(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】口腔粘膜へのアポモルフィンの投与によるパーキンソン病の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20230117BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20230117BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230117BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230117BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20230117BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
A61K31/485 ZMD
A61K9/70
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/30
A61K47/34
A61K47/36
A61P1/08
A61P25/16
(21)【出願番号】P 2017555387
(86)(22)【出願日】2016-04-19
(86)【国際出願番号】 US2016028265
(87)【国際公開番号】W WO2016172095
(87)【国際公開日】2016-10-27
【審査請求日】2019-04-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-17
(32)【優先日】2015-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500293320
【氏名又は名称】サノヴィオン ファーマシュティカルズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーンハート,スコット,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】クーンズ,マイケル,クリントン
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン,マデュ,スーダン
(72)【発明者】
【氏名】ビルバウルト,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ジオヴィナッゾ,アンソニー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】デュボウ,ジョーダン
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】阪野 誠司
【審判官】渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-545824(JP,A)
【文献】特表2012-530066(JP,A)
【文献】特開2004-043450(JP,A)
【文献】特表2007-509172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K47/00-47/69
A61K31/485
CA(STN)、Biosis(STN)、Medline(STN)、Embase(STN)、JSTplus(JDream III)、JMEDplus(JDream III)、JST7580(JDream III)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病を有する対象において「オフ」エピソードを治療する方法に用いるための医薬単位投与剤形であって、前記治療方法が、
(a)アポモルフィンの酸付加塩を含むアポモルフィン粒子を含む第1の部分及びpH中和剤を含む第2の部分を有するフィルムである該医薬単位投与剤形を用意するステップ、
並びに
(b)前記対象の用量漸
増による前記フィルムの有効量を決定するステップ
であって、対象に投与すべき初期用量が、12.5±2.5mgのアポモルフィンの酸付加塩であり、初期用量が有効量ではないと決定された場合には、前記フィルムの有効量を前記用量の漸増により決定する該ステップ、及び
(c)前記フィルムを前記有効量にて対象に舌下投与するステップ
を含む治療方法であり、
前記有効量の前記フィルムは、対象への投与後
に、
対象において、
(i)30分以内に少なくとも2.64ng/mLのアポモルフィン血漿濃度、及び
(ii)10ng/mL未満であるアポモルフィンCmax
を生じるのに十分な量のアポモルフィンの酸付加塩を含む、前記医薬単位投与剤形。
【請求項2】
対象への投与後にアポモルフィンT
maxが20から60分までである、請求項1に記載の使用のための前記医薬単位投与剤形。
【請求項3】
前記フィルムが、少なくとも2.64ng/mLのアポモルフィン血漿濃度を少なくとも60分間維持する、請求項1又は2に記載の使用のための前記医薬単位投与剤形。
【請求項4】
前記フィルムが100g×mm以上の靭性を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項5】
前記フィルムが、60kDa以上の重量平均分子量を有する薬学的に許容される高分子量ポリマーを20%(w/w)以上含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項6】
前記フィルムが、前記薬学的に許容される高分子量ポリマーを20%(w/w)から40%(w/w)まで含む、請求項5に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項7】
前記薬学的に許容される高分子量ポリマーが60kDaから1,000kDaまでの重量平均分子量を有する、請求項5又は6に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項8】
前記薬学的に許容される高分子量ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはメチルセルロース、又はそれらの組合せである、請求項5から7のいずれか一項に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項9】
前記薬学的に許容される高分子量ポリマーが、ヒドロキシエチルセルロースである、請求項8に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項10】
前記フィルムが、60kDa未満の重量平均分子量を有する薬学的に許容される低分子量ポリマーを5%(w/w)以下含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項11】
前記フィルムが、前記薬学的に許容される低分子量ポリマーを0.01%(w/w)から5%(w/w)まで含む、請求項10に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項12】
前記薬学的に許容される低分子量ポリマーが5kDaから50kDaまでの重量平均分子量を有する、請求項10又は11に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項13】
前記フィルムが150g×mm以上の靭性を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項14】
前記フィルムが0%(w/w)を超え5%(w/w)未満の可塑剤を含有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項15】
前記第2の部分が浸透促進剤を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項16】
前記第1の部分が浸透促進剤を含まない、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【請求項17】
前記フィルムが2層フィルムである、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用のための医薬単位投与剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、パーキンソン病の治療方法及び治療のための医薬組成物に関する。この方法は、対象の口腔粘膜にアポモルフィンの治療用量を投与することを含み得る。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)は、中枢神経系の進行性変性疾患である。パーキンソン病の発症リスクは加齢と共に増加し、罹患個体は、通常は40歳を超える成人である。パーキンソン病は世界のあらゆる地域で生じ、米国だけで150万人超の個体が罹患している。
【0003】
パーキンソン病の主因は明らかではないが、この病気は、黒質のドーパミン作動性ニューロンの変性を特徴とする。黒質は、随意運動の制御を助ける脳下部、又は脳幹の一部分である。これらのニューロンの欠損により引き起こされる、脳でのドーパミンの欠乏が、目に見える疾患症状を引き起こすと考えられている。
【0004】
PDの症状は、患者毎に異なる。最も一般的な症状は、動作の不十分さ及び硬直であり、随意性骨格筋の硬直の増大を特徴とする。さらなる症状としては、休止時振戦、運動緩慢(動作の遅延)、平衡感覚の不良、及び歩行障害が挙げられる。一般的な二次的症状としては、抑うつ、睡眠障害、めまい、前屈姿勢、認知症、発話障害、呼吸障害、及び嚥下障害が挙げられる。症状は時間と共に徐々に悪化し、最終的には死に至る。
【0005】
PDに対する様々な療法上の治療薬が利用可能である。おそらく最もよく知られているのは、ドーパミン前駆体であるレボドパである。レボドパ投与は症状の劇的な改善をもたらすことができるが、患者は、吐き気及び嘔吐をはじめとする重篤な副作用に見舞われる場合がある。さらに、多くの患者は、不随意的な舞踏病性運動を発症し、これは、ドーパミン受容体の過剰な活性化の結果である。これらの運動は、通常は、顔及び四肢を侵し、非常に重篤になる場合がある。ドーパミン前駆体(例えば、レボドパ)又はドーパミンアゴニストの用量を減らした場合、そのような運動は消失するが、そうすると一般的には硬直が元に戻る。さらに、有益な効果と望ましくない効果との間の差(すなわち、治療濃度域)は、治療期間が長くなるにつれて徐々に狭くなる。
【0006】
ある特定のドーパミン受容体調節因子(例えば、ドーパミン前駆体又はアゴニスト)を使用する長期治療のさらなる合併症は、病状の急速な変動の発生であり、患者は、数分から数時間の範囲の間、可動性と不動性とを突然切り替える。この変動には、数種類の一般型がある。「薬効の消滅(wearing-off)」現象とは、次の用量が効果を生じる前に、レボドパの用量によってもたらされる症状軽減が低下することである(Van Laar T., CNS Drugs, 17:475 (2003))。この現象は患者の投与スケジュールに関連しているので、多くの場合、そのような期間は比較的予測しやすい(Dewey RB Jr., Neurology, 62(suppl 4):S3-S7 (2004))。対照的に、「オン-オフ」現象は、レボドパの効果の「オン」期から、無動、硬直、及び振戦の「オフ」期への突然の移行であり、これは、数分からさらには数秒で生じ(Swope DM., Neurology, 62(suppl 4):S27-S31 (2004))、患者の投与スケジュールに対して確証のある関連性はない。その他の2種類の現象は、レボドパの作用が著明に遅延する、遅延型「オン」効果、及び効果がまったく生じない、投与失敗(「オン」効果なし又は用量スキップ効果(skipped-dose effect)としても知られる)である。患者は、歩行中に突然停止するか、又は少し前に正常に座った椅子から立ち上がることができなくなる場合もあるほどに、これらの様々な「オフ」状態によって、突然の可動性欠如がもたらさせることもある。
【0007】
アポモルフィンの皮下注入は、パーキンソン病の「オン-オフ」変動の治療に7~23分以内に有効となり、45~90分間続くことが証明されている。治験により、「オフ」期無動症の一貫した逆転が示されている。他のドーパミンアゴニストに勝る利点としては、迅速な作用開始及びより低い心理学的合併症の発生率が挙げられる。「オン-オフ」変動を有する患者での「救援療法」のために、アポモルフィンはまた、比較的短い半減期を有するという、他のドーパミンアゴニストに勝る利点も有する。
【0008】
アポモルフィンについての多数の製剤及び投与経路が研究されてきており、アポモルフィン療法は様々な合併症によって妨げられることが見出されている。例えば、経口投与経路で投与されたアポモルフィンが、小腸で及び/又は、吸収に際して、肝臓で、多大な代謝を受けることから、アポモルフィン錠剤の経口投与には、必要な治療効果を達成するために高用量が必要であった。アポモルフィン錠剤の舌下投与は、長期使用により重篤な胃炎を引き起こし、治療対象の患者の半数で頬粘膜潰瘍を伴った(Deffond et al., J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 56:101 (1993)を参照されたい)。鼻内投与は、一時的な鼻閉塞、灼熱感並びに鼻及び口唇の腫脹をもたらした(Koller et al., Neurology 62:S22 (2004)を参照されたい)。アポモルフィンの皮下注入は有効であることが示されているが、運動機能の障害のために、針による注入はパーキンソン病患者には困難である。さらに、皮下注入の一般的な副作用は結節の形成であり、これは多くの場合に感染し、抗生物質治療又は外科的創面切除を必要とする(Prietz et al., J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 65:709 (1998)を参照されたい)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パーキンソン病患者が使用するのが安全で、効果的、かつ簡便な、新規のアポモルフィンレジメンに対する必要性がある。特に、広範な患者集団において有効である一方、有害事象の可能性を低減するレジメンに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、パーキンソン病を治療する方法、及び治療するための(例えば、パーキンソン病を有する対象において「オフ」エピソードを治療するための)医薬単位投与剤形を特徴とする。
【0011】
第1の態様では、本発明は、対象においてパーキンソン病(例えば、パーキンソン病を有する対象において「オフ」エピソード)を治療する方法であって、
(a)アポモルフィンの酸付加塩を含有するアポモルフィン粒子を含む第1の部分及びpH中和剤を含有する第2の部分を有するフィルムを用意するステップ、並びに
(b)フィルムを対象の口腔粘膜に(例えば、舌下に)投与するステップ
を含み、
フィルムは、対象への投与後に平均で、
(i)30分以内に少なくとも2.64ng/mLのアポモルフィン血漿濃度、及び
(ii)10ng/mL未満(例えば、9ng/mL未満、8ng/mL未満、7ng/mL未満、6ng/mL未満、5ng/mL未満、又は4.7ng/mL未満)の前記対象のアポモルフィンCmax
を生じるのに十分な量のアポモルフィンの酸付加塩を含有する、方法を特徴とする。
【0012】
第1の態様の一部の実施形態では、フィルムは、アポモルフィンの酸付加塩を10±2.5mg、12.5±2.5mg、又は15±2.5mg(例えば、12.5±2.5mg)含有する(例えば、口腔粘膜に(例えば、舌下に)投与されたアポモルフィンへの応答において高い舌下取込みを有する対象に投与する場合)。第1の態様のある特定の実施形態では、フィルムは、アポモルフィンの酸付加塩を15.0±2.5mg、20.0±2.5mg、又は25.0±2.5mg(例えば、17.5±2.5mg)含有する(例えば、口腔粘膜に(例えば、舌下に)投与されたアポモルフィンへの応答において中位の舌下取込みを有する対象に投与する場合)。特定の実施形態では、フィルムは、アポモルフィンの酸付加塩を30.0±5.0mg、35.0±5.0mg、又は40.0±5.0mg(例えば、25.0±5.0mg)含有する(例えば、口腔粘膜に(例えば、舌下に)投与されたアポモルフィンへの応答において低い舌下取込みを有する対象に投与する場合)。さらなる実施形態では、ステップ(a)は、用量調節(例えば、用量漸増(uptitration))によってアポモルフィンに対する対象の応答性を判定するステップを含む。
【0013】
第2の態様では、本発明は、対象においてパーキンソン病(例えば、パーキンソン病を有する対象において「オフ」エピソード)を治療する方法を特徴とする。本発明の方法は、
(a)舌下投与のアポモルフィンへの応答において低い取込み、中位の取込み、又は高い取込みを有すると用量調節によって確認された対象を用意するステップ、及び
(b)
(1)対象が、舌下投与のアポモルフィンへの応答において低い取込みを有すると確認された対象である場合、アポモルフィンの酸付加塩10±2.5mg、12.5±2.5mg、又は15±2.5mgを含有する治療用量を対象に舌下投与するステップ、
(2)対象が、舌下投与のアポモルフィンへの応答において中位の取込みを有すると確認された対象である場合、アポモルフィンの酸付加塩15.0±2.5mg、20.0±2.5mg、又は25.0±2.5mgを含有する治療用量を対象に舌下投与するステップ、又は
(3)対象が、舌下投与のアポモルフィンへの応答において高い取込みを有すると確認された対象である場合、アポモルフィンの酸付加塩30.0±5.0mg、35.0±5.0mg、又は40.0±5.0mgを含有する治療用量を対象に舌下投与するステップ
を含み、ここで、治療用量は、アポモルフィンの酸付加塩を含有するアポモルフィン粒子を含む第1の部分及びpH中和剤を含有する第2の部分を有するフィルムの形態で投与される。舌下投与のアポモルフィンへの応答において低い取込みを有すると確認された対象に投与される治療用量は、舌下投与のアポモルフィンへの応答において中位の取込みを有すると確認された対象に投与される治療用量よりも大きい。また、舌下投与のアポモルフィンへの応答において中位の取込みを有すると確認された対象に投与される治療用量は、舌下投与のアポモルフィンへの応答において高い取込みを有すると確認された対象に投与される治療用量よりも大きい。
【0014】
第2の態様の一部の実施形態では、ステップ(b)において(1)、(2)、及び(3)の組合せが以下の値:
i) (1) 10±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
ii) (1) 10±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
iii) (1) 10±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
iv) (1) 10±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
v) (1) 10±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
vi) (1) 10±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
vii) (1) 10±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
vii) (1) 10±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
ix) (1) 10±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
x) (1) 12±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xi) (1) 12±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
xii) (1) 12±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
xiii) (1) 12±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xiv) (1) 12±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
xv) (1) 12±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
xvi) (1) 12±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xvii) (1) 12±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
xviii) (1) 15±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
xix) (1) 15±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xx) (1) 15±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
xxi) (1) 15±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
xxii) (1) 15±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xxiii) (1) 15±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
xxiv) (1) 15±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
xxv) (1) 15±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xxvi) (1) 15±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;又は
xxvii) (1) 15±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
を取り、但し(3)の値>(2)の値>(1)の値である。
【0015】
第1の態様又は第2の態様の特定の実施形態では、対象は、アポモルフィンの酸付加塩を投与する前に、制吐剤の有効量を投与される。第1の態様又は第2の態様のある特定の実施形態では、制吐剤の有効量が、アポモルフィンを投与する前に対象に少なくとも2日間投与される。
【0016】
第3の態様では、本発明は、アポモルフィンの酸付加塩の粒子を含む第1の部分及びpH中和剤を含有する第2の部分並びに浸透促進剤を含有するフィルムである医薬単位投与剤形を特徴とする。
【0017】
任意の態様の一部の実施形態では、フィルムは100g×mm以上(例えば、150g×mm以上)の靭性(toughness)を有する。任意の態様のある特定の実施形態では、フィルムは100g×mmから1000g×mmまで(例えば、100g×mmから800g×mmまで又は150g×mmから800g×mm)の範囲にある靭性を有する。
【0018】
任意の態様の特定の実施形態では、第2の部分は浸透促進剤を含有する。任意の態様のある特定の実施形態では、第1の部分は浸透促進剤を含有する。任意の態様の他の実施形態では、第1の部分は浸透促進剤を含有しない。任意の態様のさらなる実施形態では、フィルムは浸透促進剤を10%(w/w)未満(例えば、0.001%(w/w)から10%(w/w)まで、0.1%(w/w)から10% (w/w)まで、又は0.1%(w/w)から5%(w/w)まで)含む。任意の態様のさらに他の実施形態では、浸透促進剤がそれぞれ独立して、メントール、イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリソルベート、トコフェロールの誘導体、ポロキサマー、モノグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸、若しくは脂肪アルコール、又はそれらの組合せである。任意の態様の特定の実施形態では、浸透促進剤はメントール及びモノステアリン酸グリセロールの組合せである。
【0019】
任意の態様の一部の実施形態では、フィルムは、60kDa以上の重量平均分子量を有する薬学的に許容される高分子量ポリマーを20%(w/w)以上含有する。任意の態様のある特定の実施形態では、フィルムは、薬学的に許容される高分子量ポリマーを20%(w/w)から40%(w/w)まで含有する。任意の態様の特定の実施形態では、薬学的に許容される高分子量ポリマーは60kDaから1,000kDaまで(例えば、60kDaから500kDaまで)の重量平均分子量を有する。任意の態様の他の実施形態では、薬学的に許容される高分子量ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはメチルセルロース、又はそれらの組合せである。
【0020】
任意の態様のある特定の実施形態では、フィルムは、60kDa未満(例えば、5kDaから50kDaまで)の重量平均分子量を有する薬学的に許容される低分子量ポリマーを5%(w/w)以下(例えば、0.01%(w/w)から5%(w/w)まで、0.1%(w/w)から4%(w/w)まで、又は1%(w/w)から3%(w/w)まで)含有する。任意の態様の特定の実施形態では、薬学的に許容される低分子量ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはメチルセルロース、又はそれらの組合せである。任意の態様の一部の実施形態では、薬学的に許容される低分子量ポリマーはヒドロキシプロピルセルロースである。任意の態様の他の実施形態では、第2の部分は薬学的に許容される低分子量ポリマーを含有しない。
【0021】
任意の態様の特定の実施形態では、本発明の医薬単位投与剤形はアポモルフィンの酸付加塩を(例えば、塩酸アポモルフィン)2mgから60mgまで(例えば、8mgから45mgまで)を含有する。任意の態様の他の実施形態では、本発明の医薬単位投与剤形は、例えば、アポモルフィンの酸付加塩(例えば、塩酸アポモルフィン)10.0±2.0mg、12.5±2.5mg、15.0±2.5mg、17.5±2.5mg、20.0±5.0mg、25.0±5.0mg、30.0±10.0mg、30.0±5.0mg、35.0±10.0mg、35.0±5.0mg、又は40.0±5.0mgを含有する。任意の態様のある特定の実施形態では、本発明の医薬単位投与剤形は、例えば、アポモルフィンの酸付加塩(例えば、塩酸アポモルフィン)10.0±2.0mg、12.5±2.5mg、15.0±2.5mg、20.0±5.0mg、25.0±5.0mg、30.0±5.0mg、35.0±5.0mg、又は40.0±5.0mgを含有する。任意の態様では、アポモルフィンの酸付加塩は塩酸アポモルフィンであってよい。
【0022】
任意の態様の一部の実施形態では、pH中和剤は5±2のpKaを有する有機塩基(例えば、ピリドキシン、メグルミン、リシン、Eudragit E、ジエタノールアミン、グリシン、シトレート、アセテート、ヒスチジン、N-メチルグルカミン、又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)である。任意の態様の特定の実施形態では、pH中和剤はピリドキシンである。
【0023】
任意の態様の特定の実施形態では、フィルムは水性媒体(例えば、水)中において2分以内に(例えば、110秒以内に又は100秒以内に)崩壊する。任意の態様のある特定の実施形態では、フィルムは水性媒体(例えば、水)中において30秒以上で(例えば、40秒以上で又は50秒以上で)崩壊する。任意の態様の一部の実施形態では、フィルムは水性媒体(例えば、水)中において30秒から2分まで(例えば、40秒から1分まで、1分から2分まで、又は50秒から100秒まで)の範囲にある時間内に崩壊する。
【0024】
任意の態様のある特定の実施形態では、フィルムは多層フィルム(例えば、2層フィルム)である。
【0025】
任意の態様の特定の実施形態では、医薬単位投与剤形は、有効量で投与した場合、少なくとも2.64ng/mL(例えば、少なくとも2.7ng/mL、少なくとも2.8ng/mL、又は少なくとも2.9ng/mL)のアポモルフィン血漿濃度を少なくとも60分(例えば、少なくとも70分、少なくとも80分、又は少なくとも90分)間維持する。
【0026】
任意の態様の一部の実施形態では、有効量で対象に投与した場合、フィルムは、対象の口腔粘膜への(例えば、舌下)投与後に10分から60分まで(例えば、20分から60分まで、30分から60分まで、10分から20分まで、10分から30分まで、10分から40分まで、10分から50分まで、20分から30分まで、20分から40分まで、20分から50分まで、30分から40分まで、又は30分から50分まで)のアポモルフィンTmaxを生じる。任意の態様のある特定の実施形態では、有効量で対象に投与した場合、フィルムは、対象において2.64ng/mLから10ng/mLまで(例えば、2.64ng/mLから9ng/mL、8ng/mL、7ng/mL、6ng/mL、5ng/mLまでの、又は2.64ng/mLから4.7ng/mLまで)のアポモルフィンCmaxを生じる。任意の態様の特定の実施形態では、医薬単位投与剤形は、アポモルフィンの酸付加塩の有効量を含有することができ、且つ医薬単位投与剤形の対象への投与の後、2.64ng/mLから7.1ng/mLまでのCmax及び30分から50分までのTmaxを生じることができる。任意の態様の他の実施形態では、医薬単位投与剤形は、アポモルフィンの酸付加塩の有効量を含有することができ、且つ医薬単位投与剤形の対象への投与の後、2.64ng/mLから5.0ng/mLまでのCmax及び20分から60分までのTmaxを生じることができる。任意の態様のさらに他の実施形態では、医薬単位投与剤形は、アポモルフィンの酸付加塩の有効量を含有することができ、且つ医薬単位投与剤形の対象への投与の後、2.64ng/mLから4.7ng/mLまでのCmax及び30分から60分までのTmaxを生じることができる。任意の態様のある特定の他の実施形態では、医薬単位投与剤形は、アポモルフィンの酸付加塩の有効量を含有することができ、且つ医薬単位投与剤形の対象への投与の後、2.64ng/mLから5.0ng/mLまで(例えば、2.64ng/mLから4.7ng/mLまで)のCmax及び10分から30分までのTmaxを生じることができる。任意の態様の特定の実施形態では、医薬単位投与剤形が、対象に有効量で投与した場合、対象において有害事象の発生がより少ない。任意の態様の一部の実施形態では、低減した有害事象とは傾眠(somnolescence)、吐き気、あくび、頭痛、又は多汗である。
【0027】
定義
用語「約」とは、本明細書において、記載されている値の±10%である数をいう。
【0028】
使用する用語「Cmax」とは、本明細書において、「オン」状態を生じるのに十分な量のアポモルフィンフィルムを服用している対象の群(例えば、10以上)において生じた、観察された平均最大血漿濃度をいうが、この場合、個々の対象にそれぞれ投与されたフィルムの量は、所与の投与経路(例えば、口腔粘膜に、例えば舌下)に対して個々の対象の用量漸増時に投与された有効最低量(すなわち、Cmaxは生物学的利用率の変動の原因である)である。
【0029】
用語「有効量」とは、本明細書において、アポモルフィンに関して、以下の効果:(1)投与の45分以内(例えば、30分以内)に対象において少なくとも2.64ng/mLのアポモルフィンの血漿濃度、及び(2)そのような投与を投与して45分以内(例えば、30分以内)に「オン」状態にある対象、の内の少なくとも1つを生じるように1度に対象に投与されるアポモルフィンの量をいう。
【0030】
用語「有害事象がより少ない」とは、本明細書において、より高いCmaxを生じる単位用量剤形を服用している対象の群(例えば、10以上)において生じた有害事象の平均数及び重症度と比較した、本発明のフィルムの投与後に「オン」状態を生じるのに十分な量のアポモルフィンフィルムを服用している対象の群(例えば、10以上)において生じた有害事象の平均観察数及び重症度をいう。本発明のフィルムにより生じるCmaxは、2.64ng/mLから10ng/mLまで(例えば、2.64ng/mLから9ng/mL、8ng/mL、7ng/mL、6ng/mL、5ng/mLまで、又は2.64ng/mLから4.7ng/mLまで)とすることができ、任意選択で、25分から70分まで(例えば、30分から70分まで、35分から60分まで、30分から50分まで、30分から40分まで、又は30分から70分まで)のTmaxを有する。本発明の一部の医薬単位投与剤形はしたがって、医薬単位投与剤形の対象への投与の後、2.64ng/mLから7.1ng/mLまでのCmax及び30分から50分までのTmaxを提供することによって、対象において「オン」状態を生じることができ且つ有害事象の発生をより少なくすることができる。本発明のある特定の医薬単位投与剤形はしたがって、医薬単位投与剤形の対象への投与の後、2.64ng/mLから5.0ng/mLまでのCmax及び25分から60分までのTmaxを提供することによって、対象において「オン」状態を生じることができ且つ有害事象の発生をより少なくすることができる。本発明の特定の医薬単位投与剤形はしたがって、医薬単位投与剤形の対象への投与の後、2.64ng/mLから4.7ng/mLまでのCmax及び30分から60分までのTmaxを提供することによって、対象において「オン」状態を生じることができ且つ有害事象の発生をより少なくすることができる。本発明のある特定の他の医薬単位投与剤形はしたがって、医薬単位投与剤形の対象への投与の後、2.64ng/mLから5.0ng/mLまで(例えば、2.64ng/mLから4.7ng/mLまで)のCmax及び25分から40分までのTmaxを提供することによって、対象において「オン」状態を生じることができ且つ有害事象の発生をより少なくすることができる。有害事象とは、例えば、傾眠、吐き気、あくび、頭痛、又は多汗であり得る。
【0031】
「pH中和剤」とは、本明細書において、本発明の単位投与剤形中に存在する任意の塩基性成分をいう。本発明の単位投与剤形で使用することができるpH中和剤としては、有機塩基(例えば、ピリドキシン、メグルミン、リシン、Eudragit E、ジエタノールアミン、グリシン、シトレート、アセテート、ヒスチジン、N-メチルグルカミン、又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、無機塩基(例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はリン酸塩)、及びそれらの混合物が挙げられる。pH中和剤は、単位投与剤形をpH7の非緩衝水1mL中に入れた場合に、2.5と8.0との間、好ましくは4.5と6.5との間のpHを有する溶液を生じるのに十分な量で一般には存在する。
【0032】
用語「対象(被験体)」とは、本明細書において、パーキンソン病を有するヒトをいう。対象は、当分野で知られている技法、例えば、パーキンソン病統一スケール(UPDRS)又はHoehn及びYahrのスケールを使用することによりパーキンソン病を有すると診断し得る。
【0033】
用語「Tmax」とは、本明細書において、「オン」状態を生じるのに十分な量のアポモルフィンフィルムを服用している対象の群(例えば、10以上)において生じた最大血漿濃度への平均観察時間をいうが、この場合、個々の対象にそれぞれ投与されたフィルムの量は所与の投与経路(例えば、口腔粘膜に、例えば舌下)に対して個々の対象の用量漸増時に投与された有効最低量(すなわち、Tmaxは生物学的利用率の変動の原因である)である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】フィルムA、フィルムB(期間1及び期間2と示されている)、及び皮下用Apokyn(登録商標)に関する薬物動態曲線を示すチャートである。
【
図2】フィルムA、フィルムB、及び先に開示されたある特定の治療薬に関する薬物動態曲線を示すチャートである。
【
図3】フィルムB、フィルムE、フィルムF、及び皮下用ApoGo(2mg及び3mg用量)に関する薬物動態曲線を示すチャートである。
【
図4】フィルムDに関する薬物動態曲線を示すチャートである。
【
図5】
図5Aは本発明の医薬単位投与剤形の投与後の対象のUPDRSパートIII(運動機能)スコアにおける経時的低下を示すチャートである。「ITT」とは、治療意図(intention to treat)を表し、パープロトコル(per protocol)で治療された対象及び誤って投与された対象を含めて、19人の対象全員に対するデータを示す。「レスポンダー」曲線は、パープロトコルで投与されていなかった2人の対象を含めて、療法に応答した15人の対象に対するデータを示す。「パープロトコル」曲線は、2人の非レスポンダーを含めて、本発明の医薬単位投与剤形をパープロトコルで服用した15人の対象に対するデータを示す。
図5Bは本発明の医薬単位投与剤形の投与後の各時点において「オン」である対象の百分率を示すチャートである。各バーは、
図5Aに記載の患者群に相当する。
【
図6】
図6AはUPDRSパートIIIにおいて少なくとも30%低下を達成した対象の百分率を示すチャートである。各バーは、
図5Aに記載の患者群に相当する。
図6Bは臨床的に意義のある「オン」状態を達成している対象の百分率を示すチャートである。対象は2群に分けられている:(1)1日当たりレボドパを900mg未満服用及び(2)1日当たりレボドパを900mg超服用。
【
図7】
図7Aは臨床的に意義のある「オン」状態を達成している対象の百分率を示すチャートである。対象は2群に分けられている:(1)1日当たり3以下の「オフ」エピソードを有する対象及び(2)1日当たり4以上の「オフ」エピソードを有する対象。
図7Bは種々の群に分けられた対象のうちで臨床的に意義のある「オン」状態を達成している対象の百分率を示すチャートである。本発明の医薬単位投与剤形は、パーキンソン病を有する対象の幅広い集団において「オフ」エピソードの治療に有用とし得ることが、本図によって実証されている。
【
図8】チャートにおいて明示されるように、アポモルフィンの酸付加塩の最小用量の投与後、完全な「オン」状態を達成している対象の百分率を示すチャートである。
【
図9】
図9Aは「オン」状態を達成した対象(レスポンダー)及び「オン」状態を達成しなかった対象(非レスポンダー)に関するアポモルフィン血漿レベルを示すチャートである。口腔粘膜に投与されたアポモルフィンに対する平均最低有効濃度が「平均MEC」曲線として示されている。
図9Bは「オン」状態を達成した対象(レスポンダー)及び「オン」状態を達成しなかった対象(非レスポンダー)のUPDRSパートIII(運動能力)スコアにおける低下を示すチャートである。
【
図10】アポモルフィンフィルムの投与用量に対して列記された有害事象を有する対象の百分率を示すチャートである。
【
図11A】フィルムG、H、I、J、及びK、並びに図中に記載の改変を受けたアポモルフィン層を有するフィルムに関する破裂力(g)及び靭性(g×mm)を示すチャートである。
【
図11B】フィルムG、H、I、J、及びK、並びに図中に記載の改変を受けたフィルムに関する破裂力(g)及び靭性(g×mm)を示すチャートである。
【
図12】
図12Aは二つ折り後のフィルムG、H、I、J、又はKと記載された医薬単位投与剤形の光学顕微鏡写真の図である。
図12Bは二つ折り後のフィルムLの光学顕微鏡写真の図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、対象においてパーキンソン病(例えば、パーキンソン病を有する対象において運動性低下又は「オフ」エピソード)を治療する方法及び組成物に関する。本発明の方法は、口腔粘膜(例えば、舌下)を介したアポモルフィン治療を受けている対象は、ある特定の他のドーパミン受容体調節因子による療法を受けている対象とは対照的に、疾患進行に伴うアポモルフィン治療濃度域の狭小化を示すようには思われない、という発見に基づいている。さらに、アポモルフィン投与有効性における対象毎の変動は、口腔粘膜を介してアポモルフィン又はその酸付加塩を取り込む各対象の個々の能力に関連しているように思える。したがって、口腔粘膜を介してアポモルフィン又はその酸付加塩を取り込むための対象の能力を確認することで、(1)口腔粘膜(例えば、舌下)を介したアポモルフィン又はその酸付加塩について高い取込みを示す対象の用量を低下させること、及び(2)口腔粘膜(例えば、舌下)を介して低い取込みを示す対象向けにはアポモルフィン又はその酸付加塩用量を増大すること、を可能とする。有利なことに、口腔粘膜を介してアポモルフィンの高い取込みを示す対象の口腔粘膜に、より低い用量のアポモルフィン又はその酸付加塩を投与することによって、有害作用の発生を低減し得るとともに、アポモルフィン血漿濃度が高いことに関連した有害作用が高率であるという危険を伴わずに、口腔粘膜を介してアポモルフィンの低い取込みを示す対象の口腔粘膜に、より高い用量のアポモルフィン又はその酸付加塩を投与し得る。
【0036】
本発明はまた、(1)アポモルフィンの酸付加塩を含有する粒子を含む第1の部分及び(2)pH中和剤を含有する第2の部分を含有するフィルムである医薬単位投与剤形を特徴とする。医薬単位投与剤形は、パーキンソン病を有し、それ故運動技能の低下を示す対象による自己投与向けを意図した製品に望ましい靭性を示すことができる。特に、必要な機械的特性を欠いている医薬単位投与剤形の脆弱性によって、パーキンソン病を有する対象によるその自己投与が妨げられる恐れがあり、このため不正確な(例えば、不十分な)アポモルフィン投与を招く恐れがある。これ故、本発明の医薬単位投与剤形は、100g×mm以上(例えば、150g×mm以上)の靭性を示すことができる。さらに、本発明の医薬単位投与剤形の靭性によって、易壊性の製剤より比較的早い速度でそれら剤形の製造がより容易となっている。靭性は引張強さの尺度を提供し、且つこれは破裂力の産物であるとともに、標準プローブを使用してフィルムを穿孔するのに必要な力を測定する破裂力試験時のフィルムの拡延である。本発明の医薬単位投与剤形の靭性を決定するのに有用な試験は、Film and Laminate Puncturing Test, ASTM F1306である。
【0037】
本発明の方法及び組成物は、アポモルフィン又はその酸付加塩は、口腔粘膜に投与された場合、約2.64ng/mLの最低有効濃度を示すという発見によりさらに特徴付けられるが、一方、パーキンソン病を有する対象におけるアポモルフィンの最低有効濃度は、点滴静注に対しては4.7ng/mLであると決定されていた(van Laar et al., Clin. Neuropharmacol., 21:152-158, 1998)。
【0038】
本発明の投与剤形及び方法はアポモルフィン療法に伴う有害事象を低減し得る。
【0039】
治療の方法
本発明は、対象においてパーキンソン病を治療する(例えば、パーキンソン病を有する対象において運動性低下又は「オフ」エピソードを治療する)方法を特徴とする。本発明の方法は対象の口腔粘膜(例えば、舌下)に、アポモルフィン又はその酸付加塩を含有する粒子を含む第1の部分及びpH中和剤を含有する第2の部分を有する、経口アポモルフィンフィルムを投与することを含む。フィルムを投与する前に、対象は、口腔粘膜を介した(例えば、舌下取込み)アポモルフィンについて、低い取込み、中位の取込み、又は高い取込みを有すると確認することができた。本発明の方法に従って投与されたフィルムは、アポモルフィンの少なくとも最低有効濃度(すなわち、少なくとも2.64ng/mL)を生じるのに十分なアポモルフィン含量を有する、異なる濃度の所定の複数用量から選択することができる。本明細書に記載の医薬単位投与剤形の全ての実施形態が、本発明の方法に従って使用することができる。
【0040】
薬物動態/薬力学
アポモルフィンの少なくとも最低有効濃度は、本発明の一部の方法に従って、対象に経口アポモルフィンフィルムを投与して30分以内に達成することができる。本発明の方法に従ってフィルムを投与後に、30ng/mL未満(例えば、20ng/mL未満、10ng/mL未満、7ng/mL又は5ng/mL未満)のアポモルフィンCmaxを生じるのが好ましい。例えば、アポモルフィンCmaxは、2.64ng/mLから30ng/mLまで(例えば、2.64ng/mLから20ng/mLまで、2.64ng/mLから10ng/mLまで、又は2.64ng/mLから5ng/mLまで)の範囲とすることができる。本発明の方法に従って投与されたアポモルフィンフィルムについてTmaxは、10分から1時間まで(例えば、20分から1時間まで、又は20分から50分まで)の範囲にあることが、好ましい。
【0041】
本発明の方法に従って治療された対象は、口腔粘膜(例えば、舌下)を介して投与されたアポモルフィンについて、低い取込み、中位の取込み、又は高い取込みを有すると確認することができる。対象の確認については、当分野で知られている方法、例えば、用量調節を使用して行うことができる。用量調節は用量漸増であることが好ましい。
【0042】
用量漸増には、対象の口腔粘膜にアポモルフィンの第1の所定の用量(例えば、アポモルフィンの酸付加塩の12.5±2.5mg)を投与すること、及びアポモルフィンの有効量が投与されたかどうか判定することを含むことができる。投与されたアポモルフィンの量が有効量であった場合、対象は口腔粘膜(例えば、舌下取込み)を介するアポモルフィンについて高い取込みを有すると確認される。アポモルフィンの量が有効量ではないと判定される場合、アポモルフィンの第2の所定の用量(例えば、アポモルフィンの酸付加塩の20.0±5.0mg)が対象の口腔粘膜に投与され、アポモルフィンの有効量が第2の所定の用量で投与されたかどうか判定される。第2の所定の用量で投与されたアポモルフィンの量が有効量ではないと判定される場合、アポモルフィンの第3の所定の用量(例えば、アポモルフィンの酸付加塩の30.0±5.0mg)が対象の口腔粘膜に投与され、アポモルフィンの有効量が第3の所定の用量で投与されたかどうか判定される。当業者であれば、第3の所定用量は第2の所定用量よりアポモルフィンの酸付加塩をより多く含有すること、そして第2の所定用量は第1の所定用量よりアポモルフィンの酸付加塩をより多く含有することが理解されよう。アポモルフィンの有効量が上の用量漸増ステップいずれか1つのステップにおいて投与されたかどうか判定することは、当業界で知られている方法に従って、例えば、アポモルフィン投与後所定の期間(例えば、30分又は45分)内に対象についてUPDRS(例えば、UPDRSパートIII)を評価することによって、又はアポモルフィン投与後所定の期間(例えば、30分又は45分)内に対象から得られた血液試料のアポモルフィン血漿濃度を測定することによって、実行することができる。
【0043】
医薬単位投与剤形
本発明の医薬単位投与剤形(pharmaceutical unit dosage form)は、第1の部分及び第2の部分を含有するフィルムである。フィルムは柔軟であり得る。本発明の医薬単位投与剤形は、アポモルフィンの酸付加塩及び薬学的に許容される賦形剤、例えば薬学的に許容されるポリマー、浸透促進剤、デンプン加水分解物、酸化防止剤、可塑剤、香味剤、及び着色剤を含有してよい。単一の薬学的に許容される賦形剤への参照には、記載されている種の範囲内の薬学的に許容される賦形剤の混合物が含まれる。
【0044】
本発明の医薬単位投与剤形は、使いやすさのために許容される機械的特性、例えば、100g×mm以上(例えば、150g×mm以上)の靭性を有し得る。特に、本発明の医薬単位投与剤形の靭性は、100g×mmから1000g×mmまで(例えば、100g×mmから800g×mmまで又は150g×mmから800g×mmまで)の範囲とすることができる。医薬単位投与剤形は柔軟であり得る。医薬単位投与剤形の柔軟性は、下に記載のように、可塑剤(例えば、グリセロール)の含量を変えることにより制御し得る。医薬単位投与剤形の靭性は、下に記載のように、本発明の薬学的に許容されるポリマーを使用することによりさらに高めることができる。
【0045】
医薬単位投与剤形の部分はドメインであっても層あってもよい。一部の実施形態では、2つの部分は層である。本発明のある特定の医薬単位投与剤形では、第1の部分は、アポモルフィンの酸付加塩の早期中和化を防止するためにpH中和剤を含まない場合もあり、その結果、中和されたアポモルフィンの酸化分解を防止することによってフィルムの有効期間が向上する。
【0046】
薬学的に許容されるポリマー
薬学的に許容されるポリマーを使用して、本発明の医薬単位投与剤形の靭性を制御することができる。特に、60kDa以上である重量平均分子量(Mw)を有する薬学的に許容される高分子量ポリマーを少なくとも20%(w/w)含有する本発明の医薬単位投与剤形が、望ましい度合いの靭性(例えば、少なくとも100g×mm又は少なくとも150g×mm)を示すことができる。医薬単位投与剤形は、60kDa以上(例えば、60kDaから1,000kDAまで)である重量平均分子量(Mw)を有する薬学的に許容される高分子量ポリマーを20%(w/w)以上(例えば、20%(w/w)から50%(w/w)まで、20%(w/w)から40%(w/w)まで、又は20%(w/w)から30%(w/w)まで)含有することができる。
【0047】
第1の部分は、60kDa以上(例えば、60kDaから1,000kDAまで)の重量平均分子量(Mw)を有する薬学的に許容される高分子量ポリマーを含有することができる。第2の部分は、60kDa以上(例えば、60kDaから1,000kDAまで)の重量平均分子量(Mw)を有する薬学的に許容される高分子量ポリマーを含有することができる。一部の実施形態では、薬学的に許容される高分子量ポリマーは60kDaから500kDaまでの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0048】
第1の部分は、60kDa未満(例えば、5kDaから50kDaまで)の重量平均分子量(Mw)を有する薬学的に許容される低分子量ポリマーを含有することができる。第2の部分は、60kDa未満(例えば、5kDaから50kDaまで)の重量平均分子量(Mw)を有する薬学的に許容される低分子量ポリマーを含有することができる。本発明のある特定の単位投与剤形では、第2の部分は、60kDa未満の重量平均分子量を有する追加のポリマー(例えば、60kDa未満の重量平均分子量を有する薬学的に許容されるセルロース誘導体)を含有しない。本発明の医薬単位投与剤形は、薬学的に許容される低分子量ポリマーを5%(w/w)未満(例えば、0.01%(w/w)から5% (w/w)まで、0.1%(w/w)から4%(w/w)まで、又は1%(w/w)から3%(w/w)まで)含有することができる。
【0049】
薬学的に許容されるポリマーはそれぞれ独立して、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、例えばNisso HPC SSL、日本曹達株式会社、日本)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース又はHPMCとしても知られている、Dow Chemical Company社から商品名Methocel(商標)で市販、Midland、MI)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、NATROSOL(商標)の商品名でHercules Incorporated社、Aqualon Divisionから市販)、若しくはメチルセルロース(例えば、Methocel(商標)、Dow Chemical Company社、Midland、MI)、又はそれらの組合せであってよい。
【0050】
可塑剤
本発明の医薬単位投与剤形は、可塑剤を含んでもよい。可塑剤は、一般的に、本発明の単位投与剤形の感触、柔らかさ、柔軟性(非湿潤状態での)を改質させることになる。可塑剤の例としては、限定するものではないが、グリセロール、プロピレングリコール、脂肪酸エステル、例えばオレイン酸グリセリル、多価アルコール、ソルビタンエステル、クエン酸エステル、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 400)、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、トリアセチン、マンニトール、キシリトール、及びソルビトールが挙げられる。一部の実施形態では、可塑剤はグリセロールである。本発明の医薬単位投与剤形は、0%(w/w)超及び8.5%(w/w)以下の(例えば、4%(w/w)から8%(w/w)までの範囲の)量の可塑剤を含有してもよい。一部の実施形態では、医薬単位投与剤形は、可塑剤を5%(w/w)未満(例えば、4%(w/w)から5%(w/w)までの可塑剤)含有する。医薬単位投与剤形に可塑剤を8.5%(w/w)未満含ませることにより、本発明の医薬単位投与剤形の靭性が改善される。しかし、一部の可塑剤は本発明の医薬単位投与剤形の柔軟性のために存在する場合もある。
【0051】
浸透促進剤
本発明の医薬単位投与剤形は浸透促進剤を含有してもよい。例えば、本発明の一部の医薬単位投与剤形では、第2の部分は浸透促進剤を含有する。本発明のある特定の医薬単位投与剤形では、第1の部分は浸透促進剤を含有しなくてもよい。本発明の医薬単位投与剤形は浸透促進剤を10%(w/w)未満(例えば、0.001%(w/w)から10%(w/w)まで)含有してもよい。
【0052】
浸透促進剤を使用して、本発明の単位投与剤形においてドーパミンアゴニストの粘膜での浸透性を改善することができる。1種以上の浸透促進剤を使用して、ドーパミンアゴニストの粘膜吸収速度を調節することができる。例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、胆汁塩、例えば、コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸塩、デオキシコール酸ナトリウム、リトコール酸ナトリウム ケノコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、ウルソコール酸塩、ウルソデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、デヒドロコール酸塩、グリコケノコール酸塩、タウロケノコール酸塩、及びタウロケノデオキシコール酸塩;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-ラウロイルサルコシン、モノラウリン酸ソルビタン、メタクリル酸ステアリル、N-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、N-ドデシル-2-ピロリジノン、N-ドデシル-2-ピペリジノン、2-(1-ノニル)-1,3-ジオキソラン、N-(2-メトキシメチル)ドデシルアミン、N-ドデシルエタノールアミン、N-ドデシル-N-(2-メトキシメチル)アセトアミド、1-N-ドデシル-2-ピロリドン-5-カルボン酸、2-ペンチル-2-オキソ-ピロリジン酢酸、2-ドデシル-2-オキソ-1-ピロリジン酢酸、2-ドデシル-2-オキソ-1-ピロリジン酢酸、1-アザシクロヘプタン-2-オン-ドデシル酢酸、メントール、プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセロール、モノラウリン酸ソルビトール、ジラウリン酸グリセロール、酢酸トコフェロール、ホスファチジルコリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、モノグリセリド、例えば、モノステアリン酸グリセロール、モノラウリン酸グリセロール、カプリル酸グリセロール、ジグリセリド、トリグリセリド、及びスクシニル化ジグリセリド及びモノグリセリド、例えば、スクシニルカプリル酸グリセロール レシチン、ツイーン系界面活性剤、ソルビタン系界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム;飽和及び不飽和脂肪酸の塩、酸及び他の誘導体、脂肪アルコール、界面活性剤、胆汁塩類似体、胆汁塩の誘導体、又は参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第4,746,508号に記載のような合成浸透促進剤を含めて、効果的な任意の浸透促進剤を使用することができる。
【0053】
pH中和剤
pH中和剤は、例えば、塩基性ポリマーから形成されているフィルムであってよい。本発明の単位投与剤形で使用することができるポリアミンとしては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、又は他の類似のアミノ官能化アクリレートのホモポリマー及びコポリマー、キトサン又は実質的に塩基性形態の部分的に加水分解されたキチン、ポリエチレンイミン、ポリリシン、ポリビニルイミダゾール、又はポリビニルアミンのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。ある特定の実施形態では、ポリアミンは、Eudragit E100である。
【0054】
あるいは、pH中和剤は、本発明の単位投与剤形に組み込まれる非ポリマー性添加剤とすることもできる。pH中和剤は、無機性塩基(例えば、水酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸鉄、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、三塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸カリウム、二塩基性リン酸カリウム、三塩基性リン酸カリウム、又はそれらの混合物)であってよい。pH中和剤は有機塩基(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、ガラクツロン酸塩、グルクロン酸塩、アルギン酸塩、ソルビン酸塩、カプリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート;又はアミン類、例えば、ピリドキシン、メグルミン、リシン、Eudragit E、ジエタノールアミン、グリシン、シトレート、アセテート、ヒスチジン、N-メチルグルカミン、若しくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、又はそれらの混合物)であってよい。pH中和剤は2.5から9.5までのpKa(例えば、2±0.5、2.5±1、3±1.5、4±2、5±2、6±2、7±1のpKa、又は4.5から8.5までのpKa)を有するのが、望ましい。ある特定の実施形態では、pH中和剤は5±2のpKaを有する有機塩基である。当業者であれば、pKa値とは室温にある水中でのpKaをいうことが理解されよう。他の実施形態では、pH中和剤はピリドキシンである。
【0055】
他の賦形剤
甘味剤、香味剤及び/又は着臭剤を本発明の単位投与剤形に添加して、これらの口当たりを良くすることができる。少なくとも1種の香味剤又は着臭剤組成物を使用することができる。効果的な任意の香味又は匂いをつけることができる。香味剤は、天然のもの、人工的なもの、又はそれらの混合物であってよい。香味剤は、活性成分の望ましくない味覚を低減させる助けとなる香味を与える。一実施形態では、香味剤は、ミント、メントール、ハニーレモン、オレンジ、レモンライム、グレープ、クランベリー、バニラベリー、風船ガム、又はチェリーの香味をもたらすことができる。香味剤は、天然又は合成甘味剤、例えば、スクロース、Magnasweet(商標)、スクラロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルテーム、アセスルファム、及びそれらの塩であってよい。一部の実施形態では、甘味剤はスクラロースである。
【0056】
アポモルフィンの酸付加塩は、酸化分解を受けやすい恐れがある。それらの感受性は、中性形態にあるアポモルフィンの感受性より低いが、本発明の医薬単位投与剤形の有効期限を延長するために保存剤(例えば、酸化防止剤)を組み入れることが望ましい。本発明の医薬単位投与剤形で使用することができる酸化防止剤は、チオール(例えば、アウロチオグルコース、ジヒドロリポ酸、プロピルチオウラシル、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、チオジプロピオン酸)、スルホキシミン(例えば、ブチオニン-スルホキシミン、ホモシステイン-スルホキシミン、ブチオニン-スルホン、並びにペンタチオニン-スルホキシミン、ヘキサチオニン-スルホキシミン及びヘプタチオニン-スルホキシミン)、金属キレート剤(例えば、α-ヒドロキシ-脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン、クエン酸、乳酸、及びコハク酸、リンゴ酸、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTA、EGTA、及びDTPA並びにそれらの塩)、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ビタミン及びビタミン誘導体(例えば、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸アスコルビル、リン酸マグネシウムアスコルビル、及び酢酸アスコルビル)、フェノール(例えば、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ユビキノール、ノルジヒドログアイアレチン酸、トリヒドロキシブチロフェノン)、ベンゾエート(例えば、安息香酸コニフェリル)、尿酸、マンノース、没食子酸プロピル、セレニウム(例えば、セレニウム-メチオニン)、スチルベン(例えば、スチルベンオキシド及びtrans-スチルベンオキシド)、並びにそれらの組合せからなる群から選択することができる。フィルムに含まれる酸化防止剤の総量は0.001%から3%(w/w)であってよい。ある特定の実施形態では、酸化防止剤は、EDTA若しくはその塩、又はメタ重亜硫酸ナトリウム、あるいはそれらの混合物である。
【0057】
本発明のフィルムは1種以上のデンプン加水分解物を1から50%(w/w)まで含んでもよい。10超のDEを持つマルトデキストリン及び20を超えるDEを有する乾燥グルコースシロップを含めて様々なデンプン加水分解物を利用することができる。好適なデンプン加水分解物製品は、Grain Processing Corporation社、Muscatine、Iowaから例えばMALTRIN M200(登録商標)、MALTRIN 180(登録商標)及びMALTRIN 250(登録商標)の商標で市販されている。MALTRIN M200(登録商標)は20のDEを有するデンプン加水分解物製品であり、MALTRIN 180(登録商標)は18のDEを有するデンプン加水分解物製品である。デキストロース当量(DE)とは、デキストロースと比較した、糖、オリゴ糖、又は混合物の相対的甘味であり、両方共に百分率として表現される。例えば、10のDEを持つマルトデキストリンはデキストロース(DE=100)の10%の甘味である一方、120のDEを持つスクロースはデキストロースの1.2倍の甘味であるということになる。デンプンから作られた溶液については、DEは全デンプン産物中に存在する還元糖百分率の見積値である。DEはデンプンのデキストロースへの変換の程度を表す。デンプンは0に近く、グルコース/デキストロースは100(パーセント)であり、デキストリンは1と13との間で変化し、マルトデキストリンは3と20との間で変化する。DEはデンプン糖に対する平均重合度(DP)の指標を与える。大雑把に、DE×DP=120である。
【0058】
ある特定の実施形態では、本発明の単位投与剤形に含まれる様々な成分(例えば、可塑剤、浸透促進剤、香味剤、酸化防止剤、着臭剤、着色剤、粒子状基剤、及びドーパミンアゴニスト粒子)を組み合わせることができ、そして酸性でありかつアポモルフィンの酸付加塩を含む第1の部分中に組み込むことができ、又は、それらを組み合わせることができ、そしてpH中和成分を含む第2の部分中に組み込むことができ、あるいは、成分を2つの部分に分けてもよい。一部の例では、2つの部分の間に障壁を含めることにより、単位投与剤形の酸性部分と単位投与剤形の塩基性部分との間の相互作用を最小限に抑えるのが望ましい場合もある。一部の医薬単位投与剤形では、第1の部分と第2の部分との間に障壁を含ませることができる。例えば、2つの部分が層である場合、その障壁を、第1の部分(第1の層)と第2の部分(第2の層)との間に配置された第3の層とすることができる。あるいは、障壁は、単位投与剤形中の粒子状成分の表面上の速溶性コーティング、例えば、単位投与剤形の第1の部分上へとコーティングされたコーティング粒子状基剤とすることもでき、又は単位投与剤形の第1の部分内に包埋された速溶性コーティングとすることもできる。さらに別の手法において、障壁は単位投与剤形中のアポモルフィン粒子の表面上の速溶性コーティングとすることができる。これらの手法を利用して、単位投与剤形の第1の部分に存するアポモルフィンの酸付加塩は、対象への投与前に中和されないよう保証することができる。
【0059】
アポモルフィン
本発明の医薬単位投与剤形は、アポモルフィンの酸付加塩を含む。アポモルフィンの酸付加塩において使用することができる酸の例としては、有機酸、例えば酢酸、乳酸、パモン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、又はトリフルオロ酢酸;ポリマー酸、例えばタンニン酸、カルボキシメチルセルロース、又はアルギン酸;及び無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、又はリン酸が挙げられる。一部の実施形態では、アポモルフィンの酸付加塩は塩酸アポモルフィンである。本発明の医薬単位投与剤形は、アポモルフィンの酸付加塩を2mgから60mgまで(例えば、アポモルフィンの酸付加塩を8mgから45mgまで)含有することができる。ある特定の例示的医薬単位投与剤形は、アポモルフィンの酸付加塩10.0±2.0mg、12.5±2.5mg、15.0±2.5mg、17.5±2.5mg、20.0±5.0mg、25.0±5.0mg、30.0±10.0mg、30.0±5.0mg、35.0±10.0mg、又は35.0±5.0mgを含有することができる。第1の部分は、乾燥した第1の部分の重量に対して、アポモルフィンの酸付加塩を20%(w/w)から60%(w/w)まで(例えば、30%(w/w)から60%(w/w)まで又は40%(w/w)から60%(w/w)まで)含有することができる。特に、フィルムは50±10%(w/w)(例えば、54±10%(w/w))のアポモルフィンの酸付加塩を含有することができる。アポモルフィンの酸付加塩が高含量であるにもかかわらず、本発明の医薬単位投与剤形は本明細書に記載の靭性を示すことができる。本発明の医薬単位投与剤形の望ましい靭性は、例えば、本明細書に記載のとおり、達成し得る。
【0060】
本明細書に記載の医薬単位投与剤形は、1μmから500μmまで(例えば、1μmから100μmまで又は1μmから50μmまで)のD50を有するアポモルフィンミクロ粒子を含むことができる。出発ミクロ粒子は、アポモルフィンの酸付加塩から作製され得るミクロスフェアであってよく、且つ主に結晶、主に微結晶、主に非晶質、又はそれらの混合物であってよい。アポモルフィンの酸付加塩はミクロスフェアに封入してもよく、溶解した薬物のミクロスフェアに含ませてもよい。
【0061】
代わりの手法では、本明細書に記載の医薬製剤は約1μm未満の有効粒径(すなわち、ナノ粒子製剤)を有するアポモルフィン粒子を含むことができる。出発ミクロ粒子は、アポモルフィンの酸付加塩から作製され得るミクロスフェアであってよく、且つ主に結晶、主に微結晶、主に非晶質、又はそれらの混合物であってよい。アポモルフィンの酸付加塩はミクロスフェアに封入してもよく、溶解した薬物のミクロスフェアに含ませてもよい。
【0062】
これらのアポモルフィン粒子は、所望の粒径を達成するために当分野で知られている任意の方法を使用することによって作製することができる。有用な方法には、例えば、粉砕、ホモジナイゼーション、超臨界流体破砕、又は沈降の技法が含まれる。例示的方法は、米国特許第4,540,602号、第5,145,684号、第5,518,187号、第5,718,388号、5,862,999号、第5,665,331号、第5,662,883号、第5,560,932号、第5,543,133号、5,534,270号、及び第5,510,118号、第5,470,583に記載されてあり、これらはそれぞれ参照により具体的に本明細書に組み込まれる。
【0063】
以下の実施例は本発明を説明することを意味する。それらは、本発明をいかようにも限定することを意味しない。
【0064】
(実施例)
[実施例1]
2層のアポモルフィンフィルム
固溶体層の調製:
メタ重亜硫酸ナトリウム、EDTA二ナトリウム、プロピレングリコール、崩壊剤、及びスクラロースを水に添加し、混合物を撹拌する。次に、アセトン及びメタノールを該溶液に添加し、混合物を撹拌する。塩酸アポモルフィンを、撹拌しながら該混合物に添加し、澄んだ溶液を形成する。次に、多糖を撹拌しながらゆっくりと添加する。得られた混合物を真空下に置き、気泡を除去し、不活性の支持体上に均一層として成型し、次に、炉中で乾燥し、塩酸アポモルフィンの固溶体を含むフィルムを生成する。
【0065】
粒子状層の調製:
エチルセルロース、ポリ(エチレンオキシド)、及びヒドロキシプロピルセルロースを溶媒(例えば、水/アセトン)に溶解し、溶液を形成する。
【0066】
固体塩酸アポモルフィンを本明細書に記載されるように粉砕することにより、粒子状塩酸アポモルフィンを調製する。
【0067】
粒子状塩酸アポモルフィンを上記溶液中に懸濁させ、混合物の薄フィルムをシート上に成型することにより、溶媒成型の粘膜付着性フィルムを調製する。溶媒(例えば、水/アセトン)の蒸発を、60℃で30分間乾燥することにより達成し得て、フィルムを生成する。
【0068】
2層フィルムの調製
2つの層を、層の間に溶媒(例えば、エタノール)の噴霧を適用することにより互いに積層し、次に炉中で乾燥し、最終的な2層フィルムを形成する。得られた乾燥2層フィルムは、(i)速放性固溶体の塩酸アポモルフィン及び徐放性の塩酸アポモルフィン粒子を含有する第1の層並びに(ii)緩衝剤(例えば、ピリドキシンなどの有機塩基)を含有する第2の層を含む。
【0069】
2層フィルムは、個々のPD患者に対してその治療濃度域に基づいて、単位投与量当たりのフィルムの有効性を最大化するために作製され得て、一方、単位投与量当たりのその毒性を同時に最小化する。
【0070】
2層フィルムを切断して細片とし、各細片は2mg~60mgのアポモルフィン(遊離塩基質量)の同等量を含有する。該細片を、パーキンソン病の処置のために対象に投与し得る。最終剤形における、固溶体アポモルフィンの微粒子状アポモルフィンに対するモル比は、各層に含まれるアポモルフィンの量を変化させること、及び/又は最終剤形に組み込まれる各層の相対的大きさを制御することにより、制御され得る。該比は、1:9~9:1;1:9~1:1、1:1~9:1、1:7~7:1;1:7~1:1、1:1~7:1、1:5~5:1;1:5~1:1、1:1~5:1、1:4~4:1;1:4~1:1、又は1:1~4:1であり得る。
【0071】
[実施例2]
3層アポモルフィンフィルム
速放性固溶体の塩酸アポモルフィンを含有する第1の層、及び徐放性の塩酸アポモルフィン粒子を含有する第2の層を、実施例1に記載されるように調製する。
【0072】
pH中和剤の調製
エチルセルロース、ポリ(エチレンオキシド)、及びヒドロキシプロピルセルロースを無水エタノールに溶解し、溶液を形成する。得られた溶液に、pH調整剤(すなわち、ピリドキシン)を添加する。
【0073】
上記溶液の薄フィルムを第1の層上に成型することにより、溶媒成型の粘膜付着性フィルムを調製する。溶媒(エタノール)の蒸発を、60℃で30分間乾燥することにより達成し得る。
【0074】
3層フィルムの調製
3つの層を、対となる層のそれぞれの間にエタノールの噴霧を適用することにより互いに積層し、所望されるようにそれらを組み立て、次に炉中で乾燥して、最終的な3層フィルムを形成し得る。得られた乾燥3層フィルムは、(i)速放性固溶体の塩酸アポモルフィンを含有する第1の層、(ii)徐放性の塩酸アポモルフィン粒子を含有する第2の層、及び(iii)pH中和剤を含有する第3の層を含む。
【0075】
3層フィルムは、従来の薬物に対して中等度から低度の応答性を典型的に示す患者において、関連する有害作用の頻度又は強度を低減する一方、治療濃度域の範囲に関して処置効果を提供し得る。更に、3層フィルムは、塩酸アポモルフィンを中和すると吸収が高められるので、フィルムの貯蔵寿命安定性を危険にさらすことなく、アポモルフィンの生物学的利用能を高めることができる。
【0076】
3層フィルムを切断して細片とし、各細片は2mg~100mgのアポモルフィン(遊離塩基質量)の同等量を含有する。該細片を、パーキンソン病の処置のために対象に投与し得る。最終剤形における、固溶体アポモルフィンの微粒子状アポモルフィンに対するモル比は、第1の層及び第2の層のそれぞれに含まれるアポモルフィンの量を変化させること、及び/又は最終剤形に組み込まれる第1の層及び第2の層のそれぞれの相対的大きさを制御することにより、制御され得る。該比は、1:9~9:1;1:9~1:1、1:1~9:1、1:7~7:1;1:7~1:1、1:1~7:1、1:5~5:1;1:5~1:1、1:1~5:1、1:4~4:1;1:4~1:1、又は1:1~4:1であり得る。
【0077】
[実施例3]
アポモルフィン粒子で被覆した単一層のアポモルフィンフィルム
速放性固溶体の塩酸アポモルフィンを含有する第1の層を、実施例1に記載されるように調製する。得られた乾燥フィルムは、速放性固溶体の塩酸アポモルフィンで作製された単一の接着層を含む。フィルムの表面を粒子状塩酸アポモルフィンで被覆する。
【0078】
粒子被覆のフィルムを切断して細片とし得て、各細片は2mg~100mgのアポモルフィン(遊離塩基質量)の同等量を含有する。該細片を、パーキンソン病の処置のために対象に投与し得る。
【0079】
最終剤形における、固溶体アポモルフィンの微粒子状アポモルフィンに対するモル比は、速放性層に含まれるアポモルフィンの量を変化させること、及び/又は第1の層に添加された粒子状アポモルフィンの量を制御することにより、制御され得る。該比は、1:9~9:1;1:9~1:1、1:1~9:1、1:7~7:1;1:7~1:1、1:1~7:1、1:5~5:1;1:5~1:1、1:1~5:1、1:4~4:1;1:4~1:1、又は1:1~4:1であり得る。
【0080】
[実施例4]
2層のアポモルフィンフィルム
フィルムA~Mの塩酸アポモルフィン層を、高分子量ポリマー(例えば、Natrosol 250G又はNatrosol 250Lなどのヒドロキシエチルセルロース)及び、任意選択で、低分子量ポリマー(例えば、Methocel E5などのヒプロメロース;又はNisso SSL HPCなどのヒドロキシプロピルセルロース)を、均一で、澄んでおり、粘稠性の液体が生成されるまで、撹拌しながら水に添加することにより調製した。次に、メタ重亜硫酸ナトリウム、EDTA二ナトリウム2水和物、グリセリン、マルトデキストリン(例えば、マルトデキストリンM180)、及びスクラロースを全て添加し、混合物を撹拌した。アセトン並びに、任意選択でモノステアリン酸グリセロール及びメントールを該溶液に添加し、混合物を撹拌した。塩酸アポモルフィンを撹拌しながら添加し、不透明の分散体を形成した。得られた混合物を真空下に置き、気泡を除去し、不活性の支持体上に均一層として成型し、炉中で乾燥した。フィルムの外観を以下に示す。
【0081】
フィルムA~Kのピリドキシン層を、高分子量ポリマー(例えば、Natrosol 250G又はNatrosol 250Lなどのヒドロキシエチルセルロース)及び、任意選択で、低分子量ポリマー(例えば、Methocel E5などのヒプロメロース;又はNisso SSL HPCなどのヒドロキシプロピルセルロース)を、均一で、澄んでおり、粘稠性の液体が生成されるまで、撹拌しながら水に添加することにより調製した。次に、水酸化ナトリウム、塩酸ピリドキシン、メタ重亜硫酸ナトリウム、EDTA二ナトリウム脱水物、グリセリン、マルトデキストリン(例えば、マルトデキストリンM180)、及び任意選択でスクラロースを全て添加し、混合物を撹拌した。アセトン並びに、任意選択でモノステアリン酸グリセロール及びメントールを該溶液に添加し、均一で、澄んでおり、粘稠性の液体が生成されるまで、混合物を撹拌した。得られた混合物を真空下に置き、気泡を除去した。次に、粘稠性の液体を不活性の支持体上に均一層として成型し、炉中で乾燥した。
【0082】
別々の塩酸アポモルフィン層及びピリドキシン層を、層の間にエタノールの噴霧を適用することにより互いに積層した。2つの不活性の支持体の間に挟みこまれたこの2層構成体を炉中で乾燥した。乾燥した2層を不活性の支持体から取り外し、切断して単位用量フィルムとした。
【0083】
全てのフィルムを、固体の粒子状塩酸アポモルフィンを使用して調製した。窒素をプロセスガスとして、100PSIの圧力及び25~45℃の温度で使用した。固体原料の量を表A1-L2に示す。フィルムMは、乾燥フィルム当たり3mgの塩酸アポモルフィンが使用されたことを除いて、フィルムD~Fと同一比率の原料を有する。
【0084】
フィルムA
【0085】
【表1】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解した薬物を含有し、外観は透明であった。
【0086】
【0087】
フィルムB
【0088】
【表3】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は半透明であった。
【0089】
【0090】
フィルムC
【0091】
【表5】
乾燥塩酸アポモルフィンフィルムは、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は半透明であった。
【0092】
【0093】
フィルムD
【0094】
【表7】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は不透明であった。
【0095】
【0096】
フィルムE
【0097】
【表9】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は不透明であった。
【0098】
【0099】
フィルムF
【0100】
【表11】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は不透明であった。
【0101】
【0102】
フィルムG
【0103】
【表13】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は不透明であった。
【0104】
【0105】
フィルムH
【0106】
【表15】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は不透明であった。
【0107】
【0108】
フィルムI
【0109】
【表17】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は不透明であった。
【0110】
【0111】
フィルムJ
【0112】
【表19】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は不透明であった。
【0113】
【0114】
フィルムK
【0115】
【表21】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は不透明であった。
【0116】
【0117】
フィルムL
【0118】
【表23】
乾燥塩酸アポモルフィン層は、溶解及び未溶解の薬物を含有し、外観は不透明であった。
【0119】
【0120】
フィルムM
フィルムMを、100mgの乾燥フィルム当たり3mgのみの塩酸アポモルフィンを含むことを除いて、フィルムD~Fに関して記載されたものと同一の手順に従って調製した。フィルムMは、完全に溶解した塩酸アポモルフィンを含有し、全体的に透明であった。フィルム中のアポモルフィンの溶解度は、フィルム当たりおよそ3~7mgの間であると思われる。
【0121】
[実施例5]
薬物動態(PK)
フィルムA
第1期間では、フィルムAを、舌の下部に、薬物層を組織から離して置いた。第2期間では、薬物を、舌の下部に、薬物層を組織に面して置いた。
【0122】
以下の表1及び2は、WinNonlin(Bill Wargin、ClinPharm Consulting、RTP、NC)を使用して得たノンコンパートメントのPK結果及びApokyn(登録商標)NDA21~264(研究APO-0083)からのPK値を提供する。表1は第1期間の結果を示す。表2は第2期間の結果を示す。第1期間では、排出相により強く影響された特定のPKパラメータのために、4人の対象が変則的な半減期値を有し、計算に使用することができず、解析をn=8に限定した。第2期間では、非常に変則的なPKプロファイル及び標準から離れて2SD超であるTmax結果に起因して、1人の対象の血漿プロファイルを誤りと判断した(対象#13)。試料集合が逆になったおそれがあると考えられ、PK-AE相関がこの仮定を支持し得る。PKの決定は、対象#13を含めた場合及び含めない場合で実施された。対象#13の除外は、他のPKパラメータを有意に変化させないが、Tmaxの計算値には有意な影響を与える。
【0123】
【0124】
【0125】
第1期間1及び第2期間を比較すると、舌の舌下組織と直接接触している薬物層を有する第2期間は、より高いCmax、AUClast及びAUCinfのパラメータ、同様により短いTmax値を有する。相対的生物学的利用能に基づいて(文献に従って、Apokyn(登録商標)を100%に設定)、第2期間の相対的生物学的利用能は16%である。
【0126】
Apokyn(登録商標)に関するPKパラメータを表3に示す。
【0127】
【0128】
フィルムB
本研究は、8mgの用量(フィルムB)で開始し、12mg(フィルムC)の用量で終了する、2-コホートの用量増大研究であった。各コホート内でクロスオーバーデザインを用いて、薬物を舌の下に置き、投薬の配置の試験を行った。処置1では、2層フィルムを口の底部に、薬物層が口底に直面するように置いた(F-Down)。翌日、処置2において、2層を舌の底部側に、薬物層が舌に直面するように置いた(T-Up)。2コホートの間では、PK及び安全の評価を行った。
【0129】
コホート1の2つの処置期間の間には、プロトコルの修正を行ったことに留意されたい。コホート1中に、数人の対象は、悪心、めまい、及び突然の嗜眠というほぼ全身性の有害事象に起因して、手助けされてベッドに入った。したがって、処置1では、対象は、投薬及び頬における(in bucco)崩壊の再コード化の後に診療所を歩き回ることが許されるのに対して、処置2において、対象は、投薬及び頬における崩壊の再コード化の後にベッドに横になるように指示され、該対象は研究に続く2~3時間を通して横になったままであった。AEに関する医師の評価は、AEの重症度の判断におけるこの変化の抽象化を試みたものであった。
【0130】
表4~7及び
図1~3は、比較目的のためのフィルムAに関するデータを含む。
図1は、フィルムAとフィルムBの両方に関する未調整のPK曲線、同様にApokyn(登録商標)に関する2mg曲線を示す。フィルムBに関する曲線は、吸収率の増加及びフィルムAより高いCmaxを示す。Cmaxは、フィルムAから比例的に増加した。相対的生物学的利用能は、フィルムAの50%超増加した。Tmaxは、Apokyn(登録商標)の10~60分の範囲内を保持している。曲線形状はより丸みがあり、同程度に調整済のフィルムAに関するAUC又はCmaxにおいて、右側にある程度伸びている。
【0131】
【0132】
【0133】
要約した結論及びPKデータからの比較:フィルムBに関して、いずれの配置においても吸収の遅れはない;T-UP配置は、F-Downより早いTmaxを有する。舌に接する(フィルムA)か口底(フィルムB)のどちらかのDown配置は、明らかにTmaxの増加(57~64分)へとつながり;T-UP配置に関して、フィルムBにおけるTmaxは、20(2)、30(3)、45(2)、60(4)の値で、20~60分の範囲であり;フィルムAにおけるTmaxは、10(1)、20(6)、30(3)、45(0)、60(1)の値で、10~60分の範囲であり;フィルムBについてのより長いTmaxへの、明確であるが中程度の移行があり;フィルムA(3mg)からフィルムB(8mg)への用量の増加につれて、Cmaxにおける比例的な増加及びAUCにおける超比例的な増加がある。
【0134】
これまでに開示された処置に関するPKデータと、フィルムA又はBの舌下投与に関するPKデータとの比較を
図2に示す。Amarin2.5mgの舌下製剤の結果は、米国特許付与前公開第2009/0,023,766号からのものである。PD製剤に関するPentech40mgの結果は、Ondoら、Clinical Neuropharmacology、22:1~4、1999年からのものである。
【0135】
フィルムE及びF
無作為化クロスオーバーデザイン研究において、試験製剤(フィルムB、E、又はF)及び参照製剤(皮下(SC)ApoGoアポモルフィン製剤)を受けた対象に関する血漿濃度-時間のデータを収集した。各投薬日の、投薬前、及び投薬の5、10、20、30、40、50、60、90、120、180、及び240分後における4時間にわたる血液試料を得た。有効なLC/MS方法を使用して、血漿アポモルフィン濃度を測定した。ApoGoは、10mgの塩酸アポモルフィン及び1mg/mlのメタ重亜硫酸ナトリウムを含有する、皮下注射用の製剤である。
【0136】
図3は、フィルムB、フィルムE、フィルムFに関する、同様に2mgの用量レベルにおけるApoGoに関するPKプロファイルを示す。より高用量において、より高い血中レベルへの進行が観察された。PK決定において分かるように、これらの増加は、参照製剤と試験製剤の両方に関して比例的である。
【0137】
参照製剤は、2mgのAPIの注射後に9ng/mlのCmax及び3mgのAPIの注射後に16ng/mlのCmaxを示した。これはApokyn(登録商標)SBAに基づいて予測されたものより高く、ApokynSBAでは、異なる5件の研究において、2mgに対して5.3~8.1ng/mlの範囲である平均Cmax値が観察され、且つ、より大規模の研究(N=35)は、5.3~6.1ng/mlのCmaxを示した(SBA21~264研究 APOM-02115)。参照製品及び試験製品の両方において観察された比例性は、本研究が制御された条件下で行われ、方法は首尾一貫していることと、本明細書における結果は誤りではないことを示唆している。観察された高値は、方法論における違い(プロトコル、対象、血液の取り扱い手順、及び/又は分析方法)の組合せに起因する可能性が非常に高い。
【0138】
血漿アポモルフィン濃度の時間に対するノンコンパートメント薬物動態解析を、WinNonlin Phoenix version 6.3を使用して実行した。解析結果を以下の表6~10に示す。フィルムBに関するPKパラメータを、比較のために表6に示す。フィルムEに関するPKデータを表7に示す。フィルムFに関するPKデータを表8に示す。表9及び10は、それぞれ、参照製剤(ApoGo)として投与された、2mg及び3mgの用量のアポモルフィンに関するPKデータを提供する。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
表6~10において:*n.d.=未決定。**V/Fは、全用量の分布容積であり、CL/Fは、全用量のクリアランスであり、これらは正規化され、相対的生物学的利用能(F)を乗算することにより、コホート間で比較し得る:表9に従って、F(全ての用量を注射)=100%、F(フィルムB)=26%、F(フィルムF)=18.2%、F(フィルムE)=16.8%。
【0145】
表11は、4集合の対象の試験(クロスオーバーではない)を行ったが、試験製剤の各研究におけるアポモルフィン用量に対するCmaxの比例性を示す。
【0146】
【0147】
アポモルフィンを投入した新しい状態の血液試料もまた同様の回復を示す(60%)。フィルムB、E、及びFの研究における比例性の観察と組み合わせたこの観察は、本プロトコル及び解析方法は、ロバスト性を持ち且つ繰り返し可能/再現性があるという主張を支持している。
【0148】
フィルムD
健康な男性志願者において、単回投薬研究を実行し、フィルムDの薬物動態、安全性、及び認容性を検討した(25mgのアポモルフィン用量)。悪心抑制の医薬のドンペリドンを、研究の一部として、フィルムDの投薬の3日前に開始し且つ投薬の全体を通して投与した。
【0149】
表12は、フィルムD~Fに関するPKプロファイルの比較を提供する(フィルムE及びFに関するデータは、上述の研究からのものであった)。Cmax及びAUCの値は、用量が15から25mgに上昇する時に、アポモルフィン曝露が、用量に比例したものよりわずかに低かったことを示している。曝露の低下分は大きくなく、平均値の1標準偏差内に含まれた。フィルムEに関するデータは、上記比例的曝露に基づいた曲線の外れ値であり得た。
【0150】
【0151】
図4は、フィルムDに関する平均血漿データを示す。該曲線は、対象において仮想されたMEC(3ng/ml)を達成するのに約8.3分かかったことを示す。仮想されたMECを超える濃度は、投与後153.8分まで維持された。
【0152】
フィルムG、H、I、J、及びK
フィルムG、H、I、J、及びKを、UK Brain Bank診断基準と一致して、特発性パーキンソン病と診断された19人の患者における非盲検の単一治療群(single-arm)研究で使用した。研究開始の前に、全ての患者は、1日当たり少なくとも1回の「オフ」エピソード及び1日の合計が2時間以上の「オフ」時間を経験していた。該患者はまた、午前中の覚醒時に、朝のレボドパ投薬を受ける前に、予測可能な「オフ」エピソードも経験していた。全ての患者は、「オン」状態にある時、ホーン及びヤールのスケールにおいてステージI~IIであった。表13は、本研究における患者の要約を提供する。
【0153】
【0154】
本発明のフィルムを用いた投薬の前に、患者は、tigan(登録商標)を用いて3日間、先行薬物療法を受けた。患者は、「オフ」状態にある午前中に診療所を訪れた(レボドパの最終投薬は、前夜の10PMより前に行われた)。患者は、最初にフィルムKの投薬を受け;満足のいく応答が観察されない場合、臨床的に意味のある「オン」状態が達成されるまで、投薬を5mg毎に増大させた(すなわち、進行:フィルムK、フィルムJ、フィルムI、フィルムH、及びフィルムG)。患者は、3日間、1日に2回まで投薬を受けた。運動機能における変化を、投薬前の朝の「オフ」状態から、投薬後の15、30、45、60、及び90分まで、UPDRSパートIIIに従って評価した(結果に関する
図5A及び5Bを参照されたい)。19人の患者のうち、15人は、投薬の30分内に臨床的に意味のある「オン」状態を達成し;6人は、投薬の15分内に臨床的に意味のある「オン」状態を達成した(
図5Bを参照されたい)。「オン」状態を達成した15人の患者のうち、13人は少なくとも30分間「オン」のままであり、9人は少なくとも60分間「オン」のままであった。
図6Aに示すように、応答した患者の大多数は、フィルムの投与に続いて15分内にUPDRSパートIIIのスコアにおいて少なくとも30%の低減を達成し、全般に90%超の応答者は、フィルムの投与に続いてUPDRSパートIIIのスコアにおいて少なくとも30%の低減を達成した。
図6Bに示すように、応答者の中で、高い1日用量(900mg超/日)のレボドパを受けた全ての対象、及び低い1日用量(900mg未満/日)のレボドパを受けた全ての対象は、本発明の医薬単位投与剤形を受けた後、臨床的に意味のある「オン」状態を達成することができた。
図7Aに示すように、応答者の中で、全ての軽度、中等度、及び重度の変動性の者(fluctuator)は、本発明の医薬単位投与剤形の投与に続いて、30分内に臨床的に意味のある「オン」状態を達成した。要約では、
図7Bは、幅広い患者集団が、本発明の医薬単位投与剤形を用いた治療を経ることにより、臨床的に意味のある「オン」状態を達成することができることを示している。
【0155】
ある範囲の用量が使用された。患者の半数超が、より低用量の2種類(フィルムJ及びK)のみを必要とし、80%がフィルムI、J、又はKを使用した(
図8;この図における「アポモルフィン用量」は、投与された医薬単位投与剤形中の塩酸アポモルフィンの重量を示す)。「オン」を達成しなかった4人の患者のうち、2人は不正確に投薬され、2人は安全性又は認容性の懸念を伴わず、30mgに達した。8人の患者が薬物動態解析を受け;これらの8人の患者のうち6人が「オン」状態を達成した。オンに変化した時の平均血漿アポモルフィン濃度は、6人の患者に関して2.64ng/mLであった。2人の非応答者に関する、全ての用量における各時点での平均血漿アポモルフィン濃度は、一度も2.64ng/mLに達しなかった。応答者及び非応答者に関する測定されたアポモルフィン血漿レベルを
図9Aに示す。応答者は、全ての時点において、大きく、臨床的に意味のあるUPDRSパートIIIの変化(運動改善)を有し、一方、非応答者は、わずかの運動改善を示したが、オフからオンへ転換するには十分ではなかった(
図9B)。
【0156】
[実施例6]
薬力学
フィルムFの薬力学的効果を、実施例5におけるデータから推定し、表14に示す。
【0157】
【0158】
本解析から、以下の結論を出すことができる。試験を行った舌下製剤は、PKプロファイルにおいて明白であるように、発症を遅らせ、オンに関連する血漿濃度を達成した。該遅延は、有効性に基づいて3ng/mlのアポモルフィンの血漿濃度を使用したApoGoと相対的に、およそ5~10分であると推定され得る。3ng/mlレベルを超える血漿濃度の持続時間は、フィルムFが、各用量比較において、ApoGoの持続時間より約5分長く作用することを示している。Apokyn(登録商標)SBAから8.5ng/mlと定義されるMTC(最小中毒濃度)に到達した対象数は、ApoGoと対比して、試験製剤(例えば、フィルムF)に関して両方のクロスオーバー実験において、より少ない。より公式の薬物滞留のPK推定のMRTを使用して、薬物が血中に留まる平均時間の増加は、50%である。フィルムEとフィルムFの両方とも、それぞれ2mg及び3mgのApoGoと比較して、同様の(おそらくより長くまで)の期間、3ng/ml(MEC)及び8.5ng/ml(MTC)と定義される仮想上の治療濃度域内に留まる。したがって、本発明の組成物(例えば、フィルムE又はフィルムF)の舌下投与は、ApoGoの皮下投与の有効性と同等であるか又は超える有効性を提供することができるが、本発明の組成物に関して、MTCに到達した対象数が、ApoGo群の対象数より少ないという、より少数の有害事象を伴う。表15に示すように、ApoGoの皮下投与と比較して、本発明の組成物の投与後に、より少数の且つ程度の低い重度有害事象が観察された。各処置群における有害事象の数及び百分率(丸括弧内)を以下に示す。
【0159】
【0160】
したがって、本発明の組成物の舌下投与は、(1)アポモルフィンの皮下投与と対比して非侵襲的であり、(2)ApoGoの皮下投与より相対的に長い期間、治療濃度域内のアポモルフィン血漿レベルを提供することができ、(3)相対的に短い期間内で、治療濃度域内のアポモルフィン血漿レベルへと導くことができ、且つ(4)ApoGoの皮下投与より、患者において起きる有害事象を、相対的に、より少なくできる。
【0161】
フィルムG、H、I、J、及びK
実施例5に記載される研究中に観察された有害事象の要約(フィルムG、H、I、J、及びK)を
図10及び表16に示す。
【0162】
【0163】
[実施例7]
2層のアポモルフィン細片の安定性
フィルムD~Fを個々に、密封されたホイル積層パウチに入れた。パウチを、1、2、3、又は6か月間、5℃、25℃(60%RH)、30℃(65%RH)、又は40℃(75%RH)で保存した。HPLCにより0.05面積%以上で検出された不純物を、それらの保持時間により、6か月間の安定性試験を通して、観察された最大の濃度と共に、表17に列記する。不純物の合計を表18に列記する。
【0164】
【0165】
【0166】
色の変化を、本安定性試験において記述した。フィルムの暗い面の色は、色の移行を判断するヒトの能力内で安定であると思われたけれども、フィルム裏面のより明るい青色は、安定時にある程度暗くなることが観察された。色の移行が化学的変化に起因することは明らかではない。裏面の色が、フィルムの反対面の最初の暗い青色より暗くなることは一度もなかったため、色の変化は、フィルムの一面から他の面への染料の移動に関連し得る。
【0167】
水分含有量は、40℃/75%RHで保持された試料に関して、開始時点での2.74%から、6か月時点での4.6%まで、わずかに増加すると思われた。
【0168】
他の研究パラメータ(アッセイ、崩壊、生物汚染度及びpH)に、注目すべき変化は見られなかった。
【0169】
[実施例8]
フィルムG~Lの機械的特性
破裂強さ(Burst force)及び靭性をフィルムG~Lに関して測定した。フィルム及び積層体の穴あけ試験のASTM F1306に従って、試験を実行した。試験結果を
図11A及び11Bに示す。フィルムG~Lに、引き裂き耐性の指標を提供する機械的試験を施した:フィルム試料を半分に折る。顕微鏡写真を、
図12A及び12Bに示す。
【0170】
崩壊試験を、以下のように実行した:15mLのHPLCグレードの水をペトリ皿に注いだ。フィルムを水面に置き、浮かせておいた。置いた時から崩壊までの時間を観察し、記録した。このようにして、フィルムG~Kの崩壊速度は約58秒であることが見いだされ、フィルムLの崩壊速度は約91秒であることが見いだされた。
【0171】
他の実施形態
記載された発明の様々な修正形態及び変形形態が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明白であろう。本発明は、特定の実施形態と関連して記載されているが、特許請求された本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、当業者にとって明らかである、本発明を実行するために記載された方式の様々な修正は、本発明の範囲内であることを意図する。
【0172】
他の実施形態は、特許請求の範囲中にある。
本発明は以下の実施形態を包含する。
[1] パーキンソン病を有する対象において「オフ」エピソードを治療する方法であって、
(a)アポモルフィンの酸付加塩を含むアポモルフィン粒子を含む第1の部分及びpH中和剤を含む第2の部分を有するフィルムを用意するステップ、並びに
(b)前記フィルムを対象に舌下投与するステップ
を含み、
前記フィルムは、対象への投与後に平均で、
(i)30分以内に少なくとも2.64ng/mLのアポモルフィン血漿濃度、及び
(ii)10ng/mL未満のアポモルフィンCmax
を生じるのに十分な量のアポモルフィンの酸付加塩を含む、方法。
[2] 対象への投与後にアポモルフィンT
max
が20から60分までである、実施形態1に記載の方法。
[3] 前記フィルムが、少なくとも2.64ng/mLのアポモルフィン血漿濃度を少なくとも60分間維持する、実施形態1又は2に記載の方法。
[4] 前記フィルムがアポモルフィンの酸付加塩を12.5±2.5mg含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
[5] 前記フィルムがアポモルフィンの酸付加塩を17.5±2.5mg含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
[6] 前記フィルムがアポモルフィンの酸付加塩を25.0±5.0mg含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
[7] 前記フィルムがアポモルフィンの酸付加塩を35±10.0mg含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
[8] 対象においてパーキンソン病を治療する方法であって、
(a)舌下投与のアポモルフィンへの応答において低い取込み、中位の取込み、又は高い取込みを有すると用量調節によって確認された対象を用意するステップ、及び
(b)
(1)前記対象が、舌下投与のアポモルフィンへの応答において低い取込みを有すると確認された対象である場合、アポモルフィンの酸付加塩10±2.5mg、12.5±2.5mg、又は15±2.5mgを含む治療用量を前記対象に舌下投与するステップ、
(2)前記対象が、舌下投与のアポモルフィンへの応答において中位の取込みを有すると確認された対象である場合、アポモルフィンの酸付加塩15.0±2.5mg、20.0±2.5mg、又は25.0±2.5mgを含む治療用量を前記対象に舌下投与するステップ、又は
(3)前記対象が、舌下投与のアポモルフィンへの応答において高い取込みを有すると確認された対象である場合、アポモルフィンの酸付加塩30.0±5.0mg、35.0±5.0mg、又は40.0±5.0mgを含む治療用量を前記対象に舌下投与するステップ
を含み、
前記治療用量は、アポモルフィンの酸付加塩を含むアポモルフィン粒子を含む第1の部分及びpH中和剤を含む第2の部分を有するフィルムとして投与される、方法。
[9] ステップ(b)において(1)、(2)、及び(3)の組合せが以下の値:
i) (1) 10±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
ii) (1) 10±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
iii) (1) 10±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
iv) (1) 10±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
v) (1) 10±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
vi) (1) 10±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
vii) (1) 10±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
vii) (1) 10±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
ix) (1) 10±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
x) (1) 12±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xi) (1) 12±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
xii) (1) 12±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
xiii) (1) 12±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xiv) (1) 12±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
xv) (1) 12±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
xvi) (1) 12±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xvii) (1) 12±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
xviii) (1) 15±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
xix) (1) 15±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xx) (1) 15±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
xxi) (1) 15±2.5mg、(2) 15.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
xxii) (1) 15±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xxiii) (1) 15±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;
xxiv) (1) 15±2.5mg、(2) 20.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
xxv) (1) 15±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 30.0±5.0mg;
xxvi) (1) 15±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 35.0±5.0mg;又は
xxvii) (1) 15±2.5mg、(2) 25.0±2.5mg、及び(3) 40.0±5.0mg;
を取り、但し(3)の値>(2)の値>(1)の値である、実施形態8に記載の方法。
[10] アポモルフィンの酸付加塩を投与する前に、前記対象が制吐剤の有効量を投与される、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
[11] アポモルフィンを投与する前に、前記制吐剤の有効量が前記対象に少なくとも2日間投与される、実施形態10に記載の方法。
[12] 前記フィルムが100g×mm以上の靭性を有する、実施形態1から11のいずれかに記載の方法。
[13] 前記第2の部分が浸透促進剤を含む、実施形態1から12のいずれかに記載の方法。
[14] 前記フィルムが浸透促進剤を10%(w/w)未満含む、実施形態1から13のいずれかに記載の方法。
[15] 前記第1の部分が浸透促進剤を含む、実施形態1から14のいずれかに記載の方法。
[16] 前記第1の部分が浸透促進剤を含まない、実施形態1から14のいずれかに記載の方法。
[17] 前記浸透促進剤がそれぞれ独立して、メントール、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリソルベート、トコフェロールの誘導体、ポロキサマー、モノグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸、若しくは脂肪アルコール、又はそれらの組合せである、実施形態13から16のいずれかに記載の方法。
[18] 前記浸透促進剤がメントール及びモノステアリン酸グリセロールの混合物である、実施形態17に記載の方法。
[19] 前記フィルムが、60kDa以上の重量平均分子量を有する薬学的に許容される高分子量ポリマーを20%(w/w)以上含む、実施形態1から18のいずれかに記載の方法。
[20] 前記フィルムが、前記薬学的に許容される高分子量ポリマーを20%(w/w)から40%(w/w)まで含む、実施形態19に記載の方法。
[21] 前記薬学的に許容される高分子量ポリマーが60kDaから1,000kDaまでの重量平均分子量を有する、実施形態19又は20に記載の方法。
[22] 前記薬学的に許容される高分子量ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはメチルセルロース、又はそれらの組合せである、実施形態19から21のいずれかに記載の方法。
[23] 前記フィルムが、60kDa未満の重量平均分子量を有する薬学的に許容される低分子量ポリマーを5%(w/w)以下含む、実施形態1から22のいずれかに記載の方法。
[24] 前記フィルムが、前記薬学的に許容される低分子量ポリマーを0.01%(w/w)から5%(w/w)まで含む、実施形態23に記載の方法。
[25] 前記薬学的に許容される低分子量ポリマーが5kDaから50kDaまでの重量平均分子量を有する、実施形態23又は24に記載の方法。
[26] 前記薬学的に許容される低分子量ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはメチルセルロース、又はそれらの組合せである、実施形態23から25のいずれかに記載の方法。
[27] 前記薬学的に許容される低分子量ポリマーがヒドロキシプロピルセルロースである、実施形態26に記載の方法。
[28] 前記第2の部分が薬学的に許容される低分子量ポリマーを含まない、実施形態1から27のいずれかに記載の方法。
[29] 前記フィルムが水性媒体中において2分以内に崩壊する、実施形態1から28のいずれかに記載の方法。
[30] 前記フィルムが水性媒体中において30秒以上で崩壊する、実施形態1から29のいずれかに記載の方法。
[31] 前記フィルムは投与に際して有害事象の発生がより少ない、実施形態1から30のいずれかに記載の方法。
[32] アポモルフィンの酸付加塩の粒子を含む第1の部分及びpH中和剤を含む第2の部分並びに浸透促進剤を含むフィルムである、医薬単位投与剤形。
[33] 前記フィルムが100g×mm以上の靭性を有する、実施形態32に記載の医薬単位投与剤形。
[34] 前記第2の部分が浸透促進剤を含む、実施形態32又は33に記載の医薬単位投与剤形。
[35] 前記フィルムが浸透促進剤を10%(w/w)未満含む、実施形態32から34のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[36] 前記第1の部分が浸透促進剤を含む、実施形態32から35のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[37] 前記第1の部分が浸透促進剤を含まない、実施形態32から36のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[38] 前記浸透促進剤がそれぞれ独立して、メントール、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリソルベート、トコフェロールの誘導体、ポロキサマー、モノグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸、若しくは脂肪アルコール、又はそれらの組合せである、実施形態34から37のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[39] 前記浸透促進剤がメントール及びモノステアリン酸グリセロールの組合せである、実施形態38に記載の医薬単位投与剤形。
[40] 前記フィルムが、60kDa以上の重量平均分子量を有する薬学的に許容される高分子量ポリマーを20%(w/w)以上含む、実施形態32から39のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[41] 前記フィルムが、前記薬学的に許容される高分子量ポリマーを20%(w/w)から40%(w/w)まで含む、実施形態40に記載の医薬単位投与剤形。
[42] 前記薬学的に許容される高分子量ポリマーが60kDaから1,000kDaまでの重量平均分子量を有する、実施形態40又は41に記載の医薬単位投与剤形。
[43] 前記薬学的に許容される高分子量ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはメチルセルロース、又はそれらの組合せである、実施形態40から42のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[44] 前記フィルムが、60kDa未満の重量平均分子量を有する薬学的に許容される低分子量ポリマーを5%(w/w)以下含む、実施形態32から43のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[45] 前記フィルムが、前記薬学的に許容される低分子量ポリマーを0.01%(w/w)から5%(w/w)まで含む、実施形態44に記載の医薬単位投与剤形。
[46] 前記薬学的に許容される低分子量ポリマーが5kDaから50kDaまでの重量平均分子量を有する、実施形態44又は45に記載の医薬単位投与剤形。
[47] 前記薬学的に許容される低分子量ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはメチルセルロース、又はそれらの組合せである、実施形態44から46のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[48] 前記薬学的に許容される低分子量ポリマーがヒドロキシプロピルセルロースである、実施形態47に記載の医薬単位投与剤形。
[49] 前記第2の部分が薬学的に許容される低分子量ポリマーを含まない、実施形態32から48のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[50] アポモルフィンの前記酸付加塩を30.0±5.0mg含む、実施形態32から49のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[51] アポモルフィンの前記酸付加塩を20.0±5.0mg含む、実施形態32から49のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[52] アポモルフィンの前記酸付加塩を12.5±2.5mg含む、実施形態32から49のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[53] アポモルフィンの前記酸付加塩が塩酸アポモルフィンである、実施形態32から52のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[54] 前記pH中和剤が5±2のpKaを有する有機塩基である、実施形態32から53のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[55] 前記pH中和剤がピリドキシン、メグルミン、リシン、Eudragit E、ジエタノールアミン、グリシン、シトレート、アセテート、ヒスチジン、N-メチルグルカミン、又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである、実施形態32から54のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[56] 前記pH中和剤がピリドキシンである、実施形態32から55のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[57] 前記フィルムが水性媒体中において2分以内に崩壊する、実施形態32から56のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[58] 前記フィルムが水性媒体中において30秒以上で崩壊する、実施形態32から57のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[59] 前記フィルムが多層フィルムである、実施形態32から58のいずれかに記載の医薬単位投与剤形。
[60] 前記フィルムが2層フィルムである、実施形態59に記載の医薬単位投与剤形。