング174の奥側の端面からGRINレンズ部184Aの手前側の端面184dまでの距離と、二色性コーティング174の奥側の端面からGRINレンズ部184Bの手前側の端面184dまでの距離は、長さΔM´だけ異なる。
【0106】
平面視において、可飽和吸収ミラー192のD2,D4方向の手前側の端面においてレーザー増幅光L1,L2のそれぞれが照射される位置同士は、D2方向又はD4方向において長さΔJだけずれている。
D2方向において二色性コーティング174の奥側の端面からレーザー増幅光L1が出射される位置と可飽和吸収ミラー192の手前側の端面にレーザー増幅光L1が照射される位置までの距離と、D4方向において二色性コーティング174の奥側の端面からレーザー増幅光L2が出射される位置と可飽和吸収ミラー192の手前側の端面にレーザー増幅光L2が照射される位置までの距離は、長さΔJだけ異なる。
【0107】
第5実施形態では、第3実施形態と同様に、レーザー光S1の偏光の向きとレーザー光S2の偏光の向きが必ずしも互いに異なる必要はない。図9に示すように、光源150は、光軸Aに対して偏光の向きが共通して第1の向きP1のみであるレーザー光S1,S2を発してもよい。例えば、偏波保持型光ファイバ151の遅軸のみ、又は速軸のみを第1の向きP1に合わせてレーザー光S1,S2を導波できる。
【0108】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
デュアル光周波数コム生成光学系110D及びレーザー装置160Dでは、第1実施形態で説明した内容と同様の光の導波、伝搬及び動作原理によって、偏波保持型光ファイバ134A,134Bから、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が出射される。
【0109】
デュアル光周波数コム生成光学系110D及びレーザー装置160Dでは、第1共振器長及び第2共振器長は互いに等しく、レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通して第1の向きP1であってもよい。デュアル光周波数コム生成光学系110D及びレーザー装置160Dでは、D2,D4方向において、GRINレンズ部182A,182B同士の位置が長さΔMだけ異なり、GRINレンズ部184A,184B同士の位置が長さΔM´だけ異なり、レーザー増幅光L1,L2が可飽和吸収ミラー192に照射される位置が長さΔJだけ異なる。このことによって、第1モード同期移行部E1の光増幅ファイバ143Aに対するレーザー増幅光L1の光路長と、第2モード同期移行部E2の光増幅ファイバ143Bに対するレーザー増幅光L2の光路長は、互いに異なる。第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2との光路長差ΔLは、長さΔM,ΔM´,ΔJによって決まる。繰り返し周波数frep2は、(frep1+Δfrep)で表される。繰り返し周波数差Δfrepは、光路長差ΔLに依存する。
【0110】
上述の動作原理に基づき、デュアル光周波数コム生成光学系110D及びレーザー装置160Dでは、強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L1がD1方向に沿って偏波保持型光ファイバ134Aに導波される。強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L2は、D3方向に沿って偏波保持型光ファイバ134Bに導波される。長さΔM,ΔM´,ΔJは、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLが所望の繰り返し周波数frep1,frep2に相当するように、設定されている。長さΔM,ΔM´,ΔJは、前述したように僅かな長さであり、デュアル光周波数コム生成光学系110Dの各構成要素の配置時やレーザー装置160Dの製造時等に発生する製造誤差によって生じてもよく、意図的に生じさせてもよい。
【0111】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置160Dは、デュアル光周波数コム生成光学系110Dを有するので、基本的にレーザー装置160Aと同様の効果を奏する。長さΔM,ΔM´,ΔJはデュアル光周波数コム生成光学系110Dの構築時に固定されるパラメータであり、デュアル光周波数コム生成光学系110Dの周囲の環境等に影響を受けやすいパラメータ(レーザー増幅光L1,L2の波長や偏波の向き等)に比べて高精度に調整可能であり、予め正確に設計可能であり、安定している。デュアル光周波数コム生成光学系110A´及びレーザー装置160A´では、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを、高精度に調整可能な長さΔM,ΔM´,ΔJによって制御できる。
【0112】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第5実施形態の計測装置は、図3に示す計測装置200のレーザー装置160Aに替えて、図9に示すレーザー装置160Dを備える。レーザー装置160D以外の第5実施形態の計測装置の構成は、計測装置200と同様である。第5実施形態では、レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通して第1の向きP1であってもよいので、ミラー55及び干渉部59は、偏波保持型である必要はない。レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通している場合、ミラー55及び干渉部59は、光周波数コムC1,C3の偏光の向きを保持しない光学部品等で構成されてもよい。
【0113】
レーザー装置160Dでは、レーザー装置160Aと同様に偏波保持型光ファイバ134A,134Bから光周波数コムC1,C2が出射される。第5実施形態の計測装置は、計測装置200と同様に動作し、計測装置200と同様の効果を奏する。レーザー装置160Dによれば、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを容易且つ高精度に制御できる。そのため、モード分解スペクトルにおいて周波数軸上で隣り合うスペクトル同士の周波数間隔を高精度に制御できる。第5実施形態の計測装置によれば、測定分解能を容易に且つ高精度に調整できる。
【0114】
デュアル光周波数コム生成光学系110D及びレーザー装置160Dでは、GRINレンズ部182A,182B同士の位置が長さΔMだけずれ、GRINレンズ部184A,184B同士の相対位置は揃い、且つ可飽和吸収ミラー192のD2方向又はD4方向の手前側の端面の位置が揃っていても構わない。その場合、長さΔMは、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLが所望の繰り返し周波数Δfrepに相当するように、設定されている。
【0115】
可飽和吸収ミラー192のD2方向又はD4方向の手前側の端面のずれによってレーザー増幅光L1,L2が照射される位置が長さΔJだけずれ、GRINレンズ部182A,182B同士の相対位置、及びGRINレンズ部184A,184B同士の相対位置が揃っていてもよい。その場合、長さΔJは、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLが所望の繰り返し周波数Δfrepに相当するように、設定されている。つまり、GRINレンズ部182A,182Bの相対位置のずれ、GRINレンズ部184A,184Bの相対位置のずれ、可飽和吸収ミラー192の端面の段差のうち少なくとも1つが生じれば、上述した第5実施形態の作用効果が得られる。
【0116】
デュアル光周波数コム生成光学系110D及びレーザー装置160Dでは、GRINレンズ184の第1モード同期移行部E1を構成する部分と第2モード同期移行部E2を構成する部分がD2,D4方向において互いに異なる位置にずれていてもよい。
【0117】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0118】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図10に示すように、本発明の第6実施形態のレーザー装置160Eは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系110Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系110Eを備える。レーザー装置160Eにおける光源150から出射端(第1導入部、第2導入部)165A,165Bまでの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置160Aにおける光源150から第1導入部161及び第2導入部162までの構成と同様である。
【0119】
デュアル光周波数コム生成光学系110D及びレーザー装置160Dでは、端面ミラー127AのD1,D3方向の手前側の反射面の位置と、端面ミラー127BのD1,D3方向の手前側の反射面の位置は、長さΔGだけ異なる。D1,D2方向に沿った光増幅ファイバ143Aの長さと、D3,D4方向に沿った光増幅ファイバ143Bの長さは、互いに異なる。図10に示す構成例では、光増幅ファイバ143Aの長さは、光増幅ファイバ143Bの長さより長さΔGだけ短い。端面ミラー127Bは、基台130のD1方向の奥側の端面より手前側に配置されている。例えば、基台130の上面には、基台130の高さ方向に沿って溝が形成されている。端面ミラー127Bは、その溝に嵌められ、基台130の上面に対して直角をなしている。端面ミラー127BのD1方向の手前側の端面は、光増幅ファイバ143BのD1方向の奥側の端面に接している。
【0120】
第6実施形態では、第3実施形態と同様に、レーザー光S1の偏光の向きとレーザー光S2の偏光の向きが必ずしも互いに異なる必要はない。図10に示すように、光源150は、光軸Aに対して偏光の向きが第1の向きP1のみであるレーザー光S1,S2を発してもよい。例えば、偏波保持型光ファイバ151の遅軸のみ、又は速軸のみを第1の向きP1に合わせてレーザー光S1,S2を導波できる。
【0121】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
デュアル光周波数コム生成光学系110E及びレーザー装置160Eでは、第1実施形態で説明した内容と同様の光の導波、伝搬及び動作原理によって、偏波保持型光ファイバ134A,134Bから、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が出射される。
【0122】
デュアル光周波数コム生成光学系110E及びレーザー装置160Eでは、レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通して第1の向きP1であってもよい。デュアル光周波数コム生成光学系110E及びレーザー装置160Eでは、D1,D3方向における光増幅ファイバ143Aの長さと、D2,D4方向における光増幅ファイバ143Bの長さは、長さΔGだけ異なる。そのことによって、第1共振器長と第2共振器長は、長さΔGだけ異なる。第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2との光路長差ΔLは、長さΔGによって直接決まる。繰り返し周波数frep2は、(frep1+Δfrep)で表される。繰り返し周波数差Δfrepは、光路長差ΔLに依存する。
【0123】
上述の動作原理に基づき、デュアル光周波数コム生成光学系110E及びレーザー装置160Eでは、強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L1がD1方向に沿って偏波保持型光ファイバ134Aに導波される。強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L2は、D3方向に沿って偏波保持型光ファイバ134Bに導波される。長さΔGは、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLが所望の繰り返し周波数frep1,frep2に相当するように、設定されている。例えば、空間部の長さを10cmに固定する。基台130のD2,D4方向の奥側の端面と第3反射部190の反射面との距離は、10cmになる。光増幅ファイバ143A,143Bのそれぞれのコアの屈折率は、1.48と仮定する。このような場合、光増幅ファイバ143Aの長さを1mとし、光増幅ファイバ143Bの長さを1.001mとし、長さΔGを1mmに設定すると、繰り返し周波数差Δfrepは0.178MHzとなる。
【0124】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置160Eは、デュアル光周波数コム生成光学系110Eを有するので、基本的にレーザー装置160Aと同様の効果を奏する。長さΔGは端面ミラー127Bの基台130への設置時に固定されるパラメータであり、デュアル光周波数コム生成光学系110Eの周囲の環境等に影響を受けやすいパラメータ(レーザー増幅光L1,L2の波長や偏波の向き等)に比べて高精度に調整可能であって、予め正確に設計可能であり、安定している。デュアル光周波数コム生成光学系110E及びレーザー装置160Eでは、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを、高精度に調整可能な長さΔGによって制御できる。長さΔGを変えることによって、光周波数コムC1,C2の分散量を長さΔGに応じて異ならせることができる。光周波数コムC1,C2の分散量を変えることによって、光周波数コムC1,C2のスペクトルの幅を変えることができる。
【0125】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第6実施形態の計測装置は、図3に示す計測装置200のレーザー装置160Aに替えて、図10に示すレーザー装置160Eを備える。レーザー装置160E以外の第6実施形態の計測装置の構成は、計測装置200と同様である。第6実施形態では、レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通して第1の向きP1であってもよいので、ミラー55及び干渉部59は、偏波保持型である必要はない。レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが共通している場合は、ミラー55及び干渉部59は、光周波数コムC1,C3の偏光の向きを保持しない光学部品等で構成されてもよい。
【0126】
レーザー装置160Eでは、レーザー装置160Aと同様に偏波保持型光ファイバ134A,134Bから光周波数コムC1,C2が出射される。第6実施形態の計測装置は、計測装置200と同様に動作し、計測装置200と同様の効果を奏する。レーザー装置160Eによれば、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを容易且つ高精度に制御できるので、モード分解スペクトルにおいて周波数軸上で隣り合うスペクトル同士の周波数間隔を高精度に制御できる。第6実施形態の計測装置によれば、測定分解能を容易に且つ高精度に調整できる。第6実施形態の計測装置では、レーザー装置160Eにおいて光周波数コムC1,C2のスペクトルの幅を調整することによって、測定帯域を容易に且つ高精度に調整できる。
【0127】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0128】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図11に示すように、本発明を適用した第7実施形態のレーザー装置160Fは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系110Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系110Fを備える。レーザー装置160Fにおける光源150から出射端(第1導入部、第2導入部)165A,165Bまでの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置160Aにおける光源150から第1導入部161及び第2導入部162までの構成と同様である。
【0129】
デュアル光周波数コム生成光学系110Fは、デュアル光周波数コム生成光学系110Aにおける端面ミラー127A,127Bをファイバブラッググレーティング(Fiber Bragg Grating:FBG)128A,128Bに置き換えた光学系である。FBG128A,128Bは、不図示のコネクタ等を用いて、D1方向又はD2方向の手前側で光増幅ファイバ143A,143Bに対して着脱可能に配置されている。同様に、FBG128A,128Bは、不図示のコネクタ等を用いて、D1方向又はD2方向の奥側で偏波保持型光ファイバ134A,134Bに対して着脱可能に配置されている。
【0130】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
デュアル光周波数コム生成光学系110F及びレーザー装置160Fでは、第1実施形態で説明した内容と同様の光の導波、伝搬及び動作原理によって、偏波保持型光ファイバ134A,134Bから、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が出射される。
【0131】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置160Fは、デュアル光周波数コム生成光学系110Fを有するので、基本的にレーザー装置160Aと同様の効果を奏する。端面ミラー127A,127Bに替えてFBG128A,128Bを用いることで、第1反射部121及び第2反射部122を第1導波部141及び第2導波部142に対して着脱可能にすることができる。このことによって、デュアル光周波数コム生成光学系110F及びレーザー装置160Fの取り扱いやメンテナンスを容易にすることができる。
【0132】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第7実施形態の計測装置は、図3に示す計測装置200のレーザー装置160Aに替えて、図11に示すレーザー装置160Fを備える。レーザー装置160F以外の第7実施形態の計測装置の構成は、計測装置200と同様である。レーザー装置160Fでは、レーザー装置160Aと同様に偏波保持型光ファイバ134A,134Bから光周波数コムC1,C2が出射される。第7実施形態の計測装置は、計測装置200と同様に動作し、計測装置200と同様の効果を奏する。レーザー装置160Fによれば、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを容易に制御できる。レーザー装置160Fによれば、光増幅ファイバ143A,143Bと、偏波保持型光ファイバ134A,134Bに対して、FBG128A,128Bがそれぞれ着脱可能であるので、第1反射部121及び第2反射部122の取り扱いやメンテナンスを容易にすることができる。
【0133】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0134】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図12に示すように、本発明の第8実施形態のレーザー装置160Gは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系110Aの構成を全て備え、基台133をさらに備える。
【0135】
デュアル光周波数コム生成光学系110Gでは、出射端165A,165B、二色性コーティング174、GRINレンズ182,184、可飽和吸収ミラー192が基台133に設けられている。出射端165A,165B、二色性コーティング174、GRINレンズ182,184、可飽和吸収ミラー192はそれぞれ、不図示の専用ホルダ等に装着され、専用ホルダと共に基台133に固定されている。基台133の素材は、基台130の素材と同様であり、特に限定されず、例えば金属、樹脂等である。基台130,133は、接着剤等によって接着されてもよく、同一の素材から構成されて一体であってもよい。少なくともGRINレンズ182,184、可飽和吸収ミラー192はそれぞれ、基台130と基台133が同一の部材として形成されることによって基台130に直接接続されてもよい。少なくともGRINレンズ182,184、可飽和吸収ミラー192はそれぞれ、基台133が基台130と接着剤等によって接着されることによって間接的に接続されてもよい。これらの構成によって、第1モード同期移行部E1及び第2モード同期移行部E2の自由空間内の光学系を構成するGRINレンズ182,184、可飽和吸収ミラー192は、導波路である光増幅ファイバ143A,143Bや端面ミラー127A,127Bと直接、又は、間接的に接続される。
【0136】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置160Gは、デュアル光周波数コム生成光学系110Gを有するので、基本的にレーザー装置160Aと同様の効果を奏する。また、少なくともGRINレンズ182,184、可飽和吸収ミラー192が基台130に接続されることによって、第1モード同期移行部E1及び第2モード同期移行部E2の自由空間内の光学系で構成される第3反射部190が基台130に接続される。第3反射部190が基台130に接続されない場合に比べて、第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2が受ける環境外乱や機械的な擾乱を確実に共通にすることができる。このことによって、光周波数コムC1,C2に含まれる環境外乱や機械的な擾乱の差を抑え、光周波数コムC1,C2のSN比をさらに高めることができる。
【0137】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第8実施形態の計測装置は、図3に示す計測装置200のレーザー装置160Aに替えて、図12に示すレーザー装置160Gを備える。レーザー装置160G以外の第8実施形態の計測装置の構成は、計測装置200と同様である。レーザー装置160Gでは、レーザー装置160Aと同様に偏波保持型光ファイバ134A,134Bから光周波数コムC1,C2が出射される。第8実施形態の計測装置は、計測装置200と同様に動作し、計測装置200と同様の効果を奏する。レーザー装置160Gによれば、光周波数コムC1,C2のSN比を高めることができる。第8実施形態の計測装置によれば、相対的に高SN比の光周波数コムC1,C2を用いた精度の高い計測を実施できる。
【0138】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0139】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図13に示すように、本発明の第9実施形態のレーザー装置160Hは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系110Aの光源150を2つの光源150A,150Bに替えたデュアル光周波数コム生成光学系110Hを備え、偏波保持型光ファイバ151及び偏波分離素子152を備えていない。光源(第1光源)150Aには、第1実施形態で説明した偏波保持型光ファイバ153Aの入射側の端部(一方の端部)が直接接続されている。光源(第2光源)150Bには、第1実施形態で説明した偏波保持型光ファイバ153Bの入射側の端部(一方の端部)が直接接続されている。
【0140】
光源150A,150Bは、光源150と同様、半導体レーザーで構成されている。光源150Aはレーザー光S1のみを発し、光源150Bはレーザー光S2のみを発する。偏波保持型光ファイバ153Aの出射側の端部(他方の端部)は、D2方向の手前側から出射端165Aに接続されている。偏波保持型光ファイバ153Bの出射側の端部(他方の端部)は、D4方向の手前側から出射端165Bに接続されている。レーザー装置160Hでは、第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2のそれぞれに対して光源150A,150Bのそれぞれから個別にレーザー光S1,S2が導入される。
【0141】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
デュアル光周波数コム生成光学系110H及びレーザー装置160Hでは、第1実施形態で説明した内容と同様の光の導波、伝搬及び動作原理によって、偏波保持型光ファイバ134A,134Bから、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が出射される。第1モード同期移行部E1には、光源150Aから偏波保持型光ファイバ153A及び出射端165Aを介して、レーザー光S1が導入される。第2モード同期移行部E2には、光源150Bから偏波保持型光ファイバ153B及び出射端165Bを介して、レーザー光S2が導入される。
【0142】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置160Hは、デュアル光周波数コム生成光学系110Hを有するので、基本的にレーザー装置160Aと同様の効果を奏する。レーザー装置160Hでは、レーザー光S1,S2を互いに異なる光源150A,150Bで発生させる。レーザー装置160Hでは、第1モード同期移行部E1と第2モード同期移行部E2のそれぞれに対してレーザー光S1,S2のそれぞれを個別に導入させる。このことによって、レーザー光S1,S2を個別に制御し、光周波数コムC1,C2の特性を容易且つ高精度に調整できる。レーザー装置160H及びデュアル光周波数コム生成光学系110Hによれば、光周波数コムC1の繰り返し周波数frep1あるいは光周波数コムC2の繰り返し周波数frep2のみを変調及び制御でき、光周波数コムC1あるいは光周波数コムC2のみの光周波数の位相を制御できる。
【0143】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第9実施形態の計測装置は、図3に示す計測装置200のレーザー装置160Aに替えて、図13に示すレーザー装置160Hを備える。レーザー装置160H以外の第9実施形態の計測装置の構成は、計測装置200と同様である。レーザー装置160Hではレーザー装置160Aと同様に偏波保持型光ファイバ134A,134Bから光周波数コムC1,C2が出射される。第9実施形態の計測装置は、計測装置200と同様に動作し、計測装置200と同様の効果を奏する。レーザー装置160Hによれば、光周波数コムC1及び光周波数コムC2の少なくとも一方の光周波数の位相を制御できる。例えば、レーザー装置160Hを用いてキャリアエンベロープオフセット周波数を制御できる。第9実施形態の計測装置では、光周波数コム・モードの絶対周波数を決定できるようになり、計測の範囲を拡げることができる。
【0144】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述の特定の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0145】
例えば、光増幅ファイバは、上述の各実施形態で説明したように、基台に形成された溝に嵌められていなくてもよい。図14に示すように、シリコン等からなる基台130の上部全体に第1導波部141及び第2導波部142に共通するクラッド211が設けられ、第1導波部141及び第2導波部142のそれぞれのコア201が互いに間隔をあけてクラッド211に埋設されていてもよい。第1導波部141及び第2導波部142は、平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)として構成されてもよい。
【0146】
上述した各実施形態の構成は、適宜組み合わせられる。例えば、第3実施形態で説明したように光増幅ファイバ143A,143BのD1,D3方向の長さを互いに異ならせ、且つ、第5実施形態で説明したようにGRINレンズ182のGRINレンズ部182A,182Bの位置を異ならせてもよい。この場合、光周波数コムC1,C2の繰り返し周波数差Δfrepは、光路長差ΔLに依存し、長さΔF,ΔMによって決まる。
【0147】
上述の各実施形態では、レーザー増幅光L1,L2の進行方向が互いに平行になっているが、必ずしもレーザー増幅光L1,L2の進行方向は互いに平行になっていなくてもよい。デュアル光周波数コム生成光学系の小型化が妨げられない範囲で、レーザー増幅光L1,L2の何れかの進行方向が湾曲又は蛇行等してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明に係るデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置は、互いに繰り返し周波数が異なる光周波数コムC1,C2を用いる分野で広く応用可能である。また、本発明のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置によれば、高SN比を有する光周波数コムC1,C2が得られる。このことによって、本発明のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置は、計測精度の高さを求められる分光計測や信号解析等に応用可能である。
【符号の説明】
【0149】
110A,110A´,110B,110C,110D,110E,110F,110G,110H…デュアル光周波数コム生成光学系
121…第1反射部
122…第2反射部
130…基台
141…第1導波部
142…第2導波部
150,150A,150B…光源
160A,160A´,160B,160C,160D,160E,160F,160G,160H…レーザー装置
161…第1導入部
162 第2導入部
190…第3反射部
200…計測装置
D1…第1方向
D2…第2方向
D3…第3方向
D4…第4方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14