(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】試料ホルダ、膜間距離調整機構、および荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20230116BHJP
【FI】
H01J37/20 D
(21)【出願番号】P 2021551049
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019040075
(87)【国際公開番号】W WO2021070336
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】波田野 道夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 光宏
(72)【発明者】
【氏名】小椋 俊彦
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-535795(JP,A)
【文献】Toshihiko OGURA,Non-destructive observation of intact bacteria and viruses in water by the highly sensitive frequency transmission electric-field method based on SEM,Biochemical and Biophysical Research Communications,2014年,volume 450, issue 4,pages 1684-1689
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状またはゲル状の試料を保持する試料ホルダであって、
開口部を有し、金属で構成された、もしくは少なくとも電子線照射面及び前記開口部の側面が金属膜で覆われた蓋部材と、導電性薄膜及び第1の絶縁性薄膜の積層膜が形成された第1のウィンドウを備え、前記導電性薄膜が前記蓋部材の前記開口部から露出するように前記蓋部材の前記電子線照射面と対向する面に保持された第1のチップとを有する第1の部材と、
第1のシール材と、第2のシール材と、前記第1のシール材が配置される第1の底部シール面及び前記第2のシール材が配置される第2の底部シール面が形成された母材と、前記母材に配置された電極と、第2の絶縁性薄膜が形成された第2のウィンドウを備え、前記第2のウィンドウが前記電極と対向するように前記第2のシール材を介して前記第2の底部シール面上に保持される第2のチップとを有する第2の部材とを有し、
前記第1のチップの前記導電性薄膜と前記蓋部材の金属とは電気的に導通されており、
前記第1の部材と前記第2の部材とを組み合わせたときの前記第1のチップの位置に応じて前記母材に設けられる、あるいは、前記第1の部材と前記第2の部材とを組み合わせたときの前記第2のチップの位置に応じて前記蓋部材に設けられる対向チップ用ガイドを有し、
前記第1の部材と前記第2の部材とが組み合わせられ、前記第1のシール材が前記第1の底部シール面及び前記蓋部材の上部シール面との間でつぶされることにより、前記第1のシール材より内部の領域は、前記第1のシール材の外部の領域から気密に保持される試料ホルダ。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の絶縁性薄膜と前記第2の絶縁性薄膜とが面で接触するように前記第1の部材と前記第2の部材とを配置したとき、前記第1の絶縁性薄膜と前記第2の絶縁性薄膜との接触面は、前記対向チップ用ガイドが設けられた前記母材または前記蓋部材から前記対向チップ用ガイドの先端までの間に位置し、かつ前記母材の前記第1の底部シール面と前記蓋部材の前記上部シール面との間の距離は、前記第1のシール材の厚さよりも大きい試料ホルダ。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1のチップの前記第1のウィンドウの中心と前記第2のチップの前記第2のウィンドウの中心とを合わせ、かつ
前記蓋部材の上部シール面と前記第1のシール材とが接するように前記第1の部材と前記第2の部材とを配置したときに、前記第1の絶縁性薄膜と前記第2の絶縁性薄膜とが接触しない高さを備えた試料ホルダ。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1のチップは、前記蓋部材に設けられた第1チップ用ガイドに保持されている試料ホルダ。
【請求項5】
請求項1において、
前記母材は、前記第2の底部シール面を底面とする凹部を有し、前記対向チップ用ガイドは前記凹部の側壁である試料ホルダ。
【請求項6】
請求項1において、
前記母材は、前記第2の底部シール面をその底面の一部とする凹部を有し、前記対向チップ用ガイドは、前記凹部において、前記第1の部材と前記第2の部材とを組み合わせたときの前記第1のチップの辺に対向する位置に設けられる板状のガイドである試料ホルダ。
【請求項7】
請求項1において、
フックと、
前記フックとかみあわせるためのそりとを有し、
前記第1の部材に、前記フック及び前記そりのいずれか一方を設け、前記第2の部材に前記フック及び前記そりのいずれか他方を設ける試料ホルダ。
【請求項8】
液状またはゲル状の試料を保持する試料ホルダであって、
開口部を有し、金属で構成された、もしくは少なくとも電子線照射面及び前記開口部の側面が金属膜で覆われた蓋部材と、導電性薄膜及び第1の絶縁性薄膜の積層膜が形成された第1のウィンドウを備え、前記導電性薄膜が前記蓋部材の前記開口部から露出するように前記蓋部材の前記電子線照射面と対向する面に保持された第1のチップとを有する第1の部材と、
第1のシール材と、第2のシール材と、前記第1のシール材が配置される第1の底部シール面及び前記第2のシール材が配置される第2の底部シール面が形成された母材と、前記母材に配置された電極と、第2の絶縁性薄膜が形成された第2のウィンドウを備え、前記第2のウィンドウが前記電極と対向するように前記第2のシール材を介して前記第2の底部シール面上に保持される第2のチップとを有する第2の部材とを有し、
前記第1のチップの前記導電性薄膜と前記蓋部材の金属とは電気的に導通されており、
前記母材には第1部材用ガイドが設けられ、前記蓋部材の前記電子線照射面と対向する面には第2部材用ガイドが設けられ、前記第1部材用ガイド及び前記第2部材用ガイドは、前記第1部材用ガイドと前記第2部材用ガイドとが接したときに前記第1の絶縁性薄膜と前記第2の絶縁性薄膜とが接しない高さを有しており、
前記第1の部材と前記第2の部材とが組み合わせられ、前記第1のシール材が前記第1の底部シール面及び前記蓋部材の上部シール面との間でつぶされることにより、前記第1のシール材より内部の領域が、前記第1のシール材の外部の領域から気密に保持される試料ホルダ。
【請求項9】
請求項8において、
前記母材には、前記第2のチップの位置に応じた第2チップ用ガイドが設けられており、
前記第2チップ用ガイドの先端は、前記第2のチップの前記第2の絶縁性薄膜よりも下方に位置する試料ホルダ。
【請求項10】
請求項9において、
前記母材は、前記第2の底部シール面をその底面の一部とする凹部を有し、前記第2チップ用ガイドは、前記凹部において、前記第2のチップの辺に対向する位置に設けられる板状のガイドである試料ホルダ。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1部材用ガイドは前記凹部の側壁であり、前記第2部材用ガイドは、前記第1の部材と前記第2の部材とを組み合わせたときの前記凹部の側壁に応じた位置に設けられる板状のガイドである試料ホルダ。
【請求項12】
請求項8において、
前記第1のチップは、前記蓋部材に設けられた第1チップ用ガイドに保持されている試料ホルダ。
【請求項13】
請求項8において、
前記第1のチップにおける前記第1の絶縁性薄膜が形成された面の面積は、前記第2のチップにおける前記第2の絶縁性薄膜が形成された面の面積とは異なる試料ホルダ。
【請求項14】
請求項8において、
フックと、
前記フックとかみあわせるためのそりとを有し、
前記第1の部材に、前記フック及び前記そりのいずれか一方を設け、前記第2の部材に前記フック及び前記そりのいずれか他方を設ける試料ホルダ。
【請求項15】
液状またはゲル状の試料を保持する試料ホルダであって、
開口部を有し、金属で構成された、もしくは少なくとも電子線照射面及び前記開口部の側面が金属膜で覆われた蓋部材と、導電性薄膜及び第1の絶縁性薄膜の積層膜が形成された第1のウィンドウを備え、前記導電性薄膜が前記蓋部材の前記開口部から露出するように前記蓋部材の前記電子線照射面と対向する面に保持された第1のチップとを有する第1の部材と、
第1のシール材と、第2のシール材と、前記第1のシール材が配置される第1の底部シール面及び前記第2のシール材が配置される第2の底部シール面が形成された母材と、前記母材に配置された電極と、第2の絶縁性薄膜が形成された第2のウィンドウを備え、前記第2のウィンドウが前記電極と対向するように前記第2のシール材を介して前記第2の底部シール面上に保持される第2のチップとを有する第2の部材とを有し、
前記第1のチップの前記導電性薄膜と前記蓋部材の金属とは電気的に導通されており、
前記蓋部材には、前記第1の部材と前記第2の部材とを組み合わせたときの前記第2のチップの位置に応じた対向チップ用ガイドが設けられており、
前記第1の部材と前記第2の部材とが組み合わせられ、前記第1のシール材が前記第1の底部シール面及び前記蓋部材の上部シール面との間でつぶされることにより、前記第1のシール材より内部の領域は、前記第1のシール材の外部の領域から気密に保持され、
前記母材は外周部に第1のネジ構造を備えた円筒形状であり、前記蓋部材は前記電子線照射面と垂直方向に延長され、その内壁に前記第1のネジ構造とかみ合う第2のネジ構造を備えた周縁部を有しており、
前記第1のネジ構造と前記第2のネジ構造とをかみ合わせることなく、前記第1の部材を前記第2の部材上に載せた状態において、前記対向チップ用ガイドの先端は前記第2のチップの前記第2の絶縁性薄膜よりも下方に位置する試料ホルダ。
【請求項16】
請求項15において、
前記第1のネジ構造と前記第2のネジ構造をかみ合わせて前記第1の部材と前記第2の部材とを組み合わせるときに、前記蓋部材に対する前記母材の回転量を制限するロック機構を有する試料ホルダ。
【請求項17】
請求項16において、
前記母材は、前記第2の底部シール面をその底面の一部とする凹部を有し、前記凹部の側壁と前記対向チップ用ガイドとが干渉することにより、前記蓋部材に対する前記母材の回転量が制限される試料ホルダ。
【請求項18】
液状またはゲル状の試料を保持する試料ホルダであって、
開口部を有し、金属で構成された、もしくは少なくとも電子線照射面及び前記開口部の側面が金属膜で覆われた蓋部材と、導電性薄膜及び第1の絶縁性薄膜の積層膜が形成された第1のウィンドウを備え、前記導電性薄膜が前記蓋部材の前記開口部から露出するように前記蓋部材の前記電子線照射面と対向する面に保持された第1のチップとを有する第1の部材と、
第1のシール材と、第2のシール材と、前記第1のシール材が配置される第1の底部シール面及び前記第2のシール材が配置される第2の底部シール面が形成された母材と、前記母材に配置された電極と、第2の絶縁性薄膜が形成された第2のウィンドウを備え、前記第2のウィンドウが前記電極と対向するように前記第2のシール材を介して前記第2の底部シール面上に保持される第2のチップとを有する第2の部材とを有し、
前記第1のチップの前記導電性薄膜と前記蓋部材の金属とは電気的に導通されており、
前記母材には、前記第2のチップを配置するための第2チップ用ガイド及び第1部材用ガイドが設けられ、前記蓋部材の前記電子線照射面と対向する面には第2部材用ガイドが設けられ、前記第1部材用ガイド及び前記第2部材用ガイドは、前記第1部材用ガイドと前記第2部材用ガイドが接したときに前記第1の絶縁性薄膜と前記第2の絶縁性薄膜とが接しない高さを有しており、
前記第1の部材と前記第2の部材とが組み合わせられ、前記第1のシール材が前記第1の底部シール面及び前記蓋部材の上部シール面との間でつぶされることにより、前記第1のシール材より内部の領域は、前記第1のシール材の外部の領域から気密に保持され、
前記第1の部材と前記第2の部材とを組み合わせた状態において、前記第2チップ用ガイド、前記第1部材用ガイド及び前記第2部材用ガイドは同心円状をなす試料ホルダ。
【請求項19】
請求項18において、
前記母材は外周部に第1のネジ構造を備えた円筒形状であり、前記蓋部材は前記電子線照射面と垂直方向に延長され、その内壁に前記第1のネジ構造とかみ合う第2のネジ構造を備えた周縁部を有しており、
前記第1のネジ構造と前記第2のネジ構造とをかみ合わせることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とが組み合わせられる試料ホルダ。
【請求項20】
請求項18において、
電子線を通過させる開口を備えたネジ蓋を備え、
前記母材は外周部に第1のネジ構造を備えた円筒形状であり、前記ネジ蓋は前記開口が設けられた面と垂直方向に延長され、その内壁に前記第1のネジ構造とかみ合う第2のネジ構造を備えた周縁部を有しており、
前記第1の部材を前記ネジ蓋と前記第2の部材との間に配置し、前記第1のネジ構造と前記第2のネジ構造とをかみ合わせることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とが組み合わせられる試料ホルダ。
【請求項21】
請求項20において、
前記ネジ蓋と前記第1の部材との間にディスク状のワッシャが配置された試料ホルダ。
【請求項22】
請求項1~14記載のいずれか1項において、
前記第1のシール材はOリングであり、前記第2のシール材は、接着材シートによりSiゴムシートを挟んだ両面テープである試料ホルダ。
【請求項23】
請求項1~14記載のいずれか1項において、
前記第1のシール材と前記第2のシール材とは一体で構成されている試料ホルダ。
【請求項24】
請求項1~21記載のいずれか1項において、
前記第1のシール材及び前記第2のシール材はOリングである試料ホルダ。
【請求項25】
請求項1~21記載のいずれか1項において、
前記第1の絶縁性薄膜と前記第2の絶縁性薄膜との間に挟み込まれた前記試料が載置される第1の空間を有し、
前記母材は前記第1の空間につながるガス道と、前記ガス道と外雰囲気との境界に設けられる減圧膜とを有する試料ホルダ。
【請求項26】
請求項1~21記載のいずれか1項において、
前記第2のチップ、前記第2のシール材及び前記第2の底部シール面に囲まれた第2の空間を有し、
前記母材は前記第2の空間につながるガス道と、前記ガス道と外雰囲気との境界に設けられる減圧膜を有する試料ホルダ。
【請求項27】
請求項26において、
前記減圧膜の膨らみを変化させることで、前記第2の空間の圧力が調整される試料ホルダ。
【請求項28】
請求項1~21記載のいずれか1項において、
前記第1の絶縁性薄膜と前記第2の絶縁性薄膜との間に挟み込まれた前記試料が載置される第1の空間と、
前記第1のシール材として機能する第1のシール部と、前記第2のシール材として機能する第2のシール部と、前記第1のシール部と前記第2のシール部とをつなぐ減圧膜部とを備えた減圧膜つきシール材とを有し、
前記母材は、前記第1の空間と前記減圧膜部によって隔てられた第3の空間と、前記第3の空間と外雰囲気とを接続するガス道とが設けられた試料ホルダ。
【請求項29】
請求項1~21記載のいずれか1項において、
前記第1の絶縁性薄膜と前記第2の絶縁性薄膜との間に挟み込まれた前記試料が載置される第1の空間と、
前記第2のシール材として機能する減圧膜機能付シート状シール材とを有し、
前記母材は、前記第1の空間と前記減圧膜機能付シート状シール材によって隔てられた第3の空間と、前記第3の空間と外雰囲気とを接続するガス道とが設けられた試料ホルダ。
【請求項30】
請求項29において、
前記減圧膜機能付シート状シール材は、接着材シートによりSiゴムシートを挟んだ両面テープである試料ホルダ。
【請求項31】
請求項1~21記載のいずれか1項において、
前記第2の部材の少なくとも一部が荷電粒子線装置のステージに組み込まれている試料ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線を照射して発生する検出信号を利用して、試料の形状または材質等を観察する荷電粒子線装置用の試料ホルダに関する。より詳細には、液状またはゲル状の試料を非侵襲の状態で観察可能とする荷電粒子線装置用の試料ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線装置の一つである走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)は、金属やセラミックスなどの材料試料だけでなく、生物試料を高分解能で観察するツールとしても広く用いられている。
【0003】
一般的に、これらの装置では筐体を真空排気し、試料を真空雰囲気中に配置して試料を撮像する。電子線は、大気などのガス分子や液体分子によって散乱されるため、電子線の通過経路は真空雰囲気に保つことが好ましい。一方、真空雰囲気中に置かれると、生物化学試料や液体試料はダメージを受け、または、状態が変化してしまうため、非侵襲の状態での観察は困難であるとされてきた。しかしながら、このような試料に対する非侵襲観察ニーズは大きく、近年、観察対象試料を、大気圧環境下や液中環境化で観察可能な電子顕微鏡が開発されている。
【0004】
特許文献1、2開示の観察システムでは、一方主面が観察試料の保持面である第1の絶縁性薄膜の他方主面に、積層された導電性薄膜を備え、導電性薄膜をグランド電位もしくは所定のバイアス電圧を印加した状態で導電性薄膜側から電子線を照射する。照射された電子線に起因して、第1の絶縁性薄膜の一方主面には局所的な電位変化が生じる。この電位変化に基づく信号を、観察試料を挟んで反対側に配置された第2の絶縁性薄膜の下方に設けた検出電極により検出する。
【0005】
検出電極により検出される第1の絶縁性薄膜に生じた電位変化に基づく信号は、観察試料を伝搬する。このときの信号の伝搬力には観察試料に応じた違いがあり、例えば、水は比誘電率が約80と高く、信号を良く伝搬させる一方、生物試料は比誘電率が2~3程度と低く、信号の伝搬力は低い。このため、観察試料を伝搬した電位変化信号の強度差に基づき、水溶液中の生物試料を染色処理や固定化処理を施すことなく、高いコントラストで観察することが可能となる。この方法は、高エネルギーの電子線を直接観察対象試料に当てる必要がないため、液中生物試料のダメージレス観察に適している。
【0006】
また、特許文献3には、プローブとなる電子線を透過させ、透過後の電子を検出することで、試料を観察する透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)や走査型透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)、ならびに従来のTEM型ホルダおよびステージを使用するSEM向けに、液体試料やガス試料を電子線が透過できる薄膜状のウィンドウを備えた2つのマイクロ電子デバイスで挟み込んで真空中に保持するサンプルホルダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-203733号公報
【文献】特開2016-072184号公報
【文献】特表2013-535795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1または特許文献2に開示される試料ホルダでは、強度維持等の目的で設けたフレーム部に固定された第1の絶縁性薄膜、もしくは強度維持等の目的で設けたフレーム部に固定された第2の絶縁性薄膜のどちらかに、試料を含んだ水溶液(液状試料)もしくは試料を含んだゲル(ゲル状試料)を付着させ、両者の絶縁性薄膜を向かい合わせて挟み込むように固定することで試料ホルダを作成する。または、第1及び第2の絶縁性薄膜をあらかじめ向かい合わせて固定し、その隙間に水溶液を潅流させる機構を設けて液状試料を絶縁性薄膜の隙間に導入する。
【0009】
発明者らの検討の結果、後者の方法では、粘性の高いゲル状試料を観察する場合においては、試料を絶縁性薄膜間に導入することが難しく、絶縁性薄膜に耐圧以上の負荷がかかり、膜割れが発生するおそれがあり、前者の方法が汎用性の高さという観点からは優れていることが分かった。なお、以降では特に区別する場合を除き、ゲル状試料を含めて液状試料と呼称するものとする。
【0010】
特許文献1、2に開示の観察システム向けの試料ホルダにおいて、絶縁性薄膜を向かい合わせて液状試料を挟み込んで固定する際、絶縁性薄膜の間から漏れ出した液状試料が、絶縁性薄膜の直下に位置する電極に接触しないようにすることが重要である。漏れ出した液状試料が電極に接触すると、試料画像のコントラストを与える電気信号以上のリーク電流が流れて試料観察ができなくなる。
【0011】
また、絶縁性薄膜の強度確保のため、観察対象領域となる絶縁性薄膜ウィンドウは例えば一辺が500μm以下の矩形とする場合が多い。観察可能な領域は、第1の絶縁性薄膜のウィンドウと第2の絶縁性薄膜のウィンドウとが重なった領域であるため、絶縁性薄膜同士の位置合わせが重要である。さらに、特に揮発性の高い液状試料では、試料封入を迅速に行うことも重要である。
【0012】
このように試料ホルダは、絶縁性薄膜といった脆い材料を内蔵し、迅速かつ高精度な位置合わせを可能とすることを要求される一方で、できるだけ簡単な構造として、かかる要求を低コストに実現したいという要求もある。このため、発明者らは機能面とコスト面との両立を図りうる試料ホルダの構成について検討を行った。
【0013】
なお、本発明の試料ホルダの形状に類似する試料ホルダとして特許文献3に開示されるものがある。しかしながら、特許文献3の試料ホルダにおいては、あらかじめ2つのマイクロ電子デバイスをホルダ本体に格納し、ホルダ蓋によって固定した後に、薄膜間に液状試料もしくはガス状試料を導入する。シール前に試料を導入することを前提とした本発明とは異なる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態である試料ホルダは、液状またはゲル状の試料を保持する試料ホルダであって、開口部を有し、金属で構成された、もしくは少なくとも電子線照射面及び開口部の側面が金属膜で覆われた蓋部材と、導電性薄膜及び第1の絶縁性薄膜の積層膜が形成された第1のウィンドウを備え、導電性薄膜が蓋部材の開口部から露出するように蓋部材の電子線照射面と対向する面に保持された第1のチップとを有する第1の部材と、第1のシール材と、第2のシール材と、第1のシール材が配置される第1の底部シール面及び第2のシール材が配置される第2の底部シール面が形成された母材と、母材に配置された電極と、第2の絶縁性薄膜が形成された第2のウィンドウを備え、第2のウィンドウが電極と対向するように第2のシール材を介して第2の底部シール面上に保持される第2のチップとを有する第2の部材とを有し、第1のチップの導電性薄膜と蓋部材の金属とは電気的に導通されており、第1の部材と第2の部材とが組み合わせられ、第1のシール材が第1の底部シール面及び蓋部材の上部シール面との間でつぶされることにより、第1のシール材より内部の領域は、第1のシール材の外部の領域から気密に保持される。
【発明の効果】
【0015】
試料ホルダによる液状またはゲル状の試料の保持を確実に行え、荷電粒子線装置による観察の歩留まり向上が実現される。
【0016】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】試料ホルダ(第1の構成例)の構成図である。
【
図1B】試料ホルダ(第1の構成例)の構成図である。
【
図1C】試料ホルダ(第1の構成例)の構成図である。
【
図1D】試料ホルダ(第1の構成例)の第1の部材の構成図である。
【
図1E】試料ホルダ(第1の構成例)の第2の部材の構成図である。
【
図1F】試料ホルダ(第1の構成例)の構成図である。
【
図1G】試料ホルダ(第1の構成例)の構成図である。
【
図2A】試料ホルダ(第1の構成例)の構成図である。
【
図2B】試料ホルダ(第1の構成例)の構成図である。
【
図2C】試料ホルダ(第1の構成例)の構成図である。
【
図3】試料ホルダの第1の設計指針を説明するための図である。
【
図4A】試料ホルダ(第2の構成例)の構成図である。
【
図4B】試料ホルダ(第2の構成例)の構成図である。
【
図4C】試料ホルダ(第2の構成例)の第1の部材の構成図である。
【
図4D】試料ホルダ(第2の構成例)の第2の部材の構成図である。
【
図5A】試料ホルダ(第3の構成例)の構成図である。
【
図5B】試料ホルダ(第3の構成例)の構成図である。
【
図5C】試料ホルダ(第3の構成例)の第1の部材の構成図である。
【
図5D】試料ホルダ(第3の構成例)の第2の部材の構成図である。
【
図5E】試料ホルダ(第3の構成例)の構成図である。
【
図6A】試料ホルダ(第4の構成例)の構成図である。
【
図6B】試料ホルダ(第4の構成例)の構成図である。
【
図6C】試料ホルダ(第4の構成例)の第1の部材の構成図である。
【
図7A】試料ホルダ(第5の構成例)の構成図である。
【
図7B】試料ホルダ(第5の構成例)の構成図である。
【
図7C】試料ホルダ(第5の構成例)の第2の部材の構成図である。
【
図8A】試料ホルダ(第6の構成例)の構成図である。
【
図8B】試料ホルダ(第6の構成例)の構成図である。
【
図8C】試料ホルダ(第6の構成例)の構成図である。
【
図8D】試料ホルダ(第6の構成例)の構成図である。
【
図8E】試料ホルダ(第6の構成例)の第1の部材の構成図である。
【
図8F】試料ホルダ(第6の構成例)の第2の部材の構成図である。
【
図9A】試料ホルダ(第7の構成例)の構成図である。
【
図9B】試料ホルダ(第7の構成例)の構成図である。
【
図9C】試料ホルダ(第7の構成例)の構成図である。
【
図9D】試料ホルダ(第7の構成例)の構成図である。
【
図9E】試料ホルダ(第7の構成例)の構成図である。
【
図9F】試料ホルダ(第7の構成例)の第1の部材の構成図である。
【
図9G】試料ホルダ(第7の構成例)の第2の部材の構成図である。
【
図9H】試料ホルダ(第7の構成例の第1変形例)の構成図である。
【
図9I】試料ホルダ(第7の構成例の第2変形例)の構成図である。
【
図9J】試料ホルダ(第7の構成例の第2変形例)の構成図である。
【
図10A】試料ホルダ(第8の構成例)の構成図である。
【
図10B】試料ホルダ(第8の構成例)の構成図である。
【
図11A】試料ホルダ(第9の構成例)の構成図である。
【
図11B】試料ホルダ(第9の構成例)の構成図である。
【
図11C】試料ホルダ(第9の構成例)の構成図である。
【
図12】試料ホルダ(第10の構成例)の構成図である。
【
図13】試料ホルダ(第11の構成例)の構成図である。
【
図14A】試料ホルダ(第12の構成例)の構成図である。
【
図14B】試料ホルダ(第12の構成例)の構成図である。
【
図14C】試料ホルダ(第12の構成例)の第2の部材の構成図である。
【
図15】減圧膜つきシール材の形状(模式図)である。
【
図16A】試料ホルダ(第13の構成例)の構成図である。
【
図16B】試料ホルダ(第13の構成例)の構成図である。
【
図16C】試料ホルダ(第13の構成例)の第2の部材の構成図である。
【
図17】減圧膜機能付きシート状シール材の形状(模式図)である。
【
図18】試料ホルダの第2の設計指針を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1A~Eに、実施例1にかかる試料ホルダ101の構成例(第1の構成例)を示す。試料ホルダ101は、第1の部材102と第2の部材103とを有する。
図1Aは試料ホルダ101の電子線照射面112を見下ろした上面図であり、
図1Bは、
図1Aに示すA-Aにおける第1の部材102と第2の部材103とが分離された状態での断面図であり、
図1Cは、同様にA-Aにおける第1の部材102と第2の部材103とが組み合わされた状態での断面図である。試料ホルダ101は、
図1Cに示される第1の部材102と第2の部材103とが組み合わされた状態で真空環境に保たれた電子顕微鏡の試料室内に搭載され、電子顕微鏡による観察に供される。また、
図1Dは、第1の部材102を
図1Bに示したX方向からみた、すなわち第1の部材102を電子線照射方向と逆側から見上げた図であり、
図1Eは、第2の部材103を
図1Bに示したY方向からみた、すなわち第2の部材103を電子線照射方向から見下ろした図である。ただし、
図1Eでは、構造を分かりやすく示すため、第2のチップ107は一部を切り欠いて表示しており、第2のチップ107の実際の形状は点線で示される矩形である。また、第1のシール材118および第2のシール材119は省略している。なお、この例では、第1の部材102及び第2の部材103の外周形状は矩形であるが、その形状は矩形に限られるものではなく、例えば多角形形状、もしくは円形であっても構わない。以下の例においても同様である。
【0020】
以下、試料ホルダ101について詳細に説明する。試料ホルダ101の第1の部材102は、その主要な構成として、蓋部材111と、蓋部材111の電子線照射面112の反対面に保持される第1のチップ105とを有する。第1のチップ105はダイシングされたチップであり、外雰囲気隔離用の絶縁性薄膜104が形成された電子線照射用のウィンドウ123を備える。絶縁性薄膜104としては、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、カーボン膜、ポリイミド膜を例示することができる。第1のチップ105の電子線照射面側には導電性薄膜109が製膜され、ウィンドウ123において、導電性薄膜109と絶縁性薄膜104との積層膜が形成されている。導電性薄膜109としては、タンタル、タングステン、レニウム、モリブデン、オスミウム、金、プラチナのうちの何れかを主成分とする金属薄膜を例示することができる。
【0021】
第1のチップ105は、電子線照射用ウィンドウ123の中心が蓋部材111の開口部の中心と一致するよう位置合わせされ、固定シール材110によって、導電性薄膜109が形成されている側が蓋部材111の裏面に固定されている。固定シール材110は、第1のチップ105を固定するとともに、電子顕微鏡による観察時に、液状試料115の周囲を試料室の真空雰囲気から大気圧または準大気圧状態にシールする真空シール機能を備えている。固定シール材110は例えば、Si系接着材の両面テープを用いることができる。Si系接着材の両面テープは均一面を持つため、真空シール機能に優れている。
【0022】
蓋部材111は金属であってもよく、一部もしくは全面に金属メッキなどにより金属膜が被覆された樹脂材料であってもかまわない。樹脂材料に金属メッキを施す場合、電子線照射にともなう帯電現象を抑制するため、少なくとも、蓋部材111の電子線照射面112および蓋部材の傾斜面(開口部の側面)113には金属メッキをすることが好ましい。また、蓋部材111の電子線照射面112と第1のチップ105の導電性薄膜109とは導電性ペースト114によって電気的な導通処理が施されている。ただし、電子線照射面112と導電性薄膜109との電気的導通手段は導電性ペーストには限定されない。電子顕微鏡による観察を行う際には、第1のチップ105の導電性薄膜109にバイアス電圧を印加する。このため、図示しない電圧供給手段により蓋部材111の電子線照射面112にバイアス電圧を印加する。電子線照射面112と導電性薄膜109との電気的な導通がとられていることにより、導電性薄膜109にバイアス電圧を印加することが可能になる。
【0023】
試料ホルダ101の第2の部材103は、その母材127が絶縁体で形成されている。なお、必要に応じて母材127の表面に金属メッキが施されていても構わない。ただし、その場合は、電子顕微鏡による観察中に導電性薄膜109に印加するバイアス電圧に起因するリーク電流が電極108に流れ込まないように、第1の部材102と第2の部材103とを組み合わせた状態において、第2の部材103の電極108と第1の部材102の電子線照射面112とが絶縁されている必要がある。
【0024】
第2の部材103は、その主要な構成として、母材127と、外雰囲気隔離用の絶縁性薄膜106が形成された信号伝達用ウィンドウ124を備える第2のチップ107と、第2のチップ107に接触しないように母材127に配置された電極108と、第1のシール材118と、第2のシール材119とを備える。電子顕微鏡による観察を行う際には、電極108を図示しない信号増幅手段に接続する。絶縁性薄膜106には、絶縁性薄膜104として例示した膜を用いることができる。
【0025】
母材127には、第2のチップ107の位置合わせ用ガイド116が設けられている。具体的には母材127の中央部に凹部が設けられ、凹部の側壁がガイド116として機能する。第2のチップ107は、母材127に設けられたガイド116にはまり、第2のシール材119に接触した状態で載置される。電極108の中心はガイド116の中心と一致するように位置合わせされており、第2のチップ107は、ガイド116にはまることで、第2のチップ107の信号伝達用ウィンドウ124の中心がガイド116の中心に一致するよう位置合わせされる。かかる構成により、信号伝達用ウィンドウ124の中心と電極108の中心とが一致するように位置合わせされる。第1のシール材118および第2のシール材119は、
図1Cに示すように、第1の部材102と第2の部材103とを押し付けあうことによりつぶれるように変形し、第1の部材102および第2の部材103と接触した2面(上下面)あるいは3面(上下面及び側面)をシールする。
【0026】
具体的には、第1のシール材118は、少なくとも、母材127に形成された第1の底部シール面203と蓋部材111の上部シール面205との間でつぶされ、第2のチップ107がはめこまれる第1の空間120を外雰囲気からシールする。第2のシール材119は、少なくとも、母材127に形成された第2の底部シール面200と第2のチップ107の底面との間でつぶされ、電極108の先端部が配置される第2の空間121をその周囲の第1の空間120からシールする。第2の空間121は、第2のチップ107の底面、母材127の第2の底部シール面200、第2のシール材119に囲まれることによって形成される空間である。
【0027】
図1A~Eに示した試料ホルダ101では、第1のシール材118および第2のシール材119としてOリングを用いている。これに対して、第1のシール材118としてOリングを、第2のシール材119として両面テープを用いた試料ホルダの例を
図1F~Gに示す。試料ホルダ101の電子線照射面112を見下ろした上面図は
図1Aと共通であり、
図1F~Gは
図1Aに示すA-Aにおける断面図である。
【0028】
図1F~Gに示す試料ホルダ101では、第2のシール材119として、両面に均一面を持つSi系接着材シート150によりSiゴムシート140を挟んだ構造を有する両面テープを用いることができる。この場合、第1の部材102と第2の部材103とを押し付けあうことにより、
図1Gに示すようにSiゴムシート140がつぶれることで、電極108が配置された第2の空間121は第1の空間120からシールされる。以降に説明する実施の形態において、第2のシール材119は、特に明記する場合を除いてOリングであっても、両面テープであっても構わない。両面テープを用いることにより、第2のチップ107を母材127に固定することができ、誤って第2の部材103に衝撃を与えた際などに、第2のチップ107が母材127から外れるリスクを低減できる利点がある。
【0029】
続いて、試料ホルダ101に試料を載置し、電子顕微鏡による観察が可能となる状態となるまでの経過を説明する。
【0030】
最初が
図1Bに示す状態である。第1の部材102のいずれの構成物も、第2の部材103の構成物に接触していない。この状態で、例えばマイクロピペットにより、液状試料115を母材127のガイド116内部に載置された第2のチップ107の絶縁性薄膜106面に付着させる。なお、液状試料115を付着させる面は、第1の部材102の第1のチップ105の絶縁性薄膜104上であってもかまわない。その後、手動もしくはロボット等の自動操作により、第1の部材102を第2の部材103に近づける。
【0031】
図2Aに、第1の部材102の絶縁性薄膜104が液状試料115に接触した状態を示す。この状態において、第1のチップ105は、第2の部材103のガイド116にはまり始め、第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせが行われる。第1のチップ105がガイド116にはまることで、蓋部材111の中心と、第1のチップ105の電子線照射用ウィンドウ123の中心と、第2のチップ107の信号伝達用ウィンドウ124の中心と、電極108の中心とが一致するように位置合わせされる。この状態では、第1のシール材118は、第1の部材102と接触しておらず、第1のシール材118は変形していない。一方、第2のシール材119は、液状試料115を介して押し下げる力が加わることにより、つぶされるように変形を始める。なお、
図2Cは液状試料115が極めて微量の場合の例である。この例では、第1のチップ105が、第2の部材103のガイド116にはまり始め、第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせが行われたタイミングにおいて、液状試料115は第1のチップ105の絶縁性薄膜104に接触しておらず、第2のチップ107を押し下げる力は働かない。したがって、
図2Cの場合には、第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせのときには、第1のシール材118および第2のシール材119のいずれも変形は始まっていない。
【0032】
このように、ガイド116は、第2のチップ107を母材127に対して位置合わせをするためのガイドとして設けられているものであるが、同時に第1のチップ105を第2のチップ107と位置合わせするためのガイドとしても機能する。この対向するチップの位置合わせに用いられる機能に着目して、ガイド116を対向チップ用ガイドと称する。なお、対向チップ用ガイドは、自部材(蓋部材または母材)に配置するチップに対するガイドであるか否かは問わないが、第1のチップ105と第2のチップ107とが合同である場合には、対向チップ用ガイドが自部材に配置するチップのガイドを兼用することで、単純な構造で高い位置合わせ精度を出すことが可能になる。
【0033】
なお、前述のように、ガイド116によって第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせが行われる瞬間において、第1のシール材118が変形していないことは重要である(この点を「ポイント1」と呼ぶ)。このタイミングで第1のシール材118が変形を始めていると、第1のシール材118がもとの形状に戻ろうとする反発力によって、第1の部材102を電子線照射面112側に押し返す力が働く。一方、蓋部材111が不透明であると、第1のチップ105がガイド116にはまっているかどうかについて、目視での確認ができないため、第1の部材102を第2の部材103に押し込んでいくときに第1のチップ105がガイド116に干渉することによる抵抗の有無によって判断することになる。このため、位置合わせの段階で蓋部材111が第1のシール材118の反発力を受ける状態になっていると、干渉による抵抗の有無を認識することが困難になってしまう。第1のチップ105がガイド116と干渉したまま第1の部材102を押し込んでいくと、第1のチップ105が破損してしまうこともある。
【0034】
また、第2のシール材119が、第1のシール材118より先につぶれることも重要な点である(この点を「ポイント2」と呼ぶ)。これにより、余剰な液状試料は、母材127のガイド116を形成する凹部と第1の部材102とによって形成される第1の空間120へ漏れ出すことはあっても、第2のシール材119によって遮蔽された第2の空間121へは浸入せず、その結果、液状試料が電極108に接触することを回避できる。
【0035】
したがって、第2のシール材119がつぶれ始めるタイミングは、なるべく早いことが望ましい一方、位置合わせの段階で第2のシール材119がつぶれ始めると、蓋部材111が第2のシール材119の反発力を受けることになる。ただ、第2のシール材119の反発力は第1のシール材118の反発力に比べれば小さい。この例では、
図2Aのように液状試料が漏れ出すリスクの高い状態では位置合わせの段階で第2のシール材119がつぶれ始め、
図2Cのように液状試料が漏れ出すリスクの低い状態では位置合わせの後に第2のシール材119がつぶれ始めるようにすることで、不具合の発生を効果的に抑制できる。
【0036】
第2の部材103のガイド116によって第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせが行われた状態で、例えば、複数のネジ117(
図1A参照)またはその他の固定手段によって第1の部材102を第2の部材103に押し付けていく。
【0037】
第1の部材102は、ネジ117を通すための貫通穴128を備え(
図1D参照)、第2の部材103はネジ穴129を備える(
図1E参照)。貫通穴128の直径は、ガイド116の作成精度および、第1のチップ105の第1の部材102に対する位置合わせ精度に起因する誤差を吸収できるようにするため、ネジの呼び径より若干大きくなるようにする。 この例では、第1のチップ105と第2のチップ107は一辺が数mm程度の同じ大きさの矩形となるようにダイシングされており、ガイド116は、両者のチップがおよそ100μm以下の尤度をもってはまるよう、第1、第2のチップより若干大きく作成されている。また、この例では、ガイド116は、
図1Eに示すように、角の部分に円状のチップ逃げ130を備えている。ダイシングされたチップは角部に残渣を持つ場合があるが、そのような場合においても、チップ逃げ130を備えることで、チップのガイド116へのはめ込みが容易になる。
【0038】
図2Bは、
図2Aの状態からネジ閉めなどによってさらに押し下げた状態であり、第1の部材102によって第1のシール材118が変形を始める直前の状態である。この状態では、滴下した液状試料115の量によっては、第1、第2のチップ側壁からの試料漏れが発生する。この状態においても第2のシール材はつぶされる過程の途中にあり、チップ側壁から漏れた試料122から電極108の配置された第2の空間121をシールする。
【0039】
図1Cが、最終的に第1の部材102と第2の部材103が組み合わされて固定され、電子顕微鏡による観察が可能となった状態である。押し下げの結果、第1の部材102および第2の部材103は、第1のシール材118および第2のシール材119の両者ともにつぶししろを残した状態で、両シール材以外の構成物同士の接触によって停止される。この場合、第1の部材102の固定シール材110と第2の部材103の母材127とが接触することにより押し下げが停止される。なお、固定シール材110がつぶししろを持っている場合には、トルクレンチなどで第1の部材102と第2の部材103とを固定するネジ117の締め付け強度を管理してもよい。
【0040】
この状態で、第1のシール材118は、第1の空間120を電子線照射用の高真空雰囲気に保たれた外環境から気密シールする。一方、第2のシール材119は、電極108が配置された第2の空間121を周囲の第1の空間120から気密シールする。また、第2のシール材119は、第1のチップ105および第2のチップ107の側壁から漏れ出た試料122からも第2の空間121をシールする。第2のチップ107は、変形した第2のシール材119がもとの形状に戻ろうとする反発力によって、液状試料115を挟み込んで第1のチップ105に押し付けられた状態で固定される。
【0041】
図3を用いて、試料ホルダの第1の設計指針を示す。
図3は試料のない状態で、第1のチップ105の絶縁性薄膜104と第2のチップ107の絶縁性薄膜106とが面で接触した状態を示している。この状態で定義される以下の値を用いて形状を決定する。なお、チップや各種シール材等の各部材の寸法やその仕様、および作成時の公差を考慮して設計を行う必要がある点に関しては、同業者であれば用意に推察できるであろう。なお、以下の説明において、第2の底部シール面200を基準位置(0)とし、そこから上方位置との距離を正の距離、そこから下方位置との距離を負の距離としている。
【0042】
ガイド116の深さaは、第2の底部シール面200からガイド116の先端(母材127の上面)との距離で定義される。ガイド116の深さaは、(式1)の関係を満たす。
ガイドの深さa>第2のシール材119の厚さ+第2のチップ107の厚さ・・・(式1)
なお、第2のシール材119の厚さは、Oリングである場合にはその直径、両面テープである場合にはその厚さである。(式1)を満たすことにより、
図3に示されるように、第1のチップ105及び第2のチップ107の絶縁性薄膜同士が接触したとき、第1のチップ105はガイド116にはめ込まれた状態になることが保証される。すなわち、絶縁性薄膜104と絶縁性薄膜106との接触面は、対向チップ用ガイドが設けられた母材127から対向チップ用ガイドの先端までの間に位置することが保証される。
【0043】
また、蓋部材111の上部シール面205から第2の底部シール面200までの距離として定義される第1のシール面間距離bと、第1の底部シール面203から第2の底部シール面200までの距離として定義される第2のシール面間距離cは、(式2)の関係を満たす。
ABS(第1のシール面間距離b-第2のシール面間距離c)>第1のシール材118の厚さ・・・(式2)
なお、第1のシール材118の厚さは、Oリングである場合にはその直径である。
【0044】
第1の構成例においては、(式1)と(式2)の両方が満たされることにより、「第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせが行われ始める瞬間において、第1のシール材118が変形していない」条件(ポイント1)と「第2のシール材119が、第1のシール材118より先につぶれる」条件(ポイント2)の双方を満たすことができる。
【0045】
ただし、(式1)を満たすことが求められるのは、第1の構成例において第1のチップ105及び第2のチップ107の位置合わせを、第2の部材103に設けられた対向チップ用ガイド116により行う構造としていることによる。すなわち、第1のチップ105及び第2のチップ107との位置合わせのやり方が異なれば(式1)はそれに応じて変更されることになる。例えば、対向チップ用ガイドを第1の部材(例えば蓋部材)に設けることも考えられるが、この場合は(式1)に代えて、試料のない状態で、第1のチップ105の絶縁性薄膜104と第2のチップ107の絶縁性薄膜106とが面で接触した状態において、対向チップ用ガイドの第1のチップ105が固定される蓋部材111の面からの高さは、固定シール材110の厚さと第1のチップ105の厚さの和よりも大きいことが要求される。この条件が満たされれば、絶縁性薄膜104と絶縁性薄膜106との接触面は、対向チップ用ガイドが設けられた蓋部材111から対向チップ用ガイドの先端までの間に位置することが保証される。
【0046】
図4A~Dに、実施例1にかかる試料ホルダ301の構成例(第2の構成例)を示す。上面図は
図1Aと同じであり、
図4A~Bは、それぞれ
図1Aに示すA-Aにおける断面図である。
【0047】
第2の構成例では、第1の部材102は第1のチップ105をはめ込む第1チップ用ガイド402を備える。これにより、第1のチップ105は、電子線照射用のウィンドウ123の中心が蓋部材111の開口部に対して中心にくるよう位置合わせされている。チップ用ガイド402によりこの位置合わせが容易となる。第1のチップ105は、固定シール材110によって蓋部材111に固定されている。
図4Cに示すように、ガイド402には第1の構成例におけるガイド116と同様に、円状のチップ逃げ130が設けられている。
【0048】
また、第2の構成例では、チップ間の側壁から漏れ出た余剰の試料122を溜め置く液だまり302が設けられている。かかる構成により、漏れ出た試料122が電極108に接触するリスクをさらに低減することができる。第1の構成例では、ガイド116は母材127に柱状の凹部を形成することによってチップの全周を囲んでいたのに対して、第2の構成例では、
図4A及び
図4Dに示すように、母材127の中央部分に液だまり302を含む凹部を設け、この凹部においてチップの4辺にそれぞれ対向するように板状のガイド116を設けている。かかる形状とすることで、母材127の加工が行いやすい利点がある。
【0049】
第2の構成例では、第1の構成例と同様に押し下げの過程で、第1の部材102および第2の部材103が、第1のシール材118および第2のシール材119の両者ともにつぶししろを残した状態で、両シール材以外の構成物が接触することによって停止される。この例では、第1の部材102の蓋部材111と第2の部材103の母材127とが接触することで押し下げが停止される。このため、蓋部材111及び母材127がしかるべき強度の材質で構成されていれば、第1の部材102の蓋部材111と第2の部材103の母材127とを固定する力の管理は必要ない。
【0050】
図4A~Dに示す第2の構成例においても、第1の構成例において示した(式1)及び(式2)を満たすことにより、第1の部材102と第2の部材103を組み合わせるときのポイント1及びポイント2を満たすことができる。
【0051】
図5A~Eに、実施例1にかかる試料ホルダ401の構成例(第3の構成例)を示す。上面図は
図1Aと同じであり、
図5A~B,Eは、それぞれ
図1Aに示すA-Aにおける断面図である。
【0052】
第3の構成例では、第2の構成例と同様に、第1の部材102は第1のチップ105をはめ込む第1チップ用ガイド402を備え、第1のチップ105は、電子線照射用のウィンドウ123の中心が蓋部材111の開口部に対して中心にくるよう位置合わせされている。第1のチップ105は、固定シール材110によって蓋部材111に固定されている。一方、第2の部材103は、第2のチップ107をはめ込む第2チップ用ガイド403を備える。これにより、第2のチップ107は、信号伝達用のウィンドウ124の中心が電極108の中心に一致するよう、位置合わせされている。この例では、第1チップ用ガイド402は、
図5Cに示されるような蓋部材111の中央部分に設けられた凹部の側壁であり、第2チップ用ガイド403は
図5Dに示されるように、母材127の中央部分に設けられた液だまり302を含む凹部に設けられた板状のガイドである。
【0053】
第3の構成例においては、第1の部材102と第2の部材103は、第1の部材102の蓋部材111の開口部の中心が第2の部材103の電極108の中心に対して一致するよう、それぞれに位置合わせをするためのガイドを備える。具体的には、第1の部材102は第2部材用ガイド404を備え、第2の部材103は、第1部材用ガイド405を備える。この例では、第2部材用ガイド404は、
図5Cに示されるような板状のガイドであり、第1部材用ガイド405は
図5Dに示されるように、母材127の中央部分に設けられた液だまり302を含む凹部の側壁である。
【0054】
図5Bは、第1の部材102を押し下げ、第1の部材102と第2の部材103が組み合わされて固定され、電子顕微鏡による観察が可能となった状態である。第2部材用ガイド404が第1部材用ガイド405にはまり込むことにより、蓋部材111の開口部の中心に対して、電子線照射用のウィンドウ123の中心、信号伝達用のウィンドウ124の中心および電極108の中心が一致するよう、位置合わせがされる。
【0055】
第3の構成例も、第2の構成例と同様に、押し下げの過程で、第1の部材102および第2の部材103が、第1のシール材118および第2のシール材119の両者ともにつぶししろを残した状態で、第1の部材102の蓋部材111と第2の部材103の母材127とが接触することによって停止される。
【0056】
第3の構成例では、
図5Eに示されるように、第1のチップ105及び第2のチップ107の絶縁性薄膜同士が接触する以前に、第2部材用ガイド404と第1部材用ガイド405とが接するように設計されていれば、第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせが可能である。すなわち、第1部材用ガイド405及び第2部材用ガイド404は、第1部材用ガイド405の先端と第2部材用ガイド404の先端とが接したときに第1のチップ105の絶縁性薄膜104と第2のチップ107の絶縁性薄膜106とが接しない高さを有するものとする。本構成例では、蓋部材111や母材127の形状は複雑になるが、第1の部材102と第2の部材103とを組み合わせる際にチップを破損するリスクを低減することができる。
【0057】
第3の構成例においては、
図5Bに示されるように第1の部材102と第2の部材103が組み合わされて固定され、電子顕微鏡による観察が可能となった状態において、第2のチップ107をはめ込む第2チップ用ガイド403の先端は、第2のチップ107の上面(絶縁性薄膜106)よりも下方に位置するようにするのがさらに好ましい。第2チップ用ガイド403の先端が第2のチップ107の上面(絶縁性薄膜106)より上方に位置すると、第1の部材102を押し下げる過程で、第1のチップ105と第2のチップ107との間に作製誤差などに起因する若干の位置ずれがあった場合に、第2チップ用ガイド403が第1のチップ105の下面(絶縁性薄膜104)と干渉し、第1のチップ105を破損するおそれがあるためである。同様の理由により、第1のチップ105をはめ込む第1チップ用ガイド402の下端(この場合は、蓋部材111の下面に等しい)は、第1のチップ105の下面(絶縁性薄膜104)よりも上方に位置するようにするのが好ましい。
【0058】
なお、第1チップ用ガイド402、第2チップ用ガイド403、第2部材用ガイド404、第1部材用ガイド405の形状は、
図5A~Eに示した形状に限定されるものではなく、上述の機能を満たせればいかなる形状であっても構わない。
【0059】
図6A~Cに、実施例1にかかる試料ホルダ501の構成例(第4の構成例)を示す。上面図は後述する第1のチップ105の導電性薄膜109と蓋部材111の電子線照射面112との電気的導通手段が異なっている点を除いて
図1Aと同じであり、
図6A~Bは、それぞれ
図1Aに示すA-Aに相当する箇所での断面図である。
図6Cは、第1の部材102を
図6Aに示したX方向からみた、すなわち第1の部材102を電子線照射方向と逆側から見上げた図である。
【0060】
第4の構成例では、第1のチップ105は第2のチップ107より大きい。また、第1の部材102は第1のチップ105をはめ込む第1チップ用ガイド402を備え、第1のチップ105は、電子線照射用のウィンドウ123の中心が蓋部材111の開口部に対して中心にくるよう位置合わせされている。第1のチップ105は、接着材510によってその周囲を蓋部材111に固定されている。接着材510は絶縁性であり、真空シールも兼ねている。
図6Aに示すように、第1のチップ105の導電性薄膜109が第1チップ用ガイド402を構成する凹部の底面に接触した状態で第1のチップ105が蓋部材111に固定されることにより、導電性薄膜109は電子線照射面112と電気的に導通している。これにより、導電性ペーストが不要とされている。
【0061】
第2の部材103は、第3の構成例と同様である。接着材510は真空シールを兼ねるため、接着材510を厚く盛ることでシール機能を高めることができる一方、第2の部材103の構造物と接触するような場合には、第1のチップ105と第2のチップ107による液状試料115の挟み込みに不具合を生じさせるおそれもある。このため、
図6Bに示すように、第1の部材102と第2の部材103が組み合わされて固定され、電子顕微鏡による観察が可能となった状態において、接着材510は第2の部材103と接触しないようにする。
【0062】
図7A~Cに、実施例1にかかる試料ホルダ601の構成例(第5の構成例)を示す。上面図は
図1Aと同じであり、
図7A~Bは、それぞれ
図1Aに示すA-Aにおける断面図である。
図7Cは、第2の部材103を
図7Aに示したY方向からみた、すなわち第2の部材103を電子線照射方向から見下ろした図である。
【0063】
第5の構成例では、第2のチップ107は第1のチップ105より大きい。それに伴い、
図7Cに示すように、第2チップ用ガイド403も大きくなっている。それ以外は第3の構成例と同様である。第2のチップ107を第1のチップ105より大きくすることで、第1のチップ105の側壁から漏れ出した試料122を第2のチップ107の表面であって、第1のチップ105と重なり合わない領域に保持することが可能となるため、試料122が第2の空間121に浸入し、電極108に接触するリスクを低減することが可能になる。
【0064】
図8A~Fに、実施例1にかかる試料ホルダ701の構成例(第6の構成例)を示す。第6の構成例は、第1の部材102と第2の部材103とを固定する手段がこれまで説明してきた構成例とは異なる。上面図は
図1Aに示す上面図からネジ117を除いたものに相当する。
図8A~Dは、それぞれ
図1Aに示すA-Aに相当する箇所での断面図である。
図8Eは、第1の部材102を
図8Aに示したX方向からみた、すなわち第1の部材102を電子線照射方向と逆側から見上げた図であり、
図8Fは、第2の部材103を
図8Aに示したY方向からみた、すなわち第2の部材103を電子線照射方向から見下ろした図である。
【0065】
このように、第1の部材102及び第2の部材103はネジによる固定に必要な構成を有しない。ネジに代えて、第1の部材102の四辺に固定用フック702を備え、第2の部材103の四辺には、それに対応するフック用そり703を備える。
図8Dに示すように、固定用フック702とフック用そり703とをかみ合わせることで、第1の部材102及び第2の部材103とが固定される。固定用フック702は、蓋部材111の電子線照射面112に垂直な方向に延びる第1フック用ガイド704の先端に設けられ、母材127の四辺には、第1フック用ガイド704に対応して第2フック用ガイド705が設けられている。
【0066】
図8A~Dを用いて試料ホルダ701に試料を載置した後、電子顕微鏡による観察が可能となる状態となるまでの経過を説明する。
【0067】
図8Aは、第1の部材102の第1フック用ガイド704が第2フック用ガイド705にはまり始めた状態である。この状態から、手動もしくはロボット等の自動操作により、第1の部材102を押し下げて第2の部材103に近づける。第1フック用ガイド704が第2フック用ガイド705にはまった状況で第1の部材102を押し下げながら、第1のチップ105と第2の部材103に設けられたガイド116との位置合わせを行ってゆく。
【0068】
図8Bは、第1のチップ105の絶縁性薄膜104が液状試料115に接触した状態である。この状態において、第1のチップ105は、ガイド116にはまり始め、第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせが行われる。この時点で、精密な位置合わせが行えるようにするため、第1フック用ガイド704と第2フック用ガイド705とのはめあいは、第1のチップ105とガイド116のはめあいより、若干尤度を持っているのが好適である。これにより、蓋部材111の開口部の中心と、電子線照射用のウィンドウ123の中心と、信号伝達用ウィンドウ124の中心と、電極108の中心とが一致するように位置合わせが行われる。このとき、第1のシール材118は、第1の部材102と接触しておらず、第1のシール材118は変形していない。一方、試料を介して押し下げる力が加わった第2のシール材119はつぶされるように変形を始める。また、第1の部材102の固定用フック702は第2の部材103のフック用そり703に干渉し、外周面に垂直な外向き方向にそり始める。
【0069】
図8Cは、
図8Bの状態からさらに第1の部材102を押し下げ、第1の部材102によって第1のシール材118が変形を始める直前の状態である。この状態では、滴下した液状試料115の量によっては、第1、第2のチップ側壁からの試料漏れが発生する。この状態においても第2のシール材はつぶされる過程の途中にあり、チップ側壁から漏れた試料122から電極108の配置された第2の空間121をシールする。このとき、第1の部材102の固定用フック702は第2の部材103のフック用そり703を乗り越える直前となっている。
【0070】
図8Dは、第1の部材102と第2の部材103が組み合わされて固定され、電子顕微鏡による観察が可能となった状態である。このとき、第1の部材102の固定用フック702は第2の部材103のフック用そり703を乗り越え、固定用フック702とフック用そり703とが接触した状態で固定される。第1の部材102は、変形した第1のシール材118および変形した第2のシール材119がもとの形状に戻ろうとする反発力と、固定用フック702をフック用そり703が保持する力とがつり合った状態で固定される。
【0071】
この状態で、第1のシール材118は、第1の空間120を電子線照射のために高真空雰囲気に保たれた外環境から気密シールする。一方、第2のシール材119は、電極108が配置された第2の空間121を周囲の第1の空間から気密シールする。また、第2のシール材119は、第1のチップ105および第2のチップ107の側壁から漏れ出た試料122からも第2の空間121をシールする。第2のチップ107は、変形した第2のシール材119がもとの形状に戻ろうとする反発力によって、液状試料115を挟み込んで第1のチップ105に押し付けられた状態で固定される。
【0072】
本構成例では、試料ホルダの固定時にネジ止めの必要がなくなり、迅速かつ簡便に試料ホルダを準備することが可能となる。
【0073】
試料ホルダ701の第1の部材102は、変形する第1フック用ガイド704を備えることから、蓋部材111の材料は比較的やわらかい樹脂に上述のような金属メッキをしたものが好適である。
【0074】
なお、固定用フックとフック用そりを備える部材を逆として、第1の部材102がフック用そりを備え、第2の部材103が固定用フックを備える構成としてもよい。この場合、第1の部材102に変形する部位が存在しないことから、蓋部材111を金属材料で作成することができる。
【0075】
なお、第6の構成例として、第1の構成例に相当する試料ホルダにフックを用いた固定方法を適用した例を示したが、これまで説明した他の構成例やその変形例に適用することも可能である。
【0076】
図9A~Gに、実施例1にかかる試料ホルダ801の構成例(第7の構成例)を示す。
図9Aは試料ホルダ801の電子線照射面112を見下ろした上面図であり、
図9B~Eは、その上段にそれぞれ
図1Aに示すA-Aにおける断面図を示し、その下段に当該断面図におけるB-Bにおける平面図を示す。
図9Fは、第1の部材102を
図9Bに示したX方向からみた、すなわち第1の部材102を電子線照射方向と逆側から見上げた図であり、
図9Gは、第2の部材103を
図9Bに示したY方向からみた、すなわち第2の部材103を電子線照射方向から見下ろした図である。
【0077】
図9Aに示すように、試料ホルダ801の外周形状は円形をしている。第7の構成例では、第1の部材102を第2の部材103にねじ込むようにはめ込むことで、第1の部材102と第2の部材103とが固定される。
【0078】
図9B~Eは、第1の部材102をねじ込み、第2の部材103に固定する過程を示している。なお、下段の平面図において、紙面に対して第1の部材102は回転せず、第2の部材103が回転するように示している。後述するように、第2のチップ107は、第1のチップ105とともに母材127に対して回転する。このため、第2のチップ107は、母材127に固定されてはならない。このため、第2のシール材119としてはOリングを用いるのが好適である。
【0079】
試料ホルダ801は茶筒形状をしており、第2の部材103の母材127は円筒形状を有し、第1の部材102の蓋部材111は電子線照射面と垂直方向に延長される周縁部を有している。
【0080】
母材127の外周部と接する、蓋部材111の周縁部の内壁にはネジ構造810を備えている。第1のチップ105は、固定シール材110によって蓋部材111の裏面に固定される。第1のチップ105を保持する蓋部材111の裏面には、第1のチップ105をはめ込む第1チップ用ガイド402を備える。これにより、第1のチップ105は、電子線照射用のウィンドウ123の中心が蓋部材111の開口部に対して中心にくるよう位置合わせされている。また、
図9Fに示すように、蓋部材111の裏面には、第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせに用いられる4つのガイド(対向チップ用ガイド)116が設けられている。
【0081】
なお、蓋部材111に第1チップ用ガイド402を設けることなく、4つのガイド116によって、蓋部材111の開口部の中心と電子線照射用ウィンドウ123の中心とが一致するように位置合わせを行ってもよい。
【0082】
一方、第2の部材103の母材127は円筒形状をしており、外周部に第1の部材102のネジ構造810とかみ合うネジ構造811を備えている。これらのネジ構造をかみ合わせ、第2の部材103に対して第1の部材102をねじ込むようにはめ込むことで、両者を固定する。
【0083】
図9Gに示すように、第2の部材103は第2のチップ107をはめ込む第2チップ用ガイド403を備えている。第2のチップ107は、第2の底部シール面200に置かれた第2のシール材119の上に載置される。この状態において、第2のチップ107は、信号伝達用のウィンドウ124の中心が電極108の中心に一致するよう位置合わせされる。なお、第2チップ用ガイド403は、母材127の中央部分に設けられた液だまり302を含む凹部の側壁である。
【0084】
試料ホルダ801に試料を載置し、電子顕微鏡による観察が可能となる状態となるまでの経過を説明する。最初に、第2のチップ107は、第2チップ用ガイド403内に載置される際、
図9Gに示す反時計回り方向にはこれ以上まわらない位置まで回転させた状態で載置される。
【0085】
図9Bに示す状態では、第1の部材102のいずれの構成物も、第2の部材103の構成物に接触していない。この状態から、手動もしくはロボット等の自動操作により、第1の部材102を第2の部材103に近づける。
【0086】
図9Cに、第1のチップ105の絶縁性薄膜104が液状試料115に接触した状態を示す。これは、第1のネジ構造810を第2のネジ構造811にかみ合わせることなく第1の部材102を第2の部材103上に配置している状態である。一方、
図9C下段の平面図に示すように、第2のチップ107は、第1の部材102が備えるガイド116にはまり始め、第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせが行われる。これにより、蓋部材111の開口部の中心と、電子線照射用のウィンドウ123の中心と、信号伝達用ウィンドウ124の中心と、電極108の中心とが一致するように位置合わせが行われる。また、この段階では、第1のシール材118は第1の部材102と接触しておらず、第1のシール材118は変形していない。一方、液状試料115を介して押し下げる力が加わった第2のシール材119はつぶされるように変形を始める。
【0087】
図9Dに、第1のネジ構造810が第2のネジ構造811に接触し、第1の部材102を第2の部材103にねじ込み始めた状態を示す。第1の部材102によって第1のシール材118が変形を始める直前の状態でもある。このとき、滴下した液状試料115の量によっては、第1、第2のチップ側壁からの試料漏れが発生する。第2のシール材119がつぶされる過程の途中にあることにより、チップ側壁から漏れた試料122から電極108をシールする。
【0088】
図9D下段の平面図に示すように、第2のチップ107は、ガイド116に従って第1のチップ105と位置合わせがされた状態で、第2のシール材119の上を滑って、第1のチップ105と共に回転する。
【0089】
図9Eは、第1の部材102と第2の部材103とが組み合わされて固定され、電子顕微鏡による観察が可能となった状態である。この状態では、第1の部材102のガイド116と第2の部材103の第2チップ用ガイド403とが接触した状態でそれ以上回転しないように固定される。このように、第7の構成例では、蓋部材111に対する母材127の回転量を制限するロック機構を設け、第1のチップ105が第2のチップ107への押し付け量が過度になったり、過少になったりすることを抑制している。この場合は、ロック機構をガイド116と第2チップ用ガイド403によって実現しているが、これらとは独立して設けてもよい。例えば、母材127の上端外周に溝を設けて、その1箇所に回転止めを設けておく。他方、蓋部材111には第1の部材102と第2の部材103とを組み合わせたときに溝にはまる凸部を設けておく。第1の部材102を第2の部材103にねじ込むとともに、凸部は溝内を移動し、回転止めとぶつかったところで、ねじ込みを完了する。
【0090】
第7の構成例では、第1の部材102は、変形した第1のシール材118がもとの形状に戻ろうとする反発力と、第1の部材のネジ構造810と第2の部材のネジ構造811との間に働く摩擦力によって働く保持力とが釣り合った状態で固定される。
なお、本構成例のねじ込みによる固定方法は、例えば、第5の構成例のように、第2のチップ107が第1のチップ105より大きくされてもよい。その場合は、第2のチップ107の大きさに対応して、4つのガイド116、第2チップ用ガイド403の形状を変更すればよい。
【0091】
第7の構成例は、ねじ込みを行う際に第1のチップ105と第2のチップ107とが同時に回転するため、以下の2つの利点がある。第1は、2つのチップが同時に回転することにより、2つのチップの間に挟まれた液状試料が薄膜間でこすりあわされることがなく、薄膜破損リスクを低減できる。第2は、2つのチップの重なり具合が固定されていることにより、第1のチップ105のウィンドウ123と第2のチップ107のウィンドウ124との重なりで決まる視野は、液状試料の試料ホルダ801への導入操作の影響を受けることなく確保できる。以下に、第7の構成例の変形例を示す。
【0092】
図9Hに第1の変形例を示す。第1の変形例では、第1の部材102は第2部材用ガイド404を備え、第1のチップ105は蓋部材111に固定されている。第1のチップ105は、電子線照射用ウィンドウ123の中心が第2部材用ガイド404の中心軸と一致するように固定される。また、第2の部材103は第2チップ用ガイド403と第1部材用ガイド405とを備えている。第2チップ用ガイド403と第1部材用ガイド405の中心軸は電極108の中心軸と一致するように配置されており、第2のチップ107は第2チップ用ガイド403にあわせて載置されたとき、信号伝達用ウィンドウ124の中心が電極108の中心軸と一致する。
図9Hに示されるように、各ガイド403、404、405ともに円形状であり、特に第1の部材102と第2の部材103とを組み合わせた状態において、ガイド403、404、405は同心円状をなす。
【0093】
第1のチップ105と第2のチップ107とは合同な正方形形状をしており、第2チップ用ガイド403の直径は、チップの対角線の長さより若干大きく加工されている。第1の部材102を第2の部材103に固定するには、まず、第2の部材103に第1の部材102を載せる。この例では第2の部材103の第1部材用ガイド405の先端は第2部材用ガイド404の先端より上方に位置しているが、第1部材用ガイド405の先端と第2部材用ガイド404の先端が接したときにおいて、第1のチップ105の絶縁性薄膜104と第2のチップ107の絶縁性薄膜106とは接触しないようにする(上記ガイドの先端部、絶縁性薄膜の位置関係は
図5Eと同様である)。以上により、第1のチップ105のウィンドウ123の中心と第2のチップ107のウィンドウ124の中心とが一致するように位置合わせが行われる。その後、第1の部材102のネジ構造810を第2の部材103のネジ構造811にかみ合わせ、回転させて固定する。
【0094】
本変形例は、蓋部材111、母材127に形成されるガイド等の構造を円形状に作製することができ、コストを低減できる利点がある。一方で、第1の部材102のねじ込み固定を行う際、第1のチップ105が第2のチップ107に対して回転しながら固定されることにより、薄膜破損リスクは増す。また、固定されたときの第1のチップ105と第2のチップ107との重なり具合によっては、最大視野がとれない可能性がある。例えば、
図9Hの上面図(下段)では、第1のチップ105と第2のチップ107との位相が45°ずれた例を示している。しかしながら、この状態が試料ホルダ801bの最小視野であるから、この状態で必要な視野が確保されていればよい。
【0095】
図9I~Jに第2の変形例を示す。
図9Iは試料ホルダ801cを構成する各部材が分離された状態、
図9Jは各部材が結合された状態を示している。第2の変形例では、第1の変形例のコストを低減可能なガイドの構造を維持しつつ、薄膜破損リスクを低減させることができる。第2の変形例では第1の部材102を第2の部材103に固定するため、ネジ蓋125を用いる。ネジ蓋125は電子線を通過させるための開口125aを備えた茶筒形状をしており、開口125aの設けられた底面と垂直方向に延長された周縁部を有しており、周縁部の内壁にネジ構造810を備えている。また、ネジ蓋125と第1の部材102の間に挟まるディスク状のワッシャ126を備える。
【0096】
第1の部材102の外周部が第2部材用ガイド404となっており、第1のチップ105は蓋部材111に固定されている。第1のチップ105は、電子線照射用ウィンドウ123の中心が第2部材用ガイド404の中心軸と一致するように固定される。また、第2の部材103は第2チップ用ガイド403と第1部材用ガイド405とを備えている。第2チップ用ガイド403と第1部材用ガイド405の中心軸は電極108の中心軸と一致するように配置されており、第2のチップ107は第2チップ用ガイド403にあわせて載置されたとき、信号伝達用ウィンドウ124の中心軸が電極108の中心軸と一致する。
図9Iに示されるように、各ガイド403、404、405ともに円形状であり、特に第1の部材102と第2の部材103とを組み合わせた状態において、ガイド403、404、405は同心円状をなす。
【0097】
第1のチップ105と第2のチップ107とは合同な正方形形状をしている。
図9I,Jにおいてチップの大きさが異なるように見えるのは、
図9Hの場合と同様に、上面図において第1のチップ105と第2のチップ107との位相が45°ずれた例を示しているためである。第2チップ用ガイド403の直径は、チップの対角線の長さより若干大きく加工されている。第1の部材102を第2の部材103に対して固定するには、まず、第2の部材103に第1の部材102を載せる。この時点で第1のチップ105の絶縁性薄膜104と第2のチップ107の絶縁性薄膜106は接触していない。以上により、第1のチップ105のウィンドウ123の中心と第2のチップ107のウィンドウ124の中心が一致するように位置合わせが行われる。その後、第1の部材102の上部にワッシャ126を載せ、その上からネジ蓋125をかぶせ、ネジ構造810を第2の部材103のネジ構造811にかみ合わせ、回転させて固定する。
【0098】
本変形例によれば、ワッシャ126を挟むことにより、ネジ蓋125をねじ込む際に、第1の部材102及び第2の部材103と第1のシール材118との間に働く摩擦力により、第2の部材103に対して第1の部材102を回転させることなく、第1の部材102を押し下げることが可能となり、薄膜破損リスクを低減できる。ワッシャ126の材料には、ネジ蓋125の回転動作を第1の部材102に伝達しないような摩擦係数を有する材料を選択する。
【0099】
以上、試料ホルダの様々な構成例について説明した。チップ間への液状試料の挟み込みにおける試料の漏れ出しが少ないと想定される場合、あるいは第5の構成例(
図7A~C参照)等のように、漏れ出した液体試料が電極108に接触するリスクが少ない場合には、前述した試料ホルダの第1の設計指針(
図3参照)に代えて、以下の第2の設計指針を適用することができる。
図18を用いて、試料ホルダの第2の設計指針を示す。
図18は試料のない状態で、蓋部材111の上部シール面205と第1のシール材118とが接触した状態を示している。このとき、第1のチップ105の絶縁性薄膜104と第2のチップ107の絶縁性薄膜106とは接触していない。ただし、蓋部材111と第1のシール材118とが接触しない状態で第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせがなされ、
図18は位置合わせが完了した状態である。第2の設計指針は、「第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせが行われ始める瞬間において、第1のシール材118が変形していない」条件(ポイント1)と「第1のシール材118が第2のシール材119と同時、あるいは第2のシール材119よりも先につぶれる」条件(ポイント1)を満たすものとして定義できる。
【0100】
図18に示した第1の構成例にかかる試料ホルダ101の場合、以下に示す(式3)及び(式4)の関係を満たせばよい。ガイドの深さa、第1のシール面間距離b、第2のシール面間距離cは
図3で定義したものであり、さらに蓋部材111から第1のチップ105の絶縁性薄膜104までの距離d(この場合、第1のチップ105の厚さ+固定シール材110の厚さに等しい)を定義する。
ガイドの深さa+距離d>第2のシール面間距離c+第1のシール材118の厚さ・・・(式3)
(式3)が満たされることにより、第1のチップ105はガイド116にはめ込まれた状態になることが保証される。
ABS(第1のシール面間距離b-第2のシール面間距離c)≦第1のシール材118の厚さ・・・(式4)
(式4)が満たされることにより、蓋部材111の上部シール面205と第1のシール材118とが接触したときに、第1のチップ105の絶縁性薄膜104と第2のチップ107の絶縁性薄膜106とは接触していないことが保証される。
【0101】
この場合も(式3)を満たすことが求められるか否かは、試料ホルダの構造に依存する。例えば、第3の構成例等に例示したような部材用ガイドによってチップ間の位置合わせが精度よく行われる場合には、(式3)は満たされなくともよい。
【0102】
第2の設計指針に従った試料ホルダの効果は以下である。第1の設計指針に従った試料ホルダでは、第1の部材102を第2の部材103に載置して手を離すと、第1の部材102の全自重がかかって液状試料がつぶされる。これに対して、第2の設計指針に従った試料ホルダでは、第1のシール材118がクッションとなり、第1のシール材118及び第2のシール材119をつぶしながら第1の部材102を押し下げることで、液状試料をつぶす速度を比較的ゆっくりと、かつ均一に行うことが可能となる。第1の設計指針と第2の設計指針とは、液体試料の漏れ出しによる短絡リスクと液体試料の試料ホルダへの導入方法による試料への影響とを踏まえて、選択すればよい。
【実施例2】
【0103】
液状試料を挟み込む絶縁性薄膜同士の隙間の間隔が厚すぎる場合、電極により検知される信号強度が低下する。絶縁性薄膜同士の間隔は、溶液もしくはゲル材中に存在する観察対象より若干厚い程度の間隔に保たれることが好ましい。そこで、実施例2に係る試料ホルダは、第1のシール材118および第2のシール材119によって形成される第1の空間120及び/または第2の空間121の圧力を調整することで、絶縁性膜同士の間隔を調整するための機構を備えている。
【0104】
図10A~Bに、実施例1(第7の構成例)の試料ホルダに、電子顕微鏡観察のための高真空条件で第1の空間120の圧力を減圧する機構を設けた試料ホルダ901(第8の構成例)を示す。第1の空間120は絶縁性薄膜同士で挟み込まれた試料が載置される空間である。
図10Aは、試料ホルダ901が大気圧雰囲気中に配置されたときの状態を示し、
図10Bは、高真空雰囲気中に配置されたときの状態を示す。試料ホルダ901は、外雰囲気と第1の空間120とをつなぐガス道910、およびガス道910と外雰囲気との境界に設けられ、伸縮性を有する減圧膜911を備えている。減圧膜911は、
図10Bに示すように、高真空条件下で外側に膨らむことによって第1の空間120は大気圧雰囲気中に配置された状態と比較して減圧される。一方、第2のシール材119によってシールされた第2の空間121は減圧されることなく大気圧のままである。すなわち、相対的に第2の空間121は第1の空間120と比較して高圧となる。その結果、第2のチップ107の信号伝達用のウィンドウ124における絶縁性薄膜、および第1のチップ105の電子線照射用ウィンドウ123における絶縁性薄膜及び導電性薄膜は電極108側から押される形となり、液状試料115を挟み込んだ電子線照射用のウィンドウ123と信号伝達用ウィンドウ124の間隔を薄く保つことが可能となる。
【0105】
減圧膜911は、母材127にあらかじめ設けられていてもよく、第1の部材102と第2の部材103とが組み合わせて電子顕微鏡観察が可能となった状態とした後に設けてもよい。第1の部材102と第2の部材103とが組み合わせられた状態で減圧膜911を配置する場合、第1の部材102と第2の部材103とを組み合わせる過程において、第1の空間120は外雰囲気に開放された状態を維持することができる。外雰囲気とつながったガス道を有しない場合、第1の部材102を第2の部材103に押し付けることにより、第1のシール材118がつぶされ、その分の第1の空間120の体積が減少し、第1の空間120が大気圧以上に加圧されるおそれがある。外雰囲気に開放されたガス道を有することにより、第1の空間120が過度に加圧されることを抑制することができる。
【0106】
図11A~Cに、実施例1(第7の構成例)の試料ホルダに、電子顕微鏡観察のための高真空条件において、第2の空間121の圧力を加圧または減圧することで調整する機構を設けた試料ホルダ1001(第9の構成例)を示す。
図11Aは、試料ホルダ1001が大気圧雰囲気中に配置されたときの状態を示し、
図11Bは、高真空雰囲気中に配置されたときの状態を示し、
図11Cは、高真空雰囲気中で第2の空間121の圧力を調整しているときの状態を示す。試料ホルダ1001は、外雰囲気と第2の空間121とをつなぐガス道1010、およびガス道1010と外雰囲気との境界に設けられ、伸縮性を有する減圧膜1011およびガス圧調整機構1012を備えている。ガス圧調整機構1012は、減圧膜1011の膨らみ方を変化させることで第2の空間121の圧力を調整する。
【0107】
減圧膜1011は、
図11Bに示すように、高真空条件下で外側に膨らむことによって、第2の空間121は大気圧雰囲気中に配置された状態と比較して減圧される。このため、第2のチップ107の信号伝達用ウィンドウ124における絶縁性薄膜は、第1の空間120と第2の空間121との圧力差により、また、第1のチップ105の電子線照射用ウィンドウ123における絶縁性薄膜及び導電性薄膜の積層膜は、外雰囲気と第1の空間120との圧力差により、それぞれ液状試料115から見て外側に膨らむ。そこで、
図11Cに示すように、ガス圧調整機構1012は棒状部材1013を矢印の方向に押し出し、減圧膜1011を第2の空間121側に押し上げる。棒状部材1013の押し出し量を変化させることで、第2の空間121の圧力を最初の大気圧から加圧した状態または、減圧した状態に調整することができる。ガス圧調整機構1012は適切に第2の空間121に加圧を行うことで、信号伝達用のウィンドウ124における絶縁性薄膜は電極108側から相対的に高いガス圧で押される形となり、液状試料115を挟み込んだ電子線照射用のウィンドウ123と信号伝達用ウィンドウ124の間隔を薄く保つことが可能となる。
【0108】
ガス圧調整機構1012の一例としては、リニアアクチュエータがあげられる。ガス圧調整機構1012は、試料ホルダ1001と一体に構成してもよいし、観察時に試料ホルダ1001を搭載する電子顕微鏡側のホルダに設けてもよい。
【0109】
また、ガス圧調整機構1012によるガス圧調整は、電子顕微鏡により取得される画像を確認しながら行ってもよい。画像を確認しながら、所望のコントラストが得られた状態で棒状部材1013の押し出しを停止する。第2の空間121を加圧するほど信号強度が強くなる一方、加圧しすぎると、チップの薄膜の破損リスクが高まるためである。
【0110】
図12に、実施例1(第7の構成例)の試料ホルダに、電子顕微鏡観察のための高真空条件において、第1の空間120の圧力を減圧する機構、および第2の空間121の圧力を加圧または減圧することで調整する機構を設けた試料ホルダ1101(第10の構成例)を示す。
図12は、試料ホルダ1101が高真空雰囲気中に配置され、第2の空間121の圧力を調整しているときの状態を示す。試料ホルダ1101は、第2の空間121の圧力を調整するため、第2の空間121にヒーター1110を備える。ヒーター1110によって、第2の空間121のガス雰囲気を膨張させることにより、第2の空間121を加圧する。ヒーター1110により適切に第2の空間121に加圧を行うことで、信号伝達用のウィンドウ124における絶縁性薄膜106は電極108側から相対的に高いガス圧で押される形となり、液状試料115を挟み込んだ電子線照射用のウィンドウ123と信号伝達用ウィンドウ124の間隔を薄く保つことが可能となる。ヒーター1110によるガス圧調整も、電子顕微鏡により取得される画像を確認しながら行ってもよい。
【0111】
図13に、実施例1(第7の構成例)の試料ホルダに、電子顕微鏡観察のための高真空条件において、第1の空間120の圧力を減圧する機構を設けるとともに、外雰囲気と第2の空間121とをつなぐガス道1010及びシール膜1210を設けた試料ホルダ1201(第11の構成例)を示す。
図13は、試料ホルダ1201が大気圧雰囲気中に配置されたときの状態を示す。
【0112】
第1の空間120の圧力を減圧する機構は、第8の構成例と同様に、外雰囲気と第1の空間120とをつなぐガス道910および伸縮性を有する減圧膜911を有している。
【0113】
一方、シール膜1210は、伸縮性を持っても持たなくてもよい。シール膜1210は、伸縮性を持つ場合、第9または第10の構成例と同様にガス圧調整手段を設け、第2の空間121の圧力を調整可能としてもよい。いずれの場合であっても、高真空雰囲気中において、相対的に第2の空間121が第1の空間120と比較して高圧となることにより、液状試料115を挟み込んだ電子線照射用のウィンドウ123と信号伝達用ウィンドウ124の間隔を薄く保つことが可能となる。
【0114】
なお、シール膜1210が伸縮性を持たない場合、第1の部材102と第2の部材103とが組み合わせて電子顕微鏡観察が可能となった状態で減圧膜911とシール膜1210とを配置することが好ましい。これによって、第2のシール材119がつぶれることで第2の空間121が過度に加圧されることを抑制することができる。
【0115】
なお、第8~11の構成例として、第7の構成例に相当する試料ホルダにガス圧調整機構を適用した例を示したが、実施例1として説明した他の構成例やその変形例に適用することも可能である。
【0116】
図10A~Bに示した第8の構成例に係る試料ホルダにおいては、ガス道910と減圧膜911によって第1の空間120を減圧する機構を備えていた。これに対して、部品点数や作業工程を減らすため、第1のシール材118と第2のシール材119とを一体型とし、第1のシール材と第2のシール材を接続する膜を減圧膜911として利用することによって減圧機構を実現することもできる。
【0117】
図14A~Cに、実施例1(第6の構成例)の試料ホルダに、電子顕微鏡観察のための高真空条件で第1の空間120の圧力を減圧する機構を設けた試料ホルダ1301(第12の構成例)を示す。上述のように、試料ホルダ1301は、第1のシール材118と第2のシール材119とを一体型とした減圧膜機能付きシール材1310を用いている。
図14Aは、試料ホルダ1301が大気圧雰囲気中に配置されたときの状態を示し、
図14Bは、高真空雰囲気中に配置されたときの状態を示している。また、
図14Cは、第2の部材103を電子線照射方向から見下ろした図である。ただし、
図14Cでは、構造を分かりやすく示すため、第2のチップ107は一部を切り欠いて表示しており、第2のチップ107の実際の形状は点線で示される矩形である。また、一体型の減圧膜機能付きシール材1310は省略している。
【0118】
試料ホルダ1301の第2の部材103が備える減圧膜つきシール材1310は、第2の部材103に対して第1の部材102が固定された状態において、その第1のシール部118’および第2のシール部119’により、それぞれ第1の空間120および第2の空間121をシールする。また、第2の部材103は、第1のシール部118’と第2のシール部119’との間の減圧膜部911’直下に位置する第3の空間1311を有する。第3の空間1311は、ガス道910によって外雰囲気と接続されている。
図14Bに示すように、減圧膜部911’が高真空条件下で外側に膨らむことによって、第1の空間120は大気圧雰囲気中に配置された状態と比較して減圧される。これにより、相対的に第2の空間121は、第1の空間120と比較して高圧となる。その結果、第2のチップ107の信号伝達用のウィンドウ124における絶縁性薄膜、および第1のチップ105の電子線照射用ウィンドウ123における絶縁性薄膜及び導電性薄膜は電極108側から押される形となり、液状試料115を挟み込んだ電子線照射用のウィンドウ123と信号伝達用ウィンドウ124の間隔を薄く保つことが可能となる。
【0119】
図15に減圧膜つきシール材1310の形状(模式図)を示す。最上段に
図14Cに示すA-Aにおける断面図を示し、その下に当該断面図におけるC-C,D-D,E-E,F-Fにおける平面図を示している。減圧膜機能付きシール材1310は、Oリング状の第1のシール部118’とOリング状の第2のシール部119’とを有するとともに、両者が減圧膜部911’によって接続された形状となっている。減圧膜部911’は第2の部材103の母材127に設けられるガイド116に沿って配置されるガイド部116’が設けられている。
図14Aに示されるように、ガイド部116’を用いて第1のチップ105および第2のチップ107の位置合わせが行われる。
【0120】
なお、第12の構成例として、第6の構成例に相当する試料ホルダに減圧膜つきシール材を適用した例を示したが、実施例1として説明した他の構成例やその変形例に適用することも可能である。また、減圧膜機能付きシール材1310は減圧膜機能を使用せず、第1のシール材と第2のシール材とを一体化したシール材として利用することも可能である。
【0121】
図16A~Cに、実施例1(第6の構成例)の試料ホルダに、電子顕微鏡観察のための高真空条件で第1の空間120の圧力を減圧する機構を設けた試料ホルダ1401を示す(第13の構成例)。
図16Aは、第1の部材102が第2の部材103に固定された状態で大気圧雰囲気中に配置された状態を示し、
図16Bは、第1の部材102が第2の部材103に固定された状態で高真空雰囲気中に配置された状態を示す。また、
図16Cは、第2の部材103を電子線照射方向から見下ろした図である。ただし、
図16Cでは、構造を分かりやすく示すため、第2のチップ107は一部を切り欠いて表示しており、第2のチップ107の実際の形状は点線で示される矩形である。なお、
図16A~Bは、
図16Cに示すA-Aにおける断面図である。
【0122】
試料ホルダ1401の第2の部材103は、第2のシール材として減圧膜機能付きシート状シール材1402を備える。減圧膜機能付きシート状シール材1402としては、両面に均一面を持つSi系接着材シート150によりSiゴムシート140を挟んだ構造を有する両面テープを用いることができる。試料ホルダ1401の第2の部材103は、第2のチップ107の4つの角を用いて第2のチップ107を第2の部材103に対して位置合わせするためのガイド116を備える。ガイド116は、実施例1(第6の構成例)と同様に、第1の部材102と第2の部材103とを固定する際に、第1のチップ105と第2のチップ107との位置合わせにも用いられる。
【0123】
第2の部材103は第2の底部シール面200の一部に、第3の空間1311を備える。第3の空間1311は、ガス道910によって外部雰囲気と接続されている。
【0124】
図17に減圧膜機能付きシート状シール材1402の形状(模式図)を示す。減圧膜機能付きシート状シール材1402は、
図17に示すように、ガイド116と干渉せずに、第2の底部シール面200に接着される。図には、接着時のガイド116の位置を点線で示している。また、減圧膜機能付きシート状シール材1402は、電極108との接触を避けるための電極用中心穴1403を備えている。
【0125】
第2のチップ107は、ガイド116によって電極108の中心に対して中心が一致するように位置合わせされた状態で減圧膜機能付きシート状シール材1402上に接着固定される。減圧膜機能付きシート状シール材1402は、第2のシール材としての機能を有し、第1の部材102と第2の部材103とが固定された状態において、第2の空間121を第1の空間120から気密シールする。また、減圧膜機能付きシート状シール材1402は、第3の空間1311と第1の空間120を隔離し、第1の空間120を電子線照射のために高真空雰囲気に保たれた外環境から気密シールする。
【0126】
図16Bに示すように、試料ホルダ1401が高真空条件下に置かれると、減圧膜機能付きシート状シール材1402は直下に第3の空間1311がある部位において、高真空雰囲気側に膨らむ。これによって第1の空間120は大気圧雰囲気中に配置された状態と比較して減圧される。これにより、相対的に第2の空間121は、第1の空間120と比較して高圧となる。その結果、第2のチップ107の信号伝達用のウィンドウ124における絶縁性薄膜、および第1のチップ105の電子線照射用ウィンドウ123における絶縁性薄膜及び導電性薄膜は電極108側から押される形となり、液状試料115を挟み込んだ電子線照射用のウィンドウ123と信号伝達用ウィンドウ124の間隔を薄く保つことが可能となる。
【0127】
なお、第13の構成例として、第6の構成例に相当する試料ホルダに減圧膜つきシール材を適用した例を示したが、実施例1として説明した他の構成例やその変形例に適用することも可能である。
【実施例3】
【0128】
図19に、荷電粒子線装置の構成図を示す。筐体2010は、観察対象である試料に対して電子線を照射する電子光学系が内蔵されるカラム2610と試料が載置される試料室2600とを含む。電子光学系は、電子銃2011と、電子銃2011から放出された電子線2012を集束し、試料に向けて照射するコンデンサレンズ2060及び対物レンズ2062、電子線2012の非点収差を補正する非点収差補正器2061、電子線2012を試料上で2次元的に走査する偏向器2013を含む。試料室2600には試料から発生する電子信号を検出する検出器2017、筐体2010内部を真空に保つための真空排気系2000を備える。試料室2600には、3次元的に移動可能なステージ2064が設けられている。ステージ2064には、実施例1または実施例2として説明した試料ホルダの母材127および電極108が組み込まれている。
【0129】
主制御部2014は表示部2016が接続されたコンピュータ2015に接続されている。コンピュータ2015及び表示部2016上のユーザーインターフェース(GUI)を用いて、ユーザーは走査電子顕微鏡を操作する。コンピュータ2015はユーザーがGUIを用いて入力した命令を主制御部2014に伝達し、主制御部2014はその命令にしたがって走査電子顕微鏡の電子光学系、真空排気系2000、ステージ2064および図示しないその他構成部を制御する。さらに、コンピュータ2015は主制御部2014が受け取った検出器2017または電極108からの信号データを受け取り、表示部2016へ画像として表示する。
【0130】
ユーザーは、ステージ2064に組み込まれた母材127に第1のシール材118、第2のシール材119、第2のチップ107を載置し、液状試料115を滴下した後に第1の部材102を固定して観察を行う。
【0131】
または、ステージ2064に、実施例1または実施例2として説明した試料ホルダの電極108を組み込むようにしてもよい(この場合の荷電粒子線装置は、
図19に示す荷電粒子線装置から母材127を除いたものに相当する)。ユーザーは、電極108に母材127を載置して
図19に示す状態とし、その後同様に試料の観察を行う。
【符号の説明】
【0132】
101,301,401,501,601,701,801,901,1001,1101,1201,1301,1401:試料ホルダ、102:第1の部材、103:第2の部材、104:絶縁性薄膜、105:第1のチップ、106:絶縁性薄膜、107:第2のチップ、108:電極、109:導電性薄膜、110:固定シール材、111:蓋部材、112:電子線照射面、113:傾斜面、114:導電性ペースト、115:液状試料、116:ガイド、116’:ガイド部、117:ネジ、118:第1のシール材、118’:第1のシール部、119:第2のシール材、119’:第2のシール部、120:第1の空間、121:第2の空間、122:試料、123:電子線照射用ウィンドウ、124:信号伝達用ウィンドウ、125:ネジ蓋、125a:開口、126:ワッシャ、127:母材、128:貫通穴、129:ネジ穴、130:チップ逃げ、140:Siゴムシート、150:Si系接着材シート、200:第2の底部シール面、203:第1の底部シール面、204:第2のシール面間距離、205:上部シール面、302:液だまり、402:第1チップ用ガイド、403:第2チップ用ガイド、404:第2部材用ガイド、405:第1部材用ガイド、510:接着材、702:固定用フック、703:フック用そり、704:第1フック用ガイド、705:第2フック用ガイド、810,811:ネジ構造、910:ガス道、911:減圧膜、911’:減圧膜部、1010:ガス道、1011:減圧膜、1012:ガス圧調整機構、1013:棒状部材、1110:ヒーター、1210:シール膜、1310:減圧膜機能付きシール材、1311:第3の空間、1402:減圧膜機能付きシート状シール材、1403:電極用中心穴、2000:真空排気系、2010:筐体、2011:電子銃、2012:電子線、2013:偏向器、2014:主制御部、2015:コンピュータ、2016:表示部、2017:検出器、2060:コンデンサレンズ、2061:非点収差補正器、2062:対物レンズ、2064:ステージ、2600:試料室、2610:カラム。