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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】コンテナクレーンの運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/00 20060101AFI20230117BHJP
   B66C 19/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C19/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020089707
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183536
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591246746
【氏名又は名称】一般社団法人港湾荷役システム協会
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】野口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】池町 円
(72)【発明者】
【氏名】白石 哲也
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-189391(JP,A)
【文献】特開2015-189528(JP,A)
【文献】特開平05-147882(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145725(WO,A1)
【文献】特開2018-203397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-13/52
B66C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーダやブームに沿って移動可能な操作室を備え、前記操作室には、垂下させた吊具を視認可能な底面窓が設けられているコンテナクレーンに付帯されるコンテナクレーンの運転支援装置であって、
少なくとも前記操作室の下部に設置され、前記底面窓から視認可能な状況を撮影可能とし、少なくとも吊具と、コンテナ、及びコンテナ周囲の状況を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって撮影された映像を表示する表示手段と、を有し、
前記表示手段は、前記操作室の前面に設置し、前記底面窓から視認可能な状況と同等以上の倍率で前記映像を表示すると共に、表示する映像の倍率を変化させることが可能な構成としたことを特徴とするコンテナクレーンの運転支援装置。
【請求項2】
前記操作室には前面窓が備えられており、
前記表示手段は、前記映像を表示していない状態では、前記前面窓を介して得られる状況を視認可能な透光性を有する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンテナクレーンの運転支援装置。
【請求項3】
前記操作室には前面窓が備えられており、
前記表示手段は、設置位置を前面から移動可能な構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンテナクレーンの運転支援装置。
【請求項4】
前記撮影手段による撮影は、1つの対象物を倍率が共通化された複数の撮影手段により撮影し、前記表示手段には、視差を利用した立体表示を行う構成としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンテナクレーンの運転支援装置。
【請求項5】
前記撮影手段は複数設置されており、1つの前記表示手段に対して前記撮影手段により撮影された個々の映像を統合して表示することを可能とし、
表示方法としては、前記表示手段の画面を複数の枠に分割し、あるいは複数の枠毎に表示される映像を重ねて表示することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンテナクレーンの運転支援装置。
【請求項6】
前記撮影手段と前記表示手段は、それぞれ複数、同数設置されており、個々の表示手段に対して個々の撮影手段により撮影された映像を表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンテナクレーンの運転支援装置。
【請求項7】
前記表示手段に表示された映像に、コンテナ移動先の目標位置を重ねて表示することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコンテナクレーンの運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナクレーンに係り、特にコンテナの荷役作業を行う上での操作者の負担を軽減するのに好適な運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナクレーンの大型化に伴い、操作室から目視で得られる情報のみでの操作が困難となりつつあり、様々な運転支援装置が提案されてきている。例えば特許文献1に開示されているコンテナクレーンの運転支援装置は、操作室の窓に透光性のディスプレイを配置し、このディスプレイに、目視では得る事のできない情報(例えば、操作室の位置情報やコンテナ情報等)を表示可能な構成とすることが記載されている。
【0003】
このような構成のコンテナクレーンの運転支援装置によれば、コンテナクレーンの操作者は、目視によって得られる情報に加え、ディスプレイに表示された情報を得る事ができるようになる。このため、荷役の安全性を確保しながら、荷役効率の向上を図る事が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-193778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに、上記特許文献1に開示されているようなコンテナクレーンの運転支援装置を用いれば、安全性を確保しながら、荷役効率の向上を図る事ができると考えられる。しかし、特許文献1に開示されているコンテナクレーンは、運転支援装置が備えられているとはいえ、基本的には前面窓と底面窓を介した視認による操作を行っている。このため、操作者はコンテナを荷役する際、底面窓をのぞき込むような姿勢を長時間とる必要があり、身体に大きな負担となる。
【0006】
そこで本発明では、荷役時の安全性や効率の向上を図りつつ、操作者の負担軽減も図る事のできるコンテナクレーンの運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るコンテナクレーンの運転支援装置は、ガーダやブームに沿って移動可能な操作室を備え、前記操作室には、垂下させた吊具を視認可能な底面窓が設けられているコンテナクレーンに付帯されるコンテナクレーンの運転支援装置であって、少なくとも前記操作室の下部に設置され、前記底面窓から視認可能な状況を撮影可能とし、少なくとも吊具と、コンテナ、及びコンテナ周囲の状況を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された映像を表示する表示手段と、を有し、前記表示手段は、前記操作室の前面に設置し、前記底面窓から視認可能な状況と同等以上の倍率で前記映像を表示すると共に、表示する映像の倍率を変化させることが可能な構成としたことを特徴とする。
【0008】
また、上記のような特徴を有するコンテナクレーンの運転支援装置では、前記操作室には前面窓が備えられており、前記表示手段は、前記映像を表示していない状態では、前記前面窓を介して得られる状況を視認可能な透光性を有する構成とすると良い。このような特徴を有する事によれば、表示手段を前面窓と操作席との間に常設した状態で、前面窓からの視認性も確保することが可能となる。
【0009】
また、上記のような特徴を有するコンテナクレーンの運転支援装置では、前記操作室には前面窓が備えられており、前記表示手段は、設置位置を前面から移動可能な構成とすることもできる。このような特徴を有する事によれば、表示手段を通常のモニタとした場合であっても、前面窓からの視認性を確保することが可能となる。
【0010】
また、上記のような特徴を有するコンテナクレーンの運転支援装置において、前記表示手段に表示する映像の倍率を変化させることが可能な構成とする事によれば、肉眼では視認し難い状況であっても、これを拡大して表示することが可能となる。よって、荷役の正確性、効率の向上を図ることができる。
【0011】
また、上記のような特徴を有するコンテナクレーンの運転支援装置における前記撮影手段による撮影は、1つの対象物を倍率が共通化された複数の撮影手段により撮影し、前記表示手段には、視差を利用した立体表示を行う構成とすることもできる。このような特徴を有する事によれば、荷役作業時の距離感や位置関係を把握し易くなる。よって、荷役の正確性、効率の向上を図ることができる。
【0012】
また、上記のような特徴を有するコンテナクレーンの運転支援装置では、前記撮影手段は複数設置されており、1つの前記表示手段に対して前記撮影手段により撮影された個々の映像を統合して表示することを可能とし、表示方法としては、前記表示手段の画面を複数の枠に分割し、あるいは複数の枠毎に表示される映像を重ねて表示することができる。このような特徴を有する事によれば、撮影手段を複数設けた場合であっても、表示手段を1つとすることができる。
【0013】
さらに、上記のような特徴を有するコンテナクレーンの運転支援装置において前記撮影手段と前記表示手段は、それぞれ複数、同数設置されており、個々の表示手段に対して個々の撮影手段により撮影された映像を表示するようにしても良い。このような特徴を有する事によれば、表示を切り替える事なく、複数の撮影手段により撮影された映像を同時に確認する事が可能となる。
【0014】
さらにまた、上記のような特徴を有するコンテナクレーンの運転支援装置では、前記表示手段に表示された映像に、コンテナ移動先の目標位置を重ねて表示するようにしても良い。このような特徴を有する事によれば、操作者がコンテナ移動先の目標位置を容易に把握することが可能となる。よって、操作の効率向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のような特徴を有する事によれば、荷役時の安全性や効率の向上を図ることができる。また、操作者の身体的な負担軽減を図る事も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るコンテナクレーンの運転支援装置を適用するコンテナクレーンの構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係るコンテナクレーンの運転支援装置を適用した操作室の概略構成を示す図である。
図3】表示手段に対する表示形式の例(分割)を示す図である。
図4】表示手段に対する表示形式の例(重ね合わせ)を示す図である。
図5】コンテナクレーンの運転支援装置の変形例であり、表示手段のステーにヒンジを設けた場合の構成を示す図である。
図6図5に示す変形例において、表示手段を移動させた状態の構成を示す図である。
図7】2つの撮影手段により1つの対象物を同一方向から撮影し、視差を利用して立体視表示する場合の例を説明するための図である。
図8】コンテナ搬送車両の荷台の目標位置にマーカーを表示した状態を示す図である。
図9】コンテナや吊具により目標位置の一部が隠れてしまった場合でも、マーカーは表示される事を説明するための図である。
図10】セルガイドの先端を目標位置とする場合、先端位置の高さの違いを視覚的に表すために、マーカーの形状や色に変化を加える事が望ましい点を説明するための図である。
図11】セルガイドの先端を目標位置としてマーカーを表示した場合、目標位置の一部が隠れた場合でも、マーカーは表示される事を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のコンテナクレーンの運転支援装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
[コンテナクレーン]
まず、図1を参照して、本実施形態に係るコンテナクレーンの運転支援装置(以下、単に運転支援装置10と称す)を適用するコンテナクレーン50の一例について、その構成を説明する。コンテナクレーン50は、4本の脚52を水平桁54とシルビーム(不図示)により接続する事で、構造物として構成されている。各脚52には、移動手段52aが備えられ、詳細を図示しない軌道に沿ってコンテナクレーン50を移動させる事が可能な構成とされている。
【0019】
ガーダ56及びブーム58を通して横行レール(不図示)が敷かれ、そのレール下をトロリ59が移動可能な構成となっている。トロリ59の下部に操作室60が設置され、トロリ59から垂下可能な吊具66が備えられ、この吊具66を介してコンテナ68の荷役が行われる。
【0020】
また、操作室60には図2に示すように、少なくとも、前方の視認性を確保するための前面窓62と、下方の視認性を確保するための底面窓64が備えられている。
【0021】
操作室60には、垂下可能な吊具66が備えられ、この吊具66を介してコンテナ68の荷役が行われる。吊具を降下させた際には、前述した底面窓を介して、その周辺状況を視認する事が可能とされている。
【0022】
[運転支援装置]
次に、上記のような構成のコンテナクレーン50に付帯される運転支援装置10について説明する。本実施形態に係る運転支援装置10は、撮影手段12(12A,12B,12C)と、表示手段14とを基本として構成されている。
【0023】
撮影手段12は、少なくとも吊具66と、コンテナ68、及び船舶70等コンテナ68の周囲の状況を撮影するための要素である。また、その機能としては、対象物を撮影する際の倍率を光学的に変化させる事ができるものであると良い。なお、光学的な倍率変更が困難な場合であっても、撮影画像の解像度を変化させる事により、電子的に表示倍率を変える事は可能であるため、必須要素とする必要は無い。
【0024】
本実施形態の場合、撮影手段12A,12B,12Cは、操作室60の下部を含む複数個所に備えるようにしている。操作室60の下部以外の設置場所については限定的なものでは無いが、例えばコンテナクレーン50を構成する脚52に備えるようにすれば良い。このような配置形態とすることで、吊具66と、コンテナ68、及びコンテナ68の周囲の状況を撮影することが可能となるからである。なお、ここでいうコンテナ68とは、搬出入対象とされるコンテナ68であり、船舶70に積載されたコンテナ68のみならず、岸壁においてコンテナ68を搬送するトレーラ等のコンテナ搬送車両72に搭載されたコンテナ68も含む。
【0025】
表示手段14は、撮影手段12によって撮影された映像を表示するための手段であり、操作室60に設置されている。実施形態に係る表示手段14は、透光性を有する素材により構成された表示画面を有し、映像を表示していない状態では、表示手段14の背面の景色を視認可能な構成としている。このような構成の表示手段14は、操作室60内において、前面窓62と操作席60aとの間に設置されている。このような設置形式とすることで、表示手段14に映像を表示しない状態では操作者74が、前面窓62からの景色を見る事が可能となる。また、荷役時に撮影される映像を表示手段14に表示する構成とすることで、操作者74は、前面に位置する表示手段14を見ながら荷役作業を実施することとなる。
【0026】
これにより、従来は、底面窓64を介して視認しながらコンテナ荷役のための操作を行っていた操作者74が、前面に設けられた表示手段14を見ながら荷役作業を行う事が可能となる。よって、操作者74の姿勢が改善され、コンテナ荷役時における操作者74の身体的負担の軽減を図る事ができる。
【0027】
また、表示手段14は、操作者74による操作により、表示形式の切り替え、及び表示倍率の切り替えを行う事ができる。表示形式の切り替えとしては、操作室60の下部に備えられた撮影手段12Aにより撮影された映像と、コンテナクレーン50の脚52に備えられた撮影手段12B,12Cにより撮影された映像の切り替えの他、図3に示すように映像を表示するエリアを複数に分割し、各エリアに個別に撮影映像を表示することも可能となる。例えば図3に示す例では、表示画面を4つに分割し、“A”、“B”、“C”で示す表示部それぞれに、撮影手段12A,12B,12Cそれぞれにより撮影された映像を表示する構成としている。
【0028】
また、図4で示す例では、表示部を移動可能なウィンドウ形式とし、それらを重ね合わせて(一部重ね合わせる場合を含む)表示し、適宜注目する映像を表示する表示部の大きさや表示場所を変化させることを可能な構成としている。また、表示倍率の切り替えは、各映像の表示エリアのサイズによっても異なるが、基本は、底面窓64等を介して視認する事のできる状況と同等以上の倍率となるように表示する構成としている。このような構成とする事により、荷役時における安全性の向上や、荷役効率の向上を図る事も可能となる。
【0029】
[作用・効果]
上記のような構成の運転支援装置10は、主に、コンテナ68の荷役作業を行う際に使用する。このため、荷役作業を行わずコンテナクレーンを走行移動(図1における断面図の手前あるいは奥行き方向への移動)させる際には、表示手段14に対する映像の表示を“OFF”にしておく。こうする事により、前面窓62に映る状況を視認する事が可能となるからである。
【0030】
次に、陸側でのコンテナ搬送車両72としてのトレーラ等へのコンテナ68の積み降ろしの荷役作業を行う際には、表示手段14に、撮影手段12(12A,12B,12C)により撮影された映像を表示する。撮影手段12Aにより撮影された映像を拡大して表示することで、底面窓64を介して視認する事ができる状況よりも大きな倍率で吊具66等を表示する事が可能となる。また、撮影手段12B,12Cにより撮影された映像により、トレーラ等への積み込み時には、コンテナ68の着床位置までの距離が容易に把握できることとなる。このため、優しい着床が可能となり、積み降ろし時には、地切りをしっかり確認できることになる。これらのことより、吊具66を垂下させる垂直及び水平方向の位置の調整等を正確に行う事が可能となり、荷役作業の安全性と効率、双方の面において向上を図ることができる。
【0031】
また、従来、コンテナ68の荷役作業時には、操作者74が底面窓64をのぞき込むようにして吊具66の操作が行われていた。これに対し、本実施形態のように、操作席60aの前面に配置された表示手段14を視認しながら吊具66の操作を行うようにすることで、荷役作業時における操作者74の姿勢の改善を図る事ができる。よって、操作者74の身体的負担の軽減を図る事もできる。
【0032】
[第1の変形例]
次に、実施形態に係る運転支援装置に関する第1の変形例について、図5図6を参照して説明する。上述した基本形態との相違点は、表示手段14の構成と設置形態にある。具体的には、本形態に係る表示手段14は、上記実施形態と異なり、透光性を有する素材により構成しなくとも良く、いわゆる通常のモニタであれば足りる。
【0033】
また、本形態に係る表示手段14は、その設置位置を任意に移動させる事ができるように構成されている。具体的には表示手段14を支持するステー16を可動型とし、操作室60の天井や壁面(図5図6に示す例では天井)を基点として、表示手段14を移動させる事が可能な構成としている。本実施形態では、ステー16にヒンジ16aを設け、このヒンジ16aを介してステー16を回動、折り曲げすることで、表示手段14を天井側へ移動させることを可能な構成としている。
【0034】
このような構成とすることで、表示手段14に映像を表示しない場合、すなわち吊具66の荷役作業以外の操作を行う場合には、前面窓62を介して得られる状況を視認しながら操作を行うことが可能となる。
【0035】
また、操作席60aの前面に配置された表示手段14を視認しながら吊具66の操作を行うことが可能であることより、荷役作業時における操作者74の姿勢の改善を図る事もできる。よって、操作者の身体的負担の軽減を図る事もできる。
【0036】
[第2の変形例]
上記実施形態ではいずれも、1つの撮影手段12により1つの対象物を撮影するように説明している。しかしながら、本発明に係る運転支援装置10では、例えば図7に示すように、複数(図7に示す例では2つ)の撮影手段12A1,12A2により、1つの対象物(図7に示す例では吊具66)を同一方向から撮影するようにしても良い。
【0037】
このような撮影方法を採用する場合、撮影手段12A1と撮影手段12A2とは、離間して設置し、撮影を行う際の光学的倍率を共通化させておくと良い。このような構成とした上で撮影された2つの映像には、撮影手段12A1と撮影手段12A2の設置位置の差に応じた視差が生じることとなる。
【0038】
表示手段14には、2つの映像を合成、あるいは並列配置で表示することで、2つの映像間における視差を利用した立体視映像の表示、あるいは立体視が可能な映像の表示方式を採ることができる。
【0039】
撮影手段12A1,12A2により撮影された映像を立体視映像、あるいは立体視可能な表示形式で表示する構成とすることで、吊具66とコンテナ68の位置関係や距離を把握し易くなり、荷役作業の安全性と効率の双方における向上を図る事が可能となる。
【0040】
なお、上記実施形態ではいずれも、表示手段14は、複数の撮影手段12(12A,12B,12C)に対して1つであるように示している。しかしながら、操作室60内に複数の表示手段14を設置し、各表示手段14に、複数の撮影手段12によって撮影されたそれぞれの映像を個別に表示する構成としても良い。このような構成とした場合、各表示手段14には、個別の撮影手段12による映像を表示範囲内に最大表示させた状態で、切り替え作業を必要とすることなくそれぞれの撮影映像を確認することが可能となる。
【0041】
[第3の変形例]
ところで、上記のような構成のコンテナクレーン50では、操作者74は、荷役作業時には吊具66やコンテナ68を上(斜め上)から見て操作を行うこととなる。このため、コンテナ68を掴んでいる状態では特に、コンテナ68の下側となる移動先の目標位置が、掴んでいるコンテナ68の影となり、見えなくなってしまう。さらに、コンテナ68が揺れている状況では、目標位置の4つの頂点を常に視認することは困難である。
【0042】
コンテナ68の荷役作業において、吊具66によりコンテナ68を掴む場合は、荷役対象とするコンテナ68の上面の4頂点が目標位置となる。一方、コンテナ68を掴んでいる状態での目標位置としては、直下となるコンテナ上面の他、コンテナ搬送車両72としてのトレーラの荷台、及び船舶70の船倉内のセルガイド上端等を挙げることができる。
【0043】
このような目標位置は、撮影手段12Aで撮影された映像から、画像認識プログラムにより検出し、操作者74に認識し易いように表示すれば良い。なお、目標位置の検出に寄与する画像認識プログラムについては、既存の技術を利用すれば足りる。
【0044】
目標位置の表示について具体的には、例えば図8に示すように、「+」などのマーカー18を表示し、このマーカー18を破線などの補助線等で繋いで表示すれば良い。なお、障害物の影になり、映像に写らない目標位置については、コンテナ上面や、トレーラの荷台、セルガイド等について、予め定められている形状や寸法(規定値)に基づき、映像に表れている他の目標位置に基づいて、その相対的な位置関係を計算してマーカー18を表示する。
【0045】
表示されている目標位置が無い、あるいは1点のみである場合には、目標位置が写っている直前の映像からの位置情報を用いて算出する。具体的には、目標位置の位置情報の算出に使用した映像(直前映像)を撮影した瞬間から撮影した撮影手段12Aの位置が水平移動している場合には、その移動を考慮して、マーカー18を表示する位置を補正する。補正方法としては、その間には位置が変化していない固定物、例えばコンテナクレーン50の脚52、シルビーム、水平桁54との相対位置から補正する方法及びその間の移動距離をコンテナクレーン50の制御装置より取得する方法等を挙げることができる。
【0046】
このような手法を採用することによれば、図9に示すように、実際にはコンテナ68や吊具66により目標位置の一部が隠れてしまっているような場合でも、目標位置に合致させたマーカー18を表示手段14上に表示することが可能となる。
【0047】
マーカー18を表示手段に表示する場合、トレーラの荷台やセルガイド上端等の目標位置が、画像認識プログラムによる認識が困難となる場合、目標位置に蛍光塗料等による着色や、反射物、発光体等の目印を設置するようにしても良い。なお、対象箇所が多いセルガイド等に反射物や発光体等を設置する場合、磁石など、着脱が容易な方法を採用することが望ましい。
【0048】
また、図10図11に示すように、セルガイド70a(70a1、70a2)はコンテナ68の出し入れを容易にするため高低差が付けられている(背の高いセルガイド70a1、背の低いセルガイド70a2)。このため、目標位置となる4本のセルガイド70aの先端部頂点を結ぶ形状は、操作席60aから見ると長方形ではなく台形状に見える(図10参照)。このため、マーカー18を表示する場合には、マーカー18の形状や色彩を変える事により、セルガイド70aの高低差を視覚的に把握できるようにしても良い。このような表示形式を採用する場合であっても、図11に示すように、コンテナ68や吊具66により隠れてしまう目標位置を算出してマーカー18を表示することができる。
【符号の説明】
【0049】
10………運転支援装置、12A,12B,12C………撮影手段、14………表示手段、16………ステー、16a………ヒンジ、18………マーカー、50………コンテナクレーン、52………脚、52a………移動手段、54………水平桁、56………ガーダ、58………ブーム、59………トロリ、60………操作室、60a………操作席、62………前面窓、64………底面窓、66………吊具、68………コンテナ、70………船舶、70a………セルガイド、72………コンテナ搬送車両、74………操作者。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11