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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20230116BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20230116BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
F15B11/08 C
F15B11/02 W
E02F9/22 E
E02F9/22 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019136432
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021021406
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
(72)【発明者】
【氏名】相原 三男
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲平
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118281(JP,A)
【文献】特開昭59-194103(JP,A)
【文献】特開平08-219105(JP,A)
【文献】特開2006-103828(JP,A)
【文献】特開昭59-034002(JP,A)
【文献】実開平01-041702(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/08
F15B 11/02
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を貯留するタンクと、
原動機と、
両方向吐出が可能な2つの入出力ポートを有し、前記原動機によって駆動される閉回路用油圧ポンプと、
油圧シリンダと、
前記閉回路用油圧ポンプの一方の入出力ポートと前記油圧シリンダのボトム側油室とを接続するボトム側油路と、
前記閉回路用油圧ポンプの他方の入出力ポートと前記油圧シリンダのロッド側油室とを接続するロッド側油路と、
前記油圧シリンダの動作方向および動作速度を指示するための操作レバーと、
前記操作レバーからの入力に応じて前記閉回路用油圧ポンプから吐出される作動油の吐出方向および吐出流量を制御するコントローラとを備えた建設機械において、
吐出ポートと前記タンクに接続された吸込ポートとを有する開回路用ポンプと、
前記吐出ポートに接続された吐出油路と、
前記ボトム側油路から分岐して前記吐出油路に接続するボトム側分岐油路と、
前記ロッド側油路から分岐して前記吐出油路に接続するロッド側分岐油路と、
前記ボトム側分岐油路の導通と遮断を切換可能なボトム側切換弁と、
前記ロッド側分岐油路の導通と遮断を切換可能なロッド側切換弁と、
前記吐出油路と前記タンクとを接続する排出油路と、
前記排出油路に設けられたブリードオフ弁と、
前記ボトム側油路を前記タンクに接続するボトム側メイクアップ油路と、
前記ボトム側メイクアップ油路に設けられ、前記タンクから前記ボトム側油室への作動油の吸入を可能とするボトム側メイクアップ用チェック弁と、
前記ロッド側油路を前記タンクに接続するロッド側メイクアップ油路と、
前記ロッド側メイクアップ油路に設けられ、前記タンクから前記ロッド側油室への作動油の吸入を可能とするロッド側メイクアップ用チェック弁とを備えた
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記原動機の回転数を検出する回転数センサを備え、
前記コントローラは、
前記回転数センサで検出した前記原動機の回転数に基づいて前記原動機が動作中か否かを判定し、
前記原動機が動作中でないと判定され、かつ前記操作レバーを介して前記油圧シリンダの伸長動作が指示された場合に、前記ロッド側制御弁を開口させるとともに、前記操作レバーの操作量に応じて前記ブリードオフ弁を開口させ
前記原動機が動作中でないと判定され、かつ前記操作レバーを介して前記油圧シリンダの引込動作が指示された場合に、前記ボトム側制御弁を開口させるとともに、前記操作レバーの操作量に応じて前記ブリードオフ弁を開口させる
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関わり、特に油圧ポンプにより直接に油圧アクチュエータを駆動する油圧閉回路を用いた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベルやホイールローダなどの建設機械において、省エネ化が重要な開発項目になっている。建設機械の省エネ化には油圧システム自体の省エネ化が重要であり、油圧ポンプにより油圧アクチュエータを閉回路接続して直接に制御する油圧閉回路システムの適用が検討されている。このシステムは、制御弁による圧力損失がなく、必要な流量のみをポンプが吐出するため流量損失もない。また、アクチュエータの位置エネルギや減速時のエネルギを回生することもできる。このため省エネ化が可能となる。
【0003】
油圧閉回路を組み合わせた建設機械の背景技術として、特許文献1には、複数の可変容量油圧ポンプをそれぞれ複数の油圧アクチュエータに電磁切換弁を介して閉回路を構成するよう分岐接続することで、アクチュエータの複合動作と高速動作を可能にした構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-48899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉱山用のマイニングショベルのような建設機械では、長期間における高い信頼性に加え、高い稼働率が求められる。このため、エンジン停止後は速やかに油圧回路の圧力を抜いて安全性を確保しつつ、フィルタ交換やオイル交換、各部の漏れ確認などのメンテナンス作業を早期に開始する必要がある。
【0006】
通常、エンジン停止時はバケットを地面に接地させるが、バケットがわずかに浮いているか、あるいは車体がわずかにでも浮いていると、自重により油圧回路に残圧が発生する。このためエンジン停止後にショベルのフロントまたは車体を自重方向に動かして接地させ、残圧を抜く必要がある。あるいは、フロントが空中にある状態で緊急停止したような場合でも、フロントを降ろして接地させ、安全性を確保しつつ早期にメンテナンス作業を開始する必要がある。
【0007】
しかしながら特許文献1に記載の油圧回路では、油圧シリンダを自重方向に変位させようとしてもメイクアップ用チェック弁がチャージラインにしか接続されていないので、シリンダに作動油を自吸させることができない。すなわちタンクから作動油を吸入しようとしてもチャージポンプがあるため吸入させることができない。この結果、シリンダが変位するのに時間を要し、残圧がなかなか抜けずにメンテナンス作業の開始が遅れてしまうという課題があった。また十分に自吸できない状態でシリンダが変位するためキャビテーション気泡が発生し、この気泡によりシステムの剛性が低下して動作が不安定になったり、気泡が崩壊する際にエロージョンを発生させ、油圧機器の信頼性を低下させる可能性があったりという課題もあった。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の油圧回路では、シリンダボトム側の残圧は流量制御弁によりタンクに抜くことができるが、シリンダロッド側の残圧は回路上抜くことができないという課題もあった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧アクチュエータを閉回路用油圧ポンプで駆動する油圧閉回路を用い、エンジン停止後に油圧閉回路内の残圧を速やかに抜き、早期にメンテナンス作業を開始できるようにすることで、高い稼働率が得られる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、作動油を貯留するタンクと、原動機と、両方向吐出が可能な2つの入出力ポートを有し、前記原動機によって駆動される閉回路用油圧ポンプと、油圧シリンダと、前記閉回路用油圧ポンプの一方の入出力ポートと前記油圧シリンダのボトム側油室とを接続するボトム側油路と、前記閉回路用油圧ポンプの他方の入出力ポートと前記油圧シリンダのロッド側油室とを接続するロッド側油路と、前記油圧シリンダの動作方向および動作速度を指示するための操作レバーと、前記操作レバーからの入力に応じて前記閉回路用油圧ポンプから吐出される作動油の吐出方向および吐出流量を制御するコントローラとを備えた建設機械において、吐出ポートと前記タンクに接続された吸込ポートとを有する開回路用ポンプと、前記吐出ポートに接続された吐出油路と、前記ボトム側油路から分岐して前記吐出油路に接続するボトム側分岐油路と、前記ロッド側油路から分岐して前記吐出油路に接続するロッド側分岐油路と、前記ボトム側分岐油路の導通と遮断を切換可能なボトム側切換弁と、前記ロッド側分岐油路の導通と遮断を切換可能なロッド側切換弁と、前記吐出油路と前記タンクとを接続する排出油路と、前記排出油路に設けられたブリードオフ弁と、前記ボトム側油路を前記タンクに接続するボトム側メイクアップ油路と、前記ボトム側メイクアップ油路に設けられ、前記タンクから前記ボトム側油室への作動油の吸入を可能とするボトム側メイクアップ用チェック弁と、前記ロッド側油路を前記タンクに接続するロッド側メイクアップ油路と、前記ロッド側メイクアップ油路に設けられ、前記タンクから前記ロッド側油室への作動油の吸入を可能とするロッド側メイクアップ用チェック弁とを備えたものとする。
【0011】
以上のように構成した本発明によれば、エンジン停止後に油圧シリンダのボトム側油室が高圧の場合は、操作レバーを介して油圧シリンダの引込動作を指示することにより、ロッド側メイクアップ用チェック弁を介してタンクからの作動油をロッド側油室に吸入させつつ、ボトム側油室の高圧の作動油をボトム側制御弁を介してタンクに排出することができる。
【0012】
一方、エンジン停止後に油圧シリンダのロッド側油室が高圧の場合は、操作レバーを介して油圧シリンダの伸長動作を指示することにより、ボトム側メイクアップ用チェック弁を介してタンクからの作動油をボトム側油室に吸入させつつ、ロッド側油室の高圧の作動油をロッド側制御弁を介してタンクに排出することができる。
【0013】
これにより、エンジン停止後に油圧閉回路内の残圧を速やかに抜くことができるため、早期にメンテナンス作業を開始して建設機械のダウンタイムを短縮することにより、建設機械の稼働率を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油圧アクチュエータを閉回路用油圧ポンプで駆動する油圧閉回路を用いた建設機械において、エンジン停止後に油圧閉回路内の残圧を速やかに抜くことができるため、早期にメンテナンス作業を開始して建設機械のダウンタイムを短縮することにより、建設機械の稼働率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの油圧回路図である。
図3】コントローラの制御選択部の処理を示すフローチャートである。
図4】コントローラの制御選択部の処理を示すフローチャートの変形例である。
図5】コントローラの通常制御部の処理を示すフローチャートである。
図6】コントローラの圧抜き制御部の処理を示すフローチャートである。
図7】アームシリンダを伸長方向に変位させて圧抜きを行う場合の油圧回路の動作を示す図である。
図8】アームシリンダを引込方向に変位させて圧抜きを行う場合の油圧回路の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【0018】
図1において、油圧ショベル100は、左右両側にクローラ式の走行装置8を備えた下部走行体101と、下部走行体101上に旋回装置7を介して旋回可能に取り付けられた上部旋回体102とを備えている。旋回装置7は、旋回用油圧モータ(図示せず)によって駆動される。
【0019】
上部旋回体102の前側には、掘削作業等を行うためのフロント装置103が取り付けられている。フロント装置103は、上部旋回体102の前側に上下方向に回動可能に連結されたブーム2と、ブーム2の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたアーム4と、アーム4の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたバケット6とを備えている。ブーム2、アーム4、およびバケット6は、片ロッド式油圧シリンダであるブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5によってそれぞれ駆動される。
【0020】
上部旋回体102上には、オペレータが搭乗するキャブ104が設けられている。キャブ104内には、アーム4と上部旋回体102の動作を指示するための左操作レバー56a(図2に示す)、ブーム2とバケット6の動作を指示するための右操作レバー56b(図2に示す)等が配設されている。
【0021】
図2は、油圧ショベル100の油圧回路図である。なお、図2では、アームシリンダ3の駆動に関わる部分のみを図示し、その他のアクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
【0022】
図2において、動力源であるエンジン9は、動力を配分する動力伝達装置10に接続されている。動力伝達装置10には、チャージポンプ11、可変容量式閉回路ポンプ12、および可変容量式開回路ポンプ13が接続されている。
【0023】
チャージポンプ11の吸込ポートはタンク25に接続され、吐出ポートはチャージライン90に接続されている。チャージライン90は、リリーフ弁20を介してタンク25に接続されている。リリーフ弁20は、チャージライン90の圧力を一定に保つ。
【0024】
閉回路ポンプ12は、切換弁43bを介してアームシリンダ3に接続されることにより、油圧閉回路を構成する。閉回路ポンプ12の一方の入出力ポートはボトム側油路91aを介してアームシリンダ3のボトム側油室3aに接続され、他方の入出力ポートはロッド側油路91bを介してアームシリンダ3のロッド側油室3bに接続されている。
【0025】
開回路ポンプ13の吸込ポートはタンク25に接続され、吐出ポートは吐出油路93に接続されている。吐出油路93は排出油路94を介してタンク25に接続されており、排出油路94にはブリードオフ弁64が設けられている。ブリードオフ弁64は、コントローラ57からの信号により開口面積を変化させ、信号が無い場合は全開状態となる。
【0026】
吐出油路93は、ボトム側油路91aから分岐したボトム側分岐油路92aに切換弁44bを介して接続され、ロッド側油路91bから分岐したロッド側分岐油路92bに切換弁44eを介して接続されている。切換弁44b,44eは、コントローラ57からの信号により流路の導通と遮断を切換え、信号が無い場合は遮断状態となる。
【0027】
ボトム側油路91aおよびロッド側油路91bは、メイクアップ用チェック弁38a,38bおよびフラッシング弁35を介してチャージライン90に接続されている。メイクアップ用チェック弁38a,38bは、閉回路内の圧力が下がるとチャージポンプ11からの作動油を回路内に吸込み、回路のキャビテーションを防止する。フラッシング弁35は、閉回路の低圧側とチャージライン90とを接続する低圧選択弁であり、閉回路内の作動油が余剰な場合はチャージライン90に排出し、作動油が不足する場合はチャージライン90から吸込むことで閉回路内の油量の収支を保つ。
【0028】
さらに、ボトム側油路91aはボトム側メイクアップ油路95aを介してタンク25に接続され、ロッド側油路91bはロッド側メイクアップ油路95bを介してタンク25に接続されている。ボトム側メイクアップ油路95aにはボトム側メイクアップ用チェック弁80aが設けられ、ロッド側メイクアップ油路95bにはロッド側メイクアップ用チェック弁80bが設けられている。ボトム側メイクアップ用チェック弁80aは、ボトム側油室3aの圧力がタンク圧より低下した際に開弁し、タンク25からの作動油をボトム側油室3aに吸入させる。ロッド側メイクアップ用チェック弁80bは、ロッド側油室3bの圧力がタンク圧より低下した際に開弁し、タンク25からの作動油をロッド側油室3bに吸入させる。
【0029】
コントローラ57は、操作レバー56a,56bからの入力とエンジン回転数や各部の圧力などのセンサ情報に応じてポンプ12,13と切換弁43b,44b,44eに指令を与える。コントローラ57は、エンジン動作中に掘削作業などの通常動作を行うための制御を行う通常制御部57bと、エンジン停止後に油圧回路内の残圧を抜くための制御を行う圧抜き制御部57cと、これらの制御部を選択する制御選択部57aとを備えている。
【0030】
図3は、コントローラ57の制御選択部57aの処理を示すフローチャートである。
【0031】
制御選択部57aは、まず、レバー入力を取得する(ステップS101)。
【0032】
ステップS101に続き、エンジン動作中か否かを判定する(ステップS102)。エンジン9が動作中か否かの判定は、例えばエンジン9に設けられた回転数センサ58(図2に示す)で検出したエンジン回転数に基づいて行う。
【0033】
ステップS102でエンジン動作中(Yes)と判定された場合は、通常制御モードへ移行する(ステップS103)。通常制御モードでは、通常制御部57bが制御を行う。
【0034】
ステップS102でエンジン動作中でない(No)と判定された場合は、圧抜き制御モードへ移行する(ステップS104)。圧抜き制御モードでは、圧抜き制御部57cが制御を行う。
【0035】
なお、本実施の形態では、エンジン動作中でないと判定された場合に圧抜き制御モードへ移行する構成としたが、図4に示すように、圧抜き制御の対象機器が正常か否かを判定する処理(ステップS105)を追加し、正常(Yes)と判定された場合に圧抜き制御モードへ移行し(ステップS104)、正常でない(No)と判定された場合に故障診断(ステップS106)を行う構成としても良い。これにより、圧抜き制御による意図しない動作を防止することができる。
【0036】
図5は、コントローラ57の通常制御部57bの処理を示すフローチャートである。
【0037】
通常制御部57bは、まず、制御選択部57aからレバー入力を取得する(ステップS201)。
【0038】
ステップS201に続き、レバー入力に基づいてレバー操作方向を判定する(ステップS202)。
【0039】
ステップS202でレバー操作方向がアーム伸長と判定された場合は、レバー操作量が不感帯を超えたときに、切換弁43b,44bへの指令を開指令に設定し、閉回路ポンプ12および開回路ポンプ13の各容量指令値をレバー操作量に応じて増加させる(ステップS203)。
【0040】
ステップS202でレバー操作方向がアーム引込と判定された場合は、レバー操作量が不感帯を超えたときに、切換弁43b,44bへの指令を開指令に設定し、閉回路ポンプ12および開回路ポンプ13の各容量指令値をレバー操作量に応じて増加させる(ステップS204)。
【0041】
ステップS203またはステップS204に続き、ポンプ12,13の各圧力に基づいて、ポンプ12,13の各動力が所定値以下になるように、ポンプ12,13の容量指令値を制限する(ステップS205)。
【0042】
ステップS205に続き、各切換弁および各ポンプに指令を出力する(ステップS206)。
【0043】
図6は、コントローラ57の圧抜き制御部57cの処理を示すフローチャートである。
【0044】
圧抜き制御部57cは、まず、制御選択部57aからレバー入力を取得する(ステップS301)。
【0045】
ステップS301に続き、レバー入力に基づいてレバー操作方向を判定する(ステップS302)。
【0046】
ステップS302でレバー操作方向がアーム伸長と判定された場合は、レバー操作量が不感帯を超えたときに、切換弁43b,44への指令を開指令に設定し、ブリードオフ弁64の開口指令値をレバー操作量に応じて増加させる(ステップS303)。
【0047】
ステップS302でレバー操作方向がアーム引込と判定された場合は、レバー操作量が不感帯を超えたときに、切換弁43b,44bへの指令を開指令に設定し、ブリードオフ弁64の開口指令値をレバー操作量に応じて増加させる(ステップS304)。
【0048】
ステップS303またはステップS304に続き、各切換弁に指令を出力する(ステップS305)。
【0049】
以上の構成において、まずは通常制御モードの動作例を説明する。
【0050】
図2において、アームシリンダ3の伸長動作を行う場合は、切換弁43b,44bを導通状態にし、閉回路ポンプ12と開回路ポンプ13から作動油を吐出する。これによりアームシリンダ3のボトム側油室3aにはポンプ2台分の流量が流入し、アームシリンダ3が伸長する。アームシリンダ3のロッド側油室3bからの排出流量は閉回路ポンプ12に吸入されるが、流量が余剰になった場合はフラッシング弁35からチャージ圧ラインに排出され、流量が不足した場合は逆にチャージライン90からフラッシング弁35またはメイクアップ用チェック弁38a,38bを介して閉回路内に作動油が吸入される。アームシリンダ3の引込動作を行う場合は、切換弁43b,44bを導通状態にし、閉回路ポンプ12を先ほどとは逆方向に吐出させ、さらにブリードオフ弁64を開口する。これによりアームシリンダ3のボトム側油室3aから作動油が排出され、アームシリンダ3は引込動作する。
【0051】
次に圧抜き制御モードの動作例を説明する。
【0052】
まず、図1に実線で示すようにショベルのフロント装置103を伸ばしつつバケット6が少し浮いた状態でエンジン9を停止させたために油圧回路内に残圧が残ってしまっている場合について説明する。エンジン停止後、オペレータは操作レバー56a,56bを動かし、ブーム2、アーム4、バケット6のいずれかを自重方向に変位させ、バケット6を接地させることで残圧を抜くようにしている。なお、エンジン9は停止状態であるが、キーONの状態で電源は入っており、操作レバー56a,56b、コントローラ57、電磁式の切換弁43b,44b,44eは動作可能である。また、パイロット圧力により主弁が動作するような大型の油圧バルブであっても、パイロット圧力を保持するアキュムレータ(図示せず)が設けられているので、圧抜きのような短時間の動作であればバルブを駆動できる。
【0053】
以上の構成において、ここでは図7を用い、アーム4を動かして圧抜きを行う場合について説明する。アームシリンダ3にはアーム4とバケット6の自重によりシリンダ伸長方向に荷重が作用しているためロッド側が高圧となっている。このためロッド側の高圧を抜くことでアームシリンダ3を伸長させバケット6を接地させる必要がある。
【0054】
図7において、エンジン9が停止した状態でオペレータが操作レバー56aにてアームシリンダ3に伸長指令を与えると、コントローラ57は圧抜き制御モードにて動作し、切換弁44eが開弁するとともに、レバー操作量に応じてブリードオフ弁64が開口する。これによりアームシリンダ3のロッド側油室3bの高圧油が太線の実線で示す経路を通ってタンク25へ排出され、アームシリンダ3が伸長方向に変位する。アームシリンダ3のボトム側油室3aにはボトム側メイクアップ用チェック弁80aを経由してタンク25からの作動油が吸入される。これによりキャビテーションを発生させることなく速やかにアームシリンダ3を変位させることができる。
【0055】
次に、図8を用い、図1に点線で示すようにショベルのフロント装置103を畳みつつバケット6が少し浮いた状態でエンジン9を停止させたために油圧回路内に残圧が残ってしまっている場合について説明する。アームシリンダ3にはアーム4とバケット6の自重によりシリンダ引込方向に荷重が作用しているためボトム側が高圧となっている。このためボトム側の高圧を抜くことでアームシリンダ3を引込めてバケット6を接地させる必要がある。
【0056】
図8において、エンジン9が停止した状態でオペレータが操作レバー56aにてアームシリンダ3に引込指令を与えると、コントローラ57は圧抜き制御モードにて動作し、切換弁44bが開弁するとともに、レバー操作量に応じてブリードオフ弁64が開口する。これによりアームシリンダ3のボトム側油室3aの高圧油が太線の実線で示す経路を通ってタンク25へ排出され、アームシリンダ3が引込方向に変位する。アームシリンダ3のロッド側油室3bにはロッド側メイクアップ用チェック弁80bを経由してタンク25からの作動油が吸入される。
【0057】
このように、圧抜き制御モードでは油圧ポンプ12,13が動作していなくても、切換弁43b,44b,44eの開閉を行うだけでアームシリンダ3を伸長方向、引込方向のいずれの自重方向にも変位させて圧抜きを行うことができる。
【0058】
なお、上記ではアーム4を動かす場合のみ説明したが、ブーム2、バケット6についても各シリンダのロッド側とボトム側にメイクアップ用チェック弁を接続し、圧抜き制御モードにて動作させることで同様に自重方向に変位させて圧抜きを行うことが可能である。
【0059】
本実施の形態では、作動油を貯留するタンク25と、原動機9と、両方向吐出が可能な2つの入出力ポートを有し、原動機9によって駆動される閉回路用油圧ポンプ12と、油圧シリンダ3と、閉回路用油圧ポンプ12の一方の入出力ポートと油圧シリンダ3のボトム側油室3aとを接続するボトム側油路91aと、閉回路用油圧ポンプ12の他方の入出力ポートと油圧シリンダ3のロッド側油室3bとを接続するロッド側油路90bと、油圧シリンダ3の動作方向および動作速度を指示するための操作レバー56aと、操作レバー56aからの入力に応じて閉回路用油圧ポンプ12から吐出される作動油の吐出方向および吐出流量を制御するコントローラ57とを備えた建設機械100において、ボトム側油路91aをタンク25に接続するボトム側排出油路92a,93,94と、ボトム側排出油路92a,93,94に設けられ、ボトム側油室3aからタンク25へ排出される作動油の流量を調整可能なボトム側制御弁としてのブリードオフ弁64と、ロッド側油路91bをタンク25に接続するロッド側排出油路92b,93,94と、ロッド側排出油路92b,93,94に設けられ、ロッド側油室3bからタンク25へ排出される作動油の流量を調整可能なロッド側制御弁としてのブリードオフ弁64と、ボトム側油路91aをタンク25に接続するボトム側メイクアップ油路95aと、ボトム側メイクアップ油路95aに設けられ、タンク25からボトム側油室3aへの作動油の吸入を可能とするボトム側メイクアップ用チェック弁80aと、ロッド側油路90bをタンク25に接続するロッド側メイクアップ油路95bと、ロッド側メイクアップ油路95bに設けられ、タンク25からロッド側油室3bへの作動油の吸入を可能とするロッド側メイクアップ用チェック弁80bとを備えている。
【0060】
また、本実施の形態に係る建設機械100は、原動機9の回転数を検出する回転数センサ58を備え、コントローラ57は、回転数センサ58で検出した原動機9の回転数に基づいて原動機9が動作中か否かを判定し、原動機9が動作中でないと判定され、かつ操作レバー56aを介して油圧シリンダ3の伸長動作が指示された場合に、操作レバー56aの操作量に応じてロッド側制御弁としてのブリードオフ弁64を開口させ、原動機9が動作中でないと判定され、かつ操作レバー56aを介して油圧シリンダ3の引込動作が指示された場合に、操作レバー56aの操作量に応じてボトム側制御弁としてのブリードオフ弁64を開口させる。なお、本実施の形態では、ボトム側制御弁とロッド側制御弁とを単一のブリードオフ弁64で構成したが、ボトム側制御弁とロッド側制御弁とを独立して設けても良い。
【0061】
以上のように構成した本実施の形態に係る建設機械100によれば、エンジン停止後に油圧シリンダ3のボトム側油室3aが高圧の場合は、操作レバー56aを介して油圧シリンダ3の引込動作を指示することにより、ロッド側メイクアップ用チェック弁80bを介してタンク25からの作動油をロッド側油室3bに吸入させつつ、ボトム側油室3aの高圧の作動油をボトム側制御弁としてのブリードオフ弁64を介してタンク25に排出することができる。
【0062】
一方、エンジン停止後に油圧シリンダ3のロッド側油室3bが高圧の場合は、操作レバー56aを介して油圧シリンダ3の引込動作を指示することにより、ボトム側メイクアップ用チェック弁80aを介してタンク25からの作動油をボトム側油室3aに吸入させつつ、ロッド側油室3bの高圧の作動油をロッド側制御弁としてのブリードオフ弁64を介してタンク25に排出することができる。
【0063】
これにより、エンジン停止後に油圧閉回路内の残圧を速やかに抜くことができるため、早期にメンテナンス作業を開始して建設機械100のダウンタイムを短縮することにより、建設機械100の稼働率を向上することができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1…ブームシリンダ(油圧シリンダ)、2…ブーム、3…アームシリンダ(油圧シリンダ)、3a…ボトム側油室、3b…ロッド側油室、4…アーム、5…バケットシリンダ(油圧シリンダ)、6…バケット、7…旋回装置、8…走行装置、9…エンジン(原動機)、10…動力伝達装置、11…チャージポンプ、12…閉回路ポンプ(閉回路用油圧ポンプ)、13…開回路ポンプ、20…リリーフ弁、25…タンク、35…フラッシング弁、38a,38b…メイクアップ用チェック弁、43b,44b,44e…切換弁、56a…左操作レバー(操作レバー)、56b…右操作レバー(操作レバー)、57…コントローラ、57a…制御選択部、57b…通常制御部、57c…圧抜き制御部、58…回転数センサ、64…ブリードオフ弁(ボトム側制御弁、ロッド側制御弁)、80a…ボトム側メイクアップ用チェック弁、80b…ロッド側メイクアップ用チェック弁、90…チャージライン、91a…ボトム側油路、91b…ロッド側油路、92a…ボトム側分岐油路(ボトム側排出油路)、92b…ロッド側分岐油路(ロッド側排出油路)、93…吐出油路(ボトム側排出油路、ロッド側排出油路)、94…排出油路(ボトム側排出油路、ロッド側排出油路)、95a…ボトム側メイクアップ油路、95b…ロッド側メイクアップ油路、100…油圧ショベル(建設機械)、101…下部走行体、102…上部旋回体、103…フロント装置、104…キャブ。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8