(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】人工皮革及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06N 3/14 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
D06N3/14 101
(21)【出願番号】P 2018229663
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【氏名又は名称】江川 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100189991
【氏名又は名称】古川 通子
(72)【発明者】
【氏名】脇本 芳明
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 道憲
(72)【発明者】
【氏名】高島 和季
(72)【発明者】
【氏名】松本 修
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-1945(JP,A)
【文献】特開2018-123444(JP,A)
【文献】特公昭49-020820(JP,B1)
【文献】特開昭52-028907(JP,A)
【文献】特開昭63-050580(JP,A)
【文献】特開平11-200258(JP,A)
【文献】特開平04-136280(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051711(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0211227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N1/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001~2dtexの極細繊維を含む布帛と、前記布帛に付与され
た第1の溶剤系ポリウレタンと、を含む繊維基材を含み、
少なくとも一面に立毛繊維を含む主面を有し、
前記主面は、起きた前記立毛繊維から形成された少なくとも1つの凸部
と、
前記凸部の周囲に形成され
た、前記立毛繊維が横たえられて第2の溶剤系ポリウレタンの皮膜
に固着され、横たえられた前記立毛繊維同士の空隙が前記皮膜で埋められて形成された、少なくとも1つの凹部と、を
有し、
前記繊維基材は着色されており、前記第2の溶剤系ポリウレタンは着色されておらず、
前記凹部は前記凸部よりも濃色であり、前記凸部と前記凹部との明度差がΔL
*
≧5である明確なコントラストを有することを特徴とする人工皮革。
【請求項2】
前記第1の溶剤系ポリウレタンは、
主に多孔質であり、前記第2の溶剤系ポリウレタンと隣接する部分の周辺のみ、前記多孔質の空隙が消失した非多孔質を含み、
前記第2の溶剤系ポリウレタンは、非多孔質である、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項3】
前記凸部を形成する起きた前記立毛繊維の立毛長が20~200μmであり、前記凹部の底と前記凸部の頂点との高低差が10~30μmである、請求項1または2に記載の人工皮革。
【請求項4】
前記主面をJISK7204(摩耗輪H-22、荷重9.8N、摩擦回数300回)に準じたテーバー摩耗試験したときに
、前記凹部が消失しない請求項1~3の何れか1項に記載の人工皮革。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の人工皮革の製造方法であって、
少なくとも一面に立毛繊維を含む立毛面を有する、布帛と前記布帛に付与された第1の溶剤系ポリウレタンとを含む繊維基材を準備する工程と、
第2の溶剤系ポリウレタンを溶剤で溶解したポリウレタン溶液
を、周面に多数のセルが形成されたグラビアロールで、前記立毛面の一部分に塗布する工程と、
前記溶剤を乾燥させることにより、前記ポリウレタン溶液が塗布された部分の前記立毛繊維を横たえながら前記第2の溶剤系ポリウレタンを造膜することにより凹部を形成する工程と
を備
え、
前記ポリウレタン溶液は、前記第2の溶剤系ポリウレタン3~18質量%と、N,N-ジメチルホルムアミド30~70質量%と、シクロヘキサノン12~67質量%とを含有することを特徴とする人工皮革の製造方法。
【請求項6】
前記セルの深さが50~200μmである請求項5に記載の人工皮革の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な外観を有する人工皮革及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布等の布帛と、布帛の内部に付与された高分子弾性体とを含む、天然皮革に似せた風合いを有する人工皮革が知られている。人工皮革としては、その表層に銀面調の樹脂層を形成させた銀面調人工皮革や、表面の繊維を立毛させて毛羽感を付与したスエード調人工皮革、または、部分的に樹脂層を形成した半銀調人工皮革が広く知られている。また、銀面調人工皮革としては、その樹脂層にエンボスロールで熱プレスしてシボ模様を付与された銀面調人工皮革も知られている。このように、人工皮革の表面に種々の外観を付与する技術が知られていた。
【0003】
例えば、下記特許文献1は、繊維基材の一面を立毛処理する工程と、立毛処理された繊維基材を分散染料で染色する工程と、染色された繊維基材の立毛処理された面内に、5~30%の面積を占める極細繊維を熱融着させた非立毛領域が形成されるように、凹凸形状を有するエンボス型で立毛処理された面に熱エンボス処理する工程とを備える起毛皮革調シートの製造方法を開示する。
【0004】
また、下記特許文献2は、極細繊維の絡合不織布と高分子弾性体とを含み、高分子弾性体は、表層に偏在して極細繊維を拘束しており、上面視した場合に、シボ状に、高分子弾性体に拘束されていない極細繊維が面方向に配向して露出している皮革様シートを開示する。
【0005】
さらに、下記特許文献3は、表面に銀面層を有する凸部と極細繊維立毛を有する凹部とが混在する銀付ヌバック調皮革様シート物において、凸部銀面層は0.2デニール以下の極細立毛繊維が弾性重合体により固定された複合層であり、該シートの全表面積の5~80%を占め、かつ凸部銀面の大部分が面積0.05~20mm2の非連続層となるような銀面層を形成し、一方凹部には0.2デニール以下で立毛長40~300μmの極細繊維立毛が存在する銀付ヌバック調皮革様シート物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2016/051711号パンフレット
【文献】特開2012-36523号公報
【文献】特開平9-67779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、人工皮革の表面に種々の外観を付与する技術が知られていた。本発明は、従来知られた人工皮革の表面に付与された種々の外観とは異なる、新規な外観を有する人工皮革を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面は、0.001~2dtexの極細繊維を含む布帛と、布帛に付与された第1の溶剤系ポリウレタンと、を含む繊維基材を含み、少なくとも一面に立毛繊維を含む主面を有し、主面は、起きた立毛繊維から形成された少なくとも1つの凸部と、凸部の周囲に形成された、立毛繊維が横たえられて第2の溶剤系ポリウレタンの皮膜に固着され、横たえられた立毛繊維同士の空隙が皮膜で埋められて形成された、少なくとも1つの凹部と、を有し、繊維基材は着色されており、第2の溶剤系ポリウレタンは着色されておらず、凹部は凸部よりも濃色であり、凸部と凹部との明度差がΔL
*
≧5である明確なコントラストを有する人工皮革である。このような構成によれば、立毛繊維から形成された凸部の周囲に皮膜で覆われた凹部を形成することにより得られる、従来になかった新規な外観の人工皮革が得られる。また、凹部の繊維が横たえられて第2の溶剤系ポリウレタンの皮膜に固着されて繊維同士の間の空隙が埋められることにより、顔料等の着色剤を用いることなく凹部の色が濃色化するために、凸部と凹部との間に、コントラストの高い濃淡を形成することができる。また、このような人工皮革に形成された主面の凹部は、溶剤系ポリウレタンの皮膜に固着されて横たわった繊維から形成されるために、従来知られたエンボスロールを用いた型押しして繊維同士を融着させて形成された凹部のように硬くならず、柔らかな風合いを維持することができる。また、凹部においては、繊維が溶剤系ポリウレタンの被膜で覆われて固着されているために、主面を摩擦しても凹部が消失しにくい。
【0009】
また、第1の溶剤系ポリウレタンは、主に多孔質であり、第2の溶剤系ポリウレタンと隣接する部分の周辺のみ、多孔質の空隙が消失した非多孔質を含み、第2の溶剤系ポリウレタンは、非多孔質である、ことが、凹部と凸部の段差が大きくなることにより、立体感に優れる凹凸が形成されて意匠性に優れる点から好ましい。
【0010】
また、凸部を形成する起きた立毛繊維の立毛長が20~200μmであり、凹部の底と前記凸部の頂点との高低差が10~30μmであることが好ましい。
【0011】
また、主面をJIS K7204(摩耗輪H―22、荷重9.8N、摩擦回数300回)に準じたテーバー摩耗試験をしたときに、凹部が消失しないことが、主面を摩擦しても凹部がとくに消失しにくい点から好ましい。
【0012】
また、本発明の他の一局面は、上述した人工皮革の製造方法であって、少なくとも一面に立毛繊維を含む立毛面を有する、布帛と布帛に付与された第1の溶剤系ポリウレタンとを含む繊維基材を準備する工程と、第2の溶剤系ポリウレタンを溶剤で溶解したポリウレタン溶液を、周面に多数のセルが形成されたグラビアロールで、立毛面の一部分に塗布する工程と、溶剤を乾燥させることにより、ポリウレタン溶液が塗布された部分の立毛繊維を横たえながら第2の溶剤系ポリウレタンを造膜することにより凹部を形成する工程と、を備え、ポリウレタン溶液は、第2の溶剤系ポリウレタン3~18質量%と、N,N-ジメチルホルムアミド30~70質量%と、シクロヘキサノン12~67質量%とを含有する、人工皮革の製造方法である。このような製造方法によれば、繊維基材の立毛面にポリウレタン溶液を塗布した後、溶剤を乾燥させることにより、第1の溶剤系ポリウレタンも溶解されてその部分が繊維基材のより深い部分に沈む。また、溶剤の乾燥により徐々に高粘度化するポリウレタン溶液により、立毛繊維が横たえられる。そして、乾燥後には、ポリウレタン溶液が塗布された部分に、溶剤系ポリウレタンの皮膜が形成されて横たえられて固着された立毛繊維同士の間の空隙が埋められることにより、その部分の光透過性が低下して濃色化する。
【0013】
また、ポリウレタン溶液を、周面に多数のセルが形成されたグラビアロールで塗布することにより、セルの深さにより塗布されるポリウレタン溶液の量を調整することができる。セルの深さとしては、50~200μmであることが、コントラストの高い凹部と凸部とを形成することができる点から好ましい。
【0014】
また、ポリウレタン溶液は、110℃で熱風乾燥させたときの乾燥時間が10秒間以上であることが、ポリウレタン溶液の乾燥時間を制御しやすい点から好ましい。ポリウレタン溶液の乾燥速度が速すぎる場合には、ポリウレタン溶液を塗布した部分の第1の溶剤系ポリウレタンが充分に溶解せず、そのために、塗布した部分の立毛繊維が起きた状態でポリウレタンが固化することにより、塗布した部分が深い凹部になりにくくなる傾向がある。
【0015】
また、第2の溶剤系ポリウレタンは、110℃で熱風乾燥させたときにひび割れない皮膜を形成する造膜性ポリウレタンであることが、よりコントラストの高い凹部と凸部を形成することができる点から好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来になかった、新規な外観の人工皮革が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態の人工皮革10の主面Mの写真である。
【
図2】
図2は、実施形態の人工皮革10の断面を斜上方から40倍でSEMで撮影したときの顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、実施形態の人工皮革10の主面Mである上面を50倍でSEMで撮影したときの顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、実施形態の人工皮革10の上面を100倍でSEMで撮影したときの顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、実施形態の人工皮革10の溶剤系ポリウレタンの皮膜6の断面を100倍でSEMで撮影したときの顕微鏡写真である。
【
図6】
図6は、実施形態の人工皮革の製造方法を説明するための工程断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
はじめに、本実施形態の人工皮革を詳しく説明する。
【0019】
図1は本発明に係る人工皮革の一実施形態の人工皮革10の主面Mを通常の倍率で撮影した写真である。
図1中、Pは凸部であり、Dは凹部である。凸部Pは起きた立毛繊維から形成されており、明度が高い淡色である。また、凹部Dは溶剤系ポリウレタンの皮膜に覆われ、固着されて横たわった立毛繊維から形成されており、明度が低い濃色である。
【0020】
図2は、人工皮革10の断面を斜上方から40倍で走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したときの顕微鏡写真である。
図2の顕微鏡写真に示された人工皮革10においては、繊維1aを含む布帛1と、布帛1に付与された溶剤系ポリウレタン2と、を含む繊維基材3を含み、一面に布帛1を形成する繊維が起きた立毛繊維4から形成された凸部Pと、溶剤系ポリウレタンの皮膜6に固着されて横たわった立毛繊維4から形成された凹部Dと、が示されている。
【0021】
また、
図3は、人工皮革10の主面Mである上面を50倍でSEMで撮影したときの顕微鏡写真である。また、
図4は、上面を100倍でSEMで撮影したときの顕微鏡写真である。
図3及び
図4に示す人工皮革10の主面Mにおいては、起きた立毛繊維4aから形成された凸部Pと、溶剤系ポリウレタンの皮膜に固着されて横たわった立毛繊維4bから形成された凹部Dと、が示されている。また、
図4に示されているように、横たわった立毛繊維4bが皮膜6に固着されている。
図5は、溶剤系ポリウレタンの皮膜6の断面を100倍でSEMで撮影したときの顕微鏡写真である。
【0022】
以上、図面代用写真を参照して、本実施形態の人工皮革の一例を説明した。次に、本実施形態の人工皮革をその製造方法の例に沿ってさらに詳しく説明する。
【0023】
本実施形態の人工皮革は、例えば、次のようにして製造される。はじめに、少なくとも一面に立毛繊維を含む立毛面を形成された、布帛と布帛に付与された第1の溶剤系ポリウレタンとを含む繊維基材を準備する。そして、繊維基材の立毛面に第2の溶剤系ポリウレタンを溶剤で溶解したポリウレタン溶液をその一部分に塗布する。ポリウレタン溶液の塗布により第1の溶剤系ポリウレタンも溶剤に溶解させる。そして、立毛面に塗布したポリウレタン溶液の溶剤を徐々に乾燥させることにより、ポリウレタン溶液が塗布された部分の立毛繊維を横たえながら第1の溶剤系ポリウレタン及び第2の溶剤系ポリウレタンを造膜させることにより凹部を形成する。
【0024】
図6は、本実施形態の人工皮革の製造方法を説明するための工程断面模式図である。
図6中、1は繊維1aを含む布帛であり、2は第1の溶剤系ポリウレタンであり、3は布帛に第1の溶剤系ポリウレタン2を付与した繊維基材である。なお、
図6では、繊維基材3の表層の一部分のみを表している。
【0025】
本実施形態の人工皮革の製造方法においては、はじめに、
図6(a)に示すように、布帛1に第1の溶剤系ポリウレタン2を付与した繊維基材3を準備する。繊維基材3の上面は主面Mであり、主面Mは布帛1を形成する繊維1aを立毛させた立毛繊維4を含む。
【0026】
布帛を形成する繊維に用いられる樹脂は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性PET,スルホイソフタル酸変性PET,ポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート樹脂等の脂肪族ポリエステル;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン10,ナイロン11,ナイロン12,ナイロン6-12等のナイロン;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン等が挙げられる。これらの中では、芳香族ポリエステル、とくにはPETまたは変性PETが起毛された繊維が第2の溶剤系ポリウレタンに固着されやすい点から好ましい。
【0027】
布帛としては、不織布、織物、編物等が挙げられる。また、布帛を形成する繊維の平均繊度は特に限定されず、2dtexを超えるようなレギュラー繊維であっても、2dtex以下のような極細繊維であってもよいが、天然皮革に似た充実感と柔軟性とを兼ね備えた風合いが得られ、また、柔らかいために凹部を形成しやすい点から極細繊維の不織布が特に好ましい。極細繊維の平均繊度としては、0.001~2dtex、さらには0.002~0.3dtexであることが好ましい。
【0028】
本実施形態の人工皮革の製造に用いられる溶剤系ポリウレタンとは、有機溶剤に対して可溶性を有するポリウレタンであり、通常、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等を含有する溶媒で溶解して調製されたポリウレタン溶液から貧溶媒を用いて湿式凝固されて、多孔質のスポンジ状のポリウレタンを形成させる。溶剤系ポリウレタンの具体例としては、例えば、ポリエステルジオール,ポリエーテルジオール,ポリカーボネートジオール等から選ばれるポリマージオールと、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート,イソホロジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネートなどの、芳香族系,脂環族系,脂肪族系のジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートと、2個以上の活性水素原子を有する鎖伸長剤とを所定のモル比で反応させて得られるポリウレタンが挙げられる。溶剤系ポリウレタンは、架橋構造を形成する水系ポリウレタンに比べると、造膜しやすい。
【0029】
布帛と布帛に付与された第1の溶剤系ポリウレタンとの質量比(布帛/第1の溶剤系ポリウレタン)は特に限定されないが、95/5~55/45、さらには90/10~60/40であることが好ましい。第1の溶剤系ポリウレタンの含有割合が高すぎる場合にはゴムライクな風合いになり、少なすぎる場合には形態安定性が低下する傾向がある。
【0030】
本実施形態の人工皮革の製造方法に用いられる繊維基材は、その一面に布帛を形成する繊維を立毛させた立毛繊維を含む立毛面を主面として有する。繊維基材の立毛面は、主面となる面をバフィング処理やスライス処理による立毛処理をすることにより形成される。バフィング処理の場合、例えば、120~600番手程度のサンドペーパーやエメリーペーパーを用いて行うことが好ましい。
【0031】
繊維基材の厚さは特に限定されないが、具体的には、例えば、0.2~2.0mm、さらには、0.3~1.7mmであることが好ましい。
【0032】
また、繊維基材は着色されていることがとくに好ましい。繊維基材が着色されている場合には、後述するように主面に凹部を形成したときに凹部が濃色化して、その周囲の淡い凸部の色に対して濃色を呈し、凹部と凸部のコントラストが高くなる。このような繊維基材によれば、凹部を形成する際に着色剤を用いることなく、凹部のみを濃色化させることができる。
【0033】
繊維基材の着色方法としては、従来から知られた繊維基材の着色方法がとくに限定なく用いられる。具体例としては、繊維基材を染色したり、繊維基材を形成する繊維に顔料を配合して着色したり、繊維基材に付与される第1の溶剤系ポリウレタンを顔料や染料で着色したりする方法が挙げられる。
【0034】
本実施形態の人工皮革の製造方法においては、上述したような繊維基材の立毛繊維を含む立毛面である主面に、第2の溶剤系ポリウレタンを溶剤で溶解させたポリウレタン溶液をその一部分に塗布し、ポリウレタン溶液の塗布により第1の溶剤系ポリウレタンも溶剤に溶解させる。
【0035】
なお、従来、繊維基材の表面にポリウレタン溶液を塗布し、乾燥させることにより、繊維基材の表面に銀面調の樹脂層を形成する技術は知られていた。このような従来の技術においては、ポリウレタン溶液を繊維基材の表面で乾燥させることにより、ポリウレタン溶液を繊維基材の内部に沈めないようにして樹脂層を形成させていた。このような方法によれば、繊維基材の表面に樹脂層が形成される。一方、本実施形態においては、繊維基材の表面に樹脂層を形成させるのではなく、溶剤を蒸発させながらポリウレタン溶液を繊維基材に浸透させ、その際に、ポリウレタン溶液を第1の溶剤系ポリウレタンを溶剤で溶解させながら沈み込ませ、第2の溶剤系ポリウレタンとともに皮膜を形成させることにより、横たえた立毛繊維を皮膜で覆い、固定することができる。そして、立毛繊維同士の間の空隙が皮膜で埋められることにより、その部分の光透過性が低下して濃色化する。
【0036】
詳しくは、
図6(a)に示すように、布帛1に第1の溶剤系ポリウレタン2を付与した繊維基材3を準備する。繊維基材3の上面は主面Mであり、主面Mは布帛1を形成する繊維1aを立毛させた立毛繊維4を含む。
【0037】
そして、
図6(b)に示すように、例えば、セルGが形成されたグラビアロール20を用いて、主面Mの一部分に第2の溶剤系ポリウレタン16を溶解したポリウレタン溶液17を塗布する。詳しくは、比較的深いセル(凹部)を有するグラビアロールのセルに、ポリウレタン溶液を収容させ、グラビアロールを主面に当接させることにより、主面の表面にポリウレタン溶液を転写する。なお、ポリウレタン溶液を塗布する方法はグラビアロールを用いた方法に限られず、例えば、スクリーンを用いた方法等を用いてもよい。
【0038】
グラビアロールを用いる場合、その表面に形成されたセルの深さとしては、50~200μm、さらには60~100μmであることが、コントラストの高い凹部と凸部を形成することができる点から好ましい。
【0039】
ポリウレタン溶液に含まれる第2の溶剤系ポリウレタンは、第1の溶剤系ポリウレタンと同じものであっても、異なるものであってもよいが、とくには110℃に設定された熱風乾燥機で乾燥したときにひび割れない皮膜を形成する造膜性ポリウレタンであることが好ましい。このような造膜性ポリウレタンとしては、例えば、ポリウレタン以外の樹脂、具体的には、ポリメタクリレート,シリコーン,架橋剤等の樹脂を造膜助剤として配合したポリウレタンや、ガラス転移温度-20℃以下のポリウレタンであって架橋構造を形成しないポリウレタン等が挙げられる。
【0040】
ポリウレタン溶液は、ポリウレタンをその良溶媒に溶解させて調製される。第2の溶剤系ポリウレタンを溶解させる溶媒はとくに限定されないが、ポリウレタンの良溶媒である点から、DMFがとくに好ましい。また、ポリウレタンをDMFに溶解させる場合、ポリウレタン溶液の第2の溶剤系ポリウレタンの濃度としては、3~18質量%、さらには、5~12質量%であることが好ましい。また、ポリウレタン溶液中のDMFの割合は、30~70質量%、さらには、45~55質量%であることが好ましい。
【0041】
また、ポリウレタン溶液が徐々に高粘度化し、塗布された部分の立毛繊維を横たえた状態で、溶剤系ポリウレタンの皮膜を形成しやすくさせるために、ポリウレタン溶液は、例えば、110℃に設定された熱風乾燥機で乾燥させたときの乾燥時間が10秒間以上、さらには15秒間以上、であることが好ましい。上限は特に限定されないが、20秒間程度であることが好ましい。このようなポリウレタン溶液を調製するためには、ポリウレタン溶液に揮発性を高めるために配合される、アセトンやシクロヘキサノン(アノン)のような揮発剤を12~67質量%配合することが好ましい。
【0042】
上述したような立毛繊維を含む立毛面を主面として有する繊維基材のその主面に、第2の溶剤系ポリウレタンを溶剤で溶解したポリウレタン溶液をその一部分に塗布することにより、第1の溶剤系ポリウレタンも溶剤に溶解される。
【0043】
塗布されるポリウレタン溶液の量としては、セルを形成する部分において、30~200mL/m2、さらには50~100mL/m2であることが、適度な深さの凹部が形成される点から好ましい。また、付与される第2のポリウレタンの量としては、6~50g/m2、さらには7~25g/m2であることが、適度な深さの凹部が形成される点から好ましい。
【0044】
そして、
図6(c)に示すように主面Mの一部分に塗布されたポリウレタン溶液17は、徐々に乾燥される。このとき、急速に乾燥せずに徐々に乾燥することにより、溶剤の揮発につれてポリウレタン溶液17は繊維基材3の表層に徐々に浸透しながら増粘し、また、ポリウレタン溶液の浸透により、繊維基材3の表層に元々存在していた第1の溶剤系ポリウレタン2が溶解してその部分が内部に沈んでいく。とくに、第1の溶剤系ポリウレタン2が多孔質のスポンジ状のポリウレタンである場合には、内部の空隙が消失することにより大幅に体積が減少して、その部分がとくに沈みやすくなる。このとき、溶剤系ポリウレタンは、凹部の周辺の表層では空隙が消失して非多孔質になり、凹部の周辺の表層以外の部分では多孔質のまま残る。
【0045】
ポリウレタン溶液の乾燥条件はその濃度や量により適宜調整されるが、5~30秒間、さらには10~20秒間で乾燥するような乾燥条件を選択することが好ましい。このような乾燥条件のための乾燥温度としては、90~140℃、さらには100~120℃程度であることが好ましい。
【0046】
そして、
図6(d)に示すように主面Mの一部分に塗布されたポリウレタン溶液17は、第1の溶剤系ポリウレタン2を溶解しながらその部分が内部に沈み、また、塗布された部分の立毛繊維4を横たえさせながら皮膜6を形成する。このようにして、主面に、起きた立毛繊維4aから形成された少なくとも1つの凸部Pと、第1の溶剤系ポリウレタンと第2の溶剤系ポリウレタンとが造膜して形成された溶剤系ポリウレタンの皮膜6に固着された横たわった立毛繊維4bを含む少なくとも1つの凹部Dが形成される。このようにして、本実施形態の人工皮革10を製造することができる。
【0047】
凸部を形成する立毛繊維の立毛長は特に限定されないが、20~200μm、さらには、50~100μmであることが好ましい。また、凹部の底と凸部の頂点との高低差は特に限定されないが、10~30μm、さらには、5~10μmであることが好ましい。なお、高低差は、例えば、SEMで撮影された断面写真から計測することができる。
【0048】
また、本実施形態の人工皮革においては、凹部は凸部よりも濃色であることが好ましい。具体的には、L*a*b*表色系の座標値から求めた明度L*値において、凹部は凸部よりもΔL*≧2以上、さらにはΔL*≧5であることが意匠性にとくに優れる点から好ましい。
【0049】
また、凹部と凸部の面積比や、凹部の一つ当たりの面積、凹部の数等は特に限定されない。例えば、主面の全表面積における凹部の面積の割合としては、10~90%、さらには、30~70%であることが好ましい。
【0050】
上述したような本実施形態の人工皮革は、人工皮革の立毛調の表面において、立毛部の周囲に立毛繊維を横たえて溶剤系ポリウレタンの皮膜で固定した凹部を形成することにより、その表面に模様を形成することができる。凹部による模様の形状は、ドット状、ストライプ状、不規則形状等、とくに限定されない。
【0051】
このようにして形成された人工皮革の表面は、従来知られた人工皮革の表面に付与された種々の外観とは異なる、新規な外観である。このような人工皮革は、その外観を活かして、鞄,靴,衣料,電子機器や車両の内外装の表装材等の用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0052】
次に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例の内容により、何ら限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
海成分である水溶性PVAと、島成分である、6モル%のイソフタル酸で変性されたPETとを、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃の溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)から吐出した。そして、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力(引き取り風圧)を調整し、平均繊度2.1デシテックスの海島型複合繊維をネット上に堆積したスパンボンドシートを得た。そして、表面温度42℃の金属ロールでネット上のスパンボンドシートを軽く押さえることにより表面の毛羽立ちを抑えた。そしてスパンボンドシートをネットから剥離した。次に、表面温度55℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間で200N/mmの線圧でスパンボンドシートを熱プレスして、目付31g/m2の長繊維からなる繊維ウェブを得た。
【0054】
次に、得られた繊維ウェブをクロスラッピングにより12枚重ねて総目付が372g/m2の重ね合わせウェブを作製し、さらに針折れ防止油剤をスプレーした。そして、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、重ね合わせウェブを針深度8.3mmで両面から交互に3300パンチ/cm2でニードルパンチすることにより繊維絡合体を得た。
【0055】
得られた不織布を加熱した後、プレスすることにより水溶性PVA成分を溶融固着させて不織布表面を平滑にした。そして、表面を平滑にされた不織布に、第1のポリウレタン(第1のPU)であるポリエステル系ポリウレタンの13%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸させた後、DMF水溶液中に浸漬してポリウレタンをスポンジ状の多孔質に凝固させた。そして、海島型複合繊維の海成分の水溶性PVAを溶解除去し、乾燥することにより繊維基材を製造した。繊維基材中の第1の溶剤系ポリウレタンの割合は10質量%であった。
【0056】
そして、繊維基材の両面を♯600番手のサンドペーパーを用いてバフィングして表面を立毛させることにより、立毛繊維を含む立毛面を形成させた主面を有する、第1の溶剤系ポリウレタンを含む繊維基材を得た。
【0057】
そして、赤色の分散染料を用いて液流染色機を用いて130℃で60分間染色し、110℃の熱風で乾燥した後、染色された繊維基材の主面をシール処理した。
【0058】
次に、得られた繊維基材の主面に第2の溶剤系ポリウレタンを溶剤で溶解したポリウレタン溶液をグラビアロールを用いて塗布した。なお、グラビアロールはセル深さ70μmで、第2の溶剤系ポリウレタンの量は、8g/m2であった。
【0059】
なお、ポリウレタン溶液は、第2の溶剤系ポリウレタン8質量%、DMF50質量%、アノン42質量%を含有し、110℃に設定した熱風乾燥機で乾燥させたときの乾燥時間が12秒間であった。また、第2の溶剤系ポリウレタンは、110℃に設定した熱風乾燥機で乾燥したときにひび割れない皮膜を形成する造膜性ポリウレタンであった。
【0060】
そして、ポリウレタン溶液を塗布された繊維基材を110℃、15秒間の条件で徐々に乾燥させることにより、ポリウレタン溶液中の溶剤を蒸発させた。このようにして、実施例1の人工皮革が得られた。
【0061】
得られた人工皮革は、0.1dtexの変性PETの極細繊維の不織布と不織布に含浸付与された多孔質のポリウレタンを含み、主面にドット状の模様を有する人工皮革であった。また、人工皮革中の第2の溶剤系ポリウレタンの割合は8質量%であった。また、人工皮革は、厚さ0.8mm、見掛け密度0.4g/cm3であった。
【0062】
得られた人工皮革の表面及び断面の写真を撮影した。上述した
図1~
図5の写真はこのようにして得られた人工皮革の上面写真及びSEM写真である。
図1~
図5に示すように、主面は、起きた立毛繊維から形成された複数の凸部Pと、溶剤系ポリウレタンの皮膜に覆われて横たわった状態で固着された立毛繊維から形成された複数の凹部Dとを形成していた。
【0063】
そして、得られた人工皮革の表面外観、風合い、凹部消失性、L*値を次のようにして評価した。
【0064】
〈表面外観〉
人工皮革の主面を目視で観察し、以下の基準で判定した。
A:ドット状の模様が明確に形成されており、溶剤系ポリウレタンの皮膜に覆われて横たわった状態で固着された立毛繊維から形成された複数の凹部が形成されており、凹部が凸部よりも明らかに濃色化していた。
B:立毛繊維が溶剤系ポリウレタンの皮膜に覆われて横たわった状態で固着した凹部が形成されておらず、ドット状の模様が不鮮明であり、濃色化していなかった。
C:ドット状の模様が形成されず、凹部と凸部とのコントラストが全く確認できなかった。
【0065】
〈風合い〉
人工皮革の主面の触感を以下の基準で判定した。
A:立毛繊維によるスエード感が高く、また、表層がしなやかであった。
B:立毛繊維によるスエード感は残ったが、部分的に硬くなった。
C:表層が硬く、ざらついた触感であった。
【0066】
〈凹部消失性〉
JIS K7204(摩耗輪H―22、荷重9.8N、摩擦回数300回)に準じたテーバー摩耗機で評価し、凹凸の消失の程度を以下の基準で判定した。
A:凹凸が不変であった。
B:凹凸が見えにくくなった。
C:凹凸が無くなった。
【0067】
〈L*値〉
分光光度計(ミノルタ社製:CM-3700)を用いて、JISZ 8729に準拠して、立毛調人工皮革の表面のL*a*b*表色系の座標値から明度L*値を求めた。値は、試験片から平均的な位置を万遍なく選択して測定された3点の平均値である。
【0068】
結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
[実施例2~4]
ポリウレタン溶液の塗布条件を表1に記載のような条件に変更した以外は実施例1と同様にして人工皮革を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例5]
6-ナイロン(Ny6)と高流動性低密度のポリエチレンとをそれぞれ1軸押出機で溶融させ、島成分が6-ナイロン、海成分がポリエチレンで、海成分/島成分比率=50/50である300島の海島型複合繊維を複合紡糸ノズルで溶融紡糸した。そして、得られた糸を延伸、クリンプ、カットして、3.5dtex、カット長51mmのステープルを得た。得られたステープルをカードに通し、クロスラッパー方式によりウェブとし、積層した。次に980パンチ/cm2の針刺し密度でニードルパンチすることにより、目付530g/m2の不織布を得た。
【0072】
得られた不織布を加熱した後、プレスすることによりポリエチレンを溶融固着させて不織布表面を平滑にした。そして、表面を平滑にされた不織布に、第1のポリウレタン(第1のPU)であるポリエステル系ポリウレタンの13%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸させた後、DMF水溶液中に浸漬してポリウレタンをスポンジ状の多孔質に凝固させた。そして、海島型複合繊維の海成分のポリエチレンを95℃のトルエンで抽出除去した後、乾燥することにより繊維基材を製造した。繊維基材中の第1の溶剤系ポリウレタンの割合は35質量%であった。
【0073】
そして、繊維基材の両面を♯600番手のサンドペーパーを用いてバフィングして表面を立毛させることにより、立毛繊維を含む立毛面を形成させた主面を有する、第1の溶剤系ポリウレタンを含む繊維基材を得た。
【0074】
そして、赤色の酸性染料を用いてウインス染色機を用いて90℃で60分間染色し、110℃の熱風で乾燥した後、染色された繊維基材の主面をシール処理した。
【0075】
次に、得られた繊維基材の主面に第2の溶剤系ポリウレタンを溶剤で溶解したポリウレタン溶液をグラビアロールを用いて塗布した。なお、グラビアロールは深さ100μmで、第2の溶剤系ポリウレタンの量は、11g/m2であった。
【0076】
そして、ポリウレタン溶液を塗布された繊維基材を110℃、12秒間の条件で徐々に乾燥させることにより、ポリウレタン溶液中のDMFを蒸発させた。このようにして、実施例5の人工皮革が得られた。
【0077】
得られた人工皮革は、0.1dtexの6-ナイロンの極細繊維の不織布と不織布に含浸付与された多孔質のポリウレタンを含み、主面にドット状の模様を有する人工皮革であった。そして、主面は、起きた立毛繊維から形成された複数の凸部と、溶剤系ポリウレタンの皮膜に覆われて横たわった状態で固着された立毛繊維から形成された複数の凹部が形成されていた。また、人工皮革中の第2の溶剤系ポリウレタンの割合は8質量%であった。また、人工皮革は、厚さ0.6mm、見掛け密度0.38g/cm3であった。
【0078】
[比較例1~3]
表1に記載のような条件に変更した以外は実施例5と同様にして人工皮革を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0079】
実施例1~5で得られた人工皮革は、何れも、主面に、ドット状の模様が明確に形成されており、溶剤系ポリウレタンの皮膜に覆われて横たわった状態で固着された立毛繊維から形成された複数の凹部が形成されており、凹部が凸部よりも明らかに濃色化していた。一方、比較例1~2で得られた人工皮革は、何れも、主面に、立毛繊維が溶剤系ポリウレタンの皮膜に覆われて横たわった状態で固着した凹部が形成されておらず、ドット状の模様が不鮮明であるか、または、ドット状の模様が全く形成されておらず、濃色化したドット状の模様が形成されなかった。